(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、および磁気ディスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 29/02 20060101AFI20231013BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20231013BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C03B29/02
C03C23/00 D
G11B5/84 Z
(21)【出願番号】P 2021540983
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031536
(87)【国際公開番号】W WO2021033758
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019150331
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 利雄
(72)【発明者】
【氏名】東 修平
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-150546(JP,A)
【文献】特開2017-197414(JP,A)
【文献】特開2018-123013(JP,A)
【文献】特開2016-124757(JP,A)
【文献】特表2010-519164(JP,A)
【文献】特開2017-186202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/02 - 23/037
C03C 23/00
G11B 5/84 - 5/858
B23K 26/00 - 26/70
C03B 29/00 - 29/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板形状のガラス板の端面に面取加工を行う面取処理を含むガラス板の製造方法であって、
前記面取処理は、
前記ガラス板の一部が、前記ガラス板を加熱する加熱空間内に配置され、残りの部分が、前記加熱空間の外部に配置されるように、前記ガラス板を配置するステップと、
前記ガラス板を前記ガラス板の中心周りに一方向に回転させながら、前記加熱空間の外部において前記ガラス板の端面の周上の一部にレーザー光を照射して前記端面の一部を軟化させ、前記回転によって前記加熱空間に到達した前記端面の軟化した部分を加熱するステップと、
を備える、ことを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス板の前記中心周りの回転速度は、前記ガラス板の主表面が前記加熱空間に配置されて定まる前記主表面の加熱面積に応じて設定される回転速度設定値よりも低い、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記ガラス板の前記回転速度をV[mm/秒]とし、前記加熱面積をA[mm
2]としたとき、V<1/50・Aを満足する、請求項2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記ガラス板の100~300℃の温度範囲における平均線膨張係数は100×10
-7/℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記レーザー光を照射した前記端面の前記軟化した部分の温度が前記ガラス板の歪点温度より50℃低い温度未満になる前に、前記軟化した部分が前記加熱空間への進入を開始するように、前記レーザー光の前記端面への照射位置は定められる、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記ガラス板の主表面における前記加熱空間内に配置される領域は、前記ガラス板の前記主表面の面積の半分以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記端面の前記軟化した部分は、前記加熱空間において、前記ガラス板のガラス転移点温度よりも低い温度で加熱される、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
加熱した後の前記端面を研磨処理することなく、前記ガラス板の主表面を研削あるいは研磨するステップを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス板は、磁気ディスク用ガラス板の素板であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載されたガラス板の製造方法。
【請求項10】
磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
請求項9に記載のガラス板の製造方法によってガラス板を製造した後、前記ガラス板の主表面を研削あるいは研磨することを特徴とする、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって磁気ディスク用ガラス基板を製造した後、前記磁気ディスク用ガラス基板の主表面に磁性膜を形成することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の端面の面取処理を含むガラス板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、および磁気ディスクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ記録のためのハードディスク装置には、円環形状の非磁性体の磁気ディスク用ガラス基板に磁性膜が設けられた磁気ディスクが用いられる。
磁気ディスク用ガラス基板を製造するとき、最終製品である磁気ディスク用ガラス基板の素となる円環状のガラス板の端面は、微細なパーティクルが主表面に付着して磁気ディスクの性能に悪影響を与えないためにも、パーティクルの発生しやすい端面の表面を滑らかにすることが好ましい。また、磁気ディスクを精度よくHDD装置に組み込む点から、さらには、ガラス基板の主表面に磁性膜を形成する際にガラス基板の外周端面を把持する治具の把持に適するように、ガラス板の端面を目標形状に揃えることが好ましい。
【0003】
ガラス板の端面を目標形状にするための方法として、ガラス板のエッジを、レーザー光を用いて面取加工する方法が知られている。例えば、ガラス板であるガラス部材の全体を常温より高い所定温度に保持した状態で、レーザー光を、照射スポットがガラス部材の角部に沿って該角部の全長のうちの少なくとも一部分にわたって移動するように、上記ガラス板に照射することにより、上記角部の少なくとも一部分をその他の部分よりさらに高温に加熱して軟化させて面取りする(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の方法でガラス板の端面をレーザー光で加工した場合、ガラス部材の全体を常温より高い所定温度に保持するステップと、レーザー光を、ガラス部材の角部に沿って移動しながら角部に照射するステップと、面取りされたガラス全体をヒータで加熱して所定の温度から徐々に冷却して常温にまで戻すステップとの、計3段階のステップを行う。このため、面取りに要する時間が長くなり、ガラス板の生産効率が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、ガラス板の端面をレーザー光の照射により面取加工を行って、端面形状を目標形状にする際、従来に比べてガラス板の生産効率が向上する、面取処理を含むガラス板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、および磁気ディスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、円板形状のガラス板の端面に面取加工を行う面取処理を含むガラス板の製造方法である。
前記面取処理は、
前記ガラス板の一部が、前記ガラス板を加熱する加熱空間内に配置され、残りの部分が、前記加熱空間の外部に配置されるように、前記ガラス板を配置するステップと、
前記ガラス板を前記ガラス板の中心周りに一方向に回転させながら、前記加熱空間の外部において前記ガラス板の端面の周上の一部にレーザー光を照射して前記端面の一部を軟化させ、前記回転によって前記加熱空間に到達した前記端面の軟化した部分を加熱するステップと、を備える。
【0008】
前記ガラス板の前記中心周りの回転速度は、前記ガラス板の主表面が前記加熱空間に配置されて定まる前記主表面の加熱面積に応じて設定される回転速度設定値よりも低い、ことが好ましい。
【0009】
前記ガラス板の前記回転速度をV[mm/秒]とし、前記加熱面積をA[mm2]としたとき、V<1/50・Aを満足する、ことが好ましい。
【0010】
前記ガラス板の100~300℃の温度範囲における平均線膨張係数は100×10-7/℃以下である、ことが好ましい。
【0011】
前記レーザー光を照射した前記端面の前記軟化した部分の温度が前記ガラス板の歪点温度より50℃低い温度未満になる前に、前記軟化した部分が前記加熱空間への進入を開始するように、前記レーザー光の前記端面への照射位置は定められる、ことが好ましい。
【0012】
前記ガラス板の主表面における前記加熱空間内に配置される領域は、前記ガラス板の前記主表面の面積の半分以上である、ことが好ましい。
【0013】
前記端面の前記軟化した部分は、前記加熱空間において、前記ガラス板のガラス転移点温度よりも低い温度で加熱される、ことが好ましい。
【0014】
加熱した後の前記端面を研磨処理することなく、前記ガラス板の主表面を研削あるいは研磨するステップを備える、ことが好ましい。すなわち、前記ガラス板の前記端面の表面粗さを、前記面取処理によって得られる前記端面の表面粗さに保持したまま、前記ガラス板の主表面を研削あるいは研磨するステップを備える、ことが好ましい。
【0015】
前記ガラス板は、磁気ディスク用ガラス板の素板であること、が好ましい。
【0016】
本発明のさらに他の一態様は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
前記ガラス板の製造方法によってガラス板を製造した後、前記ガラス板の主表面を研削あるいは研磨する。
【0017】
本発明のさらに他の一態様は、前記磁気ディスク用ガラス基板の製造方法によって磁気ディスク用ガラス基板を製造した後、前記磁気ディスク用ガラス基板の主表面に磁性膜を形成することを特徴とする、磁気ディスクの製造方法である。
【0018】
本発明の他の一実施形態は、円板形状のガラス板の端面に面取加工を行う面取装置である。当該面取装置は、ガラス板の端面にレーザー光を照射するレーザー光照射ユニットと、前記レーザー光の照射後の前記端面を加熱する加熱空間を備える加熱ユニットと、前記加熱空間に前記ガラス板を出し入れするように前記ガラス板を載置する載置台を移動させる移動台と、前記載置台上の前記ガラス板を回転させる回転モータと、を備える。前記レーザー光の照射位置と前記加熱空間に入る開始位置との間には、前記レーザー光の照射により加熱された前記端面の放熱領域が設けられる。
【発明の効果】
【0019】
上述のガラス板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、および磁気ディスクの製造方法によれば、ガラス板の端面をレーザー光の照射により面取加工を行って、端面形状を目標形状にする際、従来に比べてガラス板の生産効率は向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(a)は、一実施形態であるガラス板の製造方法で製造されるガラス板の一例の斜視図であり、(b)は、面取面の断面形状の一例を示す図であり、(c)は、面取処理前のガラス板の端面の形状の一例を示す図である。
【
図2】(a),(b)は、一実施形態における、円板形状のガラス板の端面に面取処理を行う面取装置の一例を説明する図である。
【
図3】一実施形態における、加熱面積とガラス板の好ましい回転速度の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施形態のガラス板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、および磁気ディスクの製造方法について詳細に説明する。
【0022】
一実施形態のガラス板の製造方法で製造されるガラス板は、円板形状のガラス板の端面に面取加工が施されたもので、例えば磁気ディスク用ガラス基板に用いられる。
図1(a)は、一実施形態であるガラス板の製造方法で製造される円環形状のガラス板の一例の斜視図である。円板形状のガラス板は、外周が円形状をしたガラス板である。また、円板形状のガラス板は、上記円形状の円と同心円の円孔があいて内周を有する円環形状のガラス板であってもよい。したがって、円板形状には、円環形状も含まれる。
【0023】
図1(a)に示すガラス板1は、中心部に円孔3を有する円環状の薄板のガラス板である。ガラス板1は磁気ディスク用ガラス基板として用いることができる。ガラス板1を磁気ディスク用ガラス基板として用いる場合、磁気ディスク用ガラス基板のサイズは制限されないが、例えば、公称直径2.5インチや3.5インチの磁気ディスク用ガラス基板のサイズである。公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板の場合、例えば、外径が65mmや67mm、円孔の内径が20mm、板厚が0.3~1.3mmである。公称直径3.5インチの磁気ディスク用ガラス基板の場合、外径が85~100mm、例えば、外径が95mmや97mmであり、円孔の内径が25mmであり、板厚が0.3~1.3mmである。
【0024】
図1(a)に示すガラス板1には、端面の面取加工により端面と主表面との間の角部に面取面が形成されている。
図1(b)は、面取面の断面形状の一例を示す図である。断面形状は、ガラス板の中心軸を通り半径方向に沿ってガラス板1を切断したときの形状である。
図1(b)に示すように、面取面5の断面形状は、径方向外側に突出した滑らかな曲線によって作られる湾曲面形状を成している。なお、
図1(b)に示す断面形状の他の例として、2つの主表面にそれぞれ接続する面取面が2つの湾曲形状で形成され、2つの面取面の間に存在する側壁面が主表面に直交する直線形状又は僅かに湾曲した曲線形状で形成されてもよい。
磁気ディスク用ガラス基板の場合、このガラス板1に対して必要に応じて、主表面の研削及び研磨を行った後、ガラス板1の主表面上に磁性層が形成されて磁気ディスクが作られる。
【0025】
図1(c)は、面取加工前のガラス板の端面の形状の一例を示す図である。面取加工前のガラス板の端面7は、ガラス板の主表面に対して略直交する面である。このような面が、後述するレーザー光を、このような端面7に照射することにより、面取面5を形成させることができる。なお、
図1(c)に示す端面7の形状は、一例であって、主表面に対して略直交する形状に制限されず、角部が僅かに丸まっている形状や主表面に対して傾斜した形状であってもよいが、端面7の断面形状において、ガラス板の厚みの半分の線に対してほぼ線対象となっていると、面取面形成後の断面形状も同様にほぼ線対称になりやすいので好ましい。
【0026】
図2(a),(b)は、円環形状のガラス板12の端面に面取処理を行う面取装置10の一例を説明する図である。
面取装置10は、面取処理前の円環形状のガラス板12の一部分を加熱する加熱空間14を備える加熱ユニット16と、ガラス板12を加熱空間14に出し入れさせる駆動ユニット18と、レーザー照射ユニット40と、を備える。
【0027】
加熱ユニット16は、加熱空間14を形成する壁20を備え、壁20の一部が開口して、ガラス板12が出し入れ可能な開口部21を形成している。壁20の加熱空間14に接する内壁面には、加熱ヒータ22が略一様に設けられている。加熱ヒータ22の発熱により、加熱空間14内のガラス板12は加熱される。開口部21は、加熱空間14内の熱が外部に漏れにくいように、ガラス板12のサイズよりもやや大きい開口サイズを有する。
【0028】
駆動ユニット18は、ガラス板12を載置する載置台24と、載置台24に接続され回転シャフト26を回転させることでガラス板12を回転させる回転モータ28と、加熱空間14からガラス板12を出し入れ可能なように、X方向(
図2(b)参照)に移動することができる移動台30と、を備える。
ガラス板12は、載置台24に、断熱材24aを介して載置されるのが好ましい。断熱材24aにより、加熱されたガラス板12から回転軸26に放熱されることを抑えることができるので、加熱効率がよくなるほか、ガラス板12内の位置による温度分布(温度のバラツキ)を小さくできる。また、ガラス板12は、ガラス板12の中心位置が、回転シャフト26の回転中心位置に略一致するように、載置台24に載置される。
【0029】
レーザー照射ユニット40は、加熱空間14の外部に位置するガラス板12の端面12aの周上の一部を軟化させるために、端面の一部にレーザー光Lを照射する。レーザー光Lの種類は、照射した部分が軟化する限り、特に制限されないが、例えばCO2レーザーが好適に用いられる。レーザー光Lの発振形態は特に限定されず、連続発振光(CW光)、パルス発振光、連続発振光の変調光のいずれであってもよい。CO2レーザー光を用いる場合、波長は3μm以上とすることが好ましい。波長が3μmよりも短いと、ガラスがレーザー光Lを吸収しにくくなり、円環形状のガラス板28の外周端面28a及び内周端面28bを十分に加熱できない場合がある。また、波長が11μmより長いと、レーザー装置の入手が困難である場合があるので、波長は11μm以下であるとより好ましい。なお、パルスレーザー光の場合、例えば、繰り返し周期が5KHz以上であって、単位面積当たりの1パルスあたりのパワー密度が100W/cm以下のレーザー光を用いることができる。
【0030】
ガラス板12は、
図2(b)に示すように、回転しながらレーザー光Lの照射を受ける。このため、レーザー光Lの照射を受けた端面の部分は、加熱空間14内に入るまで放熱された後、加熱空間14内に入り加熱される。
面取装置10では、ガラス板12の一部が、加熱空間14内に配置され、残りの部分が、加熱空間14の外部に配置されるように、ガラス板12は配置される。面取装置10は、ガラス板12をガラス板12の中心周りに一方向に回転させながら、加熱空間14の外部においてガラス板12の端面の周上の一部にレーザー光Lを照射して端面12aの一部を軟化させるとともに、回転によって加熱空間14に到達した端部12aの軟化した部分を加熱する。レーザー光Lは端面12aのガラス板12の板厚方向全体に亘って照射されるのが好ましい。
レーザー光Lの端面12aへの照射は、例えばガラス板12を1回転させることで終了する。この場合、レーザー光Lの端面への照射が終わっても、照射により軟化した部分の、加熱空間14内での加熱が終了するまで、ガラス板12の回転は継続される。なお、
図2(b)に示すように、ガラス板12の中心に、内孔があいて内孔に沿って内周端面が設けられている場合、内周端面にも外周端面と同様に、レーザー光Lを照射して面取面5を形成することができる。内周端面と外周端面に同時に異なるレーザー光Lを照射して同時に加工することもできる。ここで、外周端面又は内周端面へのレーザー光Lの照射については、適宜ミラー等を用いて照射対象の端面の法線方向から照射してもよいし、法線方向から適宜傾斜させてもよい。ただし、法線方向からの傾斜が過度に大きいと、大部分の光が反射して端面12aが十分に軟化せず面取面がうまく形成されない場合もあることから、端面の法線方向からの傾斜は60度以内であることが好ましい。
【0031】
このように、レーザー光Lの端面の照射により端面のガラスは軟化して、例えば
図1(b)に示すような湾曲面形状の面取面5を形成することができる。これにより、面取処理が施された端面の表面粗さを小さくすることができ、例えば算術平均粗さRa(JIS B0601 2001)を50nm以下、及び/又は、Rz(JIS B0601 2001)を500nm以下にすることができる。なお、上記算術平均粗さRaは30nm以下とするとより好ましく、10nm以下とするとさらに好ましい。また、上記Rzは300nm以下とするとより好ましく、100nm以下とするとさらに好ましく、50nm以下とするとさらに一層好ましい。
しかし、上記レーザー光Lの照射によって、ガラス板12の周方向に沿ってガラス板12の端面12aから紐状のガラス片が剥がれて分離離脱する場合があり、これによって、端面12aが部分的に大きく削り取られる場合があった。また、ガラス片が剥がれた後の端面は表面粗さが異常に大きくなる場合もあった。このガラス片の剥がれの発生メカニズムは、以下のように想定される。すなわち、レーザー光Lの照射により、端面12aの局所的な表面の加熱によってガラスの端面12aの表面近傍にあるガラスは軟化するが、ガラス板12の熱伝導率は小さいため、レーザー光Lが照射された端面12aの表面近傍のガラスと、ガラス板12の内部のガラスとの間の温度差は大きくなる。レーザー光Lの照射後、ガラスの端面12aの表面近傍は、降温して硬化するが、それに伴って、ガラス板12の端面12aの表面近傍のガラスと内部のガラスの熱膨張の差によって熱歪みが発生する。これにより、端面12aの表面近傍のガラスと内部のガラスとの間で分離が始まり、端面12aの表面近傍のガラスの一部がガラス板12から分離離脱して上記紐状のガラス片が形成されると想定される。紐状のガラス片が形成されることを、以降、ピーリングが発生するという。
【0032】
このようなピーリングが発生すると、端面12aが大きく削り取られるため、ガラス板12の端面12aを
図1(b)に示すような湾曲面形状に形成することができない。このため、加熱空間14の外部においてガラス板12の端面12aの周上の一部にレーザー光Lを照射して端面12aの一部を軟化させるとともに、回転によって加熱空間14に到達した端部12aの軟化した部分に対して加熱を開始する。これにより、ピーリングの発生を抑制することができる。加熱空間14内で、軟化した端面12aの表面近傍のガラスと、内部のガラスとの間の温度差が小さくなり、ガラス板12の端面12aの表面近傍のガラスと内部のガラスの熱膨張の差によって発生する熱歪みが抑制されると想定される。
なお、ガラス板12が円盤形状である場合、中心軸周りの回転を利用することができるため、レーザー光Lの照射位置と照射後加熱を受けるまでの放熱領域にあるガラス板12の部分を除く、残り全部を加熱空間14にて加熱することが、特に好ましい。こうすることで、レーザー光Lの照射による端面の軟化と、加熱空間14による加熱とを、連続的に効率よく実施することが可能となる。換言すれば、一実施形態では、ガラス板12の一部を加熱空間12からはみ出させる。こうすることによって、ガラス板12の一部が常に放熱領域となるので、ガラス板12が過度に加熱されず、その結果、加熱後の冷却時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。
【0033】
このように、ガラス板12の端面12aに面取加工を行う上述の面取処理では、レーザー光Lによる照射と、端面12aの軟化した部分の加熱の2つの処理を行うことにより、面取面5を形成することができるので、従来のように、ガラス部材の全体を常温より高い所定温度に保持すること、レーザー光を、ガラス部材の角部に沿って移動しながら角部に照射すること、及び、面取りされたガラス全体をヒータで加熱して所定の温度から徐々に冷却して常温にまで戻すこと、の3つの処理を行う場合に比べて、面取処理に要する時間を短くでき、ガラス板の生産効率が上がる。しかも、紐状のガラス片の発生を抑制するので、端面12aが大きく削り取られることや表面粗さの異常な増大がなくなり、所望の形状の面取面5を形成させることができる。
また、従来のように、ガラス部材の角部毎に面取りを行う場合、ガラス部材の板厚方向の両側の角部それぞれの面取りを1つのレーザー光を用いて別々に行うので、生産効率はより低下する。また、2つのレーザー光を用いてある一つの端面の両側の角部の面取りを同時に行うと、2つのレーザー光を同時に照射させる装置構成が必要となり、装置構成が煩雑になる。これに対して、本実施形態では、レーザー光Lを端面12aのガラス板12の板厚方向全体に亘って照射することにより、両側の角部を同時に面取りすることができるので、従来に比べて生産効率は向上し、装置構成は簡素化される。
【0034】
上記面取装置10では、レーザー光Lの照射位置と加熱空間14に入る開始位置との間は、加熱されたガラス板12の熱が放熱されるので放熱領域となる。また、レーザー光Lの照射位置は、加熱空間14の外側にあり非加熱領域にある。したがって、端面12aは、非加熱領域におけるレーザー光Lの照射、放熱、加熱を順番に受ける。
このように、面取装置10は、ガラス板12の端面12aにレーザー光Lを照射するレーザー光照射ユニット40と、レーザー光Lの照射後の端面12aを加熱する加熱空間14を備える加熱ユニット16と、加熱空間14にガラス板12を出し入れするようにガラス板12を載置する載置台24を移動させる移動台30と、載置台24上のガラス板12を回転させる回転モータ28と、を備える。レーザー光Lの照射位置と加熱空間14に入る開始位置との間には、レーザー光Lの照射により加熱された端面12aの放熱領域が設けられる。
【0035】
一実施形態によれば、
図2(a),(b)に示す面取処理を行う場合、上述したピーリングの発生をより少なくするために、ガラス板12の中心周りの回転速度(ガラス板12の端面12aにおける回転方向の移動速度をいう)は、ガラス板12の主表面が加熱空間14に配置されて定まる主表面の加熱面積A(
図2(b)に示す斜線部分の面積)に応じて設定される回転速度設定値よりも低いことが好ましい。
図3は、加熱面積Aとガラス板12の好ましい回転速度の関係を説明する図である。
図3では、加熱面積Aに対する回転速度設定値の変化を直線Bで示している。直線Bは、加熱面積A=0において、回転速度0の原点を通る。この直線Bよりも回転速度を低くする、即ち、図中の領域Rの範囲内で回転速度を設定することが好ましい。面取処理に要する時間を短くして、ガラス板の生産効率を向上させるためには、ガラス板12の回転速度を上げることが好ましいが、過度に回転速度を上げると、端面12aの表面近傍に対して内部のガラスの加熱が十分でないのでピーリングが発生しやすい。このため、
図3に示すように、回転速度の上限となる回転速度設定値が、加熱面積Aに応じて設定される。回転速度設定値よりも低い範囲内で回転速度を上げても、加熱面積Aが大きければ、長い加熱時間の加熱により、上述したガラス板12の端面と内部のガラスの温度差及び熱膨張の差を小さくすることができるほか、加熱されたガラス板12の温度のばらつきを小さくすることができ、ピーリングの発生を確実に低下させることができる。しかも、回転速度を上げることで、面取処理のトータルの処理時間が短くなり、ガラス板の生産効率が向上する。このため、加熱面積Aは大きいことが好ましい。
一実施形態によれば、ガラス板12の回転速度(ガラス板12の端面12aにおける回転方向の移動速度)をV[mm/秒]とし、加熱面積をA[mm
2]としたとき、V<1/50・Aを満足することが好ましい。一実施形態によれば、回転速度設定値は、1/50・Aであることが好ましい。このようなV<1/50・Aは、例えば以下の条件で設定され得る。この条件は、端面12aを面取処理する際の通常の条件である。
・出力18.29W、スポット径1.23mmのレーザー光を用い、
・磁気ディスク用ガラス基板として用いるアルミノシリケートガラスの公称直径3.5インチのガラス板12を用い、
・ガラス板12をガラス板12の歪点温度より50℃低い温度以上、ガラス転移点温度よりも低い温度で加熱する。
なお、回転速度Vの下限値は特に制限されないが、生産性向上の観点から、回転速度Vは10mm/秒以上が好ましく、30mm/秒以上であることがより好ましい。
【0036】
なお、ガラス板12の線膨張係数によって、上述したガラス板12の端面12aと内部の熱膨張の差が定まり、熱歪みの大きさが定まることから、ガラス板12の100~300℃の温度範囲における平均線膨張係数は100×10-7/℃以下であることが好ましい。ガラス板12の平均線膨張係数が100×10-7/℃を超える場合、ガラス板12の面内の温度差による熱歪みの影響が大きくなりすぎて、面取処理後に平坦度が悪化する場合がある。
【0037】
一実施形態によれば、レーザー光Lを照射した端面12aの軟化した部分の温度がガラス板12の歪点温度(ガラス粘度が1014.5[dPa・秒]となる温度)より50℃低い温度未満になる前に、軟化した部分が加熱空間14への進入を開始するように、レーザー光Lの端面への照射位置P1は定められることが好ましい。これにより、ガラス板12の端面と内部との間にできる熱歪みを効率よく緩和させることができる。軟化した部分が加熱空間14への進入を開始するときの軟化した部分の温度は、歪点温度より50℃低い温度以上、歪点温度より50℃高い温度以下であることが好ましい。照射位置P1は、上記観点から適宜調整すればよいが、具体的な距離としては例えば加熱空間14に入る位置P2から50mm以内であることが好ましい。他方、放熱領域をある程度設けるために、照射位置P1は、上記位置P 2から5mm以上離すことがより好ましい。
【0038】
一実施形態によれば、
図2(a),(b)に示す面取処理を行う場合、ガラス板12の主表面における加熱空間14内に配置される加熱領域Aは、ガラス板12の主表面の面積の半分以上である、ことが好ましい。加熱領域Aを主表面の面積の半分以上とすることにより、ガラス板12の加熱時の温度のばらつきを小さくすることができ、ピーリングの発生を確実に少なくすることができる。
【0039】
なお、加熱空間14におけるガラス板12の加熱温度は、ガラス板12のガラス転移点温度よりも低いことが好ましい。すなわち、端面12aの軟化した部分は、加熱空間14において、ガラス板12のガラス転移点温度よりも低い温度で加熱されることが好ましい。上記加熱温度がガラス転移点温度以上である場合、ガラス板12の平坦度を悪化させる恐れがある。また、加熱空間14における加熱温度は、例えばガラス板12の歪点温度より50℃低い温度以上であることが好ましい。上記加熱温度が歪点温度より50℃低い温度より低い場合、ピーリングを安定して防止できない場合がある。
【0040】
このような面取処理後のガラス板12は、端面12aの局部的な加熱を行なったことでガラス板12に歪みが残留する場合がある。この場合、面取処理後、アニール処理を行うことが好ましい。アニール処理では、一例を挙げると、室温(25℃)から、徐冷点温度(ガラス粘度が1013[dPa・秒]となる温度)より数10度高い温度、あるいは、ガラス転移点よりもやや低い温度まで数10分かけてガラス板12を昇温させて、上記温度で数10分~1時間保持した後、歪点温度より数10度低い温度まで1時間程度かけてゆっくり降温させ、その後、室温まで自然冷却する。これにより、残留する歪みによりリターデーション値が5[nm]超であるガラス板12を、リターデーション値を5[nm]以下の極めて低い値にすることができる。本発明者らの検討によると、例えばリターデーション値が6.25[nm]と既に低い値であるガラス板12に対してアニール処理することで、リターデーション値は1.08[nm]とさらに低い値にすることができた。
【0041】
このように面取処理されるガラス板の製造は、特に制限されないが、例えば、フロート法、ダウンドロー法、あるいはプレス法により製造される。フロート法やダウンドロー法により製造された広いシート状のガラス板から内孔の設けられた円盤形状のガラス板を複数枚、取りだすことができる。広いシート状のガラス板から円盤形状のガラス板を取りだす方法は、周知のスクライバを用いた割断によって行ってもよいし、レーザー光をガラス板に照射して、円形状に欠陥を形成して、円環形状に切り出してもよい。
【0042】
磁気ディスク用ガラス板を、面取処理の施されたガラス板から製造する場合、最終製品である磁気ディスク用ガラス板に適した特性を有するように各種処理が行われる。以降、ガラス板12を用いて説明する。
【0043】
面取処理されたガラス板12は、主表面の研削・研磨処理が行われる。
研削・研磨処理では、ガラス板12の研削後、研磨が行われる。
研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス板12の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラス板12の外周端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス板12の両側の主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス板12が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、クーラントを供給しながらガラス板12と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス板12の両主表面を研削することができる。例えば、ダイヤモンドを樹脂で固定した固定砥粒をシート状に形成した研削部材を定盤に装着して研削処理をすることができる。
【0044】
次に、研削後のガラス板12の主表面に第1研磨が施される。具体的には、ガラス板12の外周端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス板12の両側の主表面の研磨が行われる。第1研磨は、研削処理後の主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
【0045】
第1研磨処理では、固定砥粒による上述の研削処理に用いる両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用いて、研磨スラリを与えながらガラス板12が研磨される。第1研磨処理では、遊離砥粒を含んだ研磨スラリが用いられる。第1研磨に用いる遊離砥粒として、例えば、酸化セリウム、あるいはジルコニア等の砥粒が用いられる。両面研磨装置も、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤の間にガラス板12が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス板12と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス板12の両主表面を研磨する。研磨砥粒の大きさは、平均粒径(D50)で0.5~3μmの範囲内であることが好ましい。
【0046】
第1研磨後、ガラス板12を化学強化してもよい。この場合、化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの混合熔融液等を用い、ガラス板12を化学強化液中に浸漬する。これにより、イオン交換によってガラス板12の表面に圧縮応力層を形成することができる。
【0047】
次に、ガラス板12に第2研磨が施される。第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。具体的には、ガラス板12の外周端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持させながら、ガラス板12の両側の主表面の研磨が行われる。第2研磨処理では、第1研磨処理に対して、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なる。樹脂ポリッシャの硬度は第1研磨処理時よりも小さいことが好ましい。例えばコロイダルシリカを遊離砥粒として含む研磨液が両面研磨装置の研磨パッドとガラス板12の主表面との間に供給され、ガラス板12の主表面が研磨される。第2研磨に用いる研磨砥粒の大きさは、平均粒径(d50)で5~50nmの範囲内であることが好ましい。
化学強化処理の要否については、ガラス組成や必要性を考慮して適宜選択すればよい。第1研磨処理及び第2研磨処理の他にさらに別の研磨処理を加えてもよく、2つの主表面の研磨処理を1つの研磨処理で済ませてもよい。また、上記各処理の順番は、適宜変更してもよい。
こうして、上述したレーザー光の端面への照射により端面の面取処理をしたガラス板12を製造した後、ガラス板12の主表面を研削あるいは研磨することにより、磁気ディスク用ガラス板に要求される条件を満足した磁気ディスク用ガラス基板が製造される。
この後、磁気ディスク用ガラス基板の主表面に磁性膜を形成することにより、磁気ディスクが製造される。
【0048】
なお、ガラス板12は、第1研磨を行う前に、例えば、第1研削後、第1研磨前に、あるいは、第1研削前に、ガラス板12の端面12aを研磨する端面研磨処理を行ってもよい。
このような端面研磨処理を行う場合であっても、事前にレーザー光Lの照射によって面取処理が施されたガラス板12の端面の算術平均粗さRaを50nm以下、及び/または、Rzを500nm以下にできているので、端面研磨処理に要する時間を短くすることができる。
端面研磨処理は、遊離砥粒を端面に供給しながら研磨ブラシを用いて研磨する研磨ブラシ方式を用いてもよく、あるいは、磁気機能性流体を用いた研磨方式を用いてもよい。磁気機能性流体を用いた研磨方式は、例えば、磁気粘性流体に研磨砥粒を含ませたスラリを磁界によって塊にし、この塊の内部にガラス板12の端面12aを突っ込んで、塊とガラス基板を相対的に回転させることにより、端面12aを研磨する方式である。しかし、生産効率を高めるためには、端面研磨処理をしないことが好ましい。ガラス板12の端面12aの表面粗さを、面取処理によって得られる端面12aの表面粗さに保持したまま、ガラス板12の主表面を研削あるいは研磨することが好ましい。なお、本実施形態で行う面取処理で形成される面取面の表面粗さは小さいので、面取処理は端面研磨処理を兼ねているといえる場合がある。この場合、面取処理で同時に行われる端面研磨以外に、追加の端面研磨処理をしないことが好ましい。
【0049】
ガラス板12のガラス転移温度Tgは、450~800℃であることが好ましく、480~750℃であることがより好ましい。
【0050】
ガラス板12のガラスの材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどのアモルファスのガラスを用いることができる。磁気ディスク用ガラス基板を作製する場合、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を得ることができるアルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0051】
ガラス板12のガラスの組成は、限定するものではないが、一実施形態によれば、酸化物基準に換算し、モル%表示で、SiO2を50~75%、Al2O3を1~15%、Li2O、Na2O及びK2Oから選択される少なくとも1種の成分を合計で5~35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0~20%、ならびにZrO2、TiO2、La2O3、Y2O3、Ta2O5、Nb2O5及びHfO2から選択される少なくとも1種の成分を合計で0~10%、有する組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスである。
【0052】
また、一実施形態によれば、質量%表示にて、SiO2を57~75%、Al2O3を5~20%、(ただし、SiO2とAl2O3の合計量が74%以上)、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、La2O3、Y2O3およびTiO2を、合計で0%を超え、6%以下、Li2Oを、1%を超え、9%以下、Na2Oを5~28%(ただし、質量比Li2O/Na2Oが0.5以下)、K2Oを0~6%、MgOを0~4%、CaOを0%を超え、5%以下(ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多い)、SrO+BaOを0~3%、有する組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスである。
【0053】
また、一実施形態によれば、必須成分として、SiO2、Li2O、Na2O、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下であって、ガラス転移温度Tgが650℃以上であってもよい。このような組成のガラスは、磁気ディスク用ガラス基板に用いる場合、エネルギーアシスト磁気記録用磁気ディスクに使用される磁気ディスク用ガラス基板に好適である。
【0054】
(実験例)
本実施形態のガラス板の製造方法の効果を確認するために、円環形状のガラス板12(外径95mm、内径25mm、板厚0.7mm)を用いて、加熱面積A(円孔3の部分は除く)、回転速度Vを種々変更して面取処理を行って、ピーリング発生の有無を評価した。面取処理前のガラス板12の端面は、
図1(c)に示すような主表面に垂直な端面7であった。ガラス板12のガラスは、ガラス転移温度500℃、歪点温度450℃、100~300℃の平均線膨張係数95×10
-7のアモルファスのアルミノシリケートガラスであった。
【0055】
ガラス板12の外周端面に対して、
図2(b)に示すような位置にレーザー照射ユニット40を配置し、レーザー光Lを
図2(b)に示すように外周端面に照射した。加熱空間14における加熱温度は480℃に調整した。レーザー光Lの照射位置P
1は、位置P
2からガラス板12の周方向に25mm離れた位置とした。また、レーザー光Lの端面への入射角度は、端面の法線方向から主表面の面内方向に45度傾けた角度とした。
下記表1は、条件1~26で面取処理を行ったときの評価結果を示す。
【0056】
【0057】
なお、ガラス板12全体を加熱空間14に入れた場合、ガラス板12の冷却に時間を要し、生産効率が極端に低下して好ましくないことから、上記条件には含めなかった。
条件1~26の評価結果より、V<1/50・Aとすることで、ピーリングの発生がみられなかった。ピーリングが発生しなかったガラス板12の端面はいずれも
図1(b)に類似の断面形状であり、面取面が形成されていた。また、端面の表面粗さは算術平均粗さRaで50nm以下であった。
これより、V<1/50・Aとすることが、ピーリング発生を防止する点から好ましいことがわかる。
【0058】
以上、本発明のガラス板の製造方法、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法、および磁気ディスクの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0059】
1 ガラス板
3 円孔
5 面取面
7 端面
10 面取装置
12 ガラス板
12a,50 端面
14 加熱空間
16 加熱ユニット
18 駆動ユニット
20 壁
21 開口部
22 加熱ヒータ
24 載置台
24a 断熱材
26 回転シャフト
28 回転モータ
30 移動台
40 レーザー照射ユニット