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特許7366150材料の表面上に虹色効果を生み出すための方法および該方法を実施するためのデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】材料の表面上に虹色効果を生み出すための方法および該方法を実施するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/352 20140101AFI20231013BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20231013BHJP
【FI】
B23K26/352
B23K26/082
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021561790
(86)(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-29
(86)【国際出願番号】 IB2019053117
(87)【国際公開番号】W WO2020212728
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】512072614
【氏名又は名称】アペラム
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イスマエル・ギヨット
(72)【発明者】
【氏名】バティスト・ラトゥーシュ
(72)【発明者】
【氏名】マルコス・ヴィニシウス・ロペス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ミシェル・ダマス
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ディエ
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0352664(US,A1)
【文献】特開平03-094986(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100952(WO,A1)
【文献】特開平06-198466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/352
B23K 26/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーツ(1)の表面上に視覚的虹色効果を生み出すための方法であって、1ナノ秒未満のパルス持続時間を有するレーザ光線(9)が、少なくとも2つの固定デバイスの集束系(14)の並置された光学場においてまたは少なくとも1つの可動デバイスの光学場において、前記表面上に送出され、前記デバイスのそれぞれが、レーザ源(8)と、スキャナ(13)と、前記パルスの幅にわたり前記表面に対してウェーブレットの形態の構造を与えるための前記集束系(14)とを備え、前記表面のスキャニングが、前記スキャナ(13)により前記レーザ光線(9)によって、前記パーツ(1)と前記スキャナ(13)との相対移動方向(7)における一連の連続的なライン(5、6;16、17、18、16’、17’、18’)に沿って、および前記相対移動方向(7)に対して垂直な方向において相互の延長上に位置する一連のラインに沿って実施され、それぞれが、前記デバイスの前記光学場に帰属し、各ライン(5、6;16、17、18、16’、17’、18’)が、前記パーツ(1)の表面上の前記レーザ光線(9)の直径と等しい幅を有する、方法において、
前記2つの固定デバイスの前記集束系(14)の前記並置された光学場または前記可動デバイスの連続的な2つの位置に対応する光学場が、前記パーツ(1)の表面上の前記レーザ光線(9)の前記直径の2倍~2cmの間の重畳領域幅内において重畳し、それにより相互の延長上に位置する2つのラインが、接合部(2)において重畳することと、
前記パーツ(1)と前記スキャナ(13)との相対移動方向(7)における2つの一連の連続的なライン(5、6;16、17、18、16’、17’、18’)の間において、前記接合(2)は、ランダムに配置されるか、または前記光学場の前記重畳領域内部の前記相対移動方向(7)における2つの連続的なライン(5、6;16、16’、17、17’、18、18’)上の前記接合部(2)同士間の最大オフセット値の少なくとも10倍に等しい周期性を有するランダムパターンで周期的に組織化されることと
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記パーツ(1)と前記スキャナ(13)との前記相対移動方向(7)における2つの連続的なライン(16、17、18、16’、17’、18’)に沿ったスキャニングの実施の間において、前記レーザ光線(9)の偏光が、前記2つの連続的なライン(16、17、18、16’、17’、18’)上のそれぞれ異なる配向のウェーブレットと、前記相対移動方向(7)に対して垂直な方向における2つずつの共通配向のウェーブレットとを生み出すように変更されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ光線(9)の前記偏光は、周期パターンで変更され、前記周期パターンは、前記パーツと前記スキャナとの前記相対移動方向(7)においてM本の連続するライン(16、17、18、16’、17’、18’)にわたり延在し、Mは、少なくとも2に等しいことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記パーツ(1)と前記スキャナ(13)との前記相対移動方向(7)における2つの連続的なライン(16、17、18、16’、17’、18’)が、少なくとも20°だけ異なる偏光角度を有することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
相互の延長上に位置する2つの隣接する場の2つのライン(16、17、18、16’、17’、18’)の偏光が、同一であることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パーツ(1)の前記表面と前記レーザ光線(9)を発する前記デバイスとの前記相対移動は、可動支持部(15)上に前記パーツ(1)を配置することにより実現されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記パーツ(1)の前記表面と前記レーザ光線(9)を発する前記デバイスとの前記相対移動は、可動支持部上に前記レーザ光線(9)を発する前記デバイスを配置することにより実現されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記パーツ(1)は金属シートであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記パーツ(1)の前記表面は、三次元であることと、
距離が、前記集束系(14)と前記パーツ(1)の前記表面との間で計測されることと、
前記集束系(14)は、前記パーツ(1)の表面上の前記レーザ光線(9)の前記直径および前記レーザ光線(9)のフルエンスが前記集束系(14)と前記パーツ(1)との間の有効距離にかかわらず実質的に同一となることが保証されるように制御されることと
を特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記パーツ(1)の前記表面は、三次元であることと、
距離が、前記集束系(14)と前記パーツ(1)の前記表面との間で計測されることと、
前記デバイスと前記表面との相対位置は、前記方法の実施時に前記集束系(14)と前記表面との間の前記距離が同一にとどまるように制御されることと
を特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記パーツ(1)はステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
レーザ光線(9)のパルスによりパーツ(1)の表面上にウェーブレットを形成することによって前記パーツ(1)の前記表面に対して虹色効果を与えるためのデバイスであって、前記デバイスは、少なくとも2つの固定並置されたユニットデバイスから、または少なくとも1つの可動ユニットデバイスから形成され、前記少なくとも2つの固定並置されたユニットデバイスまたは前記少なくとも1つの可動ユニットデバイスのそれぞれが、1ns未満のパルス持続時間のレーザ光線(9)を発生するレーザ源(8)と、前記光線(9)を成形する光学系(10)と、前記レーザ光線(9)のパルスが集束系(14)を通過した後にライン(5、6;16、17、18、16’、17’、18’)の形態で前記パーツ(1)の前記表面上の光学場をスキャニングすることを可能にするスキャナ(13)であって、2つの固定並置されたユニットデバイスの前記光学場が、前パーツの表面上の前記レーザ光線(9)の直径の2倍~2cmの間の幅を有する重畳領域にわたり重畳し、前記重畳領域は、単一のユニットデバイスによりそれぞれが生成された2つのライン(5、6;16、17、18、16’、17’、18’)の接合部(2)を含む、スキャナ(13)と、前記パーツ(1)の前記表面の少なくとも一部分に対して処理を実施するために前記デバイスと前記パーツ(1)との所与の相対移動方向(7)への相対移動を生み出すための手段とを備える、デバイスにおいて、
前記ユニットデバイスの前記スキャナは、前記接合部(2)同士が、ランダムパターンを共に形成するように、または前記光学場の前記重畳領域内部の前記相対移動方向(7)における2つの連続的なライン(5、6;16、17、18、16’、17’、18’)上の前記接合部(2)同士間の最大オフセット値の少なくとも10倍に等しい周期性を有するランダムパターンで周期的に組織化されるように、配置されることを可能にすることを特徴とする、デバイス。
【請求項13】
前記ユニットデバイスの前記光学系(10)は、前記レーザ光線(9)に所定の偏光を与える光学偏光系(12)と、それぞれ異なる偏光のパルスを用いて前記表面上において前記相対移動方向(7)へ2つの隣接するライン(16、17、18、16’、17’、18’)を生成するためにこの偏光を変更させるための手段とを備えることを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ユニットデバイスは、少なくとも20°だけ相互に異なる偏光を有するパルスを用いて2つの隣接するライン(16、17、18、16’、17’、18’)を形成することを可能にすることを特徴とする、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ユニットデバイスは、前記集束系(14)と前記パーツ(1)の前記表面との間の距離を計測するための手段を備え、計測するための前記手段は、前記距離にかかわらず一定のレーザ光線直径および一定のフルエンスを前記表面上に維持するように前記集束系(14)を制御する手段に接続されることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ユニットデバイスは、前記集束系(14)と前記パーツ(1)の前記表面との間の距離を計測するための手段を備えることと、
これらの計測手段は、前記集束系(14)と前記表面との間の前記距離を一定に維持することを可能にする、前記デバイスと前記表面との相対位置を制御する手段に接続されることと
を特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスと前記パーツ(1)との前記相対移動方向(7)への相対移動を生み出すための前記手段は、前記パーツ(1)のための可動支持部(15)を備えることを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスと前記パーツ(1)との相対移動を生み出すための前記手段は、前記ユニットデバイスのための可動支持部を備えることを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼シートまたは他の材料の表面のレーザ処理であって、虹色外観をこれらの表面に与えることを意図されたレーザ処理に関する。
【背景技術】
【0002】
「LIPPS」または「リプル」とも呼ばれる虹色処理は、短いパルス持続時間(1ナノ秒未満)のパルスレーザ放射で材料表面を照射することを伴う。処理対象の材料上の衝突箇所における各パルスの直径は、典型的には10μm~数百μmの範囲内である。入射光線のエネルギーが十分に高い場合には、この照射により構造の変化および/または材料表面の再編が引き起こされ、これにより材料は周期的構造を有することになる。しかし、光線のエネルギーが過度に高い場合には、好ましくは周期表面構造の形成を伴いつつ、気化/昇華/衝撃波によるアブレーション現象が生じる可能性がある。使用すべきエネルギー量の範囲は、表面の状態または光沢の変化を伴いながらまたは伴わずに所望の虹色効果を実現するように、所与材料に関して経験的に容易に決定することが可能である。
【0003】
前記処理は、あらゆるタイプのステンレス鋼に対して特に実施されるが、それのみに限定されるわけではない。この処理の目的は純粋に外観に関するものであり得るが、表面湿潤性および摩擦抵抗の変更ならびにバクテリア付着の軽減をも可能にする。この処理は、事前の活性化/脱不動態化の必要性を伴うことなくステンレス鋼不動態化層を有する対象物の表面に対して直接的に実施することが可能である。
【0004】
この処理が実施される他の材料は、特に様々な金属、PVCなどのポリマー、セラミック、およびガラスである。
【0005】
本明細書の以下においては、任意には周期的表面構造の形成を結果としてもたらす虹色効果の実現において役割を果たすことが知られている設備の正確な動作パラメータ(レーザの出力および周波数等)を適合化することにより、示唆されるように実施されるレーザ処理後に虹色効果を実現するために、現時点において知られているまたは将来的に知られ得るあらゆる金属材料または非金属材料に対して本発明が適用されるという了解を前提として、ステンレス鋼の場合を優先的に取り上げる。
【0006】
この周期的表面構造を形成する厳密なメカニズムはいまだ確定されていないが、様々なラボで実施された試験および特徴判定によれば、表面構造は、レーザパス数および/またはパルスエネルギーおよび/またはスキャンパラメータに応じて、単位表面積当たりの合計照射エネルギーに依拠しつつ以下の4つの構造の中の1つを有し得ることが判明しており、これらの構造は、エネルギーが高くなる順に分類されており、それらの名称は、非英語圏でも当業者により一般的に使用されている。
1)いわゆる「HSFL」構造(高空間周波数LIPPS)
この構造は、小リプルから構成され、これらの小リプルは、ステンレス鋼の場合には入射レーザ光線の偏光方向に配向される。これらのリプルの空間周波数は、処理のために使用されるレーザの波長よりも低い。
2)いわゆる「LSFL」構造(低空間周波数LIPPS)
この構造は、先述の構造よりも大きなリプルから構成され、ステンレス鋼の場合には入射光線の偏光に対して垂直な方向に配向される。これらのリプルの空間周波数は、レーザの波長よりも若干低いもしくは高い、または同等である。波長1064nmのレーザでステンレス鋼を表面処理する場合に、リプルの周期性は1μmの範囲内となる。HSFL構造は、LSFL構造の溝内にも見ることができる。
一部の材料の場合には、HSFLおよびLSFL構造のそれぞれの配向がステンレス鋼の場合の配向と比較した場合に反転されたものになり得る点に留意されたい。
3)いわゆる「溝」または「バンプ」構造
この構造は、被処理表面の全体に及ぶマイクロメートルサイズのバンプから構成される。これらのバンプは、「ヘビ革」外観を有する構造で構成される。
4)「スパイク」における構造
この構造は、数マイクロメートル~数十マイクロメートルの範囲の高さを有するスパイクから構成される。これらのスパイクの離間距離は、処理パラメータにより決定される。
【0007】
これらの構造およびその発現メカニズムに関するさらなる詳細は、具体的には記事「Evolution of nano-ripples on stainless steel irradiated by picosecond laser pulses」、Journal of Laser Applications 26、February 2014、B. Liuらに見ることができる。この中で、均一のパルス数に関して、照射フルエンスの上昇はLSFLよりもHSFLの実現をもたらす(上記で示唆したように)が、均一のフルエンスでは、リプルが観測されなくなるほどパルス数が過度に高くなるまでは、より高いパルス数はHSFLよりもLSFLの形成をもたらすことが報告されている。したがって、照射後の表面の正確な構成は、所与材料に対する受領するパルス数とそれらの各パルスにより送達されるエネルギーとの両方を伴うメカニズムの結果として得られる。このメカニズムは複雑であるが、所与材料に対して、上記に挙げた構成の中のいずれかを実現するための信頼性の高い条件がユーザによって経験的に判断され得るものである。
【0008】
一般的に、最初の2つの場合に、この周期的表面構造は、レーザ表面処理のオペレータには周知の現象を誘発させ得る。この現象は、被処理試料が光源下に配置された場合の光線網の形成による光の回折である。ユーザの向きおよび位置ならびに光の向きおよび位置に応じて、虹彩色を試料上に見ることができる。これは、「虹色効果」として知られるものである。
【0009】
この効果は、試料の表面が上記に挙げた第3または第4の場合の顕著な外観を有する場合には現れない。なぜならば、これらの2つの場合には、レーザ源によって試料の表面に送達されるエネルギーが少なくとも局所的に過度に高いレベルに達しており、そのことにより、表面構造がその周期的特性を既に喪失してしまったために虹色効果の実現がもはや不可能となるような表面変形を引き起こしてしまうからである。
【0010】
この虹色化は、意図的であるかないかにかかわらず炉処理またはトーチ処理により得られるプラズマ処理または表面酸化によって実現されるステンレス鋼の表面カラーリングと混同されるべきではない。本発明において考慮対象となる虹色効果は、厳密な意味における材料カラーリングの結果として得られるものではなく、いくつかの観測条件下における表面上の色の見え方の結果として得られるものである。適切に補助的に呼ばれるカラーリングプロセスにおける表面構造の周期性の不在は、本発明による表面虹色化と、プラズマ処理、炉処理、またはトーチ処理によるステンレス鋼のカラーリングとの間の本質的な相違点である。
【0011】
しかし、前記虹色化の観測または無観測は通常は高度に指向的なものであり、すなわちこの虹色化の観測および観測される虹色化の強度は、材料の表面を見る角度に高度に依存する点に留意されたい。
【0012】
表面虹色化のオペレータが直面する1つの問題は以下のとおりである。
【0013】
現行では、レーザ光線の高速伝搬軸(ポリゴンホイールもしくはガルバノメータミラーを経由)およびレーザ光線の低速伝搬軸(ガルボミラーを経由)の両方を生成するレーザおよびスキャナを共に結合するシステムを単独で使用するか、または処理対象の物体に対して低速軸に沿ってスキャナを移動するロボットアームに結合されたレーザおよびスキャナシステムを使用するかのいずれかにより、ラボにおいて虹色化処理により均質な試料を得ることが可能である。
【0014】
低速軸に沿ったスキャナの移動は、低速軸上に固定された状態にとどまり高速軸に沿って移動するレーザの正面における、低速軸に沿った例えば金属シートなどの処理対象の物体の移動により置き換えることが可能である。また、レーザが両軸(低速軸および高速軸)に沿って固定された状態にとどまり、処理対象の物体がこの両軸に沿って移動されるようにすることも可能である。いずれの場合においても重要な点は、処理対象の物体とレーザとの間の両軸に沿った連続的な相対移動が存在することである。
【0015】
上記で説明した構造の形成メカニズムは、材料の表面上に伝達される総エネルギーと、このエネルギーの空間分布および時間分布とに左右される。したがって、LSFLにより実現される虹色化「強度」は、最大値に達するまで、処理済みのパスに関するレーザの各新規パス間において上昇することになり、その後、LSFLが追加の印加エネルギーの効果の下で徐々に「バンプ」になるときに低下する。
【0016】
これは、すなわち存在することを意味する。材料の表面上に伝達されるのに最適なエネルギー、虹色効果が最強となる最適条件、この最適条件は考慮の下ですべての表面に対して決定および適用される。
【0017】
しかし、処理済み物体は、一般的に小サイズである、および/または低い生産性で得られる。
【0018】
物体サイズの制約は、レーザ、スキャナ、および集束系により形成されたアセンブリの光学場の限定的な寸法に主に起因するものであり、これらのアセンブリは、場合によっては例えば収束ミラーレンズである。均質な処理の実現には、表面のすべての箇所における処理に関して完全な制御が必要とされる。しかし、使用される集束系にかかわらず、いずれの場合も最適領域内において安定的な効果が得られる光学場が得られる。しかし、この最適領域からの逸脱が生じた途端に、この系は、レーザ光線の出力のひずみおよび/または減衰を誘発する。これらは言い換えれば、光学場の最適領域とこの最適領域を越えた位置の領域との間において、処理が非均質になるということである。
【0019】
したがって、ステンレス鋼シートの大きな表面を処理するために、サイズが大きく必要時にのみ構築される広範囲集束系が必要となる。さらに、これらの広範囲集束系は、超短パルス持続時間かつ高出力のレーザと共に使用される必要があるが、このようなレーザはまだ広く普及してはいない。
【0020】
これらの2つの欠点を解消するために、既知の解決策は、現行で市販されている従来の集束系およびレーザを使用すること、ならびに
- 移動中のストリップをライン処理するために並置されたこれらの集束系およびレーザシステムを備える複数のデバイスを配置すること、または
- この処理を複数回にわたり実施すること(バッチシステムの場合に表面わたり分布した一連のストリップに対して)、または
- これらの2つの解決策を組み合わせること
のいずれかを行うことである。
【0021】
しかし、この解決策は、2つの連続するデバイスの光学場同士の間の接合ゾーンを特に注意深く管理することを必要とし、この管理が不十分であった場合には、当業者には「ステッチング」として知られる、以下において説明される現象が引き起こされ得る。
【0022】
このメカニズムは、2つの連続するレーザ処理場を共に接合するためにこれらの場の非常に著しい重畳に依存することを防止する。
【0023】
ヒトの目の分解能レベルの非常に著しい場の重畳が存在する場合には、この重畳領域は、表面の他の部分に対して伝達されるエネルギー量の2倍を受けることになる。処理時に注入されるエネルギーがこのように2倍になることは、公称の処理エネルギー量のみを受ける領域と比較した場合に構造に、およびしたがって表面外観に局所的変化を引き起こし、この変化は、裸眼で視認可能なものとなる。2つの場同士の間の接合ゾーンを視認可能にし得るという理由から、この現象は「ステッチング」と一般的に呼ばれる。
【0024】
対照的に、レーザ処理場同士に間隔を空けることは、この現象を確実に防止するが、2つの場間に未処理ゾーンが形成されること、またはいずれにせよ公称未満の処理を被ることになることを必然的に意味する。また、このゾーンは、裸眼で視認可能となる。
【0025】
したがって、ほぼ完全な接合が、連続するレーザ処理場の間に必要とされる。
【0026】
さらに、このタイプの処理を高い生産性で実施することは、高速でのスキャンを必然的に伴う(少なくとも最大km/sの)。このタイプの処理のために使用されるスキャンシステムは、最も一般的には少なくとも1つのポリゴンホイールを有するスキャナである。高いレーザ周波数および高いスキャン速度において、これらのシステムはレーザ電子機器とスキャナ電子機器との間で同期の問題を一般的に引き起こす。これらの同期上の差異により、第1のパルスの目標位置に対して第1のパルスが位置ずれを生じ、およびしたがってライン全体の位置ずれが生じる。この差異は予測可能かつ計算可能であるが(なぜならば装置の2つのアイテムの管理周波数の差異の結果として生じるため)、ほとんどの現行のシステムで直面するものであり、処理ライン(ポリゴンホイールの移動に起因するライン)の起点間の数十マイクロメートルの差異に相当し得る。この差異は、ポリゴンの回転速度とレーザの固有周波数との関数であり、かかる差異を有する場の重畳は、2倍の処理がなされたゾーンが金属シートの虹色効果に対して十分に影響を及ぼし得ることが経験的に判明している。
【0027】
開発中のいくつかのシステムは、ポリゴンの上流に位置決めされたガルバノメータの様式で動作する「ガルボ」と呼ばれる追加の偏向ミラーの作動によりこのオフセットを部分的に補正するための内部手段を有する。例えば、RAYLASE社は、2018年6月5日および6日、Stuttgartにて実施されたSLT 2018 Congressにおいて、「New Generation of High-Speed Polygon-Driven 2D Deflection Units and Controller for High-Power and High-Rep. Rate Applications」(E. Wagner、M. Weber、およびL. Belliniによるプレゼンテーション)というタイトルで前記システムのコンセプトを提示した。
【0028】
しかし、この改善のみでは、場のオフセットという悪影響を明確に解消するためには十分な品質とは言えない。各ラインの初期部分および最終部分がラインの他の部分と同じ送達エネルギーで処理されないというリスクがある。また、2つの隣接する場の対応するライン同士が厳密に整列される必要がある。
【0029】
この処理の局所的不完全性を解消するために、ラインの他の部分に対して送達されるエネルギーを上昇させることが考えられ得るが、これはLSFL形成に適合した最大エネルギー量を超過し、虹色化を低下させるおよびさらには妨げるというリスクをはらむ。他のシステムのいずれについても、この同期化不良は、それぞれ異なる光学場同士の間のライン起点位置の分散の少なくとも2倍のオーダの「バーチャル」重畳の必要性を意味する。したがって、この重畳は、言い換えれば、場同士の間に未処理ゾーンが存在せずいくつかの箇所にてこの分散の2倍の重畳が存在し得る異質なストリップということである。
【0030】
各場のエッジが「直線ライン」として規定される場合に、およびしたがって各場の各ラインの長さが常に同一である場合に、当業者にとって先験的に明らかなように、この重畳領域は、処理ラインの幅と実質的に同等の幅、したがってパルスの直径の2倍と実質的に同等の幅を有する、パーツとレーザスキャンデバイスとの相対移動方向においてパーツを覆う細い直線状ストリップの形態となり、この重畳領域の処理外観は他の表面上と同一とはならない。同様に、処理場のこれらのエッジが周期パターンにより規定される場合には、重畳領域はこのパターンを再現し、それにもかかわらず裸眼による視認が可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0031】
【文献】「Evolution of nano-ripples on stainless steel irradiated by picosecond laser pulses」、Journal of Laser Applications 26、February 2014、B. Liuら
【文献】「New Generation of High-Speed Polygon-Driven 2D Deflection Units and Controller for High-Power and High-Rep. Rate Applications」(E. Wagner、M. Weber、およびL. Belliniによるプレゼンテーション、2018年6月5日および6日、Stuttgartにて実施されたSLT 2018 Congressにて)
【文献】「Control Parameters In Pattern Formation Upon Femtosecond Laser Ablation」Olga Varlamovaら、Applied Surface Science 253 (2007)、7932~7936頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の主な目的は、複数の連続光学場の接合ゾーンが裸眼では視認不可能になるようにステンレス鋼シートなどの(しかしそれに限定されない)製品の表面を処理するために、超短パルスを用いるレーザ方法を提案することである。これらの光学場は、これらの光学場が協同することによって単一の光学場を用いて可能であったものよりも大きな表面部分(典型的には全表面)を処理することが可能になるように構成される。この方法は、表面積の大きな製品の処理のために工業規模において経済的に採算のとれる様式で適用可能となるような良好な生産性を有さなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0033】
これを目的とする本発明の対象は、パーツの表面上に視覚的虹色効果を生み出すための方法である。1ナノ秒未満のパルス持続時間を有するレーザ光線が、少なくとも2つの固定デバイスの集束系の並置された光学場内においてまたは少なくとも1つの可動デバイスの場において、前記表面上に投影され、前記デバイスのそれぞれが、レーザ源と、スキャナと、前記パルスの幅にわたり前記表面に対してウェーブレットの形態の構造を与えるための前記集束系とを備え、前記表面は、前記スキャナにより前記レーザ光線によって、パーツとスキャナとの相対移動方向における一連の連続的なラインに沿って、および前記相対移動方向に対して垂直な方向において相互の延長上に位置する一連のラインに沿ってスキャニングされ、それぞれが、デバイスの光学場に帰属し、各ラインが、前記パルスの直径と等しい幅を有する。この方法において、2つの固定並置されたデバイスの前記光学場または前記可動デバイスの連続的な2つの位置に対応する光学場が、レーザ光線のパルスの直径の2倍~2cmの間の重畳領域幅内において重畳し、それにより相互の延長上に位置する2つのラインが、接合部において重畳することと、パーツとスキャナとの相対移動方向における2つの一連の連続的なラインの間において、前記接合ゾーンは、ランダムに配置されるか、または光学場の前記重畳領域内部に前記相対移動方向における2つの連続的なライン上の接合部同士間の最大オフセット値の少なくとも10倍に等しい、周期性を有するランダムパターンで周期的に組織化されることとを特徴とする。
【0034】
パーツとスキャナとの前記相対移動方向における2つの連続的なラインに沿ったスキャニングの実施の間において、前記2つの連続的なライン上のそれぞれ異なる配向のウェーブレットと、相対移動方向に対して垂直な方向における2つずつの共通配向を有するウェーブレットとを生み出すようにレーザ光線の偏光を変更することが可能である。
【0035】
レーザ光線の偏光は、周期パターンで変更されることが可能であり、前記周期パターンは、パーツとスキャナとの相対移動方向においてM本の連続するラインにわたり延在し、Mは、少なくとも2に等しく、好ましくは少なくとも3に等しい。
【0036】
パーツとスキャナとの相対移動方向における2つの連続的なラインが、少なくとも20°だけ異なる偏光角度を有し得る。
【0037】
相互の延長上に位置する2つの隣接する場の2つのラインの偏光が、同一であることが可能である。
【0038】
前記パーツの前記表面と前記レーザ光線を発するデバイスとの前記相対移動は、可動支持部上に前記パーツを配置することにより実現され得る。
【0039】
前記パーツの前記表面と前記レーザ光線を発するデバイスとの前記相対移動は、可動支持部上に前記レーザ光線を発するデバイスを配置することにより実現され得る。
【0040】
前記パーツは金属シートであることが可能である。
【0041】
前記パーツの前記表面は、三次元であることが可能であり、その場合に、距離が、集束系とパーツの表面との間で計測され、集束系は、レーザ光線のパルスの直径およびフルエンスが集束系とパーツとの間の有効距離にかかわらず実質的に同一となることが保証されるように制御される。
【0042】
前記パーツの前記表面は、三次元であることが可能であり、その場合に、距離が、集束系とパーツの表面との間で計測され、前記デバイスと前記表面との相対位置は、この方法の実施時に前記集束系と前記表面との間の距離が同一にとどまるように制御される。
【0043】
前記パーツはステンレス鋼であることが可能である。
【0044】
本発明のさらなる対象は、レーザ光線のパルスによりパーツの表面上にウェーブレットを形成することによってパーツの前記表面に対して虹色効果を与えるためのデバイスである。前記デバイスは、少なくとも2つの固定並置されたユニットデバイスから、または少なくとも1つの可動ユニットデバイスから形成され、少なくとも2つの固定並置されたユニットデバイスまたは少なくとも1つの可動ユニットデバイスのそれぞれが、1ns未満のパルス持続時間のレーザ光線を発生するレーザ源と、光線成形光学系と、光線のパルスが集束系を通過した後にパーツの表面上の光学場をラインスキャニングすることを可能にするスキャナであって、2つの固定並置されたユニットデバイスの前記光学場が、単一のユニットデバイスによりそれぞれが生成された2つのラインの接合部を含む、レーザ光線のパルスの直径の2倍~2cmの間の幅にわたり重畳する、スキャナと、前記パーツの表面の少なくとも一部分に対して処理を実施するために前記デバイスと前記パーツとの所与方向への相対移動を生み出すための手段とを備える。このデバイスにおいて、前記ユニットデバイスの前記スキャナは、前記接合部同士が、ランダムパターンを共に形成するように、または光学場の前記重畳領域内部に前記相対移動方向における2つの連続的なライン上の接合部同士間の最大オフセット値の少なくとも10倍に等しい、周期性を有する周期的に組織化されたランダムパターンを形成するように、配置されることを可能にすることを特徴とする。
【0045】
前記ユニットデバイスの光学系は、前記光線に所定の偏光を与える光学偏光系と、それぞれ異なる偏光のパルスを用いて前記表面上において前出の方向へ2つの隣接するラインを実現するためにこの偏光を変更させるための手段とを備え得る。
【0046】
前記ユニットデバイスは、少なくとも20°だけ相互に異なる偏光を有するパルスを用いて2つの隣接するラインを実現することを可能にし得る。
【0047】
前記ユニットデバイスは、集束系とパーツの表面との間の距離を計測するための手段を備えてもよく、この計測するための手段は、前記距離にかかわらず一定のパルス直径および一定のフルエンスを前記表面上に維持するように集束系を制御手段に対して接続される。
【0048】
前記ユニットデバイスは、集束系とパーツの表面との間の距離を計測するための手段を備えてもよく、この計測するための手段は、前記集束系と前記表面との間の距離を一定に維持することを可能にする、前記デバイスと前記表面との相対位置を制御する集束系の制御手段に対して接続される。
【0049】
前記デバイスと前記パーツとの所与方向への相対移動を生み出すための前記手段は、パーツのための可動支持部を備え得る。
【0050】
前記デバイスと前記パーツとの相対移動を生み出すための前記手段は、前記ユニットデバイスのための可動支持部を備え得る。
【0051】
理解されるように、本発明の目的は、「低速軸」と呼ばれる軸に沿って共に移動するレーザスキャナをそれぞれが有する少なくとも2つの固定並置されたレーザスキャナデバイスにより形成された表面の2つの対向し合うライン間の接合部を視認不可能にするまたは事実上視認不可能にすることである。前記デバイスの場同士は、これらの接合ゾーンが未処理となるまたは不完全処理となるリスクを防止するように若干重畳される。この目的のために、低速軸に対して実質的に垂直となる「高速軸」と呼ばれるパーツとレーザスキャナデバイスとの相対移動方向へと相互に続く2セットのラインを考えた場合に、レーザスキャナデバイスによりそれぞれ形成された前記対向し合うラインの接合箇所同士は、ランダムに配置される(すなわちデバイスのそれぞれの高速軸が相互の延長上に位置する)。
【0052】
任意には、少なくとも2つの固定並置されたデバイスは、可動デバイスの2つの連続的な位置に対応する光学場において対向し合うラインを連続的に実現するために高速軸に沿って移動される単一の可動レーザスキャナデバイスにより置き換えることが可能である。これは、複数の前記固定並置されたデバイスの同時使用と技術的に均等であるが、処理時間が長くなる。
【0053】
換言すれば、2つの直に並置されたレーザスキャナデバイス(またはその間に移動されていたレーザスキャナデバイス)により生成された対向し合うラインの接合箇所は、実質的に低速軸に沿って配向された直線ライン上に位置せず、したがってレーザデバイスのスキャン方向(高速軸)に対して実質的に垂直に位置する。これらの接合箇所は、ランダム形状の折れ線ラインを形成するか、または周期的形状を有するが、周期的に反復されるランダムパターン(したがって正弦曲線などの規則的な周期パターンを排除する)で組織化された折れ線ラインを形成する。このランダムパターンは、2つのレーザスキャナデバイスの場の重畳領域内に含まれたままにとどまり、前記スキャン方向に対して実質的に垂直となる一般配向を有する。したがって、この一般配向において2セットの連続的なラインの光学場同士の間におけるこれらの接合部は、共に線形パターンを形成せず、このパターンは、実質的に直線ラインを形成する場合に比べて裸眼による可視性は低い。このパターンは、裸眼による視認が可能であるというリスクをさらにあえておかすことになる短周期の周期パターンではなく、および好ましくはそのような短周期の周期パターンではない。パターンが周期的である場合には、この周期の長さは、2つの連続的なライン上の接合部同士の間における最大オフセット値の10倍未満にはならないことが好ましい。
【0054】
前記接合部が中に含まれる領域の幅は、好ましくは2cmを超過してはならない。この幅が過度に小さい(パルス直径の2倍未満)場合には、直線ラインに非常に似た折れ線ラインが実現されるというリスクをおかすことになり、これらの接合部の可視性というリスクが依然として残ることになる。この幅が過度に大きい場合には、これらのデバイスの有効光学場は縮小され、それにより設備の生産性が低下する。
【0055】
明らかなことだが、パーツの全表面を処理するためには3つ以上のレーザスキャナデバイスを有する必要がある場合に、本発明は、並置されたデバイスのすべての対に対して段階的に適用される。
【0056】
また、有利には、この方法および関連するデバイスは、レーザスキャナを備えるデバイスを用いて処理されたステンレス鋼の表面上において虹色化を視認する過剰な指向性に関する問題を解消するまたは少なくとも非常に大幅に緩和するように意図された方法および関連するデバイスと組み合わせて使用することができる。この方法を用いることにより、パーツとレーザスキャナデバイスとの相対移動方向において連続して配置された2つのライン上にLIPPSを形成するために、レーザにより発せられた光に対して偏光の差異化が適用される。少なくとも一連の3つの隣接するラインに対して適用される少なくとも3つの異なる偏光を用いることが、求められている効果を実現するためには推奨される。
【0057】
以下の添付の図面を参照として提示される以下の説明を読むことにより、本発明がさらによく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】2つの並置されたレーザデバイスを使用して本発明による虹色化処理が実施された金属シートの表面を示す図である。これら2つの並置されたレーザデバイスは、これらのデバイスの高速軸に沿って相互の延長上に位置するラインを形成し、2つのラインの間の重畳領域は、本発明の好ましい変形例にしたがって構成され、すなわち全体的配向が低速軸の配向となるランダム折れ線ラインで構成され、低速軸と実質的に一致する直線ラインまたは低速軸に沿ってほぼ配向された周期的折れ線ラインでは構成されない。
図2】本発明の好ましい一変形例による本発明のデバイスの流れ図である。これにより、レーザ処理デバイスの光学場中において本発明の方法を実施することが可能となり、また観測角度とは無関係に金属シートの表面虹色化を観測することが可能となる。
図3図1の場合に使用される方法を改善した、本発明の方法の好ましい変形例の実施の結果により得られる金属シートの表面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
したがって、本発明の目的は、線形または短周期のものであれば容易に検出できるヒトの目では容易には検出できない欠陥の処理を実施することである。この場合に、金属シート1の表面を最適に処理するためには、所要のウェーブレットを実現するために必要かつ十分なエネルギー量を注入するために、所与の光学場の高速軸に対応する1つの同一ライン上にN個の連続的なレーザパスが必要となると考えられる場合、このN個の重畳ラインの低速軸からのランダムオフセットは、レーザパスごとに同等である。
【0060】
図1は、金属シート1に対して実施された前記構成を概略的に示す。相互の延長上に位置し、金属シート1の表面上に未処理ゾーンが存在するのを防ぐために若干重畳された、並置されたスキャナ13の2つの場に対応するスキャナ13による一連の2つのパス(スキャンライン)に関して、2つのスキャナの一方によりそれぞれ実現されたライン群3、4の各光学場の接合箇所2同士が、2つのライン5、6間において、または金属シート1およびレーザスキャナ13の相対移動方向である低速軸7に沿って連続的に生成された2つのN個重畳ライン群間において、線形的にではなくランダムにオフセットされることが理解できる。換言すれば、群3、4にそれぞれ帰属する2つの対向ラインのそれぞれの接合部2は、直線ラインまたは短周期パターンを共に形成せず、ランダム折れ線ラインを共に形成する。このランダム折れ線ラインは、接合部2のオフセットが周期的であり短周期である直線ラインまたは折れ線ラインよりも容易に認識することができない。
【0061】
同一の光学場内で形成された、およびしたがってレーザスキャナ13の移動方向7(換言すれば低速軸)にオフセットされるかまたはそれが低速軸に沿って可動であるシートでありスキャナが固定される場合には金属シート1の移動方向にオフセットされた、一連の2つのライン5、6間において、この問題は、低速軸7に沿って連続する2つの群3、4のライン同士の間の重畳が明らかに好適でない限りは同一強度においては一般的に生じない点に留意されたい。
【0062】
実際のところ、考慮されるべきは、低速軸を規定する矢印7により示されるような金属シート1およびスキャナ13の比較的低速の相対移動である。
【0063】
指摘したように、各群3、4のそれぞれ異なるライン5、6は、パルスの直径と実質的に等しい、すなわち一般的には約30~40μmである幅を有する。低速軸7に沿った同一群3、4の一連の2つのライン5、6間において金属シートの表面上に未処理ゾーンが存在しないことを確保するために、低速軸7に沿った一連の2つのライン5、6が重畳するようにスキャナおよび/または金属シート移動デバイスのガルボを調節することが可能である。
【0064】
換言すれば、同一群3、4のライン5、6は、各スキャナ13のパルスと金属シート1との相対位置をオフセットした後に形成され、このオフセットは、パルスの直径よりも若干小さい。ライン5、6の重畳領域内における金属シート1の表面の二重処理が実際に行われ得るが、低速軸7に沿ったライン5、6のオフセットが、良好な精度で、高速軸に沿って並置された光学場の重畳よりもはるかに良好な精度で制御され得るため、重畳領域が存在する場合のこれらの領域の幅は、二重処理が、金属シート1の表面の他の部分において得られた効果に対して虹色効果の乱れとして視覚的に解釈されることがないように、いずれの場合においても十分な細さ(数μm)となる。また、この選択は、低速軸7に沿った一連の2つのライン5、6間に重畳部を与えるためではなく、数μmオーダのはるかに小さいオフセットを目標とするために意図的に行うことができる。この数μmオーダのはるかに小さいオフセットは、いずれにせよ低速軸7に対して垂直な方向において裸眼による視認が可能となる未処理ラインが存在することがないように十分に小さいものである。
【0065】
図1では、相互の延長上に位置し接合部2にて接する各ライン群3、4は、例えばN=3などのN個の重畳ラインの重畳部からそれ自体が構成される点を理解されたい。所与の光学場に対する重畳ラインの個数は、表面虹色効果に寄与する所望のウェーブレット構成を実現するために金属シート1の表面に対して伝達されることとなるエネルギー量により決定される。この量が高いほど、各レーザパスにより送達されるある同一エネルギーに対するラインの個数は多くなる。
【0066】
可能な限りにおいて、この構成はLSFL構造を有し、既述のようにこのタイプの構造は、やはり視認角度に左右される条件下においてこの虹色効果をより高く実現し得る。したがって、所与のラインに沿って送達されるエネルギーは、ウェーブレットが十分にはマーキングされなくなる手前の下限と、バンプが過度に存在する可能性が急激に高まる手前の上限との間に含まれなければならない。これらの限界値は、複数の要因に大きく左右されることは明らかであり、具体的には金属シート1の正確な材料、金属シート1の表面条件、パルスにより所与のゾーン上の各レーザパスに送達されるエネルギー等々に左右される。定型的な実験により、利用可能な装置と処理対象の材料とに応じたこれらの限界値を規定することが当業者には可能であろう。
【0067】
この第1のアプローチは、使用される材料および/または目標とされる効果に応じて2つの連続する場の重畳の視認性を大幅に低減させることが可能である。なぜならば、場同士の重畳部(接合部2)は、低速軸7に対応する直線ライン状には構成されず、全体的な配向が低速軸7に実質的に対応するにすぎず重畳部同士のオフセットを辿るランダム折れ線ライン状に構成されるからである。しかし、この第1のアプローチは、十分に均質な表面を実現するには不十分なものとなる。この場合に、同一のアプローチを利用することが可能であるが、それぞれ異なるレーザパス間のオフセットを変更することによる利用が可能である。これにより、先述の場合と比較して重畳部の位置決めパターンのランダム特性をさらに高めることが可能となる。換言すれば、一連の重畳部同士をつなぎ前記パターンを形成する折れ線ラインが、さらにより目立ちにくい非周期的またはランダムなタイプのものとなる。しかし、並置する処理場が各パスに最初のものと同一のオフセットを有することが確実となるように注意しなければならない。なぜならば、理想的には表面の各箇所が同一分布、同一のパルス数、および同一のパス数による同一のエネルギー量を受領すべきであり、その場合と同様に、均質外観処理が実現されるためにはレーザパスの局所的累積を回避しなければならないからである。
【0068】
したがって、場エッジに関してランダムな重畳パターンを使用することにより、不均質な分布箇所がもたらされ、これらの分布箇所は、裸眼に対して過度に目立つような直線ラインまたは短周期折れ線ラインを形成しない。これらの場エッジにより生み出されるパターンが、所与のラインを形成する高速軸に沿ったすべてのレーザパスについて同一である場合には、これらの重畳箇所は、高い不均質性を有する局所的箇所となる。なぜならば、ラインの不連続性が各パス上にマーキングされるからである。
【0069】
示唆するように、場エッジ接合部2のパターンのある特定の周期性は、低速軸7に沿って十分な長さにわたり、すなわち低速軸7に沿った一連の2つのライン5、6上の接合部2同士の間の最大オフセット値の10倍に少なくとも等しい長さにわたり実現される場合には、許容可能なものとなる。
【0070】
高速軸に沿って配向されたラインの形態で処理を実施することにより、超短パルス持続時間のレーザの高周期周波数を利用して処理生産性を高めることが可能となる。したがって、高速軸に沿ったスキャナによるラインの単一のスキャンでは、2つの隣接する場の2つのパルス間の距離がNで除算されるパルス直径に等しい場合には、ラインはN回にわたり照射されることが可能である。したがって、これにより、小さな出力変動によって表面均質性に対して引き起こされ得る効果を打ち消すことが可能となる。例えば、金属シート1の表面上の1つの同一箇所をN回にわたる連続照射を実現するために、レーザ光線9のN個のパスは必ずしも必要ではなく、レーザ光線9の単一のパスが十分である場合がある。
【0071】
しかし、この作動モードは、パルス直径と均等の距離(数十マイクロメートル)にわたりライン端部上に不均質ゾーンを形成してしまうという欠点を有する。
【0072】
示唆するように、超短パルスのレーザ8を用いた処理により実現される虹色効果は、金属シート1の表面上における、表面反射光上の光網と同様の挙動を有する周期的構造の自然形成に関係する。上記で論じたように、処理済み表面上に周期的に分布するこのウェーブレット構造の形成メカニズムは、科学界によってまだ解明されていない。
【0073】
しかし、ウェーブレット配向は、表面を照射するレーザ光線の偏光に本質的に相関性を有することが判明している(例えば文献「Control Parameters In Pattern Formation Upon Femtosecond Laser Ablation」Olga Varlamovaら、Applied Surface Science 253 (2007)、7932~7936頁を参照)。例えばステンレス鋼においては、HSFLの配向は、入射光線の偏光に対して平行であるが、より高いエネルギー量がシート表面に送達された場合にその後に形成されるLSFLは、入射光線の偏光に対して垂直に配向される。他の材料においては、逆の効果が観測されるが、これはこれらの材料に対する本発明の適用性に疑問を生じさせるものではない。
【0074】
したがって、ライン状にレーザ処理を行う場合に、表面が前記表面の所与のライン上のそれぞれ別個のパス全体にわたりレーザ光線9の偏光を変更せずに処理された場合には、結果的にその表面には、同一方向にいずれも配向されたライン/ウェーブレットから構成される構造が処理完了時に得られる。これはすなわち、表面の「光網」効果がさらに配向されることを意味する。
【0075】
虹色効果は、ウェーブレットの配向に対して横方向に観測を行った場合に最大限に現れ、観測配向角度が表面の構造と整列されるにつれおよび整列された場合には低下する。したがって、ウェーブレットの配列方向に表面を観測することにより、色は出現しない。これは、所望の視認条件下で虹色効果を有する製品を実現するために処理開始時にウェーブレットの配向を適切に選択する必要が生じるため、最終製品の欠点となり得る。さらに、最終製品は、所与の光源に対する1つの主な視認方向に沿ってのみ完全な色彩で見える。
【0076】
本発明の最適な変形例である図2および図3の対象により、この欠点が回避され得る。金属シート1の全幅にわたり(低速軸7に対して垂直な方向)1つの同一のラインを共に形成する一連の2つの場が、このライン上に同一の偏光を有する場合には、これらの2つの場同士の接合ゾーンの二重処理による視覚的効果は、これら2つの場が偏光角度の相違により異なる偏光を有する場合よりもはるかにマーキングが低下する傾向を有し、この偏光角度の相違は、好ましくは20~90°の間となる。
【0077】
また、本発明の好ましい変形例では、パーツとレーザスキャナデバイスとの相対移動方向7における一連の2つのライン間において偏光が十分に明確な相違を有することにより、虹色効果の観測指向性が解消される。すなわち、既述の現象の組合せにより、隣接するライン間においてこの偏光が交互しない場合に比べて、処理済み金属シート1の虹色効果があらゆる視認方向においてはるかに均一に出現することになる。
【0078】
処理は、「ライン状に」実施され、パルスにより処理されないゾーンが確実に残らないようにするために、高速スキャン方向のパルスの直径よりも若干小さな距離が、パルス中心同士の間を離間させる。本発明の好ましい変形例によるこの解決策は、レーザ光線9の光学経路上に位置決めされた偏波器または任意の他のタイプの偏光光学デバイスの作用により、ウェーブレット配向がラインごとに変更されるようにラインを交互させることである。
【0079】
したがって、処理場は、各ラインの間で入射光線の偏光の変更を可能にする自動システムを用いて実現されるか、または処理場は少なくとも2および好ましくは少なくとも3に等しいM回数で実現されるかのいずれかである。したがってMは、ウェーブレットを形成するレーザ光線パルスの周期的に連続する偏光によりこれらのウェーブレットに対して与えられる種々の配向の個数と一致する。
【0080】
図2は、既に述べた好ましいバージョンにおいて所与の場に関してステンレス鋼金属シート1の部分を処理することを含む、本発明の方法の実施を可能にするユニットデバイスの一部の典型的な構造を概略的に示す。自明ながら、このデバイスは、シート1の支持部15とレーザ光線9との相対移動の同期と、レーザ光線パラメータおよびその集束の調節とを必要に応じて可能にする自動手段により制御される。これらの自動手段のプログラミングは、当業者には理解可能な範囲内のものである。
【0081】
最初に、図2のユニットデバイスは、金属表面上に虹色効果を実現するために従来より知られているタイプのレーザ源8を備える。したがって、典型的には、源8は、短パルス持続時間(1ナノ秒未満)のパルスレーザ光線9を発生させ、各パルスの直径は、典型的には30~40μmのオーダである。このパルスによりステンレス鋼の表面上に注入されるエネルギーは、金属シート1の表面上に好ましくはLSFLタイプであるLIPPSウェーブレットを生じさせるために、およびバンプ形成を防止しさらにはスパイク形成を防止するために、経験的に決定されるべきものである。レーザ光線9の周波数および出力は、本目的に関して当業者には既知の基準にしたがって、ならびにデバイスの他の要素および処理対象の材料の正確な特徴を考慮して相応に選択されなければならない。源8により生成されるレーザ光線9は、光線9を形成する光学系10を通過する。この光学系10は、光線9の形状およびサイズの調節を可能にする従来的な構成要素に加えて、オペレータまたはこのデバイスを管理するオートマティズムにより選択された偏光を光線9に対して与えることを可能にする偏光光学素子12を、本発明の好ましい変形例にしたがって任意に備える。
【0082】
次に、レーザ光線9は、スキャンデバイス(例えばスキャナ)13を通過する。このスキャンデバイス13は、既知のように処理場中の直線経路(高速軸)に沿って金属シート1の表面を光線9によりスキャニングさせ得る。スキャナ13の出口には、やはり従来と同様に、金属シート1の方向へとレーザ光線9を集束させるための集束レンズなどの集束系14が存在する。
【0083】
図示する例では、金属シート1は可動支持部15により担持され、これにより金属シート1は、レーザ光線9を発生、偏光、およびスキャニングするデバイスに対して方向7(低速軸)中の面に沿って、または任意には三次元空間内において移動することが可能となり、それにより、このデバイスは図示するデバイスの処理場の新規ラインに沿って金属シート1の表面を処理することが可能となる。
【0084】
好ましくは、図3に示される成果をもたらす本発明の一変形例によれば、前記新規ラインのこの処理の前に、レーザ光線9の光学偏光デバイス12の調節は、前回のラインを処理する際の前回の偏光とは異なる偏光をレーザ光線9に対して与えるように変更されている。少なくとも2つの異なる偏光角度および好ましくは少なくとも3つの異なる偏光角度が、光学偏光デバイス10を用いて実現することが可能であり、好ましくは交互されるが、各ラインの変更にて必ずしも周期的な様式で交互されるわけではない。偏光パターンの周期性は必須ではなく、既述のように、低速軸7に沿った2つの隣接するライン16、17、18、16’、17’、18’の偏光角度がそれぞれ異なれば、好ましくは少なくとも20°および90°以下だけ異なれば十分である。しかし、例えば図示するように3つのライン16、17、18、16’、17’、18’ごとに反復される偏光角度を伴うなどのパターンの周期性は、偏光変化の周期的プログラミングがランダムプログラミングよりも単純である限りにおいてはより好ましく、特に2つの異なる場に帰属し、高速軸に沿って相互の延長上に位置し、接合部2にて接する2つのライン16、16’または17、17’または18、18’が、同一のウェーブレット配向を有さなければならないことによってより好ましい。
【0085】
所与の光学場内における一連のランダム偏光は、好ましくは前述の20°~90°の最小角度差に留意することにはなるが、許容可能なものとなる。
【0086】
本発明では、金属シート1の処理デバイスのアセンブリは、直前に説明したような複数のユニットデバイスを備え、これらのユニットデバイスは、金属シート1に対面して位置決めされ、2つの並置されたユニットデバイスのそれぞれの処理場、すなわちそれぞれのスキャナ13の集束系14の光学場同士が若干重畳するように並置される。この重畳は、典型的にはパルスのサイズの約2倍であり、位置不確実性は、レーザ8のパルス供給期間と、高速軸に沿ったレーザ光線9のスキャニング速度とに相関する。この重畳が、動作終了時に金属シート1上に未処理ゾーンが確実に存在しないようにするために十分であることが、実験により確認されなければならない。さらに、処理が金属シート1の幅を有するライン全体にわたり均質になるように、および低速軸7に沿った2つの隣接するライン16、17、18、16’、17’、18’間におけるレーザ光線9の偏光角度の交互が金属シート1の全幅にわたり同一になるように、これらの場のそれぞれにより生成されるライン16、16’または17、17’または18、18’は、2つの隣接する場上において相互の延長上に位置しなければならず、ユニットデバイスの調節は、2つの連続的な場において、特にそれぞれのレーザ光線9の時間tにおける形状、サイズ、出力、および偏光角度に関して同等でなければならない。
【0087】
これらのユニットデバイスを制御する手段は、すべてのユニットデバイスが相互に完全に同期して動作するようにすべてのユニットデバイスに共通する最も典型的な手段である。好ましくは、これらの手段は、この場合も金属シート1とユニットデバイスのレーザ光線9との相対移動の最善な同期を目的として、金属シート1の支持部15の移動を制御する。
【0088】
自明ながら、可動支持部15は、固定支持部に置き換えることが可能であり、金属シート1とユニット処理デバイスのレーザ光線9との相対移動は、可動支持部上にこれら金属シート1およびユニット処理デバイスを配置することにより確実にすることが可能である。また、これらの両変更を組み合わせることも可能であり、その場合には本発明のデバイスは、金属シート1の可動支持部15とユニット処理デバイス用の別の可動支持部との両方を備え得、ユーザの所望に応じて制御デバイスによってこれら2つのいずれか一方の可動支持部が作動されるか、両方が同時に作動される。処理デバイスが1つのみの場合には、この処理デバイスは、金属シート1の部分を処理すると高速軸に沿って移動される。この場合に、デバイスが金属シート1の部分を処理した時に作製される接合部2のパターンは、メモリに保存され、これと同一のパターンが、高速軸に沿ってデバイスが移動した後に処理された場において形成される。
【0089】
また、金属シート1とユニットデバイスのレーザ光線9との低速軸7に沿った相対移動は、光学手段を用いて実現されることが可能であり、この光学手段は、ユニット処理デバイスに組み込まれ、これらのユニットデバイスのレーザ光線9が移動するための高速軸の箇所に対して作用する。これらの光学手段は、金属シート1の可動支持部15および/またはユニット処理デバイスのレーザ8の可動支持部を移動するための機械手段の代替となる、またはその機械手段に追加される。
【0090】
単なる光学手段は、小サイズのパーツを処理するのには十分となり得るが、十分な精度で比較的大きなサイズのパーツを処理するには不十分になるというリスクをあえておかすことになり得る。しかし、所与の位置に機械手段を配置し、相対移動の精度が十分なものになるように十分な短距離「d」にわたり光学手段を用いて低速軸7に沿ったレーザ光線9の相対移動を実現し、次いで「d」と等しい距離にわたり機械手段を移動させることにより光学手段を使用した金属シート1の処理を継続してレーザ光線9と金属シート1との低速軸に沿ったさらなる相対移動を実現することによって、光学手段と機械手段とを組み合わせることが可能である。
【0091】
したがって、本発明の好ましい変形例では、数字Mは、ウェーブレットに対して与えることが所望される個々の配向数に相当し、これにより従来の処理よりもM倍だけ広い間隔が確保される。各場の実装間の従来的な間隔だけライン同士の間をオフセットすることにより。図3は、M=3の場合の前記クリエーションの外観の一例を示す。
【0092】
金属シート1は、本発明の2つのデバイスにより形成された周期的な一連のライン16、17、18、16’、17’、18’をその表面上に有し、これらのラインにより、2つの隣接する光学場19、20における3種の前記ラインのこの周期的パターンの形成が可能となった。所与の場のこれらのライン16、17、18は、隣接する光学場内に形成された同様のライン16’、17’、18’の延長上に位置する。
【0093】
パターンのライン16、17、18、16’、17’、18’は、偏光デバイス12がラインの形成時にレーザ光線9に対して適用した個々の偏光の効果によって相互に異なる。
【0094】
例示の非限定的な例において金属シート1の表面の拡大した一部を示す図3の部分から分かるように、パターンの第1のライン16、16’の生成時にレーザ光線9に対して与えられる偏光は、レーザ処理デバイスに対する金属シート1の相対移動方向7(低速軸)に対して垂直な方向へとウェーブレットを配向させる。次いでパターンの第2のライン17、17’を生成するために、レーザ光線9の偏光は、第1のライン16、16’のウェーブレットの配向から45°の位置にウェーブレットの配向を実現するように変更されている。最後に、このパターンの第3のライン18、18’を生成するために、レーザ光線9の偏光は、第2のライン17、17’のウェーブレットの配向から45°の位置に、したがって第1のライン16、16’のウェーブレットの配向から90°の位置にウェーブレットの配向を実現するように変更されており、したがって第3のライン18、18’のウェーブレットは、レーザ処理デバイスに対する金属シート1の相対移動方向7に対して平行に配向される。
【0095】
したがって、相互の延長上に位置する2つのライン16、16’、17、17’、18、18’の接合ゾーンには、先述の本発明の基本変形例におけるものと同様に、表面の他の部分に注入されるエネルギーよりも高いエネルギーが、金属シート1の表面に注入される。これは、過剰処理されており連続的な場の接合部に位置するゾーン2が存在し、場の重畳領域内におけるその接合部の正確な位置は、本発明によればランダムとなる点を特徴とする。しかし、これらの接合ゾーン2において、接合される各光学場のライン16、17、18、16’、17’、18’は、レーザ光線9の同じ偏光で生成されたものであるため、これにより金属シートの表面の視覚的虹色効果は、さらにますます大幅に減衰され、これは、レーザ光線9の偏光が制御されなかった場合に起こる。各光学場間のウェーブレットの配向に連続性がないことにより、所与のラインにおける場の接合ゾーンの可視性は高まる傾向があり、これにより表面上に不均質領域が生み出す。同一の偏光により作成された2つの隣接する場のライン16、17、18、16’、17’、18’が、相互に適切な延長上に位置することを確保することにのみ注意を払う必要があるが、このように隣接する場のライン16、17、18、16’、17’、18’が同一線上に位置するように注意することは、本発明の方法の基本バージョンを実施するためにも必要であった(図1を参照)。また、この目的で使用される装置は、本発明のこの変形例に対して使用することも可能である。場の接合ライン16、17、18、16’、17’、18’について同一の数値で各場についてデバイスのレーザ光線9の偏光の変更の実施を確保することが必要であるにすぎない。
【0096】
例えば90°だけオフセットされた異なる偏光のM=2の配向数を使用することが、大半の視認方向に沿った視覚的虹色効果を実現するためには既に十分なものとなる。しかし、虹色効果の強度は、45°の角度で見た場合にはさらに大幅に変わり、虹色効果の指向性欠如の問題が十分に満足できる状態では依然として解消されないと考えられる。これは、好ましくは一連の2つのライン16、17、18、16’、17’、18’の間の角度が20°超だけ異なる場合には、Mが2を上回れば視認不能となる。
【0097】
したがって、0~90°の間に分布する、および好ましくは低速軸7に沿って一連の2つのライン16、17、18、16’、17’、18’間において少なくとも20°の偏光差を有する、少なくとも3つの異なる偏光角度を用いて処理を実施することにより、表面の虹色効果がすべての方向において同一強度で視認できるというということが判明している。3を上回る配向数Mを使用することも可能であるが、この場合には、所望の虹色効果の指向性を回避するために、2つの隣接するラインの偏光角度が相互に十分に異なることが確保されるように注意を払わなければならない。
【0098】
しかし、種々の配向に表面構造が分布することにより、ある表面が単一の偏光方向で処理され最適角度(構造に対して横方向の角度)で視認された場合に比べて、虹色効果の合計強度の低下がもたらされることが明らかである。したがって、観測者が近くする視覚的虹色効果の強度とこの虹色効果の無指向性特性との間にはトレードオフの関係が余儀なくされる。しかし、3方向の偏光(したがって図3に示すようにこれらの方向の3つのラインの周期性)は、少なくともほとんどの場合において前記の良好なトレードオフに元々相当するものである。
【0099】
最後に、可能な限り短い距離にわたり可能な限りにおいて最も均質性の高い効果を実現するためには、好ましくは周期的に配向を交互させることが推奨される。M個の異なる配向の場合には、パルスの直径と同等のまたは好ましくは(金属シートの全表面の処理を確保するために)この直径よりも若干小さい幅を有する各配向の1つのみのラインを周期的に交互させることが好ましい。
【0100】
集束系14と金属シート1との間の距離を計測する手段を処理デバイス中に備えることにより、および集束系14の制御手段にこれらの手段を結合することにより、完全な平面性を有さない金属シート1を処理することが可能であり、これにより、レーザ光線9のパルス直径およびフルエンスが、集束系14と金属シート1との間の有効距離とは無関係に実質的に同一となることがこの制御手段によって保証され得る。一変形例として、集束系14と金属シート1との間の距離を計測するための前記手段は、本発明のデバイスと金属シート1との相対移動を確保する手段によりサーボ制御され、それにより集束系14と金属シート1の表面との間の距離が、金属シート1の処理中にわたって一定に維持され得るようにすることが可能である。
【0101】
また、レーザおよび処理対象パーツを相対移動させるための手段を、および/またはレーザエミッタと表面との間の距離差が管理されるべきである場合には集束手段の制御部を相応に適合化することにより、平面金属シート以外の材料に対する(例えば成形シート、バー、チューブ、3次元表面を概して備えるパーツに対してなど)本方法の適用が予期され得る。実質的に円筒状の表面を有するパーツ(例えば円形断面を有するバー、チューブなど)の場合には、1つの進め方は、固定支持部上にレーザデバイスを配置し、パーツの表面がレーザの光学場内を移動するようにパーツを回転配置させ得る支持部をパーツに対して用意することである。
【0102】
最後に、ステンレス鋼は、本発明を優先的に適用し得る材料だが、レーザ処理により表面上に虹色効果を実現することのできる他の金属材料および非金属材料もまた、本発明の考慮対象である。
【符号の説明】
【0103】
1 金属シート、パーツ
2 光学場の接合箇所、接合部、場エッジ接合部、接合ゾーン
3 ライン群
4 ライン群
5 ライン
6 ライン
7 相対移動方向、低速軸
8 レーザ、レーザ源、源
9 レーザ光線、光線
10 光学系、光学偏光デバイス、光学偏光系
12 偏光光学素子、光学偏光デバイス、
13 スキャナ、レーザスキャナ、スキャンデバイス
14 集束系
15 支持部、可動支持部
16 第1のライン、接合ライン
16’ 第1のライン、接合ライン
17 第2のライン、接合ライン
17’ 第2のライン、接合ライン
18 第3のライン、接合ライン
18’ 第3のライン、接合ライン
図1
図2
図3