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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】電動ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 66/00 20060101AFI20231013BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20231013BHJP
   H02P 29/00 20160101ALI20231013BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
B60T13/74 G
H02P29/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022516894
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011361
(87)【国際公開番号】W WO2021215158
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2020076012
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 大地
(72)【発明者】
【氏名】臼井 拓也
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-030434(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104683(WO,A1)
【文献】特開2017-022797(JP,A)
【文献】特開2005-160190(JP,A)
【文献】特開2010-007818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 66/00
B60T 13/74
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ブレーキ装置であって、該電動ブレーキ装置は、
複数の駆動回路を有する電動機と、
該電動機の駆動により制動部材を被制動部材に押圧する電動機構と、
前記電動機の駆動を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、前記複数の駆動回路のうち一部の駆動回路に通電したときの、前記電動機の電流変化に基づいて、前記制動部材と前記被制動部材との接触を検知することを特徴とする電動ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1記載の電動ブレーキ装置において、
前記制御装置は、前記複数の駆動回路のうち1つの駆動回路にのみ通電したときの、前記電動機の電流変化に基づいて、前記制動部材と前記被制動部材との接触を検知することを特徴とする電動ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2記載の電動ブレーキ装置において、
前記電動機は、2重巻線を有する電動機であることを特徴とする電動ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車輪と共に回転するディスクロータ(被制動部材)へブレーキパッド(制動部材)を押し当てて制動力を発生させるブレーキ装置において、良好なブレーキ応答性の確保や、ブレーキパッドの引き摺りの防止などを目的として、ディスクロータに対するブレーキパッドの接触位置を検出することが行われている。例えば、特許文献1には、制動力が発生していないクリアランス領域でモータ1回転分の電流パターンを記憶し、その後、増力方向へ動作させたときのモータ電流から、記憶した電流パターンを差し引くことで、電流リプルの影響が除去された補正電流を取得し、その補正電流の位置変化量が閾値を超えたか否かで、ディスクロータとブレーキパッドとの接触点を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-83282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の検出方法は、推力に対する電流の変化量(傾き)が小さいことから、検出精度が良くない、或いは検出に時間を要するといった課題がある。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被制動部材に対する制動部材の接触の検出精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る電動ブレーキ装置は、複数の駆動回路を有する電動機と、該電動機の駆動により制動部材を被制動部材に押圧する電動機構と、前記電動機の駆動を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記複数の駆動回路のうち一部の駆動回路に通電したときの、前記電動機の電流変化に基づいて、前記制動部材と前記被制動部材との接触を検知することを特徴とするものである。
【0006】
本発明の一実施形態に係る電動ブレーキ装置はこのように構成したので、被制動部材に対する制動部材の接触の検出精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置の要部の断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置の電動機と複数の駆動回路との接続例を概略的に示す接続イメージ図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置における、電動機の位置及び電流の関係を示すグラフである。
図4】本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置の電動機と複数の駆動回路との図2と異なる接続例を概略的に示す接続イメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を図面に基づき説明する。なお、全ての図面にわたって、共通する部分については同一の符号を付している。
本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、通常走行時、電動機である電動モータ40の駆動によって制動力を発生させる電動ディスクブレーキである。なお、以下の説明において、車両内側(インナ側)を一端側(カバー部材39側)と称し、車両外側(アウタ側)を他端側(ディスクロータD側)と称して、適宜説明する。つまり、図1において、右側を一端側と称し、左側を他端側として称して、適宜説明する。
【0009】
本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、図1に示すように、車両の回転部に取り付けられたディスクロータDを挟むようにして軸方向両側に配置された、制動部材としての一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4と、を備えている。本電動ブレーキ装置1は、キャリパ浮動型として構成されている。なお、一対のインナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、キャリパ4とは、車両のナックル等の非回転部に固定されたブラケット5に、ディスクロータDの軸方向へ移動可能に支持されている。
【0010】
図1に示すように、キャリパ4は、キャリパ4の主体であるキャリパ本体8と、電動モータ40からの回転をキャリパ本体8のシリンダ部13内のピストン18に伝達し、ピストン18に推力を付与する伝達機構9と、を備えている。キャリパ本体8は、インナブレーキパッド2に対向する基端側に配置され、インナブレーキパッド2に対向して開口する円筒状のシリンダ部13と、シリンダ部13からディスクロータDを跨いでアウタ側へと延び、アウタブレーキパッド3に対向するように他端側に配置される一対の爪部14、14と、を備えている。
【0011】
キャリパ本体8のシリンダ部13内、すなわちシリンダ部13のシリンダボア16に、ピストン18がシリンダ部13に対して相対回転不能に、且つ軸方向に移動可能に収容されている。ピストン18は、インナブレーキパッド2を押圧するものであって、有底円筒状に形成され、その底部がインナブレーキパッド2に対向するように、シリンダ部13のシリンダボア16内に収容されている。ピストン18は、その底部とインナブレーキパッド2との間の回り止め係合によって、シリンダボア16、ひいてはキャリパ本体8に対して相対回転不能に支持される。
【0012】
シリンダ部13のシリンダボア16には、その他端側内周面にシール部材(図示略)が配置されている。そして、ピストン18は、このシール部材に接触した状態で軸方向に移動可能に、シリンダボア16に収容される。ピストン18の底部側の外周面と、シリンダボア16の他端側内周面との間には、ダストブーツ20が介装されている。これらシール部材及びダストブーツ20により、シリンダ部13のシリンダボア16内への異物の侵入を防ぐようにしている。
【0013】
キャリパ本体8のシリンダ部13の底壁23側(一端側)には、ギヤハウジング25が一体的に連結される。このギヤハウジング25の内部に、後述する、電動モータ40、平歯多段減速機構41、及び遊星歯車減速機構42が配置されている。ギヤハウジング25は、主に電動モータ40を収容する第1ギヤハウジング部27と、主に遊星歯車減速機構42を収容する第2ギヤハウジング部28と、を備えている。第1ギヤハウジング部27は、電動モータ40の円柱状本体部40Bが収容されるモータハウジング部27Aと、電動モータ40の円柱状本体部40Bから延びる回転軸40Aが配置されるギヤハウジング部27Bと、から構成されている。ギヤハウジング部27Bには、後述する制動力保持機構152の圧縮コイルバネ159を収容するための収容凹部35が形成される。又、ギヤハウジング部27Bには、収容凹部35に近接する位置に、一端側に向かって突出する支持ピン(図示略)や、後述する制動力保持機構152のソレノイドアクチュエータ(図示略)を収容するための収容部(図示略)が形成される。
【0014】
第2ギヤハウジング部28には、その他端側からシリンダ部13の底壁23が一体的に連結される。その結果、シリンダ部13と、第1ギヤハウジング部27のモータハウジング部27A(電動モータ40)とが、略平行に並ぶように配置される。第2ギヤハウジング部28には、後述するスピンドル93を含むキャリア72の小径円筒状部86が挿通される挿通孔29が形成される。第2ギヤハウジング部28の底面からは、後述するインターナルギヤ71の径方向の移動を規制する円筒状拘束部32が突設される。この円筒状拘束部32の径方向外側には、円筒状拘束部32と対向する壁面との間に環状溝部33が形成される。円筒状拘束部32と対向する壁面には、周方向に間隔を置いて複数の係合凹部(図示略)が形成される。円筒状拘束部32には、後述する第1減速歯車48の大径歯車53との干渉を避けるように切欠き部(図示略)が形成されている。ギヤハウジング25の一端側開口は、カバー部材39により閉塞されている。カバー部材39は、気密的にギヤハウジング25に取り付けられている。
【0015】
電動モータ40からの回転は、伝達機構9を介してピストン18に伝達される。伝達機構9は、電動モータ40の円柱状本体部40Bから延びる回転軸40Aと、回転軸40Aからの回転トルクを増力する平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42と、遊星歯車減速機構42からの回転を直線運動に変換して、ピストン18に推力を付与する回転直動変換機構43と、を備えている。電動モータ40の円柱状本体部40Bは、上述したように、第1ギヤハウジング部27のモータハウジング部27A内に配置され、その回転軸40Aがギヤハウジング部27Bの貫通孔38に挿通されて、ギヤハウジング部27B内に延びている。平歯多段減速機構41は、ピニオンギヤ47と、第1減速歯車48と、第2減速歯車49と、を備えている。第1減速歯車48及び第2減速歯車49は、金属、或いは繊維強化樹脂等の樹脂にて構成される。
【0016】
ピニオンギヤ47は、筒状に形成されて、電動モータ40の回転軸40Aに圧入固定される。第1減速歯車48は、段付歯車で構成されており、ピニオンギヤ47に噛合する大径の大径歯車53と、大径歯車53から同心状に一端側に向かって軸方向に延びる小径の小径歯車54と、を備えている。又、第1減速歯車48は、その大径歯車53が、第2ギヤハウジング部28の円筒状拘束部32に設けた切欠き部(図示略)、及びインターナルギヤ71の円筒状壁部80に設けた切欠き部(図示略)内に入り込むようにして、第1ギヤハウジング部27及び第2ギヤハウジング部28を跨ぐ態様で配置されている。その結果、第1減速歯車48の大径歯車53の外周面は、後述するキャリア72の大径円環板状部85の外周面に対向して近接して配置される。第1減速歯車48は、支持ロッド60により回転自在に支持され、この支持ロッド60は、第1ギヤハウジング部27のギヤハウジング部27Bに圧入固定される。小径歯車54の軸方向長さは、大径歯車53の軸方向長さよりも相当長く形成される。小径歯車54の軸方向長さは、後述する第2減速歯車49の大径歯車57の軸方向長さと略同じである。
【0017】
第1減速歯車48の小径歯車54は、第2減速歯車49と噛合している。この第2減速歯車49は、第1減速歯車48の小径歯車54と噛合する大径の大径歯車57と、大径歯車57から同心状に他端側に向かって軸方向に延びる小径のサンギヤ58と、を備えている。第2減速歯車49は、第2ギヤハウジング部28内に収容される。第2減速歯車49の径方向中央部には、軸方向に貫通する貫通孔62が形成される。サンギヤ58は、遊星歯車減速機構42の一部として構成される。大径歯車57とサンギヤ58とは、その軸方向長さが略同じである。大径歯車57の内周面とサンギヤ58の外周面との間には、環状の空間(図示略)が形成される。
【0018】
遊星歯車減速機構42は、第2減速歯車49のサンギヤ58と、複数個(本実施形態では5個)のプラネタリギヤ70と、インターナルギヤ71と、を備えている。遊星歯車減速機構42からの回転、すなわち各プラネタリギヤ70からの回転がキャリア72に伝達される。各プラネタリギヤ70は、サンギヤ58及びインターナルギヤ71の内歯78に噛合する歯車75と、キャリア72から立設されるピン90が回転自在に挿通される孔部76と、を有している。各プラネタリギヤ70は、サンギヤ58の周りに周方向に沿って等間隔に配置される。詳しくは、各プラネタリギヤ70は、大径歯車57の内周面とサンギヤ58の外周面との間の環状の空間に周方向に沿って等間隔で配置され、その歯車75がサンギヤ58及びインターナルギヤ71の内歯78に噛合している。
【0019】
インターナルギヤ71は、各プラネタリギヤ70の歯車75とそれぞれ噛合する内歯78と、内歯78の一端から連続して径方向中心に延び、各プラネタリギヤ70の軸方向の移動を規制する環状壁部79と、内歯78から他端側に向かって延びる円筒状壁部80と、を備えている。インターナルギヤ71の内歯78の部位が、第2減速歯車49の大径歯車57の内周面と、各プラネタリギヤ70との間に配置される。その結果、第2減速歯車49は、インターナルギヤ71に対して回転自在に支持される。なお、インターナルギヤ71の内歯78の部位と、各プラネタリギヤ70と、サンギヤ58とは、その他端側の面が略同一平面上に位置する。インターナルギヤ71の円筒状壁部80には、径方向外方に突設する係合凸部(図示略)が周方向に間隔を置いて複数形成される。
【0020】
インターナルギヤ71の円筒状壁部80には、その周方向の一部に、第1減速歯車48の大径歯車53との干渉を避けるように切欠き部(図示略)が形成される。そして、インターナルギヤ71の円筒状壁部80の一端面を、第2ギヤハウジング部28の底面に当接させつつ、その円筒状壁部80の内周面を、第2ギヤハウジング部28の円筒状拘束部32の外周面に当接させると共に、円筒状壁部80から突設された各係合凸部を、第2ギヤハウジング部28の壁面に設けた各係合凹部に係合する。又、インターナルギヤ71は、第2減速歯車49によって、その径方向及び軸方向の移動が規制されると共に、ギヤハウジング25に対して相対回転不能に支持される。
【0021】
キャリア72は、大径円環板状部85と、大径円環板状部85から同心状に他端側に突設される小径円筒状部86と、を備えている。キャリア72は、その径方向略中央にスプライン孔部87が軸方向に貫通するように形成される。大径円環板状部85は、第2ギヤハウジング部28の円筒状拘束部32の内側に配置される。キャリア72の大径円環板状部85の外周側には、周方向に沿って間隔を空けて、各プラネタリギヤ70と対応するように複数のピン用孔部89が形成されている。各ピン用孔部89に、ピン90の各々が圧入固定されている。各ピン90は、各プラネタリギヤ70の孔部76に回転自在に、それぞれ挿通されている。キャリア72の小径円筒状部86は、第2ギヤハウジング部28の挿通孔29に挿通される。
【0022】
スピンドル93は、キャリア72からの回転が伝達され、その回転トルクを回転直動変換機構43に伝達するものである。スピンドル93は、その一端にキャリア72のスプライン孔部87と係合するスプライン軸部96が一体的に接続されている。スピンドル93は、シリンダボア16内に延び、回転直動変換機構43に連結されている。スピンドル93のスプライン軸部96が、キャリア72のスプライン孔部87に係合することで、キャリア72とスピンドル93との間で互いに回転トルクを伝達することができる。
【0023】
又、第1ギヤハウジング部27のギヤハウジング部27B内に、パーキングブレーキ手段150が設けられている。パーキングブレーキ手段150は、伝達機構9である電動モータ40の回転軸40Aの一端に圧入固定されるラチェットギヤ151と、ソレノイドアクチュエータの駆動により、ラチェットギヤ151の、制動力を解除する方向への回転を規制して制動力を保持する制動力保持機構152と、を備えている。ラチェットギヤ151は、回転軸40Aの、ピニオンギヤ47から突出した一端に圧入固定されている。制動力保持機構152は、ソレノイドアクチュエータ、保持部材157、係止部材158、及び圧縮コイルバネ159を備えている。
【0024】
ソレノイドアクチュエータは、後述の制御基板116からの指令に基づいて作動する。保持部材157は、ソレノイドアクチュエータの駆動により移動して、ラチェットギヤ151の、制動力を解除する方向への回転を規制するものであり、ラチェットギヤ151に係合可能な爪部168を有している。係止部材158は、保持部材157に連結され、第1ハウジング27のギヤハウジング部27Bに設けた支持ピンに回動自在に支持されて、保持部材157のラチェットギヤ151側への移動を抑制するものである。係止部材158は、板状部180と、板状部180の基端部からカバー部材39側(一端側)に向かって延びる錘部181と、からなる略L字状に形成される。圧縮コイルバネ159は、保持部材157をラチェットギヤ151から離れる方向に付勢する、弾性部材として作用するものである。
【0025】
上記のような構成において、保持部材157は、平常時、圧縮コイルバネ159により、その爪部168がラチェットギヤ151から離れる方向に付勢される。又、この平常時に、保持部材157に外部からの加振力が作用したときには、係止部材158の錘部181により、保持部材157に、外部からの加振力を相殺する力を作用させることができる。すなわち、保持部材157に対して、その爪部168がラチェットギヤ151の外周面に向かう方向に加振力が作用するとき、係止部材158に対して、保持部材157に加振力が作用する方向について逆方向に移動しようとする力が発生する。その結果、係止部材158の錘部181により、保持部材157に、その爪部168がラチェットギヤ151の外周面から離れる方向への力(爪部168がラチェットギヤ151の外周面に向かって移動するのを抑制する力)を作用させることができ、ひいては、係止部材158の錘部181により、保持部材157に対する外部からの加振力を相殺することができる。
【0026】
この状況は、保持部材157に付与される加振力が、圧縮コイルバネ159の付勢力を超えたときに発生する。次に、車両の停止状態を維持させるときにパーキングブレーキを作動させる際には、ソレノイドアクチュエータに通電して作動させる。その結果、保持部材157の爪部168が、圧縮コイルバネ159の付勢力に対抗するように、ラチェットギヤ151の外周面に向かって移動して係合する。その際、係止部材158は、ソレノイドアクチュエータの作動時、ソレノイドアクチュエータの作動方向と逆方向に錘部181(重心)が移動することになる。
【0027】
一方、パーキングブレーキ手段150のラチェットギヤ151の一端側には、電動モータ40の回転軸40Aの回転角度を検出する、回転角検出手段103が配置されている。この回転角検出手段103は、磁石部材106及び磁気検出ICチップ107を備えている。電動モータ40の回転軸40Aの一端面には、圧入用凹部109が形成されており、この圧入用凹部109に、支持ロッド110が圧入固定されている。この支持ロッド110により、カップ状の支持部材113内に配置されたリング状の磁石部材106が支持される。磁石部材106の一端側に対向するように、磁石部材106から発生する磁界の変化を検出する、磁気検出ICチップ107が配置されている。この磁気検出ICチップ107は、制御基板116に取り付けられている。そして、回転軸40Aの回転に伴って回転する磁石部材106からの磁束の変化を、磁気検出ICチップ107により検出することで、制御基板116により、電動モータ40の回転軸40Aの回転角度(位置)を演算して検出している。
【0028】
回転直動変換機構43は、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42からの回転運動、すなわち、スピンドル93の回転運動を、直線運動(以下、便宜上直動という)に変換し、その直動部材(図示略)の移動によりピストン18に推力を付与するものである。回転直動変換機構43は、シリンダボア16内であって、その底面とピストン18との間に配置される。そして、キャリア72の回転に伴ってスピンドル93が回転すると、回転直動変換機構43の直動部材が他端側に向かって前進し、これによって前進するピストン18によって、インナブレーキパッド2がディスクロータDに押し付けられる。
【0029】
電動モータ40は、円柱状本体部40Bと、円柱状本体部40Bの一端面から延びる回転軸40Aとから構成されている。円柱状本体部40Bは、その軸方向がピストン18の移動方向と一致しており、その一端面から回転軸40Aが延びている。上述したように、電動モータ40の円柱状本体部40Bは、第1ギヤハウジング部27のモータハウジング部27A内に配置され、その回転軸40Aがギヤハウジング部27Bの貫通孔38に挿通されて、ギヤハウジング部27B内に延びている。電動モータ40は、その駆動が制御基板116からの指令により制御される。通常走行における制動時には、運転者の要求に対応した検出センサやブレーキが必要な様々な状況を検出する種々の検出センサ等からの検出信号、回転角検出手段103からの検出信号、及び推力センサ(図示略)等からの検出信号に基づき、制御基板116によって電動モータ40の駆動が制御される。又、この制御基板116は、パーキングブレーキスイッチ(図示略)や、パーキングの作動を指示するために操作されるブレーキペダルに取り付けられたストロークセンサ(図示略)等と電気的に接続されており、制御基板116からの指令により、制動力保持機構152のソレノイドアクチュエータの作動が制御される。
【0030】
より具体的に、本実施の形態における制御基板116は、図2に示すような電子制御装置118を実装しており、この電子制御装置118は、電動モータ40を駆動するための2つの駆動回路120、122を有している。そして、上述したような様々な信号に基づき、これら2つの駆動回路120、122から電動モータ40へ通電することで、電動モータ40を制御している。ここで、本実施の形態における電動モータ40は、3相の2重巻線を有する6相式であり、2つの駆動回路120、122の少なくともいずれか一方で駆動されるように接続されている。又、電子制御装置118は、詳しくは後述するが、インナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、ディスクロータDとの接触を検知し、この検知結果を利用して、インナブレーキパッド2及びアウタブレーキパッド3と、ディスクロータDとの間のクリアランス等を設定するように構成されている。
【0031】
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る電動ブレーキ装置1における、通常走行における制動及び制動解除の作用について説明する。
通常走行における制動時には、制御基板116からの指令により、電動モータ40が駆動されて、その正方向、すなわち制動方向の回転が、平歯多段減速機構41を介して遊星歯車減速機構42のサンギヤ58に伝達される。このとき、制御基板116に実装された電子制御装置118は、通常、2つの駆動回路120、122の双方から電動モータ40へ通電して、電動モータ40を駆動する。そして、遊星歯車減速機構42のサンギヤ58の回転により、各プラネタリギヤ70が自身の回転軸線を中心に自転しながら、サンギヤ58の回転軸線を中心に公転することで、キャリア72が回転する。すなわち、電動モータ40からの回転が、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42を経由することで、所定の減速比で減速、増力されてキャリア72に伝達される。そして、キャリア72からの回転が、スピンドル93に伝達される。
【0032】
続いて、キャリア72の回転に伴ってスピンドル93が回転すると、回転直動変換機構43の作用により、その直動部材が前進してピストン18を前進させる。このピストン18が前進することで、インナブレーキパッド2がディスクロータDに押し付けられる。そして、ピストン18によるインナブレーキパッド2への押圧力に対する反力により、キャリパ本体8がブラケット5に対してインナ側に移動して、各爪部14、14によってアウタブレーキパッド3がディスクロータDに押し付けられる。この結果、ディスクロータDが、一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて摩擦力が発生し、車両の制動力が発生することになる。このような構成であるため、上記の平歯多段減速機構41、遊星歯車減速機構42、キャリア72、スピンドル93、回転直動変換機構43、及びピストン18などが、本発明の電動機構に相当する。
【0033】
一方、制動解除時には、制御基板116からの指令により、2つの駆動回路120、122を介して、電動モータ40の回転軸40Aが逆方向、すなわち制動解除方向に回転すると共に、その逆方向の回転が、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42を介してスピンドル93に伝達される。その結果、スピンドル93の逆方向への回転に伴って、回転直動変換機構43の作用により、その直動部材が後退して初期状態に戻り、ディスクロータDへの一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3による制動力が解除される。
【0034】
次に、本実施形態に係る電動ブレーキ装置1における、パーキングブレーキの作動について説明する。
パーキングブレーキスイッチやブレーキペダルが操作されると、通常の制動時と同様に、制御基板116からの指令により、電動モータ40が駆動されて、その正方向の回転が、平歯多段減速機構41及び遊星歯車減速機構42を経由してキャリア72に伝達される。このとき、制御基板116に実装された電子制御装置118は、通常、2つの駆動回路120、122の双方から電動モータ40へ通電して、電動モータ40を駆動する。なお、車両側からの信号に基づき、運転者の操作によらず制御基板116からの指令により電動モータ40を駆動させることもできる。続いて、キャリア72からの回転に伴ってスピンドル93が回転すると、回転直動変換機構43の作用により、ピストン18が前進して、ディスクロータDが一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3により挟みつけられて制動力が発生する。
【0035】
この状態で、制御基板116からの指令により、制動力保持機構152のソレノイドアクチュエータに通電することで、ソレノイドアクチュエータを作動させる。その結果、保持部材157の爪部168が、圧縮コイルバネ159の付勢力に対抗するように、ラチェットギヤ151の外周面に向かって移動して係合する。その際、係止部材158は、ソレノイドアクチュエータの推進方向と逆方向に、錘部181(重心)が移動することになる。なおこのとき、ラチェットギヤ151と保持部材157の爪部168とは、それぞれの頂部が互いに干渉して係合されない場合もあるために、次に、電動モータ40を制動解除方向に回転させて、ラチェットギヤ151と保持部材157の爪部168とを確実に係合させる。そして、電動モータ40への通電を停止し、一対のブレーキパッド2、3のディスクロータDへの押圧力を確認した後、ソレノイドアクチュエータへの通電を停止して、ラチェットギヤ151と保持部材157の爪部168との係合状態を保持する。これにより、電動モータ40及びソレノイドアクチュエータへの通電を停止した状態で、制動状態を保持することができる。
【0036】
次に、パーキングブレーキの作動を解除する場合には、制動力保持機構152のソレノイドアクチュエータには通電せずに、制御基板116からの指令により、電動モータ40が制動方向へ僅かに回転されることにより、ラチェットギヤ151と保持部材157の爪部168との係合が緩む。その結果、圧縮コイルバネ159の付勢力によって、保持部材157の爪部168がラチェットギヤ151の外周面から離れる方向に移動して、ラチェットギヤ151の回転規制が解除されることで、電動モータ40の制動解除方向への回転により、ピストン18が後退して、一対のインナ及びアウタブレーキパッド2、3による制動力が解除される。
【0037】
続いて、制御基板116に実装される電子制御装置118による、インナ及びアウタブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知する方法について説明する。なお、この接触検知は、電動ブレーキ装置1による制動を妨げない適切なタイミングで行われるものとする。
まず、電子制御装置118は、上述した磁気検出ICチップ107等を利用して、電動モータ40の回転軸40Aの回転角度、換言すれば電動モータ40の位置を把握すると共に、電流センサ(図示略)を利用して、電動モータ40に流れる電流値を把握するようになっている。そして、電子制御装置118は、2つの駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電して、電動モータ40を駆動させたときの、電動モータ40に流れる電流の変化に基づいて、一対のブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知する。
【0038】
ここで、図3には、電子制御装置118によって把握される、電動モータ40の位置と電動モータ40を流れる電流値との関係を示している。図3に示されている2本の折れ線のうち、上方の折れ線RD1が、2つの駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電したときのもの、下方の折れ線RD2が、2つの駆動回路120、122の双方に通電したときのものである。電動モータ40の位置を示す横軸に符号CPで示されている位置が、空走区間と推力発生区間との切り替わり点である、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触位置を示している。なお、折れ線RD1、RD2には、各々のばらつき幅を破線で示している。
【0039】
上記のような図3に示すように、電動モータ40を流れる電流値は、駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電したとき(RD1)の方が、2つの駆動回路120、122の双方に通電したとき(RD2)よりも多くなる。そして、RD1、RD2のいずれにおいても、電動モータ40を流れる電流値は、接触位置CPを境にして増大している。このため、電子制御装置118は、このように電流値が増大に転じる点を、一対のブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触位置CPの検知に利用する。ここで、図3から明らかなように、接触位置CPを境にして増大する電流値の増大の変化量(傾き)は、RD2よりもRD1の方が大きくなっている。このため、ばらつき幅を考慮したときの、接触位置CPの検知精度は、図3のRD1、RD2の各々に接触位置CPを中心として横矢印で示すように、その横矢印の長さが短いRD1の方が、横矢印の長さが長いRD2よりも良くなる。従って、電子制御装置118は、2つの駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電したとき(RD1)の、電動モータ40を流れる電流値が増大に転じる点を、その傾きや閾値を使用して検出し、接触位置CPとして検知するものである。
【0040】
次に、図4を参照して、電動ブレーキ装置1のキャリパ4がツインボアキャリパである場合などの、電動モータ40を2つ備える構成において、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知する方法について説明する。図4の実施形態において、制御基板116に実装される電子制御装置118は、2つの駆動回路120、122を有している。そして、駆動回路120が、一方の3相の電動モータ40へ通電するように接続され、駆動回路122が、他方の3相の電動モータ40へ通電するように接続されている。このような構成において、電子制御装置118は、通常走行時の制動やパーキングブレーキによる制動の際に、駆動回路120、122の双方から通電して2つの電動モータ40を駆動し、制動力の発生及び解除を行う。一方、一対のブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知する際に、電子制御装置118は、2つの駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電して、2つの電動モータ40のいずれか一方を駆動させたときの、その電動モータ40を流れる電流の変化に基づいて、接触位置CPを検知する。
【0041】
例えば、図4のような構成において、図4の上側(或いは下側)の電動モータ40を流れる電流値の変化は、2つの駆動回路120、122の双方から通電して2つの電動モータ40によって制動力を発生する場合が、図3の折れ線RD2のように示され、駆動回路120(或いは122)のみから通電して上側(或いは下側)の電動モータ40のみによって制動力を発生する場合が、図3の折れ線RD1のように示される。すなわち、図2に示した構成と同様に、電動モータ40を流れる電流値は、駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電したとき(RD1)の方が、2つの駆動回路120、122の双方に通電したとき(RD2)よりも多くなる。そして、RD1、RD2のいずれにおいても、電動モータ40を流れる電流値は、接触位置CPを境にして増大しており、その増大の変化量(傾き)が、RD2よりもRD1の方が大きくなる。このため、図4のような構成においても、電子制御装置118は、2つの駆動回路120、122のいずれか一方にのみ通電したとき(RD1)の、電動モータ40を流れる電流値が増大に転じる点を、接触位置CPとして検知する。
【0042】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、図1図2、及び図4に示すように、電動機(電動モータ)40、電動機構、及び制御装置(電子制御装置)118を含み、電動モータ40は、この電動モータ40を駆動する複数(図2及び図4では2つ)の駆動回路120、122を有している。電動機構は、電動モータ40の駆動によって、制動部材(ブレーキパッド)2、3を被制動部材(ディスクロータ)Dへ押圧するためのものである。電子制御装置118は、様々な情報を利用して、複数の駆動回路120、122などを制御することで、電動モータ40の駆動を制御するものであり、そのような制御に用いるために、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知する。
【0043】
具体的に、電子制御装置118は、電動モータ40を駆動する複数の駆動回路120、122のうち、一部の駆動回路に通電したときの、電動モータ40を流れる電流の変化に基づいて、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知する。より詳しくは、電子制御装置118は、図3に示すような、電動モータ40の位置変化あたりの電動モータ40を流れる電流量を監視し、電動モータ40の駆動によってブレーキパッド2、3がディスクロータDに接触する前後の電流量の変化を検出する。すなわち、ブレーキパッド2、3がディスクロータDに接触した後は、接触前と比較して、制動力の発生のために電動モータ40を流れる電流量が増加する。
【0044】
しかも、電子制御装置118は、電動モータ40を駆動する複数の駆動回路120、122のうち、一部の駆動回路に通電したとき(RD1)の、電動モータ40を流れる電流量を監視するため、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとが接触する前後の電流の変化量が、複数の駆動回路120、122の全てに通電している場合(RD2)よりも、顕著に大きくなる。換言すれば、制動力発生のための推力に対する電流変化の傾きが大きくなる。従って、そのような電流量の変化点の検出が容易となり、ディスクロータDに対するブレーキパッド2、3の接触位置CPの検出精度を高めることが可能となる。又、図3に示すような電動モータ40の位置と電流値との関係において、接触位置CPに相当する電流の変化点の検出を、傾きを用いて行う際は、RD1のように傾きが大きいほどばらつきの影響を受け難く精度を向上させることができ、閾値を用いて行う際は、RD1のように傾きが大きい方が閾値に達する時間が短くなるため、迅速に検出することができる。
【0045】
更に、接触位置CPの検出精度の向上によって、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの間のクリアランス量のばらつきを低減させることができる。これにより、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの間に適度なクリアランス量が確保されるため、ブレーキの応答性を向上させることができると共に、引き摺りのリスクや引き摺りを発生させるリスクを低減することもできる。加えて、一部の駆動回路にのみ通電することで、電流に対する推力が小さくなるため、接触位置CP検知時の内機部品への負荷を低減することができる。
【0046】
又、本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、複数の駆動回路120、122のうち1つの駆動回路にのみ通電したときの、電動モータ40の電流変化に基づいて、電子制御装置118がブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知するものである。このようにすれば、複数の駆動回路の数量に関わらず、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触の検知時は、常に、必要最低限の1つの駆動回路が通電される。このため、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触前後における、電動モータ40を流れる電流の変化量を、可能な限り増大させることができ、ディスクロータDに対するブレーキパッド2、3の接触の検出精度をより一層高めること可能となる。
【0047】
更に、本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、電動モータ40が、図2に示すような2重巻線を有する電動モータであることで、その1つの電動モータ40を2つの駆動回路120、122によって駆動する構成になっている。そして、電子制御装置118は、そのような2つの駆動回路120、122のうち、いずれか一方の駆動回路にのみ通電したときの、電動モータ40の電流変化に基づいて、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知することで、高精度で検知を行うことができる。
【0048】
なお、本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、通常走行時の制動やパーキングブレーキによる制動の際も含み、ブレーキパッド2、3がディスクロータDに接触するときに、電子制御装置118が、複数の駆動回路120、122のうち一部の駆動回路にのみ通電して電動モータ40を駆動してもよい。このように、制動時にも一部の駆動回路にのみ通電することで、電流に対する推力が小さくなるため、電動モータ40の駆動のための冗長性を確保しつつ、内機部品への負荷を低減することができる。同時に、ディスクロータDに対するブレーキパッド2、3の接触を検出する際の、検出精度を高めることも可能となる。
【0049】
ここで、本発明の実施の形態に係る電動ブレーキ装置1は、図1図2、及び図4に示すような構成に限定されることなく、複数の駆動回路のうち一部の駆動回路に通電したときの電動モータ40の電流変化に基づいて、ブレーキパッド2、3とディスクロータDとの接触を検知するように構成されていれば、任意の構成を取り得るものである。例えば、複数の駆動回路の数は、2つに限定されることなく3つ以上であってもよい。又、電動ブレーキ装置1は、図1図2、及び図4に示された構成要素の一部が削除、変更されたものであってもよく、新たな構成要素が追加されてもよい。加えて、各構成要素には、各々の構成要素に求められる機能を実行可能な任意の部品を使用できる。
【0050】
以上説明した、本実施形態に基づく電動ブレーキ装置1として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
第1の態様に係る電動ブレーキ装置(1)は、複数の駆動回路(120、122)を有する電動機(40)と、該電動機(40)の駆動により制動部材(2、3)を被制動部材(D)に押圧する電動機構と、前記電動機(40)の駆動を制御する制御装置(118)と、を含み、前記制御装置(118)は、前記複数の駆動回路(120、122)のうち一部の駆動回路に通電したときの、前記電動機(40)の電流変化に基づいて、前記制動部材(2、3)と前記被制動部材(D)との接触を検知する。
第2の態様は、第1の態様において、前記制御装置(118)は、前記複数の駆動回路(120、122)のうち1つの駆動回路にのみ通電したときの、前記電動機(40)の電流変化に基づいて、前記制動部材(2、3)と前記被制動部材(D)との接触を検知する。
【0051】
第3の態様は、第2の態様において、前記電動機(40)は、2重巻線を有する電動機である。
第4の態様に係るブレーキ装置(1)は、複数の駆動回路(120、122)を有する電動機(40)と、該電動機(40)の駆動により制動部材(2、3)を被制動部材(D)に押圧する電動機構と、前記電動機(40)の駆動を制御する制御装置(118)と、を含み、前記制御装置(118)は、前記制動部材(2、3)が前記被制動部材(D)に接触するときに、前記複数の駆動回路(120、122)のうち一部の駆動回路にのみ通電して前記電動機(40)を駆動する。
【0052】
尚、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0053】
本願は、2020年4月22日付出願の日本国特許出願第2020-076012号に基づく優先権を主張する。2020年4月22日付出願の日本国特許出願第2020-076012号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。
【符号の説明】
【0054】
1:電動ブレーキ装置、2、3:制動部材(ブレーキパッド)、40:電動機(電動モータ)、118:制御装置(電子制御装置)、120、122:駆動回路、D:被制動部材(ディスクロータ)
図1
図2
図3
図4