(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置及びそのような装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2020503896
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2018070296
(87)【国際公開番号】W WO2019020749
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】タサル,オズグル
(72)【発明者】
【氏名】アドリアンセン,リーフェン
(72)【発明者】
【氏名】リプシュ,ヨープ
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-135718(JP,A)
【文献】国際公開第2011/104888(WO,A1)
【文献】特開昭63-063431(JP,A)
【文献】国際公開第2011/088621(WO,A1)
【文献】特表2003-507718(JP,A)
【文献】米国特許第06385821(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06- 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置であって、当該装置は、
前記肢を取り囲むように適合されたキャビティを含む中空の弾性スリーブであって、前記キャビティは、先端部と基端部との間で縦方向に延びており、且つ閉ループ状の横断面を有しており、前記中空の弾性スリーブは、該中空の弾性スリーブを変形させる外力が前記中空の弾性スリーブに加えられなくなると、前記中空の弾性スリーブがその弾性により回復する所定の形状を有し、前記中空の弾性スリーブとインターフェイス接続するテーパー形状
部を有する接続部を含む中空の弾性スリーブと、
第1及び第2のアームであって、各アームが、結合部とハンドル部との間の、前記アームの中間位置に位置するヒンジ部を含み、前記第1及び第2のアームの前記結合部は、前記基端部から前記中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションにそれぞれ結合されるように適合され、前記第1及び第2の縦方向セクションは、前記キャビティの断面を横切って延びるクランプ方向に沿って互いに正反対にある、第1及び第2のアームと、
前記中空の弾性スリーブの前記キャビティ内に配置され、且つ前記キャビティに内に取り囲まれた前記肢と相互作用するように構成される生理学的センサと、を有しており、
前記第1及び第2のアームが前記中空の弾性スリーブに結合されると、該中空の弾性スリーブは、前記第1及び第2のアームを保持し、且つ前記第1及び第2のアームの前記ヒンジ部を互いに係合させてヒンジ機構を形成し、前記第1及び第2のアームの前記ハンドル部に圧縮力を加えることにより、前記第1及び第2のアームは、前記ヒンジ機構を中心にして互いに対して回転し、前記先端部における前記キャビティの断面を拡大させ、それにより、前記先端部を通して前記肢を前記キャビティ内に受容可能にし、そして、前記圧縮力を止めることにより、前記中空の弾性スリーブの弾性によって、前記第1及び第2のアームを圧縮後とは反対方向に互いに対して回転させ、それにより、前記肢を前記キャビティ内に閉じ込め、
前記第1及び第2のアームの前記ヒンジ部は、前記テーパー形状
部を有する接続部に係合すると、
前記テーパー形状部に沿って互いに対してスライドするようにさらに構成され、それによって、前記クランプ方向に沿った前記第1及び第2のアームの間の分離を調整できる、
装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のアームの前記結合部は、前記中空の弾性スリーブの前記第1及び第2の縦方向セクションにそれぞれ解放可能に結合されるように適合される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中空の弾性スリーブの前記第1及び第2の縦方向セクションのそれぞれが、前記基端部に近接する開口部を含むレセプタクルを含み、該レセプタクルは、前記開口部を介して前記第1及び第2のアームのそれぞれの前記結合部を受容するように適合される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
中空の可撓性スリーブは、前記第1及び第2のアームの前記結合部にオーバーモールドされる、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のアームの前記ハンドル部にオーバーモールドされた可撓性部材をさらに含み、該可撓性部材は、前記基端部で前記中空の可撓性スリーブに接続される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記可撓性部材及び前記中空の可撓性スリーブは、単一の部品として一体的に形成される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記キャビティの断面は、中空の可撓性スリーブの前記第1及び第2の縦方向セクションとそれぞれ整列し、且つそれら第1及び第2の縦方向セクションの幅に及ぶ第1及び第2の部分と、前記第1の部分の各端部を前記第2の部分のそれぞれの端部に接続する2つの側壁部とを含み、該2つの側壁部のそれぞれは、前記中空の可撓性スリーブがその所定の形状にあるときに、少なくとも1回内側に屈曲する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記キャビティの断面は、前記クランプ方向に対して対称である、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
中空の可撓性スリーブは、前記生理学的センサの少なくとも一部を埋め込むように構成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
中空の可撓性スリーブは、前記クランプ方向と整列した前記キャビティの正反対のそれぞれの内面に第1及び第2の凹部をさらに含み、前記生理学的センサの少なくとも一部が、前記第1及び第2の凹部に設けられる、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記生理学的センサは、測定光信号を生成する光源と、前記肢との相互作用の後に前記測定光信号を検出する光検出器とを含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記光源は前記第1の凹部に設けられ、前記光検出器は前記第2の凹部に設けられる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記中空の弾性スリーブは、発泡体又はシリコーンを含む材料で作製される、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記中空の弾性スリーブは、前記キャビティ内の前記肢の受容可能な深さを制限するための阻止要素を含み、該阻止要素は、前記キャビティの断面を横切って、前記中空の弾性スリーブの前記基端部に近接して配置される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置を製造する製造方法であって、当該製造方法は、
前記肢を取り囲むように適合されたキャビティを含む中空の弾性スリーブを提供するステップであって、前記キャビティは、先端部と基端部との間で縦方向に延びており、且つ閉ループ状の断面を有しており、前記中空の弾性スリーブは、該中空の弾性スリーブを変形させる外力が前記中空の弾性スリーブに加えられなくなると、前記中空の弾性スリーブがその弾性により回復する所定の形状を有し、前記中空の弾性スリーブは、該中空の弾性スリーブとインターフェイス接続するテーパー形状
部を有する接続部を含む、提供するステップと、
前記基端部から、第1及び第2のアームそれぞれの結合部を、前記中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションに結合するステップであって、前記第1及び第2の縦方向セクションは、前記キャビティの断面を横切って延びるクランプ方向に沿って互いに正反対にあり、各アームは、ハンドル部と、前記結合部と前記ハンドル部との間の、前記アームの中間位置に位置するヒンジ部とをさらに含む、結合するステップと、
生理学的センサを前記中空の弾性スリーブの前記キャビティ内に配置するステップであって、前記生理学的センサは、前記キャビティ内に取り囲まれた前記肢と相互作用するように構成される、配置するステップと、を含み、
前記中空の弾性スリーブは、前記第1及び第2のアームを保持し、且つ前記第1及び第2のアームの前記ヒンジ部を互いに係合させてヒンジ機構を形成し、前記第1及び第2のアームの前記ハンドル部に圧縮力を加えることにより、前記第1及び第2のアームは、前記ヒンジ機構を中心にして互いに対して回転し、前記先端部における前記キャビティの断面を拡大させ、それにより、前記先端部を通して前記肢をキャビティ内に受容可能にし、そして、前記圧縮力を止めることにより、前記中空の弾性スリーブの弾性によって、前記第1及び第2のアームを圧縮後とは反対方向に互いに対して回転させ、それにより、前記肢を前記キャビティに閉じ込め、
前記第1及び第2のアームの前記ヒンジ部は、前記テーパー形状
部を有する接続部に係合すると、
前記テーパー形状部に沿って互いに対してスライドするようにさらに構成され、それによって、前記クランプ方向に沿った前記第1及び第2のアームの間の分離を調整できる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の肢の生理学的パラメータを測定するための改良された装置に関し、この装置は、使用が容易であり、且つ異なるサイズの人間の四肢の生理学的パラメータを確実に測定するのを可能にする。本発明は、そのような装置を製造する製造方法にも関する。
【0002】
具体的には、本発明は、非侵襲的な方法で酸素飽和度を測定することに関し、特に、皮膚を照らし、且つ光吸収の変化を測定するパルスオキシメータの使用による人体の肢でのパルスオキシメトリによる酸素飽和度を測定することに関する。
【背景技術】
【0003】
パルスオキシメトリは、放射及び検出した光信号を使用して、非侵襲的な方法で血液の末梢毛細血管の酸素飽和度(SpO2)を評価する手法である。1980年代に臨床に導入されて以来、この技術は様々な臨床設定で標準的なケアになっている。
【0004】
パルスオキシメトリは、一般的に指先で測定される。これは、この位置において拍動性の光信号が非常に強く、身体部位にアクセスしやすいためである。しかしながら、体の他の位置(例えば、額、つま先、耳たぶ)も適している。典型的に、パルス・オキシメトリ・プローブは、いわゆる透過性ジオメトリ(transmission geometry)で動作しており、このジオメトリでは、赤色光信号及び赤外光信号が2つの発光ダイオード(LED)によって被検者の指に透過され、散乱光が指の反対側の光検出器(例えば、フォトダイオード等)によって検出される。血液量の心臓誘発性脈動は、検出した光強度の脈動として現れる。血中酸素飽和度は、赤及び赤外光強度のパルス振幅の比から導出され、ここで、この関係は、酸素結合ヘモグロビン及び酸素非結合ヘモグロビンの色の違いに起因する。正確な測定を行うには、周囲光が光検出器に到達しないようにプローブのアーキテクチャを設定する必要がある。
【0005】
LEDを使用する代わりに、1つ又は複数のファイバ、例えば1つ又は複数の光ファイバを介して光をプローブに送ることもできる。この場合に、光源はファイバの端部にあることが好ましい。3つ以上の波長、特に3波長、4波長、5波長、6波長、7波長、又は8波長を使用するパルスオキシメータも存在し得る。
【0006】
パルス・オキシメトリ・プローブを患者の指又はつま先に固定する一般的な方法は、いわゆる「クロス・ペグ(cloth peg)」機構(「フィンガークリップ」としても知られている)によるもので、この機構では、プローブは、測定を行うために指又はつま先にクランプするクリップ又は掴み用器具(tweezer)として形成される。ハンドルを圧縮することにより、クリップ形状のプローブが開き、指又はつま先をそのプローブの間に規定された空間内に受容させることができる。次に、ハンドルを放すと、指又はつま先へのプローブの固定が自動的に行われる。他のタイプの取付け機構には、可撓性スリーブ(又は、グローブ)又は粘着性ラップの使用が含まれる。
【0007】
例えば、特許文献1は、人体の突出部の表面上の位置に検出及び測定センサ、特に酸素測定用の検出及び測定センサをロックするホルダースリーブを開示している。センサには、光源とその放射に敏感な受信機とが含まれる。スリーブは、弾性的に拡大可能であり、身体の突出部を完全に取り囲んでいる。スリーブの直径方向に対向する2つのセクションのそれぞれは、スリーブの内面に開口する凹部を有しているか、送信機又は受信機を受容して保持するために放射線透過性である。これらのセクションの間にあるスリーブの両方の部分は、スリーブの周囲で互いに続く複数の折り目を有しており、各折り目はばねを形成する。
【0008】
現在市販されているプローブは、サイズを考慮して大人の肢に適している。しかしながら、大人の肢用に設計されたプローブは、大人の肢に比べてかなり小さく、はるかに広範な様々なサイズ(特に0~60か月の月齢範囲)の幼児の肢にはあまり合わない。
【0009】
従って、既知のパルス・オキシメトリ・プローブの主な欠点には、大人の肢と比較して、異なる年齢層の幼児の様々なサイズの肢に合っていないという問題がある。前述した「クロス・ペグ」又は可撓性スリーブ機構を使用するプローブは、ごく一部の幼児にしか適しておらず、訓練を受けていない関係者が不適切な配置をし易いという場合がある。例えば、指又はつま先のサイズが小さい場合に、パルスオキシメータの光源及び光検出器に対する指又はつま先の位置合せのばらつき(つまり、不正確な配置)が生じ易く、SpO2値が不正確になる。さらに悪いことに、幼児の指又はつま先が小さ過ぎる場合に、臨床医は、代わりにプローブを幼児の耳、手のひら、又は足に取り付けようとする場合があり、これは不正確な測定につながり、誤った診断及び治療につながる可能性がある。
【0010】
前述した特許文献1に記載されるスリーブ機構は、多様な肢のサイズに可能になるが、そのような機構には、患者の肢への配置を片手だけで行うことができないという欠点がある。さらに、介護者は、測定中に肢を保持する傾向があり、これは信号の動きアーチファクト不正確な読取りにつながる可能性がある。
【0011】
このため、特定の年齢層の幼児には、特定のテーラードサイズのプローブを使用する必要がある。その点で、プローブの快適さだけでなく、適切な品質及び安定性の堅牢な信号(例えば、測定信号)の生成も保証する等、サイズによって特徴付けられる幼児用の様々なパルス・オキシメトリ・プローブが現在市場に出回っている。しかしながら、特に非常に低リソースの設定や医療従事者の医療訓練が限られている場合等、医療従事者が幼児の年齢に応じて異なるサイズのプローブを使用する必要がある解決策は、理想からはほど遠いものである。
【0012】
従って、本発明の目的は、使用が容易で設置後の正確な測定を可能にしながら、異なる年齢層の人間、特に0~60ヶ月の年齢層の幼児に適した、人間の肢の生理学的パラメータを測定するための改良された装置を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【0014】
この目的は、請求項1の人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置、及び請求項15の人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置を製造する方法によって解決される。
【0015】
有利な実施形態は、従属請求項に規定されている。特許請求の範囲に記載された方法は、特許請求の範囲に記載された装置と従属請求項で規定されたものと同様及び/又は同一の好ましい実施形態を有することを理解されたい。
【0016】
本発明の一態様は、例えば指又はつま先等の人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置に関し、この装置は、肢を取り囲むように適合されたキャビティを含む中空の弾性スリーブを含み、キャビティは、先端部と基端部との間で縦方向に延びており、且つ閉ループ状の断面を有している。中空の弾性スリーブは、スリーブを変形させる外力がスリーブに加えられなくなると、その弾性によりスリーブが回復する所定の形状を有する。装置は、第1及び第2のアームをさらに含み、各アームが、結合部とハンドル部との間の、アームの中間位置に位置するヒンジ部を含む。第1及び第2のアームの結合部は、それぞれ、基端部から中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションに結合されるように適合され、第1及び第2の縦方向セクションは、キャビティの断面を横切って延びるクランプ方向に沿って互いに正反対にある。装置は、中空の弾性スリーブのキャビティ内に配置され、且つキャビティ内に取り囲まれた肢と相互作用するように構成された生理学的センサも含む。
【0017】
本発明によれば、第1及び第2のアームが中空の弾性スリーブに結合されると、中空の弾性スリーブは、第1及び第2のアームを保持し、且つ第1及び第2のアームのヒンジ部を互いに係合させてヒンジ機構を形成し、第1及び第2のアームのハンドル部に圧縮力を加えることにより、第1及び第2のアームは、ヒンジ機構を中心にして互いに対して回転し、先端部におけるキャビティの断面を拡大させ、それにより、先端部を通して肢をキャビティ内に受容可能にし、そして、圧縮力を止めることにより、中空の弾性スリーブの弾性によって、第1及び第2のアームを圧縮後とは反対方向に互いに対して回転させ、それにより、肢をキャビティ内に閉じ込める。さらに、第1及び第2のアームのヒンジ部は、互いに係合すると、互いに対してスライドするようにさらに構成され、それによって、クランプ方向に沿った第1及び第2のアームの間の分離を調整できる。
【0018】
本発明は、人間の肢の生理学的パラメータ、特に血液のSpO2を測定するための改善された装置を実現し、これは複数の代替設計で構築することができる。本発明は、SpO2の測定に限定されず、脈拍数、異常ヘモグロビン(dyshaemoglobin)画分(例えば、カルボキシヘモグロビン及びメトヘモグロビン)、心電図、脈拍到達時間及び血糖等の他の生理学的パラメータの測定にも適用できる。特に、本発明は、パルスオキシメータに統合してもよい。
【0019】
外力がない場合に、中空の弾性スリーブは、変形していない所定の形状のままである。そのような状態では、中空の弾性スリーブは、それ自体で第1及び第2のアームを互いに対して所定の空間的関係で保持し、第1及び第2のアームのヒンジ部を互いに係合させてヒンジ機構を形成することができる。
【0020】
2つのアームのヒンジ部の相互係合により形成されたヒンジ機構により、圧縮力が2つのアームのハンドル部に加えられたときに、一方のアームを他方のアームに対して回転させることが可能になる。圧縮力が中空の弾性スリーブのリセット力を超えると、2つのアームの結合部が互いに離れるように回転し、その先端部付近のキャビティの断面を拡大し、先端部からキャビティ内への肢の余裕を持った挿入(loose insertion)を容易にする。圧縮力を止めることにより、肢がキャビティに沿って所望の深さまで挿入されると、中空の弾性スリーブの弾性によって、2つのアームの結合部にリセット力が及ぼされ、それら2つのアームを互いに近づけ、その先端部付近のキャビティの断面を閉じて、挿入された肢を所定の位置に固定する。さらに、互いに係合しながら互いに対してスライド可能なヒンジ部を使用することにより、クランプ方向に沿った2つのアームの間隔を有利に変更することができ、キャビティの断面のサイズを調整して幼児の肢のサイズに一致させることが可能になる。
【0021】
機械的な観点から、中空の弾性スリーブと第1及び第2のアームのヒンジ部との配置は、「蛇の顎状(snake jaw)」ヒンジ、又は軸のないルーズヒンジとして機能し、2つのヒンジ部は、中空の弾性スリーブのおかげで緩く係合したままでありながら、互いに対してスライドできる。こうして、本発明の装置は、中空の弾性スリーブのキャビティの断面のサイズを、従来技術の既知の装置よりもはるかに広い年齢層(新生児から年長児)の幼児の肢に有利に調整することができ、この装置は、真に「1つの装置で全てのサイズに適合する」タイプの装置である。
【0022】
従って、本発明の装置の中空の弾性スリーブは、第1及び第2のアームを所定の位置に維持するために更なる支持要素を必要としない簡素な構造を得ることを可能にする。また、第1及び第2のアームのヒンジ部を互いに係合させてヒンジ機構を形成することにより、中空の弾性スリーブによって、軸及び/又は追加のガイド要素を使用する必要をなくし、第1及び第2のアームの互いに対する回転及びスライド運動を可能にする。
【0023】
第1及び第2のアームのヒンジ部を互いに係合させてヒンジ機構を形成するために、2つのアームの一方のヒンジ部は、2つのアームの他方のヒンジ部と部分的又は完全にオーバーラップ、クロス、交差、又はインターロックしてもよい。好ましくは、オーバーラップ、クロス、交差、又はインターロックは、本質的に、第1及び第2のアームがヒンジ機構を中心にして互いに対して回転する面内にある。
【0024】
いくつかの実施形態では、互いに係合している間に、第1及び第2のアームのヒンジ部は、クランプ方向に略平行な方向に沿って互いに対してスライドするように適合される。
【0025】
本発明の別の利点は、第1及び第2のアームのハンドル部が、片手だけを使用してキャビティの断面を拡大することを可能にし、これにより、片手で測定するために、中空の弾性スリーブを身体の肢に配置/取り付けることができることである。このようにして、本発明の装置は、肢が受容されるスリーブの開口部を拡大するために少なくとも両手が必要な既知のスリーブタイプのパルス・オキシメトリ・プローブの欠点を克服する。これの利点は、本発明の装置を使用することにより、介護者が測定中に肢を保持しようとしないため、測定の乱れが少なくなり、結果の信頼性がより高まることである。
【0026】
本発明の文脈において、クランプ方向という用語は、好ましくは、第1及び第2のアームの結合部が肢にクランプする方向を指し、肢は、外力がない状態で、中空の弾性スリーブのリセット力によりキャビティ内に挿入されている。従って、クランプ方向は、好ましくは、第1及び第2のアームがヒンジ機構を中心にして互いに対して回転する面に本質的に含まれる方向に対応する一方、同時にキャビティの縦方向の延長部に本質的に直交する方向(つまり、肢が受容される方向)に対応する。
【0027】
好ましくは、断面のサイズは、中空の弾性スリーブがその所定の形状にある(すなわち、外力を受けない)最小サイズから、ハンドル部に加えられる圧縮力の作用下で第1及び第2のアームが互いに対する最大回転角まで回転する最大サイズまで調整できる。最大回転角度は、第1及び第2のアームのハンドル部がちょうど互いに接触する角度であり得る。
【0028】
中空の弾性スリーブは、このスリーブがその所定の形状にあるとき、そのキャビティの断面のサイズが、装置が対象とする最年少の幼児の年齢層の肢のサイズ(すなわち、肢の断面のサイズ)よりも(僅かに)小さくなるように寸法決めされることが好ましい。このようにして、最小サイズの肢がキャビティ内に挿入された場合でも、中空の弾性スリーブの弾性によって肢に穏やかな力が加えられ、その肢をキャビティ内に閉じ込めて測定中にその肢を所定の位置に固定する。
【0029】
本発明の文脈において、中空の弾性スリーブのキャビティの断面は、好ましくは、直交断面、すなわち、キャビティが延びる縦方向に直交する平面でスライスをとるときのキャビティの形状を指す。また、本発明の文脈において、断面のサイズは、好ましくは、断面の直径、対角線、又は周囲、又は断面の周囲によって取り囲まれた領域を指す。
【0030】
キャビティの断面は閉じた形状である。これにより、サイズが大き過ぎるか、足全部、手全部、唇、耳等、装置が使用を意図していない装置に対して広過ぎる身体部分に装置を誤って取り付ける可能性がさらに減少する。
【0031】
好ましくは、キャビティの断面は、例えば円形又は楕円形等のリング形状であり、これは、シリンダー形状の身体部分の安全な受容を容易にするのに有利である。ただし、多角形を含む他の形状も同様に可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1及び第2のアームの結合部は、それぞれ、中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションに解放可能に結合されるように適合される。このようにして、装置は使用されるときに組み立てられ、その後洗浄及び保管のために分解され得る。第1及び第2のアームを中空の弾性スリーブから結合解除することにより、中空の弾性スリーブ等、通常は患者の皮膚と接触しているそれらパーツをより頻繁に滅菌したり、別々に高い引裂き及び摩耗を受けるそれらパーツを交換したりできる。
【0033】
そのような実施形態では、中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションのそれぞれが、好ましくは、基端部に近接する開口部を含むレセプタクルを含み、レセプタクルは、開口部を通して第1及び第2のアームのそれぞれの結合部を受容するように適合される。このようにして、装置をより迅速に組み立て及び分解することができる。さらに重要なことは、レセプタクルの位置が第1及び第2のアームの結合部を挿入すべき場所を決定するため、レセプタクルの位置は、介護者がクランプ方向の向きを知る基準として機能し、この基準に対する生理学的センサの位置を知るのに役立つ。
【0034】
これらの実施形態のいくつかでは、第1及び第2のアームの結合部は異なる形状であり、中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションのレセプタクルも異なる形状であり、各レセプタクルは対応する結合部と一致する形状を有する。これにより、2つのアームの一方を他方のアーム向けのレセプタクルに結合することができなくなる。これは、介護者に、第1及び第2のアームに対してキャビティ内に配置された生理学的センサの相対位置及び/又は向きを知らせる追加の案内を有利に提供する。
【0035】
あるいはまた、他のいくつかの実施形態では、中空の可撓性スリーブは、第1及び第2のアームの結合部にオーバーモールドされる。このようにして、アームは、中空の弾性スリーブにより確実に結合される。
【0036】
そのような他の実施形態では、装置は、好ましくは、第1及び第2のアームのハンドル部にオーバーモールドされた可撓性部材をさらに含み、可撓性部材は、基端部で中空の可撓性スリーブに接続される。可撓性部材は、引裂き及び摩耗に対してハンドル部を保護し、より快適な感触を提供する。さらに、可撓性部材は、2つのアームのハンドル部を作動させるときのグリップも向上させ、例えば、介護者の手から装置が滑り落ちるのを防止する。グリップをさらに高めるために、可撓性部材は、可撓性部材の外面上に広がる突起及び/又は溝を含み得る。
【0037】
より好ましくは、可撓性部材及び中空の可撓性スリーブは、単一の部品として一体的に形成される。これにより、装置の製造が容易になるだけでなく、ほこりや外部コンポーネントが装置内に侵入して、例えばヒンジ機構の動作を妨げることも回避される。
【0038】
いくつかの実施形態では、キャビティの断面は、中空の可撓性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションとそれぞれ整列し、且つそれら第1及び第2の縦方向セクションの幅に及び第1及び第2の部分と、第1の部分の各端部を第2の部分のそれぞれの端部に接続する2つの側壁部とを含み、2つの側壁部のそれぞれは、中空の可撓性スリーブがその所定の形状にあるときに、少なくとも1回内側に(すなわち、キャビティの内面から離れる方向に)屈曲する。蛇腹形状の側壁部は、有利には、キャビティ内に受容された肢と生理学的センサとの位置合せを改善する。キャビティ内に受容される肢のサイズが増大するにつれて、キャビティの断面が拡大し、側壁部が真っ直ぐになる(すなわち、屈曲部がより浅くなる)。反対に、キャビティ内に受容される肢のサイズが小さくなるにつれて、キャビティの断面が縮小し、側壁部が折り畳まれる(つまり、屈曲部がより深くなる)。蛇腹形状の側壁部が、肢によって占有されていないキャビティ内部の残りのスペースを占有する傾向があるため、生理学的センサに対する肢の誤った位置付けを回避する自己心出し機構が得られ、それにより、より信頼性の高いSpO2測定につながる。
【0039】
これらの実施形態では、キャビティの断面は、クランプ方向に関して対称であることが好ましい。
【0040】
中空の可撓性スリーブは、生理学的センサの少なくとも一部を埋め込むように構成され得る。生理学的センサを中空の可撓性スリーブの一体化部品とすることで、外部のセンサ学系に接続せずに使用できるコンパクトな装置が可能になり、簡単なSpO2測定が容易になる。
【0041】
いくつかの実施形態では、中空の可撓性スリーブは、クランプ方向と整列したキャビティの正反対のそれぞれの内面に第1及び第2の凹部をさらに含み、生理学的センサの少なくとも一部は、第1及び第2の凹部に設けられる。空間のより効果的な利用に加えて、これはまた、肢とセンサ光学系との間の相対位置の安定性を高め、SpO2測定がより正確になるようにする。
【0042】
これらの実施形態では、生理学的センサは、好ましくは、測定光信号を生成する光源と、肢との相互作用後に測定光信号を検出する光検出器とを含む。
【0043】
より好ましくは、光源は第1の凹部に設けられ、光検出器は第2の凹部に設けられる。これにより、光源によって生成された光信号が肢を透過することで肢と相互作用する透過性ジオメトリでのSpO2測定が可能になる。
【0044】
他の実施形態では、中空の可撓性スリーブは、クランプ方向と整列したキャビティの内面に凹部をさらに含み、生理学的センサの少なくとも一部が、この凹部に設けられる。これにより、センサの光源によって生成された光信号が肢の表面で反射されることにより肢と相互作用する反射性ジオメトリでのSpO2測定が可能になる。センサは、光源と同じキャビティの内側の肢の側面に位置する光検出器も含む。特に、光源及び光検出器は、好ましくは2~10mm、より好ましくは3~7mmの間隔で互いに分離している。光検出器に到達する光は、光が光検出器の方向に後方散乱されるように、肢の内部で有利に散乱され得る。
【0045】
中空の弾性スリーブは、オプションで、発泡体又はシリコーン(例えば、シリコーンゴム等)を含む材料で作製してもよい。これらの材料は、弾性、抵抗、耐久性等の非常に良好な機械的特性を提供し、本発明の装置に非常に適したものになる。同時に、これらの材料は医療用途にも優れた特性を提供する。例えば、それら材料は不活性であり、高温耐性を有し、そのような材料で作製された装置又はコンポーネントの滅菌を促進する。最後に、製造の観点から、それら材料は、安価で多用途であり、成形、押出、又は機械加工プロセスと互換性がある。
【0046】
これに対して、第1及び第2のアームは、好ましくは剛性又は半剛性材料、より好ましくはポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)、又はポリアミド(PA)等のプラスチック材料で作製される。さらに、オプションで、これらの材料に添加剤を添加して、その特性を高めることができる。
【0047】
オーバーモールド、つまり「2ショット」(又は2K)射出成形プロセスを使用して装置を製造する場合に、中空の弾性スリーブ及び2つのアームを形成する材料の選択によって適切な化学結合を有することになるのが重要である。好ましい実施形態では、中空の弾性スリーブはシリコーンを含む材料で作製され、第1及び第2のアームはABSを含む材料で作製される。別の好ましい実施形態では、中空の弾性スリーブは、熱可塑性エラストマーを含む材料で作製され、2つのアームはPPを含む材料で作製される。これら2つの実施形態の材料の特定の組合せは、互いに化学的に良好に結合する。
【0048】
中空の弾性スリーブは、好ましくは、キャビティ内の肢の受容可能な深さを制限するための阻止要素を含んでもよく、阻止要素は、キャビティの断面を横切って、中空の弾性スリーブの基端部に近接して配置される。これは、有利に、肢、例えば指が中空の弾性スリーブのキャビティの延長部全体を完全に通り抜けるのを防止することにより、例えば、ヒンジ機構による肢の閉じ込めのリスクを低減する。
【0049】
本発明の別の態様は、人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置を製造する製造方法に関する。この製造方法は、
肢を取り囲むように適合されたキャビティを含む中空の弾性スリーブを提供するステップであって、キャビティは、先端部と基端部との間で縦方向に延びており、且つ閉ループ状の断面を有しており、中空の弾性スリーブは、スリーブを変形させる外力がスリーブに加えられなくなると、その弾性によりスリーブが回復する所定の形状を有する、提供するステップと、
基端部から、第1及び第2のアームそれぞれの結合部を、中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションに結合するステップであって、第1及び第2の縦方向セクションは、キャビティの断面を横切って延びるクランプ方向に沿って互いに正反対にあり、各アームは、ハンドル部と、結合部とハンドル部との間のアームの中間位置に位置するヒンジ部とをさらに含む、結合するステップと、
生理学的センサを中空の弾性スリーブのキャビティ内に配置するステップであって、生理学的センサは、キャビティ内に取り囲まれた肢と相互作用するように構成される、配置するステップと、を含み、
中空のスリーブは、第1及び第2のアームを保持し、且つ第1及び第2のアームのヒンジ部に互いに係合させてヒンジ機構を形成し、第1及び第2のアームのハンドル部に圧縮力を加えることにより、第1及び第2のアームは、ヒンジ機構を中心にして互いに対して回転し、先端部におけるキャビティの断面を拡大させ、それにより、先端部を通して肢をキャビティ内に受容可能にし、そして、圧縮力を止めることにより、中空の弾性スリーブの弾性によって、第1及び第2のアームを圧縮後とは反対方向に互いに対して回転させ、それにより、肢をキャビティに閉じ込める。
【0050】
本発明によれば、第1及び第2のアームのヒンジ部は、互いに係合すると、互いに対してスライドするようにさらに構成され、それにより、クランプ方向に沿った第1及び第2のアームの間の分離を調整することができる。
【0051】
本発明の上記の全ての代替手段は、特に幼児の場合の、肢のサイズに依存しない正確なSpO2測定を可能にする。従って、本発明は、装置を患者に取り付ける、例えば指又はつま先に取り付けるように設計されたクリップを、SpO2測定に最適ではない別の身体部分に位置付けする際の装置の不十分な位置付けによって引き起こされる欠点を克服するか、少なくとも軽減する。キャビティに受容された後の装置に対する肢の位置付けは、既知の装置に比べて容易である。本発明はまた、生理学的センサに対する肢の位置合せを改善し、より信頼性の高いSpO2測定をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0052】
以下に、本発明のいくつかの好ましい実施形態を添付の図面を参照して説明する。それら実施形態は、例示のみを目的として提供されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【
図1】本発明の第1の実施形態による装置を(a)斜視図、(b)側面図、及び(c)分解側面図で示す。
【
図2】本発明の第2の実施形態による装置を(a)斜視図、及び(b)側面図で示す。
【
図3】本発明の第3の実施形態による装置を(a)斜視図、及び(b)側面図で示す。
【
図4a】
図2の装置が肢をクランプする動作の異なる時点を概略的に表す図である。
【
図4b】
図2の装置が肢をクランプする動作の異なる時点を概略的に表す図である。
【
図4c】
図2の装置が肢をクランプする動作の異なる時点を概略的に表す図である。
【
図5a】
図3の装置の中空の弾性スリーブのキャビティの断面が、異なるサイズの肢にどの様に適合するかを示す図である。
【
図5b】
図3の装置の中空の弾性スリーブのキャビティの断面が、異なるサイズの肢にどの様に適合するかを示す図である。
【
図5c】
図3の装置の中空の弾性スリーブのキャビティの断面が、異なるサイズの肢にどの様に適合するかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、中空の弾性スリーブのキャビティ内の肢の位置付けを改善する装置を提供することにより、上記の問題を解決する。
【0054】
図1a~
図1cは、本発明による人間の肢の生理学的パラメータを測定するための装置の第1の実施形態の様々な図を示している。特に、装置100は、患者の指等の肢を取り囲むように適合されたキャビティ102を含む中空の弾性スリーブ101を含む。キャビティ102は、先端部と基端部との間で縦方向に延びており、且つ閉ループ状の断面を有する。
【0055】
この例では、先端部は、
図1aの斜視図で正面(つまり、第1面)に現れるもの、又は
図1bの側面図で左に現れるものである。その先端部は、装置を操作する介護者又は医療施術者の位置に対して「先端」にある。これは、装置を保持しているときにその端部が介護者等から離れて位置しているためである。先端部は、同時に、患者に近い中空の弾性スリーブのキャビティ102の端部であり、そのキャビティ102を通して患者の肢が受容される。一方、基端部は、
図1では見えないが、装置を操作する介護者又は医療施術者の近くにあり、
図1aの斜視図の中空の弾性スリーブ101の後部に、又は
図1bの側面図のスリーブ101の右側に配置される。
【0056】
装置100は、第1及び第2のアーム103、104も含み、各アームは、結合部103a、104aとハンドル部103c、104cとの間の、アームの中間位置に位置するヒンジ部103b、104bを含む。これは、
図1cの分解側面図でより良く理解できる。第1及び第2のアームの結合部103a、104aは、それぞれ、基端部から中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションに解放可能に結合することができる。その目的のために、中空の弾性スリーブの第1及び第2の縦方向セクションは、基端部に近接した開口部を含むレセプタクル105、106を含む。このようにして、レセプタクルは、開口部を通して、第1及び第2のアームの結合部103a、104aをそれぞれ受容することができる。
【0057】
図1b及び
図1cを参照すると、第1の縦方向セクションはキャビティ102の上側にあり(こうして、レセプタクル105は中空の弾性スリーブ101の上側にあり)、第2の縦方向セクションはキャビティ102の下側にある(こうして、レセプタクル106はスリーブ101の下側にある)。従って、第1及び第2の縦方向セクションは、キャビティ102の断面を横切って延びるクランプ方向109(
図1b及び
図1cの垂直方向)に沿って互いに正反対にある。
【0058】
最後に、
図1の例では見えないが、装置100は、中空の弾性スリーブのキャビティ102内に配置され、且つキャビティ内に取り囲まれた肢と相互作用するように構成された生理学的センサも含む。もっとも、
図1b及び
図1cには、生理学的センサを外部の制御電子機器と相互接続する導電体を含むケーブル115が示されている。ケーブル115は、中空の弾性スリーブ101とインターフェイス接続するテーパー形状(例えば、円錐台)を有する接続部116を含む。
【0059】
中空の弾性スリーブ101は、シリコーンゴムで作製されており、スリーブを変形させる外力がスリーブに加えられなくなると、その弾性によりスリーブが回復する所定の形状を有しており、
図1aに確認されるように、キャビティ102の先端部の開口部は、断面、特に閉ループを規定するリング形状の直交断面を有する。断面の周囲は、ギリシャ文字「シグマ」(Σ)に似ており、上部及び下部のセグメントが同じギリシャ文字の鏡状のバージョンに接合されている。その結果、キャビティ102の断面は、クランプ方向109に関して対称であり、中空の可撓性スリーブがその所定の形状にあるときに、本質的に真っ直ぐな上部及び底部、並びに内側に一度屈曲する2つの側壁部を有する。
【0060】
第1及び第2のアームが中空の弾性スリーブ101に結合されると、中空の弾性スリーブは、第1及び第2のアーム103、104を保持し、且つ第1及び第2のアームのヒンジ部103b、104bを、この特定の例では接続部116を介して互いに係合させてヒンジ機構を形成する。このようにして、第1及び第2のアームのハンドル部103c、104cに圧縮力を加えることにより、第1及び第2のアーム103、104は、ヒンジ機構を中心にして互いに対して回転し、先端部におけるキャビティ102の断面を拡大させ、それにより、先端部を介して肢がキャビティ内に受容され、そして、圧縮力を止めることにより、中空の弾性スリーブ101の弾性によって、第1及び第2のアーム103、104を圧縮後とは反対方向に互いに対して回転させ、それにより、肢をキャビティに閉じ込める。さらに、第1及び第2のアームのヒンジ部103b、104bは、互いに係合すると、この例では接続部116のテーパー状のプロファイルによって互いに対してスライドするようにさらに構成されており、それによって、クランプ方向109に沿った第1のアーム103と第2のアーム104との間の間隔を調整することができる。
【0061】
ここで
図2a及び
図2bを参照すると、本発明による装置の第2の実施形態が示されている。
図1に示される前の例のように、装置200はまた、閉ループ状の断面を有するキャビティ202を含み、且つ先端部207と基端部208との間で縦方向に延びる中空の弾性スリーブ201を含む。装置200はまた、第1及び第2のアーム203、204を含み、各アームは、結合部203a、204aとハンドル部203c、204cとの間の、アームの中間位置に位置するヒンジ部203b、204bを含む。しかし、前の例とは逆に、中空の弾性スリーブ201は、ここでは第1及び第2のアーム203、204上でオーバーモールドされる。これは、キャビティが延びる縦方向とクランプ方向209(すなわち、
図2bの側面図の紙に平行な平面)によって規定される平面に沿ってスライスされた
図2の装置200の切抜き図を表す
図4により良く確認することができ、
図4において、中空の弾性スリーブ201は、両アームの結合部203a、204a及びハンドル部203c、204cの外面上に延びる。しかしながら、ハンドル部203c、204cの内面は、中空の弾性スリーブ201によって覆われておらず、露出したままである。こうして、装置200は、部分的にオーバーモールドされた解決策の例示的な実施形態である。
【0062】
図3a及び
図3bは、完全にオーバーモールドされた解決策の異なる図を示しており、これらの図において、装置300は、第1及び第2のアーム(図示せず)の結合部にオーバーモールドされた中空の弾性スリーブ301を含む。しかしながら、
図2の例とは逆に、装置300は、第1及び第2のアームのハンドル部にオーバーモールドされた可撓性部材311をさらに含む。
【0063】
中空の弾性スリーブ301は、肢を取り囲むように適合されたキャビティを含み、キャビティは、閉ループ状の断面を有しており、且つ先端部と基端部との間で縦方向に延びる。前の図のように、先端部は、
図3aの斜視図の第1面上、又は
図3bの側面図の左側に表示されるが、基端部は、
図3aの後部に及び
図3bの右側に向けてさらに遠くに表示される。実際に、基端部の位置は、
図3bに描かれた破線の周りになる。
【0064】
可撓性部材311は、中空の可撓性スリーブ301の基端部で中空の可撓性スリーブ301に接続される。この図では、この接続は破線で示されている。この例では、可撓性部材311及び中空の可撓性スリーブ301は単一の部品として一体的に形成されているが、他の例では、それら可撓性部材311及び中空の可撓性スリーブ301は、互いに接続された2つの別個の部品であり得る(例えば、可撓性部材311を中空の可撓性スリーブ301の基端部に圧入係合するによる)。
【0065】
本発明による装置の動作は、
図2の文脈で説明した装置200を参照して
図4に示されている。その点に関して、
図4a~
図4cは、第2のアーム204に対する第1のアーム203の位置と、スリーブのキャビティ内に肢を受容して測定中にその肢を所定の位置に固定するための装置200の動作の異なる時点で中空の弾性部材201が受ける変形とを示す。
【0066】
装置200は、中空の可撓性スリーブ201に埋め込まれた生理学的センサを含み、このセンサは、測定光信号を生成する光源210aと、肢との相互作用後の測定光信号を検出する光検出器210bとを含む。光源210aは、第1のアームの結合部203aの直下のキャビティ202の内面の第1の凹部に設けられる一方、光検出器210bは、第2のアームの結合部204aの直上の第2の凹部に設けられる。すなわち、光源210a及び光検出器210bは、キャビティの正反対の内面のそれぞれに凹部があり、内面はクランプ方向209に整列している。ケーブル215が、光源210a及び光検出器210bを外部の制御電子機器と相互接続する導電体を含む。
図1の文脈で説明した例のように、ケーブル215は、基端部208で中空の弾性スリーブ201とインターフェイス接続するテーパー状のプロファイルを有する接続部216も含む。
【0067】
図において、キャビティ202がその基端部208で閉じられていることが確認できる。実際に、ケーブル215の接続部216とのインターフェイスにおける中空の弾性スリーブ201の可撓性材料の一部が、同時に、キャビティ202内の肢の受容可能な深さを制限する阻止要素として作用し、肢がヒンジ機構に閉じ込められるのを防ぐ。
【0068】
ここで
図4aを参照すると、第1及び第2のアームのハンドル部203c、204cに圧縮力が加えられていないときの「初期状態」にある装置200が示されている。こうして、中空の弾性スリーブ201は、その所定の形状において、第1及び第2のアームの結合部203a、204aを互いに向けて接近するように付勢している。結果として、そのような初期状態では、クランプ方向209に沿った結合部203a、204aの間の分離は可能な限り小さくなり、従って、中空の弾性スリーブ201のキャビティ202の断面のサイズはその最小値になる。
【0069】
第1及び第2のアーム203、204が中空の弾性スリーブ201に結合されると、中空の弾性スリーブは、第1及び第2のアームを保持し、且つ第1及び第2のアームのヒンジ部203b、204bを互いに係合させて、ヒンジ機構を形成する。特に、各ヒンジ部は、それぞれのアームに接続されたベースを有するタブを含み、このタブは、アームの内面から丸みを帯びた形状の端部に向けて突出している。そのような初期状態にある間に、中空の弾性スリーブ201の弾性により、各アームのタブの丸みを帯びた端部が他方のアームの内面に押し付けられた状態を保つ。突出タブは、ケーブル215の接続部216がそれら2つのヒンジ部を通過することを可能にしつつ、2つのヒンジ部の相互係合を達成することを可能にする。
【0070】
図4bは、中空の弾性スリーブ201のリセット力を超える圧縮力が第1及び第2のアームのハンドル部203c、204cに加えられる状況を表し、この場合に、第1のアーム203及び第2のアーム204は、タブの丸みを帯びた端部のおかげで、ヒンジ機構を中心にして互いに対して回転する。この回転は、2つのアームの結合部203a、204aの間の分離を増大させ、その先端部207におけるキャビティ202の断面を拡大し、その先端部からキャビティ202内への肢(図示せず)の余裕を持った挿入を促進する。
【0071】
肢がキャビティに沿って所望の深さまで挿入されると、圧縮力を止めることにより、中空の弾性スリーブ201の弾性によって、2つのアームの結合部203a、204aにリセット力が及ぼされ、このリセット力は、それら結合部203a、204aを互いに近づける傾向がある。この場合も、ヒンジ部203b、204bのタブの丸みを帯びた端部により、アーム203、204の圧縮後とは反対方向になる相対回転が可能になる。これにより、その先端部207付近のキャビティ202の断面積が減少し、挿入された肢が所定の位置に固定される。
【0072】
本発明によれば、装置200は、幼児の肢のサイズに一致するようにキャビティ202の断面のサイズを調整することができる。これは、
図4cに示されるように、ヒンジ部をスライド可能に係合させることで可能になる。
【0073】
中空の弾性スリーブ201は、スリーブがその所定の形状にあるとき、そのキャビティ202の断面のサイズが肢のサイズより小さくなるように寸法決めされる。これは、圧縮力を止めたときに第1及び第2のアーム203、204が回転して初期状態に戻るので、ある時点で、それら第1及び第2のアーム203、204が肢と衝突することを意味する。その時点で、ヒンジ部203b、204bのタブは、クランプ方向209に略平行な方向に沿って互いに対してスライドを開始し、それによって、各アームのタブの丸みを帯びた端部はもはや他方のアームの内面に接触せず、2つのアームの間の分離を増大させ、そうすることにより、2つのアームの更なる回転によって挿入された肢に対してより平行な位置に到達し、こうして肢の皮膚上での光源210a及び光検出器210bのより良い接触を得ることができる。従って、
図4cは、肢が装置200に確実にクランプされ、SpO
2測定の準備ができている「最終状態」を示している。
【0074】
図5a~
図5cでは、
図3の装置の中空の弾性スリーブ301の断面が異なるサイズの肢にどの様に適合できるかを概略的に示している。
図5aは、座標軸系に関する装置300の斜視図を示している。中空の弾性スリーブ301及びケーブル315は、縦方向軸318に沿って向き合わせされ、それに沿ってスリーブ301内に含まれるキャビティが延びる。次に、キャビティの断面は、縦軸309(クランプ方向に対応する)と横軸317(
図5b及び5cの水平軸)によって規定される平面に含まれる。
【0075】
図5b及び
図5cは、中空の弾性スリーブ301のキャビティの先端部から見た装置300の正面図を提供し、垂直軸及び水平軸はそれぞれクランプ方向309及び横軸317に対応する。キャビティの断面は、クランプ方向309を中心とする第1の部分312及び第2の部分313と、第1の部分312の各端部を第2の部分のそれぞれの端部に接続する2つの側壁部314a、314bとを含む閉ループを規定する。第1及び第2の部分312、313は、装置300の第1及び第2のアームが結合される中空の可撓性スリーブ301の縦方向セクションと整列し、その縦方向セクションの幅に及ぶ。
【0076】
側壁部314a、314bは、少なくとも1回内側に屈曲する蛇行形状又は蛇腹形状であり、これにより、キャビティの断面を異なるサイズの肢に適合させることが可能になり、同時に、生理学的センサに対して肢を中心に合わせる。
図5bに示されるように、大きな肢319’の場合に、キャビティの断面は、肢が挿入されておらず、中空の弾性スリーブ301がその所定の形状にある状況に対して著しく拡大する必要がある。次に、装置の第1及び第2のアームがクランプ方向309に沿って分離されると、側壁部314a、314bが真っ直ぐになる(すなわち、横軸317に沿って屈曲部がより浅くなる)。他方、
図5cは、小さなサイズの肢319がキャビティ内に受容される場合を示しており、キャビティの断面は、前の場合ほど大きく拡大する必要はない。従って、第1の部分312及び第2の部分313がクランプ方向309に沿って互いに接近したままであるとき、側壁部314a、314bは、横軸317に沿ってより深い屈曲部を維持する。すなわち、蛇腹形状の側壁部314a、314bは、肢で占有されていないキャビティ内の残りのスペースを占有する傾向がある。
【0077】
本発明について、図面及び前述の詳細な説明において詳細に図示及び説明してきたが、そのような図示及び説明は、限定的ではなく、例示的又は例示的であるとみなすべきである。本発明は、開示した実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、明細書の開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求の範囲に記載された発明を実施する際に当業者によって理解及び達成され得る。
【0078】
請求項において、「備える、有する、含む(comprising)」という語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「1つの(a, an)」は複数を除外しない。単一の要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に列挙された、いくつかのアイテムの機能を果たす場合がある。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
【0079】
請求項中の参照符号は、範囲を限定するものと解釈すべきではない。