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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】表示装置およびその駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20231013BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20231013BHJP
   G09G 3/3266 20160101ALI20231013BHJP
   G09G 3/3275 20160101ALI20231013BHJP
   G11C 19/28 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 611H
G09G3/20 622E
G09G3/20 623A
G09G3/20 624B
G09G3/20 642A
G09G3/20 670J
G09G3/3266
G09G3/3275
G11C19/28 230
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022500178
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005769
(87)【国際公開番号】W WO2021161506
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104695
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 明宏
(74)【代理人】
【識別番号】100148459
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 悟
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/190407(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/115713(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0301295(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0156718(US,A1)
【文献】特開2006-011388(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0009217(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G3/00-3/08
3/12-3/26
3/30-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流によって駆動される表示素子と前記表示素子の駆動電流を制御する駆動トランジスタとを含む画素回路を有し、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流であって前記画素回路内を流れる電流を前記画素回路外で測定する一連の処理であるモニタ処理を実行する機能を有する表示装置であって、
複数のデータ信号線と、複数の走査信号線と、前記複数の走査信号線と1対1で対応し前記複数のデータ信号線と交差するように配設された複数の発光制御線とを含む表示部と、
前記複数のデータ信号線にデータ信号を印加するデータ信号線駆動回路と、
前記複数の走査信号線に走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
前記複数の発光制御線に発光制御信号を印加する、前記複数の発光制御線と1対1で対応する複数の単位回路からなるシフトレジスタによって構成された発光制御線駆動回路と
を備え、
前記画素回路は、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線との各交差部に対応して設けられ、
前記データ信号線駆動回路は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を測定する積分回路を有し、
前記シフトレジスタは、複数の発光制御クロック信号に基づいて、発光制御スタートパルス信号を1段目の単位回路から最終段目の単位回路へと転送しつつ各発光制御線に印加すべき発光制御信号を生成し、
前記モニタ処理が行われるモニタ期間は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を流すためのデータ信号を前記画素回路に書き込む測定用書き込み期間および前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を前記積分回路で測定する電流測定期間を含み、
前記電流測定期間において、前記複数の発光制御クロック信号の少なくとも1つのレベルが変化するタイミングであるエッジタイミングには、前記積分回路への前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入が停止されていることを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流路と前記積分回路との間に設けられたスイッチを備え、
前記電流測定期間中の前記エッジタイミングには、前記スイッチがオフ状態となっていることによって、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流路と前記積分回路とが電気的に切り離されていることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記電流測定期間は、複数の前記エッジタイミングを含み、
前記電流測定期間において、各エッジタイミングの直前に前記スイッチがオフ状態となり、かつ、各エッジタイミングの直後に前記スイッチがオン状態となることを特徴とする、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記データ信号線駆動回路、前記走査信号線駆動回路、および前記発光制御線駆動回路の動作を制御する制御回路を備え、
前記複数の発光制御クロック信号および前記発光制御スタートパルス信号は、前記制御回路から出力され、
前記スイッチのオン/オフは、前記制御回路から出力されるスイッチ制御信号に基づいて制御され、
前記スイッチは、前記スイッチ制御信号が第1レベルであればオン状態となり、かつ、前記スイッチ制御信号が第2レベルであればオフ状態となり、
前記制御回路は、前記電流測定期間において、各エッジタイミングの直前に前記スイッチ制御信号を前記第1レベルから前記第2レベルに変化させ、かつ、各エッジタイミングの直後に前記スイッチ制御信号を前記第2レベルから前記第1レベルに変化させることを特徴とする、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記複数のデータ信号線は、前記モニタ処理の際に前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を流すための信号線としても用いられ、
前記電流測定期間には、前記積分回路は、対応するデータ信号線を流れる電流を測定することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記複数の走査信号線と1対1で対応する複数のモニタ制御線を含み、
前記走査信号線駆動回路は、前記複数のモニタ制御線にモニタ制御信号を印加することを特徴とする、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記画素回路は、
第1端子と第2端子とを有する前記表示素子と、
制御端子と第1導通端子と第2導通端子とを有する前記駆動トランジスタと、
対応する走査信号線に接続された制御端子と、対応するデータ信号線に接続された第1導通端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第2導通端子とを有する書き込み制御トランジスタと、
対応するモニタ制御線に接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、対応するデータ信号線に接続された第2導通端子とを有するモニタ制御トランジスタと、
対応する発光制御線に接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第2導通端子とを有する発光制御トランジスタと、
前記駆動トランジスタの制御端子の電位を保持するために一端が前記駆動トランジスタの制御端子に接続された容量素子と
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記表示部は、前記複数のデータ信号線と1対1で対応し前記複数の発光制御線と交差するように配設された複数の電流モニタ線を更に有し、
前記複数の電流モニタ線は、前記モニタ処理の際に前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を流すための信号線として用いられ、
前記電流測定期間には、前記積分回路は、対応する電流モニタ線を流れる電流を測定することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記複数の走査信号線と1対1で対応する複数のモニタ制御線を含み、
前記走査信号線駆動回路は、前記複数のモニタ制御線にモニタ制御信号を印加することを特徴とする、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記画素回路は、
第1端子と第2端子とを有する前記表示素子と、
制御端子と第1導通端子と第2導通端子とを有する前記駆動トランジスタと、
対応する走査信号線に接続された制御端子と、対応するデータ信号線に接続された第1導通端子と、前記駆動トランジスタの制御端子に接続された第2導通端子とを有する書き込み制御トランジスタと、
対応するモニタ制御線に接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、対応する電流モニタ線に接続された第2導通端子とを有するモニタ制御トランジスタと、
対応する発光制御線に接続された制御端子と、前記駆動トランジスタの第2導通端子に接続された第1導通端子と、前記表示素子の第1端子に接続された第2導通端子とを有する発光制御トランジスタと、
前記駆動トランジスタの制御端子の電位を保持するために一端が前記駆動トランジスタの制御端子に接続された容量素子と
を含むことを特徴とする、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光制御線駆動回路は、前記モニタ期間を通じて前記モニタ処理の対象の行に含まれる画素回路内の発光制御トランジスタがオフ状態で維持されるよう、前記複数の発光制御線に前記発光制御信号を印加することを特徴とする、請求項7または10に記載の表示装置。
【請求項12】
電流によって駆動される表示素子と前記表示素子の駆動電流を制御する駆動トランジスタとを含む画素回路を有し、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流であって前記画素回路内を流れる電流を前記画素回路外で測定する一連の処理であるモニタ処理を実行する機能を有する表示装置の駆動方法であって、
前記表示装置は、
複数のデータ信号線と、複数の走査信号線と、前記複数の走査信号線と1対1で対応し前記複数のデータ信号線と交差するように配設された複数の発光制御線とを含む表示部と、
前記複数のデータ信号線にデータ信号を印加するデータ信号線駆動回路と、
前記複数の走査信号線に走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
前記複数の発光制御線に発光制御信号を印加する、前記複数の発光制御線と1対1で対応する複数の単位回路からなるシフトレジスタによって構成された発光制御線駆動回路と
を備え、
前記画素回路は、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線との各交差部に対応して設けられ、
前記データ信号線駆動回路は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を測定する積分回路を有し、
前記シフトレジスタは、複数の発光制御クロック信号に基づいて、発光制御スタートパルス信号を1段目の単位回路から最終段目の単位回路へと転送しつつ各発光制御線に印加すべき発光制御信号を生成し、
前記モニタ処理が行われるモニタ期間は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を流すためのデータ信号を前記画素回路に書き込む測定用書き込み期間および前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を前記積分回路で測定する電流測定期間を含み、
前記駆動方法は、
前記積分回路への前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入を停止する積分停止ステップと、
前記積分回路への前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入を再開する積分再開ステップと
を含み、
前記電流測定期間において、前記複数の発光制御クロック信号の少なくとも1つのレベルが変化するタイミングであるエッジタイミングの直前に前記積分停止ステップが実行され、前記エッジタイミングの直後に前記積分再開ステップが実行されることを特徴とする、駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、表示装置およびその駆動方法に関し、より詳しくは、有機EL素子などの電流によって駆動される表示素子を含む画素回路を備える表示装置およびその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機EL素子を含む画素回路を備えた有機EL表示装置が実用化されている。有機EL素子は、OLED(Organic Light-Emitting Diode)とも呼ばれており、それに流れる電流に応じた輝度で発光する自発光型の表示素子である。このように有機EL素子は自発光型の表示素子であるので、有機EL表示装置は、バックライトおよびカラーフィルタなどを要する液晶表示装置に比べて、容易に薄型化・低消費電力化・高輝度化などを図ることができる。
【0003】
アクティブマトリクス型の有機EL表示装置には、複数の画素回路がマトリクス状に形成されている。各画素回路には、有機EL素子への電流の供給を制御する駆動トランジスタが含まれている。その駆動トランジスタとしては、典型的には、薄膜トランジスタ(TFT)が採用されている。しかしながら、薄膜トランジスタに関しては、劣化によって閾値電圧が変化する。有機EL表示装置の表示部には多数の駆動トランジスタが設けられており、劣化の程度は駆動トランジスタ毎に異なるので、閾値電圧にばらつきが生じる。その結果、輝度のばらつきが生じ、表示品位が低下する。また、有機EL素子に関しては、時間の経過とともに電流効率が低下する。すなわち、たとえ一定電流が有機EL素子に供給されたとしても、時間の経過とともに輝度が徐々に低下する。その結果、焼き付きが生じる。以上のようなことから、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置では、駆動トランジスタの劣化や有機EL素子の劣化を補償する処理が従来より行われている。
【0004】
補償処理の方式の1つとして外部補償方式が知られている。外部補償方式によれば、所定条件下で駆動トランジスタあるいは有機EL素子を流れる電流が画素回路の外部に設けられた回路で測定される。そして、その測定結果に基づき、入力画像信号に補正が施される。これにより、駆動トランジスタの劣化や有機EL素子の劣化が補償される。
【0005】
なお、以下においては、駆動トランジスタまたは有機EL素子(表示素子)の劣化を補償するために画素回路内を流れる電流を画素回路外で測定する一連の処理のことを「モニタ処理」といい、モニタ処理が行われる期間のことを「モニタ期間」という。また、1フレーム期間などの単位期間中にモニタ処理の対象となっている行のことを「モニタ行」といい、モニタ行以外の行のことを「非モニタ行」という。また、画素回路内に設けられている駆動トランジスタの特性のことを「TFT特性」といい、画素回路内に設けられている有機EL素子の特性のことを「OLED特性」という。また、データ信号線に所望の電位(電圧)を印加して画素回路内のコンデンサ(保持容量)を充電することを「書き込み」という。
【0006】
ここで、モニタ処理を通常の表示期間中に行うという方式(以下、「リアルタイムモニタ」という。)について説明する。リアルタイムモニタでは、典型的には、各フレーム期間に少なくとも1つの行についてのモニタ処理が行われる。すなわち、リアルタイムモニタが採用されている場合、図15に示すように、各フレーム期間にモニタ期間が含まれる。各フレーム期間に関し、モニタ期間以外の期間は走査期間となっている。走査期間は、画像表示のために走査信号線の走査が行われている期間である。なお、図15では、画像表示用の書き込みのために1行目の走査信号線GL(1)からn行目の走査信号線GL(n)までを順次に走査する様子を斜めの太線で模式的に示している。
【0007】
図16は、フレーム期間中の消灯範囲(画素回路内の有機EL素子の発光が停止している範囲)90の推移を模式的に示した図である。図16から把握されるように、消灯範囲90は1行目からn行目へと推移する。モニタ行では、モニタ期間を通じて画素回路内の有機EL素子の発光が停止する。
【0008】
図5は、外部補償方式を採用した有機EL表示装置における画素回路110およびソースドライバの一部を示す回路図である。なお、図5には、第i行第j列の画素回路110と、ソースドライバのうちのj列目のデータ信号線SL(j)に対応する部分とが示されている。ソースドライバには、データ信号線SL(j)を駆動するデータ信号線駆動部310として機能する部分と、画素回路110からデータ信号線SL(j)に出力された電流を測定する電流モニタ部320として機能する部分とが含まれている。
【0009】
画素回路110は、1個の有機EL素子L1と、4個のトランジスタT1~T4(コンデンサCへの書き込みを制御する書き込み制御トランジスタT1、有機EL素子L1への電流の供給を制御する駆動トランジスタT2、TFT特性あるいはOLED特性を検出するか否かを制御するモニタ制御トランジスタT3、および有機EL素子L1を発光させるか否かを制御する発光制御トランジスタT4)と、保持容量としての1個のコンデンサCとを備えている。電流モニタ部320は、オペアンプ301と、D/Aコンバータ306と、コンデンサ322と、制御信号S2によって状態が制御されるスイッチ323と、制御信号S1によって状態が制御されるスイッチ324と、制御信号S0によって状態が制御されるスイッチ325とを備えている。図5に関し、第i行の走査信号線には符号GL(i)を付し、第i行のモニタ制御線には符号ML(i)を付し、第i行の発光制御線には符号EM(i)を付し、第j列のデータ信号線には符号SL(j)を付している。なお、以下においては、走査信号線と走査信号には同じ符号を用い、モニタ制御線とモニタ制御信号には同じ符号を用い、発光制御線と発光制御信号には同じ符号を用い、データ信号線とデータ信号には同じ符号を用いる。
【0010】
ところで、電流モニタ部320内において、オペアンプ301とコンデンサ322とスイッチ323とによって積分回路35が構成されている。その積分回路35は、TFT特性やOLED特性に応じた電流を測定し、当該電流の時間積分を出力する。
【0011】
以上のような構成において、例えば、各フレーム期間(各垂直走査期間)に1つの行についてのTFT特性の検出または1つの行についてのOLED特性の検出が行われる。図17は、TFT特性の検出が行われる場合のモニタ期間の動作について説明するための信号波形図である。以下、モニタ期間中の各期間の動作を説明する。なお、i行目がモニタ行であると仮定する。
【0012】
期間P11になると、発光制御信号EM(i)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、発光制御トランジスタT4がオフ状態となり、有機EL素子L1への電流の供給が停止する。また、期間P11には、制御信号S2,S1はハイレベルとなっていて、制御信号S0はローレベルとなっている。このため、スイッチ323,324はオン状態となっていて、スイッチ325はオフ状態となっている。このとき、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とは電気的に接続されている。また、期間P11には、走査信号GL(i)およびモニタ制御信号ML(i)はハイレベルで維持される。このため、書き込み制御トランジスタT1およびモニタ制御トランジスタT3はオン状態で維持される。以上のような状態で、初期化電位Vpcがデータ信号線SL(j)に印加される。これにより、コンデンサCの状態および節点111(発光制御トランジスタT4を介して有機EL素子L1のアノード端子に接続されている節点)の電位が初期化される。
【0013】
期間P12になると、モニタ制御信号ML(i)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、モニタ制御トランジスタT3がオフ状態となる。この状態で、特性検出用電位Vr_TFTがデータ信号線SL(j)に印加される。これにより、駆動トランジスタT2はオン状態となる。
【0014】
期間P13になると、走査信号GL(i)はハイレベルからローレベルに変化し、モニタ制御信号ML(i)はローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1はオフ状態となり、モニタ制御トランジスタT3はオン状態となる。このような状態で、電流測定用電位Vm_TFTがデータ信号線SL(j)に印加される。これにより、駆動トランジスタT2を流れる電流がモニタ制御トランジスタT3およびデータ信号線SL(j)を介して電流モニタ部320へと流れる。このとき、制御信号S2はハイレベルであるので、スイッチ323はオン状態となっていて、コンデンサ322に電荷は蓄積されない。
【0015】
期間P14になると、制御信号S2がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、スイッチ323がオフ状態となり、オペアンプ301とコンデンサ322とによって電流の時間積分が行われる。すなわち、オペアンプ301の出力電圧は、データ信号線SL(j)に流れている電流に応じた電圧となる。以下、この期間P14のように積分回路35によって電流の積分に比例した電圧を求める期間のことを「積分期間」という。
【0016】
期間P15になると、制御信号S1がハイレベルからローレベルに変化し、制御信号S0がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、スイッチ324がオフ状態となり、スイッチ325がオン状態となる。スイッチ324がオフ状態となることによって、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とが電気的に切り離された状態となる。この状態で、オペアンプ301の出力電圧(モニタデータMOa)が、A/Dコンバータ31によって、デジタルデータであるモニタデータMOdに変換される。これにより、i行目についてのTFT特性の検出が終了する。なお、AD変換後のモニタデータMOdは、デジタル映像信号の補正に用いられる。
【0017】
その後、期間P16になると、発光制御信号EM(i)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、発光制御トランジスタT4がオン状態となる。また、期間P16になると、制御信号S2,S1がローレベルからハイレベルに変化し、制御信号S0がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、スイッチ323,324がオン状態となり、スイッチ325がオフ状態となる。また、期間P16には、走査信号GL(i)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1がオン状態となる。以上のような状態で画像表示用のデータ電位Vd(i)がデータ信号線SL(j)に印加され、第i行第j列の画素回路110において当該データ電位Vd(i)に基づく書き込みが行われる。これにより、有機EL素子L1が発光する。
【0018】
期間P17になると、走査信号GL(i)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1がオフ状態となる。なお、期間P17には、(i+1)行目で画像表示用のデータ電位Vd(i+1)に基づく書き込みが行われる。
【0019】
従来の有機EL表示装置では、以上のようにしてモニタ処理が行われ、モニタ処理の結果に基づきデジタル映像信号に補正を施すことによって駆動トランジスタT2の劣化が補償されている。
【0020】
なお、外部補償方式を採用した有機EL表示装置に関する発明は、例えば国際公開2015/190407号パンフレットに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】国際公開2015/190407号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、発光制御信号EMがハイレベルからローレベルに変化するタイミングおよび発光制御信号EMがローレベルからハイレベルに変化するタイミングは、図18に示すように1行ごとに少しずつずれている。また、発光制御信号EMの生成に用いられる発光制御クロック信号ECK1~ECK4に着目すると、図19で符号94を付した部分に示すように、上述した積分期間P14中にもレベルの変化が生じている。それ故、図17で符号91を付した部分や図18で符号92,93を付した部分に示すように、積分期間P14中にレベルが変化する発光制御信号EMが存在する。また、図5に示すように、発光制御線EMは、データ信号線SLと交差するように配設されている。従って、発光制御線EMとデータ信号線SLとの間には図5で符号99を付したような寄生容量が存在する。以上より、積分期間P14中に、図19で符号95を付した部分に示すように、非モニタ行の発光制御信号EMのレベルの変化に起因してデータ信号線SLにカップリングノイズが発生する。それ故、データ信号線SLに流れる電流が精度良く測定されない。
【0023】
図20および図21は、行ごとのカップリングノイズによる影響について説明するための図である。ここでは、発光制御信号EMのL幅(発光制御信号EMがローレベルで維持される期間の長さ)は20H(水平走査期間)であって20H中の16H目が積分期間に相当するものと仮定する。また、表示部の行数(データ信号線SLが延びる方向についての画素回路の数)が720であると仮定する。
【0024】
1行目の積分期間の電流測定結果は、発光制御信号EM(17)の立ち下がりの影響を受ける。4行目の積分期間の電流測定結果は、発光制御信号EM(20)の立ち下がりの影響を受ける。このように、1~4行目の積分期間の電流測定結果は、他の行の発光制御信号EMの立ち下がりの影響のみを受ける。
【0025】
5行目の積分期間の電流測定結果は、発光制御信号EM(1)の立ち上がりおよび発光制御信号EM(21)の立ち下がりの影響を受ける。704行目の積分期間の電流測定結果は、発光制御信号EM(700)の立ち上がりおよび発光制御信号EM(720)の立ち下がりの影響を受ける。このように、5~704行目の積分期間の電流測定結果は、他の行の発光制御信号EMの立ち上がりおよび立ち下がりの双方の影響を受ける。
【0026】
705行目の積分期間の電流測定結果は、発光制御信号EM(701)の立ち上がりの影響を受ける。720行目の積分期間の電流測定結果は、発光制御信号EM(716)の立ち上がりの影響を受ける。このように、705~720行目の積分期間の電流測定結果は、他の行の発光制御信号EMの立ち上がりの影響のみを受ける。
【0027】
以上のように、カップリングノイズが電流測定結果に及ぼす影響は、全ての行で同じになっているのではない。このため、電流測定結果に基づいてデジタル映像信号に補正を施しても、駆動トランジスタの劣化が充分には補償されない。
【0028】
そこで、以下の開示は、外部補償機能を有する表示装置において、データ信号線に生じるカップリングノイズに起因する補償精度の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本開示のいくつかの実施形態に係る表示装置は、電流によって駆動される表示素子と前記表示素子の駆動電流を制御する駆動トランジスタとを含む画素回路を有し、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流であって前記画素回路内を流れる電流を前記画素回路外で測定する一連の処理であるモニタ処理を実行する機能を有する表示装置であって、
複数のデータ信号線と、複数の走査信号線と、前記複数の走査信号線と1対1で対応し前記複数のデータ信号線と交差するように配設された複数の発光制御線とを含む表示部と、
前記複数のデータ信号線にデータ信号を印加するデータ信号線駆動回路と、
前記複数の走査信号線に走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
前記複数の発光制御線に発光制御信号を印加する、前記複数の発光制御線と1対1で対応する複数の単位回路からなるシフトレジスタによって構成された発光制御線駆動回路と
を備え、
前記画素回路は、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線との各交差部に対応して設けられ、
前記データ信号線駆動回路は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を測定する積分回路を有し、
前記シフトレジスタは、複数の発光制御クロック信号に基づいて、発光制御スタートパルス信号を1段目の単位回路から最終段目の単位回路へと転送しつつ各発光制御線に印加すべき発光制御信号を生成し、
前記モニタ処理が行われるモニタ期間は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を流すためのデータ信号を前記画素回路に書き込む測定用書き込み期間および前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を前記積分回路で測定する電流測定期間を含み、
前記電流測定期間において、前記複数の発光制御クロック信号の少なくとも1つのレベルが変化するタイミングであるエッジタイミングには、前記積分回路への前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入が停止されている。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態に係る(表示装置の)駆動方法は、電流によって駆動される表示素子と前記表示素子の駆動電流を制御する駆動トランジスタとを含む画素回路を有し、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流であって前記画素回路内を流れる電流を前記画素回路外で測定する一連の処理であるモニタ処理を実行する機能を有する表示装置の駆動方法であって、
前記表示装置は、
複数のデータ信号線と、複数の走査信号線と、前記複数の走査信号線と1対1で対応し前記複数のデータ信号線と交差するように配設された複数の発光制御線とを含む表示部と、
前記複数のデータ信号線にデータ信号を印加するデータ信号線駆動回路と、
前記複数の走査信号線に走査信号を印加する走査信号線駆動回路と、
前記複数の発光制御線に発光制御信号を印加する、前記複数の発光制御線と1対1で対応する複数の単位回路からなるシフトレジスタによって構成された発光制御線駆動回路と
を備え、
前記画素回路は、前記複数のデータ信号線と前記複数の走査信号線との各交差部に対応して設けられ、
前記データ信号線駆動回路は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を測定する積分回路を有し、
前記シフトレジスタは、複数の発光制御クロック信号に基づいて、発光制御スタートパルス信号を1段目の単位回路から最終段目の単位回路へと転送しつつ各発光制御線に印加すべき発光制御信号を生成し、
前記モニタ処理が行われるモニタ期間は、前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を流すためのデータ信号を前記画素回路に書き込む測定用書き込み期間および前記駆動トランジスタの特性に応じた電流を前記積分回路で測定する電流測定期間を含み、
前記駆動方法は、
前記積分回路への前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入を停止する積分停止ステップと、
前記積分回路への前記駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入を再開する積分再開ステップと
を含み、
前記電流測定期間において、前記複数の発光制御クロック信号の少なくとも1つのレベルが変化するタイミングであるエッジタイミングの直前に前記積分停止ステップが実行され、前記エッジタイミングの直後に前記積分再開ステップが実行される。
【発明の効果】
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば、電流測定期間のうちのエッジタイミング(複数の発光制御クロック信号の少なくとも1つのレベルが変化するタイミング)には、積分回路への駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入が停止されている。このため、駆動トランジスタの特性に応じた電流の時間積分を実際に求める動作は、電流測定期間のうちカップリングノイズの影響を受けずに安定した電流が流れている期間に行われる。従って、たとえ電流測定期間に発光制御線とデータ信号線との間の寄生容量の存在に起因するカップリングノイズが生じても、駆動トランジスタの特性に応じた電流が精度良く検出される。以上より、外部補償機能を有する表示装置において、データ信号線に生じるカップリングノイズに起因する補償精度の低下が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態において、積分期間中の電流モニタ部の制御について説明するための信号波形図である。
図2】上記実施形態において、有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。
図3】上記実施形態において、スキャンドライバの機能について説明するための図である。
図4】上記実施形態において、ソースドライバの機能について説明するための図である。
図5】上記実施形態において、画素回路およびソースドライバの一部を示す回路図である。
図6】上記実施形態において、ゲートドライバを構成するシフトレジスタの5段分の構成を示すブロック図である。
図7】上記実施形態において、ゲートドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
図8】上記実施形態において、モニタ処理が行われる際のゲートドライバ内の単位回路の動作について説明するための信号波形図である。
図9】上記実施形態において、エミッションドライバを構成するシフトレジスタの5段分の構成を示すブロック図である。
図10】上記実施形態において、エミッションドライバ内の単位回路の構成を示す回路図である。
図11】上記実施形態において、エミッションドライバ内の単位回路の動作について説明するための信号波形図である。
図12】上記実施形態において、モニタ処理が行われる際の画素回路および電流モニタ部の動作について説明するための信号波形図である。
図13】上記実施形態の効果について説明するための信号波形図である。
図14】上記実施形態の変形例において、画素回路およびソースドライバの一部を示す回路図である。
図15】従来例に関し、リアルタイムモニタについて説明するための図である。
図16】従来例に関し、フレーム期間中の消灯範囲の推移を模式的に示した図である。
図17】従来例に関し、TFT特性の検出が行われる場合のモニタ期間の動作について説明するための信号波形図である。
図18】従来例に関し、積分期間中にレベルが変化する発光制御信号が存在することについて説明するための信号波形図である。
図19】従来例に関し、積分期間中に発光制御クロック信号のレベルの変化が生じていることについて説明するための信号波形図である。
図20】従来例に関し、行ごとのカップリングノイズによる影響について説明するための図である。
図21】従来例に関し、行ごとのカップリングノイズによる影響について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しつつ、実施形態について説明する。なお、以下において、mおよびnは2以上の整数、iは3以上(n-2)以下の整数、jは1以上m以下の整数であると仮定する。
【0034】
<1.全体構成>
図2は、第1の実施形態に係るアクティブマトリクス型の有機EL表示装置の全体構成を示すブロック図である。この有機EL表示装置は、表示部10とスキャンドライバ20とソースドライバ(データ信号線駆動回路)30とA/Dコンバータ31と補正演算部32と補正データ記憶部33と表示制御回路40とを備えている。A/Dコンバータ31と補正演算部32と補正データ記憶部33とは、駆動トランジスタおよび有機EL素子の劣化を補償するための構成要素である。すなわち、この有機EL表示装置は外部補償機能を有している。なお、外部補償方式による補償処理を行うために、この有機EL表示装置では上述したリアルタイムモニタが行われる。表示部10とスキャンドライバ20とは、表示部10を構成する基板上に一体的に形成されている。すなわち、スキャンドライバ20はモノリシック化されている。
【0035】
表示部10には、m本のデータ信号線SL(1)~SL(m)およびこれらに直交するn本の走査信号線GL(1)~GL(n)が配設されている。また、表示部10には、n本の走査信号線GL(1)~GL(n)と1対1で対応するように、n本のモニタ制御線ML(1)~ML(n)が配設されている。さらに、表示部10には、n本の走査信号線GL(1)~GL(n)と1対1で対応するように、n本の発光制御線EM(1)~EM(n)が配設されている。走査信号線GL(1)~GL(n)とモニタ制御線ML(1)~ML(n)と発光制御線EM(1)~EM(n)とは互いに平行になっている。さらにまた、表示部10には、データ信号線SL(1)~SL(m)と走査信号線GL(1)~GL(n)との交差部に対応して、(n×m)個の画素回路110が設けられている。これにより、n行×m列の画素マトリクスが表示部10に形成されている。表示部10には、また、各画素回路110に共通の図示しない電源線が配設されている。より詳細には、有機EL素子を駆動するためのハイレベル電源電圧ELVDDを供給する電源線(以下、「ハイレベル電源線」という。)および有機EL素子を駆動するためのローレベル電源電圧ELVSSを供給する電源線(以下、「ローレベル電源線」という。)が配設されている。ハイレベル電源電圧ELVDDおよびローレベル電源電圧ELVSSは、図示しない電源回路から供給される。
【0036】
表示制御回路40は、外部から送られる入力画像信号DINとタイミング信号群(水平同期信号、垂直同期信号など)TGとを受け取り、デジタル映像信号VD1と、ソースドライバ30の動作を制御する制御信号SCTLと、スキャンドライバ20内の後述するゲートドライバの動作を制御する制御信号GCTLと、スキャンドライバ20内の後述するエミッションドライバの動作を制御する制御信号ECTLとを出力する。制御信号SCTLには、ソーススタートパルス信号,ソースクロック信号,ラッチストローブ信号などが含まれている。制御信号GCTLには、ゲートスタートパルス信号,ゲートクロック信号,イネーブル信号などが含まれている。制御信号ECTLには、発光制御スタートパルス信号と発光制御クロック信号とが含まれている。
【0037】
A/Dコンバータ31は、ソースドライバ30から出力されたアナログデータであるモニタデータ(TFT特性やOLED特性を求めるために測定されたデータ)MOaをデジタルデータであるモニタデータMOdに変換する。補正データ記憶部33は、補正演算部32による補正演算に必要な補正データを記憶する。補正演算部32は、A/Dコンバータ31から出力されたモニタデータMOdに基づき、補正データ記憶部33に記憶された補正データを更新する。また、補正演算部32は、補正データ記憶部33に記憶された補正データを参照して、表示制御回路40から出力されたデジタル映像信号VD1を補正し、補正後のデジタル映像信号VD2を出力する。
【0038】
スキャンドライバ20は、機能的には、図3に示すように、走査信号線GL(1)~GL(n)およびモニタ制御線ML(1)~ML(n)を駆動するゲートドライバ(走査信号線駆動回路)210として機能する部分と、発光制御線EM(1)~EM(n)を駆動するエミッションドライバ(発光制御線駆動回路)220として機能する部分とが含まれている。ゲートドライバ210は、走査信号線GL(1)~GL(n)およびモニタ制御線ML(1)~ML(n)に接続されている。後述するように、ゲートドライバ210は、複数の単位回路からなるシフトレジスタによって構成されている。ゲートドライバ210は、表示制御回路40から出力された制御信号GCTLに基づいて、走査信号線GL(1)~GL(n)に走査信号を印加し、モニタ制御線ML(1)~ML(n)にモニタ制御信号を印加する。エミッションドライバ220は、発光制御線EM(1)~EM(n)に接続されている。ゲートドライバ210と同様、エミッションドライバ220は、複数の単位回路からなるシフトレジスタによって構成されている。エミッションドライバ220は、表示制御回路40から出力された制御信号ECTLに基づいて、発光制御線EM(1)~EM(n)に発光制御信号を印加する。
【0039】
ソースドライバ30は、データ信号線SL(1)~SL(m)に接続されている。ソースドライバ30は、データ信号線SL(1)~SL(m)を駆動する動作と、データ信号線SL(1)~SL(m)を流れる電流を測定する動作とを選択的に行う。すなわち、図4に示すように、ソースドライバ30には、機能的には、データ信号線SL(1)~SL(m)を駆動するデータ信号線駆動部310として機能する部分と、画素回路110からデータ信号線SL(1)~SL(m)に出力された電流を測定する電流モニタ部320として機能する部分とが含まれている。電流モニタ部320は、データ信号線SL(1)~SL(m)を流れる電流を測定し、測定値に基づくモニタデータMOaを出力する。以上のように、本実施形態においては、データ信号線SL(1)~SL(m)は、画像表示用のデータ信号の伝達に用いられるだけでなく、モニタ処理の際に駆動トランジスタまたは有機EL素子の特性に応じた電流を流すための信号線としても用いられる。
【0040】
以上のように、走査信号線GL(1)~GL(n)に走査信号が印加され、モニタ制御線ML(1)~ML(n)にモニタ制御信号が印加され、発光制御線EM(1)~EM(n)に発光制御信号が印加され、データ信号線SL(1)~SL(m)に輝度信号としてのデータ信号が印加されることによって、入力画像信号DINに基づく画像が表示部10に表示される。また、モニタ処理が実行され、当該モニタ処理の結果に応じて補償演算処理が行われるので、駆動トランジスタや有機EL素子の劣化が補償される。
【0041】
<2.画素回路およびソースドライバ>
次に、画素回路110およびソースドライバ30について詳しく説明する。ソースドライバ30は、データ信号線駆動部310として機能するときには次のような動作を行う。ソースドライバ30は、表示制御回路40から出力された制御信号SCTLを受け取り、m本のデータ信号線SL(1)~SL(m)にそれぞれ目標輝度に応じた電圧をデータ信号して印加する。このとき、ソースドライバ30では、ソーススタートパルス信号のパルスをトリガーとして、ソースクロック信号のパルスが発生するタイミングで、各データ信号線SLに印加すべき電圧を示すデジタル映像信号VD2が順次に保持される。そして、ラッチストローブ信号のパルスが発生するタイミングで、上記保持されたデジタル映像信号VD2がアナログ電圧に変換される。その変換されたアナログ電圧は、データ信号として全てのデータ信号線SL(1)~SL(m)に一斉に印加される。ソースドライバ30は、電流モニタ部320として機能するときには、モニタ処理用の適宜の電圧をデータ信号としてデータ信号線SL(1)~SL(m)に印加し、それによってデータ信号線SL(1)~SL(m)を流れる電流をそれぞれ電圧に変換する。その変換後の電圧は、モニタデータMOaとしてソースドライバ30から出力される。
【0042】
図5は、画素回路110およびソースドライバ30の一部を示す回路図である。なお、図5には、第i行第j列の画素回路110と、ソースドライバ30のうちのj列目のデータ信号線SL(j)に対応する部分とが示されている。この画素回路110は、表示素子としての1個の有機EL素子L1と、4個のトランジスタT1~T4(コンデンサCへの書き込みを制御する書き込み制御トランジスタT1、有機EL素子L1への電流の供給を制御する駆動トランジスタT2、TFT特性あるいはOLED特性を検出するか否かを制御するモニタ制御トランジスタT3、および有機EL素子L1を発光させるか否かを制御する発光制御トランジスタT4)と、保持容量としての1個のコンデンサ(容量素子)Cとを備えている。本実施形態においては、トランジスタT1~T4は、nチャネル型の薄膜トランジスタである。なお、トランジスタT1~T4としては、酸化物TFT(酸化物半導体をチャネル層に用いた薄膜トランジスタ)やアモルファスシリコンTFTなどを採用することができる。酸化物TFTとしては、例えば、InGaZnO(酸化インジウムガリウム亜鉛)を含むTFTが挙げられる。酸化物TFTを採用することによって、例えば、高精細化や低消費電力化を図ることが可能となる。
【0043】
書き込み制御トランジスタT1については、制御端子は走査信号線GL(i)に接続され、第1導通端子はデータ信号線SL(j)に接続され、第2導通端子は駆動トランジスタT2の制御端子とコンデンサCの一端とに接続されている。駆動トランジスタT2については、制御端子は書き込み制御トランジスタT1の第2導通端子とコンデンサCの一端とに接続され、第1導通端子はコンデンサCの他端とハイレベル電源線とに接続され、第2導通端子はモニタ制御トランジスタT3の第1導通端子と発光制御トランジスタT4の第1導通端子とに接続されている。モニタ制御トランジスタT3については、制御端子はモニタ制御線ML(i)に接続され、第1導通端子は駆動トランジスタT2の第2導通端子と発光制御トランジスタT4の第1導通端子とに接続され、第2導通端子はデータ信号線SL(j)に接続されている。発光制御トランジスタT4については、制御端子は発光制御線EM(i)に接続され、第1導通端子は駆動トランジスタT2の第2導通端子とモニタ制御トランジスタT3の第1導通端子とに接続され、第2導通端子は有機EL素子L1のアノード端子(第1端子)に接続されている。コンデンサCについては、一端は書き込み制御トランジスタT1の第2導通端子と駆動トランジスタT2の制御端子とに接続され、他端は駆動トランジスタT2の第1導通端子とハイレベル電源線とに接続されている。有機EL素子L1については、アノード端子は発光制御トランジスタT4の第2導通端子に接続され、カソード端子(第2端子)はローレベル電源線に接続されている。
【0044】
次に、ソースドライバ30のうち電流モニタ部320として機能する部分について説明する。図5に示すように、電流モニタ部320は、D/Aコンバータ306とオペアンプ301とコンデンサ322と3つのスイッチ(スイッチ323,324,および325)とによって構成される。なお、オペアンプ301およびD/Aコンバータ306は、データ信号線駆動部310の構成要素としても機能する。電流モニタ部320には、制御信号SCTLとして、3つのスイッチの状態を制御する制御信号S0,S1,およびS2が与えられる。なお、それら制御信号S0,S1,およびS2は、表示制御回路40から出力される。電流モニタ部320の内部データ線Sin(j)は、スイッチ324を介して、データ信号線SL(j)に接続されている。オペアンプ301については、反転入力端子は内部データ線Sin(j)に接続され、非反転入力端子にはD/Aコンバータ306からの出力が与えられる。コンデンサ322およびスイッチ323は、オペアンプ301の出力端子と内部データ線Sin(j)との間に設けられている。スイッチ323には、制御信号S2が与えられる。オペアンプ301とコンデンサ322とスイッチ323とによって、積分回路35が構成されている。ここで、この積分回路35の動作について説明する。スイッチ323がオン状態になっている時には、オペアンプ301の出力端子-反転入力端子間(すなわち、コンデンサ322の2つの電極間)が短絡状態となっている。このとき、コンデンサ322に電荷は蓄積されず、オペアンプ301の出力端子および内部データ線Sin(j)の電位がD/Aコンバータ306からの出力電位と等しくなっている。スイッチ323がオン状態からオフ状態に切り替えられると、内部データ線Sin(j)を流れる電流に基づいてコンデンサ322への充電が行われる。すなわち、内部データ線Sin(j)を流れている電流の時間積分値がコンデンサ322に蓄積される。これにより、内部データ線Sin(j)を流れる電流の大きさに応じてオペアンプ301の出力端子の電位が変化する。そのオペアンプ301からの出力は、モニタデータMOaとしてソースドライバ30から出力される。上述したように、モニタデータMOaは、A/Dコンバータ31によって、デジタルデータであるモニタデータMOdに変換される。
【0045】
スイッチ324は、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)との間に設けられている。スイッチ324には、制御信号S1が与えられる。この制御信号S1に基づいてスイッチ324の状態が切り替えられることによって、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)との電気的な接続状態が制御される。本実施形態においては、制御信号S1がハイレベルであれば、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とが電気的に接続された状態となり、制御信号S1がローレベルであれば、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とが電気的に切り離された状態となる。なお、本実施形態においては、制御信号S1によってスイッチ制御信号が実現されている。
【0046】
スイッチ325は、データ信号線SL(j)と制御線CLとの間に設けられている。スイッチ325には、制御信号S0が与えられる。この制御信号S0に基づいてスイッチ325の状態が切り替えられることによって、データ信号線SL(j)と制御線CLとの電気的な接続状態が制御される。本実施形態においては、制御信号S0がハイレベルであれば、データ信号線SL(j)と制御線CLとが電気的に接続された状態となり、制御信号S0がローレベルであれば、データ信号線SL(j)と制御線CLとが電気的に切り離された状態となる。データ信号線SL(j)と制御線CLとが電気的に接続されると、データ信号線SL(j)の状態はハイ・インピーダンスとなる。
【0047】
上述したように、スイッチ324がオフ状態になると、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とは電気的に切り離された状態となる。このとき、スイッチ323がオフ状態になっていれば、内部データ線Sin(j)の電位は維持される。本実施形態においては、このようにして内部データ線Sin(j)の電位が維持されている状態で、A/Dコンバータ31でのAD変換が行われる。
【0048】
<3.ゲートドライバ>
<3.1 シフトレジスタの構成>
本実施形態におけるゲートドライバ210の詳細な構成について説明する。なお、ここで説明する構成は一例であって、これには限定されない。ゲートドライバ210は、複数段(少なくともn個の単位回路)からなるシフトレジスタによって構成されている。表示部10にはn行×m列の画素マトリクスが形成されているところ、それら画素マトリクスの各行と1対1で対応するようにシフトレジスタの各段(各単位回路)が設けられている。
【0049】
図6は、シフトレジスタの5段分の構成を示すブロック図である。ここでは、iを3以上(n-2)以下の整数と仮定して、(i-2)段目、(i-1)段目、i段目、(i+1)段目、および(i+2)段目の単位回路21(i-2)、21(i-1)、21(i)、21(i+1)、および21(i+2)に着目している。このシフトレジスタには、制御信号GCTLとして、ゲートスタートパルス信号、ゲートクロック信号GCK1、ゲートクロック信号GCK2、ゲートクロック信号GCK3、ゲートクロック信号GCK4、イネーブル信号EN1、イネーブル信号EN2、および制御信号MONが与えられる。なお、ゲートスタートパルス信号は、セット信号SGとして1段目の単位回路21(1)に与えられる信号であり、図6では省略している。
【0050】
各単位回路21は、クロック信号GKA、クロック信号GKB、イネーブル信号EN、制御信号MON、セット信号SG、およびリセット信号RGをそれぞれ受け取るための入力端子と、出力信号QG1および出力信号QG2をそれぞれ出力するための出力端子とを含んでいる。
【0051】
単位回路21(i-2)については、ゲートクロック信号GCK3がクロック信号GKAとして与えられ、ゲートクロック信号GCK1がクロック信号GKBとして与えられ、イネーブル信号EN1がイネーブル信号ENとして与えられる。単位回路21(i-1)については、ゲートクロック信号GCK4がクロック信号GKAとして与えられ、ゲートクロック信号GCK2がクロック信号GKBとして与えられ、イネーブル信号EN2がイネーブル信号ENとして与えられる。単位回路21(i)については、ゲートクロック信号GCK1がクロック信号GKAとして与えられ、ゲートクロック信号GCK3がクロック信号GKBとして与えられ、イネーブル信号EN1がイネーブル信号ENとして与えられる。単位回路21(i+1)については、ゲートクロック信号GCK2がクロック信号GKAとして与えられ、ゲートクロック信号GCK4がクロック信号GKBとして与えられ、イネーブル信号EN2がイネーブル信号ENとして与えられる。以上のような構成が4段ずつ繰り返される。制御信号MONについては、全ての単位回路21に共通的に与えられる。また、各段の単位回路21には、前段の単位回路21からの出力信号QG1がセット信号SGとして与えられ、2段後の単位回路21からの出力信号QG1がリセット信号RGとして与えられる。各段の単位回路21からの出力信号QG1は、2段前の単位回路21にリセット信号RGとして与えられ、次段の単位回路21にセット信号SGとして与えられ、対応する走査信号線GLに走査信号として与えられる。各段の単位回路21からの出力信号QG2は、対応するモニタ制御線MLにモニタ制御信号として与えられる。なお、図5に示したように、走査信号線GLは画素回路110内の書き込み制御トランジスタT1の制御端子に接続され、モニタ制御線MLは画素回路110内のモニタ制御トランジスタT3の制御端子に接続されている。
【0052】
<3.2 単位回路の構成>
図7は、単位回路21の構成を示す回路図である。図7に示すように、単位回路21は、7個のトランジスタM1~M7と2個のコンデンサC11,C12とを備えている。また、単位回路21は、制御信号MONを伝達する制御信号線に接続された入力端子およびローレベル電位VSSが与えられている電源線(以下、「第1基準電位線」という)に接続された入力端子のほか、5個の入力端子51~55および2個の出力端子58,59を有している。図7では、セット信号SGを受け取るための入力端子に符号51を付し、リセット信号RGを受け取るための入力端子に符号52を付し、クロック信号GKAを受け取るための入力端子に符号53を付し、クロック信号GKBを受け取るための入力端子に符号54を付し、イネーブル信号ENを受け取るための入力端子に符号55を付し、出力信号QG1を出力するための出力端子に符号58を付し、出力信号QG2を出力するための出力端子に符号59を付している。
【0053】
トランジスタM1の第2導通端子、トランジスタM2の第1導通端子、トランジスタM3の制御端子、トランジスタM5の第1導通端子、およびコンデンサC11の一端は互いに接続されている。なお、これらが互いに接続されている領域(配線)のことを「第1内部ノード」という。第1内部ノードには符号N1を付す。トランジスタM5の第2導通端子、トランジスタM6の制御端子、およびコンデンサC12の一端は互いに接続されている。なお、これらが互いに接続されている領域(配線)のことを「第2内部ノード」という。第2内部ノードには符号N2を付す。
【0054】
ところで、単位回路21には、出力信号QG1の出力を制御する第1出力制御回路211と、出力信号QG2の出力を制御する第2出力制御回路212とが含まれている。第1出力制御回路211は、トランジスタM3とトランジスタM4とを含んでいる。第2出力制御回路212は、トランジスタM6とトランジスタM7とを含んでいる。
【0055】
トランジスタM1については、制御端子および第1導通端子は入力端子51に接続され(すなわち、ダイオード接続となっている)、第2導通端子は第1内部ノードN1に接続されている。トランジスタM2については、制御端子は入力端子52に接続され、第1導通端子は第1内部ノードN1に接続され、第2導通端子は第1基準電位線に接続されている。トランジスタM3については、制御端子は第1内部ノードN1に接続され、第1導通端子は入力端子53に接続され、第2導通端子は出力端子58に接続されている。トランジスタM4については、制御端子は入力端子54に接続され、第1導通端子は出力端子58に接続され、第2導通端子は第1基準電位線に接続されている。トランジスタM5については、制御端子は制御信号線に接続され、第1導通端子は第1内部ノードN1に接続され、第2導通端子は第2内部ノードN2に接続されている。トランジスタM6については、制御端子は第2内部ノードN2に接続され、第1導通端子は入力端子55に接続され、第2導通端子は出力端子59に接続されている。トランジスタM7については、制御端子は入力端子54に接続され、第1導通端子は出力端子59に接続され、第2導通端子は第1基準電位線に接続されている。コンデンサC11については、一端は第1内部ノードN1に接続され、他端は出力端子58に接続されている。コンデンサC12については、一端は第2内部ノードN2に接続され、他端は出力端子59に接続されている。
【0056】
ここで、トランジスタM5に着目する。制御信号線に与えられている制御信号MONがハイレベルになっている期間には、トランジスタM5は、第2内部ノードN2の電位が通常のハイレベルよりも高いときを除いてオン状態で維持される。トランジスタM5は、第2内部ノードN2の電位が所定以上になるとオフ状態となり、第1内部ノードN1と第2内部ノードN2とを電気的に切り離す。これにより、トランジスタM5は、第2内部ノードN2がブースト状態になったときの当該第2内部ノードN2の電位の上昇を補助する。
【0057】
<3.3 単位回路の動作>
図8を参照しつつ、i段目の単位回路21(i)の動作について説明する。但し、i行目がモニタ行であると仮定し、i行目についてのモニタ処理が行われる際の動作に着目する。時点t01の直前には、第1内部ノードN1の電位および第2内部ノードN2の電位はローレベルとなっており、制御信号MONはローレベルとなっている。
【0058】
時点t01になると、制御信号MONがローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM5がオン状態となる。また、時点t01になると、セット信号SGがローレベルからハイレベルに変化する。このセット信号SGのパルスによってトランジスタM1がオン状態となり、コンデンサC11が充電される。このとき、トランジスタM5がオン状態となっているので、コンデンサC12も充電される。以上より、第1内部ノードN1の電位が上昇してトランジスタM3がオン状態になるとともに第2内部ノードN2の電位が上昇してトランジスタM6がオン状態になる。しかしながら、時点t01~時点t02の期間には、クロック信号GKAおよびイネーブル信号ENはローレベルで維持されるので、出力信号QG1,QG2はローレベルで維持される。
【0059】
時点t02になると、クロック信号GKAがローレベルからハイレベルに変化する。このとき、トランジスタM3はオン状態となっているので、入力端子53の電位の上昇とともに出力端子58の電位(出力信号QG1の電位)が上昇する。これに伴い、コンデンサC11を介して第1内部ノードN1の電位も上昇する。その結果、トランジスタM3の制御端子には大きな電圧が印加され、出力端子58の接続先の書き込み制御トランジスタT1がオン状態となるのに充分なレベルにまで出力信号QG1の電位が上昇する。また、時点t02になると、イネーブル信号ENがローレベルからハイレベルに変化する。このとき、トランジスタM6はオン状態となっているので、入力端子55の電位の上昇とともに出力端子59の電位(出力信号QG2の電位)が上昇する。これに伴い、コンデンサC12を介して第2内部ノードN2の電位も上昇する(第2内部ノードN2がブースト状態となる)。その結果、トランジスタM6の制御端子には大きな電圧が印加され、出力端子59の接続先のモニタ制御トランジスタT3がオン状態となるのに充分なレベルにまで出力信号QG2の電位が上昇する。
【0060】
時点t03になると、イネーブル信号ENがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、入力端子55の電位の低下とともに出力端子59の電位(出力信号QG2の電位)が低下する。出力端子59の電位が低下すると、コンデンサC12を介して、第2内部ノードN2の電位も低下する。
【0061】
時点t04になると、クロック信号GKAがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、入力端子53の電位の低下とともに出力端子58の電位(出力信号QG1の電位)が低下する。出力端子58の電位が低下すると、コンデンサC11を介して、第1内部ノードN1の電位も低下する。
【0062】
時点t05になると、イネーブル信号ENがローレベルからハイレベルに変化する。これにより、時点t02と同様、第2内部ノードN2の電位および出力端子59の電位(出力信号QG2の電位)が上昇する。
【0063】
時点t06になると、イネーブル信号ENがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、入力端子55の電位の低下とともに出力端子59の電位(出力信号QG2の電位)が低下する。これに伴い、コンデンサC12を介して、第2内部ノードN2の電位も低下する。
【0064】
時点t07になると、クロック信号GKAがローレベルからハイレベルに変化する。これにより、時点t02と同様、第1内部ノードN1の電位および出力端子58の電位(出力信号QG1の電位)が上昇する。なお、時点t07~時点t08の期間には、イネーブル信号ENはローレベルで維持されるので、第2内部ノードN2の電位は上昇しない。
【0065】
時点t08になると、クロック信号GKAがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、入力端子53の電位の低下とともに出力端子58の電位(出力信号QG1の電位)が低下する。これに伴い、コンデンサC11を介して、第1内部ノードN1の電位も低下する。また、時点t08には、リセット信号RGがローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM2がオン状態となる。その結果、第1内部ノードN1および第2内部ノードN2の電位はローレベルとなる。さらに、時点t08には、クロック信号GKBがローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM4,M7がオン状態となる。その結果、出力端子58の電位(出力信号QG1の電位)はローレベルとなり、出力端子59の電位(出力信号QG2の電位)はノイズが生じていてもローレベルへと引き込まれる。
【0066】
時点t09になると、制御信号MONがハイレベルからローレベルに変化する。これにより、トランジスタM5がオフ状態となる。
【0067】
以上のようにして、i行目の画素回路110では、時点t02~時点t04の期間および時点t07~時点t08の期間に書き込み制御トランジスタT1がオン状態となり、時点t02~時点t03の期間および時点t05~時点t06の期間にモニタ制御トランジスタT3がオン状態となる。これにより、i行目の画素回路110についてのモニタ処理が行われる。
【0068】
<4.エミッションドライバ>
<4.1 シフトレジスタの構成>
本実施形態におけるエミッションドライバ220の詳細な構成について説明する。なお、ここで説明する構成は一例であって、これには限定されない。ゲートドライバ210と同様、エミッションドライバ220は、複数段(少なくともn個の単位回路)からなるシフトレジスタによって構成されている。
【0069】
図9は、シフトレジスタの5段分の構成を示すブロック図である。ここでも、(i-2)~(i+2)段目の単位回路22(i-2)~22(i+2)に着目する。このシフトレジスタには、制御信号ECTLとして、発光制御スタートパルス信号および発光制御クロック信号ECK1~ECK4が与えられる。なお、発光制御スタートパルス信号は、セット信号SEとして1段目の単位回路22(1)に与えられる信号であり、図9では省略している。
【0070】
各単位回路22は、クロック信号EKA、クロック信号EKB、クロック信号EKC、クロック信号EKD、セット信号SE、およびリセット信号REをそれぞれ受け取るための入力端子と、出力信号QE1および出力信号QE2をそれぞれ出力するための出力端子とを含んでいる。
【0071】
単位回路22(i-2)については、発光制御クロック信号ECK3がクロック信号EKAとして与えられ、発光制御クロック信号ECK1がクロック信号EKBとして与えられ、発光制御クロック信号ECK4がクロック信号EKCとして与えられ、発光制御クロック信号ECK2がクロック信号EKDとして与えられる。単位回路22(i-1)については、発光制御クロック信号ECK4がクロック信号EKAとして与えられ、発光制御クロック信号ECK2がクロック信号EKBとして与えられ、発光制御クロック信号ECK1がクロック信号EKCとして与えられ、発光制御クロック信号ECK3がクロック信号EKDとして与えられる。単位回路22(i)については、発光制御クロック信号ECK1がクロック信号EKAとして与えられ、発光制御クロック信号ECK3がクロック信号EKBとして与えられ、発光制御クロック信号ECK2がクロック信号EKCとして与えられ、発光制御クロック信号ECK4がクロック信号EKDとして与えられる。単位回路22(i+1)については、発光制御クロック信号ECK2がクロック信号EKAとして与えられ、発光制御クロック信号ECK4がクロック信号EKBとして与えられ、発光制御クロック信号ECK3がクロック信号EKCとして与えられ、発光制御クロック信号ECK1がクロック信号EKDとして与えられる。以上のような構成が4段ずつ繰り返される。また、各段の単位回路22には、前段の単位回路22からの出力信号QE1がセット信号SEとして与えられ、次段の単位回路22からの出力信号QE1がリセット信号REとして与えられる。各段の単位回路22からの出力信号QE1は、前段の単位回路22にリセット信号REとして与えられ、次段の単位回路22にセット信号SEとして与えられる。各段の単位回路22からの出力信号QE2は、対応する発光制御線EMに発光制御信号として与えられる。なお、図5に示したように、発光制御線EMは画素回路110内の発光制御トランジスタT4の制御端子に接続されている。
【0072】
<4.2 単位回路の構成>
図10は、単位回路22の構成を示す回路図である。図10に示すように、単位回路22は、10個のトランジスタM11~M20と2個のコンデンサC21,C22とを備えている。また、単位回路22は、上述の第1基準電位線に接続された入力端子およびハイレベル電位VDDが与えられている電源線(以下、「第2基準電位線」という)に接続された入力端子のほか、6個の入力端子61~66および2個の出力端子68,69を有している。図10では、セット信号SEを受け取るための入力端子に符号61を付し、リセット信号REを受け取るための入力端子に符号62を付し、クロック信号EKDを受け取るための入力端子に符号63を付し、クロック信号EKCを受け取るための入力端子に符号64を付し、クロック信号EKAを受け取るための入力端子に符号65を付し、クロック信号EKBを受け取るための入力端子に符号66を付し、出力信号QE1を出力するための出力端子に符号68を付し、出力信号QE2を出力するための出力端子に符号69を付している。
【0073】
トランジスタM11の第2導通端子、トランジスタM12の第1導通端子、トランジスタM13の制御端子、トランジスタM16の制御端子、トランジスタM19の制御端子、およびコンデンサC21の一端は互いに接続されている。なお、これらが互いに接続されている領域(配線)のことを「第1制御ノード」という。第1制御ノードには符号VDを付す。トランジスタM15の第2導通端子、トランジスタM16の第1導通端子、トランジスタM17の制御端子、およびコンデンサC22の一端は互いに接続されている。なお、これらが互いに接続されている領域(配線)のことを「第2制御ノード」という。第2制御ノードには符号VEを付す。トランジスタM14の制御端子、トランジスタM17の第2導通端子、トランジスタM18の第1導通端子、トランジスタM20の制御端子、およびコンデンサC22の他端は互いに接続されている。なお、これらが互いに接続されている領域(配線)のことを「第3制御ノード」という。第3制御ノードには符号VRを付す。
【0074】
ところで、この単位回路22には、セット回路221とリセット回路222とバッファ回路223とが含まれている。セット回路221は、トランジスタM11~M14とコンデンサC21とを含んでいる。リセット回路222は、トランジスタM15~M18とコンデンサC22とを含んでいる。バッファ回路223は、トランジスタM19,M20を含んでいる。
【0075】
トランジスタM11については、制御端子は入力端子63に接続され、第1導通端子は入力端子61に接続され、第2導通端子は第1制御ノードVDに接続されている。トランジスタM12については、制御端子は入力端子64に接続され、第1導通端子は第1制御ノードVDに接続され、第2導通端子は入力端子62に接続されている。トランジスタM13については、制御端子は第1制御ノードVDに接続され、第1導通端子は入力端子65に接続され、第2導通端子は出力端子68に接続されている。トランジスタM14については、制御端子は第3制御ノードVRに接続され、第1導通端子は出力端子68に接続され、第2導通端子は第1基準電位線に接続されている。トランジスタM15については、制御端子は入力端子66に接続され、第1導通端子は第2基準電位線に接続され、第2導通端子は第2制御ノードVEに接続されている。トランジスタM16については、制御端子は第1制御ノードVDに接続され、第1導通端子は第2制御ノードVEに接続され、第2導通端子は入力端子66に接続されている。トランジスタM17については、制御端子は第2制御ノードVEに接続され、第1導通端子は入力端子65に接続され、第2導通端子は第3制御ノードVRに接続されている。トランジスタM18については、制御端子は入力端子66に接続され、第1導通端子は第3制御ノードVRに接続され、第2導通端子は第1基準電位線に接続されている。トランジスタM19については、制御端子は第1制御ノードVDに接続され、第1導通端子は第2基準電位線に接続され、第2導通端子は出力端子69に接続されている。トランジスタM20については、制御端子は第3制御ノードVRに接続され、第1導通端子は出力端子69に接続され、第2導通端子は第1基準電位線に接続されている。コンデンサC21については、一端は第1制御ノードVDに接続され、他端は出力端子68に接続されている。コンデンサC22については、一端は第2制御ノードVEに接続され、他端は第3制御ノードVRに接続されている。
【0076】
<4.3 単位回路の動作>
図11を参照しつつ、i段目の単位回路22(i)の動作について説明する。時点t11の直前には、第1制御ノードVDの電位および第3制御ノードVRの電位はローレベルとなっており、第2制御ノードVEの電位はハイレベル(プリチャージ状態)となっている。
【0077】
時点t11になると、クロック信号EKDがローレベルからハイレベルに変化する。これにより、トランジスタM11がオン状態となる。また、時点t11には、セット信号SEがローレベルからハイレベルに変化する。以上より、コンデンサC21が充電される。これにより、第1制御ノードVDの電位が上昇して(第1制御ノードVDがプリチャージ状態となって)トランジスタM13,M16,およびM19がオン状態になる。上述のようにトランジスタM13はオン状態になるが、時点t11~時点t12の期間には、クロック信号EKAはローレベルで維持されるので、出力端子68の電位(出力信号QE1の電位)はローレベルで維持される。また、トランジスタM19の第1導通端子にはハイレベル電位VDDが与えられているので、時点t11には、トランジスタM19がオン状態になることによって、出力端子69の電位(出力信号QE2の電位)が上昇する。
【0078】
図10に示すように、トランジスタM15の第1導通端子にはハイレベル電位VDDが与えられ、トランジスタM16の第2導通端子にはクロック信号EKBが与えられ、トランジスタM18の第2導通端子にはローレベル電位VSSが与えられている。ここで、時点t11~時点t12の期間には、クロック信号EKBはハイレベルとなっていて、かつ、上述したように第1制御ノードVDはプリチャージ状態になっている。以上より、この期間中、第2制御ノードVEの電位はハイレベル(プリチャージ状態)で維持され、第3制御ノードVRの電位はローレベルで維持される。
【0079】
時点t12になると、クロック信号EKAがローレベルからハイレベルに変化する。このとき、トランジスタM13はオン状態となっているので、入力端子65の電位の上昇とともに出力端子68の電位(出力信号QE1の電位)が上昇する。これに伴い、コンデンサC21を介して第1制御ノードVDの電位も上昇する(第1制御ノードVDがブースト状態となる)。その結果、トランジスタM13の制御端子には大きな電圧が印加され、出力端子68の電位(出力信号QE1の電位)が充分に上昇する。また、トランジスタM19の制御端子にも大きな電圧が印加されるので、出力端子69の電位(出力信号QE2の電位)が充分に上昇する。
【0080】
また、時点t12には、クロック信号EKBがハイレベルからローレベルに変化する。このとき、トランジスタM16はオン状態となっている。これにより、第2制御ノードVEの電位はローレベルとなり、トランジスタM17はオフ状態となる。このようにトランジスタM17はオフ状態となるので、時点t12にクロック信号EKAがローレベルからハイレベルに変化しても第3制御ノードVRの電位はローレベルで維持される。
【0081】
時点t13~時点t14の期間には、リセット信号REがハイレベルかつクロック信号EKCがハイレベルの期間とセット信号SEがハイレベルかつクロック信号EKDがハイレベルの期間とが交互に繰り返される。このため、第1制御ノードVDの電位はハイレベルで維持される。その第1制御ノードVDの電位は、クロック信号EKAに同期して上下に変動する。すなわち、第1制御ノードVDは、プリチャージ状態とブースト状態とを交互に繰り返す。従って、出力端子68の電位(出力信号QE1の電位)は、クロック信号EKAに同期してハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す。トランジスタM19の第1導通端子にはハイレベル電位VDDが与えられているので、出力端子69の電位(出力信号QE2の電位)は充分に高いレベルで維持される。
【0082】
また、時点t13~時点t14の期間には、上述したように第1制御ノードVDの電位がハイレベルで維持されるので、クロック信号EKBがハイレベルの期間には第2制御ノードVEの電位はハイレベル(プリチャージ状態)となり、クロック信号EKBがローレベルの期間には第2制御ノードVEの電位はローレベルとなる。これにより、トランジスタM17はオン状態とオフ状態とを交互に繰り返す。ここで、第2制御ノードVEの電位がハイレベルとなっている期間には、クロック信号EKAはローレベルで維持されている。従って、時点t13~時点t14の期間には、第2制御ノードVEはブースト状態とはならず、第3制御ノードVRの電位はローレベルで維持される。
【0083】
時点t14には、クロック信号EKDがローレベルからハイレベルに変化するが、セット信号SEはローレベルで維持される。このため、第1制御ノードVDの電位はローレベルとなる。これにより、トランジスタM13,M16,およびM19がオフ状態になる。トランジスタM16がオフ状態となるので、第2制御ノードVEの電位はハイレベル(プリチャージ状態)で維持される。このとき、クロック信号EKAはローレベルとなっているので、第3制御ノードVRの電位はローレベルで維持される。従って、トランジスタM20はオフ状態で維持され、出力端子69の電位(出力信号QE2の電位)は充分に高いレベルで維持される。
【0084】
時点t15になると、クロック信号EKAがローレベルからハイレベルに変化する。このとき、トランジスタM17はオン状態となっており、かつ、トランジスタM17の制御端子-第2導通端子間にはコンデンサC22が存在するので、入力端子65の電位の上昇によって第2制御ノードVEがブースト状態となる。これにより、第3制御ノードVRの電位が充分に上昇し、トランジスタM14,M20がオン状態となる。トランジスタM14がオン状態となることによって、出力端子68の電位(出力信号QE1の電位)はノイズが生じていてもローレベルへと引き込まれる。また、トランジスタM20がオン状態となることによって、出力端子69の電位(出力信号QE2の電位)はローレベルとなる。
【0085】
時点t16~時点t17の期間には、第1制御ノードVDの電位がローレベルで維持されることによって、トランジスタM16はオフ状態で維持される。このため、第2制御ノードVEの電位は、クロック信号EKAに同期して上下に変動する。すなわち、第2制御ノードVEは、プリチャージ状態とブースト状態とを交互に繰り返す。従って、第3制御ノードVRの電位は、クロック信号EKAに同期してハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す。なお、この期間中、トランジスタM13,M19はオフ状態で維持されるので、出力端子68の電位(出力信号QE1の電位)および出力端子69の電位(出力信号QE2の電位)はローレベルで維持される。
【0086】
<5.積分期間中の電流モニタ部の制御>
次に、図1を参照しつつ、上述した積分期間P14中の電流モニタ部320の制御について説明する。上述したように、発光制御信号EMの生成に用いられる発光制御クロック信号ECK1~ECK4については、積分期間P14中にもレベルの変化が生じている。ここで、それら発光制御クロック信号ECK1~ECK4の少なくとも1つのレベルが変化するタイミングのことを「エッジタイミング」と定義する。図1から把握されるように、本実施形態においては、積分期間P14は複数のエッジタイミングを含んでいる。そして、積分期間P14において、表示制御回路40は、各エッジタイミングの直前に制御信号S1をハイレベルからローレベルに変化させ、かつ、各エッジタイミングの直後に制御信号S1をローレベルからハイレベルに変化させる。これにより、積分期間P14において、各エッジタイミングの直前にスイッチ324(図5参照)がオフ状態となり、かつ、各エッジタイミングの直後にスイッチ324がオン状態となる。このようにして、積分期間P14の各エッジタイミングには、スイッチ324がオフ状態となっていることによって、駆動トランジスタT2の特性に応じた電流(測定電流)の流路であるデータ信号線SLと積分回路35とが電気的に切り離される。従って、積分期間P14の各エッジタイミングには、積分回路35への駆動トランジスタT2の特性に応じた電流の流入が停止される。それ故、積分期間P14の各エッジタイミングには、積分回路35での積分動作が停止する。
【0087】
<6.モニタ処理>
次に、図12を参照しつつ、モニタ処理が行われる際の画素回路110および電流モニタ部320の動作について説明する。但し、ここでは、i行目がモニタ行であると仮定し、第i行第j列の画素回路110およびj列目に対応する電流モニタ部320に着目する。また、ここでは、モニタ処理によってTFT特性の検出が行われる場合に着目する。なお、図8における各時点と図12における期間との対応関係は次のとおりである。
時点t01:期間P10の開始時点
時点t02:期間P11の開始時点
時点t03:期間P12の開始時点
時点t04:期間P12の終了時点
時点t05:期間P13の開始時点
時点t06:期間P14の終了時点
時点t07:期間P16の開始時点
時点t08:期間P16の終了時点
時点t09:期間P17の中間時点
【0088】
期間P10には、(i-1)行目で画像表示用のデータ電位Vd(i-1)に基づく書き込みが行われる。期間P10の終了時点直前には、走査信号GL(i)およびモニタ制御信号ML(i)はローレベルである。従って、書き込み制御トランジスタT1およびモニタ制御トランジスタT3はオフ状態である。また、期間P10の終了時点直前には、発光制御信号EM(i)はオンレベルである。従って、発光制御トランジスタT4はオン状態となっており、有機EL素子L1に駆動電流が供給されている。また、期間P10の終了時点直前には、制御信号S2,S1はハイレベルであり、制御信号S0はローレベルである。従って、スイッチ323,324はオン状態であり、スイッチ325はオフ状態である。このとき、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とは電気的に接続されている。
【0089】
期間P11になると、発光制御信号EM(i)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、発光制御トランジスタT4がオフ状態となり、有機EL素子L1への駆動電流の供給が停止する。また、期間P11になると、走査信号GL(i)およびモニタ制御信号ML(i)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1およびモニタ制御トランジスタT3はオン状態となる。期間P11には、以上のような状態で、画素回路110の状態を初期化する初期化電位Vpcがデータ信号線SL(j)に印加される。これにより、コンデンサCの状態および節点111の電位が初期化される。なお、発光制御信号EM(i)がハイレベルからローレベルに変化するタイミングと走査信号GL(i)およびモニタ制御信号ML(i)がローレベルからハイレベルに変化するタイミングとは必ずしも全く同じタイミングでなくても良い。
【0090】
期間P12になると、モニタ制御信号ML(i)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、モニタ制御トランジスタT3がオフ状態となる。この状態で、特性検出用電位Vr_TFTがデータ信号線SL(j)に印加される。特性検出用電位Vr_TFTは、駆動トランジスタT2には電流が流れるが有機EL素子L1には電流が流れないように設定された電位である。すなわち、期間P12に、駆動トランジスタT2はオン状態となる。
【0091】
期間P13になると、走査信号GL(i)はハイレベルからローレベルに変化し、モニタ制御信号ML(i)はローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1はオフ状態となり、モニタ制御トランジスタT3はオン状態となる。このような状態で、電流測定用電位Vm_TFTがデータ信号線SL(j)に印加される。これにより、駆動トランジスタT2を流れる電流がモニタ制御トランジスタT3およびデータ信号線SL(j)を介して電流モニタ部320へと流れる。このとき、制御信号S2はハイレベルであるので、スイッチ323はオン状態となっていて、コンデンサ322に電荷は蓄積されない。なお、期間P13については、データ信号線SL(j)を流れる電流(測定電流)が安定するのに充分な長さに設定されている。
【0092】
期間P14(積分期間)になると、制御信号S2がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、スイッチ323がオフ状態となり、オペアンプ301とコンデンサ322とによって電流の時間積分が行われる。但し、上述したように、発光制御クロック信号ECK1~ECK4のレベルが変化するタイミング(エッジタイミング)(図1参照)には、制御信号S1がローレベルとなることによってスイッチ324(図5参照)がオフ状態となる。スイッチ324がオフ状態となっている時には、電流の時間積分を行う動作は停止する。従って、期間P14(積分期間)のうちスイッチ324がオン状態となっている期間(制御信号S1がハイレベルとなっている期間)に電流の時間積分が行われる。以上のようにして、期間P14(積分期間)には、オペアンプ301の出力電圧は、データ信号線SL(j)を流れている電流に応じた電圧となる。
【0093】
期間P15になると、制御信号S1がハイレベルからローレベルに変化し、制御信号S0がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、スイッチ324がオフ状態となり、スイッチ325がオン状態となる。スイッチ324がオフ状態となることによって、データ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とが電気的に切り離された状態となる。この状態で、オペアンプ301の出力電圧(モニタデータMOa)が、A/Dコンバータ31によって、デジタルデータであるモニタデータMOdに変換される。これにより、i行目についてのTFT特性の検出が終了する。なお、AD変換後のモニタデータMOdは、デジタル映像信号の補正に用いられる。
【0094】
その後、期間P16になると、発光制御信号EM(i)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、発光制御トランジスタT4がオン状態となる。また、期間P16になると、制御信号S2,S1がローレベルからハイレベルに変化し、制御信号S0がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、スイッチ323,324がオン状態となり、スイッチ325がオフ状態となる。また、期間P16には、走査信号GL(i)がローレベルからハイレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1がオン状態となる。以上のような状態で画像表示用のデータ電位Vd(i)がデータ信号線SL(j)に印加され、第i行第j列の画素回路110において当該データ電位Vd(i)に基づく書き込みが行われる。これにより、有機EL素子L1が発光する。
【0095】
期間P17になると、走査信号GL(i)がハイレベルからローレベルに変化する。これにより、書き込み制御トランジスタT1がオフ状態となる。なお、期間P17には、(i+1)行目で画像表示用のデータ電位Vd(i+1)に基づく書き込みが行われる。期間P17以降の期間には、第i行第j列の画素回路110では、期間P16における書き込みに基づいて有機EL素子L1が発光する。
【0096】
本実施形態においては、TFT特性を検出するためのモニタ処理が以上のようにして行われる。なお、期間P12が測定用書き込み期間に相当し、期間P14(積分期間)が電流測定期間に相当する。
【0097】
なお、モニタ処理によってOLED特性の検出が行われる際には、複数の発光制御線EM(1)~EM(n)に印加される各発光制御信号はハイレベルで維持される。何故ならば、OLED特性を検出するためには有機EL素子L1に電流を流す必要があり、発光制御トランジスタT4がオン状態で維持されなければならないからである。
【0098】
<7.効果>
本実施形態によれば、積分期間P14中のエッジタイミング(発光制御クロック信号ECK1~ECK4の少なくとも1つのレベルが変化するタイミング)には、電流モニタ部320内のスイッチ324がオフ状態となることによってデータ信号線SL(j)と内部データ線Sin(j)とが電気的に切り離された状態となっているので、積分回路35への駆動トランジスタの特性に応じた電流の流入が停止されている。このため、駆動トランジスタの特性に応じた電流の時間積分を実際に求める動作は、図13に示すように、積分期間P14のうちカップリングノイズの影響を受けずに安定した電流が流れている期間(電流安定期間)P14sに行われる。従って、たとえ積分期間P14中に非モニタ行の発光制御線EMとデータ信号線SLとの間の寄生容量の存在に起因するカップリングノイズが生じても、駆動トランジスタT2の特性に応じた電流が精度良く検出される。以上のように、本実施形態によれば、外部補償機能を有する有機EL表示装置において、データ信号線SLに生じるカップリングノイズに起因する補償精度の低下が防止される。
【0099】
<8.変形例>
上記実施形態においては、データ信号線SL(1)~SL(m)は、画像表示用のデータ信号の伝達に用いられるだけでなく、モニタ処理の際に駆動トランジスタT2または有機EL素子L1の特性に応じた電流を流すための信号線としても用いられていた。しかしながら、これには限定されず、図14に示すように、データ信号線SL(1)~SL(m)とは別にモニタ処理の際に駆動トランジスタT2または有機EL素子L1の特性に応じた電流を流すための信号線(以下、「電流モニタ線」という。)MCLを設けるようにしても良い。
【0100】
図14は、本変形例における画素回路110およびソースドライバ30の一部を示す回路図である。第1の実施形態と同様、画素回路110は、1個の有機EL素子L1と、4個のトランジスタT1~T4(書き込み制御トランジスタT1、駆動トランジスタT2、モニタ制御トランジスタT3、および発光制御トランジスタT4)と、1個のコンデンサ(容量素子)Cとを備えている。但し、モニタ制御トランジスタT3の第2導通端子は電流モニタ線MCL(j)に接続されている。
【0101】
ソースドライバ30については、図14に示すように、データ信号線駆動部310として機能する部分と電流モニタ部320として機能する部分とが分離されている。データ信号線駆動部310には、オペアンプ311とD/Aコンバータ316とが含まれている。電流モニタ部320は、D/Aコンバータ326とオペアンプ321とコンデンサ322と3つのスイッチ(スイッチ323,324,および325)とによって構成される。オペアンプ321とコンデンサ322とスイッチ323とによって積分回路35が構成されている。なお、図14におけるオペアンプ321およびD/Aコンバータ326は、それぞれ、図5におけるオペアンプ301およびD/Aコンバータ306に相当する。電流モニタ部320の動作については第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。但し、本変形例における電流モニタ部320は、電流モニタ線MCLを流れる電流を測定する。
【0102】
以上のようにデータ信号線SLとは別に電流モニタ線MCLを設ける構成を採用した場合にも、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0103】
<9.その他>
上記実施形態(変形例を含む)では、電流によって駆動される表示素子を含む画素回路を備えた表示装置として有機EL表示装置を例に挙げて説明したが、これには限定されない。例えば、無機発光ダイオードを含む画素回路を備えた無機EL表示装置や量子ドット発光ダイオードを含む画素回路を備えたQLED(Quantum dot Light Emitting Diode)表示装置などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
10…表示部
20…スキャンドライバ
30…ソースドライバ
31…A/Dコンバータ
32…補正演算部
33…補正データ記憶部
35…積分回路
40…表示制御回路
110…画素回路
210…ゲートドライバ
220…エミッションドライバ
310…データ信号線駆動部
320…電流モニタ部
GL、GL(1)~GL(n)…走査信号線
ML、ML(1)~ML(n)…モニタ制御線
EM、EM(1)~EM(m)…発光制御線
SL、SL(1)~SL(m)…データ信号線
L1…有機EL素子
T1…書き込み制御トランジスタ
T2…駆動トランジスタ
T3…モニタ制御トランジスタ
T4…発光制御トランジスタ
図1
図2
図3
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