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特許7366160放射標識されたMOEM型オリゴヌクレオチド及びその調製のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】放射標識されたMOEM型オリゴヌクレオチド及びその調製のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20231013BHJP
   C07H 21/04 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231013BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231013BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20231013BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20231013BHJP
【FI】
C07H21/02
C07H21/04 Z CSP
A61K31/7125
A61K51/04 300
A61P43/00
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/68
C12Q1/6876 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021575227
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2020067058
(87)【国際公開番号】W WO2020254548
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】19181407.8
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】エデルマン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ムサー ソルステン
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05847104(US,A)
【文献】REACTIVE AND FUNCTIONAL POLYMERS,2007年10月16日,Vol.67, No.11,pp.1373 - 1380,http://dx.doi.org/10.1016/j.reactfunctpolym.2007.07.036
【文献】Nucleoside, Nucleotide & Nucleic Acids,1999年,Vol.18, No2,pp.277-289
【文献】Proceedings of the National Academy of Sciences,1991年,Vol. 88,pp. 7595-7599
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
A61P
C12Q
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの放射標識されたオリゴヌクレオチド
[式中、
nは、0又は1であり;
及びXは、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2はアミノ基保護されていてもよいアミノC2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
は、式III
(式中、
は、1~4の整数であり、
及びRは、互いに独立して、水素、CF、C1-6-アルキルであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒にC3-5-シクロアルカン環を形成し;
は、 H-又は 14 C-標識されたC-Cアルキル基である)
の残基を表し;且つ
受容体標的化部分は、式IV
(式中、R は水素又はヒドロキシ保護基であり、n’’は0~10の整数である)のGalNAc部分、その対応する塩、エナンチオマー及び/又は立体異性体である]。
【請求項2】
nが1の整数である、請求項1に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
及びRが、互いに独立して、水素、C1-2-アルキルであるか、又はR及びRが、それらが結合する炭素原子と一緒にシクロプロピル環を形成する、請求項1又は2に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
が、放射標識されたメチル又はエチル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
放射標識が H-標識である、請求項1~4のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドが、修飾されていてもよいDNA、PNA、RNA若しくはLNAヌクレオシドモノマー又はこれらの組み合わせからなる7~30ヌクレオチドの連続したヌクレオチド配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
式Ib
[式中、R、R、X、n、Z及びリンカー1は請求項1において定義された通りである]の、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
式Ic
[式中、受容体標識化部分、及びR、X及びX、n、Z、リンカー1並びにリンカー2は請求項1において定義された通りである]の、請求項1~のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
0.037TBq/mmol(1Ci/mmol)~3.7TBq/mmol(100Ci/mmol)比活性を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1に記載の式I放射標識されたオリゴヌクレオチドの調製のための方法であって、
式V
[式中、
nは、0又は1であり;
及びXは、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、アミノ基保護されていてもよいアミノC2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
受容体標的化部分は、
式IV
(式中、R は水素又はヒドロキシ保護基であり、n’’は0~10の整数である)のGalNAc部分、その対応する塩、エナンチオマー及び/又は立体異性体である]
のチオールを、式VI
[式中、
n’は、1~4の整数であり、
及びR は、互いに独立して、水素、CF 、C 1-6 -アルキルであるか、又はR 及びR は、それらが結合する炭素原子と一緒にC 3-5 -シクロアルカン環を形成し、
は、 H-又は 14 C-標識されたC -C アルキル基である]の放射標識されたマレインイミド化合物とコンジュゲートさせること
を含む、方法。
【請求項11】
組織又は体液中のオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態の決定において使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチドを含む薬剤
【請求項12】
前記使用が
a)有効量の、請求項1~9のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチドを、試験対象である組織又は体液に投与することと、
b)組織又は体液中の、請求項1~のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態を測定することと、
任意選択的に、
c)試験対象である組織又は体液中の、請求項1~のいずれか一項に記載の放射標識されたオリゴヌクレオチドを、オートラジオグラフィーによってイメージ化することと
を含む、請求項11に記載の薬剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式I
[式中、n、X及びX,リンカー1及び2、Q、並びに受容体標的化部分は後述される]の新規の放射標識されたMOEM型オリゴヌクレオチド、その調製のための方法、及び組織又は体液中のオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態の決定のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンチセンス治療手法が有効であるために、オリゴヌクレオチドは患者に導入されなければならず、且つ治療対象である特定の組織に到達しなければならない。治療薬物の体内分布及び薬物動態は、薬物による処置の準備工程として決定されなければならない。したがって、体液又は組織中のオリゴヌクレオチドの検出が可能である必要がある。Agrawal et al.,Clin. Pharmacokinetics 28,7(1995)(非特許文献1)には、アンチセンスオリゴヌクレオチドの薬物動態の特定の態様が概説されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドといった薬理的化合物のインビボでの薬物動態研究において使用される別の十分に確立された手法は、化合物を放射標識して検出を可能にすることを伴う。動物モデルにおいて、放射標識されたオリゴヌクレオチドが動物に投与され、体液及び組織内でのその分布が、オリゴヌクレオチドの抽出により、続いてオートラジオグラフィーにより評価された(Agrawal et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. 88,7595-7599(1991)(非特許文献2)参照。
【0003】
35S-標識は、確立されて広く普及している技術である。生物学的研究のために、35S-標識されたオリゴヌクレオチドホスホロチオエートが、H-ホスホネート化学を使用して調製された(Garegg et al.,Chem. Scr. 25,280-282(1985)(非特許文献3)参照。
【0004】
14C及びHによる合成オリゴヌクレオチドの放射性同位元素標識は、現在、十分に確立された固相自動化合成を使用することにより達成される。この手法では、14C又はHヌクレオシドホスホラミダイトの組み立てには、米国特許第5,847,104号(特許文献1)の図1に示される二段階式方法が必要である。しかしながら、この方法には複数の不利益が伴っている。放射性同位体が最初の工程で導入されるために、(a)2つの工程の後の放射化学収率が限定される;(b)この作業には時に希釈の問題が伴う、即ち、自然存在比の同位体は通常、管理可能な合成スケールを維持するために担体としてブレンドされ、その結果最終オリゴの比活性が低下する、(c)ホスホラミダイト3は分解し易い反応種であり、最終的な放射性前駆体としてストリンジェントな貯蔵及び輸送要件をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5,847,104号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Agrawal et al.,Clin. Pharmacokinetics 28,7(1995)
【文献】Agrawal et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. 88,7595-7599(1991)
【文献】Garegg et al.,Chem. Scr. 25,280-282(1985)
【発明の概要】
【0007】
先行技術の方法の欠点を考慮し、高い比活性を有する放射標識されたオリゴヌクレオチドを得るための他の手法が望まれている。
【0008】
したがって本発明の目的は、オリゴヌクレオチドの放射標識のための新規の手法を提供することである。
【0009】
この目的は、式I
[式中、
nは、0又は1であり;
及びXは、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;Qは、式III
(式中、
nは、1~4の整数であり、
及びRは、互いに独立して、水素、CF、C1-6アルキルであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒にC3-5-シクロアルカン環を形成し;
は、放射標識されたC-Cアルキル基である)
の残基を表し;且つ
受容体標的化部分は、オリゴヌクレオチドに追加の機能性を加える部分である]
の新規に開発された放射標識されたオリゴヌクレオチドにより達成されることが分かった。
【0010】
[本発明1001]
式Iの放射標識されたオリゴヌクレオチド
[式中、
nは、0又は1であり;
1 及びX 2 は、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C 2-12 -アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC 2-12 -アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
は、式III
(式中、
nは、1~4の整数であり、
1 及びR 2 は、互いに独立して、水素、CF 3 、C 1-6 -アルキルであるか、又はR 1 及びR 2 は、それらが結合する炭素原子と一緒にC 3-5 -シクロアルカン環を形成し;
は、放射標識されたC 1 -C 6 アルキル基である)
の残基を表し;且つ
受容体標的化部分は、オリゴヌクレオチドに追加の機能性を加える部分である]。
[本発明1002]
nが1の整数である、本発明1001の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1003]
1 及びR 2 が、互いに独立して、水素、C 1-2 -アルキルであるか、又はR 1 及びR 2 が、それらが結合する炭素原子と一緒にシクロプロピル環を形成する、本発明1001又は1002の放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1004]
が、放射標識されたメチル又はエチル基である、本発明1001~1003のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1005]
放射標識が、 3 H-又は 14 C-標識、好ましくは 3 H-標識である、本発明1001~1004のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1006]
オリゴヌクレオチドが、修飾されていてもよいDNA、PNA、RNA若しくはLNAヌクレオシドモノマー又はこれらの組み合わせからなる7~30ヌクレオチドの連続したヌクレオチド配列を含む、本発明1001~1005のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1007]
式Ib
[式中、R 1 、R 2 、X 2 、n、Z 及びリンカー1は上記の通りである]の、本発明1001~1006のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1008]
式Ic
[式中、R 1 及びR 2 、X 1 及びX 2 、n、Z 、リンカー1並びにリンカー2は上記の通りである]の、本発明1001~1007のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1009]
受容体標的化部分が、非ヌクレオチド部分、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分、より好ましくは式IV
[式中、R 3 は水素又はヒドロキシ保護基であり、nは0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より好ましくは1~3の整数であるが、最も好ましくは2である]のGalNAc部分、その対応する塩、エナンチオマー及び/又は立体異性体である、本発明1001~1008のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1010]
0.037TBq/mmol(1Ci/mmol)~3.7TBq/mmol(100Ci/mmol)、好ましくは0.111TBq/mmol(3Ci/mmol)~1.85TBq/mmol(50Ci/mmol)、より好ましくは0.185TBq/mmol(5Ci/mmol)~0.925TBq/mmol(25Ci/mmol)の比活性を有する、本発明1001~1009のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチド。
[本発明1011]
式I[式中、Q は式IIIの残基を表す]の放射標識されたオリゴヌクレオチドの調製のための方法であって、
式V
[式中、
nは、0又は1であり;
1 及びX 2 は、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C 2-12 -アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC 2-12 -アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
受容体標的化部分は、オリゴヌクレオチド、特にアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分、好ましくはGalNAc部分に追加の機能性を加える非ヌクレオチド部分である]
のチオールを、式VI
[式中、R 1 及びR 2 、n並びにZ は、上記の通りである]の放射標識されたマレインイミド化合物とコンジュゲートさせること
を含む、方法。
[本発明1012]
組織又は体液中のオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態の決定のための、本発明1001~1010のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチドの使用。
[本発明1013]
組織又は体液中のオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態の決定のための方法であって、
a)有効量の、本発明1001~1009のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチドを、試験対象である組織又は体液に投与することと、
b)組織又は体液中の、本発明1001~1010のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態を測定することと、
任意選択的に、
c)試験対象である組織又は体液中の、本発明1001~1010のいずれかの放射標識されたオリゴヌクレオチドを、オートラジオグラフィーによってイメージ化することと
を含む、方法。
[本発明1014]
式X
[式中、
nは、0又は1であり;
1 及びX 2 は、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C 2-12 -アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC 2-12 -アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
Qは、式IIIa
(式中、
nは1~4の整数であり、
1 及びR 2 は、互いに独立して、水素、CF 3 、C 1-6 アルキルであるか、又はR 1 及びR 2 は、それらが結合する炭素原子と一緒にC 3-5 -シクロアルカン環を形成し;
Zは、C 1 -C 6 アルキル基である)
の残基を表し;且つ
受容体標的化部分は、オリゴヌクレオチドに追加の機能性を加える部分である]
のオリゴヌクレオチド。
[本発明1015]
Zが、メチル又はエチルである、本発明1014のオリゴヌクレオチド。
[本発明1016]
式Xb
[式中、R 1 、R 2 、n、Z、X 2 及びリンカー1は上記の通りである]の、本発明1014又は1015のオリゴヌクレオチド。
[本発明1017]
式Xc
[式中、R 1 、R 2 、n、Z、X 1 及びX 2 、リンカー1並びにリンカー2は上記の通りである]の、本発明1014又は1015のオリゴヌクレオチド。
[本発明1018]
受容体標的化部分が、非ヌクレオチド部分、好ましくはアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分、より好ましくは式VII
[式中、R 3 は水素又はヒドロキシ保護基であり、nは0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より好ましくは1~3の整数であるが、最も好ましくは2である]のGalNAc部分、その対応する塩、エナンチオマー及び/又は立体異性体である、本発明1014~1017のいずれかのオリゴヌクレオチド。
[本発明1019]
修飾されていてもよいDNA、PNA、RNA若しくはLNAヌクレオシドモノマー又はこれらの組み合わせからなる7~30ヌクレオチドの連続したヌクレオチド配列を含む、本発明1014~1018のいずれかのオリゴヌクレオチド。
以下の定義は、本発明を説明するために使用される種々の用語の意味及び範囲を説明及び定義するために示されている。
【0011】
「C1-6-アルキル」という用語は、1~6個の炭素原子、詳細な実施形態では1~4個の炭素原子を有する一価の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を示す。C1-6-アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル又はt-ブチル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはメチルを含む。
【0012】
「C2-12-アルキル」という用語は、2~12個の炭素原子、詳細な実施形態では4~8個の炭素原子、より詳細な実施形態では6個の炭素原子を有する一価の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を示す。特定の例は、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチル、及びその異性体であるが、好ましくはn-ヘキシルである。
【0013】
用語C3-5-シクロアルカン環は、3~5個の炭素原子を有する炭素環を表し、シクロプロパン-、シクロブタン-又はシクロペンタン-環を含む。
【0014】
「C2-12-アルキレン」という用語は、2~12個の炭素原子、詳細な実施形態では4~8個の炭素原子、より詳細な実施形態では6個の炭素原子を有する二価の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を表す。特定の例は、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、へプチレン又はオクチレン、及びその異性体であるが、好ましくはn-へキシレンである。
【0015】
「アミノC2-12-アルキレン架橋」という用語は、2~12個の炭素原子、詳細な実施形態では4~8個の炭素原子、より詳細な実施形態では6個の炭素原子を有する分岐鎖の飽和炭化水素基に結合したアミノ基を含む二価の基を表す。特定の例は、アミノブチレン、アミノペンチレン、アミノへキシレン、アミノへプチレン又はアミノオクチレン、及びその異性体であるが、好ましくはアミノn-へキシレン(-NH-(CH-)である。
【0016】
「エチレングリコール単位」という用語は、架橋単位として1~10のエチレングリコール単位、好ましくは2~6のエチレングリコール単位を含むことのできる式-(CH-O-の単位を表す。
【0017】
「グリセロール単位グリセロールベースの架橋」という用語は、式
[式中、mは、1~6の整数、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1の整数である]により特徴づけられる。
【0018】
「アミノ保護基」という用語は、アミノ基を保護することを意図した基を示し、ベンゾイル、ベンシルオキシカルボニル、カルボンベンジルオキシ(CBZ又はZ)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル(Boc)、及びトリフルオロアセチルを含む。これらの基のさらなる例は、T. W. Greene and P. G. M. Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,2nd ed.,John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,1991、chapter 7;E. Haslam,“Protective Groups in Organic Chemistry”,J. G. W. McOmie、Ed.,Plenum Press,New York,NY,1973,Chapter 5,and T.W. Greene,“Protective Groups in Organic Synthesis”,John Wiley and Sons,New York,NY,1981に見られる。
【0019】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、2つ以上の共有結合したヌクレオチドを含む分子として当業者に一般に理解されるように定義される。治療的に価値のあるオリゴヌクレオチドとしての使用のために、オリゴヌクレオチドは、典型的には、7~30ヌクレオチド長として合成される。
【0020】
オリゴヌクレオチドは、修飾されていてもよいDNA、PNA、RNA又はLNAヌクレオシドモノマー又はそれらの組み合わせからなりうる。
【0021】
LNAヌクレオシドモノマーは、ヌクレオチドのリボース糖環のC2’とC4’との間に架橋と呼ばれるリンカー基を含む修飾ヌクレオシドである。これらのヌクレオシドは、文献において、架橋核酸又は二環式核酸(BNA)とも称されている。
【0022】
本明細書で使用される場合、修飾されていてもよいとは、糖部分又は核酸塩基部分の1つ以上の修飾の導入によって、等価なDNA、PNA、RNA又はLNAヌクレオシドと比較して修飾されたヌクレオシドを指す。好ましい実施形態では、修飾ヌクレオシドは、修飾された糖部分を含み、例えば、1つ以上の2’置換ヌクレオシド及び/又は1つ以上のLNAヌクレオシドを含みうる。修飾ヌクレオシドという用語は、本明細書では、「ヌクレオシドアナログ」又は修飾「単位」又は修飾「モノマー」という用語と互換的に使用することもできる。
【0023】
DNA、RNA又はLNAヌクレオチドは、通例、2つのヌクレオシドをまとめて共有結合するホスホジエステル(P=O)及び/又はホスホロチエート(P=S)ヌクレオチド間結合により結合される。
【0024】
したがって、いくつかのオリゴヌクレオチドでは、すべてのヌクレオチド間結合がホスホジエステル(P=O)からなっていてもよく、他のオリゴヌクレオチドでは、すべてのヌクレオチド間結合がホスホロチエート(P=S)からなっていてもよく、又はさらに他のオリゴヌクレオチドでは、ヌクレオチド間結合の配列が異なっており、ホスホジエステル(P=O)とホスホロチオエート(P=S)の両方を含む。
【0025】
PNAは、古典的な核酸塩基部分から構成されるが、ホスホジエステル(P=O)又はホスホロチオエート(P=S)ヌクレオチド間結合の代わりに、ペプチド結合によって結合された反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位を含むペプチド核酸を表す。
【0026】
核酸塩基部分は、各々の対応する核酸塩基の文字コード、例えばA、T、G、C、又はUで示すことができ、ここで各文字は、場合によっては、同等の機能の修飾核酸塩基を含みうる。例えば、例示されるオリゴヌクレオチドにおいて、核酸塩基部分は、LNAヌクレオシドについては大文字のA、T、G及びMeC(5-メチルシトシン)で、DNAヌクレオシドについては小文字のa、t、g、c及びMecで記載される。修飾された核酸塩基としては、保護基を有する核酸塩基、例えば、t-ブチルフェノキシアセチル、フェノキシアセチル、ベンゾイル、アセチル、i-ブチリル又はジメチルホルムアミジノ(Wikipedia、Phosphoramidit-Synthese,https://de.wikipedia.org/wiki/Phosphoramidit-Synthese of March 24,2016参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、修飾されていてもよいDNA又はLNAヌクレオシドモノマー又はそれらの組み合わせからなり、10~25ヌクレオチド長である。
【0028】
オリゴヌクレオチド合成の原理は、当技術分野において周知であり、文献に十分に記載されており、Wikipediaなどに公開されている(例えばOligonucleotide synthesis;Wikipedia,the free encyclopedia;https://en.wikipedia.org/wiki/Oligonucleotide_synthesis,of March 15,2016参照)。
【0029】
今日では大規模オリゴヌクレオチド合成は、コンピューター制御シンセサイザーを使用して自動的に実行される。
【0030】
通例、オリゴヌクレオチド合成は固相合成であり、ここで、組み立てられるオリゴヌクレオチドは、その3’末端ヒドロキシ基を介して固体支持体材料に共有結合し、鎖組み立ての全過程にわたってそこに結合したままである。適切な支持体は、GE HealthcareのPrimer支持体5G又はKinovateのNittoPhase(登録商標)HL支持体のような市販のマクロ多孔質ポリスチレン支持体である。
【0031】
オリゴヌクレオチド合成は、原則として、所望の配列が組み立てられるまで、伸長中の鎖の5’末端にヌクレオチド残基を段階的に付加することである。
【0032】
通例、各付加は合成サイクルと呼ばれ、原則として以下の化学反応からなる:
1)固体支持体上の保護されたヒドロキシル基を脱ブロックすること、
)第1のヌクレオシドを活性化ホスホラミダイトとして固体支持体上の遊離ヒドロキシル基とカップリングさせること、
)それぞれのP結合ヌクレオシドを酸化又は硫化して、それぞれのホスホトリエステル(P=O)又はそれぞれのホスホロチオエート(P=S)を形成すること、
)任意選択的に、固体支持体上のいずれかの未反応ヒドロキシル基をキャッピングすること、
)固体支持体に結合した第1のヌクレオシドの5’ヒドロキシル基を脱ブロックすること、
)第2のヌクレオシドを活性化ホスホラミダイトとしてカップリングして、それぞれのP結合二量体を形成すること、
)それぞれのP結合ジヌクレオチドを酸化又は硫化して、それぞれのホスホトリエステル(P=O)又はそれぞれのホスホロチオエート(P=S)を形成すること、
)任意選択的に、いずれかの未反応の5’ヒドロキシル基をキャッピングすること、
)所望の配列が組み立てられるまで、前述のステップa~aを繰り返すこと。
【0033】
本発明の文脈において「放射標識」という用語は、残基Q、特に放射標識されたC1-6-アルキル基を表す置換基Z、好ましくは放射標識されたC1-4-アルキル基、より好ましくは放射標識されたメチル又はエチル基、それよりもさらに好ましくは放射標識されたメチル基について使用される。
【0034】
したがって、これら基の適切な放射標識は、天然の水素又は炭素原子の、その対応する放射性同位体14C又はHによる置き換えを意味するが、好ましくは水素原子のHによる置き換えを意味する。
【0035】
「受容体標的化部分」という用語は、オリゴヌクレオチドに追加の機能性を加える部分を表す。
【0036】
このような部分は、オリゴヌクレオチドの機能性を強化する能力を有するいずれかのタンパク質受容体標的部分から選択することができる。それらには、限定されないが、アプタマーのような特定の分子を標的とする抗体又は機能性ペプチド若しくはオリゴヌクレオチド、又は体組織若しくは体液へのオリゴヌクレオチドの送達を強化する能力を有する非ヌクレオチドタンパク質受容体標的部分が含まれる。
【0037】
好ましい実施形態では、受容体標的化部分は、アシアロ糖タンパク質(asialglycoprotein)受容体標的化部分、より好ましくはGalNAc部分である。
GalNAc部分は、式VII
[式中、Rは水素又はヒドロキシ保護基であり、nは0~10の整数、好ましくは0~5の整数、より好ましくは1~3の整数であるが、最も好ましくは2である]、その対応する塩、エナンチオマー及び/又は立体異性体を有する。
【0038】
適切なヒドロキシ保護基は、アシル、特にC1-12-アルキルカルボニル基、より詳細にはC1-6-アルキル又はフェニルによって置換されていてもよいC1-6-アルキルカルボニル基である。より好ましいのは、アセチル、ピバロイル又はベンゾイルであり、アセチルが最も好ましいヒドロキシ保護基である。
【0039】
好ましい実施形態では、GalNAc部分は、式VII[式中、Rは水素であり、nは2である]を有する。
【0040】
GalNAc部分は、ペプチド結合-CO-NH-を介してリンカー2と接続する。
【0041】
GalNAcクラスター化合物は、国際公開第2017021385号に従って調製することができる。
【0042】
好ましい実施形態では、Qは、式III
[式中、
nは、1又は2の整数であり、より好ましくは1であり、
及びRは、互いに独立して、水素、C1-2-アルキル、好ましくはメチルであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒にシクロプロピル環を形成する]
の残基を表す。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、nは1であり、
及びRは水素であるか、又は
がメチルであり、且つRが水素であるか、又は
及びRは、一緒に、シクロプロピル環を形成する。
【0044】
は、放射標識されたC1-4-アルキル基、より好ましくは放射標識されたメチル又はエチル基、それよりもさらに好ましくは放射標識されたメチル基である。
【0045】
一実施形態では、XはOであり、XはSである。別の実施形態では、XはSであり、XはOであり、また別の実施形態では、X及びXの両方がO又はSである。
【0046】
リンカー1は、上記に要約したように、C2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋である。
【0047】
リンカー1は、より好ましくは、C4-8-アルキレン架橋、それよりもさらに好ましくはC-アルキレン架橋である。
【0048】
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC2-12-アルキレン架橋、又は1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
リンカー2は、より好ましくはアミノC4-8-アルキレン架橋、それよりもさらに好ましくはアミノ-C-アルキレン架橋である。
別の実施形態では、放射標識されたオリゴヌクレオチドは、式Ib
[式中、R、R、X、n、Z及びリンカー1は上記の通りであり、上記に要約した好ましい選択肢が同様に適用される]を有する。
【0049】
好ましい実施形態では、XはSである。
【0050】
別の実施形態では、放射標識されたオリゴヌクレオチドは、式Ic
[式中、R及びR、X及びX、n、Z、リンカー1並びにリンカー2は上記の通りであり、上記に要約した好ましい選択肢が同様に適用される]を有する。
【0051】
最も好ましい実施形態は、式Ib及びIcの放射標識されたオリゴヌクレオチドである。
【0052】
式Ib及びIcの放射標識されたオリゴヌクレオチドは、以下の化合物によって説明することができる。
5’-GN2-C6-caG-C6SH-MOEM
-C6SH-MOEM
-C6SH-MOEM
5’-MOEM-SH-C6
ここで、C6SHはC6(へキシレン)チオールリンカーを意味し;MOEMはH標識N-メトキシエチレンマレイミドであり;はホスホロチオエート(phosphorthioate)架橋を表し;A,C,G,TはLNAヌクレオシドモノマーであり、a,t,c,gはDNAヌクレオシドモノマーである。
【0053】
本明細書に開示される化合物は、以下の核酸塩基配列を有する。
配列番号1:cagagttacttgccaact
配列番号2:gcattggtattca
配列番号3:gagttacttgccaact
配列番号4:ttacacttaattatacttcc
【0054】
本発明の放射標識されたオリゴヌクレオチドは、0.037TBq/mmol(1Ci/mmol)~3.7TBq/mmol(80Ci/mmol)、好ましくは0.111TBq/mmol(3Ci/mmol)~1.85TBq/mmol(50Ci/mmol)、より好ましくは0.185TBq/mmol(5Ci/mmol)~0.925TBq/mmol(25Ci/mmol)の比活性を有する。
【0055】
本発明はまた、式Iの放射標識されたオリゴヌクレオチドの調製のための方法を含み、この方法は、式V
[式中、
nは、0又は1であり;
及びXは、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
受容体標的化部分は、オリゴヌクレオチド、特にアシアロ糖タンパク質受容体標的化部分、好ましくはGalNAc部分に追加の機能性を加える非ヌクレオチド部分である]
のチオールの、式VI
(式中、R及びR、n並びにZは、上記の通りである)の放射標識されたマレインイミド化合物とのコンジュゲーションを含む。
【0056】
コンジュゲーション反応は、有機塩基及び有機溶媒の存在下で又は水性緩衝系中で、0℃~50℃の反応温度で実施することができる。
【0057】
適切な有機塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)といった三級アミンである。
【0058】
適切な水性緩衝液は、例えば、6~9のpH範囲を有するリン酸緩衝食塩水(PBS)である。
【0059】
適切な溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドといった極性非プロトン溶媒である。
【0060】
結果として得られた放射標識されたオリゴヌクレオチドを含む反応混合物は、溶媒から取り除くことができ、さらなる精製のために粗生成物を適切な緩衝水溶液に溶解させることができる。
【0061】
精製は、本質的に、当業者に周知の、段階的なクロマトグラフィー、濃縮及び単離適用技術を含む。
【0062】
クロマトグラフィーは、水性及び有機溶媒を移動相として使用するC-18逆相カラムを典型的に用いる分取HPLCである。
【0063】
クロマトグラフィーから得られる画分の濃縮は、タンジェント流濾過、特に適切な膜でのダイアフィルトレーションを介して行うことができる。
【0064】
最後に、溶出剤からの放射標識されたオリゴヌクレオチドの単離を、典型的には凍結乾燥により行うことができるか、又は溶液中において貯蔵することができる。
【0065】
式VIの放射標識されたマレインイミド化合物の合成は、以下に概要を示す反応スキームに従って行うことができる。
及びR、n並びにZは上記の通りであり、Y及びYは、互いに独立して、水素又はC1-6アルキルである。上記に概要を示す設定が同様に適用される。
【0066】
マレイミド誘導体の合成のための複数の方法が、文献(N. B. Metha et al,J. Org. Chem. 1960:251012)に報告されている。上記スキームに示される共通の手順には、置換されたアミン及び無水マレイン酸の濃縮と、それに続くマレアミド酸中間体の脱水が含まれる。
【0067】
本発明は、組織又は体液中のオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態の決定のための放射標識されたオリゴヌクレオチドの使用をさらに含む。加えて、トリチウム標識オリゴヌクレオチドは、定量全身オートラジオグラフィー(QWBA)、標的結合、及びトランスポーターの排出と取り込みの研究を含む生物科学に適用することができる。
【0068】
本発明はまた、組織又は体液中のオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態の決定のための方法を含み、この方法は、
a)有効量の放射標識されたオリゴヌクレオチドを、試験対象である組織又は体液に投与すること、及び
b)組織又は体液中の放射標識されたオリゴヌクレオチドの体内分布及び薬物動態を測定すること、並びに任意選択的に
c)試験対象である組織又は体液中の放射標識されたオリゴヌクレオチドを、オートラジオグラフィーによってイメージ化すること
を含む。
【0069】
本発明は、式X
[式中、
nは、0又は1であり;
及びXは、互いに独立して、S又はOであり;
リンカー1は、C2-12-アルキレン架橋、1~9のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式II
(式中、mは、1~6の整数である)のグリセロールベースの架橋であり;
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC2-12-アルキレン架橋、1~9のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
Qは、式IIIa
(式中、
nは1~4の整数であり、
及びRは、互いに独立して、水素、CF、C1-6アルキルであるか、又はR及びRは、それらが結合する炭素原子と一緒にC3-5-シクロアルカン環を形成し;
Zは、C-Cアルキル基である)
の残基を表し;且つ
受容体標的化部分は、オリゴヌクレオチドに追加の機能性を加える部分である]
のオリゴヌクレオチドをさらに含む。
【0070】
式Iの放射標識されたオリゴヌクレオチドについて記載される好ましい実施形態が、式Xの非放射標識されたオリゴヌクレオチドに同様に適用される。
【0071】
したがって、Qは、式IIIa
[式中、
nは、1又は2の整数であり、より好ましくは1であり,
及びRは、互いに独立して、水素又はC1-6アルキルであり、より好ましくは水素であり;
Zは、C1-4-アルキル基、より好ましくはメチル又はエチル、それよりもさらに好ましくはメチルである]
の残基を表す。
【0072】
一実施形態では、XはOであり、XはSである。別の実施形態では、XはSであり、XはOであり、また別の実施形態では、X及びXの両方がO又はSである。
【0073】
リンカー1は、上記に要約したように、C2-12-アルキレン架橋、1~10のエチレングリコール単位を含むエチレングリコール架橋、又は式
[式中、mは1~6の整数である] のグリセロールベースの架橋である。
【0074】
リンカー1は、より好ましくはC2-8-アルキレン架橋であり、それよりもさらに好ましくはC-アルキレン架橋である。
【0075】
リンカー2は、任意選択的に、アミノ基保護アミノC2-12-アルキレン架橋、又は1~10のエチレングリコール単位を含むアミノエチレングリコール架橋であり;
リンカー2は、より好ましくはアミノC2-8-アルキレン架橋、それよりもさらに好ましくはアミノ-C-アルキレン架橋である。
【0076】
別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、式Ib’
[式中、R、R、X、n、Z及びリンカー1は上記の通りであり、上記に要約した好ましい選択肢が同様に適用される] を有する。
【0077】
好ましい実施形態では、XはSである。
【0078】
別の実施形態では、放射標識されたオリゴヌクレオチドは、式Ic’
[式中、R及びR、X及びX、n、Z、リンカー1並びにリンカー2は上記の通りであり、上記に要約した好ましい選択肢が同様に適用される]
を有する。
【実施例
【0079】
略語:
【0080】
一般的な方法
出発物質として使用されるすべてのオリゴヌクレオチドは、Roche Pharmaの研究及び早期開発から合成された。トリチウム標識[H]ノシル酸メチル(トリトリチオメチル 4-ニトロベンゼンスルホネート;モル活性:3TBq/mmol=80Ci/mmol)が、トルエン中溶液としてRC Tritec(Teufen,CH)から得られた。PBSバッファーは、1倍(1x)及び10倍(10x)の濃度でThermo Fisher Scientific(Paisley,UK)から購入した。他のすべての試薬及び溶媒は、標準的な市販源から得られ、それ以上精製することなく使用した。トリチウム化合物の液体シンチレーション計数は、HIDEX 300 SL及びULTIMATE GOLDカクテル(PerkinElmer Inc.,Waltham,MA,USA)を使用して遂行された。マレイミド誘導体の合成に関する分析は、HPLC Agilent 1260 Infinity II、Waters XBridge C18、4.6×150mm、40℃3.5μmカラムにより波長220nmで、溶出液[A]=水+5% MeCN+0.05% TFA及び[B]=MeCN+0.05% TFAにより、流速1.0mL/minで、溶出液の勾配を:10minで0%[B]~50%[B]、12分後に80%として実行した。オリゴ1-4を、UPLC Agilent 1290により波長260nmで、ACQUITY UPLC Oligonucleotide BEH C18、2.1×50mm、80℃の1.7μmカラム([A]=水/メタノール/ヘキサフルオロi-プロパノール/TEA:950/25/21/2.3mL;[B]=水/メタノール/ヘキサフルオロi-プロパノール/TEA:175/800/21/2.3mL)により、流速0.5mL/minで、溶出液の勾配を:13minで10%[B]~25%[B]として決定した。大規模精製を、TELEDYNE(Lincoln,NE,USA)Isco CombiFlashにより、RediSep(登録商標)の順相Silica Flash Columns(4g)を使用して実施した。溶媒[A]はヘプタンであり、溶媒[B]はメチルt-ブチルエーテルであった。カラムは、流速18mL/minを使用して最初に20%[B]で均衡させ、吸収度214nmでモニタリングした。溶出勾配は、4分間の20%[B]の均一濃度条件、続いて14分で100%[B]までの直線勾配、最後に5分間の100%[B]の均一濃度条件からなっていた。質量分析は、Single Quadruple(SQ)及びESI Mass Detectorを備えるWaters Acquity UPLC H-class Systemにより実施した。放射化学的純度は、固体シンチレーターを内蔵するβ-放射能HPLC検出器RAMONA Quattro(Raytest,Straubenhardt,Germany)を使用して測定した。MOEMの分取HPLCは、Gilson PLC 2020 with XBridge C18カラム、5μm、10mm×250mmにより、水+5% MeCN+0.05% TFAを移動相[A]として、及びMeCN+0.05% TFAを移動相[B]として使用し、勾配を18minで0%[B]~70%[B]として実施した。H NMR測定は、Bruker Avance III 600MHz分光計で実行した。使用した重水素溶媒は、生成物の溶解度に依存しており、各事例で詳述されている。ケミカルシフトはppmで示し、シングレットにはsを、ダブレットにはdを、ダブルダブレットにはddを、マルチプレットにはmを、間接双極子-双極子相互作用にはJを付した。濃度は、Eppendorf BioSprectrometer(登録商標)basicにより波長260nmで決定し、対応するモル吸光係数を計算した。
【0081】
実施例1
H-メチル]N-メトキシエチレンマレイミド(MOEM)の合成
(式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R及びR=Hである)
スキーム:
【0082】
a)エキソ-4-(2-ヒドロキシエチル)-1,7-ジメチル-10-オキサ-4-アザ-三環[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン(M3)の合成
市販のN-(2-ヒドロキシエチル)マレイミドM1(200mg、1.42mmol)のアセトニトリル(2.0mL)中溶液に対し、rtで2,5-ジメチルフランM2(722mg、802μL、7.51mmol)を加えた。混合物を、密閉したガラス管中で65℃で20時間撹拌した。真空中での溶媒の除去及びHVでの乾燥により、粗Diels-Alder付加物M3が、4:1の比のエキソ/エンド混合物として明黄色のオイルとして得られた。エンド/エキソ混合物をIscoフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、高純度のエキソ誘導体を分離した。収率(エキソ):185mg(55%)。MS(ESI):m/z=238.1[M+H]H NMR(DMSO-d)δ ppm 6.36(s,2H)、4.69(br s,2H)、3.41(s,4H)、2.88(s,2H)、1.53(s,6H).
【0083】
b)[H-メトキシ]-エキソ-4-(2-メトキシエチル)-1,7-ジメチル-10-オキサ-4-アザ-三環[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3,5-ジオン(M5)の合成
トルエン中溶液としての1.67GBq(45mCi)の[H]‐ノシル酸メチルM4(125μg、0.561μmol)を、冷たい(非放射性)メチル 4-ニトロベンゼンスルホネートM4(122μg、0.561μmol)で1:1の比に希釈し、概ね40Ci/mmolの比活性を達成した。溶液を、エバポレートし、シールド管に移し、アルゴン流下で濃縮乾固した。固体残基(M4+M4)に対し、rtでDiels Alder付加物M3(666μg、2.81μmol)の80μLのトルエン中溶液を加え、続いて2Mのナトリウムt-ブトキシドのTHF中溶液(1.7μL、3.37μmol)を加えた。混合物をシールド管中でrtで2.5時間撹拌した。HPLC分析により、放射化学的純度50%の所望の中間生成物M5が示された。反応混合物を、DCM(1mL)で希釈し、SCX-2/SAXカートリッジ(Silycycle、500mg、DCMで事前調節)を通した濾過により直接精製し、塩基性及び酸性化合物を除去した。カートリッジをDCM(5mL)で洗浄し、その結果得られた溶液をエバポレーションにより容積100μLまで濃縮し、放射標識された中間体M5を得た。
M5の粗溶液を、それ以上精製することなく次工程のために使用した。
【0084】
c)[H-メチル]N-メトキシエチレンマレイミド(MOEM)の合成
得られたM5の粗溶液を、シールド管に移し、トルエン(70μL)で希釈し、90℃で2時間加熱した。
HPLC分析により、脱保護された生成物MOEMへの完全な変換及び残りの未反応[H]ノシル酸メチルM4が示された。反応混合物をrtに冷まし、溶媒をアルゴン流下で濃縮乾固した。残留物を分取HPLCにより精製し、所望の生成物[H-メチル]メトキシエチレンマレイミド(MOEM)を溶出剤混合物中溶液として得た。溶出剤混合物中にMOEMを含む対応する分取HPLCの画分を、オリゴ1、2、3及び4とのコンジュゲーションのために直接使用した。放射線収率:253.5MBq(6.85mCi)=15.2%。放射線濃度:34.8MBq/mL(0.94mCi/mL)、放射化学的純度:99%。比活性は、低イオン化に起因してMSにより決定することができなかった。比活性は、40Ci/mmolと推定された。
【0085】
実施例2(非放射性コンジュゲーション)
(式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R及びR=Hである)
実施例で使用されたオリゴヌクレオチド
5’-GN2-C6-caG-C6SH;MW:7709.5g/mol;(オリゴ1)
-C6SH;MW:4537.6g/mol;(オリゴ2)
-C6SH;MW:5491.5g/mol;(オリゴ3)
5’-SH-C6C;MW:6742.3g/mol;(オリゴ4)
【0086】
一般的な手順:
5’又は3’末端スルフヒドリルリンカーを有する1当量のオリゴヌクレオチドをPBS(容積因子:250mL/g)に溶解した。THF(容積因子:200mL/g)に溶解した1.3当量の市販のメトキシエチレンマレイミド(MOEM)を水溶液に加え、室温で1時間撹拌した。UPLC分析により、オリゴヌクレオチドへのマレイミドの完全な付加が示された。バッファーを水へと交換するために、反応混合物をAmicon(登録商標)Pro精製システム(MWCO:3.000Da)に移し、4000rpmで遠心分離した。DI水を加え、方法をさらに4回繰り返して交換を完了させた。その結果得られた水溶液を乾燥凍結させて、オリゴヌクレオチドを無色の粉末として、70%~95%の範囲の収率及び90%~99%の純度で単離した。
一般的な手順に従って、オリゴヌクレオチド(オリゴ1~4)がMOEMとコンジュゲートした。
【0087】
a)オリゴ1からのコンジュゲート1の合成
5’-GN2-C6-caG-C6SH-MOEM;収率:70%、純度:90%、MS(m/z):7859.4[M-(H)]
b)オリゴ2からのコンジュゲート2の合成
-C6SH-MOEM;収率:93%、純度:97%、MS(m/z):4689.5[M-(H)]
c)オリゴ3からのコンジュゲート3の合成
-C6SH-MOEM;収率:83%、純度:95%、MS(m/z):5642.6[M-(H)]
d)オリゴ4からのコンジュゲート4の合成
5’-MOEM-SH-C6C;収率:92%、純度:99%、MS(m/z):6892.7[M-(H)]
【0088】
実施例3(放射性コンジュゲーション)
(式VIのマレイミド化合物、式中、R及びR=Hである)
実施例で使用されたオリゴヌクレオチド
5’-GN2-C6-caG-C6SH;MW:7709.5g/mol;(オリゴ1)
-C6SH;MW:5491.5g/mol;(オリゴ3)
5’-SH-C6C;MW:6742.3g/mol;(オリゴ4)
【0089】
一般的な手順:
5’又は3’末端スルフヒドリルリンカーを有する2当量のオリゴヌクレオチドをPBS(10x)(容積因子:250mL/g)に溶解した。放射線濃度35MBq/mLの分取HPLC溶出剤(0.94mCi/mL)に直接使用した1当量のMOEMを、オリゴヌクレオチド水溶液に加え、室温で1.5時間撹拌した。UPLC分析により、MOEMのオリゴヌクレオチドへのコンジュゲーションが30%~45%の範囲で示された。THF(容積因子:700mL/g)に溶解した10当量の冷たい(非放射性)MOEMを加え、rtで1時間撹拌した。UPLCにより、完全なコンジュゲーションが示された。反応混合物をAmicon(登録商標)Pro精製システム(MWCO:3.000Da)に移し、4000rpmで遠心分離した。PBS(1x)を加え、方法を4回繰り返して溶媒交換を完了させ、精製された生成物を得た。その結果得られた緩衝液の濃度及び活性を決定した。放射化学的収率は69%~72%の範囲に計算され、特定のモル活性は0.61TBq/mmol(16.5Ci/mmol)~0.74TBq/mmol(20.1Ci/mmol)に到達することができた。放射化学的純度は96.0%~98.4%の範囲であった。
一般的な手順に従って、オリゴヌクレオチド、オリゴ1、3及び4がコンジュゲートした。
【0090】
a)オリゴ1からのコンジュゲート1H]-の合成
5’-GN2-C6-caG-C6SH-[H]-MOEM;収率72%、放射化学的純度:96.1%、活性:14.1MBq(0.38mCi)、特定のモル活性:0.74TBq/mmol(20.1Ci/mmol)。
b)オリゴ3からのコンジュゲート3H]-の合成
-C6SH-[H]-MOEM;収率69%、放射化学的純度:96.0%、活性:28.1MBq(0.76mCi)、特定のモル活性:0.61TBq/mmol(16.5Ci/mmol)。
c)オリゴ4からのコンジュゲート4H]-の合成
5’-[H]-MOEM-SH-C6C;収率72%、放射化学的純度:98.4%、活性:29.2MBq(0.79mCi)、特定のモル活性:0.68TBq/mmol(18.3Ci/mmol)。
【0091】
実施例4
H/H-メチル]-1-(メトキシメチル)シクロプロピルマレイミド(MOMCPM)(式VIのマレイミド化合物、式中、R及びRは合せてシクロプロピルである)の合成
一般スキーム:
【0092】
a)エキソ-2-[1-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]-4,7-ジメチル-3a,7a-ジヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン(M13)の合成
市販の1-[1-(ヒドロキシメチル)シクロプロピル]マレイミドM11(209mg、1.25mmol)のアセトニトリル(2.0mL)中溶液に対し、rtで2,5-ジメチルフランM2(643mg、713μL、6.63mmol)を加えた。混合物を、密閉したガラス管中で65℃で22時間撹拌した。真空中での溶媒の除去及びHVでの乾燥により、粗Diels-Alder付加物M13が、4:1の比のエキソ/エンド混合物として明黄色のオイルとして得られた。エンド/エキソ混合物をIscoフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、高純度のエキソ誘導体を分離した。収率(エキソ):211mg(64%)。MS(ESI):m/z=264.1[M+H]H NMR(DMSO-d)δ ppm 6.35(s,2H)、4.70(br s,1H)、3.38(s,2H)、2.78(s,2H)、1.50(s,6H)、0.89-0.93(m,2H)、0.63-0.67(m,2H).
【0093】
b)エキソ-2-[1-(メトキシメチル)シクロプロピル]-4,7-ジメチル-3a,7a-ジヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン(M15)の合成
シールド管中において、ノシル酸メチルM4(50mg、0.23mmol)及びM13(72.7mg、0.276mmol)をトルエン(2.5mL)に溶解した。溶液を0℃に冷却した。この温度で、ナトリウムt-ブトキシド溶液(THF中2M、403μL、806μmol)をゆっくりと反応溶液に滴下した。色が直ちに無色から暗褐色に変化した。氷浴を除去し、混合物をrtで一晩撹拌した。HPLC分析により、所望の中間生成物M15が示された。反応混合物を、t-ブチルメチルエーテル(30mL)で希釈し、2Mの炭酸ナトリウム(10mL)及び飽和塩化ナトリウム溶液(10mL)で抽出した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、エバポレートして乾燥させ、明黄色の液体を得た。HPLC分析により、所望の中間体M15が純度90%で示された。その粗生成物を、それ以上精製することなく次工程のために使用した。
【0094】
)[H-メトキシ]-エキソ-2-[1-(メトキシメチル)シクロプロピル]-4,7-ジメチル-3a,7a-ジヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン(M15)の合成
トルエン中溶液としての0.93GBq(25mCi)の[H]‐ノシル酸メチルM4(70μg、0.313μmol)を、冷たい(非放射性)メチル 4-ニトロベンゼンスルホネートM4(68μg、0.313μmol)で1:1の比に希釈し、概ね40Ci/mmolの比活性を達成した。溶液を、エバポレートし、シールド管に移し、アルゴン流下で濃縮乾固した。固体残基(M4+M4)に対し、rtでDiels Alder付加物M13(411μg、1.56μmol)の80μLトルエン中溶液を加え、続いてナトリウムt-ブトキシド溶液(THF中2M、1.0μL、1.88μmol)を加えた。混合物をシールド管中でrtで5.5時間撹拌した。HPLC分析により、放射化学的純度66%の所望の中間生成物M15が示された。反応混合物を、DCM(1mL)で希釈し、SCX-2/SAXカートリッジ(Silycycle、500mg、DCMで事前調節)を通した濾過により直接精製し、塩基性及び酸性化合物を除去した。カートリッジをDCM(5mL)で洗浄し、その結果得られた溶液をエバポレーションにより容積100μLまで濃縮し、放射標識された中間体M15を得た。
M15の粗溶液を、それ以上精製することなく次工程のために使用した。
【0095】
c)1-[(1-メトキシメチル)-シクロプロピル]マレイミド(MOMCPM)の合成
粗生成物M15(30mg、108μmol)を、シールド管に移し、トルエン(4.4mL)に溶解し、110℃で2時間加熱した。HPLC分析により、脱保護された生成物MOMCPMへの完全な変換が示された。反応混合物をrtに冷まし、溶媒をアルゴン流下で濃縮乾固した。残基を分取HPLCにより精製し、所望の生成物MOMCPMを溶出剤混合物中溶液として得た。溶出剤混合物中にMOMCPMを含む対応する分取HPLC画分を、酢酸エチル(50mL)で希釈し、塩化ナトリウム(各30mL)で3回抽出した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、エバポレートして乾燥させ、16mg(収率82%)を純度98%で得た。
【0096】
H NMR(CDCl)δ ppm 6.64(s,2H)、3.41(s,2H)、3.36(s,3H)、1.03-1.05(m,1H)、0.98-1.00(m,2H)、0.92-1.08(m,1H)
【0097】
)1-[(1-メトキシ-[H]-メチル)-シクロプロピル]マレイミド(MOMCPM)の合成
得られたM15の粗溶液を、シールド管に移し、トルエン(100μL)で希釈し、110℃で2時間加熱した。
HPLC分析により、脱保護された生成物MOMCOMへの完全な変換及び残りの未反応[H]ノシル酸メチルM4が示された。反応混合物をrtに冷まし、溶媒をアルゴン流下で濃縮乾固した。残留物を分取HPLCにより精製し、所望の生成物1-[(1-メトキシ-[H]-メチル)-シクロプロピル]マレイミド(MOMCPM)を溶出剤混合物中溶液として得た。溶出剤混合物中にMOMCPMを含む対応する分取HPLCの画分を、オリゴ3及び4とのコンジュゲーションのために直接使用した。放射線収率:140.6MBq(3.80mCi)=15.2%。放射線濃度:30.3MBq/mL(0.82mCi/mL)、放射化学的純度:99%。比活性は、低イオン化に起因してMSにより決定することができなかった。比活性は、40Ci/mmolと推定された。
【0098】
実施例5(非放射性コンジュゲーション)
(式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R及びRはシクロプロピルである)
実施例で使用されたオリゴヌクレオチド
-C6SH;MW:5491.5g/mol;(オリゴ3)
5’-SH-C6C;MW:6742.3g/mol;(オリゴ4)
【0099】
一般的な手順:
5’又は3’末端スルフヒドリルリンカーを有する1当量のオリゴヌクレオチドをPBS(容積因子:250mL/g)に溶解した。THF(容積因子:200mL/g)に溶解した1.3当量の1-[1-メトキシメチル)-シクロプロピル]マレイミド(MOMCPM)を水溶液に加え、室温で1時間撹拌した。UPLC分析により、オリゴヌクレオチドへのマレイミドの完全な付加が示された。バッファーを水へと交換するために、反応混合物をAmicon(登録商標)Pro精製システム(MWCO:3.000Da)に移し、4000rpmで遠心分離した。DI水を加え、方法をさらに4回繰り返して交換を完了させた。その結果得られた水溶液を乾燥凍結させて、オリゴヌクレオチドを無色の粉末として、86%~95%の範囲の収率及び95%~98%の純度で単離した。
一般的な手順に従って、オリゴヌクレオチド(オリゴ3、4)はMOMCPMとコンジュゲートした。
【0100】
a)オリゴ3からのコンジュゲート13の合成
-C6SH-MOMCPM;収率:85%、純度:95%、MS(m/z):5668.6[M-(H)]
b)オリゴ4からのコンジュゲート14の合成
5’-MOMCPM-SH-C6C;収率:98%、純度:98%、MS(m/z):6818.7[M-(H)]
【0101】
実施例5(放射性コンジュゲーション)
(式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R及びRはシクロプロピルである)
実施例で使用されたオリゴヌクレオチド
-C6SH;MW:5491.5g/mol;(オリゴ3)
5’-SH-C6C;MW:6742.3g/mol;(オリゴ4)
【0102】
一般的な手順:
5’又は3’末端スルフヒドリルリンカーを有する1.2当量のオリゴヌクレオチドをPBS(10x)(容積因子:250mL/g)に溶解した。放射線濃度30.3MBq/mLの分取HPLC溶出剤(0.82mCi/mL)に直接使用した1当量のMOMCPMを、オリゴヌクレオチド水溶液に加え、室温で2時間撹拌した。UPLC分析により、MOMCPMのオリゴヌクレオチドへのコンジュゲーションが26%~44%の範囲で示された。アセトニトリル(容積因子:700mL/g)に溶解した10当量の冷たい(非放射性)MOMCPMを加え、rtで2時間撹拌した。UPLCにより、完全なコンジュゲーションが示された。反応混合物をAmicon(登録商標)Pro精製システム(MWCO:3.000Da)に移し、4000rpmで遠心分離した。PBS(1x)を加え、方法を4回繰り返して溶媒交換を完了させ、精製された生成物を得た。その結果得られた緩衝液の濃度及び活性を決定した。放射化学的収率は90%~799%の範囲に計算され、特定のモル活性は0.63TBq/mmol(17.0Ci/mmol)~0.77TBq/mmol(20.8Ci/mmol)に到達しえた。放射化学的純度は97.3%~98.1%の範囲であった。
一般的な手順に従って、オリゴヌクレオチド、オリゴ3及び4はMOMCPMとコンジュゲートした
【0103】
a)オリゴ3からのコンジュゲート13H]-の合成
-C6SH-[H]-MOMCPM;収率90%、放射化学的純度:98.1%、活性:26.2MBq(0.71mCi)、特定のモル活性:0.63TBq/mmol(17.0Ci/mmol)。
b)オリゴ4からのコンジュゲート14H]-の合成
5’-[H]-MOMCPM-SH-C6C;収率99%、放射化学的純度:97.3%、活性:34.8MBq(0.94mCi)、特定のモル活性:0.77TBq/mmol(20.8Ci/mmol)。
【0104】
実施例6
H/H-メチル]-1-(2-メトキシ-1-メチル-エチル)マレイミド(MOMEM(*)式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R=メチル、及びR=Hである)の合成
一般スキーム:
【0105】
a)エキソ-4-(2-ヒドロキシ-1-1メチル-エチル)-4,7-ジメチル-3a,7a-ジヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン(M23)の合成
市販の1-(2-ヒドロキシ-1-メチル-エチル)マレイミドM21(132mg、0.85mmol)のアセトニトリル(2.0mL)中溶液に対し、rtで2,5-ジメチルフランM2(450mg、500μL、4.68mmol)を加えた。混合物を、密閉したガラス管中で65℃で20時間撹拌した。真空中での溶媒の除去及びHVでの乾燥により、粗Diels-Alder付加物M23が、4:1の比のエキソ/エンド混合物として明黄色のオイルとして純度98%で得られた。エンド/エキソ混合物をIscoフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、高純度のエキソ誘導体を分離した。収率(エキソ):123mg(58%)。MS(ESI):m/z=269.2[M+NHH NMR(DMSO-d)δ ppm 6.36(d,J=1.6Hz,2H)、4.54-5.09(m,1H)、3.90-4.15(m,1H)、3.67(dd,J=10.8、8.1Hz,1H)、3.49(dd,J=10.8、6.4Hz,1H)、2.82-2.87(m,1H)、2.77-2.81(m,1H)、1.53(d,J=4.0Hz,6H)、1.17(d,J=7.0Hz,3H).
【0106】
b)エキソ-2-(2-メトキシ-1-メチル-エチル)-4,7-ジメチル-3a,7a-ジヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン(M25)の合成
シールド管において、トルエン(2mL)に溶解したノシル酸メチルM4(49.8mg、0.23mmol)及びM23(57.6mg、0.23mmol)を0℃に冷却した。ナトリウムt-ブトキシド溶液(THF中2M、138μL、0.28mmol)を滴下した。色が無色から褐色に変化した。混合物を室温で3時間撹拌した。HPLC分析により、所望の中間生成物への変換が示された。反応混合物を、2つのSAX-SCXカートリッジ(Sillicycle、500mg、トルエンで事前調節)を通した濾過により直接精製した。カートリッジをトルエン(各5mL)で洗浄し、結果として得られた溶液をエバポレーションにより濃縮乾固し、無色のオイルを得た。粗生成物を、15分で0%~60%のMTBEのヘプタンとMTBEの勾配により、Iscoフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。収率:59mg(97%)。MS(ESI):m/z=266.1[M+H]
【0107】
H NMR(DMSO-d)δ ppm 6.36(s,2H)、4.17-4.27(m,1H)、3.69(dd,J=10.0,8.9Hz,1H)、3.69(dd,J=10.0,8.9Hz,1H)、3.42(dd,J=9.9,5.9,1H)、3.19(s,3H)、2.82-2.87(m,2H)、1.53(d,J=3.6Hz,6H)、1.19(d,J=7.1Hz,3H).
【0108】
)[H-メトキシ]-エキソ-2-(2-メトキシ-1-メチル-エチル)-4,7-ジメチル-3a,7a-ジヒドロ-4,7-エポキシイソインドール-1,3-ジオン(M25)の合成
トルエン中溶液としての0.93GBq(25mCi)の[H]‐ノシル酸メチルM4(70μg、0.313μmol)を、冷たい(非放射性)メチル 4-ニトロベンゼンスルホネートM4(68μg、0.313μmol)で1:1の比に希釈し、概ね40Ci/mmolの比活性を達成した。溶液を、エバポレートし、シールド管に移し、アルゴン流下で濃縮乾固した。固体残基(M4+M4)に対し、rtでエキソDiels Alder付加物M23(393μg、1.56μmol)の80μLトルエン中溶液を加え、続いてナトリウムt-ブトキシドの溶液(THF中2M、1.0μL、1.88μmol)を加えた。混合物をシールド管中でrtで2.5時間撹拌した。HPLC分析により、放射化学的純度63%の所望の中間生成物M25が示された。反応混合物を、DCM(1mL)で希釈し、SCX-2/SAXカートリッジ(Silycycle、500mg、DCMで事前調節)を通した濾過により直接精製し、塩基性及び酸性化合物を除去した。カートリッジをDCM(5mL)で洗浄し、その結果得られた溶液をエバポレーションにより容積100μLまで濃縮し、放射標識された中間体M25を得た。
M25の粗溶液を、それ以上精製することなく次工程のために使用した。
【0109】
c)1-(1-メトキシ-1-メチル-エチル)マレイミド(MOMEM)の合成
55mg(0.207mmol)のM25を、シールド管に移し、トルエン(500μL)に溶解し、90℃で16時間加熱した。HPLC分析により、脱保護された生成物MOMEMへの変換が示された。反応混合物をrtに冷まし、溶媒を濃縮乾固した。残基をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、所望の生成物メトキシエチレンマレイミド(MOMEM)を純度>96%で得た。19mg(54%)を無色のオイルとして単離することができた。MS(ESI):m/z=170.08[M+H]
【0110】
H NMR(DMSO-d)δ ppm 6.98(s,2H)、4.23(ddd,J=9.5,7.1,5.4Hz,1H)、3.67(t、J=9.8Hz,1H)、3.39(dd,J=10.0、5.3Hz,1H)、3.19(s,3H)、1.24(d,J=7.1Hz,3H).
【0111】
)[H-メチル]-1-(1-メトキシ-1-メチル-エチル)マレイミド(MOMEM)の合成
得られたM25の粗溶液を、シールド管に移し、トルエン(100μL)で希釈し、110℃で2時間加熱した。
HPLC分析により、脱保護された生成物MOMEMへの完全な変換及び残りの未反応[H]ノシル酸メチルM4が示された。反応混合物をrtに冷まし、溶媒をアルゴン流下で濃縮乾固した。残留物を分取HPLCにより精製し、所望の生成物[H-メチル]メトキシエチレンマレイミド(MOMEM)を溶出剤混合物中溶液として得た。溶出剤混合物中にMOMEMを含む対応する分取HPLCの画分を、オリゴ3及び4とのコンジュゲーションのために直接使用した。放射線収率:122.1MBq(3.3mCi)=13.2%。放射線濃度:30.0MBq/mL(0.81mCi/mL)、放射化学的純度:99%。比活性は、低イオン化に起因してMSにより決定することができなかった。比活性は、40Ci/mmolと推定された。
【0112】
実施例7(非放射性コンジュゲーション)
(式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R=メチル、及びR=Hである)
実施例で使用されたオリゴヌクレオチド
-C6SH;MW:5491.5g/mol;(オリゴ3)
5’-SH-C6C;MW:6742.3g/mol;(オリゴ4)
【0113】
一般的な手順:
5’又は3’末端スルフヒドリルリンカーを有する1当量のオリゴヌクレオチドをPBS(容積因子:250mL/g)に溶解した。THF(容積因子:200mL/g)に溶解した1.3当量の1-(1-メトキシ-1-メチル-1-エチル)マレイミド(MOMEM)を水溶液に加え、室温で1時間撹拌した。UPLC分析により、オリゴヌクレオチドへのマレイミドの完全な付加が示された。バッファーを水へと交換するために、反応混合物をAmicon(登録商標)Pro精製システム(MWCO:3.000Da)に移し、4000rpmで遠心分離した。DI水を加え、方法をさらに4回繰り返して交換を完了させた。その結果得られた水溶液を乾燥凍結させて、オリゴヌクレオチドを無色の粉末として、83%~98%の範囲の収率及び93%~98%の純度で単離した。
一般的な手順に従って、オリゴヌクレオチド、オリゴ3及び4はMOMEMとコンジュゲートした。
【0114】
a)オリゴ3からのコンジュゲート23の合成
-C6SH-MOMEM;収率:83%、純度:98%、MS(m/z):5656.6[M-(H)]
b)オリゴ4からのコンジュゲート24の合成
5’-MOMEM-SH-C6C;収率:93%、純度:98%、MS(m/z):6906.7[M-(H)]
【0115】
実施例8(放射性コンジュゲーション)
(式VIのマレイミド化合物、式中、n=1、R=メチル、及びR=Hである)
実施例で使用されたオリゴヌクレオチド
-C6SH;MW:5491.5g/mol;(オリゴ3)
5’-SH-C6C;MW:6742.3g/mol;(オリゴ4)
【0116】
一般的な手順:
5’又は3’末端スルフヒドリルリンカーを有する1.2当量のオリゴヌクレオチドをPBS(10x)(容積因子:250mL/g)に溶解した。放射線濃度30.0MBq/mLの分取HPLC溶出剤(0.81mCi/mL)に直接使用した1当量のMOMEMを、オリゴヌクレオチド水溶液に加え、室温で2時間撹拌した。UPLC分析により、MOMEMのオリゴヌクレオチドへのコンジュゲーションが62%~66%の範囲で示された。THF(容積因子:700mL/g)に溶解した10当量の冷たい(非放射性)MOMEMを加え、rtで2時間撹拌した。UPLCにより、完全なコンジュゲーションが示された。反応混合物をAmicon(登録商標)Pro精製システム(MWCO:3.000Da)に移し、4000rpmで遠心分離した。PBS(1x)を加え、方法を4回繰り返して溶媒交換を完了させ、精製された生成物を得た。その結果得られた緩衝液の濃度及び活性を決定した。放射化学的収率は87%~89%の範囲に計算され、特定のモル活性は0.39TBq/mmol(10.5Ci/mmol)~0.48TBq/mmol(12.0Ci/mmol)に到達することができた。放射化学的純度は93.4%~94.3%の範囲であった。
一般的な手順に従って、オリゴヌクレオチド、オリゴ3及び4はMOMEMとコンジュゲートした。
【0117】
a)オリゴ3からのコンジュゲート23H]-の合成
-C6SH-[H]-MOMEM;収率87%、放射化学的純度:94.3%、活性:16.7MBq(0.45mCi)、特定のモル活性:0.48TBq/mmol(12.0Ci/mmol)。
b)オリゴ4からのコンジュゲート24H]-の合成
5’-[H]-MOMEM-SH-C6C;収率89%、放射化学的純度:93.4%、活性:14.8MBq(0.40mCi)、特定のモル活性:0.39TBq/mmol(10.5Ci/mmol)。
【配列表】
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