(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ポリオレフィン用の光開始剤
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20231013BHJP
C07C 49/317 20060101ALI20231013BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20231013BHJP
C08K 5/07 20060101ALI20231013BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20231013BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20231013BHJP
C08J 7/00 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
C08L23/00
C07C49/317
C08F10/00
C08K5/07
C08K5/10
C08K5/3492
C08J7/00 CES
C08J7/00 304
(21)【出願番号】P 2020543908
(86)(22)【出願日】2019-02-14
(86)【国際出願番号】 IL2019050177
(87)【国際公開番号】W WO2019159169
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】520306705
【氏名又は名称】エヌ3 コート リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520306716
【氏名又は名称】モビケム サイエンティフィック エンジニアリング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベレジン,オレグ
(72)【発明者】
【氏名】リズコフ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ゴレリク,ボリス
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519851(JP,A)
【文献】特表2006-522839(JP,A)
【文献】Zhendong Song et al.,Synthesis and Biological Evaluation of Benzophenone Derivatives as Potential HIV-1 Inhibitors,Medicinal Chemistry,2017年,Vol. 13, No.4,P.398-405
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C07C 49/317
C08F 10/00
C08K 5/07
C08K 5/10
C08K 5/3492
C08J 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリオレフィンを架橋する方法において使用するための光開始剤であって、一般式(I):
【化1】
(式中、
(i)R
1が、-O-(CH
2)
n-(C=O)-O-(CH
2)
m-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、0~3である)であり;
R
2が、-H、-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(CH
2)
n-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各nは、4~15の整数である)であり;且つ
R
3が、-H、-(CH
2)
n-CH
3、-O-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(C=O)-(CH
2)
m-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、4~15の整数である)である、
又は、
(ii)R
1が、-O-(CH
2)
n-CH
3(式中、nは、1~3である)又は-O-(CH
2)
n-(C=O)-O-(CH
2)
m-CH
3(式中、n及びmは、互いに独立して、0~3である)であり;
R
2が、-H、-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(CH
2)
n-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各nは、4~15の整数である)であり;且つ
R
3が、-H、-(CH
2)
n-CH
3、-O-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(C=O)-(CH
2)
m-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、4~15の整数である)である、
又は、
(iii)R
1が、-O-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(CH
2)
n-(C=O)-O-(CH
2)
m-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、0~3である)であり;
R
2が、-H、-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(CH
2)
n-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各nは、4~15の整数である)であり;且つ
R
3が、-H、-(CH
2)
n-CH
3、-O-(CH
2)
n-CH
3又は-O-(C=O)-(CH
2)
m-CH
3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、4~15の整数である)であり、ただし、R
1が-O-CH
3であるとき、R
2及びR
3の少なくとも1つはHとは異なる)
のアルコキシベンゾフェノンである、光開始剤。
【請求項2】
R
1が-O-CH
2-CH
3である、請求項1に記載の光開始剤。
【請求項3】
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3である、請求項1に記載の光開始剤。
【請求項4】
R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである、又は、
R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである、
請求項1に記載の光開始剤。
【請求項5】
式(I):
【化2】
の化合物であって、
-R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物
;
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;及び
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物
から選択される化合物。
【請求項6】
-R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又
は
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
7-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
9-CH
3であり、且つR
3がHである化合物;又は
-R
1が-O-CH
2-(C=O)-O-CH
2-CH
3であり、R
2が-O-(CH
2)
11-CH
3であり、且つR
3がHである化合物
である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
式(I):
【化3】
の化合物であって、
-R
1
が-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;及び
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物
から選択される化合物の、光開始剤として
の使用。
【請求項8】
式(I):
【化4】
の化合物であって、
-R
1
が-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
7
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
9
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物;及び
-R
1
が-O-CH
2
-(C=O)-O-CH
2
-CH
3
であり、R
2
が-O-(CH
2
)
11
-CH
3
であり、且つR
3
がHである化合物
から選択される化合物である光開始剤。
【請求項9】
少なくとも1つの請求項5に記載の化合物
又は少なくとも1つの請求項8に記載の光開始剤と、任意選択的少なくとも1つのポリオレフィンとを含む、組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの促進剤をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのオレフィン及び少なくとも1つの促進剤を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つの促進剤が、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
0.5~5重量%の促進剤を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
0.01~10重量%の濃度の少なくとも1つの光開始剤を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1つの光開始剤が0.05~5重量%の濃度にある、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの請求項
8に記載の光開始剤と、任意選択的に少なくとも1つの促進剤とを含む、マスターバッチ。
【請求項17】
少なくとも1つのポリオレフィンを架橋する方法であって、照射下、前記少なくとも1つのポリオレフィンを、請求項
14に記載の光開始剤の量で処理することを含む、方法。
【請求項18】
前記ポリオレフィンが、ポリエチレン及びエチレンコポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(very low-density)ポリエチレン(VLDPE)、超低密度(ultra-low-density)ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリプロピレン(PP)、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン及びエチレン、アルコールコポリマー(EVOH)、エチレン及びプロピレンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、或いは1つ以上のアルファ-オレフィンとのエチレンのコポリマーから選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、光開始剤の新規系統群に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
我々の生活の様々な分野においてポリオレフィンの重要性が増大する中、ポリオレフィンの硬化はいっそう重要なものとなっている。しかしながら、硬化は、これまでのところ、ポリオレフィン分子中のC-H結合の開裂を可能にし、フリーラジカルを発生させ、続いて、より大きい巨大分子及び微細三次元ネットワークへの架橋をもたらす高エネルギー(電子ビーム又はガンマ線照射)の電離放射線によって達成されている。ポリオレフィンの硬化はUV光線などのより低エネルギーの照射によっても可能であるが、アクリル系モノマー及びオリゴマーの光硬化用に典型的に使用される入手可能な光開始剤は、ポリオレフィンと実質的に非相容性であるため、ポリオレフィンの光架橋用に使用することができない。
【0003】
ポリエチレン溶融体の光硬化の成功は[1]において実現された。
【0004】
米国特許出願公開第2017/0114193号[2]では、ポリエチレンから製造されるパイプの光架橋用にベンゾフェノン誘導体のノリッシュ-II(Norrish-II)光開始剤が使用された。
【0005】
背景技術
[1]欧州特許第0490854号
[2]米国特許出願公開第2017/0114193号
[3]日本特許第8175003号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な説明
本発明の発明者らは、ポリオレフィンの架橋のための光開始剤として使用され得るアルコキシベンゾフェノンの系統群を開発した。本発明の光開始剤は、光硬化の高い有効性及び架橋されるポリオレフィン又はコポリマーとの高い相容性を示す。光開始剤の高い溶解性は、励起状態の光照射されたベンゾフェノン誘導体(ラジカル開始のノリッシュ II(Norrish II)機構)及び分子レベルのポリマー分子の観察された相互作用の原因となり、それによって、光開始剤からポリマー分子へのエネルギー伝達が実質的に増加し、続いて、ポリオレフィン又はコポリマーのC-H結合の分解によるアルキルラジカルの形成が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の第1の態様において、光開始剤として使用するためのアルコキシベンゾフェノンが提供される。
【0008】
さらに本発明では、少なくとも1つのアルコキシベンゾフェノンを含むか、又はそれからなる光開始剤配合物又は組成物であって、少なくとも1つのポリオレフィンの架橋方法において使用するために構成される配合物又は組成物が提供される。
【0009】
さらに本発明では、少なくとも1つのポリオレフィンの架橋方法において使用するための光開始剤としての少なくとも1つのアルコキシベンゾフェノンの使用が考えられる。
【0010】
「アルコキシベンゾフェノン」とは、そのフェニル環の一方又は両方において、1つ以上のアルコキシ基によって置換された少なくとも1つのベンゾフェノンである。当該技術において既知であるように、「アルコキシ」基は、アルキルが1~20個の炭素原子を含み得る基-O-アルキルである。アルキル基は置換されていても、又は未置換であってもよく、線形又は分岐していてもよく、或いは5又は6個の炭素原子を含む置換されたか、又は未置換の環式炭素の形態であってもよい。
【0011】
アルコキシ基は、カルボニル基に対していずれの位置においてもベンゾフェノン骨格上に置換されてよい。ベンゾフェノンは、定義されるように、1つ以上のアルコキシ基によって置換されてよい。2つ以上のアルコキシ基が存在する場合、それらは同一フェニル環にあってもよく、又は両方の環を置換していてもよい。基は、互いに近接していても、又はいずれの相対位置にあってもよい。少なくとも2つのアルコキシ基は、互いに対して、又はイプソ炭素に対して、オルト-、メタ-又はパラ-であってよいか、或いは(カルボニル基に対して)いずれの相対位置にあってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、次式
-O-C1~C20アルキル、
-O-C1~C10アルキレン-(C=O)-O-C1~C10アルキル、又は
-O-C1~C5アルキレン-(C=O)-O-C1~C15アルキルで表されるものである。
【0013】
アルキレン及びアルキル基のそれぞれは、互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子を有する炭素鎖又は基から選択される。アルキレン又はアルキル基が炭素原子数によって限定される場合、例えば、C1~C5アルキレン又はC1~C5アルキルの場合、炭素鎖中の炭素原子数は、明示された下限及び上限を含めて、その範囲内であり、例えば、1及び5個の炭素原子を含めて、その間である。したがって、C1~C5アルキレンとして示される基は、1、2、3、4、又は5個の炭素原子を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、-O-(CH2)n-CH3及び-O-(CH2)n-(C=O)-O-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、0~2、0~3、0~4、0~5、0~6、0~7、0~8、0~9、0~10、0~11、0~12、0~13、0~14、0~15、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、2~10、2~11、2~12、2~13、2~14、2~15、3~5、3~6、3~7、3~8、3~9、3~10、3~11、3~12、3~13、3~14、3~15、4~6、4~7、4~8、4~9、4~10、4~11、4~12、4~13、4~14、4~15、5~7、5~8、5~9、5~10、5~11、5~12、5~13、5~14、5~15、6~8、6~9、6~10、6~11、6~12、6~13、6~14、6~15、7~9、7~10、7~11、7~12、7~13、7~14、7~15、8~10、8~11、8~12、8~13、8~14、8~15、9~11、9~12、9~13、9~14、9~15、10~12、10~13、10~14、10~15、11~13、11~14、11~15、12~14、12~15、13~15、14、15、14~20、15~20、16~20、17~20、又は18~20から選択される整数である)から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、整数n及びmが記載される場合、各n及びmは、同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0016】
アルコキシが-O-(CH2)n-CH3である場合、nは、0~20、0~15、0~10、0~3又は4~15の整数であってよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、ベンゾフェノンは、1つの-O-(CH2)n-CH3(式中、nは、0~15、0~10、0~3又は4~15の整数である)を含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、ベンゾフェノンは、2つ以上の-O-(CH2)n-CH3基(式中、nは、0~15、0~10、0~3又は4~15の整数である)を含む。整数nは、両基に同一であっても、同一でなくてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、nは、1~15、又は4~15、又は5~15、又は10~15である。いくつかの実施形態において、nは、1、3、7、9、11又は15である。
【0020】
いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、nがゼロである-O-(CH2)n-CH3基である。
【0021】
いくつかの実施形態において、ベンゾフェノンは-O-(CH2)n-CH3基を含まない。
【0022】
アルコキシが-O-(CH2)n-(C=O)-O-(CH2)m-CH3である場合、各n及びmは、互いに独立して、0~3又は4~15の整数であってよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、nは、1~15、又は4~15、又は5~15、又は10~15である。いくつかの実施形態において、nは、1、3、7、9、11又は15である。
【0024】
いくつかの実施形態において、nは、0、1、2又は3である。
【0025】
いくつかの実施形態において、nは、0である。
【0026】
いくつかの実施形態において、nは、1である。
【0027】
いくつかの実施形態において、mは、1~15、又は4~15、又は5~15、又は10~15である。いくつかの実施形態において、mは、1、3、7、9、11又は15である。
【0028】
いくつかの実施形態において、mは、0、1、2又は3である。
【0029】
いくつかの実施形態において、mは、0である。
【0030】
いくつかの実施形態において、mは、1である。
【0031】
いくつかの実施形態において、ベンゾフェノンは、1つの-O-CH2-(C=O)-O-(CH2)m-CH3(式中、mは、上記で選択されるように0~3又は4~15の整数である)を含む。いくつかの実施形態において、ベンゾフェノンは、2つ以上の-O-CH2-(C=O)-O-(CH2)m-CH3基(式中、mは、上記で選択されるように0~3又は4~15の整数である)を含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、ベンゾフェノンは-O-CH2-(C=O)-O-(CH2)m-CH3又は-O-(CH2)n-(C=O)-O-(CH2)m-CH3を含まない。
【0033】
いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、mがゼロである-O-CH2-(C=O)-O-(CH2)m-CH3基である。
【0034】
いくつかの実施形態において、アルコキシベンゾフェノンは、一般式(I)で表されるものである。
【0035】
本発明は、さらに、ベンゾフェノンがカルボニル基に対してオルト位にある1つ又は2つの炭素部分、及びカルボニル基に対して位置γにある少なくとも1つの水素原子を有し、炭素部分がエーテル部分である、ベンゾフェノンNorish II光開始剤を提供する。
【0036】
本発明は、さらに、一般式(I):
【化1】
(式中、
R
1、R
2及びR
3の少なくとも1つは、互いに独立して、アルコキシ基、例えば、C
1~C
20アルコキシ基であり、前記R
1、R
2及びR
3の少なくとももう1つは、任意選択的に、アルキル基、例えば、C
1~C
20アルキル基であり、前記R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは水素とは異なる(したがって、アルコキシ及び/又はアルキル基から選択される))のアルコキシベンゾフェノンを提供する。
【0037】
本明細書で使用される場合、基C1~C20アルコキシは、-O-C1~C20アルキル、-O-C1~C10アルキレン-(C=O)-O-C1~C10アルキル及び-O-C1~C5アルキレン-(C=O)-O-C1~C15アルキルから選択される基である。言い換えると、基「C1~C20アルコキシ」は、本明細書中、-O-C1~C20アルキル、-O-C1~C10アルキレン-(C=O)-O-C1~C10アルキル、又は-O-C1~C5アルキレン-(C=O)-O-C1~C15アルキルと交換可能である。上記で示されたように、アルキレン及びアルキル基のそれぞれに関して、互いに独立して、炭素原子数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であってよい。アルキレン又はアルキル基が炭素原子数によって限定される場合、例えば、C1~C5アルキレン又はC1~C5アルキルの場合、炭素鎖中の炭素原子数は、明示された下限及び上限を含めて、その範囲内であり、例えば、1及び5個の炭素原子を含めて、その間である。したがって、C1~C5アルキレンとして示される基は、1、2、3、4、又は5個の炭素原子を含む。
【0038】
本明細書で使用される場合、基C1~C20アルキルは、それぞれの数を含めて1~20個の炭素原子、1~20個の原子を含有し、直鎖又は分岐していてもよく、或いは置換されていてもよいアルキル基である。いくつかの実施形態において、アルキル鎖中の炭素原子数は、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12、1~13、1~14、1~15、2~4、2~5、2~6、2~7、2~8、2~9、2~10、2~11、2~12、2~13、2~14、2~15、3~5、3~6、3~7、3~8、3~9、3~10、3~11、3~12、3~13、3~14、3~15、4~6、4~7、4~8、4~9、4~10、4~11、4~12、4~13、4~14、4~15、5~7、5~8、5~9、5~10、5~11、5~12、5~13、5~14、5~15、6~8、6~9、6~10、6~11、6~12、6~13、6~14、6~15、7~9、7~10、7~11、7~12、7~13、7~14、7~15、8~10、8~11、8~12、8~13、8~14、8~15、9~11、9~12、9~13、9~14、9~15、10~12、10~13、10~14、10~15、11~13、11~14、11~15、12~14、12~15、13~15、14、15、14~20、15~20、16~20、17~20又は18~20から選択されてよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、R1は、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(CH2)n-(C=O)-O-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、本明細書で定義される整数である)である。いくつかの実施形態において、各n及びmは、互いに独立して、0~3である。
【0040】
いくつかの実施形態において、R2は-H、-(CH2)n-CH3又は-O-(CH2)n-CH3(式中、nは本明細書で定義される整数である)である。いくつかの実施形態において、nは、4~15である。
【0041】
いくつかの実施形態において、R3は、-H、-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、本明細書において上記で定義される整数である)である。いくつかの実施形態において、各n及びmは、互いに独立して、4~15である。
【0042】
いくつかの実施形態において、式(I)の化合物中:
R1は、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(CH2)n-(C=O)-O-(CH2)m-CH3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、0~3(0、1、2又は3となる)である)であり;
R2は、-H、-(CH2)n-CH3又は-O-(CH2)n-CH3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各nは、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である)であり;且つ
R3は、-H、-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3(式中、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmは、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である)である。
【0043】
いくつかの実施形態において、R1は、-O-(CH2)n-CH3又は-O-CH2-(C=O)-O-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、0~3の整数である)であり、且つR2は、-H、-(CH2)n-CH3又は-O-(CH2)n-CH3(式中、nは、4~15の整数である)である。
【0044】
いくつかの実施形態において、R1は、-O-(CH2)n-CH3又は-O-CH2-(C=O)-O-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、0~3の整数である)であり、且つR3は、-H、-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、4~15の整数である)である。
【0045】
いくつかの実施形態において、R2は、-H、-(CH2)n-CH3又は-O-(CH2)n-CH3(式中、nは、4~15の整数である)であり、且つR3は、-H、-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3(式中、各n及びmは、互いに独立して、4~15の整数である)である。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物中、R1は-O-CH2-CH3である。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物中、R1は-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3である。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物中、R2は-O-(CH2)7-CH3である。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物中、R2は-(CH2)7-CH3である。
【0050】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0051】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0052】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0053】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0054】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0055】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0056】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0057】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0058】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0059】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0060】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0061】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0062】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0063】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3及びR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0064】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0065】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0066】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、且つR2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0067】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、R3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0068】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0069】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、R3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0070】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、R3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0071】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0072】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0073】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3が-(CH2)n-CH3、-O-(CH2)n-CH3又は-O-(C=O)-(CH2)m-CH3であり、それぞれの変形に関して、独立して、各n及びmが、互いに独立して、4~15の整数(4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15となる)である、一般式(I)の化合物である。
【0074】
さらに本発明は、
-R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;及び
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物
から選択される化合物を提供する。
【0075】
本発明の化合物のそれぞれは別個に選択及び使用されてよい。したがって、本発明の化合物は、
-R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物;又は
-R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物
であってよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0077】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0078】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0079】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0081】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0082】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0083】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0084】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0085】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)7-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0086】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)9-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0087】
いくつかの実施形態において、化合物は、R1が-O-CH2-(C=O)-O-CH2-CH3であり、R2が-O-(CH2)11-CH3であり、且つR3がHである、一般式(I)の化合物である。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物又は本発明に従って使用される化合物は、当該技術の化合物を除外して、本明細書に提供される表のいずれかに記載される少なくとも1つの化合物である。
【0089】
本発明の化合物は、ポリオレフィンの架橋において光開始剤として使用され得る。当該技術において既知であるように、「光開始剤」は、例えば、UV-C及びUV-B域の光への曝露、又は光化学プロセスにおける共開始剤との相互作用によって活性化される時にフリーラジカルを形成する化合物である。本発明の光開始剤は、ポリオレフィン系材料の架橋又は調製を光開始する能力がユニークである。ポリオレフィン系材料は、単一材料、ポリマー材料の1つとしてポリオレフィン系材料を含む2種以上の材料、又はいずれかのポリマー配合物の組合せである。ポリオレフィン(又はポリオレフィン系材料)は、一般に、本発明の光開始剤の使用によって形成され得る、モノマー単位の間にメチレン結合を有するホモポリマー又はコポリマーを意味する。ポリオレフィンの例としては、ポリエチレンなどのポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマーなどのコポリマーとのエチレンコポリマー、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度(very low-density)ポリエチレン(VLDPE)、超低密度(ultra-low-density)ポリエチレン(ULDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高密度ポリエチレン(UHDPE)、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリプロピレン(PP)、プロピレン/エチレンコポリマー、エチレン及びエチレン、アルコールコポリマー(EVOH)、エチレン及びプロピレンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブチレン、ポリブテン、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、或いはブテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1などの1つ以上のアルファ-オレフィンとのエチレンのコポリマーが含まれる。
【0090】
本発明の光開始剤は、そのまま使用されてもよく、或いは1つ以上の添加剤との組合せで使用されてもよい。いくつかの実施形態において、光開始剤は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む組成物中に含まれる。少なくとも1つの添加剤は、酸化防止剤、架橋剤、UV吸収剤、光安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、担体、希釈剤、顔料又は着色剤などから選択されてよい。
【0091】
本発明による光開始剤配合物は、固体配合物又は液体配合物であり得るか、或いは特に使用されたポリオレフィン、特定の目的のために選択された光開始剤、他の添加剤の存在及び他の考慮に基づき、調製されてよい。したがって、例えば、本発明による光開始剤の使用目的に基づき、光開始剤が配合されてよい。いくつかの実施形態において、光開始剤は、マスターバッチとして、或いは固体、液体又は配合された形態であらかじめ決められた量を含むキットとして、あらかじめ配合される。
【0092】
本発明は、少なくとも1つのUV架橋性ポリオレフィン材料又はそれを含む組成物を少なくとも1つの本発明の光開始剤と接触させること、及び架橋を引き起こす条件下で前記ポリオレフィンを照射することを含む、少なくとも1つのポリオレフィンを架橋する方法をさらに提供する。
【0093】
本方法が少なくとも1つのUV架橋性ポリオレフィンの組成物を利用する場合、組成物は、相溶化剤、充填剤(有機又は無機)、ナノフィラー、ガラス及びセラミックミクロスフェア、ガラス繊維、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、加工助剤、発泡剤、ペルオキシド、顔料及び着色剤などの1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0094】
本発明は、前記物品を当該技術において既知のいずれかの手段(例えば、押出成形、成形又は他の手段)によって成形すること、及び形成しながら物品にUV放射線を受けさせることを含む、少なくとも1つの本発明の光開始剤の量を含むUV架橋性ポリオレフィンの物品を製造する方法をさらに提供する。
【0095】
少なくとも1つのポリオレフィンの架橋はUV照射下で生じる。照射方法は、照射、すなわち、UV放射線源へのポリマー又はそれから製造された複合体の曝露を含み得る。光開始剤と混合されたポリオレフィンの照射によって、ポリマー鎖上にフリーラジカルが生じ、次いで、これは共有結合し、ポリマーの架橋をもたらす。本発明の光開始剤を使用することの主な利点は、大気条件で、例えば空気への暴露時に、例えば0.5%未満の低濃度を必要とする非常に薄い膜(10ミクロン未満)の場合であっても、アクリル系モノマー及びオリゴマーなどの促進剤の存在を必要とせずに、ポリオレフィンを架橋するそれらの能力による、それらの高い有効性にある。
【0096】
UV放射線源は、100~500nmの波長範囲の放射線を放出することのできる1つ以上のUVランプ或いはUVランプの集合体であってよい。一般的に、使用されるUV源は、選択された光開始剤の吸収スペクトルに適合する放出スペクトルを有するように選択される。
【0097】
架橋は、ポリオレフィンの物品を製造するためのプロセスにおける個々のプロセスステップとして達成されてもよい。このプロセスは、ポリオレフィンの溶融、ポリオレフィンの処理及びそれからの物品の形成を含み得る。本発明に従って使用される光開始剤は、架橋ステップが処理ステップのいずれかと連続するように導入され得るように、プロセスのいずれの段階においても添加されてよい。
【0098】
処理ステップ又は連続にもかかわらず、ポリオレフィン含有は、組成物の溶融の前に、ポリオレフィン及び光開始剤、並びにいずれかの追加の添加剤を混合又はブレンドすることによって調製され得る。いくつかの場合、最終的に架橋される均質な組成物を形成するために、組成物の成分は(例えば、連続一軸又は二軸押出成形配合機、混練機又は内部バッチ混合機によって)溶融ブレンドされてもよい。
【0099】
ポリオレフィン又はポリオレフィンブレンド及び光開始剤のバッチ組成物はペレットへとプレフォームされ、そして次の使用のために貯蔵されてよい。本発明の方法に従って形成された物品は、そのようなペレット化されたマスターバッチから、又は本発明のプロセスを実行する直前に成分を組み合わせることによって形成され得る。
【0100】
少なくとも1つの光開始剤の量は、ポリオレフィンの架橋を促進するために有効な量を提供するために変更されてもよい。いくつかの実施形態において、光開始剤は、0.1~10%(重量による)の範囲の量で添加されてよい。いくつかの実施形態において、この量は、0.1~0.5%又は0.1~5%又は0.5~10%又は0.5~5%(重量による)である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
実施形態の詳細な説明
光開始剤及びポリマーが高い相容性を有する場合にのみ、有効性の高い光硬化が提供可能であり、すなわち、ポリオレフィン又はコポリマーと本発明の光開始剤の両方が類似のハンセン(Hansen)溶解性パラメーター値を有さなければならない。より特に、ハンセン(Hansen)溶解性パラメーター(δp、δd、δh)の極性、散発性及び水素結合成分におけるベクトルの差は6.0(J/cm3)1/2未満である。
【0102】
本発明の光開始剤の高い溶解性は、励起状態の光照射されたベンゾフェノン誘導体(ラジカル開始のノリッシュ II(Norrish II)機構)及び分子レベルのポリマー分子の相互作用の原因となり、それによって、光開始剤からポリマー分子へのエネルギー伝達が実質的に増加し、続いて、ポリオレフィン又はコポリマーのC-H結合の分解によるアルキルラジカルの形成が生じる。
【0103】
以下の表1に、純粋なベンゾフェノン光開始剤及びポリエチレンのハンセン(Hansen)溶解性パラメーターが提供される。
【0104】
【0105】
溶解性パラメーターのベクトルの差は9(J/cm3)1/2である。これは6(J/cm3)1/2の溶解性限度より高い。結果として、純粋なベンゾフェノンの量を含有するポリエチレン組成物含有の照射後に実質的な光硬化がいずれも生じずに、ポリエチレンからベンゾフェノンがブルームする。
【0106】
本発明の光開始剤は、ポリエチレン開始時に満足な溶解性を有する。
【0107】
表2において、本発明の一般式(II)によるベンゾフェノン誘導体の溶解性パラメーターのデータが提供される。
【0108】
【0109】
表2中の第1のベンゾフェノン誘導体に関して、ポリエチレンの溶解性パラメーターとのベクトル差は5.5(J/cm3)1/2であり、そして第2の誘導体に関して、その差は5.9(J/cm3)1/2である。このことは、両ベンゾフェノン誘導体が6.0(J/cm3)1/2より小さい溶解性パラメーターを有し、そのため、両方ともポリエチレン中で溶解性を示すことを意味する。
【0110】
最高5%w/wまでのLDPE中の表2のいずれかの光開始剤の導入によって、ポリマーマトリックスからの光開始剤の移動に起因する可能性のある任意の感知可能なブルーミングの影響が導かれなかった。
【0111】
下記の例において、本発明による光開始剤の光誘導性架橋の効率は、種々のポリオレフィンで提供される。
【0112】
本発明の光開始剤とは異なるが、なおポリオレフィンとの同等の相容性を有する光開始剤を比較例として使用した。これらは、上記の表2に列挙された4-オクチルオキシベンゾフェノン(CAS番号1843-05-6)、1-及び4-ヒドロキシベンゾフェノンラウレート(CAS番号35820-92-9)であった。
【0113】
粉末又は液体としてのポリマー中への添加剤の直接的な導入が、不均質分布、そしてそれに続いて、均質ではない架橋を導くことは十分に知られている。したがって、ポリオレフィンとの最終混合の前に、特定の光開始剤のマスターバッチを調製した。マスターバッチ中の光開始剤の濃度は10%w/wであった。マスターバッチは、マスターバッチ中の光開始剤の非常に均質な分布が提供されるスクリューの構成を有する、二軸スクリュー押出機によって製造された。この手順に続いて未変性ポリエチレン中にマスターバッチを添加し、組成物を光照射することによって、再現性のある結果がもたらされた。
【0114】
本発明の光開始剤を利用する2タイプの実験を以下の例に示す:
-UV処理されたポリマーを溶接可能な形態に保持しながら、(例えばパッケージ用の)膜の引張特性を改善するための、シングルバブル押出成形プロセスにおいてLDPEから製造された架橋膜;
-インフレーション(伸張)による第1の気泡の配向の間に溶融体の引張特性を増加するための、ダブルバブル技術によって製造された配向膜のLLDPE一次管の架橋。
【0115】
上記の第1のタイプの膜に関しては、LDPE膜はオフラインでUV照射された。膜の照射は両側から実行された。
【0116】
配向膜の場合、製造UV源は、配向の前に一次管の両側に配置された。UV処理はオンラインで実行された。
【0117】
両タイプの膜に関して、50g~57gの負荷重量を用いて、135℃において膜(幅1.0インチ)のクリープを測定することによって架橋の効率を試験した。
【0118】
ケーブル絶縁コーティング又はパイプをシミュレーションするために、種々のポリオレフィン(LDPE、HDPE)の厚さ1.0mm、2.0mm及び3.0mmのスラブを溶融プレスの方法によって調製した。架橋促進剤[例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)]のマスターバッチを、5~25%の架橋促進剤を含有するマスターバッチとして添加した。使用されたUV開始剤の効率は、沸騰キシレンによるゾル留分の抽出による、照射されたポリマー中のゲル留分の測定によって試験された。
【0119】
UVランプからのUV光及びコンベヤを用いてスラブを照射した。
【0120】
使用されたUVランプの電力は1.0kWであった。適切な装置を使用して、J/cm2での曝露量を測定した。
【0121】
表3に、所望の引張特性を得るための15秒のクリープ時間を得るために、試料を架橋するために必要とされる曝露量のデータを示す。
【0122】
【0123】
表3からわかり得るように、式(I)及び(II)の光開始剤は、比較の光開始剤と比較して、LDPEの光架橋において実質的に効率的であることが証明された。比較の光開始剤に関して、濃度は、15秒のクリープ時間を達成するように架橋を達成するために、より高くなければならない。
【0124】
表4中、厚さ0.4mmの一次管のオンラインUV照射の場合の厚さ20ミクロンの配向LLDPE膜に関して15秒のクリープ時間を得るために必要とされる曝露量のデータを示す。
【0125】
【0126】
表4から、式(I)及び(II)の光開始剤に基づく光硬化は、比較の光開始剤に基づく組成物と比較して、より効果的であることが明確である。
【0127】
表5中、種々のポリエチレン及び種々の厚さから製造された試料において65%ゲル留分を達成するために必要とされる曝露量のデータを示す。
【0128】
【0129】
表5のデータは、式(I)及び(II)の光開始剤基づく組成物が、比較試料中で使用されたものよりも実質的により効果的であることを示す。