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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】振動発電素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/00 20060101AFI20231013BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20231013BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H02N1/00
B81B3/00
B81C1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020209683
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096529
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下村 典子
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-065326(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077717(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
B81B 3/00
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部に固定されている固定電極と、
前記固定電極に対して移動可能な可動電極と、
一端が前記ベース部に接続されるとともに他端が前記可動電極に接続され、前記可動電極を弾性的に支持する弾性支持部と、
前記可動電極に固定され前記可動電極が振動する振動平面と直交する方向に離れて前記ベース部または前記ベース部に固定されている部材と対向する第1部材、および、前記ベース部に固定され前記振動平面と直交する方向に離れて前記可動電極または前記可動電極に固定されている部材と対向する第2部材の少なくとも一方と、
を備え
前記第1部材は、前記可動電極から、前記振動平面と平行で前記ベース部に近づく方向に延在し、前記ベース部と対向する、振動発電素子。
【請求項2】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第1部材の少なくとも一部と、前記第2部材の少なくとも一部とは、前記振動平面と直交する方向に離れて対向する、振動発電素子。
【請求項3】
請求項1に記載の振動発電素子において、
前記第2部材は、前記ベース部から、前記振動平面と平行で前記可動電極に近づく方向に延在し、前記可動電極と対向する、振動発電素子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の振動発電素子において、
前記可動電極、前記固定電極、前記弾性支持部および前記第2部材は、第1層、第2層および第3層が設けられた基板の前記第1層に形成され、
前記ベース部および前記第1部材は、前記基板の前記第3層に形成されている振動発電素子。
【請求項5】
請求項4に記載の振動発電素子において、
前記第1部材は、前記第2層を介して前記可動電極に固定され、
前記第2部材は、前記第2層を介して前記ベース部に固定されている、振動発電素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の振動発電素子において、
前記第1部材および前記第2部材は、それぞれ上面視で前記可動電極の重心を通る直線上であって前記可動電極の振動方向の両端部に設けられる、振動発電素子。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の振動発電素子において、
前記第1部材および前記第2部材は、それぞれ上面視で前記可動電極の重心を通る直線上であって前記可動電極の振動方向と直交する方向の両端部に設けられる、振動発電素子。
【請求項8】
ベース部に固定されている固定電極と、前記固定電極に対して移動可能な可動電極と、
一端が前記ベース部に接続されるとともに他端が前記可動電極に接続され、前記可動電極を弾性的に支持する弾性支持部と、前記可動電極に固定され前記可動電極が振動する振動平面と直交する方向に離れて前記ベース部と対向する第1部材、および、前記ベース部に固定され前記振動平面と直交する方向に離れて前記可動電極と対向する第2部材の少なくとも一方と、を備える振動発電素子を製造するための製造方法であって、
第1層、第2層および第3層が設けられた基板を用意する第1工程と、
前記基板の前記第1層の側から前記第1層の一部をエッチングして、前記固定電極、前記可動電極、前記弾性支持部および前記第2部材を形成する第2工程と、
前記基板の前記第3層の側から前記第3層の一部をエッチングして、前記ベース部および前記第1部材を形成する第3工程と、
前記第2工程および前記第3工程の終了後に、前記第2層の一部をエッチングして、前記第1部材と前記第2部材との分離、および、前記可動電極と前記ベース部との分離、の少なくとも一方を行う第4工程と、
を備える、振動発電素子の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の振動発電素子の製造方法において、
前記可動電極および前記第1部材は、前記第4工程で残される前記第2層を介して一体に形成され、
前記ベース部および前記第2部材は、前記第4工程で残される前記第2層を介して一体に形成される、振動発電素子の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の振動発電素子の製造方法において、
前記第4工程は、前記第2工程により前記第1層が除去された領域と、前記第3工程により前記第3層が除去された領域と、前記対向する対向領域と、においてそれぞれ前記第2層を除去する、振動発電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境振動からエネルギーを収穫するエナジーハーベスティング技術の一つとして、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動素子である振動発電素子を用いて環境振動から発電を行う手法が知られている。
振動発電素子では、可動電極をカンチレバーのような弾性支持部で支持し、可動電極が固定電極に対して振動することで発電を行っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-114150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動発電素子においては、例えば、床面への落下等により大きな衝撃が与えられると、可動電極を支持する弾性支持部に大きな力が作用する恐れがあるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による振動発電素子は、ベース部に固定されている固定電極と、前記固定電極に対して移動可能な可動電極と、一端が前記ベース部に接続されるとともに他端が前記可動電極に接続され、前記可動電極を弾性的に支持する弾性支持部と、前記可動電極に固定され前記可動電極が振動する振動平面と直交する方向に離れて前記ベース部または前記ベース部に固定されている部材と対向する第1部材、および、前記ベース部に固定され前記振動平面と直交する方向に離れて前記可動電極または前記可動電極に固定されている部材と対向する第2部材の少なくとも一方と、を備える。
本発明の第2の態様による振動発電素子の製造方法は、ベース部に固定されている固定電極と、前記固定電極に対して移動可能な可動電極と、一端が前記ベース部に接続されるとともに他端が前記可動電極に接続され、前記可動電極を弾性的に支持する弾性支持部と、前記可動電極に固定され前記可動電極が振動する振動平面と直交する方向に離れて前記ベース部と対向する第1部材、および、前記ベース部に固定され前記振動平面と直交する方向に離れて前記可動電極と対向する第2部材の少なくとも一方と、を備える振動発電素子を製造するための製造方法であって、第1層、第2層および第3層が設けられた基板を用意する第1工程と、前記基板の前記第1層の側から前記第1層の一部をエッチングして、前記固定電極、前記可動電極、前記弾性支持部および前記第2部材を形成する第2工程と、前記基板の前記第3層の側から前記第3層の一部をエッチングして、前記ベース部および前記第1部材を形成する第3工程と、前記第2工程および前記第3工程の終了後に、前記第2層の一部をエッチングして、前記第1部材と前記第2部材との分離、および、前記可動電極と前記ベース部との分離、の少なくとも一方を行う第4工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、MEMS振動発電素子に衝撃が加えられた際、弾性支持部に大きな力がはたらくことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】振動発電素子の一例を説明する平面図である。
図2図2(a)は図1のうち破線Q1で囲まれる付近を拡大した図、図2(b)は図2(a)のA-A断面をマイナスY方向からプラス方向に見た模式図、図2(c)は図2(a)のB-B断面をマイナスY方向からプラス方向に見た模式図である。
図3】振動発電素子の製造手順を例示するフローチャートである。
図4図4(a)~図4(d)は製造段階の生成物を示す模式図である。
図5】振動発電素子の変形例を説明する平面図である。
図6図6(a)は図5のうち破線Q2で囲まれる付近を拡大した図、図6(b)は図6(a)のA-A断面をプラスX方向からマイナス方向に見た模式図、図6(c)は図6(a)のB-B断面をプラスX方向からマイナス方向に見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、振動発電素子1の一例を説明する平面図である。図1および以降のいくつかの図では、デカルト座標系と呼ばれる右手系の直交座標系で、X方向、Y方向およびZ方向の向きを表すものとする。X方向、Y方向およびZ方向は、相互に直交する方向であり、X方向およびY方向は、後に詳述する可動電極が発電時に振動する平面と平行な方向であり、Z方向は、上記振動する平面と直交する方向である。
【0009】
振動発電素子1の材質はSiであり、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて一般的なMEMS加工技術により形成される。本実施形態の振動発電素子1は、一辺が10~数10mm程度の微小な発電素子である。このような発電素子は、例えば、工場内で稼働するコンプレッサー等の機械振動(環境振動)で発電し、モニタリング用のセンサや無線端末等に電力を供給するという用途で使用される。
【0010】
本実施形態で用いるSOI基板は、図4(a)を参照して後述するように、下層であるSiの支持層と、中層であるSiOの犠牲層と、上層であるSiの活性層とがZ方向に積層された3層構造の基板である。
なお、振動発電素子1は、SOI基板に限らずSi基板等を用いて形成してもよい。
【0011】
図1において、振動発電素子1は、ベース部2と、ベース部2の上に固定された4個の固定電極3と、固定電極3に対応して設けられる可動電極4と、可動電極4を弾性的に支持する4個の弾性支持部5と、ベース部2の上に固定されて4個の弾性支持部5を支持する2個の固定部6aと、を備えている。図1では、SOI基板の支持層が下層に設けられており、ベース部2は支持層に形成されている。4個の固定電極3、可動電極4、4個の弾性支持部5および、2個の固定部6aは、いずれも上層の活性層に形成されている。
可動電極4は、図示左右両端の2個の固定部6aに、4個の弾性支持部5を介して接続されている。各固定電極3には電極パッド35が設けられ、図示右端側の固定部6aにも電極パッド65が設けられている。
【0012】
(固定電極および可動電極)
4個の固定電極3の各々は、X方向に延びる固定櫛歯30がY方向に複数並ぶ櫛歯列を有している。可動電極4は、4個の固定電極3に対応する4個の可動櫛歯群4aを有している。4個の可動櫛歯群4aの各々は、X方向に延びる可動櫛歯40がY方向に複数並ぶ櫛歯列を成している。固定電極3に形成された複数の固定櫛歯30と、その固定電極3に対応する可動櫛歯群4aの複数の可動櫛歯40とは、静止状態(中立状態)においてX方向に所定の噛合長をもって、Y方向に所定の隙間を介して互いに噛合するように配置されている。
【0013】
(弾性支持部)
弾性支持部5は、上述したように4個設けられている。可動電極4の図示右端部は、4個の弾性支持部5のうちの右側2個の弾性支持部5により支持され、可動電極4の図示左端部は、4個の弾性支持部5のうちの左側2個の弾性支持部5により支持されている。
各弾性支持部5は、4個のMEMS弾性構造51を備えている。弾性支持部5に備わる4個のMEMS弾性構造51は、弾性支持部5を構成する結合部52にそれぞれ接続されている。
【0014】
例えば、図示左上の弾性支持部5に備わる4個のMEMS弾性構造51の場合、内側に配置された2個のMEMS弾性構造51の図示下端側が可動電極4に接続されるとともに、図示上端側が結合部52に接続されている。
また、4個のMEMS弾性構造51のうちの左端に配置されたMEMS弾性構造51の図示下端側がベース部2上に設けられた図示左端側の固定部6aに接続されると共に、図示上端側が結合部52に接続されている。
さらにまた、4個のMEMS弾性構造51のうちの右端に配置されたMEMS弾性構造51の図示下端側がベース部2上に設けられた図示左上の固定部6bに接続されると共に、図示上端側が結合部52に接続されている。
【0015】
このように接続された4個のMEMS弾性構造51を備えた弾性支持部5は、バネとして機能する。すなわち、弾性支持部5を介して支持された可動電極4は、4個のMEMS弾性構造51のうちの内側に配置された2個のMEMS弾性構造51により接続されている結合部52に対してX方向に変位する一方、結合部52は、4個のMEMS弾性構造51のうちの図示左右両端の2個のMEMS弾性構造51により接続されているベース部2に対してX方向に変位する。
図示右上、左下、右下の各弾性支持部5に備わる各4個のMEMS弾性構造51についても、上記図示左上の弾性支持部5に備わる4個のMEMS弾性構造51と同様の接続構造となっている。
【0016】
固定櫛歯30および可動櫛歯40の少なくとも一方にはエレクトレットが形成されており、可動電極4の振動により固定櫛歯30と可動櫛歯40との噛合長が変化して発電が行われる。
なお、固定櫛歯30および可動櫛歯40のそれぞれにエレクトレットを形成してもよい。また、本明細書において、可動電極4は、弾性支持部5により保持され、弾性支持部5の変形により、可動櫛歯40と一体的に振動方向(X方向)に振動する部材をいう。
【0017】
可動電極4とベース部2とは、上述したようにバネとして機能する弾性支持部5によってバネ・マス共振系を構成する。外部からの振動が振動発電素子1に加わると、共振(正弦波振動の場合)や過渡応答(インパルス振動の場合)により各弾性支持部5のMEMS弾性構造51が変形して、可動電極4がX方向に振動する。固定櫛歯30に対して可動櫛歯40が振動すると誘導電流が発生し、これを電極パッド35および65から外部に取り出すことで発電素子として利用される。
【0018】
上記の振動発電素子1において、例えば、振動発電素子1が床面に落下した場合のように、通常の環境振動に比べて大きな衝撃(例えば100G程度)が振動発電素子1に与えられると、弾性支持部5に想定外の大きな力が加わるおそれがある。そのため、本実施の形態では、以下に説明するような保護機構が設けられる。
【0019】
(X方向のストッパー)
図示した振動発電素子1において、発電時に可動電極4が振動する振動方向はX方向である。本実施形態では、図示右端側の固定部6aを構成する活性層の一部をマイナスX方向に突出させた凸部61を設けて、可動電極4がプラスX方向に大きく移動しようとする場合には凸部61を可動電極4の図示右端部と接触させて可動電極4の移動を止めるストッパーの機能を持たせる。可動電極4が凸部61に当接すると、これ以上可動電極4がプラスX方向に移動しないので、弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0020】
また、図示左端側の固定部6aを構成する活性層の一部をプラスX方向に突出させた凸部62を設けて、可動電極4がマイナスX方向に大きく移動しようとする場合には凸部62を可動電極4の図示左端部と接触させて可動電極4の移動を止めるストッパーの機能を持たせる。可動電極4が凸部62に当接すると、これ以上可動電極4がマイナスX方向に移動しないので、弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
以上説明したように、本実施形態では凸部61および凸部62によりX方向のストッパーを構成する。凸部61および凸部62は、可動電極4の重心Oを通るX軸と平行な直線P1上に設けられている。
【0021】
なお、上述したMEMS弾性構造51を有する弾性支持部5は、Y方向におけるバネ定数がX方向におけるバネ定数に比べて十分大きい。換言すると、発電時に可動電極4が振動する平面において振動方向(X方向)と直交するY方向については、弾性支持部5を十分に硬くすることにより、可動電極4がプラスY方向、あるいはマイナスY方向に大きく移動することが抑えられている。
【0022】
(Z方向のストッパー)
次に、発電時に可動電極4が振動する平面と直交するZ方向のストッパーについて説明する。図2(a)は、図1のうち破線Q1で囲まれる付近を拡大した図である。図2(b)は、図2(a)のA-A断面をマイナスY方向からプラス方向に見た模式図であり、図2(c)は、図2(a)のB-B断面をマイナスY方向からプラス方向に見た模式図である。
本実施形態では、以下に説明する第1ストッパーおよび第2ストッパーによりZ方向のストッパーを構成する。一点鎖線A-Aは、第1ストッパーを通り、X軸と平行な直線である。また、一点鎖線B-Bは、第2ストッパーを通り、X軸と平行な直線である。
【0023】
(第1ストッパー)
図2(a)および図2(b)において、第1ストッパーは、活性層に形成されている固定部6aのうちの破線で囲むF部および、固定部6aの上記F部とZ方向に対向するように支持層に形成された付加部23に対応しており、可動電極4がプラスZ方向に大きく移動しようとする場合に可動電極4の移動を制限する機能を有する。
【0024】
可動電極4のうちの上面視で付加部23と重なる領域43は、マイナスZ方向から犠牲層33を介して付加部23と機械的に固定されている。付加部23の図示右端は、固定部6aの図示左端SよりもプラスX方向に延在する。
一方、活性層に形成されている固定部6aは、マイナスZ方向から犠牲層32を介して、支持層に形成されているベース部2のうちの上面視で固定部6aと重なる領域20と機械的に固定されている。
【0025】
このように構成したので、可動電極4に接続された付加部23の一部は、ベース部2と機械的に固定されている固定部6aと上面視でF部において重なる。固定部6aと付加部23とは、静止状態(中立状態)においてZ方向に間隔gの隙間を有して対向する。間隔gは1~5μm程度であり、犠牲層の厚さに相当する。
なお、固定部6aのF部には、固定部6aをZ方向に貫通する複数のエッチング用の孔Hが設けられている。孔Hはリリースホールとも称される。リリースホールの数および形状は、図示した数および丸形状でなくてもよく、形状は楕円形状でも矩形状であってもよい。
【0026】
可動電極4(領域43)がプラスZ方向に距離gだけ移動して、可動電極4に接続された付加部23がF部において固定部6aに当接すると、これ以上可動電極4(領域43)がプラスZ方向に移動しないので、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
上述した第1ストッパーは、可動電極4の重心Oを通るX軸と平行な直線P1上に位置する。すなわち、図2(a)の一点鎖線A-Aは、直線P1と一致する。
【0027】
(第2ストッパー)
図2(a)および図2(c)において、第2ストッパーは、支持層に形成されているベース部2のうちの破線で囲むG1部および、活性層に形成されている可動電極4のうちの上記G1部とZ方向に対向する領域44に対応しており、可動電極4がマイナスZ方向に大きく移動しようとする場合に可動電極4の移動を制限する機能を有する。
【0028】
ベース部2のうちの領域21は、可動電極4の図示右端RよりもマイナスX方向に延在する。このように構成したので、ベース部2の領域21は、可動電極4の領域44と上面視でG1部において重なる。可動電極4の領域44とベース部2の領域21とは、静止状態(中立状態)においてZ方向に間隔gの隙間を有して対向する。間隔gは上述したように犠牲層の厚さに相当する。
なお、可動電極4の領域44には、可動電極4をZ方向に貫通する複数のエッチング用の孔H(リリースホール)が設けられている。リリースホールの数および形状は、図示した数および丸形状でなくてもよく、形状は楕円形状でも矩形状でもよい。
【0029】
可動電極4(領域44)がマイナスZ方向に距離gだけ移動して、可動電極4がG1部においてベース部2の領域21に当接すると、これ以上可動電極4(領域44)がマイナスZ方向に移動しないので、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0030】
上述した第2ストッパーは、図2(a)の一点鎖線A-Aに対して線対称の関係を有する2か所に設けられる。すなわち、説明したG1部と線A-Aに対して線対称の位置にあるG2部にも、G1部と同様の第2ストッパーが設けられる。
【0031】
また、上述した第1ストッパーおよび第2ストッパーと同様のストッパーは、可動電極4の重心Oを通るY軸と平行な直線P4に対して、破線Q1内に示した位置と線対称の関係を有する破線Q1A内に示す位置にも設けられる。つまり、上述した第2ストッパーは、可動電極4の重心Oを通る直線P2上の左右2か所に配置されるとともに、可動電極4の重心Oを通る直線P3上の左右2か所にも配置される。
【0032】
(振動発電素子の製造方法)
以下、振動発電素子1の製造方法の一例について、図3および図4を参照して説明する。図3は、振動発電素子1の製造手順を例示するフローチャートである。図4(a)~図4(d)は、製造段階の生成物を示す模式図である。図4(a)~図4(d)は、それぞれが図2(b)のA-A断面図で例示する範囲に対応しており、わかりやすくするために活性層および支持層の断面をハッチングで示す。
【0033】
(工程1)
図3のステップS10において、作業者または製造装置は、図4(a)に示すSOI基板を用意する。
(工程2)
図3のステップS20において、作業者または製造装置は、SOI基板の上層である活性層に対し、図4(b)に図示した範囲において可動電極4および固定部6a等のパターンを形成するとともに、図4(b)に図示していない範囲において固定電極3、可動電極4、弾性支持部5および固定部6a等のパターンを形成するため、SF6またはCF4等のフッ素を含むガスを用いたRIE(Reactive Ion Etching)によりエッチングする。
【0034】
具体的には、活性層全面に不図示のレジストを形成した上で、部分的にレジストを除去して開口部を形成する。開口部には、エッチング用の孔H(リリースホール)の開口も含む。レジストの除去は、例えば、露光および現像等を含むフォトリソグラフィ工程により行う。
そして、残したレジストをエッチングマスクとして活性層をエッチングすることにより、図4(b)に示すように活性層をZ方向に貫通するパターンを形成する。その後、SPM(Sulfuric acid Peroxide Mixture)洗浄により残っているレジスト等を除去する。
なお、本実施形態では工程2にドライエッチを採用する例を説明するが、工程2にウェットエッチを採用してもよい。
【0035】
(工程3)
ステップS30において、作業者または製造装置は、SOI基板の下層である支持層に対し、図4(c)に図示した範囲においてベース部2の領域20および付加部23等のパターンを形成するとともに、図4(c)に図示していない範囲においてベース部2の領域21等のパターンを形成するため、ステップS20の場合と同様にRIEによりエッチングする。
具体的には、支持層全面に不図示のレジストを形成した上で、部分的にレジストを除去し、開口部を形成する。レジストの除去は、活性層の場合と同様に、フォトリソグラフィ工程により行う。
そして、残したレジストをエッチングマスクとして支持層をエッチングすることにより、図4(c)に示すように支持層をZ方向に貫通するパターンを形成する。その後、SPM洗浄により残っているレジスト等を除去する。
なお、本実施形態では工程3にドライエッチを採用する例を説明するが、工程3にウェットエッチを採用してもよい。
【0036】
(工程4)
ステップS40において、作業者または製造装置は、SOI基板の中層である犠牲層を、BHF(バッファードフッ酸)を用いたウェットエッチングにより除去する。BHFにより、上述した工程2および工程3によって犠牲層の上側(活性層側)および下側(支持層側)の少なくとも一方が露出している領域の犠牲層がエッチングされ、図4(d)に示すように活性層のみまたは支持層のみが残される。上述した工程2および工程3の後に、上側(活性層側)および下側(支持層側)のいずれも露出しない領域の犠牲層は、ウェットエッチング後も残って活性層と支持層を機械的に固定する状態を維持する(犠牲層32、33および34)。
【0037】
ここで、工程2および工程3の後に犠牲層の上側(活性層側)および下側(支持層側)の双方が露出していなくても、上層である活性層にエッチング用の孔H(リリースホール)が設けられている領域に対応する犠牲層は、リリースホールを介してエッチングされる。本実施形態では、F部に対応する犠牲層、および、図示していない範囲においてG1部およびG2部に対応する犠牲層が、リリースホールを介してエッチングされる。このようなエッチング手法により、固定部6aのうちF部に対応する領域がプラスX方向に延在する付加部23と分離されるとともに、図示していない範囲においてG1部およびG2部に対応する可動電極4が、マイナスX方向に延在するベース部2の領域21等と分離される。
なお、本実施形態では工程4にウェットエッチを採用する例を説明するが、工程4にドライエッチを採用してもよい。
【0038】
(工程5)
上記工程1から工程4に例示した手順により、エレクトレット未形成の振動発電素子1のMEMS加工体が形成される。工程5としてのステップS50において、作業者または製造装置は、公知のエレクトレット形成処理(例えば、特開2014-50196号公報に記載の形成処理)により、固定電極3および/または可動電極4にエレクトレットを形成する。
以上説明した工程1から工程5により、振動発電素子1が製造される。
【0039】
以上説明した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)振動発電素子1は、ベース部2に固定されている固定電極3と、固定電極3に対して移動可能な可動電極4と、一端がベース部2に接続されるとともに他端が可動電極4に接続され、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5と、可動電極4に固定され可動電極4が振動する振動平面(XY平面)と直交するZ方向に離れてベース部2に固定されている固定部6aと対向する、第1部材として第1ストッパーを構成する付加部23、および、ベース部2に固定されZ方向に離れて可動電極4に固定されている付加部23と対向する、第2部材として第1ストッパーを構成する固定部6aを備える。
このように構成したので、例えば可動電極4がプラスZ方向に大きく移動しようとする場合には、可動電極4に固定された付加部23がベース部2に固定された固定部6a(F部)に当たって可動電極4の移動を制限する。これにより、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0040】
(2)上記(1)の振動発電素子1は、ベース部2から延在しZ方向に離れて可動電極4と対向する、第2部材として第2ストッパーを構成するベース部2の領域21を備える。このように構成したので、例えば可動電極4がマイナスZ方向に大きく移動しようとする場合には、ベース部2から延在する領域21(G1部)が、可動電極4の領域44に当たって可動電極4の移動を制限する。これにより、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0041】
(3)上記(1)の振動発電素子1において、第1部材としての付加部23および第2部材としての固定部6aがF部においてZ方向に離れて対向するので、可動電極4が付加部23および固定部6a間の間隔gよりも大きく移動することを防止できる。
【0042】
(4)上記(2)の振動発電素子1において、第2部材としてのベース部2の領域21は、ベース部2から、振動平面(XY平面)と平行で可動電極4に近づくマイナスX方向に延在し、Z方向に離れて可動電極4(領域44)と対向する。このように構成したので、可動電極4が可動電極4およびベース部2間の間隔gよりも大きく移動することを防止できる。
【0043】
(5)上記(1)または(3)の振動発電素子1において、可動電極4、固定電極3、弾性支持部5および、第2部材としての固定部6aは、活性層、犠牲層および支持層が設けられたSOI基板の活性層に形成され、ベース部2および第1部材としての付加部23は、SOI基板の支持層に形成されている。このように構成したので、それぞれ異なる層に離れて形成された第1部材および第2部材を備えることができる。
【0044】
(6)上記(5)の振動発電素子1において、第1部材としての付加部23は、犠牲層を介して可動電極4に固定され、第2部材としての固定部6aは、犠牲層を介してベース部2に固定されている。このように構成したので、可動電極4およびベース部2に対してそれぞれ固定された付加部23および固定部6aを備えることができる。
【0045】
(7)上記(1)の振動発電素子1において、第1ストッパーを構成する付加部23および固定部6a(F部)は、それぞれ上面視で可動電極4の重心Oを通る直線P1上であって可動電極4の振動方向(X方向)の両端部(破線Q1および破線Q1Aで示す範囲内)に設けられる。また、第2ストッパーを構成する可動電極4(領域44)およびベース部2の領域21(G1部)は、それぞれ上面視で可動電極4の重心Oを通る直線P2及びP3上であって可動電極4の振動方向(X方向)の両端部(破線Q1および破線Q1Aで示す範囲内)に設けられる。
このように構成したので、第1ストッパー、第2ストッパーを設けたことによって可動電極4の重心Oの位置が変わらないので、可動電極4の振動特性が損なわれない。
【0046】
(8)上述した振動発電素子1の製造方法において、第1層としての活性層、第2層としての犠牲層および第3層としての支持層が設けられたSOI基板を用意する第1工程と、SOI基板の活性層の側から活性層の一部をエッチングして、固定電極3、可動電極4、弾性支持部5および第2部材を形成する第2工程と、SOI基板の支持層の側から支持層の一部をエッチングして、ベース部2および第1部材を形成する第3工程と、第2工程および第3工程の終了後に、犠牲層の一部をエッチングして、第1部材と第2部材との分離、および、可動電極4とベース部2との分離、の少なくとも一方を行う第4工程と、を備える。
このように構成したので、可動電極4がプラスZ方向に大きく移動しようとする場合において互いに当接する付加部23および固定部6a(F部)、および、可動電極4がマイナスZ方向に大きく移動しようとする場合において互いに当接する可動電極4(領域44)およびベース部2の領域21(G1部)を、適切に形成することができる。
【0047】
(9)上記(8)の振動発電素子1の製造方法において、可動電極4および第1部材としての付加部23は、第4工程で残される犠牲層を介して一体に形成され、ベース部2および第2部材としての固定部6aは、第4工程で残される犠牲層を介して一体に形成される。
このように構成したので、各部を適切に形成することができる。
【0048】
(10)上記(9)の振動発電素子1の製造方法において、第4工程は、第2工程により活性層が除去された領域と、第3工程により支持層が除去された領域と、対向する対向領域(F部、G1部)と、においてそれぞれ犠牲層を除去する。
このように構成したので、各部を適切に形成することができる。
【0049】
(変形例)
Z方向のストッパーとしての第1ストッパーおよび第2ストッパーを配置する位置を、図1において例示した破線Q1および破線Q1A内に示す位置と異なる位置に配置してもよい。図5は、上記実施形態の変形例の振動発電素子1Aを説明する平面図である。図5において、図1に例示した振動発電素子と同様の構成には、同じ符号を付して説明を省略する。図5の振動発電素子1Aは、図1の振動発電素子1と比べて、破線Q1および破線Q1A内に示す位置の代わりに、破線Q2および破線Q2A内に示す位置に第1ストッパーおよび第2ストッパーが設けられる点が相違する。すなわち、変形例では、以下に説明する第1ストッパーおよび第2ストッパーによりZ方向のストッパーを構成する。
【0050】
図6(a)は、図5のうち破線Q2で囲まれる付近を拡大した図である。図6(b)は、図6(a)のA-A断面をプラスX方向からマイナス方向に見た模式図であり、図6(c)は、図6(a)のB-B断面をプラスX方向からマイナス方向に見た模式図である。一点鎖線A-Aは、第1ストッパーを通り、Y軸と平行な直線である。また、一点鎖線B-Bは、第2ストッパーを通り、Y軸と平行な直線である。
【0051】
(第1ストッパー)
図6(a)および図6(b)において、第1ストッパーは、活性層に形成されている第1の付加部47のうちの破線で囲むJ部および、活性層の上記J部とZ方向に対向するように支持層に形成された第2の付加部24に対応しており、可動電極4がプラスZ方向に大きく移動しようとする場合に可動電極4の移動を制限する機能を有する。
【0052】
第1の付加部47は、マイナスZ方向から犠牲層36を介して、支持層に形成されているベース部2のうちの、上面視で第1の付加部47と重なる領域25と機械的に固定されている。
一方、可動電極4のうちの上面視で第2の付加部24と重なる領域45は、マイナスZ方向から犠牲層35を介して、支持層に形成された第2の付加部24と機械的に固定されている。第2の付加部24の図示右端は、第1の付加部47の図示左端よりもプラスY方向に延在する。
【0053】
このように構成したので、可動電極4に接続された第2の付加部24の一部は、ベース部2と機械的に固定されている第1の付加部47と上面視でJ部において重なる。第1の付加部47と第2の付加部24とは、静止状態(中立状態)においてZ方向に間隔gの隙間を有して対向する。間隔gは1~5μm程度であり、犠牲層の厚さに相当する。
なお、第1の付加部47のJ部には、第1の付加部47をZ方向に貫通する複数のエッチング用の孔H(リリースホール)が設けられている。リリースホールの数および形状は、図示した数および丸形状でなくてもよく、形状は楕円形状でも矩形状でもよい。
【0054】
可動電極4(領域45)がプラスZ方向に距離gだけ移動して、可動電極4に接続された第2の付加部24がJ部において第1の付加部47に当接すると、これ以上可動電極4(領域45)がプラスZ方向に移動しないので、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0055】
(第2ストッパー)
図6(a)および図6(c)において第2ストッパーは、支持層に形成されているベース部2のうちの破線で囲むK部および、活性層に形成されている可動電極4のうちの上記K部とZ方向に対向する領域46に対応しており、可動電極4がマイナスZ方向に大きく移動しようとする場合に可動電極4の移動を制限する機能を有する。
【0056】
ベース部2のうちの領域26は、可動電極4の上記領域46の図示右端よりもマイナスY方向に延在する。さらに、活性層に形成されている可動電極4の領域46は、ベース部2の上記領域26の図示左端よりもプラスY方向に延在する。
このように構成したので、可動電極4の領域46は、ベース部2の領域26と上面視でK部において重なる。可動電極4(領域46)とベース部2(領域26)とは、静止状態(中立状態)においてZ方向に間隔gの隙間を有して対向する。間隔gは上述したように犠牲層の厚さに相当する。
なお、活性層の領域46には、活性層をZ方向に貫通する複数のエッチング用の孔H(リリースホール)が設けられている。リリースホールの数および形状は、図示した数および丸形状でなくてもよく、形状は楕円形状でも矩形状でもよい。
【0057】
可動電極4(領域46)がマイナスZ方向に距離gだけ移動して、K部において可動電極4が支持層26に当接すると、これ以上可動電極4(領域46)がマイナスZ方向に移動しないので、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0058】
上述した第1ストッパーと第2ストッパーは、可動電極4の重心Oを通るY軸と平行な直線P4に対して、略等距離の位置に設けられる。すなわち、説明した線A-Aおよび線B-Bは、振動発電素子1Aにおいて直線P4と平行、かつ、直線P4から等距離である。
【0059】
また、変形例において説明した第1ストッパーおよび第2ストッパーと同様のストッパーは、可動電極4の重心Oに対して、破線Q2内に示した位置と点対称の関係を有する破線Q2A内に示す位置にも設けられる。つまり、上述した第1ストッパーは、可動電極4の重心Oを通る直線P5上の上下2か所に配置されるとともに、上述した第2ストッパーは、可動電極4の重心Oを通る直線P6上の上下2か所にも配置される。
振動発電素子1Aの製造方法は、振動発電素子1の製造方法と同様である。そのため、振動発電素子1Aの製造方法についての説明は省略する。
【0060】
以上説明した変形例によれば、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
(1)振動発電素子1Aは、ベース部2に固定されている固定電極3と、固定電極3に対して移動可能な可動電極4と、一端がベース部2に接続されるとともに他端が可動電極4に接続され、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5と、可動電極4に固定され可動電極4が振動する振動平面(X-Y平面)と直交するZ方向に離れてベース部2に固定されている付加部47と対向する、第1部材として第1ストッパーを構成する付加部24、および、ベース部2に固定されZ方向に離れて可動電極4に固定されている付加部24と対向する、第2部材として第1ストッパーを構成する付加部47を備える。
このように構成したので、例えば可動電極4がプラスZ方向に大きく移動しようとする場合には、可動電極4に固定された付加部24がベース部2に固定された付加部47(J部)に当たって可動電極4の移動を制限する。これにより、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0061】
(2)上記(1)の振動発電素子1Aは、ベース部2から延在しZ方向に離れて可動電極4と対向する、第2部材として第2ストッパーを構成するベース部2の領域26を備える。このように構成したので、例えば可動電極4がマイナスZ方向に大きく移動しようとする場合には、ベース部2から延在する領域26(K部)が、可動電極4の領域46に当たって可動電極4の移動を制限する。これにより、可動電極4を弾性的に支持する弾性支持部5に想定外の大きな力が加わることが防止される。
【0062】
(3)上記(1)の振動発電素子1Aにおいて、第1部材としての付加部24および第2部材としての付加部47がJ部においてZ方向に離れて対向するので、可動電極4が付加部24および付加部47間の間隔gよりも大きく移動することを防止できる。
【0063】
(4)上記(2)の振動発電素子1Aにおいて、第2部材としてのベース部2の領域26は、ベース部2から、振動平面(X-Y平面)と平行で可動電極4に近づくマイナスY方向に延在し、Z方向に離れて可動電極4と対向する。このように構成したので、可動電極4が可動電極4およびベース部2間の間隔gよりも大きく移動することを防止できる。
【0064】
(5)上記(2)の振動発電素子1Aにおいて、第1部材としての可動電極4の領域46は、可動電極4から、振動平面と平行でベース部2に近づくプラスY方向に延在し、ベース部2(領域26)と対向する。このように構成したので、可動電極4が可動電極4およびベース部2間の間隔gよりも大きく移動することを防止できる。
【0065】
以上で説明した実施形態においては、基板として、Siの支持層と、SiOの犠牲層と、Siの活性層とを有する基板(SOI基板)を用いるとしたが、基板はSOI基板に限られるものではない。基板は、活性層としての第1層と、犠牲層としての第2層と、支持層としての第3層とが積層され、第2層の耐エッチング特性が、第1層および第3層の耐エッチング特性と異なる基板であれば良い。このうち、第2層または第3層は、絶縁性の材料からなる層であっても良い。
一例として、基板は、サファイヤの第3層の上に、SiOの第2層、およびSiの第1層が形成されたものであっても良い。他の例として、金属の第3層の上に、酸化金属の第2層、および金属の第1層が形成されたものであっても良い。
【0066】
また、上述したエッチングプロセスで使用するガス等は、一例であって、他のガスを使用しても良い。
【0067】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。実施形態における種々の部分の数および形状等は例示であって、他の任意の数および任意の形状でも良い。
また、各実施形態および変形例は、それぞれ単独で適用しても良いし、組み合わせて用いても良い。
さらに、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1,1A…振動発電素子、2…ベース部、3…固定電極、4…可動電極、5…弾性支持部,6a,6b…固定部、20,21,25,26,43,44,45,46,F,G1,G2,J,K…領域、23,24,47…付加部、32,33,34,35,36…犠牲層
図1
図2
図3
図4
図5
図6