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特許7366060自動構成検出を提供するバイオプロセスシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】自動構成検出を提供するバイオプロセスシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20231013BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231013BHJP
【FI】
G01N30/02 Z
G06T7/00 300F
G06T7/00 300E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020561894
(86)(22)【出願日】2019-05-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2019063075
(87)【国際公開番号】W WO2019228858
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】1808801.3
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ペトラ・バングトソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーアン・アルトゥーソン
(72)【発明者】
【氏名】ケイ・ヒュッケンベリ
(72)【発明者】
【氏名】ロッタ・ヘドクヴィスト
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-099413(JP,A)
【文献】特開2007-108006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0278635(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0137613(US,A1)
【文献】国際公開第2017/045746(WO,A1)
【文献】特表2012-529650(JP,A)
【文献】特開2000-097924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 - 30/96
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオプロセスシステム(10)における自動構成検出の方法であって、
前記バイオプロセスシステム(10)のユニット間の流体連通のためのチュービング(50)を含む前記バイオプロセスシステム(10)の少なくとも1つの画像を捕捉するステップと、
前記バイオプロセスシステム(10)のユニットを接続する前記チュービング(50)の少なくとも一部を識別するために、前記少なくとも1つの捕捉画像を分析ルーチンにおいて分析するステップと、
前記チュービング(50)の少なくとも一部が識別される前記少なくとも1つの捕捉画像から処理表現を作成するステップと
前記バイオプロセスシステム内の流路表現によって規定されるプロセスを検証するステップであって、前記処理表現と前記流路表現とを比較してそれらの機能的整合を検証するステップを含む、ステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記プロセスを検証するステップは、前記チュービング(50)の誤って接続された部分および/または欠落部分を識別するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの画像を分析する前記ステップが、前記バイオプロセスシステム(10)に関連する先験的情報を利用するステップを含み、前記先験的情報が、前記バイオプロセスシステム(10)内に存在するユニットのタイプについての情報を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分析するステップにおいて、少なくとも2つの異なる画像が捕捉され、前記処理表現を作成するために使用され、前記分析するステップが、前記処理表現を作成するために必要な情報を抽出するために追加の画像が有用であり得るかどうかを判断し、追加の画像が有用であると判断される場合に、追加の画像を捕捉させるための通知を発行するサブステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ユーザによって操作されるカメラ(60)が、複数の画像を捕捉するために利用され、前記分析するステップにおいて、前記ユーザが、追加の画像を捕捉させるための通知を受信するか、または代替的に、前記ユーザが、画像の捕捉を停止させるための通知を受信し、前記分析するステップにおいて、能動的行為の通知が発行されて前記ユーザに転送され、能動的行為の前記通知が、前記捕捉画像内の特徴の識別を容易にするために、前記バイオプロセスシステム(10)の前記チュービングおよび/または他のユニットの少なくとも一部を操作させるための前記ユーザへの指示を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
自動化されたカメラ(60)が、複数の画像を捕捉するために利用され、前記分析するステップにおいて、前記自動化されたカメラ(60)が、追加の画像を捕捉させるための通知を受信するか、または代替的に、前記自動化されたカメラ(60)が、画像の捕捉を停止させるための通知を受信する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記バイオプロセスシステム(10)の拡張ライブビュー画像を作成するステップ、
a)前記チュービングの少なくとも一部が、前記画像の拡張ライブビューの中で区別できるようにマークされる、処理画像の形の前記処理表現を利用するステップ、または
b)前記拡張ライブビュー画像内の特定のプロセスステップ内で係合される前記チュービングおよびユニットの部分を視覚的にマークするために、前記処理表現を利用して、前記流路表現によって表される前記プロセス内に少なくとも1つのステップを示すステップ
をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの個々のチュービング接続が接続されるべき場所をユーザに示す、前記バイオプロセスシステム(10)の拡張ライブビュー画像を作成することによってユーザにセットアップ支援を提供するステップをさらに含み、少なくとも1つの個々のチュービング接続および流路の一部に対応する1つのユニットが、前記流路表現と比較することによって前記処理表現内で識別され、前記識別されたユニットが、前記拡張ライブビュー画像内でマークされる、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(501) バイオプロセスシステムの画像を捕捉するステップと、
(502) 前記チュービングの少なくとも一部を識別するために前記捕捉画像を分析するステップと、
(503) 前記チュービングおよび前記捕捉画像にある他の特徴が十分に識別されるかどうかを判断するステップであって、十分であると判断されるならば、処理表現を作成するために進み(520)、十分でないと判断されるならば、前記画像がいかにして改善されるかを評価するために進む(506)、ステップと、
(506) より多くの画像が捕捉されるべきであるかどうかを判断するステップであって、より多くの画像が捕捉されるべきであるならば、問題のある領域の識別のために進み(508)、より多くの画像でも前記処理表現が改善しないと判断するならば、示すことに進む(507)、ステップと、
(507) 前記画像が、識別されない前記チュービングおよび/または特徴の一部を含み得ることを示すステップであって、処理表現を作成するために進む(520)、ステップと、
(508) 前記分析される画像内で問題のある領域を識別するステップであって、能動的行為を選択するために進む(509)、ステップと、
(509) 前記問題のある領域の分析に基づいて、あらかじめ決定された能動的行為のリストから適切な能動的行為を選択するステップと、
(510) 前記選択された能動的行為およびその能動的行為がどのように実行されるべきかについてオペレータに通知するステップであって、前記捕捉するステップに戻る(501)、ステップと、
(520) 識別された前記チュービングの少なくとも一部を有する処理表現を作成するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
バイオプロセスシステム内の自動構成検出のためのシステムであって、前記プロセスが、流路表現によって規定され、前記システムが、バイオプロセスシステム(10)、CPU(40)、GUI(41)、およびカメラ(60)を備え、
前記カメラ(60)が、前記バイオプロセスシステム(10)のユニット間の流体連通のためのチュービング(50)を含む前記バイオプロセスシステム(10)の少なくとも1つの画像を捕捉して、前記画像を前記CPU(40)に転送するように適応され、
前記CPU(40)が、前記カメラからの前記捕捉画像を受信するように適応され、前記CPU(40)が、前記バイオプロセスシステム(10)のユニットを接続する前記チュービング(50)の少なくとも一部を識別するために、少なくとも1つの捕捉画像を分析するように適応された分析ルーチンをホストし、
前記チュービング(50)の少なくとも一部が識別される前記少なくとも1つの捕捉画像から処理表現を作成し、前記処理表現を前記GUI(41)上に提示するように適応され、
前記処理表現と流路表現とを比較してそれらの機能的整合を検証するように適応され、それにより前記バイオプロセスシステム内の流路表現によって規定されるプロセスが検証される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオプロセスシステムに関し、詳細には、システム構成を検出して認証するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーシステムなどの現代のバイオプロセスシステムは、一般的に、モジュール式の高度に柔軟なシステムとしてエンドユーザに提供される。現代のバイオプロセスシステムは、一般的に、複数の弁、ポンプ、検出器、フラクションコレクターなどが、別々のモジュールの形で取り付けられ得るフレームまたはラックを備える。モジュールは、一般的に、取り付けフレームの内部裏面に面するモジュールの裏面上に電力および電子通信のための接続を有している。CPUおよびバスシステムまたは類似物は、電子通信能力を提供するだけでなく、プロセスを制御すること、情報および結果を提示すること、情報を記憶すること、および外部通信のために、バイオプロセスシステムをPC、タブレット、または専用コンピュータなどに接続する。モジュール間の流体連通は、一般的に、モジュールの前面上のフレキシブルチュービングによって提供される。種々の機能性は、1つの構成がモジュールのサブセットを利用し、別の構成が異なるサブセットを利用する、種々の構成によって提供される。構成は、一般的に、関連するモジュール、それらの流体接続、および機能性を表す流路にリンクされる。流路は、接続されたクロマトグラフィーを使用して検出などの種々の機能をセットアップすることと、プロセスをモニタすることの両方のためのツールである。流路は、通常、しばしばGUIの一部としてPC上に図形で提示される。
【0003】
バイオプロセスシステムは、一般的に、モジュール間の流体連通を提供するチュービングを含む関連モジュールを含む、いくつかのあらかじめ決定された構成とともに納入される。代替的に、バイオプロセスシステムは、「事前構成されずに」提供され、取り付けフレームならびにモジュールおよびチュービングは別々に購入され、エンドユーザによって築き上げられる。どちらの場合にも、エンドユーザは、既存のシステムを修正するかまたは新しい構成を一から築き上げるかのいずれかによって、彼ら自身のシステムを構成することができる。同様に、既存のバイオプロセスシステムの修正は、使い古したまたは汚染されたチュービングを交換することから、まったく新しい構成を試験して実装することまでに及び得る。組み込みの電子通信システムおよび別々のモジュールの電子識別を介して、流路の表現とモジュールとの間のリンクが、バイオプロセスシステムによって自動的に提供される。流体連通については、同様の自動的機能性が存在しない。その代わりに、バイオプロセスフレームの前面は、一般的に、ユーザによって視覚的に検査される。流路の図形表現は、支援ツールとしてモジュール間の実際の接続を示す注記または図を含み得る。加えて、ユーザは、しばしば、セットアップを文書で記録するために、注記、略図または画像を使用する。しかしながら、現代のバイオプロセスシステムは、多数の異なる機能、流路を同時に提供することができるので、フレーム内のモジュールおよびそれらの位置の選択における柔軟性は非常に大きいため、複雑性が非常に高くなり得る。加えて、非常に多くのチュービング区分、それらのループ、および起こり得る絡み合いが、流路をチュービングの正しいセットにつなぐことを困難にする。問題は、モジュール式バイオプロセスシステムにおいて最も明白であるが、非モジュール式バイオプロセスシステムにおいても高度に存在する。なぜならば、チュービングは同程度に複雑であり、たとえばチュービングまたはチュービングの一部を置き換える場合、エラーが発生する可能性があるからである。
【0004】
米国特許第8821718号は、有利には、本発明による方法およびシステムから利益を受けるバイオプロセスシステムを記述しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
米国特許第9304518号は、モジュール式バイオプロセスシステム内のモジュール間の流体連通を識別して連携させることを支援するためのシステムおよび方法を開示しており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許第 9304518において開示されるシステムは、述べられた利点をユーザに対して利用可能にするために新しいハードウェアとソフトウェアの両方を必要とし、それゆえ、既存のシステムとともに完全に利用されるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8821718号
【文献】米国特許第9304518号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、バイオプロセスシステムの物理構成が、システムソフトウェアにおいて規定された流路と一致することを検証または認証する方法を提供することである。これは、ユニットおよびチュービングが再配置されたことがあるモジュール式バイオプロセスシステムにおいて特に関連がある。
【0008】
これは、独立クレームによるバイオプロセスシステムのための方法によって達成される。
【0009】
プロセスが流路表現によって規定される、バイオプロセスシステム内の自動構成検出の発明による方法は、以下のステップを含む。
- バイオプロセスシステムのユニット間の流体連通のためのチュービングを含むバイオプロセスシステムの少なくとも1つの画像を捕捉するステップ、
- バイオプロセスシステムのユニットを接続するチュービングの少なくとも一部を識別するために、少なくとも1つの捕捉画像を分析ルーチンにおいて分析するステップ、
- チュービングの少なくとも一部が識別される少なくとも捕捉画像から処理表現を作成するステップ。
【0010】
本発明の一態様によれば、検証は、処理表現と流路表現とを比較して、それらの機能的整合を検証するステップによって実行される。比較するステップは、自動化されたステップであり得る。代替的に、比較は、たとえば処理画像の形の処理表現と流路グラフの形の流路表現とを使用して、バイオプロセスシステムのユーザによって行われる。
【0011】
本発明の一態様によれば、処理表現は、処理画像ならびに、随意に同様にチュービングおよびチュービングがバイオプロセスシステムのモジュール/ユニットをいかにして相互接続するかを説明する一覧表を含む。
【0012】
本発明による方法は、処理表現を作成するために少なくとも2つの捕捉画像を利用し得る。画像分析ルーチンは、チュービングおよび/またはユニットの識別において、より多くの画像が必要であるかまたは少なくとも有利に使用され得るものと判断し、もう1つの画像を捕捉するための指示を作成してオペレータに転送してよい。分析ルーチンはまた、画像内の別々の特徴を識別し得るために能動的行為が必要であることを認識し、能動的行為を実行すること、たとえば、チュービングの一部を移動させること、チュービングの束を広げること、カメラの位置を変えること、または照明を変えることを、オペレータに指示してよい。
【0013】
本発明の一態様によれば、画像分析ルーチンは、追加の画像を捕捉させるための指示、または代わりに画像の捕捉を停止させるための通知をユーザに伝達する。指示は、能動的行為を実行させるための指示で補足され得る。
【0014】
画像分析は、バイオプロセスシステムに関連する先験的情報を利用し得る。先験的情報の例には、限定はしないが、現在のバイオプロセスシステム内に存在するユニットのタイプ、チュービングの部分の着色、識別ラベルなどについての知識が含まれる。
【0015】
本発明の一態様によれば、ユーザは、カメラを利用して複数の画像を捕捉し、分析ステップにおいて、ユーザは追加の画像を捕捉することの通知を受信するか、または代替的に、ユーザは画像の捕捉を停止することの通知を受信する。
【0016】
本発明による方法は、処理画像の形の処理表現を利用してバイオプロセスシステムの拡張ライブビュー画像を作成するステップを含んでよく、拡張ライブビュー画像では、チュービングの一部が、区別できるようにマークされる。
【0017】
本発明による方法は、特定のプロセスステップにおいて係合されるチュービングおよびユニットの部分を、拡張ライブビュー画像内で視覚的にマークするために、少なくとも処理画像を含む処理表現を利用して流路表現によって表されるプロセス内の少なくとも1つのステップを示すバイオプロセスシステムの拡張ライブビュー画像を作成するステップを含み得る。
【0018】
本発明による方法は、バイオプロセスシステムのセットアップまたは修正を容易にするために使用され得る。バイオプロセスシステムの拡張ライブビュー画像が作成されて、少なくとも1つの個々のチュービング接続が接続されるべき場所をユーザに示し得る。流路表現では、流路の一部に対応する少なくとも1つの個々のチュービング接続が識別され、流路の一部の中で使用されるべきユニットが識別され、識別されたユニットは、拡張ライブビュー画像の中でマークされる。処理画像は、拡張ライブビュー画像内の一成分としてライブビュー画像へのオーバーレイとして、少なくとも部分的に使用され得る。
【0019】
本発明の一態様によれば、処理表現は、チュービングの誤って接続された部分および/または欠落した部分を識別するために流路表現と比較される。
【0020】
本発明による方法およびシステムのおかげで、バイオプロセスシステムの自動構成検出が提供され得る。これは、光学検査のみによって構成を分類することが非常に困難なモジュール式および/または複合式セットアップに対して特に重要である。
【0021】
本発明の1つの利点は、処理表現(たとえば、画像および/または一覧表)を流路表現とリンクさせるために、自動検出が使用され得ることである。確立されたリンクは、システムを認証するためだけでなく故障点検のためにも使用され得、セットアップまたは修正およびユーザ情報を収集することを容易にする。現在利用可能な手動の手順と比較すると、これは大幅な改善を表す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1a】本発明による方法が利用され得る、斜視図において取り付けフレームを示すバイオプロセスシステムを概略的に示す図である。
図1b】本発明による方法が利用され得る、分解斜視図において複数のモジュールを有する取り付けフレームを示すバイオプロセスシステムを概略的に示す図である。
図1c】本発明による方法が利用され得る、正面図において完全なバイオプロセスシステムとしてバイオプロセスシステムを概略的に示す図である。
図2】本発明による方法が利用され得る、バイオプロセスシステムに特有の流路の図である。
図3】本発明による方法によって作成された処理画像の概略図である。
図4a】本発明による方法によって作成された、拡張画像および拡張ライブビューの概略図である。
図4b】本発明による方法によって作成された、拡張画像および拡張ライブビューの概略図である。
図4c】本発明による方法によって作成された、拡張画像および拡張ライブビューの概略図である。
図4d】本発明による方法によって作成された、拡張画像および拡張ライブビューの概略図である。
図5】本発明の一実施形態による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による方法は、バイオプロセスシステムをセットアップ、認証、および維持することに関し、詳細には、モジュール式バイオプロセスシステム、たとえばクロマトグラフィーシステムに関する。適切なモジュール式バイオプロセスシステムが、図1a図1cに概略的に描かれており、そこにおいて、図1aは、斜視図における取り付けフレームであり、図1bは、分解斜視図におけるシステム内の種々の機能を提供する複数のモジュールを有する取り付けフレームであり、図1cは、正面図における完全なバイオプロセスシステムである。バイオプロセスシステム10は、モジュール20が収容され得る複数の小部屋16を有する取り付けフレーム15を備える。小部屋16は、一般的に、それぞれ1つのモジュールを収容し得、異なるサイズであってよいが、ほんの小数の標準サイズであることが望ましい。限定はしないが、ポンプモジュール、弁モジュール、検出器モジュール、混合モジュール、およびフラクションコレクターを含む、広範囲のモジュールが、システム内に組み込まれ得る。図において、モジュール20は、異なる種類の複数の弁モジュール20:1、複数のポンプモジュール20:2、および複数の検出モジュール20:3によって例示される。バイオプロセスシステム10はまた、一般的に、たとえば、1つまたは複数のクロマトグラフィーカラム25、液体貯蔵容器26、および分離されたフラクションを受けるための容器27を装備され得る。同じく、機器の他の部品(図示せず)は、取り付けフレームの上または付近に設けられ得る。モジュール20、クロマトグラフィーカラム25、およびバイオプロセスシステム10の一部である他の機器は、バイオプロセスシステムのユニットおよびユニットのタイプと呼ばれる。
【0024】
取り付けフレーム15は、処理ユニット40と通信可能に接続されている。処理ユニット40は、たとえば、取り付けフレーム内に統合されたCPU、独立型PC、ラップトップPC、またはタブレットであってよく、一般的に、測定または製作を実行すること、システムをセットアップすること、システムを維持すること、データを記憶して分析することなどのために必要なアルゴリズムおよびルーチンを含む、バイオプロセスシステム10を制御するためのソフトウェアスイートを含む。ソフトウェアスイートは、たとえば、バイオプロセスシステム製造者から提供された独自開発ソフトウェア、特定の分析およびルーチンを提供するオープンソフトウェア、ならびにシステムを特定の要件に適応させるためにエンドユーザによって生成される修正の組合せであり得る。「システムソフトウェア」という用語は、以後、バイオプロセスシステムをセットアップ、実行、および維持するために必要なソフトウェアを指すために使用される。データおよびシステム情報は、一般的に、グラフィカルユーザインターフェース、GUI、たとえば、処理ユニット40と接続しているタッチスクリーン41の上に提示される。
【0025】
モジュール20は、取り付けフレーム15の小部屋16内に設けられた対応する電気接点と接続するように配列された電気接点をモジュールの裏面上に設けられる。電気接点は、モジュール20への信号とそこからの信号の両方を取り付けフレーム15に伝達し、電力をモジュールの動作のためにモジュールに供給する。モジュール20は、モジュールIDと呼ばれる識別のための個々の手段を有し、モジュールIDは、処理ユニット40によって読み出され得るか、または処理ユニット40に伝達され得る。現在市販されているバイオプロセスシステムは、一般的に、取り付けフレーム15内のモジュール20の正確な位置についての情報をシステムソフトウェアに提供する能力を有しない。システムを再構成するためのモジュール式システムおよびユーザの可能性によって、モジュールの位置が事前構成された状態で納入されたときに知られていたとしても、システムソフトウェアはモジュールの位置を知らない。加えて、いくつかのバイオプロセスシステムは、拡張機能モジュールを単独で、または少数のモジュール配置を含むより小さい取り付けフレーム内で、システムに組み込む可能性を有する。言い換えれば、システムソフトウェアは、どのモジュールが利用可能であるか、ならびにそれらのそれぞれの機能およびパラメータを知っているが、それらの位置を知らない。個々のモジュールの正確な位置の知識を有する将来のバイオプロセスシステムは、たとえば、RFIDタグをモジュール20に提供することによって想定され得る。そのような位置情報は、以下で例示される本発明による方法において利用され得る。
【0026】
バイオプロセスシステム10は、モジュール20、クロマトグラフィーカラム25、および貯蔵容器26など、バイオプロセスシステム10の種々のユニット間の流体連通を提供するチュービング50のネットワークを設けられる。チュービング50は、個別のエンティティとしてユニット間に延びることができるが、チュービングの束51に結合されることもある。チュービング50は、移送のためだけであるが、チュービング自体による機能、たとえば、ループ52を形成すること、検出デバイスの一部であること、または蠕動ポンプを通して進むことも有し得る。チュービング50は、一般的に、使い捨てであり、損耗または汚染のいずれかによって定期的に交換される。チュービング50は、通常、工具レス動作を提供する指締めフィッティングとして知られているコネクタを介してモジュール20の弁および他のユニットに接続される。個々のチュービング接続は、一般的に、一定の長さが予測可能な容積を保持するように、標準化された内径のチュービングである。チュービング接続は、特定の色が特定の内径を意味するように、色分けされる。ある程度は内径がチュービング接続の外形に反映され、それによって、異なる厚さのチュービング接続が区別され得る。しかしながら、チュービングの内径と外形との間に、直接的または標準化された関係はない。
【0027】
カメラ60が、モジュール式バイオプロセスシステム10の画像を獲得するために設けられる。カメラ60は、専用のカメラであり得るが、スマートフォン、タブレットまたはラップトップコンピュータなどのカメラ機能を有するデバイスも同様に良好である。カメラ60は捕捉された画像を、たとえば処理ユニット40に、望ましくはワイヤレスに、たとえばブルートゥース(登録商標)またはWiFiを介して転送するように装備される。
【0028】
上記で概説した通信システムは、機能記述として理解されるべきである。当業者によって実現されるように、システム内の種々のエンティティ間の通信は、多くの異なる方法で実現され得る。加えて、通信は、発展が急速な領域である。種々の規格およびプロトコルが、通信のために使用され得、通信は、上述のワイヤ結合、ワイヤレス、または2つの組合せであり得る。たとえば、モジュール20と処理ユニット40との間のシグナリングは、NFCまたはブルートゥース(登録商標)などのワイヤレスプロトコルを介するもの、および主にモジュールに電力を供給する電気接点を介するものであり得る。別の可能性は、モジュール20、取り付けフレーム15および処理ユニット40などのシステム内のユニットが、個々にWiFiに接続され、ユニット間の通信が、WiFiを介して間接的であることである。
【0029】
バイオプロセスシステム10によって実行されるべき、少なくとも1つの流路利用する特定のプロセスが、システムソフトウェア内のスクリプトによって規定される。いくつかのスクリプトは、一般的に、システム製造者によって提供されるが、エンドユーザによってプログラムされてもよく、または第三者プロバイダによって提供されてもよい。エンドユーザは、プロセスをカスタマイズするために既存のスクリプトを選択して修正してもよい。
【0030】
スクリプトは、しばしば、スクリプトによるプロセスの図式表現を与えられるプロセス画像または流路グラフによって補完され、プロセスに対するグラフィカルインターフェースとしての役割も果たす。以下において、「流路表現」という用語は、特定の構成を機能的な方式で説明する、システムソフトウェアによって保持される情報を説明するために使用される。「流路表現」は、プロセス画像または流路グラフであってよく、非図形情報を含んでもよく、または完全に非図形情報を含んでもよいことを理解されたい。図2aは、たとえば、GUI 41上でユーザに提示される流路グラフの一例である。図2aの流路グラフは、クロマトグラフィーカラム25とUV検出器を複数の弁およびポンプと組み合わせて利用する検出プロセスを表す。
【0031】
流路表現は、多くの方法で使用され得る。事前構成プロセスでは、ユーザは、プロセスを可視化して理解するため、およびたとえば、弁位置を切り替えるために、流路表現を使用する。作動中、ユーザは、プロセスに対応する流路表現を介してリアルタイムでプロセスをモニタすることができる。いくつかの場合には、流路表現は、既存のプロセスを修正するため、または全く新しいプロセスをセットアップするためにも使用されてよいが、バイオプロセスシステムに関連する大半のソフトウェアスイートは、いまだ、このタイプの高レベルのオブジェクトプログラミングは可能にしていない。電子/電気通信の観点から、処理ユニットは、流路表現内で示される変更が、モジュールおよび他のユニットがどのように相互作用するかにおいて自動的に反映されるように、常時更新され得る。しかしながら、流体連通、すなわちチュービングについて、そのような制御および自動化は今日のシステムを用いて可能ではなく、ユーザは、チュービングが流路に合致することを、手動で取り計らわなければならない。
【0032】
本発明による方法は、バイオプロセスシステムの構成の自動検出のために最適化された、専用の画像分析を含む。
【0033】
本発明の一態様によれば、画像分析の結果は、バイオプロセスシステム(10)の機能性、一般的には、バイオプロセスシステム10によって実行されるかまたは実行されるべき、流路表現によって規定される特定のプロセスに関連する機能性のうちの少なくとも1つの態様を検証するために使用される。
【0034】
少なくとも1つの写真画像の画像分析を介して、バイオプロセスシステムは、画像内の特性要素画識別する処理表現または他の情報を生成する。特性要素は、限定はしないが、チュービングまたはチュービングの一部を含む。画像分析は、以下のステップを含む。
A) バイオプロセスシステム10の、一般的にはバイオプロセスシステム10の前面の、少なくとも1つの画像を捕捉するステップ。
B) チュービング50の少なくとも一部を識別するために捕捉画像を分析するステップ。随意に同じく、バイオプロセスシステム10の他のユニットが識別される。分析するステップは、望ましくは、カメラ60または処理ユニット40のいずれかの中に常駐する画像分析ルーチンによって実行される。代替的に、分析ルーチンは、カメラ60または処理ユニット40が通信することができるリモートサーバなどの中に常駐している。
C) 個々のチュービング接続の少なくとも一部が識別される処理表現を作成するステップ。処理表現は、たとえば別々の人工色で区別できるようにマークされた、識別されたチュービング接続を有する処理画像として、および/または識別されたチュービング接続およびチュービングが接続するユニットの一覧表の形で、図式的であり得る。図3は、GUI上でユーザに提示され得るときの処理画像を示す。すべての個々のチュービング接続は、画像内のオブジェクトとして識別され、個々のチュービング接続によって示される図3においては参照記号a~qが与えられる。実際の処理画像の中では、識別された個々のチュービング接続に、色分けまたは他の図形識別を与えることが、より便利であり得る。処理画像は、図3に示すような概略図であってよく、または代替的に、たとえば、識別されたチュービングを人工的オーバーレイとして有するバイオプロセスシステムの正面の写真であってもよい。同じく、他のオブジェクト、たとえば弁および検出器は、認識できるオブジェクトとして識別されており、人工的オーバーレイとして提示されていてもよい。処理画像は、識別されたチュービングおよびユニットの一覧表とともにユーザに提示されてよく、または一覧表は、たとえば要求に応じて別々に提示され得る。処理画像がどのように提示されるべきであるかのいくつかのオプションは、ユーザによって選択可能であり得る。
【0035】
画像分析では、複数の画像が利用されてよく、画像分析は本発明の一態様を表す。複数の画像を使用する一例は、束の中の個々のチュービングを識別することである。たとえば、異なる角度においておよび/または異なる位置から撮られた複数の画像を使用することによって、あるビューの中では隠されているチュービングまたはチュービングの部分が、別のビューの中で見えることがあり、2つ以上の画像を利用することで、識別が容易になることがある。カメラの操作者は、画像分析プログラムが、一定のあらかじめ決定されたレベルの確実性でオブジェクトを識別することができるまで、様々な位置からさらなる画像を捕捉するように、画像分析プログラムによって指示され得る。
【0036】
本発明の一態様によれば、カメラ操作者は、分析プログラムによって、画像分析を助けるために能動的行為を実行するように指示される。可能な能動的行為のセットはあらかじめ決定され、どの種類の識別問題に能動的行為が関連するかについての情報とともに、システム内に記憶される。一般的には、問題の領域、たとえば複雑なチュービングの束を有する領域が、画像分析の間に識別される。他の問題は、一般的な、たとえば照明不足であり得、それは、分析全体を問題のあるものにする。能動的行為は、限定はしないが、以下を含む場合がある。
- カメラ60とバイオプロセスシステム10との間の角度および/または距離を変更する、
- 照明条件を変更する、
- 個々のチュービング接続が見えるようにチュービングの束を広げる、
- あるチュービング接続がチュービングのネストまたは束の中で識別され得るようにそのチュービング接続を移動させる。そのような識別は、チュービングが、なんらかのタイプのマーキング、たとえば、ドットまたは横縞を、望ましくは一定間隔で与えられるならば平易になり得る、
- たとえば、モジュール上にラベルまたは固定された識別の他の手段が見えるようにチュービングの一部を移動させる、
- チュービング上にラベルが使用されているならば、そのラベルを移動させる。
【0037】
上記の能動的行為のうちのいくつかに対して、静止画像の代わりにビデオを使用することが有利である場合があり、ビデオ分析が適切であるならば、画像分析は、ビデオ分析を含むものと解釈されるべきである。
【0038】
複数の画像またはビデオが利用される場合、ステップAおよびBは、識別を実行することを要求される限り実行されるループと見なされ得る。
【0039】
本発明の一態様によれば、先験的知識を有する画像分析が利用される。先験的知識は、限定はしないが、どのタイプのモジュール20および他のユニットが取り付けフレーム15の中/上に存在するかについての情報、フレーム内のモジュール20の位置の情報が利用可能であるならばその情報、特定の流路内のユニットおよびそれらの順序についての情報、ならびに「納入時の」バイオプロセスシステム10に関連する初期構成であり得る。画像分析ルーチン/プログラムはまた、捕捉された画像を拡縮および/または位置合わせするために取り付けフレーム15またはユニットの上のマーカーを利用し得る。これらのマーカーは、この目的のためにバイオプロセスシステム上に与えられ得るが、サイズおよび色などが知られているロゴタイプ、モデル番号、または他の視覚的に区別される特徴など、すでに存在する特徴であってもよい。画像分析は、限られた数の知られている形が、画像内で発見される可能性があることを、さらに利用し得る。たとえば、長くて細いチュービング、特徴的形態の弁、ポンプおよびカラム、ならびにさらにはオブジェクトの色。チュービングの色および/または外径は、標準化されてはいないが、それでも、たとえばチュービングの束を出入りする特定のチュービング接続を識別するのに有用であり得る。いくつかのポンプおよび検出器において、チュービングがそのデバイスを通過していることなどの他の知識が、そのチュービングは、デバイスの中にある間は見えないにもかかわらず、同じチュービング接続であると識別するために使用され得る。先験的知識は、望ましくは、画像分析を実行しているユニット、たとえば処理ユニット40によってアクセス可能な1つまたは複数のデータベース内に提供される。従来技術の知識データベースは、たとえば、製造者によって保管されて維持される、クライアントサーバセットアップを介してアクセス可能なローカルデータベースまたは集中データベースであり得る。クライアントサーバセットアップは、たとえば、新しいモジュールが導入される場合やモジュールがそれらの外観を修正される場合に、先験的知識データベースの更新を容易にする。代替的に、先験的知識データベースがローカルである場合、それは、一定の間隔でおよび/または要求に応じて集中データベースから更新され得る。
【0040】
画像分析ルーチンは、確認ステップを含んでよく、そこで、ユーザは、提案された処理画像または処理画像の一部が、ユーザが認知しているバイオプロセスシステムに相当することを検証する。
【0041】
画像分析の主なステップB)は、一般的に、処理ユニット40内で実行され、カメラ60によって捕捉された補足画像は、処理ユニット40に送信される。代替的に、捕捉デバイス、たとえばスマートフォンの処理能力は、画像処理の少なくとも一部のために利用され、処理表現は処理ユニット40に転送される。
【0042】
本発明の一態様によれば、画像分析は、画像データのみ、すなわち、画像内の個々のピクセルのみから生成された情報に基づき、それは、先験的知識を有しない画像分析と呼ばれる。
【0043】
画像分析は、自動画像分析の技術においてよく知られているいくつかの動作をさらに含み得る。そのような動作は、限定はしないが、位置合わせ/直線化、拡縮、区分け、および特徴分離を含む。画像分析は、ニューラルネットワークおよび深層学習など、特徴を識別するための人工知能技法を利用し得る。
【0044】
処理表現によって表される画像分析の結果は、システムの機能性の態様を検証するために使用され得る。機能性の態様の検証は、チュービングが流路表現(たとえば、流路グラフ)によって規定されるプロセスに対応することの検証、故障点検、最適化、測定/分離手順の可視化、プロセスのセットアップまたは修正などを含む広い解釈が与えられるべきである。一例として、処理画像および/または一覧表の形の処理表現は、たとえば流路グラフで表されるプロセスが、バイオプロセスシステム10内の流体連通に関して、特にチュービング50およびユニットに関して正しく構成されていることを検証する方法を提供する。
【0045】
本発明の一態様によれば、流路表現と実際のチュービングとの間の機能的整合は、画像分析から得られる処理表現と流路表現とを比較することによって検証される。これは、流路がチュービングと一致することを検証するために、ユーザが、たとえば流路グラフと処理画像および/または一覧表とを比較する手動プロセスであり得る。代替的に、それは自動プロセスである。手動または自動のいずれにしても、手順は、ユーザが流路表現と処理表現との整合を是認することを含み得る。
【0046】
本発明の一態様によれば、バイオプロセスシステムの写真画像上で実行される画像分析を利用して、流路とチュービングおよびユニットとの間にリンクが確立される。一実施形態によれば、バイオプロセスシステム10の流路とチュービングおよびユニットのネットワークとの間に確立されたリンクは、プロセスを検証するためおよび/またはプロセスを修正もしくは最適化するために、バイオプロセスシステム10上で実行されるプロセスをモニタするために利用される。
【0047】
本発明の一態様によれば、バイオプロセスシステム10の流路とユニットとの間に確立されたリンクは、流路に関連するプロセス内で係合されるべき様々なユニットにチュービングを接続することにおいて視覚的支援を与えるために確立される。
【0048】
処理表現は、処理ユニット40に接続されるGUI上でユーザに提示され得る。代替的に、別々の画面およびゴーグル、たとえば仮想現実ゴーグルが、提示のために使用され得る。本発明の一実施形態によれば、1つまたは複数のチュービングを識別した画像分析の結果は、拡張現実または仮想現実、ARまたはVRの支援によって提示される。ARまたはVRを用いて、1つのプラスチックチューブまたはチュービングのセットの視覚的認識が、バイオプロセスシステム10のライブ画像上に重ね合わされ、バイオプロセスシステムの拡張画像を形成する。
【0049】
本発明の一態様による処理表現および流路表現を使用して検証することは、以下のステップのうちの1つまたは複数を含み得る。
a)流路表現を処理画像にリンクさせて拡張画像を作成するステップ、そこにおいて、チュービングおよび随意に同じくモジュール/ユニットは、共通の識別情報、たとえば同じ色の特定の流路に属する。それによって、同じプロセス内で利用される複数のチュービング50ならびに随意にモジュール20および他のユニットは、処理画像の中でグループ化されて識別され得る。図4aは、GUI上でユーザに提示される拡張画像において、同じプロセス内で利用されるいくつかの個々のチュービング接続が、いかにして破線としてマークされるかを概略的に示す。代替的に、一覧表の形の処理表現が利用され、流路表現にリンクすることで、チュービング50の関連部分のリストが生成される。
b)流路をたどるライブビュー。本発明の一態様によれば、バイオプロセスシステム10の流路グラフと画像との間に確立されたリンクは、拡張ライブビュー画像を提示するために利用される。プロセスが進むにつれて、使用中のチュービング50および随意にモジュール20が、拡張ライブビュー画像の中および同じく流路グラフの中で、同時にマークされ、たとえば点灯する。これは、図4bにおいて、個々のチュービング接続が、拡張ライブ画像内で破線にされ、流路グラフ内の対応する部分も同様に破線にされることで示される。図2bも参照されたい。望ましくは、図に示すように、拡張ライブビュー画像および流路グラフは、同じ画面上で見ることができる。代替として、1つまたは複数の拡張静止画像が、代わりに提示されてもよい。一実施形態によれば、チュービングのネットワークが正しく接続され、たとえば測定を規定する流路に対応することを検証するために、アクティブなモジュールおよびチュービングの同時マーキングが、ユーザによって利用される。拡張ライブビューまたは一連の拡張静止画像は、後の分析のために記録され得る。流路グラフおよび拡張ライブビュー画像は、たとえば、バイオプロセスシステム10の流路グラフおよび拡張ライブビュー画像を示す同じ画面上に同時にユーザに提示されてよく、現在動作中のチュービングおよび/またはユニットが、拡張ライブ画像と流路の両方の中に示される。
c)故障点検。本発明の一態様によれば、バイオプロセスシステム10の流路表現と画像との間に確立されたリンクは、バイオプロセスシステムの機能不良を識別するために利用される。そのような機能不良は、たとえば、チュービング接続の欠落、またはチュービング接続の一端が手できつく締めて結合されていないことであり得る。いくつかの機能不良は、ゆるんだチュービングの端部など、処理画像のみから識別され得る。その他の機能不良は、表現間の相違を示すことによる流路表現へのリンクによって識別され得る。相違、たとえば欠落したチュービング接続は、上記と同様に、拡張ライブビュー画像上に示され得る。図4cでは、欠落した個々のチュービング接続が破線で示され、ゆるんだ接続が点線で示される。
d)支援セットアップ。本発明の一態様によれば、バイオプロセスシステム10の流路表現と画像との間に確立されたリンクは、新しいプロセスのセットアップを容易にするため、または既存のプロセスを修正するために利用される。方法は、以下のサブステップを含む。
- 新しいプロセスまたは修正されたプロセスを表す流れ図のグラフを識別するステップまたは構築するステップ。
- 以下の項目のうちの1つまたはそれらの組合せを作成するために、バイオプロセスシステム10の流路表現と画像との間に確立されたリンクを使用するステップ。
- チュービング50がいかにしてユニットに接続されるべきかを示すバイオプロセスシステムの拡張画像、
- 各チュービング接続またはチュービングの選択がいかにしてユニットに接続されるべきかを段階的に示す一連の拡張画像、
- 各チュービング接続またはチュービングの選択がいかにしてユニットに接続されるべきかを段階的に示すバイオプロセスシステム10の拡張ライブビュー。
ライブビューまたは静止画像が、個々のチュービング接続が接続されるべき場所をいかにして示すことができるかが、図4dに概略的に示されており、画像の上部における点線の円および矢印を参照すると、チュービングの2つの端部が接続されるべき指締めフィッティングが示されている。
e)ユーザ情報を収集するステップ。エンドユーザによって許可される場合、画像または処理表現は、製造者に転送され得る。これは、たとえば、故障点検をサポートするため、および同じく、製造者が機器の使用についての情報を収集するために利用され得る。たとえば、推奨されている改善をエンドユーザに提供するため、または新しいもしくは修正された事前構成を提供するために、共通の構成と共に、機器の能力を完全には利用していない構成を識別することは高い価値があり得る。
【0050】
本発明による方法の実装形態の非限定的な例が、図5の流れ図に示されており、以下のステップを含む。
501 チュービング50を設けられたバイオプロセスシステム10の画像を捕捉するステップ。
502 チュービング50の少なくとも一部を識別するために捕捉画像を分析するステップ。随意に、上記で説明した先験的知識を使用するステップ。
503 捕捉画像にあるチュービングおよび随意に他の特徴が十分に識別されるかどうかを判断するステップ。たとえば、大部分のチュービングは識別され得るが、捕捉画像の一部において、個々のチュービング接続は重複して現れ、それによって、画像分析ルーチンは、その部分における個々のチュービング接続を分解することはできなかった。十分であるならば、ステップ520において処理表現を作成するために進む。十分でないならば、ステップ506において画像がいかにして改善されるかを評価するために進む。
506 より多くの画像が捕捉されるべきかどうかを判断するステップ。より多くの画像が捕捉されるべきであるならば、ステップ508に進む。より多くの画像でも改善しないと判断されるならば、特徴は十分には識別されないものの、ステップ507に進む。
507 必ずしもすべてのチュービングおよび/またはすべての他の特徴を識別することが可能であったとは限らないことを示し、随意に、問題のある画像の領域の位置および範囲の情報を含めるステップ。処理表現は、依然として価値があり、それゆえ、ステップ520で処理表現を作成するために進む。このステップは、手順を含みかつ承認し得、ユーザは、処理表現を作成するためにさらに進むことに同意する/同意しない。
508 1つまたは複数の問題のある領域、たとえば、識別されないかまたは解決されないチュービングが識別される領域を識別するステップ。
509 適切な能動的行為、たとえばチューブを移動させることを選択するステップ。能動的行為のあらかじめ決定されたセットが利用可能であり、選択は、問題のある領域の分析に基づく。
510 選択された能動的行為、ならびにその能動的行為がどのように実行されるべきか、およびバイオプロセスシステムのどの部分に能動的行為が関係するかについて、オペレータに通知するステップ。捕捉ステップ501に進む。
520 識別されたチュービング50の少なくとも一部を有する処理表現を作成するステップ。随意に、モジュール20およびクロマトグラフィーカラム25などの他の特徴も識別される。
521 処理表現と流路表現、たとえば流路グラフとを比較することによって、バイオプロセスシステム10上で実行されるプロセスを検証するステップ。検証は、512の
- 使用中の流路を示す拡張画像を作成する。
- プロセスの展開に続いて拡張ライブビュー画像を作成する。
- 故障点検、たとえば、チュービングの欠落部分を発見して示す。
- チュービングがどのように接続されるべきかを示すことによって、バイオプロセスシステムのセットアップを支援する。
- ユーザデータを収集する。
を含み得る。
【0051】
説明した実施形態は、当業者に明白であるように組み合わされ得る。たとえば、バイオプロセスシステムのセットアップを支援するために本発明による方法を使用する実施形態は、有利には、故障点検に対する発明による方法を使用することと組み合わされ得る。多くの場合、様々な実施形態を組み合わせて使用することによって、相乗効果が達成され得る。たとえば、ユーザデータを収集するために本発明による方法が実施されるならば、そのようなユーザデータの収集および処理の結果、たとえばプロセスを改善するための提言が、拡張ライブビューの中でユーザに提示され得る。
【符号の説明】
【0052】
10 バイオプロセスシステム
15 取り付けフレーム
16 小部屋
20 モジュール
20:1 弁モジュール
20:2 ポンプモジュール
20:3 検出モジュール
25 クロマトグラフィーカラム
26 液体貯蔵容器
27 分離されたフラクションを受けるための容器
40 処理ユニット
41 タッチスクリーン、GUI
50 チュービング
51 チュービングの束
52 ループ
60 カメラ
図1a
図1b
図1c
図2a-b】
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5