(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】液化二酸化炭素の移載方法、浮体
(51)【国際特許分類】
F17C 13/00 20060101AFI20231013BHJP
B63B 25/08 20060101ALI20231013BHJP
B63B 27/24 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F17C13/00 302D
B63B25/08 B
B63B27/24 B
B63B27/24 D
(21)【出願番号】P 2020180560
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】安部 和也
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0126994(KR,A)
【文献】特開昭59-173127(JP,A)
【文献】特開2013-032839(JP,A)
【文献】特開2002-349793(JP,A)
【文献】特開2006-142238(JP,A)
【文献】特開2006-242350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00
B63B 25/08
B63B 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体に備えられたタンクの内部に連通する配管に、前記浮体の外部に配置された外部設備と接続するための接続管を接続する工程と、
前記接続管及び前記配管の内部に、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスを送り込み、前記接続管及び前記配管の内部を前記置換ガスに置換する工程と、
前記接続管及び前記配管の内部を、前記置換ガスから二酸化炭素ガスに置換する工程と、
前記接続管及び前記配管を通して、前記外部設備と前記タンクとの間で液化二酸化炭素を移載する工程と、を含む
液化二酸化炭素の移載方法。
【請求項2】
前記置換ガスは、水分量が所定の上限値以下に調整されたドライエアである
請求項1に記載の液化二酸化炭素の移載方法。
【請求項3】
前記二酸化炭素ガスは、前記タンク内に貯留された液化二酸化炭素が気化することで生成されたボイルオフガスである
請求項1又は2に記載の液化二酸化炭素の移載方法。
【請求項4】
浮体本体と、
前記浮体本体に配置され、液化二酸化炭素を貯留可能なタンクと、
前記タンク内に連通し、外部設備と前記タンクとの間で液化二酸化炭素を送給させるための接続管が接続可能とされた配管と、
前記接続管が前記配管に接続された場合に、前記配管及び前記接続管の内部に、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスを送り込む置換ガス供給部と、
前記配管及び前記接続管の内部に二酸化炭素ガスを送り込む二酸化炭素供給部と、を備える
浮体。
【請求項5】
前記置換ガス供給部は、外部から取り込んだ大気に含まれる水分を低減させるエアドライヤーを備えている
請求項4に記載の浮体。
【請求項6】
前記二酸化炭素供給部は、前記タンク内に貯留された液化二酸化炭素が気化することで生成されたボイルオフガスを、前記二酸化炭素ガスとして前記配管及び前記接続管の内部に送り込む、
請求項4又は5に記載の浮体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化二酸化炭素の移載方法、浮体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、液化ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)を貯蔵するタンクを備えた船舶(輸入船)から、陸上の設備(輸入ターミナル)に、液化ガスを移送するための移送装置(天然ガス移送装置)を備えた構成が開示されている。このような構成では、陸上の設備に係留された船舶は、設備と流体連通し、タンク内の液化ガスを陸上の貯蔵タンクに移送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、陸上の設備等の外部設備からタンクに液化ガスを積み込む際や、タンク内の液化ガスを外部設備に揚荷する際には、タンクの備える積込配管や揚荷配管等の配管は、外部設備と接続管を介して接続される。しかし、配管に接続管を接続するときに、配管内部に空気(大気)が侵入する可能性がある。そして、タンク内に液化二酸化炭素を収容する場合、配管内への空気侵入が生じると、空気中に含まれる水分と二酸化炭素とが反応し、炭酸やハイドレートが生成されてしまう。このように炭酸やハイドレートが生成されると、配管やタンクの内部に腐食が生じる可能性がある。
【0005】
そのため、上記タンクの配管に接続管を接続した後、接続管内に二酸化炭素ガスを充填することが行われている。これにより、空気中に含まれる水分が液化二酸化炭素に直接接触することを抑えている。しかしながら、この場合も、二酸化炭素ガスを充填する際に、接続管内の空気に含まれる水分と二酸化炭素とが反応し、タンクや配管の内部に腐食が生じてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、液化二酸化炭素を移載する際に二酸化炭素と水分とが反応することを抑え、タンクや配管の内部に腐食が生じることが抑制できる液化二酸化炭素の移載方法、浮体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る液化二酸化炭素の移載方法は、接続管を接続する工程と、置換ガスに置換する工程と、二酸化炭素ガスに置換する工程と、液化二酸化炭素を移載する工程と、を含む。前記接続管を接続する工程では、浮体に備えられたタンクの内部に連通する配管に前記接続管を接続する。前記接続管は、前記配管を前記浮体の外部に配置された外部設備と接続するためのものである。前記置換ガスに置換する工程では、前記接続管及び前記配管の内部に置換ガスを送り込み、前記接続管及び前記配管の内部を前記置換ガスに置換する。前記置換ガスは、水分量が所定の上限値以下に調整されている。前記二酸化炭素ガスに置換する工程では、前記接続管及び前記配管の内部を、前記置換ガスから二酸化炭素ガスに置換する。前記液化二酸化炭素を移載する工程では、前記接続管及び前記配管を通して、前記外部設備と前記タンクとの間で液化二酸化炭素を移載する。
【0008】
本開示に係る浮体は、浮体本体と、タンクと、配管と、置換ガス供給部と、二酸化炭素供給部と、を備える。前記タンクは、前記浮体本体に配置されている。前記タンクは、液化二酸化炭素を貯留可能である。前記配管は、前記タンク内に連通している。前記配管は、外部設備と前記タンクとの間で液化二酸化炭素を送給させるための接続管が接続可能とされている。前記置換ガス供給部は、前記接続管が前記配管に接続された場合に、前記配管及び前記接続管の内部に置換ガスを送り込む。置換ガスは、水分量が所定の上限値以下に調整されている。前記二酸化炭素供給部は、前記配管及び前記接続管の内部に二酸化炭素ガスを送り込む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の液化二酸化炭素の移載方法、浮体によれば、液化二酸化炭素を移載する際に二酸化炭素と水分とが反応することを抑え、タンクや配管の内部に腐食が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る浮体としての船舶の概略構成を示す平面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る船舶に設けられたタンク、配管を示す図であり、
図1のI-I矢視断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る船舶に設けられたタンク、配管を示す図であり、
図1のII-II矢視断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る船舶と接続管で接続される外部設備を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の移載方法の手順を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の移載方法において、接続管を接続する工程を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の移載方法において、置換ガスに置換する工程を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の移載方法において、二酸化炭素ガスに置換する工程を示す図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る液化二酸化炭素の移載方法において、液化二酸化炭素を移載する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る浮体、液化二酸化炭素の移載方法について、
図1~
図9を参照して説明する。
(船舶の構成)
図1、
図2に示すように、本開示の実施形態において、浮体である船舶1は、液化二酸化炭素を運搬する。この船舶1は、浮体本体としての船体2と、タンク設備10と、置換ガス供給部20(
図2参照)と、二酸化炭素供給部30(
図2参照)と、を少なくとも備えている。
【0012】
(船体の構成)
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4(
図2参照)と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、船幅方向Dw両側の左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を有する。船底4は、上下方向Dvの下方に配置され、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を有する。
図2に示すように、これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。この実施形態で例示する上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0013】
船体2内には、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。貨物搭載区画8は、上甲板5に対して下方の船底に向けて凹み、上方に開口している。
【0014】
(タンク設備の構成)
タンク設備10は、貨物搭載区画8内に、船首尾方向Daに沿って、複数が配置されている。本開示の実施形態において、タンク設備10は、船首尾方向Daに間隔を空けて二個配置されている。
【0015】
図2、
図3に示すように、タンク設備10は、タンク11と、配管12と、を少なくとも備えている。
この実施形態において、タンク11は、船体2に配置されている。タンク11は、例えば、水平方向に延びる円筒状をなす。この実施形態において、タンク11は、その長軸方向を船首尾方向Daに沿わせて配置されている。タンク11は、その内部に液化二酸化炭素Lを収容する。なお、タンク11は、円筒状に限られるものではなく、タンク11は球形、方形等であってもよい。
【0016】
配管12は、積込配管13と、揚荷配管14と、を含んでいる。つまり、タンク設備10の配管12として、積込配管13と揚荷配管14との二種類が存在している。
図3に示すように、積込配管13は、陸上の液化二酸化炭素供給設備等、船外の外部設備100(
図4参照)から供給される液化二酸化炭素Lをタンク11内に積み込むための管路を形成している。積込配管13のうち、その一端13aに近い側の一部は、タンク11の頂部を貫通してタンク11の外部から内部に延びている。積込配管13の一端13aに近い側の部分は、タンク11内で上下方向Dvに延びている。積込配管13の一端13aは、タンク11の下部でタンク11内に開口している。
【0017】
積込配管13の残部、すなわち他端13bに近い側の部分は、タンク11の外部に配置されている。
図2に示すように、積込配管13の他端13bには、船外との連結部13jが設けられている。連結部13jは、例えば、フランジ等を有している。連結部13jは、舷側3A,3Bのいずれか一方(例えば、舷側3A)に向けて配置されている。連結部14jの開口は、通常時、蓋(図示無し)により閉塞されている。連結部13jは、この蓋(図示無し)を取り外すことで、外部設備100の設備側タンク101と接続するための接続管50の端部を蓋(図示無し)に代えて接続することが可能となっている。
【0018】
揚荷配管14は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを、船外の外部設備100に送出する。揚荷配管14の一端14aに近い側の一部は、タンク11の外部からタンク11の頂部を貫通し、タンク11の内部に延びている。揚荷配管14の一端14aは、タンク11内のうちの下部に配置されている。揚荷配管14の一端14aには、ポンプ(図示無し)が設けられている。ポンプ(図示無し)は、タンク11内の液化二酸化炭素Lを吸い込み、揚荷配管14に送り出す。揚荷配管14は、ポンプから送り出された液化二酸化炭素Lを、タンク11外(船外)に導く。
【0019】
揚荷配管14のうち、残部である他端14bに近い側の部分は、タンク11の外部に配置されている。
図2に示すように、揚荷配管14の他端14bには、船外との連結部14jが設けられている。連結部14jは、例えば、フランジ等を有し、舷側3A,3Bのいずれか一方(例えば舷側3A)に向けて配置されている。連結部14jの開口は、通常時、蓋(図示無し)により閉塞されている。連結部14jは、この蓋(図示無し)を取り外すことで、外部設備100の設備側タンク101と接続するための接続管50の端部を蓋(図示無し)に代えて接続することが可能となっている。
【0020】
図4に示すように、接続管50は、外部設備100からタンク11内への液化二酸化炭素Lの積込を行う場合、外部設備100の設備側タンク101に設けられた設備側配管102と、積込配管13の連結部13jとを、接続して連通させる。また、接続管50は、タンク11から外部設備100への液化二酸化炭素Lの揚荷を行う場合、外部設備100の設備側タンク101に設けられた設備側配管102と、揚荷配管14の連結部14jとを、接続して連通させる。以下の説明では、積込配管13と揚荷配管14とを区別する場合を除き、積込配管13、揚荷配管14を、単に配管12と称し、連結部13j,14jを、単に連結部12jと称する。
【0021】
配管12、及び外部設備100側の設備側配管102には、それぞれ、開閉弁15,105が設けられている。開閉弁15は、配管12内の流路を開閉する。開閉弁105は、設備側配管102内の流路を開閉する。また、設備側配管102には、開放弁106が設けられている。開放弁106を開くと、設備側配管102内の流路と外部とが連通される。設備側配管102と配管12とを接続管50で接続した状態で、開閉弁15,105を閉状態にすると、開閉弁15と開閉弁105との間に位置する配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部が設備側タンク101や、タンク11と連通されない状態になる。ここで、設備側配管102内の流路が連通される外部とは、大気に限られない。例えば、開放弁106を介して放出される気体を貯留可能なタンク等の容器であってもよい。
【0022】
図2に示すように、置換ガス供給部20は、外部設備100と接続するための接続管50が配管12に接続された状態で、配管12及び接続管50の内部に、置換ガスGaを送り込む。置換ガスGaとしては、二酸化炭素と化学反応を生じない気体が用いられる。置換ガスGaは、水分量が所定の上限値以下に調整されている。このような置換ガスGaとしては、水分量が所定の上限値以下に調整された空気(いわゆるドライエア)や、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることができる。この実施形態では、置換ガスGaとしてドライエアを用いている。置換ガス供給部20は、エアドライヤー21を備えている。エアドライヤー21は、外部から取り込んだ大気から水分を除去することで、水分量を、所定の上限値、例えば露点温度-40℃以下に調整したドライエアを生成する。エアドライヤー21は、置換ガス供給管22を介して、配管12に接続されている。置換ガス供給管22には、開閉弁23が設けられている。エアドライヤー21で生成されたドライエアは、開閉弁23を開状態とすることで、置換ガス供給管22を通して、配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部に送り込まれる。なお、ドライエアにおける水分量の上限値は、効率よく配管内の水分除去が可能な値であれば良く、予め実験等により求めることができる。
【0023】
図2、
図4に示すように、二酸化炭素供給部30は、外部設備100と接続するための接続管50が配管12に接続された状態で、配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部に二酸化炭素ガスGcを送り込む。この実施形態では、二酸化炭素供給部30は、二酸化炭素ガスGcとして、タンク11内で液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスを用いている。二酸化炭素供給部30は、ボイルオフガス送給管31(
図2、
図3参照)を備えている。ボイルオフガス送給管31は、タンク11内の上部の気相と配管12とを連通している。二酸化炭素供給部30は、タンク11から配管12を通して、接続管50、及び設備側配管102の内部にボイルオフガスを送り込む。
【0024】
(液化二酸化炭素の移送方法の手順)
図5に示すように、この実施形態に係る液化二酸化炭素Lの移載方法S10は、接続管50を接続する工程S11と、置換ガスGaに置換する工程S12と、二酸化炭素ガスGcに置換する工程S13と、液化二酸化炭素Lを移載する工程S14と、を含んでいる。
【0025】
接続管50を接続する工程S11では、
図6に示すように、配管12に、外部設備100と接続するための接続管50の一端を接続する。さらに、外部設備100の設備側配管102に接続管50の他端を接続する。このとき、開閉弁15,23,105,開放弁106を閉状態にしておく。この状態で、開閉弁15と開閉弁105との間に位置する、配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部には、大気が入っている。
【0026】
置換ガスGaに置換する工程S12では、
図7に示すように、置換ガス供給部20により、接続管50の内部に置換ガスGaを送り込む。これには、エアドライヤー21を作動させるとともに、開閉弁15,105を閉状態、開閉弁23及び開放弁106を開状態とする。エアドライヤー21で外部から取り込まれた空気(大気)中の水分を除去することで、水分量が所定の上限値以下に調整されたドライエアが生成され、このドライエアが置換ガスGaとなる。この置換ガスGaは、置換ガス供給管22を通して配管12の連結部12jに供給される。供給された置換ガスGaは、配管12から接続管50、設備側配管102へと流れて、配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部の空気を、開放弁106から順次外部に押し出す。開放弁106から排出される空気の露点を計測し、露点が予め設定した許容値範囲内に入るまで、置換ガスGaの送り込みを継続する。計測される露点が許容値範囲内に入ったら、置換ガス供給部20による置換ガスGaの送り込みを停止し、開放弁106、開閉弁23を閉状態とする。これにより、開閉弁15,105の間における配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部が置換ガスGaに置換される。
【0027】
二酸化炭素ガスGcに置換する工程S13では、接続管50の内部を、置換ガスGaから二酸化炭素ガスGcに置換する。これには、
図8に示すように、開閉弁15、105を開状態、開放弁106及び開閉弁23を閉状態とする。この状態で、二酸化炭素供給部30及び配管12を通し、接続管50、及び設備側配管102の内部にタンク11のボイルオフガスを二酸化炭素ガスGcとして送り込む。これにより、配管12、接続管50、及び設備側配管102の内部の置換ガスGa(ドライエア)が、外部設備100側に順次押し出されていく。外部設備100側では、接続管50側から押し出されてくる置換ガスGaと二酸化炭素ガスGcの混合気の二酸化炭素濃度を計測する。計測された二酸化炭素濃度が予め設定した濃度範囲内に入ったら、二酸化炭素供給部30による二酸化炭素ガスGcの供給を停止する。
【0028】
液化二酸化炭素Lを移載する工程S14では、
図9に示すように、接続管50及び配管12を通して、外部設備100とタンク11との間で液化二酸化炭素Lを移載する。例えば、外部設備100からタンク11内への液化二酸化炭素Lの積込を行う場合、外部設備100の設備側タンク101から、設備側配管102、接続管50、配管12(積込配管13)を通して、タンク11内に液化二酸化炭素Lを送り込む。
また、タンク11内から外部設備100への液化二酸化炭素Lの揚荷を行う場合、配管12(揚荷配管14)から、接続管50、設備側配管102を通して、外部設備100の設備側タンク101に液化二酸化炭素Lを送り込む。
【0029】
(作用効果)
上記実施形態の液化二酸化炭素の移載方法S10によれば、接続管50及び配管12の内部を置換ガスGaに置換した後、さらに二酸化炭素ガスGcに置換している。置換ガスGaは、水分量が所定の上限値以下に調整されているため、置換ガスGaは、水分量が所定の上限値以下に調整されている。これにより、置換ガスGaから二酸化炭素ガスGcに置換したときに、二酸化炭素ガスGcが水分と反応することを抑えられる。接続管50及び配管12の内部を二酸化炭素ガスGcに置換した後、外部設備100とタンク11との間で移載される液化二酸化炭素Lが接続管50及び配管12の内部に流れるので、このときにも二酸化炭素ガスGcと水分との反応の発生が抑制される。したがって、液化二酸化炭素Lを移載する際に二酸化炭素と水分とが反応することを抑え、タンク11や配管12の内部に腐食が生じることが抑制できる。
【0030】
また、置換ガスGaは、水分量が所定の上限値以下に調整されたドライエアである。置換ガスGaとして用いられるドライエアは、空気(大気)をエアドライヤー21で乾燥させることで生成できる。したがって、船舶1上において、ドライエアを容易に用意することが可能となる。
【0031】
また、二酸化炭素ガスGcは、タンク11内に貯留された液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスである。これにより、船舶1上において、二酸化炭素ガスGcを容易に入手することが可能となる。
【0032】
上記実施形態の船舶1では、外部設備100と接続するための接続管50が配管12に接続された場合に、置換ガス供給部20で、接続管50及び配管12の内部に、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスGaを送り込む。これにより、接続管50及び配管12の内部を置換ガスGaに置換することができる。さらに、二酸化炭素供給部30で、接続管50及び配管12の内部に二酸化炭素ガスGcを送り込むことで、接続管50及び配管12の内部を、置換ガスGaから二酸化炭素ガスGcに置換することができる。この後に、接続管50及び配管12を通して、外部設備100とタンク11との間で液化二酸化炭素Lを移載することによって、液化二酸化炭素Lを移載する際に二酸化炭素と水分とが反応することを抑え、タンク11や配管12の内部に腐食が生じることが抑制できる。
【0033】
また、上記船舶1は、エアドライヤー21を備えている。これにより、エアドライヤー21で、外部から取り込んだ大気(空気)を乾燥させることで、置換ガスGaとして、水分量が所定の上限値以下に調整されたドライエアを提供することができる。これにより、船舶1上において、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスGaを容易に入手することが可能となる。
【0034】
また、上記船舶1は、タンク11内に貯留された液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスを、二酸化炭素ガスGcとして配管12及び接続管50の内部に送り込む。これにより、船舶1上において、二酸化炭素ガスGcを容易に入手することが可能となる。
【0035】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、配管12の連結部12jとして、積込配管13の連結部13jと、揚荷配管14の連結部14jとを個別に備えるようにしたが、これに限るものではない。例えば、積込配管13と揚荷配管14を、他端13b、14b側で一本の配管12に接続し、連結部12jを、積込配管13と揚荷配管14で共用するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、船舶1と、陸上に設置された外部設備100との間で、液化二酸化炭素Lを移載するようにしたが、これに限られない。船舶1と、洋上に配置され、推進機構を備えない洋上浮体設備との間で、液化二酸化炭素Lを移載するようにしてもよい。この場合、洋上浮体設備が、船舶1から見て、外部設備100に相当する。
【0037】
上記実施形態では、二酸化炭素ガスGcとして、タンク11内で液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスを用いていたが、二酸化炭素ガスGcは、ボイルオフガス以外に、例えば、同一船上や船外の別容器に収容された二酸化炭素ガス等であってもよい。
さらに、上記実施形態の船舶1では、二つのタンク11を備える構成としたが、タンク11の個数や配置はこれに限られない。三つ以上のタンク11を備えていてもよい。また、上記実施形態では、複数のタンク11を船首尾方向Daに並べて配置する場合を例示したが、タンク11は、船幅方向(言い換えれば、左右舷方向)に並べて配置してもよい。
また、上記実施形態では、浮体として船舶1を例示したが、これに限られない。浮体は、推進機構を備えない洋上浮体設備であってもよい。浮体が、洋上浮体設備である場合、洋上浮体設備から見た外部設備100が、船舶となることもある。
【0038】
<付記>
各実施形態に記載の液化二酸化炭素Lの移載方法S10、浮体1は、例えば以下のように把握される。
【0039】
(1)第1の態様に係る液化二酸化炭素Lの移載方法S10は、浮体1に備えられたタンク11の内部に連通する配管12に、前記浮体1の外部に配置された外部設備100と接続するための接続管50を接続する工程S11と、前記接続管50及び前記配管12の内部に、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスGaを送り込み、前記接続管50及び前記配管12の内部を前記置換ガスGaに置換する工程S12と、前記接続管50及び前記配管12の内部を、前記置換ガスGaから二酸化炭素ガスGcに置換する工程S13と、前記接続管50及び前記配管12を通して、前記外部設備100と前記タンク11との間で液化二酸化炭素Lを移載する工程S14と、を含む。
浮体1の例としては、船舶や洋上浮体設備が挙げられる。浮体本体2の例としては、船体や洋上浮体設備の浮体本体2が挙げられる。
置換ガスGaの例としては、例えば、ドライエア、不活性ガスが挙げられる。
【0040】
この液化二酸化炭素Lの移載方法S10によれば、接続管50及び配管12の内部を置換ガスGaに置換した後、さらに二酸化炭素ガスGcに置換している。置換ガスGaは、水分量が所定の上限値以下に調整されているため、置換ガスGaから二酸化炭素ガスGcに置換したときに、二酸化炭素が水分と反応することが抑えられる。接続管50及び配管12の内部を二酸化炭素ガスGcに置換した後、外部設備100とタンク11との間で移載される液化二酸化炭素Lが接続管50及び配管12の内部に流れるので、このときにも二酸化炭素と水分との反応の発生が抑制される。したがって、液化二酸化炭素Lを移載する際に二酸化炭素と水分とが反応することを抑え、タンク11や配管12の内部に腐食が生じることが抑制できる。
【0041】
(2)第2の態様に係る液化二酸化炭素Lの移載方法S10は、(1)の液化二酸化炭素Lの移載方法S10であって、前記置換ガスGaは、水分量が所定の上限値以下に調整されたドライエアである。
【0042】
これにより、置換ガスGaとして用いられるドライエアは、空気(大気)をエアドライヤーで乾燥させることで生成できる。したがって、浮体1上において、ドライエアを容易に用意することが可能となる。
【0043】
(3)第3の態様に係る液化二酸化炭素Lの移載方法S10は、(1)又は(2)の液化二酸化炭素Lの移載方法S10であって、前記二酸化炭素ガスGcは、前記タンク11内に貯留された液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスである。
【0044】
これにより、浮体1上において、二酸化炭素ガスGcを容易に入手することが可能となる。
【0045】
(4)第4の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、前記浮体本体2に配置され、液化二酸化炭素Lを貯留可能なタンク11と、前記タンク11内に連通し、外部設備100と前記タンク11との間で液化二酸化炭素Lを送給させるための接続管50が接続可能とされた配管12と、前記接続管50が前記配管12に接続された場合に、前記配管12及び前記接続管50の内部に、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスGaを送り込む置換ガス供給部20と、前記配管12及び前記接続管50の内部に二酸化炭素ガスGcを送り込む二酸化炭素供給部30と、を備える。
【0046】
このような浮体1では、置換ガス供給部20で、接続管50及び配管12の内部に、水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスGaを送り込むことで、接続管50及び配管12の内部を置換ガスGaに置換することができる。さらに、二酸化炭素供給部30で、接続管50及び配管12の内部に二酸化炭素ガスGcを送り込むことで、接続管50及び配管12の内部を、置換ガスGaから二酸化炭素ガスGcに置換することができる。この後に、接続管50及び配管12を通して、外部設備100とタンク11との間で液化二酸化炭素Lを移載することによって、液化二酸化炭素Lを移載する際に二酸化炭素と水分とが反応することを抑え、タンク11や配管12の内部に腐食が生じることが抑制できる。
【0047】
(5)第5の態様に係る浮体1は、(4)の浮体1であって、前記置換ガス供給部20は、外部から取り込んだ大気に含まれる水分を低減させるエアドライヤー21を備えている。
【0048】
これにより、エアドライヤー21により、外部から取り込んだ大気に含まれる水分を低減させることで、ドライエアを水分量が所定の上限値以下に調整された置換ガスGaとして提供することができる。
【0049】
(6)第6の態様に係る浮体1は、(4)又は(5)の浮体1であって、前記二酸化炭素供給部30は、前記タンク11内に貯留された液化二酸化炭素Lが気化することで生成されたボイルオフガスを、前記二酸化炭素ガスGcとして前記配管12及び前記接続管50の内部に送り込む。
【0050】
これにより、ボイルオフガスを二酸化炭素ガスGcとして用いることで、浮体1上において、二酸化炭素ガスGcを容易に入手することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1…船舶(浮体)
2…船体(浮体本体)
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
4…船底
5…上甲板
7…上部構造
8…貨物搭載区画
10…タンク設備
11…タンク
12…配管
12j…連結部
13…積込配管
13a…一端
13b…他端
13j…連結部
14…揚荷配管
14a…一端
14b…他端
14j…連結部
15…開閉弁
20…置換ガス供給部
21…エアドライヤー
22…置換ガス供給管
23…開閉弁
30…二酸化炭素供給部
50…接続管
100…外部設備
101…設備側タンク
102…設備側配管
105…開閉弁
106…開放弁
Ga…置換ガス
Gc…二酸化炭素ガス
L…液化二酸化炭素