(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】工業用ボイラ向けの可燃性材料の連続的製造方法、対応する材料および設備
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
C10L5/44
(21)【出願番号】P 2021521812
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019079444
(87)【国際公開番号】W WO2020089187
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-05-06
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】521162469
【氏名又は名称】ユーロペンヌ ドゥ ビオマス
【氏名又は名称原語表記】EUROPEENNE DE BIOMASSE
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】デプレ,ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】カンテロ-マルケ,アドリアナ
(72)【発明者】
【氏名】マルテル,フレデリック
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/089648(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107384501(CN,A)
【文献】Jiebing Li, Gunnar Henriksson, Goran Gellerstedt,Lignin depolymerization/repolymerization and its critical role for delignification of aspen wood by steam explosion,Bioresource Technology,2007年,98, 16,3061-3068
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 5/44
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10質量%が広葉樹由来である木質小板材から、特に工業用ボイラ向けの5.29MWh/t以上である低位発熱量を有する可燃性材料を製造する方法において、
- 5~25%の含水率を有する木材断片を、前記木質小板材から得るステップと、
- 前記得られた木材断片の毎分の既定量を、加圧反応装置内に連続的に導入するステップであって、前記反応装置が、反応装置内で圧力15.6~23.2バール、温度200~220℃のほぼ飽和した水蒸気の補給を受けているステップと、
- 水蒸気分解を得るのに十分な5~9分の時間、前記反応装置内に導入された木材断片を前記水蒸気に対して曝露するステップであって、前記曝露時間の値およびほぼ飽和した前記蒸気の温度の値は、SF値(FS)が4.05~4.15となるように選択されており、前記SF値は、
【数1】
という形で表現され、式中Tは反応装置内の水蒸気の温度(℃)であり、△tは反応装置内の曝露時間(分)であるステップと、
- ほぼ大気圧下で管路内に通じる少なくとも1つのオリフィスを通って、毎分同じ既定量の木材断片を前記反応装置から連続的に抽出して、前記管路内で前記反応装置から抽出された前記木材断片の爆発的減圧を誘発するステップと、
- 前記減圧された木材断片と前記反応装置から抽出された残留蒸気とを分離するステップであって、分離後に得られた前記木材断片が前記可燃性材料を形成するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記木質小板材が、少なくとも50質量%の広葉樹を含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記木質小板材が、少なくとも80質量%の広葉樹を含有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記木質小板材が、実質的に専ら広葉樹に由来することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
反応装置内における前記水蒸気に対する木材断片の前記曝露時間が、6分~8分であることを特徴とする、請求項1から4に記載の方法。
【請求項6】
反応装置内の前記水蒸気の温度が、205~210℃であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
さらに前記可燃性材料をペレットに加工するステップを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記得られた木材断片の含水率が、8~12%であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
5~25%の含水率を有する木材断片を得る前記ステップが、天然木質小板材および/または回収木質小板材を粉砕するステップ、および前記粉砕された木質小板材を乾燥するステップを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
反応装置内に前記木材断片を導入する前記ステップが、スクリューを用いて前記断片を圧密し、押圧するステップを含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記反応装置が垂直反応装置であること、および、前記反応装置内に導入された前記木材断片が、重力の作用下で前記反応装置の底面に近い抽出領域に向かって運ばれることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記反応装置が水平であること、および曝露ステップが前記反応装置内の導入領域と抽出領域の間で前記断片を輸送するステップを含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記分離ステップが、前記木材断片を遠心分離するステップ、および/または前記木材断片および残留蒸気をサイクロン・セパレータ内に通すステップを含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
可燃性材料を加湿して、そのペレット加工性を向上させるステップを含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
水の容器内で1時間の完全浸漬と30分間の水切りの後に、10%以下の質量の増加を示す、請求項5に記載の方法の実施によって得られる可燃性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、バイオマスベースの燃料の分野である。
【0002】
より厳密には、本発明は、木質小板材から、工業用ボイラ向けの可燃性材料を製造する方法、および設備に関する。
【0003】
本発明は同様に、工業用炉向けならびに家庭用ボイラおよびストーブ向けの、可燃性材料の製造においても利用される。
【背景技術】
【0004】
例えば、カナダ特許第1141376号明細書、または国際公開第2006/006863号から、「水蒸気爆砕」方法に基づく、リグノセルロース系材料から粒材またはペレットを製造する技術が知られている。
【0005】
これらの公知の技術は、充填され、次に数十秒から数分間、さらには数十分の間、加圧蒸気にリグノセルロース系材料を曝露し、その後、反応装置の内部を急速に減圧した後に空にされる反応装置内における、バッチ式の粒材生産に基礎を置くものである。
【0006】
これらの技術には、一窯分毎に反応装置を空にする必要があるという点で、使用が複雑で高コストであるという欠点がある。その上、膨張の際に蒸気は大幅に冷却され、もはや使用不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】カナダ特許第1141376号明細書
【文献】国際公開第2006/006863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は特に、上述の現状技術の欠点を軽減することを目的とする。
【0009】
より厳密には、本発明は、材料損失を制限する可燃性材料の製造技術を提供することを目的としている。
【0010】
本発明の目的は同様に、5.29MWh/t以上、そして好ましくは5.6MWh/t以上の低位発熱量を有する可燃性材料を得ることを可能にする、木質小板材から可燃性材料を製造する技術を提供することにもある。
【0011】
本発明は同様に、生産性の高い可燃性材料の製造技術を提供することも目的とする。
【0012】
本発明のもう1つの目的は、吸水が10質量%に制限されている可燃性材料を得ることを可能にする、木質小板材から可燃性材料を製造する技術を提供することにある。
【0013】
さらに本発明の目的は、1時間の浸漬後の機械的耐久性の損失が2%未満で、かつ/または粉塵の形での損失が3%未満である可燃性材料を得ることを可能にする、木質小板材から可燃性材料を製造する技術を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、密度が650kg/m3以上、好ましくは700kg/m3以上である可燃性材料を得ることを可能にする、木質小板材から可燃性材料を製造する技術を提供することにある。
【0015】
本発明は同様に、信頼性が高く、使用が簡単で、かつ原価が低い可燃性材料の製造技術を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的ならびに以下で明らかになる他の目的は、実質的部分が広葉樹由来である木質小板材から、特に工業用ボイラ向けの5.29MWh/t以上の発熱量を有する可燃性材料を製造する方法を用いて達成される。
【0017】
本発明によると、このような方法は、
- 5~25%の含水率を有する木材断片を、前記木質小板材から得るステップと、
- 前記得られた木材断片の毎分の既定量を、加圧反応装置内に連続的に導入するステップであって、前記反応装置が、反応装置内で圧力15.6~23.2バール、温度200~220℃のほぼ飽和した水蒸気の補給を受けているステップと、
- 水蒸気分解を得るのに十分な5~9分の時間、前記反応装置内に導入された木材断片を前記水蒸気に対して曝露するステップであって、前記曝露時間の値およびほぼ飽和した前記蒸気の温度の値は、SF値が4.05~4.15となるように選択されているステップと、
- ほぼ大気圧下で管路内に通じる少なくとも1つのオリフィスを通って、毎分同じ既定量の木材断片を前記反応装置から連続的に抽出して、前記管路内で前記反応装置から抽出された前記木材断片の爆発的減圧を誘発するステップと、
- 前記減圧された木材断片と前記反応装置から抽出された残留蒸気とを分離するステップであって、分離後に得られた前記木材断片が前記可燃性材料を形成するステップと
を含む。
【0018】
こうして、独自の手法により本発明は、圧力が15.6~23.2バールで温度が200~220℃である蒸気による「水蒸気爆砕」処理を利用して、5~9分間の蒸気曝露時間で連続して可燃性材料を製造することを提案するものであり、ここで温度および曝露時間の値は、SF値が4.05~4.15となるように選択される。
【0019】
こうして、木質小板材の組成の如何に関わらず、材料損失を8質量%未満に制限しながら材料をペレットに加工できるようにする適切な生産性で、5.29MWh/t以上の発熱量を有する可燃性材料が得られる。
【0020】
発明者らは実際、意外にも予想に反して、4.05のSF値を超えると、木材の種の如何に関わらず、あらゆる樹種の木材から5.29MWh/t以上の低位発熱量(PCI(Lower Heating Value))を有する可燃性材料が得られることを確認した。その上、4.15以下のSF値については、ペレットの形での材料の造粒は比較的容易であり、木材の種の如何に関わらず質量損失は8%未満にとどまる。反対に、4.15超のSF値については、材料が過度に構造破壊されるため適切にペレットの形に加工することができなくなることが判明し、かつ/または材料損失が大き過ぎて、材料は経済的に有利であり得ない。
図3は、反応装置内の処理のSF値に応じた、硬質および軟質の異なる種の広葉樹(ナラ材、トネリコ材、ブナ材、ポプラ材)、または針葉樹(トウヒ材)から製造された可燃性材料について発明者らが測定したPCI値を示している。領域31において、製造された可燃性材料の低位発熱量は3.29MWh/t未満であり、これは工業用ボイラ内での使用のためには不十分であることが判明する可能性がある。4.15超のSF値に対応する領域32内で、発明者らは、材料の質量損失が8%超であり、かつ/または材料の造粒を得るのが困難であることを確認した。
【0021】
本発明の枠内では、小板材の少なくとも10質量%が広葉樹で構成されている場合に、木質小板材の実質的部分が広葉樹に由来するものと理解される。本発明の枠から逸脱することなく、広葉樹または針葉樹の異なる木材の小板材の混合物を使用することを企図することができる。
【0022】
最後に、本発明の枠内では、SF値(FS)は、以下の公式を用いてそれ自体公知の方法で計算される。
【数1】
式中、Tは反応装置内の水蒸気の温度(℃)であり、△tは反応装置内の曝露時間(分)である。
【0023】
本発明の特定の一態様によると、前記木質小板材は、少なくとも50質量%が広葉樹で形成されている。
【0024】
本発明の枠内で、前記木質小板材は同様に、広葉樹よりも少ない質量比率で針葉樹に由来することもできる。
【0025】
本発明の特定の一実施形態において、前記木質小板材は、少なくとも70質量%が広葉樹で形成されている。
【0026】
本発明の特定の一実施形態において、前記木質小板材は、少なくとも80質量%が広葉樹で形成されている。
【0027】
本発明の特定の一実施形態において、前記木質小板材は、少なくとも90質量%が広葉樹で形成されている。
【0028】
本発明の特に有利な一実施形態において、反応装置内の前記水蒸気に対する木材断片の前記曝露時間は、6分~8分である。
【0029】
本発明の特に有利な一実施形態において、反応装置内の前記水蒸気の温度は、205~210℃である。
【0030】
本発明の有利な一実施形態において、上述の通りの製造方法は、さらに前記可燃性材料をペレットに加工するステップを含む。
【0031】
本発明の特定の一態様によると、前記木質小板材は、専ら広葉樹に由来する。
【0032】
本発明の好ましい一態様によると、前記得られた木材断片の含水率は、8~12%である。
【0033】
本発明の有利な一実施形態において、曝露ステップの際に、前記曝露時間の値、および前記ほぼ飽和した蒸気の温度の値は、SF値が4.05~4.10となるように選択される。
【0034】
本発明の別の有利な一実施形態において、曝露ステップの際に、前記曝露時間の値および前記ほぼ飽和した蒸気の温度の値は、SF値が4.10~4.15となるように選択される。
【0035】
本発明の特定の一実施形態において、前記木材断片は大半が、0.5~14mmの大きな寸法の木材断片である。
【0036】
本発明の特定の一実施形態において、木質小板材から得られた前記木材断片の質量の少なくとも80%は、3.15mm~45mmの大きな寸法の木材断片で構成されている。
【0037】
本発明の特定の一実施形態において、木質小板材から得られた前記木材断片の質量の0.5%未満は、85mm以上の大きな寸法の木材断片で構成されている。
【0038】
本発明の特定の一実施形態において、木質小板材から得られた前記木材断片の質量の1%未満は、45mm以上の大きな寸法の木材断片で構成されている。
【0039】
本発明の特定の一実施形態において、木質小板材から得られた前記木材断片の質量の5%未満は、3.15mm以下の大きな寸法の木材断片で構成されている。
【0040】
本発明の特定の一実施形態において、毎分同じ既定量の木材断片を前記反応装置から連続的に抽出する前記ステップの際に、抽出は、ほぼ大気圧下で管路内に通じる複数のオリフィスを通って実施される。
【0041】
本発明の特定の一実施形態によると、5~25%の含水率を有する木材断片を得る前記ステップは、天然木質小板材および/または回収木質小板材を粉砕するステップ、および前記粉砕された木質小板材を乾燥するステップを含む。
【0042】
有利には、反応装置内に前記木材断片を導入する前記ステップは、スクリューを用いて前記断片を圧密し、押圧するステップを含む。
【0043】
本発明の特定の一実施形態において、前記反応装置は垂直反応装置であり、前記反応装置内に導入された前記木材断片は、重力の作用下で前記反応装置の底面に近い抽出領域に向かって運ばれる。
【0044】
本発明の別の特定の一実施形態において、前記反応装置は水平であり、曝露ステップは前記反応装置内の導入領域と抽出領域の間で前記断片を輸送するステップを含む。
【0045】
好ましくは、前記分離ステップは、前記木材断片を遠心分離するステップ、および/または前記木材断片および残留蒸気をサイクロン・セパレータ内に通すステップを含む。
【0046】
本発明の特定の一実施形態において、上述の製造方法は、可燃性材料を加湿して、そのペレット加工性を向上させるステップを含む。
【0047】
本発明は同様に、実質的部分が広葉樹由来である木質小板材から、特に工業用ボイラ向けの5.29MWh/t以上の低位発熱量を有する可燃性材料を製造する設備において、
- 前記木質小板材を5~25%の含水率を有する木材断片へと加工する手段と、
- 圧力が15.6~23.2バールで温度が200~220℃である、ほぼ飽和した加圧水蒸気を生成する手段と、
- 木材断片を抽出するためのオリフィスと、前記反応装置内に毎分既定量の前記木材断片を連続的に導入する手段とを有する加圧反応装置であって、前記反応装置内に導入された木材断片が5~9分の時間の間、反応装置内に滞留できるように構成されている加圧反応装置と、
- 前記生成手段により生成された水蒸気を、前記反応装置に補給する手段と、
- 前記反応装置内に前記木材断片の毎分の既定量を、連続的に導入する手段と、
- 毎分同じ規定量の木材断片を、前記反応装置から連続的に抽出する手段と、
- 前記オリフィスが通じている、ほぼ大気圧下にある管路と、
- 前記減圧された木材断片を、前記反応装置から抽出された残留蒸気から分離する手段であって、分離後に得られた前記木材断片が前記可燃性材料を形成する手段と
を含み、前記反応装置、前記連続的導入手段および連続的抽出手段は、反応装置内の処理のSF値が4.05~4.15となるように、互いとの関係において構成されている、製造用設備にも関する。
【0048】
本発明は同様に、水の容器内で1時間の完全浸漬と30分間の水切りの後に、10%以下の質量の増加を示す、上述の方法を使用することによって得られる可燃性材料にも関する。
【0049】
本発明はさらに、5.6MWh/t以上の低位発熱量を有する、上述の可燃性材料製造方法を使用することによって得られる可燃性材料にも関する。
【0050】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的で例示的な単なる一例として提供されている本発明の一実施形態についての以下の説明および添付図面を読むことで、より明確になるものである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本発明に係る可燃性材料の製造用設備の一実施形態例の形での図である。
【
図2】ダイアグラムの形で、本発明に係る可燃性材料の製造方法の別の実施形態例のステップを概覧的に示す。
【
図3】反応装置内のSF値に応じた、ナラ材、トネリコ材、ブナ材、ポプラ材またはトウヒ材の小板材から専ら製造される可燃性材料のPCIの変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施形態例
図1には、本発明に係る木質小板材から可燃性材料を製造する設備10の一実施形態例を示した。
【0053】
本発明のこの特定の実施形態において、使用される木質小板材は、ナラ材およびブナ材の木質板材である。本発明のこの実施形態の変形形態においては、硬質広葉樹、針葉樹、例えばトウヒ属などの適切なあらゆる樹種の天然木材、および/またはクラスAもしくはクラスBの木材などの回収木材の小板材の使用を企図することができる。
【0054】
この設備10は、梯子付きサイロ13内で小板材を採取するスクリューコンベア12を用いて木質小板材の補給を受けるハンマーミル11を含む。小板材が粉砕機11内に入る前に、大型木材分離機が寸法外要素を排除する。この湿式粉砕機11内で、木質小板材は、大半が4~6ミリメートルの大きな寸法の木材断片の形に粉砕される。サイロ13の充填は、地面の貯蔵領域に形成された山積みの中の小板材を採取するバケットローダによって行なわれる。
【0055】
本発明のこの特定の実施形態の一変形形態においては、丸太材の皮剥ぎを行ない、直接木材断片の形に粉砕する、サイロへの投入用コンベアを備えた自動ラインの使用を想定することができる。
【0056】
これらの木材断片は、粉砕機11の出口で計量ベルトを備えたコンベアベルト14上に注ぎ込み、このコンベアベルトが低温での熱風式乾燥機15の補給用ホッパーに向かってこれらの木材断片を輸送する。本発明のこの実施形態において、乾燥機の熱風の温度はほぼ80℃に等しい。この実施形態の変形形態において、熱風の温度は、70℃~75℃、75~80℃または80~85℃であり得る。
【0057】
この乾燥機15は、本発明のこの特定の実施形態において、二重層ベルト式乾燥機である。乾燥機内の進入断片は、第1の補給用スクリューによってベルト上で均等に分布させられる。形成された木材断片層は、ベルト上で乾燥機を通って輸送されてから、第1の排出用スクリュー上に排出される。補足的スクリューコンベアを用いて、木材断片は、乾燥機内で第1の層上に第2の層を置く第2の補給用スクリューに向かって移送される。2回目に乾燥機の半分を走行した後、今や含水率が10%未満となった乾燥済み木材断片は分離され、排出され、一時貯蔵サイロ16に向かって搬送される。
【0058】
水分センサが、乾燥機の出口における木材断片の含水量を連続的に制御し、ベルトの前進速度は、乾燥機の出口における木材断片の含水率を恒常に維持するべく自動的に調節される。
【0059】
乾燥機内で、抽出換気装置が、熱交換器を通って周囲空気を吸込み、これらの熱交換器内で空気は2段階で加熱された後に、木材断片上に吹き出される。この空気流束によって、木材断片はベルト上に押し付けられ、そこから漏れる粉塵はごくわずかである。熱交換器は、水/空気交換器であり、その中をコジェネレーション設備由来の高温水が循環する。
【0060】
本発明のこの実施形態の変形形態においては、回転ドラム式乾燥機の使用も同様に企図することができる。
【0061】
一時サイロ内では、乾燥済み木材断片の含水率の部分的均質化が発生することが指摘される。
【0062】
乾燥済み木材断片は、プラネタリースクリューによりサイロ16から抽出されてコンベアベルト上に置かれ、このコンベアベルトはこれらの木材断片を、毎時15トンの木材断片を連続的に処理できる反応装置18の補給用サイロ17まで輸送する。
【0063】
反応装置18は加圧反応装置であり、その下部部分から内部に、圧力19バールで温度250℃の過熱水蒸気が注入される。垂直に配向されたこの反応装置は、閉塞を形成するのを回避する目的で、円錐形である。蒸気流束は、反応装置の上部部分のレベルで反応装置外に抽出される。反応装置の出口において、蒸気はそれが生成されたボイラCHに向かって回送される。
【0064】
反応装置18内で、蒸気の温度は209℃であり、圧力は18.7バールであることが指摘される。
【0065】
サイロ17は、木材断片の流動を容易にするため、平面で切った楕円体の形をしている。
【0066】
その上、サイロ17内では、回転式スクレーパにより木材断片を抽出用スクリューコンベア19に向かって押圧することができる。
【0067】
スクリューが反応装置18内に進入するにつれてその断面が細くなっている円錐形のこのスクリューコンベア19は、サイロ17内の既定の量の乾燥済み木材断片を連続的に採取し、それを予備圧縮し、スクリューの通過オリフィスを通って加圧反応装置18内に押圧する。円錐形オリフィスおよびスクリューの寸法は、反応装置内の圧力損失を最小限に抑え木材断片内に含まれた空気を排出するように、互いとの関係において選択される。
【0068】
スクリューが断片上に及ぼす圧縮力は、有利にも、木材断片内に存在する残留水の一部分を排出することができるということが指摘される。
【0069】
スクリュー19の端部において、圧密された木材断片は、反応装置内で蒸気流束の作用下において分散する圧密ブロックを形成する。
【0070】
このとき、分散した木材断片は、蒸気流束により再加熱されて重力によって反応装置内に落下し、反応装置の底面上で先に蓄積している断片上に堆積し、ここでひき続き蒸気流束によって再加熱される。
【0071】
反応装置18内では、木材断片の保留時間は、反応装置の底面上に蓄積した木材断片のレベルに応じて制御されるということを指摘しておくことが適切である。本発明のこの特定の実施形態において、この保留時間は7.5分に定められており、これは4.08のSF値に対応する。
【0072】
反応装置18の底面上で、垂直軸上を枢動する形で組付けられたスクレーパ(
図1には図示せず)が、木材断片をスクリューコンベア20に向かって再度押圧し、反応装置18から木材断片を抽出することを可能にする。
【0073】
この放出用スクリュー20は、反応装置外へ、制御された開口を有するゲート弁21に向かって木材断片を押圧する。このゲート弁の開口は、反応装置から連続的に抽出される木材断片の流量を制御するべく、常時調整される。
【0074】
反応装置内に存在する蒸気および/またはスクリュー20の押圧下で、木材断片は、ゲート弁21の開口を通って膨張ライン22内に極めて高速で連続的に排出され、膨張ライン22内を反応装置から分離ユニット23までこれらの木材断片と共に退出する蒸気流束によって運ばれる。
【0075】
膨張ライン内では、圧力は、分離機レベルで約1.1バールの圧力に達するまで漸進的に減少するということが指摘される。こうして、木材断片内に存在する凝縮水の一部分の再蒸発のため、木材断片の爆発的減圧が発生する。水蒸気のこの急激な膨張は、木材断片全体におけるせん断力の出現をもたらし、これがこの木材断片全体の構造の機械的破裂をひき起こす。
【0076】
本発明のこの実施形態の変形形態においては、分離機レベルで達する圧力は、1.2、1.3、1.4、または1.5バールに等しい。
【0077】
分離ユニット23内で、木材断片と蒸気の混合物は、高速回転翼に対し接線方向に進入する。この翼により生成される遠心力の作用下で、木材断片は、放出用管路24内に投射され、一方蒸気は、弁を通って分離機の外に吐出される。
【0078】
本発明のこの実施形態の一変形形態においては、残留蒸気から木材断片を分離するために圧力下に置かれたサイクロン・セパレータを使用することが想定され得る。
【0079】
吐出された蒸気が、有利にもボイラ内で燃焼させることのできる揮発性材料を含有するということが指摘される。
【0080】
放出用管路24内に投射された木材断片は、直径が7ミリメートルにほぼ等しく平均長さが22ミリメートルに等しいペレットの形に加工するために、貯蔵用サイロ25内に注ぎ込まれる。
【0081】
このため、これらの木材断片は、チェーンコンベアまたは空気コンベアを用いて、造粒圧縮機26に向かって進まされ、そこでペレットの形に圧密される。
【0082】
得られたペレットはその後、トラックのバラ積みステーションまたは袋詰めパレチゼーションステーションに向けて誘導される。
【0083】
これらのペレットは、5.295MWh/tに等しい低位発熱量、および710kg/m3に等しい密度を有する。これらのペレットは、水の容器内で1時間の完全浸漬とその後の30分間の水切りの後、9.5%の質量増加を示す。
【0084】
本発明のこの特定の実施形態の一変形形態においては、分離後に得た木材断片を直接、工業用ボイラ内で可燃性材料として利用することができる。
【0085】
本発明の別の実施形態例
本発明に係る木質小板材から工業用炉向けの可燃性材料を製造する方法の一例のステップを、ブロック図の形で表現した。
【0086】
第1のステップ201において、皮を剥いだナラ材の木質小板材から、5ミリメートルに等しい大きな寸法の木材断片を生成する。このステップにあたっては、木質小板材を湿式粉砕機内で粉砕し(ステップ2011)、その後、粉砕後に得られた木材断片を約22%の含水率を有するまで乾燥機内で乾燥させる(ステップ2012)。
【0087】
ステップ202において、19バールに等しい圧力を有するわずかに過熱された水蒸気の補給を受ける加圧反応装置内に、スクリューを用いて、0.32m3の体積の乾燥済み木材断片を連続的に導入する。
【0088】
反応装置内で、木材断片を8分間、水蒸気流束に対して曝露する(ステップ203)。
【0089】
その後、木材断片を、膨張用管路内のゲート弁またはオリフィスを通って連続的に抽出し(ステップ204)、反応装置から出る蒸気によってこの管路内をサイクロン・セパレータまで輸送し、ここで木材断片を残留蒸気から分離する(ステップ205)。
【0090】
分離機の出口で採取した木材断片を次に、その含水率が10%に達するまで乾燥させ(ステップ206)、その後、工業用炉内で燃料として使用するためのペレットの形に圧密する(ステップ207)。
【0091】
本発明の他の特徴および利点
以上で提示した本発明の実施形態の変形形態において、以下のことを想定することも同様に可能である。
- 造粒を容易にするため、分離後に得た木材断片の加湿を行なうこと、
- 水平に延在する反応装置および、例えばコンベアスクリューを含む、導入領域と抽出領域の間で反応装置内の断片を輸送する手段を使用すること。
【符号の説明】
【0092】
10 可燃性材料を製造する設備
11 ハンマーミル
12 スクリューコンベア
13 梯子付きサイロ
14 コンベアベルト
15 熱風式乾燥機
16 一時貯蔵サイロ
17 補給用サイロ
18 反応装置
19 スクリューコンベア
20 スクリューコンベア
21 ゲート弁
22 膨張ライン
23 分離ユニット
24 放出用管路
25 貯蔵用サイロ
26 造粒圧縮機