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特許7366093抗体と併用投与されるIDO阻害剤含有腫瘍治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】抗体と併用投与されるIDO阻害剤含有腫瘍治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/498 20060101AFI20231013BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20231013BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20231013BHJP
   C07K 16/24 20060101ALN20231013BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
A61K31/498
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/00 ZNA
A61P35/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
C07K16/28
C07K16/24
C07K16/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021142739
(22)【出願日】2021-09-01
(62)【分割の表示】P 2018500814の分割
【原出願日】2016-07-14
(65)【公開番号】P2021191780
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/192,173
(32)【優先日】2015-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和キリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】徳永 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】石井 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】三重 元弥
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宗稔
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/186035(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/142316(WO,A1)
【文献】特表2011-527686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 35/00
A61K 39/395
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍の治療において使用するための、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と、ADCC活性を有する抗体との組み合わせ医薬であって、
前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、下記式
【化1】
で表される化合物A1またはその薬学的に許容される塩であり、
前記ADCC活性を有する抗体が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20、上皮成長因子受容体、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体である組み合わせ医薬。
【請求項2】
腫瘍におけるADCC活性を有する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下の抑制剤であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を有効成分として含み、前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、下記式
【化2】
で表される化合物A1またはその薬学的に許容される塩であり、
前記ADCC活性を有する抗体が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20、上皮成長因子受容体、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体である、抑制剤。
【請求項3】
腫瘍の治療剤であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を有効成分として含み、ADCC活性を有する抗体の有効量と併用投与され、前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、下記式
【化3】
で表される化合物A1またはその薬学的に許容される塩であり、
前記ADCC活性を有する抗体が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20、上皮成長因子受容体、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体である、治療剤。
【請求項4】
腫瘍の治療剤であって、ADCC活性を有する抗体を有効成分として含み、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の有効量と併用投与され、前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、下記式
【化4】
で表される化合物A1またはその薬学的に許容される塩であり、
前記ADCC活性を有する抗体が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20、上皮成長因子受容体、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体である、治療剤。
【請求項5】
前記ADCC活性を有する抗体と同時または順次に投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項6】
前記ADCC活性を有する抗体が、ヒトCD20に特異的に結合する抗体である、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項7】
前記腫瘍が、ヒトCD20を発現している腫瘍である、請求項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項8】
ヒトCD20を発現している腫瘍が、慢性白血病または非ホジキンリンパ腫である、請求項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項9】
慢性白血病が慢性リンパ性白血病である、請求項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項10】
非ホジキンリンパ腫がB細胞リンパ腫である、請求項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項11】
B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫またはバーキットリンパ腫である、請求項10に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項12】
B細胞リンパ腫がバーキットリンパ腫である、請求項10に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【請求項13】
前記ヒトCD20に特異的に結合する抗体が、リツキシマブである、請求項12のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬、抑制剤または治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体と併用投与されるIDO阻害剤含有腫瘍治療剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、トリプトファンの代謝酵素であるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)がT細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を抑制し、また、制御性T細胞を活性化することによって、宿主の免疫を低下させることが報告されている。IDOは腫瘍組織で発現が亢進しており、IFN-γ刺激により癌細胞および樹状細胞でその発現が誘導される(例えば、J. Clin. Invest., vol. 117, No. 5, pp. 1147-1154 (2007))。ヒトでは必須アミノ酸であるトリプトファンの90%が、IDOをその経路の開始段階に含むキヌレニン経路で代謝され、キヌレニン、さらに3OH-キヌレニン、キノリン酸等に変換される。
【0003】
IDOの活性化は局所あるいは全身のトリプトファン濃度を低下させ、キヌレニン濃度を上昇させ、キヌレニンを含むトリプトファン代謝物はT細胞死およびNK細胞死を誘導する(例えば、J. Exp. Med., vol. 196, No. 4, pp. 447-457 (2002))。また、トリプトファン代謝はCD4+CD25-T細胞を制御性T細胞に変換させる(例えば、Blood, vol. 109, No. 7, pp. 2871-2877 (2007))。INF-γによってIDOの発現が誘導された樹状細胞の培養上清中ではトリプトファン濃度が低下し、キヌレニン濃度が上昇し、これにT細胞を共培養させると未刺激の樹状細胞共存下に比べてT細胞の増殖が抑制される(例えば、J. Exp. Med., vol. 196, No. 4, pp. 447-457 (2002))。
【0004】
以上のことから、IDOの発現が亢進した腫瘍環境ではトリプトファン代謝によるキヌレニン濃度の上昇により、抗腫瘍エフェクター細胞が抑制され、このことが腫瘍の免疫回避のメカニズムのひとつと考えられている(例えば、J. Clin. Invest., vol. 117, No. 5, pp. 1147-1154 (2007))。
【0005】
結腸直腸癌および前立腺癌では腫瘍組織におけるIDOの発現亢進が報告されている(例えば、Clin. Cancer Res., vol. 12, No. 4, pp. 1144-1151 (2006);およびEur. J. Cancer, vol. 44, No. 15, pp. 2266-2275 (2008))。急性骨髄性白血病細胞ではIDOが恒常的に発現している(例えば、Leukemia, vol. 21, pp. 353-355 (2007))。子宮内膜癌、悪性黒色腫、および卵巣癌ではIDOの発現が亢進した患者の予後が不良であることが報告されている(例えば、Br. J. Cancer, vol. 95, No. 11, pp. 1555-1561 (2006);J. Clin. Invest., vol. 114, No. 2, pp. 280-290 (2004);およびClin. Cancer Res., vol. 11, No. 16, pp. 6030-6039 (2005))。成人T細胞白血病リンパ腫、および急性骨髄性白血病では血中のキヌレニン/トリプトファン比が上昇している(例えば、Leuk. Res., vol. 33, No. 1, pp. 39-45 (2009);およびLeuk. Res., vol. 33, No. 3, pp. 490-494 (2009))。悪性黒色腫では血中のキヌレニン/トリプトファン比が上昇している患者の予後が悪いことが報告されている(例えば、Dermatology, vol. 214, No. 1, pp. 8-14 (2007))。以上のように多くの固形癌、および血液がんでIDOおよび/またはキヌレニンが関与していることが考えられている。
【0006】
トリプトファン誘導体である1-メチルトリプトファン(1-MT)はトリプトファンと拮抗しキヌレニン産生を抑制する(例えば、Cancer Res., vol. 67, No. 2, pp. 792-800 (2007))。1-MTは、IDOを発現した癌細胞共存下で、またはIDOを発現した樹状細胞共存下で、T細胞増殖の抑制を解除する(例えば、Cancer Res., vol. 67, No. 2, pp. 792-800 (2007))。また、1-MTは同種妊娠マウスにおける主要組織適合複合体(MHC)拘束性の拒絶を誘導する(例えば、Nat. Immunol., vol. 2, No. 1, pp. 64-68 (2001))。これらの結果はIDO阻害によりキヌレニンの産生が抑制され、免疫が誘導されたことを示唆している。
【0007】
1-MTはマウス悪性黒色腫細胞を用いた担がんマウスにおいて抗腫瘍効果を示す。この効果は免疫不全マウスで消失する(例えば、Cancer Res., vol. 67, No. 2, pp. 792-800 (2007))。これらの結果は1-MTによる抗腫瘍効果がIDO阻害を介したキヌレニンの産生抑制作用による免疫賦活に基づいていることを示唆している。
【0008】
また、キヌレニン産生抑制作用および/またはIDO阻害作用を示す化合物は、免疫賦活作用を示すことも知られている(例えば、Nat. Immunol., vol. 2, pp. 64-68 (2001))。
【0009】
IDO阻害剤としては、WO99/29310に記載されている1-MTを含む上述したトリプトファン誘導体、WO2010/053182、WO2011/142316およびWO2013/069765に記載されているキノキサリン誘導体、WO2006/122150およびWO2010/005958に記載されている1,2,5-オキサジアゾール誘導体、WO2015/002918に記載されている尿素誘導体、ならびにWO2015/002918に記載されているアニリド誘導体が挙げられる。
【0010】
IDO1は腫瘍や微小環境で発現していることが知られている。IDO1は免疫抑制メカニズムを制御するという重要な役割を担っており、腫瘍の宿主免疫監視からの回避を可能としている。また、キヌレニン(Kyn)等のトリプトファン(Trp)代謝産物は、NK細胞死を誘導し、さらに、NK細胞受容体の発現を抑制することによってNK細胞の細胞傷害性を低下させることが報告されている。したがって、IDO1活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼしている可能性がある。
【0011】
レナリドミドは多発性骨髄腫の標準的な治療剤であり、抗CD20抗体や抗CD40抗体等の治療抗体のADCC活性を増強することが知られている(非特許文献1および非特許文献2参照)。
【0012】
イマチニブはc-kit(幹細胞因子受容体)および血小板由来成長因子受容体を抑制するとともに、樹状細胞を介してNK細胞を活性化することによって、抗腫瘍効果を示す(非特許文献3参照)。
【0013】
さらに、悪性黒色腫の治療剤であるダカルバジンや、腎細胞癌と肝細胞癌の治療剤であるソラフェニブは、NK細胞を活性化することが知られている(非特許文献4および非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】Clin. Cancer Res. vol. 11, p5984, 2005
【文献】Br. J. Hematol. vol. 144, p848, 2009
【文献】J Clin Invest. 2004 Aug 1; 114(3): 379-388
【文献】Journal of Investigative Dermatology (2013) 133, 499-508
【文献】HEPATOLOGY, Vol. 57, No. 6, 2013, 2358-2368
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、抗体と併用投与されるIDO阻害剤含有腫瘍治療剤等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は以下の(1)~(210)に関する。
【0017】
(1)腫瘍の治療方法であって、該治療を必要とするヒトに、有効量の、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含む方法。
【0018】
(2)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化1】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化2】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(1)に記載の方法。
【0019】
(3)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(1)または(2)に記載の方法。
【0020】
(4)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とが、同時または順次に投与される、(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
【0021】
(5)前記腫瘍が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体を発現している腫瘍である、(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
【0022】
(6)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、T細胞リンパ腫である、(5)に記載の方法。
【0023】
(7)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫または成人T細胞白血病リンパ腫である、(5)に記載の方法。
【0024】
(8)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が、乳癌、胃癌、卵巣癌、骨肉腫または子宮内膜癌である、(5)に記載の方法。
【0025】
(9)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が、乳癌である、(5)に記載の方法。
【0026】
(10)ヒトCD20を発現している腫瘍が、慢性白血病または非ホジキンリンパ腫である、(5)に記載の方法。
【0027】
(11)慢性白血病が慢性リンパ性白血病である、(10)に記載の方法。
(12)非ホジキンリンパ腫がB細胞リンパ腫である、(10)に記載の方法。
【0028】
(13)B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫またはバーキットリンパ腫である、(12)に記載の方法。
【0029】
(14)B細胞リンパ腫がバーキットリンパ腫である、(12)に記載の方法。
【0030】
(15)上皮成長因子受容体を発現している腫瘍が、大腸癌、頭頸部癌、胃癌または肝癌である、(5)に記載の方法。
【0031】
(16)ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下を抑制する方法であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含む方法。
【0032】
(17)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化3】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化4】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(16)に記載の方法。
【0033】
(18)有効量の、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の投与において使用するための医薬組成物。
【0034】
(19)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化5】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化6】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(18)に記載の医薬組成物。
【0035】
(20)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(18)または(19)に記載の医薬組成物。
【0036】
(21)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とを同時または順次に投与することを含む、(18)~(20)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0037】
(22)前記腫瘍が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体を発現している腫瘍である、(18)~(21)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0038】
(23)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、T細胞リンパ腫である、(22)に記載の医薬組成物。
【0039】
(24)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫または成人T細胞白血病リンパ腫である、(22)に記載の医薬組成物。
【0040】
(25)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が、乳癌、胃癌、卵巣癌、骨肉腫または子宮内膜癌である、(22)に記載の医薬組成物。
【0041】
(26)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が乳癌である、(22)に記載の医薬組成物。
【0042】
(27)ヒトCD20を発現している腫瘍が、慢性白血病または非ホジキンリンパ腫である、(22)に記載の医薬組成物。
【0043】
(28)慢性白血病が慢性リンパ性白血病である、(27)に記載の医薬組成物。
【0044】
(29)非ホジキンリンパ腫がB細胞リンパ腫である、(27)に記載の医薬組成物。
【0045】
(30)B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫またはバーキットリンパ腫である、(29)に記載の医薬組成物。
【0046】
(31)B細胞リンパ腫がバーキットリンパ腫である、(29)に記載の医薬組成物。
【0047】
(32)上皮成長因子受容体を発現している腫瘍が、大腸癌、頭頸部癌、胃癌または肝癌である、(22)に記載の医薬組成物。
【0048】
(33)腫瘍の治療において使用するための、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体との組み合わせ。
【0049】
(34)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化7】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化8】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(33)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0050】
(35)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(33)または(34)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0051】
(36)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とが、同時または順次に投与される、(33)~(35)のいずれかに記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0052】
(37)前記腫瘍が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体を発現している腫瘍である、(33)~(36)のいずれかに記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0053】
(38)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、T細胞リンパ腫である、(37)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0054】
(39)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫または成人T細胞白血病リンパ腫である、(37)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0055】
(40)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が、乳癌、胃癌、卵巣癌、骨肉腫または子宮内膜癌である、(37)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0056】
(41)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が乳癌である、(37)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0057】
(42)ヒトCD20を発現している腫瘍が、慢性白血病または非ホジキンリンパ腫である、(37)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0058】
(43)慢性白血病が慢性リンパ性白血病である、(42)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0059】
(44)非ホジキンリンパ腫がB細胞リンパ腫である、(42)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0060】
(45)B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫またはバーキットリンパ腫である、(44)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0061】
(46)B細胞リンパ腫がバーキットリンパ腫である、(44)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0062】
(47)上皮成長因子受容体を発現している腫瘍が、大腸癌、頭頸部癌、胃癌または肝癌である、(37)に記載の、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と抗体との組み合わせ。
【0063】
(48)ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下の抑制において使用するためのインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0064】
(49)式(I)
【化9】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化10】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(48)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0065】
(50)腫瘍の治療剤であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を有効成分として含み、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体の有効量と併用投与される、治療剤。
【0066】
(51)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化11】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化12】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(50)に記載の腫瘍の治療剤。
【0067】
(52)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(50)または(51)に記載の腫瘍の治療剤。
【0068】
(53)前記抗体と同時または順次に投与される、(50)~(52)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0069】
(54)前記腫瘍が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体を発現している腫瘍である、(50)~(53)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0070】
(55)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、T細胞リンパ腫である、(54)に記載の腫瘍の治療剤。
【0071】
(56)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫または成人T細胞白血病リンパ腫である、(54)に記載の腫瘍の治療剤。
【0072】
(57)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が、乳癌、胃癌、卵巣癌、骨肉腫または子宮内膜癌である、(54)に記載の腫瘍の治療剤。
【0073】
(58)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が乳癌である、(54)に記載の腫瘍の治療剤。
【0074】
(59)ヒトCD20を発現している腫瘍が、慢性白血病または非ホジキンリンパ腫である、(54)に記載の腫瘍の治療剤。
【0075】
(60)慢性白血病が慢性リンパ性白血病である、(59)に記載の腫瘍の治療剤。
【0076】
(61)非ホジキンリンパ腫がB細胞リンパ腫である、(59)に記載の腫瘍の治療剤。
【0077】
(62)B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫またはバーキットリンパ腫である、(61)に記載の腫瘍の治療剤。
【0078】
(63)B細胞リンパ腫がバーキットリンパ腫である、(61)に記載の腫瘍の治療剤。
【0079】
(64)上皮成長因子受容体を発現している腫瘍が、大腸癌、頭頸部癌、胃癌または肝癌である、(54)に記載の腫瘍の治療剤。
【0080】
(65)ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下の抑制剤であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を有効成分として含む、抑制剤。
【0081】
(66)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化13】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化14】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(65)に記載の抑制剤。
【0082】
(67)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とが、同時または順次に投与される、(16)または(17)に記載の方法。
【0083】
(68)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(16)または(17)に記載の方法。
【0084】
(69)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(48)または(49)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0085】
(70)腫瘍の治療剤であって、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体を有効成分として含み、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の有効量と併用投与される、治療剤。
【0086】
(71)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化15】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化16】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(70)に記載の腫瘍の治療剤。
【0087】
(72)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(70)または(71)に記載の腫瘍の治療剤。
【0088】
(73)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と同時または順次に投与される、(70)~(72)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0089】
(74)前記腫瘍が、ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体を発現している腫瘍である、(70)~(73)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0090】
(75)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、T細胞リンパ腫である、(74)に記載の腫瘍の治療剤。
【0091】
(76)ヒトCCケモカイン受容体4を発現している腫瘍が、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫または成人T細胞白血病リンパ腫である、(74)に記載の腫瘍の治療剤。
【0092】
(77)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が、乳癌、胃癌、卵巣癌、骨肉腫または子宮内膜癌である、(74)に記載の腫瘍の治療剤。
【0093】
(78)ヒト上皮成長因子受容体2を発現している腫瘍が乳癌である、(74)に記載の腫瘍の治療剤。
【0094】
(79)ヒトCD20を発現している腫瘍が、慢性白血病または非ホジキンリンパ腫である、(74)に記載の腫瘍の治療剤。
【0095】
(80)慢性白血病が慢性リンパ性白血病である、(79)に記載の腫瘍の治療剤。
【0096】
(81)非ホジキンリンパ腫がB細胞リンパ腫である、(79)に記載の腫瘍の治療剤。
【0097】
(82)B細胞リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫またはバーキットリンパ腫である、(81)に記載の腫瘍の治療剤。
【0098】
(83)B細胞リンパ腫がバーキットリンパ腫である、(81)に記載の腫瘍の治療剤。
【0099】
(84)上皮成長因子受容体を発現している腫瘍が、大腸癌、頭頸部癌、胃癌または肝癌である、(74)に記載の腫瘍の治療剤。
【0100】
(85)ヒトCCケモカイン受容体4に特異的に結合する抗体がモガムリズマブであり、ヒト上皮成長因子受容体2に特異的に結合する抗体がトラスツズマブであり、ヒトCD20に特異的に結合する抗体がリツキシマブであり、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体がセツキシマブである、(65)または(66)に記載の抑制剤。
【0101】
(86)腫瘍の治療方法であって、該治療を必要とするヒトに、有効量の、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含む方法。
【0102】
(87)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化17】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化18】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(86)に記載の方法。
【0103】
(88)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(86)または(87)に記載の方法。
【0104】
(89)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
から選択されるモノクローナル抗体である、(86)または(87)に記載の方法。
【0105】
(90)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(86)または(87)に記載の方法。
【0106】
(91)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(90)に記載の方法。
【0107】
(92)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(90)に記載の方法。
【0108】
(93)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(86)または(87)に記載の方法。
【0109】
(94)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(93)に記載の方法。
【0110】
(95)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(93)に記載の方法。
【0111】
(96)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とが、同時または順次に投与される、(86)~(95)のいずれかに記載の方法。
【0112】
(97)前記腫瘍が、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3と関連する腫瘍である、(86)~(96)のいずれかに記載の方法。
【0113】
(98)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、中皮腫または膵臓癌である、(97)に記載の方法。
【0114】
(99)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が卵巣癌である、(97)に記載の方法。
【0115】
(100)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、非定型白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫またはキャッスルマン病である、(97)に記載の方法。
【0116】
(101)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(97)に記載の方法。
【0117】
(102)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌および膵臓癌である、(97)に記載の方法。
【0118】
(103)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(97)に記載の方法。
【0119】
(104)ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下を抑制する方法であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を投与することを含む方法。
【0120】
(105)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化19】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化20】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(104)に記載の方法。
【0121】
(106)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(104)または(105)に記載の方法。
【0122】
(107)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(104)または(105)に記載の方法。
【0123】
(108)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(104)または(105)に記載の方法。
【0124】
(109)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(108)に記載の方法。
【0125】
(110)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(108)に記載の方法。
【0126】
(111)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(104)または(105)に記載の方法。
【0127】
(112)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(111)に記載の方法。
【0128】
(113)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(111)に記載の方法。
【0129】
(114)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とが、同時または順次に投与される、(104)~(113)のいずれかに記載の方法。
【0130】
(115)有効量の、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体、およびインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の投与において使用するための医薬組成物。
【0131】
(116)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化21】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化22】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(115)に記載の医薬組成物。
【0132】
(117)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(115)または(116)に記載の医薬組成物。
【0133】
(118)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(115)または(116)に記載の医薬組成物。
【0134】
(119)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(115)または(116)に記載の医薬組成物。
【0135】
(120)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(119)に記載の医薬組成物。
【0136】
(121)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(119)に記載の医薬組成物。
【0137】
(122)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(115)または(116)に記載の医薬組成物。
【0138】
(123)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(122)に記載の医薬組成物。
【0139】
(124)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(122)に記載の医薬組成物。
【0140】
(125)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とを同時または順次に投与することを含む、(115)または(116)に記載の医薬組成物。
【0141】
(126)前記腫瘍が、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3と関連する腫瘍である、(115)~(125)のいずれかに記載の医薬組成物。
【0142】
(127)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、中皮腫または膵臓癌である、(126)に記載の医薬組成物。
【0143】
(128)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が卵巣癌である、(126)に記載の医薬組成物。
【0144】
(129)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、非定型白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫またはキャッスルマン病である、(126)に記載の医薬組成物。
【0145】
(130)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(126)に記載の医薬組成物。
【0146】
(131)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌および膵臓癌である、(126)に記載の医薬組成物。
【0147】
(132)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(126)に記載の医薬組成物。
【0148】
(133)腫瘍の治療において使用するための、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体との組み合わせ。
【0149】
(134)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化23】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化24】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(133)に記載の組み合わせ。
【0150】
(135)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(133)または(134)に記載の組み合わせ。
【0151】
(136)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(133)または(134)に記載の組み合わせ。
【0152】
(137)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(133)または(134)に記載の組み合わせ。
【0153】
(138)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(137)に記載の組み合わせ。
【0154】
(139)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(137)に記載の組み合わせ。
【0155】
(140)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(133)または(134)に記載の組み合わせ。
【0156】
(141)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(140)に記載の組み合わせ。
【0157】
(142)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(140)に記載の組み合わせ。
【0158】
(143)前記抗体と前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤とが、同時または順次に投与される、(133)~(142)のいずれかに記載の組み合わせ。
【0159】
(144)前記腫瘍が、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3と関連する腫瘍である、(133)~(143)のいずれかに記載の組み合わせ。
【0160】
(145)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、中皮腫または膵臓癌である、(144)に記載の組み合わせ。
【0161】
(146)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が卵巣癌である、(144)に記載の組み合わせ。
【0162】
(147)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、非定型白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫またはキャッスルマン病である、(144)に記載の組み合わせ。
【0163】
(148)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(144)に記載の組み合わせ。
【0164】
(149)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌および膵臓癌である、(144)に記載の組み合わせ。
【0165】
(150)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(144)に記載の組み合わせ。
【0166】
(151)ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下の抑制において使用するためのインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0167】
(152)式(I)
【化25】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化26】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(151)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0168】
(153)前記抗体と同時または順次に投与される、(151)または(152)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0169】
(154)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(151)~(153)のいずれかに記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0170】
(155)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(151)~(153)のいずれかに記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0171】
(156)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(151)~(153)のいずれかに記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0172】
(157)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(156)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0173】
(158)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(156)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0174】
(159)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(151)~(153)のいずれかに記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0175】
(160)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(159)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0176】
(161)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(159)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0177】
(162)腫瘍の治療剤であって、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体を有効成分として含み、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の有効量と併用投与される、治療剤。
【0178】
(163)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化27】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化28】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(162)に記載の腫瘍の治療剤。
【0179】
(164)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(162)または(163)に記載の腫瘍の治療剤。
【0180】
(165)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(162)または(163)に記載の腫瘍の治療剤。
【0181】
(166)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(162)または(163)に記載の腫瘍の治療剤。
【0182】
(167)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(166)に記載の腫瘍の治療剤。
【0183】
(168)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(166)に記載の腫瘍の治療剤。
【0184】
(169)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(162)または(163)に記載の腫瘍の治療剤。
【0185】
(170)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(169)に記載の腫瘍の治療剤。
【0186】
(171)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(169)に記載の腫瘍の治療剤。
【0187】
(172)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と同時または順次に投与される、(162)~(171)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0188】
(173)前記腫瘍が、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3と関連する腫瘍である、(162)~(172)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0189】
(174)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、中皮腫または膵臓癌である、(173)に記載の腫瘍の治療剤。
【0190】
(175)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が卵巣癌である、(173)に記載の腫瘍の治療剤。
【0191】
(176)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、非定型白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫またはキャッスルマン病である、(173)に記載の腫瘍の治療剤。
【0192】
(177)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(173)に記載の腫瘍の治療剤。
【0193】
(178)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌および膵臓癌である、(173)に記載の腫瘍の治療剤。
【0194】
(179)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(173)に記載の腫瘍の治療剤。
【0195】
(180)腫瘍の治療剤であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を有効成分として含み、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の有効量と併用投与される、治療剤。
【0196】
(181)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化29】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化30】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(180)に記載の腫瘍の治療剤。
【0197】
(182)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(180)または(181)に記載の腫瘍の治療剤。
【0198】
(183)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(180)または(181)に記載の腫瘍の治療剤。
【0199】
(184)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(180)または(181)に記載の腫瘍の治療剤。
【0200】
(185)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(184)に記載の腫瘍の治療剤。
【0201】
(186)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(184)に記載の腫瘍の治療剤。
【0202】
(187)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(180)または(181)に記載の腫瘍の治療剤。
【0203】
(188)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(187)に記載の腫瘍の治療剤。
【0204】
(189)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(187)に記載の腫瘍の治療剤。
【0205】
(190)前記抗体と同時または順次に投与される、(180)~(189)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0206】
(191)前記腫瘍が、ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3と関連する腫瘍である、(180)~(190)のいずれかに記載の腫瘍の治療剤。
【0207】
(192)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、中皮腫または膵臓癌である、(191)に記載の腫瘍の治療剤。
【0208】
(193)ヒト葉酸受容体1と関連する腫瘍が卵巣癌である、(191)に記載の腫瘍の治療剤。
【0209】
(194)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、非定型白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫またはキャッスルマン病である、(191)に記載の腫瘍の治療剤。
【0210】
(195)ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(191)に記載の腫瘍の治療剤。
【0211】
(196)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌および膵臓癌である、(191)に記載の腫瘍の治療剤。
【0212】
(197)ヒトTIM-3と関連する腫瘍が急性骨髄性白血病(AML)である、(191)に記載の腫瘍の治療剤。
【0213】
(198)ヒト葉酸受容体1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の抗体依存性細胞傷害活性の低下の抑制剤であって、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤を有効成分として含む、抑制剤。
【0214】
(199)前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤が、式(I)
【化31】
[式中、
R6およびR7は、それぞれ同一または異なって、水素原子、または置換基を有していてもよい低級アルキルを表し、
R8、R9、R10およびR11は、それぞれ同一または異なって、水素原子、ハロゲン、シアノ、または低級アルキルを表し、
R1は、低級アルコキシで置換されていてもよい低級アルキルを表し、ならびに、
R3は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す]
で表される化合物(I)もしくはその薬学的に許容される塩、または
式(II)
【化32】
[式中、
R21は、アミノまたはメチルを表し、
R22は、ハロゲン、シアノ、トリフルオロメチル、または低級アルキルを表し、
R23は、水素原子またはハロゲンを表し、および、
nは、1または2を表す]
で表される化合物(II)もしくはその薬学的に許容される塩である、(198)に記載の抑制剤。
【0215】
(200)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体がモノクローナル抗体である、(198)または(199)に記載の抑制剤。
【0216】
(201)ヒト葉酸受容体1に特異的に結合する抗体が、
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体;
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体;ならびに
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である、(198)または(199)に記載の抑制剤。
【0217】
(202)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体が、IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない抗ヒトIL-3Rα鎖抗体である、(198)または(199)に記載の抑制剤。
【0218】
(203)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる群から選択される、(202)に記載の抑制剤。
【0219】
(204)抗ヒトIL-3Rα鎖抗体に含まれる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列が、
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列
からなる、(202)に記載の抑制剤。
【0220】
(205)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体が、ヒトTIM-3の細胞外領域に結合するモノクローナル抗体である、(198)または(199)に記載の抑制剤。
【0221】
(206)前記モノクローナル抗体が、
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(205)に記載の抑制剤。
【0222】
(207)前記モノクローナル抗体が、
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体
からなる群から選択される、(205)に記載の抑制剤。
【0223】
(208)前記抗体と同時または順次に投与される、(198)~(207)のいずれかに記載の抑制剤。
【0224】
(209)前記抗体と同時または順次に投与される、(48)または(49)に記載のインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤。
【0225】
(210)前記抗体と同時または順次に投与される、(65)または(66)に記載の抑制剤。
【発明の効果】
【0226】
本発明によれば、抗体と併用投与されるIDO阻害剤含有腫瘍治療剤等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0227】
図1図1は、キヌレニンの産生およびトリプトファンの消費に対する化合物A1および化合物B1の効果を示す。KATO-III細胞を25ng/mL組換えヒトIFN-γで処理した。次いで細胞を化合物A1(100nmol/L)または化合物B1(100nmol/L)で処理した。3日後、上清中のキヌレニン(Kyn)およびトリプトファン(Trp)の濃度をLC/MS/MSで測定した。(グラフA)縦軸はキヌレニン(Kyn)の濃度を示す。各棒グラフは、左から順に、馴化培地1(KATO-III細胞)、馴化培地2(KATO-III細胞+IFN-γ)、馴化培地3(KATO-III細胞+IFN-γ+化合物A1)、または馴化培地4(KATO-III細胞+IFN-γ+化合物B1)におけるKynの濃度を示す。各棒グラフは平均値+SDを表す。(グラフB)縦軸はトリプトファン(Trp)の濃度を示す。各棒グラフは、左から順に、馴化培地1(KATO-III細胞)、馴化培地2(KATO-III細胞+IFN-γ)、馴化培地3(KATO-III細胞+IFN-γ+化合物A1)、または馴化培地4(KATO-III細胞+IFN-γ+化合物B1)におけるTrpの濃度を示す。各棒グラフは平均値+SDを表す。
図2図2はNK細胞の検出を示す。(A)馴化培地1、(B)馴化培地2、(C)馴化培地3または(D)馴化培地4においてヒトPBMCを7日間インキュベートした。図2のA、B、CおよびDの数字は、CD3-細胞中のCD16+CD56+細胞(NK細胞)の割合を表す。
図3図3は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒト末梢血単球(A:ドナー1、B、C:ドナー2)を介した、TL-Om1細胞(A、B)またはHH細胞(C)に対するモガムリズマブの抗体依存性細胞傷害を示す。 実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフA、BおよびCの縦軸はモガムリズマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はモガムリズマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-IIIの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、KATO-IIIとIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、KATO-IIIとIFN-γと化合物A1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、KATO-IIIとIFN-γと化合物B1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図4図4は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒト末梢血単球(A:ドナー1、B:ドナー2)を介した、SK-BR3細胞に対するトラスツズマブの抗体依存性細胞傷害を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフAおよびグラフBの縦軸はトラスツズマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はトラスツズマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-IIIの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、KATO-IIIとIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、KATO-IIIとIFN-γと化合物A1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、KATO-IIIとIFN-γと化合物B1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図5図5は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒト末梢血単球を介した、Raji細胞に対するリツキシマブの抗体依存性細胞傷害を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフの縦軸はリツキシマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はリツキシマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-IIIの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、KATO-IIIとIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、KATO-IIIとIFN-γと化合物A1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、KATO-IIIとIFN-γと化合物B1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図6図6は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒト末梢血単球を介した、A431細胞に対するセツキシマブの抗体依存性細胞傷害を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフの縦軸はセツキシマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はセツキシマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-IIIの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、KATO-IIIとIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、KATO-IIIとIFN-γと化合物A1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、KATO-IIIとIFN-γと化合物B1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図7図7は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒトNK細胞を介した、TL-Om1細胞に対するモガムリズマブの抗体依存性細胞傷害を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフの縦軸はモガムリズマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はモガムリズマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-IIIの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、KATO-IIIとIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、KATO-IIIとIFN-γと化合物A1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、KATO-IIIとIFN-γと化合物B1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図8図8は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒトNK細胞を介した、Raji細胞に対するリツキシマブの抗体依存性細胞傷害を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフの縦軸はリツキシマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はリツキシマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-IIIの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、KATO-IIIとIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、KATO-IIIとIFN-γと化合物A1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、KATO-IIIとIFN-γと化合物B1の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図9図9は、化合物A1または化合物B1を含む培地中でプレインキュベートしたヒト末梢血単球を介した、TL-Om1細胞に対するモガムリズマブの抗体依存性細胞傷害を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフの縦軸はモガムリズマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はモガムリズマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、培地のみでプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、化合物A1を含む培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白四角は、化合物B1を含む培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図10図10は、IDO1 shRNAを安定に発現するKATO-III細胞におけるIDOの発現を示す。(グラフA)グラフAの縦軸は、IFN-γで処理したKATO-III細胞におけるIDO1 mRNAの発現をqPCR分析により検出し、KATO-III親細胞に対する相対レベルとして示したものである。 各棒グラフは、左から順に、IDO1 shRNA #44、#45、#46、#47、ベクター、またはNegaCTRL shRNAを導入したKATO-III細胞および形質導入なしのKATO-III細胞(親)におけるIDO1 mRNAレベルを示す。(グラフB)グラフBの上のパネルは、ウエスタンブロット分析により検出したIDO1タンパク質の発現レベルを示し、下のパネルは、ウエスタンブロット分析により検出した親タンパク質(β-アクチン)の発現レベルを示す。
図11図11は、キヌレニンの産生およびトリプトファンの消費に対するIDO1ノックダウンの効果を示す。(グラフA)グラフAの縦軸はキヌレニン(Kyn)の濃度(μmol/mL)を示す。各棒グラフは、左から順に、馴化培地1[KATO-III細胞(親)]、馴化培地2[KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)]、馴化培地3[KATO-III細胞(親)+IFN-γ]、馴化培地4[KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)+IFN-γ]、馴化培地5[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#44)+IFN-γ]、馴化培地6[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#45)+IFN-γ]、または馴化培地7[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#46)+IFN-γ]におけるKynの濃度を示す。(グラフB)グラフの縦軸はトリプトファン(Trp)の濃度(μmol/mL)を示す。各棒グラフは、左から順に、馴化培地1[KATO-III細胞(親)]、馴化培地2[KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)]、馴化培地3[KATO-III細胞(親)+IFN-γ]、馴化培地4[KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)+IFN-γ]、馴化培地5[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#44)+IFN-γ]、馴化培地6[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#45)+IFN-γ]、または馴化培地7[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#46)+IFN-γ]におけるTrpの濃度を示す。各棒グラフは平均値+SDを表す。
図12図12はNK細胞の検出を示す。馴化培地1(A)、馴化培地2(B)、馴化培地3(C)、馴化培地4(D)、馴化培地5(E)、馴化培地6(F)または馴化培地7(G)においてヒトPBMCを7日間インキュベートした。A、B、C、D、E、FおよびGに示した数字は、CD3-細胞中のCD16+CD56+細胞(NK細胞)の割合を表す。
図13図13は、様々な馴化培地中でプレインキュベートしたヒト末梢血単球を介した、TL-Om1細胞に対するモガムリズマブの抗体依存性細胞傷害を示す。 実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値として示す。グラフの縦軸はモガムリズマブの細胞傷害率(%)を示し、横軸はモガムリズマブの濃度(左から順に、0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mL)を示す。白丸は、KATO-III親細胞の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白三角は、陰性コントロールshRNAを安定に発現するKATO-III細胞の培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白四角は、KATO-III親細胞とIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白色菱形は、陰性コントロールshRNAを安定に発現するKATO-III細胞とIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒丸は、IDO1 shRNA#44を安定に発現するKATO-III細胞とIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒三角は、IDO1 shRNA#45を安定に発現するKATO-III細胞とIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。黒四角は、IDO1 shRNA#46を安定に発現するKATO-III細胞とIFN-γの培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図14図14は、ウエスタンブロットによって検出した卵巣癌細胞(OVISE、SKOV3、OVCAR3およびMCAS)におけるIDO1の発現を示す。
図15図15は、SKOV3細胞に対するPBMCのナチュラルキラー活性(A)および細胞傷害性(B)に与える化合物A1の効果を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値+SDとして示す。(グラフA)グラフAの縦軸は、抗体C1を使用しなかったPBMCの細胞傷害率(%)(ナチュラルキラー活性)を示す。各棒グラフは、左から順に、DMSO馴化培地における細胞傷害率と、化合物A1馴化培地における細胞傷害率を示す。(グラフB)グラフの縦軸は抗体C1の細胞傷害率(%)を示し、横軸は抗体C1の濃度(左から順に、0.033ng/mL、0.33ng/mL、3.3ng/mL、33ng/mLおよび333ng/mL)を示す。黒丸は、IFN-γで刺激したSKOV3細胞と化合物A1の馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白丸は、IFN-γで刺激したSKOV3細胞とDMSOの馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図16図16は、SKOV3細胞に対するPBMCのナチュラルキラー活性(A)および細胞傷害性(B)に与える化合物B1の効果を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値+SDとして示す。(グラフA)グラフAの縦軸は、抗体C1を使用しなかったPBMCの細胞傷害率(%)(ナチュラルキラー活性)を示す。各棒グラフは、左から順に、DMSO馴化培地における細胞傷害率と、化合物B1馴化培地における細胞傷害率を示す。(グラフB)グラフの縦軸は抗体C1の細胞傷害率(%)を示し、横軸は抗体C1の濃度(左から順に、0.033ng/mL、0.33ng/mL、3.3ng/mL、33ng/mLおよび333ng/mL)を示す。黒丸は、IFN-γで刺激したSKOV3細胞と化合物B1の馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白丸は、IFN-γで刺激したSKOV3細胞とDMSOの馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図17図17は、KG-1細胞に対するPBMC(lot# A3951)の細胞傷害性に与える化合物A1の効果を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値±SDとして示す。グラフの縦軸は、化合物A1を介したPBMCの細胞傷害率を示し、横軸は抗体D1の濃度(左から順に、0.3μg/mL、3μg/mL、30μg/mLおよび300μg/mL)を示す。黒丸は、IFN-γで刺激したKATO-III細胞と化合物A1の馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白丸は、IFN-γで刺激したKATO-III細胞とDMSOの馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
図18図18は、EoL-1/ヒトTIM-3細胞に対するPBMCの細胞傷害性に与える化合物A1の効果を示す。実験はすべて三連で行った。細胞傷害率(%)を平均値±SDとして示す。グラフの縦軸は、化合物A1を介したPBMCの細胞傷害率を示し、横軸は抗体E1の濃度(左から順に、0.3μg/mL、3μg/mL、30μg/mLおよび300μg/mL)を示す。黒丸は、IFN-γで刺激したKATO-III細胞と化合物A1の馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。白丸は、IFN-γで刺激したKATO-III細胞とDMSOの馴化培地中でプレインキュベートした場合の細胞傷害率(%)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0228】
本発明において、ADCC活性とは、生体中の腫瘍細胞の細胞表面抗原に結合した抗体が、抗体のFc領域とエフェクター細胞の表面との間でFc受容体を介してエフェクター細胞を活性化し、腫瘍細胞等を妨害する細胞傷害活性である[Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Wiley-Liss, Inc., Chapter 2.1 (1955)]。エフェクター細胞としては、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、活性化マクロファージ等が挙げられる。
【0229】
ADCC活性を有する抗体としては、モガムリズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ等が挙げられる。
【0230】
ヒトCCケモカイン受容体4、ヒト上皮成長因子受容体2、ヒトCD20または上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体のADCC活性、および本発明においてインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤と併用したときの、ヒトCCケモカイン受容体4(CCR4)、HER2、ヒトCD20またはEGFRに特異的に結合する抗体のADCC活性は、「Clin. Cancer Res. vol. 11, p5984, 2005.」、「Br. J. Hematol. vol. 144, p848, 2009.」等に記載の方法に準じて評価することができる。
【0231】
T細胞リンパ腫の予後は非常に悪く、十分な薬効を示す治療剤はない。ヒトCCケモカイン受容体4(CCR4)は、成人T細胞白血病/リンパ腫や皮膚T細胞リンパ腫等の、いくつかのT細胞リンパ腫で発現することが知られている(Clinical Cancer Research, vol. 9, p3625, 2003およびJ Invest Dermatol, vol.119, p1405, 2002)。したがって、CCR4に特異的に結合する抗体組成物を含む医薬組成物は、CCR4を発現するT細胞腫瘍の治療に効果的である可能性がある(WO01/64754、WO03/18635およびWO2005/057341)。
【0232】
CCR4に特異的に結合する抗体としては、モガムリズマブ等が挙げられる。モガムリズマブはヒト化された抗CCR4モノクローナル抗体であり、ATL、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫等のリンパ腫や白血病の治療に使用されている。また、モガムリズマブは高いADCC活性を有する。
【0233】
モガムリズマブは制御性T細胞の減少を誘導することが知られている[Clin Cancer Res; 21(2) January 15, 2015]。また、トリプトファンの代謝によって、CD4+CD25-T細胞の制御性T細胞への変換が誘導されることも知られている(例えば、Blood, vol. 109, No. 7, pp. 2871-2877 (2007))。したがって、モガムリズマブとインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤との併用は、制御性T細胞を減少させる目的に好適だと考えられる。
【0234】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2またはpl85neu)は、化学的処置を行ったラットの神経芽腫からトランスフォーミング遺伝子産物として最初に同定された。neu癌原遺伝子の活性型は、該遺伝子によりコードされるタンパク質の膜貫通領域の点突然変異(バリンからグルタミン酸への変異)により生じる。neuのヒト相同体(HER2)の増幅は乳癌と卵巣癌において観察され、予後不良と相関する(Slamon et al., Science, 235: 177-182 (1987);Slamon et al., Science, 244: 707-712 (1989);US 4,968,603)。HER2の分子量は約185,000であり、上皮成長因子受容体(EGFRまたはHER1)と高い相同性を有するが、HER2に特異的なリガンドはいまだ明確に同定されていない。
【0235】
また、HER2受容体を標的とする抗体4D5は、TNF-αの細胞傷害作用に対するHER2過剰発現乳房腫瘍細胞株の感受性を増強することが分かった(US 5,677,171)。組換えヒト化マウス抗ErbB2抗体4D5(huMAb4D5-8、rhuMAb HER2あるいはトラスツズマブとも呼ぶ;US 5,821,337)は、広範な抗癌療法を既に受けたHER2過剰発現転移性乳癌の患者において臨床的に有効である(Baselga et al., J. Clin. Oncol. 14: 737-744 (1996))。トラスツズマブは、HER2タンパク質を過剰発現する腫瘍を有する転移性乳癌患者の治療薬として1998年に販売承認を得た。臨床試験において高い有効性が示された代表的な薬物の1つとしてゲフィチニブが挙げられ、この薬物はNSCLC(非小細胞肺癌)に適応することができる。
【0236】
トラスツズマブはHER2タンパク質に特異的に結合することによって抗腫瘍効果を発揮し、乳癌や胃癌等の治療に使用される。トラスツズマブも高いADCC活性を介して抗腫瘍効果を発揮する。
【0237】
リンパ球は、造血過程において骨髄で生成される様々な白血球のうちの1種である。リンパ球の主要な集団として、Bリンパ球(B細胞)とTリンパ球(T細胞)の2種が挙げられる。本発明において特に関連するのはB細胞リンパ球である。
【0238】
B細胞は骨髄で成熟し、細胞表面上に抗原結合抗体を発現したB細胞は骨髄から移動する。ナイーブB細胞がその膜結合抗体に特異的な抗原に初めて遭遇すると、急速に増殖し、その子孫細胞からメモリーB細胞や、「形質細胞」と呼ばれるエフェクター細胞が分化する。メモリーB細胞は寿命が長く、親細胞と同じ特異性を有する膜結合抗体を発現し続ける。
【0239】
形質細胞は膜結合抗体を産生しない代わりに、分泌型抗体を産生する。
【0240】
分泌型抗体は体液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0241】
CD20抗原(ヒトBリンパ球特異的分化抗原(Bp35)とも呼ばれる)は、プレBリンパ球および成熟Bリンパ球の表面に存在する分子量約35kDの疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine et al. J. Biol. Chem. 264 (19): 11282-11287 (1989);およびEinfeld et al. EMBO J. 7 (3): 711-717 (1988))。CD20抗原はB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)の90%以上で発現されているが(Anderson et al. Blood 63 (6): 1424-1433 (1984))、造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞やその他の正常組織では見られない(Tedder et al. J. Immunol. 135 (2): 973-979 (1985))。CD20は、細胞周期の開始や分化における活性化プロセスの初期段階を制御しており(上掲のTedderら)、カルシウムイオンチャネルとして機能していると考えられている(Tedder et al. J. Cell. Biochem. 14D: 195 (1990))。
【0242】
ヒトCD20に特異的に結合する抗体としてリツキシマブが挙げられる。
【0243】
リツキシマブは、抗ヒトCD20ヒト-マウスキメラ抗体を含むモノクローナル抗体であり、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ増殖性異常症、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎等の治療に使用される。リツキシマブも高いADCC活性を有する。
【0244】
EGFRは、上皮細胞の表面に発現される170kDaの膜結合タンパク質である。EGFRは、細胞周期調節分子の一種であるチロシンキナーゼタンパク質型の成長因子受容体ファミリーのメンバーである(W. J. Gullick et al., 1986, Cancer Res., 46: 285-292)。
【0245】
EGFRは、そのリガンド(EGFまたはTGF-α)が細胞外ドメインに結合すると活性化されて、EGFRの細胞内チロシンキナーゼドメインが自己リン酸化される(S. Cohen et al., 1980, J. Biol. Chem., 255: 4834-4842;A. B. Schreiber et al., 1983, J. Biol. Chem., 258: 846-853)。
【0246】
EGFRは増殖促進癌遺伝子のタンパク質産物であり、erbBあるいはErbB1とも呼ばれ、ERBB癌原遺伝子ファミリーのメンバーの1つであるが、様々なヒトがんの発生や進行において極めて重要な役割を果していると考えられている。具体的には、乳癌、膀胱癌、肺癌、頭部癌、頸部癌および胃癌、さらには神経膠芽腫においてEGFRの発現亢進が観察されている。ERBB癌遺伝子ファミリーは、構造的に関連する4種の膜貫通受容体、すなわちEGFR、HER-2/neu(erbB2)、HER-3(erbB3)およびHER-4(erbB4)をコードする。
【0247】
臨床的に、腫瘍におけるERBB癌遺伝子の増幅および/またはERBB受容体の過剰発現は、疾患の再発や患者の予後不良、さらには治療に対する応答性と相関することが報告されている(L. Harris et al., 1999, Int. J. Biol. Markers, 14: 8-15;およびJ. Mendelsohn and J. Baselga, 2000, Oncogene, 19: 6550-6565)。
【0248】
EGFRは3つの主要なドメインからなっており、具体的には、リガンド結合ポケットおよび2つのシステインリッチ領域を含むグリコシル化細胞外ドメイン(ECD)と、短い膜貫通ドメインと、内在性チロシンキナーゼ活性を有する細胞内ドメインとからなる。膜貫通領域は、リガンド結合ドメインと細胞内ドメインとを連結している。EGFRのアミノ酸配列とDNA配列の分析、および非グリコシル化形態のEGFRについての研究から、EGFRのタンパク質骨格が1186個のアミノ酸残基からなり、その質量が132kDaであることが示されている(A. L. Ullrich et al., 1984, Nature, 307: 418-425;J. Downward et al., 1984, Nature, 307: 521-527;C. R. Carlin et al., 1986, Mol. Cell. Biol., 6: 257-264;およびF. L. V. Mayes and M. D. Waterfield, 1984, The EMBO J., 3: 531-537)。
【0249】
EGFまたはTGF-αがEGFRに結合することによってシグナル伝達経路が活性化され、細胞増殖が誘導される。すなわち、EGFまたはTGF-αの結合によりEGFRの分子構造が変化して二量体化し、次いで内在化したEGFR分子から細胞内シグナルが伝達され、細胞の増殖が制御される(G. Carpenter and S. Cohen, 1979, Ann. Rev. Biochem., 48: 193-216)。また、成長因子受容体の機能制御に影響を与えたり、受容体および/またはリガンドを過剰発現させたりするような遺伝子改変によって、細胞増殖を誘導することができる。さらに、EGFRは、細胞分化、細胞運動の増強、タンパク質の分泌、新血管新生、浸潤、転移および癌細胞の化学療法剤や放射線に対する抵抗性に一定の役割を果たしていることが分かっている(M. J. Oh et al., 2000, Clin. Cancer Res., 6: 4760-4763)。
【0250】
EGFRに特異的に結合する抗体としてはセツキシマブ等が挙げられる。セツキシマブは、EGFRに結合することによってEGFRの機能を抑制するモノクローナル抗体である。
【0251】
セツキシマブは、大腸癌、頭頸部癌等の治療に使用される。セツキシマブもADCC活性を介して抗腫瘍効果を示すと期待されている。
【0252】
リツキシマブは、抗ヒトCD20ヒト-マウスキメラ抗体を含むモノクローナル抗体であり、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ増殖性異常症、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎等の治療に使用される。リツキシマブも高いADCC活性を有する。
ヒト葉酸受容体1(FOLR1)は、葉酸塩に対して高い親和性を有するGPIアンカー型膜タンパク質であり、細胞の増殖や生存に関連する重要な機能を備えている[Int J Cancer, 2006. 119(2): p. 243-50.]。FOLR1は、腎臓、肺、消化管等の正常組織において限定的に発現されている[Anal Biochem, 2005. 338(2): p. 284-93.]。
【0253】
FOLR1の発現領域は管腔に局在している。一方、癌組織でのFOLR1の発現は管腔に限られず、卵巣癌[Anal Biochem, 2005. 338(2): p. 284-93., J Thorac Oncol, 2012. 7(5): p. 833-840., J Thorac Cardiovasc Surg, 2001. 121(2): p. 225-33]、腎臓癌[Anal Biochem, 2005. 338(2): p. 284-93.]、肺癌[Anal Biochem, 2005. 338(2): p. 284-93., J Thorac Oncol, 2012. 7(5): p. 833-840.]、乳癌[Anal Biochem, 2005. 338(2): p. 284-93.]、中皮腫[J Thorac Cardiovasc Surg, 2001. 121(2): p. 225-33.]等の様々な癌で高発現が観察される。
【0254】
より具体的には、FOLR1の発現レベルは、卵巣癌の悪性度、進行および予後に関連していることが報告された[Int J Cancer, 1997. 74(2): p. 193-8., Int J Cancer, 1998. 79(2): p. 121-6.]。さらに、卵巣癌患者の血清中の可溶性FOLR1が、健常ドナーの血清と比較して顕著に上昇していることが報告された[PLoS One, 2009. 4(7): p.e6292.]。したがって、FOLR1は癌療法の標的分子として有望である。
【0255】
IL3Rαは、IL-3受容体のα鎖であり、サイトカイン受容体ファミリーに属し、リガンドであるIL-3に対して弱い親和性を示す。β鎖(CD131、これ以降IL-3Rβとも呼ぶ)とヘテロ受容体を形成することで強い結合性を有するIL-3受容体となり、β鎖の細胞内領域を通じて増殖や分化等のシグナルを細胞内に伝達する。また、β鎖は、IL5受容体α鎖およびGM-CSF受容体α鎖と共有されている。
【0256】
IL-3RαはI型1回膜貫通タンパク質であり、膜外領域には、IL-3結合部位とフィブロネクチンIII型部位が存在することが配列上から知られている。膜内領域にはシグナルを伝達することができる構造は存在しないことが知られている。IL-3Rαの立体構造はいまだ解明されていないが、構造上重要なS-S結合を形成するシステイン残基の位置は保存されていることが多いことから、サイトカイン受容体の構造はファミリー間で類似していると推定できる。同じ種類のサイトカイン受容体のうち、IL-13受容体α鎖、IL-4受容体α鎖、およびGM-CSF受容体α鎖の結晶構造が解析されている。これらのサイトカイン受容体ファミリーの情報より、IL-3Rαの膜外領域は3つのドメイン(Aドメイン、Bドメイン、Cドメイン)に大きく分かれていることが推定できる。ヒトIL-3RαのAドメインを認識する抗体7G3は、IL-3シグナルを遮断することが知られている[Sun et al., Blood, 87:83 (1996)]。さらに、Aドメインを欠損したIL-3Rα分子の発現が報告されている[Chen et al., J Biol Chem, 284: 5763(2009)]。当然ながら、Aドメインを認識する抗体は、Aドメイン欠損型IL-3Rαを認識することはできない。また、Cドメインは、IL-3Rα分子の根幹をなしており、IL-3RαとIL-3Rβの結合を立体的に抑制している可能性が高いと考えられる。
【0257】
IL-3Rαのリガンドとして知られているのはIL-3のみである。IL-3は、赤血球、巨核球、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞および単球系細胞のコロニー形成を促進することが知られている造血因子である。IL-3は、多分化能を有する前駆細胞を刺激することも知られているが、自己複製能を有する未熟な幹細胞の分化を促進するのではなく、分化方向が決まっている前駆細胞の分化を促進すると言われている。
【0258】
IL-3Rαは、β鎖とヘテロ二量体を形成し、セリン/トレオニンリン酸化経路を介してIL-3シグナルを細胞内に伝達することによって、骨髄系細胞の増殖と分化に関与していることが知られている。IL-3Rαは、造血前駆細胞の中でも顆粒球/マクロファージ前駆細胞(GMP)または共通骨髄系前駆細胞(CMP)において発現し、IL-3シグナルを介して好中球系とマクロファージ系への増殖と分化を誘導することが知られている。一方、CMPの下流にある巨核球/赤芽球系前駆細胞(MEP)は、同じくCMPの下流にあるGMPとは異なり、IL-3Rαを発現しないことが報告されている。
【0259】
AML幹細胞について、BonnetとDickは、AML幹細胞がCD34+CD38-画分に含まれることを報告している(Bonnet et al., Nat Med, 1997; 3: 730)。さらに、Jordanらは、正常幹細胞に由来する同じ画分(CD34+CD38-)と比較することによって、IL-3RαがAML幹細胞に高発現していることを見出した(Jordan et al., Leukemia, 2000; 14: 1777)。以後の複数の論文でも、IL-3Rαは、AML幹細胞のマーカーとしてだけでなく、白血病幹細胞のマーカーとしても有効に使用できる可能性が高いことが報告されている(Haematologica, 2001; 86:1261およびLeukLymphoma, 2006;47:207)。白血病等のがんの治療においては、正常細胞をできる限り殺傷せずに、がん細胞のみを除去することが重要であり、上述したような正常幹細胞と白血病幹細胞の間でのIL-3Rαの発現の差異は、白血病幹細胞を標的とする治療において有用であると考えられる。
【0260】
IL-3Rαとヘテロ二量体を形成するIL-3Rβについては、白血病幹細胞において高発現しているという報告はなく、白血病幹細胞と正常幹細胞においてmRNAの発現を実際に比較したマイクロアレイにおいても、白血病幹細胞においてIL-3Rβの発現が亢進していたという報告はない(Majeti et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2009; 106:3396)。
【0261】
IL-3に依存する白血病細胞の存在は以前から知られているが、過去の研究では白血病細胞のほとんどを占める芽球に着目して研究が行われていた。白血病幹細胞に関する近年の研究においては、白血病幹細胞は自体の増殖を極力抑えることで抗癌剤に対する抵抗性を獲得していると言われている。また、IL-3に反応性を示す芽球は増殖能力が高いと考えられるため、IL-3反応性の芽球に対しては抗癌剤を用いた通常の治療法が有効であると推測される。
【0262】
IL-3R受容体を標的とする薬剤候補として、IL-3そのものが造血不全の患者に長年投与されてきたが、薬剤とはならなかった。現在、IL-3にジフテリア毒素を付加した融合タンパク質が、白血病を対象疾患として臨床試験中である。しかし、IL-3やジフテリア毒素IL-3融合タンパク質は、IL-3Rαの発現が特異的に亢進している細胞を標的とする薬剤としては適しておらず、これは、IL-3Rαタンパク質だけでなく、IL-3Rαとβ鎖のヘテロタンパク質とも強く結合するというIL-3の性質に起因する。一方、IL-3Rαを標的とする薬剤候補としては、抗IL-3Rαヒト-マウスキメラ抗体7G3の第1相の結果が報告されている(非特許文献19)。しかし、7G3キメラ抗体は、IL-3シグナルの遮断によってAMLを治療するものであり、IL-3Rα陽性細胞の除去を目的とした薬剤ではない。その他にも、IL-3Rα抗体がいくつか知られているが(9F5(ベクトン・ディッキンソン)、6H6(サンタクルーズバイオテクノロジー)およびAC145(ミルテニーバイオテク))、IL-3Rαを高発現する細胞を除去する能力を有するものはない。
【0263】
一方、IL-3Rαを高発現する細胞を除去する能力を有しているモノクローナル抗体が報告されている(WO2010/126066)。
【0264】
TIM-3遺伝子ファミリーはマウスでは8つの遺伝子、ヒトでは3つの遺伝子から構成され、マウスでは11番染色体、ヒトでは5q33領域に存在する[Hafler DA et al., J Exp Med. 205: 2699-701 (2008)]。これらの遺伝子領域は、自己免疫疾患およびアレルギー疾患に関連することが知られている。TIMタンパク質は、構造的に保存された免疫グロブリン可変(IgV)ドメインとムチンドメインとを有するI型膜貫通タンパク質である。
【0265】
TIMタンパク質は、当初、T細胞に特異的に発現し、T細胞活性を直接的に制御していると考えられてきたが、最近では抗原提示細胞でのTIMタンパク質の発現やTIMタンパク質の様々な機能も報告されている[Anderson AC et al., Science 318: 1141-3 (2007)]。結晶構造解析によれば、TIMタンパク質は保存されたタンパク質構造を持ち、IgVドメインにリガンド結合部位を有している。
【0266】
TIM-3は、マウスにおいてTh2細胞では発現せず、Th1細胞に特異的に発現する分子として同定された[Monney L et al., Nature 415: 536-41 (2002)]。TIM-3のDNA配列、アミノ酸配列および立体構造は、公用データベースから入手可能であり、例えばGenBankアクセッション番号NM_032782、NM_134250等から参照することができる。TIM-3はHAVCR2としても知られている。
【0267】
ヒトTIM-3は、マウスと同様に、T細胞、およびマクロファージや樹状細胞等の貪食細胞で発現している。TIM-3は、リガンドタンパク質(例えば、ガレクチン-9)と結合することによって、アポトーシス誘導のメカニズムを介してTh1応答を抑制することができ、それにより、例えば、末梢性寛容を誘導する。
【0268】
siRNAによりヒトTIM-3の発現を低下させたり、あるいは遮断抗体によりヒトTIM-3を抑制したりすることよって、CD4+T細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)の分泌が増加したことから、TIM-3がヒトT細胞に対して抑制機能を発揮すると見られている。また、貪食細胞では、TIM-3はアポトーシス細胞を認識する受容体としても機能する。
【0269】
臨床検体を用いた解析では、自己免疫疾患患者由来のCD4+T細胞にTIM-3の発現は見られなかった。特に、多発性硬化症患者の脳脊髄液由来T細胞クローンでは、健常人由来のクローンに比べてTIM-3の発現が低く、IFN-γの分泌が多かった[Koguchi K et al., J Exp Med. 203: 1413-8 (2006)]。また、TIM-3は、アレルギー疾患や喘息と関連することも報告されている(WO96/27603およびWO2003/063792)。
【0270】
さらに、急性骨髄性白血病(以下AMLと呼ぶ)患者由来の造血幹細胞と正常な造血幹細胞を使用したマイクロアレイ解析から、AML幹細胞にはTIM-3が発現していることが示されており、TIM-3が血液腫瘍と関連することも示唆されている[Majeti R et al., Proc Natl Acad Sci USA 2009 Mar 3; 106 (9): 3396-401.およびWO2009/091547]。
【0271】
これまでに確立されている抗TIM-3モノクローナル抗体としては、抗ヒトTIM-3ラットモノクローナル抗体(Clone 344823、R&Dシステムズ)、抗ヒトTIM-3マウスモノクローナル抗体(Clone F38-2E2、R&Dシステムズ)およびADCC活性を有する抗ヒトTIM-3マウスモノクローナル抗体(WO2011/155607に記載の512抗体、644抗体、4545抗体および4177抗体)が挙げられる。
【0272】
以下、前記式(I)で表される化合物および前記式(II)で表される化合物を、それぞれ化合物(I)および化合物(II)と呼ぶ。他の式番号の化合物についても同様とする。
【0273】
前記式(I)および式(II)において各基は以下のように定義される。
(i)低級アルキル、および低級アルコキシの低級アルキル部分としては、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状のアルキルが挙げられる。より具体例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等が挙げられる。
(ii)ハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子の各原子を意味する。
(iii)芳香族複素環基としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む5員または6員の単環式芳香族複素環基;窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、3~8員の環が縮合した二環式芳香族複素環基;窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、3~8員の環が縮合した三環式芳香族複素環基等が挙げられる。より具体例には、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリジル-1-オキシド、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピロロピリジル、ピロロピリミジニル、イミダゾピリジル、イミダゾピリミジニル、トリアゾロピリジル、トリアゾロピリミジニル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル等が挙げられる。これらのうち、好ましい二環式芳香族複素環基は、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、オキサゾロピリミジニル、チアゾロピリミジニル、ピロロピリジル、ピロロピリミジニル、イミダゾピリジル、イミダゾピリミジニル、トリアゾロピリジル、トリアゾロピリミジニル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル等である。
(iv)置換されていてもよい低級アルキルの置換基は、同じでも異なってもいてもよく、置換基の数は1~置換可能な最大数、好ましくは1~3である。該置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル等からなる群から選択される置換基が挙げられる。
(v)置換されていてもよい芳香族複素環基の置換基は、同じでも異なってもいてもよく、置換基の数は1~置換可能な最大数、好ましくは1~3である。該置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル、置換されていてもよいアリール(置換されていてもよいアリールの置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル、C1~10アルキル等が挙げられる)、および置換されていてもよい芳香族複素環基(置換されていてもよい該複素環基の置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、カルバモイル、C1~10アルキル等が挙げられる)からなる群から選択される置換基が挙げられる。
【0274】
前記(iv)および(v)で例示した基において、前記アリールとしては、単環式アリール、および2つ以上の環が縮合した縮合アリールが挙げられる。より具体例には、6~14個の環炭素原子を有するアリールが挙げられ、例えば、フェニル、ナフチル、インデニル、アントラニル等が挙げられる。C1~10アルキルは前記低級アルキルと同義である。ハロゲンは前記ハロゲンと同義である。芳香族複素環基は前記芳香族複素環基と同義である。
【0275】
化合物(I)および化合物(II)の薬学的に許容される塩としては、薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;亜鉛塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。有機アミン付加塩としては、モルホリン塩、ピペリジン塩等が挙げられる。アミノ酸付加塩としては、リジン塩、グリシン塩、フェニルアラニン塩等が挙げられる。
【0276】
化合物(I)または化合物(II)の塩が所望される場合、塩の形態で得られた化合物(I)または化合物(II)をそのまま精製に供してもよく;あるいは遊離形態で得られた化合物(I)または化合物(II)を適切な溶媒中に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えることによって塩を形成してもよい。
【0277】
化合物(I)および化合物(II)には、位置異性体、幾何異性体、光学異性体等の異性体が存在する場合がある。これらの異性体を含むあらゆる異性体、および任意の割合の異性体混合物も、本発明のIDO阻害剤として使用することができる。
【0278】
化合物(I)および化合物(II)またはその薬学的に許容される塩は、水付加物または様々な溶媒付加物の形態で存在していてもよい。これらの付加物も、本発明による抑制に使用するためのIDO阻害剤として使用することができる。
【0279】
化合物(I)、化合物(II)またはADCC活性を有する抗体を単独投与しても十分な治療成績が得られないかもしれないという懸念がある一方、これらの化合物を高用量で投与すると副作用が発症するかもしれないという懸念がある。
【0280】
本発明によれば、化合物(I)または化合物(II)とADCC活性を有する抗体とを組み合わせることによって、これらの化合物のいずれかを単独投与するよりも良好な治療成績が得られ、ひいては、化合物(I)、化合物(II)およびADCC活性を有する抗体のいずれかを低用量で使用することが可能となる。
【0281】
したがって、本発明は十分な治療効果を提供するだけでなく、副作用が低減されている。
【0282】
本発明において使用される化合物(I)および化合物(II)またはその薬学的に許容される塩は、例えばWO2011/42316およびWO2010/05958に記載の方法に準じて合成することができる。
【0283】
本発明において使用される化合物(I)としては化合物A1~A5等が挙げられ、化合物(II)としては化合物B1等が挙げられる。
【0284】
以下の表Aにおいて、Meはメチルを表す。
【化33】
【0285】
本発明の抗体は、CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する。
【0286】
本発明におけるADCC活性は細胞溶解反応であり、細胞表面上のCCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に結合した抗体が、Fc部分を介して主としてナチュラルキラー細胞(以下NK細胞と呼ぶ)の表面上のFcγRIIIaに結合し、NK細胞からパーフォリンやグランザイム等の細胞傷害性分子が放出され、これらの細胞傷害性分子によって細胞溶解反応が起こる[Clark M, Chemical Immunology, 65, 88 (1997);Gorter A et al., Immunol. Today, 20, 576 (1999)]。
【0287】
本発明において使用する抗体と、CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3との特異的な結合は、特定の抗原を分析可能であり、かつ該特定の抗原への抗体の結合を分析可能な方法によって確認することができる。例えば、固相化されたCCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3を使用した酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);ウエスタンブロット;免疫組織化学法(IHC);公知の免疫学的検出法;またはCCR4発現細胞、HER2発現細胞、ヒトCD20発現細胞、EGFR発現細胞、FOLR1発現細胞、ヒトIL-3Rα発現細胞またはヒトTIM-3発現細胞を染色するための蛍光細胞染色法等によって確認することができる。
【0288】
ヒト葉酸受容体1(FOLR1)に特異的に結合する抗体は、WO2014/087863およびWO2015/186823に記載されている。ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体はWO2010/126066に記載されている。ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体はWO2011/155607に記載されている。
【0289】
本発明において使用される以下の抗体は、例えばWO2014/087863に記載の方法に準じて製造することができる:
(A1)FOLR1に特異的に結合する抗体;
(A2)FOLR1に特異的に結合するモノクローナル抗体;ならびに
(A3)以下の(a1)~(c1)から選択される、FOLR1に特異的に結合するモノクローナル抗体:
(a1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体、
(b1)H鎖CDR1~3が、配列番号1で表されるアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列および配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖CDR1~3が、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号5で表されるアミノ酸配列および配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号3で表されるアミノ酸配列(抗体H鎖CDR3)中のシステインが、トレオニン、メチオニン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニンまたはグルタミンで置換されている、モノクローナル抗体、および
(c1)H鎖が配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、L鎖が配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む、モノクローナル抗体。
【0290】
本発明において使用される以下の抗体は、例えばWO2010/126066に記載の方法に準じて製造することができる:
(B1)ヒトIL-3Rαに特異的に結合する抗体;
(B2)IL-3のシグナル伝達を抑制せず、ヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合するが、ヒトIL-3Rα鎖のCドメインには結合しない、(B1)に記載の抗体;
(B3)以下の(a2)~(e2)からなる群から選択される重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列を含む、(B2)に記載の抗体:
(a2)配列番号9~11でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号24~26でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列、
(b2)配列番号12~14でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号27~29でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列、
(c2)配列番号15~17でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号30~32でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列、
(d2)配列番号18~20でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号33~35でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列;ならびに
(B4)以下の(e2)からなる重鎖CDRのアミノ酸配列および軽鎖CDRのアミノ酸配列を含む、(B2)に記載の抗体:
(e2)配列番号21~23でそれぞれ表される重鎖CDR1~3のアミノ酸配列、および配列番号36~38でそれぞれ表される軽鎖CDR1~3のアミノ酸配列。
【0291】
本発明において使用される以下の抗体は、例えばWO2011/155607に記載の方法に準じて製造することができる:
(C1)ヒトTIM-3に特異的に結合する抗体;
(C2)ヒトTIM-3の細胞外領域に結合する、ヒトTIM-3に特異的に結合するモノクローナル抗体;
(C3)以下の(i)~(iii)からなる群から選択される、(C2)に記載のモノクローナル抗体:
(i)配列番号39~41でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号42~44でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、
(ii)配列番号45~47でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号48~50でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体、および
(iii)配列番号51~53でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体H鎖と、配列番号54~56でそれぞれ表されるアミノ酸配列を含むCDR1~3を含む抗体L鎖とを含むモノクローナル抗体;ならびに
(C4)以下の(a3)および(b3)からなる群から選択される、(C2)に記載のモノクローナル抗体:
(a3)配列番号57で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号58で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体、および
(b3)配列番号59で表されるアミノ酸配列を含む抗体VH領域と、配列番号60で表されるアミノ酸配列を含む抗体VL領域とを含むモノクローナル抗体。
【0292】
本発明による、CCR4、HER2、ヒトCD20またはEGFRに特異的に結合する抗体とIDO阻害剤の組み合わせは、CCR4、HER2、ヒトCD20またはEGFRを発現する腫瘍の治療に使用することができる。また、本発明による、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体とIDO阻害剤の組み合わせも、腫瘍の治療に使用することができる。
【0293】
FOLR1と関連する腫瘍としては、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、中皮腫、膵臓癌等が挙げられる。FOLR1と関連する本発明に好適な腫瘍としては、卵巣癌が挙げられる。
【0294】
ヒトIL-3Rαと関連する腫瘍としては、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病、非定型白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、キャッスルマン病等が挙げられる。ヒトIL-3Rαと関連する本発明に好適な腫瘍としては、急性骨髄性白血病(AML)が挙げられる。
【0295】
ヒトTIM-3と関連する腫瘍としては、血液がん、乳癌、子宮癌、結腸直腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌、膵臓癌等が挙げられる。ヒトTIM-3と関連する本発明に好適な腫瘍としては、急性骨髄性白血病(AML)が挙げられる。
【0296】
さらに、前記腫瘍として、造血器腫瘍、卵巣癌、乳癌、子宮体癌、子宮頸癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、肝癌、胆道癌、大腸癌、直腸癌、膵臓癌、肺癌、頭頸部癌、骨肉腫、悪性黒色腫および脳腫瘍が挙げられる。
【0297】
造血器腫瘍としては、急性白血病、慢性白血病、ホジキン病(すなわちホジキンリンパ腫)、非ホジキン病(すなわち非ホジキンリンパ腫)等が挙げられる。
【0298】
急性白血病としては、急性リンパ性白血病等が挙げられ、急性リンパ性白血病としては、B前駆細胞急性リンパ性白血病、T前駆細胞急性リンパ性白血病等が挙げられる。
【0299】
慢性白血病としては、慢性リンパ性白血病等が挙げられる。
【0300】
非ホジキン病としては、T細胞/NK細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫等が挙げられ、T細胞/NK細胞リンパ腫としては、前駆T細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、成熟T細胞腫瘍等が挙げられる。
【0301】
B細胞リンパ腫としては、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫等が挙げられる。
【0302】
成熟T細胞腫瘍としては、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、セザリー症候群、菌状息肉症、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾γδ型T細胞リンパ腫、血管免疫芽球型T細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫等が挙げられる。
【0303】
ホジキンリンパ腫としては、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫、古典的ホジキンリンパ腫等が挙げられる。古典的ホジキンリンパ腫としては、結節硬化型ホジキンリンパ腫、リンパ球豊富型古典的ホジキンリンパ腫、混合細胞型ホジキンリンパ腫、リンパ球減少型ホジキンリンパ腫等が挙げられる。
【0304】
CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の用量は、所望の治療効果、投与経路、治療期間、年齢、体重等によって異なる。CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の成人での用量は、通常、1回の投与あたり0.1~100mg/kgまたは0.1~400mg/m2である。CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体と併用投与されるIDO阻害剤を含む医薬品の用量は、臨床現場でこれらの抗体や阻害剤を単独投与するときの用量と同等であるか、あるいはそれよりも少ないことが好ましい。
【0305】
CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体の投与頻度は、2週間に1回または1週間に1回である。
【0306】
IDO阻害剤と本発明の抗体の組み合わせの効果は、後述する「2.4 試験手順」に準じた方法を使用して調べることができる。すなわち、該方法を使用して、IDO阻害剤の単独投与による効果と、IDO阻害剤を本発明の抗体と組み合わせたときの効果とを比較することによって、IDO阻害剤と本発明の抗体の組み合わせの効果を評価することができる。
【0307】
使用する培養細胞としてはTL-Om1細胞が挙げられる。TL-Om1細胞は成人T細胞白血病患者に由来するものであり、ヒト成人T細胞白血病のモデルとして使用することができる。
【0308】
使用する培養細胞としてHH細胞が挙げられる。HH細胞は皮膚T細胞リンパ腫患者に由来するものであり、皮膚T細胞リンパ腫のモデルとして使用することができる。
【0309】
使用する培養細胞としてSK BR-3細胞が挙げられる。SK BR-3細胞は乳癌患者に由来するものであり、乳癌のモデルとして使用することができる。
【0310】
使用する培養細胞としてRaji細胞が挙げられる。Raji細胞はバーキットリンパ腫患者に由来するものであり、バーキットリンパ腫のモデルとして使用することができる。
【0311】
使用する培養細胞としてA431細胞が挙げられる。A431細胞は類表皮癌患者に由来するものであり、EGFR陽性腫瘍のモデルとして使用することができる。
【0312】
使用する培養細胞としてSKOV3細胞が挙げられる。SKOV3細胞は卵巣癌患者に由来するものであり、卵巣癌のモデルとして使用することができる。
【0313】
使用する培養細胞としてKG-1細胞が挙げられる。KG-1細胞は急性骨髄性白血病患者に由来するものであり、急性骨髄性白血病のモデルとして使用することができる。
【0314】
使用する培養細胞として、EoL-1/ヒトTIM-3の親株であるEoL-1細胞が挙げられる。EoL-1細胞は急性骨髄性白血病患者に由来するものであり、EoL-1/ヒトTIM-3は急性骨髄性白血病のモデルとして使用することができる。本発明の組み合わせが、化合物(I)、化合物(II)またはその薬学的に許容される塩等のIDO阻害剤と、CCR4、HER2、ヒトCD20、EGFR、FOLR1、ヒトIL-3RαまたはヒトTIM-3に特異的に結合する抗体との組み合わせである限り、本発明の組み合わせは、単一薬剤(混合物)または複数の製剤の組み合わせとして、使用、投与または製造することができる。
【0315】
前記単一薬剤(混合物)または前記複数の製剤は、経口投与または非経口投与(注射等)に適した単位用量形態であることが望ましい。複数の製剤の組み合わせを使用または投与する場合、製剤は同時に使用しても、時間を空けて別々に使用してもよい。
【0316】
前記製剤は、有効成分の他に、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、水、生理食塩水、植物油、可溶化剤、等張化剤、保存剤、酸化防止剤等を使用して通常の方法で製造することができる。
【0317】
錠剤を調製する場合、例えば、ラクトース等の賦形剤、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を通常の方法で使用してもよい。
【0318】
注射剤を調製する場合、例えば、水、生理食塩水、植物油、溶媒、可溶化剤、等張化剤、保存剤、酸化防止剤等を通常の方法で使用してもよい。
【0319】
化合物(I)、化合物(II)またはその薬学的に許容される塩を上述した目的で使用する場合、経口投与または注射等として非経口投与することができる。化合物(I)、化合物(II)またはその薬学的に許容される塩の有効量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等によって異なっていてもよい。化合物(I)、化合物(II)またはその薬学的に許容される塩の1日用量は、通常0.01~100mg/kgであり、好ましくは0.08~100mg/kgである。
【実施例
【0320】
試験例1
1 概要
本研究では、ヒト末梢血単球(PBMC)または精製したNK細胞を使用して、抗体依存性細胞傷害(ADCC)に対するIDO1活性の効果を検討した。ADCCアッセイを行う前に、KATO-III細胞培養で馴化した培地中でヒトPBMCをインキュベートした。IDO1活性の効果を検討するため、IFN-γおよび/またはIDO1阻害剤(化合物A1または化合物B1)をKATO-III細胞培養に加えた。
【0321】
IFN-γで刺激したKATO-III細胞で馴化した培地中でヒトPBMCまたは精製したNK細胞をプレインキュベートすると、IFN-γ刺激の非存在下で馴化した培地でのプレインキュベーションと比較して、モガムリズマブのADCCが低下した。このADCCの低下は化合物A1または化合物B1によって解除されたことから、IDO1活性によってADCCの低下が誘導されたことが示唆された。ADCC誘導抗体として使用したトラスツズマブ、リツキシマブおよびセツキシマブについても同様の結果が得られた。
【0322】
2 材料と方法
2.1 試験物質とコントロール物質
【0323】
2.1.1 化合物A1
化合物A1は、WO2011/142316に記載の実施例62の化合物64Aとして得た。化合物A1を100mmol/Lの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解して保存溶液とし、使用まで凍結保存した。化合物A1の保存溶液はアッセイ培地(第2.4.2節)で希釈した。
【0324】
2.1.2 化合物B1
化合物B1は、WO2010/005958の実施例1に記載の「4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボキシミドアミド」として得た。化合物B1を100mmol/Lの濃度でDMSOに溶解して保存溶液とし、使用まで凍結保存した。化合物B1の保存溶液はアッセイ培地(第2.4.2節)で希釈した。
【0325】
2.1.3 モガムリズマブ
モガムリズマブは、WO2011030841に記載のKM8760の製造方法と同様にして製造した。この抗体の溶液(9.7mg/mL)はアッセイ培地(第2.4.2節)で希釈した。
【0326】
2.1.4 トラスツズマブ
トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、440mg、Lot No. N3566B01 B2060)はエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から購入した。この抗体の溶液(9.7mg/mL)はアッセイ培地(第2.4.2節)で希釈した。
【0327】
2.1.5 リツキシマブ
リツキシマブ(Mabthera(登録商標)、10mg/mL、Lot No. B6061B01)はエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から購入した。この抗体の溶液(10mg/mL)はアッセイ培地(第2.4.2節)で希釈した。
【0328】
2.1.6 セツキシマブ
セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、5mg/mL、Lot No. MG1201)はメルクセローノ社から購入した。この抗体の溶液(5mg/mL)はアッセイ培地(第2.4.2節)で希釈した。
【0329】
2.2 キヌレニンおよびトリプトファンの定量のための標準物質、内部標準および試薬
2.2.1 標準物質
L-トリプトファン(Trp、Lot No. PDQ6460)は和光純薬工業株式会社から購入した。L-キヌレニン(Kyn、Lot No. BCBJ6934V)はシグマ アルドリッチ社から購入した。
TrpおよびKynをそれぞれ水に溶解して10mmol/Lの濃度の保存溶液を調製した。保存溶液は使用まで4℃で保存した。
【0330】
2.2.2 内部標準
L-キヌレニン(ring-D4)(d4-Kyn、Lot No. L-KYNU-D4-005)はBuchem B.V.から購入した。L-トリプトファン(インドール-D5、98%)(d5-Trp、Lot No. I-15891)はCambridge Isotope Laboratories社から購入した。d4-Kynおよびd5-Trpをそれぞれ水に溶解して10mmol/Lの濃度の保存溶液を調製した。保存溶液は4℃で保存した。d4-Kyn保存溶液とd5-Trp保存溶液をそれぞれ水で希釈してから混合し、IS溶液(0.6μmol/Lのd4-Kynと2μmol/Lのd5-Trpを含む)を得た。IS溶液は使用まで4℃で保存した。IS溶液は、使用直前にトリフルオロ酢酸(TFA)と混合してIS/TFA溶液(5/1、v/v)とした。
【0331】
2.2.3 試薬
HPLCグレードのメタノール、TFAおよびギ酸は和光純薬工業株式会社から購入した。特に記載がない限り、使用した他の試薬もいずれも分析グレードであった。
【0332】
2.3 試験系
ヒト胃癌細胞株KATO-III(86093004)はDSファーマバイオメディカル株式会社から入手した。ヒト成人T細胞白血病/リンパ腫細胞株TL Om1(TKG0289)は医用細胞資源センターから入手した。ヒト皮膚T細胞リンパ腫細胞株HH(CRL-2105)、ヒト乳癌細胞株SK-BR-3(HTB30)およびヒトリンパ腫細胞株Raji(CCL-86)はATCCから入手した。ヒト類表皮癌細胞株A431(JCRB0004)はJCRBから入手した。
ヒト胃癌細胞株KATO-III(86093004)は、10vol%熱不活化ウシ胎仔血清(インビトロジェン、Cat. No. 10099-141、Lot No. 1108863)および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシン(ナカライテスク、Cat. No. 26253-84)を含むRPMI1640(インビトロジェン、Cat. No. 11875-093)中で継代培養した。ヒト成人T細胞白血病/リンパ腫細胞株TL-Om1(TKG 0289)は、20vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI1640中で継代培養した。ヒト皮膚T細胞リンパ腫細胞株HH(CRL-2105)は、10vol%熱不活化ウシ胎仔血清、10mmol/L HEPES(ナカライテスク、Cat. No. 17557-94)、1mmol/Lピルビン酸ナトリウム(インビトロジェン、Cat. No. 11360-070)および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI1640中で継代培養した。ヒト乳癌細胞株SK-BR-3(HTB30)は、10vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むマッコイ5A(インビトロジェン、Cat. No. 16600-082)中で継代培養した。ヒトリンパ腫細胞株Raji(CCL-86)は、10vol%熱不活化ウシ胎仔血清、4.5g/L D-(+)-グルコース(シグマ アルドリッチ、Cat. No. G8769)、10mmol/L HEPESおよび1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI1640中で継代培養した。ヒト類表皮癌細胞株A431(JCRB0004)は、10vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEM(インビトロジェン、Cat. No. 11995-065)中で継代培養した。
【0333】
馴化培地の調製においては、いずれの細胞も、10vol%熱不活化透析ウシ胎仔血清(インビトロジェン、Cat. No. 30067334)を含むRPMI1640中で培養した。
3人から得た凍結ヒト末梢血単球(PBMC)は、Allcells社[Lot No. A3457(ドナー1)およびLot No. A3951(ドナー2)]およびPrecision Bioservices社[Lot No. 13096(ドナー3)]から購入し、別々に使用した。
【0334】
2.4 試験手順
2.4.1 馴化培地の調製
KATO-III細胞(1.25×106個)を25ng/mL組換えヒトIFN-γで処理した。化合物A1または化合物B1を最終濃度100nmol/Lで加えた。細胞をCO2インキュベーターでインキュベートした。3日後、遠心分離により細胞と上清を分離した。得られた上清を馴化培地として使用した。この馴化培地を使用して、ヒトPBMCまたはNK細胞のインキュベーション(第2.4.2節)、およびKynとTrpの測定(第2.4.4節)を行った。Kyn濃度およびTrp濃度を図1に示す。
馴化培地1:KATO-III細胞
馴化培地2:KATO-III細胞+IFN-γ
馴化培地3:KATO-III細胞+IFN-γ+化合物A1
馴化培地4:KATO-III細胞+IFN-γ+化合物B1
【0335】
2.4.2 ADCC
NK細胞は、NK単離キット(ミルテニーバイオテク、Cat. No. 130-092-657)およびautoMACS装置を使用してヒトPBMCから単離した。ヒトPBMCまたはNK細胞をCO2インキュベーターにおいて馴化培地(第2.4.1節)中で培養した。7日後に細胞を回収してカウントし、エフェクター細胞として使用した。エフェクター細胞としてのPBMCおよびNK細胞は、アッセイ培地(10vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI1640)中に懸濁して、5×106個/mL(PBMC)または4×105個/mL(NK細胞)の密度とした。TL-Om1細胞、HH細胞、SK-BR-3細胞、Raji細胞またはA431細胞(それぞれ1×106個)は、CO2インキュベーターにおいて37℃で1時間かけて、1.85MBqのNa2 51CrO4(パーキンエルマー)で標識した。細胞をアッセイ培地で3回洗浄した。標的細胞としての放射標識細胞を、アッセイ培地5 mLに2×105個/mLの密度で懸濁した。モガムリズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブまたはセツキシマブを、アッセイ培地で10倍段階希釈して30μg/mL~0.3μg/mL(最終濃度:10μg/mL~0.1μg/mL)の濃度とした。標的細胞(1×104個)50μLを96ウェル丸底培養プレートに播種し、上述のように調製した抗体希釈液50μLとエフェクター細胞(2.5×105個)50μLとを加えて混合した。培養プレートを4℃で軽く遠心し、CO2インキュベーターにおいて37℃で約4時間インキュベートした。4℃で5分間かけて遠心分離した後、上清をLumaPlate(パーキンエルマー)に移して、十分に乾燥させた。マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT、パーキンエルマー)で放射能を計測した。
【0336】
2.4.3 NK細胞のフローサイトメトリー分析
ヒトPBMCをCO2インキュベーターにおいて馴化培地中で培養した。7日後に細胞を回収し、Fixable Viability Dye eFluor(登録商標)506(eBioscience、Cat. No. 65-0866-14)で染色した。MACS緩衝液[1w/v% BSAを含むautoMACS Rinsing Solution(ミルテニーバイオテク、Cat. No. 130-091-222)]で細胞を2回洗浄した後、PerCP抗ヒトCD3抗体(Biolegend、Cat. No. 300428)、FITC抗ヒトCD16抗体(BD PharmingenTM、Cat. No. 556618)およびPE/Cy7抗ヒトCD56抗体(BD PharmingenTM、Cat. No. 557747)で細胞を染色した。MACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞をMACS緩衝液200μLに懸濁し、FACSuiteソフトウェアを用いてFACSVerseTM(BDバイオサイエンス)により分析した。CD3-細胞中のCD16+CD56+細胞(NK細胞)の割合をFlowJoソフトウェア(バージョン7. 6. 5、FlowJo)で測定した。染色はいずれもメーカーの説明書に準じて行った。CD3-細胞中のCD16+CD56+細胞の割合を図2のA、B、CおよびDに示した。
【0337】
2.4.4 試料中のKynおよびTrpの定量
2.4.4.1 試料の前処理
馴化培地(第2.4.1節)50μLと氷冷IS/TFA溶液(5/1、v/v)60μLを混合し、遠心分離した(5000×g、室温、10分)。上清60μLと、0.05vol%ギ酸/メタノール=75/25(v/v)50μLとを混合し、得られた混合物を液体クロマトグラフィー/タンデム型質量分析(LC/MS/MS)システムに注入した。
【0338】
2.4.4.2 検量線用標準試料の調製
検量線用標準溶液は、Trp保存溶液またはKyn保存溶液を水で希釈して調製した。検量線用標準溶液の濃度域は、0.1~500μmol/L(Trp)および0.05~200μmol/L(Kyn)とし、調製した検量線用標準溶液は4℃で保存した。ブランク試料として、検量線用標準溶液の代わりに水を使用した。各50μLの検量線用標準溶液およびブランク試料は、第2.4.4.1節に記載の操作と同様にして前処理した。
【0339】
2.4.4.3 LC/MS/MS分析
<分析システム>
LC: アジレント1200(アジレント・テクノロジー)
オートサンプラー: HTC PAL(CTC Analytics)
MS/MS: API 5000(AB SCIEX)
分析ソフトウェア: Analyst 1.6.1(AB SCIEX)
カラム: Atlantis T3(3μm, 4.6mm×75 mm、ウォーターズ)
プレフィルター: A-103x(0.5μm、Upchurch Scientific)
カラム温度: 室温
【0340】
<LC条件>
移動相A: 0.05vol%ギ酸
移動相B: メタノール
【0341】
<LC条件>
移動相A: 0.05vol%ギ酸
移動相B: メタノール
【表1】
【0342】
<MS/MS条件>
イオン化モード: エレクトロスプレーイオン化、ポジティブ
ソース温度: 500℃
検出: 多重反応モニタリング
モニタリングイオン:
【表2】
【0343】
2.5 生データの分析方法
分析ソフトウェア(バージョン1.6.1、AB SCIEX)を使用してTrp濃度およびKyn濃度を算出した。最小二乗法による直線回帰によって検量線用標準試料からピーク面積比(分析種/IS)を算出し、検量線を構築した[Y=aX+b;Y、ピーク面積比;X、濃度;重み付け係数、1/Y2]。ブランク試料は回帰分析に含めなかった。
【0344】
試料中のKyn濃度およびTrp濃度をそれぞれ算出した。定量下限濃度は0μmol/Lとした。
【0345】
細胞傷害率(%)は以下の式に準じて算出した。
【数1】
【0346】
式中、Eは、実験により放出された放射能(cpm)であり、Sは、エフェクター細胞や抗体を加えずにアッセイ培地のみを加えた場合に自然に放出された放射能(cpm)の平均値であり、Mは、エフェクター細胞や抗体を加えずに10vol%のTritonTM X-100(シグマ アルドリッチ、Cat. No. T9284-100ML)を加えた場合に放出された最大放射能(cpm)の平均値である。各濃度の抗体を加えたときの細胞傷害率は、三連の平均値として示した。
【0347】
3 結果
3.1 Kynの産生およびTrpの消費に対する化合物A1および化合物B1の効果
KATO-III細胞におけるIDO1活性を確認するため、KATO-III細胞培養で馴化した培地中のKyn濃度およびTrp濃度を測定した。図1Aおよび図1Bに示したように、馴化培地2(KATO-III細胞+IFN-γ)では、馴化培地1(KATO-III細胞)と比較してKyn濃度の上昇とTrp濃度の低下が観察された。IFN-γの存在下において、IDO1阻害剤である化合物A1(馴化培地3)または化合物B1(馴化培地4)でKATO-III細胞を処理することによって、Kynの産生とTrpの消費が抑制された(図1Aおよび図1B)。
【0348】
3.2 NK細胞の検出
各馴化培地中でヒトPBMCをインキュベートし、NK細胞(CD3-/CD16+/CD56+細胞)の有無を確認した。図2に示したように、NK細胞は、いずれの馴化培地でインキュベートしたPBMCでも検出された。
【0349】
3.3 ADCCに対するIDO1活性の効果
ADCCに対するIDO1活性の効果を検討するため、各馴化培地中でプレインキュベートしたヒトPBMCによるADCCを測定した。ドナー1由来ヒトPBMCおよびドナー2由来ヒトPBMCを馴化培地2中でプレインキュベートすると、馴化培地1中でプレインキュベートした場合と比較して、TL-Om1細胞に対するモガムリズマブのADCCが低下した(図3Aおよび図3B)。一方、馴化培地3および馴化培地4中でプレインキュベートしたドナー1由来ヒトPBMCおよびドナー2由来ヒトPBMCによるADCCは、馴化培地1中でプレインキュベートしたヒトPBMCによるものとほぼ同等であったことから、ADCCの低下が化合物A1および化合物B1によって解除されたことが分かった。別の標的細胞と抗体を使用した実験においても、同様の結果が観察された。すなわち、別の試験において、HH細胞に対するモガムリズマブのADCC、SK-BR-3細胞に対するトラスツズマブのADCC、Raji細胞に対するリツキシマブのADCC、およびA431細胞に対するセツキシマブのADCCはいずれも、馴化培地2中でヒトPBMCをプレインキュベートすると低下したが、これらのADCCの低下は化合物A1または化合物B1によって解除された(図3B図4図5および図6)。
【0350】
馴化培地2によるADCCの低下が、PBMC中のNK細胞の割合の低下によるものではなかったことを確認するため、各馴化培地中でプレインキュベートした精製NK細胞によるADCCを測定した。図3に示した結果と同様に、馴化培地2中でプレインキュベートしたNK細胞を介したモガムリズマブのADCCは低下したが、このADCCの低下は化合物A1または化合物B1によって解除された(図7)。リツキシマブ、Raji細胞および精製ヒトNK細胞を使用した場合においても、同様の結果が観察された(図8)。
【0351】
さらに、化合物A1または化合物B1自体のADCCに対する効果を調査するため、100nmol/Lの化合物A1または化合物B1を含む培地中でヒトPBMCを7日間プレインキュベートした。図9に示したように、化合物A1および化合物B1によるモガムリズマブのADCCへの影響は見られなかった。
【0352】
4 考察
本研究の結果から、ADCCがIDO1活性によって低減されたが、IDO1阻害剤によってこのADCCの低下が解除されたことが示された。過去の研究おいては、Kyn等のTrp代謝産物によってNK細胞数が減少したことが示唆されている[J Exp Med. 2002;196(4):447-57]。本研究では、各馴化培地中でプレインキュベートしたPBMC中のNK細胞は、ADCCアッセイの実施前に生存していたことが確認されている(図2)。
【0353】
さらに、精製したNK細胞を使用した場合においてもADCCの低下が観察された(図7および図8)。これらの実験においては、NK細胞数をカウントし、各群間においてNK細胞数を同じにしてADCCを測定した。測定データから、IDO1活性によるADCCの低下は、NK細胞数の減少によるものではなく、NK細胞の機能が抑制されたことによるものであると考えられることが示唆された。
【0354】
ADCCの低下は、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブのいずれを使用した場合でも観察されたことから、IDO活性によるADCCの低下は、抗体フォーマット、すなわち非フコシル化IgG1であるか、フコシル化IgG1であるかに関係なく誘導されると考えられることが示唆された。
【0355】
IFN-γを添加したKATO-III細胞で馴化した培地中においてKyn濃度の上昇とTrp濃度の低下が観察されたが(図1)、これらの濃度上昇と濃度低下は化合物A1または化合物B1によって抑制された。さらに、化合物A1または化合物B1自体によるADCCへの影響は見られなかった(図9)。以上のことから、馴化培地におけるKynの産生またはTrpの消費によって、NK細胞の機能が低下すると考えられる。
【0356】
試験例2
5 概要
本研究では、ヒト末梢血単球(PBMC)を使用して、モガムリズマブの抗体依存性細胞傷害(ADCC)に対するIDO1活性の効果を検討した。ADCCアッセイを行う前に、IFN-γの存在下または非存在下においてKATO-III親細胞、IDO1 shRNA安定発現KATO-III細胞、または陰性コントロールshRNA安定発現KATO-III細胞で馴化した培地中でヒトPBMCをインキュベートした。
【0357】
IFN-γの存在下においてKATO-III親細胞または陰性コントロールshRNA安定発現KATO-III細胞で馴化した培地中でヒトPBMCをプレインキュベートすると、IFN-γの非存在下で馴化した培地でのプレインキュベーションと比較して、ヒトPBMCを介したモガムリズマブのADCCが低下した。IDO1 shRNA安定発現KATO-III細胞をIFN-γの存在下で用いて馴化した培地中でプレインキュベートしたヒトPBMCでは、ADCCの低下は見られず、ADCCの低下がIDO1活性によって誘導されることが示唆された。
【0358】
6 序論
IDO1は腫瘍や微小環境で発現していることが知られている。IDO1は免疫抑制メカニズムを制御するという重要な役割を担っており、腫瘍の宿主免疫監視からの回避を可能としている[Nat Rev Cancer. 2009;9(6):445-52]。また、キヌレニン(Kyn)等のトリプトファン(Trp)代謝産物は、NK細胞死を誘導すること[J Exp Med. 2002;196(4):447-57]、さらに、NK細胞受容体の発現を抑制することによってNK細胞の細胞傷害性を低下させることが報告されている[Blood. 2006;108(13):4118-25]。したがって、IDO1活性が抗体依存性細胞傷害(ADCC)に影響を及ぼしている可能性がある。
本研究では、IDO1ノックダウン技術を使用して、モガムリズマブのADCCに対するIDO1活性の効果を検討した。
【0359】
7 材料と方法
7.1 試験物質およびコントロール物質
7.1.1 モガムリズマブ
モガムリズマブは、WO2011030841に記載のKM8760の製造方法と同様にして製造した。この抗体の溶液(9.7mg/mL)はアッセイ培地(第7.4.5節)で希釈した。
【0360】
7.2 キヌレニンおよびトリプトファンの定量のための標準物質、内部標準および試薬
7.2.1 標準物質
L-トリプトファン(Trp、Lot No. PDQ6460)は和光純薬工業株式会社から購入した。L-キヌレニン(Kyn、Lot No. BCBJ6934V)はシグマ アルドリッチ社から購入した。
TrpおよびKynをそれぞれ水に溶解して10mmol/Lの濃度の保存溶液を調製した。保存溶液は使用まで4℃で保存した。
【0361】
7.2.2 内部標準
L-キヌレニン(ring-D4)(d4-Kyn、Lot No. L-KYNU-D4-005)はBuchem B.V.から購入した。L-トリプトファン(インドール-D5、98%)(d5-Trp、Lot No. I-15891)はCambridge Isotope Laboratories社から購入した。d4-Kynおよびd5-Trpをそれぞれ水に溶解して10mmol/Lの濃度の保存溶液を調製した。保存溶液は4℃で保存した。d4-Kyn保存溶液とd5-Trp保存溶液をそれぞれ水で希釈してから混合し、IS溶液(0.6μmol/Lのd4-Kynと2μmol/Lのd5-Trpを含む)を得た。IS溶液は使用まで4℃で保存した。IS溶液は、使用直前にトリフルオロ酢酸(TFA)と混合してIS/TFA溶液(5/1、v/v)とした。
【0362】
7.2.3 試薬
HPLCグレードのメタノール、TFAおよびギ酸は和光純薬工業株式会社から購入した。特に記載がない限り、使用した他の試薬もいずれも分析グレードであった。
【0363】
7.3 試験系
ヒト胃癌細胞株KATO-III(86093004)は、DSファーマバイオメディカル株式会社から入手した。TL Om1(TKG0289)は医用細胞資源センターから入手した。
ヒト胃癌細胞株KATO-III(86093004)は、10vol%熱不活化ウシ胎仔血清(インビトロジェン、Cat. No. 10099-141、Lot No. 1108863)および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシン(ナカライテスク、Cat. No. 26253-84)を含むRPMI1640(インビトロジェン、Cat. No. 11875-093)中で継代培養した。ヒト成人T細胞白血病/リンパ腫細胞株TL-Om1(TKG 0289)は、20vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI1640中で継代培養した。
馴化培地の調製においては、10vol%熱不活化透析ウシ胎仔血清(インビトロジェン、Cat. No. 30067334)を含むRPMI1640中に細胞を懸濁した。凍結ヒト末梢血単球(PBMC)は、Allcells社から購入した(Lot No. A3951)。
【0364】
7.4 試験手順
7.4.1 レンチウイルス感染
ヒトIDO1を標的とする4種のshRNAレンチウイルス粒子[IDO1 shRNA #44、#45、#46および#47(シグマ アルドリッチ、Cat. No. SHCLNV)]、空ベクターコントロールレンチウイルス粒子[ベクター(シグマ アルドリッチ、Cat. No. SHC001)]、または陰性コントロールshRNAレンチウイルス粒子[NegaCTRL shRNA(シグマ アルドリッチ、Cat. No. SHC202)]をRetroNectin(登録商標)ディッシュ(タカラバイオ、Cat. No. T110A)に播種した。KATO-III細胞(1×105個)を各ディッシュに加え、CO2インキュベーターでインキュベートした。ピューロマイシン(0.25μg/mL)を含む培地中において感染細胞を1週間かけて選択した。IDO1のノックダウンは、リアルタイム定量PCR(qPCR、第7.4.2節)およびウエスタンブロット分析(第7.4.3節)で評価した。
【0365】
7.4.2 qPCR分析
KATO-III親細胞、またはIDO1 shRNA、ベクターもしくはNegaCTRL shRNAを安定に発現するKATO-III細胞(9×103個)を、25ng/mL組換えヒトIFN-γで処理した。
細胞をCO2インキュベーターで約24時間インキュベートした。TaqMan(登録商標) Gene Expression Cells-to-CTTM Kit(アプライドバイオシステムズ、Cat. No. AM1728)をメーカーの説明書に準じて使用して、トータルRNAの抽出およびcDNAの合成を行った。次いで、ヒトIDO1に特異的なプライマー(アプライドバイオシステムズ、Cat. No. 4331182)、およびHPRT1に特異的なプライマー(アプライドバイオシステムズ、Cat. No. 4448489)を使用したqPCR分析により、cDNA試料を分析した。
【0366】
7.4.3 ウエスタンブロット分析
KATO-III親細胞、またはIDO1 shRNA、ベクターもしくはNegaCTRL shRNAを安定に発現するKATO-III細胞(5.4×105個)を、25ng/mL組換えヒトIFN-γで処理した。
【0367】
細胞をCO2インキュベーターでインキュベートした。3日後、細胞を回収し、氷冷した100μLの溶解緩衝液[1vol%フェニルメタンスルホニルフルオリド溶液(シグマ アルドリッチ、Cat. No. 93482)および1vol%プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ アルドリッチ、Cat. No. P8340)を含むNP40 Cell Lysis Buffer(インビトロジェン、Cat. No. FNN0221)]中で30分以上かけて細胞を溶解した。溶解物を約14000×rpm、4℃で10分間遠心分離した。PierceTM BCAプロテインアッセイキット(Pierce、Cat. No. 23225)を使用して、上清中のタンパク質濃度を測定した。SDS-PAGE試料を調製するため、溶解緩衝液で各溶解物をそれぞれ同じ濃度に希釈し、5×サンプルバッファー(サーモフィッシャー、Cat. No. 39000)と混合してタンパク質濃度を1.5μg/μLとし、95℃で5分間加熱した。各試料中のタンパク質をSDS-PAGEで分離し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に転写した。PVDFブロッキング緩衝液[IDO1検出用(東洋紡、Cat. No. NYPBR01)]またはブロッキング緩衝液[β-アクチン検出用(0.05vol% Tween20を含む50mmol/Lトリス緩衝食塩水(pH 8.0)(TBST)、5 w/v%スキムミルク)]で膜をブロッキングした後、Can Get Signal solution 1(東洋紡、Cat. No. NKB-201)で1/100に希釈した抗IDO抗体(Upstate Biotechnology、Cat. No. 05-840)、またはブロッキング緩衝液で1/3000に希釈した抗β-アクチン抗体(シグマ アルドリッチ、Cat. No. 061M4808)で膜を4℃で一晩インキュベートした。TBSTで約10分間の洗浄を3回行った後、ブロッキング緩衝液で1/2000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体(GEヘルスケア、Cat#NA931V)で膜を約1時間インキュベートした。TBSTで約10分間の洗浄を3回行った後、SuperSignal(登録商標)West Pico Chemiluminescent Substrate(Pierce Biotechnology、Cat. No. 34080)中に膜を浸漬させた。ルミノイメージアナライザーLAS3000をメーカーの説明書に準じて使用して、化学発光を検出した。
【0368】
7.4.4 馴化培地の調製
KATO-III親細胞、またはIDO1 shRNAもしくはNegaCTRL shRNAを安定に発現するKATO-III細胞(1.25×106個)を、25ng/mL組換えヒトIFN-γで処理した。細胞をCO2インキュベーターでインキュベートした。3日後、遠心分離により細胞と上清を分離した。得られた上清を馴化培地として使用した。この馴化培地を使用して、ヒトPBMCのインキュベーション(第7.4.5節)、およびKynとTrpの測定(第7.4.7節)を行った。
馴化培地1:KATO-III細胞(親)
馴化培地2:KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)
馴化培地3:KATO-III細胞(親)+IFN-γ
馴化培地4:KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)+IFN-γ
馴化培地5:KATO-III細胞(IDO1 shRNA#44)+IFN-γ
馴化培地6:KATO-III細胞(IDO1 shRNA#45)+IFN-γ
馴化培地7:KATO-III細胞(IDO1 shRNA#46)+IFN-γ
【0369】
7.4.5 ADCC
ヒトPBMCをCO2インキュベーターにおいて各馴化培地(第7.4.4節)中で培養した。7日後に細胞を回収してカウントし、エフェクター細胞として使用した。エフェクター細胞としてのPBMCは、アッセイ培地(10vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むRPMI1640)中に懸濁して、5×106個/mLの密度とした。TL-Om1細胞(1×106個)は、CO2インキュベーターにおいて37℃で1時間かけて、1.85MBqのNa2 51CrO4(パーキンエルマー)で標識した。細胞をアッセイ培地で3回洗浄した。標的細胞としての放射標識細胞を、アッセイ培地5 mLに2×105個/mLの密度で懸濁した。モガムリズマブをアッセイ培地で10倍段階希釈して30μg/mL~0.3μg/mL(最終濃度:10μg/mL~0.1μg/mL)の濃度とした。標的細胞(1×104個)50μLを96ウェル丸底培養プレートに播種し、上述のように調製した抗体希釈液50μLとエフェクター細胞(2.5×105個)50μLとを加えて混合した。培養プレートを4℃で軽く遠心し、CO2インキュベーターにおいて37℃で約4時間インキュベートした。4℃で5分間かけて遠心分離した後、上清をLumaPlate(パーキンエルマー)に移して、十分に乾燥させた。マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT、パーキンエルマー)で放射能を計測した。
【0370】
7.4.6 NK細胞のフローサイトメトリー分析
ヒトPBMCを各馴化培地に播種し、CO2インキュベーターでインキュベートした。7日後に細胞を回収し、Fixable Viability Dye eFluor(登録商標)506(eBioscience、Cat. No. 65-0866-14)で染色した。MACS緩衝液[1w/v% BSAを含むautoMACS Rinsing Solution(ミルテニーバイオテク、Cat. No. 130-091-222)]で細胞を2回洗浄した後、PerCP抗ヒトCD3抗体(Biolegend、Cat. No. 300428)、FITC抗ヒトCD16抗体(BD PharmingenTM、Cat. No. 556618)およびPE/Cy7抗ヒトCD56抗体(BD PharmingenTM、Cat. No. 557747)で細胞を染色した。MACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞をMACS緩衝液200μLに懸濁し、FACSuiteソフトウェアを用いてFACSVerseTM(BDバイオサイエンス)により分析した。CD3-細胞中のCD16+CD56+細胞(NK細胞)の割合をFlowJoソフトウェア(バージョン7. 6. 5、FlowJo)で測定した。染色はいずれもメーカーの説明書に準じて行った。
【0371】
7.4.7 試料中のKynおよびTrpの定量
7.4.7.1 試料の前処理
馴化培地(第7.4.4節)50μLと氷冷IS/TFA溶液(5/1、v/v)60μLを混合し、遠心分離した(5000×g、室温、10分)。上清60μLと、0.05vol%ギ酸/メタノール=75/25(v/v)50μLとを混合し、得られた混合物を液体クロマトグラフィー/タンデム型質量分析(LC/MS/MS)システムに注入した。
【0372】
7.4.7.2 検量線用標準試料の調製
検量線用標準溶液は、Trp保存溶液またはKyn保存溶液を水で希釈して調製した。検量線用標準溶液の濃度域は、1~500μmol/L(Trp)および0.05~20μmol/L(Kyn)とし、調製した検量線用標準溶液は4℃で保存した。ブランク試料として、検量線用標準溶液の代わりに水を使用した。各50μLの検量線用標準溶液およびブランク試料は、第7.4.7.1節に記載の操作と同様にして前処理した。
【0373】
7.4.7.3 LC/MS/MS分析
<分析システム>
LC: アジレント1200(アジレント・テクノロジー)
オートサンプラー: HTC PAL(CTC Analytics)
MS/MS: API 5000(AB SCIEX)
分析ソフトウェア: Analyst 1.6.1(AB SCIEX)
カラム: Atlantis(3μm, 4.6mm×75 mm、ウォーターズ)
プレフィルター: A-103x(0.5μm、Upchurch Scientific)
カラム温度: 室温
【0374】
<LC条件>
移動相A: 0.05vol%ギ酸
移動相B: メタノール
【表3】
【0375】
<MS/MS条件>
イオン化モード: エレクトロスプレーイオン化、ポジティブ
ソース温度: 500℃
検出: 多重反応モニタリング
モニタリングイオン:
【表4】
【0376】
7.5 生データの分析方法
分析ソフトウェア(バージョン1.6.1、AB SCIEX)を使用してTrp濃度およびKyn濃度を算出した。最小二乗法による直線回帰によって検量線用標準試料からピーク面積比(分析種/IS)を算出し、検量線を構築した[Y=aX+b;Y、ピーク面積比;X、濃度;重み付け係数、1/Y2]。ブランク試料は回帰分析に含めなかった。
【0377】
試料中のKyn濃度およびTrp濃度をそれぞれ算出した。定量下限濃度は0μmol/Lとした。
【0378】
比較Ct法(2-ddCt)を使用して、KATO-III親細胞、IDO1 shRNAを安定に発現するKATO-III細胞、ベクターを安定に発現するKATO-III細胞またはNegaCTRL shRNAを安定に発現するKATO-III細胞の間での、IDO1転写レベルの相対的変化を測定した[Methods. 2001;25(4):402-8]。
【0379】
細胞傷害率(%)は以下の式に準じて算出した。
【数2】
【0380】
式中、Eは、実験により放出された放射能(cpm)であり、Sは、エフェクター細胞や抗体を加えずにアッセイ培地のみを加えた場合に自然に放出された放射能(cpm)の平均値であり、Mは、エフェクター細胞や抗体を加えずに10vol%のTritonTM X-100(シグマ アルドリッチ、Cat. No. T9284-100ML)を加えた場合に放出された最大放射能(cpm)の平均値である。各濃度の抗体を加えたときの細胞傷害率は、三連の平均値として示した。
【0381】
8 結果
8.1 KATO-III細胞におけるIDO1のノックダウンの確認
IDO1 shRNA安定発現KATO-III細胞におけるIDO1 mRNAのノックダウンを確認するため、IFN-γで処理したKATO-III細胞におけるIDO1 mRNAレベルをqPCR分析により検出した。IDO1 shRNAを導入した細胞では、KATO-III親細胞と比較して、4種のshRNA導入細胞すべてにおいてIDO1 mRNAの発現が約80%低下した(図10A)。ベクターまたはNegaCTRL shRNAの導入によるIDO1 mRNAレベルへの影響は見られなかった(図10A)。次いで、IDO1タンパク質レベルに対するshRNAサイレンシングの効果をウエスタンブロット分析により測定した。IDO1 shRNA#44、#45または#46を安定に発現するKATO-III細胞におけるIDO1タンパク質の発現は、KATO-III親細胞と比較して著しく低下した(図10B)。IDO1 shRNA#47安定発現KATO-III細胞におけるIDO1タンパク質の発現は、幾分低下した(図10B)。ベクターまたはNegaCTRL shRNAの導入によるIDO1タンパク質レベルへの影響は見られなかった(図10B)。
【0382】
次の実験において、IDO1 shRNA #44、#45もしくは#46、またはNegaCTRL shRNAを安定に発現するKATO-III細胞を使用して、ADCCに対するIDO1活性の効果を検討した。
【0383】
8.2 Kynの産生およびTrpの消費に対するKATO-III細胞のIDO1ノックダウンの効果
Kynの産生およびTrpの消費に対するKATO-III細胞のIDO1ノックダウンの効果を検討するため、KATO-III親細胞またはIDO1 shRNAもしくはNegaCTRL shRNAを安定に発現するKATO-III細胞をIFN-γの非存在下または存在下で用いて馴化した培地中のKyn濃度およびTrp濃度を測定した。
【0384】
図11に示したように、IFN-γの非存在下のKATO-III親細胞およびNegaCTRL shRNA安定発現KATO-III細胞では、Kyn濃度の上昇とTrp濃度の低下は観察されなかった。KATO-III親細胞またはNegaCTRL shRNA安定発現KATO-III細胞をIFN-γで処理した場合、Kyn濃度の上昇およびTrp濃度の低下が観察された。一方、3種のIDO1 shRNA導入細胞では、IFN-γの存在下であっても、Kyn濃度の上昇およびTrp濃度の低下が抑制された。
【0385】
8.3 NK細胞の検出
各馴化培地中でヒトPBMCをインキュベートし、NK細胞(CD3-/CD16+/CD56+細胞)の有無を確認した。図12に示したように、NK細胞は、いずれの馴化培地でインキュベートしたPBMCでも検出された。
【0386】
8.4 ADCCに対するIDO1活性の効果
ADCCに対するIDO1活性の効果を検討するため、各馴化培地中でプレインキュベートしたヒトPBMCによるADCC活性を測定した。馴化培地3[KATO-III細胞(親)+IFN-γ]または馴化培地4[KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)+IFN-γ]においてヒトPBMCをプレインキュベートした場合、馴化培地1[KATO-III細胞(親)]や馴化培地2[KATO-III細胞(NegaCTRL shRNA)]と比較して、モガムリズマブのADCCが低下した(図13)。一方、馴化培地5[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#44)+IFN-γ]、馴化培地6[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#45)+IFN-γ]または馴化培地7[KATO-III細胞(IDO1 shRNA#46)+IFN-γ]においてヒトPBMCをプレインキュベートした場合、ADCCは低減されず、馴化培地1や馴化培地2とほぼ同等のADCCを示した(図13)。
【0387】
9 考察
本研究では、ADCCがIDO1活性によって低減されることが実証された。過去の研究おいては、Kyn等のTrp代謝産物によってNK細胞数が減少したことが示唆されている[Exp Med. 2002;196(4):447-57]。しかしながら、本研究においては、IFN-γで処理したKATO-III細胞で馴化した培地中でインキュベートしたPBMC中のNK細胞の割合に顕著な減少は見られず、Kyn濃度の上昇が誘導された(図12)。このことから、IDO1活性によるADCCの低下は、NK細胞数の減少によるものではなく、NK細胞の機能が抑制されたことによるものであると考えられることが示唆された。また、IFN-γ存在下のIDO1 shRNA発現KATO-III細胞で馴化した培地においてKyn濃度の上昇とTrp濃度の低下が抑制されたことから、Kynの産生またはTrpの消費はNK細胞の機能の低下によるものであると考えられることが示唆された。
【0388】
試験例3
概要
本研究では、抗葉酸受容体α(ヒト葉酸受容体1(FOLR1))抗体であるHuRA15-7CTAcc(抗体C1)の存在下または非存在下において、卵巣癌細胞に対するヒト末梢血単球(PBMC)の細胞傷害性に与えるIDO1阻害剤の効果を検討した。まず、ウエスタンブロットにより4種の卵巣癌細胞におけるIDO1の発現を調べた。その結果、IFN-γによる処理を行ったSKOV3細胞、OVCAR3細胞およびMCAS細胞においてIDO1の発現が観察されたが、同じ条件下でのOVISE細胞ではIDO1の発現は観察されなかった(図14)。SKOV3細胞を使用して馴化培地を調製した。IDO1阻害剤である化合物A1または化合物B1の存在下または非存在下においてSKOV3細胞をIFN-γで刺激した後、PBMCのプレインキュベーション用の馴化培地として上清を回収した。IDO1阻害剤の存在下で調製した馴化培地中でPBMCをプレインキュベートすると、PBMCのナチュラルキラー活性と抗体C1媒介性細胞傷害性がアップレギュレートされた(図15および図16)。
【0389】
10 序論
FOLR1は、現在進行中の研究において癌療法の標的として有望視されている(Ann Oncol. 2015 Jun 30)。従来の抗FOLR1抗体よりも強力な抗体依存性細胞傷害性(ADCC)と補体依存性細胞傷害(CDC)活性とを有する新規な抗FOLR1抗体としてHuRA15-7CTAcc(抗体C1)を作製した。
【0390】
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)が卵巣癌において高発現することが過去に報告されており、卵巣癌患者の予後不良を示す因子の1つとして知られている(Gynecologic Oncology 2009;115:185-192)。IDO1は免疫抑制メカニズムを制御するという重要な役割を担っており、腫瘍の宿主免疫監視からの回避を可能としている(Nat Rev Cancer. 2009;9:445-52)。また、キヌレニン等のトリプトファン代謝産物は、NK細胞死を誘導すること(J Exp Med. 2002;196:447-57)、さらに、NK細胞受容体の発現を抑制することによってNK細胞の細胞傷害性を低下させることが報告されている(Blood. 2006;108:4118-25)。したがって、IDO1活性がADCC活性に影響を及ぼしている可能性がある。
【0391】
実際、図3~8に示したように、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブまたはモガムリズマブによって誘導されたヒト末梢血単球(PBMC)の細胞傷害性が、KATO-III細胞のIDO1活性によって低下することを実証できた。
【0392】
以上を踏まえ、本研究においては、抗FOLR1抗体である抗体C1の存在下または非存在下における卵巣癌細胞に対するヒトPBMCの細胞傷害性に与える化合物A1および化合物B1の効果を検討した。
【0393】
11 材料と方法
11.1 材料
11.1.1 抗FOLR1抗体
抗体C1(HuRA15-7CTAcc)は、WO2014/087863の実施例に記載の「HuRA15-7CTAcc抗体」として得た。抗体C1は、アクリタマブ(登録商標)技術で作製されたヒト化CDR修飾抗FOLR1抗体である。
【0394】
11.1.2 IDO1阻害剤
化合物A1および化合物B1はIDO1阻害剤である。化合物A1は、WO2011/142316の実施例62に記載の化合物64Aとして得た。化合物B1は、WO2010/005958の実施例1に記載の「4-({2-[(アミノスルホニル)アミノ]エチル}アミノ)-N-(3-ブロモ-4-フルオロフェニル)-N’-ヒドロキシ-1,2,5-オキサジアゾール-3-カルボキシミドアミド」として得た。
【0395】
化合物A1およびB1をそれぞれ10mmol/Lの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解して保存溶液とし、使用まで凍結保存した。保存溶液は培地[10vol%熱不活化ウシ胎仔血清(FCS、GIBCO)およびペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)を含むRPMI1640(GIBCO)]で希釈して、アッセイに適切な濃度に調整した。
【0396】
11.1.3 ヒトPBMC
凍結ヒトPBMCは、Precision Bioservices社(Lot 2500113169)から購入した。解凍後、1mg/mL DNase(ロシュ)を含む培地でPBMCを洗浄し、アッセイに使用した。
【0397】
11.1.4 細胞と培地
卵巣癌細胞OVISE(JCRB1043)およびMCAS(JCRB0240)はJCRBから入手し、卵巣癌細胞SKOV3(HTB-77)およびOVCAR3(HTB-161)はATCCから入手した。これらの細胞を培地中で培養した。
【0398】
11.2 方法
11.2.1 ウエスタンブロット
卵巣癌細胞(OVISE、SKOV3、OVCAR3またはMCAS)を、IFN-γ(R&Dシステムズ)(50ng/mLまたは100ng/mL)添加または非添加の培地中で4日間培養した。SDSサンプルバッファー(Thermo)中で細胞を溶解し、溶解物を沸騰させた(100℃、5分)。抗IDO1抗体(クローン10.1、ミリポア)を使用し、次いで抗マウス抗体-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP、Zymed)を使用するか、あるいは抗β-アクチン抗体(ウサギポリクローナル、abcam)を使用し、次いで抗ウサギ抗体-HRP(DAKO)を使用して、ウエスタンブロット法により各試料中のIDO1タンパク質またはβ-アクチンタンパク質の発現を検出した。
【0399】
11.2.2 馴化培地の調製
50ng/mLのIFN-γ(PeproTech)と100nmol/LのIDO1阻害剤(化合物A1もしくは化合物B1)またはDMSOとを含む培地25 mL中でSKOV3細胞(1.0×106個)を3日間培養した。各培養物の上清を馴化培地としてPBMCのプレインキュベーションに使用した。
【0400】
使用した馴化培地を以下に示す。
- DMSO馴化培地:50ng/mL IFN-γと0.1vol% DMSOを添加して培養したSKOV3細胞
- 化合物A1馴化培地:50ng/mL IFN-γと100nmol/L化合物A1を添加して培養したSKOV3細胞
- 化合物B1馴化培地:50ng/mL IFN-γと100nmol/L化合物B1を添加して培養したSKOV3細胞
【0401】
11.2.3 細胞傷害アッセイ
11.2.3.1 標的細胞の調製
TrypLE Express(GIBCO)を使用してSKOV3細胞を培養フラスコから剥離した。ADCCアッセイ培地[10vol%熱不活化透析FCS(GIBCO)を添加したフェノールレッド非含有RPMI1640(GIBCO)]中に生細胞を懸濁し、1.0×106個の密度に調整した。CO2インキュベーターにおいて37℃で1時間かけて、約3.7MBqのNa2 51CrO4(パーキンエルマー)で細胞を標識した。細胞を3回洗浄し、ADCCアッセイ培地を使用して2.0×105個/mL(1×104個/50μL)の密度に調整し、標的細胞として使用した。
【0402】
11.2.3.2 エフェクター細胞の調製
馴化培地25mL中でヒトPBMCを7日間培養した。化合物A1馴化培地または化合物B1馴化培地中で2.8×107個または2.4×107個の細胞をプレインキュベートした。ADCCアッセイ培地で細胞を洗浄し、ADCCアッセイ培地を使用して5.0×106個/mL(2.5×105個/50μL)の密度に調整し、エフェクター細胞として使用した。
【0403】
11.2.3.3 抗体溶液の調製
ADCCアッセイ培地を使用して抗体C1溶液を調製し、ADCCアッセイにおいて最終濃度0.033ng/mL、0.33ng/mL、3.3ng/mL、33ng/mLおよび333ng/mLで使用した。
【0404】
11.2.3.4 細胞傷害アッセイ
細胞傷害性は、各アッセイウェルの上清中の放射能を測定することによって定量した。96ウェルU底プレートの各ウェルの全量は150μLとした。
【0405】
トータル、T spo、Mおよび分析試料を以下のように定義し、調製した。
- トータル:標的細胞を含む総放射能コントロール。この試料は、標的細胞50μL、洗浄剤(10×Lysis Solution、プロメガ)15μLおよびADCCアッセイ培地85μLを混合して調製した。
- T spo:標的細胞を含む自然放出放射能コントロール。この試料は、標的細胞50μLおよびADCCアッセイ培地100μLを混合して調製した。
- M:ADCCアッセイ培地の対照コントロール。この試料はADCCアッセイ培地150μLとして調製した。
- 分析試料:この試料は、標的細胞、エフェクター細胞および抗体溶液を各50μL混合して調製した。
【0406】
試料はそれぞれ三連で調製した。サンプルプレートをCO2インキュベーターで4時間インキュベートした。プレートを遠心分離し、各上清50μLをLumaPlate(パーキンエルマー)に移し、十分に乾燥させた。マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT、パーキンエルマー)で放射能(cpm)を計測した。
【0407】
細胞傷害率(%)は、各ウェルのcpmから以下の式によって算出した。まず、各ウェルのcpmの補正値を以下の式によって算出した。
【数3】
【0408】
次いで、各分析試料における細胞傷害率を以下の式によって算出した。
【数4】
【0409】
各分析試料における細胞傷害率は、三連の平均値+標準偏差(SD)で示した。
【0410】
12 結果と考察
12.1 卵巣癌細胞におけるIDO1の発現
IFN-γ刺激により卵巣癌細胞においてIDO1が誘導されるかどうかを、4種の卵巣癌細胞(OVISE細胞、SKOV3細胞、OVCAR3細胞およびMCAS細胞)を使用して検討した。図14に示したように、IDO1は、50ng/mLまたは100ng/mLのIFN-γで刺激したSKOV3細胞、OVCAR3細胞およびMCAS細胞において検出された。一方、IFN-γで刺激したOVISE細胞では、IDO1の発現は観察されなかった。試験に使用した卵巣癌細胞はいずれも、IFN-γによる刺激の非存在下ではIDO1を発現しなかった。
【0411】
12.2 SKOV3細胞に対するPBMCの細胞傷害性に与える化合物A1または化合物B1の効果
PBMCの細胞傷害性に対するIDO1阻害剤活性の効果を評価するため、第9.2.2節(「馴化培地の調製」)と同様にして調製したSKOV3細胞馴化培地中でPBMCを7日間プレインキュベートした。次いで、プレインキュベートしたPBMCの放射標識SKOV3細胞に対する細胞傷害性を様々な濃度の抗体C1を用いて評価した。その結果、化合物A1馴化培地または化合物B1馴化培地中でプレインキュベートし、抗体C1を使用しなかったPBMCの細胞傷害性(ナチュラルキラー活性)は、DMSO馴化培地中でプレインキュベートしたものよりも高かった(図15Aおよび図16A)。さらに、化合物A1馴化培地または化合物B1馴化培地中でプレインキュベートし、抗体C1を加えたPBMCの細胞傷害性も、DMSO馴化培地中でプレインキュベートしたものよりも高かった(図15Bおよび図16B)。
【0412】
要約すると、SKOV3細胞を含む数種類の卵巣癌細胞をIFN-γで刺激することによってIDO1が発現されることが実証された。さらに、IDO1阻害剤である化合物A1または化合物B1を使用することによって、PBMCのナチュラルキラー活性および抗体C1媒介性細胞傷害性がアップレギュレートされた。以上のことから、抗体C1と化合物A1または化合物B1とを併用することによって、卵巣癌細胞に対して相乗的な細胞傷害作用が発揮されることが期待された。
【0413】
試験例4
概要
本研究では、抗ヒトインターロイキン3受容体α鎖(IL-3Rα)抗体である抗体D1の非存在下または存在下において、急性骨髄性白血病(AML)細胞に対するヒト末梢血単球(PBMC)の細胞傷害性に与えるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)阻害剤(化合物A1)の効果を検討した。
【0414】
IDO1発現細胞(KATO-III細胞)を使用して馴化培地を調製した。化合物A1の存在下または非存在下においてKATO-III細胞をIFN-γで刺激した後、PBMCのプレインキュベーション用の馴化培地として上清を回収した。本研究ではPBMCを使用した。馴化培地中でPBMCを7日間プレインキュベートし、AML細胞に対するPBMCの細胞傷害性を測定した。化合物A1による細胞傷害性の顕著なアップレギュレーションが観察され、すなわち、抗体D1の非存在下でも存在下でも、化合物A1含有馴化培地でインキュベートしたPBMCは、DMSO含有培地でインキュベートしたものよりも高い細胞傷害性を誘導した。
【0415】
13 序論
抗体D1は、ヒトインターロイキン3受容体α鎖(IL-3Rα)に対する非フコシル化完全ヒトモノクローナル抗体である。
化合物A1は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)1に対する小分子阻害剤である。
【0416】
本研究においては、抗体D1の存在下または非存在下において、急性骨髄性白血病(AML)細胞に対するPBMCの細胞傷害性に与える化合物A1の効果を検討した。
【0417】
14 材料と方法
14.1 材料
14.1.1 抗体D1
抗体D1(19.59mg/mL)は、WO2010/126066の実施例に記載の「New102抗体」として得た。
【0418】
14.1.2 IDO1阻害剤
化合物A1は、WO2011/142316に記載の実施例62の化合物64Aとして得た。化合物A1を10mmol/Lの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、保存溶液とした。保存溶液は使用まで凍結保存した。保存溶液は培地[10vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含むRPMI1640]で希釈して、アッセイに適切な濃度に調整した。
【0419】
14.1.3 ヒトPBMC
凍結PBMCは、Precision Bioservices社(lot# 13096)およびAllcells社(lot# A3951)から購入した。解凍後、培地でPBMCを洗浄し、アッセイに使用した。
【0420】
14.1.4 細胞と培地
ヒト胃癌細胞KATO-III(86093004)は、DSファーマバイオメディカル株式会社から入手し、ヒトAML細胞KG-1(CRL-8031)はATCCから入手した。細胞を培地で培養した。
【0421】
14.2 方法
14.2.1 馴化培地の調製
50ng/mLのIFN-γ(PeproTech)と100nmol/Lの化合物A1またはDMSOとを含む培地(10vol%FBS含有RPMI1640培地)25 mL中でKATO-III細胞(1.25×106個)を3日間培養した。各培養物の上清を馴化培地としてPBMCのプレインキュベーションに使用した。
【0422】
使用した馴化培地を以下に示す。
- DMSO馴化培地:50ng/mL IFN-γと0.1vol% DMSOを添加して培養したKATO-III細胞
- 化合物A1馴化培地:50ng/mL IFN-γと100nmol/L 化合物A1を添加して培養したKATO-III細胞
【0423】
14.2.2 細胞傷害アッセイ
14.2.2.1 標的細胞の調製
KG-1細胞(1×106個)は、CO2インキュベーターにおいて37℃で1時間かけて、約3.7MBqのNa2 51CrO4(パーキンエルマー)で標識した。細胞を2回洗浄し、アッセイ培地を使用して1.0×105個/mL(0.5×104個/50μL)の密度に調整し、標的細胞として使用した。
【0424】
14.2.2.2 エフェクター細胞の調製
馴化培地中で2つのロットのPBMCを5×105個/mLの密度で7日間培養した。アッセイ培地で細胞を洗浄し、アッセイ培地を使用して2.5×106個/mL(12.5×104個/50μL)の密度に調整し、エフェクター細胞として使用した。
【0425】
14.2.2.3 抗体溶液の調製
抗体D1溶液をアッセイ培地で希釈して0μg/mL、0.3μg/mL、3μg/mLまたは30μg/mLの濃度とした。
【0426】
14.2.2.4 細胞傷害アッセイ
PBMCを細胞傷害アッセイに使用した。細胞傷害性は、各アッセイウェルの上清中の放射能を測定することによって定量した。96ウェルV底プレートの各ウェルの全量は150μLとした。
【0427】
トータル、T spo、Mまたは分析試料を以下のように定義し、調製した。
- トータル:標的細胞を含む総放射能コントロール。この試料は、標的細胞50μLおよび(アッセイ培地で希釈した)1vol% NP-40 100μLを混合して調製した。
- T spo:標的細胞を含む自然放出放射能コントロール。この試料は、標的細胞50μLおよびアッセイ培地100μLを混合して調製した。
- 分析試料:この試料は、標的細胞、エフェクター細胞および抗体溶液を各50μL混合して調製した。
【0428】
分析試料中の抗体D1の最終濃度は0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mLとした。
試料はそれぞれ三連で調製した。サンプルプレートを軽く遠心分離し、CO2インキュベーターで4時間インキュベートした。プレートを遠心分離し、各上清50μLをLumaPlate(パーキンエルマー)に移し、十分に乾燥させた。マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT、パーキンエルマー)で放射能(cpm)を計測した。
【0429】
細胞傷害率(%)は以下の式によって算出した。
【数5】
【0430】
各分析試料における細胞傷害率は、三連の平均値±標準偏差(SD)で示した。
【0431】
15 結果と考察
PBMCの細胞傷害性に対する化合物A1の効果を評価するため、第9.2.2節と同様にして調製したKATO-III細胞馴化培地中でPBMC(lot# A3951)を7日間プレインキュベートした。インキュベーション後、プレインキュベートしたPBMCの放射標識KG-1細胞に対する細胞傷害性を、抗体D1の非存在下または様々な濃度の抗体D1の存在下において評価した。
【0432】
化合物A1による細胞傷害性の顕著なアップレギュレーションが観察され、すなわち、抗体D1の非存在下でも存在下でも、化合物A1含有馴化培地でインキュベートしたPBMCは、DMSO含有培地でインキュベートしたものよりも高い細胞傷害性を誘導した(図17)。
【0433】
試験例5
16 概要
本研究では、抗ヒトT cell immunoglobulin and mucin domain 3(TIM-3)抗体である抗体E1の非存在下または存在下において、TIM-3トランスフェクト急性骨髄性白血病(AML)細胞に対するヒト末梢血単球(PBMC)の細胞傷害性に与えるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)阻害剤(化合物A1)の効果を検討した。
【0434】
IDO1発現細胞(KATO-III細胞)を使用して馴化培地を調製した。化合物A1の存在下または非存在下においてKATO-III細胞をIFN-γで刺激した後、PBMCのプレインキュベーション用の馴化培地として上清を回収した。馴化培地中でPBMCを7日間プレインキュベートし、TIM-3トランスフェクトAML細胞に対するPBMCの細胞傷害性を測定した。化合物A1による細胞傷害性の顕著なアップレギュレーションが観察され、すなわち、抗体E1の非存在下でも存在下でも、化合物A1含有馴化培地でインキュベートしたPBMCは、DMSO含有培地でインキュベートしたものよりも高い細胞傷害性を誘導した。
【0435】
17 序論
抗体E1は、ヒトT cell immunoglobulin and mucin domain 3(TIM-3)に対する非フコシル化完全ヒトモノクローナル抗体である。
化合物A1は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)1に対する小分子阻害剤である。
【0436】
本研究においては、抗体E1の存在下または非存在下において、TIM-3トランスフェクト急性骨髄性白血病(AML)細胞に対するPBMCの細胞傷害性に与える化合物A1の効果を検討した。
【0437】
18 材料と方法
18.1 材料
18.1.1 抗体E1
抗体E1(82.31mg/mL)は、WO2011/155607の実施例に記載の「4545抗体」として得た。
【0438】
18.1.2 IDO1阻害剤
化合物A1は、WO2011/142316に記載の実施例62の化合物64Aとして得た。化合物A1を10mmol/Lの濃度でジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、保存溶液とした。保存溶液は使用まで凍結保存した。保存溶液は培地[10vol%熱不活化ウシ胎仔血清および1vol%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を含むRPMI1640]で希釈して、アッセイに適切な濃度に調整した。
【0439】
18.1.3 ヒトPBMC
凍結PBMCは、Precision Bioservices社(lot# 13096)から購入した。解凍後、培地でPBMCを洗浄し、アッセイに使用した。
【0440】
18.1.4 細胞と培地
ヒト胃癌細胞KATO-III(86093004)は、DSファーマバイオメディカル株式会社から入手した。EoL-1(RCB0641)は、理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室から入手した。ヒトTIM-3遺伝子をEoL-1細胞にトランスフェクトして、EoL-1/ヒトTIM-3細胞を得た。細胞を培地で培養した。
【0441】
18.2 方法
18.2.1 馴化培地の調製
50ng/mLのIFN-γ(PeproTech)と100nmol/Lの化合物A1またはDMSOとを含む培地(10vol%FBS含有RPMI1640培地)25 mL中でKATO-III細胞(1.25×106個)を3日間培養した。各培養物の上清を馴化培地としてPBMCのプレインキュベーションに使用した。
【0442】
使用した馴化培地を以下に示す。
- DMSO馴化培地:50ng/mL IFN-γと0.1vol% DMSOを添加して培養したKATO-III細胞
- 化合物A1馴化培地:50ng/mL IFN-γと100nmol/L 化合物A1を添加して培養したKATO-III細胞
【0443】
18.2.2 細胞傷害アッセイ
18.2.2.1 標的細胞の調製
EoL-1/ヒトTIM-3細胞(1×106個)は、CO2インキュベーターにおいて37℃で1時間かけて、約3.7MBqのNa2 51CrO4(パーキンエルマー)で標識した。細胞を2回洗浄し、アッセイ培地を使用して1.0×105個/mL(0.5×104個/50μL)の密度に調整し、標的細胞として使用した。
【0444】
18.2.2.2 エフェクター細胞の調製
馴化培地中でヒトPBMCを5×105個/mLの密度で7日間培養した。アッセイ培地で細胞を洗浄し、アッセイ培地を使用して2.5×106個/mL(12.5×104個/50μL)の密度に調整し、エフェクター細胞として使用した。
【0445】
18.2.2.3 抗体溶液の調製
抗体E1溶液をアッセイ培地で希釈して0μg/mL、0.3μg/mL、3μg/mLまたは30μg/mLの濃度とした。
【0446】
18.2.2.4 細胞傷害アッセイ
細胞傷害性は、各アッセイウェルの上清中の放射能を測定することによって定量した。96ウェルV底プレートの各ウェルの全量は150μLとした。
【0447】
トータル、T spo、Mまたは分析試料を以下のように定義し、調製した。
- トータル:標的細胞を含む総放射能コントロール。この試料は、標的細胞50μLおよび(アッセイ培地で希釈した)1vol% NP-40 100μLを混合して調製した。
- T spo:標的細胞を含む自然放出放射能コントロール。この試料は、標的細胞50μLおよびアッセイ培地100μLを混合して調製した。
- 分析試料:この試料は、標的細胞、エフェクター細胞および抗体溶液を各50μL混合して調製した。
【0448】
分析試料中の抗体E1の最終濃度は0μg/mL、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mLとした。
試料はそれぞれ三連で調製した。サンプルプレートを軽く遠心分離し、CO2インキュベーターで4時間インキュベートした。プレートを遠心分離し、各上清50μLをLumaPlate(パーキンエルマー)に移し、十分に乾燥させた。マイクロプレートシンチレーションカウンター(TopCount NXT、パーキンエルマー)で放射能(cpm)を計測した。
【0449】
細胞傷害率(%)は以下の式によって算出した。
【数6】
【0450】
各分析試料における細胞傷害率は、三連の平均値±標準偏差(SD)で示した。
【0451】
19 結果と考察
PBMCの細胞傷害性に対する化合物A1の効果を評価するため、第9.2.2節と同様にして調製したKATO-III細胞馴化培地中でPBMCを7日間プレインキュベートした。インキュベーション後、プレインキュベートしたPBMCの放射標識EoL-1/ヒトTIM-3細胞に対する細胞傷害性を、抗体E1の非存在下または様々な濃度の抗体E1の存在下において評価した。
【0452】
化合物A1による細胞傷害性の顕著なアップレギュレーションが観察され、すなわち、抗体E1の非存在下でも存在下でも、化合物A1含有馴化培地でインキュベートしたPBMCは、DMSO含有培地でインキュベートしたものよりも高い細胞傷害性を誘導した(図18)。
【配列表フリーテキスト】
【0453】
配列番号1:抗体C1 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号2:抗体C1 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号3:抗体C1 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号4:抗体C1 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号5:抗体C1 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号6:抗体C1 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号7:抗体C1 H鎖のアミノ酸配列
配列番号8:抗体C1 L鎖のアミノ酸配列
配列番号9:抗体D1-1 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号10:抗体D1-1 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号11:抗体D1-1 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号12:抗体D1-2 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号13:抗体D1-2 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号14:抗体D1-2 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号15:抗体D1-3 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号16:抗体D1-3 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号17:抗体D1-3 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号18:抗体D1-4 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号19:抗体D1-4 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号20:抗体D1-4 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号21:抗体D1-5 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号22:抗体D1-5 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号23:抗体D1-5 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号24:抗体D1-1 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号25:抗体D1-1 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号26:抗体D1-1 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号27:抗体D1-2 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号28:抗体D1-2 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号29:抗体D1-2 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号30:抗体D1-3 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号31:抗体D1-3 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号32:抗体D1-3 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号33:抗体D1-4 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号34:抗体D1-4 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号35:抗体D1-4 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号36:抗体D1-5 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号37:抗体D1-5 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号38:抗体D1-5 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号39:抗体E1-1 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号40:抗体E1-1 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号41:抗体E1-1 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号42:抗体E1-1 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号43:抗体E1-1 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号44:抗体E1-1 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号45:抗体E1-2 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号46:抗体E1-2 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号47:抗体E1-2 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号48:抗体E1-2 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号49:抗体E1-2 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号50:抗体E1-2 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号51:抗体E1-3 HCDR1のアミノ酸配列
配列番号52:抗体E1-3 HCDR2のアミノ酸配列
配列番号53:抗体E1-3 HCDR3のアミノ酸配列
配列番号54:抗体E1-3 LCDR1のアミノ酸配列
配列番号55:抗体E1-3 LCDR2のアミノ酸配列
配列番号56:抗体E1-3 LCDR3のアミノ酸配列
配列番号57:抗体E1-4 VH領域のアミノ酸配列
配列番号58:抗体E1-4 VL領域のアミノ酸配列
配列番号59:抗体E1-5 VH領域のアミノ酸配列
配列番号60:抗体E1-5 VL領域のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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