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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】発情兆候検出システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20231013BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023044042
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】福井 豊明
(72)【発明者】
【氏名】栗本 優
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-002507(JP,A)
【文献】特開2019-024482(JP,A)
【文献】特開2022-023539(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012005(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/145306(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発情兆候が発現する可能性が高い概ね一定長の複数日の高発情期間が、前記可能性が低い概ね一定長の複数日の低発情期間をあけて繰り返される動物に装着され、前記発情兆候の発現により変化する物理量を検出する物理量検出装置と、
前記高発情期間か否かに応じて異なる発情判定条件を、前記物理量検出装置の検出結果が満たすか否かに基づいて前記発情兆候の有無を判定する発情判定部と、を備える発情兆候検出システム。
【請求項2】
前記低発情期間及び前記高発情期間及びそれらの起算点の各データを記憶する記憶部を有して、前記高発情期間になったか否かを判定するか、又は、前記低発情期間及び前記高発情期間の各データを記憶する記憶部を有して、前記発情判定部による前記発情兆候有りの判定タイミングに基づいて起算される前記低発情期間が経過したか否かにより前記高発情期間になったか否かを判定する期間判定部を備える請求項1に記載の発情兆候検出システム。
【請求項3】
前記発情判定部には、
前記高発情期間中であることを条件に、前記物理量検出装置の検出結果が、予め定められた第1発情判定条件を満たすか否かによって前記発情兆候の有無を判定する第1モードと、
前記発情兆候無しと判定されて前記高発情期間が終了したことを条件に、前記物理量検出装置の検出結果が、前記第1発情判定条件より厳しい内容に予め定められた第2発情判定条件を満たすか否かによって前記発情兆候の有無を判定する第2モードとが備えられている請求項1に記載の発情兆候検出システム。
【請求項4】
前記発情判定部には、前記発情兆候有りと判定されて前記高発情期間が終了した後の前記低発情期間中であることを条件に、前記発情兆候の有無の判定を行わない休止モードが備えられている請求項1に記載の発情兆候検出システム。
【請求項5】
前記発情判定部には、前記発情兆候有りと判定されて前記高発情期間が終了した後の前記低発情期間中であることを条件に、前記物理量検出装置の検出結果が、前記第2発情判定条件より厳しい内容に予め定められた第3発情判定条件を満たすか否かによって前記発情兆候の有無を判定する第3モードが備えられている請求項3に記載の発情兆候検出システム。
【請求項6】
前記発情判定部は、前記発情兆候無しと判定して前記高発情期間が終了してから前記発情兆候有りと判定するまで継続して前記第2モードで前記発情兆候の有無の判定を行う請求項3に記載の発情兆候検出システム。
【請求項7】
前記発情判定部は、前記低発情期間の起算点が不明な発情兆候検出システムの起動後は、前記発情兆候有りと判定するまで継続して前記第2モードで前記発情兆候の有無の判定を行う請求項3に記載の発情兆候検出システム。
【請求項8】
前記発情判定部の判定から統計的に特定される実際の前記発情兆候の発現間隔に基づいて各動物に固有の前記発情兆候の発現周期を推定し、その発現周期に基づいて前記記憶部の前記低発情期間及び前記高発情期間の一方又は両方のデータを更新するデータ更新部を備える請求項1に記載の発情兆候検出システム。
【請求項9】
前記発情判定部で使用される前記発情判定条件を予め定められた範囲で変更し、変更された各発情判定条件下での前記発情判定部の判定から特定される実際の前記発情兆候の発現間隔のばらつきと、前記変更の内容とから機械学習により、前記ばらつきが小さくなるように前記発情判定条件を更新するデータ更新部を備える請求項1に記載の発情兆候検出システム。
【請求項10】
前記高発情期間中に前記物理量検出装置が検出した前記物理量と、実際の前記発情兆候の有無とに基づいて、前記物理量から前記発情兆候の有無を推定するように機械学習によって生成された第1の機械学習モデルと、
前記低発情期間中に前記物理量検出装置が検出した前記物理量と、実際の前記発情兆候の有無とに基づいて、前記物理量から前記発情兆候の有無を推定するように機械学習によって生成された第2の機械学習モデルと、が備えられ、
前記第1発情判定条件を満たすことは、前記第1の機械学習モデルが前記物理量から前記発情兆候が有りと推定することを意味し、
前記第2発情判定条件を満たすことは、前記第2の機械学習モデルが前記物理量から前記発情兆候が有りと推定することを意味する請求項3に記載の発情兆候検出システム。
【請求項11】
前記物理量検出装置は、加速度センサと温度センサとを有し、前記動物の内部に投入されて前記物理量としての加速度と温度とを検出する請求項1から10の何れか1の請求項に記載の発情兆候検出システム。
【請求項12】
前記物理量検出装置は、加速度センサと温度センサとを有して前記動物の内部に投入されて前記物理量としての加速度と温度とを検出し、
前記第1発情判定条件は、前記加速度センサの検出結果に関する条件と前記温度計の検出結果に関する条件の少なくとも一方が成立することを含み、
前記第2発情判定条件は、前記加速度センサと前記温度センサの両方の検出結果に関する条件が成立することを含む請求項3に記載の発情兆候検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物の発情兆候を検出する発情兆候検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の発情兆候検出システムとして、発情兆候の発現により変化する物理量に基づいて発情兆候を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-125851号公報(段落[0032]~[0037]及び図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した発情兆候検出システムに対して、発情兆候の検出精度を向上させることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた本開示の第1の態様は、発情兆候が発現する可能性が高い概ね一定長の複数日の高発情期間が、前記可能性が低い概ね一定長の複数日の低発情期間をあけて繰り返される動物に装着され、前記発情兆候の発現により変化する物理量を検出する物理量検出装置と、前記高発情期間か否かに応じて異なる発情判定条件を、前記物理量検出装置の検出結果が満たすか否かに基づいて前記発情兆候の有無を判定する発情判定部と、を備える発情兆候検出システムである。
【発明の効果】
【0006】
本開示の第1の態様の発情兆候検出システムでは、発情兆候が発現する可能性が高い高発情期間が、発情兆候が発現する可能性が低い低発情期間をあけて繰り返される動物に対して、高発情期間か否かに応じて異なる発情判定条件を物理量検出装置の検出結果が満たすか否かに基づいて発情兆候の有無を判定する。このように、発情判定条件を、発情兆候が発現する可能性が高い期間か否かで使い分けて発情兆候の有無を判定するので、発情兆候の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る発情兆候検出システムの全体構成を示す概略図
図2】胃袋内端末及び監視端末の電気的な構成を示すブロック図
図3】胃袋内端末の制御的な構成を示すブロック図
図4】監視端末が実行する動作を示すフローチャート
図5】監視端末の制御的な構成を示すブロック図
図6】発情兆候検出プログラムのフローチャート
図7】期間判定処理が実行するプログラムのフローチャート
図8】発情判定処理が実行するプログラムのフローチャート
図9】他の実施形態の発情判定処理の一部が実行するプログラムのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る発情兆候検出システム100について、図1図8を参照して説明する。図1に示した本実施形態の発情兆候検出システム100は、複数頭の牛10の胃袋10S(具体的には、第1胃又は第2胃)内に配置される複数の胃袋内端末20と、胃袋内端末20が取得した牛10の情報を検出する監視端末50と、監視端末50を介して胃袋内端末20が取得した情報の提供を受ける外部端末70と、を備えている。これらは、無線基地局400,401を含んだ通信ネットワーク101を介して接続されている。
【0009】
胃袋内端末20は、図2に示すように、温度センサ21A、加速度センサ21B、装置制御部22及び無線回路23等を備え、これらは、胃袋10S内のルーメン液や食渣等から保護するための図示しないケースに収容されている。なお、胃袋内端末20は、牛10の口から投入されて胃袋10S内に留置される。
【0010】
温度センサ21A及び加速度センサ21Bは、牛10の胃袋10S内の温度及び加速度を計測し、その計測結果を装置制御部22に送信する。装置制御部22は、温度センサ21A及び加速度センサ21Bから取得した計測結果に基づく信号を無線回路23に無線送信させる。なお、胃袋内端末20に、例えば、圧力センサ等も備えて、牛10の情報として胃袋10S内の加速度及び温度以外の情報も無線送信する構成であってもよい。なお、温度センサ21A及び加速度センサ21Bが、特許請求の範囲の「物理量検出装置」に相当する。
【0011】
装置制御部22は、CPU22Aとメモリ22Bとからなる。CPU22Aは、温度センサ21A、加速度センサ21B及び無線回路23等の機器に接続されて、それら機器を制御して所定の信号処理プログラムを実行する。メモリ22Bには、信号処理プログラムと胃袋内端末20毎に設定された識別番号等が記憶されている。
【0012】
なお、胃袋内端末20は、温度センサ21A、加速度センサ21B、装置制御部22及び無線回路23等に電源を供給する図示しない電池を備えている。また、ケース内には図示しない錘が収容されており、胃袋内端末20が牛10の胃袋10S内に安定して留置されるようになっている。
【0013】
胃袋内端末20は、具体的には、以下のように動作する。信号処理プログラムは、装置制御部22に電池から電力が供給されている間実行され、信号処理プログラムが実行されると、胃袋内端末20は、図3に示される計測トリガ生成部24A、送信トリガ生成部24B、データ取得部25及びデータ送信部27等の制御ブロックとして機能する。
【0014】
計測トリガ生成部24Aでは、所定の間隔(例えば、1[分])で計測トリガTG1が生成され、それら計測トリガTG1が生成される度に温度センサ21A及び加速度センサ21Bが胃袋10S内の温度及び加速度の計測を行う。そして、温度センサ21A及び加速度センサ21Bの計測結果から、データ取得部25が胃袋10S内の温度と加速度の情報である温度データ及び加速度データを生成してデータ送信部27に付与する。
【0015】
送信トリガ生成部24Bでは、一定期間(例えば、10[分])毎に送信トリガTG2が生成され、それら送信トリガTG2が生成される度に、データ送信部27が温度データ及び加速度データから送信データD1を生成して無線回路23を使用して無線送信する。
【0016】
具体的には、データ取得部25が生成した温度データ及び加速度データは、バッファ26に一時的に蓄積されるようになっており、データ送信部27は、予め定められたデータ長さのデータフレームに、バッファ26から読み出した複数の温度データ及び加速度データと、メモリ22Bから読み出した胃袋内端末20の識別番号とを格納した送信データD1を生成する(本実施形態では、例えば、10個の温度データ及び加速度データが格納される)。なお、温度データ及び加速度データ以外の牛10の情報も取得する場合には、送信データD1にそれらの情報も格納してもよい。
【0017】
複数の胃袋内端末20からの送信データD1は、監視端末50で受信される。具体的には、図1に示すように、胃袋内端末20からの送信データD1は、まず、複数の牛10を飼育している牛舎や牧場に設置されたゲートウェイ500で受信される。ゲートウェイ500は、中継基地局としての機能と、プロトコル変換の機能を備えている。そして、ゲートウェイ500は、胃袋内端末20からの送信データD1を汎用通信回線300を介して監視端末50に送信する。本実施形態では、1つのゲートウェイ500が1つの監視端末50に接続されているが、例えば牛舎や牧場毎にゲートウェイ500を設置し、複数のゲートウェイ500が1つの監視端末50に接続されていてもよい。
【0018】
監視端末50は、サーバコンピュータやパーソナルコンピュータ等のコンピュータによって構成されており、送信データD1に含まれる牛10の情報に基づいて、識別番号毎に牛10を検出し、体調等に変化や異常があった場合等に外部端末70にその情報を通知するようになっている(図1参照)。なお、監視端末50は、複数のサーバーからなるクラウドサーバーでもよい。
【0019】
監視端末50は、図2に示すように、少なくとも、通信回路51と、CPU52とメモリ59を含む制御部50Aと、記憶媒体60等を有してなる。
【0020】
通信回路51は、汎用通信回線300を介して胃袋内端末20からの送信データD1の受信を行うと共に、外部端末70にデータの送信を行う。
【0021】
記憶媒体60は、RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等で構成されており、図5に示すように、識別番号記憶部61及びプログラム記憶部62等を有する。識別番号記憶部61には、各胃袋内端末20の識別番号が格納されて、識別番号から各胃袋内端末20を特定することが可能となっている。プログラム記憶部62には、後述する発情兆候検出プログラムPG1等が格納されている。そして、CPU52に発情兆候検出プログラムPG1を実行させることで、監視端末50を、牛10の発情兆候を検出する発情兆候検出装置として機能させるようになっている。
【0022】
なお、発情兆候検出プログラムPG1は、上記構成に限られず、例えば、非一時的な記憶媒体であるCD-ROMやUSBメモリ等に記憶させておいてそれらから読み出して実行する構成でもよいし、汎用通信回線300を通じてアプリケーション等のサービスを利用して実行する構成でもよい。
【0023】
CPU52は、図4に示すように、複数の胃袋内端末20から送信されてくる送信データD1を通信回路51を通して受信すると(S11でYES)、データ取込処理(S12)、疾病検出処理(S13)、発情兆候検出処理(S14)を実行し、牛10の体調に関わる異常や変化の検出を緊急度の高い順で行うようになっている。そして、CPU52は、データ取込処理を実行することで、図5のブロック図に示すデータ取込部53として機能し、発情兆候検出処理を実行することで、図5のブロック図に示す発情判定部54、期間判定部55、情報送信部56等として機能する。そして、発情兆候検出処理を実行するときに上述の発情兆候検出プログラムPG1が実行される。本実施形態では、疾病検出処理の詳細は省略する。なお、疾病検出処理は、例えば、家畜特有の病気である鼓脹症等の牛10の病気を検出する処理である。
【0024】
データ取込部53は、受信した送信データD1に受信時刻を付加し、各送信データD1に含まれる胃袋10S内の温度データ及び加速度データ等の牛10の情報を識別番号毎に分けてバッファ53Aに蓄える。これにより、発情兆候検出処理は識別番号毎に実行されるようになっている。
【0025】
発情判定部54は、データ取込部53が送信データD1を受信して温度データ及び加速度データをバッファ53Aに蓄える度に、バッファ53Aから最新の所定期間(例えば、1[時間])分の温度データ及び加速度データを取り出し、それらの変化に基づいて発情兆候の有無を判定する。ここで、一般的に、牛10は、発情すると、発情していない状態と比較して、横臥や静止の時間が減少して活動量が増加し、体温が上昇すること等が知られている。本実施形態では、活動量の増加や、体温の上昇等の発情兆候の発現によって胃袋10S内の温度データ及び加速度データが変化する特性を利用して発情兆候の有無を判定する。
【0026】
発情判定部54は、発情兆候有りと判定する発情判定条件の内容が異なる第1モード及び第2モードと、判定を行わない休止モードを有している。発情判定部54が何れのモードで作動するかは期間判定部55の判定に基づいて決定される。
【0027】
具体的には、第1モードでは、温度データが予め設定された第1閾値を超えて上昇するという変化が基準回数を超えて連続しているという第1条件と、加速度データが予め設定された第2閾値を超えるという変化が基準回数を超えて連続するという第2条件のうち何れか一方の条件の成立を要件としている。一方、第2モードでは、第1条件及び第2条件の両方の条件の成立を要件としている。つまり、第2モードは第1モードよりも発情兆候有りと判定する条件を厳しくしている。そして、第1モード又は第2モードの何れのモードにおいても発情兆候有りと判定されると、その判定タイミングがメモリ59に記憶される。また、第1閾値、第2閾値及び基準回数の値は、メモリ59に記憶されている。なお、第1条件又は第2条件の何れか一方の条件の成立が、特許請求の範囲の「第1発情判定条件を満たすこと」に相当し、第1条件及び第2条件の両方の条件の成立が、特許請求の範囲の「第2発情判定条件を満たすこと」に相当し、メモリ59が特許請求の範囲の「記憶部」に相当する。
【0028】
ここで、牛10の発情兆候の発現は概ね周期的に到来し、発情兆候が発現する可能性が高い「高発情期間」が、発情兆候が発現する可能性が低い「低発情期間」をあけて繰り返されるものであることから、本実施形態では、牛10の発情状態を、「高発情期間」と、「低発情期間」と、さらに、高発情期間か否かが分からない期間(以下、「不特定期間」ということとする)とに分けて、高発情期間においては、第1モードで発情兆候の有無を判定し、不特定期間においては、第2モードで発情兆候の有無を判定するようになっている。また、低発情期間は、発情兆候が発現する可能性が低いため、休止モードに設定されて判定を行わないようになっている。なお、本実施形態では、一般的に交尾に最も適した時期とされる所謂「発情期」とその前後の「発情前期」及び「発情後期」を含む期間を「高発情期間」とし、それ以外の期間を「低発情期間」に設定している。
【0029】
期間判定部55は、現時点における牛10の発情状態が、高発情期間中か、低発情期間中か、又は不特定期間中の何れであるかを判定する。期間判定部55は、発情判定部54が発情兆候有りと判定した判定タイミングの履歴に基づいて低発情期間と高発情期間とを換算する。
【0030】
具体的には、期間判定部55は、メモリ59に記憶される判定タイミングの履歴を取り出し、最新の判定タイミングを最新の発情日とみなして設定する。また、本実施形態では、畜主等のユーザが、実際に牛10に発情兆候が発現した日時を外部端末70を介して予めメモリ59に登録しておき、その発情日時の登録情報を、判定タイミングの履歴の代わりに用いて最新の発情日として設定してもよい。メモリ59に判定タイミング及び発情日時の登録情報が複数記憶されている場合には、それらのうち最新のものを最新の発情日として設定する。また、発情兆候検出プログラムPG1が初めて起動される場合等メモリ59に判定タイミングの履歴がない場合や、ユーザによる発情日時の登録が無い場合は、発情日不明と設定する。
【0031】
そして、期間判定部55は、設定された最新の発情日を低発情期間の起算点として、最新の発情日から予め定められた一定期間T1を低発情期間中と判定し、一定期間T1経過後の予め定められた一定期間T2を高発情期間と判定する。そして、高発情期間の一定期間T2経過後は継続的に不特定期間が続いていると判定する。発情日不明の場合も、不特定期間中であると判定する。これを受けて、発情判定部54は、低発情期間中であると判定された場合には休止モードとなり、高発情期間中であると判定された場合には第1モードで作動し、不特定期間中であると判定された場合には第2モードで作動する。
【0032】
つまり、各期間は最新の発情日に基づいて判定されるので、高発情期間中に発情兆候有りと判定された場合には、一定期間T2満了前であっても発情兆候有りとの判定タイミングで高発情期間が終了し、その判定タイミングから新たな低発情期間が始まったと判定される。
【0033】
情報送信部56は、発情日が更新される度に、その旨を外部端末70に通知する。具体的には、データの送信元である識別番号に対応する胃袋内端末20を識別番号記憶部61から特定し、その胃袋内端末20と、発情日の情報と、判定時刻とを含んだ送信データD2を生成して、通信回路51を介して外部端末70に通知する。
【0034】
なお、外部端末70は、例えば、畜主等のユーザが所有し、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォンなどの携帯情報端末であり、監視端末50と通信可能な一般的な通信手段であればよい。外部端末70は、上述したように、監視端末50から送信データD2の通知を受信する。また、外部端末70から監視端末50にアクセスして、各牛10の発情兆候について、例えば、胃袋10S内の温度データ及び加速度データの変化を自由に閲覧できるように構成されていてもよい。
【0035】
以下、監視端末50のCPU52が実行する発情兆候検出プログラムPG1の一例を図6図8に示す。発情兆候検出プログラムPG1は、上述したように、CPU52が胃袋内端末20から送信データD1を受信してデータ取込処理(図4のS12参照)を実行する度に実行され、図6に示すように、まず、ステップS21により、バッファ53Aから最新の所定期間分の温度データ及び加速度データを取得する。
【0036】
次に、牛10の発情状態が、高発情期間中、低発情期間中、又は不特定期間中の何れであるかを判定する期間判定処理を実行する(S22)。続いて、期間判定処理により判定された牛10の発情状態に基づいて、発情兆候の有無を判定する発情判定処理を実行する(S23)。そして、発情判定処理により、発情兆候無しと判定された場合には(S24でNO)、そのまま発情兆候検出プログラムPG1から抜ける一方、発情兆候有りと判定された場合には(S24でYES)、その旨を報知する送信処理を実行した後で(S25)、発情兆候検出プログラムPG1から抜ける。ここで、期間判定処理(S22)を実行しているときのCPU52が期間判定部55に相当し、発情判定処理(S23)及びステップS24を実行しているときのCPU52が発情判定部54に相当し、送信処理(S25)を実行しているときのCPU52が情報送信部56に相当する。
【0037】
図7には、期間判定処理(図6のS22)のプログラムの一例が示されている。期間判定処理では、まず、ステップS31により、発情日設定処理が実行される。発情日設定処理は、上述したように、発情兆候有りと判定された判定タイミングの履歴又は発情日時の登録情報を取り出して、それらのうちの最新のものを最新の発情日として設定する。そして、最新の発情日が設定された後(S32でNO)、現時点で、最新の発情日から一定期間T1を超えない場合には(S33でNO)、低発情期間中であると判定する(S35)。そして、現時点で、最新の発情日から一定期間T1は経過したが一定期間T2を超えない場合には(S33でYESかつS34でNO)、高発情期間中であると判定する(S36)。また、現時点で、最新の発情日から一定期間T1経過後さらに一定期間T2経過している場合には(S33でYESかつS34でYES)、不特定期間中であると判定する(S37)。また、判定タイミングの履歴及び発情日時の登録情報が記憶されておらず、発情日不明と設定された場合も(S32でYES)、不特定期間中であると判定する(S37)。
【0038】
図8には、発情判定処理(図6のS23)のプログラムの一例が示されている。発情判定処理では、上述したように、牛10の状態が高発情期間中か低発情期間中か不特定期間中かによって発情兆候有りと判定する発情判定条件の内容を異ならせて判定を行う。まず、低発情期間中である場合には(S41でYES)、発情兆候が発現する可能性が低いため、休止モードとなって判定を行わないようになっている。
【0039】
一方、高発情期間中である場合には(S42でYES)、温度データが第1閾値を超えて上昇するという変化が基準回数を超えて連続しているという第1条件と、加速度データが第2閾値を超えるという変化が基準回数を超えて連続するという第2条件のうち、何れか一方の条件の成立で(S43でYES又はS44でYES)、発情兆候有り(S48)と判定し、両方の条件が不成立となった場合に限り(S43でNOかつS44でNO)、発情兆候無し(S47)と判定する第1モードで判定が行われる。
【0040】
また、不特定期間中である場合には(S41でNOかつS42でNO)、上述の第1条件と第2条件の両方の条件の成立した場合に限り(S45でYESかつS46でYES)で発情兆候有り(S48)と判定し、どちらか一方でも不成立の場合には(S45でNO又はS46でNO)で発情兆候無し(S49)と判定する第2モードで判定が行われる。つまり、発情兆候が発現する可能性が高い高発情期間中よりも、不特定期間中の方が発情兆候有りと判定する発情判定条件が厳しくなっている。
【0041】
本実施形態の発情兆候検出システム100の構成に関する説明は以上である。本実施形態の発情兆候検出システム100では、複数の牛10の胃袋10S内に胃袋内端末20が留置されて胃袋内端末20が取得した牛10の胃袋10S内の温度や加速度等の情報が監視端末50に無線送信される。本実施形態では、牛10が発情すると、発情していない状態と比較して活動量が増加し、体温が上昇する等の発情兆候が発現することから、監視端末50は、胃袋10S内の温度データ及び加速度データの変化に基づいて発情兆候を検出する。監視端末50は、複数の胃袋内端末20から胃袋10S内の情報を収集して識別番号毎に発情兆候の検出を行い、発情兆候が検出された場合に外部端末70に通知するようになっている。これにより、複数の牛舎や牧場で飼育されている複数の牛10を一括監視して発情兆候が発現している牛10を効率的に把握し、的確に種付けを行うことが可能となる。従って、畜主の検出労力を軽減して家畜生産のコストを削減しつつ、発情期を逃して種付けができなくなることを抑制して生産性を向上させることができる。
【0042】
ここで、胃袋10S内の温度データ及び加速度データの変化に基づいて発情兆候を検出する場合、疾病の影響で体温が上昇したり、牛10同士の喧嘩で活動量が増加したり等発情兆候とは別の要因により温度データ及び加速度データが変化することがあり、このような場合にも発情兆候の発現と誤検出する虞がある。また、牛10の発情は、発情兆候が発現する可能性が高い「高発情期間」が、発情兆候が発現する可能性が低い「低発情期間」をあけて繰り返されることから、本実施形態では、高発情期間中において発情兆候の有無を判定し、低発情期間中において発情兆候の有無の判定を行わないようになっている。このように、発情兆候が発現する可能性が低い期間に発情兆候の有無の判定を行わないことで、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出してしまう虞を軽減して発情兆候の検出精度を向上させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、高発情期間中に発情兆候無しと判定された場合には、その後の期間は低発情期間ではなく、発情兆候が発現する可能性が高いか否かが不明な不特定期間に設定されるようになっている。ここで、本実施形態では、発情兆候の有無を判定する際に、発情兆候有りと判定する発情判定条件が異なる2つのモードを備えていて、高発情期間中であることを条件に第1モードで発情兆候の有無の判定を行い、不特定期間中であることを条件に第1モードよりも発情判定条件の内容が厳しい第2モードで発情兆候の有無の判定を行うようになっている。つまり、発情判定条件を、発情兆候が発現する可能性が高い期間とそうではない期間とで使い分け、発情兆候が発現する可能性が高い期間に比較的緩い発情判定条件で判定を行うので、発情兆候の検出精度を向上させることができる。しかも第2モードでの判定は、高発情期間中に発情兆候無しと判定されたことを条件にして行われ、高発情期間中に発情兆候有りと判定された後の低発情期間中には行われないので、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、高発情期間経過後に変則的に遅れて発現する発情兆候を見逃してしまうことを抑制できる。
【0044】
また、不特定期間は発情兆候有りと判定されるまで継続するように構成されているので、分娩後の牛10等、発情兆候の発現間隔が大きくずれるような場合であっても発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、発情兆候を検出することができる。
【0045】
また、本実施形態では、高発情期間又は不特定期間に発情兆候有りと判定される度に、その最新の判定タイミングを低発情期間の起算点として更新し、低発情期間と高発情期間とを随時調整する構成となっている。これにより、発情兆候の発現間隔がずれたとしても、現状の牛10の発情状態に合わせて継続的に発情兆候の検出を行うことができる。
【0046】
また、本実施形態では、牛10に初めて胃袋内端末20を投入する場合や、ユーザによる発情日時の登録が無い場合等、高発情期間の特定ができない場合も不特定期間に設定されて、第2モードで判定を行う。これにより、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、発情兆候を検出して、高発情期間を特定することができる。
【0047】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態では、発情判定部54は、低発情期間においては、発情兆候が発現する可能性が低いため、休止モードに設定されて発情兆候の有無の判定を行わないようになっていたが、高発情期間や不特定期間とは異なる第3モードで発情兆候の有無の判定を行ってもよい。この場合、第3モードでは、第1モードや第2モードよりも厳しい発情判定条件で判定を行えば、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、発情直後に起こる変則的な発情兆候を検出することができる。
【0048】
(2)前記実施形態では、発情判定部54は、発情兆候の有無の判定において、温度データについては、第1閾値を超えて上昇するという変化が基準回数を超えて連続しているという内容の第1条件、加速度データについては、第2閾値を超えるという変化が基準回数を超えて連続するという内容の第2条件の成立を要件としていたが、第1条件、第2条件の内容はこれらに限られない。例えば、所定期間毎に算出した温度データや加速度データの統計値(平均やパーセンタイル等)に対して、統計学における正規分布に基づいた異常検知手法による判定結果を条件としてもよいし、前記統計量および月齢、前回発情日からの経過時間等のメタ情報を入力特徴量としたSVMやXGBoost、Deep Neutral Network等の機械学習モデルによる判定結果を条件として用いてもよい。
【0049】
(3)前記実施形態では、発情判定部54は、発情兆候の有無の判定において使用される第1条件及び第2条件に含まれる第1閾値、第2閾値及び基準回数の値は、第1モードと第2モードにおいて共通であったが、異なる値を使用してもよい。例えば、第1閾値、第2閾値及び基準回数の何れかの値又は全ての値を第2モードよりも第1モードの方を小さく設定してもよい。
【0050】
(4)前記実施形態では、発情判定部54は、高発情期間中に発情兆候無しと判定された後の期間と、発情日不明の期間とをどちらも不特定期間として、どちらも第2モードで発情兆候の有無を判定していたが、異なる発情判定条件を有する異なるモードで判定してもよい。
【0051】
(5)前記実施形態では、発情判定部54は、高発情期間において、温度データにおける第1条件と、加速度データにおける第2条件のうち、何れか一方の条件の成立で発情兆候有りと判定していたが、図9に示すように、両方の条件の成立で(S51でYESかつS52でYES)、「発情兆候有り」と判定し、何れか一方の条件だけの成立で(S51でYES又はS53でYES)、「発情兆候疑い有り」と判定してもよい。
【0052】
また、「発情兆候疑い有り」と判定された場合には、高発情期間終了後すぐに不特定期間に設定するのではなく、その後数回は低発情期間と高発情期間を同じ周期で到来するように設定して様子を見る構成としてもよい。また、「発情兆候疑い有り」と判定された場合は「発情兆候無し」とみなしてもよい。この場合、他の実施形態(3)のように、第1モードと第2モードとで使用する閾値及び基準回数の値を異ならせてもよい。
【0053】
(6)前記実施形態では、高発情期間及び不特定期間に関わらず発情兆候有りと判定されると、その判定タイミングで高発情期間及び不特定期間が終了して、その最新の判定タイミングを低発情期間の起算点として更新して低発情期間と高発情期間とが随時調整される構成であったが、これに限られない。例えば、不特定期間における発情兆候有りとの判定時には、前記実施形態と同様に、その判定タイミングで不特定期間を終了させる一方、高発情期間における発情兆候有りとの判定時には、その判定タイミングで高発情期間を終了させず、高発情期間の一定期間T2満了後に低発情期間が始まるようにしてもよい。つまり、高発情期間中に発情兆候有りと判定される限りは、一定期間T1の低発情期間と一定期間T2の高発情期間が交互に到来するように固定し、一定の周期で発情兆候の有無の判定が行われる構成であってもよい。
【0054】
また、高発情期間中に発情兆候無しと判定された場合であっても、その後の期間を不特定期間に設定されなくてもよい。この場合には、ユーザにより発情日時の登録情報が登録されるまでの間は、発情兆候の有無の判定結果に関わらず、不特定期間が継続するように設定して発情兆候の有無を行い、ユーザにより発情日時の登録情報が登録された後は、それに基づいて低発情期間の起算点を設定し、発情兆候の有無の判定結果に関わらず、固定的に一定期間T1の低発情期間と一定期間T2の高発情期間が交互に到来するように設定してもよい。
【0055】
(7)前記実施形態では、低発情期間の一定期間T1及び高発情期間の一定期間T2は予め定められていたが、識別番号毎に変更してもよい。例えば、メモリ59に記憶される発情兆候有りの判定タイミングの履歴から、実際の発情兆候の発現間隔を統計的に特定し、識別番号毎に発情兆候の周期を推定し、その発情周期に基づいてメモリ59に記憶される低発情期間の一定期間T1及び高発情期間の一定期間T2の長さを識別番号毎に更新するデータ更新部を備えていてもよい。これにより、低発情期間の一定期間T1及び高発情期間の一定期間T2の長さを牛10毎に補正することができる。
【0056】
また、データ更新部は、第1閾値、第2閾値及び基準回数の値も識別番号毎に変更してもよい。例えば、発情兆候有りと判定されたときの温度データ及び加速度データもメモリ59に記憶させておき、それらの履歴から、第1閾値、第2閾値及び基準回数の値を統計的に推定して識別番号毎に更新してもよい。
【0057】
(8)前記実施形態では、発情判定部54で使用される温度データにおける第1条件及び加速度データにおける第2条件は予め定められていたが、識別番号毎に変更してもよい。例えば、第1条件及び第2条件の内容を予め定められた範囲で変更し、変更された内容下での発情判定部54の判定から特定される実際の発情兆候の発現間隔のばらつきと、変更内容とから機械学習により、ばらつきが小さくなるように第1条件及び第2条件の内容を識別番号毎に更新するデータ更新部を備えていてもよい。これにより、牛10毎に第1条件及び第2条件を補正することができる。
【0058】
(9)監視端末50は、雌牛と雄牛とを予め識別し、複数の胃袋内端末20から送信されてくる送信データD1に対して、発情兆候の検出対象となっている雌牛については発情兆候検出処理を実行し、雄牛については発情兆候検出処理を実行せず、疾病検知処理だけを実行するようにしてもよい。
【0059】
(10)前記実施形態では、胃袋内端末20を牛10の胃袋10Sに留置する構成であったが、他の動物の胃袋10S内に留置してもよい。
【0060】
(11)前記実施形態では、所定の間隔として1[分]毎に温度データ及び加速度データを取得し、一定期間として10[分]毎に無線送信していたが、所定の間隔や一定期間の長さはこれらに限られない。また、胃袋内端末20を外部から操作可能にして、温度データ及び加速度データの取得のタイミングや無線送信のタイミングを切り替え可能に構成してもよい。
【0061】
また、前記実施形態では、胃袋内端末20では、一定期間の間に取得した複数の温度データ及び加速度データを無線送信する構成であったが、これら複数の温度データ及び加速度データの平均値や最大値や中央値等を無線送信してもよい。また、平均値や最大値の両方を無線送信する構成であってもよい。また、温度データ及び加速度データを取得する度に無線送信する構成であってもよい。
【0062】
(12)前記実施形態では、高発情期間は、発情期とその前後の発情前期及び発情後期を含んでいたが、高発情期間を、発情期と発情前期のみとしてもよいし、発情期と発情後期のみとしてもよいし、発情期のみとしてもよい。
【0063】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0064】
本願出願には、後述する複数の特徴が含まれている。なお、これら特徴の記載においてカッコ内の数字は、上記実施形態において対応する符号である。
【0065】
[特徴1]
発情兆候が発現する可能性が高い概ね一定長(T2)の高発情期間が、前記可能性が低い概ね一定長(T1)の低発情期間をあけて繰り返される動物(10)に装着され、前記発情兆候の発現により変化する物理量を検出する物理量検出装置(21A,21B)と、
前記高発情期間か否かに応じて異なる発情判定条件を、前記物理量検出装置(21A,21B)の検出結果が満たすか否かに基づいて前記発情兆候の有無を判定する発情判定部(54)と、を備える発情兆候検出システム(100)である。
【0066】
特徴1では、発情兆候が発現する可能性が高い高発情期間が、発情兆候が発現する可能性が低い低発情期間をあけて繰り返される動物(10)に対して、高発情期間か否かに応じて異なる発情判定条件を物理量検出装置(21A,21B)の検出結果が満たすか否かに基づいて発情兆候の有無を判定する。このように、発情判定条件を、発情兆候が発現する可能性が高い期間か否かで使い分けて発情兆候の有無を判定するので、発情兆候の検出精度を向上させることができる。
【0067】
[特徴2]
前記低発情期間及び前記高発情期間及びそれらの起算点の各データを記憶する記憶部(59)を有して、前記高発情期間になったか否かを判定するか、又は、前記低発情期間及び前記高発情期間の各データを記憶する記憶部(59)を有して、前記発情判定部(54)による前記発情兆候有りの判定タイミングに基づいて起算される前記低発情期間が経過したか否かにより前記高発情期間になったか否かを判定する期間判定部(55)を備える特徴1に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0068】
特徴2のように、低発情期間及び高発情期間及びそれらの起算点の各データを記憶する記憶部(59)を有して、高発情期間になったか否かの判定を行ってもよいし、低発情期間及び高発情期間の各データを記憶する記憶部(59)を有して、発情判定部(54)による発情兆候有りの判定タイミングに基づいて起算される低発情期間が経過したか否かにより高発情期間になったか否かの判定を行ってもよい。
【0069】
[特徴3]
前記発情判定部(54)には、
前記高発情期間中であることを条件に、前記物理量検出装置(21A,21B)の検出結果が、予め定められた第1発情判定条件を満たすか否かによって前記発情兆候の有無を判定する第1モードと、
前記発情兆候無しと判定されて前記高発情期間が終了したことを条件に、前記物理量検出装置(21A,21B)の検出結果が、前記第1発情判定条件より厳しい内容に予め定められた第2発情判定条件を満たすか否かによって前記発情兆候の有無を判定する第2モードとが備えられている特徴1又は2に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0070】
特徴3では、発情兆候検出システム(100)の発情判定部(54)は、第1発情判定条件を用いて発情兆候の有無を判定する第1モードと、第1発情判定条件より厳しい内容の第2発情判定条件を用いて発情兆候の有無を判定する第2モードとを備えて、高発情期間中であることを条件に第1モードで発情兆候の有無の判定を行い、高発情期間中ではない一定条件下で、第2モードで発情兆候の有無の判定を行う。このように、発情判定条件を、発情兆候が発現する可能性が高い期間とそうではない期間とで使い分け、発情兆候が発現する可能性が高い期間に比較的緩い発情判定条件で判定を行うので、発情兆候の検出精度を向上させることができる。しかも、第2モードでの判定は、高発情期間中に発情兆候無しと判定されたことを条件にして行われ、高発情期間中に発情兆候有りと判定された場合には行われないので、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、高発情期間経過後に変則的に遅れて発現する発情兆候を見逃してしまうことを抑制できる。
【0071】
[特徴4]
前記発情判定部(54)には、前記発情兆候有りと判定されて前記高発情期間が終了した後の前記低発情期間中であることを条件に、前記発情兆候の有無の判定を行わない休止モードが備えられている特徴1から3の何れか1の特徴に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0072】
特徴4によれば、発情兆候が発現する可能性が低い低発情期間においては、発情兆候の有無の判定を行わないようになっているので、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出してしまう虞を軽減して発情兆候の検出精度を向上させることができる。
【0073】
[特徴5]
前記発情判定部(54)には、前記発情兆候有りと判定されて前記高発情期間が終了した後の前記低発情期間中であることを条件に、前記物理量検出装置(21A,21B)の検出結果が、前記第2発情判定条件より厳しい内容に予め定められた第3発情判定条件を満たすか否かによって前記発情兆候の有無を判定する第3モードが備えられている特徴3に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0074】
特徴5によれば、発情兆候が発現する可能性が低い低発情期間においては、第1及び第2の発情判定条件よりも厳しい発情判定基準で発情兆候の有無の判定を行うので、発情兆候ではないのに発情兆候と誤検出してしまうことを軽減しつつ、発情直後に起こる変則的な発情兆候を検出することができる。
【0075】
[特徴6]
前記発情判定部(54)は、前記発情兆候無しと判定して前記高発情期間が終了してから前記発情兆候有りと判定するまで継続して前記第2モードで前記発情兆候の有無の判定を行う特徴3又は5に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0076】
特徴6によれば、発情兆候無しと判定された高発情期間終了後は、発情兆候有りと判定されるまで第2モードによる発情兆候の有無の判定を継続するように構成されているので、発情兆候の発現間隔が大きくずれるような場合であっても発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、発情兆候を検出することができる。
【0077】
[特徴7]
前記発情判定部(54)は、前記低発情期間の起算点が不明な発情兆候検出システム(100)の起動後は、前記発情兆候有りと判定するまで継続して前記第2モードで前記発情兆候の有無の判定を行う特徴3,5又は6に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0078】
特徴7によれば、発情兆候検出システム(100)を初めて起動させて高発情期間の特定ができない場合に、第2モードによる発情兆候の有無の判定を行うので、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、発情兆候を検出して、高発情期間を特定することができる。
【0079】
[特徴8]
前記発情判定部(54)の判定から統計的に特定される実際の前記発情兆候の発現間隔に基づいて各動物(10)に固有の前記発情兆候の発現周期を推定し、その発現周期に基づいて前記記憶部(59)の前記低発情期間及び前記高発情期間の一方又は両方のデータを更新するデータ更新部を備える特徴1から7の何れか1の特徴に記載の発情兆候検出システムである。
【0080】
特徴8によれば、動物(10)毎に低発情期間及び高発情期間の一方又は両方を補正することができる。
【0081】
[特徴9]
前記発情判定部(54)で使用される前記発情判定条件を予め定められた範囲で変更し、変更された各発情判定条件下での前記発情判定部(54)の判定から特定される実際の前記発情兆候の発現間隔のばらつきと、前記変更の内容とから機械学習により、前記ばらつきが小さくなるように前記発情判定条件を更新するデータ更新部を備える特徴1から8の何れか1の特徴に記載の発情兆候検出システムである。
【0082】
特徴9によれば、発情判定部(54)で使用される発情判定条件の内容を動物(10)毎に補正することができる。
【0083】
[特徴10]
前記高発情期間中に前記物理量検出装置(21A,21B)が検出した前記物理量と、実際の前記発情兆候の有無とに基づいて、前記物理量から前記発情兆候の有無を推定するように機械学習によって生成された第1の機械学習モデルと、
前記低発情期間中に前記物理量検出装置(21A,21B)が検出した前記物理量と、実際の前記発情兆候の有無とに基づいて、前記物理量から前記発情兆候の有無を推定するように機械学習によって生成された第2の機械学習モデルと、が備えられ、
前記第1発情判定条件を満たすことは、前記第1の機械学習モデルが前記物理量から前記発情兆候が有りと推定することを意味し、
前記第2発情判定条件を満たすことは、前記第2の機械学習モデルが前記物理量から前記発情兆候が有りと推定することを意味する特徴3,5~7の何れか1の特徴に記載の発情兆候検出システムである。
【0084】
特徴10のように、高発情期間と低発情期間とに分けて検出された物理量とその時の実際の発現兆候の有無との対応関係を学習した第1と第2の機械学習モデルを備えて、第1発情判定条件を満たすことは、第1の機械学習モデルが発情兆候が有りと推定することを意味し、第2発情判定条件を満たすことは、第2の機械学習モデルが発情兆候が有りと推定することを意味してもよい。
【0085】
[特徴11]
前記物理量検出装置(21A,21B)は、加速度センサ(21B)と温度センサ(21A)とを有し、前記動物(10)の内部(10S)に投入されて前記物理量としての加速度と温度とを検出する特徴1から10の何れか1の特徴に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0086】
動物(10)は、発情すると、発情していない状態と比較して活動量が増加し、体温が上昇する等の発情兆候が発現することから、物理量検出装置(21A,21B)は、特徴11のように、加速度センサ(21B)と温度センサ(21A)とし、動物(10)の内部(10S)に投入して、物理量としての加速度と温度とを検出してもよい。
【0087】
[特徴12]
前記物理量検出装置は、加速度センサと温度センサとを有して前記動物の内部に投入されて前記物理量としての加速度と温度とを検出し、
前記第1発情判定条件は、前記加速度センサ(21B)の検出結果に関する条件と前記温度センサ(21A)の検出結果に関する条件の少なくとも一方が成立することを含み、
前記第2発情判定条件は、前記加速度センサ(21B)と前記温度センサ(21A)の両方の検出結果に関する条件が成立することを含む特徴3,5~7の何れか1の特徴に記載の発情兆候検出システム(100)である。
【0088】
特徴12のように、第1発情判定条件は、加速度センサ(21B)の検出結果に関する条件と温度センサ(21A)の検出結果に関する条件の少なくとも一方が成立することを含み、第2発情判定条件は、加速度センサ(21B)と温度センサ(21A)の両方の検出結果に関する条件が成立することを含むようにして、第2発情判定条件を第1発情判定条件より厳しい内容にしてもよい。
【0089】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0090】
10 牛(動物)
10S 胃袋(動物の内部)
21A 温度センサ(物理量検出装置)
21B 加速度センサ(物理量検出装置)
54 発情判定部
55 期間判定部
59 メモリ(記憶部)
100 発情兆候検出システム
【要約】
【課題】発情兆候の検出精度を向上させる。
【解決手段】本実施形態の発情兆候検出システム100は、発情兆候の有無を判定する際に、発情兆候有りと判定する発情判定条件が異なる2つのモードを備えていて、高発情期間中であることを条件に第1モードで判定を行い、不特定期間中であることを条件に第1モードよりも発情判定条件の内容が厳しい第2モードで判定を行う。つまり、発情判定条件を、発情兆候が発現する可能性が高い期間とそうではない期間とで使い分け、発情兆候が発現する可能性が高い期間に比較的緩い発情判定条件で判定を行うので、発情兆候の検出精度を向上させることができる。しかも第2モードでの判定は、高発情期間中に発情兆候無しと判定されたことを条件にして行われ、発情兆候ではないのに発情兆候の発現と誤検出する虞を軽減しつつ、変則的に発現する発情兆候を見逃してしまうことを抑制できる。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9