(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】免疫固定法において抗血清を載置するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231013BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/531 B
(21)【出願番号】P 2020502708
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 US2018042014
(87)【国際公開番号】W WO2019018222
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591006911
【氏名又は名称】ヘレナ ラボラトリーズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス マシュー シモンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー アレン スペンサー
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ デイビッド ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ガストン アンドレス デル ピーノ
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-037445(JP,A)
【文献】特開平05-087765(JP,A)
【文献】実開昭50-130993(JP,U)
【文献】米国特許第06555392(US,B1)
【文献】特表2008-542715(JP,A)
【文献】特表2015-518169(JP,A)
【文献】特表2012-525592(JP,A)
【文献】特表2003-518244(JP,A)
【文献】米国特許第05882930(US,A)
【文献】特開昭49-075170(JP,A)
【文献】特開2000-329741(JP,A)
【文献】A. MYRON JOHNSON,Immunofixation Following Electrophoresis or Isoelectric Focusing for Identification and Phenotyping of Proteins,ANNALS OF CLINICAL AND LABORATORY SCIENCE,1978年,Vol. 8, No. 3,pp. 195-200
【文献】A. Myron Johnson,lmmunofixation Electrophoresis and Electrofocusing,CLIN. CHEM,1982年,Vol. 28, No. 8,pp. 1797-1800
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
G01N 27/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者試料中の少なくとも1つの抗体を検出するための方法であって、前記患者試料は基材上の第1の患者試料試験領域の中に配置され、前記基材は少なくとも第1の患者試料試験領域及び隣接する第2の患者試料試験領域を有し、前記方法は、前記第1の患者試料試験領域中に前記抗体が存在する場合、前記第1の患者試料試験領域に接触させて、前記少なくとも1つの抗体と反応するために、少なくとも1つの抗血清を少なくとも前記第1の患者試料試験領域の中の前記少なくとも1つの抗体に載置することを含み、
前記第1の患者試料試験領域は、前記患者試料の移動を制限するような非液体の物理的境界を含まず、前記少なくとも1つの抗血清を、前記基材の前記第1の患者試料試験領域の上の延長した抗血清ビードとして第1の方向に載置し、前記抗血清ビードは、表面張力によって前記基材上に保持されて、前記第1の方向を横切る方向への前記抗血清の移動を回避することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記抗血清ビードが、前記第2の隣接する患者試験領域への前記抗血清の移動を回避するために、表面張力によって前記基材上に保持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の患者試料試験領域は、前記患者試料の移動を制限するような非液体の物理的境界を含まず、延長されたビードとして前記少なくとも1つの抗血清を前記基材上の前記第2の患者試料試験領域に載置し、前記抗血清のビードは、前記第1の患者試料試験領域への前記抗血清の移動を回避するように、表面張力によって前記基材に保持されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの抗血清が、前記第1の方向とは反対の第2の方向の、前記第2の患者試料試験領域上に延長したビードとして載置される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの抗血清が、前記第1の患者試料試験領域上の第1の延長したビード及び前記第2の患者試料試験領域上の第2の延長したビード、の2つの延長したビードとして載置される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
第2の患者試料試験領域上に延長したビードとして載置した前記抗血清が、前記第1の患者試料試験領域上に延長したビードとして載置した前記抗血清とは異なる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
複数の延長したビードが、順次載置される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの患者試料が、前記少なくとも1つの抗血清を第1の方向に延長したビードとして載置させる前に、前記第1の患者試料試験領域上に載置され、
前記少なくとも一つの抗血清を第1の方向に延長したビードとして載置させる前に、前記少なくとも1つの患者試料を電気泳動させる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記延長したビードが、前記第1の方向に対して直角方向に測定された第1の患者試験試料の幅よりも大きい幅を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
延長したビードとして載置される抗血清の体積が、(a)抗血清を載置する移動速度、
(b)前記抗血清の流速及び(c)延長したビードとして載置される抗血清の断面積、のうちの少なくとも1つによって制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1の延長した方向に対して直角方向に測定された前記延長したビードの幅が、約0.432cmである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1の延長した方向に対して直角方向に測定された前記延長したビードの幅が、前記基材から測定された前記抗血清の高さよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
抗血清を基材上に延長したビードとして載置するための、請求項1に記載の方法による装置であって、プローブ(26)をさらに含み、
前記プローブは、少なくとも1つの患者試料を得るための開口端と、プローブ上にスリーブ(38)を有し、
前記スリーブは、前記プローブの前記開口端の断面積よりも大きな断面積を有する開口端を有し、
前記プローブと前記スリーブは、それにより延長したビードとして前記抗血清を載置するものであり、
前記スリーブの前記開口端の断面積は、前記延長したビードの幅を制御するものである
、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気泳動の分野に関する。電気泳動は、支持媒体上又は支持媒体内に配置されれ、その後電場中に置かれる帯電した分子の動きである。荷電分子は支持媒体を通って、又は沿って、そして電場を横切って、様々なサイズの分子が、少なくとも一部分においては、それらのそれぞれのサイズに依存するように分離することにより、移動する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動は様々な生物学的分子についての分析情報を提供するために使用される。これは、例えば血液タンパク質、DNA、RNA、免疫グロブリン、ヘモグロビン、コレステロール、リポタンパク質、アイソザイム及び脳脊髄液タンパク質(CSF)といった種々の試料の分析のために、医学研究所によって広く使用される。これらの試料は、典型的には電荷を有する大きな分子又は成分を含む。電気泳動は電場中に置かれた時に帯電した分子又は成分が動くことを可能とする。電気泳動の間、試験、分析又は評価される試料は、電源に接続された支持媒体上又は支持媒体内に配置される。ゲルのような支持媒体は、帯電した分子がその中を電場を横切って移動する、固体又は半固体の多孔質層又は格子を提供する。緩衝溶液は典型的には試料及び支持媒体を浸漬し、pH水準を維持するために使用される。支持媒体は典型的には、ゲル物質で処理されたバッキング層からなる。
【0003】
電気泳動システムは、正極と負極を含み、これらは電気回路内に配置され、電極間に電気泳動場を生成する。帯電した分子は反対の電荷を持つ電極に向かう分子の電荷の引力に基づいて、ゲルの多孔質構造内の電気泳動場の影響の下で流れる。帯電した分子は、分子の電荷の引力に基づいて、ゲルの多孔質構造内の電気泳動場の影響の下で、反対の電荷を持つ電極に向かって流れる。
【0004】
電気泳動システムの非限定的な例において、試料は、ウェルなどの1つ以上の試料領域に配置される。該試料領域は、2つの電極の中間又は一方の電極の近く、例えば、電極の中間または負極つまりカソードの近くに配置され得る。「中間」という用語は、二つの電極間における、地理的中間を指すことを意図しない。電場がかけられると、帯電した分子又は成分は、反対に帯電した電極への引力に基づいて、電場を横切って移動する。各分子又は成分が電場を横切って移動する距離は、成分又は分子の、それぞれのまたは相対的なサイズ又は質量などの因子に依存する。したがって、分離された成分又は分子は、支持媒体上に一連のバンドを形成し、そのバンドは媒体の一方の端部から他方の端部まで延在し得る。バンドの観察は、種々の乾燥及び/又は染色技術及び/又は緩衝溶液の洗浄又は除去によって補助され得る。各バンドは典型的には特定のサイズを有する分子又は成分の量を表し、このような分子又は成分の濃度に依存して、他のバンドとは多かれ少なかれ区別され得る。この手順は、タンパク質タンパク分画分離と呼ばれることがある。バンドはさらに、濃度測定及び/又は他の手法などの様々な手法によって検査、分析及び評価されてもよい。
【0005】
免疫固定法、すなわちIFEは、ヒト血清、尿素又はCSFのなどの中にある特定のタンパク質の存在を検出するための周知の二段階の手順である。この手順は、第1のステップとして、一般的に上述のような電気泳動法によるタンパク質分画の分析を含む。第2のステップとして、タンパク質中の可溶性抗原をその抗体(抗血清)と反応させる。合成された抗原抗体複合体は、反応物の割合、温度、塩分濃度及びpHに依存する速度で沈殿する。抗原抗体複合体はこうして染色により可視化される。
【0006】
前段落で、一般的な用語で言及したIFEプロセスは、1993年2月9日に登録され、アメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationに譲渡された、米国特許第5,185,066号により詳細に記載されており、参照により本明細書にその全体が組み込まれるものとする。IFEを実施するための装置及び化学薬品は、前述の特許の譲受人であるアメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationによってしばらくの間市販されている。アメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationによって市販されているこのような装置の非限定的な例には、SPIFE TOUCH及びSPIF4000が含まれる。オペレーターズマニュアル(それぞれ、2016年11月のD6500140C及び2017年7月のD6500141B)が、www.Helena.comのオンラインでアメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationから公開されており、参照により本明細書にその全体が組み込まれるものとする。
【0007】
典型的には、患者の診断、患者のモニタリング及び患者の評価のためにタンパク質を評価するためのIFEの使用において、一人の患者からの検体が希釈され、単一の電気泳動のゲルプレート上の複数の試料領域又はアプライ領域に配置される。複数の試料領域を利用する目的は、総血清タンパク質、及び、免疫グロブリンの重鎖IgG、IgM、IgA及び軽鎖κ、軽鎖λのような種々のタンパク質やその他のタンパク質といった、医学的診断においてその有無が重要であるタンパク質の別々の検出を可能にすることである。
【0008】
従来、個別の複数のチャネル又はスロットを有するテンプレートを、好ましくは電気泳動工程の後に、ゲルプレートに配置していた。次いで、種々の抗血清、典型的には、IgG、IgM、IgA、κ及びλタンパク質に対する抗血清をテンプレートの中のそれぞれのスロット又はチャネルの中に配置していた。特定のタンパク質が電気泳動する試料の中に存在した場合、タンパク質(抗体)は、抗血清と反応して、それぞれのチャネル内で抗体抗血清沈殿反応を引き起こす。
【0009】
ゲルと接触したテンプレートは、各血清をその意図されたチャネル又はスロットに保持し、一つのチャネル又はスロットから隣接するチャネル又はスロットへの抗血清の好ましくない移動を防止する。このように、テンプレートの使用はIFE処理において一般的であり、かつ望ましいものであった。
【発明の概要】
【0010】
それゆえに過剰な抗血清、すなわち、抗血清抗体反応が起こるのに必要な実際の量よりも多い抗血清でテンプレート中のチャネル又はスロットを満たすことが一般的であった。このことはコストを増加させていた。さらに、テンプレートが使い捨てである場合、各IFE試験のコストを増加させていた。テンプレートが再利用可能である場合は、連続する試験の間には、装置、システム又は機器を洗浄することに加えて再利用可能なテンプレートを洗浄する必要があるため、洗浄のコスト及び労力を増加させていた。
【0011】
従って、テンプレートを必要とせずに、テンプレートの利益を享受できるシステム、方法及び装置が必要とされた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一つの態様によれば、IFE手順において電気泳動ゲル上に抗血清をアプライするための本発明のシステム、方法及び装置は、従来のテンプレートを必要としない。このシステム、方法及び装置はまた、ゲル上の所望の場所に所望の試薬をアプライする、他の電気泳動環境においても使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、単に例として説明される。
【
図1】
図1は、試薬のビード(bead)が形成される前の電気泳動プレート又は基材に近接したピペット又はプローブの図である。
【
図2】
図2は、試薬のビードをアプライするためのピペット又はプローブの使用の説明図である。
【
図3】
図3は、プレート上への試薬の配置の開始を示す電気泳動プレートの一部の概略図である。
【
図4】
図4は、プレート上への試薬の配置を示す電気泳動プレートの概略図である。
【
図5】
図5は、ピペット又はプローブの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照すると、電気泳動プレート10は、
図1、
図2及び
図3に概略的に示されており、Mylar
(R)(Dupon社のポリエチレンテレフタラートの登録商標)といったプラスチックフィルム又はシート12などの裏材又は基材を含む。このシートはアメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationによって製造販売されているSPIFFE TOUCHのような、電位泳動装置のピンと位置合わせするための一連の開口部14を含む。非限定的な例として、プレート10はゲルの両端に、拡大されたエンドキャップ18、20を有するアガロースゲルのような電気泳動ゲル16を含んでもよい。拡大されたエンドキャップもまた、アガロース材料から形成され、電気泳動工程において、十分な流動性を維持するために提供される。
【0015】
単に説明の目的のために、非限定的な意味で、図面は9人の患者の試料を同時に試験するためにシステムがどのように使用され得るかを示す。さらに、説明の目的のために、そして非限定的な意味で、免疫固定反応の「結果」はあたかも試験が完了したかのように例示される。従って、22a、22b・・・22iとして示される9人の患者のためのテスト領域22は
図4の3×3の配列で示されている。試験領域22a、22b及び22cは、第1の列(ゲルエンドキャップ18からゲルエンドキャップ20の方向に見て)に配置され、第1の列の右側の第2の列は試験領域22d、22e及び22fを有し、第3の列は第2の列の右側に位置する。ここで再度、試験領域の数及び位置及び配置は、単に非限定的な例示及び説明の目的のためのものであることをことわっておく。
【0016】
さらに、各患者試験領域について、SPx、G、A、M、K、及びλとして特定される6つのチャネル又はレーンがあり、それぞれ、総血清タンパク質、IgG、IgM、IgA、κ及びλを測定するためのチャネルを意味する。SPに続く下付き文字の“x”(
図3に見られるようなもの)は、この非限定的な例示において、9人の患者のための試験領域が存在するため、1から9の範囲となっている。下付き文字は、様々な患者を識別し、区別するのを助けるために使用される。
【0017】
患者試料を電気泳動プレート上に、好ましくはそれぞれの患者のための6つのチャネルの端部の中間に、載置するための手段が提供される。したがって、理解され得るように、各患者について6つの試料又はアリコートが電気泳動プレート上に載置され、9人の患者の試料を同時に評価する場合には、54のアリコートが載置される。
【0018】
非限定的な例として、患者試料は、最初に試験管に収集されてもよい。次いで、試料は、例えば、実験室において試験管から取り出され、そして電気泳動システムに関連する容器又は試料カップに入れられる。その後、本明細書の一部として援用する、2003年4月8日に登録され、アメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationに譲渡された米国特許第6,544,395号に示されている種類のアプリケーターを使用して、試料を試料容器から電気泳動プレート上に移す。
【0019】
代わりに、ピペット又はプローブを使用して、患者試料を容器から取り出し、患者試料を電気泳動プレート上に置いてもよい。さらなる代わりとして、ピペット又はプローブを使用して、試験管から患者試料を取り出し、試料を電気泳動プレート上に直接アプライしてもよい。ピペット又はプローブの使用における他のバリエーションは、当業者に明らかである。
【0020】
図を参照すると、ピペット又はプローブ26が図示されている。ピペット又はプローブは、従来より、試験管などから患者試料を抜き取るために使用されている。IFE試験が行われる場合、プローブは、第1の患者からの6つの試料を、第1の試験領域22a上の適切な6つのチャネル又はレーンにアプライする。プローブは洗浄され、次に異なる試験管から試料を取り出し、第2の患者のための6つの試料を試験領域22bにアプライする。このプロセスは、電気泳動プレート上の試験領域22の数に基づいて繰り返される。代わりに、例えば各患者に1つのピペット又はプローブを使用する、といったように、複数のピペット又はプローブが同時に使用され得る。
【0021】
電気泳動工程が完了した後、ピペット又はプローブは次いで、プレート上に抗血清又は試薬をアプライするのに使用される。試薬はビード28として形成され、好ましくは、一方のゲルエンドキャップ18に隣接する、電気泳動プレートの一方の端部30で始まり、他方のゲルエンドキャップ20に隣接する電気泳動プレートの反対側の端部32で終わる、プレート10の長さに沿ってアプライされる。
【0022】
前の段落に基づく非限定的な例示として、ビード28はプローブ26を矢印34の方向に、一方の端部30から他方の端部32までの移動によってアプライされ、ビード28は細長く引き伸ばされたストリップとして現れる。
【0023】
図4では、ビード28が3つの試験領域22a、22b、22cに対してSPチャネル上にアプライされるように示されている。次に、プローブを垂直に持ち上げるなどして、プローブをプレート10との接触から外す。次に、プローブは矢印34の方向に垂直な方向、すなわち、ビード28のアプライ方向に垂直な方向に移動される。次に、プローブを垂直に下げることなどしてプローブをプレートと接触させるように移動させ、プレートの端部30と32との間でプローブを移動させることなどによって、次の3つの試験領域22d、22e、及び22fのSP領域上に第2のビードをアプライする。当業者は第2のビードのアプライのために、プローブは、端部30まで移動させ、次に、第2のビードをアプライするために下降させてプレートと接触させることができるが、端部32から端部30のようにプローブの移動の方向を逆にすることが有利であり得ることを理解する。
【0024】
次に、3列の患者試験領域、すなわち、3×3の配列の患者試験試料がある
図4に示す非限定的な例について、上述した手順を繰り返す。
図4に示す実施形態では9つの患者試験領域があり、プローブ又はピペットはSP領域にビード(試薬)をアプライするだけのためにプレートを3回横切る。
【0025】
次に、プローブを洗浄し、清潔にする。試験領域の次のチャネル又はレーン又は領域のための試薬は、別個のビードとしてアプライされる。図示の非限定的な例では次のチャネル又は領域がIgGに対する抗血清を受容し、これはプレートの端部30と32との間のプローブの移動によって、試験領域22a、22b、及び22cにアプライされる。これは、次の列であるテスト領域22d、22e、22fに対しても、さらに第3の列であるテスト領域22g、22h、22iに対しても繰り返される。再度、3つのビードがアプライされる。次いで、プローブを洗浄し、清潔にし、さらに別の、IgMの抗血清であることがあるビードをアプライし、これも試験領域の各列につき1つずつ3回繰り返す。
【0026】
次いで、IgA、κ及びλの抗血清の試験領域についても上記の手順が繰り返される。IFE試験の図示されている非限定的な例において、6つのビードすなわち載置された試薬が各試験領域22に必要とされ、各チャネルに1つの試薬が必要とされ、6つの試薬は抗原抗体反応によって検出されるように、患者試料中の抗体と反応するように相互作用する。患者あたりに6つのチャネルがあり、したがって、各患者には6つのビードが必要とされ、各チャネルには1つのビードが必要とされる。さらに、患者試験領域の配列は3×3として示されているので、各試験領域は6つのチャネルを含む。したがって、矢印34に直角方向の非限定的な例においては、18個のチャネル、すなわち、患者試験領域の第1の列のための6つのチャネル、患者試験領域の第2の列のための6つのチャネル、及び試験領域の第3の列のための6つのチャネルがある。
【0027】
したがって、図示され記載されているが非限定的な例では、18個のビード、すなわち、SPの抗血清の3つのビード、IgGに対する抗血清の3つのビード、IgMに対する抗血清の3つのビードを載置することができる。各ビードは、プレートの端部30と端部32との間に延在する。
【0028】
また、複数のプローブを同時に使用することも考えられる。非限定的な例として、3つのプローブが使用される場合、すべての3つのプローブは、試験領域22a、22b及び22cのために1つ、試験領域22d、22e及び22fのために第2のプローブ、そして試験領域22g、22h及び22iのために第3のプローブ、というように同時にSPチャネルのための抗血清すなわち試薬を載置することがある。別の非限定的な例として、6つのプローブが使用される場合、プローブは異なるチャネルのための試薬、すなわち、SPチャネルのための試薬を有する1つのプローブ、IgGチャネルのための試薬を有する第2のプローブ、IgMチャネルのための試薬を有する第3のプローブ、などを有することがある。次いで、6つのプローブが端部30と32との間を移動しながら、プレート22a、22b及び22cの6つのチャネル上に試薬を同時に載置する場合があり、これは、試験領域22d、22e、22fの第2の列について、次いで試験領域22g、22h、22iの第3の列について繰り返される。
【0029】
患者試験領域の他のサイズ及び配列は、当業者の技術の範囲内である。電気泳動プレートは、患者についてリストされた6つ(SP、IgG、IgM、IgA、κ及びλ)より多いか又は少ないチャネル又はレーンを含み得る。電気泳動プレートは、単一の患者試験領域22を含むことがある。電気泳動プレートは、例えば22a、22bなどの1つ以上の試験領域を有する単一の列のみを含むことがあり、そして3つの試験領域に限定されない。電気泳動プレートは例えば、22a、22dなどの1つ以上の試験領域を有する単一の列のみを含むことがあり、そして3つの試験領域に限定されない。電気泳動プレート全体は患者試験領域の列を含むことがあり、3×3の配列に限定されない。
【0030】
標準的なIFE手順においては、抗血清をアプライし、染色が実行された後に、反応は可視化される。しかしながら、試験領域上への抗血清のビードのアプライの相対的位置を示すために、
図3はまた、種々の患者試験領域上の種々の列における典型的な可視反応を示すが、実際には、反応は、抗血清が載置される後までは起こらないことを理解されたい。
【0031】
ビードとして載置される試薬、すなわち抗血清の量又は体積は制御される。好ましくは、しかし非限定的な意味においては、体積は3つの技術のうちの少なくとも1つによって制御される。第1に、抗血清のアプライ方向におけるプローブの移動速度を調節及び制御することができる。例示的な実施形態では、アプライ方向はゲル30の一端からゲル32の他端への矢印34の方向である。第2に、試薬を供給するために使用されるポンプからピペット又はプローブに供給される試薬すなわち抗血清の流速を、調節及び制御することが出来る。第3に、ピペット又はプローブの開口部の断面積を必要に応じて、異なるサイズの開口部を有するプローブを使用することなどによって制御することができる。
【0032】
この最後の点に関して、プローブは、患者試料を覆う保護キャップに穴を開けるための鋭い先端すなわち端部を含むことが出来ることが分かるであろう。プローブはキャップに穴を開けた後、試料内に延び、その後のゲル上へ載置するために試料を引き出す。典型的には保護キャップに穴を開け、患者試料をアプライするプローブは、所望の量の抗血清をアプライするには断面積開口部が小さすぎる。従って、抗血清のビードのアプライの前に、スリーブ38をプローブの末端に固定してもよい。スリーブは、プローブに対して圧入されてもよく、保護キャップに穴を開けるため、及び/又は患者試料をアプライするために使用されるプローブの断面積よりも大きな径で、したがって大きい断面の開放下端を有することがある。従って、スリーブの内径は、プローブの外径よりも大きくてもよい。スリーブは、ゲルプレート上にアプライされるビードの直径を制限又は制御するのを助ける。スリーブの使用は載置する抗血清の量を制御するのを助けるために、必要に応じて選択できる。
【0033】
スリーブが利用されるかどうかに関わらず、載置した抗血清はプローブ/スリーブの移動の方向に対して横方向に広がることがあり、すなわち、抗血清は、矢印34の方向に対して横方向に広がることがある。一実施形態においては、アプライされる抗血清ビードは、矢印34の方向に対して垂直に約0.432cmの幅を有する。ゲルプレート上にアプライされる抗血清ビードの高さは、一般にその幅未満である。
【0034】
記載されるシステム、方法及び装置は、適切な抗体が試料中に存在する場合、隣接するチャネルの抗血清の間の分離を維持するためのテンプレートのような外部の物理的障壁の必要なしに、反応を提供するために十分に多量な種々の抗血清が、ゲルプレート上の間隔を空けられたレーン又はチャネル又は領域に載置することを可能にする。このシステム、方法及び装置は同じ感度を提供しながら、テンプレートで以前に使われていたよりも少ない抗血清を使用する。抗血清及び試薬の粘度はテンプレートで以前に使用されていたものと同じであってもよく、以前のシステムと比較した場合、より少ない抗血清が使われるので、少なくともある程度の表面張力が、隣接するチャネルへの望ましくない移動がないように適切な位置に抗血清ビードを維持するか、又は維持するのを助ける。
【0035】
適切なシリンジポンプは米国カリフォルニア州サンノゼのTecan Systemsから一般に公開されている、Operating Manual 30038165,Revision B,2012年3月に記載されているCavro Centrisポンプであり、その全体を本明細書に援用する。X、Y及びZ方向におけるプローブの移動は、それ自体、アメリカ合衆国テキサス州バーモントのHelena Laboratories Corporationの様々な製品に使用されているような伝統的なものである。
【0036】
本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更及び修正を行うことができる。本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。