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特許7366279R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用
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  • 特許-R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20231013BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20231013BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20231013BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20231013BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20231013BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20231013BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20231013BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F1/057 130
B22F1/00 Y
B22F3/00 F
B22F9/04 C
B22F9/04 E
C21D6/00 B
C21D9/00 S
C22C33/02 H
C22C38/00 303D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022547175
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2021088321
(87)【国際公開番号】W WO2021218702
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】202010366533.7
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521397223
【氏名又は名称】フージャン チャンティン ゴールデン ドラゴン レア-アース カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(74)【代理人】
【識別番号】100087859
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 秀治
(72)【発明者】
【氏名】藍琴
(72)【発明者】
【氏名】黄佳瑩
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102708(JP,A)
【文献】特開2017-045828(JP,A)
【文献】特開2014-027268(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110993234(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
B22F 1/00
B22F 3/00
B22F 9/04
C21D 6/00
C21D 9/00
C22C 33/02
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
R-T-B系永久磁石材料であって、前記R-T-B系永久磁石材料には、R、B、M、Fe、Co、X及び不可避的不純物を含み、ここで、
(1)前記Rは希土類元素であり、前記Rは、少なくともNd及びRHを含み、
MはTi、Zr及びNbのうちの1種または複数種であり、
XはCu及びGaであり、または、XはCu、Al及びGaであり
(2)前記R-T-B系永久磁石材料において、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
M:0.3~0.6wt%、
X:0.8~1.8wt%、かつ、Cu:0.35~0.50wt%、
残部はFe、Co及び不可避的不純物であ
前記R-T-B系永久磁石材料には、R 相が存在し、ここで、TはFeとCoであり、15at%<a<25at%、2.8at%<b<4.1at%、3.0at%<c<6.0at%、68at%<d<78at%、at%とは、前記R 相における原子パーセントを意味する、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料。
【請求項2】
前記Rの含有量は、30.9~32.0wt%であり、
及び/又は、前記Rには、Prが含まれ、
及び/又は、前記Ndの含有量は、29.5~31.0wt%であり、
及び/又は、前記RHは、Dy及び/又はTbであり、
及び/又は、前記RHの含有量は、0.5~2.0wt%であり、
及び/又は、前記Xの含有量は、0.85~1.8wt%であり、
及び/又は、前記Cuの含有量は、0.4~0.5wt%であり、
及び/又は、前記XがAlを含む場合、前記Alの含有量は、0.3~0.8wt%であり、
及び/又は、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt%であり、
及び/又は、前記Mは、Ti、Zr、Nbまたは「TiおよびZr」であり、
及び/又は、前記Mの含有量は、0.35~0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.3~0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.3~0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.35~0.55wt%であり、
及び/又は、前記Mが
「TiおよびZr」を含む場合、前記Tiの含有量は、0.2wt%であり、前記Zrの含有量は、0.3wt%であり、
及び/又は、前記Coの含有量は、0.5~2.0wt%であり、
及び/又は、前記Bの含有量は、0.96~0.99wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項1に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項3】
前記Rの含有量は、30.9wt%、31.0wt%、31.5wt%又は32.0wt%であり、
及び/又は、前記Ndの含有量は、29.9wt%、30.0wt%、30.2wt%、30.4wt%又は30.8wt%であり、
及び/又は、前記RHの含有量は、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1.2wt%又は1.5wt%であり、
及び/又は、前記RHにTbが含まれる場合、前記Tbの含有量は、0.1~1.0wt%であり、
及び/又は、前記RHにDyが含まれる場合、前記Dyの含有量は、0.1~1.5wt%であり、
及び/又は、前記Xの含有量は、0.85wt%、1.0wt%、1.27wt%、1.37wt%、1.4wt%又は1.8wt%であり、
及び/又は、前記Cuの含有量は、0.4wt%、0.42wt%、0.45wt%又は0.5wt%であり、
及び/又は、前記XがAlを含む場合、前記Alの含有量は、0.3wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%であり、
及び/又は、前記Gaの含有量は、0.2wt%、0.25wt%、0.35wt%又は0.5wt%であり、
及び/又は、前記Mの含有量は、0.35wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%又は0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.3wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%または0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.3wt%、0.4wt%または0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.35wt%、または0.55wt%であり、
及び/又は、前記Coの含有量は、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.5wt%又は2.0wt%であり、
及び/又は、前記Bの含有量は、0.96wt%、0.97wt%、0.98wt%又は0.99wt%である、
ことを特徴とする請求項2に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項4】
前記Xは、下記の成分を含み、
Cu:0.35~0.5wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味し、
または、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味し、
または、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
Nd:29.5~31.0wt%、
RH:0.5~2.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項に記載のR-T-B系永久磁石材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のR-T-B系永久磁石材料の原料組成物であって、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、R、B、M、Fe、Co、X及び不可避的不純物を含み、ここで、
(1)前記Rは希土類元素であり、前記Rは、少なくともNd及びRHを含み、
MはTi、Zr及びNbのうちの1種または複数種であり、
XはCu及びGaであり、または、XはCu、Al及びGaであり
(2)前記R-T-B系永久磁石材料において、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
M:0.3~0.6wt%、
X:0.8~1.8wt%、かつ、Cu:0.35~0.50wt%、
残部はFe、Co及び不可避的不純物である、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料の原料組成物。
【請求項6】
前記Rの含有量は、30.9~32.0wt%であり、
及び/又は、前記Rには、Prが含まれ、
及び/又は、前記Ndの含有量は、29.5~31.0wt%であり、
及び/又は、前記RHは、Dy及び/又はTbであり、
及び/又は、前記RHの含有量は、0.5~2.0wt%であり、
及び/又は、前記RHが溶解製錬工程に添加され、及び粒界拡散工程に導入され、
ここで、前記溶解製錬工程で導入されるRHの含有量は、0.1~1.0wt%であり、前記粒界拡散工程で導入されるRHの含有量は、0.1~1.0wt%であり、
及び/又は、前記Xの含有量は、0.85~1.8wt%であり、
及び/又は、前記Cuの含有量は、0.4~0.5wt%であり、
及び/又は、前記XがAlを含む場合、前記Alの含有量は、0.3~0.8wt%であり、
及び/又は、前記Gaの含有量は、0.2~0.5wt%であり、
及び/又は、前記Mは、Ti、Zr、Nbまたは「TiおよびZr」であり、
及び/又は、前記Mの含有量は、0.35~0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.3~0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.3~0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.35~0.55wt%であり、
及び/又は、前記Mが
「TiおよびZr」を含む場合、前記Tiの含有量は、0.2wt%であり、前記Zrの含有量は、0.3wt%であり、
及び/又は、前記Coの含有量は、0.50~2.0wt%であり、
及び/又は、前記Bの含有量は、0.96~0.99wt%である
ことを特徴とする請求項に記載のR-T-B系永久磁石材料の原料組成物。
【請求項7】
前記Rの含有量は、30.9wt%、31.0wt%、31.5wt%又は32.0wt%であり、
及び/又は、前記Ndの含有量は、29.9wt%、30.0wt%、30.2wt%、30.3wt%又は30.8wt%であり、
及び/又は、前記RHの含有量は、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1.2wt%又は1.5wt%であり、
及び/又は、前記RHにTbが含まれる場合、前記Tbの含有量は、0.1~1.0wt%であり、
及び/又は、前記RHにDyが含まれる場合、前記Dyの含有量は、0.1~1.5wt%であり、
及び/又は、前記溶解製錬工程で導入されるRHの含有量は、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.6wt%、0.7wt%又は1.0wt%であり、
及び/又は、前記粒界拡散工程で導入されるRHの含有量は、0.5wt%であり、
及び/又は、前記Xの含有量は、0.85wt%、1.0wt%、1.27wt%、1.37wt%、1.4wt%又は1.8wt%であり、
及び/又は、前記Cuの含有量は、0.4wt%、0.42wt%、0.45wt%又は0.5wt%であり、
及び/又は、前記XがAlを含む場合、前記Alの含有量は、0.3wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%であり、
及び/又は、前記Gaの含有量は、0.2wt%、0.25wt%、0.35wt%又は0.5wt%であり、
及び/又は、前記Mの含有量は、0.35wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%又は0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.3wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%または0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.3wt%、0.4wt%または0.6wt%であり、
及び/又は、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.35wt%、または0.55wt%であり、
及び/又は、前記Coの含有量は、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.5wt%又は2.0wt%であり、
及び/又は、前記Bの含有量は、0.96wt%、0.97wt%、0.98wt%又は0.99wt%である、
ことを特徴とする請求項6に記載のR-T-B系永久磁石材料の原料組成物。
【請求項8】
前記Xは、下記の成分を含み、
Cu:0.35~0.5wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味し、
または、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味し、
または、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記の成分を含み、
Nd:29.5~31.0wt%、
RH:0.5~2.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する、
ことを特徴とする請求項に記載のR-T-B系永久磁石材料の原料組成物。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法であって、前記R-T-B系永久磁石材料の製造方法は下記のステップを含み:請求項に記載のR-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結、粒界拡散処理して、前記R-T-B系永久磁石材料を得る、
ことを特徴とするR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【請求項10】
前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を下記の方法により製造し、すなわち、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬し、前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであり、前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であり
及び/又は、前記鋳造の工程は、以下のステップに従って行われ、すなわち、Arガス雰囲気において、10℃/秒~10℃/秒の速度で冷却し
及び/又は、前記破砕の工程は、以下のステップに従って行われ、すなわち、水素吸収、脱水素、冷却処理を経り、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行い、前記粉砕は、ジェットミル粉砕であり、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaであり、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間であり
及び/又は、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法であり、
及び/又は、下記のステップに従って行われ、すなわち、真空条件下で予熱、焼結、冷却を経り、前記予熱の温度は、300~600℃であり、前記予熱の時間は、1~2hであり、前記焼結の温度は、900℃~1100℃であり、前記焼結の時間は、6hであり
及び/又は、前記粒界拡散処理は、以下のステップに従って行われ、すなわち、前記R-T-B系永久磁石材料の表面に、Tbを含有する物質および/またはDyを含有する物質を蒸着、塗布、またはスパッタ付着させて、拡散熱処理し、前記Tbを含有する物質は、Tb金属、Tbを含有する化合物または合金であり、前記Dyを含有する物質は、Dy金属、Dyを含有する化合物または合金であり、前記拡散熱処理の温度は、800~900℃であり、前記拡散熱処理の時間は、12~48hであり、
及び/又は、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行い、
前記熱処理の温度は、450~550℃であり、前記熱処理の時間は、3hである、
ことを特徴とする請求項に記載のR-T-B系永久磁石材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
R-T-B系焼結磁石については、焼結密度を高めて磁石の残留磁束密度(Br)を向上させるために、通常、焼結温度を上げたり、焼結時間を長くしたりする方法が用いられる。しかし、焼結温度を上げると結晶粒が異常に成長しやすくなり、磁石の保磁力(Hcj)が低下してしまう。特開昭61-295355号公報及び特開2002-75717号公報には、Ti、Zr等を添加してホウ化物を生成する元素が開示されており、ホウ化物を粒界に析出させることにより結晶粒の異常成長を抑制し、保磁力の低下を回避できると共に、焼結密度を高めることができる。しかしながら、CN200480001869にも、焼結磁石に磁力を有しないホウ化物相が存在するため、主相(R14B型化合物)の体積比が低下し、その結果、残留磁束密度が低下してしまい、当該発明によれば、ホウ化物相を生成しないことにより、保磁力の低下を抑制し、かつ、残留磁束密度を向上させるという内容が記載されている。
【0003】
従来技術では、磁石の残留磁束密度を向上させるには、ホウ化物が生成されたか否かに重点を置いているが、現在、ホウ化物の機能に関する明確な結論がないため、異なる文献において、反対の技術的効果の結論が引き出されている。
【0004】
したがって、如何にして保磁力を確保することに基づいて、磁石の残留磁束密度を向上させるかは、本分野において早急に解決しなければならない技術的課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来のR-T-B系焼結磁石における残留磁束密度の上昇によって引き起こされた保磁力の低下という欠点を解決し、R-T-B系永久磁石材料、製造方法、並びに応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来技術の欠陥を解消するように、含有量が高い高融点金属のR-T-B系焼結磁石を提供し、特定の含有量のR、B、M(Ti、Zr及びNbのうちの1種または複数種)、X(XはCu、「Alおよび/またはGa」を含む)値を選択し、主相の体積比を確保することを前提に、焼結温度を上げて密度を高め、磁石に高い残留磁束密度を持たせ、特別な成分のR(TはFeおよびCoである)相を形成することにより、より高い保磁力を得る。
【0007】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料が提供され、それは、R、B、M、Fe、Co、X及び不可避的不純物を含み、ここで、
(1)前記Rは希土類元素であり、前記Rは、少なくともNd及びRHを含み、
MはTi、Zr及びNbのうちの1種または複数種であり、
Xは、Cu、「Alおよび/またはGa」を含み、
(2)前記R-T-B系永久磁石材料において、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
M:0.3~0.6wt%、
X:0.8~1.8wt%、かつ、Cu:0.35~0.50wt%、
残部はFe、Co及び不可避的不純物である。
【0008】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは30.9~32.0wt%であり、例えば、30.9wt%、31.0wt%、31.5wt%又は32.0wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0009】
本発明において、前記Rには、当技術分野における従来の他の軽希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0010】
前記Rにおける軽希土類元素がPrNdである場合、前記PrNdにおけるPr、Ndの質量比を25:75とすることができる。
【0011】
本発明において、前記Ndの含有量は、好ましくは29.5~31.0wt%であり、例えば、29.9wt%、30.0wt%、30.2wt%、30.4wt%又は30.8wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0012】
前記Rにおける軽希土類元素がPrNdである場合、前記PrNdの含有量は、30.0~30.5wt%であることができ、例えば、30.2wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0013】
本発明において、前記RHは、本分野における通常の重希土類元素、例えばDy及び/又はTbである。
【0014】
本発明において、前記RHの含有量は、好ましくは0.5~2.0wt%であり、例えば、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1.2wt%又は1.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0015】
前記RHにTbが含まれる場合、好ましくは、前記Tbの含有量は、0.1~1.0wt%であり、例えば、0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0016】
前記RHにDyが含まれる場合、好ましくは、前記Dyの含有量は、0.1~1.5wt%であり、例えば、0.1wt%、0.2wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1.2wt%又は1.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記XはCu、AlおよびGaを含む。
【0018】
本発明において、前記Xの含有量は、好ましくは0.85~1.8wt%であり、例えば、0.85wt%、1.0wt%、1.27wt%、1.37wt%、1.4wt%又は1.8wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0019】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.4~0.5wt%であり、例えば、0.4wt%、0.42wt%、0.45wt%又は0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0020】
前記XがAlを含む場合、前記Alの含有量は、好ましくは、0.3~0.8wt%であり、例えば、0.3wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0021】
前記XがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、好ましくは、0.2~0.5wt%であり、例えば、0.2wt%、0.25wt%、0.35wt%又は0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0022】
本発明において、好ましくは、前記Xは、下記の成分を含み、
Cu:0.35~0.5wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0023】
本発明において、好ましくは、前記Mは、Ti、Zr、Nbまたは「TiおよびZr」である。
【0024】
本発明において、前記Mの含有量は、好ましくは0.35~0.6wt%であり、例えば、0.35wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%、0.6wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0025】
本発明において、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.3~0.6wt%であることができ、例えば、0.3wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%または0.6wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0026】
本発明において、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.3~0.6wt%であることができ、例えば、0.3wt%、0.4wt%または0.6wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0027】
本発明において、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.35~0.55wt%であることができ、例えば、0.35wt%、または0.55wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0028】
本発明において、前記Mが「TiおよびZr」を含む場合、前記Tiの含有量は、0.2wt%であることができ、前記Zrの含有量は、0.3wt%であることができ、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0029】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.5~2.0wt%であり、例えば、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.5wt%又は2.0wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0030】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.96~0.99wt%であり、例えば、0.96wt%、0.97wt%、0.98wt%又は0.99wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0031】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであるり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0032】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
Nd:29.5~31.0wt%、
RH:0.5~2.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料における質量百分率を意味する。
【0033】
本発明の好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記番号1~11のいずれかとすることができる(wt%)。
【0034】
本発明において、好ましくは、前記R-T-B系永久磁石材料には、R相が存在し、ここで、TはFeとCoであり、15at%<a<25at%、2.8at%<b<4.1at%、3.0at%<c<6.0at%、68at%<d<78at%、at%とは、前記R相における原子パーセントを意味する。この相の存在により、R-T-B系永久磁石材料の保磁力を効果的に向上させることができる。
【0035】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料の原料組成物がさらに提供され、それは、R、B、M、Fe、Co、X及び不可避的不純物を含み、ここで、
(1)前記Rは希土類元素であり、前記Rは、少なくともNd及びRHを含み、
MはTi、Zr及びNbのうちの1種または複数種であり、
Xは、Cu、「Alおよび/またはGa」を含み、
(2)前記R-T-B系永久磁石材料において、質量百分率で下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
M:0.3~0.6wt%、
X:0.8~1.8wt%、かつ、Cu:0.35~0.50wt%、
残部はFe、Co及び不可避的不純物である。
【0036】
本発明において、前記Rの含有量は、好ましくは30.9~32.0wt%であり、例えば、30.9wt%、31.0wt%、31.5wt%又は32.0wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0037】
本発明において、前記Rには、当技術分野における従来の他の軽希土類元素が含まれてもよく、例えば、Prが含まれる。
【0038】
前記Rにおける軽希土類元素がPrNdである場合、前記PrNdにおけるPr、Ndの質量比を25:75とすることができる。
【0039】
本発明において、前記Ndの含有量は、好ましくは29.5~31.0wt%であり、例えば、29.9wt%、30.0wt%、30.2wt%、30.3wt%又は30.8wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0040】
前記Rにおける軽希土類元素がPrNdである場合、前記PrNdの含有量は、30.0~30.5wt%であることができ、例えば、30.2wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0041】
本発明において、前記RHは、本分野における通常の重希土類元素、例えばDy及び/又はTbである。
【0042】
本発明において、前記RHの含有量は、好ましくは0.5~2.0wt%であり、例えば、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1.2wt%又は1.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0043】
前記RHにTbが含まれる場合、好ましくは、前記Tbの含有量は、0.1~1.0wt%であり、例えば、0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0044】
前記RHにDyが含まれる場合、好ましくは、前記Dyの含有量は、0.1~1.5wt%であり、例えば、0.1wt%、0.2wt%、0.6wt%、0.7wt%、0.8wt%、1.2wt%又は1.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0045】
当業者なら分かるように、前記RHが溶解製錬工程に添加されてもよいし、粒界拡散工程に導入されてもよい。
【0046】
ここで、前記溶解製錬工程で導入されるRHの含有量は、0.1~1.0wt%とすることができ、例えば、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.6wt%、0.7wt%又は1.0wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0047】
ここで、前記粒界拡散工程で導入されるRHの含有量は、0.1~1.0wt%とすることができ、例えば、0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0048】
本発明において、好ましくは、前記XはCu、AlおよびGaを含む。
【0049】
本発明において、前記Xの含有量は、好ましくは0.85~1.8wt%であり、例えば、0.85wt%、1.0wt%、1.27wt%、1.37wt%、1.4wt%又は1.8wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0050】
本発明において、前記Cuの含有量は、好ましくは0.4~0.5wt%であり、例えば、0.4wt%、0.42wt%、0.45wt%又は0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0051】
前記XがAlを含む場合、前記Alの含有量は、好ましくは、0.3~0.8wt%であり、例えば、0.3wt%、0.4wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0052】
前記XがGaを含む場合、前記Gaの含有量は、好ましくは、0.2~0.5wt%であり、例えば、0.2wt%、0.25wt%、0.35wt%又は0.5wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0053】
本発明において、好ましくは、前記Xは、下記の成分を含み、
Cu:0.35~0.5wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0054】
本発明において、好ましくは、前記Mは、Ti、Zr、Nbまたは「TiおよびZr」である。
【0055】
本発明において、前記Mの含有量は、好ましくは0.35~0.6wt%であり、例えば、0.35wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%、0.6wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0056】
本発明において、前記MがTiを含む場合、前記Tiの含有量は、0.3~0.6wt%であることができ、例えば、0.3wt%、0.4wt%、0.45wt%、0.5wt%、0.55wt%または0.6wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0057】
本発明において、前記MがZrを含む場合、前記Zrの含有量は、0.3~0.6wt%であることができ、例えば、0.3wt%、0.4wt%または0.6wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0058】
本発明において、前記MがNbを含む場合、前記Nbの含有量は、0.35~0.55wt%であることができ、例えば、0.35wt%、または0.55wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0059】
本発明において、前記Mが「TiおよびZr」を含む場合、前記Tiの含有量は、0.2wt%であることができ、前記Zrの含有量は、0.3wt%であることができ、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0060】
本発明において、前記Coの含有量は、好ましくは0.50~2.0wt%であり、例えば、0.8wt%、1.0wt%、1.2wt%、1.5wt%又は2.0wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0061】
本発明において、前記Bの含有量は、好ましくは0.96~0.99wt%であり、例えば、0.96wt%、0.97wt%、0.98wt%又は0.99wt%であり、パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0062】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
R:30.5~32.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0063】
本発明の一つの好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料は、下記の成分を含み、
Nd:29.5~31.0wt%、
RH:0.5~2.0wt%、
B:0.95~0.99wt%、
Ti:0.3~0.6wt%、又はZr:0.3~0.6wt%、又はNb:0.35~0.55wt%、
Cu:0.35~0.50wt%、
Al:0.3~0.8wt%、
Ga:0.2~0.5wt%、
Co:0.8~2.0wt%、
残部がFeであり、
パーセントとは、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物における質量百分率を意味する。
【0064】
本発明の好ましい態様において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物は、下記番号1~11のいずれかとすることができる(wt%)。
【0065】
本発明には、R-T-B系永久磁石材料の製造方法がさらに提供され、下記のステップを含み:前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を鋳造、破砕、粉砕、成形、焼結、粒界拡散処理して、前記R-T-B系永久磁石材料を得る。
【0066】
本発明において、前記R-T-B系永久磁石材料の原料組成物の溶融液を本分野における通常の方法で製造することができ、例えば、高周波真空誘導溶解炉で溶解製錬すれば良い。前記溶解炉の真空度は、5×10-2Paであってもよい。前記溶解製錬の温度は、1500℃以下であってもよい。
【0067】
ここで、前記鋳造の工程は、本分野における通常の鋳造工程であることができ、例えば、Arガス雰囲気(例えば5.5×10PaのArガス雰囲気下)において、10℃/秒~10℃/秒の速度で冷却すればよい。
【0068】
本発明において、前記破砕の工程は、本分野における通常の破砕工程であることができ、例えば、水素吸収、脱水素、冷却処理を経ていればよい。
【0069】
ここで、前記水素吸収は、水素ガス圧力0.15MPaの条件下で行うことができる。
【0070】
ここで、前記脱水素は、真空引きしながら昇温する条件で行うことができる。
【0071】
本発明において、前記粉砕の工程は、本分野における通常の粉砕工程であることができ、例えば、ジェットミル粉砕である。
【0072】
ここで、前記ジェットミル粉砕は、酸化ガス含有量が150ppm以下の窒素ガス雰囲気下で行うことができる。前記酸化ガスは、酸素または水分の含有量を意味する。
【0073】
ここで、前記ジェットミル粉砕の粉砕室圧力は、0.38MPaとすることができる。
【0074】
ここで、前記ジェットミル粉砕の時間は、3時間とすることができる。
【0075】
ここで、前記粉砕を行った後、本分野における常套手段で潤滑剤を添加することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛を添加する。前記潤滑剤の添加量は、混合後の粉末重量の0.10~0.15%、例えば0.12%とすることができる。
【0076】
本発明において、前記成形の工程は、本分野における通常の成形工程であることができ、例えば、磁場成形法またはホットプレス熱間成形法である。
【0077】
本発明において、前記焼結の工程は、本分野における通常の焼結工程であることができ、例えば、真空条件下(例えば5×10-3Paの真空下)で、予熱、焼結、冷却を経ていればよい。
【0078】
ここで、前記予熱の温度は、300~600℃であってもよい。前記予熱の時間は、1~2hとすることができる。前記予熱は、300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間予熱することが好ましい。
【0079】
ここで、前記焼結の温度は、本分野における通常の焼結温度、例えば900℃~1100℃、さらには例えば1040℃とすることができる。
【0080】
ここで、前記焼結の時間は、本分野における通常の焼結時間、例えば6hとすることができる。
【0081】
ここで、前記冷却の前に、ガス圧が0.1MPaに達するようにArガスを導入することができる。
【0082】
ここで、前記粒界拡散処理は、本分野における通常の工程で処理を行うことができ、例えば、前記R-T-B系永久磁石材料の表面に、Tbを含有する物質および/またはDyを含有する物質を蒸着、塗布、またはスパッタ付着させて、拡散熱処理すればよい。
【0083】
ここで、前記Tbを含有する物質は、Tb金属、Tbを含有する化合物または合金であってもよく、例えば、TbFである。
【0084】
ここで、前記Dyを含有する物質は、Dy金属、Dyを含有する化合物または合金であってもよく、例えば、DyFである。
【0085】
ここで、前記拡散熱処理の温度は、800~900℃、例えば850℃であってもよい。
【0086】
ここで、前記拡散熱処理の時間は、12~48h、例えば24hであってもよい。
【0087】
ここで、前記粒界拡散処理の後に、さらに熱処理を行うことができる。前記熱処理の温度は、450~550℃、例えば500℃とすることができる。前記熱処理の時間は、3hとすることができる。
【0088】
本発明は、前記方法で製造されたR-T-B系永久磁石材料も提供する。
【0089】
本発明は、前記R-T-B系永久磁石材料がモーターにおいて電子部品としての応用をも提供する。
【0090】
そのうち、前記応用は、高回転モーターおよび/または家電製品において電子部品として使用することであってもよい。
【0091】
本発明において、Ndはネオジムであり、Prはプラセオジムであり、RHは重希土類元素であり、Tbはテルビウムであり、Dyはジスプロシウムであり、Feは鉄であり、Coはコバルトであり、Bはホウ素であり、Alはアルミニウムであり、Cuは銅であり、Nbはニオブであり、Niはニッケルであり、Znは亜鉛であり、Gaはガリウムであり、Agは銀であり、Inはインジウムであり、Snはスズであり、Biはビスマスであり、Tiはチタンであり、Vはバナジウムであり、Crはクロムであり、Zrはジルコニウムであり、Moはモリブデンであり、Hfはハフニウムであり、Taはタンタルであり、Wはタングステンであり、Mnはマンガンであり、Cは炭素であり、Oは酸素であり、Nは窒素である。
【0092】
本分野の周知常識に準拠したうえで、上記の各々の好ましい条件を任意に組み合わせることによって、本発明の各々の好適な実施例を得ることができる。
【0093】
本発明に使用されている試薬および原料は、いずれも市販されている。
【発明の効果】
【0094】
本発明の積極的な進歩的効果は、以下の点にある。
(1)本発明におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れ、Br≧13.09kGs、Hcj≧25.2kOeであり、BrとHcjの同時改善を達成した。
(2)通常の成分と比べて、本発明におけるR-T-B系永久磁石材料における高融点金属の含有量がより高く、含有量が高い高融点金属によりR相を形成することができ、通常の高融点金属の含有量が高くなることに起因して磁石特性が悪化してしまうことを克服し、R-T-B系磁石の焼結性を向上させ、Hcjは通常の成分と同等であり、かつ、磁石の角型比を効果的に改良する。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1図1は、実施例1で作製した焼結磁石をFE-EPMAで面走査することによって形成したNd、Ti、Ga及びCu分布図であり、ここで、矢印マークはR相である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下、実施例の態様により本発明をさらに説明するが、本発明を実施例の範囲に制限するものではない。以下の実施例において、具体的な条件が明記されない実験方法は、通常の方法及び条件に従って、または商品仕様書に応じて選択される。
【0097】
実施例および比較例におけるR-T-B系焼結磁石の成分を表1に示す。
【0098】
表1
注:PrNdのうち、Pr:Nd=25:75(質量比)であり、溶解製錬は、工程ステップ(1)に導入されるものであり、拡散は、工程ステップ(8)に導入されるものであり、XとはCu、Al及びGaの含有量の合計を指し、「/」は、当該元素が添加されていないことを表す。
【0099】
R-T-B系焼結磁石の製造方法は、以下の通りである。
(1)溶解製錬の工程:表1に示す成分に従って、調製した原料をアルミナ製の坩堝に入れ、高周波真空誘導溶解炉において5×10-2Paの真空中で1500℃以下の温度で真空溶解製錬した。
(2)鋳造の工程:真空溶解製錬した後の溶解炉にArガスを導入し、気圧を5.5万Paにした後に鋳造し、10℃/秒~10℃/秒の冷却速度で急冷合金を得る。
(3)水素破砕工程:急冷合金を置く水素化粉砕用炉を室温で真空引きした後、純度99.9%の水素ガスを水素破砕用炉内に導入して水素ガス圧力を0.15MPaに維持する。水素吸収を十分に行った後、真空引きしながら昇温し、十分に脱水素する。その後、冷却し、水素破砕した粉末を取り出す。
(4)微粉砕工程:水素破砕した粉末を、酸化ガス含有量150ppm以下の窒素ガス雰囲気下及び粉砕室圧力0.38MPaの条件下で3時間のジェットミル粉砕し、微粉を得る。酸化ガスは、酸素または水分を指す。
(5)ジェットミル粉砕した後の粉末にステアリン酸亜鉛を添加し、ステアリン酸亜鉛の添加量を混合後の粉末重量の0.12%として、Vブレンダーで十分に混合した。
(6)磁場成形の工程:上記のステアリン酸亜鉛を添加した粉末を、直角配向型の磁場成形機を用いて、1.6Tの配向磁場中及び0.35ton/cmの成形圧力で、一辺が25mmの立方体に一次成形し、一次成形後、0.2Tの磁場で減磁する。一次成形後の成形体を空気に触れさせないように、それをシールし、その後、二次成形機(静水圧成形機)を用いて、1.3ton/cmの圧力で二次成形を行う。
(7)焼結の工程:各成形体を焼結炉に搬送して焼結し、5×10-3Paの真空下かつ300℃および600℃の温度でそれぞれ1時間を保持し、その後、1040℃の温度で6時間焼結してから、Arガスを導入して0.1MPaまでガス圧を到達させた後、室温まで冷却した。
(8)粒界拡散処理の工程:各組の焼結体を直径20mm、厚さ5mmの磁石に加工し、厚さ方向を磁場配向方向とし、表面を清浄化した後、それぞれTbF又はDyFによる調製された原料を用いて、磁石に全面噴霧してコーティングし、コーティングした磁石を乾燥し、高純度のArガス雰囲気で、850℃の温度で24時間拡散熱処理する。室温まで冷却された。ここで、
【0100】
実施例2、実施例3及び実施例6において、TbF3をスプレー塗布し、他の実施例及び比較例において、DyF3をスプレー塗布する。
【0101】
(9)熱処理の工程:焼結体を高純度のArガスにおいて500℃で3時間の熱処理を行った後、室温まで冷却して取り出した。
【0102】
(実施例の効果)
実施例1~11、比較例1~10で得られたR-T-B系焼結磁石の磁気特性および成分を測定し、その磁性体の結晶構造をFE-EPMAで観察した。
【0103】
(1)成分の測定:各成分に対して、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)を用いて測定した。以下の表2に示すのは、成分検出の結果である。
【0104】
表2
【0105】
(2)磁気特性の評価:焼結磁石は、中国計量院のNIM-10000H型BH大塊希土類永久磁石非破壊測定システムを用いて磁気特性検出を行った。以下の表3は、磁気特性検出の結果を示している。
【0106】
表3
【0107】
表3から分かるように、
(1)本願におけるR-T-B系永久磁石材料は、性能が優れ、Br≧13.09kGs、Hcj≧25.2kOeである(実施例1-1)。
(2)本願の成分に基づいて、原料M、X、Cu、R及びBの使用量が変化し、R-T-B永久磁石材料の性能が著しく低下し、本願の性能を実現できない(比較例1-10)。
【0108】
FE-EPMAによる検出:焼結磁石の垂直配向面を研磨し、電界放出電子プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA)(日本電子株式会社(JEOL)、8530F)で検出した。まず、FE-EPMAで面走査することにより、磁石におけるR、Fe、Co、Ti、Nb、Zr、B、Al、Cu及びGa等の元素の分布を特定し、その後、FE-EPMAで単一点(シングルポイント)定量分析することにより、R-M-X-T相におけるR、Fe、Co、Al、Cu、Ga、Ti、Nb及びZr等の元素の含有量を特定する。試験条件は、加速電圧15kv、プローブビーム50nAであった。
【0109】
実施例1で得られた永久磁石材料は、FE-EPMAによって検出され、その結果は、以下の表4に示す通りである。
【0110】
表4は、図1における当該R-M-X-Tリッチ相をFE-EPMAで単一点定量分析した結果である。表4から分かるように、このR-M-X-Tリッチ相において、Rはほぼ19.98at%であり、Mはほぼ3.03at%であり、Xはほぼ5.46at%であり、Tはほぼ71.54at%である。
【0111】
表4

図1