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特許7366042フィブリンマトリックスを製造するための方法およびキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】フィブリンマトリックスを製造するための方法およびキット
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/22 20060101AFI20231013BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20231013BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 38/29 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231013BHJP
   C07K 14/635 20060101ALN20231013BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20231013BHJP
   C07K 14/75 20060101ALN20231013BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20231013BHJP
   C12N 9/74 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
A61L27/22 ZNA
A61L27/02
A61L27/54
A61P19/08
A61P19/10
A61K38/29
A61K47/64
C07K14/635
C07K19/00
C07K14/75
C12N9/10
C12N9/74
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020547068
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2019054535
(87)【国際公開番号】W WO2019170450
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-11-22
(31)【優先権主張番号】62/640,814
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18162280.4
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507207144
【氏名又は名称】クロス・バイオサージェリー・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォクト,ロレンツ
(72)【発明者】
【氏名】イアフィネ,アリスタイア・ジンプゾン
(72)【発明者】
【氏名】ザウダン,フィリペ
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第08034618(US,B2)
【文献】特表2005-508237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0234718(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0148704(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスの形成方法であって、前記方法は、
i)フィブリノゲンおよび第XIIIa因子または第XIII因子を含む第1の成分を提供する工程と、
ii)トロンビンまたはプロトロンビンを含む第2の成分を提供する工程とを含み、
前記第1の成分または前記第2の成分はいずれも、第1のドメインと、第2のドメイン中の共有結合架橋性第XIIIa因子基質ドメインとを含む融合ペプチドを含まず、前記第1の成分または前記第2の成分は、カルシウムイオン源をさらに含み、
前記方法はさらに、
iii)前記融合ペプチドを含む第3の成分を提供する工程であって、前記第3の成分は、フィブリノゲン、トロンビン、またはプロトロンビンのいずれをも含まず、並びに、前記融合ペプチドは、前記第1のドメイン中にPTH、および、第2のドメイン中に共有結合架橋性第XIIIa因子基質ドメインを含む、工程と、
iv)前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分を混合する工程とを含み、
前記工程(iv)は、5日を超えない、好ましくは3日を超えない、2日を超えない、または1日という時間枠内において行なわれる、方法。
【請求項2】
PTHは、PTH1-84、PTH1-38、PTH1-34、PTH1-31、およびPTH1-25からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(iv)において、前記融合ペプチドは、フィブリンマトリックス中0.01~2mg/mLの濃度範囲内で添加される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記融合ペプチドは、前記第1のドメインと前記第2のドメインとの間に分解部位をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記分解部位は酵素切断部位である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素切断部位はプラスミン切断部位である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は無菌条件下において行なわれる、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の、骨組織の再生のための融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスを製造するためのキットであって、前記キットは、
フィブリノゲンおよび第XIIIa因子または第XIII因子を含む第1の成分と、
トロンビンまたはプロトロンビンを含む第2の成分とを含み、
前記第1の成分または前記第2の成分はいずれも、第1のドメインと、第2ドメイン中の共有結合架橋性第XIIIa因子基質ドメインとを含む融合ペプチドを含まず、前記第1の成分または前記第2の成分は、カルシウムイオン源をさらに含み、
前記キットはさらに、
前記融合ペプチドを含む第3の成分であって、フィブリノゲン、トロンビン、またはプロトロンビンのいずれをも含まず、並びに、前記融合ペプチドは、前記第1のドメイン中にPTH、および、第2のドメイン中に共有結合架橋性第XIIIa因子基質ドメインを含む、第3の成分と、
任意に、前記第1の成分、前記第2の成分、および前記第3の成分を混合するための少なくとも1つの接続デバイスとを含み、
前記第3の成分と、前記第1の成分および前記第2の成分とは、分けられている、キット。
【請求項9】
前記第1の成分と前記第2の成分とは分けられている、請求項に記載のキット。
【請求項10】
前記第3の成分は、前記接続デバイスに直接または間接的に接続可能な容器に入っている、請求項またはに記載のキット。
【請求項11】
前記第1の成分および前記第2の成分は別々の容器に入っており、前記容器はそれぞれ、前記接続デバイスに接続可能である、請求項10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項12】
前記第1の成分および前記第2の成分は、前記接続デバイスの別々の区画に入っている、請求項10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
前記成分の各々は別々の一次パッケージに入っており、前記第1の成分の一次パッケージ、前記第2の成分の一次パッケージ、前記第3の成分の一次パッケージ、および前記接続デバイスは、無菌化および無菌包装されている、請求項12のいずれか1項に記載のキット。
【請求項14】
混合物であって、
i)フィブリノゲンおよび第XIIIa因子または第XIII因子を含む第1の成分と、
ii)トロンビンまたはプロトロンビンを含む第2の成分とを含み、
前記第1の成分または前記第2の成分はいずれも、第1のドメインと、第2のドメイン中の共有結合架橋性第XIIIa因子基質ドメインとを含む融合ペプチドを含まず、前記第1の成分または前記第2の成分は、カルシウムイオン源をさらに含み、
前記混合物はさらに、
iii)前記融合ペプチドを含む第3の成分を含み、前記第3の成分は、フィブリノゲン、トロンビン、またはプロトロンビンのいずれをも含まず、並びに、前記融合ペプチドは、前記第1のドメイン中にPTH、および、第2のドメイン中に共有結合架橋性第XIIIa因子基質ドメインを含み、
患者の、骨生成を要する部位または骨折の部位に投与するために、前記第1の成分、前記第2の成分および前記第3の成分の混合は5日を超えない、好ましくは3日を超えない、2日を超えない、または1日という時間枠内において行なわれる、混合物。
【請求項15】
前記部位は、骨折、骨嚢腫、または骨密度が低い状態にある骨である、請求項14に記載の投与するための混合物。
【請求項16】
前記部位は脊椎の中にあり、前記患者は脊椎固定を受けている、請求項14に記載の投与するための混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスを製造するための方法およびキット、ならびに融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
ARTISSまたはTISSEEL(登録商標)(いずれもBaxter Healthcare社より)などのフィブリンシーラントは、組織修復において使用するための製品として知られている。ARTISS(登録商標)およびTISSEEL(登録商標)は、2種の成分からなり、適用直前または適用中にこれらが混合される。一方の成分はフィブリノゲン、第XIII因子、およびアプロチニンを含み、もう一方の成分はトロンビンを含む。当該2種の成分が混合されると、トロンビンが、フィブリノゲンを切断することによってフィブリンポリマーを生成し、かつ第XIII因子を活性化することによって第XIIIa因子を生成する。この第XIIIa因子はトランスグルタミナーゼであり、フィブリンポリマーを架橋して固体のフィブリンマトリックスを形成する。
【0003】
フィブリンマトリックスは、トロンビンによりフィブリノゲンが切断され、得られたフィブリンポリマーがカルシウム源および第XIIIa因子の存在下において架橋されて三次元ネットワークが形成される、というプロセスで得られる産物である。
【0004】
特定の生理活性因子が骨の修復を促進し得ることが知られている。副甲状腺ホルモン(PTH)は、84個のアミノ酸からなるペプチドであり、副甲状腺により産生および分泌される。このホルモンは、多様な組織、特に骨に作用することにより、血清カルシウムレベルの制御において主要な役割を果たしている。そのため、PTHは、骨障害の処置において特に関心がもたれている。
【0005】
フィブリンシーラントであるARTISSまたはTISSEEL(登録商標)とPTHとを組み合わせるアプローチが試みられている。たとえば、US8034618B2は、PTHを含む融合タンパク質を、フィブリノゲンまたはトロンビンのいずれかの溶液と混合すること(本願における「予め混合」すること)を記載する。フィブリンマトリックスを形成するために、融合タンパク質およびフィブリノゲンを含む前駆体溶液を希釈したものを、トロンビンを含む第2の前駆体溶液中に、室温で注入する。次いで、得られた混合物を骨障害部位に適用して、フィブリンマトリックスを形成させる。生理活性因子であるPTHがマトリックスから放出されて、骨組織の再生を局所的に誘発する。
【0006】
驚くことに、フィブリノゲン溶液中のPTHを含む融合ペプチドは、室温において比較的短期間で分解することが見いだされた(実施例1)。このことは、特に驚くべきことである、というのは、ARTISS(登録商標)およびTISSEEL(登録商標)のフィブリノゲン溶液はアプロチニンを含むためである。アプロチニンは当該化合物のタンパク質分解を防止することが予期された。しかしながら、融合ペプチドを室温において5日より長くフィブリノゲン溶液に曝露すると、PTHを含む融合ペプチドの実質的な分解が引き起こされることが観察された。この分解が、組織シーラントの工業製造に典型的に必要とされる時間範囲内で生じることから、上述される先行技術において用いられた、融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスを製造するアプローチは、再現性および確実性の点で重大な欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって、本発明の目的は、先行技術の欠点の克服である。より具体的には、本発明の目的は、再現性および確実性が向上したシーラントとしてのフィブリンマトリックスの製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述される目的は、以下に記載するフィブリンマトリックスを製造するための方法およびキットによって達成された。
【0009】
融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスの製造方法が、本明細書中において記載される。いくつかの実施形態において、当該方法は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体および任意にトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む第1の成分と、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む第2の成分と、融合ペプチドを含む第3の成分とを含む、3種の異なる成分を提供する工程を含む。こうした実施形態において、第1の成分または第2の成分はいずれも、融合ペプチドを含まない。いくつかの実施形態において、第1の成分または第2の成分は、予め第3の成分と混合される。第1の成分、第2の成分、および第3の成分が混合されて、共有結合した融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスが形成される。混合は、5日を超えない時間枠内において行なわれる。さらに、本明細書中において、共有結合した融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスを製造するためのキットも記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、本明細書中において記載される3つの例示的な方法の工程を示すフロー図である。
図1B図1Bは、本明細書中において記載される3つの例示的な方法の工程を示すフロー図である。
図1C図1Cは、本明細書中において記載される3つの例示的な方法の工程を示すフロー図である。
図2A図2Aは、本明細書中において記載される方法において、本発明に係る方法において使用される本発明に従って使用するための、4つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるものと、最終混合物を入れるもの)と、接続デバイスと、アダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図2B図2Bは、本明細書中において記載される方法において、本発明に係る方法において使用される本発明に従って使用するための、4つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるものと、最終混合物を入れるもの)と、接続デバイスと、アダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図2C図2Cは、本明細書中において記載される方法において、本発明に係る方法において使用される本発明に従って使用するための、4つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるものと、最終混合物を入れるもの)と、接続デバイスと、アダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図2D図2Dは、本明細書中において記載される方法において、本発明に係る方法において使用される本発明に従って使用するための、4つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるものと、最終混合物を入れるもの)と、接続デバイスと、アダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図2E図2Eは、本明細書中において記載される方法において、本発明に係る方法において使用される本発明に従って使用するための、4つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるものと、最終混合物を入れるもの)と、接続デバイスと、アダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図3A図3Aは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)とアダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図3B図3Bは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)とアダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図3C図3Cは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)とアダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図3D図3Dは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)とアダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図4A図4Aは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)と接続デバイスとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図4B図4Bは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)と接続デバイスとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図4C図4Cは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)と接続デバイスとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図4D図4Dは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)と接続デバイスとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5A図5Aは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5B図5Bは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5C図5Cは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5D図5Dは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5E図5Eは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5F図5Fは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
図5G図5Gは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
I.フィブリンマトリックスの製造方法
融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスの製造方法が開示される。当該方法は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体、および第XIIIa因子などのトランスグルタミナーゼまたは第XIII因子などのトランスグルタミナーゼ前駆体を含む第1の成分を提供する第1の工程(i)と、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む第2の成分を提供する第2の工程(ii)とを含む。第1の成分または第2の成分はいずれも、第1のドメインと、第2ドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質ドメインとを含む融合ペプチドを含まない。当該方法は、さらに、第1のドメインと、第2ドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質ドメインとを含む融合ペプチドを含む第3の成分を提供する第3の工程(iii)を含む。第3の成分は、フィブリノゲン、またはフィブリノゲン前駆体、またはトロンビン、またはトロンビン前駆体のいずれをも含まない。当該方法のさらなる第4の工程(iv)において、第1の成分、第2の成分、および第3の成分を混合することによって、共有結合した融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスが形成される。3種の成分の混合は、5日を超えない、好ましくは2~3日、最も好ましくは1日という時間枠内において行なわれる。任意に、3種の成分は、さらには、10時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、または2時間以内といった1日よりも短い時間枠内、30分以内、20分以内、10分以内、または5分以内といった60分よりも短い時間枠内、さらには40秒以内、30秒以内、20秒以内、10秒以内、または5秒以内といった60秒よりも短い時間枠内において混合される。
【0012】
任意に、第2の成分が第1の成分と第3の成分との混合物に、または第1の成分が第2の成分と第3の成分との混合物に、5日を超えない、好ましくは2日を超えない、最も好ましくは1日を超えない時間枠内において添加される。たとえば、第1の成分(たとえば、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む)と第3の成分(融合ペプチドを含む)とが混合され、次いで、上限5日間、好ましくは上限2~3日間、最も好ましくは上限1日間保存され、次いで第2の成分(トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む)と混合されてもよい。同様に、第2の成分(トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む)と第3の成分(融合ペプチドを含む)とが混合され、次いで、上限5日間、好ましくは上限2~3日間、最も好ましくは上限1日間保存され、次いで第1の成分(たとえば、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む)と混合されてもよい。
【0013】
工程(iv)において第1の成分と第2の成分とが混合される実施形態において、好ましくは、第1の成分と第2の成分とを混合する際か、または、第1の成分と第2の成分とを混合してから1日を超えない、好ましくは1時間以内、好ましくは5分以内、好ましくは1分以内、最も好ましくは30秒以内という時間枠内か、のいずれかのタイミングで、当該混合物に第3の成分が添加される。この実施形態において、当該3種の成分の混合開始から5日以内に、当該3種の成分の混合物が、患者に、投与方法に依存して、投与される。
【0014】
いくつかの実施形態において、これらの成分は、接続デバイスを使用して混合される。接続デバイスは、当該接続デバイスの中で混合することによって、または2種以上の成分を接続デバイスを介して1つの容器の中に移すことによって、2種または3種の成分を混合するために使用できる。
【0015】
いくつかの実施形態において、フィブリンマトリックスは、in situにて、体内でまたは身体に接した状態で形成される。他の実施形態において、マトリックスは、体外で形成された後、こうして予め形成された形状で適用されてもよい。いずれの場合においても、マトリックスは、処置を要する部位に適用されるまたは埋め込まれる。
【0016】
2種の成分を予め混合したものが、2つの区画を有するデバイスの1つの区画に入っており、残りの成分が当該デバイスの第2の区画に入っていてよく、好ましくは、これらの区画が接続デバイスを介して繋がっていてもよい。2つ以上の区画を有するデバイスの代わりに、当該デバイス内の区画の数と同数の別々の容器を使用してもよく、本明細書中において記載される多区画デバイスと同じ様式で使用してもよい。
【0017】
2種の成分を、2つの区画を有するデバイス(または、2つの容器)に入れ、残りの成分を第3の区画(または、第3の容器)に入れてもよい。2つの区画を有するデバイスに入れた2種の成分は、接続デバイスを介して混合され、次いでこの接続デバイスが第3の区画に接続されることにより、3種の成分が混合される。好ましくは、2つの区画と第3の区画とは、接続デバイスによって接続される。接続デバイスは、別個のデバイスであってよい、または、2つの区画を有するデバイスの一部もしくは第3の区画の一部であってもよい。任意に、3種の成分は、第3の区画を第4の区画に繋げて、第3の区画と第4の区画との間で混合物を往復させることによって、さらに混合されてもよい。第3の区画と第4の区画とは、接続デバイスによって繋がっていてもよい(たとえば、図2Eを参照)。
【0018】
3種の成分は、別々の区画に入っていて、三元接続デバイスに繋げることによって同時に混合されてもよい、または、3つの区画を有するシリンジに入っていてもよい。好ましくは、3つの区画は接続デバイスに接続される(たとえば、図2A~2Dおよび図4B~4Cを参照)、または3つの別々の区画のうちの1つの一部として接続デバイスを有する、または3つの区画を有するシリンジの一部として接続デバイスを有する。
【0019】
代替的には、3種の成分は、3つの独立した区画に入っている。第1の工程において3種の成分のうち2種が混合され、第2の工程においてこの混合物が残りの成分と混合される(たとえば、図3A~3Dおよび図5A~5Eを参照)。個々の区画は、接続デバイスと接続されて、これらの区画の間で混合物を往復させることによって混合が達成されてもよい。
【0020】
トロンビン前駆体は、プロトロンビンであってよい。プロトロンビンは、第Va因子および第Xa因子を含む複合体によって活性化される。
【0021】
上述される成分の混合は、15℃~40℃など、好ましくは20℃~37℃などの周囲温度において行なってよい。
【0022】
成分3および成分2を含む混合物、または成分3および成分1を含む混合物などの、2種の成分の混合物は、混合後、上限5日間にわたって、2℃~30℃において保存してよい。
【0023】
好ましくは、これらの成分を混合する前の初期フィブリノゲン濃度は、成分溶液1mLあたり10~200mg、より好ましくは成分溶液1mLあたり30~150mg、最も好ましくは成分溶液1mLあたり72~110mgであり、初期トロンビンは、成分溶液1mLあたり0.1~1500IU、より好ましくは成分溶液1mLあたり0.5~500IU、最も好ましくは成分溶液1mLあたり2~7IUである。最終混合物中、フィブリノゲン濃度は、フィブリンマトリックス1mLあたり8~160mg、より好ましくはフィブリンマトリックス1mLあたり25~100mg、最も好ましくはフィブリンマトリックス1mLあたり30~60mgである。最終混合物中のトロンビン濃度は、フィブリンマトリックス1mLあたり0.05~100IU、より好ましくはフィブリンマトリックス1mLあたり0.2~20IU、最も好ましくはフィブリンマトリックス1mLあたり1~4IUである。I.U.はトロンビンの1国際単位を表し、第一次国際標準ヒトトロンビン0.0853mg中に含まれる活性として定義される。
【0024】
また、カルシウム源は、典型的には、これらの成分のうち少なくとも1種の中に存在する。カルシウム源の提供は、トロンビンによる第XIII因子の活性化にとって必要である。第1の成分、第2の成分、または第3の成分は、カルシウム源をさらに含んでよい。好ましくは、カルシウム源は塩化カルシウムであり、最も好ましくは水和形態(CaCl2*2H2O)である。好ましくは、塩化カルシウム濃度は、フィブリンマトリックス1mLあたり0.5~5mg、より好ましくは1mLあたり1.5~3.5mg、最も好ましくは1mLあたり2.5~3mgである。成分溶液の1つにおけるカルシウムイオン源の濃度は、典型的には、成分溶液1mlあたり1~10mg、さらにより好ましくは成分溶液1mlあたり3~7mg、最も好ましくは成分溶液1mlあたり5~6mgの範囲内である。
【0025】
第1の成分溶液中、好ましくはトランスグルタミナーゼ(たとえば、第XIIIa因子)またはトランスグルタミナーゼ前駆体(たとえば、第XIII因子)の濃度範囲は、トランスグルタミナーゼの場合には成分溶液1ミリリットルあたり0.1~100I.U.である、またはトランスグルタミナーゼ前駆体の場合には活性化時に当該活性範囲のトランスグルタミナーゼが生成されるような濃度であり、より好ましくは、トランスグルタミナーゼの場合には成分溶液1ミリリットルあたり0.5~60I.U.である、またはトランスグルタミナーゼ前駆体の場合には活性化時に当該活性範囲のトランスグルタミナーゼが生成されるような濃度であり、最も好ましくは、トランスグルタミナーゼの場合には成分溶液1ミリリットルあたり1~10I.U.である、またはトランスグルタミナーゼ前駆体の場合には活性化時に当該活性範囲のトランスグルタミナーゼが生成されるような濃度である。
【0026】
これらの成分を上限5日間という時間枠内において混合することにより、各成分の分解、特に融合ペプチドの分解が回避されるという利点が得られる。また、融合ペプチドのフィブリンマトリックスへの結合効力が、予め混合する手順の場合と同じであることが観察される(実施例2)。
【0027】
I.A PTH融合ペプチド
PTH融合ペプチドは少なくとも2つのドメインを含んでおり、第1のドメインはPTHを含み、第2のドメインは架橋性基質ドメインを含む。融合ペプチドの第1のドメイン中においてPTHを使用する1つの利点は、骨組織の再生の改善に見い出され得る。PTHは、骨の再構築を調節し、続いて骨密度を増大させ得る。
【0028】
架橋性基質ドメインは、好ましくは、その形成中または形成後に、共有結合によってフィブリンマトリックスに架橋できる。架橋性基質ドメインは、好ましくは、酵素のためのドメイン、好ましくはトランスグルタミナーゼのための基質ドメイン(「トランスグルタミナーゼ基質ドメイン」)である。PTH融合ペプチドは、組換えによってまたは化学合成によって生成されてよい。PTH融合ペプチドは、好ましくは、化学合成によって生成される。また、PTH融合ペプチドのアミノ酸配列は、酵素切断部位または加水切断部位をも含んでよく、これにより、PTHが、その一次構造の変化をほとんどまたは全く伴わずに放出され得る。
【0029】
I.A.1 PTH
PTH融合ペプチドの第1のドメイン中のPTHは、PTH1-84、PTH1-38、PTH1-34、PTH1-31、またはPTH1-25、または骨形成特性を示すPTHの任意の変化型もしくはアレル型であってよい。PTH1-84は、骨形成特性を示しかつ骨組織再生を誘発するヒト配列を指し、数値の小さいものは、PTHの切断型、変化型、およびアレル型を示す。
【0030】
好ましいPTH切断型は、PTH1-38、PTH1-34、PTH1-31、またはPTH1-25である。最も好ましくはPTH1-34である。好ましくは、PTHはヒトPTHであるが、ウシPTHなどの他の供給源に由来するPTHも好適であり得る。
【0031】
I.A.2 トランスグルタミナーゼ基質ドメイン
トランスグルタミナーゼは、タンパク質結合グルタミニル残基のガンマ-カルボキサミド基とリシン残基のイプシロン-アミノ基との間のアシル基転移反応を触媒し、その結果、N-イプシロン-(ガンマ-グルタミル)リシンイソペプチド側鎖の架橋が形成される。好ましくは、トランスグルタミナーゼ基質ドメインは、組織トランスグルタミナーゼの基質(「組織トランスグルタミナーゼ基質ドメイン」)である。好ましい一実施形態において、基質ドメインは、第XIIIa因子のための基質ドメイン(「第XIIIa因子基質ドメイン」)である。
【0032】
好ましくは、トランスグルタミナーゼ前駆体は、第XIII因子である。第XIII因子は、トロンビンと混合されると、トロンビンのタンパク質分解によって活性化されて、第XIIIa因子となり得る。トロンビンは、さらに、フィブリノゲンを切断してフィブリンとすることによって、反応を開始させる。次いで、第XIIIa因子がフィブリンを共有結合的に架橋して、フィブリンマトリックスが形成される。
【0033】
トランスグルタミナーゼ基質ドメイン、特に第XIIIa因子基質ドメインは、フィブリンマトリックス形成中にフィブリンマトリックスにPTH融合ペプチドを結合するのに好適である。また、共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質ドメインを第2のドメイン中に含むPTH融合ペプチドも、トランスグルタミナーゼ第XIIIa因子によってフィブリンに共有結合的に架橋されてよい。
【0034】
本明細書中において記載されるPTH融合ペプチドの生成において使用するのに好適なトランスグルタミナーゼ基質ドメイン(そのアミノ酸配列を含む)は、WO03/052091(配列表)中に詳細に記載されており、その内容を引用により本明細書に援用する。
【0035】
架橋性基質ドメインは、GAKDV(配列番号1)、KKKK(配列番号2)、YRGDTIGEGQQHHLGG(配列番号3)、またはNQEQVSPL(配列番号4)を含んでよい。
【0036】
好ましい第XIIIa因子基質ドメインは、アミノ酸配列NQEQVSPL(配列番号4)を有する(本明細書中において「TG」と示される)。
【0037】
I.A.3 融合ペプチドの切断部位
融合ペプチドは、第1のドメインと第2のドメインとの間に、切断(または分解)部位、好ましくは酵素切断(または分解)部位をさらに含んでよい。当該切断部位により、PTHが、一次ペプチド配列の変化をほとんどまたは全く伴わずに、放出され得る。
【0038】
酵素切断部位は、それぞれの酵素によって認識される特定のアミノ酸配列を含んでよい。上記ドメイン中における当該配列は、細胞遊走に関与する酵素の基質(たとえば、コラゲナーゼ、プラスミン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、またはエラスターゼなどの酵素の基質)であるが、好適なドメインはこうした配列に限定されない。好ましくは、酵素切断部位は、プラスミン切断部位である。プラスミノーゲン(プラスミンのプロ酵素)は、フィブリノゲンに関連し得る。任意に、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体を含む成分(本明細書中において「第1の成分」と示される)は、プラスミノーゲンをさらに含む。
【0039】
i.酵素切断部位
好適なタンパク質分解切断部位は、コラゲナーゼ、プラスミン、エラスターゼ、ストロメライシン、またはプラスミノーゲン活性化因子のための基質を含む。基質の例が以下に列記される。N1~N5は、タンパク質分解が生じる部位からタンパク質のアミノ末端に向かう方向において、1~5位のアミノ酸を指す。N1’~N4’は、タンパク質分解が生じる部位からタンパク質のカルボキシ末端に向かう方向において、1~4位のアミノ酸を指す。
【0040】
【表1】
【0041】
タンパク質分解のために使用できる酵素は、非常に多く存在する。好ましくは、切断部位は、プラスミンおよびマトリックスメタロプロテイナーゼなどの酵素によって切断可能である。
【0042】
好ましい一実施形態において、配列YKNR(配列番号13)が、第1のドメインと第2のドメインとの間に存在する。この配列は、プラスミンにより分解され得る。
【0043】
好ましいPTH融合ペプチドは、TGplPTH1-34:NQEQVSPLYKNRSVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF(配列番号14)である。
【0044】
別の好ましいPTH融合ペプチドは、TG-PTH1-34であり、これは、天然PTHの1~34位のアミノ酸とTG(トランスグルタミナーゼ)基質ドメインとを含むが、分解部位は含まない:NQEQVSPLSVSEIQLMHNLGKHLNSMERVEWLRKKLQDVHNF(配列番号15)。
【0045】
ii.加水分解部位
好適な非酵素分解基質は、酸または塩基に触媒される機序によって加水分解される任意の結合を含む。こうした基質は、乳酸またはグリコール酸のオリゴマーなどのオリゴエステルを含む。これらの材料の分解率は、オリゴマーの選択によって制御できる。好ましくは、融合ペプチドは、最終混合物中に、フィブリンマトリックス中0.01~2mg/mL、任意に、フィブリンマトリックス中0.01~1mg/mLまたはフィブリンマトリックス中0.2~0.7mg/mLの濃度範囲内で含まれる。当該方法は、典型的には、無菌条件下において行なわれる。好ましくは、上述される成分は、予め包装されており、無菌的に混合される。これにより、生成物への混入に起因する感染が回避される。
【0046】
II.キット
さらに、上述される方法に係るフィブリンマトリックスを製造するためのパーツからなるキットも開示される。当該キットは、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む第1の成分、ならびに、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む第2の成分、ならびに、第1のドメインと、第2ドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質とを含む融合ペプチドを含む第3の成分を含む。当該キットは、第1の成分、第2の成分、および第3の成分を混合するための少なくとも1つの接続デバイスをさらに含んでよい。このような接続デバイスは、独立したデバイスであってもよい、または、これらの成分のうち1種の入った容器の一部であってもよい。第3の成分は、第1の成分および第2の成分とは別個に提供される。
【0047】
第1の成分および第2の成分とは別個に第3の成分を提供することにより、これらの成分の間の望ましくない接触(これにより、当該化合物同士が互いに相溶しないために分解が生じる)が回避される。キットは、さらに、これらの成分を使用直前に混合することを可能とする。
【0048】
好ましくは、第3の成分は、接続デバイスに直接または間接的に接続可能または接続された容器に入った状態で提供される。第3の成分の入った容器は、無菌包装または無菌化されていてよい。好ましくは、接続デバイスも無菌的に提供される。
【0049】
この容器は、当技術分野において周知される材料で作られたシリンジ、バイアル、カートリッジ、またはバッグであってよい。
【0050】
これらの成分の混合は、容器および接続デバイスの内容物を環境に曝露することなく行なわれ、混入のリスクが低減される。
【0051】
第1の成分および第2の成分は、接続デバイスに接続可能な別々の容器に入った状態で提供されてよい。接続デバイスは、第1の成分の入った容器、第2の成分の入った容器、および第3の成分の入った容器が同時に接続デバイスに直接または間接的に接続できるように構築されてよい。このような接続デバイスは、独立したデバイスであってもよい、または、これらの成分のうち1種以上が入った容器の一部であってもよい。
【0052】
接続デバイスは、成分の十分な混合に必要とされる容器および/またはさらなる接続デバイスの数に対応した、十分な数の開口部を含む。好ましくは、接続デバイスは、少なくとも1つのスロット、好ましくは1つ、2つ、または3つのスロットを含む。スロットは、接続デバイスの片側または接続デバイスの両側に配置されていてよい開口部である。スロットは、容器を直接または間接的に接続デバイスに連結できるように構成される。直接の接続または連結とは、当該スロットのうちの1つを介して容器が接続デバイスに繋がっていることを意味する。間接的な接続とは、たとえばアダプタやホースなどのさらなる接続デバイスを介して、容器が接続デバイスに接続されることを意味する。さらなる接続デバイスは、接続デバイスのスロットの1つに繋がっていてよい。また、接続デバイスは、容器のうちの1つの一部であって、たとえば、当該容器の開口部に配置されていてもよく、当該容器が、当該容器と第2の容器とを接続デバイスで接続するのに好適な構造を有していてもよい。
【0053】
アダプタは接続デバイスの1つの型であり、一般的には中空状であって、典型的には、アダプタの両側に2つの開口部を含み、各開口部が、容器の開口部または別の接続デバイスの開口部に繋ぐのに好適な構成を有する。容器を接続デバイスの開口部に間接的に接続する際、当該開口部が、容器中の開口部に直接繋ぐのに好適な構成を有さない場合に、アダプタが使用されることが多い。たとえば、開口部がノズルの形状である場合、アダプタをその端部に繋ぐことにより、接続デバイスのノズルに容器を間接的に接続できる。また、アダプタは、2つの容器を互いに接続するためにも使用でき、この際には、1つの容器をアダプタの一方の側に繋ぎ、もう一方の容器を反対側に繋げばよい。アダプタの中には、アダプタを開閉するためのバルブを含むものもある。
【0054】
接続デバイスは、一般的に中空状であり、開口部を含む。少なくとも第1の開口部は、第1の容器または第2の接続デバイスに繋げるのに好適であり、少なくとも第2の開口部は、第2の容器または第3の接続デバイスに繋げるのに好適である。任意に、接続デバイスは、上限4つの容器を直接または間接的に接続デバイスに接続するための開口部を有する。任意に、接続デバイスは、フィブリンマトリックスを接続デバイスの外に出して患者の表面に適用できるようにするための開口部を有する。任意に、接続デバイスは、開口部の一方または両方を開閉するためのバルブまたは機構を含む。任意に、接続デバイスは、これらの成分の混合を容易にするためのスタティックミキサーを含む。任意に、接続デバイスは、1種以上の成分を入れる容器の一部である。この実施形態において、接続デバイスの一端は、この容器に直接繋がっており、たとえば、接続デバイスの一端がこの容器と一体化していて開口部として働いてよい。
【0055】
これらの成分を、別々の容器(または、同じ容器中の別々の区画、または接続デバイスに繋いだ別々の区画)の中に入れて提供することによって、混入、またはこれらの成分が不要に予め混合されることが回避される。
【0056】
代替的には、第1の成分および第2の成分は、接続デバイスの別々の区画に入った状態、または接続デバイスに接続された別々の容器に入った状態で提供されてよい。第1の成分および第2の成分の混合を可能とするプランジャーがさらに提供されてもよい。接続デバイスは、第3の成分の入った容器を接続するためのスロットをさらに含んでよい。
【0057】
接続デバイスの別々の区画の中に、または接続デバイスに接続された別々の容器の中に、第1の成分および第2の成分が前もって提供されることによって、包装材料の必要量が少なくて済み、接続デバイスの誤充填によって生じ得る混入が回避される。
【0058】
好ましくは、各成分は別々の一次パッケージに入っており、第1の成分の一次パッケージ、第2の成分の一次パッケージ、第3の成分の一次パッケージ、および接続デバイスは、無菌化および無菌包装されている。一次パッケージは、成分と直接接触している容器または区画である。
【0059】
また、骨の生成または骨折の治癒に使用するための、上述される方法によって得ることのできる融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスも開示される。
【0060】
融合ペプチドは、上述される生理活性因子であるPTHを含んでよい。このようなフィブリンマトリックスの利点は、骨形成を誘発する生理活性因子の放出による骨治癒能力の向上に見い出され得る。
【0061】
好ましくは、上述される融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスは、骨折、骨嚢腫、または骨密度が低い状態の処置において使用され得る。任意に、フィブリンマトリックスは、骨粗鬆症患者における骨の処置において使用される。骨密度が低い状態は、個体における特定種類の骨(たとえば、脊椎、臀部など)の骨塩量を健康な30歳成人の正常量と比較することによって特徴づけできる。健康な30歳成人の平均よりも骨密度が低く、その差が1標準偏差を超える骨を有する個体は、骨密度が低いとみなされる。同じ試験により、健康な30歳成人の平均よりも骨密度が低く、その差が2.5標準偏差を超える骨を有する個体は、骨粗鬆症であるとみなされる。
【0062】
また、上述される融合ペプチドを含むフィブリンマトリックスは、1人の患者の2つ以上の骨を融合するための手順、たとえば、脊椎固定を受けている患者の脊椎の複数の部分を融合するための、または、足関節融合を受けている患者の複数の足関節骨を融合するための手順において使用されてもよい。
【0063】
例示的な実施形態が図面中に記載されており、以下の通りである。
図1A、1B、および1Cは、本明細書中において記載される3つの例示的な方法の工程を示すフロー図である。
【0064】
図2A、2B、2C、2D、および2Eは、本明細書中において記載される方法において、本発明に係る方法において使用される本発明に従って使用するための、4つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるものと、最終混合物を入れるもの)と、接続デバイスと、アダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
【0065】
図3A、3B、3C、および3Dは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)とアダプタとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。
【0066】
図4A、4B、4C、および4Dは、本明細書中において記載される方法において使用するための、3つの容器(3種の成分のそれぞれを入れるもの)と接続デバイスとを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。任意に、当該キットは、1つまたは2つの空の容器、および3種の成分のさらなる混合のための第2の接続デバイス(commenting device)、任意にアダプタをも含む。
【0067】
図5A、5B、5C、5D、5E、5F、および5Gは、第1の成分と第3の成分との混合物または第2の成分と第3の成分との混合物の入った第1の容器と、第1の成分のみまたは第2の成分のみの入った第2の容器とを含むパーツからなるキットの、例示的な実施形態を示す概略図である。また、このキットは、本明細書中において記載される方法において使用するための、接続デバイス、および、任意にアダプタなどの第2の接続デバイスをも含む。また、任意に、このキットは、3種の成分のさらなる混合のための、1つまたは2つの空の容器(16および17)、およびアダプタなどの第2の接続デバイスをも含む。
【0068】
図1は、本明細書中において記載される通りにフィブリンマトリックスを製造するための3つの混合オプションを示す。図1A中、第1の成分1および第2の成分2が提供されている。第1の成分1は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む。第2の成分は、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む。第1の成分1と第2の成分2とが混合されて、混合物4が得られる。この混合物4に、第1のドメインと、第2ドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質ドメインとを有する融合ペプチドを含む第3の成分3が添加されて、フィブリンマトリックス5が形成される。
【0069】
図1Bおよび図1C中には、これらの成分を混合するための2通りの順序が提供される。図1B中では、第1の成分1が第3の成分3と混合されて、混合物4’となる。この混合物4’に第2の成分2が添加されて、フィブリンマトリックス5が形成される。図1C中では、第2の成分2と第3の成分3とが混合されて混合物4’’が得られる。この混合物4’’に第1の成分1が添加されて、フィブリンマトリックス5が形成される。
【0070】
第1の成分1、第2の成分2、および第3の成分3を混合する順序とは独立して、図1A、1B、および1C中における3種の成分すべてを混合する時間は5日を超えない。
【0071】
図2A、2B、2C、2D、および2E中に、パーツからなるキット、および本明細書中において記載される方法におけるその使用が示される。このキットは図2A中に示され、第1の成分の入った第1の容器(11)と、第2の成分の入った第2の容器(12)とを含む。また、第3の成分の入った第3の容器(13)も提供される。第1の成分は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む。第2の成分は、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む。第3の成分は、TGplPTH1-34などのPTH融合ペプチドを含み、PTH1-34は、切断型のPTHの活性因子であり、plはプラスミン切断部位であり、TGは第2のドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質である。このキットは、3つのスロット14’、14’’、および14’’’を有する接続デバイス14をさらに含み、これらのスロットに、図2B~2D中にさらに記載されるように、3つの容器11、12、および13が接続されてよい。さらに、空の容器16と、アダプタ15などの第2の接続デバイスとが提供されてもよい。
【0072】
図2B中には、容器を接続するための第1の手法が提供される。容器11および12は、スロット14’および14’’のそれぞれを介して、接続デバイス14に直接接続される。容器13は、アダプタ15などの第2の接続デバイスによって、接続デバイスのスロット14’’’に接続される。容器11および12の内容物を接続デバイス14中に同時に押し出して、アダプタ15を通過させることによって、第1の成分と第2の成分との混合物が、容器13に入った第3の成分へと移される。
【0073】
図2C中には、容器を接続するための第2の手法が提供される。容器11および13は、スロット14’および14’’のそれぞれを介して、接続デバイス14に直接接続される。容器12は、アダプタ15などの第2の接続デバイスによって、接続デバイスのスロット14’’’に接続される。容器11および13の内容物を接続デバイス14中に同時に押し出して、アダプタ15を通過させることによって、第1の成分と第3の成分との混合物が、容器12に入った第2の成分へと移される。
【0074】
図2D中には、容器を接続するための第3の手法が提供される。容器12および13は、スロット14’および14’’のそれぞれを介して、接続デバイス14に直接接続される。容器11は、アダプタ15などの第2の接続デバイスによって、接続デバイスのスロット14’’’に接続される。容器12および13の内容物を接続デバイス14中に同時に押し出して、アダプタ15を通過させることによって、第2の成分と第3の成分との混合物が、容器11に入った第1の成分へと移される。
【0075】
図2B中の容器11および12、図2C中の容器11および13、ならびに図2D中の容器12および13は、たとえば2つの外筒を備えたシリンジの形状などのように、1つのデバイスにおける2つの区画として提供されてよいことが理解される。図2B~2D中に示される各容器は、図2B~2D中に示されるように、アダプタ15などの第2の接続デバイスによって、スロット14’’’に間接的に接続されてよい。代替的には、接続デバイス14のスロット14’’’は、アダプタなどの第2の接続デバイスを含んでよく、これにより、各容器への直接の接続を可能としてもよい。また、図2B~2D中に示される構成は、キット内で前もって一部または完全に組み立てられた状態で提供されてもよい。
【0076】
図2Eは、3種の成分をさらに混合するための方法を示す。このようなさらなる混合は、必要である場合もあるし、または、不要である場合もある。図2E中に示される方法は、さらなる混合の方法の1つを示すが、これが唯一の方法ではない。当該方法においては、接続デバイス14が空の容器16で置き換わっており、3種の成分の混合物の入った容器(図2B中に記載される混合方法については容器13、図2C中に記載される混合方法については容器12、および図2D中に記載される混合方法については容器11)に圧力をかけることによって、その内容物が容器16の中に押し出されて、すべての成分がより良好に混合される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。
【0077】
最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器(すなわち、使用される方法に依存して、容器11、12、13、または16)が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0078】
図2B~2E中、これらの容器の内容物は、プランジャー、または内容物を容器の外に押し出すための任意の他の好適な機構を使用して、排出されてよい。
【0079】
図3A、3B、3C、および3D中には、パーツからなるキット、および本明細書中において記載される方法におけるその使用が示される。図3A中に示されるキットは、第1の成分の入った第1の容器(11)と、第2の成分の入った第2の容器(12)とを含む。また、第3の成分の入った第3の容器(13)も提供される。第1の成分は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む。第2の成分は、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む。第3の成分は、TGplPTH1-34などのPTH融合ペプチドを含み、PTH1-34は、切断型のPTHの活性因子であり、plはプラスミン切断部位であり、TGは第2のドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質である。このキットは、アダプタ15などの接続デバイスをさらに含む。
【0080】
図3B中には、容器の内容物を混合するための第1の方法が提供される。容器11および13は、アダプタ15などの接続デバイスによって接続される。容器11の内容物が容器13に移され(または、その逆)、これによって、これら2つの容器の内容物が混合される。これら2種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。次いで、第1の成分と第3の成分との混合物の入った容器(すなわち、容器11または容器13のいずれか)がアダプタ15によって容器12に接続されて、第1の成分と第3の成分との混合物が第2の成分と混合される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0081】
図3C中には、容器の内容物を混合するための第2の方法が提供される。容器11および12は、アダプタ15などの接続デバイスによって接続される。容器11の内容物が容器12に移され(または、その逆)、これによって、これら2つの容器の内容物が混合される。これら2種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。次いで、第1の成分と第2の成分との混合物の入った容器(すなわち、容器11または容器12のいずれか)がアダプタ15によって容器13に接続されて、第1の成分と第2の成分との混合物が第3の成分と混合される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0082】
図3D中には、容器の内容物を混合するための第3の方法が提供される。容器12および13は、アダプタ15などの接続デバイスによって接続される。容器12の内容物が容器13に移され(または、その逆)、これによって、これら2つの容器の内容物が混合される。これら2種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。次いで、第2の成分と第3の成分との混合物の入った容器(すなわち、容器11または容器13のいずれか)がアダプタ15によって容器11に接続されて、第2の成分と第3の成分との混合物が第1の成分と混合される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0083】
図3B~3D中、これらの容器の内容物は、プランジャー、または容器から排出するための任意の他の好適な機構を使用して、排出されてよい。図3B~3D中に示される構成は、キット内で前もって一部または完全に組み立てられた状態で提供されてもよいことが理解される。
【0084】
図4A、4B、4C、および4D中には、パーツからなるキット、および本明細書中において記載される方法におけるその使用が示される。図4A中に示されるキットは、第1の成分の入った第1の容器(11)と、第2の成分の入った第2の容器(12)と、第3の成分の入った第3の容器(13)とを含む。第1の成分は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む。第2の成分は、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む。第3の成分は、TGplPTH1-34などのPTH融合ペプチドを含み、PTH1-34は、切断型のPTHの活性因子であり、plはプラスミン切断部位であり、TGは第2のドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質である。
【0085】
このキットは、3つの容器11、12、および13が接続され得る3つのスロット(14’、14’’、および14’’’)と、空の容器が直接または間接的に接続され得る、または図4B中に示されるように3種の成分の混合物を放出するために使用できる、第4のスロット14’’’’と、を有する接続デバイス14をさらに含む。さらに、3種の成分のさらなる混合のために、1つまたは2つの空の容器16および/または17と、アダプタ15などの第2の接続デバイスとが提供されてもよい。
【0086】
図4B中には、容器の内容物を混合するための方法が提供される。容器11、12、および13は、スロット14’、14’’、および14’’’のそれぞれを介して、接続デバイス14に直接接続される。容器11、12、および13の内容物を接続デバイス14中に同時に押し出すことによって、第1の成分、第2の成分、および第3の成分が混合される。フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物は、スロット14’’’’を通して、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用されてよい。これらの容器の内容物は、プランジャー、または内容物を容器の外に押し出すための任意の他の好適な機構を使用して、排出されてよい。
【0087】
図4Cは、3種の成分をさらに混合するための方法を示す。このようなさらなる混合は、必要である場合もあるし、または、不要である場合もあり、図4C中に示される方法は、さらなる混合方法の1つを示すが、これが唯一の方法ではない。当該方法においては、空の容器16が、アダプタ15などの第2の接続デバイスによってスロット14’’’’に接続され、容器11、12、および13に圧力をかけることによって、それらの内容物が、接続デバイス14を通って、容器16に移される。3種の成分の混合物の入った容器16は、接続デバイスから外されて、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物を投与するために使用されてもよい。フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物は、容器16中の開口部を通して、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用されてよい。この容器の内容物は、プランジャー、または内容物を容器の外に押し出すための任意の他の好適な機構を使用して、排出されてよい。
【0088】
任意に、図4D中に示されるように、接続デバイスがアダプタから外され、次いで、空の容器17がアダプタ15と接続される。その結果、容器16がアダプタ15の一端に繋がり、容器17がアダプタ15のもう一方の端に繋がる。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器(容器16または容器17のいずれか)が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0089】
図4Aおよび4B中の容器11、12、および13は3つの外筒を備えたシリンジとして提供されてもよいことが理解される。図4C中に示されるように、空の容器16がアダプタ15によって14’’’’に間接的に接続されてもよい、または、接続デバイス14のスロット14’’’’がそれ自体、容器16を接続デバイスのスロット14’’’に直接接続できるよう好適に構成されていてもよい。また、図4B中に示される構成は、キット内で前もって一部または完全に組み立てられた状態で提供されてもよい。
【0090】
図5A、5B、5C、5D、5E、5F、および5G中に、パーツからなるキット、および本明細書中において記載される方法におけるその使用が示される。このキットの異なる形状が、図5Aおよび5B中に示される。5Aは、第1の成分と第3の成分との混合物(1/3)の入った第1の容器18と、第2の成分(2)の入った第2の容器19とを含む第1のキットを示す。第1の成分は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む。第2の成分は、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む。第3の成分は、TGplPTH1-34などのPTH融合ペプチドを含み、PTH1-34は切断型のPTHの活性因子であり、plはプラスミン切断部位であり、TGは第2のドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質である。このキットは、3つのスロット(14’、14’’、および14’’’)を有する接続デバイス14をさらに含んでよく、ここで、2つの容器18および19はスロットのうち2つ(14’、14’’)に接続されてよく、空の容器16が第3のスロット14’’’に直接または間接的に接続されてよい、または、第3のスロット14’’’が、図5C中にさらに記載されるように、3種の成分の混合物を放出するために使用されてよい。さらに、1つまたは2つの空の容器16および17と、アダプタ15などの第2の接続デバイスとが、これらの成分を混合するために、または、図5Dおよび5G中に示されるようにこれらの成分をさらに混合するために、提供されてもよい。
【0091】
図5Bは、第1の成分(1)の入った第1の容器19と、第2の成分と第3の成分との混合物(2/3)の入った第2の容器18とを含む第2のキットを示す。第1の成分は、フィブリノゲンまたはフィブリノゲン前駆体およびトランスグルタミナーゼまたはトランスグルタミナーゼ前駆体を含む。第2の成分は、トロンビンまたはトロンビン前駆体を含む。第3の成分は、TGplPTH1-34などのPTH融合ペプチドを含み、PTH1-34は切断型のPTHの活性因子であり、plはプラスミン切断部位であり、TGは第2のドメイン中の共有結合架橋性トランスグルタミナーゼ基質である。このキットは、3つのスロット(14’、14’’、および14’’’)を有する接続デバイス14をさらに含んでよく、ここで、2つの容器18および19はスロットのうち2つ(14’、14’’)に接続されてよく、空の容器が第3のスロット14’’’に直接または間接的に接続されてよい、または、第3のスロット14’’’が、図5Cおよび5E中にさらに記載されるように、3種の成分の混合物を放出するために使用されてよい。さらに、1つまたは2つの空の容器16および17と、アダプタ15などの第2の接続デバイスとが、これらの成分を混合するために、または、図5Fおよび5G中に示されるようにこれらの成分をさらに混合するために、提供されてもよい。
【0092】
図5C中には、図5A中に示されるキットの容器の内容物を混合するための第1の方法が提供される。混合物(1/3)の入った容器18と第2の成分(2)の入った容器19とは、スロット14’および14’’のそれぞれを介して、接続デバイス14に直接接続される。容器18および19の内容物を第1の接続デバイス14の中に同時に押し出すことによって、第1の成分、第2の成分、および第3の成分が混合される。フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物は、スロット14’’’を通して、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用されてよい。代替的には、3種の成分は、図5G中に記載の通りに適用されるよりも前に、さらに混合されてもよい。
【0093】
図5D中には、図5A中に示されるキットの容器の内容物を混合するための第2の方法が提供される。混合物(1/3)の入った容器18と第2の成分(2)の入った容器19とは、アダプタ15などの接続デバイスによって、互いに直接接続される。容器18の内容物が容器19に移され(または、その逆)、これによって、これら2つの容器の内容物が混合される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0094】
図5E中には、図5B中に示されるキットの容器の内容物を混合するための第1の方法が提供される。混合物(2/3)の入った容器18と第1の成分(1)の入った容器19とは、スロット14’および14’’のそれぞれを介して、接続デバイス14に直接接続される。容器18および19の内容物を接続デバイス14中に同時に押し出すことによって、第1の成分、第2の成分、および第3の成分が混合される。フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物は、スロット14’’’を通して、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用されてよい。代替的には、3種の成分は、図5G中に記載の通りに適用されるよりも前に、さらに混合されてもよい。
【0095】
図5F中には、図5B中に示されるキットの容器の内容物を混合するため第2の方法が提供される。混合物(2/3)の入った容器18と第1の成分(1)の入った容器19とは、アダプタ15などの接続デバイスによって、互いに直接接続される。容器18の内容物が容器19に移され(または、その逆)、これによって、これら2つの容器の内容物が混合される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器が、アダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0096】
図5Gは、図5Cおよび5E中に示される方法によって生成した3種の成分をさらに混合するための方法を示す。このようなさらなる混合は、必要である場合もあるし、または、不要である場合もあり、図5G中に示される方法は、さらなる混合方法の1つを示すが、これが唯一の方法ではない。当該方法においては、空の容器16が、アダプタ15などの第2の接続デバイスによってスロット14’’’に接続され、図5C中に示される方法のためにまたは図5E中に示される方法のために、容器118および19に圧力をかけることによって、それらの内容物が第1の接続デバイス14を通って容器16に移される。次いで、第1の接続デバイス14がアダプタ15から外されて、代わりに、空の容器17がアダプタ15に繋げられる。その結果、3種の成分の混合物の入った容器16が、アダプタ15などの第2の接続デバイスの一端に接続され、第2の接続デバイス(たとえば、アダプタ15)の反対側の端が空の容器17に接続される。3種の成分の混合物を押して、矢印で示されるように2つの接続された容器の間で往復させることによって、この混合物の均質性が増大し得る。最後に、フィブリンマトリックスを形成するための最終混合物の入った容器がアダプタ15から外され、その内容物が、in situにて、体内で、または身体に接した状態で、または体外で適用される。
【0097】
図5Aおよび5B中の容器18および19は、2つの外筒を備えたシリンジとして提供されてもよいことが理解される。図5G中に示されるように、空の容器16がアダプタ15などの第2の接続デバイスによって14’’’に間接的に接続されていてもよい、または、代替的には、接続デバイス14のスロット14’’’がそれ自体、容器16をスロット14’’’に直接接続できるよう好適に構成されていてもよい。また、図5C~5G中に示される構成は、キット内で前もって一部または完全に組み立てられた状態で提供されてもよい。
【0098】
これらの容器の内容物は、プランジャー、または内容物を容器の外に押し出すための任意の他の好適な機構を使用して、排出されてよい。
【0099】
実施例
実施例1: 室温保存されているフィブリノゲン中でのTGplPTH1-34の経時的安定性
フィブリノゲン成分中におけるTGplPTH1-34の経時的安定性を評価するために、TGplPTH1-34をフィブリノゲン溶液と混合して、室温で保存した。
【0100】
TGplPTH1-34を濃度266μg/mlにてフィブリノゲン溶液に添加して、室温で上限34日間にわたってインキュベートした。指定の時点において試料を採取し、HPLCによってTGplPTH1-34濃度を求めた。簡潔には、関連物質を分離するためにZorbax Agilent RP18カラム(4.6×150mmm、5μm、300A)を使用し、HPLC-UV法によってTGplPTH1-34を定量した。溶出液Aとして0.1%TFA、1%ACNの水溶液を使用し、溶出液Bとして0.1%TFAのACN溶液を使用した。勾配は、0分 26%B、15分 38%B、18分 90%B、22分 26%B、24分 26%Bとした。注入した体積は20μlであり、流速は1ml/分とした。カラム温度は35℃であった。参照標準を使用して検量線を作成した。
【0101】
室温(20~25℃)で上限34日間にわたって保存したフィブリノゲン中におけるTGplPTH1-34の安定性を分析した結果が、表2中に示される。
【0102】
【表2】
【0103】
表2中に示されるように、TGplPTH1-34は、室温でフィブリノゲン溶液に曝露されると急速に分解した。フィブリンシーラントの製造に必要とされる時間枠内(3~5日)において、生成物の4.3~7.8%が既に分解していた。5日後、分解物の量は、最終生成物の適用に許容される範囲を外れたレベルに達する。TGplPTH1-34は、フィブリノゲンと混合できず、フィブリンシーラントの製造に使用されるプロセスにおいて混合後に5日を超えると使用できない。
【0104】
実施例2:異なる調製方法を使用した場合のTGplPTH1-34のフィブリンへの共有結合の比較
2通りの異なる方法によって調製したフィブリンマトリックスにおいて、TGplPTH1-34のフィブリンマトリックスへの共有結合の割合を、間接的アッセイを使用して求めた。このアッセイによって、マトリックスから洗浄除去できる非共有結合TGplPTH1-34を求める。第1の方法(予め混合)において、フィブリンシーラントARTISS(登録商標)の2種の成分を解凍して、TGplPTH1-34をフィブリノゲン成分と濃度2mg/mlにて予め混合した。混合直後、フィブリンシーラントの2種の成分を再び凍結して、-20℃において保存した。次いで、試料を解凍して、シーラントの2種の成分を混合した。混合したフィブリンシーラント中におけるTGplPTH1-34の最終濃度は、1mg/mlであった。
【0105】
第2の方法においては、2種のフィブリンシーラント成分を、水に溶解したTGplPTH1-34と直接混合して、最終濃度1mg/mlとした(図1Aを参照)。
【0106】
これら2通りの方法において、フィブリンマトリックスに共有結合しているTGplPTH1-34の量を評価するために、当該2通りの方法のいずれかによって調製した試料を保持アッセイに供した。試料の50μlを1.5mlエッペンドルフチューブに入れた。次いで、フィブリンマトリックスを37℃において1時間インキュベートした。プロテアーゼ阻害剤(Roche Cat#11836153001 cOmplete(商標)、Mini Protease Inhibitor Co)を添加した抽出バッファー(50mMトリス pH9.4、1M NaCl、0.1% Tween20)1.5mlを添加することによって、フィブリンマトリックスから非結合TGplPTH1-34を抽出し、常時振とうしながらインキュベートした。3時間後に上清を採取し、新しい抽出バッファー1.5mlをフィブリンマトリックスに添加した。この抽出工程を、6、24、30、および48時間後に繰り返した。採取した上清を、さらなる処理を行なうまで、-20℃において保存した。
【0107】
非結合TGplPTH1-34の量を求めるために、5つの採取上清を解凍してプールした。市販のPTH1-34ELISAキット(Immutopics、Cat♯60-3900)を使用して、製造元の推奨通りにELISAを行なうことによって、プール中のTGplPTH1-34を求めた。両調製方法につき、独立した実験を2回行なって(フィブリンマトリックス1つあたり、かつ実験1回あたり、試料3つ)、フィブリンマトリックスに結合していないTGplPTH1-34の量を求めた。これらの実験の結果が表3中に示される。
【0108】
【表3】
【0109】
表3中に示されるように、驚くことに、使用した2通りの方法において、フィブリンマトリックスに結合していない量が非常に類似していることが見いだされた。よって、上述される2通りの混合方法は、TGplPTH1-34のフィブリンマトリックスへの結合が類似している。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
【配列表】
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