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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/412 20200101AFI20231013BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20231013BHJP
   B62K 21/00 20060101ALI20231013BHJP
   B62M 7/12 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
B62J45/412
B62J45/415
B62K21/00
B62M7/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022550590
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2021033959
(87)【国際公開番号】W WO2022059714
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-10-18
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/035200
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 道治
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-172586(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082240(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/086176(WO,A1)
【文献】特開2013-212232(JP,A)
【文献】特開2014-184934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/412
B62J 45/415
B62K 21/00
B62M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームに対して操舵軸線回りに回転可能で且つフロント車軸線回りに回転可能で且つトレール長が固定されるように支持された1つの前輪と、
前記車体フレームに対してリア車軸線回りに回転可能に支持された1つの後輪と、
前記車体フレームの車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角であるリーン角に関連する情報を検出するリーン角関連情報検出装置と、
前記前輪の前記操舵軸線回りの回転角度である操舵角に関連する情報を検出する操舵角関連情報検出装置と、
前記前輪または前記後輪の回転速度に関連する情報を検出する車輪回転速度関連情報検出装置と、
前記前輪および前記後輪の少なくとも一方を前記フロント車軸線および前記リア車軸線の少なくとも一方の車軸線回りに正方向および逆方向に回転させる駆動力を、前記前輪および前記後輪の前記少なくとも一方に付与する駆動力付与装置と、
前記前輪を前記操舵軸線回りに回転させる操舵力を、前記前輪に付与する操舵力付与装置と、
前記車体フレームを自立させるための制御を行う自立制御装置と、
を備える二輪車であって、
前記自立制御装置は、少なくとも前記二輪車の停止状態および前記二輪車の前記停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、
前記車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両右方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させ、
前記車体フレームが車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両左方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させることを特徴とする二輪車。
【請求項2】
前記自立制御装置は、
前記二輪車の前記低速度走行状態から前記停止状態に移行するまでの状態において、
前記車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両右方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させ、
前記車体フレームが車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両左方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の二輪車。
【請求項3】
前記自立制御装置は、
前記二輪車の前記低速走行状態において、
前記車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両右方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させ、
前記車体フレームが車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両左方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の二輪車。
【請求項4】
前記自立制御装置は、
前記操舵角に関連する情報および前記回転速度に関連する情報を関連付けた操舵角車輪回転速度関連情報を予め記憶し、
少なくとも前記二輪車の前記停止状態および前記二輪車の前記停止状態から前記低速度走行状態に移行するまでの状態において、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報と、予め記憶された前記操舵角車輪回転速度関連情報と、に基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の二輪車。
【請求項5】
前記操舵角に関連する情報は、前記前輪の操舵角、前記前輪の操舵角速度、および前記前輪の操舵角加速度の少なくとも1つを含み、
前記回転速度に関連する情報は、前記前輪の回転速度、前記前輪の回転加速度、前記前輪の回転角度、前記後輪の回転速度、前記後輪の回転加速度、前記後輪の回転角度、前記二輪車の車速および前記二輪車の車両前後方向の加速度の少なくとも1つを含み、
前記リーン角に関連する情報は、前記車体フレームのリーン角、前記車体フレームのリーン角速度、および前記車体フレームのリーン角加速度の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立制御装置を有する二輪車(two-wheeled vehicle)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ライダーの操縦負荷を軽減するため、車体フレームを自立させるための制御を行う自立制御装置を有する二輪車がある。例えば、特許文献1では、二輪車が駐車状態のとき、車体リーン角と前輪操舵角を取得して前輪駆動トルクを算出して、前輪駆動トルクを前輪回転モータードライバーに出力することで、二輪車の車体フレームを自立させている。
【0003】
また、非特許文献1は、直進を仮定した走行中の二輪車の自立安定性について開示している。非特許文献1では、前後運動の運動方程式と横運動の運動方程式とに基づいて、二輪車の自立安定性を解析している。前後運動の運動方程式は、車重と車輪の慣性モーメントを用いて、車両に加わる駆動力および制動力と空気抵抗から車両の加速度を算出する。横運動の運動方程式は、車速、車両および前後輪の重量、慣性モーメント、重心位置、ホイールベース、トレール長(キャスタートレール長)、クラウン半径、ニューマチックトレール長を用いて、操舵角加速度、リーン角加速度を算出する。
【0004】
また、非特許文献2は、走行中の二輪車の自立安定性について開示している。非特許文献2では、車速および旋回半径が一定の場合の二輪車の自立安定性を解析している。非特許文献2では、横方向の運動方程式とヨーイング方向の運動方程式とローリング方向の運動方程式に基づいて、二輪車の自立安定性を解析している。これらの運動方程式では、操舵角および車速から算出したロール角に基づいて、目標ロール角になるように操舵力を制御する。また、目標車速になるように後輪の駆動力をフィードバック制御する。
【0005】
また、特許文献2に、停車時に車体フレームの姿勢の安定性を高める二輪車が開示されている。特許文献2の二輪車は、トレール長を変更させるトレール長変更用アクチュエータ、前輪を回転駆動させる走行用アクチュエータ、および前輪に操舵力を付与する操舵用アクチュエータを有する。また、特許文献2の二輪車は、車体フレームを自立させるための姿勢制御を行うバランススイッチおよびライダーの操作に応じた走行駆動制御を行う走行駆動スイッチを有する。特許文献2の二輪車は、バランススイッチおよび走行駆動スイッチをオンオフすることで切り換えられる4つのモードを有する。バランス駆動モードは、バランススイッチがオンで走行駆動スイッチがオンである。バランス駆動フリーモードでは、バランススイッチがオンで走行駆動スイッチがオフである。バランスレス駆動モードは、バランススイッチがオフで走行駆動スイッチがオンである。バランスレス駆動フリーモードは、バランススイッチがオフで走行駆動スイッチがオフである。バランススイッチがオンのモード(バランス駆動モードおよびバランス駆動フリーモード)では、車体フレームのロール方向の姿勢を自律的に安定化するように、操舵用アクチュエータの操舵力が制御されるとともに、トレール長変更用アクチュエータによりトレール長が制御される。バランススイッチがオフのモード(バランスレス駆動モードおよびバランスレス駆動フリーモード)では、操舵クラッチがオフで、トレール長変更用アクチュエータがオフであり、操舵力もトレール長も制御されない。走行駆動スイッチがオンのモード(バランス駆動モードおよびバランスレス駆動モード)では、運転者のアクセル操作量および/またはブレーキ操作量に基づいて決定された目標車速に応じて走行用アクチュエータが制御される。走行駆動スイッチがオフのモード(バランス駆動フリーモードおよびバランスレス駆動フリーモード)では、走行用アクチュエータがオフであり、ライダーは操縦ハンドル(ステアリング)を把持して前輪および後輪を転動させることで二輪車を移動させることができる。
【0006】
また、特許文献3に、車体を車両の左右方向に傾斜させるモーメン卜を制御する車体傾斜制御モードを有する二輪車が開示されている。特許文献3の二輪車は、前輪と後輪を正方向と逆方向に回転させる2つのモータを有する。特許文献3の二輪車は、車両が3km/h以下の速度で走行しており、且つ、操舵角が所定角以上の時に車体傾斜制御モードに移行する。車体傾斜制御モードでは、車体フレームが左右方向に傾斜した場合、前輪と後輪の両方を回転させることによって車体フレームが起き上がるように駆動力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第107562067号明細書
【文献】特開2014-172586号公報
【文献】国際公開第2017/082240号
【非特許文献】
【0008】
【文献】J. P. Meijaard1 and A. L. Schwab著,"LINEARIZED EQUATIONS FOR AN EXTENDED BICYCLE MODEL",III European Conference on Computational Mechanics(第3回ヨーロッパ計算力学会議),2006年6月5~9日
【文献】佐口太一,吉田和夫,高橋正樹著,自律走行自転車ロボットの安定化走行制御,日本機械学会論文集(C編)73巻731号,2007年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、二輪車が駐車状態のときに、前輪回転モータードライバーを制御することにより、二輪車を自立させるものであり、二輪車が低速度で走行している低速走行状態のときに二輪車を自立させるものではない。また、非特許文献1、2は、走行中の二輪車の自立安定性について解析しており、二輪車が走行していない非走行状態ときの自立安定性は対象としていない。
【0010】
また、特許文献2の二輪車は、バランススイッチがオンのモード(バランス駆動フリーモードとバランス駆動モード)では、操舵用アクチュエータの操舵力およびトレール長変更用アクチュエータでトレール長を制御することで、車体フレームを自立させるものである。つまり、特許文献3の二輪車は、姿勢制御に、車体フレームを自立させるために駆動力を用いていない。なお、走行駆動スイッチがオンのモード(バランス駆動モードとバランスレス駆動モード)では、リーン角と操舵角と回転速度に関連する情報に基づかず、運転者のアクセル操作および/またはブレーキ操作に基づいて、駆動力が制御される。
【0011】
また、特許文献3の二輪車は、操舵力を前輪に付与する操舵力付与装置を有さない。特許文献3の二輪車は、車体傾斜制御モードにおいて、前輪に作用する駆動力の分力が、重心による力と相殺するように前輪の駆動力の回転方向を決める。つまり、特許文献3の二輪車は、車体傾斜制御モードにおいて、車体フレームが車両右方向に傾斜した場合に前輪を傾斜方向と逆方向である左方向に移動させ、車体フレームが車両左方向の傾斜した場合に前輪を傾斜方向と逆方向である右方向に移動させ、且つ、車両が前後に移動しないように後輪に駆動力を決める。
【0012】
さらに、いずれの文献も、停止状態から低速度走行状態までの状態における二輪車の自立のための制御は開示していない。
【0013】
本発明は、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態において、車体フレームが自立するように制御することができる自立制御装置を有する二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者らは、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、自立制御装置で車体フレームを自立させることを検討した。そして、本願発明者らは、二輪車の車輪の回転速度(前輪または後輪の角速度)が車速(二輪車の車両前後方向の速度)に比例すると仮定すると、二輪車のヨーレート(遠心力)は、車速および操舵角に比例することを見出した。そして、本願発明者らは、二輪車の停止状態だけでなく、二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、二輪車の車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した場合、駆動力と操舵力を制御することにより、ヨーレート(遠心力)を制御して、車体フレームを起き上がらせて、車体フレームのリーン角を0とし、車体フレームを自立させることができることを見出した。これにより、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、ライダーの操縦負担がより軽減できる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る二輪車は、以下の構成を有する。
二輪車は、車体フレームと、前記車体フレームに対して操舵軸線回りに回転可能で且つフロント車軸線回りに回転可能に且つトレール長が固定されるように支持された1つの前輪と、前記車体フレームに対してリア車軸線回りに回転可能に支持された1つの後輪と、前記車体フレームの車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角であるリーン角に関連する情報を検出するリーン角関連情報検出装置と、前記前輪の前記操舵軸線回りの回転角度である操舵角に関連する情報を検出する操舵角関連情報検出装置と、前記前輪または前記後輪の回転速度に関連する情報を検出する車輪回転速度関連情報検出装置と、前記前輪および前記後輪の少なくとも一方を前記フロント車軸線および前記リア車軸線の少なくとも一方の車軸線回りに正方向および逆方向に回転させる駆動力を、前記前輪および前記後輪の前記少なくとも一方に付与する駆動力付与装置と、前記前輪を前記操舵軸線回りに回転させる操舵力を、前記前輪に付与する操舵力付与装置と、前記車体フレームを自立させるための制御を行う自立制御装置と、を備える二輪車であって、前記自立制御装置は、少なくとも前記二輪車の停止状態および前記二輪車の前記停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、前記車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両右方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させ、前記車体フレームが車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両左方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させる。
【0016】
この構成によると、二輪車は、トレール長(キャスタートレール長)を変更することができない。二輪車の自立制御装置は、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報を用いて、駆動力および操舵力を制御して、車体フレームが自立するように制御する。つまり、自立制御装置は、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した時(リーン角が0ではない時)に、前輪の接地位置が車体フレームの傾斜方向と同じ方向(車両右方向または車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように駆動力と操舵力を制御する。つまり、自立制御装置は、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度および操舵角を変化させることにより、車速および操舵角に比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレームを起き上がらせて、車体フレームのリーン角を0とすることができる。これにより、自立制御装置は、トレール長を制御せず、駆動力と操舵力の両方を制御することで、車体フレームが自立するように制御している。以上により、本発明の二輪車は、自立制御装置により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態において、車体フレームが自立するように制御することができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る二輪車は、以下の構成を有していても良い。
前記自立制御装置は、前記二輪車の前記低速度走行状態から前記停止状態に移行するまでの状態において、前記車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両右方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させ、前記車体フレームが車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両左方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させるように制御する。
【0018】
この構成によると、二輪車の自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報を用いて、駆動力および操舵力を制御して、車体フレームが自立するように制御する。つまり、自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した時(リーン角が0ではない時)に、前輪の接地位置が車体フレームの傾斜方向と同じ方向(車両右方向または車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように駆動力と操舵力を制御する。つまり、自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度および操舵角を変化させることにより、車速および操舵角に比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレームを起き上がらせて、車体フレームのリーン角を0とすることができる。これにより、自立制御装置は、駆動力と操舵力を制御することで、車体フレームが自立するように制御している。以上により、本発明の二輪車は、自立制御装置により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態に加えて、二輪車の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレームが自立するように制御することができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る二輪車は、以下の構成を有していても良い。
前記自立制御装置は、前記二輪車の前記低速走行状態において、前記車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両右方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させ、前記車体フレームが車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前記前輪の接地位置が車両左方向に移動して前記車体フレームが起き上がるように、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報とに基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御することで、前記車体フレームを自立させるように制御する。
【0020】
この構成によると、二輪車の自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報を用いて、駆動力および操舵力を制御して、車体フレームが自立するように制御する。つまり、自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態において、車体フレームが車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した時(リーン角が0ではない時)に、前輪の接地位置が車体フレームの傾斜方向と同じ方向(車両右方向または車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように駆動力と操舵力を制御する。つまり、自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態において、車輪の回転速度および操舵角を変化させることにより、車速および操舵角に比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレームを起き上がらせて、車体フレームのリーン角を0とすることができる。これにより、自立制御装置は、駆動力と操舵力を制御することで、車体フレームが自立するように制御している。以上により、本発明の二輪車は、自立制御装置により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態に加えて、二輪車の低速度走行状態において、車体フレームが自立するように制御することができる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る二輪車は、以下の構成を有していても良い。
前記自立制御装置は、前記操舵角に関連する情報および前記回転速度に関連する情報を関連付けた操舵角車輪回転速度関連情報を予め記憶し、少なくとも前記二輪車の停止状態および前記二輪車の前記停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、前記リーン角関連情報検出装置によって検出された前記リーン角に関連する情報と、前記操舵角関連情報検出装置によって検出された前記操舵角に関連する情報と、前記車輪回転速度関連情報検出装置によって検出された前記回転速度に関連する情報と、予め記憶された前記操舵角車輪回転速度関連情報と、に基づいて、前記駆動力付与装置の前記駆動力および前記操舵力付与装置の前記操舵力を制御する。
【0022】
この構成によると、自立制御装置は、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報に加えて、操舵角車輪回転速度関連情報を用いることにより、二輪車の車両前後方向の運動と二輪車の車両左右方向の運動が連成するように駆動力および操舵力を制御することができる。なお、本明細書において、2つの運動が連成するように制御するとは、2つの運動が互いに影響を及ぼし合うように制御することを意味する。操舵角に関連する情報および車輪の回転速度に関連する情報を関連付けた操舵角車輪回転速度関連情報は、例えば、操舵角に関連する情報および車輪の回転速度に関連する情報を変数として最適化したゲインマップである。操舵角車輪回転速度関連情報は、操舵角および車速を変数として最適化したゲインマップであってもよい。以上により、本発明の二輪車は、自立制御装置により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態において、車体フレームが自立するように制御することができる。
なお、自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報に加えて、操舵角車輪回転速度関連情報を用いることにより、二輪車の車両前後方向の運動と二輪車の車両左右方向の運動が連成するように駆動力および操舵力を制御してもよい。また、自立制御装置は、二輪車の低速度走行状態において、車輪回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報に加えて、操舵角車輪回転速度関連情報を用いることにより、二輪車の車両前後方向の運動と二輪車の車両左右方向の運動が連成するように駆動力および操舵力を制御してもよい。
【0023】
本発明の一実施形態に係る二輪車は、以下の構成を有していても良い。
前記操舵角に関連する情報は、前記前輪の操舵角、前記前輪の操舵角速度、および前記前輪の操舵角加速度の少なくとも1つを含み、前記回転速度に関連する情報は、前記前輪の回転速度、前記前輪の回転加速度、前記前輪の回転角度、前記後輪の回転速度、前記後輪の回転加速度、前記後輪の回転角度、前記二輪車の車速および前記二輪車の車両前後方向の加速度の少なくとも1つを含み、前記リーン角に関連する情報は、前記車体フレームのリーン角、前記車体フレームのリーン角速度、および前記車体フレームのリーン角加速度の少なくとも1つを含む。
【0024】
この構成によると、前輪の操舵角、前輪の操舵角速度、および前輪の操舵角加速度の少なくとも1つから操舵角に関連する情報を取得できる。ここで、前輪の操舵角は、前輪の操舵軸線回りの回転角度である。前輪の回転速度、前輪の回転加速度、前輪の角速度、前輪の角加速度、後輪の回転速度、後輪の回転加速度、後輪の角速度、後輪の角加速度、二輪車の車速および二輪車の車両前後方向の加速度の少なくとも1つから回転速度に関連する情報を取得できる。ここで、回転速度は、フロント車軸線を中心に回転する前輪の速度またはリア車軸線を中心に回転する後輪の速度を、単位時間に進む角度によって表わした物理量である。車体フレームのリーン角、車体フレームのリーン角速度、および車体フレームのリーン角加速度の少なくとも1つからリーン角に関連する情報を取得できる。ここで、車体フレームのリーン角は、車体フレームの車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角である。
【0025】
<二輪車>
本発明および実施の形態において、「二輪車」とは、車体フレームに支持された前輪および後輪を有し、右旋回時に車両右方向に傾斜し、左旋回時に車両左方向に傾斜する車両である。また、本発明および実施の形態における「二輪車」は、車体フレームを自立させるための制御を行う自立制御装置を備える。本発明および実施の形態における「二輪車」は、自立制御装置が車体フレームを自立させる制御を行うときに、ライダーが乗車していてもよいし、乗車していなくてもよい。なお、本発明および実施の形態における「二輪車」は、ライダーが操舵できるステアリングおよびライダーが駆動輪(前輪および後輪の少なくともいずれか)を回転駆動させたり制動させたりできる少なくとも1つの操作子を有しても有さなくてもよい。
【0026】
<二輪車の車速>
本発明および実施の形態における「二輪車の車速」とは、二輪車の車両前後方向の速度である。ここで、二輪車の車両前後方向は車体フレームに固定される方向であり、「二輪車の車速」は、二輪車の車両前後方向の速度である。なお、「二輪車の車速」は、前輪の回転速度、前輪の回転加速度、前輪の回転角度、後輪の回転速度、後輪の回転加速度、後輪の回転角度、および二輪車の車両前後方向の加速度の少なくともいずれかから取得してもよい。なお、「二輪車の車速」は、前輪の回転速度、前輪の回転加速度、前輪の角速度または前輪の角加速度と、操舵角とから取得してもよい。
【0027】
<停止状態>
本発明および実施の形態において、二輪車の「停止状態」とは、二輪車が走行していない状態であり、二輪車が車両前後方向にほとんど移動することがない状態を意味する。二輪車の「停止状態」とは、前輪が正方向に回転する二輪車のわずかな移動と前輪が逆方向に回転する二輪車のわずかな移動を連続またはほぼ連続して行う状態を含む。前輪が正方向に回転する二輪車のわずかな移動と前輪が逆方向に回転する二輪車のわずかな移動を連続またはほぼ連続して行った結果、前輪が正方向に回転する二輪車のわずかな移動と前輪が逆方向に回転する二輪車のわずかな移動を行う前と比べて、前輪および後輪の接地位置が変化しなくてもよく、わずかに変化してもよい。二輪車の「停止状態」とは、前輪が正方向に回転する二輪車のわずかな移動と前輪が逆方向に回転する二輪車のわずかな移動を交互に繰り返す状態を含んでもよい。つまり、二輪車の「停止状態」は、自立制御装置により、前輪および後輪が正回転および逆回転しつつ前輪および後輪の接地位置に留まるように二輪車が制御されて、車体フレームが自立している状態を意味する。
【0028】
<低速度走行状態>
本発明および実施の形態において、二輪車の「低速度走行状態」とは、二輪車が低速度の車速で走行している状態を意味する。二輪車の「低速度走行状態」とは、二輪車が第1の速度以上、第2の速度以下の低速度で移動する状態である。第1の速度は、例えば、1~3km/hである。第1の速度は、例えば、1km/hでもよく、2km/hでもよく、3km/hでもよい。第2の速度は、例えば、10~20km/hである。二輪車の「低速度走行状態」とは、前輪が正方向に回転する状態を含み、前輪が逆方向に回転する状態は含まない。また、二輪車の「低速度走行状態」とは、二輪車が車両前方向に移動する状態を含み、二輪車が車両後方向に移動する状態を含まないものであってもよい。二輪車の「低速度走行状態」とは、加速度の増加と減少を交互に繰り返す状態を含んでもよい。つまり、二輪車の「低速度走行状態」は、自立制御装置により、前輪および後輪が正回転しつつ二輪車が第1の速度以上、第2の速度以下で走行するように二輪車が制御されて、車体フレームが自立している状態を意味する。
【0029】
<停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態>
本発明および実施の形態において、二輪車の「停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態」とは、二輪車が走行していない状態から第1の速度で移動するまでの状態である。二輪車の「停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態」は、停止状態と低速度走行状態を含まない。二輪車の「停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態」は、二輪車が第1の速度以上で移動する状態、および、前輪が逆方向に回転する状態は含まない。二輪車の「停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態」は二輪車が車両後方向に移動する状態を含まなくてもよい。二輪車の「停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態」とは、加速度の増加と減少を交互に繰り返す状態を含んでもよい。
【0030】
<低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態>
本発明および実施の形態において、二輪車の「低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態」とは、二輪車が第1の速度で移動する状態から走行していない状態に移行するまでの状態である。二輪車の「低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態」は、停止状態と低速度走行状態を含まない。二輪車の「低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態」は、二輪車が第1の速度以上で進行方向に移動する状態、および、前輪が逆方向に回転する状態は含まない。二輪車の「低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態」は、二輪車が車両後方向に移動する状態を含まなくてもよい。
【0031】
<駆動力付与装置>
本発明および実施の形態において、「駆動力付与装置」は、例えば前輪および後輪の少なくとも一方の車軸に取り付けられ、その車軸中心線のまわりに回転駆動するアクチュエータである。このアクチュエータは、例えば、電動モータ、油圧式のアクチュエータまたはエンジンである。「前輪および後輪の少なくとも一方に駆動力を付与する」駆動力付与装置は、前輪のみに駆動力を付与するように構成されていてもよく、後輪のみに駆動力を付与するように構成されていてもよく、前輪と後輪の両方に駆動力を付与するように構成されていてもよい。駆動力付与装置が前輪と後輪の両方に駆動力を付与するように構成されている場合、自立制御装置は、車体フレームを自立させるための制御を行う際に、必ずしも、駆動力付与装置によって前輪および後輪の両方に駆動力を付与しなくてもよい。車体フレームを自立させるための制御において、前輪および後輪の両方に駆動力が付与される場合と、前輪または後輪のみに駆動力が付与される場合があってもよい。車体フレームを自立させるための制御において、前輪および後輪の両方に駆動力が付与されずに、前輪にのみ駆動力が付与される場合と、後輪のみに駆動力が付与される場合があってもよい。
本発明および実施の形態において、「正方向および逆方向に回転させる駆動力を付与する」駆動力付与装置は、正方向に回転させる駆動力と、逆方向に回転させる駆動力のどちらも付与可能な駆動力付与装置を意味する。
以下の説明において、正方向に回転を正回転といい、逆方向に回転を逆回転という場合がある。
【0032】
<操舵力付与装置>
本発明および実施の形態において、「操舵力付与装置」は、例えば、前輪を操舵するための駆動力を発生するアクチュエータである。このアクチュエータは、例えば電動モータまたは油圧式のアクチュエータである。
【0033】
<リーン角関連情報検出装置>
本発明および実施の形態において、「リーン角関連情報検出装置」は、例えば、ロール角センサ、ヨー角センサおよびピッチ角センサを含むIMU(慣性計測装置:Inertial Measurement Unit)である。または、「リーン角関連情報検出装置」は、例えば、ロール角センサである。または、「リーン角関連情報検出装置」は、例えば、加速度センサとジャイロセンサである。または、「リーン角関連情報検出装置」は、例えば、GNSS衛星から受信した電波を利用して二輪車の車両前後方向および車両左右方向の移動に関連する指標が取得できるGNSS装置である。リーン角関連情報検出装置は、これらのセンサおよび装置以外に、リーン角に関連する情報を検出するセンサであってよい。
【0034】
<操舵角関連情報検出装置>
本発明および実施の形態において、「操舵角関連情報検出装置」は、例えば、前輪を回転させるステアリングシャフト(操舵軸)の操舵角を検出する操舵角センサである。または、「操舵角関連情報検出装置」は、例えば、操舵アクチュエータ(電動モータ)の回転角度を検出するセンサであってもよい。操舵角関連情報検出装置は、このセンサ以外に、前輪の操舵軸線回りの回転角度である操舵角に関連する情報を検出するセンサであってよい。
【0035】
<車輪回転速度関連情報検出装置>
本発明および実施の形態において、「車輪回転速度関連情報検出装置」は、例えば、速度センサ、角加速度センサ、角速度センサ、車輪速度センサ、または、角度センサ(ロータリーエンコーダ等)である。または、「車輪回転速度関連情報検出装置」は、例えば、GNSS衛星から受信した電波を利用して二輪車の車両前後方向および車両左右方向の移動に関連する指標が取得できるGNSS装置である。車輪回転速度関連情報検出装置は、これらのセンサおよび装置以外に、前輪または後輪の回転速度に関連する情報を検出するセンサであってよい。
【0036】
<車体フレームを自立させるための制御>
本発明および実施の形態において、「車体フレームが自立する」状態とは、車体フレームが支えなしで自立する状態を意味する。
本発明および実施の形態において、自立制御装置が、「前輪の接地位置が車両右方向(車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように、駆動力と操舵力を制御」した場合、二輪車の操舵角が変化し、且つ、前輪のフロント車軸線回りの回転速度が変化されて車速が変化する。なお、自立制御装置が、「前輪の接地位置が車両右方向(車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように、駆動力と操舵力を制御」することは、前輪の接地位置が車両右方向(車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように、二輪車の駆動力と操舵力の両方を制御することを意味する。つまり、自立制御装置が、「前輪の接地位置が車両右方向(車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように、駆動力と操舵力を制御」した場合、二輪車の操舵力は変化せず、且つ、二輪車の駆動力が変化される場合は含まない。また、自立制御装置が、「前輪の接地位置が車両右方向(車両左方向)に移動して車体フレームが起き上がるように、駆動力と操舵力を制御」した場合、二輪車の操舵力が変化し、且つ、二輪車の駆動力が変化しない場合は含まない。ただし、自律制御装置は、二輪車の駆動力を維持する制御または/および二輪車の操舵力を維持する制御を行ってもよい。ここで、自立制御装置は、「前輪のフロント車軸線回りに回転速度が変化されて車速が変化する」場合、自立制御装置は、前輪および後輪の少なくとも一方に付与される駆動力を制御する。つまり、自立制御装置は、前輪にのみ駆動力を付与して前輪をフロント車軸線回りに回転させてもよい。または、自立制御装置は、後輪にのみ駆動力を付与して前輪をフロント車軸線回りに回転させてもよい。または、自立制御装置は、前輪と後輪の両方に駆動力を付与して前輪をフロント車軸線回りに回転させてもよい。以下、自立制御装置による制御について説明する。以下の説明において、1つ文章に、「操舵角を増加または減少させ」と「前輪の回転速度を増加または減少させ」が含まれている場合、「操舵角を増加させ」と「前輪の回転速度を増加させ」の組み合わせ、「操舵角を増加させ」と「前輪の回転速度を減少させ」の組み合わせ、「操舵角を減少させ」と「前輪の回転速度を増加させ」の組み合わせ、および「操舵角を減少させ」と「前輪の回転速度を減少させ」の組み合わせのいずれでもよい。
【0037】
自立制御装置は、二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を増加または減少させつつ前輪の回転速度を増加または減少させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせてもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を増加または減少させた後、前輪の回転速度を増加または減少させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせてもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜した時、前輪の回転速度を増加または減少させた後、操舵角を増加または減少させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせてもよい。
なお、前輪が逆方向に回転するとき、前輪の回転速度は負の値である。前輪の回転速度の増加とは、回転速度の絶対値の増加である。
【0038】
自立制御装置は、二輪車の停止状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を増加させ、且つ、前輪を正方向に回転させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を減少させ、前輪を逆方向に回転させてもよい。自立制御装置は、二輪車の停止状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を減少させ、且つ、前輪を正方向に回転させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を増加させ、前輪を逆方向に回転させてもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を増加させ、且つ、前輪を逆方向に回転させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を増加させ、前輪を正方向に回転させてもよい。自立制御装置は、二輪車の停止状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を減少させ、且つ、前輪を逆方向に回転させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を増加させ、前輪を正方向に回転させてもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を増加させ、且つ、前輪の回転速度を増加させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を減少させ、且つ、前輪の回転速度を減少させてもよい。自立制御装置は、二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を減少させ、且つ、前輪の回転速度を増加させるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を増加させ、且つ、前輪の回転速度を減少させてもよい。
【0039】
自立制御装置は、二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜した時、操舵角を0より大きい値になるように駆動力および操舵力を制御することで車体フレームを起き上がらせた後、操舵角を0に制御してもよい。つまり、自立制御装置は、二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜していないとき時に操舵角を0に制御してもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態において、車体フレームが傾斜しているか否かに関わらず操舵角を0より大きい値に制御してもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜していない時に二輪車を低速度で走行させるために駆動力を制御してもよい。
自立制御装置は、二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレームが傾斜していない時に二輪車の進行方向を変更するために操舵力を制御してもよい。
【0040】
<自立制御装置による車体フレームを自立させるための制御の判別方法>
なお、車体フレームが傾斜した時に自立制御装置がリーン角に関連する情報と操舵角に関連する情報と車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて駆動力および操舵力を制御しているか否かは、例えば以下の方法で判別できる。車体フレームを車両上下方向に対して車両右方向(車両左方向)に傾斜させる試験を複数回行う。車体フレームが傾斜する時のリーン角、リーン角速度およびリーン角加速度の少なくとも1つが異なり、リーン角と関連しない条件が同じである2つの試験において、車体フレームが起き上がる際に付与された駆動力および制動力が異なっていれば、自立制御装置がリーン角に関連する情報に基づいて駆動力および操舵力を制御していると判断できる。車体フレームが傾斜する時の操舵角、操舵角速度および操舵角加速度の少なくとも1つが異なり、操舵角と関連しない条件が同じである2つの試験において、車体フレームが起き上がる際に付与された駆動力および制動力が異なっていれば、自立制御装置が操舵角に関連する情報に基づいて駆動力および操舵力を制御していると判断できる。車体フレームが傾斜する時の前輪の回転速度、前輪の回転加速度、後輪の回転速度、後輪の回転加速度、二輪車の車速および車体フレームの前後方向の加速度の少なくとも1つが異なり、車輪の回転速度と関連しない条件が同じである2つの試験において、車体フレームが起き上がる際に付与された駆動力および制動力が異なっていれば、自立制御装置が車輪の回転速度に関連する情報に基づいて駆動力および操舵力を制御していると判断できる。
【0041】
<回転>
本発明および実施の形態における「回転」は、360°以上の回転に限定されない。本発明および実施の形態における回転は、360°未満の回転も含む。
【0042】
<車両前後方向、車両左右方向、車両上下方向>
本発明および実施の形態における「車両上下方向」とは、路面に垂直な方向である。本発明および実施の形態における「車両前後方向」とは、車体フレームに固定される方向であり、二輪車が直進している時の前輪の接地位置と後輪の接地位置とを結ぶ直線の方向である。つまり、本発明および実施の形態における「車両前方向」とは、二輪車が直進しているときの二輪車の進行方向である。本発明および実施の形態における「車両左右方向」とは、車両上下方向と車両左右方向に直交する方向である。「車両左右方向」は、二輪車にライダーが乗車した場合、ライダーにとっての左右方向である。
【0043】
<Aに基づいて制御する>
なお、本発明および実施の形態における「Aに基づいて制御する」とは、制御に使用される情報がAだけに限定されない。「Aに基づいて制御する」とは、A以外の情報を含み、AとA以外の情報に基づいて制御する」場合を含む。
【0044】
<その他>
なお、本発明および実施の形態における「複数の選択肢のうちの少なくとも1つ(一方)」とは、複数の選択肢から考えられる全ての組み合わせを含む。複数の選択肢のうちの少なくとも1つ(一方)とは、複数の選択肢のいずれか1つであっても良く、複数の選択肢の全てであっても良い。例えば、AとBとCの少なくとも1つとは、Aのみであっても良く、Bのみであっても良く、Cのみであっても良く、AとBであっても良く、AとCであっても良く、BとCであっても良く、AとBとCであっても良い。
【0045】
特許請求の範囲において、ある構成要素の数を明確に特定しておらず、英語に翻訳された場合に単数で表示される場合、本発明は、この構成要素を、複数有しても良い。また本発明は、この構成要素を1つだけ有しても良い。
【0046】
なお、本発明および実施の形態において「含む(including)、有する(comprising)、備える(having)およびこれらの派生語」は、列挙されたアイテム及びその等価物に加えて追加的アイテムをも包含することが意図されて用いられている。
【0047】
なお、本発明および実施の形態において「取り付けられた(mounted)、接続された(connected)、結合された(coupled)、支持された(supported)という用語」は、広義に用いられている。具体的には、直接的な取付、接続、結合、支持だけでなく、間接的な取付、接続、結合および支持も含む。さらに、接続された(connected)および結合された(coupled)は、物理的又は機械的な接続/結合に限られない。それらは、直接的なまたは間接的な電気的接続/結合も含む。
【0048】
他に定義されない限り、本明細書および請求範囲で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0049】
なお、本発明および実施の形態において「好ましい」という用語は非排他的なものである。「好ましい」は、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。本明細書において、「好ましい」と記載された構成は、少なくとも、請求項1の構成により得られる上記効果を奏する。また、本明細書において、「しても良い」という用語は非排他的なものである。「しても良い」は、「しても良いがこれに限定されるものではない」という意味である。本明細書において、「しても良い」と記載された構成は、少なくとも、請求項1の構成により得られる上記効果を奏する。
【0050】
なお、本発明および実施の形態においては、上述した好ましい構成を互いに組み合わせることを制限しない。本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された構成要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、後述する実施形態以外の実施形態でも可能である。本発明は、後述する実施形態に様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する実施形態および変更例を適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明の二輪車は、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態において、車体フレームが自立するように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の第1実施形態の二輪車の概要を説明する右側面図である。
図2】本発明の第1実施形態の二輪車の概要を説明する正面図である。
図3】本発明の第1実施形態の二輪車の概要を説明する上面図である。
図4】本発明の第1実施形態の自立制御装置の概要を説明するブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態の二輪車の前輪または後輪の回転速度と車速の関係を説明する図である。
図6】本発明の実施形態の二輪車の自立制御装置の制御の一例を説明する示すブロック図である。
図7】本発明の実施形態の二輪車の自立制御装置の制御の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
[方向の定義]
図の中において、Uは二輪車の車両上方向、Dは二輪車の車両下方向、Lは二輪車の車両左方向、Rは二輪車の車両右方向、Fは二輪車の車両前方向、Reは二輪車の車両後方向を示す。
【0054】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態の二輪車1について図1図7を参照しつつ説明する。
図1に示すように、二輪車1は、1つの前輪2と、1つの後輪3と、車体フレーム4を有する。前輪2は、車体フレーム4に対して操舵軸5の軸線(以下、「操舵軸線」と略する)回りに回転可能に支持される。前輪2は、車体フレーム4に対してフロント車軸2aの軸線(以下、「フロント車軸線」と略する)回りに回転可能に支持される。前輪2は、車体フレーム4に対してトレール長が固定されるように支持される。つまり、前輪2は、車体フレーム4に対してトレール長が変更されないように支持される。後輪3は、車体フレーム4に対してリア車軸3aの軸線(以下、「リア車軸線」と略する)回りに回転可能に支持される。
【0055】
二輪車1は、リーン角関連情報検出装置51と、操舵角関連情報検出装置52と、車輪回転速度関連情報検出装置53とを有する。リーン角関連情報検出装置51は、車体フレーム4の車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角であるリーン角Φ(図2参照)に関連する情報を検出する。操舵角関連情報検出装置52は、前輪2の操舵軸線回りの回転角度である操舵角δf(図3参照)に関連する情報を検出する。車輪回転速度関連情報検出装置53は、前輪2または後輪3の回転速度に関連する情報を検出する。車体フレーム4の車両前後方向の速度である車速V(図3参照)は、前輪2または後輪3の回転速度に関連する情報から取得される。
【0056】
二輪車1は、駆動力付与装置31と、操舵力付与装置32と、自立制御装置40とを有する。駆動力付与装置31は、前輪2および後輪3の少なくとも一方をフロント車軸線およびリア車軸線の少なくとも一方の車軸線回りに正方向および逆方向に回転させる駆動力を、前輪2および後輪3の少なくとも一方に付与する。駆動力付与装置31は、例えばフロント車軸2aおよびリア車軸3aの少なくとも一方に設けられ、前輪2および後輪3の少なくとも一方を車軸線回りに正方向および逆方向に回転させる駆動用モータである。操舵力付与装置32は、前輪2を操舵軸線回りに回転させる操舵力を、前輪2に付与する。操舵力付与装置32は、例えば二輪車1の操舵軸5に設けられ、操舵軸5を回転させることにより、前輪2を操舵軸線回りに回転させる操舵用モータである。
【0057】
図4に示すように、自立制御装置40は、車体フレーム4を自立させるための制御を行う。自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、以下の制御を行う。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前輪2の接地位置が車両右方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、リーン角に関連する情報と、操舵角に関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御することで、車体フレーム4を自立させる。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前輪2の接地位置が車両左方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、リーン角に関連する情報と、操舵角に関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御することで、車体フレーム4を自立させる。リーン角に関連する情報は、リーン角関連情報検出装置51によって検出された車体フレーム4の車両上下方向に対する車両左右方向の傾斜角であるリーン角Φに関連する情報である。操舵角に関連する情報は、操舵角関連情報検出装置52によって検出された前輪2の操舵軸線回りの回転角度である操舵角δfに関連する情報である。車輪の回転速度に関連する情報は、車輪回転速度関連情報検出装置53によって検出されたフロント車軸線を中心に回転する前輪2の速度である前輪2の回転速度またはリア車軸線を中心に回転する後輪3の速度である後輪3の回転速度に関連する情報である。
【0058】
ここで、図5に示すように、二輪車1の車輪の回転速度(前輪2または後輪3の角速度)が車速Vに比例すると仮定すると、図3に示すように、二輪車1のヨーレート(遠心力)は、車速Vおよび操舵角δfに比例する。なお、二輪車1の車速Vは、車両前後方向の速度であり、車体フレーム4の前後方向の速度である。また、操舵角δfは、車両前後方向に対する前輪の操舵角の大きさである。自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、駆動力と操舵力を制御して車速Vおよび操舵角δfを変化させることにより、車速Vおよび操舵角δfに比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車1は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレーム4を起き上がらせて、車体フレーム4のリーン角Φを0とすることができる。
【0059】
なお、上述の通り、二輪車1のヨーレート(遠心力)は、車速Vおよび操舵角δfに比例する。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、車速Vが小さい状態であるほど操舵角δfが大きくなるように制御することが好ましい。また、自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、操舵角δfが小さい状態であるほど車速Vが大きくなるように制御することが好ましい。なお、二輪車1が車両後方向に移動するとき、車速Vは負の値である。車速Vが小さいとは車速Vの絶対値が小さいことをいう。また、操舵角δfは、二輪車1の車両左方向および車両右方向のいずれか一方を正の方向とし他方を負の方向とする。操舵角δfが大きいとは操舵角δfの絶対値が大きいことをいう。ここで、二輪車1の停止状態では、自立制御装置40は、車速Vを小さい状態で変化するように制御する。従って、二輪車1の停止状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、自立制御装置40は、操舵角δfを大きい状態で変化させるように制御することが好ましい。二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態では、自立制御装置40は、車速Vを比較的小さい状態で、且つ、車速Vをほぼ0の速度から低速度まで増加させるように制御する。従って、二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、自立制御装置40は、操舵角δfを比較的大きい状態で、且つ、車体フレーム4が傾斜した時の車速Vに応じて制御する(例えば、速度Vが大きいほど操舵角δfを小さい状態で変化させるように制御する)ことが好ましい。
【0060】
図6および図7に基づいて、自立制御装置40の少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態における制御の一例について説明する。図6(a)、(b)および図7(a)、(b)は、二輪車1が停止状態における自立制御装置40の制御の一例を示している。図6(c)、(d)および図7(c)、(d)は、二輪車1が停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態における自立制御装置40の制御の一例を示している。
【0061】
図6(a)~(d)に示すように、自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2をフロント車軸線回りに回転させて操舵角δfとし、且つ、車速Vとなるように前輪2を駆動させることで、前輪2の接地位置が車両右方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、駆動力と操舵力を制御する。例えば、図6(a)、(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の停止状態および停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2が車両右方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて車速Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。また例えば、図6(b)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の停止状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2が車両右方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに逆回転させる回転速度を変化させて車速Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。なお、図6(a)、(b)の二輪車1の停止状態における自立制御装置40の制御では、車体フレーム4が起き上がった状態において、操舵角δfを0よりも大きい値で維持しつつ前輪2をフロント車軸線回りに正回転と逆回転を交互にさせるように、駆動力と操舵力を制御してもよい。この場合、二輪車1の停止状態から移行した直後の操舵角δfは0よりも大きい値である。例えば、図6(d)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、操舵角δfが0よりも大きい値である場合に、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両右方向に操舵された状態から操舵角δfを減少させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御してもよい。
【0062】
図7(a)~(d)に示すように、自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2をフロント車軸線回りに回転させて操舵角δfとし、且つ、車速Vとなるように前輪2を駆動させることで、前輪2の接地位置が車両左方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、駆動力と操舵力を制御する。例えば、図7(a)、(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の停止状態および停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両左方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。または、図7(b)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の停止状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2が車両左方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに逆回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。なお、図7(a)、(b)の二輪車1の停止状態における自立制御装置40の制御では、車体フレーム4が起き上がった状態において、操舵角δfを0よりも大きい値で維持しつつ前輪2をフロント車軸線回りに正回転と逆回転を交互にさせるように、駆動力と操舵力を制御してもよい。この場合、二輪車1の停止状態から移行した直後の操舵角δfは0よりも大きい値である。例えば、図7(d)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、操舵角δfが0よりも大きい値である場合に、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両左方向に操舵された状態から操舵角δfを減少させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御してもよい。
【0063】
第1実施形態の二輪車1は、以下の効果を有する。
【0064】
二輪車1は、トレール長(キャスタートレール長)を変更することができないように構成されている。二輪車1の自立制御装置40は、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報を用いて、駆動力および操舵力を制御して、車体フレーム4が自立するように制御する。つまり、自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した時(リーン角が0ではない時)、前輪2の接地位置が車体フレーム4の傾斜方向と同じ方向(車両右方向または車両左方向)に移動して車体フレーム4が起き上がるように駆動力と操舵力を制御する。つまり、自立制御装置は、少なくとも二輪車の停止状態および二輪車の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車輪2の回転速度および操舵角δfを変化させることにより、車速Vおよび操舵角δfに比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車1は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレーム4が起き上がらせて、車体フレーム4のリーン角を0とすることができる。これにより、自立制御装置40は、トレール長を制御せず、駆動力と操舵力の両方を制御することで、車体フレーム4が自立するよう制御している。以上により、第1実施形態の二輪車1は、自立制御装置40により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態において、車体フレーム4が自立するように制御することができる。
【0065】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態の二輪車1について、説明する。第2実施形態の二輪車1は、第1実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
【0066】
自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、以下の制御を行う。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前輪2の接地位置が車両右方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、リーン角に関連する情報と、操舵角に関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御することで、車体フレーム4を自立させる。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前輪2の接地位置が車両左方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、リーン角に関連する情報と、操舵角に関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御することで、車体フレーム4を自立させる。
【0067】
ここで、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態では、自立制御装置40は、車速Vを比較的小さい状態で、且つ、低速度からほぼ0の速度まで減少させるように制御する。従って、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、自立制御装置40は、操舵角δfを比較的大きい状態で、且つ、車体フレーム4が傾斜した時の車速V応じて制御する(例えば、速度Vが小さいほど操舵角δfを大きい状態で変化させるように制御する)ことが好ましい。
【0068】
図6および図7に基づいて、自立制御装置40の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態における制御の一例について説明する。図6(c)、(d)および図7(c)、(d)は、二輪車1が低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態における自立制御装置40の制御の一例を示している。
【0069】
図6(c)、(d)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2をフロント車軸線回りに回転させて操舵角δfとし、且つ、車速Vとなるように前輪2を駆動させることで、前輪2の接地位置が車両右方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、駆動力と操舵力を制御する。例えば、図6(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両右方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて車速Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。また、例えば、図6(d)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、操舵角δfが0よりも大きい値である場合に、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両右方向に操舵された状態から操舵角δfを減少させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御してもよい。
【0070】
図7(c)、(d)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2をフロント車軸線回りに回転させて操舵角δfとし、且つ、車速Vとなるように前輪2を駆動させることで、前輪2の接地位置が車両左方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、駆動力と操舵力を制御する。例えば、図7(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両左方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。また、例えば、図7(d)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、操舵角δfが0よりも大きい値である場合に、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両左方向に操舵された状態から操舵角δfを減少させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御してもよい。
【0071】
第2実施形態の二輪車1は、第1実施形態の二輪車1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0072】
二輪車1の自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報を用いて、駆動力および操舵力を制御して、車体フレーム4が自立するように制御する。つまり、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した時(リーン角が0ではない時)に、前輪2の接地位置が車体フレーム4の傾斜方向と同じ方向(車両右方向または車両左方向)に移動して車体フレーム4が起き上がるように駆動力と操舵力を制御する。つまり、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度および操舵角を変化させることにより、車速および操舵角に比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車1は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレーム4を起き上がらせて、車体フレーム4のリーン角を0とすることができる。これにより、自立制御装置40は、駆動力と操舵力を制御することで、車体フレーム4が自立するように制御している。以上により、第2実施形態の二輪車1は、自立制御装置40により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態に加えて、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が自立するように制御することができる。
【0073】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態の二輪車1について、説明する。第3実施形態の二輪車1は、第1実施形態の構成または第2実施形態の構成に加えて、以下の構成を備える。
【0074】
自立制御装置40は、二輪車1の低速走行状態において、以下の制御を行う。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向に傾斜した時に、前輪2の接地位置が車両右方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、リーン角に関連する情報と、操舵角に関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御することで、車体フレーム4を自立させる。自立制御装置40は、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向に傾斜した時に、前輪2の接地位置が車両左方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、リーン角に関連する情報と、操舵角に関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報とに基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御することで、車体フレーム4を自立させる。
【0075】
ここで、二輪車1の低速度走行状態では、自立制御装置40は、車速Vを低速度付近で変化するように制御する。従って、二輪車1の低速度走行状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、自立制御装置40は、操舵角δfを比較的大きい状態で変化させる制御することが好ましい。
【0076】
図6および図7に基づいて、自立制御装置40の低速度走行状態における制御の一例について説明する。図6(c)および図7(c)は、二輪車1が低速度走行状態における自立制御装置40の制御の一例を示している。
【0077】
図6(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2をフロント車軸線回りに回転させて操舵角δfとし、且つ、車速Vとなるように前輪2を駆動させることで、前輪2の接地位置が車両右方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、駆動力と操舵力を制御する。例えば、図6(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両右方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて車速Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。
【0078】
図7(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した場合、前輪2をフロント車軸線回りに回転させて操舵角δfとし、且つ、車速Vとなるように前輪2を駆動させることで、前輪2の接地位置が車両左方向に移動して車体フレーム4が起き上がるように、駆動力と操舵力を制御する。例えば、図7(c)に示すように、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両左方向にリーン角Φだけ傾斜した時、前輪2が車両左方向に操舵されるように操舵角δfを変化させ、且つ、前輪2をフロント車軸線回りに正回転させる回転速度を変化させて速度Vを変化させるように、駆動力と操舵力を制御する。
【0079】
第3実施形態の二輪車1は、第1実施形態または第2実施形態の二輪車1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0080】
二輪車1の自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報を用いて、駆動力および操舵力を制御して、車体フレーム4が自立するように制御する。つまり、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態において、車体フレーム4が車両上下方向に対して車両右方向または車両左方向に傾斜した時(リーン角が0ではない時)に、前輪2の接地位置が車体フレーム4の傾斜方向と同じ方向(車両右方向または車両左方向)に移動して車体フレーム4が起き上がるように駆動力と操舵力を制御する。つまり、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態において、車輪の回転速度および操舵角を変化させることにより、車速および操舵角に比例するヨーレート(遠心力)を制御する。そして、二輪車1は、制御されたヨーレート(遠心力)により車体フレーム4を起き上がらせて、車体フレーム4のリーン角を0とすることができる。これにより、自立制御装置40は、駆動力と操舵力を制御することで、車体フレーム4が自立するように制御している。以上により、第3実施形態の二輪車1は、自立制御装置40により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態に加えて、二輪車1の低速度走行状態において、車体フレーム4が自立するように制御することができる。
【0081】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態の二輪車1について、説明する。第4実施形態の二輪車1は、第1実施形態~第3実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
【0082】
自立制御装置40は、操舵角δfに関連する情報および車輪の回転速度に関連する情報を関連付けた操舵角車速関連情報を予め記憶する。自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、リーン角Φに関連する情報と、操舵角δfに関連する情報と、車輪の回転速度に関連する情報と、予め記憶された操舵角車輪回転速度関連情報と、に基づいて、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御する。操舵角車輪回転速度関連情報は、例えば、操舵角δfに関連する情報および車輪の回転速度に関連する情報を変数として最適化したゲインマップである。操舵角車輪回転速度関連情報は、例えば、操舵角δfおよび車速Vを変数として最適化したゲインマップであってもよい。この場合、例えば、自立制御装置40は、操舵角δfおよび車速Vを変数として最適化したゲインマップを用いて、リーン角Φ、操舵角δfおよび車速Vをフィードバックして、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御する。なお、ゲインマップの作成にあたり、二輪車1の車両・前後輪の重量・慣性モーメント、重心位置、ホイールベース、車輪径の車両諸元を用いてよい。自立制御装置40は、操舵角車輪回転速度関連情報に基づいて、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報をフィードバックして、駆動力付与装置31の駆動力および操舵力付与装置32の操舵力を制御する。リーン角Φに関連する情報は、リーン角関連情報検出装置51から取得する。操舵角δfに関連する情報は、操舵角関連情報検出装置52から取得する。車輪の回転速度に関連する情報は、車輪回転速度関連情報検出装置53から取得する。
【0083】
なお、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態から停止状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報に加えて、操舵角車輪回転速度関連情報を用いることにより、二輪1車の車両前後方向の運動と二輪車1の車両左右方向の運動が連成するように駆動力および操舵力を制御してもよい。また、自立制御装置40は、二輪車1の低速度走行状態において、車輪回転速度に関連する情報、リーン角に関連する情報、操舵角に関連する情報に加えて、操舵角車輪回転速度関連情報を用いることにより、二輪車1の車両前後方向の運動と二輪車1の車両左右方向の運動が連成するように駆動力および操舵力を制御してもよい。
【0084】
第4実施形態の二輪車1は、第1実施形態~第3実施形態のいずれかの二輪車1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0085】
自立制御装置40は、少なくとも二輪車1の停止状態および二輪車1の停止状態から低速度走行状態に移行するまでの状態において、車輪の回転速度に関連する情報、リーン角Φに関連する情報、操舵角δfに関連する情報に加えて、操舵角車輪回転速度関連情報を用いることにより、二輪車1の車両前後方向の運動と二輪車1の車両左右方向の運動が連成するように駆動力および操舵力を制御することができる。以上により、第3実施形態の二輪車1は、自立制御装置40により、少なくとも停止状態および停止状態から低速度走行状態までの状態において、車体フレーム4が自立するように制御することができる。
【0086】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態の二輪車1について、説明する。第5実施形態の二輪車1は、第1実施形態~第4実施形態のいずれかの構成に加えて、以下の構成を備える。
【0087】
操舵角δfに関連する情報は、前輪2の操舵角、前輪2の操舵角速度、および前輪2の操舵角加速度の少なくとも1つを含む。
【0088】
車輪回転速度に関連する情報は、前輪2の回転速度、前輪2の回転加速度、前輪2の回転角度、後輪3の回転速度、後輪3の回転加速度、後輪3の回転角度、二輪車1の車速および二輪車1の車両前後方向の加速度の少なくとも1つを含む。なお、二輪車1の車速は、二輪車1の車両前後方向の車速である。
【0089】
リーン角Φに関連する情報は、車体フレーム4のリーン角、車体フレーム4のリーン角速度、および車体フレーム4のリーン角加速度の少なくとも1つを含む。
【符号の説明】
【0090】
1:二輪車、2:前輪、3:後輪、4:車体フレーム、31:駆動力付与装置、32:操舵力付与装置、40:自立制御装置、51:リーン角関連情報検出装置、52:操舵角関連情報検出装置、53:車輪回転速度関連情報検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7