(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】長手方向を有する管状要素を外側端部において立てるためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/66 20060101AFI20231013BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20231013BHJP
B66C 1/44 20060101ALI20231013BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20231013BHJP
B63B 77/10 20200101ALI20231013BHJP
B63B 35/00 20200101ALI20231013BHJP
【FI】
B66C1/66 K
E02D27/52 A
B66C1/44 L
B66C1/44 F
F03D13/25
B63B77/10
B63B35/00 T
(21)【出願番号】P 2021504304
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2019069671
(87)【国際公開番号】W WO2020020819
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】520282638
【氏名又は名称】ディーム・オフショア・ベーエー・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ヴィム・ヤン・ラバウト
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ジェラルド・ファンニューウェンハイセ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・マリア・クーン・ミッシェルセン
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-500135(JP,A)
【文献】特表2018-515404(JP,A)
【文献】特表2014-502944(JP,A)
【文献】特開平10-002990(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02851472(EP,A1)
【文献】特開平06-135681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
E02D 27/00-27/52
F03D 1/00-80/80
B63B 77/10
B63B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(21)を有する管状要素(20)を外側端部において立てるためのデバイス(1)であって、
- 相互に連結されたビーム(2a,2b)の十字状支持構造と;
- クレーンなどの持ち上げ手段に接続するための、前記十字状支持構造に回動可能に接続された持ち上げ部材(4)と;
- クランプ位置(B)において前記管状要素(20)の前記外側端部の壁部に連結するために、離間位置(A)から前記クランプ位置(B)まで前記ビーム(2a,2b)に沿ってスライド可能なクランプ部材(6)であって、前記クランプ位置(B)では、前記ビーム(2a,2b)が、前記管状要素(20)の前記長手方向(21)を実質的に横切る方向に延在し、前記クランプ部材(6)が、前記管状要素(20)の中空外側端部の内部壁部(20a)に連結するために、前記離間位置(A)から、前記十字状支持構造の十字の中心から前記離間位置(A)よりもさらに離れて配置された前記クランプ位置(B)までスライド可能である、クランプ部材(6)と;
を備え、
前記デバイスが、前記管状要素(20)の壁部(20b)のための、前記ビーム(2a,2b)に接続された支持部材(9)であって、前記支持部材が、前記管状要素の外側壁部を支持するように構成されている、支持部材(9)と、前記支持部材(9)と異なりかつ少なくとも前記管状要素(20)の周囲の一部(23)に沿って延在する支持構造(25)であって、前記支持構造(25)が、少なくとも2つのビーム(2a,2b)に接続されている、支持構造(25)と、をさらに備えていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記支持部材が、前記ビームの調節可能な固定位置において前記ビームに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記十字状支持構造に回動可能に連結された前記持ち上げ部材に対する前記十字状支持構造の角度位置を調節するための手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記角度調節手段が、前記持ち上げ部材と前記十字状支持構造との間で延在する液圧ピストンシリンダを備えていることを特徴とする請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記持ち上げ部材が、前記持ち上げ手段に接続するために前記十字状支持構造の上方側に位置しており、前記クランプ部材が、前記十字状支持構造の下方側に沿ってスライド可能であり、
前記十字支持構造の下方側は、前記持ち上げ部材が位置しない側として規定される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記クランプ部材が、クランプ部材と前記十字状支持構造との間で延在する液圧ピストンシリンダによりスライド可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記管状要素の壁部と接触することができる表面には、ゴムカバーなどの衝撃吸収要素が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記十字状支持構造
に代えて、Y状
支持構造を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記持ち上げ部材によって前記十字状支持構造を取り上げるためにキャリア構造によって支えられる持ち上げ手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記キャリア構造が、浮遊船舶を備えていることを特徴とする
請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記管状要素が、風力タービンの基礎パイルであることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
長手方向(21)を有する管状要素(20)を外側端部において立てるための方法であって、
- 請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス(1)を準備するステップと;
- 持ち上げ手段を使用して前記持ち上げ部材(4)によって前記十字状支持構造(2a,2b)を取り上げるステップと;
- 前記デバイス(1)を前記管状要素(20)の外側端部まで運ぶステップと:
- クランプ位置(B)において前記管状要素(20)の前記外側端部の壁部(20a)に連結するために離間位置(A)から前記クランプ位置(B)まで前記ビーム(2a,2b)に沿って前記クランプ部材(6)をスライドさせるステップであって、前記クランプ位置(B)では、前記ビーム(2a,2b)が、前記管状要素(20)の前記長手方向(21)を実質的に横切る方向に延在する、ステップと;
- 前記デバイス(1)に連結された前記管状要素(20)を立てるステップであって、前記十字状支持構造が、前記持ち上げ部材(4)に対して回動する、ステップと;
- 所望の位置へ前記デバイス(1)に連結された前記管状要素(20)を持ち上げるステップと;
- 前記管状要素(20)から前記デバイス(1)を連結解除するために、前記クランプ位置(B)から前記離間位置(A)まで前記ビーム(2a,2b)に沿って前記クランプ部材(6)をスライドさせるステップと;
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記デバイス(1)は、前記十字状支持構造(2a,2b)に回動可能に連結された前記持ち上げ部材(4)に対する前記十字状支持構造(2a,2b)の角度位置を調節するための角度調節手段をさらに備え、
前記十字状支持構造が、前記角度調節手段を使用して前記持ち上げ部材に対して能動的に回動させられることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記離間位置から前記クランプ位置までの距離が、前記管状要素の直径に従って調節されることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイスと、前記デバイスに連結された管状要素と、の組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向を有する管状要素を外側端部において立てるためのデバイス及び方法に関する。本発明は、船舶から、水中底部に設置されるべき風力タービンの基礎パイル及び/又はすでに据え付けられた基礎上に設置されるべき風力タービンタワーを外側端部において立てるためのデバイス及び方法に特に関する。基礎は、ここでは、いわゆるモノパイル基礎又はいわゆるジャケット基礎を備え得る。
【背景技術】
【0002】
本発明は、沖合の風力タービンを参照して説明される。しかしながら、この参照は、本発明が沖合の風力タービンに限定されることを意味せず、デバイス及び方法は、任意の地面に任意の他の管状要素を設置するために等しく良好に適用され得る。従って、例えば、突堤、レーダー及び他のタワーの、沖合の他の基礎構造を配置することに関連して、及び同様に陸上での用途のために本発明を適用することが可能である。
【0003】
沖合の風力タービンの基礎パイルは、多くの場合、スチール又はコンクリートの中空管状要素を備え、これらの要素は、100mを超える長さ、6m以上の直径及び800トン~2300トン以上にも及ぶことがある重量を有することがある。風力タービンのための基礎は、風力タービンが絶えずスケールアップされているので、さらにますます重くなっている。基礎がますますより大きくなっているので、基礎は取り扱うことがますますより難しくなる。
【0004】
水中底部上に基礎パイルを設置するための公知の方法は、持ち上げクレーンなどの持ち上げ手段により船舶から基礎パイルを取り上げるステップと、水中底部上又は水中底部内に基礎パイルを降ろすステップと、からなる。基礎パイルは、その後、持ち上げ手段から連結解除される。
【0005】
基礎パイルを取り上げるステップは、他にも理由はあるが、基礎パイルが容易に損傷する可能性があるので、デリケートな作業である。ここで、基礎パイルは、大きい距離にわたって船舶のデッキを越えて突出する可能性があることと、取り上げるためのデバイスと基礎パイルとの間の距離は、通常、例えば基礎パイルの直径に対して非常に小さく、このため、取り上げるためのデバイスと基礎パイルの壁部との間の望ましくない接触が容易に起こり得ることと、を考慮することが重要である。さまざまなオペレータが、さらに、持ち上げクレーン、船舶のデッキ上に設けられたウインチ及び同様のものなどの、使用されるツールを能動的に操作する。
【0006】
公知のデバイスの欠点は、基礎パイルなどの、立てられるべき管状要素を損傷させる機会が多いことである。また、公知のデバイスは、海が比較的穏やかであるときにだけその機能を果たすことができ、通常、制限された直径範囲のみに適している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上述した先行技術の欠点を少なくとも部分的に除去することを支援する、長手方向を有する管状要素を外側端部において立てるためのデバイス及び方法を提供することである。本発明は、特に、長手方向を有する管状要素、特に水中底部に設置されるべき風力タービンの基礎パイルを外側端部において立てるための改良されたデバイス及び方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、請求項1に記載のデバイスが、このために提供される。デバイスは、相互に連結されたビームの十字状支持構造と;クレーンなどの持ち上げ手段に接続するための、支持構造に回動可能に接続された持ち上げ部材と;クランプ位置において管状要素の外側端部の壁部に連結するために、離間位置(clear position)からクランプ位置までビームに沿ってスライド可能なクランプ部材であって、クランプ位置では、ビームが、管状要素の長手方向を実質的に横切る方向に延在する、クランプ部材と、を備える。
【0009】
本発明のこの説明に関連して、用語“実質的に”は、示された値又は特性の80%よりも多く、より好ましくは85%よりも多く、さらにより好ましくは90%よりも多く、また100%も意味すると理解される。
【0010】
管状要素の壁部へのスライド可能なクランプ部材の連結は、原理上、いかなるタイプの連結も含み得る。適切な連結は、例えば摩擦連結もしくはフランジ連結又は摩擦連結及びフランジ連結の組み合わせを含む。摩擦連結は、クランプ部材の表面と、クランプ部材が係合する関連する壁部の表面と、の間に、2つの表面をともに押し付けることによって摩擦力を発生させることに基づいている。フランジ連結は、クランプ部材が管状要素のフランジの下面に係合することに基づいている。
【0011】
デバイス、より具体的にはデバイスのスライド可能なクランプ部材は、損傷の機会が少なく、管状要素が、特に、揺れる船舶から取り上げられて立てられることを保証する。本発明のデバイスは、さらに、立てられるべき管状要素の寸法、より具体的には直径を良好に変化させることをもたらす。
【0012】
本発明の別の側面は、長手方向を有する管状要素を外側端部において立てるための方法に関する。方法は、
- 先行する記載のデバイスを準備するステップと;
- 持ち上げ手段を使用して持ち上げ部材によって支持構造を取り上げるステップと;
- デバイスを管状要素の外側端部まで運ぶステップと;
- クランプ位置において管状要素の外側端部の壁部に連結するために離間位置からクランプ位置までビームに沿ってクランプ部材をスライドさせるステップであって、クランプ位置では、ビームが、管状要素の長手方向を実質的に横切る方向に延在する、ステップと;
- デバイスに連結された管状要素を立てるステップであって、支持構造が、持ち上げ部材に対して回動する、ステップと;
- 所望の位置へデバイスに連結された管状要素を持ち上げるステップと;
- 管状要素からデバイスを連結解除するために、クランプ位置から離間位置までビームに沿ってクランプ部材をスライドさせるステップと;
を含む。
【0013】
要素の周囲部は、要素を立てる間に、適切なクランプテンションでクランプ部材によって係合される。クランプ部材が、例えば、デバイスを管状要素の中空外側端部内に挿入している間に十字状支持構造の中心の比較的近くに位置しているので、損傷する可能性がより低くなる。これは、必要に応じて、先行技術の方法で可能なものよりも重いうねりの中で働くことも可能にする。
【0014】
本発明の一実施形態では、クランプ部材は、管状要素の中空外側端部の内部壁部に連結するために、離間位置から、支持構造の十字の中心から離間位置よりもさらに離れて配置されたクランプ位置までスライド可能である。離間位置からクランプ位置までクランプ部材をスライドさせる選択肢を提供することは、デバイスが管状要素の直径のために修正されなければならないということなく、直径が変化する管状要素が、係合させられて立てられることを可能にする。デバイスは、特に、比較的大きい直径を有する管状要素が立てられることを可能にする。本出願に関連して、比較的大きい直径は、6mよりも大きい、より好ましくは7mよりも大きい、さらにより好ましくは8mよりも大きい、さらにより好ましくは9mよりも大きい、最も好ましくは10mよりも大きい直径を意味すると理解される。
【0015】
本発明によるデバイスの一実施形態は、クランプ部材が、管状要素の中空外側端部の内部壁部に連結するために、離間位置から、支持構造の十字の中心から離間位置よりもさらに離れて配置されたクランプ位置までスライド可能であることを特徴とする。
【0016】
さらに別の実施形態は、管状要素の壁部のための、ビームに接続された支持部材をさらに備えるデバイスを提供する。このような部材は、管状要素が重力に逆らって立てられるときに、管状要素を支持することに役立つ。支持部材は、好ましくは、比較的大きい直径を有する管状要素を立てるために利用され、管状要素の過重量を回避することに貢献する。
【0017】
一実施形態では、支持部材は、ビームの調節可能な固定位置においてビームに接続される。調節可能なさらなる固定位置は、例えば、支持部材と支持構造の関連するビームとの間のピン-ホール接続によって形成され得る。
【0018】
本発明の改良された実施形態は、支持部材が管状要素の外側壁部を支持するように構成されたデバイスに関する。
【0019】
本発明のさらに改良された実施形態は、支持部材とは異なる支持構造をさらに備えるデバイスであって、支持構造が、少なくとも管状要素の周囲の一部に沿って、例えば周囲の半分又は1/4に沿って延在する、デバイスに関する。支持構造は、好ましくは、十字状支持構造の少なくとも2つのビームに接続される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、デバイスは、支持構造に回動可能に連結された持ち上げ部材に対する支持構造の角度位置を調節するための手段をさらに備える。これは、支持構造の角度位置を調節することを可能にする。支持構造は、ここで、挿入位置から持ち上げ位置へ移動させられ、挿入位置では、デバイスが管状要素に連結することができ、持ち上げ位置では、管状要素が、(部分的に)立てられた位置にあり、最後には鉛直に吊り下げられた位置にある。
【0021】
角度調節手段は、任意の公知の方式で実現され、角度調節手段が、持ち上げ部材と支持構造との間で延在する液圧ピストンシリンダを備える実施形態が好ましい。
【0022】
支持構造のクランプ部材は、原理上、支持構造の上方側、下方側又は両側に位置し得る。実際の実施形態は、持ち上げ部材が、持ち上げ手段に接続するために十字状支持構造の上方側に位置するデバイスであって、クランプ部材が、支持構造の下方側に沿ってスライド可能である、デバイスに関する。
【0023】
支持構造のクランプ部材は、原理上、当業者に公知の任意の方式で支持構造のビームに沿ってスライド可能である。比較的メンテナンスに手のかからない実施形態は、クランプ部材と支持構造との間で延在する液圧ピストンシリンダによりクランプ部材がスライド可能であるデバイスに関する。
【0024】
デバイスが、海で立てられるべき管状要素の損傷を少なくとも部分的に防止するという目的を有するので、本発明の別の実施形態は、管状要素の壁部と接触することができる表面にはゴムカバーなどの衝撃吸収要素が設けられたデバイスによって形成される。これらの表面は、例えば、いくつかの実施形態では、クランプ部材の端面、支持部材の端面及び/又は支持構造の端面であり得る。
【0025】
本発明によれば、支持構造は、十字状であり、これは、中心から延在する複数のアームを備える構造を意味すると理解される。アームの数はランダムに選択され得るが、X状及び/又はY状である十字状支持構造が好ましい。このような支持構造は、それぞれ4つのアーム又は3つのアームを有する。
【0026】
デバイスは、比較的大きいサイズ、例えば6m以上の直径と80m以上にもなり得る長さとを有する管状要素を立てることに特に適している。実施形態は、このために、ここでは持ち上げ部材によって支持構造を取り上げるためにキャリア構造によって支えられた持ち上げ手段をさらに備えるデバイスを提供する。適切な持ち上げ手段は、任意の公知のタイプの持ち上げクレーンを備えている。持ち上げ手段のための支持構造は、地面、土、コンクリートプレートなどを含み得る。
【0027】
デバイスは、沖合で管状要素を立てることに特に適しており、このために、デバイスは、一実施形態によれば、キャリア構造として浮遊船舶を備えている。この実施形態では、デバイスは、船舶、例えばジャッキアッププラットフォームの作業デッキから操作される。本発明の利点は、支持構造が、重い物体を持ち上げることに適している浮遊船舶を備えている場合に、最もはっきりと明白になる。
【0028】
本発明によるデバイスの利点は、管状要素が、風力タービンの基礎パイルでありかつ/又はすでに据え付けられた基礎上に設置されるべき風力タービンタワーである実施形態において、最もはっきりと明白になる。
【0029】
デバイスにより、長手方向を有する管状要素は、損傷の機会が少ない状態で、その外側端部で立てられる。本発明のデバイスの実施形態は、ここで提供される:支持構造は、持ち上げ手段を使用して支持構造の持ち上げ部材によって取り上げられる;デバイスは、管状要素の外側端部まで運ばれる;クランプ部材は、離間位置からクランプ位置までビームに沿ってスライドさせられ、それにより、クランプ部材は、クランプ位置において管状要素の外側端部の壁部に連結する;デバイスに連結された管状要素は、立てられ、支持構造は、持ち上げ部材に対して回動する。デバイスに連結された管状要素が、所望の位置へ吊り下げ位置において導かれた後に、クランプ部材は、クランプ位置から離間位置までビームに沿ってスライドさせられ、これにより、デバイスを管状要素から連結解除する。
【0030】
この方法の一実施形態では、特に、管状要素が取り上げられるのに適した挿入位置に支持構造を移動させるために、支持構造は、角度調節手段を使用して持ち上げ部材に対して能動的に回動させられる。
【0031】
比較的小さい直径及び比較的大きい直径の双方を有する管状要素が立てられることを可能にするために、方法の実施形態では、離間位置からクランプ位置までの距離は、管状要素の直径に従って調節される。これを可能にする、デバイスの対応する実施形態が、このために提供される。
【0032】
本発明の別の側面は、説明された実施形態のいずれか1つによるデバイスと、このようなデバイスに連結された管状要素と、の組立体に関する。
【0033】
本出願で説明される本発明の実施形態は、これらの実施形態の任意の考えられる組み合わせで組み合わせられ得、各実施形態は別の特許出願の要旨を個々に形成することができる。
【0034】
本発明は、図面に限定されることなく、以下の図面に基づいてさらに明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施形態によるデバイスの概略的な分解斜視図である。
【
図2】
図1に示された実施形態の組み立て状態の概略的な平面図である。
【
図3】管状要素が連結された、
図1に示された本発明によるデバイスの実施形態の概略的な底面図である。
【
図4】2つの角度位置での、
図1に示された本発明によるデバイスの実施形態の概略的な側面図である。
【
図5】
図1に示された本発明によるデバイスの実施形態の概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面を参照すると、長手方向を有する基礎パイル20を外側端部において立てるためのデバイス1が示されている。デバイス1は、選択的に互いの上に又は別の表面上に、例えば風力タービンマストの移行ピースなどの長手方向を有する他の要素を立てて設置することに同様に適している。示される実施形態では、デバイス1は、相互に連結されたビーム(2a,2b)の形態の十字状支持構造を備えている。連結は、例えば、ビーム部分の溶接によってもたらされ得る。ビームは、例えば、管状断面を有するが、Hビーム又はIビームも可能である。十字の中心において、支持構造には、2つのヒンジ付きプレート(3a,3b)が設けられ、ヒンジ付きプレート(3a,3b)では、持ち上げ部材4が、ピン-ホール接続により支持構造2に回動可能に接続されている。持ち上げ部材4には、クレーン(図示せず)などの持ち上げ手段に接続するためのリフティングアイ40が持ち上げ側に設けられ、この接続は、リフティングアイ40にそれぞれ係合する巻き上げケーブルの介在による。リフティングアイ40の機能は、異なる形態、例えばシャフトスタブ又はトラニオンの形態をとることができる。持ち上げ部材4により、デバイス1は、支持構造2が、ヒンジ付きプレート(3a,3b)に対して垂直に延びる回転軸5周りで比較的妨害されない方式で回転することができるように、持ち上げ手段から吊り下げられる。
【0037】
デバイス1は、離間位置からクランプ位置までビーム(2a,2b)に沿ってスライド可能なクランプ部材6をさらに備えている。各クランプ部材6は、U字状断面を有し、このようにしてビーム(2a,2b)を少なくとも部分的に取り囲むことができ、このため、クランプ部材6は、ビーム(2a,2b)との接触を損なうことなく、関連するビーム(2a,2b)上でスライド面によりスライドすることができる。示される実施形態では、クランプ部材6は、支持構造2の下方側に沿ってスライド可能である。支持構造2の下方側は、ここでは持ち上げ部材4が位置しない側として規定される。この持ち上げ部材4は、十字状支持構造2の上方側に位置している。クランプ部材6は、関連するクランプ部材6と支持構造2のビームとの間で延在する液圧ピストンシリンダ7により、ビーム(2a,2b)上でスライドさせられ得る。
図2により示された方向8における径方向外向きの運動をシリンダに与えることによって、クランプ部材6は、径方向において十字の中心の比較的近くにある離間位置Aから、支持構造の十字の中心からさらに離れて配置されたクランプ位置Bまで移動させられる。
図3に示されるように、クランプ位置Bでは、クランプ部材6は、基礎パイル20の中空外側端部の内部壁部20aに接触して圧力をかけられている。これは、クランプ部材6の端面と基礎パイル20の内部壁部20aとの間の連結をもたらす。この連結をさらに改善するために、壁部20aと接触するクランプ部材6の端面には、ゴムカバーなどの衝撃吸収要素が設けられ得る。図は、クランプ部材6のクランプ位置では、ビーム(2a,2b)が、基礎パイル20の長手方向21を実質的に横切る方向に延在することをさらに示している。
図3では、長手方向21は、図の平面に対して垂直に延びている。
【0038】
デバイス1には、ビーム(2a,2b)に接続された支持部材9がさらに設けられている。支持部材9は、少なくとも基礎パイル20の周囲の一部に沿って基礎パイル20の外側壁部20bを支持するように構成されている。支持部材9は、同様にU字状断面を有し、関連するビーム(2a,2b)の調節可能な固定位置までビーム(2a.2b)の端部上でスライドさせられ得る。調節可能な固定位置は、例えば、ビーム(2a,2b)の側壁に配置された複数の開口部22によって決定され、支持部材9の対応するピン92が、この部材をビーム(2a,2b)に固定するために開口部22内に配置され得る。支持部材9が、立てる間に基礎パイル20の外側壁部20bを支持するように構成されているので、支持部材9は、通常、径方向8においてクランプ部材6よりも径方向外側に位置し、クランプ部材6は、示される実施形態では、やはり、立てる間に基礎パイル20の内側壁部20aをクランプするように構成されている。
【0039】
例えば6m以上の比較的大きい直径及び/又は例えば800トン~2300トン以上の比較的高い重量を有する基礎パイル20のために、支持構造25の形態のさらなる支持を提供することが有益であることがあり、支持構造25は、支持部材9と異なり、少なくとも基礎パイル20の周囲の一部23に沿って延在する。十分な強度を得るために、
図2及び
図3に示されるように、支持構造25を少なくとも2つのビーム(2a,2b)に接続することが有益であることがある。基礎パイル20の壁部と接触することができる支持構造25の表面にも、例えばゴムカバーの形態の衝撃吸収要素26が設けられ得る。
【0040】
使用中に、基礎パイル20が立てられると、支持部材9及び支持構造25の双方は、部分的に立てられた位置において基礎パイル20の下方側に位置する。従って、支持部材9、及び、必要に応じて支持構造25は、基礎パイル20の自身の重量を吸収することに特に有益である。
【0041】
最後に、デバイス1には、支持構造2に回動可能に接続された持ち上げ部材4に対する支持構造2の角度位置を調節するための手段も設けられている。示される実施形態では、角度調節手段は、持ち上げ部材4と支持構造2との間で延在する液圧ピストンシリンダ24を備えている。シリンダ24の格納位置では、
図4に示されるように、支持構造2の平面29は、持ち上げ部材4の平面49に対して実質的に垂直に延びる。この持ち上げ位置では、持ち上げ部材4及び支持構造2の2つの平面の間の角度45は、実質的に90度になる。シリンダ24に運動を与えることによって、支持構造2は、
図4において破線で示される挿入位置まで回転軸5周りで回転させられ、挿入位置では、支持構造2の平面29が、持ち上げ部材4の平面に対して実質的に平行に延びる。持ち上げ部材4と支持構造2との間の角度45は、ここでは約180度まで増大している。
【0042】
使用中に、本発明のデバイス1は、まず、クレーン(図示せず)の巻き上げケーブル(図示せず)をアイ40又は持ち上げ部材4の別の接続手段に接続することによって、巻き上げケーブルに接続される。その後、支持構造2は、クレーンを使用して持ち上げ部材4によって取り上げられ、基礎パイル20の外側端部まで運ばれる。立てられなければならずかつ例えば海底に配置されなければならない基礎パイル20は、通常、水平位置において、船舶、例えばジャックアッププラットフォームの作業デッキ上に位置している。このように水平に配向された基礎パイル20をデバイス1により持ち上げるために、デバイスの支持構造2は、シリンダ24に運動を与えることによって、
図4において破線で示される挿入位置に移動させられ、基礎パイル20の中空外側端部内に挿入される。クランプ部材6は、ここで、離間位置Aにあり、すなわち十字の中心に比較的近い。基礎パイル20の壁部の損傷は、このようにして防止される。その後、クランプ部材6は、それらの離間位置Aからそれらのクランプ位置Bまでビーム(2a,2b)に沿ってスライドさせられ、基礎パイル20の中空外側端部の内部壁部20aとの連結が実現される。このクランプ位置では、ビーム(2a,2b)は、基礎パイル20の長手方向を実質的に横切る方向に延在する。デバイス1に連結された基礎パイル20は、その後、クレーンにより全体を巻き上げることによって立てられる。支持構造2は、ここで、角度45が90度に減少されるまで、言い換えると支持構造2の平面29が持ち上げ部材4の平面49に対して実質的に垂直に延びるまで、持ち上げ部材4に対して回動する。この位置では、デバイス1に連結された基礎パイル20は、クレーンにより、所望の位置、例えば基礎パイル20が海底に降ろされなければならない場所に巻き上げられる。所望の位置では、その後、クランプ部材6は、基礎パイル20からデバイス1を連結解除するために、クランプ位置Bから離間位置Aまでビーム(2a,2b)に沿って径方向内向きにスライドさせられる。基礎パイル20を立てる間、必要に応じて、基礎パイル20は、支持部材9及び/又は支持構造25によってさらに支持され得る。
【0043】
上述の実施形態には、例えば液圧及び電気的動力供給源、そのための供給導管及び同様のものなどのような周辺機器が設けられなければならないことが明らかであろう。この周辺機器は、さらに詳細には説明されない。
【0044】
上記で詳細に説明された本発明のデバイスの実施形態により、管状物体、特に風力タービンの基礎パイルは、浮遊船舶から地面、特に水中底部に設置され、これは、荒れた天候状態において公知の方法よりも見込みがある。これは、管状物体の損傷のリスクを低減させる。デバイスは、比較的大きい寸法を有する管状要素を操作することも可能にし、さまざまな寸法が適応させられ得る。
【符号の説明】
【0045】
1 デバイス、2 十字状支持構造、2a,2b ビーム、4 持ち上げ部材、6 クランプ部材、7 液圧ピストンシリンダ、9 支持部材、20 管状要素、20a 内部壁部、20b 壁部、21 長手方向、23 一部、24 角度調節手段、25 支持構造、26 衝撃吸収要素、A 離間位置、B クランプ位置