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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】アンテナ装置、イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H01Q 11/08 20060101AFI20231013BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20231013BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01Q11/08
H01Q1/38
H04R1/10 104B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020552533
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2019029159
(87)【国際公開番号】W WO2020079911
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2018194238
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】川村 昴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正啓
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-225262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0295420(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 11/08
H01Q 1/38
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と、
第2端子と、
最大径が第1の径となる螺旋状に形成された第1放射部と、
一端が前記第1放射部の一端に連続して最大径が前記第1の径より大きい第2の径となる螺旋状に形成され、他端は開放端とされている第2放射部と、
前記第1放射部の他端と前記第1端子の間を接続する第1配線と、
前記第1放射部の前記他端と前記第2端子の間を接続する第2配線と、を備えた
アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1端子、前記第2端子、前記第1放射部、前記第2放射部、前記第1配線、及び前記第2配線は、グランドが形成されたグランド板に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体において金属により形成されている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、
前記第2放射部も一定の径で螺旋状に巻回されている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、
前記第2放射部の前記開放端側は、前記開放端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、
前記第1放射部の前記他端側は、前記他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1放射部の前記他端側は、前記他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回され、
前記第2放射部の前記開放端側は、前記開放端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1放射部及び前記第2放射部はグランドが形成されたグランド板に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体において金属により形成されているとともに、
前記板状体は、直方体の角部が落とされた形状とされている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1端子及び前記第2端子は、前記グランド板に平行な複数の配線層のうちで、前記グランド板に最も近い配線層に形成されている
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1放射部と前記第2放射部は、前記板状体における一の配線層の金属配線と、他の配線層の金属配線と、前記一の配線層と前記他の配線層をつなぐ層間配線を用いて、螺旋状の巻回構造が形成される
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第1配線と前記第2配線の少なくとも一方は、層間配線を用いて形成されている
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1配線と前記第2配線のうちの一方の配線であって、前記第1端子と前記第2端子のうちで前記第2放射部に近い方に接続される配線は、前記第1放射部と前記第2放射部の最大径の差による生じるスペースに配置される
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記第1配線と前記第2配線の一方が螺旋状に形成されている
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記アンテナ装置は、最長サイズがλ/(2π)以下である
請求項1に記載のアンテナ装置。
但しλはキャリア波長、πは円周率である。
【請求項14】
前記第1端子と前記第2端子は、その一方が高周波信号が入力される給電端子で他方がグランドに接続される短絡端子である
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
第1端子と、第2端子と、最大径が第1の径となる螺旋状に形成された第1放射部と、一端が前記第1放射部の一端に連続して最大径が前記第1の径より大きい第2の径となる螺旋状に形成され、他端は開放端とされている第2放射部と、前記第1放射部の他端と前記第1端子の間を接続する第1配線と、前記第1放射部の前記他端と前記第2端子の間を接続する第2配線と、を備えたアンテナ装置と、
グランドが形成されたグランド板と、を備えた
イヤホン。
【請求項16】
使用状態において、前記アンテナ装置から見て前記グランド板が人体側となるように、前記アンテナ装置及び前記グランド板が配置されている
請求項15に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術はアンテナ装置及びアンテナ装置を備えたイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電子機器が無線通信可能とされる状況において電子機器内蔵の小型のアンテナも各種開発されている。
下記特許文献1には少なくとも一部が螺旋状の逆Fアンテナで、小型高性能かつインピーダンス調整が容易なアンテナを実現する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-352212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年、特に機器の小型化が進み、それに伴って内蔵されるアンテナもさらなる小型化が求められている。例えば小型化されたワイヤレスイヤホンなどに内蔵される場合、アンテナサイズは非常に小さくなる。
また小型アンテナの最大性能はアンテナサイズの3乗に比例する。逆に言えばサイズが小さくなるとアンテナ性能が顕著に低下することになる。
そこで本技術ではアンテナの体積を有効利用して、アンテナ性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本技術に係るアンテナ装置は、第1端子と、第2端子と、最大径が第1の径となる螺旋状に形成された第1放射部と、一端が前記第1放射部の一端に連続して最大径が前記第1の径より大きい第2の径となる螺旋状に形成され、他端は開放端とされている第2放射部と、前記第1放射部の他端と前記第1端子の間を接続する第1配線と、前記第1放射部の前記他端と前記第2端子の間を接続する第2配線と、を備える。
第1放射部は第2放射部よりも径の小さい部分が生じ、その径の違いにより配線スペースが生じる。
【0006】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1端子、前記第2端子、前記第1放射部、前記第2放射部、前記第1配線、及び前記第2配線は、グランドが形成されたグランド板に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体において金属により形成されていることが考えられる。
例えば2層の配線層としての板状体の上下面側に、金属パターンにより第1端子、第2端子、第1放射部、第2放射部、第1配線、及び第2配線が形成される。
【0007】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、前記第2放射部も一定の径で螺旋状に巻回されていることが考えられる。
つまり第2放射部は比較的大きい第2の径で一定の螺旋状とされ、第1放射部は比較的小さい第1の径の螺旋状とされる。
【0008】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、前記第2放射部の前記開放端側は、前記開放端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されていることが考えられる。
例えば第2放射部の全体が開放端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたり、或いは第2放射部は第2の径として一定の径の部分に連続して開放端側の部分が開放端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたりする。
【0009】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第2放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、前記第1放射部の前記他端側は、前記他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されていることが考えられる。
例えば第1放射部の全体が他端側(つまり第1配線や第2配線との接続点側)に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたり、或いは第1放射部は第1の径として一定の径の部分に連続して他端側の部分が他端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたりする。
【0010】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1放射部の前記他端側は、前記他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回され、前記第2放射部の前記開放端側は、前記開放端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されていることが考えられる。
例えば第1放射部の全体が他端側(つまり第1配線や第2配線との接続点側)に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたり、或いは第1放射部は第1の径として一定の径の部分に連続して他端側の部分が他端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたりする。
さらに例えば第2放射部の全体が開放端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたり、或いは第2放射部は第2の径として一定の径の部分に連続して開放端側の部分が開放端側に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされたりする。
【0011】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1放射部及び前記第2放射部はグランドが形成されたグランド板に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体において金属により形成されているとともに、前記板状体は、直方体の角部が落とされた形状とされていることが考えられる。
例えば2層の配線層としての板状体に金属パターンにより第1放射部、第2放射部が螺旋状に形成されている。
【0012】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1端子及び前記第2端子は、前記グランド板に平行な複数の配線層のうちで、前記グランド板に最も近い配線層に形成されていることが考えられる。
例えば2層の配線層としての板状体の下面側(グランド板側)に第1端子、第2端子が形成される。
【0013】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1放射部と前記第2放射部は、前記板状体における一の配線層の金属配線と、他の配線層の金属配線と、前記一の配線層と前記他の配線層をつなぐ層間配線を用いて、螺旋状の巻回構造が形成されることが考えられる。
例えば2層の配線層としての板状体の上面側と下面側の配線層の配線が層間配線(ビア等)により接続されて巻回構造が形成される。
【0014】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1配線と前記第2配線の少なくとも一方は、層間配線を用いて形成されていることが考えられる。
例えば2層の配線層としての板状体の下面側の端子から層間配線(ビア等)を介して第1放射部に接続される配線構造とする。
【0015】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1配線と前記第2配線のうちの一方の配線であって、前記第1端子と前記第2端子のうちで前記第2放射部に近い方に接続される配線は、前記第1放射部と前記第2放射部の最大径の差による生じるスペースに配置されることが考えられる。
例えば第1端子が第2放射部に近い方である場合、第1配線のみ、又は第1配線と第2配線の両方が最大径の差による生じるスペースに配置される。
或いは第2端子が第2放射部に近い方である場合、第2配線のみ、又は第2配線と第1配線の両方が最大径の差による生じるスペースに配置される。
【0016】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1配線と前記第2配線の一方が螺旋状に形成されていることが考えられる。
即ち第1配線又は第2配線が、第1放射部に連続して螺旋状に形成される。
【0017】
上記した本技術に係るアンテナ装置においては、最長サイズがλ/(2π)以下であることが考えられる(λはキャリア波長、πは円周率)。
即ち電気的小型アンテナと呼ばれるアンテナ装置とする。
また上記した本技術に係るアンテナ装置においては、前記第1端子と前記第2端子は、その一方が高周波信号が入力される給電端子で他方がグランドに接続される短絡端子であることが想定される。
【0018】
本技術に係るイヤホンは、上記アンテナ装置と、グランドが形成されたグランド板と、を備えたイヤホンである。
この場合、使用状態において、前記アンテナ装置から見て前記グランド板が人体側となるように、前記アンテナ装置及び前記グランド板が配置されていることが考えられる。
これにより人体方向への放射レベルを小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本技術の実施の形態のイヤホンの説明図である。
図2】比較例としてのアンテナ装置の構造の説明図である。
図3】第1の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図4】第2の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図5】第3の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図6】第4の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図7】第5の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図8】第3の実施の形態による部品実装可能エリアの拡大の説明図である。
図9】第3の実施の形態による周波数・インピーダンス調整の説明図である。
図10】第3の実施の形態による部品との配置関係の説明図である。
図11】第3の実施の形態によるタッチセンサ面積の拡大の説明図である。
図12】第4の実施の形態による部品実装可能エリアの拡大の説明図である。
図13】第5の実施の形態による部品実装可能エリアの拡大の説明図である。
図14】第6の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図15】第7の実施の形態のアンテナ装置の構造の説明図である。
図16】実施の形態のイヤホンにおけるアンテナ配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.イヤホンの構造>
<2.比較例>
<3.アンテナ装置の第1,第2の実施の形態>
<4.アンテナ装置の第3,第4,第5の実施の形態>
<5.アンテナ装置の第6,第7の実施の形態>
<6.イヤホン内でのアンテナ装置の配置>
<7.まとめ及び変形例>
【0021】
<1.イヤホンの構造>
実施の形態のイヤホンの構造を図1で説明する。
図1Aはイヤホン10の外観例を示す。このイヤホン10は本体部11と、本体部11に取り付けられるイヤーパッド12を有している。
本体部11は断面が円形となるような略円筒形状とされ、その先端部にイヤーパッド12が装着される。
このイヤホン10は、イヤーパッド12の部分がユーザの耳孔に挿入される状態で使用される。
【0022】
イヤホン10は、いわゆるワイヤレスイヤホンとされ、本体部11には無線通信のためのアンテナ装置となるアンテナ部1が内蔵されている。
図1B図1Cはイヤホン10の内部の配置部品の一部を示している。図1Bは本体部11の円形面11B側(イヤーパッド12とは逆側)から見た状態、図1Cは上記円形面11B側を上方とした状態で斜視的にみた状態で、それぞれ内部を透視したように示している。
なお、円形面11Bは、ユーザがイヤホン10を耳孔に装着したときに、外側に表出する面である。
【0023】
そしてこれら図1B図1Cでは、イヤホン10の内部に配置される部品として、アンテナ部1、グランド面が形成された基板2(以下「グランド板2」とする)、IC(Integrated Circuit)3、IC3の周辺回路を構成する抵抗やコンデンサ等の電子部品(以下「周辺素子4」とする)、短絡部5、給電部6を示している。
なお本体部11内にはさらに音声出力を行うドライバユニットや放音路を形成する部品等が配置されるが、それらは図示及び説明を省略する。
【0024】
アンテナ部1は、グランド板2に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体8により形成されている。この板状体8において金属パターンにより放射部や必要な端子、配線が形成される。詳しくは後述する。
【0025】
グランド板2は、この例の場合、本体部11内において、円形面11Bと平行な状態で配置されるように円板形状とされている。このグランド板2は例えば通信回路等を構成するIC3、周辺素子4、その他の回路がマウントされる回路基板としての機能とともに、グランド面を形成するものとされる。
このグランド板2とアンテナ部1(板状体8)は本体部11内でほぼ並行に配置されている。そしてアンテナ部1とグランド板2上に形成された通信回路の間では、給電部6により高周波信号の伝送が行われる。またアンテナ部1は短絡部5によりグランド板2上に形成されたグランドに接続される。
【0026】
<2.比較例>
例えば以上のようなイヤホン10内のアンテナ部1は、ヘリカル付の逆Fアンテナとして構成する。逆Fアンテナは構造調整のみで、ある程度インピーダンス調整可能なため、インピーダンスが低下する小型アンテナに適しているためである。
【0027】
ここで逆Fアンテナは給電配線と短絡配線のスペースを取るという事情がある。そこで実施の形態のアンテナ部1は、立体的な構造で給電/短絡配線の占める体積を低減し、放射部の体積を拡大する。
この理解のため、まず図2に本実施の形態の構造を適用しない比較例を示す。
【0028】
図2は、例えば本実施の形態のようにイヤホン等に搭載する小型アンテナとしてヘリカル構造を有する逆Fアンテナを考えた場合に想定される構成例である。
この図2ではグランド板110と平行に、直方体の板状体により形成されるアンテナ部100が配置されている状態を示している。
アンテナ部100には放射部101、給電端子105、短絡端子106、給電配線107、短絡配線108が形成されている。
放射部101は螺旋状に形成されたヘリカル構造とされている。
給電端子105には、高周波信号源109から給電部103を介して高周波信号が供給される。この給電端子105は給電配線107により放射部101に接続されている。
短絡端子106は、短絡部104を介してグランド板110に形成されたグランドに接続されている。この短絡端子106は短絡配線108により放射部101に接続されている。
【0029】
この図2では、アンテナ部100の長手方向サイズMSの約半分程度しか、放射部101として使用できていない状態を示している。つまり長手方向サイズMSの約半分程度は給電配線107、短絡配線108に占められている。
これは、例えば給電端子105、短絡端子106の配置位置(端子間の離間距離)が、グランド板110上の回路、コネクタ配置、部品サイズなどの影響である程度規制されたり、端子としてある程度のサイズが要求されるなど、各種の理由による。
これらの事情で、放射部101が短くなると、放射効率低下や狭帯域化を生じる。特に、電気的小型アンテナではこの影響が顕著となってしまう。
そこで本実施の形態では、例えば長手方向サイズMSがこの比較例と同等の場合でも、放射部を長くとることができるようにし、性能向上を実現する。
【0030】
<3.アンテナ装置の第1,第2の実施の形態>
アンテナ装置としての第1の実施の形態となるアンテナ部1の構造について図3A図3B図3Cを参照して説明する。
図3Aでは、図1B図1Cのようにイヤホン10内に配置されるアンテナ部1とグランド板2を模式的に示している。
なお、以下では、第1から第7の実施の形態としてのアンテナ部1を区別して説明する場合には「アンテナ部1A」等、「1A」「1B」「1C」「1D」「1E」「1F」「1G」の符号により区別し、これらを総称する場合を「アンテナ部1」と表記する。
【0031】
第1の実施の形態のアンテナ部1Aは、グランド板2と平行な板状体8(破線で示す)において、第1放射部21、第2放射部22、給電端子24、短絡端子25、給電配線26、短絡配線27が、それぞれ金属パターンにより形成されている。
板状体8は少なくとも2つの配線層を有する構造とされている。例えば上面と下面に金属パターンが形成されることで、上記各部が形成される。
なお説明上、グランド板2側を下方として、板状体8の「下面」「上面」を指す。各図では下面LL、上面ULとして示している。
板状体8の上面UL側は図1の円形面11B側の面となる。各図は、この上下方向に合わせて示している。
板状体8には上面UL側の配線層と下面LL側の配線層が少なくとも形成されることになる。各配線層はそれぞれ、板状体8の上面UL又は下面LLに表出する層でもよいし、表出しない層としてもよい。
【0032】
なお図中、板状体8内で上下方向の柱状に示している部分はビア29である(符号「29」は図の煩雑化を避けるために一部にのみ示している)。このビア29により上面UL側の配線層と下面LL側の配線層が導通される。
【0033】
アンテナ部1Aを構成する板状体8の最大長部分は長手方向サイズMSとなるが、この長手方向サイズMSは、λをキャリア波長、πを円周率としたときにλ/(2π)以下とする。つまり上述のイヤホン10に十分搭載可能な電気的小型アンテナを構成するものとされている。
なおグランド板2は円形であるが、このグランド板2も直径がλ/(2π)以下とすることも考えられる。
【0034】
アンテナ部1Aにおける第1放射部21と第2放射部22は連続した巻回構造とされる。即ち第1放射部21の一端と第2放射部の一端が接続端T1で連続されている。
第2放射部22は、接続端T1から板状体8の長手方向(図中左側)に進むように螺旋状に巻回されたヘリカル構造とされ、他端側が開放端T3とされている。
この第2放射部22の巻回構造は、板状体8の上面UL側の配線層と下面LL側の配線層における金属パターンがビア29によって接続されることで構成される。
【0035】
第1放射部21は、接続端T1から他端側(配線接続端T2)の間で板状体8の長手方向に進む螺旋状に巻回されたヘリカル構造とされている。
この第1放射部21の巻回構造も、板状体8の上面UL側の配線層と下面LL側の配線層における金属パターンがビア29によって接続されることで構成される。
なお第1放射部21は少なくとも一巻きあればよい。
【0036】
第2放射部22は一定の径d2で螺旋状に形成され、第1放射部21は一定の径d1で螺旋状に形成されている。
そして螺旋状の第1放射部21の径d1は、同じく螺旋状の第2放射部22の径d2よりも小さいものとされる(d1<d2)。
【0037】
下面LL側の配線層には給電端子24、短絡端子25が形成されている。
給電端子24は給電点とされ、給電部6により高周波信号源7からの高周波信号が供給される。この給電端子24は給電配線26により第1放射部21の配線接続端T2に接続されている。
給電配線26は、この図の例では、下面LL側の給電端子24からビア29、上面UL側の配線、ビア29により、配線接続端T2に達するように形成されている。
【0038】
短絡端子25は短絡部5によりグランド板2におけるグランドに接続されている。この短絡端子25は短絡配線27により第1放射部21の配線接続端T2に接続されている。
短絡配線27は、この図の例では、下面LL側の短絡端子25から下面LL側の配線として配線接続端T2に達するように形成されている。
【0039】
ここで上記のように第1放射部21の径d1が第2放射部22の径d2より小さいものとされることで、板状体8上に金属パターンを形成するスペースが生じる。
図3Bに、板状体8の上面UL側の配線層HUに形成される金属パターンを示している。径d1,d2の差により、放射部全体(第1放射部21と第2放射部22)を構成する領域内に破線で示すスペースSPが生ずることになる。
そこで、このスペースSPを利用して、給電配線26を形成している。
【0040】
また図3Cに、板状体8の下面LL側の配線層HLに形成される金属パターンを示している(図3Bと同じ上方からの視点で示す)。
こちらも径d1,d2の差により、放射部全体を構成する領域内に破線で示すスペースSPが生ずる。このスペースSPを利用して、給電端子24や短絡端子25を形成している。
【0041】
以上のように第1の実施の形態のアンテナ部1Aは、給電配線26と短絡配線27を除く部分が螺旋状の第1放射部21と第2放射部22に分かれている逆Fアンテナとされている。
そして第1放射部21の径d1は、第2放射部22の径d2より小さく、この径の違いにより生じるスペースSPには少なくとも給電端子24と給電配線26の一部が設けられている。
つまり給電端子24や給電配線26のために、板状体8の長手方向に放射部の巻回を形成するスペースが制限されないことになる。
従ってアンテナ部1Aの体積を最大限に有効活用して放射部を構成できるので、アンテナサイズを変えることなくアンテナの放射効率、および帯域幅といった性能を改善することができる。
或いは、この構成によれば、アンテナサイズを小さくしてもアンテナの放射効率、および帯域幅といった性能を維持できるということにもなる。
さらに全体的に金属パターンとしてのラインやスペースに余裕ができ、作りやすさが改善される。
【0042】
またアンテナ部1Aでは、給電端子24と短絡端子25では、給電端子24が第2放射部22に近い方に配置されているが、この給電端子24は給電配線26が、スペースSPを利用して形成されることで、放射部の長手方向の延長を可能とする効率的な配置が行われていることになる。
またアンテナ部1Aでは、第2放射部22に近い側の給電端子24と給電配線26を、ビア29を利用して、上面UL側の配線層HUと下面LL側の配線層HLに分かれて配置されるようにしている。これにより効率良くスペースSPを利用して給電端子24と給電配線26を形成できる。
またアンテナ部1Aでは、短絡端子25と短絡配線27を、配線層HLを用いて形成しているため、短絡配線27と給電配線26が配線層HL、HUに分かれることになる。これにより短絡配線27と給電配線26の長手方向の占有部分を小さくできるため、放射部全体の長手方向の使用可能領域を伸ばすことができる。これも小型アンテナとしての性能向上に寄与する。
【0043】
第2の実施の形態のアンテナ部1Bを図4に示す。
アンテナ部1Bの第1放射部21と第2放射部22の構造は上記のアンテナ部1Aと同様である。
異なる点は、アンテナ部1Bでは、第2放射部22に近い側が短絡端子25、遠い側が給電端子24とされている点である。
【0044】
給電端子24には給電部6により高周波信号源7からの高周波信号が供給される。
給電配線26は、この図の例では、下面LL側の給電端子24から下面LL側の配線として配線接続端T2に達するように形成されている。
短絡端子25は短絡部5によりグランド板2におけるグランドに接続されている。
短絡配線27は、この図の例では、下面LL側の短絡端子25からビア29、上面UL側の配線、ビア29により、配線接続端T2に達するように形成されている。
つまり第2の実施の形態では、第1放射部21と第2放射部22の径の差により生じるスペースを利用して、短絡配線27や短絡端子25を形成している。
【0045】
これにより第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
そして、インピーダンス整合の観点からは、アンテナ部1Bの構成がアンテナ部1Aより適している場合もある。
つまり状況に応じてアンテナ部1A、1Bの構成が選択されるようにすることで、同サイズなら性能向上、さらに小型化する場合は性能維持という点で有利なアンテナ装置を実現できることになる。
【0046】
なお以下の第3から第7の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第2放射部22に近い方に給電端子24が配置される構成で説明するが、それらの各構成でも、第2の実施の形態のように第2放射部22に近い方に短絡端子25が配置される構成が考えられる。
【0047】
<4.アンテナ装置の第3,第4,第5の実施の形態>
アンテナ装置の第3,第4,第5の実施の形態としてのアンテナ部1C,1D,1Eをそれぞれ図5図6図7で説明する。
なお、以降の各実施の形態では記述の第1の実施の形態のアンテナ部1Aと同一部分については重複説明を避ける。
【0048】
図5は第3の実施の形態のアンテナ部1Cを示している。
このアンテナ部1Cでは、第1放射部21は、螺旋状に巻回されているが、その径は一定ではない。接続端T1側から配線接続端T2側に向かうにつれて、徐々に径が小さくなるようにされている。
また第2放射部22も螺旋状に巻回されているが、その径は一定ではなく、接続端T1側から開放端T3側に向かうにつれて、徐々に径が小さくなるようにされている。
【0049】
そして板状体8は、このような第1放射部21と第2放射部22により余分な領域となってしまう角部が切り落とされたような形状となっている。つまり第2放射部22側の角部分が切欠部32、第1放射部21は側の角部分が切欠部31とされている。
【0050】
図6は第4の実施の形態のアンテナ部1Dを示している。
このアンテナ部1Dでは、第1放射部21は、一定の径で螺旋状に巻回されている。
一方、第2放射部22も螺旋状に巻回されているが、その径は一定ではなく、接続端T1側から開放端T3側に向かうにつれて、徐々に径が小さくなるようにされている。
そして板状体8は、第2放射部22側の角部分が切欠部32とされた形状となっている。
【0051】
図7は第5の実施の形態のアンテナ部1Eを示している。
このアンテナ部1Eでは、第1放射部21は、螺旋状に巻回されているが、その径は一定ではなく、接続端T1側から配線接続端T2側に向かうにつれて、徐々に径が小さくなるようにされている。
また第2放射部22は一定の径で螺旋状に巻回されている。
そして板状体8は、第1放射部21側の角部分が切欠部31とされた形状となっている。
【0052】
これらのアンテナ部1C,1D,1Eでは、第1の実施の形態のアンテナ部1Aによる効果に加えて次のような効果が得られる。
【0053】
まずアンテナ部1Cでは、図8に示すように部品実装可能エリアPAを広げることができる。
図8Aは上方から第1の実施の形態のアンテナ部1Aとグランド板2を見た状態、図8Bは上方から第3の実施の形態のアンテナ部1Cとグランド板2を見た状態をそれぞれ示している。
アンテナ部1Cの場合、イヤホン10の本体部11内で、矢印R1方向(本体部11の円周方向)に寄せて配置することができる。このためアンテナ部1Aを搭載する場合よりもアンテナ部1Cを搭載する場合の方が、グランド板2上の部品実装可能エリアPAを広くとることができる。
【0054】
また、巻回の径が一定でないということによれば、設計上、各種の微調整の余地を残すことにもなる。
図9Aに対し図9Bは、第1放射部21の径が徐々に小さくされる部分において、矢印Q1の部分の径をより小さくした場合を示している。
第1放射部21の径を小さくすることで、周波数を高周波側に微調整することができる。つまり第1放射部21の径の調整により送受信の周波数の微調整ができる。
【0055】
また図9Aに対し図9Cは、第1放射部21の径が徐々に小さくされる部分において給電配線26のビア29の位置(矢印Q2部分)を変更した場合を示している。結果的に第1放射部21の径が小さくなっている。
このように給電配線26のビア29の位置を変えることでインピーダンスを微調整できる。
【0056】
図10は電子回路部品とアンテナ部1A、1Cの位置関係を示している。
図10A図10Bは、図1B図1Cと同様にイヤホン10にアンテナ部1Aを搭載した場合、図10C図10Dはアンテナ部1Cを搭載した場合をそれぞれ示している。
上述のようにアンテナ部1Cの場合、アンテナ部1Aの場合よりも本体部11の周面に寄せて配置することができる。
【0057】
例えばアンテナ部1のサイズや電子部品のサイズや数、配置の都合により、アンテナ部1Aを搭載する場合において、図10Aの範囲Wの部分のようにアンテナ直下に電子部品が被って配置される部分が生じたとする。このような場合、アンテナ特性に影響が生ずることがあり、そのような場合、配置変更が必要になる。
一方、アンテナ部1Cの場合は図10Cのように、電子部品にアンテナ部1Cが被る部分は生じない。
これは一例であるが、つまりアンテナ部1Cの場合は、アンテナ下部に電子部品が配置される位置関係となることを避けやすく、設計が容易になる。又は設計の自由度が高くなる。
【0058】
図11はイヤホン10の円形面11B側にタッチセンサ15を設ける場合を示している。アンテナ性能を考慮すると、タッチセンサ15は円形面11B側から見てアンテナ部1に重ならないように配置されることが好適となる。
すると、図11A図11Bのようにアンテナ部1Aを配置する場合と、図11C図11Dのようにアンテナ部1Cを配置する場合とでは、アンテナ部1Cを円周部分に寄せて配置する方が、タッチセンサ15の面積を広くとれることになる。
従ってアンテナ部1Cを用いることで、よりタッチセンサ15の面積を広くすることが可能で、タッチセンサの感度向上にも有利である。
【0059】
上記図8ではアンテナ部1Cの場合において部品実装可能エリアPAの拡大を述べたが、アンテナ部1D,1Eでも部品実装可能エリアPAの拡大が可能である。
図12Aは上方からアンテナ部1Aとグランド板2を見た状態、図12Bは上方からアンテナ部1Dとグランド板2を見た状態をそれぞれ示している。
アンテナ部1Dの場合、イヤホン10の本体部11内で、矢印R2方向(本体部11の円周方向)に寄せて配置することができる。このためアンテナ部1Aを搭載する場合よりもアンテナ部1Dを搭載する場合の方が、グランド板2上の部品実装可能エリアPAを広くとることができる。
【0060】
また図13Aは上方からアンテナ部1Aとグランド板2を見た状態、図13Bは上方からアンテナ部1Eとグランド板2を見た状態をそれぞれ示している。
アンテナ部1Eの場合、イヤホン10の本体部11内で、矢印R3方向(本体部11の円周方向)に寄せて配置することができる。このためアンテナ部1Aを搭載する場合よりもアンテナ部1Eを搭載する場合の方が、グランド板2上の部品実装可能エリアPAを広くとることができる。
【0061】
なお、アンテナ部1C,1D,1Eにおいて、第1放射部21、第2放射部22の一方又は両方は、接続点T1から徐々に径が小さくなるようにしたが、必ずしも各巻回部分で径が異なるようにする必要はない。例えば巻数が多数の場合、同一径の部分を有しながら段階的に径が小さくなっていくようにしてもよいし、少なくとも一巻きのみ径が異なるものであってもよい。
例えば第2放射部22は径d2として一定の径の部分に連続して、開放端T3側の部分が、開放端T3に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされることも考えられるし、開放端T3側の一巻きのみ径が小さくなっていてもよい。
また第1放射部21は径d1として一定の径の部分に連続して、配線接続端T2側の部分が、配線接続端T2に向かうにつれて徐々に径が小さくなるようにされることも考えられるし、配線接続端T2側の一巻きのみ径が小さくなっていてもよい。
【0062】
<5.アンテナ装置の第6,第7の実施の形態>
第6の実施の形態のアンテナ部1Fを図14に示す。
このアンテナ部1Fは、第1放射部21の配線接続端T2に接続される短絡配線27も螺旋状に巻回されているものである。
このようにすることで、インピーダンス調整の幅が広がるという利点が得られる。またこれにより、例えばアンテナ部1Aの構成よりもアンテナ部1Fの方が適しているという場合も生ずる。
【0063】
第7の実施の形態のアンテナ部1Gを図15に示す。
このアンテナ部1Gは、第3の実施の形態のアンテナ部1Cと同様に、第1放射部21は螺旋状の巻回の径が接続端T1側から配線接続端T2側に向かうにつれて徐々に小さくなるようにされている。また第2放射部22も螺旋状の巻回の径が接続端T1側から開放端T3側に向かうにつれて徐々に小さくなるようにされている。
一方、板状体8は角部を落とすことなく直方体の形状としている。
このように板状体8の形状を直方体にしたままで、螺旋状の巻回の径が非一定となるような例も想定される。特に直方体でも配置に問題がない場合において、周波数調整やインピーダンス調整の目的でこのような構造を採ることが想定される。
【0064】
<6.イヤホン内でのアンテナ装置の配置>
イヤホン10内でのアンテナ部1の配置及び放射指向性について説明する。
図16Aはユーザの耳孔にイヤホン10を装着した状態を示している。図16Bはこの装着時の状態のX,Y,Z方向を示している。
イヤホン10の装着状態では人体方向がグランド板2側となり、これにより人体方向への放射が抑えられる。
【0065】
図16Cは、XZ平面内とYZ平面内でみたアンテナ部1の放射指向性である。
アンテナ部1は、この放射指向性で示されるように人体方向への放射が小さくなるように設計する。すると、装着時の特性変化や、装着向きがY軸を中心に回転したときの特性変化を低減することができる。
【0066】
<7.まとめ及び変形例>
以上の実施の形態によれば次のような効果が得られる。
実施の形態のアンテナ部1は、高周波信号が入力される給電端子24(第1端子の一例)と、グランドに接続される短絡端子25(第2端子の一例)とを有する。第1放射部21は、最大径が径d1となる螺旋状に形成されている。第2放射部22は一端(接続端T1)が第1放射部21の一端(接続端T1)に連続して最大径が径d1より大きい径d2となる螺旋状に形成され、他端は開放端T3とされている。さらに第1放射部21の他端(配線接続端T2)と給電端子24の間を接続する給電配線26(第1配線の一例)と、第1放射部21の他端(配線接続端T2)と短絡端子25の間を接続する短絡配線27(第2配線の一例)とを備える。
この構成の場合、給電端子24からの給電配線26、又は短絡端子25からの短絡配線27のいずれかを、第1放射部21と第2放射部22の径の違いにより生じたスペースに配線することができる。
そしてこれは換言すれば、給電配線26や短絡配線27の配置にかかわらず、放射部(第1放射部21及び第2放射部22)を構成できることになる。
つまり、アンテナ部1の体積を最大限に有効活用して放射部(21,22)を構成できるので、アンテナサイズを変えることなくアンテナの放射効率、および帯域幅といった性能を改善できる。
または、アンテナサイズを小さくする場合には、実施の形態の構成を採用することで、アンテナの放射効率、および帯域幅といった性能を維持できるということにもなる。
また全体的に配線やスペースに関して余裕ができ、設計の自由度や製造の容易性が改善されることにもなる。
なお、上記では給電端子24を第1端子、短絡端子25を第2端子としたが、給電端子24を第2端子、短絡端子25を第1端子と考えてもよい。その場合、給電配線26が第2配線、短絡配線27が第1配線となる。
【0067】
実施の形態のアンテナ部1は、給電端子24、短絡端子25、給電配線26、短絡配線27、第1放射部21、第2放射部22は、グランド板2に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体8において金属により形成されているとした。
例えば直方体又は一部が切り欠かれた直方体などの板状体の上下面を用いることで金属パターンにより螺旋状の第1放射部21、第2放射部22を容易に作成できる。
具体的にはこの場合、第1放射部21、第2放射部22は、2層の配線とそれらの層間をつなぐビア29で構成され、アンテナ部1の長手方向に向かって螺旋状に巻回されるようにすることができる。
なお少なくとも2つの配線層を有することで、ヘリカル構造ができるが、配線層を3層、4層などの多層構造としてもよい。
【0068】
第1,第2、第6の実施の形態のアンテナ部1A、1B、1Fは、第1放射部21、第2放射部22はそれぞれ一定の径で螺旋状に巻回されている。
つまり第2放射部22は比較的大きい径d2で一定の螺旋状とされ、第1放射部21は比較的小さい径d1の螺旋状とされる。
この場合、配線層に径d1,d2の差によるスペースが形成されることになり、この構成は給電配線26や短絡配線27の有効な配置が可能な一例となる。
【0069】
第4の実施の形態のアンテナ部1Dは、第1放射部21は一定の径で螺旋状に巻回され、第2放射部22の開放端T3側は、開放端T3に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている例とした。
この構成も、第1放射部21と第2放射部22の最大径の差によるスペースが形成され給電配線26や短絡配線27の有効な配置が可能となる一例となる。
またこの構成をとる場合、アンテナ部1は板状体8の第2放射部22側の角を落とした形状(切欠部32のある形状)とすることができる。これによりアンテナ部1の配置の自由度が高まる。
そして断面円形となるイヤホン10の本体部11内に配置する場合は、図12で説明したようにアンテナ部1を円周部分に寄せることができ、グランド板2における部品実装可能エリアPAを広く確保できる。
【0070】
第5の実施の形態のアンテナ部1Eは、第2放射部22は一定の径で螺旋状に巻回され、第1放射部21の他端側(配線接続端T2側)は、その他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている例とした。
この構成も、第1放射部21と第2放射部22の最大径の差によるスペースが形成され給電配線26や短絡配線27の有効な配置が可能となる一例となる。
また第1放射部21の径を調整することで、周波数を高周波側に微調整したり、インピーダンスを微調整することもできる。
またこの構成をとる場合も、アンテナ部1は板状体8の第1放射部21の他端側(配線接続端T2側)の角を落とした形状(切欠部31のある形状)とすることができる。これによりアンテナ部1の配置の自由度が高まる。
そして断面円形となるイヤホン10の本体部11内に配置する場合は、図13で説明したようにアンテナ部1を円周部分に寄せることができ、グランド板2における部品実装可能エリアPAを広く確保できる。
【0071】
第3の実施の形態のアンテナ部1Cは、第1放射部21の他端側(配線接続端T2側)は、その他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回され、第2放射部22の開放端T3側は、開放端T3に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている例とした。
この構成も、第1放射部21と第2放射部22の最大径の差によるスペースが形成され給電配線26や短絡配線27の有効な配置が可能となる一例となる。
またこの場合、アンテナ部1は板状体8の第2放射部22の開放端側の角、及び第1放射部21の他端側(給電配線26や短絡配線27の接続点側)の角を落とした形状(切欠部32,31のある形状)とすることができる。これによりアンテナ部1の配置の自由度がさらに高まる。
そして断面円形となるイヤホン10の本体部11内に配置する場合は、図8で説明したようにアンテナ部1を円周部分に寄せることができ、グランド板2における部品実装可能エリアPAを、より広く確保できる。
特に両側が切り欠かかれる形状とされ、アンテナ部1の配置がより円周部分に近づけることで、図10Bで説明したように、アンテナ部1の下部に部品がないようにすることも有利となる。これによりアンテナ部1に部品が被って特性に影響がでることや、それによる部品の配置変更が必要になるなどを回避できる。
また図11Bで説明したように、タッチセンサ15を設ける場合にはその面積を十分に確保できるようになる。従って感度の良好なタッチセンサ15の実現にも有利である。
なおこれらの効果は第4,第5の実施の形態(片側の切欠)でも得られるが、両側を切り欠く形状とされることで効果が顕著となる。
【0072】
第3,第4,第5の実施の形態のアンテナ部1C,1D,1Eは、第1放射部21及び第2放射部22が、グランド板2に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体8において金属により形成され、板状体8は、直方体の角部が落とされた形状(切欠部32,31の一方又は両方がある形状)とされている。
螺旋の径が一定ではない場合、板状体8は角を落とした形状とすることができる。これにより上述のようにアンテナ部1の配置の自由度が向上し、イヤホン10内では円筒状の本体部11の周面に寄らせて配置することが可能となる。
【0073】
実施の形態のアンテナ部1では、給電端子24、短絡端子25は、グランド板2に平行な複数の配線層のうちで、グランド板に最も近い、板状体8の下面LL側の配線層に形成されているとした。
これによりグランド板との接続構成が容易となる。
【0074】
実施の形態のアンテナ部1では、第1放射部21と第2放射部22は、板状体8における一の配線層の金属配線と、他の配線層の金属配線と、一の配線層と他の配線層をつなぐ層間配線(ビア29)を用いて、螺旋状の巻回構造が形成されるようにした。
これにより板状体8における金属パターンで第1放射部21と第2放射部22が形成されるとともに、配線層において、第1放射部21と第2放射部22の径の違いによりスペースを生じさせる構造とすることができる。
【0075】
実施の形態のアンテナ部1では、給電配線26と短絡配線27の少なくとも一方は、層間配線(ビア29)を用いて形成されている。例えばアンテナ部1Aでは給電配線26がビア29を用いて形成され、アンテナ部1Bでは短絡配線27がビア29を用いて形成されている。
これにより板状体で螺旋構造をとる第1放射部21と、給電端子24(又は短絡端子25)の間を、給電配線26(又は短絡配線27)により適切に接続することができる。
特に給電配線26と短絡配線27を異なる配線層に振り分けることもでき、径の違いにより生じたスペースをそれぞれの配線で有効利用できる。
【0076】
実施の形態のアンテナ部1では、給電端子24と短絡端子25のうちの第2放射部22に近い方に接続される配線(給電配線26又は短絡配線27)は、第1放射部21と第2放射部22の最大径の差による生じるスペースに配置されるようにした。
例えば給電端子24が第2放射部22に近い方である場合、給電配線26のみ、又は給電端子24と給電配線26の両方が最大径の差による生じるスペースSPに配置される。
或いは短絡端子25が第2放射部22に近い方である場合、短絡配線27のみ、又は短絡端子25と短絡配線27の両方が最大径の差による生じるスペースSPに配置される。
例えば比較例で示したように、給電端子24と短絡端子25のうちの放射部に近い方からの配線によって、スペースが有効活用できないことが生じる。実施の形態では、少なくとも給電端子24と短絡端子25のうちの第2放射部22に近い方からの配線が、第1放射部21により生じたスペースSPに配置されることで、スペース効率の点で適切な配線となる。
【0077】
第6の実施の形態のアンテナ部1Fでは、短絡配線27が螺旋状に形成されている例を挙げた。この例のように短絡配線27を螺旋状にしたり、又は給電配線26を螺旋状にすることも考えられる。
これによりインピーダンス調整の幅を広げることができ、アンテナ性能向上を可能とする場合もある。
【0078】
実施の形態のアンテナ部1は、最長サイズがλ/(2π)以下であるとした。
即ち電気的小型アンテナと呼ばれるアンテナ装置とする。電気的小型アンテナにおいてアンテナ性能向上を実現することができる。
【0079】
実施の形態のイヤホン10は、アンテナ部1とグランド板2を備えている。
そして使用状態において、アンテナ部1から見てグランド板2が人体側となるように、アンテナ部及び前記グランド板が配置されている。これにより人体方向への放射が小さくなる。
【0080】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0081】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
第1端子と、
第2端子と、
最大径が第1の径となる螺旋状に形成された第1放射部と、
一端が前記第1放射部の一端に連続して最大径が前記第1の径より大きい第2の径となる螺旋状に形成され、他端は開放端とされている第2放射部と、
前記第1放射部の他端と前記第1端子の間を接続する第1配線と、
前記第1放射部の前記他端と前記第2端子の間を接続する第2配線と、を備えた
アンテナ装置。
(2)
前記第1端子、前記第2端子、前記第1放射部、前記第2放射部、前記第1配線、及び前記第2配線は、グランドが形成されたグランド板に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体において金属により形成されている
上記(1)に記載のアンテナ装置。
(3)
前記第1放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、
前記第2放射部も一定の径で螺旋状に巻回されている
上記(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
(4)
前記第1放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、
前記第2放射部の前記開放端側は、前記開放端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている
上記(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
(5)
前記第2放射部は一定の径で螺旋状に巻回され、
前記第1放射部の前記他端側は、前記他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている
上記(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
(6)
前記第1放射部の前記他端側は、前記他端に近づくに従って径が小さくなるように巻回され、
前記第2放射部の前記開放端側は、前記開放端に近づくに従って径が小さくなるように巻回されている
上記(1)又は(2)に記載のアンテナ装置。
(7)
前記第1放射部及び前記第2放射部はグランドが形成されたグランド板に平行な複数の配線層を持つ絶縁性誘電体の板状体において金属により形成されているとともに、
前記板状体は、直方体の角部が落とされた形状とされている
上記(1)から(6)のいずれかに記載のアンテナ装置。
(8)
前記第1端子及び前記第2端子は、前記グランド板に平行な複数の配線層のうちで、前記グランド板に最も近い配線層に形成されている
上記(2)に記載のアンテナ装置。
(9)
前記第1放射部と前記第2放射部は、前記板状体における一の配線層の金属配線と、他の配線層の金属配線と、前記一の配線層と前記他の配線層をつなぐ層間配線を用いて、螺旋状の巻回構造が形成される
上記(2)(7)(8)のいずれかに記載のアンテナ装置。
(10)
前記第1配線と前記第2配線の少なくとも一方は、層間配線を用いて形成されている
上記(2)(7)(8)(9)のいずれかに記載のアンテナ装置。
(11)
前記第1端子と前記第2端子のうちの前記第2放射部に近い方に接続される配線としての前記第1配線と前記第2配線の一方は、前記第1放射部と前記第2放射部の最大径の差による生じるスペースに配置される
上記(1)から(10)のいずれかに記載のアンテナ装置。
(12)
前記第1配線と前記第2配線の一方が螺旋状に形成されている
上記(1)から(11)のいずれかに記載のアンテナ装置。
(13)
前記アンテナ装置は、最長サイズがλ/(2π)以下である
上記(1)から(12)のいずれかに記載のアンテナ装置。
但しλはキャリア波長、πは円周率である。
(14)
前記第1端子と前記第2端子は、その一方が高周波信号が入力される給電端子で他方がグランドに接続される短絡端子である
上記(1)から(13)のいずれかに記載のアンテナ装置。
(15)
第1端子と、第2端子と、最大径が第1の径となる螺旋状に形成された第1放射部と、一端が前記第1放射部の一端に連続して最大径が前記第1の径より大きい第2の径となる螺旋状に形成され、他端は開放端とされている第2放射部と、前記第1放射部の他端と前記第1端子の間を接続する第1配線と、前記第1放射部の前記他端と前記第2端子の間を接続する第2配線と、を備えたアンテナ装置と、
グランドが形成されたグランド板と、を備えた
イヤホン。
(16)
使用状態において、前記アンテナ装置から見て前記グランド板が人体側となるように、前記アンテナ装置及び前記グランド板が配置されている
上記(14)に記載のイヤホン。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G アンテナ部、2 グランド板、3 IC、4 周辺素子、5 短絡部、6 給電部、7 高周波信号源、8 板状体、10 イヤホン、11 本体部、12 イヤーパッド、15 タッチセンサ、21 第1放射部、22 第2放射部、24 給電端子、25 短絡端子、26 給電配線、27 短絡配線、29 ビア、31,32 切欠部、T1 接続端、T2 配線接続端、T3 開放端
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