(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】肝臓特異的プロモータ及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20231013BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231013BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231013BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231013BHJP
A01K 67/027 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
A01K67/027
(21)【出願番号】P 2022539377
(86)(22)【出願日】2020-05-05
(86)【国際出願番号】 CN2020088604
(87)【国際公開番号】W WO2021128692
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】201911357788.0
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522254561
【氏名又は名称】ジンファン バイオメディカル テクノロジー (ウーハン) カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JINFAN BIOMEDICAL TECHNOLOGY (WUHAN) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Wuhan Area of Free Trade Zone) 311-22 Experimental Building,Nuclear Magnetic Spectrometer Industrial Base, No.128 Guanggu 7th Road,East Lake New Technology Development District, Wuhan, Hubei 430000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュウ グァンメン
(72)【発明者】
【氏名】パン シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン シェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ウェンジン
(72)【発明者】
【氏名】ヘー シャオビン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-513678(JP,A)
【文献】特表2019-513794(JP,A)
【文献】国際公開第2019/154939(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SEQ ID NO.1又はSEQ ID NO.2に示されるヌクレオチド配列を有する第1ポリヌクレオチドと、
(b)SEQ ID NO.3に示されるヌクレオチド配列を有する第2ポリヌクレオチドと、
(c)SEQ ID NO.4に示されるヌクレオチド配列を有する第3ポリヌクレオチドとを含み、
(c)、(b)及び(a)
が隣接してこの順で、5’-3’
に連結され、かつ、
異種ポリヌクレオチドの哺乳類の肝臓組織での転写を促進することができる、
ことを特徴とする核酸分子。
【請求項2】
肝臓特異的プロモータとして遺伝子又は核酸断片の肝臓での発現を
促進する、ことを特徴とする請求項
1に記載の核酸分子の使用
(ヒトでの使用を除く)。
【請求項3】
前記
肝臓特異的プロモータはFVIII凝固因子遺伝子の肝臓での発現を
促進することに用いられる、ことを特徴とする請求項
2に記載の使用
(ヒトでの使用を除く)。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ことを特徴とする発現ベクター。
【請求項5】
プラスミド又はウイルスベクターである、ことを特徴とする請求項
4に記載の発現ベクター。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載の発現ベクターを含む、哺乳類宿主細胞。
【請求項7】
ゲノムが請求項
1に記載の核酸分子又は請求項
4又は5に記載の発現ベクターを含む、
ヒトを除いた哺乳類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子治療の分野に属し、より具体的には、肝臓特異的プロモータ及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療(gene therapy)とは外来性正常遺伝子を標的細胞に導入して、遺伝子欠陥又は異常による疾患を修正又は補償し、最終的に治療目的を実現することを指す。1989年に人間に対する最初の遺伝子治療プログラムが臨床試験に入ってから、すでに30年以上が経過した。過程は非常にでこぼこであるが、ベクターウィルス、送達機序の最適化に伴い、近年、遺伝子治療は急速に発展し、癌、希少疾患の治療において将来性が期待できる。2017年だけでも、遺伝子治療は多くの画期的な進歩を遂げており、米国FDAは相次いでCAR-T療法(KymriahとYescarta)と最初の「遺伝学的眼疾患突然変異を標的とする」遺伝子療法(Luxturna)とを承認し、2017年は遺伝子療法にとって非常に重要な1年といえる。
【0003】
アデノウイルス随伴ウィルス(AAV)はパルボウィルス科に属し、ウィルス粒子が小さく、コピー欠陥があり、エンベロープがないウィルスであり、今まで野生型AAVが人体に疾患を引き起こすことはまだ発見されていない。人工的に改変した組換えAAV(rAAV)は安全性が良く、免疫原性が低く、組織の好性が広く、宿主細胞のゲノムに組み込まないなどの利点を備えており、近年、rAAVを遺伝子治療のベクターとすることは遺伝子治療の研究の焦点になっている。2012年、欧州医薬品監督管理庁は最初の遺伝子治療薬であるrAAVベクターに基づくリポタンパク質エステラーゼ遺伝子治療薬Glyberaを承認し、2017年12月19日に、米国FDAは、rAAVを遺伝子治療ベクターとした、アルストレーム-オルセン症候群(RPE65遺伝子の突然変異によるもの)の治療用として最初の希少疾患用遺伝子治療薬Luxturnaを承認し、2019年5月24日には、米国FDAはノバルティス社製の重症筋萎縮症I型(SMA I)治療用の希少疾患遺用伝子治療薬であるZolgensmaを承認した。2019年11月までに、rAAVをベクターとして使用する200を超える遺伝子治療の臨床試験プログラムがClinicalTrials.govに登録されている。
【0004】
組み換えAAVは遺伝子治療ベクターとしても明らかな欠点が存在し、その外来遺伝子の担持量が小さく、一本鎖ゲノムAAVの外来遺伝子担持の上限は4.7kbであり、外来遺伝子の担持長さは更に増加し、ウイルス粒子パッケージングの完全性はそれに伴って低下する。担持量の制限のため、いくつかの大きな遺伝子はrAAVベクターを用いて送達するのに適しておらず、例えば血友病Aの原因遺伝子凝固因子VIIIが挙げられ、そのcDNAの大きさは7056bpで、2351aaのFVIII前駆体タンパク質をコードし、これらは、rAAVの担持量をはるかに超えている。
【0005】
血友病(hemophilia)は凝固因子欠乏による遺伝性凝固機能障害疾患であり、よく見られるタイプは血友病A(HA)と血友病B(HB)を含む。血友病の発病率を5~10/10万と見積もると、現在、中国では、血友病患者数は約10万人、世界では約100万人と予測されている。
【0006】
HAはX染色体上に位置するFVIII(F8)遺伝子の突然変異による凝固因子8の欠乏又は機能欠陥によるものであり、全血友病の約80%を占めている。HBは凝固因子IX(FIX)の欠乏として表現され、血友病患者全体の約20%を占め、X染色体上に位置するFIX(F9)遺伝子の突然変異によって引き起こされる。
【0007】
現在、血友病を治療する主な方法は代替治療である。代替治療は外因性組換え凝固因子の輸血により出血合併症を緩和し、機能喪失を防止することである。しかし、凝固因子VIIIの半減期が短い(8~12h)ため、毎週2~3回注射する必要があり、頻繁な治療は患者の生活の質に深刻な影響を与える。一方、遺伝子治療は血友病やその他の単遺伝子遺伝病の治療に新しい手段を提供した。血友病の遺伝子治療は凝固因子を正常にコードする外来性遺伝子を患者の体内に導入し、細胞内で治療レベルの凝固因子を発現して分泌することにより、血友病を完治する目的を実現する。凝固因子VIIIは正常レベルまで補充して機能を発揮する必要はなく、正常レベルの5%まで回復すれば出血予防効果を達成でき、このため、血友病Aは非常に良い遺伝子治療適応症になる。
【0008】
凝固因子VIII遺伝子が大きいことやAAVベクターの遺伝子担持量が制限を受けるなどの特徴に対して、Lind P.,et alは14個のアミノ酸のアダプターペプチド(SQ配列)で凝固因子VIIIのBドメイン(760~1667aa)を置換することにより、この遺伝子の大きさを元の40%である4.4kb(Lind P et al.,Eur.J.Biochem.232:19-27,1995)まで減少させ、このB domain deleted FVIII(BDD-FVIII)は現在FVIIIタンパク質の発現によく採用されているバージョンであり、Jenny McIntosh.,et alは、SQ配列の途中に6つのグリコシル化部位を含む17aa短ペプチドV3(V3-FVIII)を挿入することにより、invivoでのこのタンパク質の発現を増強した(Jenny McIntosh et al., BLOOD. 121(17),2013)。しかし、BDD-FVIIIもV3-FVIIIも、そのサイズがrAAVの担持の上限に近づいており、目的遺伝子の発現を調節する調節エレメント(プロモータ、Poly A)には約300bpしか残されていない。
【0009】
FVIIIの主な合成場所は肝細胞と肝洞内皮細胞であり、現在、rAAVを用いた血友病Aの遺伝子治療の策略は目的遺伝子FVIIIを縮小すると同時に、小さなサイズの肝臓特異的プロモータを用いて、プロモータ、BDD-FVIIIやV3-FVIII、polyAを同一のAAVベクターの限られた空間に集合することであり、例えばBIOMARIN社製のBMN270の発現クラスターはHLP-BDD FVIII-sPA(ClinicalTrials.gov number, NCT02576795)であり、SPARK社製のSPK-8011の発現クラスターはTTRm- BDD FVIII-Rabbit beta globin poly A(ClinicalTrials.gov number, NCT03003533)であり、両者はいずれも小さなサイズの肝臓特異的プロモータを用いて目的遺伝子の発現を駆動するものであり、I/II相臨床試験は一定の効果を遂げており(Rangarajan S et al., The New England journal of medicine. 2017 ; Lindsey A.G et al., Blood.130:604, 2017)、そのうちBIOMARIN社製の血友病A遺伝子治療薬BMN270は既にEMAに発売申請を提出している。しかし、プロモータのサイズの制約により、その開始強度は、一部の大きなサイズのプロモータとはまだ少なからぬ差が存在している。
【0010】
本発明の効率的なプロモータは、目的遺伝子の発現を高強度で持続的に開始することができ、治療効果を達成するために必要な用量を低減し、投与回数を低減することができ、これにより、治療コスト及び生体の免疫反応を大幅に低減することができる。しかし、rAAV担持量の制限により、凝固因子VIIIなどの比較的に大きい遺伝子を担持する場合、プロモータの長さを縮小しなければならず、それに対応して、削除された配列に含まれる重要な発現調節エレメントも失われ、目的遺伝子の発現強度と特異性もその分低下する。どのようにプロモータのサイズを最大限に縮小しながら、プロモータの目的遺伝子を開始する強度と特異性を維持するかは、rAAVをベクターとして大きな遺伝子を送達する際に解決すべき重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術の上記の欠陥又は改良に対する要件に対して、本発明は、肝臓特異的プロモータ及びその使用を提供し、小さく強力なプロモータを構築し、大きな外因性遺伝子(例えばFVIII凝固因子遺伝子)の発現の駆動に用いることで、従来の遺伝子治療に使用されるrAAVベクターに存在する担持量が限られるという技術的課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成させるために、本発明の一態様によれば、
(a)SEQ ID NO.1又はSEQ ID NO.2に示されるヌクレオチド配列を有する第1ポリヌクレオチドと、
(b)SEQ ID NO.3に示されるヌクレオチド配列を有する第2ポリヌクレオチドと、
(c)SEQ ID NO.4に示されるヌクレオチド配列を有する第3ポリヌクレオチドとを含み、
(c)、(b)及び(a)が隣接してこの順で、5’-3’に連結され、かつ、
異種ポリヌクレオチドの哺乳類の肝臓組織での転写を促進することができる、核酸分子を提供する。
【0016】
本発明の別の態様によれば、肝臓特異的プロモータとしての前記核酸分子の使用(ヒトでの使用を除く)を提供する。
【0017】
好ましくは、前記肝臓特異的プロモータは、FVIII凝固因子遺伝子の肝臓での発現を促進することに用いられる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、前記核酸分子を含むことを特徴とする発現ベクターを提供する。
【0019】
好ましくは、前記発現ベクターはプラスミド又はウイルスベクターである。
【0020】
好ましくは、前記発現ベクターはrAAVである。
【0021】
本発明の別の態様によれば、前記発現ベクターを含む哺乳類宿主細胞を提供する。
【0022】
本発明の別の態様によれば、ゲノムが前記核酸分子又は前記発現ベクターを含むヒトを除いた哺乳類を提供する。
【発明の効果】
【0023】
要するに、本発明に係る以上の技術的解決手段によれば、従来技術に比べて、以下の有益な効果が得られる。
【0024】
本発明は、小さくて強力なプロモータを構築し、血友病AのrAAV遺伝子治療に用いることを目的とする。本発明は、肝臓系での遺伝子の特異的な高発現を調節する小さなサイズの組換え核酸配列を提供する。前記組換え調節配列断片は、今まで報告した類似のサイズの他の配列に比べて、レポーター遺伝子及びヒト凝固因子FVIIIの肝臓系での発現を駆動する能力が明らかに向上し、組換えアデノウイルス関連ウイルス(rAAV)が媒介する遺伝子治療に適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】PFD-rAAV-CMV-mCHERRY-bGHpAベクターの構造概略図である。
【
図2】PFD-rAAV-HLP-BDD-FVIIIopt(WJ)-spolyAベクターの構造概略図である。
【
図3】様々なプロモータによるマウスの肝臓組織での開始の場合のmCHERRY蛍光効果の比較である。
【
図4】様々なプロモータによるマウスの肝臓組織での開始の場合のmCHERRY蛍光効果の比較である。
【
図5】様々なプロモータによるマウスの肝臓組織での開始の場合のmCHERRY蛍光効果のグレースケール走査図である。
【
図6】様々なrAAVウイルスSDS-PAGEタンパク質ゲル銀染色像である。
【
図7】RT-PCR方法による各AAVウイルスの力価の測定である。
【
図8】C57マウスにおける各プロモータのFVIII発現効果の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、ここで説明する具体的な実施例は本発明を解釈するために過ぎず、本発明を限定するものではない。さらに、以下で説明する本発明の各実施形態に係る技術的特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせられてもよい。
【0027】
本発明は、
(a)SEQ ID NO.1又はSEQ ID NO.2に示されるヌクレオチド配列とは少なくとも80%核酸配列同一性を有する第1ポリヌクレオチド、又は該第1ポリヌクレオチドの機能断片と、
(b)SEQ ID NO.3に示されるヌクレオチド配列とは少なくとも80%核酸配列同一性を有する第2ポリヌクレオチド、又は該第2ポリヌクレオチドの機能断片 とを含み、
(b)と(a)は5’-3’で連結され、かつ、
異種ポリヌクレオチドの哺乳類の肝臓組織での効率的な転写を促進することができる、核酸分子を提供する。
【0028】
いくつかの実施例では、前記核酸分子は、
(a)SEQ ID NO.1又はSEQ ID NO.2に示されるヌクレオチド配列を有する第1ポリヌクレオチド と、
(b)SEQ ID NO.3に示されるヌクレオチド配列を有する第2ポリヌクレオチドとを含み、
(b)と(a)は5’-3’で連結され、かつ、
異種ポリヌクレオチドの哺乳類の肝臓組織での効率的な転写を促進することができる。
【0029】
いくつかの実施例では、前記核酸分子は、
(c)SEQ ID NO.4に示されるヌクレオチド配列とは少なくとも80%の核酸配列同一性を有する第3ポリヌクレオチド、又は該第3ポリヌクレオチドの機能断片をさらに含み、
(c)、(b)及び(a)は5’-3’で連結され、かつ、
異種ポリヌクレオチドの哺乳類の肝臓組織での効率的な転写を促進することができる。
【0030】
別のいくつかの実施例では、前記核酸分子は、
(a)SEQ ID NO.1又はSEQ ID NO.2に示されるヌクレオチド配列を有する第1ポリヌクレオチドと、
(b)SEQ ID NO.3に示されるヌクレオチド配列を有する第2ポリヌクレオチドと、
(c)SEQ ID NO.4に示されるヌクレオチド配列を有する第3ポリヌクレオチド とを含み、
(c)、(b)及び(a)は5’-3’で連結され、かつ、
異種ポリヌクレオチドの哺乳類の肝臓組織での効率的な転写を促進することができる。
【0031】
本発明はまた、肝臓特異的プロモータとしての前記核酸分子の使用を提供する。
【0032】
いくつかの実施例では、前記プロモータは、FVIII凝固因子遺伝子の肝臓での発現を開始することに用いられるが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明はまた、異種ポリヌクレオチドに操作可能に連結される本発明の核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0034】
好ましい実施例では、発現ベクターはプラスミド又はウイルスベクターである。哺乳類発現ベクターの例には、アデノウイルスベクター、pSV及びpCMVシリーズのプラスミドベクター、牛痘ベクターや逆転写ウイルスベクター、及びバキュロウイルスが含まれる。いくつかの実施形態では、発現ベクターはアデノ随伴ウイルスベクターrAAVである。
【0035】
発現ベクターは、コピー開始点、選択的マーカー及びマルチクローンサイトのエレメントのうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0036】
本発明はまた、本発明の発現ベクターを含む哺乳類宿主細胞を提供する。発現ベクターは任意の適切な方法によって宿主細胞にトランスフェクションされてもよい。好ましくは、宿主細胞は哺乳類細胞(例えばヒト人細胞)、例えば上記したものであってもよい。これらの宿主細胞は分離細胞であってもよい。
【0037】
核酸分子は、哺乳類細胞において操作可能に連結された異種ポリヌクレオチドの転写を促進することができる。好ましい哺乳類細胞は、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞、猿細胞及びヒト細胞を含む。これらの細胞の例には、HEK細胞及び誘導体(例えばHEK293、HEK293T、HEK293A)、PerC6細胞、911細胞、CHO細胞、HCT116細胞、HeLa細胞、COS細胞及びVERO細胞;癌細胞例えばHepG2、A549及びMCF7;ヒト又は動物から生検により分離した初代細胞;及び幹細胞(多能性細胞、例えば胚性幹細胞や人工多能性幹(iPS)細胞;及び多能性幹細胞、例えば造血幹細胞、間葉系幹細胞などを含む)が含まれる。
【0038】
本発明はまた、ゲノムが本発明の核酸分子又は本発明の発現ベクターを含む哺乳類を提供する。好ましくは、本発明の核酸分子又は本発明の発現ベクターは、哺乳類のゲノムに挿入され、これにより、本発明の前記核酸分子が本発明の前記発現ベクターに操作可能に連結された又は操作可能に挿入させた異種ポリヌクレオチドは哺乳類の1つ又は複数の細胞で発現させる。好ましくは、哺乳類はマウス又はラットである。いくつかの実施形態では、哺乳類は非ヒト哺乳類である。
【0039】
当業者が簡単に理解できるように、本発明で提供されるプロモータは、FVIII凝固因子遺伝子の肝臓での発現の開始だけでなく、非コードRNAの発現、例えばsiRNA発現の開始にも適用できる。
【0040】
以下は実施例を示す。
【0041】
実施例1
組換えプロモータ断片
表1で同定された配列からなる組換えプロモータ断片を産生した。
【表1】
第1ポリヌクレオチド、第2ポリヌクレオチド、及び第3ポリヌクレオチド(存在する場合)は上記のプロモータ断片において連続して連結されている。
【0042】
実施例2
様々なプロモータを含むrAAV発現ベクターの構築
ヒトアンチトリプシンα1(hAAT:Human α1-antitrypsin)は、SERPINA1遺伝子によりコードされて合成されるセリンプロテアーゼ阻害剤であり、主に肝臓により合成されて血液に分泌され、hAATプロモータは肝臓特異的プロモータとして、強力な開始能力を有し、その発現調節エレメントが1.3Kb(-1200bp~+46bp)の範囲内であり(Perlino et al, 1987; Rong-Fong Shen et al.,1989;)、AAVベクターへの使用が大きなサイズにより制限されている。文献に記載の研究から明らかなように、hAATコアプロモータ領域が転写開始部位(TSS)-142/+44bp領域にあり、この間にHNF1、HNF4、CEBPなどの転写因子結合部位が分布している。転写開始部位(TSS)上流-261/-181bpの遠隔エンハンサー領域(DRI:Distal regin)にも転写因子CEBP及びHNF3の結合部位が存在し、hAATの肝臓組織での高レベルの発現が調節される。
本発明はhAAT プロモータ-142/+44bp領域(186bp, NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6948nt-7133nt)をmini-hAAT promoter、hAATプロモータ-261/+44bp領域(305bp, NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6829nt-7133nt)をhAAT promoter、hAATプロモータ-142/-62bp領域(81bp、NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6948nt-7029nt, SEQ ID NO. 3)をtruncated-hAAT hAAT promoter、hAATプロモータ-261/-208bp領域(54bp, NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6829nt-6882nt, SEQ ID NO.4)をhAAT enhancer/hAATeと命名する。
トランスサイレチン(TTR:Transthyretin)は、甲状腺ホルモントランスポータであり、主に肝臓組織で合成されて血液に分泌されたり、脈絡叢上皮細胞で合成されて脳脊髄液に分泌されたりする。マウスTTRの発現は、200/+1の近位調節領域(プロモータ領域)と-1.86/-1.96 kbpの遠位調節領域(エンハンサー領域)との2つの肝臓特異的領域により調節される。TTRプロモータは、小さなサイズ及び強力な開始効果により肝臓特異的プロモータとして遺伝子治療にも利用されている。マウスTTRのエンハンサー及びプロモータ領域にはAP1、CEBP、HNF4、HNF1、HNF3などの複数の転写因子結合部位が分布しており、TTRタンパク質の効率的な特異的発現が調節される。
本発明では、hAATプロモータとマウスTTRプロモータとの重要な調節領域をキメラ化することにより、複数のキメラプロモータが得られ、これらのうち、後続の試験によりスクーリングした開始効果が高い5本のプロモータはそれぞれATh1 promoter、ATh2 promoter、ATh3 promoter、ATh4 promoter、及びATh5 promoterと命名される。
それぞれのプロモータの開始強度を比較するために、本発明では、
図1に示すように、上記のキメラプロモータを報告した上記の強力な肝臓特異的プロモータとともにAAVベクターPFD-rAAV-CMV-mCHERRY-bGHpAに構築する。mCHERRY蛍光タンパク質の発現に対する開始を通じて、各プロモータの開始レベルを比較する。
図1には、ITR(inverted terminal repeat)は、長さ145bpの逆方向末端反復配列であり、CMV enhancer/promoterは、ヒトサイトメガロウイルス初期プロモータであり、mCHERRYは、赤色のルシフェラーゼ遺伝子リーディングフレームであり、BGH polyAは、牛成長ホルモンのポリアデニル化シグナルであり、Ampはアンピシリン耐性遺伝子リーディングフレームであり、GmRはハイグロマイシン耐性遺伝子リーディングフレームであり、Tn7F/RはTn7トランスポゾンであり、oriはコピー開始部位であり、XhoI、AgeI、SacIは、制限エンドヌクレアーゼ部位である。具体的な構築手段は以下のとおりである。
1)PFD-rAAV-CMV-mCHERRY-bGHpAについて制限エンドヌクレアーゼXhoI及びAgeIを用いて二重消化を行うことで、線形化処理を行う。
2)プライマーを設計し、合成テンプレートで所望のプロモータ断片を増幅し、プライマーを設計する際に、線形化後のベクターと組換えを行うために制限エンドヌクレアーゼ部位及び18bp程度の相同組換えアームを保留する。
3)所望の組換え断片の数に応じてClonExpress II One Step Cloning Kit(Vazyme社、C112)及びClonExpress MultiS One Step Cloning Kit(Vazyme社、C113)を利用して、目的断片及びベクター骨格について相同組換えを行う。
4)相同組換え産物をSTBL3コンピテントに形質転換し、LB平板に塗布して37℃で一晩培養し、単一クローンを選択して同定を行い、同定の結果の正しいクローンを振とうしてプラスミドを抽出する。
具体的な配列の情報は以下のとおりである。
hAAT promoter(-261/+44bp): (NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6829nt-7133nt)
mini-hAAT promoter(-142/+44bp):(NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6948nt-7133nt)
mTTR promoter (NCBI Reference Sequence: NC_000084.6, 1961nt- 2164nt,-203/+1bp), SEQ ID NO. 1
mini-mTTR promoter (NCBI Reference Sequence: NC_000084.6, 2014nt- 2164nt,-150/+1bp),SEQ ID NO. 2
truncated-hAAT hAAT promoter(-142/-62bp):(NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6948nt-7029nt), SEQ ID NO. 3
AAT enhancer(NCBI Reference Sequence: NG_008290.1: 6829nt-6882nt), SEQ ID NO. 4
mTTR enhancer (NCBI Reference Sequence: NC_000084.6, 286nt-405nt, -1878/-1758bp), SEQ ID NO. 5
ATh1 Promoter, SEQ ID NO. 6
ATh2 Promoter, SEQ ID NO. 7
ATh3 Promoter、SEQ ID NO. 8
ATh4 Promoter、SEQ ID NO. 9
ATh5 Promoter、SEQ ID NO. 10
Biomarin-HLP promoter, BIOMARIN社のBMN270フロシェクトにおけるフロモータ、ClinicalTrials.gov number, NCT02576795
SPARK-TTRm (NCBI Reference Sequence: NC_000084.6, 1961nt- 2183nt,-203bp/+20bp),ここで-136bp/-133bp TGTGはGACTApoE enhancerに突然変異(GenBank: U32510.1, 78nt-231nt)
HS-CRM8 enhancer(NCBI Reference Sequence: NM_000295.4, 163 nt- 93nt)
MVM intron(GenBank: NC_001510.1, 2312nt-2403nt)
【0043】
実施例3
様々なプロモータによるmCHERRY蛍光遺伝子の開始効果の比較
実施例2で構築したプロモータ、蛍光タンパク質mCHERRY、及びbGHpolyA AAV発現ベクターを、293 3プラスミドシステムによって上記のプラスミドをAAV2/8血清型ウイルスとしてパッケージングし、ウイルスをPEG8000で沈殿させた後、イオジキサノールを用いて密度勾配超遠心分離によりAAVウイルスを精製した。ウイルスの力価についてRT-PCR及び銀染色により定量化した。
様々なAAVウイルスを同用量3E+13vg/kgで尾静脈注射によりC57マウスの体内に注射し(n=3)、ウイルスを注射してから5週間後、生理食塩水及び4%パラホルムアルデヒドを用いて心臓灌流を行い、心臓、肝臓、脾臓、肺臓、腎臓、脳などを摘出して4%パラホルムアルデヒドで一晩浸漬した後、30%スクロース溶液にて72時間浸漬した。肝臓組織を低温で凍結して切片し、蛍光顕微鏡下で蛍光を観察した。
本発明で組換えを行われたプロモータATh1 Promoter(SEQ ID NO. 6 )及びATh2 Promoter(SEQ ID NO. 7)を、mini-hAATプロモータ、mTTRプロモータ( SEQ ID NO. 1,マウスTTRプロモータ領域)、TBGプロモータ(TBG promoter)、hAATプロモータ、TTRmプロモータ(SPARK社のspark-8011プロジェクトにおいて突然変異したTTRプロモータ、ClinicalTrials.gov number, NCT03003533)、HLPプロモータ(BIOMARIN社のBMN270プロジェクトにおけるプロモータ、ClinicalTrials.gov number, NCT02576795)、TTRe/TTRp プロモータ(マウスTTRエンハンサー領域及びプロモータ領域)、TTRe/TTRp/MVM(マウスTTRエンハンサー領域及びプロモータ領域の後にMVMイントロンを追加)、及びCRM8//TTRp/MVM(マウスTTRプロモータ領域の後にMVMイントロンを追加し、プロモータ領域の前にCRM8強化配列を追加したもの、sangoma社のSB525プロジェクトにおけるプロモータ、ClinicalTrials.gov number, NCT03061201)と、mCHERRY蛍光の比較を行い、肝臓組織でのこれらの開始レベルを比較し、結果を
図3及び
図4に示す。
図3はさまざまなプロモータのマウスの肝臓組織でのmCHERRY蛍光開始効果の比較である。様々な開始させたAAVウイルスを同用量3E+13vg/kgで尾静脈注射によりC57マウスに注射し(n=3)、ウイルスを注射してから5週間後、肝臓組織でのmCHERRY蛍光強度を比較する。曝光時間は10ms 左20 右500とする。
図4は様々なプロモータによるマウスの肝臓組織での開始の場合のmCHERRY蛍光効果の比較である。さまざまなプロモータのAAVウイルスを同用量3E+13vg/kgで尾静脈注射によりC57マウスに注射し(n=3)、ウイルスを注射してから5週間後、肝臓組織でのmCHERRY蛍光強度を比較した。曝光時間は10ms 左20 右4000とした。
図5はさまざまなプロモータによるマウスの肝臓組織での開始の場合のmCHERRY蛍光効果のグレースケール走査図である。graphpadソフトウェアを用いて
図4におけるさまざまなプロモータのマウスの肝臓組織で発現させたmCHERRYの蛍光についてグレースケール走査を行い、走査によるグレースケール値はHLPプロモータの相対強度に対応したものである。
本発明では、mCHERRY蛍光を比較した結果、肝臓組織では、組換えを行ったプロモータATh1 Promoter(SEQ ID NO. 1 )及びATh2 Promoter(SEQ ID NO. 2)は、開始レベルが組換え前のmini-hAATプロモータ及びmTTRプロモータよりもはるかに優れており、また、TBGプロモータ、hAATプロモータ、TTRmプロモータ、HLPプロモータ、TTRe/TTRp プロモータ、TTRe/TTRp/MVM、及びCRM8//TTRp/MVMよりも優れていた。
【0044】
実施例4
さまざまなプロモータによるBDD-FVIII開始の場合のベクターの構築
ATh1、ATh2プロモータに備える強力な肝臓特異的開始レベルが下流に連結される遺伝子による影響を受けるか否か、及びATh1、ATh2の前に発現調節強化エレメント(ATh3、ATh4)を追加することにより目的遺伝子の発現をさらに強化できるか否かについてさらに検討し、また、ATh1-4が大きな外因性遺伝子の発現を開始する場合に、AAVが正常にパッケージングできるか否かを検討するために、本実施例では、上記の実施例2における分子クローニング方法によって、さまざまなプロモータ、BDD-FVIII(B domain deleted FVIII)及びsPolyA発現フレームを、AAVベクターPFD-rAAV-HLP-BDD-FVIII-spolyA(
図2)に構築し、ここでは、PFD-rAAV-HLP-BDD-FVIII-spolyAベクターについて制限エンドヌクレアーゼXhoI及びAscIを用いて二重消化を行うことで、線形化処理を行った。
図2はPFD-rAAV-HLP-BDD-FVIIIopt(WJ)-spolyAベクターの構造概略図である。ここで、ITR(inverted terminal repeat)は長さ145bpの逆方向末端反復配列であり、HLP promoterは、Biomarin社により血友病A治療プロジェクトBMN270に使用されるプロモータ(SEQ ID NO.8)であり、BDD-FVIIIopt(WJ)は、コドンが最適化されたBDD-FVIII(SEQ ID NO.17)であり、polyAはポリアデニルテーリングシグナルであり、Ampはアンピシリン耐性遺伝子リーディングフレームであり、GmRはハイグロマイシン耐性遺伝子リーディングフレームであり、Tn7F/RはTn7トランスポゾンであり、oriはコピー開始部位であり、XhoI、AscIは制限エンドヌクレアーゼ部位である。
図6はさまざまなAAVウイルスSDS-PAGEタンパク質ゲル銀染色図である。さまざまなプロモータ及びFVIII遺伝子発現フレームを担持したAAVウイルスについてポリアクリルアミドゲル電気泳動をした後銀染色を行い、ウイルスの純度及び力価の判断に供した。
図7はRT-PCR方法による各AAVウイルスの力価の測定である。ITRの上流プライマーを用いてさまざまなプロモータでFVIIIを発現させたAAVウイルスについて絶対定量PCRを行い、ウイルスの力価を測定した。銀染色の結果及びRT-PCR定量の結果から見ると、上記のベクターは全て正常にパッケージングできる。
【0045】
実施例5
さまざまなプロモータのFVIII発現レベルの比較
sf9 One-bacシステムを用いて上記の実施例4で構築したプラスミドをAAV2/8血清型ウイルスとしてパッケージングした。さまざまなAAVウイルスを同用量5E+12vg/kgでC57マウス(n=6)の体内に尾静脈注射し、ウイルスを注射してから2、5、8、10週間後、眼窩静脈叢から採血してELISAによりFVIII発現レベルを検出した。使用されるELISA抗体ペアはF8C-EIA(enzyme research laboratories)であり、検量線の作成には緑十字社のヒト凝固因子VIIIが使用され、凝固因子VIIIにはBeyotime Biotechnology社製のBCAタンパク質濃度キット(強化型)(製品番号:P0010S)が使用されて、濃度測定を行った。
図8はC57マウスにおけるさまざまなプロモータのFVIII発現効果の比較である。さまざまなプロモータのAAVウイルスを同用量5E+12vg/kgで尾静脈注射によりC57マウスに注射し(n=6)、ウイルスを注射して2週間、5週間、8週間、10週間後、それぞれマウスの血漿を採取し、ELISAによって血漿中のFVIII含有量を測定した。
検出結果から見ると、全体的には、AAV発現の適時性により、2週目から5週目まで、各プロモータのFVIII発現レベルは増加し、五週目には発現レベルは最高になり、それ以降の2つの時間点では、程度が異なるが、発現量は全て低下する傾向が見られた。
全体的には、各時間点では、ATh1、ATh2、ATh3、ATh4は、FVIII開始能力がSpark社製のTTRm及びBiomarin社製のHLPプロモータよりもはるかに優れており、2週目には、この4つのプロモータのFVIII発現レベルは、TTRmの2~3倍、HLPの10倍以上であり、5週目には、この4つのプロモータのFVIII発現レベルは、TTRmの1.5~2倍、HLPの3~4倍であり、8週目には、この4つのプロモータのFVIII発現レベルは、TTRmの1.3~1.9倍、HLPの1.9~2.6倍であり、10週目には、この4つのプロモータのFVIII発現レベルは、TTRmの1.2~2.1倍、HLPの1.7~3倍であり、この4つのプロモータは、ApoE/TTRp/MVM及びCRM8/TTRp/MVMプロモータよりも、各時間点では、FVIII発現レベルが1~2倍向上し、向上効果がmTTR及びHLPと比較する場合のように顕著ではないが、ATh1、ATh2は、サイズが83~211bpだけ短縮され、パッケージング容量が限られるAAVに例えばFVIIIなどのような大分子が担持される場合には、重要な意義がある。ATh3、ATh4は、ATh1、ATh2と比較すると、いくつかの発現強化エレメントを追加することにより、初期では発現効果には明らかな向上が認められなかったが、10週目では、発現レベルは1.4~1.8倍向上し、発現持続性では優位性がある。
ただし、同じ構築手段により構築された組換えプロモータATh5は、FVIII発現効果が本発明で提案されている他の4本の組換えプロモータよりも明らかに低く、このことから、各発現調節エレメントを組み合わせることにより相乗促進作用が果たされるとは限らず、また、転写因子を互いに競合することもあり、その原因としては、一方では、小さな空間において立体障害効果が存在し、一方の転写因子の結合により他の転写因子の付近部位への進入が阻害され、他方では、異なる転写調節因子同士が、ただ前後の関係だけではなく一定の相互作用を有し、このため、追加的に結合された調節因子により元の相互作用が損なわれ得るためと考えられる。
本発明は、構築した組換えプロモータ及び比較用の他の発現調節エレメントの塩基数を表2に示す。
【表2】
上記の表から分かるように、本発明で提供される組換えプロモータATh1 promoter、及びATh2 promoteは、HLP及びTTRmと類似のサイズ(ATh1, 232bp; ATh2, 284bp; HLP, 252bp; TTRm, 223bp)で、FVIII発現量を1.2~10倍向上させる効果を果たし、ApoE/TTRp/MVM、及びCRM8/TTRp/MVMプロモータに比べて、FVIII発現レベルも1~2倍向上し、一方、サイズは83~211bp短縮される。ATh3、ATh4(ATh3, 286bp; ATh4, 338bp)は、ATh1、ATh2に比べて、長さがわずかに増加するが、FVIIIの効率的な発現の持続時間が延びる。
【0046】
当業者にとって明らかなように、以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の主旨や原則を逸脱することなく行う全ての修正、同等置換や改良などは本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【配列表】