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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】皮膚のシワ改善方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20231013BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A61K8/891
A61Q19/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020549395
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019038001
(87)【国際公開番号】W WO2020067358
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/036561
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 将行
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103885(JP,A)
【文献】特開2011-126807(JP,A)
【文献】特開2011-016734(JP,A)
【文献】特開2010-229094(JP,A)
【文献】特開2018-123071(JP,A)
【文献】特開2015-086150(JP,A)
【文献】特開2017-190300(JP,A)
【文献】特開2006-169145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0016862(US,A1)
【文献】特開2005-200320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0087888(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて該ポリマーを収縮させる工程とを有する皮膚のシワ改善方法であって、
該ポリマーがシリコーン変性ポリノルボルネンであり、
該ポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
方法(1):前記ポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液0.005gを、幅20mm×長さ100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシートの片面に、短辺の一端から長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1の値を変形割合とする。
方法(2):前記ポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させて試験片を作製する。該試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行い、該試験片上のポリマー膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径を求める。
【請求項2】
シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する方法であって、
該ポリマーがシリコーン変性ポリノルボルネンであり、
該ポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
方法(1):前記ポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液0.005gを、幅20mm×長さ100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシートの片面に、短辺の一端から長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1の値を変形割合とする。
方法(2):前記ポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させて試験片を作製する。該試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行い、該試験片上のポリマー膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径を求める。
【請求項3】
前記シワ周辺部において前記組成物を適用する領域が、シワの方向と交差する領域の少なくとも一部を含む請求項又はに記載の方法。
【請求項4】
前記領域が、シワの方向に沿った領域である請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記領域が、シワを挟んだ両側である請求項又はに記載の方法。
【請求項6】
前記組成物中の前記ポリマーの含有量が0.1質量%以上30質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.01以上0.5以下である請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚のシワ改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢によって人の皮膚にはシワが多くなる。これは皮膚の老化現象の一部であり、皮膚組織の変化、紫外線を浴びた影響など複数の因子に左右される。
皮膚のシワを目立たなくするための技術が提案されているが、美容整形による方法では皮膚に侵襲することにより形状制御する必要があった。皮膚のシワを非侵襲で改善するスキンケア商品も知られているが、その改善効果は極めて低く、シワの悩みを持つ女性の満足度は得られていなかった。
そこで、非侵襲で皮膚の形状を制御し、効果的にシワを改善できる方法が望まれている。
【0003】
ところで、化粧膜の均一性や化粧料の持ちを向上させることを目的として、膜形成性ポリマーを配合した化粧料が知られている。特許文献1は、所定のフラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、揮発性炭化水素、及び油溶性被膜形成樹脂を配合した、塗布性及び化粧膜の均一性に優れるメイクアップ用化粧料に関する。特許文献2は、ポリシクロオレフィン重合体の骨格に所定の官能基を導入した膜形成性ポリマーを含み、化粧もちや感触が良好な化粧料に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-247761号公報
【文献】特開2012-17317号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は下記[1]~[3]に関する。
[1]シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚に適用する皮膚のシワ改善方法であって、該ポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
方法(1):前記ポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液0.005gを、幅20mm×長さ100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシートの片面に、短辺の一端から長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1の値を変形割合とする。
方法(2):前記ポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させて試験片を作製する。該試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行い、該試験片上のポリマー膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径を求める。
[2]シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて該ポリマーを収縮させる工程とを有する皮膚のシワ改善方法であって、該ポリマーは、前記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
[3]シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する方法であって、該ポリマーは、前記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【0006】
本発明は、シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する方法であって、該ポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である方法に関する。
また本発明は、シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて該ポリマーを収縮させる工程とを有する皮膚のシワ改善方法であって、該ポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である方法に関する。
以下、これらの方法を適宜「本発明の改善方法」ともいう。
方法(1):前記ポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液0.005gを、幅20mm×長さ100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシートの片面に、短辺の一端から長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1の値を変形割合とする。
方法(2):前記ポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させて試験片を作製する。該試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行い、該試験片上のポリマー膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径を求める。
【0007】
さらに本発明は、シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する方法であって、該ポリマーは、前記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である方法に関する。以下、当該方法を適宜「本発明の適用方法」ともいう。
【0008】
本明細書において「皮膚のシワ」とは、皮膚表面に現れる凹凸及び筋目を意味する。皮膚のシワは口の回り、目の周り、額、首等に現れやすい。小さな筋目が小ジワ、大きな筋目が大ジワであり、大ジワは法令線、頬等の毛穴流れで発生する。本発明の改善方法はいずれのシワも目立たなくする効果を奏し、特に、法令線のような大ジワであっても非侵襲で改善できる点で好適である。
【0009】
本発明者は、前記所定の変形割合及び耐屈曲性を有する、シリコーン構造を有するポリマー(以下、単に「ポリマー」ともいう)を含有する組成物を皮膚に適用することにより、非侵襲で皮膚の形状を制御し、皮膚のシワを目立たなくすることができることを見出した。
本明細書において「皮膚のシワ改善方法」とは、後述するように、前記組成物に含有されるポリマーの収縮作用によりシワ周辺部の皮膚を引っ張って伸ばし、非侵襲で皮膚の形状を制御する方法である。すなわち物理的に皮膚のシワを伸ばして皮膚表面の凹凸形状を平坦化させる方法であり、例えば、化粧料等を皮膚に適用して皮膚表面の凹凸を埋めたり、光学的にシワを目立たなくする方法とは異なる概念である。
【0010】
<シリコーン構造を有するポリマー>
本発明に用いるシリコーン構造を有するポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である。
方法(1):前記ポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液0.005gを、幅20mm×長さ100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシートの片面に、短辺の一端から長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1の値を変形割合とする。
方法(2):前記ポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させて試験片を作製する。該試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行い、該試験片上のポリマー膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径を求める。
【0011】
シリコーン構造を有するポリマーが方法(1)により測定される上記変形割合を満たすことにより、例えば該ポリマーを含有する組成物をシワ周辺部の皮膚に塗布するなどして適用し、次いで該組成物を乾燥させた際に、該ポリマーを含む膜の収縮とともに該膜に密着した皮膚表面が収縮する。この作用により、シワを生じている部分の皮膚が伸ばされるので、シワを目立たなくすることができる。したがって本発明の改善方法は、前記組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて前記ポリマーを収縮させる工程とを有することが好ましい。
【0012】
前記方法(1)によるポリマーの変形割合(L2/L1)の評価方法を、図1を参照して説明する。まず、組成物に使用するポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。この溶液0.005gを、図1(a)に示す、幅(W)20mm×長さ(L0)100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシート1の片面に、ポリエチレンシート1の短辺の一端1aから長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲(図1(a)に示す2の部分)に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。図1(b)は、前記溶液を塗布したポリエチレンシート1を乾燥した後、その一部がポリマーの収縮により変形(カール)したポリエチレンシートの模式図である。
乾燥後のポリエチレンシート(図1(b))において、溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1(50mm)、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1を算出して、この値を変形割合とする。L2はポリエチレンシート1の2本の長辺上で計測した値の平均値とする。L2/L1の値が大きいほど、乾燥によるポリマーの収縮量が大きいことを示し、L2/L1の上限は1である。
【0013】
皮膚のシワを伸ばして目立たなくさせる観点から、前記方法(1)により評価される変形割合L2/L1は、0.3以上であり、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは0.85以上、より更に好ましくは0.9以上、より更に好ましくは0.95以上であり、上限は1である。
当該変形割合は、具体的には実施例に記載の方法で評価することができる。
【0014】
また本発明に用いるポリマーは耐屈曲性に優れ、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である。これにより、該ポリマーを含む膜はひび割れを起こしにくく、かつ、皮膚形状に追従した状態で収縮しやすくなる。
上記円筒形マンドレルの最小直径が小さいほど耐屈曲性が良好であることを意味する。前記ポリマーを含む膜が収縮する際の該膜と皮膚表面との十分な密着性を得る観点から、当該最小直径は25mm以下、好ましくは20mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは8mm以下、より更に好ましくは6mm以下、より更に好ましくは5mm以下である。一方で、皮膚のシワを伸ばして目立たなくさせるために十分な強度及び形状制御効果を付与する観点から、クラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上である。当該円筒形マンドレルの最小直径の具体的範囲は、好ましくは2~25mm、より好ましくは2~20mm、更に好ましくは2~12mm、より更に好ましくは2~8mm、より更に好ましくは3~6mm、より更に好ましくは3~5mmである。
当該耐屈曲性は、JIS K5600-5-1:1999で規定するタイプ1の折り曲げ試験装置を用いて、具体的には実施例に記載の方法で評価することができる。
【0015】
また本発明に用いるシリコーン構造を有するポリマーの、前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]は、皮膚のシワ改善効果の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、更に好ましくは0.10以上、より更に好ましくは0.15以上であり、皮膚のシワを伸ばして目立たなくさせるために十分な強度及び形状制御効果を付与する観点から、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下である。前記比率の具体的範囲は、好ましくは0.01~0.5、より好ましくは0.02~0.5、さらに好ましくは0.10~0.5、より更に好ましくは0.15~0.5、より更に好ましくは0.15~0.4である。
【0016】
本明細書において「シリコーン構造」とは、下記一般式(I)で表される構造をいう。
【化1】

一般式(I)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、pは1以上の整数である。本発明に適用した際に皮膚のシワを伸ばして目立たなくさせ、十分なシワ改善効果を得る観点(以下、「皮膚のシワ改善効果」ともいう)及び汎用性の観点から、Rは好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又はフェニル基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、より更に好ましくはメチル基である。
【0017】
当該ポリマーはシリコーン構造を有していればよく、シリコーン構造のみからなるポリマーでもよいが、前記所定の特性を有するポリマーとする観点では、一部にシリコーン構造を有するポリマーであることが好ましい。
一部にシリコーン構造を有するポリマーである場合、該シリコーン構造はポリマー中、主鎖、側鎖のいずれに存在していてもよく、前記所定の特性を有するポリマーとする観点では、側鎖に存在していることが好ましい。
シリコーン構造がポリマー主鎖に存在する場合、その結合形態にも特に制限はなく、例えば、シリコーン構造がポリマー主鎖の末端に存在していてもよいし、ポリマー主鎖中にシリコーン構造がブロック状又はランダム状に結合した共重合ポリマーであってもよい。また、シリコーン構造を有する化合物によりグラフト変性されたポリマーも用いることができる。
【0018】
本発明に用いられるポリマーとしてはシリコーン変性ポリマーが好ましく、その具体例としては、シリコーン変性ポリノルボルネン等のノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー;シリコーン変性プルラン;トリアルキルシロキシケイ酸、フッ素変性アルキルシロキシケイ酸、フェニル変性アルキルシロキシケイ酸等のシリコーン構造含有ケイ酸化合物;シリコーンデンドリマー;等が挙げられる。
【0019】
(ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー)
本明細書においてノルボルナン構造とは、下記式で示される構造を意味する。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーは、ポリマー中の任意の部位に該式で示される構造を有するシリコーン変性ポリマーであればよい。
【化2】

ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、下記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【化3】

式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、Xは下記式(i)で表される基である。aは1以上3以下の整数であり、bは0以上2以下の整数である。
【化4】

式中、Rは前記と同じであり、cは1以上5以下の整数である。
【化5】

式中、R、R及びbは前記と同じであり、dは2以上5以下の整数である。
【0020】
前記一般式(1)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、皮膚のシワ改善効果の観点及び汎用性の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、ブチル基、又はペンチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
Xは前記式(i)で表される基であり、式(i)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基である。皮膚のシワ改善効果の観点及び汎用性の観点から、Rは好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキル基又はフェニル基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキル基、より更に好ましくはメチル基である。cは1以上5以下の整数であり、汎用性の観点から、c=1が好ましい。すなわちXは、好ましくはトリメチルシロキシ基である。
aは1以上3以下の整数であり、例えばa=2の繰り返し単位とa=3の繰り返し単位が混合して存在する重合体であってよい。汎用性の観点から、aは3であることが好ましい。bは0以上2以下の整数であり、同様の観点から、好ましくは0、1又はこれらの組み合わせであり、0がより好ましい。
【0021】
前記一般式(2)中、R、R及びbは前記と同じである。dは2以上5以下の整数であり、汎用性の観点から、d=2が好ましい。一般式(2)における環状シリコーン構造は、同様の観点から、R及びRがメチル基であり、dが2又は3であることが好ましい。すなわち一般式(2)における環状シリコーン構造は、好ましくは下記式(4)又は(5)で示される構造である。
【化6】
【0022】
皮膚のシワ改善効果の観点から、ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位の割合は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上である。また、上限は100%であり、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは70%以下である。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位数の具体的範囲は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは10~100%、より好ましくは10~95%、更に好ましくは30~90%、より更に好ましくは50~70%である。
【0023】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーは、前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位に加えて、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有してもよい。
【化7】

式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又は、オキセタニル基、アルコキシカルボニル基、ポリオキシアルキレン基、ポリグリセリル基、又はアルコキシシリル基である。R~Rから選ばれる2つの基は、互いに結合して脂環構造、芳香環構造、カルボイミド基又は酸無水物基を形成していてもよい。bは前記と同じである。
【0024】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の上記一般式(3)で表される繰り返し単位の割合は、皮膚のシワ改善効果の観点から、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは90%以下、より好ましくは70%以下、更に好ましくは50%以下である。また上記一般式(3)で表される繰り返し単位を含む場合、その割合は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、更に好ましくは30%以上である。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の前記一般式(3)で表される繰り返し単位数の具体的範囲は、該ポリマー中の全繰り返し単位数のうち、好ましくは5~90%、より好ましくは10~70%、更に好ましくは30~50%である。
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー中の上記一般式(1)~(3)で表される繰り返し単位の割合は、H-NMR測定により求めることができる。
【0025】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、シリコーン変性ポリノルボルネンが好ましく、より好ましくは下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンである。
【化8】

式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
皮膚のシワ改善効果の観点から、一般式(6)中のeとfの割合は、好ましくはe/f=20/80~90/10(mol/mol)、より好ましくは30/70~80/20(mol/mol)であり、更に好ましくは50/50~70/30(mol/mol)である。
【0026】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーの数平均分子量Mnは、収縮性と耐屈曲性とを両立する観点及び皮膚のシワ改善効果の観点から、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは20万以上であり、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは80万以下、より更に好ましくは60万以下である。ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーの数平均分子量Mnの具体的範囲は、好ましくは5万~200万、より好ましくは10万~150万、更に好ましくは20万~80万、より更に好ましくは20万~60万である。
当該ポリマーの数平均分子量Mnは、ポリスチレンを標準物質としたゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)法により測定でき、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。
【0027】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーは、例えば、ノルボルナン構造を含有するか又はノルボルナン構造を形成し得るシリコーン変性環状オレフィンモノマーを公知の方法で付加重合させて得られる。
例えば前記一般式(1)又は(2)で表される繰り返し単位を有するノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーであれば、下記一般式(1a)又は(2a)で表される環状オレフィンモノマーを付加重合させて得ることができる。さらに、付加重合において、下記一般式(3a)で表される環状オレフィンモノマーを共重合させてもよい。
【化9】

式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上12以下のアルキル基であり、Xは下記式(i)で表される基である。aは1以上3以下の整数であり、bは0以上2以下の整数である。
【化10】

式中、Rはそれぞれ独立に炭素数1以上12以下の炭化水素基であり、cは1以上5以下の整数である。
【化11】

式中、R、R及びbは前記と同じであり、dは2以上5以下の整数である。
【化12】

式中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上10以下の、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びハロゲン化炭化水素基から選ばれる置換基、又は、オキセタニル基、アルコキシカルボニル基、ポリオキシアルキレン基、ポリグリセリル基、又はアルコキシシリル基である。R~Rから選ばれる2つの基は、互いに結合して脂環構造、芳香環構造、カルボイミド基又は酸無水物基を形成していてもよい。bは前記と同じである。
【0028】
上記一般式(3a)で表される環状オレフィンモノマーを共重合させる場合、その使用量は、皮膚のシワ改善効果の観点から、重合に使用する全モノマーを100モル%として、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは50モル%以下であり、また、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは30モル%以上である。
【0029】
前記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンは、下記式(6a)で表されるトリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネンと、ノルボルネンとを付加重合させて得ることができる。
【化13】

皮膚のシワ改善効果の観点から、トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネンと、ノルボルネンとの共重合比は、好ましくは20/80~90/10(mol/mol)、より好ましくは30/70~80/20(mol/mol)であり、更に好ましくは50/50~70/30(mol/mol)である。
【0030】
なお、前記一般式(1)~(3)、及び前記式(6)において示される繰り返し単位は、いずれも原料モノマーである環状オレフィンモノマーの2,3-付加構造単位を示すものであるが、該環状オレフィンモノマーの付加重合による2,7-付加構造単位となっているものが含まれていてもよい。
【0031】
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーが好ましく、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第16版,第2巻,2016年,p.2274):NORBORNENE/TRIS(TRIMETHYLSILOXY)SILYLNORBORNENE COPOLYMERで表記される化合物である。
市販のノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーとしては、信越化学工業(株)製「NBN-30-ID」(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーのイソドデカン溶液)等が挙げられる。
【0032】
(シリコーン変性プルラン)
シリコーン変性プルランとしては、側鎖にシリコーン構造を有するプルランが挙げられ、具体的には、皮膚のシワ改善効果の観点及び汎用性の観点から、プルラン中のOH基の水素原子の少なくとも一部が下記一般式(7)で表される基で置換されたシリコーン変性プルランが好ましい。
【化14】

式中、Zは単結合又は2価の有機基である。R、X、aは前記と同じであり、同様の観点から、Xは好ましくはトリメチルシロキシ基、aは好ましくは3である。
【0033】
一般式(7)において、同様の観点から、Zは2価の有機基であることが好ましく、下記一般式(8)又は(9)で表される2価の基がより好ましく、下記一般式(9)で表される2価の基がより好ましい。
【化15】

式中、R11は炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示される。同様の観点から、これらの中でもエチレン基、トリメチレン基、プロピレン基が好ましく、トリメチレン基又はプロピレン基がより好ましい。
【0034】
市販のシリコーン変性プルランとしては、信越化学工業(株)製「TSPL-30-ID」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのイソドデカン溶液)、「TSPL-30-D5」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのシクロペンタシロキサン溶液)等が挙げられる。
【0035】
(シリコーン構造含有ケイ酸化合物)
本発明に用いられるシリコーン構造含有ケイ酸化合物としては、末端にシリコーン構造を有するシリケート化合物が挙げられ、例えば、トリアルキルシロキシケイ酸、フッ素変性アルキルシロキシケイ酸、フェニル変性アルキルシロキシケイ酸等が挙げられる。
トリアルキルシロキシケイ酸におけるアルキル基は、皮膚のシワ改善効果の観点及び汎用性の観点から、好ましくは炭素数1以上10以下、より好ましくは炭素数1以上4以下であり、更に好ましくはメチル基である。トリアルキルシロキシケイ酸の具体例としてはトリメチルシロキシケイ酸が挙げられる。
フッ素変性アルキルシロキシケイ酸としては、トリアルキルシロキシケイ酸中のアルキル基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物が挙げられる。その具体例としては、トリフルオロプロピルジメチルシロキシケイ酸、トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。
フェニル変性アルキルシロキシケイ酸としては、例えば、フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸、フェニルプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸等が挙げられる。
【0036】
シリコーン構造含有ケイ酸化合物の中でも、皮膚のシワ改善効果の観点からはトリアルキルシロキシケイ酸及びフッ素変性アルキルシロキシケイ酸からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0037】
市販のシリコーン構造含有ケイ酸化合物としては、信越化学工業(株)製「KF-7312J」、「KF-7312K」、「KF-7312T」、「KF-7312L」、「X-21-5249」、「X-21-5250」、「KF-9021」、「X-21-5595」、「X-21-5616」、「KF-9021L」、「X-21-5249L」、「X-21-5250L」等のトリメチルシロキシケイ酸(溶液)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「XS66-B8226」(トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液)、「XS66-B8636」(トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸のジメチコン溶液)、「SilShine151」(フェニルプロピルジメチルシロキシケイ酸)等を用いることができる。
【0038】
(シリコーンデンドリマー)
シリコーンデンドリマーとしては、例えば、シロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系ポリマーが挙げられる。シロキサンデンドリマー構造は、皮膚のシワ改善効果の観点及び汎用性の観点から、具体的には下記一般式(10)で表される基であることが好ましい。
【化16】

式中、Rは前記と同じである。Zは単結合又は2価の有機基である。Xはi=1とした場合の下記一般式(11)で表される基であり、iは該基の階層を示す1以上10以下の整数である。
【化17】

式中、Rは前記と同じであり、R12は炭素数1以上10以下のアルキル基である。Zは炭素数2以上10以下のアルキレン基である。Xi+1は水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、アリール基又は一般式(11)で表される基であり、aは0以上3以下の整数である。
【0039】
一般式(10)において、Zは単結合又は2価の有機基であり、汎用性の観点から、2価の有機基であることが好ましく、下記一般式(12)、(13)又は(14)で表される2価の基がより好ましい。
【化18】

式中、R13は炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示され、汎用性の観点から、エチレン基、トリメチレン基、又はプロピレン基が好ましい。R14は炭素数1以上10以下のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、同様の観点から、メチル基が好ましい。R15は炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示され、同様の観点から、エチレン基が好ましい。qは0以上4以下の整数であり、rは0又は1である。
【0040】
上記のシロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するビニル系ポリマー(以下、単に「ビニル系ポリマー」ともいう)としては、下記一般式(15)で表される単量体由来の繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【化19】

式中、R及びXは前記と同じである。Yはビニル結合を含む基であり、例えば、ビニル基、2-アクリロイルオキシエチル基、3-アクリロイルオキシプロピル基、2-メタクリロイルオキシエチル基、3-メタクリロイルオキシプロピル基、4-ビニルフェニル基、3-ビニルフェニル基、4-(2-プロペニル)フェニル基、3-(2-プロペニル)フェニル基、2-(4-ビニルフェニル)エチル基、2-(3-ビニルフェニル)エチル基、アリル基、5-ヘキセニル基が挙げられる。これらのうち、汎用性の観点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基又はビニル基、より好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0041】
当該ビニル系ポリマーは、前記一般式(15)で表される単量体以外のビニル系単量体に由来する繰り返し単位をさらに含んでもよい。当該ビニル系単量体としては、ビニル結合を含む基を有しかつ前記一般式(15)で表される単量体以外の単量体であり、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレート、脂肪酸ビニルエステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン又はその誘導体等が挙げられ、これらを1種又は2種以上用いることができる。これらの中でも、汎用性の観点から、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、芳香環含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系単量体が好ましい。
【0042】
ビニル系ポリマー中の、前記一般式(15)で表される単量体由来の繰り返し単位の含有量は、皮膚のシワ改善効果の観点から、該ビニル系ポリマー中の全繰り返し単位に対し、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。また、上限は100質量%である。
【0043】
前記ビニル系ポリマーは、アクリル系ポリマーであることがより好ましい。すなわち、好ましいシリコーンデンドリマーとしては、シロキサンデンドリマー構造を側鎖に有するアクリル系ポリマー(以下、「アクリルシリコーンデンドリマー」ともいう)である。アクリルシリコーンデンドリマーは、前記一般式(15)において、Yが(メタ)アクロイル基である単量体由来の繰り返し単位を有するポリマーであり、一般式(15)で表される単量体以外の(メタ)アクリル系単量体に由来する繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0044】
市販のシリコーンデンドリマーとしては、東レ・ダウコーニング(株)製「FA 4001 CM Silicone Acrylate」(アクリレート-ポリトリメチルシロキシメタクリレート共重合体のシクロペンタシロキサン溶液)、「FA 4002 ID Silicone Acrylate」(アクリレート-ポリトリメチルシロキシメタクリレート共重合体のイソドデカン溶液)等のアクリルシリコーンデンドリマーが挙げられる。
【0045】
上記ポリマーの中でも、皮膚のシワ改善効果の観点からは、シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸、及びアクリルシリコーンデンドリマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、シリコーン変性ポリノルボルネン、シリコーン変性プルラン、トリメチルシロキシケイ酸、及びトリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸からなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、皮膚のシワ改善効果及び耐屈曲性の観点からは、シリコーン変性ポリノルボルネン及びシリコーン変性プルランからなる群から選ばれる1種以上が更に好ましく、シリコーン変性ポリノルボルネンがより更に好ましい。
【0046】
本発明に用いる組成物中の前記ポリマーの含有量は、皮膚のシワ改善効果の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上である。また、組成物の塗布性、処方の自由度、及び乾燥後に皮膚に違和感を与えないという観点から、組成物中の前記ポリマーの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下である。組成物中の前記ポリマーの含有量の具体的範囲は、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%、更に好ましくは1~20質量%、より更に好ましくは1~15質量%、より更に好ましくは5~15質量%である。
【0047】
<揮発性油>
本発明に用いる組成物は、皮膚のシワ改善効果をより高める観点から、さらに1気圧下、40℃、60%R.H.で30分乾燥後の揮発率が14%以上である揮発性油を含有することができる。揮発性油を含有させると、前記ポリマーを含有する組成物の乾燥速度が向上することにより乾燥過程でのポリマーの収縮が加速して、前述の作用機構により皮膚のシワを伸ばして目立たなくする効果がより向上する。
上記効果を得る観点から、揮発性油は、1気圧下、40℃、60%R.H.で30分乾燥後の揮発率が、好ましくは18%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは45%以上、より更に好ましくは65%以上、より更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは95%以上である。また、上限は100%である。
揮発性油の揮発率は、試料0.5gを直径40mmのガラス製シャーレに入れ、1気圧下、60%R.H.の環境下で、40℃にて30分静置して乾燥させて、乾燥前の試料質量をW(g)、乾燥後の試料質量をW(g)とし、{(W-W)/W}×100の値として求める。
なお、揮発性油は2種以上用いることができる。
【0048】
揮発性油の好ましい具体例としては、炭化水素油及びシリコーン油からなる群から選ばれる1種以上であってかつ揮発率が上記範囲である油剤が挙げられる。これら揮発性油の中でも、イソドデカン(揮発率33%)、ヘキサメチルジシロキサン(揮発率100%)、メチルトリメチコン、及び、25℃における動粘度が2cSt以下のジメチルポリシロキサンからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。なお当該動粘度は、例えばウベローデ粘度計を用いて測定できる。
揮発性油としては、より好ましくはイソドデカン及びヘキサメチルジシロキサンからなる群から選ばれる1種以上、更に好ましくはヘキサメチルジシロキサンである。
【0049】
本発明に用いる組成物中の揮発性油の含有量は、皮膚のシワ改善効果をより高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、より更に好ましくは80質量%以上であり、皮膚のシワ改善効果を高める観点及び処方の自由度の観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99質量%以下、より更に好ましくは97質量%以下、より更に好ましくは95質量%以下である。組成物中の揮発性油の含有量の具体的範囲は、好ましくは1~99.9質量%、より好ましくは5~99.5質量%、更に好ましくは10~99.5質量%、より更に好ましくは20~99.5質量%、より更に好ましくは25~99.5質量%、より更に好ましくは35~99.5質量%、より更に好ましくは35~99質量%、より更に好ましくは45~99質量%、より更に好ましくは50~99質量%、より更に好ましくは60~99質量%、より更に好ましくは70~99質量%、より更に好ましくは80~99質量%、より更に好ましくは80~97質量%、より更に好ましくは80~95質量%である。
【0050】
<その他の成分>
本発明に用いる組成物は前記成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、化粧料等に通常配合されるその他の成分を適宜含有してもよい。当該成分としては、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ビタミン剤、防腐剤、pH調整剤、香料、植物エキス類、保湿剤、着色剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等が挙げられる。
【0051】
本発明に用いる組成物の形態は、塗布等により皮膚に適用可能な形態であればよく、例えば溶液、乳液、クリーム、ローション、ジェル、パック、シート、泡状等の形態が挙げられる。
【0052】
本発明に用いる組成物は、皮膚に塗布等して適用し、次いで該組成物を乾燥させることにより前記ポリマーを収縮させて皮膚のシワ改善効果を奏する観点から、皮膚への適用時に液状であることが好ましく、25℃において液状であることがより好ましい。
【0053】
また本発明に用いる組成物は、皮膚に塗布等して適用し、次いで該組成物を乾燥させる工程でのポリマーの収縮を加速させ、皮膚のシワ改善効果を高める観点から、水の含有量が少ないことが好ましい。組成物中の水の含有量としては、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0054】
本発明の皮膚のシワ改善方法においては、具体的には、前記組成物を皮膚のシワ周辺部に塗布することなどにより適用することが好ましい。
また、本発明の適用方法においては、例えば、シワの周辺部に前記組成物を塗布することにより適用する。当該適用方法により、前述の作用機構により非侵襲で皮膚の形状を制御することができ、皮膚のシワを目立たなくすることができる。
【0055】
本明細書における「皮膚のシワ周辺部」は、シワの内部、すなわち皮膚表面の凹部や筋目の凹部とは区別される。本発明ではシワ周辺部の皮膚に前記ポリマーを含む組成物を適用することで、該組成物を乾燥させた際に前記ポリマーを含む膜の収縮とともにシワ周辺部の皮膚表面が収縮し、シワを生じている部分の皮膚が引っ張られてシワが目立たなくなるというものである。なお本発明の改善方法及び本発明の適用方法においては、本発明の効果が得られる限り、前記組成物を皮膚のシワ周辺部のみに限らず、シワの内部にも適用することを妨げない。
【0056】
上記効果を得る観点から、シワ周辺部の中でも、前記組成物を適用する領域としては、シワの方向と交差する領域の少なくとも一部を含むことが好ましい。シワの方向とは筋目が走る方向をいう。シワの方向と交差する領域に前記組成物を適用することで、シワを生じている部分の皮膚が伸ばされてシワが目立たなくなるためである。
シワの方向と交差する領域としては、シワの方向に沿った領域であることが好ましく、該領域はシワの片側のみでもよく、両側でもよい。特に、シワを挟んだ両側に前記組成物を適用することがより好ましい。シワを生じている部分の皮膚をシワの両側から引っ張ることにより、シワをより目立たなくすることができるためである。
シワの方向に沿った領域に前記組成物を適用する形態としては、例えば当該領域に前記組成物を面状、帯状、線状又はドット状に塗布する形態が挙げられ、具体的には、後述する図2図4に示す形態を例示できる。
【0057】
また、例えば法令線のように、シワの方向が重力方向に対し並行でない場合は、前記組成物を適用する領域(シワの方向と交差する領域)がシワの上側の領域を含むことが好ましい。ここでいう「重力方向」とは、人が直立している場合に重力が働く方向を意味し、「上側」とは、上記重力方向とは逆方向を意味する。少なくともシワの上側の領域に前記組成物を適用することで、シワを生じている部分の皮膚を上側に引っ張り、シワをより目立たなくすることができる。上記と同様の観点から、シワの方向が重力方向に対し並行でない場合において、前記組成物を適用する領域がシワを挟んだ上側及び下側の領域であり、かつ、シワの上側の領域の方がシワの下側の領域よりも広い範囲であることがより好ましい。
【0058】
本発明の適用方法において前記組成物を適用する形態の一例を図2図4に示す。
図2はシワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を面状又は帯状に塗布した形態であり、図2(a)はシワの上側の領域、図2(b)(c)はシワを挟んだ上側及び下側の領域にそれぞれ組成物を塗布したものである。シワをより目立たなくする観点からは、図2(c)のように、組成物を塗布する領域がシワを挟んだ上側及び下側の領域であり、かつ、シワの上側の領域の方がシワの下側の領域よりも広いことがより好ましい。
図3(a)(b)(c)はシワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を線状に塗布した形態であり、図4(a)(b)はシワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物をドット状に塗布した形態である。図3,4に示すように、前記組成物を線状又はドット状に塗布する場合も、皮膚をシワの両側から均等に引っ張る観点から、シワを挟んだ上側及び下側の領域に組成物を塗布することが好ましい。
【0059】
本発明の適用方法において、前記組成物の使用量は、シワを目立たなくする効果を発現しうる限り特に制限されないが、例えば0.01g以上、10g以下の量である。
【0060】
本発明の適用方法においては、前記組成物を皮膚のシワ周辺部に塗布するなどして適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて前記ポリマーを収縮させる工程とを有することが好ましい。該乾燥により、皮膚に塗布等した組成物中の前記ポリマーが収縮し、この収縮作用でシワ周辺部の皮膚を引っ張って伸ばすことにより皮膚表面の凹凸形状を平坦化させ、ひいてはシワを目立たなくする効果を奏する。
乾燥後は、必要に応じ前記組成物を除去してもよい。あるいは前記組成物を皮膚に適用し、次いで乾燥させた後、前記組成物を除去せず、その上から化粧を施してもよい。
【0061】
上述の実施形態に関し、本発明はさらに以下の実施態様を開示する。
<1>
シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚に適用する皮膚のシワ改善方法であって、
該ポリマーは、下記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、下記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
方法(1):前記ポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液0.005gを、幅20mm×長さ100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシートの片面に、短辺の一端から長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させる。前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1、乾燥後に収縮により変形した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1の値を変形割合とする。
方法(2):前記ポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製する。該溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させて試験片を作製する。該試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行い、該試験片上のポリマー膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径を求める。
<2>
シリコーン構造を有するポリマーを含有する組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する工程と、次いで該組成物を乾燥させて該ポリマーを収縮させる工程とを有する皮膚のシワ改善方法であって、
該ポリマーは、前記方法(1)により測定される変形割合が0.3以上1以下であり、かつ、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上25mm以下である、方法。
<3>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー、シリコーン変性プルラン、シリコーン構造含有ケイ酸化合物、及びシリコーンデンドリマーからなる群から選ばれる1種以上であり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が0.1質量%以上30質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.5以上1以下である、<1>又は<2>に記載の方法。
<4>
前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.01以上0.5以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の皮膚のシワ改善方法。
<5>
前記組成物中の前記ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1に記載の方法。
<6>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー及びシリコーン変性プルランからなる群から選ばれる1種以上である、<1>~<5>のいずれか1に記載の方法。
<7>
前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、前記ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上12mm以下である、<1>~<6>のいずれか1に記載の方法。
<8>
前記方法(1)により測定される変形割合が0.85以上1以下である、<1>~<7>のいずれか1に記載の方法。
<9>
前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.10以上0.5以下である、<1>~<8>のいずれか1に記載の方法。
<10>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーである、<1>~<9>のいずれか1に記載の方法。
<11>
ノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーが下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンである、<10>に記載の方法。
【化20】

式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<12>
前記式(6)中のeとfの割合が、e/f=20/80~90/10(mol/mol)である、<11>に記載の方法。
【0062】
<13>
前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、前記ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が3mm以上5mm以下である、<1>~<12>のいずれか1に記載の方法。
<14>
前記方法(1)により測定される変形割合が0.95以上1以下である、<1>~<13>のいずれか1に記載の方法。
<15>
前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.15以上0.4以下である、<1>~<14>のいずれか1に記載の方法。
<16>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー及びシリコーン変性プルランからなる群から選ばれる1種以上であり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.85以上1以下であり、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上12mm以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
<17>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマー及びシリコーン変性プルランからなる群から選ばれる1種以上であり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.85以上1以下であり、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が2mm以上12mm以下であり、前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.10以上0.5以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
<18>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーであり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.95以上1以下であり、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が3mm以上5mm以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
<19>
前記ポリマーがノルボルナン構造含有シリコーン変性ポリマーであり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.95以上1以下であり、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が3mm以上5mm以下であり、前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.15以上0.4以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
<20>
前記ポリマーが下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンであり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.95以上1以下であり、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が3mm以上5mm以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
【化21】

式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<21>
前記式(6)中のeとfの割合が、e/f=20/80~90/10(mol/mol)である、<20>に記載の方法。
<22>
前記ポリマーが下記式(6)で表されるシリコーン変性ポリノルボルネンであり、前記組成物中の該ポリマーの含有量が1質量%以上20質量%以下であり、前記方法(1)により測定される変形割合が0.95以上1以下であり、前記方法(2)により行われる円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、該ポリマーの膜にクラックが発生しない円筒形マンドレルの最小直径が3mm以上5mm以下であり、前記方法(2)により求められるマンドレルの最小直径(mm)に対する、前記方法(1)により求められる変形割合の比率[(変形割合)/(マンドレルの最小直径)]が0.15以上0.4以下である、<1>~<3>のいずれか1に記載の方法。
【化22】

式中、e、fは繰り返し単位数であり、それぞれ独立に1以上の整数である。
<23>
前記式(6)中のeとfの割合が、e/f=20/80~90/10(mol/mol)である、<22>に記載の方法。
<24>
前記組成物がさらに1気圧下、40℃、60%R.H.で30分乾燥後の揮発率が14%以上である揮発性油を含有する、<1>~<23>のいずれか1に記載の方法。
<25>
前記組成物中の揮発性油の含有量が45質量%以上99質量%以下である、<24>に記載の方法。
<26>
前記組成物が25℃において液状である、<1>~<25>のいずれか1に記載の方法。
<27>
前記組成物中の水の含有量が5質量%以下である、<1>~<26>のいずれか1に記載の方法。
<28>
前記組成物を皮膚のシワ周辺部に適用する方法であり、該シワ周辺部において該組成物を適用する領域が、シワの方向と交差する領域の少なくとも一部を含む、<1>~<27>のいずれか1に記載の方法。
【0063】
<29>
前記領域が、シワの方向に沿った領域である、<28>に記載の方法。
<30>
前記領域が、シワを挟んだ両側である、<28>又は<29>に記載の方法。
<31>
前記領域に前記組成物を面状、帯状、線状又はドット状に塗布する<27>~<30>のいずれか1に記載の方法。
<32>
前記シワ改善方法が、前記ポリマーの収縮作用によりシワ周辺部の皮膚を引っ張って伸ばし、非侵襲で皮膚の形状を制御する方法である、<1>~<31>のいずれか1に記載の方法。
【実施例
【0064】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。なお本実施例において、各種測定及び評価は以下の方法により行った。
【0065】
(数平均分子量Mn)
ポリマーの数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)法により、以下の条件で測定した。
測定装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)製)
カラム:K-806L(Shodex製)、2本直列
検出器:RI
溶離液:1mmol/L-ファーミンDM20(花王(株)製)/CHCl
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
【0066】
(変形割合)
各例の組成物に使用するポリマーの10質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製した。この溶液0.005gを、図1(a)に示す、幅(W)20mm×長さ(L0)100mm×厚さ0.03mmのポリエチレンシート1(エンシュー化成工業(株)製「LLフィルム」)の片面に、ポリエチレンシート1の短辺の一端1aから長さ方向に向けて幅20mm×長さ50mmの範囲(図1(a)に示す2の部分)に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で10分乾燥させた。乾燥後のポリエチレンシート(図1(b))において、前記溶液を塗布した部分のポリエチレンシートの長さをL1(50mm)、乾燥後に収縮により変形(カール)した部分のポリエチレンシートの長さをL2とし、L2/L1を算出して、この値をポリマーの変形割合とした。L2はポリエチレンシート1の2本の長辺上で計測した値の平均値とした。
【0067】
(耐屈曲性)
各例の組成物に使用するポリマーの30質量%ヘキサメチルジシロキサン溶液を調製した。この溶液を、200μmのアプリケーターを用いて幅50mm×長さ100mm×厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製「ルミラー100T60」)に塗布し、40℃に設定した恒温槽中で120分乾燥させてポリマー膜付きフィルム(試験片)を作製した。
得られた試験片を用いて、JIS K5600-5-1:1999で規定する円筒形マンドレル法に準拠して耐屈曲性試験を行った。タイプ1の折り曲げ試験装置(エリクセン社製屈曲試験機、Model 266)を使用し、試験片のポリマー膜側の面が外側になるようにして、直径32mm、25mm、20mm、16mm、12mm、10mm、8mm、6mm、4mm、3mm、及び2mmの円筒マンドレルを用いて直径の大きい円筒形マンドレルから順次耐屈曲性試験を行った。ポリマー膜にクラックが発生した時点で試験を終了し、クラックが発生しなかった円筒形マンドレルの最小直径(mm)を耐屈曲性の値とした。この値が小さいほど耐屈曲性に優れることを意味する。
【0068】
(シワ改善効果)
図2(c)の形態で、被験者の顔の半面の口元の法令線を挟むように各例の組成物0.2gを指で塗布した。室温(25℃)で10分乾燥させた後、専門評価者が下記5段階の基準でシワ改善効果を評価した。
5:シワがかなり薄くなった
4:シワが薄くなった
3:シワがやや薄くなった
2:シワが残ってあまり変わらない
1:変化なし
【0069】
実施例1~7、比較例1(組成物の製造及び評価)
表1に示す全成分を配合してディスパーで均一に混合し、表1に示す組成物を調製した。得られた組成物を用いて、前記方法で皮膚のシワ改善評価を実施した。結果を表1に示す。なお、表1に記載した配合量は各成分の有効成分量(質量%)である。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の配合成分は下記である。
*1:信越化学工業(株)製「NBN-30-ID」(下記式(6)においてe/f=60/40(mol/mol)、Mn=36万のノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーのイソドデカン溶液、有効分濃度:30質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
【化23】
【0072】
*2:信越化学工業(株)製「TSPL-30-ID」(トリ(トリメチルシロキシ)シリルプロピルカルバミド酸プルランのイソドデカン溶液、有効分濃度:30質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
*3:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「XS66-B8226」(トリフルオロプロピルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸のシクロペンタシロキサン溶液、有効分濃度:50質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
*4:信越化学工業(株)製「X21-5595」(トリメチルシロキシケイ酸のイソドデカン溶液、有効分濃度:60質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
*5:東レ・ダウコーニング(株)製「FA 4002 ID Silicone Acrylate」(アクリレート-ポリトリメチルシロキシメタクリレート共重合体のイソドデカン溶液、有効分濃度:40質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
*6:信越化学工業(株)製「KP-550」(アクリルポリマーとジメチルポリシロキサンからなるグラフト共重合体のイソドデカン溶液、有効分濃度:40質量%)を50℃で12時間減圧乾燥し、得られた固形分を使用した。
*7:信越化学工業(株)製「KF-96L-0.65cs」、ヘキサメチルジシロキサン
【0073】
シワ改善効果について、実施例1の結果を図5、比較例1の結果を図6に示す。図5(a)及び図6(a)は組成物を適用する前の法令線周辺部の写真であり、図5(b)及び図6(b)は組成物を適用した後の法令線周辺部の写真である。図5に示すように、実施例1の方法によれば法令線及びその周辺部の小ジワが目立たなくなっているのに対し、図6に示す比較例1では改善効果が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の方法によれば、非侵襲で皮膚の形状を制御し、皮膚のシワを目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】方法(1)によるポリマーの変形割合(L2/L1)の評価方法の説明図である。
図2】シワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を面状又は帯状に塗布した形態の一例である。
図3】シワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物を線状に塗布した形態の一例である。
図4】シワ(法令線)の周辺部の皮膚に組成物をドット状に塗布した形態の一例である。
図5】実施例1のシワ改善効果を示す写真である。
図6】比較例1のシワ改善効果を示す写真である。
【符号の説明】
【0076】
1 ポリエチレンシート
1a ポリエチレンシート1の短辺の一端
2 ポリマー溶液を塗布した部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6