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特許7366246極低温横膨張に優れた圧力容器用鋼板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】極低温横膨張に優れた圧力容器用鋼板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231013BHJP
   C22C 38/12 20060101ALI20231013BHJP
   C21D 8/02 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C22C38/00 301A
C22C38/12
C21D8/02 B
C22C38/00 302B
C21D8/02 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022514244
(86)(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 KR2020011278
(87)【国際公開番号】W WO2021045425
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109135
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン, スン-テク
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-096053(JP,A)
【文献】特開昭56-096052(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0054198(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.20~0.40%、Mn:0.3~0.6%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Al:0.02~0.10%、Ni:4.5~5.5%、Mo:0.2~0.4%、Pd:0.001~0.15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、
鋼組織が面積分率で0.5~5.0%の残留オーステナイト、25~85%の焼戻しベイナイト、及び残部が焼戻しマルテンサイトからなる強度と極低温横膨張特性に優れたことを特徴とする低温用圧力容器鋼板。
【請求項2】
重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.20~0.40%、Mn:0.3~0.6%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Al:0.02~0.10%、Ni:4.5~5.5%、Mo:0.2~0.4%、Pd:0.001~0.15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼スラブを1050~1250℃で再加熱する工程、
前記再加熱された鋼スラブをパス当たり5~30%の圧下率で熱間圧延し、800℃以上の温度で圧延を終了する熱間圧延工程、
前記熱間圧延された熱延鋼板を空冷した後、空冷された鋼板を850~920℃の温度範囲で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間加熱してから、150℃以下に水冷する工程、
前記水冷された鋼板を690~760℃で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間中間熱処理してから、150℃以下に水冷する工程、及び
前記水冷された鋼板を600~660℃の区間で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間焼戻し工程を含み、
前記焼戻し工程で得られた鋼板は、面積分率で0.5~5.0%の残留オーステナイト、25~85%の焼戻しベイナイト、及び残部が焼戻しマルテンサイトからなる組織を有することを特徴とする強度及び極低温横膨張特性に優れた低温用圧力容器鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温横膨張に優れた圧力容器用鋼板及びその製造方法に係り、詳しくは、極低温横膨張特性に優れた引張強度700MPa級低温圧力容器用鋼板で、低温用圧力容器、船舶、貯蔵タンク、構造用鋼などに用いられる極低温横膨張に優れた圧力容器用鋼板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低温用高強度厚板鋼材料は、残留オーステナイト(retained austenite)、焼戻しマルテンサイト(tempered martensite)組織、焼戻しベイナイト(tempered bainite)組織からなる3相混合組織で構成され、施工時にそれ自体が極低温用構造材として用いられる必要があるため、優れた強度及び極低温横膨張特性が求められている。
【0003】
一方、通常のノルマライジング(NOMALIZING)処理によって製造された高強度熱延鋼材は、フェライトとパーライトの混合組織を有する。これに対する従来技術の一例として、特許文献1に記載された発明が挙げられる。上記特許文献1に記載された発明は、重量%で、C:0.08~0.15%、Si:0.2~0.3%、Mn:0.5~1.2%、P:0.01~0.02%、S:0.004~0.006%、Ti:0%超過~0.01%以下、Mo:0.05~0.1%、Ni:3.0~5.0%、及び残部Feとその他の不可避不純物からなることを特徴とする500MPa級LPG用高強度鋼材を提示しており、その鋼組成成分にNi及びMoを添加することを特徴としている。
【0004】
特許文献1に記載された発明は、通常のノルマライジング(NOMALIZING)によって製造された鋼材であるため、Niなどを添加しても鋼材の極低温横膨張特性が十分でないという問題がある。したがって、低温用圧力容器、船舶、貯蔵タンク、構造用鋼などに用いられる高強度厚鋼板において、極低温横膨張特性に優れた高強度鋼材の開発に対する要求が台頭している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第2012-0011289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためのものであり、冷却及び熱処理工程を制御することによって製造される鋼材の組織を残留オーステナイト(retained austenite)、焼戻しマルテンサイト(tempered martensite)組織、焼戻しベイナイト(tempered bainite)を含む3相混合組織で制御することで、引張強度700MPa級を確保することができる低温用圧力容器鋼板及びその製造方法を提供することにその目的がある。
【0007】
しかしながら、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から当業者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.20~0.40%、Mn:0.3~0.6%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Al:0.02~0.10%、Ni:4.5~5.5%、Mo:0.2~0.4%、Pd:0.001~0.15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなり、
鋼微細組織が面積分率で0.5~5.0%の残留オーステナイト、25~85%の焼戻しベイナイト、及び残部焼戻しマルテンサイトを含む強度と極低温横膨張特性に優れた低温用圧力容器鋼板に関するものである。
【0009】
また、本発明は、
重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.20~0.40%、Mn:0.3~0.6%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Al:0.02~0.10%、Ni:4.5~5.5%、Mo:0.2~0.4%、Pd:0.001~0.15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなる鋼スラブを1050~1250℃で再加熱する工程、
再加熱された鋼スラブをパス当たり5~30%の圧下率で熱間圧延し、800℃以上の温度で圧延を終了する熱間圧延工程、
熱間圧延された熱延鋼板を空冷した後、空冷された鋼板を850~920℃の温度範囲で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間加熱してから、150℃以下に水冷する工程、
水冷された鋼板を690~760℃で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間に中間熱処理してから、150℃以下に水冷する工程、及び
水冷された鋼板を600~660℃の区間で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間に焼戻し工程、を含む強度及び極低温横膨張特性に優れた低温用圧力容器鋼板の製造方法に関するものである。
【0010】
上記焼戻し工程で得られた鋼微細組織は、面積分率で0.5~5.0%の残留オーステナイト、25~85%の焼戻しベイナイト、及び残部焼戻しマルテンサイトを含む。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成の本発明は、引張強度700MPa級を満たしながら-150℃程度の低温で安定して使用可能な強度及び横膨張特性に優れた低温用圧力容器鋼板を効果的に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明の引張強度及び横膨張特性に優れた低温用圧力容器鋼板について説明する。
【0014】
本発明の鋼板は、重量%で、C:0.05~0.15%、Si:0.20~0.40%、Mn:0.3~0.6%、P:0.015%以下、S:0.015%以下、Al:0.02~0.10%、Ni:4.5~5.5%、Mo:0.2~0.4%、Pd:0.001~0.15%を含み、残部がFe及び不可避不純物からなるが、その具体的な鋼板の成分及びその成分の制限理由は以下のとおりである。なお、以下において「%」は、特に断りのない限り「重量%」を意味する。
【0015】
・C:0.05~0.15%
本発明の鋼板は、Cを0.05~0.15%の範囲で添加することが好ましい。C含有量が0.05%未満である場合には、基地相の自体強度が低下し、0.15%を超過する場合には、鋼板の溶接性を大きく損なうためである。より好ましくは、C含有量を0.08~0.10%の範囲に制限する。
【0016】
・Si:0.20~0.40%
Siは、脱酸効果、固溶強化効果及び衝撃遷移温度上昇効果のために添加される成分であり、このような添加効果を達成するためには0.20%以上添加することが好ましい。しかし、0.40%を超過して添加すると溶接性が低下し、鋼板表面に酸化皮膜が過度に形成されるため、その添加量を0.20~0.40%に制限することが好ましい。より好ましくは、Si含有量を0.25~0.30%の範囲に制限する。
【0017】
・Mn:0.3~0.6%
Mnは、Sとともに延伸された非金属介在物であるMnSを形成して常温延伸率及び低温靭性を低下させるため、0.6%以下に管理することが好ましい。しかしながら、本発明の成分特性上、Mnが0.3%未満になると適切な強度を確保することが困難であるため、Mnの添加量は0.3~0.6%に制限することが好ましい。より好ましくは、Mn含有量を0.5~0.6%の範囲に制限する。
【0018】
・Al:0.02~0.10%
Alは、Siとともに製鋼工程において強力な脱酸剤の一つであり、0.02%未満添加する際には、その添加による効果が僅かであり、0.10を超えて添加する際には、製造原価が上昇するため、その含有量を0.02~0.10%に限定することが好ましい。
【0019】
・P:0.015%以下
Pは、低温靭性を損なう元素であるが、製鋼工程で除去するために過度の費用がかかるため、0.015%以下の範囲内に管理することが好ましい。
【0020】
・S:0.015%以下
SもPとともに低温靭性に悪影響を与える元素であるが、Pと同様に製鋼工程で除去するためには過度の費用がかかるため、0.015%以下の範囲内に管理することが適切である。
【0021】
・Ni:4.5~5.5%
Niは、低温靭性の向上に最も効果的な元素である。しかし、その添加量が4.5%未満であると低温靭性の低下を招き、5.5%を超過して添加すると製造費用の上昇をもたらすため、4.5~5.5%の範囲内に添加することが好ましい。より好ましくは、Ni含有量を4.8~5.2%の範囲に制限する。
【0022】
・Mo:0.2~0.4%
Moは、焼入性及び強度向上に非常に重要な元素であり、0.2%未満添加されると、その添加による効果が期待できず、0.4%を超えると、高価であることから非経済的であるため、0.4%以下に制限することが好ましい。より好ましくは、Mo含有量を0.25~0.30%の範囲に制限する。
【0023】
・Pd:0.001~0.15%
本発明において、Pdは、延性及び電性が良い金属として横膨張特性を増加させるための重要な元素である。しかし、その添加量が0.001%未満であると、添加による効果が期待できず、0.15%を超えると、高価元素であることから非経済的であるため、0.15%以下に制限することが好ましい。より好ましくは、Pd含有量を0.05~0.10%の範囲に制限する。
【0024】
一方、本発明の鋼板は、面積%で、0.5~5.0%の残留オーステナイト、25~85%の焼戻しベイナイト及び残部焼戻しマルテンサイトを含む鋼微細組織を有する。
【0025】
焼戻しベイナイトの分率が25%未満であると、焼戻しマルテンサイトの量が過多になって鋼板の低温靭性が劣化することがある。これに対し、85%を超えると、目標とする鋼板の強度を確保することが難しい可能性がある。
【0026】
残留オーステナイトの面積分率が0.5%以下であると低温靭性、すなわち、横膨張特性を損なうことがあり、5.0%以上を超えると強度を低下させるため、0.5~5.0%の範囲に限定することが好ましい。
【0027】
上述したような鋼組成成分と微細組織を有する本発明の鋼板は、引張強度700MPa級を効果的に維持できるのみならず、極低温においても優れた横膨張特性を有することができる。
【0028】
次に、本発明の鋼板の製造方法を説明する。
【0029】
本発明の鋼板の製造方法は、上記組成の鋼スラブを1050~1250℃で再加熱する工程、上記再加熱された鋼スラブをパス当たり5~30%の圧下率で熱間圧延し、800℃以上の温度で圧延を終了して熱延鋼板を製造する熱間圧延工程。上記製造された熱延鋼板を空冷した後、空冷された鋼板を850~920℃の温度範囲で加熱してから、150℃以下に水冷する工程、上記水冷された鋼板を690~760℃で中間熱処理してから、150℃以下に水冷する工程、及び上記水冷された鋼板を600~660℃の区間で焼戻し工程、を含む。すなわち、本発明の圧力容器用鋼材は、上述した合金組成を満たす鋼スラブを[再加熱-熱間圧延及び冷却-熱処理及び冷却-焼戻し]工程を経て製造することができ、以下では、上記それぞれの工程条件について詳細に説明する。
【0030】
[鋼スラブ再加熱]
まず、上述した合金組成を満たす鋼スラブを1050~1250℃の温度範囲で再加熱することが好ましい。このとき、再加熱温度が1050℃未満であると、溶質原子の固溶が難しく、これに対し、1250℃を超えると、オーステナイトの結晶粒の大きさが非常に粗大になって鋼の物性を損なうため、好ましくない。
【0031】
[熱間圧延及び冷却]
続いて、本発明では、上記再加熱された鋼スラブをパス当たり5~30%の圧下率で熱間圧延し、800℃以上の温度で圧延を終了する熱間圧延を行う。
【0032】
上記熱間圧延時のパス当たりの圧下率が5%未満であると、圧延生産性の低下で製造費用が上昇する問題があるのに対し、30%を超えると圧延機に負荷を発生させて設備に致命的な悪影響を及ぼすことがあるため、好ましくない。そして、圧延は800℃以上の温度で終了することが好ましい。800℃以下の温度まで圧延を行うと、圧延機の負荷をもたらすことができるためである。そして、上記製造された熱延鋼板は空冷される。
【0033】
[熱処理]
続いて、本発明では上記空冷された熱延鋼板を850~920℃の温度で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間加熱して150℃以下に水冷する。
【0034】
上記水冷前加熱温度が850℃未満ではオーステナイト化が行われず、920℃を超える温度で加熱すると結晶粒の大きさが非常に粗大になって靭性を阻害することがある。
【0035】
そして、上述したように圧延された鋼板を一定温度で一定時間の間、熱処理することが好ましいが、具体的には、上記空冷された熱延鋼板を850~920℃の区間の温度範囲で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間加熱した後、150℃以下に水冷する。
【0036】
[中間熱処理]
そして、本発明では上記水冷された鋼板を690~760℃の温度範囲で{(2.4×t)+(10~30)}分(ここで、tは鋼板厚さ(単位:mm)を意味する)の間維持する中間熱処理を行った後、150℃以下に水冷する。
【0037】
上記熱処理時の温度が690℃未満であると、固溶溶質元素の再固溶が難しくなって目標とする強度の確保が困難であり、一方、その温度が760℃を超えると結晶粒成長が起こって低温靭性を損なうおそれがある。
【0038】
また、上述した温度範囲で熱処理時の維持時間が{(2.4×t)+10}分未満であると組織の均質化が難しく、これに対し、{(2.4×t)+30}分を超えると生産性を阻害するため、好ましくない。
【0039】
[焼戻し]
続いて、本発明では上記冷却された熱延鋼板を600~670℃の区間で{2.4×t+(10~30)}分[ここで、tは鋼材の厚さ(mm)を意味する]の間焼戻す。上記焼戻し処理時の温度が600℃未満であると、微細な析出物の析出が難しくなって目標とする強度の確保が困難であり、670℃を超えると析出物の成長が起こって強度及び低温靭性を阻害するおそれがある。
【0040】
そして、上述した温度範囲で焼戻し処理時の維持時間が{(2.4×t)+10}分未満であると組織の均質化が難しく、これに対し、{(2.4×t)+30}分を超えると生産性を阻害するため、好ましくない。
【0041】
一方、上記焼戻し工程を介して、面積%で、0.5~5.0%の残留オーステナイト、25~85%の焼戻しベイナイト及び残部焼戻しマルテンサイトを含む鋼微細組織を有する本発明の引張強度及び横膨張特性に優れた低温用圧力容器鋼板が得られる。
【実施例
【0042】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。
【0043】
(実施例)
表1のような組成成分を有する鋼スラブをそれぞれ用意した後、これらの鋼スラブを1050~1250℃の温度範囲で再加熱した。そして、上記再加熱された鋼板をパス当たり5~30%の圧下率で熱間圧延して熱延鋼板をそれぞれ製造した。次いで、このように製造された熱延鋼板を空冷した後、空冷された熱延鋼板を表2に示した条件で、熱処理、中間熱処理及び焼戻しを行って圧力容器の鋼板を製造した。この時の熱処理時間、中間熱処理時間及び焼戻し時間は、鋼種aは80分、鋼種bは105分、そして鋼種cは140分に一定に維持した。
【0044】
上記のように製造された鋼板の微細組織中の焼戻しベイナイトと残留オーステナイト組織の相分率をイメージアナライザー(IMAGE ANALYZER)を用いて測定し、表2に示した。この時、鋼板の測定部位はt/4地点である。また、上記製造された鋼板について降伏強度、引張強度及び横膨張特性を評価し、その結果を表2に示した。なお、表2において横膨張特性は、-150℃でVノッチを有する試験片をシャルピー衝撃試験を行って得た横膨張値で評価した結果値を示したものである。そして、引張応力などは引張試験基準であるASTM A20及びASTM E8によって測定した結果を示したものである。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び2に示したように、鋼組成成分及び製造工程の条件が本発明の範囲を満たす発明例1~6の場合、焼戻し処理後の面積分率で15~80%の焼戻しベイナイトと残部焼戻しマルテンサイト組織が得られることを確認することができる。よって、降伏強度及び引張強度が比較例1及び2に比べて約100MPa程度優れながらも延伸率も10%以上、-150℃低温横膨張も1.5mm以上優れることが分かる。
【0048】
以上で説明したとおり、本発明の詳細な説明では、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変形が可能であることはもちろんである。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、これと均等なものによって定められなければならない。