(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ用パッケージおよびその製造方法とパッケージング機
(51)【国際特許分類】
B65D 81/22 20060101AFI20231013BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20231013BHJP
B65D 75/36 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B65D81/22
G02C7/04
B65D75/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022062931
(22)【出願日】2022-04-05
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2021-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521489539
【氏名又は名称】コッホ パック‐システム ジーエムビーエイチ
【氏名又は名称原語表記】KOCH Pac‐Systeme GmbH
【住所又は居所原語表記】Dieselstr.13 72285 Pfalzgrafenweiler Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】カール カプラー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ビッツァー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ドゥルカー
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-238840(JP,A)
【文献】特開平09-216654(JP,A)
【文献】特開平08-072808(JP,A)
【文献】特開2018-179568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/22
G02C 7/04
B65D 75/36
A45C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズ用パッケージ(2)を製造する方法であって、
少なくとも1つのカップ(6)を有する収容要素(4)を成形するステップと、
前記収容要素(4)を、前記少なくとも1つのカップ(6)の領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤(16)でコーティングするステップと、
前記収容要素(4)の前記少なくとも1つのカップ(6)にコンタクトレンズ液(12)及びコンタクトレンズ(14)を充填するステップと、
前記収容要素(4)にカバーフィルム(8)を貼り付けて、前記少なくとも1つのカップ(6)を閉じるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記収容要素(4)を成形するステップは、
フィルムウェブ(18)を供給するステップ、および
前記少なくとも1つのカップ(6)をフィルムウェブ(18)に熱成形するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記収容要素(4)を成形するステップは、さらに、前記収容要素(4)をコーティングするステップの前に、前記収容要素(4)を前記フィルムウェブ(18)から打ち抜くステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記収容要素(4)は、少なくとも1つのカップ(6)の領域において、0.05mmと0.6mmとの間である壁厚(W)を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記収容要素(4)をコーティングするステップの前に、さらに、
ハンドリング装置によって前記収容要素(4)を把持するステップ、および、
把持された前記収容要素(4)を、前記ハンドリング装置によって支持体(20)へ挿入するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記収容要素(4)の前記少なくとも1つのカップ(6)を充填するステップは、充填ステーション(46)を通して前記支持体(20)を移動させることを含み、
前記収容要素(4)に前記カバーフィルム(8)を貼り付けるステップは、前記支持体(20)を、シーリングステーション(48)を通して移動させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記収容要素(4)をコーティングするステップの前に、前記収容要素(4)をコーティング室(24)に配置するステップを含み、
前記収容要素(4)のコーティングは、前記コーティング室(24)内で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング室(24)内で前記収容要素(4)を配置するステップの後、前記収容要素(4)をコーティングするステップの前に、さらに、
前記コーティング室(24)内に大気圧以下の圧力を発生させるステップ、および、
前記コーティング室(24)内に処理ガスを導入するステップと、を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記収容要素(4)をコーティングするステップは、前記コーティング室(24)内でプラズマを発生させ、その結果、前記コーティング剤(16)を発生させることを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング剤(16)が、10nmと250nmとの間である層厚(S)を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング剤(16)が、20nmと80nmとの間である層厚(S)を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コンタクトレンズ液(12)およびコンタクトレンズ(14)を収容するための少なくとも1つのカップ(6)を有する収容要素(4)と、
前記少なくとも1つのカップ(6)を密閉するために前記収容要素(4)に接続されているカバーフィルム(8)と、を備え、
前記収容要素(4)が、前記少なくとも1つのカップ(6)の領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤(16)を有していることを特徴とするコンタクトレンズ用パッケージ(2)。
【請求項13】
前記収容要素(4)が、少なくとも1つのカップ(6)の領域において、0.05mmと0.6mmとの間である壁厚(W)を有することを特徴とする請求項12に記載のコンタクトレンズ用パッケージ(2)。
【請求項14】
前記コーティング剤(16)は、10nmと250nmとの間である層厚(S)を有することを特徴とする請求項12に記載のコンタクトレンズ用パッケージ(2)。
【請求項15】
前記コーティング剤(16)は、20nmと80nmとの間である層厚(S)を有することを特徴とする請求項12に記載のコンタクトレンズ用パッケージ(2)。
【請求項16】
コンタクトレンズ用パッケージ(2)を製造するためのパッケージング機(32)であって、
収容要素(4)の少なくとも1つのカップ(6)を成形するように構成された成形ステーション(34)と、
前記収容要素(4)を、前記少なくとも1つのカップ(6)の領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤(16)でコーティングするように構成されたコーティングステーション(44)と、
前記収容要素(4)の前記少なくとも1つのカップ(6)をコンタクトレンズ液(12)及びコンタクトレンズ(14)で充填するように構成された充填ステーション(46)と、
前記収容要素(4)にカバーフィルム(8)を貼り付けて、前記少なくとも1つのカップ(6)を密閉するように構成されたシーリングステーション(48)と、を備えることを特徴とするパッケージング機(32)。
【請求項17】
成形ステーション(34)が、フィルムウェブ(18)を加熱するための加熱装置(36)と、前記少なくとも1つのカップ(6)を前記フィルムウェブ(18)に成形するための成形装置(38)と、を有することを特徴とする請求項16に記載のパッケージング機(32)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ用パッケージおよびその製造方法とパッケージング機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズ用パッケージは、一般に、コンタクトレンズ液とコンタクトレンズが収容される少なくとも1つのカップを有する収容要素と、少なくとも1つのカップを密閉するために収容要素にしっかりと接続されるカバーフィルムとを含んで構成されている。コンタクトレンズ液は、例えば、生理食塩水であり、コンタクトレンズの弾性、湿度、無菌性を維持する。
【0003】
コンタクトレンズ液またはその成分がコンタクトレンズ用パッケージの外に拡散すると、コンタクトレンズ用パッケージ内に残ったコンタクトレンズ液の濃度が変化し、パッケージされたコンタクトレンズの保存期間に影響を与える。これを回避し、パッケージされたコンタクトレンズの保存期間を十分に長くするために、コンタクトレンズのパッケージは十分なバリア効果を発揮する必要がある。
【0004】
バリア効果は、例えば、多層プラスチックフィルム複合体から収容要素を成形することによって達成することができる。しかしながら、そのような収容要素は、製造コストが高く、手の込んだものであり、リサイクル性が悪いだけである。
【0005】
したがって、コンタクトレンズ用パッケージの収容要素は、通常、射出成形によって製造され、必要なバリア効果を提供するために、例えば、0.8mmから1mmという比較的大きな壁厚を有している。その結果、特にユニット数が非常に多い場合には、必要な材料とその材料コストが膨大になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コンタクトレンズ用パッケージの製造方法およびパッケージング機、ならびにコンタクトレンズ用パッケージを提供し、十分なバリア効果を持つコンタクトレンズ用パッケージの費用効果の高い生産を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による方法は、コンタクトレンズ用パッケージを製造する方法であって、 少なくとも1つのカップを有する収容要素を成形するステップと、前記収容要素を、前記少なくとも1つのカップの領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤でコーティングするステップと、前記収容要素の前記少なくとも1つのカップにコンタクトレンズ液及びコンタクトレンズを充填するステップと、前記収容要素にカバーフィルムを貼り付けて、前記少なくとも1つのカップを閉じるステップと、を含む方法である。
【0008】
このようにして製造されたのが、少なくともコンタクトレンズ液を収容するカップの領域に、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤を有するコンタクトレンズ用パッケージである。コーティングは、カップの領域において収容要素を密閉するように構成されている。酸化ケイ素又は酸化アルミニウムを含むコーティング剤は、コンタクトレンズ液又はその成分の拡散を大幅に減少させるか又は排除することさえできる優れたバリア特性を有する。その結果、コンタクトレンズ用パッケージの壁厚は、例えば、従来のコンタクトレンズ用パッケージの壁厚の約3分の1まで明確に低減することができ、それによって、材料要求を大幅に低減し、ひいてはコストを低減することが可能となる。また、コンタクトレンズ用パッケージは、多層構造のプラスチックフィルム複合体と比較すると、リサイクル性にも優れている。さらに、材料要求の低減とリサイクル性の向上は、環境面でも有利に働く。
【0009】
酸化ケイ素は、特に、一酸化ケイ素または二酸化ケイ素を含むよう構成されてよい。好ましい実施形態では、コーティング剤は、酸化ケイ素、特に二酸化ケイ素のみから構成される。少なくとも、酸化ケイ素は、コーティングに必要なバリア効果を提供するよう、コーティング剤の主要な構成要素を形成する。
【0010】
酸化アルミニウムは、特に、Al2O3を含むよう構成されてよい。好ましい実施形態では、コーティング剤は、酸化アルミニウムのみから構成される。少なくとも、酸化アルミニウムは、コーティングに必要なバリア効果を提供するよう、コーティング剤の主要な構成要素を形成する。
【0011】
コンタクトレンズ液は、水と塩化ナトリウムを含んで構成される生理食塩水であることが好ましい。ただし、コンタクトレンズ液は、これとは異なる公知のコンタクトレンズ液であってもよい。
【0012】
好ましくは、本明細書に記載された方法ステップの全ての実施形態は、それぞれの場合において、指定された順序で実行される。これにかかわらず、本明細書に記載されたすべての方法ステップは、好ましくは、自動的に、すなわち、機械によって実行される。例えば、収容要素の成形はパッケージング機の成形ステーションによって、収容要素のコーティングは前記パッケージング機のコーティングステーションによって、カップの充填は前記パッケージング機の充填ステーションによって、カバーフィルムの貼り付けは前記パッケージング機のシーリングステーションによって、それぞれ行われる。
【0013】
複数の収容要素に対してそれぞれ本方法を実行することにより、本方法の効率を向上させることができる。1つの収容要素が発生する代わりに、次いで、1つの収容要素を含む複数の収容要素のそれぞれが発生する。この目的のために、各方法ステップは、複数の収容要素に対して同時に実行され得る。また、方法ステップは、各収容要素について、または、複数の収容要素についてそれぞれ繰り返し実行することができる。これは、本明細書に記載された方法のすべての実施形態に適用される。
【0014】
これにかかわらず、収容要素は、複数のカップを有することができる。例えば、収容要素は2つのカップを有し、そのうちの1つは左目用のコンタクトレンズを収容することができ、そのうちのもう1つは右目用のコンタクトレンズを収容することができる。収容要素はまた、例えば、それぞれが同じ強度のコンタクトレンズを収容することができる2つ以上のカップを有することができる。
【0015】
少なくとも1つのカップの領域における収容要素のコーティングは、少なくともカップ内面のコーティングを含む。カップ内面とは、カバーフィルムとともに、コンタクトレンズ液およびコンタクトレンズが収容される空洞を形成するカップの側面である。したがって、カップ内面は、コンタクトレンズ液と接触している。好ましくは、少なくとも1つのカップのカップ内面は、コーティング剤で完全にコーティングされている。
【0016】
収容要素は、さらに、少なくとも1つのカップを取り囲むフランジを含んでなる。カバーフィルムの貼り付けは、好ましくは、フランジへのカバーフィルムの取り付け、特にフランジへのカバーフィルムの(熱)シーリング又は接着剤による接着を含んでいる。その結果、カバーフィルムは、少なくとも1つのカップの周囲で収容要素に完全に密閉可能に接続され得る。
【0017】
カップの外側の領域、特にカバーフィルムが貼り付けられるフランジの領域は、カバーフィルムと収容要素との接続をより簡単かつ良好にするために、コーティングされないことが望ましい場合がある。収容要素のコーティングは、その後、好ましくは、カップの領域のみ、特にカップ内面のみにおいて行われる。
【0018】
コンタクトレンズ用パッケージの収容要素は、これまで通常、大きな壁厚のために射出成形によって成形されてきたが、本発明による方法とそれによって実現される薄い壁厚によって、好ましくは単層フィルムウェブから熱成形によってコンタクトレンズ用パッケージの収容要素を製造することが初めて可能となった。
【0019】
好ましい実施形態では、前記収容要素(4)を成形するステップは、フィルムウェブ(18)を供給するステップ、および前記少なくとも1つのカップ(6)をフィルムウェブ(18)に熱成形するステップと、を含む。
【0020】
熱成形は、好ましくは、フィルムウェブの加熱と、加熱されたフィルムウェブ中の少なくとも1つのカップの深絞りを含んで構成される。深絞りは、成形装置及び/又は圧縮空気又は真空を用いて行うことができる。成形装置は、打ち抜きとダイを含んで構成され、必要に応じて、圧縮空気または真空の使用により支持される。成形装置は、ダイのみを含んで構成されてもよく、その中に圧縮空気または真空を用いてフィルムウェブを成形することができる。
【0021】
酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤の使用は、コンタクトレンズ用パッケージの収容要素を比較的薄いフィルムから成形することができることを意味する。収容要素は、少なくとも1つのカップの領域において、0.05mmと0.6mmとの間、より好ましくは0.1mmと0.5mmとの間、更に好ましくは0.2mmと0.4mmとの間である壁厚を有することが好ましい。
【0022】
熱成形の場合、フィルムウェブは、好ましくは0.05mmと0.6mmとの間、より好ましくは0.1mmと0.5mmとの間、さらに好ましくは0.2mmと0.4mmとの間である壁厚を有している。
【0023】
収容要素、及びこのように使用される可能性のあるフィルムウェブは、好ましくは、ポリオレフィンまたはポリハロゲンオレフィンの群から、またはそれらの組み合わせから選択されるプラスチックから成形される。特に好ましくは、プラスチックは、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)またはポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される。好ましくは、収容要素、及びこのように使用される可能性のあるフィルムウェブは、特定のプラスチックの層のみからなり、特に、複合材料または異なる材料の多層構造を含んで構成されない。
【0024】
好ましくは、収容要素の成形は、さらに、収容要素のコーティングの前に、収容要素をフィルムウェブから打ち抜くことを含む。これにより、打ち抜きの際にコーティング剤が損傷したり破壊されたりしないようにすることができる。しかしながら、本方法が、収容要素のコーティングの後に、フィルムウェブから収容要素を打ち抜くことを含んでいてもよい。
【0025】
打ち抜きは、好ましくは、打ち抜き装置によって行われる。打ち抜くと、収容要素はフィルムウェブから完全に分離される。しかしながら、互いに接合された、または互いに一体化された複数の収容要素を打ち抜いてもよい。
【0026】
この方法をできるだけ効率的にし、コーティングを容易にするために、本方法は、好ましくは、前記収容要素をコーティングする前に、さらに、ハンドリング装置によって前記収容要素を把持するステップ、および、把持された前記収容要素を、前記ハンドリング装置によって支持体へ挿入するステップをさらに含む。
【0027】
これには、複数の収容要素がまとめてではなく単一の形で処理され続けるという利点があり、まとめての処理では、例えば、壁の厚さが0.3mmの場合、収容要素の損傷につながる可能性がある。さらに、コーティングのための収容要素の移送は、それによって自動的に行われ得る。支持体は、好ましくは、複数の収容要素を収容することができる。
【0028】
熱成形の場合、収容要素の把持および挿入は、好ましくは、打ち抜き後に行われる。特に、収容要素は、その後、ハンドリング装置によって打ち抜き装置内で把持され、打ち抜き装置から除去され得る。
【0029】
ハンドリング装置は、把持装置または吸引装置として設計され得る。関連する装置は、当業者には「ピックアンドプレース」装置としても知られている。
【0030】
さらに、前記収容要素をコーティングする前に、前記収容要素をコーティング室に配置するステップを含み、前記収容要素のコーティングは、前記コーティング室内で行われる方法であれば、収容要素のコーティングに適した一般条件を作成することができる。コーティング室では、例えば圧力や収容要素の周囲の雰囲気などの一般的な条件は、特に容易に影響を受け、設定され得る。
【0031】
収容要素のコーティング室への移動のために、コーティング室は、好ましくは、開閉することができる。例えば、コーティング室は、この目的のために、少なくとも1つ、好ましくは2つの閉鎖可能な開口を有し、この開口を通して収容要素をコーティング室内に移動させ、コーティング室から排出させることができる。また、コーティング室の一部が移動可能であり、例えば、収容要素の上を移動することも考えられる。
【0032】
収容要素のコーティング室への配置は、好ましくは、収容要素が挿入された支持体をコーティング室内に移動させることを含んでいる。好ましくは、複数の収容要素が支持体に挿入されている。
【0033】
収容要素のコーティングまたはコーティング剤の生成は、物理的な蒸着の手段によって行うことができる。
【0034】
しかし、収容要素のコーティングまたはコーティング剤の生成は、化学的な蒸着によって行うこともできる。一実施形態では、収容要素のコーティングまたはコーティングの生成は、好ましくは、PECVD法(プラズマ強化化学蒸着)またはPICVD法(プラズマインパルス化学蒸着)により行われる。これらの方法は、少なくとも1つのカップを有する収容要素のような湾曲した基板上でさえ、高品質の非常に薄く非常に均一なコーティングを形成することができるという利点を有する。PECVD法およびPICVD法の詳細については,以下の例を参照されたい。「Unger, E. (1991), Die Erzeugung dunner Schichten」Das PECVD-Verfahren:[薄層の生成PECVD法:プラズマで蒸着を行う方法], in Chemie in unserer Zeit [現代化学], volume 25, issue 3」及び「Bach et al.(2003)、Thin Films on Glass, Germany, Springer Berlin Heidelberg」。
【0035】
この方法は、好ましくは、前記コーティング室内で前記収容要素を配置する後、前記収容要素をコーティングするステップの前に、さらに、前記コーティング室内に大気圧以下の圧力を発生させるステップ、および、前記コーティング室内に処理ガスを導入するステップを含む。
【0036】
大気圧以下の圧力は、好ましくは1×10-2と1×10-8mbarとの間、より好ましくは2×10-4と1×10-7mbarとの間、さらに好ましくは2×10-5と1×10-6mbarとの間である。
【0037】
処理ガスは、好ましくは、酸素と、ケイ素またはアルミニウムを含有するガスとを含む。処理ガスは、例えば、モノシランSiH4、一酸化窒素NOおよび/またはオルトケイ酸テトラエチルSi(OC2H5)4を含んで構成され得る。
【0038】
そして、収容要素のコーティングは、好ましくは、前記コーティング室内でプラズマを発生させ、その結果、前記コーティング剤を発生させることを含む。プラズマは、マイクロ波放射によるエネルギーの供給、または電極によってコーティング室内で発生させることができる。
【0039】
酸化ケイ素を含有するコーティング剤の生成のために起こり得る例示的な反応は、以下の通りである。
SiH4+4NO→SiO2+2H2O+2N2
ここでSiH4とNOはガス状で供給され、二酸化ケイ素SiO2が生成される。
【0040】
必要なバリア効果を得るためには、非常に薄い酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティングで十分である。好ましくは、コーティング剤は、2nmと500nmの間、より好ましくは10nmと250nmの間、さらに好ましくは20nmと80nmの間である層厚を有する。特に好ましい実施形態では、コーティングの層厚は、40nmと60nmの間、または45nmと55nmの間である。このような厚さのコーティングは、記載された方法を用いて容易に生成することができる。
【0041】
好ましくは、収容要素は、コーティング中に支持体に収容される。上述したように、好ましくは、収容要素は、支持体によってコーティング室に移動される。方法をできるだけ効率的にするために、前記収容要素の前記少なくとも1つのカップの充填は、充填ステーションを通して前記支持体を移動させることを含み、前記収容要素に前記カバーフィルムを貼り付けるステップは、前記支持体を、シーリングステーションを通して移動させることを含むことが、さらに好ましい。これは、支持体内の収容要素が、繊細な収容要素の取り扱いまたは移送の必要なく、さらなる処理ステーションを通過して移動されることを意味する。さらに、これは、本方法においていかなる時も収容要素がまとめて配置されないことを意味し、したがって、収容要素を充填して閉じる前に収容要素を単一化する精巧なステップを排除する。このステップは射出成形された収容要素の場合に通常必要とされるものである。
【0042】
収容要素が複数のカップを有する場合、及び/又は複数の収容要素が互いに連結されている場合、個々のカップ又は収容要素を取り外しできることが望ましい場合がある。カバーフィルムが収容要素に貼り付けられている場合、本方法は、次に、収容要素の個々のカップ又は個々の収容要素の間に材料の弱化、特にミシン目又は溝を導入することを追加的に含んでもよい。
【0043】
このように、コストパフォーマンスの高いコンタクトレンズ用パッケージを製造するための非常に効率的な方法が提供される。
【0044】
本発明の一態様によれば、コンタクトレンズ用パッケージは、コンタクトレンズ液およびコンタクトレンズを収容するための少なくとも1つのカップを有する収容要素と、前記少なくとも1つのカップを密閉するために前記収容要素に接続されているカバーフィルムと、を備える。収容要素は、少なくとも1つのカップの領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤を有する。
【0045】
このようにして製造されたのが、少なくともコンタクトレンズ液を収容するカップの領域に、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤を有するコンタクトレンズ用パッケージである。コーティングは、カップの領域において収容要素を密閉するように構成されている。酸化ケイ素又は酸化アルミニウムを含むコーティング剤は、コンタクトレンズ液又はその成分の拡散を大幅に減少させるか又は排除することさえできる優れたバリア特性を有する。その結果、コンタクトレンズ用パッケージの壁厚は、例えば、従来のコンタクトレンズ用パッケージの壁厚の約3分の1まで明確に低減することができ、それによって、材料要求を大幅に低減し、ひいてはコストを低減することが可能となる。また、コンタクトレンズ用パッケージは、多層構造のプラスチックフィルム複合体と比較すると、リサイクル性にも優れている。さらに、材料要求の低減とリサイクル性の向上は、環境面でも有利に働く。
【0046】
本発明のコンタクトレンズ用パッケージは、上記の方法により製造されることが好ましい。
【0047】
本方法に関連して、コンタクトレンズ用パッケージ、特にコーティングに関して説明したすべての特徴は、コンタクトレンズ用パッケージにも同様に適用可能であり、その逆もまた然りである。
【0048】
少なくとも1つのカップには、コンタクトレンズ液とコンタクトレンズが収容されている。コンタクトレンズ液は、水と塩化ナトリウムを含んで構成される生理食塩水であることが好ましい。ただし、コンタクトレンズ液は、これとは異なる公知のコンタクトレンズ液であってもよい。
【0049】
コンタクトレンズ用パッケージは、相互に接続された複数の収容要素を含んで構成され得る。
【0050】
収容要素は、複数のカップを有してもよい。例えば、収容要素は2つのカップを有し、そのうちの1つは左目用のコンタクトレンズを収容することができ、そのうちのもう1つは右目用のコンタクトレンズを収容するようにしてもよい。収容要素はまた、例えば、各々が同じ強度のコンタクトレンズを含むことができる2つ以上のカップを有するようにしてもよい。
【0051】
少なくとも1つのカップは、好ましくは5mmと35mmの間、より好ましくは18mmと28mmの間、さらに好ましくは20mmと22mmの間である直径を有する。
【0052】
少なくとも1つのカップの深さは、好ましくは1mmと15mmの間、より好ましくは3mmと10mmの間、さらに好ましくは5mmと6mmの間である。
【0053】
好ましくは、少なくとも1つのカップの少なくとも1つのカップ内面が、コーティングされている。カップ内面とは、カバーフィルムとともに、コンタクトレンズ液およびコンタクトレンズが収容される空洞を形成するカップの側面である。したがって、カップ内面は、コンタクトレンズ液と接触している。好ましくは、少なくとも1つのカップのカップ内面は、コーティング剤で完全にコーティングされている。
【0054】
収容要素は、さらに、少なくとも1つのカップを取り囲むフランジを含んで構成される。カバーフィルムは、好ましくはフランジに取り付けられ、特にフランジに(ヒート)シールまたは接着剤で接着される。理想的には、カバーフィルムは、少なくとも1つのカップの周囲で収容要素に完全に密閉可能に接続されている。
【0055】
カップの外側の領域、特にカバーフィルムが貼り付けられるフランジの領域は、コーティングされていないことが考えられる。これにより、カバーフィルムと収容要素との接続をより簡単かつ良好にすることができる。好ましくは、コーティングされているのは、カップの領域のみ、特にカップの内側表面のみである。
【0056】
コンタクトレンズ用パッケージの密閉性を十分に確保し、カバーフィルムを収容要素に簡易に接続し、カバーフィルムを取り外すことによりコンタクトレンズ用パッケージを簡易に開封できるようにするために、カバーフィルムはアルミニウム複合フィルムにより形成されてもよい。例えば、このような複合フィルムは、ポリプロピレンPPの層と、アルミニウムの層と、ポリエチレンPEの層とを含んで構成される。カバーフィルムの構造およびこれらの材料にかかわらず、カバーフィルムが、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含む材料でコーティングされることも考えられる。特に、少なくとも1つのカップに面しているカバーフィルムの側面には、コーティングがされている。それとは別に、同様に貼り付けられる収容要素のコーティングに関する注釈が参照される。
【0057】
収容要素が、好ましくは、少なくとも1つのカップの領域において、0.05mmと0.6mmの間、より好ましくは0.1mmと0.5mmの間、さらに好ましくは0.2mmと0.4mmの間の壁厚を有する場合に、大きな材料の節約が達成され得る。
【0058】
収容要素は、ポリオレフィンまたはポリハロゲンオレフィンの群から、あるいはそれらの組み合わせから選択されるプラスチックから成形されることが好ましい。特に好ましくは、プラスチックは、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)またはポリエチレンテレフタレート(PET)を含む群から選択される。
【0059】
好ましくは、コーティングは、2nmと500nmの間、より好ましくは10nmと250nmの間、さらに好ましくは20nmと80nmの間である層厚を有する。特に好ましい実施形態では、コーティングの層厚は、40nmと60nmの間、または45nmと55nmの間である。このような厚さのコーティングは、本明細書に記載される方法を用いて容易に生成することができる。
【0060】
本発明の一態様によるパッケージング機は、コンタクトレンズ用パッケージを製造するためのパッケージング機であって、収容要素の少なくとも1つのカップを成形するように構成された成形ステーションと、前記収容要素を、前記少なくとも1つのカップの領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤でコーティングするように構成されたコーティングステーションと、前記収容要素の前記少なくとも1つのカップをコンタクトレンズ液及びコンタクトレンズで充填するように構成された充填ステーションと、前記収容要素にカバーフィルムを貼り付けて、前記少なくとも1つのカップを密閉するように構成されたシーリングステーションと、を備えることを特徴とするパッケージング機である。
【0061】
このようにして提供されるパッケージング機によって、コンタクトレンズ用パッケージの収容要素の少なくとも1つのカップに酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含有するコーティング剤を施すことができ、その結果、本発明による方法および本発明によるコンタクトレンズ用パッケージに関連して既に説明した利点が達成される。
【0062】
好ましくは、パッケージング機は、上述した方法を実行するように構成される。好ましくは、パッケージング機は、上述したコンタクトレンズ用パッケージを製造するように構成されている。
【0063】
この方法またはコンタクトレンズ用パッケージに関して説明した特徴は、パッケージング機にも同様に適用可能であり、その逆もまた然りである。
【0064】
パッケージング機は、収容要素を打ち抜くように構成された打ち抜きステーションをさらに含んで構成されてもよい。特に、成形ステーションは、少なくとも1つのカップをフィルムウェブに熱成形するように構成することができ、打ち抜きステーションは、収容要素をフィルムウェブから打ち抜くように構成することができる。
【0065】
シーリングステーションの後、パッケージング機は、例えば、穿孔または溝入れステーションなどのさらなるステーションを含んでもよく、このステーションは、収容要素の複数のカップの個々のカップ間および/または複数の相互に接続された収容要素の個々の収容要素間に材料の弱化を導入するように構成されている。材料の弱化は、例えば、穿孔又は溝の形態とすることができ、カップ又は収容要素の取り外しを可能にする。
【0066】
成形ステーションは、好ましくは、上記の方法に関連して既に説明したように、フィルムウェブを加熱するための加熱装置と、少なくとも1つのカップをフィルムウェブに成形するための成形装置とを含んで構成される。
【0067】
コーティングステーションは、好ましくは、収容要素が酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含有するコーティング剤でコーティングされるコーティング室を含んで構成される。コーティング室は、処理ガスをコーティング室に導入するためのガスフィードを有してもよい。コーティング室は、コーティング室内に大気圧以下の圧力を発生させるための真空源に流体的に接続されることが可能である。さらに、コーティングステーションは、好ましくは、コーティング室内にプラズマを発生させるように構成されたエネルギー源を含んで構成されている。エネルギー源は、コーティング室内でマイクロ波を発生させるように構成することができ、または電極を含んで構成されている。
【0068】
好ましくは、コーティングステーションは、少なくとも1つの収容要素が挿入された支持体が、コーティングステーション、充填ステーションおよびシーリングステーションを自動的に通過できるように、パッケージング機と一体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、本発明に係るコンタクトレンズ用パッケージの斜視図を示している。
【
図2】
図2(a)-(d)は、本発明に係る方法を実施中のコンタクトレンズ用パッケージと対応する中間製品の側面図を示している。
【
図3】
図3は、コンタクトレンズ用パッケージのコーティングを行うためのコーティング室を模式的に示している。
【
図4】
図4は、本発明に係るパッケージング機の斜視図を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1は、本発明の一態様に係るコンタクトレンズ用パッケージ2の一実施形態を示す斜視図を示している。コンタクトレンズ用パッケージ2の断面図は、
図2(d)に見ることができる。コンタクトレンズ用パッケージ2は、少なくとも1つのカップ6を有する収容要素4と、少なくとも1つのカップ6を密閉するために収容要素4に接続されるカバーフィルム8とを含んで構成される。 さらに、収容要素4は、少なくとも1つのカップ6を取り囲み、カバーフィルム8が取り付けられるフランジ10を有する。
【0071】
好ましくは、収容要素4は、正確に1つのカップ6を有する。複数の収容要素4は、例えばそれらの長手方向及び/又は横方向の側面に沿って、互いに接続されることが可能である。好ましくは、収容要素4は、例えば収容要素4とカバーフィルム8の穿孔領域によって、できるだけ容易に分離可能であるように互いに接続される。また、収容要素4は、複数のカップ6を有してもよい。したがって、本明細書における好ましい実施形態の説明は、本質的に収容要素4及びカップ6の数に関係なく、複数の収容要素4及び/又は複数のカップ6を有する実施形態に同様に適用される。
【0072】
少なくとも1つのカップ6は、
図2(d)による断面図で分かるように、コンタクトレンズ液12とコンタクトレンズ14を収容する役割を果たす。カップ6の領域における収容要素4の壁厚が小さい場合であっても、コンタクトレンズ液12又はその成分のコンタクトレンズ用パッケージ2の外への拡散を回避するために、収容要素4は、少なくともカップ6の領域において、酸化ケイ素又は酸化アルミニウムを含むコーティング剤16を有している。コーティング剤16は、
図2(c)および
図2(d)において破線で示されている。コーティング剤16は、好ましくは連続的であることは自明である。
【0073】
好ましくは、少なくとも1つのカップ内面6aは、コーティング剤16を有する。カップ内面6aは、カバーフィルム8とともに、コンタクトレンズ液12およびコンタクトレンズ14が収容される空洞6bを形成するカップ6の側面である。したがって、カップ内面6aは、コンタクトレンズ液12と接触しており、したがって必要なバリア効果を発揮するためには、コーティング剤16を完全に備えていることが望ましい。
【0074】
収容要素4は、
図2(c)及び
図2(d)に示すように、カップ6の外側の領域、特にフランジ10の領域にコーティング剤16を有するようにしてもよい。しかしながら、収容要素4は、例えばカバーフィルム8の収容要素4への取り付けをより良くするために、カップ6又はカップ内面6aの外側、特にフランジ10の領域にコーティング剤16を有さないことも望ましい場合がある。
【0075】
コーティング剤16のシーリング効果は、収容要素4の壁厚を最小にすることができると同時に、コンタクトレンズ用パッケージ2の密閉性を確保することを意味する。したがって、収容要素4は、カップ6の領域で、好ましくはどこでも、0.05mmと0.6mmの間、より好ましくは0.1mmと0.5mmの間、さらに好ましくは0.2mmと0.4mmの間である壁厚Wを有してもよい。
【0076】
コーティング剤16は、好ましくは2nmと500nmの間、より好ましくは10nmと250nmの間、さらに好ましくは20nmと80nmの間である層厚Sを有する。特に好ましい実施形態において、コーティング剤16の層厚Sは、40nmと60nmの間、又は45nmと55nmの間である。コーティング剤16は、特にカップ内面6aにおいて、均一な層厚Sを有することが好ましい。
【0077】
以下、コンタクトレンズ用パッケージ2を製造するための、本発明の一態様に係る方法の実施形態について説明する。
【0078】
この方法は、まず、少なくとも1つのカップ6を有する収容要素4の成形を含んでなる。複数のコンタクトレンズ用パッケージ2を製造できるようにするために、方法ステップは、各コンタクトレンズ用パッケージ2に対して繰り返すことができ、又は各方法ステップは、複数の収容要素4に対して同時に実施され、続いて、必要に応じて、さらに複数の収容要素4に対して繰り返される。以下の備考は、常に少なくとも1つの収容要素4に、したがって1つの収容要素4だけでなく、並行してまたは連続して製造される複数の収容要素4にも適用されることは自明である。
【0079】
収容要素4は、原則として、射出成形または熱成形によって成形することができる。収容要素4が射出成形によって製造される場合、これは、例えば
図2(b)で見ることができるように、少なくとも1つのカップ6を有する所望の形状を既に与えるものである。
【0080】
しかし、熱成形による収容要素4の成形が優先される。
図2(a)及び2(b)に描かれているように、収容要素4の成形は、フィルムウェブ18を設けることと、少なくとも1つのカップ6をフィルムウェブ18に熱成形することを含む構成としてよい。熱成形は、順に、フィルムウェブ18の加熱と、フィルムウェブ18における少なくとも1つのカップ16の深絞りを含んで構成される。フィルムウェブ18は、例えば、ポリプロピレン(PP)からなり、成形されるべき収容要素4、特にカップ16の壁厚Wに実質的に対応する厚さを有してよい。この方法は、複数のカップ6を同時にフィルムウェブ18に成形する場合に、最大の効率を有する。
【0081】
少なくとも1つのカップ6がフィルムウェブ18に成形された後、収容要素4の成形は、好ましくは、収容要素4をフィルムウェブ18から打ち抜くことを含んでなる。打ち抜きの後、単数化した収容要素4が存在する。同時に、各収容要素4は、1つまたは複数のカップ6を有してよい。また、相互に接続された複数の収容要素4が打ち抜かれることが考えられる。
【0082】
この方法は、さらに、少なくともカップ6の領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤16で収容要素4をコーティングすることを含んでいる。対応するコーティングされた収容要素4は、
図2(c)に見ることができ、コーティング剤16は破線で示されている。収容要素4のコーティングは、少なくともカップ内面6a上で行われるので、収容要素4は、上記のように、少なくともカップ内面6a上にコーティング剤16を有する。コーティングはまた、
図2(c)で見ることができるように、カップ6の外側の領域、特にフランジ10の領域で、またはカップ内面6a上のみで効果的に行うことができる。
【0083】
方法の残りの部分を通して繊細な収容要素4のハンドリングを容易にし、それらを損傷から保護し、方法をできるだけ効率的にするために、方法は、好ましくは、ハンドリング装置による収容要素4の把持と、ハンドリング装置による把持された収容要素4の支持体20への挿入とを含む。ハンドリング装置は、好ましくは打ち抜き後に収容要素4を打ち抜き装置から直接取り外すことができる。
【0084】
適切なハンドリング装置は、例えば「ピックアンドプレース」装置として当業者に知られており、したがって、詳細な説明はしない。例えば、ハンドリング装置は、それぞれ1つまたは複数の収容要素4を把持するための把持装置または吸引装置として設計することができる。
【0085】
図3に模式的に描かれている支持体20において、収容要素4は、さらなる処理ステップに送られてもよい。好ましくは、支持体20は、複数の収容要素4を同時に収容する。支持体20は、収容される各収容要素4のための、または収容される各カップ16のための、例えばレセプタクルまたは貫通孔の形態のシート22を含んでなる。同時に、収容要素4は、
図3に描かれているように、フランジ10が支持体20上に載り、少なくとも1つのカップ6が上部に開いているように、支持体20に配置されてもよい。しかしながら、収容要素4は、フランジ10が支持体20上に載り、少なくとも1つのカップ6が底面に開いているように、支持体20上に配置されてもよい。次いで、シート22は、好ましくは、フランジ10に適合され、底面に対して開かれているので、カップ内面6aは、コーティングのためにアクセス可能である。その結果、収容要素4は、カップ6に隣接するフランジ10の領域を介して支持体20に載り、フランジ10の当該領域のコーティングを防止することができる。
【0086】
コーティングは、好ましくは、
図3に模式的に描かれているコーティング室24で行われる。この場合、本方法は、収容要素4のコーティングの前に、コーティング室24において収容要素4を配置し、その後にコーティング室24における収容要素4のコーティングすることを含んでなる。コーティング室24内の収容要素4の配置は、好ましくは、支持体20をコーティング室24内に移動させることによって行われる。
【0087】
コーティング室24への収容要素4の配置後、収容要素4のコーティングの前に、好ましくは、本方法は、コーティング室24内の大気圧以下の圧力の生成と、コーティング室24への処理ガスの導入とを含む。
【0088】
この目的のために、コーティング室24は、処理ガスをコーティング室24に導入するためのガス供給部26を有することができる。ガス供給部26は、密閉可能であり、ガスタンクへの流体接続を提供する。さらに、コーティング室24は、コーティング室24内の大気圧以下の圧力を発生させるための真空源28と流体接続している。
【0089】
さらに、本方法は、コーティング室内でプラズマを発生させ、その結果、収容要素4上にコーティング剤16を発生させることを含んでいる。処理ガスからのプラズマの生成のために、コーティング室24は、適切なエネルギー源30を有する。エネルギー源30は、例えば、マイクロ波を発生させるように構成されているか、または、適切な電極から構成されている。
【0090】
収容要素4がコーティング剤16でコーティングされた場合、それは、好ましくは、関連する処理ステーションを介して支持体20内で案内されることによって、さらなる次の方法のステップに供給される。
【0091】
コーティング後に最初に行われるのは、収容要素4の少なくとも1つのカップ6へのコンタクトレンズ液12とコンタクトレンズ14の充填であり、その両方は
図2(d)に見ることができる。収容要素4の少なくとも1つのカップ6の充填は、好ましくは、充填ステーションを通して支持体20を移動させることを含んでなる。
【0092】
少なくとも1つのカップ6が充填されている場合、行われるのは、同様に
図2(d)に描かれているように、少なくとも1つのカップ6を密閉するために収容要素にカバーフィルム8を貼り付けることである。カバーフィルム8の貼り付けは、好ましくは、特にフランジ10の領域における、収容要素4へのカバーフィルム8の接着結合又は(熱)シーリングを含んでなる。さらに、カバーフィルム8の貼り付けは、シールステーションを介した支持体20の移動を含んでよい。
【0093】
そこで、カバーフィルム8も十分なバリア効果を発揮するように、アルミニウム複合フィルムから形成することが好ましい。このようなカバーフィルムは、当業者に知られており、簡単な方法で収容要素4に接続することができ、同時に、コンタクトレンズ14を取り外すために容易に開くことができる。
【0094】
収容要素4が複数のカップ6を有する場合、及び/又は複数の収容要素4が互いに連結されている場合、個々のカップ6又は収容要素4を取り外しできることが望ましい場合がある。カバーフィルム8が収容要素4に貼り付けられている場合、本方法は、次に、収容要素4の個々のカップ6の間又は個々の収容要素4の間に、材料弱化、特にミシン目又は溝を導入することを追加的に含んでもよい。
【0095】
図4を参照すると、記載されたのは、コンタクトレンズ用パッケージ2を製造するための本発明の一態様によるパッケージング機32であり、このパッケージング機は、上記の方法を実行し、上記のコンタクトレンズ用パッケージ2を製造するよう構成される。
【0096】
パッケージング機32は、収容要素4の少なくとも1つのカップ6を形成するように構成された成形ステーション34を含んで構成されている。収容要素4が熱成形によって成形される好ましい例示的な実施形態では、成形ステーション34は、フィルムウェブ18を加熱するための加熱装置36と、少なくとも1つのカップ6をフィルムウェブ18に成形または深絞りするための成形装置38とを含んで構成されている。加熱装置36と成形装置38は、成形ステーション34の構成要素として
図4に模式的に示されている。好ましくは、複数のカップ6が同時に成形される。
【0097】
熱成形による少なくとも1つのカップ6の成形の効率は、フィルムウェブ18がストックロール40に設けられている場合に、特に効果的に利用することができる。長尺のフィルムウェブ18は、ストックロール40上に省スペースで予備的に置いておくことができる。さらに、フィルムウェブ18を成形ステーション34に容易に供給されるようにしてもよい。
【0098】
この例示的な実施形態では、パッケージング機32は、フィルムウェブ18から収容要素4を打ち抜くための任意の打ち抜きステーション42をさらに備えている。好ましくは、複数の収容要素4が同時に打ち抜かれる。好ましくは、打ち抜きステーション42による打ち抜きは、成形ステーション34における少なくとも1つのカップ6の成形の直後に行われる。それによって、収容要素4は、コーティングの前に打ち抜かれるので、コーティング剤16の無傷性を確保することができる。しかしながら、コーティングの後にのみ収容要素4を打ち抜くことも考えられる。その場合、打抜きステーション42は、パッケージング機32の適切な箇所に配置されなければならない。
【0099】
適切な成形および打ち抜きステーション34、42は、パッケージ製造の分野における当業者には知られているので、詳細な説明は省略する。
【0100】
打ち抜き後、収容要素4は単数化された形で存在するが、それでも複数のカップ6を持つことができる。穏やかな取り扱いのために、収容要素4は、その後、好ましくは、ハンドリング装置によって支持体20(
図3参照)に挿入され、さらなる処理ステーションに供給される。
【0101】
パッケージング機32はさらに、少なくとも1つのカップ6の領域において、酸化ケイ素または酸化アルミニウムを含むコーティング剤16で収容要素4をコーティングするために構成されているコーティングステーション44を含んで構成される。コーティングステーション44は、
図3を参照して詳細に説明したように、コーティング室24とエネルギー源30とを含んで構成され得る。
【0102】
コーティングステーション44がパッケージングラインに組み込まれていることが特に好ましく、その結果、コンタクトレンズ用パッケージ2が特に簡単かつ効率的な方法で製造可能になる。特に、収容要素4は、その後、さらなるハンドリングまたは収容要素4の移送の必要なしに、コーティングステーション44および後続の処理ステーションの両方を通じて支持体20内で案内され得る。しかしながら、これは、コーティングステーション44が他の処理ステーションと一つのライン上に配置され、方向付けされなければならないことを意味するものではない。例えば、収容要素4が、例えばロボットに取り付けられているハンドリング装置によって、他の処理ステーションから離れ、コーティングステーション44の方へ移動されることが考えられる。また、収容要素4が最初に支持体20に挿入され、それに応じて支持体20がロボットによってコーティングステーション44に案内される、または移動されることが考えられる。
【0103】
パッケージング機32の充填ステーション46において、コンタクトレンズ液12及びコンタクトレンズ14が各カップ6に充填される。 その後、パッケージング機32は、カバーフィルム8を収容要素4に貼り付けるように構成されたシーリングステーション48を更に備える。充填ステーション46及びシーリングステーション48は、公知のパッケージング32機に従ってコンタクトレンズ用パッケージの製造のために構成することができ、したがって、詳細には説明しない。
【0104】
収容要素4に複数のカップ6が存在する場合、または複数の収容要素4が互いに一体である場合、材料弱化、特に穿孔または溝を、収容要素4の個々のカップ6の間またはシーリングステーション48に続くステーション(描かれていない)における個々の収容要素4の間に導入することが可能である。ミシン目以外の材料の弱化も可能である。