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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】金属粉末製造装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/08 20060101AFI20231013BHJP
   B01J 2/02 20060101ALI20231013BHJP
   B05B 1/04 20060101ALI20231013BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20231013BHJP
   B22F 1/08 20220101ALN20231013BHJP
   B22F 9/02 20060101ALN20231013BHJP
【FI】
B22F9/08 A
B01J2/02 A
B05B1/04
B22F1/00 W
B22F1/08
B22F9/02 B
B22F9/08 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022533546
(86)(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 KR2020014825
(87)【国際公開番号】W WO2021118053
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0162828
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ヨン ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】イム,ミ ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム,シン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ウォン キュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ス ミン
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291454(JP,A)
【文献】特開昭63-169308(JP,A)
【文献】特開昭61-194104(JP,A)
【文献】特開平04-337012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00
B05B 1/04
B01J 2/02
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴状に分裂した後に下降する溶融金属を冷却させる、筒状体として構成されるチャンバを含む金属粉末製造装置であって、
前記チャンバは、内壁に、前記分裂した溶融金属を冷却させる冷却水噴射ノズルを備え、
前記冷却水噴射ノズルは、
前記チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿って第1傾斜角(θ11)をなして、第1高さに備えられる第1冷却水噴射ノズルと、
前記チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿って前記第1傾斜角よりも大きい第2傾斜角(θ12)をなして、前記第1高さよりも低い第2高さに備えられる第2冷却水噴射ノズルとを含む、金属粉末製造装置。
【請求項2】
前記第1冷却水噴射ノズルは、前記第1高さに位置する複数個の冷却水噴射ノズルを含む、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項3】
2より大きい自然数nに対して、第(n-1)高さよりも低い高さを有する冷却水噴射ノズルのうちの、最も高い位置を有する1つ以上の冷却水噴射ノズルを第n冷却水噴射ノズルとし、前記第n冷却水噴射ノズルの噴射方向が、前記チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿ってなす角度を第n傾斜角(θ1n)と、θ11≦θ12≦・・・≦θ1nを満たす、請求項2に記載の金属粉末製造装置。
【請求項4】
前記冷却水噴射ノズルは、扇形に冷却水を噴射する冷却水噴射ノズルを含む、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項5】
前記チャンバの内壁に備えられて前記冷却水噴射ノズルを保護する遮蔽板を含む、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項6】
前記チャンバの上端における内径(D1)前記チャンバの下端における内径(D2)の1倍~3倍である、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項7】
前記チャンバの長さは、前記チャンバの上端における内径(D1)の1倍~5倍である、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項8】
前記冷却水噴射ノズルの冷却水噴射圧力は80bar~150barである、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項9】
前記第1傾斜角は10°~60°である、請求項1に記載の金属粉末製造装置。
【請求項10】
前記冷却水噴射ノズルが冷却水を噴射する扇形の中心角である噴射角は30°~130°の範囲である、請求項4に記載の金属粉末製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、金属粉末を製造する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属粉末の製造方法としては、溶融金属を小さな液滴状に分裂させるために高圧のガス又は高圧の水を溶融金属に噴射するアトマイズ法(アトマイジング、Atomising)が主に使用される。溶融金属液滴は、アトマイズ(微粒化)される過程で同時に冷却されるか、又は飛行する途中で別途の冷却過程を経て金属粉末として得られる。アトマイズされた溶融金属液滴は、金属の組成や冷却速度によって非晶質の金属粉末を形成することができる。
【0003】
非晶質とは、結晶をなしていない無秩序、不規則な原子配列状態を有する物質の状態を示す用語であって、代表的な非晶質物質の例としてガラスがある。非晶質金属は、結晶の方向性がなく、高い強度と優れた延性を有し、磁気異方性がなく、電気抵抗が低くなるなどの特性があり、様々な目的に使用できるため、近年に需要が増加している。
【0004】
このような非晶質を含む金属粉末を形成するためには、溶融状態の金属が、高い速度で冷却されることが重要である。これは、溶融状態の金属が冷却される速度が十分に高くないと、溶融金属内で金属原子が冷めて行く際に安定的な結晶を形成するようになり、結晶質の金属粉末を形成するためである。
【0005】
従来の金属粉末製造装置は、溶融金属をアトマイズした後に冷却剤を用いて冷却することを試みてきたが、非晶質の金属粉末を形成するには、冷却速度が過度に低く、又は冷却速度が十分であって、非晶質の粉末が得られたとしても、粒子のサイズが不規則で、粉末が球状から外れた形態に生産される等の問題があった。また、溶融金属を分裂させて冷却させるのに、ガス又は冷却水が多く使用され、生産コストが高いという欠点があるため、これに対する改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、原子化法により形成された溶融金属の液滴を、冷却水で冷却する装置であって、飛散する溶融金属の液滴のサイズによって異なることとなる落下経路に応じて、適した飛行距離と冷却速度を提供し、球形成能と非晶質形成比率の高い金属粉末製造装置を提供することに、その目的がある。
【0007】
また、本発明の目的は、冷却水をジェットノズルで噴射して冷却水の使用を減らし、メンテナンスコストを節減しながらも非晶質の金属粉末を製造することができる金属粉末製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、液滴状に分裂した後に下降する、溶融金属を冷却させるチャンバを含む金属粉末製造装置であって、上記チャンバは、内壁に、上記分裂した溶融金属を冷却させる冷却水噴射ノズルを備え、上記冷却水噴射ノズルは、上記チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿って第1傾斜角θ11をなして、第1高さに備えられる第1冷却水噴射ノズルと、上記チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿って上記第1傾斜角よりも大きい第2傾斜角θ12をなして、上記第1高さより低い第2高さに備えられる第2冷却水噴射ノズルとを含み、上記第1冷却水噴射ノズルは、上記第1高さに位置する複数個の冷却水噴射ノズルを含むことができ、2より大きい自然数nに対して、第(n-1)高さよりも低い高さを有する冷却水噴射ノズルのうちの最も高い位置を有する冷却水噴射ノズルを第n冷却水噴射ノズルとし、上記第n冷却水噴射ノズルの噴射方向が上記チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿ってなす角度を第n傾斜角θ1nとするとき、θ11≦θ12≦・・・≦θ1nを満たすことがよい。
【0009】
上記冷却水噴射ノズルは、扇形に冷却水を噴射する冷却水噴射ノズルを含むことができ、上記チャンバの内壁に備えられて上記冷却水噴射ノズルを保護する遮蔽板を含むことができ、ここで、上記チャンバは、上部における内径が下部における内径の1倍~3倍であることがよく、上記チャンバの長さは、上記チャンバの上部における内径の1倍~5倍であることがよい。
【0010】
上記冷却水噴射ノズルの冷却水の噴射圧力は80bar~150barである金属粉末製造装置が含まれてもよい。また、上記第1噴射角は30°~90°であってもよく、上記第1傾斜角は10°~60°である金属粉末製造装置が含まれてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面による金属粉末製造装置は、溶融金属液滴の直径に応じて異なることとなる落下経路に合わせて、溶融金属の液滴が適した飛行距離を有するように冷却水を噴射して、金属粉末の球形成能を高めることができる。
【0012】
冷却水はジェットノズルから噴射され、金属液滴の冷却時に表面に形成される水蒸気膜を除去することができ、冷却効率を高めるので、金属粉末の非晶質形成比率が高くなる。
【0013】
また、ジェットノズルは、平らな扇形に冷却水を噴射して、円錐状の冷却水を噴射する場合に比べて、金属液滴との接触面積が広く、冷却水が集中噴射され、冷却効率が向上するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】金属粉末製造装置の断面を概略的に示す断面図である。
図2図1の金属粉末製造装置を概略的に示す透視図である。
図3】金属粉末製造装置のチャンバの内壁を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下で本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用される用語は、特定の実施例を記述するためのものであるだけで、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、特に断らない限り、技術的に通常の技術を有する者にとって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲全体にわたって、特に断らない限り、「包含(comprise、comprises、comprising)」という用語は、言及された、物、段階、又は、一群の物、及び段階を含むことを意味し、任意の何らかの他の、物、段階、又は、一群の物又は一群の段階を排除する意味として使用されたものではない。
【0017】
一方、本発明の様々な実施例は、明確に反する指摘がない限り、その他の如何なる他の実施例と結合されてもよい。特に好ましい又は有利であると指示する如何なる特徴も、好ましい又は有利であると指示したその他の如何なる特徴及び特徴と結合されてもよい。以下、添付の図面を参照して本発明の実施例及びこれによる効果を説明する。
【0018】
本明細書においてジェットノズルとは、蒸気や液体、気体などが高速で噴出されるように噴射する噴出口をいう。ジェットノズルという表現が使用される場合、管の断面積を狭くして流体の速度を高める方式のノズルと、圧力を加えて流体を噴射する方式など、高速で流体を噴射することができる噴出口などを含めて広く解釈される。
【0019】
溶融金属供給容器10は、溶融金属の溶湯を収容している容器を意味し、溶融金属供給容器10の下面にはオリフィス11が備えられ、溶融金属が重力によって鉛直方向に流れ落ちる。溶融金属の種類には限定がなく、例えば、Ti及びAlのような活性の高い金属を含むことができる。活性の高い金属は、空気との接触によって容易に酸化して表面に酸化膜を形成するので、微細化することが難しいものと知られているが、本側面による金属粉末製造装置は、溶融金属に含まれる金属の種類に限定はない。
【0020】
また、磁性のある金属や合金及びこれを製造するための組成の溶融金属、例えば、Fe-Si-B系非晶質金属、Fe-Si-B-P系非晶質金属、Fe-Si-B-Nb-Cu系ナノ結晶金属、Fe-Ni-M(メタロイド; metalloid)-T(他の遷移金属; other transition metal)などの鉄系非晶質合金粉末を製造するための組成の金属が使用されうるのであり、溶融金属は、冷却されて軟磁性の非晶質粉末を形成することができる。
【0021】
オリフィス(Orifice)とは、溶融した金属溶湯を流して送り出す吐出口を意味する。高温に維持される溶融金属溶湯は、オリフィス11を介して、チャンバの内部にて上部から下部へと流れ落ちる。
【0022】
図1は、本発明の一実施例である金属粉末製造装置を概略的に示す断面図である。金属粉末製造装置は、流体噴射ノズル、チャンバ、冷却水噴射ノズルを含んで構成される。
【0023】
流体噴射ノズル12は、流体を噴射するノズルである。噴射される流体は限定されないが、気体を使用することがよく、使用される気体は、金属との反応性のない気体であることがよく、好ましくは、窒素のように反応性の低いガス、又はアルゴン等の不活性気体でありうる。
【0024】
流体噴射ノズル12は、オリフィス11の周辺部又はオリフィス11の下方に備えられ、ノズルの方向は、オリフィス11から溶融金属が流れ落ちる鉛直方向の直線(中心軸)を向くように配置される。流体噴射ノズル12が中心軸となす角度に限定はないが、中心軸と鋭角をなすことで重力方向に向かって気体が噴射されるように配置されることが好ましい。
【0025】
流体噴射ノズル12が中心軸と直角をなす場合、互いに異なるノズルから噴射される噴射ガス同士が衝突し、溶融液滴が飛散する方向が一定ではなく、金属粉末の品質が良くないのであって、特には、噴射ガスにより溶融液滴がオリフィス11に向かって飛散することでオリフィス11を塞いだり狭くしたりする可能性があるため好ましくない。
【0026】
流体噴射ノズル12は、複数個で構成され、オリフィス11の周辺に環状に配置されてもよい。複数の噴射ノズルは、オリフィス11から鉛直方向へと位置する特定の点に向かってガスが噴射されるように構成されてもよい。この場合、流れ落ちていた金属溶融液は、噴射されるガスによって微細な溶融液滴(droplet)として飛散し、円錐状をなしながらチャンバの内部に落ちる。
【0027】
チャンバ(Chamber)は、内部にて溶融金属粒子の冷却が行われる場所であって、内部に空間を有する筒状体で構成されることが好ましい。チャンバ1は、溶融金属供給容器の下に位置する。チャンバ1の形態は限定されないが、円筒状からなることが好ましく、チャンバ1の内径は、上部では大きく、下部に向かうほど小さくなるのでありうる。チャンバ1の上部における内径D1と、チャンバ1の下部における内径D2との比率であるD1/D2は、1以上であり、3以下であってもよく、好ましくは1.2~2.5であることがよい。
【0028】
チャンバ1の中心軸は、溶融金属供給容器のオリフィス11と一致するように設置されうるのであって、冷却水噴射ノズルの角度及び配置形態に応じてオリフィス11がチャンバ1の中心軸と一致しないのでありうるのであり、チャンバ1の中心軸が鉛直方向と平行ではなく一定の角度をなすように斜めに構成されることができる。
【0029】
流れ落ちる溶融金属が飛散する距離を確保して球形成能を向上させるために、チャンバ1の長さは、チャンバ1の上部の内径の1倍~5倍の範囲であることがよく、好ましくは1.5倍~4倍の範囲であることがよい。
【0030】
チャンバ1の長さと直径との比が当該範囲を外れる場合、冷却水噴射ノズル20を設置する高さ間隔が大きくなることで、冷却水噴射ノズルの角度を調節して溶融金属液滴の飛散距離を調節できる範囲が狭くなるか、溶融金属と冷却水噴射ノズルとの距離が大きくなることで溶融金属の液滴が球状化する前に冷却されうるのであり、冷却効率が低下しうる。
【0031】
上部及び下部における直径とチャンバの長さとの比率が当該範囲内にある場合、チャンバの下部において冷却水による冷却が集中的に行われうることから、溶融金属の冷却効率が上昇する。
【0032】
冷却水噴射ノズルは、チャンバ1の内面に配置され、液滴化した溶融金属を冷却させる冷却水を噴射する噴射口である。冷却水噴射ノズルには、冷却水を高速で噴射することができるように、ジェットノズル(jet nozzle)が使用されうる。
【0033】
チャンバの内壁に備えられる冷却水噴射ノズルのうちの、最も上部に位置する冷却水噴射ノズルを第1冷却水噴射ノズル21とし、第1冷却水噴射ノズル21が位置する高さを第1高さと定義する。第1冷却水噴射ノズル21は、1つの冷却水噴射ノズルであってもよく、同じ第1高さを有する複数個の冷却水噴射ノズルを含んでもよい。
【0034】
第1高さより低い高さに位置する冷却水噴射ノズルのうちの最も高い位置を有する冷却水噴射ノズルを第2冷却水噴射ノズル22とし、第2冷却水噴射ノズル22が位置する高さを第2高さと定義する。第2冷却水噴射ノズル22は、1つの冷却水噴射ノズルであってもよく、同じ第2高さを有する複数個の冷却水噴射ノズルを含んでもよい。全く同様にして、第3高さ、第4高さ、第3冷却水噴射ノズル23、及び、第4冷却水噴射ノズル24を定義することができる。第(n-1)高さより低い高さに位置する冷却水噴射ノズルのうち、最も高い位置を有する冷却水噴射ノズルを第n冷却水噴射ノズルとし、第n冷却水噴射ノズルが位置する高さを第n高さと定義する。
【0035】
傾斜角は、冷却水噴射ノズルにおける冷却水の噴射方向が、チャンバの内壁との間で鉛直方向に沿ってなす角度を意味するものと解釈することができるのであり、噴射方向の仮想の直線がチャンバの内壁と出会う点において、チャンバの内壁に接する接平面と、仮想の直線とがなす角度と解釈することができる。
【0036】
第1冷却水噴射ノズル21の傾斜角を第1傾斜角、第2冷却水噴射ノズル22の傾斜角を第2傾斜角とし、全く同様に、第3冷却水噴射ノズル23の傾斜角を第3傾斜角、第4冷却水噴射ノズル24の傾斜角を第4傾斜角とし、第n冷却水噴射ノズルの傾斜角を第n傾斜角とする。
【0037】
第1高さに位置する第1冷却水噴射ノズル21が複数個である場合、複数個の冷却水噴射ノズルは、全て同じ第1傾斜角を有するか、2つ以上の第1傾斜角を有することができる。冷却水噴射ノズル20の配置は限定されないが、中心軸を基準にして回転対称をなすか、又は、それぞれの冷却水噴射ノズル20同士の間の距離が最大となるように配置されることが、均一な金属粉末の冷却のために好ましい。
【0038】
例えば、2つの冷却水噴射ノズル20は、中心軸を基準にして互いに対向するように配置されることがよく、3つの冷却水噴射ノズル20は、互いに中心軸を基準にして120度の角度をなして正三角形状に配置されることがよい。本発明の一実施例は、冷却水噴射ノズル20が中心軸を基準にして対称的に配置される構造をなす。
【0039】
互いに異なる高さを有する冷却水噴射ノズルは、図2のように、互い違いに配置されうる。図2に示す実施例では、第1冷却水噴射ノズル21は、第2冷却水噴射ノズル22と互いに食い違うように配置され、第2冷却水噴射ノズル22と第3冷却水噴射ノズル23とが食い違うように配置される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
冷却水噴射ノズル20は、チャンバ1の中心軸に向かって冷却水を噴射し、ノズルの噴射方向は傾斜角を有する。傾斜角は、冷却水噴射ノズルの高さが低くなるほど増加するように設けられ得る。第1傾斜角は10°以上であって60°以下に設けられるのであり、好ましくは10°~30°の範囲であることがよい。その後、第2傾斜角は、第1傾斜角と同じか、それより大きいのであって、第1傾斜角との差が、0°以上30°以下であってもよく、好ましくは5°~15°の範囲であることがよい。
【0041】
第3傾斜角は、第2傾斜角と同じか、それより大きいのであって、第2傾斜角との差が、0°以上30°以下であってもよく、好ましくは5°~15°の範囲であることがよい。
【0042】
第1冷却水噴射ノズル21がチャンバ1の内壁となす第1傾斜角をθ11とし、第n冷却水噴射ノズルの第n傾斜角をθ1nとするならば、2より大きいnに対してθ11≦θ12...≦θ1nのような関係が成立しうるのであり、好ましくはθ11<θ12<...<θ1nの関係が成立することがよい。第n傾斜角は、第n-1傾斜角と同じか、それより大きく、第n-1傾斜角との差が、0°以上30°以下であってもよく、好ましくは5°~15°の範囲であることがよい。
【0043】
冷却水噴射ノズル20は、傾斜角を有しつつ冷却水を噴射することから、流体噴射ノズル12によって飛散する金属液滴の直径に応じて、異なる飛行距離が提供されうる。飛散する溶融金属の液滴は、直径が大きいほど、質量が大きいために運動エネルギーが大きく、流体の抵抗を少なく受けて重力方向に近い飛行経路を有するのであり、直径の小さい液滴は、質量が少ないために運動エネルギーが相対的に小さく、噴射される流体の抵抗を受けて、重力方向との大きな噴射角をなしつつ広がって行く飛行経路を有する。
【0044】
冷却水が水平方向に噴射される場合、直径の大きい液滴の飛行距離が短くなるのであり、冷却水がチャンバ1の内壁にのみ形成される場合、直径の大きい液滴の飛行距離が長くなるという差が発生する。冷却水が、中心軸に向かって、チャンバ1の内壁との一定の角度の範囲で噴射される場合、直径の大きい液滴と、直径の小さい液滴との飛行距離を調節することができる。
【0045】
飛行距離が短すぎる場合、表面張力による粒子の球状化が上手くなされず、球形成能が低下し、また、飛行距離が大きすぎる場合は、冷却速度が低く非晶質が形成されないのであるため、非晶質が形成されながらも球形成能の良い飛行距離の調節が必要であるため、冷却水噴射ノズル20の角度及び設置位置を調節して、効率的な金属粉末の生産が行われうる。
【0046】
高さが低くなるほど傾斜角が増加する配置は、チャンバ1の中心軸に近づくほど、冷却水噴射ノズルから噴射される冷却水の段階の間隔を狭くする効果がある。直径のサイズが大きい金属液滴であるほど、中心軸に近い飛行経路を有するため、複数の冷却水層を速い速度で通過し、高い冷却速度を有するようになって冷却効率が高くなる。
【0047】
冷却水噴射ノズル20の傾斜角は調節されてもよい。単一組成の溶融金属から異なる性状を有する粉末を製造するためである場合、又は溶融金属の組成が変化する際に、同一又はより良い性状を有する粉末を製造するためである場合に、冷却水の噴射角度を調節して溶融金属液滴の飛散距離及び冷却速度を調節することができるのであり、非晶質の比率や球形成能が、より高い粉末を形成することができる。傾斜角の調節範囲は、上下に30度の範囲で設けられ得る。
【0048】
図2は、本発明の一実施例であるチャンバの冷却水噴射角度を示す透視図である。チャンバの内壁に設置された冷却水噴射ノズル20の冷却水噴射の形態が破線で示されている。冷却水噴射ノズル20の冷却水噴射の形態と、冷却水噴射ノズル20から噴射される冷却水の噴射角が、冷却水噴射ノズルの高さによって異なることとなる。
【0049】
噴射ノズルから噴射される冷却水は平らな扇形に噴射され、このとき扇形の中心角を噴射角と定義する。噴射角は30°~130°の範囲であってもよく、好ましくは35°~110°、さらに好ましくは40°~90°の範囲であってもよい。
【0050】
冷却水噴射ノズル20の扇形の噴射は、円錐状の噴射に比べて冷却水を集中して噴射するため、冷却水が高い密度で噴射され、冷却効率が高くなり、金属粉末の表面の水蒸気層の除去が容易であるという利点があるのであり、扇形に噴射されて、広い接触面積を有し、チャンバの中心軸から離れて落下する溶融金属の液滴にまで接触して冷却させることができる。
【0051】
第1冷却水噴射ノズル21が複数個の冷却水噴射ノズル20を含む場合、これら第1冷却水噴射ノズル21は同じ噴射角を有することができ、噴射角は、噴射ノズルの高さに応じて様々な噴射角を有するように備えられうる。
【0052】
図2に示す実施例において、噴射角は冷却水噴射ノズル20の高さが低くなるほど増加する。第1冷却水噴射ノズル21の噴射角をθ21とし、第n冷却水噴射ノズルの噴射角をθ2nとすると、2より大きいnに対してθ21≦θ22≦・・・≦θ2n又はθ21<θ22<・・・<θ2nの関係が成立しうる。
【0053】
冷却水噴射ノズル20の噴射角が、高さが低くなるほど増加する構成は、チャンバ1の下端に向かうほど金属液滴の冷却が多く行われ、1つの金属液滴に対する冷却水の集中噴射の冷却効率が減少するため、接触面積を最大化し大量の金属液滴と接触して、全体の冷却効果を向上させるのに有利な効果を有することができる。
【0054】
図3は、本発明の一実施例である金属粉末製造装置を示す平面図である。第1冷却水噴射ノズル21~第4冷却水噴射ノズル24は、それぞれの高さに4つの冷却水噴射ノズルが備えられており、互いに90度ずつ離れるように配置される。第2冷却水噴射ノズル22は、第1冷却水噴射ノズル21に対して45度回転して配置され、互いに食い違うように配置された形態を示す。第3冷却水噴射ノズル23は、第3高さにて第1冷却水噴射ノズル21と同じ配置を有し、第4冷却水噴射ノズル24は、第4高さにて第2冷却水噴射ノズル22と同じ配置を有する。このような互い違いの形態のノズル配置によって形成される冷却水の段階は、広い接触面積を有し、効率的な冷却水の段階を形成させるようにする。
【0055】
冷却水噴射ノズルの噴射形態は、平らな扇形に噴射されるノズルを含み、円錐状の噴射ノズルを含むことができる。複数個の冷却水の噴射ノズルは、一部は平らな扇形に噴射され、一部は円錐状に噴射され、様々な冷却水の噴射方式が使用されうる。
【0056】
冷却水噴射ノズル20から噴射される冷却水は、高圧、高速で噴射されるほど、溶融金属の液滴をさらに分裂させるか、冷却水と溶融金属液滴との接触により形成される溶融金属液滴の表面の水蒸気層を破壊することで、熱交換効率が良くなり、冷却速度を向上させ、生成される金属粉末の非晶質の程度を高めることができる。冷却水の圧力は、80bar~150barであってもよく、好ましくは90bar~130barであることがよく、冷却水の噴射速度は限定されず、当該冷却水の圧力の範囲にて、ノズルの構成によって得られる噴射速度を含んで構成されうる。
【0057】
冷却水噴射ノズルの角度を調節することができる角度調節手段が、金属粉末製造装置にさらに含まれうる。角度調節手段は、冷却水噴射ノズルをチャンバの内壁に連結し、冷却水噴射ノズルの噴射方向を調節可能にする。冷却水噴射ノズルの角度を調節することができるため、同じ組成の溶融金属では、飛散距離を長く調節することで金属粉末の粒子形態をさらに球状に近づけるように調節することができ、飛散距離を相対的に短くしながら液滴化した金属の冷却速度を増加させ、製造される金属粉末の非晶質比率が高くなるように調節することができる。このような噴射角度は、溶融金属の組成、及び、製造しようとする金属粉末の具体的な性状などに応じて調節することができるため、同じ装置にて、様々な特性の金属粉末を製造することができる。
【0058】
また、溶融金属の組成が変わる場合、同じ冷却水噴射ノズル角度でも、粒子の冷却による非晶質の比率及び表面張力による球状性の程度が変わりうるが、冷却水噴射ノズルを調節することで金属組成に最適化した飛散距離及び冷却速度で生産することができる。
【0059】
溶融金属の組成が変わらずに、目標性状が異なるものとなる場合にも同様に、冷却水噴射ノズルの角度を調節すれば、新たな設備や投資がなくても、球形成能が向上するか、粉末の粒度が均一になる等の差を得ることができる。
【0060】
冷却水噴射ノズル20において、溶融金属液滴がノズルに飛散して冷却され、ノズルの噴射口を塞いだり狭くしたりして、冷却水噴射ノズル20の噴射に妨げとなる場合や、冷却水が、チャンバの内面に沿って流れ落ちることで冷却水噴射ノズルの噴射を妨げる場合を防止するために、チャンバ1は、内壁に冷却水噴射ノズル20を覆う形態の遮蔽板30を含むことで冷却水噴射ノズル20を保護する。
【0061】
遮蔽板30は、冷却水噴射ノズル20の上方に設置され、冷却水噴射ノズル20の噴射経路を遮ることなく、飛散する金属液滴から冷却水噴射ノズル20を覆う又は囲む機能を発揮することができる形態であれば、その構造は限定されない。遮蔽板30は、平らな板状であってもよく、平面板が折り畳まれた形態であってもよく、曲面から形成されるか、球面の一部又は冷却水噴射ノズルの上方及び下方の両方を囲み、噴射経路に該当する部分のみが開放される形態であってもよい。
【0062】
チャンバの下部に形成された金属粉末は、冷却水と共に移送されて乾燥工程を経るのであり、使用された冷却水は、粉末と分離されて処理された後、ポンプを経て冷却水噴射ノズル20に再び供給されて再使用されうる。
【0063】
上述した各実施例にて例示した特徴、構造、効果等は、実施例が属する分野における通常の知識を有する者によって、他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせ及び変形に関連する内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0064】
1:チャンバ
10:溶融金属供給容器
11:オリフィス
12:流体噴射ノズル
20:冷却水噴射ノズル
21:第1冷却水噴射ノズル
22:第2冷却水噴射ノズル
23:第3冷却水噴射ノズル
24:第4冷却水噴射ノズル
30:遮蔽板
図1
図2
図3