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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】蒸気焼灼システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/04 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A61B18/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022132689
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2019533193の分割
【原出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2022162036
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】62/437,617
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/538,517
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】ホーイ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスティングス ロジャー ノエル
(72)【発明者】
【氏名】シュロム マーク
(72)【発明者】
【氏名】カールソン スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】バーン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウー カーリアム シー
(72)【発明者】
【氏名】ジャーク エリック
(72)【発明者】
【氏名】クラヴィク リチャード チャールズ
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0276713(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0354140(US,A1)
【文献】特開2002-035004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0360523(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0288543(US,A1)
【文献】特許第7129980(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気送出デバイスであって、
ハンドル部分と、
カートリッジ部分と、を有し、
前記ハンドル部分は、管腔と、前記管腔内に配置され且つRFエネルギの供給源に接続可能であるRFコイルを有し、
前記カートリッジ部分は、前記ハンドル部分の管腔に挿入されるように構成され、
前記カートリッジ部分は、尿道に挿入されるように構成されたシャフトと、前記シャフト内に配置された蒸気送出ニードルと、前記蒸気送出ニードル及び流体源に流体接続された蒸気コイルを含み、
前記カートリッジ部分が前記ハンドル部分の管腔の中に挿入された組立形態において、前記蒸気コイルは、前記RFコイルの中にあり、且つ、前記カートリッジ部分を、蒸気を前立腺の複数の部分に送出するように前記ハンドル部分に対して回転させることが可能である、蒸気送出デバイス。
【請求項2】
前記カートリッジ部分は、前記カートリッジ部分を回転させるときに前記ハンドル部分と電気的に接触している温度計を含む、請求項1に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項3】
前記カートリッジ部分は、少なくとも1つの導電リングを含み、前記導電リングは、前記カートリッジ部分の外面の周りに延び、前記温度計に電気的に接続される、請求項2に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項4】
前記ハンドル部分は、少なくとも1つの斜めコイルを含み、前記温度計は、前記カートリッジ部分の少なくとも1つの導電リングと前記少なくとも1つの斜めコイルとの間の接触を介して、前記ハンドル部分と電気的に接触している、請求項3に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項5】
前記少なくとも1つの導電リングは、前記蒸気コイルよりも近位側にある、請求項3に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項6】
前記組立形態において、前記カートリッジ部分の長手方向軸線は、前記蒸気コイルの中央の開口の中を延びる、請求項1に記載の蒸気送出デバイス
【請求項7】
前記蒸気コイルは、前記カートリッジ部分の外面の周りに巻かれる、請求項1に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項8】
前記組立形態において、前記ハンドル部分は、前記カートリッジ部分の少なくとも一部分を全周にわたって包囲する、請求項1に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項9】
前記カートリッジ部分は、少なくとも30度回転可能である、請求項1に記載の蒸気送出デバイス。
【請求項10】
前記カートリッジ部分は使い捨てである、請求項1に記載の蒸気送出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2016年12月21日出願の米国仮特許出願第62/437,617号及び2017年7月28日出願の米国仮特許出願第62/538,517号の優先権を主張し、本明細書に両出願の全体を援用する。
【0002】
本出願は、2015年9月9日出願の米国特許出願第14/773,853号明細書及び2016年12月19日出願の国際特許出願番号PCT/US2016/067558と関連し、本明細書に両出願の全体を援用する。
【0003】
特許及び特許出願を含む本明細書で言及する全ての文献を、具体的かつ個々に示されたかのような同じ程度まで本明細書に援用する。
【0004】
本発明は、低侵襲性手法を使用する前立腺の治療のためのデバイス及びそれと関連する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
前立腺は、人生の早期ではクルミの寸法及び形状であり、BPH(前立腺肥大症)によって生じる肥大の前において、約20グラムの重さを有する。前立腺肥大は、通常の経過であるように見える。前立腺の寸法は、年と共に徐々に、通常の寸法の2倍又はそれ以上に増大する。外側前立腺被膜の線維筋性組織は、前立腺が或る寸法に達した後、肥大を制限する。肥大時のかかる制限により、包内組織は、尿道前立腺部を圧迫して締め付け、従って、尿の流れに抵抗を生じさせる。
【0006】
前立腺は、3つの領域、即ち、周囲領域、移行領域、及び中心領域に分類される。周囲領域(PZ)は、男性の前立腺の容積の約70%を含む。前立腺の後面のこの被膜下部分は、遠位尿道を包囲し、癌の70%~80%は、周囲領域の組織に発症する。中心領域(CZ)は、射精管を包囲し、前立腺の容積の約20~25%を含む。中心領域は、しばしば、炎症過程の部位である。移行領域(TZ)は、前立腺肥大症が発達する部位であり、正常な前立腺の腺要素の容積の約5~10%を含むが、BPHの場合、かかる容積の80%までを構成することがある。移行領域は、2つの外側前立腺中葉と、尿道周囲腺領域を含む。生来のバリヤが移行領域の周りにあり、すなわち、尿道前立腺部、前部線維筋間質FS、及び移行領域と周囲領域の間の繊維質平面FPである。前部線維筋間質FS又は腺維筋領域は、主として腺維筋性組織である。
【0007】
前立腺癌の約70%~80%は、前立腺の周囲領域内で発症し、周囲領域に拘束されることがある。近年、生検の後、癌が見つかった組織の領域のみを治療する前立腺癌局所治療への関心が高まっている。RF焼灼エネルギを用いるような従来技術の局所治療処置は、処置を周囲領域組織に限定しない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願第14/773,853号明細書
【文献】国際特許出願番号PCT/US2016/067558
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
進行した前立腺癌にかかった患者において、前立腺切除が示されることがあり、手術の選択肢が望まれている。経尿道手法により、前立腺全体又は前立腺の中葉全体を焼灼することができるデバイスが望まれている。この低侵襲性手法では、移行領域及び周囲領域の両方を処置することがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
周囲領域以外の組織を焼灼することなしに周囲領域組織を焼灼するためのシステム及び方法を開示する。経尿道手法は、尿道前立腺部に隣接して位置する周囲領域組織にアクセスするのに蒸気送出デバイスを使用する。
【0011】
周囲領域全体の処置は、尿道内に配置された送出デバイスシャフトから2.5cmまで延びる蒸気送出ニードルを採用するのがよい。超音波及びニードル位置センサによる案内を使用して、蒸気を、ニードルの経路に沿う多数部位から送出するのがよい。
【0012】
蒸気送出ニードルは、その経路に沿い且つ制御された移動が可能であり、かかる移動は、蒸気を送出するための停止を含む。蒸気送出ニードルの到達範囲内の任意の箇所への蒸気送出ニードルのデジタルステップ式の移動を制御するシステム及び方法を開示する。
【0013】
先の鈍いニードルが開示され、かかるニードルは、初期の浅い展開の間、尿道壁を突き通すことができるが、ニードル送出ソレノイドへの電流パルスを用いてニードルを前進させたとき、前立腺被膜を突き通さない。
【0014】
殆どの前立腺癌は、周囲領域で発症する。ニードルを通して周囲領域に送出される蒸気は、癌が存在しないかもしれない前立腺の他の領域に対する組織バリヤを横切らない。
【0015】
前立腺の全ての領域を、単一の経尿道蒸気送出デバイスで処置することが可能である。部分前立腺切除又は全前立腺切除は、蒸気を前立腺のいくつかの領域又は全ての領域に付与する単一の治療処置中に達成されてもよい。
【0016】
半使い捨ての蒸気送出デバイスも開示され、かかる蒸気送出デバイスでは、ハンドル及びケーブルが再使用可能であり、バレルと、ニードル送出シャフトと、取付け式の水及び洗浄水ラインとが、使い捨てカートリッジを構成する。
【0017】
RF電力を、再使用可能なハンドル内のRFコイルから、使い捨てカートリッジ内の蒸気送出コイルに伝達するために、誘導結合が使用される。
【0018】
非接触のニードル展開力を、再使用可能なハンドル内のソレノイドコイルから、使い捨てカートリッジ内のニードル展開磁石に付与するために、磁気結合が採用される。
【0019】
誘導結合を使用して、温度及び識別データを使い捨てカートリッジから再使用可能なハンドルに通信するのがよい。誘導コイル及び力コイルは円筒形であり且つ対称であるので、それらの機能は、使い捨てカートリッジの向きからは独立しており、従って、使い捨てカートリッジを再使用可能なハンドルに対して回転させることができ、それにより、送出デバイスハンドルを患者の脚の間で回転させることなしに、前立腺の両側への治療の実施を可能にする。蒸気コイル温度の読取りのための、使い捨てカートリッジと再使用可能なハンドルの間の摺動接点も開示される。
【0020】
医師は、単一の再使用可能なハンドルを使用して示された処置に対して設計された使い捨てカートリッジを選択することにより、BPH又は癌を処置することができる。例えば、BPH用カートリッジは、可変かつ制御可能なニードル深度がBPH手順には必要ではないので、前立腺癌用カートリッジよりも簡単かつ廉価であると考えられる。
【0021】
管腔と管腔内に配置されてRFエネルギの供給源に接続可能であるRFコイルとを有するハンドル部分と、ハンドル部分の管腔に挿入されるように構成されたカートリッジ部分であって、患者の尿道に挿入されるように構成された細長いシャフト、細長いシャフト内に配置された蒸気送出ニードル、蒸気送出ニードルと流体源とに流体接続された蒸気コイルを含み、カートリッジ部分のハンドル部分内への挿入が、蒸気コイルをRFコイル内に位置合わせされかつ位置決めする上記カートリッジ部分とを含む蒸気送出デバイスを提供する。
【0022】
RFコイルへのRFエネルギの印加は、流体が流体源から蒸気コイルに送出される時に蒸気を蒸気コイル内に誘導的に発生させることができる。
【0023】
一部の例では、蒸気送出ニードルは、蒸気を患者の組織に送出するように構成される。
【0024】
カートリッジ部分は、更に、第1のソレノイドコイル及び第2のソレノイドコイルと、蒸気送出ニードルの近位部分に取付けられたニードル駆動磁石を含み、ニードル駆動磁石は、蒸気送出ニードルが後退位置にあるとき、第1のソレノイドコイル内に摺動可能に配置され、蒸気送出ニードルが延長位置にあるとき、第2のソレノイドコイル内に摺動可能に配置されることを開示する。
【0025】
デバイスは、更に、ニードル展開スイッチをハンドル部分に有するのがよい。
【0026】
いくつかの例では、ニードル展開スイッチの押込みによって、蒸気送出ニードルを後退位置から延長位置まで完全に展開することができる。ニードル展開スイッチの各押込みによって、蒸気送出ニードルを増分式に展開することができる。例えば、蒸気送出ニードルは、1mmの増分で展開される。
【0027】
デバイスは、更に、蒸気送出ニードルに配置された位置センサを含み、位置センサは、蒸気送出ニードルの展開位置を決定するように構成されるのがよい。位置センサが、蒸気送出ニードルが望ましい増分距離を移動しなかったことを示したら、蒸気送出ニードルは、前進することから阻止される安全機能が設けられる。
【0028】
蒸気コイルは、例えば、インコネル(登録商標)チューブ材を含む。
【0029】
デバイスは、カートリッジ部分がハンドル部分の管腔に挿入された時のカートリッジ部分の横移動を防止するように構成されたラッチを更に含むことができる。
【0030】
カートリッジ部分がハンドル部分の管腔に挿入されるとき、カートリッジ部分を回転させることができる。これは、蒸気を前立腺内の複数の位置に送出し、かつ蒸気を前立腺の両方の中葉に送出するために行うことができる。
【0031】
1つの特定の例では、送出ニードルは、それが延長位置にあるとき、細長いシャフトから24mmよりも大きく延びることができない。
【0032】
蒸気送出ニードルは、膨脹可能なバルーンを含み、膨脹可能なバルーンは、蒸気が患者の組織内の穿刺孔から漏れることを阻止するように構成されることを提供する。膨脹可能なバルーンは、蒸気送出ニードルの凹部内に位置決めされる。膨脹可能なバルーンは、蒸気送出中、蒸気によって膨らまされる。
【0033】
蒸気送出デバイスは、更に、RFコイルへのRFエネルギの送出を制御するように構成された電子コントローラを有するのがよい。
【0034】
蒸気送出デバイスは、更に、蒸気コイルの出口部に配置された温度センサを有し、温度センサは、電子コントローラに電気的に結合され、蒸気コイルの出口部の流体又は蒸気の温度を測定するように構成されることも考えられている。
【0035】
安全対策として、電子コントローラは、出口部の蒸気又は流体の測定温度が好ましい温度範囲の外側にあるとき、RFエネルギの送出の停止を開始させるように構成されるのがよい。
【0036】
患者の前立腺に蒸気を送出させる方法であって、蒸気送出デバイスのカートリッジ部分を蒸気送出デバイスのハンドル部分の管腔に挿入して、カートリッジ部分の蒸気コイルをハンドル部分のRFコイル内に整列させ且つ位置決めすることと、カートリッジ部分の細長いシャフトを患者の尿道に挿入することと、細長いシャフトの遠位端を患者の尿道前立腺部まで前進させることと、蒸気送出ニードルを細長いシャフトから患者の前立腺の中に延長させることと、流体の流れを蒸気コイル内に送出することと、RFエネルギをRFコイルに付与して、蒸気を蒸気コイル内に誘導式に発生させることと、蒸気を蒸気送出ニードルの中を通して前立腺に送出することと、を含む方法も提供する。
【0037】
延長させることは、少なくとも1つのソレノイドコイルを用いて磁場を発生させ、蒸気送出ニードルを前立腺の中に延長させることを含むのがよい。
【0038】
本方法は、更に、カートリッジ部分をハンドル部分内で回転させることを含むのがよい。
【0039】
本発明をより良く理解し、本発明を実際にどのように実行することができるかを見るために、類似の参照文字が添付図面において類似の実施形態を通して一貫して対応する特徴を示す添付図面を参照して一部の好ましい実施形態を単に非限定的な例として次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】経尿道蒸気送出デバイスの一実施形態を示す図である。
図1B】経尿道蒸気送出デバイスの一実施形態を示す図である。
図1C】経尿道蒸気送出デバイスの一実施形態を示す図である。
図2A】蒸気送出デバイスの使い捨てカートリッジを示す図である。
図2B】蒸気送出デバイスの使い捨てカートリッジを示す図である。
図3】蒸気送出デバイスの再使用可能なハンドルを示す図である。
図4】蒸気送出デバイスの磁石を示す図である。
図5】蒸気送出デバイスの磁気アクチュエータの押し用コイル及び引き用コイルを通過する電流の方向を示す図である。
図6A】BHPデバイスから癌用デバイスまで移動する蒸気ニードル展開長さを示す図である。
図6B】BHPデバイスから癌用デバイスまで移動する蒸気ニードル展開長さを示す図である。
図7】BPH用デバイスから癌用デバイスまで移動するソレノイドに対する変化を示す図である。
図8】磁石位置に対して得られる力を示す図である。
図9A】蒸気漏れを防止する技術を示す図である。
図9B】蒸気漏れを防止する技術を示す図である。
図10】誘導蒸気発生器を示す図である。
図11】出口チューブ用抵抗温度センサの読取りのための等価回路を示す図である。
図12】周囲領域組織に隣接した尿道前立腺部に挿入された送出デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
一般的に、BPH(前立腺肥大症)又は前立腺癌を処置する方法は、加熱された蒸気を前立腺の内部の隙間に経尿道的に導入することを含み、蒸気は、前立腺組織を制御可能に焼灼する。かかる方法は、前立腺組織の局所焼灼を生じさせ、より詳細には、蒸気から付与される熱エネルギを局所化させ、尿道に隣接した組織を、尿道に隣接してない前立腺組織を損傷させることなしに焼灼する。
【0042】
本明細書に開示する経尿道蒸気送出デバイスは、蒸気を患者の前立腺内に経尿道的に送出するのに使用される。デバイスの細長いシャフトを、患者の尿道の中に前進させて、尿道前立腺部内で前立腺の近くに位置決めしたら、蒸気送出ニードルを、尿道壁を貫通させて前立腺内に挿入する。次いで、蒸気を蒸気送出ニードルの中を通して前立腺内に送出する。
【0043】
〔半使い捨ての蒸気送出デバイス〕
経尿道蒸気送出デバイス100が、組立てられた形態で図1Aに示され、図1Bは、分解図であり、蒸気送出デバイスの再使用可能なハンドル部分102と使い捨てカートリッジ部分104を示す。蒸気送出デバイスのハンドル部分102は、管腔103と、RF発生器(図示せず)にプラグ接続される電気ケーブル106と、グリップ部分107と、洗浄、ニードルの前進/後退、RF電力のON/OFFの作動ためのトリガ108と、管腔内に配置され且つ蒸気を誘導式に生成するように構成されたRFコイル110(図示せず)と、ハンドル部分内に配置され且つ蒸気ニードルを前進させたり後退させたりするように構成されたソレノイドコイル112(図示せず)を含む。
【0044】
RF発生器は、蒸気を生成するための電力及び流体を経尿道蒸気送出デバイスに供給するように構成される。例えば、RF発生器は、RFエネルギをハンドル部分のRFコイルに供給するように構成される。RF発生器はまた、潅流/冷却流体、吸引等の作動のために不可欠な電力及び他の構成要素をシステムに供給するために蒸気送出デバイスに接続される。RF発生器は、蒸気治療中の作動パラメータ及び制御をユーザに提供するために、電子コントローラ及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を含むのがよい。
【0045】
RF発生器は、電気コネクタを含み、電気コネクタは、RF電流を蒸気送出デバイスに供給し、電気信号を蒸気送出デバイスのスイッチに送信し又はそれから受信し、測定値(例えば、蒸気送出デバイスの温度)及び電気信号を蒸気送出デバイスのコントローラ(例えば、その電気コネクタ)に送信し又はそれから受信して、測定値及び電気信号は、蒸気送出デバイスを識別したり、蒸気送出の履歴を追跡したり、所定の蒸気送出システムの過剰使用を防止するためのものである。RF発生器はまた、蒸気送出デバイスに食塩水等の冷却/潅流流体の流れを供給する蠕動ポンプを含むのがよい。
【0046】
使い捨てカートリッジ104は、膀胱鏡及び蒸気送出ニードル116のための管腔を有する細長いシャフト114と、蒸気送出ニードルに取付けられ且つソレノイドコイル112内で発生させた磁場によって前進又は後退するニードル駆動磁石118(図示せず)と、水が蒸気に誘導的に変換される蒸気コイル120と、滅菌水や食塩水による洗浄及び膀胱の排液のためのプラスチック管路122を含む。カートリッジ部分は、ハンドル部分102の管腔103に挿入されるように構成される。カートリッジ部分をハンドル部分に挿入するとき、カートリッジ104の蒸気コイル120を、ハンドル部分のRFコイル110内に整列させ且つ位置決めしてもよいし、変形例として(図10に示すように)、RFコイル110を蒸気コイル120の周りに整列させ且つ位置決めしてもよい。細長いシャフト114は、患者の尿道前立腺部及び前立腺まで延びることができる長さで患者の尿道に挿入されるように寸法決めされ且つ構成される。図1Bに示すように、カートリッジ104をハンドル内で回転させて、ハンドルを患者の脚の間で回転させることなしに、前立腺の左右の中葉への蒸気の送出を容易にしてもよい。
【0047】
いくつかの手順において、蒸気治療は、経直腸的超音波(TRUS)撮像によって少なくとも部分的に案内される。これらの手順おいて、TRUSプローブは、蒸気送出デバイスハンドルが図1Aに示す垂直下方位置にあることを防止するのがよい。いくつかの変形実施形態では、送出デバイスハンドルは、送出デバイスのバレルから上方に延びていてもよい。他の実施形態では、バレルを、送出デバイストリガ及びケーブルを含むように修正して、ハンドル部分を全くなくしてもよい。
【0048】
いくつかの手順において、送出デバイスニードルを前進させて、尿道壁の最初の孔あけ後、蒸気を2又は3以上の部位に送出する。ニードル進入孔の拡大による蒸気漏れを防止するために、蒸気送出ニードルが患者の解剖学的組織に対して安定したままであることが重要である。図1Cは、ニードル送出、前進、及び蒸気送出中、送出デバイスを安定化して保持するのに使用される調節可能な送出デバイスホルダ124を示している。この調節可能な送出デバイスホルダにより、オペレータは、画像案内されるニードルの配置及び治療の送出に集中することが可能である。図1Cは、可撓性で形状変更可能なシャフト126を有する調節可能な送出デバイスホルダを示し、かかるシャフト126は、治療中の送出デバイスニードルの位置を維持するようにオペレータによって調節される。他の実施形態では、保持デバイスは、電子的に調節されてもよい。保持デバイスは、送出デバイスを尿道から前進させたり後退させたりするように構成されてもよい。図1Cのハンドルは、図1Cに示す調節可能な保持デバイスと同じ程度に簡単であってもよいし、多軸ロボットアームと同じ程度に複雑であってもよい。
【0049】
使い捨てカートリッジ104を図2A及び図2Bに断面図で示す。蒸気送出ニードル116は、ニードル駆動磁石118に剛性的に取付けられ、ニードル駆動磁石118は、ハンドル部分102(図3に図示)内のコイルによって発生させた磁場によって横方向に移動させられる。蒸気コイル120も、図2Bに示されている。使い捨てカートリッジは、抵抗温度計(RTD)119を含み、抵抗温度計(RTD)119は、リード123を介して導電金属リング121と直列に配線されている。抵抗温度計(RTD)119は、蒸気コイル120から出る蒸気の温度を測定することができる。一実施形態では、抵抗温度計(RTD)は、蒸気コイルの出口の周りに巻付けられるのがよい。
【0050】
誘導式の読取りコイルを、再使用可能なハンドル内に設けるのがよい。熱電対を、再使用可能なハンドル部分のRFコイルの上に配置するのがよい。経験が示したことは、過熱(通常は煙)の徴候を示す第1の構成要素は、RFコイルであり、このことは、RFコイルがそれに隣接した内側コイルよりも幾分低い温度にあるときでもそうである。従って、RFコイルは、温度計、好ましくは熱電対のために好ましい場所である。
【0051】
使い捨てカートリッジ104を再使用可能なハンドル部分102に挿入するとき、カートリッジ104は、ハンドル内の斜めコイルと係合する。カートリッジの挿入及び引出し力は、全てのカートリッジが繰返し可能な機械力範囲内にあるように、厳格な範囲内に特定されるのがよい。斜めコイルは、摺動電気接点として機能し、摺動電気接点により、カートリッジからハンドルへのRTD出口温度計リードの電気的接触を維持しながら、ハンドル内でのカートリッジの回転を可能にする。カートリッジを回転させるとき、リングとコイルの間の接触抵抗のいくらかの変化がある。しかしながら、回転の間、正確な温度測定は必要ではなく、かくして、接触抵抗又は回転中の接触抵抗の任意の変化は、ソフトウエアでゼロにされるのがよい。出口温度計は、抵抗温度計(RTD)として示されているけれども、サーミスタ又は熱電対等の他の小型センサを採用してもよい。
【0052】
図2Bに示す蒸気コイルは、図1Aに示すように、カートリッジから延びるプラスチックチューブの中を通る滅菌水の供給部に接続され、且つ、RF発生器に接続される。蒸気コイルの複数の巻き部は、金属チューブ材で構成され、金属チューブ材は、例えば、18ゲージの普通の厚さ(RW)の304ステンレス鋼チューブ材、又は、18ゲージの薄厚(TW)のプラグ引きインコネル(登録商標)625チューブ材である。個々のコイル巻き部は、物理的に接触するのがよく、良好な電気接触を確保するために互いに半田付け又は溶接されるのがよいが、RF電流は、巻き部を分離する十分に薄い酸化層を通過する。
【0053】
蒸気コイル120内の水は、蒸気コイルの周囲を流れる電流によって生じたオーム熱によって蒸気に変換される。これらの電流は、送出デバイスハンドル内に配置された同心のRFコイル内を流れるRF電流によって誘導される。RFコイル内の電流によって生じる交替磁場は、蒸気コイルを透磁性材料から製造することによって強化されるのがよい。300シリーズステンレス鋼の透磁率は冷間加工によって変化するので、同一の透磁率を有するチューブ材ロットを得ることは困難である。デバイスからデバイスへのカロリー出力の一貫性が非常に重要であるので、非磁性チューブ材が、この適用例に好ましい。304等のステンレス鋼を焼鈍して、磁気特性をなくしてもよいし、インコネル(登録商標)625、MP35N、エルジロイ等の非磁性鋼を蒸気コイル用に選択してもよい。インコネル(登録商標)625が望ましく、その理由は、その電気抵抗が、蒸気コイルの遠位(蒸気)端で経験することがある温度範囲(20℃~350℃)にわたって温度からほぼ独立であり、ショット毎の及びデバイス毎の一貫した蒸気の送出を可能にするからである。
【0054】
1又は2以上の電気リードが、無菌水ラインと一緒に、使い捨てカートリッジから延びる。ワイヤ又は電気リードは、RF発生器に接続され、カートリッジ識別及び使用データを供給する信号をカートリッジ内のEPROMから送信し又はそれから受信する。このケーブル内の他のワイヤは、信号をカートリッジ内の蒸気コイル上に位置する熱電対から他の診断データをカートリッジから供給することができる。別の実施形態では、EPROM線及び熱電対線は、使い捨てカートリッジ及びプラグから延び、非使い捨てハンドルに接続され、非使い捨てハンドルを通って主送出デバイスハンドルケーブルに至る小さいケーブルを含むことができる。変形例として、データは、以下に開示されているように、物理的リードの必要なくカートリッジから誘導結合することができる。
【0055】
送出デバイスの再使用可能なハンドル部分102を、図3により詳細に示す。ソレノイドコイル112は、図2Bに示すニードル駆動磁石に対する押し/引き形態で構成される。完全に後退したニードル位置では、ニードル駆動磁石の近位端は、近位側/押し用ソレノイドコイル112と整列する。完全に延長されたニードル位置では、ニードル駆動磁石の遠位端は、遠位側/引き用ソレノイドコイル112と整列する。電流は、図5に示すように、押し用コイル及び引き用コイル内で反対方向に通される。押し用コイルは、反対極性ニードル駆動磁石に反発してそれをコイルの外に出す磁場を引き起こす。反発力のために、磁石は、押し用コイルの軸線に沿って安定した釣り合い状態にはなく、横方向に移動する傾向があり、ニードル駆動磁石とその周囲の間の接触及び軸線方向の前進に対する摩擦抵抗を増大させることがある。引き用コイルは、ニードル駆動磁石を引き用コイルに引きつける磁場を生成する。引き用コイルは、ニードル駆動磁石をコイルの軸線に引きつけ、それにより、押し用コイルの不安定性を除去する。押し用コイル及び引き用コイルの組合せは、単一コイルによって付与される力のほぼ2倍である。図5に見ることができるように、コイルの押し用/引き用の対はまた、コイル対への電流の方向を単に逆にすることにより、前進力と同一の後退力を形成する。
【0056】
図3は、ソレノイドコイルに隣接した線形磁石位置センサ113の潜在的な位置を示している。線形磁石位置センサ113は、ニードル駆動磁石によって形成された磁場を検出するように構成される。比較的小さい磁場が、ソレノイドコイルによって発生される。2つのソレノイドコイルによって形成された磁場は、平均的に且つコイル間の中心平面において、互いに相殺される。線形磁石位置センサの電圧出力は、磁石(及び磁石に取付けられたニードル)の位置の線形関数である。1回の較正を実行することにより、センサ電圧を、センサの最近位位置に対する磁石位置に変換することができる。
【0057】
図3に示すRFコイル110は、使い捨てカートリッジがハンドル部分102に挿入されたときに蒸気コイル(図2Bの蒸気コイル120)のできるだけ近くに配置されるように設計され、その結果、蒸気コイル内の電流の最大誘導が得られる。組立てられたデバイス内のRFコイルと蒸気コイルの関係を図10に示す。一実施形態では、蒸気コイルは、6巻きの#18 TWインコネル(登録商標)625チューブを含み、RFコイルは、#44銅製マグネット線の個々の撚糸で構成された11巻きの#22銅リッツ線を含む。これらの寸法は、425kHz~475kHzの範囲の作動周波数でRFコイルと蒸気コイルの間の電磁結合を最適化するように選択される。RFコイルのリッツ線上の絶縁は、ほぼ250℃の温度定格を有する0.002’’厚押し出しPFAとすることができる。
【0058】
図4に示す特定の実施形態では、ニードル駆動磁石118は、等級N52のネオジム-鉄-ホウ素から製造され、15mmの外径寸法及び18mmの長さを有する。内側の切欠きは、ニードル取付け部に嵌合するように形状決めされる。この特定の向きの磁石材料の残留磁気誘導(残留磁束密度)Brは、約1.5テスラであるのがよい。
【0059】
再使用可能な送出デバイスハンドルの他の特徴は、ハンドル内のカートリッジの横移動を防止するロッキングラッチ、及びハンドル内のカートリッジの30度毎の回転を定める戻り止めを含む。
【0060】
〔増大されたニードル長さ及びパルス送出〕
癌治療のための蒸気は、尿道内から前立腺の周囲中葉に到達する必要があるので、蒸気ニードルは、BPH手順の場合よりも更に蒸気送出ニードルから延びる必要がある。尿道壁を貫通した展開後の蒸気ニードルの位置、及び、ニードルが完全に延長された位置を図6A及び図6Bに示す。
【0061】
BPH用蒸気送出ニードル(図6A)の12mmまでの移動から癌用蒸気送出ニードルの24mmまでの移動への増大は、ニードル長さを増大させること、及び、図7に示すように、ソレノイドの2つのコイルの間の隙間幅を増大させることによって達成される。例えば、BPH用デバイスのソレノイドコイルの各々は、巻数408の#30マグネット線を含み、その結果、12mmまでのニードル移動が得られ、癌用デバイス内のソレノイドコイルの各々は、巻数605の#28マグネット線を含み、その結果、24mmまでのニードル移動が得られる。いくつかの実施形態では、ニードルは、前立腺被膜を突き通すことを回避するために、24mmを超えて延びることができない。しかしながら、摩擦を克服して尿道壁を孔あけするのに十分な力でニードルを展開するために必要とされる力は、BPH用システムの#30ゲージコイルで達成することができない。一実施形態では、この力は、ボビンをより多い巻数のより低いゲージの線で巻くことによって増大される。抵抗は、癌用コイル及びBPH用コイルに対して同じままであり、発生器24ボルト電源から送出された電流を最適化するように選択される。
【0062】
#28ゲージのワイヤの直径が#30ゲージのワイヤの直径よりも僅かに大きいので、より多くの巻数の#28ゲージのワイヤを配置するにはボビンの外径を増大させ且つボビン内壁の肉厚を低減させる必要がある。磁石位置に対して計算された力を図8に示し、展開及び後退の初期の力は、摩擦を克服するのに十分である2ポンド(約0.9キログラム)を超えている。ピークの力は、7.1ポンド(約3.2キログラム)であり、これは、ピークのBPHニードル力よりも大きい。より大きい力は、より多くの電流を送出することができる電源を使用することによって、及び、力を増大させるためにソレノイドコイルのワイヤゲージを最適化することによって達成される。ソレノイドに送出される電力(電圧×電流)は、100ワット~250ワットの範内にあり、電流は、10msec~250msec、好ましくは50msec~150msecの範囲の時間にわたってONであるのがよい。
【0063】
一実施形態では、同じ再使用可能なハンドル部分を使用して別々の使い捨てカートリッジ部分が、BPH及び前立腺癌の蒸気送出手順のために設けられてもよい。それぞれの使い捨てカートリッジ部分は、手順に応じて変化する蒸気送出ニードル長さを含む。変形実施形態では、図7におけるソレノイドコイル間の距離は、同じ使い捨てカートリッジ部分を使用しながらBPH及び癌の両方の手順に適切なニードル送出長さを選択するために、オペレータによって調節可能であるのがよい。
【0064】
上述したように、蒸気送出デバイスを、患者に経尿道的に挿入して、前立腺へのアクセスを得る。蒸気送出ニードルを、前立腺内の蒸気送出ニードルのリアルタイム超音波画像によって案内し、尿道の壁を横切る又は貫通するように展開し、前立腺内の最も遠位の位置まで前進させる。ニードルの前進中又はその後の後退中、蒸気を送出して治療を実施する。ユーザは、蒸気送出ニードルを、初期の展開において行われるような大きい距離にわたる非常に迅速な展開ではなく、小さい増分で前進させることを好むであろう。この目標を達成するために、ユーザがデバイスのハンドル部分のトリガを押込むのに応じて、電流のパルスをRF発生器からソレノイドコイルに送出する。磁気位置センサを使用して、磁石及び蒸気送出ニードルの移動を測定し、増分の寸法を制御することができる。好ましい実施形態では、電流の各パルスは、ニードルを1mmだけ展開し、トリガを押したときにパルスが送出される速度は、1秒当たり1~5パルスである。これらのパラメータは両方とも、ユーザが調節可能であるのがよい。
【0065】
図6A及び図6Bに見ることができるように、蒸気送出ニードルの先端は、鈍いのがよく、これは、ニードル設計によって、又は、鋭い先端の材料の除去によって達成される。ニードルは、初期の展開中に尿道の壁を突き通すのに十分、鋭く設計され且つ力が大きくてもよいが、パルスによるニードル前進ステップにより前立腺被膜を貫通させることができないように十分に鈍い。前立腺被膜へのニードル先端のぶつかりは、超音波画像上での「テンティング(tenting)」としてユーザによって観察されるのがよい。ニードル位置センサが、パルスを適用した後に異常に小さいニードルの前進を記録したら、第2の指示がニードル位置センサによって供給されるのがよい。システムは、更なる前進ステップを取り止め、及び/又は、警告メッセージをユーザに提供するのがよい。
【0066】
いくつかの手順において、蒸気が尿道壁のニードル進入孔から漏れないようにすることが困難であることがある。孔あけ後の送出デバイス及びニードルの移動は、進入孔を拡大させ、蒸気漏れを容易にする。蒸気漏れを防止する技術を図9A及び図9Bに示す。この実施形態では、膨脹可能なバルーン材料130は、蒸気送出孔の近位側の距離4~24mmのところに且つ蒸気送出ニードル116の凹部に設けられる。蒸気ポート117を介する蒸気送出の間、蒸気は、ニードル壁の孔132を介してバルーン130にも入り、バルーンが膨らんで、ニードルに隣接した組織にぶつかり、蒸気が、突き通した部位から漏れて戻ることを阻止する。バルーン材料は、非準拠品であってもよく、製造において設定された直径まで膨脹するのがよい。非準拠バルーン材料は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、又は非準拠医療バルーンに使用される他の材料から選択されるのがよい。バルーンの材料及び厚さは、蒸気と周囲組織との間の断熱をもたらすように選択されるのがよい。
【0067】
蒸気送出孔の数及びそれらの直径は、特定の適用例に合せて選択されるのがよい。図9A及び図9Bは、2つの蒸気送出孔からなる列を3つ有するニードルを示している。孔長さが短いほど、蒸気送出が正確になり、これは、小さい周囲領域又は狭い領域の各部分を処置する場合に特に重要とすることができる。
【0068】
〔治療のための送出の一貫性の改善〕
本発明の蒸気送出デバイスのカロリー出力は、効率係数を通じた治療送出中のRF発生器の電力入力に関連する。カロリー出力は、送出された電力がデバイスの熱サイクルに起因する成分値の変化とは独立の定数である場合、ショット毎に一貫し又は不変である。カロリー出力は、入力電力が所与の治療に対して常に同じである場合、及び、効率係数がデバイス毎に一貫している場合、デバイス毎に一貫し又は不変である。デバイス毎の一貫性又は不変性は、デバイス製造の一貫性により達成される。更に、一貫性は、入力電力が一定に保持されることを条件として、電力結合効率が100%に近づく時に改善する。換言すると、デバイスパラメータの変動は、出力に送出された一定の入力電力の割合が100%に近づく時に出力に与える影響は減少する。
【0069】
図10のRFコイル110及び蒸気コイル120は、効率的で一貫した治療送出の利点を有する。最初に、蒸気コイルの比較的少ない巻数(図10に示す6巻き)は、蒸気コイルの遠位端に発生した過剰な熱が、コイルに入る予熱室温水を予熱するために戻されて6つの巻き部の熱伝導金属を通過することができることを意味する。癌に対する蒸気コイルの出口温度は、一部の場合に熱的フィードバックに起因してデバイスからの所与のカロリー出力に対してBPHに対する蒸気コイルの出口温度よりも低いことが観察されている。更に、コイル間の分離の変化によって生じるRFコイルと蒸気コイルの間の変圧器結合係数の変化は、直径が大きいコイルほど小さい。
【0070】
〔蒸気送出システムセンサ〕
蒸気コイルの出口での蒸気の温度及び蒸気コイルの温度は、システムコントローラによって連続的に測定及びモニタするのがよい。設定範囲外である温度は、蒸気コイルの損傷又は蒸気治療の不十分な送出を示す場合があり、自動停止及び是正処置に関するユーザへの案内の契機にするのがよい。例えば、温度過剰は、水ラインチューブ内のキンク又は閉塞を示す場合がある。温度不足は、RFコイルへのRF電力の損失を示す場合がある。説明するデバイスの半使い捨て設計は、使い捨てカートリッジ内の温度を測定し、送出デバイスハンドル内の無線読取り機構を通して通信される無線センサに送信する。無線手法により、ハンドル内の使い捨てカートリッジの自由回転が可能であり、これは、更なるコストを伴わない重要な臨床的特徴である。
【0071】
図11は、射出蒸気RTD(抵抗温度センサ)の温度読取りのための等価回路を示している。回路パラメータの適切な選択で、感知された電圧は、Rsenseの単調関数、すなわち、銅線RTDの抵抗であり、この単調関数は、銅線の温度係数を通じた温度の線形関数であることを示すことができる。感知された電圧Vsenseの関数として内側コイルの温度の式を示すためにVsenseの式を逆変換する。典型的には、発振器の単一周波数は、発生器周波数を含む処置室に存在する場合がある任意その他の周波数と異なるように選択される。他方、一実施形態では、図11の単一周波数発振器は、コストを軽減して構成要素の数を最小にするためにごく僅かなRF電源電圧として取ることができる。この場合に、治療中にRFコイルから任意の誘導ピックアップを管理するように注意しなければならない。
【0072】
図11の1kOhm抵抗器は、単一周波数発振器電圧を単一周波数電流源に変換する。発振器及び1kOhm抵抗器は、図11の単一周波数電流源が取って代わることができる。10mA~100mAの範囲の単一周波数電流により、Vsenseから計算されたVsense測定及び出口温度読取り値において優れたSN比が得られることになる。温度は、センサ巻き部の0.5’’の長さにわたる平均値である。この空間平均は、温度の変動を滑らかにし、温度の変動は、出口で蒸気の誤った挙動に起因して複数の点に発生する可能性がある。
【0073】
無線読取り/書込みRFIDタグは市販されている。これらの一部は、温度測定を行うことができる。そのようなデバイスは、使い捨てカートリッジに追加される場合、経済的な価格である必要がある。別の実施形態では、使い捨てカートリッジのIDは、RF発生器によって読取られるが、RF発生器へのインターネット接続を通してeクラウドに書き込まれる。使用中の全ての発生器は、送出デバイスハンドルに挿入された使い捨てデバイスに対して使用情報を検索するために毎回の治療手順前にクラウドに接続することができる。治療の終わりに、そのデバイスによって送出された治療ショットの回数は、クラウドに中継されてクラウドに格納されることになる。
【0074】
〔経尿道システムを使用する方法〕
図12は、周囲領域組織に隣接した尿道前立腺部に挿入された送出デバイスを示している。カテーテル配置は、超音波画像及び膀胱鏡カメラによって案内されるのがよく、更に、可視の目印である精丘の真後ろの周囲領域へのアクセスの位置によって案内されてもよい。最初、ニードルを、ニードル位置センサによって測定されるように、約11mmの移動距離にわたって前進させる。初期移動距離は、6~12mmの範囲であるのがよく、ニードルを尿道内層から周囲領域組織に展開しなければならない。
【0075】
展開トリガスイッチの更なる押込みにより、ソレノイドは、電流パルスを固定された又はユーザによって選択された速度で作動させ、かかる速度は、1~5パルス/秒の範囲であるのがよい。一実施形態では、電流パルスは、システム発生器が供給することができる最大振幅と、固定された又はユーザによって選択された初期パルス幅を有する。一実施形態では、初期パルス幅Tは、1.5msecである。パルスがソレノイドに送出されるとき、ニードル位置センサは、ニードル移動距離を測定し、ニードルがターゲット移動距離、例えば、1mmよりも移動していなかったならば、次のパルスの幅を増大させ、ニードルがターゲット移動距離よりも移動していたならば、次のパルスの幅を減少させる。平均すれば、ニードルは、各パルスにおいてターゲット移動距離だけ移動する。ターゲット移動距離は、固定されていてもよいし、ユーザによって選択されてもよく、好ましい実施形態では、1mmである。いかなる時においても、ユーザは、ニードルのパルスによる後退又は全後退を可能にするのがよい。いかなる時においても、例えば蒸気治療を送出するために、ユーザは、トリガを緩めて、ニードルのパルス前進/後退を停止させてもよい。ニードル位置センサの出力を表示して、ユーザが、ニードル先端と送出デバイスシャフトの間のニードルに沿う距離を知るのがよい。
【0076】
パルス幅を制限する、従って、ニードルに付与される力を、前立腺被膜を突き通すことができない値まで制限する安全特徴を行うのがよい。ニードルが一連のNパルスに対して1mmのターゲット移動距離よりも移動していなかったならば、ニードル妨害状態が示され、ユーザに警告される。変形例として、ニードル妨害状態が示されたら、蒸気送出ニードルを更に前進させることを阻止するのがよい。ニードル妨害状態は、前立腺の外嚢にぶつかっているニードルによることがあり、Nの値は、パルス幅を組織調査において決定された安全最大値に制限するように選択され、安全な最大値に関して、ニードルは、健康な又は癌が発症した嚢を突き通すことができない。Nは、4~10パルスの範囲内であるのがよく、それに対応する最大パルス幅は、2~5msecの範囲内であるのがよい。ユーザは、ニードルが嚢にぶつかったことを、超音波画像上の組織テンティングを観察することによって確認するのがよい。
【0077】
変形実施形態では、ユーザは、パルス幅及び1秒当たりのパルス数を直接制御するのがよい。この手動のニードル移動モードは、上述した自動モードの安全特徴を保つのがよい。
【0078】
経尿道蒸気治療は、嚢外面上の神経を損傷するのに十分な高い温度を警告するために、前立腺被膜の外側に会陰を通して挿入された熱電対と共に使用してもよい。神経を冷却及び保護するために前立腺被膜の外側に食塩水を送出することができる。他方、経尿道前立腺切除治療は、複数のショットを使用して実施することができ、各ショットは、嚢を通って神経までの有意な熱伝導を防止するのに十分なショット間の時間を用いて十分なものである。例えば、ショット間の少なくとも30秒を用いて10秒又はそれ未満続く個々の治療により、嚢外側での熱電対又は食塩水注射ニードルの必要がなく前立腺組織の完全な焼灼を得ることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、周囲領域及び移行領域は、別々に処置することができる。他の実施形態では、蒸気送出ニードルは、移行領域を通過した後に癌周囲領域組織に到達するのに十分に長い。治療は、パルス展開又はパルス後退中に周囲領域組織及び移行領域組織の両方に実施することができる。他の実施形態では、尿道に当たっている中心領域組織を癌治療処置中に焼灼してもよい。中心領域は、個別に又は一部の場合に移行領域への通過後に処置することができる。中心領域及び移行領域組織は、いずれも、1回のニードル展開又は後退中に処置することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、超音波画像は、前立腺組織への蒸気の送出を案内するのに使用される。更に、ニードル位置センサによるニードル位置の測定は、サブmm精度を有し、治療ショット間の距離を測定するのに使用することができる。前立腺被膜にわたる過大な加熱及び潜在的な導通を防止するために、重なり合う障害をもたらすことになる距離による蒸気の送出をショット間の十分な分離で離間させることが重要である。いくつかの実施形態処置において、ショットは、1cmのショット間の分離を使用して実施される。
【0081】
仮特許出願720に開示された治療方法及び手段は、経尿道処置に使用することができる。例えば、組織キャパシタンスを感知するセンサをニードル先端に追加することにより、前立腺組織と非前立腺組織とを区別することができ、非前立腺組織への蒸気送出を防止して前立腺被膜の不意の通過を防止することができる。組織タイプの感知をニードル/磁石位置センサと共に使用して磁石が前立腺組織内にあることを確認し、特に、いつニードルが前立腺被膜に隣接しているかを決定することができる。手術前画像を使用して、尿道に沿った最適穿刺部位及び各穿刺部位に送出する必要がある蒸気治療ショットの回数を決定することができる。その後に、治療ショット間の規定の距離により、経尿道前立腺切除処置を外部画像誘導なしに実行することができる。送出デバイスプローブは、BPH手順の場合と同様に、膀胱鏡画像内の解剖学的目印を識別することによって尿道内の規定の位置まで前進される。ニードルは、磁石/ニードル位置センサ出力によって及び/又は膀胱鏡越しに見えるニードル上のマーク付けによって案内されながら尿道壁を通って規定の距離に対して前進される。治療は、ニードル前進中に実施することができ、又はニードルはセンサによって表示される時に前立腺被膜壁に前進させることができ、治療は、後退中に実施することができる。
【0082】
別の例では、ニードル先端に又はその近くに配置された電磁センサ又は送信器は、先端の位置を前立腺の手術前又は実時間画像に対して追跡することを容易にすることができる。超音波の場合に、第2のセンサ又は送信器は、超音波振動子に隣接して配置することができるので、ニードル先端の位置及び向きが変換器に対して見出され、オートフォーカス及び画像強調が容易である。ニードル先端の追跡により、ロボット誘導又はニードルのナビゲーションを可能にすることができる。高度蒸気治療送出システムでは、ニードルをオペレータによって選択された画像上の点までロボット工学的に前進させ、規定の蒸気投与量をその部位で送出することができる。送出デバイスニードルの先端は、他のカテーテルシステムに使用される時にプルワイヤを使用してステアリング可能にすることができる。ステアリングを伴う画像誘導により、治療は、3次元パターンで最適に分離された位置を使用して実施することができる。例えば、磁石ニードル先端に取付けて大きい外部磁石を使用して先端をステアリングすることにより、より特殊なステアリング手段を使用することができる。
【0083】
本発明の特定の実施形態を詳細に上述したが、この説明は単に例示を目的としており、本発明の以上の説明は包括的ではないことは理解されるであろう。本発明の特定の特徴は、一部の図面に示されているが、他の図面では示されておらず、これは便宜的なものであり、いずれの特徴も本発明により別の特徴と組み合わせることができる。いくつかの変形及び代替は当業者に明らかであろう。そのような代替及び変形は、特許請求の範囲に含まれることを意図している。従属請求項に示される特定の特徴は、組み合わせて本発明の範囲に入れることができる。本発明はまた、従属請求項が他の独立請求項を参照して複数の従属請求項フォーマットでこれに代えて書かれたかのような実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0084】
100 蒸気送出デバイス
102 ハンドル部分
103 管腔
104 カートリッジ部分
110 RFコイル
114 細長いシャフト
116 蒸気送出ニードル
119 抵抗温度計
120 蒸気コイル
121 導電金属リング
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12