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特許7366154膨張キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】膨張キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/182 20170101AFI20231013BHJP
【FI】
C01B32/182
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021568286
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 IB2020054459
(87)【国際公開番号】W WO2020230010
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/054058
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブー,ティ・タン
(72)【発明者】
【氏名】ノリエガ・ペレス,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】スアレス・サンチェス,ロベルト
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/178845(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0339906(US,A1)
【文献】国際公開第2018/218339(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105570(WO,A1)
【文献】JIANG et al.,Preparation of high-quality graphene using triggered microwave reduction under an air atmosphere,Journal of Materials Chemistry C,2018年,Vol.6,p.1829-1835
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/182
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法であって、
A.キッシュグラファイトを提供するステップA)と、
C.キッシュグラファイトを室温で過硫酸塩及び酸によりインターカレーションして、インターカレートされたキッシュグラファイトを得るステップであって、2~30分間続くステップC)と、
D.インターカレートされたキッシュグラファイトを室温で膨張させて、膨張キッシュグラファイトを得るステップであって、2~60分間続くステップD)と、
E.酸及び酸化剤による膨張キッシュグラファイトの酸化ステップにより、酸化グラフェンを得るステップであって、5~15分間続くステップE)と、
F.酸化グラフェンを還元型酸化グラフェンへと還元するステップF)と、
を含む、方法。
【請求項2】
キッシュグラファイトを前処理するステップB)を、ステップA)の後且つステップC)の前に更に含む、請求項1に記載の方法であって、キッシュグラファイトの前処理が、以下の連続するサブステップである
i.ふるい分けステップであって、キッシュグラファイトが、次のようにサイズによって
a)50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイト、
b)50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイト、に分類され、
50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去される、ふるい分けステップと、
ii.50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトの画分b)による浮選ステップと、
iii.重量比(酸量)/(キッシュグラファイト量)が0.25~1.0となるように酸が添加される酸浸出ステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップC)において、キッシュグラファイトに対する過硫酸塩の重量比が1~8である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
ステップC)において、キッシュグラファイトに対する酸の重量比が2~8である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップC)において、過硫酸塩が、過硫酸ナトリウム(Na)、過硫酸アンモニウム((NH)及び過硫酸カリウム(K)又はそれらの混合物から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップC)において、酸が、HSO、HCl、HNO、HPO、CCl(ジクロロ酢酸)、RSOOH(Rはアルキル基)又はそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップD)において、膨張が、キッシュグラファイト、過硫酸塩及び酸を開放容器内に室温で放置することによって自然に行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップE)が、以下の連続するサブステップである
i.膨張キッシュグラファイトと、酸及び酸化剤とを混合するステップと、
ii.化学的要素を添加して、酸化反応を停止させるステップと、
iii.ステップE.ii)で得られた混合物から酸化グラファイトを分離するステップと、
iv.酸化グラファイトを酸化グラフェンへと剥離するステップと、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップE.i)において、塩が、NaNO、NHNO、KNO、Ni(NO、Cu(NO、Zn(NO、Al(NO又はそれらの混合物から選択される硝酸塩である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップE.i)において、酸が、HSO、HCl、HNO、HPO、CCl(ジクロロ酢酸)、RSOOH(Rはアルキル基)又はそれらの混合物から選択される、請求項8又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップE.i)において、酸化剤が、過マンガン酸カリウム、H、O、H、HSO、KNO、NaClO又はそれらの混合物から選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップE.ii)において、酸化反応を停止させるために使用される化学的要素が、酸、非脱イオン水、脱イオン水、H又はそれらの混合物から選択される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
反応を停止させるために少なくとも2つの化学的要素が選択される場合、それらが連続的に又は同時に使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップE.ii)において、ステップE.i)で得られた混合物が、酸化反応を停止させるために使用される化学的要素に徐々に注入される、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップE.iii)において、酸化グラファイトが、遠心分離、デカンテーション、蒸留又は濾過によって分離される、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ステップE.iv)において、剥離が、超音波、機械攪拌器、ふるい振とう器又は熱剥離を使用することによって行われる、請求項8~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ステップF)が、以下のサブステップである
i.還元剤を使用した、10~25重量%の含酸素官能基を有する1層又は数層のグラフェンを含む還元型酸化グラフェン(rGO)へのGOの還元ステップ
を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップF.i)において、還元剤が、アスコルビン酸、尿素、ヒドラジン水和物、NaOH又はKOH、没食子酸、タンニン酸、ドーパミン又は茶ポリフェノール、メチルアルコール、エチルアルコール又はイソプロピルアルコール、グリシン、クエン酸ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムから選択される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法に関する。特に、還元型酸化グラフェンは、鋼鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、銅合金、チタン、コバルト、金属複合材料、ニッケル産業を含む金属産業において、例えば、コーティング又は冷却試薬としての用途がある。
【背景技術】
【0002】
キッシュグラファイトは、製鋼工程、特に高炉工程又は製鉄工程中に生成される副産物である。実際、キッシュグラファイトは通常、その冷却中に溶鉄の自由表面上に生成される。これは、1300~1500℃の溶鉄に由来し、混銑車で運搬される場合は0.40℃/分~25℃/時の冷却速度で、又は取鍋輸送中はより速い冷却速度で冷却される。毎年大量のトン数のキッシュグラファイトが製鉄所で生産されている。
【0003】
キッシュグラファイトは、通常50重量%を超える大量の炭素を含むため、グラフェンベースの材料を製造するのに適している。通常、グラフェンベースの材料には、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン又はナノグラファイトが含まれる。
【0004】
酸化グラフェン(GO)を還元することにより、還元型酸化グラフェン(rGO)を製造することが知られている。還元型酸化グラフェンは、いくつかの含酸素官能基を含有する1層又は数層のグラフェンシートで構成される。疎水性である還元型酸化グラフェンには、高い熱伝導率及び高い電気伝導率などの興味深い特性があるため、多くの用途がある。
【0005】
例えば、還元型酸化グラフェンは、ヒドラジン、アスコルビン酸、尿素、NaOHなどの還元剤を使用した酸化グラフェンの還元などの化学的方法によって、又は不活性雰囲気中における高温での熱還元などの機械的方法によって製造することができる。しかしながら、低酸素含有量、すなわち10%未満のrGOを得ることは非常に困難である。実際、化学的又は機械的方法は、通常、10%を超える酸素基を有するrGOを提供する。エポキシ基などの一部の酸素基は、従来の方法で還元することが非常に困難である。さらに、得られたrGOは多くの欠陥を含有し、したがって非常に低い電気伝導率を示す。
【0006】
通常、還元型酸化グラフェンは、以下の
-硝酸ナトリウム(NaNO)、硫酸(HSO)及び過マンガン酸ナトリウム又は過マンガン酸カリウム(KMnO)によるキッシュグラファイトの酸化ステップと、
-還元型酸化グラフェンを得るための酸化グラフェンの還元ステップと
を含むハマー法に基づいて合成される。
【0007】
特許出願WO2018178845は、キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法であって、
A.キッシュグラファイトを提供することと、
B.前記キッシュグラファイトの前処理ステップであって、以下の連続するサブステップである
i.ふるい分けステップであって、キッシュグラファイトは、次のようにサイズによって
a)50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイト、
b)50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトに分類され、50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去される、ふるい分けステップ、
ii.50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトの画分b)による浮選ステップ、
iii.重量比(酸量)/(キッシュグラファイト量)が0.25~1.0となるように酸が添加される酸浸出ステップ、
iv.任意に、キッシュグラファイトを洗浄及び乾燥させるステップ
を含む、ステップと、
C.酸、硝酸ナトリウム及び酸化剤による酸化グラフェンを得るための、ステップB)の後に得られた前処理されたキッシュグラファイトの酸化ステップと、
D.酸化グラフェンを還元型酸化グラフェンへと還元することと、
を含む、方法について開示している。
【0008】
それにもかかわらず、酸化ステップが硝酸ナトリウム(NaNO)で行われると、有毒ガスが生成され、汚染方法につながる。さらに、使用すると酸化時間が非常に長くなる(約3時間)。
【0009】
特許出願PCT/IB2019/052804は、キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法であって、
A.キッシュグラファイトを提供することと、
B.前記キッシュグラファイトの前処理ステップであって、以下の連続するサブステップである
i.ふるい分けステップであって、キッシュグラファイトは、次のようにサイズによって
a)50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイト、
b)50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトに分類され、50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去される、ふるい分けステップ、
ii.50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトの画分b)による浮選ステップ、
iii.重量比(酸量)/(キッシュグラファイト量)が0.25~1.0となるように酸が添加される酸浸出ステップ、
iv.任意に、キッシュグラファイトを洗浄及び乾燥させるステップ
を含む、ステップと、
C.酸、硝酸アンモニウム(NHNO)及び酸化剤による酸化グラフェンを得るための、前処理されたキッシュグラファイトの酸化ステップと、
D.酸化グラフェンを還元型酸化グラフェンへと還元することと、
を含む、方法について開示している。
【0010】
しかしながら、NHNOを使用した方法は、NaNOを使用した方法よりも汚染が少ないが、さらに汚染の少ない方法を提供し、エネルギー消費を低減する必要がある。
【0011】
さらに、NHNOを使用した酸化時間、すなわち1時間30分は、NaNOを使用した方法の酸化時間、すなわち3時間と比較して短いが、酸化時間を短縮し、それによって還元型酸化グラフェンの合成の生産性を改善する必要が依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2018/178845号
【文献】国際公開第2019/220227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、可能な限り短い時間で良好な品質を有する還元型酸化グラフェンを得るための工業的方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、従来技術の方法と比較して、キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための汚染の少ない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これは、キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法を提供することによって達成され、この方法は、
A.キッシュグラファイトを提供することと、
B.任意に、キッシュグラファイトを前処理することと、
C.キッシュグラファイトを室温で過硫酸塩及び酸によりインターカレーションして、インターカレートされたキッシュグラファイトを得ることと、
D.インターカレートされたキッシュグラファイトを室温で膨張させて、膨張キッシュグラファイトを得ることと、
E.膨張キッシュグラファイトの酸化ステップにより、酸化グラフェンを得ることと、
F.酸化グラフェンを還元型酸化グラフェンへと還元することと、
を含む。
【0015】
本発明による方法はまた、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意の特徴を有してよい。
【0016】
-ステップB)において、キッシュグラファイトの前処理は、以下の連続するサブステップである
・ふるい分けステップであって、キッシュグラファイトは、次のようにサイズによって
・50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイト、
・50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイト、に分類され、
50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去される、ふるい分けステップと、
・50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトの画分b)による浮選ステップと、
・重量比(酸量)/(キッシュグラファイト量)が0.25~1.0となるように酸が添加される酸浸出ステップと、
・任意に、キッシュグラファイトを洗浄及び乾燥させるステップと、を含む。
【0017】
-ステップC)において、キッシュグラファイトに対する過硫酸塩の重量比は、1~8である。
【0018】
-ステップC)において、キッシュグラファイトに対する酸の重量比は、2~8である。
【0019】
-ステップC)において、過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム(Na)、過硫酸アンモニウム((NH)及び過硫酸カリウム(K)又はそれらの混合物から選択される。
【0020】
-ステップC)において、酸は、HSO、HCl、HNO、HPO、CCl(ジクロロ酢酸)、HSOOH(アルキルスルホン酸)又はそれらの混合物から選択される。
【0021】
-ステップD)において、膨張は、キッシュグラファイト、過硫酸塩及び酸を開放容器内に室温で放置することによって自然に行われる。
【0022】
-ステップE)は、以下の連続するサブステップである
・膨張キッシュグラファイトと、酸、酸化剤及び任意に塩とを混合するステップと、
・化学的要素を添加して、酸化反応を停止させるステップと、
・ステップE.ii)で得られた混合物から酸化グラファイトを分離するステップと、
・酸化グラファイトを酸化グラフェンへと剥離するステップと、を含む。
【0023】
-ステップE.i)において、塩は、NaNO、NHNO、KNO、Ni(NO、Cu(NO、Zn(NO、Al(NO又はそれらの混合物から選択される硝酸塩である。
【0024】
-ステップE.i)において、酸は、HSO、HCl、HNO、HPO、CCl(ジクロロ酢酸)、HSOOH(アルキルスルホン酸)又はそれらの混合物から選択される。
【0025】
-ステップE.i)において、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、H、O、H、HSO、KNO、NaClO又はそれらの混合物から選択される。
【0026】
-ステップE.ii)において、酸化反応を停止させるために使用される化学的要素は、酸、非脱イオン水、脱イオン水、H又はそれらの混合物から選択される。
【0027】
-反応を停止させるために少なくとも2つの化学的要素が選択される場合、それらは連続的に又は同時に使用される。
【0028】
-ステップE.ii)において、ステップE.i)で得られた混合物は、酸化反応を停止させるために使用される化学的要素に徐々に注入される。
【0029】
-ステップE.iii)において、酸化グラファイトは、遠心分離、デカンテーション、蒸留又は濾過によって分離される。
【0030】
-ステップE.iv)において、剥離は、超音波、機械攪拌器、ふるい振とう器又は熱剥離を使用することによって行われる。
【0031】
-ステップF)は、以下のサブステップである
・還元剤を使用した、10~25重量%の含酸素官能基を有する1層又は数層のグラフェンを含む還元型酸化グラフェン(rGO)へのGOの還元ステップと、
・任意に、触媒の存在下、空気雰囲気下でrGOをマイクロ波処理することによる、10重量%未満の含酸素官能基を有する1層又は数層のグラフェンを含むマイクロ波還元型酸化グラフェン(MW-rGO)へのrGOの還元ステップと、を含む。
【0032】
-ステップF.i)において、還元剤は、アスコルビン酸、尿素、ヒドラジン水和物、NaOH又はKOHなどのアルカリ性溶液、没食子酸、タンニン酸、ドーパミン又は茶ポリフェノールなどのフェノール、メチルアルコール、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールなどのアルコール、グリシン、クエン酸ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムから選択される。
【0033】
-ステップF.ii)において、触媒は、純粋なグラフェン、グラフェンナノプレートレット、グラファイト又はグラファイトナノプレートレットから選択される。
【0034】
以下の用語が定義される。
【0035】
-酸化グラフェンとは、ケトン基、カルボキシル基、エポキシ基及びヒドロキシル基を含む含酸素官能基を含む1層又は数層のグラフェンを意味し、
-還元型酸化グラフェンとは、還元された酸化グラフェンを意味する。還元型酸化グラフェンは、ケトン基、カルボキシル基、エポキシ基及びヒドロキシル基を含むいくつかの含酸素官能基を有する1層又は数層のグラフェンを含み、
-純粋なグラフェンとは、グラフェンが本来の状態、すなわち理想的であり、いかなる欠陥もないことを意味する。
【0036】
-室温とは、大気圧で0~45℃を意味する。
【0037】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明により明らかとなるであろう。
【0038】
本発明を説明するために、特に以下の図を参照して、非限定的な実施例の様々な実施形態及び試験について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明による1層の還元型酸化グラフェンの例を示す。
図2】本発明による数層の還元型酸化グラフェンの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、キッシュグラファイトから還元型酸化グラフェンを製造するための方法であって、
A.キッシュグラファイトを提供することと、
B.任意に、キッシュグラファイトを前処理することと、
C.キッシュグラファイトを室温で過硫酸塩及び酸によりインターカレーションして、インターカレートされたキッシュグラファイトを得ることと、
D.インターカレートされたキッシュグラファイトを室温で膨張させて、膨張キッシュグラファイトを得ることと、
E.膨張キッシュグラファイトの酸化ステップにより、酸化グラフェンを得ることと、
F.酸化グラフェンを還元型酸化グラフェンへと還元することと、
を含む、方法に関する。
【0041】
本発明の方法によれば、良好な品質を有する還元型酸化グラフェンを製造することができる。さらに、この方法は、特に室温でのインターカレーション、室温での膨張及び酸化グラフェンへの酸化を含み、工業規模で実施するのが容易であり、従来技術の方法よりも汚染が少ない。
【0042】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、膨張中、過硫酸塩は酸化剤のように作用してキッシュグラファイト層の縁部を酸化すると考えられる。過硫酸塩は重要な酸素供与体であるため、2つのキッシュグラファイト層の間のインターカレーションギャップがさらに改善され、酸がキッシュグラファイト層の間により容易に入ることができる。同時に、一定量の過硫酸塩は、キッシュグラファイト層間の酸によって引き込まれる可能性がある。層間に引き込まれた過硫酸塩は分解してOガスを放出し、キッシュグラファイト層間に瞬間的な圧力を生じ、室温でグラファイトを急激に膨張させると考えられる。したがって、エネルギー消費が低減され、膨張キッシュグラファイトが容易に得られる。
【0043】
さらに、本発明による膨張キッシュグラファイトを使用すると、従来技術の酸化グラフェンの製造方法と比較して酸化時間が大幅に短縮されると考えられる。実際、過硫酸塩及び酸を使用すると、2つのキッシュグラファイト層の間のギャップがより大きいために、膨張体積がより大きくなるため、キッシュグラファイト層を酸化することがより容易であると考えられる。したがって、酸化時間が大幅に短縮され、酸化グラフェンが容易に得られる。
【0044】
好ましくは、ステップA)において、キッシュグラファイトは、製鋼工程の残留物である。例えば、キッシュグラファイトは、高炉工場、製鉄所、製鋼所、混銑車及び取鍋輸送中に見られる。
【0045】
好ましくは、ステップB)において、キッシュグラファイトの前処理は、以下の連続するサブステップである
i.ふるい分けステップであって、キッシュグラファイトは、次のようにサイズによって
a)50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイト、
b)50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイト、に分類され、
50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去される、ふるい分けステップと、
ii.50μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトの画分b)による浮選ステップと、
iii.重量比(酸量)/(キッシュグラファイト量)が0.25~1.0となるように酸が添加される酸浸出ステップと、
iv.任意に、キッシュグラファイトを洗浄及び乾燥させるステップと、
を含む。
【0046】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本発明による方法でキッシュグラファイトを前処理すると、この前処理されたキッシュグラファイトは高純度を有するため、品質が向上した還元型酸化グラフェンの製造が可能になると思われる。実際、ステップB)の後に得られたキッシュグラファイトの純度は、少なくとも90%である。さらに、前処理ステップB)は、工業規模での実施が容易であり、従来の方法よりも環境に優しい。
【0047】
ステップB.i)において、ふるい分けステップは、ふるい機で行うことができる。
【0048】
ふるい分け後、50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)は除去される。実際、いかなる理論にも束縛されるものではないが、50μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトは、非常に少量の、例えば10%未満のグラファイトを含有すると考えられる。
【0049】
好ましくは、ステップB.ii)において、浮選ステップは、水溶液中で浮選剤を用いて行われる。例えば、浮選剤は、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、松根油、ポリグリコール、キシレノール、S-ベンジル-S’-n-ブチルトリチオカーボネート、S,S’-ジメチルトリチオカーボネート及びS-エチル-S’-メチルトリチオカーボネートの中から選択される発泡剤である。有利には、浮選ステップは、浮選装置を使用して行われる。
【0050】
好ましくは、ステップB.i)において、55μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去され、ステップB.ii)において、キッシュグラファイトの画分b)は、55μm以上のサイズを有する。より好ましくは、ステップB.i)において、60μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)が除去され、ステップB.ii)において、キッシュグラファイトの画分b)は、60μm以上のサイズを有する。
【0051】
好ましくは、ステップB.i)及びB.ii)において、キッシュグラファイトの画分b)は、300μm以下のサイズを有し、300μmを超えるサイズを有するキッシュグラファイトのいかなる画分も、ステップB.ii)の前に除去される。
【0052】
より好ましくは、ステップB.i)及びB.ii)において、キッシュグラファイトの画分b)は、275μm以下のサイズを有し、275μmを超えるサイズを有するキッシュグラファイトのいかなる画分も、ステップB.ii)の前に除去される。
【0053】
有利には、ステップB.i)及びB.ii)において、キッシュグラファイトの画分b)は、250μm以下のサイズを有し、250μmを超えるサイズを有するキッシュグラファイトのいかなる画分も、ステップB.ii)の前に除去される。
【0054】
ステップB.iii)において、(酸量)/(キッシュグラファイト量)の重量比は、0.25~1.0、有利には0.25~0.9、より好ましくは0.25~0.8である。例えば、(酸量)/(キッシュグラファイト量)の重量比は、0.4~1.0、0.4~0.9又は0.4~1である。実際、いかなる理論にも束縛されるものではないが、(酸量)/(キッシュグラファイト量)比が本発明の範囲を下回る場合、キッシュグラファイトが多くの不純物を含むリスクがあると思われる。さらに、(酸量)/(キッシュグラファイト量)比が本発明の範囲を超える場合、大量の化学廃棄物が発生するリスクがあると考えられる。
【0055】
好ましくは、ステップB.iii)において、酸は、以下の要素である塩酸、リン酸、硫酸、硝酸又はそれらの混合物から選択される。
【0056】
本発明による方法のステップB)の後に得られた前処理されたキッシュグラファイトは、50μm以上のサイズを有する。前処理されたキッシュグラファイトは高純度、すなわち少なくとも90%である。さらに、結晶化度は従来の方法と比較して改善され、より高い熱伝導率及び電気伝導率、ひいてはより高い品質が実現される。
【0057】
キッシュグラファイトが提供され、任意に前処理されたら、室温で過硫酸塩及び酸によりインターカレートして、インターカレートされたキッシュグラファイトを得る(ステップC)。
【0058】
好ましくは、ステップC)において、キッシュグラファイトに対する過硫酸塩の重量比は、1~8、より好ましくは1~6、有利には1~5である。実際、いかなる理論にも束縛されるものではないが、インターカレーションはさらに改善されると思われる。
【0059】
好ましくは、ステップC)において、キッシュグラファイトに対する酸の重量比は、2~8、より好ましくは4~8である。実際、キッシュグラファイトに対する酸の比が2未満である場合、キッシュグラファイトの一部のみが膨張するリスクがある。キッシュグラファイトに対する酸の比が8を超える場合、膨張が非常にゆっくりと起こり、体積膨張が減少するリスクがある。過剰の酸は、過硫酸塩がキッシュグラファイト層間に引き込まれるのを防ぐと考えられる。したがって、それは過硫酸塩の分解による酸素の放出、及びそれによるキッシュグラファイトの急激な膨張を防ぐ。
【0060】
好ましくは、ステップC)において、過硫酸塩は、ペルオキシジサルフェートアニオンS 2-を含有するものから選択され、より好ましくは、過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム(Na)、過硫酸アンモニウム((NH)及び過硫酸カリウム(K)又はそれらの混合物から選択される。
【0061】
好ましくは、ステップC)において、酸は強酸である。より好ましくは、酸は、HSO、HCl、HNO、HPO、CCl(ジクロロ酢酸)、HSOOH(アルキルスルホン酸)又はそれらの混合物から選択される。
【0062】
好ましくは、ステップC)において、キッシュグラファイトは最初に酸と混合され、次いで過硫酸塩が添加される。
【0063】
好ましくは、ステップC)は2~30分続く。
【0064】
キッシュグラファイトがインターカレートされると、それは膨張する(ステップD)。
【0065】
好ましくは、ステップD)において、膨張は、キッシュグラファイト、過硫酸塩及び酸を開放容器内に室温で放置することによって自然に行われる。例えば、これらの構成要素は、開放されたボウル、開放されたガラス器具、開放された実験用反応器又は開放されたパイロット反応器内にある。
【0066】
好ましくは、ステップD)は2~60分続く。
【0067】
キッシュグラファイトを膨張させると、酸化されて酸化グラフェンが得られる(ステップE)。
【0068】
好ましくは、ステップE)は、以下の連続するサブステップである
i.膨張キッシュグラファイト、酸、酸化剤及び任意に塩を混合するステップと、
ii.化学的要素を添加して、酸化反応を停止させるステップと、
iii.ステップE.ii)で得られた混合物から酸化グラファイトを分離するステップと、
iv.酸化グラファイトを酸化グラフェンへと剥離するステップと、
を含む。
【0069】
膨張キッシュグラファイトのおかげで、酸化時間は従来技術の酸化ステップと比較して大幅に短縮される。実際、酸化時間は、従来技術の酸化ステップの数時間の酸化時間と比較して、10分と短くすることができる。好ましくは、膨張キッシュグラファイトの、酸、酸化剤及び任意に塩による酸化は、5~15分続く。さらに、塩なしでの膨張キッシュグラファイトの酸化は、さらに短い酸化時間を可能にすると思われる。酸化ステップから塩を除去する能力は、汚染を大幅に制限する。したがって、好ましくは、膨張キッシュグラファイトは、塩なしで酸及び酸化剤と混合される。換言すれば、ステップE.i)の混合物は、好ましくはキッシュグラファイト、酸及び酸化剤からなる。
【0070】
任意に、ステップE.i)において、塩は、NaNO、NHNO、KNO、Ni(NO、Cu(NO、Zn(NO、Al(NO又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、キッシュグラファイトに対する塩の重量比は、0.2~2である。
【0071】
好ましくは、ステップE.i)において、酸は、HSO、HCl、HNO、HPO、CCl(ジクロロ酢酸)、HSOOH(アルキルスルホン酸)又はそれらの混合物から選択される。
【0072】
好ましくは、ステップE.i)において、酸化剤は、過マンガン酸カリウム(KMnO)、H、O、H、HSO、KNO、NaClO又はそれらの混合物から選択される。好ましくは、キッシュグラファイトに対する酸化剤の重量比は、2~10である。
【0073】
次に、有利には、ステップE.ii)において、酸化反応を停止させるために使用される化学的要素は、酸、非脱イオン水、脱イオン水、H又はそれらの混合物から選択される。
【0074】
好ましい実施形態では、反応を停止させるために少なくとも2つの化学的要素が使用される場合、それらは連続的に又は同時に使用される。好ましくは、脱イオン水を使用して反応を停止させ、次にHを使用して酸化剤の残りを除去する。別の好ましい実施形態では、塩酸を使用して反応を停止させ、次にHを使用して酸化剤の残りを除去する。別の好ましい実施形態では、この以下の反応によってHを使用して反応を停止させ、酸化剤の残りを除去する。
【0075】
2KMnO+H+3HSO=2MnSO+O+KSO+4HO。
【0076】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、反応を停止させる化学的要素が混合物に添加されると、この添加が過度に発熱を生じさせて爆発又は飛散を引き起こすリスクがあると思われる。したがって、好ましくは、反応を停止させるために使用される要素は、ステップE.i)で得られた混合物にゆっくりと添加される。より好ましくは、ステップE.i)で得られた混合物は、酸化反応を停止させるために使用される要素に徐々に注入される。例えば、ステップE.i)で得られた混合物は、反応を停止させるために脱イオン水に徐々に注入される。
【0077】
ステップE.iii)において、ステップE.ii)で得られた混合物から酸化グラファイトが分離される。好ましくは、酸化グラフェンは、遠心分離、デカンテーション又は濾過によって分離される。
【0078】
任意に、酸化グラファイトを洗浄する。例えば、酸化グラフェンは、脱イオン水、非脱イオン水、酸又はそれらの混合物の中から選択される要素で洗浄される。例えば、酸は、以下の要素である塩酸、リン酸、硫酸、硝酸(nitride acid)又はそれらの混合物の中から選択される。
【0079】
任意に、酸化グラファイトを、例えば空気で、又は真空状態での高温で乾燥させる。
【0080】
好ましくは、ステップE.iv)において、剥離は、超音波、機械攪拌器、ふるい振とう器又は熱剥離を使用することによって行われる。好ましくは、ステップE.iii)で得られた混合物は、1層又は数層の酸化グラフェンに剥離される。
【0081】
本発明による方法を適用することにより、酸化グラフェンは、少なくとも25重量%の含酸素官能基を含む。
【0082】
次に、ステップF)において、酸化グラフェンを還元型酸化グラフェンへと還元する。
【0083】
好ましくは、ステップF.i)において、還元剤は、アスコルビン酸、尿素、ヒドラジン水和物、NaOH又はKOHなどのアルカリ性溶液、没食子酸、タンニン酸、ドーパミン又は茶ポリフェノールなどのフェノール、メチルアルコール、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールなどのアルコール、グリシン、クエン酸ナトリウム又は水素化ホウ素ナトリウムから選択される。より好ましくは、アスコルビン酸はより環境に優しいため、還元剤はアスコルビン酸である。
【0084】
GOのrGOへの還元後、任意にrGOを洗浄する。例えば、rGOは水で洗浄される。rGOは、例えば、空気で、又は凍結乾燥によって乾燥させることができる。
【0085】
有利には、ステップF.i)において、還元は、50~120℃、より好ましくは90~100℃の温度で行われる。
【0086】
好ましくは、ステップF.i)において、還元は、24時間未満、より好ましくは15時間未満、有利には1~10時間の間に行われる。
【0087】
本発明による方法を適用することにより、10~25重量%の含酸素官能基を有する1層又は数層のグラフェンを含む還元型酸化グラフェン(rGO)が得られる。
【0088】
任意に、ステップF.ii)において、rGOは、マイクロ波還元型酸化グラフェン(MW-rGO)にさらに還元される。
【0089】
好ましくは、ステップF.ii)において、触媒は、純粋なグラフェン、グラフェンナノプレートレット、グラファイト又はグラファイトナノプレートレットから選択される。より好ましくは、触媒は純粋なグラフェンである。いかなる理論にも束縛されるものではないが、純粋なグラフェンは、純粋なグラフェンの性質、形態及び特性のために、マイクロ波の形態の電磁場をより良好に吸収することができると考えられる。実際、純粋なグラフェンは導電性であり、六角形のハニカム格子で互いに結合した炭素からなるグラファイトの単一層である。それは、sp結合した原子の平面構造における炭素の同素体であり、マイクロ波は引き付けられ、容易に吸収され得る。
【0090】
好ましくは、ステップF.ii)において、触媒に対するrGOの重量比は、次の通り
【0091】
【数1】
である。有利には、触媒に対するrGOの重量比は、次の通り
【0092】
【数2】
である。いかなる理論にも束縛されるものではないが、触媒に対するrGOの重量比が上記の通りである場合、rGOのMW-rGOへの還元はさらに改善されると考えられる。実際、この上記の比は、さらに少ない酸素基を有するMW-rGOをもたらす。
【0093】
好ましくは、ステップF.ii)において、マイクロ波周波数は、300MHz~100GHz、好ましくは1~5GHz、例えば、2.45GHzである。
【0094】
好ましくは、ステップF.ii)は、マイクロ波周波数加熱装置を用いて行われる。好ましくは、電子レンジである。
【0095】
有利には、マイクロ波は、100W~100KW、より好ましくは100~2000KWの電力を有する。
【0096】
好ましくは、ステップF.ii)において、マイクロ波処理は少なくとも2秒間行われる。実際、いかなる理論にも束縛されるものではないが、マイクロ波処理が少なくとも2秒間行われる場合、MW-rGOへの還元はさらに改善されると考えられる。
【0097】
任意に、10重量%未満、より好ましくは7重量%未満の含酸素官能基を有する1層又は数層のグラフェンを含むマイクロ波還元型酸化グラフェン(MW-rGO)が得られる。
【0098】
図1は、本発明による1層の還元型酸化グラフェンの例を示す。横方向のサイズは、X軸を通る層の最大の長さを意味し、厚さは、Z軸を通る層の高さを意味し、ナノプレートレットの幅は、Y軸を通して示されている。
【0099】
図2は、本発明による数層の還元型酸化グラフェンの例を示す。横方向のサイズは、X軸を通る層の最大の長さを意味し、厚さは、Z軸を通る層の高さを意味し、ナノプレートレットの幅は、Y軸を通して示されている。
【0100】
好ましくは、還元型酸化グラフェンは、金属基材の耐食性などのいくつかの特性を改善するために、金属基材上に堆積される。
【0101】
別の好ましい実施形態では、還元型酸化グラフェンは、冷却試薬として使用される。実際、還元型酸化グラフェンは、冷却流体に添加することができる。好ましくは、冷却流体は、水、エチレングリコール、エタノール、油、メタノール、シリコーン、プロピレングリコール、アルキル化芳香族化合物、液体Ga、液体In、液体Sn、ギ酸カリウム及びそれらの混合物の中から選択することができる。この実施形態では、冷却流体は、金属基材を冷却するために使用することができる。
【0102】
例えば、金属基材は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、銅、鉄、銅合金、チタン、コバルト、金属複合材料、ニッケルの中から選択される。
【0103】
ここで、情報提供のみを目的として実施された試験に基づいて、本発明をさらに説明する。これらの試験は限定的なものではない。
【実施例
【0104】
試験品1~4を、製鋼所からキッシュグラファイトを提供することによって準備した。次に、キッシュグラファイトをふるい分けして、以下のようにサイズ別に分類した。
【0105】
a)63μm未満のサイズを有するキッシュグラファイト
b)63μm以上のサイズを有するキッシュグラファイト
63μm未満のサイズを有するキッシュグラファイトの画分a)を除去した。
【0106】
63μm以上のサイズを有するキッシュグラファイトの画分b)による浮選ステップを行った。浮選ステップは、MIBCを発泡剤として用いてHumboldt Wedag浮選機で行った。以下の条件を適用した。セル容積(l):2、ロータ速度(rpm):2000、固形分濃度(%):5~10、発泡剤、種類:MIBC、発泡剤、添加(g/T):40、調整時間(秒):10、水条件:自然のpH、室温。
【0107】
次に、すべての試験品を、0.5の酸/キッシュグラファイトの重量比で水溶液中の塩酸で浸出させた。次に、試験品を脱イオン水で洗浄し、90℃の空気中で乾燥させた。キッシュグラファイトの純度は95%であった。
【0108】
その後、キッシュグラファイトを、異なる比率で過硫酸アンモニウム及び硫酸により25又は35℃で5分間インターカレートした。次に、混合物を開放容器内に5分間放置して、キッシュグラファイトを膨張させた。得られた物質を膨張キッシュグラファイトと呼ぶ。
【0109】
試験品1~4を、室温で硫酸及びKMnO並びに任意に硝酸アンモニウムと混合した。混合物は、1重量部の膨張キッシュグラファイト、3.5重量部のKMnO、100重量部の硫酸及び任意に0.5重量部の硝酸アンモニウムを含有していた。酸化後、混合物を徐々に脱イオン水に注入した。水溶液中のHをガスが発生しなくなるまで添加し、混合物を攪拌してHの残りを除去した。
【0110】
次に、すべての試験で、酸化グラファイトをデカンテーションによって混合物から分離した。次に、1層又は2層の酸化グラフェンを得るために、超音波を使用して剥離した。最後に、酸化グラフェンを遠心分離によって混合物から分離し、水で洗浄し、空気で乾燥させて、酸化グラフェン粉末を得た。
【0111】
L-アスコルビン酸を、試験1~4の酸化グラフェンと水中で混合した。反応混合物を90℃で攪拌して、酸化グラフェンシートを還元した。次に、試験品を洗浄及び乾燥させて、還元型酸化グラフェン粉末を得た。
【0112】
次に、試験2及び3では、rGOを大気雰囲気下にて電子レンジ(800W)に2秒間配置した。純粋なグラフェンである触媒を添加した。rGOをマイクロ波処理によってMW-rGOに還元した。
【0113】
酸化グラフェン及び還元型酸化グラフェンを、走査型電子顕微鏡法(SEM)、X線回折分光法(XRD)、透過型電子顕微鏡法(TEM)、LECO分析及びラマン分光法によって分析した。
【0114】
試験5及び6は、それぞれWO2018178845の試験1及びPCT/IB2019/052805の試験1に対応する。得られた結果を表1に示す。
【0115】
試験1~4の方法は、比較試験よりも環境に優しい方法である。さらに、試験1~4の方法による酸化時間は、試験5及び6で示された従来技術の方法と比較して大幅に短縮される。
【0116】
35℃で行われたインターカレーション及び膨張ステップによる試験3及び4は、周囲温度又は25℃(試験1及び2)が、高い割合の酸素基を含む酸化グラフェン及びそれに対応して高品質の還元型酸化グラフェンを得るのに十分であることを確認した。
【0117】
酸化時間が1時間の試験2及び4は、それぞれ10分(試験1)及び30分(試験3)より長い酸化時間が酸化グラフェンの品質をそれ以上改善しないことを確認した。換言すれば、極めて短い酸化時間で、膨張キッシュグラファイトを十分に酸化することができる。これにより、エネルギー消費が大幅に削減される。
【0118】
試験1はまた、膨張キッシュグラファイトが塩を用いた場合よりもさらに速く塩なしで酸化できることを確認した(試験3))。酸化ステップから塩を除去する能力は、汚染を大幅に制限する。
【0119】
試験2及び3はまた、マイクロ波処理が還元型酸化グラフェンをさらに首尾よく還元し、10%未満の酸素基の割合に達することを可能にすることを確認した。
【0120】
【表1】
図1
図2