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特許7366243気体流体圧縮装置及び圧縮装置の作動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】気体流体圧縮装置及び圧縮装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20231013BHJP
   F04B 39/14 20060101ALI20231013BHJP
   F04B 39/12 20060101ALI20231013BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
F04B39/00 104Z
F04B39/14
F04B39/12 G
F04C29/00 B
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2022512844
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 KR2020013609
(87)【国際公開番号】W WO2021075781
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】102019127746.9
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グートベルレット,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フリードル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルスン,カディル
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112987(JP,A)
【文献】国際公開第2017/013987(WO,A1)
【文献】特開2007-198341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/14
F04B 39/12
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流体圧縮装置(1)として、前記圧縮装置はハウジング(2)内に共通の長さ方向軸(9)に沿って延びるように配置された固定子(5)及び回転子(8)を含み、前記固定子(5)は前記回転子(8)を半径方向に囲み、前記ハウジング(2)の壁の内部面と前記固定子(5)の壁の外部面間には空間(10)が形成されて、前記ハウジング(2)は第1ハウジング要素(2-1a、2-1b)及び第2ハウジング要素(2-2a、2-2b)で形成されて、前記ハウジング要素はそれぞれ互いに整列された接触面(3)で前記ハウジング(2)を閉鎖するように互いにに対して寄りかかって配置されて、前記接触面(3)間に密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)が配置される、前記気体流体圧縮装置において、
前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)は円周方向形態(17)及び少なくとも1つの密封領域(18、18-1、18-2、18-3)を有する環形ディスクの形状を有し、前記形態(17)は円周方向に前記接触面(3)の輪郭に相応して、前記密封領域(18、18-1、18-2、18-3)は前記空間(10)を少なくとも部分的に閉鎖することを特徴とする気体流体圧縮装置。
【請求項2】
密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)は一定の幅(b)を有する環形ディスクの形状を有し、前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)の外径は前記接触面(3)の外径に実質的に相応して、前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)の内径は前記固定子(5)の前記壁の前記外部面の直径に実質的に相応することを特徴とする請求項1に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項3】
前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)は閉鎖された面として設計された少なくとも1つの密封領域(18、18-1)を含むことを特徴とする請求項2に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項4】
前記密封要素(11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)は少なくとも1つの密封領域(18-2)を含み、前記密封領域(18-2)は流体が通過するための少なくとも1つの流動開口(15)及び/または少なくとも1つのリセス(19)を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項5】
前記流動開口(15)は円形または楕円形流動断面を有することを特徴とする請求項4に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項6】
前記リセス(19)は切開部の形状を有し、前記切開部は前記密封要素(11-3、11-5、11-6)の内径に配置された内部端から半径方向外側に延びるように形成されることを特徴とする請求項4又は5に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項7】
前記密封要素(11-7、11-8)は環形ディスクの形状を有し、前記密封要素(11-7、11-8)の外径は前記接触面(3)の外径に実質的に相応して、前記密封要素(11-7、11-8)の円周方向に延びる前記形態(17)の内径は前記接触面(3)の内径に相応するように設計されることを特徴とする請求項1に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項8】
前記密封要素(11-7、11-8)は前記流体の流動方向(14b)に影響を与える少なくとも1つの密封領域(18-3)を含み、前記密封領域(18-3)は前記圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)に対して垂直である平面内に配置されて前記圧縮装置(1)による前記流体のメーン流動方向内で突出するように整列されることを特徴とする請求項7に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項9】
気体流体圧縮装置(1)として、前記圧縮装置(1)は第1ハウジング要素(2-1b)及び第2ハウジング要素(2-2b)を有するハウジング(2)を含み、
前記ハウジング要素はそれぞれ互いに整列された接触面(3)で前記ハウジング(2)を閉鎖するように互いに隣接して配置されて、前記接触面(3)間には密封要素(11-7、11-8)が配置されて、前記密封要素(11-7、11-8)は円周方向形態(17)及び少なくとも1つの密封領域(18-3)を有する環形ディスクの形状を有し、前記密封要素(11-7、11-8)の外径は前記接触面(3)の外径に実質的に相応して、前記密封要素(11-7、11-8)の円周方向に延びる前記形態(17)の内径は前記接触面(3)の内径に相応して前記形態(17)は円周方向に前記接触面(3)の輪郭に相応するように形成される前記気体流体圧縮装置において、
前記密封要素(11-7、11-8)は前記流体の流動方向(14b)に影響を与える少なくとも1つの密封領域(18-3)を含み、前記密封領域(18-3)は前記圧縮装置(1)による前記流体のメーン流動方向に突出する方式で前記圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)に対して垂直である平面内に整列されるように配置されることを特徴とする気体流体圧縮装置。
【請求項10】
前記密封領域(18-3)は閉鎖された面として設計されることを特徴とする請求項8または9に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの密封領域(18-3)は一定の内径及び一定の外径を有する円形リングセクションの形状を有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの密封領域(18-3)は前記外径の領域で、前記圧縮装置(1)の前記長さ方向軸(9)に対して垂直である平面から突出する前記密封要素(11-7、11-8)の内径に配置されることを特徴とする請求項11に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの密封領域(18-3)は前記圧縮装置(1)の前記長さ方向軸(9)の方向に対して20°乃至70°の範囲の角度で整列されて配置されることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの密封領域(18-3)は前記密封領域(18-3)の内径に配置された少なくとも1つの案内要素(20)を含むことを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項15】
前記案内要素(20)は前記圧縮装置(1)の前記長さ方向軸(9)の方向に対して60°乃至90°の範囲の角度で整列されて配置されることを特徴とする請求項14に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項16】
前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)は前記ハウジング(2)の連結要素(4)を収容するための通路(13)を含み、前記少なくとも1つの密封領域(18、18-1、18-2、18-3)は隣接するように配置された通路(13)間に円周方向に形成されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項17】
前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)は前記圧縮装置(1)の前記長さ方向軸(9)に対して垂直である平面内に整列されて配置されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項18】
前記固定子(5)及び前記回転子(8)は前記第1ハウジング要素(2-1a)内に配置されることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項19】
前記第1ハウジング要素(2-1a)は前記ハウジング(2)内に圧縮される気体流体を吸入するための入口(16)を含むことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項20】
圧縮機構が前記第2ハウジング要素(2-2a、2-2b)内に配置されることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項21】
前記ハウジング(2)の前記壁の前記内部面と前記固定子(5)の前記壁の前記外部面間に形成された前記空間(10)は円形シリンダーリングの形状を有することを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項22】
前記円周方向形態(17)は前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)の上部面及び下部面上でクラウン形状に形成されることを特徴とする請求項1乃至21のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置(1)の作動方法として、
流体が入口(16)を通じてハウジング(2)の第1ハウジング要素(2-1a)内に流入して、圧縮装置の前記第1ハウジング要素(2-1a)内に配置された固定子(5)及び回転子(8)は圧縮機構を駆動するために流体により作動されて、前記流体は前記固定子(5)の隣接するように配置されたコイル(6)間に形成された空間(12)、前記固定子(5)と前記回転子(8)間に形成された空間、及び前記回転子(8)を通じて案内されて、
前記流体は前記第1ハウジング要素(2-1a、2-1b)と第2ハウジング要素(2-2a、2-2b)間に配置された密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)を通じて前記第2ハウジング要素(2-2a、2-2b)内に圧縮機構に向かって案内される、前記気体流体圧縮装置の作動方法において、
前記ハウジング(2)の壁の内部面と前記固定子(5)の壁の外部面間に形成された空間(10)を通じて案内された前記流体の部分質量流れは前記第1ハウジング要素(2-1a、2-1b)によるバイパス流れとして、前記ハウジング要素(2-1a、2-1b、2-2a、2-2b)間に配置された前記密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)により制御されることを特徴とする気体流体圧縮装置の作動方法。
【請求項24】
前記部分質量流れの案内のための前記空間(10)は少なくとも部分的に閉鎖されることを特徴とする請求項23に記載の気体流体圧縮装置の作動方法。
【請求項25】
前記部分質量流れの流動方向は、前記第2ハウジング要素(2-2b)内に流入する時、前記密封要素(11-7、11-8)により前記圧縮機構に向かって意図する方式で流れることを特徴とする請求項23又は24に記載の気体流体圧縮装置の作動方法。
【請求項26】
請求項1乃至22のいずれか1項に記載の気体流体圧縮装置を冷媒回路内の冷媒の圧縮機として用いたことを特徴とする自動車空調システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体流体圧縮装置及び圧縮装置の作動方法に係り、より詳しくは、できるかぎり少ない数の個別部品で簡単な方式を迅速に組み立てられる気体流体圧縮装置及び圧縮装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮装置は自動車の空調システムの冷媒回路で圧縮機として用いることができる。圧縮装置は固定子及び回転子を含み、前記固定子及び回転子はハウジング内に配置されて共通長さ方向軸に沿って延びる。このような配置で、固定子は回転子を半径方向で囲んでいる。ハウジングの壁の内部面と固定子の壁の外部面間には空間が形成される。ハウジングはハウジング要素を含み、前記ハウジング要素はこれらの接触面が互いに整列されるように配列されてハウジングを密封する。密封要素がハウジング要素の接触面間に配置される。
本発明はまた前記圧縮装置の作動方法に関する。
モバイルアプリケーションにおいて、特に自動車の空調システムで冷媒回路を通じて冷媒を送出するための、冷媒圧縮機ともいう、従来技術に公知となった圧縮機は、冷媒の種類と関係なくたびたび可変容量型ピストン圧縮機として、またはスクロール圧縮機として設計される。圧縮機はプーリにより、または電気で駆動される。 電気駆動圧縮機はそれぞれの圧縮機構を駆動するための電気モーターを含む。圧縮機で発生する損失は特に熱を発生させるので、最大寿命を有する圧縮機の安全な作動を保障するために、電気モーターの熱は放出されなければならない。例えば、圧縮機の作動中に、例えばハウジングの壁からの熱は圧縮される冷媒に直接伝達されて圧縮機の全体効率に影響を及ぼす。圧縮機の全体効率は最大でなければならない。
【0003】
圧縮機の作動及び特に全体効率を決定するパラメーターを考慮して、その効果を互いに調整するために、圧縮される冷媒または冷媒-オイル混合物の質量流れは圧縮機ハウジングまたは電気モーターにより最適の流動経路に沿って案内されて制御されなければならない。
電気駆動圧縮機の従来の電気モーターはコイルが配置された環形固定子コア及び回転子を含むように設計されて、回転子は固定子コア内に配置される。回転子及び固定子は共通対称軸に沿って、または代案的に回転子の回転軸に沿って整列される。
従来技術にはハウジングシールを含む電気駆動圧縮機が公知となっており、前記ハウジングシールは互いに接触している2つの個別ハウジング要素を密封するために設計される。ハウジングシールは相違する圧力及び温度で圧縮機から周辺へ冷媒またはオイルの排出を防止するようにハウジングを密封する機能だけを遂行する。
圧縮機ハウジングにより、または電気モーターを通じて冷媒または冷媒-オイル混合物の質量流れの意図的流動を同時に保障するために、従来の圧縮機は可能な流動経路を遮断して閉鎖して好ましくない流動を防止するための、または所望の流動を指示、案内及び方向転換するための追加の部品、例えばインサート要素を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が目的とすることは、できるかぎり少ない数の個別部品で簡単な方式で迅速に組み立てられる気体流体圧縮装置、特に電気駆動圧縮機を提供することである。
個別部品は特に流体による熱吸収と関連して圧縮装置の知られて要求される多くの機能を遂行しなければならない。圧縮装置は製造費用を最小化して容易に具現できるように考案される。特に、圧縮装置の構成の複雑性が最小化されなければならず、同時に周辺に対する圧縮装置の密封が保障されなければならない。圧縮装置の全体効率は最大化されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は独立請求項の特徴を含む対象により解決される。改善例は従属請求項に提示されている。
前記課題は本発明による気体流体を圧縮するのに用いられる装置により解決される。圧縮装置は動かない固定子及び回転子を含み、前記固定子及び回転子はハウジング内に配置されて共通長さ方向軸に沿って延びる。このような配置で、固定子は回転子の外部面で回転子を囲むように半径方向で配置される。
ハウジングの壁の内部面と固定子の壁の外部面間には空間が形成される。ハウジングは第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素を含み、前記ハウジング要素はこれらの接触面が互いに整列されるように配列されてハウジングを密封する。このような配置で、密封要素はハウジング要素の接触面間に配置される。
【0006】
本発明によれば、密封要素は円周方向成形部(moulding)と少なくとも1つの密封領域を有する環形ディスクの形状を有する。円周方向で、前記形状はハウジング要素の接触面の輪郭に対応する。密封領域はハウジングと固定子間の空間を少なくとも部分的に閉鎖する。
密封要素は好ましくは接触面の領域でハウジング要素の接触面の外部輪郭またはハウジングの外部輪郭をシミュレーションする形状を有する。
ハウジングの壁の内部面と固定子の壁の外部面間に形成された空間は円形リングの形状を有することが好ましい。
密封要素は圧縮装置の長さ方向軸に対して垂直である平面で一定に整列されることが好ましい。
【0007】
本発明の第1代案的実施例によれば、密封要素は一定の幅を有する環形ディスクの形状を有する。この場合、密封要素の外径はハウジング要素の接触面の外径に実質的に相応する一方、密封要素の内径は固定子壁の外部面の直径に実質的に相応する。従って、密封要素はハウジングと固定子間に形成された空間の流動断面をほぼ完全に閉鎖する外形を有する。
環形ディスクの幅は全ての場合において装置の長さ方向軸に対して垂直である平面で延長部を含むことと理解される。
密封要素は閉鎖された面として形成される少なくとも1つの第1密封領域を含むことが好ましい。
【0008】
本発明のもう1つの長所は密封要素が少なくても1つの第2密封領域を含み、前記密封領域は流体が密封要素を通じて、またはハウジングにより囲まれた空間内で、密封要素を経て流れるようにする少なくとも1つの流動開口または少なくとも1つのリセスを含むことである。
少なくとも1つの流動開口は例えば円形または楕円形流動断面に設計されることができる。多数の流動開口が含まれる場合、流動開口の流動断面の形状または大きさは同一であるか、相違することができる。
多数は常に2つ以上の個数を意味する。
少なくとも1つのリセスは例えば切開部(notch)の形状を有することができ、前記切開部は密封領域内で半径方向外側に延びる密封要素の内径に配置された内部エッジ(edge)から形成される。
【0009】
本発明のもう1つの代案的実施例によれば、密封要素は環形ディスクの形状を有し、密封要素の外径はハウジング要素の接触面の外径に実質的に相応する一方、密封要素の内径は接触面の内径に相応するように形成される。密封要素の外径及び内径は好ましくは共通平面内に配置される。
密封要素は好ましくは流体の流動方向に影響を与える少なくとも1つの密封領域を含み、前記密封領域は圧縮装置の長さ方向軸に対して垂直である平面に配置されて圧縮装置による流体のメーン流動方向内で突出するように整列される。
密封領域は好ましくは閉鎖された面として形成される。
前記課題はまた本発明によるガス流体を圧縮するための装置により解決され、前記装置は第1ハウジング要素及び第2ハウジング要素を有するハウジングを含み、前記ハウジング要素は互いに接触する接触面が相互整列されるようにそれぞれ配置されてハウジングを閉鎖する。従って、密封要素は接触面間に配置されて、円周方向成形部及び少なくとも1つの密封領域を有する環形ディスクの形状を有する。密封要素の外径は接触面の外径に実質的に相応する一方、密封要素の内径は接触面の内径に形成されて、前記形状は円周方向で接触面の輪郭に相応する。
【0010】
本発明による密封要素は流体の流動方向に影響を与える少なくとも1つの密封領域を含み、前記密封領域は圧縮装置の長さ方向軸に対して垂直である平面内に配置されて前記圧縮装置による流体のメーン流動方向内で突出するように整列される。
流体の流動方向に影響を与える少なくとも1つの密封領域は、一定の内径及び一定の外径を有する円形リング断面の形状を有することができる。密封領域は好ましくは密封要素の内径で外径の領域に配置されて、圧縮装置の長さ方向軸に対して垂直である平面から突出する。
【0011】
本発明の好ましい実施例によれば、流体の流動方向に影響を与える少なくとも1つの密封領域は圧縮装置の長さ方向軸の方向に対して20°乃至70°の範囲、特に30°乃至50°の範囲の角度で配置される。流体の流動方向に影響を与える多数の密封領域が用いられる時、密封領域の配置、特に圧縮装置の長さ方向軸の方向に対する角度、または寸法は同一であるか相違することができる。
【0012】
本発明のもう1つの長所は流体の流動方向に影響を与える少なくとも1つの密封領域が流体の流動を案内するための少なくとも1つの案内要素を含むことである。案内要素は密封領域の内径上に配置される。
案内要素はまた好ましくは圧縮装置の長さ方向軸の方向に対して60°乃至90°の範囲、特に70°乃至80°の範囲の角度で配置される。
本発明の改善例によれば、密封要素はハウジングの連結要素を収容するための通路を含むように設計される。ハウジングと固定子間の空間を少なくとも部分的に閉鎖する少なくとも1つの密封領域は隣接した通路間に円周方向に配置される。
固定子及び回転子は好ましくは第1ハウジング要素内に配置される。
第1ハウジング要素は好ましくはハウジング内に圧縮される気体流体を吸入するための入口を含み、流体が第1ハウジング要素を通じて案内されることができ、従って直接固定子または回転子に、そして続いて第2ハウジング要素内に案内されることができる。
圧縮機構は好ましくは第2ハウジング要素内に配置される。
【0013】
本発明のもう1つの好ましい実施例によれば、ハウジング要素の接触面の輪郭に対して円周方向に相応する密封要素の円周方向形状は密封要素の上部面及び下部面でクラウン形状に形成される。
要求される多数の機能を遂行するために多数の個別部品を有する圧縮装置を含む代わりに、密封要素は圧縮装置の部品として、圧縮機内部で流体、特に冷媒、冷媒-オイル混合物またはオイルの流動を能動的に案内するように設計されて、流量と熱管理間の最適の均衡を保障する。ハウジングシールは冷媒オイル管理システムで統合された機能を遂行するように設計される。
前記課題はまた前述のように気体流体を圧縮するのに用いられる装置を作動するための方法により解決される。
この場合、流体は入口を通じてハウジングの第1ハウジング要素内に流入し、流体は圧縮機構を駆動するように第1ハウジング要素内に配置された圧縮装置の固定子及び回転子と衝突する。流体は固定子の隣接したコイル間に形成された空間、固定子と回転子間に形成された空間及び回転子を通じて案内される。
続いて、流体は第1ハウジング要素と第2ハウジング要素間に配置された密封要素を通じて圧縮機構に向かって第2ハウジング要素内に案内される。
【0014】
本発明によれば、ハウジングの壁の内部面と固定子の壁の外部面間に形成された空間を通じて伝達される流体の部分質量流れは第1ハウジング要素によるバイパス流れとしてハウジング要素間に配置された密封要素により案内される。
本発明の一改善例によれば、空間は部分質量流れの案内のために少なくとも部分的に閉鎖される。
本発明の長所は密封要素により第2ハウジング要素内に流入する時、部分質量流れの流動方向が圧縮機構に向かって目標とする方式で向かうということである。
本発明の好ましい実施例は自動車の空調システムの冷媒回路で気体流体圧縮装置、特に冷媒圧縮機の使用を可能にする。
多機能部品を含むように設計された密封要素を備える本発明による蒸気流体圧縮装置及び前記圧縮装置の作動方法は下記のような追加長所を提供する。
既存要素に追加部品の機能を統合、これによって部品の数を最小化して追加部品の形成を不要にし、特に密封要素は例えばハウジングの機密密封及び圧縮装置による流体の意図的案内と関連する多数の機能を遂行する、それにより簡単な構成及び組み立て、これによって特に最小時間及び最小廃棄物により製造費用の減少、及び例えば機能部品に対して直接、液体流れの集中された制御による圧縮装置の効率及び性能向上、これによって圧縮装置の全体効率増加及び圧縮装置の大型化必要性の防止を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のもう1つの細部事項、特徴及び長所は関連図面を参照して行われる実施例に関する以下の詳細な説明から示される。
図1】開放されたハウジングを備える気体流体圧縮装置を電気モーターのコイル(6)と固定子コアを有する固定子及び回転子の方向から見た斜視図である。
図2a】ハウジングの密封面上に配置された従来の密封要素及び本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置のそれぞれの平面図である。
図2b】ハウジングの密封面上に配置された従来の密封要素及び本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置のそれぞれの平面図である。
図3a】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された従来の密封要素、そして本発明による密封要素を備える図1による圧縮装置のそれぞれの断面図である。
図3b】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された従来の密封要素、そして本発明による密封要素を備える図1による圧縮装置のそれぞれの断面図である。
図4a図3a及び図3bによる圧縮装置のそれぞれの詳細断面図である。
図4b図3a及び図3bによる圧縮装置のそれぞれの詳細断面図である。
図5】圧縮装置の回転速度による従来の密封要素及び本発明による密封要素を備える圧縮装置の効率、特に全体効率を比較するグラフを図示したものである。
図6a】相違するように設計された密封領域、流動開口及びリセスを備える本発明による密封要素の代案的実施例のそれぞれの斜視図または斜視詳細図である。
図6b】相違するように設計された密封領域、流動開口及びリセスを備える本発明による密封要素の代案的実施例のそれぞれの斜視図または斜視詳細図である。
図6c】相違するように設計された密封領域、流動開口及びリセスを備える本発明による密封要素の代案的実施例のそれぞれの斜視図または斜視詳細図である。
図6d】相違するように設計された密封領域、流動開口及びリセスを備える本発明による密封要素の代案的実施例のそれぞれの斜視図または斜視詳細図である。
図6e】相違するように設計された密封領域、流動開口及びリセスを備える本発明による密封要素の代案的実施例のそれぞれの斜視図または斜視詳細図である。
図6f】相違するように設計された密封領域、流動開口及びリセスを備える本発明による密封要素の代案的実施例のそれぞれの斜視図または斜視詳細図である。
図7a図6bによる本発明の密封要素の平面図、側断面図及び詳細断面図である。
図7b図6bによる本発明の密封要素の平面図、側断面図及び詳細断面図である。
図7c図6bによる本発明の密封要素の平面図、側断面図及び詳細断面図である。
図8a】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された従来の密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、及び従来の密封要素の斜視図である。
図8b】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された従来の密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、及び従来の密封要素の斜視図である。
図9a】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、およびそれぞれの密封要素の斜視図である。
図9b】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、およびそれぞれの密封要素の斜視図である。
図9c】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、およびそれぞれの密封要素の斜視図である。
図10a】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、およびそれぞれの密封要素の斜視図である。
図10b】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、およびそれぞれの密封要素の斜視図である。
図10c】閉鎖されたハウジング及び2つのハウジング要素間に配置された本発明による密封要素を備える図1の圧縮装置の断面図、およびそれぞれの密封要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、開放されたハウジング(2)を備える気体流体圧縮装置(1)が特に冷媒回路を通じて冷媒を送出するための自動車の空調システム用圧縮機を駆動するための装置として、電気モーターのコイル(6)と少なくとも部分絶縁された固定子コア(7)を有する固定子(5)及び回転子(8)の方向から見た斜視図に図示している。
位相導体または位相ともいう3つの導線を有する電気モーター、例えば交流モーターで、固定子コア(7)は回転子(8)の外部面上で半径方向に配置されて回転子(8)を円周方向に囲む。好ましくは積層コアを少なくとも部分的に囲む絶縁体を有する積層コアとして設計された固定子コア(7)及び回転子(8)はそれぞれ長さ方向軸(9)に沿って延びて、長さ方向軸(9)はまた固定子(5)の長さ方向軸及び回転子(8)の回転軸に相応する。
【0017】
圧縮装置(1)の開放されたハウジング(2)は接触面(3)の領域で閉鎖できる。従って、ハウジング(2)を機密に密封する互いに整列された接触面(3)を有する2つのハウジング要素は互いに隣接する。ハウジング要素は連結要素(4)により互いに連結及び固定される。ハウジング要素の密封面ともいうハウジング要素の接触面(3)間にはまた図示しない密封要素が配置される。
ハウジング(2)の壁の内部面と固定子(5)の壁の外部面、特に固定子コア(7)の壁の外部面間には第1空間(10)またはギャップが形成される。第1空間(10)はハウジング(2)の連結要素(4)の領域から円周方向に個別セクションに細分される実質的に円形シリンダーリングの形状を有する。
コイル(6)はそれぞれ固定子コア(7)の壁の半径方向内側に延びる絶縁された領域周りに巻かれた導線から電気導体として形成される。コイル(6)の領域での導線は、それぞれの場合に、好ましくはコーティングされて巻き取られた銅線であり、これで導線の巻き取られていない端部は連結リードとして、好ましくはプラスチック覆い(sheath)で絶縁される。半径方向内側に延びる固定子コア(7)の部分はそれぞれ十字型(cross-piece)の形状を有し、固定子コア(7)の外壁の円周にわたって均一に分布する。互いに隣接するように整列されたコイル(6)間には固定子ギャップともいうコイルギャップがある。
【0018】
圧縮装置(1)により圧縮される気体流体、特に冷媒または冷媒-オイル混合物は圧縮装置(1)のハウジング(2)内に吸入された後、熱を吸収するために電気モーターの部品を通じて案内された後、圧縮装置(1)の圧縮機構に供給される。
従って、一方では気体流体が圧縮機構内で圧縮される前に、特に圧縮機構を破壊する流体衝撃を避けるために、さらに過熱される。他方では、最大寿命まで圧縮機の安全な作動を保障するために電気モーターで発生した熱が放出される。
図2a及びbには本発明による密封要素(11)だけではなくハウジング(2)の密封面(3)上に配置された図2aによる従来の密封要素(11’)が備えられた図1による装置(1’、1)がそれぞれ平面図に図示されている。長さ方向軸(9)に対するコイル(6)と固定子コア(7)を有する固定子(5)及び回転子(8)の回転対称及び同軸配置が互いに対して明確に示される。
【0019】
2つのハウジング要素を互いに機密に連結してハウジング(2)を閉鎖する密封要素(11、11’)がハウジング(2)の開放された前面に形成された接触面(3)に装着される。密封要素(11、11’)はそれぞれ1つの連結要素(4)を収容するための通路(13)を含むように設計される。密封要素(11、11’)の通路(13)による連結要素(4)の通路または連結要素(4)上に密封要素(11、11’)の配置の結果として、圧縮装置(1、1’)の組み立ての間、特にハウジング(2)の閉鎖の間、密封要素(11、11’)がハウジング(2)に維持される。これは密封要素(11、11’)がハウジング(2)に対して滑ることを防止する。
従来の密封要素(11’)は図2aによって円形リングまたは環形ディスクとして設計されて実質的にハウジング(2)の接触面(3)の形状を有する。この場合、密封要素(11’)の外径は接触面(3)の外径に相応する一方、密封要素(11’)の内径は接触面(3)の内径に相応する。従って、ハウジング(2)の連結要素(4)の通路(13)の位置で、円形リングの幅は通路(13)間に形成された領域でより大きい。密封要素(11’)の壁の厚さは一定である。
【0020】
環形ディスクの幅は常に圧縮装置(1、1’)の長さ方向軸(9)に対して垂直である平面にある一方、壁の厚さは長さ方向軸(9)の方向に環形ディスクの寸法を示す。
ハウジング要素の接触面(3)を再現する従来の密封要素(11’)の設計によって、圧縮される気体流体はそれぞれの場合に流動方向(14’a)にハウジング(2)の壁と固定子(5)間に形成された第1流動経路としての第1空間(10)、隣接したコイル(6)間に形成された第2空間(12)、固定子(5)と回転子(8)間の空間、及び第2流動経路としての回転子(8)を通じて案内される。従って、圧縮装置(1)内に吸入された流体の質量流れは空間(10、12)を通じて部分質量流れに分割されて、2つの部分質量流れのうち一方は第1空間(10)を通じて、特に固定子(5)の外部面に沿って電気モーターを経て流れて、2つの部分質量流れのうち他方は電気モーターを通過して流れる。
図2bによれば、本発明による密封要素(11)は、ハウジング(2)の接触面(3)に加えて、ハウジング(2)の壁の内部面と固定子コア(7)の壁の外部面間に形成された第1空間(10)の流動断面、また閉鎖されるように一定の幅を有する円形リング、または環形ディスクとして設計される。従って、密封要素(11)の外径は接触面(3)の外径に実質的に相応する一方、密封要素(11)の内径は固定子コア(7)の壁の外径に実質的に相応する。
【0021】
外径はハウジング要素の接触面(3)の外径を、そして内径は固定子(5)の外径を再現する本発明による密封要素(11)の設計によって、圧縮される気体流体は隣接したコイル(6)間に形成された第2空間(12)、固定子(5)と回転子(8)間の空間、及び回転子(8)を通じて流動方向(14a)に案内される。ハウジング(2)の壁と固定子(5)間に形成された第1空間(10)の流動断面は密封要素(11)により閉鎖される。従って、圧縮装置(1)内に吸入された流体の質量流れは電気モーターを通じてのみ、特に第2空間(12)、コイル(6)間、そして回転子(8)を通じて電気モーターを通じて案内される。
密封要素(11)は、具体的に第1空間(10)を通じて第2部分質量流れを追加的に案内するように、それによりハウジング(2)の壁の内部面及び固定子コア(7)の壁の外部面から熱を吸収するように、流動開口(15)を含むように設計できる。流動開口(15)は第1空間(10)を閉鎖する密封要素(11)の領域の流動断面内に配置される。空間(10)を通じて伝達される、圧縮される流体の質量流れは流動開口(15)の配置、数及び寸法によって制御される。
図3a及びb、そして図4a及びbには、図3b及び4bによる本発明の密封要素(11)だけではなく図3a及び4aによる2つのハウジング要素(2-1a、2-2a)間に配置された従来の密封要素(11’)及び閉鎖されたハウジング(2)を備える図1または図2a及びbによる圧縮装置(1’、1)がそれぞれ断面図及び詳細断面図に図示される。図4a及び4bの詳細断面図はそれぞれハウジング要素(2-1a、2-2a)間に密封要素(11’、11)の配置の一部を図示する。
【0022】
第1ハウジング要素(2-1a)と第2ハウジング要素(2-2a)はハウジング(2)を機密に密封するように連結要素(4)を通じて連結される。図2aによる従来の密封要素(11’)または図2bによる密封要素(11)はハウジング要素(2-1a、2-2a)の接触面(3)間に配置される。
固定子(5)及び回転子(8)(図示しない)を備える電気モーターを収容するように実質的に設計された第1ハウジング要素(2-1a)は圧縮される気体流体をハウジング内に吸入するための入口(16)を含む。第2ハウジング要素(2-2a)は主に電気モーターにより駆動される圧縮装置(1’、1)の圧縮機構の部品、特に回転運動を保存して伝達するための部品を収容する役割をする。流動方向(14’a、14a)に第1ハウジング要素(2-1a)内に流入した流体は第1ハウジング要素(2-1a)と電気モーターを通じて第2ハウジング要素(2-2a)内に案内される。
図3a及び4aによる従来の密封要素(11’)がハウジング要素(2-1a、2-2a)の接触面(3)の外部輪郭だけを有するので、ハウジング(2)の壁と固定子コア(7)間にはハウジング要素(2-1a、2-2a)と重なる第1空間(10)が流体用開放された第1流動経路として残っている。従って、流動方向(14’a)に入口(16)を通じてハウジング(2)内に流入する流体は、固定子(5)だけではなく第1空間(10)を通じて流れる流動経路内に、特に隣接したコイル(6)間に形成された第2空間(12)を通じて、そして第2流動経路として回転子(8)を通じて案内される。第2ハウジング要素(2-2a)内で、2つの部分質量流れがまた混合されて圧縮機構に供給される。流体の質量流れはハウジング(2)を通じて流れる時に制御されず、調節されていない状態で部分質量流れに分割される。
【0023】
従来の密封要素(11’)と比較して、一定の幅を有する環形ディスクとして設計された本発明による密封要素(11)は、図3b及び4bに図示するように、ハウジング要素(2-1a、2-2a)の接触面(3)の外部輪郭に追加して第1流動経路として第1空間(10)の流動断面を閉鎖する形状を有する。それにより密封要素(11)は固定子コア(7)の壁の外径の領域でその内径に配置される。従って、流動方向(14a)に入口(16)を通じてハウジング(2)内に流入する流体は電気モーターのみにより、即ち、固定子(5)により、特に隣接したコイル(6)間に形成された第2空間(12)により、そして第2流動経路として回転子(8)により第2ハウジング要素(2-2a)内に案内された後、圧縮機構に供給される。第1流動経路は閉鎖される。第1空間(10)を通じて流体が案内されない。
図5には、それぞれの場合、圧縮装置(1’、1)、特に圧縮機構の回転速度によって、従来の密封要素(11’)を備える気体流体圧縮装置(1’)と本発明による密封要素(11)を備える圧縮装置(1)の効率、特に全体効率の比較が示される。
【0024】
圧縮装置(1)の全体効率は、圧縮される流体に対する密封要素(11)を備える圧縮装置(1)でハウジング(2)の壁の内部面と固定子(5)の壁の外部面間に形成された第1空間(10)の流動断面を遮断することによって、それにより従来の密封要素(11’)を備える圧縮装置(1’)で流体の少なくとも1つの部分質量流れが冷却される電気モーターを経て案内されるようにするバイパスを遮断することによって、増加される。全体効率は特に圧縮装置(1)を低速範囲内で、特に1,500rpmと2,500rpm間で作動する時、1%乃至2%間で向上することができる。従来の密封要素(11’)を備える圧縮装置(1’)と比較して本発明による密封要素(11)を備える圧縮装置(1)の全体効率増加は全体速度範囲にわたって観察される。
図6a乃至fはそれぞれ相違するように設計された密封領域(18、18-1、18-2)、流動開口(15)及びリセス(19)を有する形態(17)を備える本発明による密封要素(11)の代案的実施例をそれぞれ斜視図または斜視詳細図に図示する。
密封要素(11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)はそれぞれ円周方向に一定の幅(b)を有する円形リングまたは円形リングディスクの形状に設計されて、それぞれ図示しないハウジング要素(2-1a、2-2a)を連結するための連結要素(4)を収容するための通路(13)を含む。通路(13)は、特にこれらのうち6つは、円形リングの円周にわたって均一に分布する。環形ディスクの幅(b)は、密封要素(11)の外径が図示されないハウジング(2)の接触面(3)の外径に相応して密封要素(11)の内径が圧縮装置(1)内の密封要素(11)の配置領域で図示されない固定子(5)の壁の外径に実質的に相応するように設計される。
【0025】
また、密封要素(11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)はそれぞれ1つの上部面に沿って完全に突出して延びるクラウン状の形態(17)を含む。形態(17)の反対面、特に下部面内に延びる凹部(indentation)は密封要素(11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)の下部面上に配置される。形態(17)は円周方向に閉鎖されて、実質的に円形リングディスクの外径で延びて図示されないハウジング要素(2-1a、2-2a)の密封面(3)の外部輪郭を再現する。形態(17)は通路(13)の領域でのみ密封面の方向に通路(13)を少なくとも部分的に囲むように配列される。
図6aの密封要素(11-1)は閉鎖された密封領域(18)を有する本発明による密封要素(11)の基本的な実施例を示す。密封領域(18)は、ハウジング(2)の壁と固定子(5)間に形成された第1空間(10)の流動断面が密封要素(11)により少なくともほぼ完全に閉鎖されるように設計される。従って、密封要素(11-1)は隣接したハウジング要素(2-1a、2-2a)だけではなく空間(10)の流動断面も密封して、流体が可能な流動経路として空間(10)を通じて流れないようにする。
従来の密封要素(11’)と比較して内径が固定子(5)まで半径方向に延びる密封要素(11-1)は固定子(5)の外部面に沿う好ましくないバイパス流動を防止する役割をし、流体が固定子(5)の内部面に沿って、即ち、固定子(5)と回転子(8)間を流れるようにする。しかし、ハウジング(2)の壁と固定子(5)の外部間の流体の少なくとも1つの部分質量流れの部分でバイパス流れとして軸方向に整列された流れだけではなく部分質量流れに流体の意図的、そして制御された分割を許容するために、流動開口(15)またはリセス(19)がそれぞれ所定位置の完全に閉鎖された密封領域(18)内に提供される。
【0026】
図6b乃至fによる密封要素(11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)は図6aの密封要素(11-1)の密封領域(18)と類似する第1の閉鎖された密封領域(18-1)に加えて、圧縮される流体の少なくとも1つの部分質量流れを具体的に第1空間(10)を通じて案内してハウジング(2)の壁の内部面及び固定子コア(7)の壁の外部面から熱を吸収するようにするために、追加の流動開口(15)またはリセス(19)を備える第2密封領域(18-2)を含む。密封要素(11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)の流動開口(15)及びリセス(19)はそれぞれ第1空間(10)の流動断面を閉鎖する、図6aの密封要素(11-1)の密封領域(18)内に配置される。変更されるパラメーターとして流動開口(15)の配置、個数及び寸法またはリセス(19)の形状によって、空間(10)を通じて案内される圧縮される流体の部分質量流れが制御される。リセス(19)は円形リングディスクの内部端または内部半径から半径方向外側に延びる切開部(notch)として形成される。
例えば、図6bの密封要素(11-2)は従って2つの隣接した第2密封領域(18-2)内にそれぞれ4つの流動開口(15)を有するように設計される。4つの流動開口(15)のうち隣接した流動開口(15)は均一に離隔されている。流動開口(15)はそれぞれ円形リングディスクの同じ半径に配置される。
【0027】
図6cの密封要素(11-3)は単一流動開口(15)を有する第2密封領域(18-2)を含む。隣接した第2密封領域(18-2)には2つの流動開口(15)及び1つのリセス(19)が提供される。リセス(19)は流動開口(15)間に円周方向に配置されて、半円形面の形状に、即ち、半円形流動断面を有するように設計される。
図6dの密封要素(11-4)は図6cに図示した密封要素(11-3)と類似するように、単一流動開口(15)を有する第2密封領域(18-2)を含む。密封要素(11-3)とは異なって、隣接した第2密封領域(18-2)は均一に離隔されて円形リングディスクの同じ半径に配置される3つの流動開口(15)を含む。
図6eの詳細図で図示した密封要素(11-5)は図6cの密封要素(11-3)と類似するように、2つの流動開口(15)及び1つのリセス(19)を有する第2密封領域(18-2)を含む。リセス(19)は長方形状、即ち、長方形の流動断面を有し、流動開口(15)間に円周方向に配置される。
図6fの詳細図で図示した密封要素(11-6)は図6eの密封要素(11-5)と類似するが長方形状のリセス(19)だけを有する第2密封領域(18-2)を含む。
【0028】
図7a乃至cには、図6bによる密封要素(11-2)が通路(13)、クラウン形状(17)及び相違する密封領域(18-1、18-2)を含んで平面図、側断面図及び詳細断面図に図示しており、ここで流動開口(15)は第2密封領域(18-2)内に形成される。
図7bに図示した断面図は、円形リングディスクの上部面から円形リングディスクの下部面内に突出するクラウン状の完全な円周形態(17)を明確に示す。
図7cには、図面に図示する全ての密封要素(11)に対する実施例として、密封要素(11-2)がコーティングされた多重部品システムとして設計されることを図示している。基本材料には、特に全体面が例えばニトリルゴム(ニトリルブタジエンゴムの場合はNBRと略称される)でコーティングされたスチールが用いられる。
図8aは閉鎖されたハウジング(2)及び2つのハウジング要素(2-1b、2-2b)間に配置された従来の密封要素(11’)を含む図1による圧縮装置(1’)を断面図に図示する一方、図8bは従来の密封要素(11’)を斜視図に図示している。
図示したように、圧縮される流体は、図示しない固定子(5)と回転子(8)を備える電気モーターを収容するために、または前記電気モーターにより駆動される圧縮機構の部品、特に回転運動を支持して伝達するための部品を収容するために設計された第1ハウジング要素(2-1b)から前記圧縮機構を囲む第2ハウジング要素(2-2b)内を流動方向(14’b)に流れる。
【0029】
連結要素(4)のための通路(13)を有する従来の密封要素(11’)の設計に対する詳細な説明は特に図2aに対する上述に示す。
従来の密封要素(11’)の設計によって、流体が流動方向(14’b)に案内されず圧縮機構と共に第2ハウジング要素(2-2b)により囲まれた空間内に流れるため、例えば一側面だけが開放されたリセスとして設計された特定自由空間内に流入する時、自由空間内に所望の流動方向と反対方向に逆流が発生する。前記逆流は流動損失、それにより追加エネルギー損失を引き起こし、前記エネルギー損失は圧縮装置(1’)の全体効率を減少させる。
図9a及び10aにはそれぞれ閉鎖されたハウジング(2)及び2つのハウジング要素(2-1b、2-2b)間に配置された本発明による密封要素(11-7、11-8)を含む図1による圧縮装置(1)を断面図に図示しており、図9b及び10bにはそれぞれの密封要素(11-7、11-8)を斜視図に図示しており、図9c及び10cでは平面図に図示している。
図8a及びbに図示した従来の密封要素(11’)と比較して、本発明による密封要素(11)の代案的な実施例として設計された密封要素(11-7、11-8)は連結要素(4)のための通路(13)及び形態(17)に加えて、実質的に流動方向(14b)への流体の流動に影響を与える追加密封領域(18-3)を含む。
【0030】
密封要素(11-7、11-8)はそれぞれハウジング(2)の接触面(3)の形状を実質的に再現する円形リングまたは環形ディスクとして形成される。従って、密封要素(11-7、11-8)の外径は接触面(3)の外径に相応して一定する一方、前記外径の平面内に配置された密封要素(11-7、11-8)の内径接触面(3)の内径に相応する。前記直径は圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)に対して垂直である共通平面に整列される。ハウジング(2)の連結要素(4)の通路(13)の領域で、円形リングの内径は通路(13)間に円周方向に形成された領域より小さい。
密封要素(11-7、11-8)は、圧縮される流体の質量流れを意図した方式で第2ハウジング要素(2-2b)内に、特に圧縮機構に案内するために、追加密封領域(18-3)を含む。
追加密封領域(18-3)は、第1空間(10)の流動断面をそれに沿って部分質量流れ、特にハウジング(2)の壁の内部面及び固定子コア(7)の壁の外部面から熱を吸収するために第1空間(10)を通じて案内される部分質量流れを少なくとも部分的に閉鎖する密封要素(11-7、11-8)の部品として設計されて、圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)の方向に、または密封要素(11-7、11-8)の外径が配置された平面から流体の流動方向(14b)に延びるように整列される。
密封領域(18-3)はそれぞれ一定の内径及び一定の外径を有する円形リングセクションの形状を有する。密封領域(18-3)は、密封要素(11-7、11-8)と連結要素(4)の通路(13)間のハウジング(2)の接触面(3)をシミュレーションする領域の内径で、好ましくは連続的に、前記外径の領域で密封要素(11-7、11-8)に連結される。密封領域(18-3)は密封要素(11-7、11-8)のセクションとして圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)の方向に対して特定角度で整列される。前記角度は好ましくは20°乃至70°、特に30°乃至50°の範囲の値を有する。
【0031】
密封要素(18-3)の密封領域(18-3)は必要によって配置、特に角度の値、個数及び寸法の面で互いに相違することができる。
図10a乃至cによる密封要素(11-8)の実施例で、密封領域(18-3)は密封領域(18-3)の内径上に配置される追加の案内要素(20)を含む。密封領域(18-3)が外径の領域で長さ方向軸(9)に対して垂直である平面外部で圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)の方向に対して特定角度で整列される一方、追加の案内要素(20)は長さ方向軸(9)に対して垂直である平面の方向に後ろに傾斜している。圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)の方向と案内要素(20)間の角度は好ましくは60°乃至90°、特に70°乃至80°の範囲の値を有する。
密封要素(11-7、11-8)の密封領域(18-3)は流動案内部品として、または追加の案内要素(20)と共に、特に圧縮装置(1)の第2ハウジング要素(2-2b)または圧縮機構内に流入する時、流体の流動方向(14b)に能動的影響を与える役割をする。流動方向(14b)は配置、特に圧縮装置(1)の長さ方向軸(9)に対する角度によって変わるパラメーターとして密封領域(18-3)の個数、寸法及び形状により制御される。
本発明による密封要素(11、11-1、11-2、11-3、11-4、11-5、11-6、11-7、11-8)は別途の部品を使用せず、流体、特に自動車空調システムの冷媒回路の圧縮機内の冷媒または冷媒-オイル混合物の流動に能動的影響を与えて、自由流動と案内された流動間の最適の均衡を保障して、それにより流動管理及び熱管理を提供するように設計される。
流動開口(15)またはリセス(19)は同様にハウジング(2)内のオイル流れを制御する役割をし、それでオイルは第2ハウジング要素(2-2a)から例えばエンジンベアリングを潤滑なためにエンジンハウジングとして設計される第1ハウジング要素(2-1a)内に逆流できる。
【符号の説明】
【0032】
1、1’:圧縮装置
2:ハウジング
2,2-1a、2,2-1b、:第1ハウジング要素
2,2-2a、2,2-2b、:第2ハウジング要素
3:接触面、ハウジング要素(2-1、2-2)の支持面、密封面
4:連結要素
5:固定子
6:コイル
7:固定子コア
8:回転子
9:長さ方向軸
10:第1空間
11-1乃至11-8、11’:密封要素
12:第2空間
13:連結要素(4)の通路
14a、14b、14’a、14’b:流動方向
15:流動開口
16:入口
17:形態
18、18-3:密封要素(11-1、11-7、11-8)の密封領域
18-1:密封要素(11-2、11-3、11-4)の第1密封領域
18-2:密封要素(11-2、11-3、11-4、11-5、11-6)の第2密封領域
19:リセス
20:密封領域(18-3)の案内要素
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図6f
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c