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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】ウコン含有錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20231013BHJP
   A61K 36/9066 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231013BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231013BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20231013BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/9066
A61K9/20
A61K9/28
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/40
A61P1/16
A61P39/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023084542
(22)【出願日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504008933
【氏名又は名称】秋山錠剤株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰伸
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3230457(JP,U)
【文献】特開2005-124530(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105233175(CN,A)
【文献】特開2019-216714(JP,A)
【文献】特開2018-61483(JP,A)
【文献】特開2021-73988(JP,A)
【文献】国際公開第2020/071475(WO,A1)
【文献】Amazon,金秀バイオ 沖縄県産熱帯ウコン,[online],2009年11月06日, [検索日:2023.6.16],<URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B09CSXLTD2>
【文献】Amazon,オリヒロ 沖縄3種ウコン粒, [online],2006年05月24日,[検索日:2023.6.16],<URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B000FQS2IQ>
【文献】Amazon,金秀バイオ 春・秋・紫ウコン粒3箱セット,[online],2009年11月18日, [検索日:2023.6.16],<URL: https://www.amazon.co.jp/dp/B002XJEE5S>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
A61K 6/00 -135/00
A61P 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得た後に、
前記整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、それぞれ順に乾式混合して、表面改質された混合末を得て、
この混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とするウコン含有錠剤の製造方法。
【請求項2】
4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得るとともに、
予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、予め混合して混合末を得て、
前記整粒顆粒に前記混合末を乾式混合して、表面改質された混合末を得て、
この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とするウコン含有錠剤の製造方法。
【請求項3】
4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得た後に、
前記整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、それぞれ順に乾式混合し、さらに、微粉HPC、粉末セルロース、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンを添加して乾式混合し、表面改質された混合末を得て、
この混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とするウコン含有錠剤の製造方法。
【請求項4】
4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得るとともに、
予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、予め混合して混合末を得て、
前記整粒顆粒に前記混合末を乾式混合するとともに、
さらに、微粉HPC、粉末セルロース、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンを添加して、表面改質された混合末を得て、
この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とするウコン含有錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウコンとウコン抽出物を含有する錠剤の製造方法に関する。さらに詳しくは、圧縮成形性が困難なウコンの粉末とウコン抽出物を実用に耐える錠剤物性を有する錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコン(Curcuma longa L.)は、インド原産のショウガ科の薬用植物で、東南アジアを中心に、世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されている。主に根茎を使用する。ウコンの根茎には3~5%のクルクミン(黄色色素)が含有されている。クルクミンは抗酸化能や肝機能改善あるいは肝機能の維持などに寄与するウコンの代表的な活性成分と考えられており、以下に示す様々な製剤や製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1は、ウコンエキスを含有した柔らかい錠剤であり、ウコンエキス、ゼラチンなどゲル化剤、グリセリンなどの可塑剤、レシチンなどの放出剤、甘味料、保存料および香味料から成る製剤で、喉、食道、消化器管に限らずこれを含患部へ長時間有効成分を継続的に送達することができる経口投与薬である。
特許文献2は、ウコンやクルクミンを含むゼリーで、ゼリーを構成するゲル化剤がジェランガムとカラギナンから成ることを特徴とし、胃と腸において徐々にクルクミンが放出される組成のゼリー剤である。
特許文献3は、ウコンなどを含有した製剤の不快味のマスキングに関して、ウコンエキスの不快な呈味・異味が炭酸を加えることによって大きく改善されることを見出し、不快な呈味・異味が低減されたウコンエキス含有飲料の技術を提案したものである。
【0004】
特許文献4は、ウコンなどの機能性素材に起因する可食性組成物の不快味が馬鈴薯を原料とし、DE(デキストロース当量)が2以上6以下で、25℃の蒸留水で調製したデキストリン30質量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が150Pa・s以下であるデキストリンを用いることで、マスキングする方法である。
特許文献5は、ウコン粉末を加温処理することにより臭味を改良する方法として、加温処理後のウコンに含まれるクルクミン含量が、該加温処理前のウコンに含まれるクルクミン含量の80%以上であるように加温する方法である。該加熱処理方法としては、実施例で155℃、15分で効果が確認できたことを記載している。
【0005】
また、非特許文献1では、ウコンを用いた錠剤の成形について報告されており、ウコン関連の粒(錠剤)製品の錠剤硬度が一般的な医薬品の硬度に比べて低いものが多く、圧縮成形性がよくない。一般的に打錠用顆粒は、流動層造粒法、転動流動層造粒法、攪拌造粒法の順に適してしているとされている。そこで、流動層造粒装置を用いて、結合剤にコラーゲンペプチド、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースを用いて造粒した。ヒドロキシプロピルセルロースで造粒した場合の硬度は、ウコンの品種別で秋ウコン<春ウコン<紫ウコンの順の傾向がある。この結果から、各造粒の錠剤硬度は、品種によって異なること、その要因は、粉体物性よりも、ウコン中の脂質含量の方が大きいことがわかったとしている。そして、上記3種のウコン類の脂質含量を測定した。その結果、秋ウコンが春ウコンより脂質含量が低いことがわかった。ここで、各種ウコンをジエチルエーテルで脱脂し、その脱脂粉末を用いて錠剤を製したところ、秋ウコンでは、秋ウコン粉末の錠剤硬度0.55kgfに対し、脱脂した秋ウコン粉末の錠剤硬度は9.10kgfが得られ、16.5倍も錠剤硬度が改善するものであった(非特許文献1のFig.7(183pより)。
【0006】
一方、錠剤を成形するために添加され、その素材の成形性や打錠性を得る打錠用賦形剤として、低甘味糖質の粉末マルトースが使用されるが、例えば非特許文献2のサンマルト(登録商標)がある。このサンマルト(登録商標)は、非特許文献2のホームページによると、打錠性については、サンマルト(ミドリ)(登録商標)が低圧打錠に適した糖質で、成形性の悪い素材に利用することができると記載されている。また、各種糖質を打錠した場合の錠剤硬度が示されている。
【0007】
このサンマルト(登録商標)に関しては、さらに非特許文献3にて、サンマルト(ミドリ)(登録商標)は、保油力が高いことからDHAなどの機能性を持つ油脂素材を配合した打錠品の製造には極めて高い効果を発揮するとして、DHAにデキストリン、またはサンマルト(登録商標)を配合し、打錠した場合の打錠圧と錠剤硬度との関係を示している。
【0008】
さらに、特許文献6には、生菌製剤の製造方法において、製造時の腸内有用菌の残存率を高くするためには、60質量%以上のマルチトール(麦芽糖)を有する糖類粉末組成物を30~95質量%用い、これと腸内有用菌とを混合して固形製剤を製造することが示されている。ここで、実施例1としてアメ粉にサンマルト(登録商標)が用いられている。
【0009】
また、特許文献7では、ライス成形品の製造方法において、遊離水分解防止材としてサンマルト(登録商標)が用いられることが特許請求の範囲および実施例に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2016-535028号公報
【文献】特開2017-197465号公報
【文献】特開2015-65938号公報
【文献】特開2015-128420号公報
【文献】特開2007-116945号公報
【文献】特開2016-193893号公報
【文献】特開平02-060556号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】鎌田靖弘,PHARM TECH JAPAN,vol.28 No.14(2012)179~186頁
【文献】株式会社林原ホームページ、製品紹介、サンマルト(登録商標)、[令和5年3月8日検索]、インターネット[https://www.food.hayashibara.co.jp/product/sunmalt/ ]
【文献】食品と開発,VOL.48 NO.8(2013)72~73頁
【文献】鎌田ら,ウコン類における錠剤成形の技術開発、沖縄県工業技術センター研究報告書 第9号(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した特許文献1および2の技術は、ゲル化剤を用いた半固形製剤であることから、製造では、特別な設備、そして、保存についても防腐剤などの添加が必要となり、製造の工程が多く、煩雑でありコストアップとなる欠点を有する。
また、特許文献3は、飲料におけるウコンの不快味のマスキング技術で、特許文献4では、形態として錠剤も挙げられているが、実施例では、機能性素材としてペプチドを水溶液の形態でマスキング効果が評価されている。しかし錠剤の形態でのウコンに対するマスキング効果は確認されておらず、手軽に持ち運べて摂取が可能であるとは言えない。
特許文献5の方法では、オートクレーブなどの特別な設備を必要とするもので、製造工程、製造コストが増大する欠点を有する。
【0013】
また、非特許文献1では、錠剤としての硬度を向上させることが可能ではあるが、その硬度を得るためにウコン末を脱脂してしまい、すなわちウコンに含有される精油成分を取り除いてしまうものである。すなわち、ウコンの精油には、胆汁分泌促進、健胃、殺菌、防腐などの薬理作用を有しており、上記のようにウコンを脱脂することで、錠剤硬度を改善する方法は、期待する機能を発揮させることができず望ましくない。非特許文献1において、秋ウコン含有錠では、例えば、秋ウコンの精油含量を1.3mL/50gとした場合、1錠330mgの95%秋ウコン含有錠では8.15μLの精油含量となるが、この錠剤の硬度が2.7kgfと低い(非特許文献4参照)ことから、この原因を明らかにする目的で、秋ウコン粉末をジエチルエーテルで脱脂し、その脱脂粉末を製することとすると、両者の錠剤硬度を比較したところ、秋ウコン粉末の錠剤硬度0.55kgfに対し、脱脂した秋ウコン粉末の錠剤硬度は9.10kgfが得られ(非特許文献1のFig.7(183pより)、脱脂した粉末では、錠剤硬度が秋ウコン粉末の16.5倍高い錠剤が得られることがわかる。しかしながら、秋ウコン粉末を脱脂することで、秋ウコンが有する機能を消失させることで望ましくない。さらに、非特許文献1では、錠剤の経時的安定性に関する報告がない。精油成分など脂溶性成分を含有した錠剤では、経時的な錠剤硬度および摩損度の試験観察、すなわち安定性試験や長期保存試験が重要になる。
【0014】
さらに、特許文献6や特許文献7、非特許文献2や非特許文献3において、ウコンの錠剤化に用いた例に関しての記載はなく、特に非特許文献2には、成形性の悪い素材に利用できると記載されているが、高含量のウコンを含む錠剤とする場合に、サンマルト(登録商標)単味では、高い硬度を有すると共に、低い摩損度の錠剤を製することはできなかった。
【0015】
そして、上記各特許文献1~5,非特許文献1のいずれも、ウコン末を用いる例があるもののウコンに含有される精油成分を活かしておらず、この精油成分に含まれる有用な成分を用いて、錠剤などの製剤を得るという点について具体的な考察等がされていなかった。
【0016】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、ウコンは圧縮成形が困難で実用に耐えうる錠剤を製造することが難しいといわれてきたが、このウコンに含まれる有用な成分である精油成分を活かしたウコン含有錠剤を得ることができる製造方法を提供するとともに、流通時などの際に容易に型崩れや損壊などを起こさない強度を有するウコン含有錠剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
次に、上記の課題を解決するための手段を説明する。
この発明の請求項1記載のウコン含有錠剤の製造方法は、4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得た後に、
前記整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、それぞれ順に乾式混合して、表面改質された混合末を得て、
この混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする。
【0018】
このウコン含有錠剤の製造方法によれば、4種のウコンとウコン抽出物とに、添加剤として、粉末マルトース(例えばサンマルト(登録商標))、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、そしてヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を特定な組成で配合することとしている。
【0019】
このウコン含有錠剤の製造方法によれば、表面改質剤としてのサンマルトの4種ウコン粉末に対する処理方法として、はじめに湿式コーティングにより4種ウコン粉末にウコン抽出物を表面改質する。具体的には、4種ウコン粉末とウコン抽出物を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかの造粒装置に投入し、ここにヒドロキシプロピルセルロース水溶液などのセルロース誘導体水溶液を添加し、湿式コーティングにより表面改質する。これを乾燥した後、整粒する。4種ウコンにウコン抽出物を表面改質した顆粒に微粒シリカゲル、粉末マルトース(サンマルト(登録商標))およびショ糖脂肪酸エステルを用いて、それぞれ順に乾式混合により表面改質する。そして、この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する。
【0020】
また、このウコン含有錠剤の製造方法によれば、それぞれの組成は、4種のウコン粉末、ウコン抽出物、粉末マルトース(サンマルト(登録商標))、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース)、微粒シリカゲル、およびショ糖脂肪酸エステルを、100部:1~5部:1~10部:1~10部:1~10部:1~5部が好ましく、さらに好ましくは、それぞれを100部:1~3部:1~8部:1~8部:1~5部:1~3部とする。これにより、ウコン含量が従来よりも増量され、十分な錠剤硬度、低い摩損度を有するウコン含有錠剤を得ることができる。
【0021】
請求項2記載のウコン含有錠剤の製造方法は、4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得るとともに、
予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、予め混合して混合末を得て、
前記整粒顆粒に前記混合末を乾式混合して、表面改質された混合末を得て、
この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする。
【0022】
このウコン含有錠剤の製造方法によれば、4種のウコンとウコン抽出物とに、添加剤として、粉末マルトース(例えばサンマルト(登録商標))、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、そしてヒドロキシプロピルセルロースを特定な組成で配合することとしている。
【0023】
このウコン含有錠剤の製造方法によれば、表面改質剤としてのサンマルト(登録商標)の4種ウコン粉末に対する処理方法として、はじめに湿式コーティングにより4種ウコン粉末にウコン抽出物を表面改質する。具体的には、4種ウコン粉末とウコン抽出物を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかの造粒装置に投入し、ここにヒドロキシプロピルセルロース水溶液などのセルロース誘導体水溶液を添加し、湿式コーティングにより表面改質する。これを乾燥した後、整粒する。また、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲルと、粉末マルトース(サンマルト(登録商標:株式会社林原))と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステルとを、予め混合して混合末を得る。そして、4種ウコンとウコン抽出物とを表面改質した整粒顆粒に、混合末を乾式混合して表面改質することにより、実用に十分耐えうる錠剤物性を有する優れたウコン含有錠剤を得ることができる。
【0024】
また、このウコン含有錠剤の製造方法によれば、それぞれの組成は、4種のウコン粉末、ウコン抽出物、粉末マルトース(サンマルト(登録商標))、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース)、微粒シリカゲル、およびショ糖脂肪酸エステルを、100部:1~5部:1~10部:1~10部:1~10部:1~5部が好ましく、さらに好ましくは、それぞれを100部:1~3部:1~8部:1~8部:1~5部:1~3部とする。これにより、ウコン含量が従来よりも増量され、十分な錠剤硬度、低い摩損度を有するウコン含有錠剤を得ることができる。
【0025】
請求項3記載のウコン含有錠剤の製造方法は、4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得た後に、
前記整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、それぞれ順に乾式混合し、さらに、微粉HPC、粉末セルロース、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンを添加して乾式混合し、表面改質された混合末を得て、
この混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする。
【0026】
このウコン含有錠剤の製造方法によれば、4種ウコン粉末とウコン抽出物にセルロース誘導体水溶液(ヒドロキシプロピルセルロース水溶液)を用いて湿式コーティングにより表面改質した後、さらに粉末マルトース(サンマルト(登録商標))、微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを用いて、乾式混合により表面改質する。
【0027】
ここで、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとに、微粉HPCとしてセルニー(登録商標)SSL-SFP(商品名:日本曹達株式会社)、粉末セルロースとしてKCフロック(登録商標:日本製紙株式会社)、結晶セルロースとしてセオラス(登録商標)OD-20F(商品名:旭化成株式会社)、または高度分岐環状デキストリンとしてクラスターデキストリン(登録商標:江崎グリコ株式会社)を添加することもできる。
【0028】
請求項4記載のウコン含有錠剤の製造方法は、4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、
前記4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末100部を、攪拌造粒装置、流動層造粒装置、転動造粒装置のいずれかに投入して均一に混合し、そこに前記ウコン抽出物1~5部を添加し均一に混合し、
ここに、セルロース誘導体水溶液1~10部を添加して湿式コーティングにより表面改質した顆粒を得て、
前記顆粒を乾燥して整粒し整粒顆粒を得るとともに、
予め篩過して解凝集した微粒シリカゲル1~10部と、粉末マルトース1~10部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステル1~5部とを、予め混合して混合末を得て、
前記整粒顆粒に前記混合末を乾式混合するとともに、
さらに、微粉HPC、粉末セルロース、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンを添加して、表面改質された混合末を得て、
この表面改質された混合末を打錠機を用いて錠剤を製する
ことを特徴とする。
【0029】
このウコン含有錠剤の製造方法によれば、4種ウコン粉末とウコン抽出物にセルロース誘導体水溶液(ヒドロキシプロピルセルロース水溶液)を用いて湿式コーティングにより表面改質した後、さらに粉末マルトース(サンマルト(登録商標))、微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを用いて、乾式混合により表面改質する。
【0030】
ここで、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとに、微粉HPCとしてセルニー(登録商標)SSL-SFP(商品名:日本曹達株式会社)、粉末セルロースとしてKCフロック(登録商標:日本製紙株式会社)、結晶セルロースとしてセオラス(登録商標)OD-20F(商品名:旭化成株式会社)、または高度分岐環状デキストリンとしてクラスターデキストリン(登録商標:江崎グリコ株式会社)を添加することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る請求項1記載のウコン含有錠剤の製造方法によれば、ウコンの持つ様々な有用な作用を、ウコンに含まれる精油成分とともに得ることができ、粉末マルトースを添加することで表面改質され、さらに微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを添加することで表面改質されて、成形性を良好に、すなわち、打錠機にて錠剤を成形する際に、打錠障害を防止して錠剤を得ることができる。
【0032】
また、成形され製品となる錠剤に精油成分が含まれている状態でありながら十分な硬度を有し、流通過程などで損壊などを起こすことがない。つまり、錠剤の静的な強度として、製造過程や使用者の取り扱いなど直接に力が加わることに対して耐える強度を備える。さらに、落下や摩耗などによる錠剤破壊のしやすさの指標となる摩損度を極めて小さく、従来品のような錠剤表面の一部が欠落したり、剥離を起こすことがない。つまり、錠剤の動的な強度として、流通過程での取り扱いなど輸送中での振動など外力から耐える強度を備える。錠剤内部の精油成分などの滲み出しにより粉末の粒子間の結合力の低下によって錠剤硬度の低下や摩損度の増大が起きるが、本発明の製造方法により得られるウコン含有錠剤は、このような問題の発生が無い。また、造粒装置によって表面改質された顆粒をより容易に得ることができる。これらのことから、実用に十分耐え得る錠剤物性を有する優れたウコン含有錠剤を得ることが可能となる。
【0033】
そして、本発明のウコン含有錠剤の製造方法によれば、組成の配合比として、ウコンの持つ有用な作用を有する精油成分とウコン抽出物とともに十分に含有された錠剤を得ることができ、また、十分な錠剤硬度であって、且つ摩損度が低く、錠剤としての流通性など、十分な実用性を備えたウコン含有錠剤を得ることができる。
【0034】
本発明に係る請求項2記載のウコン含有錠剤の製造方法によれば、造粒装置によって表面改質された整粒顆粒に、粉末マルトースと微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとを予め混合して混合末とし添加する工程としたことで、それぞれを混合して表面改質するよりも均一に分散して表面改質されることとなり、ウコン抽出物による錠剤硬度への影響を軽減することができ、より品質の良いウコン含有錠剤を容易に得ることができる。
【0035】
また、組成の配合比として、ウコンの持つ有用な作用を有する精油成分とウコン抽出物とともに十分に含有された錠剤を得ることができ、また、十分な錠剤硬度であって、且つ摩損度が低く、錠剤としての流通性など、十分な実用性を備えたウコン含有錠剤を得ることができる。
【0036】
本発明に係る請求項3記載のウコン含有錠剤の製造方法によれば、整粒顆粒に、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲルと、粉末マルトース部と、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステルとを、それぞれ順に乾式混合し、さらに、微粉HPC、粉末セルロース、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンを添加して乾式混合し、表面改質された混合末を得る手順としたことで、さらに錠剤硬度を高くしてウコン含有錠剤を得られる。
【0037】
本発明に係る請求項4記載のウコン含有錠剤の製造方法によれば、整粒し整粒顆粒を得るとともに、予め篩過して解凝集した微粒シリカゲルと、粉末マルトースと、予め篩過して解凝集したショ糖脂肪酸エステルとを、予め混合して混合末を得て、この混合末に整粒顆粒を乾式混合するとともに、さらに、微粉HPC、粉末セルロース、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンを添加して、表面改質された混合末を得る手順としたことで、さらに錠剤硬度を高くしてウコン含有錠剤を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のウコン含有錠剤は、4種のウコンである紫ウコン、熱帯ウコン、秋ウコン、春ウコンの粉末と、ウコン抽出物とを含有する錠剤であって、これら4種のウコン粉末にウコン抽出物を含有する成分を、表面改質剤として、粉末マルトース、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステルおよびセルロース誘導体を特定な組成で用いることとし、ここで、セルロース誘導体は、湿式コーティングにより表面改質を行って顆粒状にし、さらに、この顆粒に粉末マルトース、微粒シリカゲル、およびショ糖脂肪酸エステルを乾式混合することで表面改質して、これを打錠し錠剤とする製造方法にて得られるものである。
この製造過程において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロースが好適であり、また、粉末マルトースは、サンマルト(登録商標:株式会社林原)が好適であり、錠剤としての硬度、摩損度が好ましい実用に十分耐えうるウコン含有錠剤が得られるものとなる。
【0039】
また、乾式混合による表面改質において、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとに、微粉HPC(セルニー(登録商標)SSL-SFP(商品名:日本曹達株式会社))、粉末セルロース(KCフロック(登録商標:日本製紙株式会社))、結晶セルロース(セオラス(登録商標)OD-20F(商品名:旭化成株式会社))、または高度分岐環状デキストリンとしてクラスターデキストリン(登録商標:江崎グリコ株式会社)を添加することもできる。
【0040】
本発明におけるウコンとウコン抽出物の特徴は以下の通りである。
本発明で用いるウコンは、4種類のウコンであり、秋ウコン、春ウコン、紫ウコン、熱帯ウコンである。漢方では、利胆、健胃、利尿、止血、通経薬などに用いられているものである。
秋ウコンには、精油成分とクルクミンが含有されている。クルクミンの働きによって、肝機能の強化、消化促進、食欲増進などが期待できる。
春ウコンには、食物繊維とミネラル、精油の働きによって、腸に適度な刺激を与えることからお腹の調子を整える。
紫ウコンは、ガジュツとも言われ、芳香があり、味が苦く、消化器を刺激することから芳香健胃作用として使用されている。
熱帯ウコンは、精油成分およびクルクミンの含有量が高い。
【0041】
本願出願人による栽培及び計測結果での比較では、精油成分が、2021年および2022年に収穫した秋ウコンで1.3mL/50g、熱帯ウコンが2.8~3.4mL/50gとなり、熱帯ウコンの精油成分が秋ウコンのおよそ2~3倍であった。
また、クルクミンを含む総クルクミノイドの比較では、2021年および2022年に収穫した秋ウコンが0.461~0.612%であり、熱帯ウコンは5.5~5.8%となり、秋ウコンに対し熱帯ウコンがおよそ9~10倍以上の結果が得られた。したがって、熱帯ウコンではクルクミンによる高い効果が期待できる。
なお、参考として、春ウコンおよび紫ウコンの総クルクミノイドは、0.08~0.233%、0~0.0007%であった。
【0042】
本発明で用いるウコン抽出物は、秋ウコンのエタノール抽出物で、クルクミノイドを95%含有している。このウコン抽出物を錠剤に配合することで、クルクミンによる高い効果が期待できる。このクルクミンは、作用として、肝保護作用、抗酸化性、抗腫瘍作用、免疫賦活作用、抗炎症作用、抗菌作用を有している。
このクルクミンは、水に難溶性で、耐光性として紫外線に弱く、微量の金属、特に鉄イオンの共存で暗色化する。また、アルコールまたは、ジエチルエーテル溶液は、鮮黄色を示す。なお、クルクミノイドも水に難溶性であり、エタノール溶解性化合物である。
クルクミノイドとは、ポリフェノールの一種で、主にクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンの3種類に分類される。
【0043】
本発明のウコン含有錠剤に用いる結合剤として使用するセルロース誘導体には、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC・カルメロース)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC・ヒプロメロース)などがある。
【0044】
また、添加剤を構成する微粒シリカゲルとしては、微粒二酸化ケイ素、微粉末シリカ(サイロページ(登録商標:富士シリシア化学株式会社)、軽質無水ケイ酸(アエロジル200(登録商標:日本アエロジル株式会社),アドソリダー101(登録商標:フロイント産業株式会社)などがある。
【0045】
さらに、添加剤を構成するショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ステアリン酸エステル(S-370,S-370F,S-1170,S-1170F(商品名:三菱ケミカル株式会社))、ショ糖ベヘニン酸エステル(B-370,B-370F(商品名:三菱ケミカル株式会社))、ショ糖混合脂肪酸エステル(POS-135(商品名:三菱ケミカル株式会社))などが用いられる。
【0046】
さらに、本実施形態のウコン含有錠剤においては、これらに加えて、安定剤や香料、甘味剤なども添加することが出来る。
【0047】
このように構成された本発明のウコン含有錠剤は、健康食品分野をはじめ、食品、医薬品、医薬部外品などの分野にも適用することができる。また、剤形としては、錠剤が最も好ましいが、カプセル剤、穎粒剤、細粒剤、散剤などとして構成することができる。
【0048】
このように構成された本発明のウコン含有錠剤では、秋ウコン、春ウコン、紫ウコンおよび熱帯ウコンの4種を配合した錠剤で、上述したように、それぞれのウコンの本出願人による自社栽培により2021年および2022年に収穫したウコンの精油含量は、秋ウコンが1.3mL/50g、春ウコン0.8~1.1mL/50g、紫ウコン0.5~0.7mL/50g、そして熱帯ウコンでは2.8~3.4mL/50gであった。熱帯ウコンの精油含量は、秋ウコンの精油含量のおよそ2~3倍であった。この結果に基づいて1錠(330mg)当たりの精油含量を算出すると9.2μLとなる。また、4種ウコンに加えて配合したウコン抽出物は、秋ウコンのエタノール抽出物でクルクミノイド95%で、5%は油脂、脂肪酸など脂溶性成分と思われる。ウコン抽出物に由来する脂溶性成分は1錠当たり0.3mgになる。
【0049】
本発明のウコン含有錠剤では、1錠(330mg)当たり精油含量9.2μLであり、非特許文献1での錠剤の秋ウコン95%含有錠の10%以上高い精油含量で、さらに本発明のウコン含有錠剤では、ウコン抽出物由来の脂溶性成分を1錠当たり0.3mg含有した錠剤となり、錠剤硬度が6kgf以上となる高い硬度を有する錠剤を製することができた。
【0050】
本発明のウコン含有錠剤では、ウコン粉末を脱脂することなく非特許文献1に示された錠剤の95%秋ウコン含有錠よりも高い精油含量と脂溶性成分を含有しているにもかかわらず非特許文献1に示されるウコン含有錠の2倍以上の錠剤硬度を有する錠剤化技術を確立した。
【0051】
したがって、本発明のウコン含有錠剤は、ウコンの持つ様々な有用な作用を、ウコンに含まれる精油成分とともに得ることができ、粉末マルトースを添加することで表面改質され、さらに微粒シリカゲルおよびショ糖脂肪酸エステルを添加することで表面改質されて、成形性を良好に、すなわち、打錠装置にて錠剤を成形する際に、打錠障害を防止でき、成形され製品となる錠剤に精油成分が含まれている状態であっても十分な硬度を有し、硬度が5kgf以上となり、流通過程などで損壊などを起こすことがなく、落下や摩耗などによる錠剤破壊のしやすさの指標となる摩損度を極めて小さく、0.5%以下とすることができ、従来品のような錠剤表面の一部が欠落したり、剥離を起こすことがなく、実用に十分耐え得る錠剤物性を有する優れたウコン含有錠剤を製造することが可能となる。
【0052】
さらに、本発明のウコン含有錠剤では、精油成分を含んでいるが、十分な硬度で構成されていることから、上記したように容易に損壊することがなく、且つ摩損することが略無い。このことから、従来のウコン含有錠剤においては非特許文献1などに示されるように硬度を得るために脱脂を行っていたが、本発明のウコン含有錠剤では、有用な成分である精油成分を含有した状態で錠剤として得られており、精油成分の持つ胆汁分泌促進、健胃、殺菌、防腐などの薬理作用などを有するウコン末として摂取することが可能で、十分な硬度を有する錠剤となり、流通時の外力による損壊などが発生することが無いものである。
【0053】
また、本発明のウコン含有錠剤では、添加剤として配合した粉末マルトースとしてのサンマルト(登録商標)の性質である多孔質により、クルクミンなど精油成分(ウコン抽出物)の含有状態の安定性を得る効果があり、これにより経時的安定性を得られ、錠剤としての経時変化、すなわち経時による硬度の低下や摩損度の増加を招くおそれを抑えることが可能となる。
さらに、粉末マルトースに加え、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとを添加して表面改質を行っていることによっても、錠剤への成形性を良好とし、打錠障害の回避を行えるものである。
【0054】
次に、上述したウコン含有錠剤の製造方法について説明する。
まず、4種のウコンである秋ウコン、春ウコン、紫ウコン、熱帯ウコンのそれぞれの粉末を、配合比率を等しくして、ウコン抽出物とともに、攪拌造粒装置を用いて均一に混合する。なお、攪拌造粒装置の他、流動層造粒装置や転動造粒装置を用いることとしてもよい。
【0055】
次に、上記の混合粉末を、予め水に溶解したセルロース誘導体の溶液で湿式コーティングする。セルロース誘導体としては、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0056】
次に、この湿式コーティングにより表面改質した顆粒を乾燥機を用いて乾燥する。
【0057】
次に、この乾燥顆粒を整粒機で整粒し、整粒顆粒とする。
【0058】
次に、整粒顆粒に、微粒シリカゲル、粉末マルトース、ショ糖脂肪酸エステルを添加し、乾式混合により表面改質する。
ここで、微粉HPC、結晶セルロース、高度分岐環状デキストリンをさらに添加し、乾式混合により表面改質することとしてもよい。
【0059】
次に、この表面改質された顆粒を打錠機を用いて錠剤を製する。
【0060】
ここで、それぞれの組成の配合比は、4種のウコン粉末を100部、ウコン抽出物を1~5部、粉末マルトースを1~10部、セルロース誘導体を1~10部、微粒シリカゲルを1~10部、ショ糖脂肪酸エステルを1~5部とする。なお、好ましくは、4種のウコン粉末を100部、ウコン抽出物を1~3部、粉末マルトースを1~8部、セルロース誘導体を1~8部、微粒シリカゲルを1~5部、ショ糖脂肪酸エステルを1~3部とする。これにより、ウコン含量が従来よりも増量された配合比となりながら、十分な錠剤硬度、低い摩損度を有するウコン含有錠剤を得ることができる。
【0061】
本発明のウコン含有錠剤の製造方法によれば、ウコン粉末とウコン抽出物とを水溶性高分子溶液であるセルロース誘導体水溶液で湿式コーティング法により表面改質した後に、そのウコン粉末とウコン抽出物を表面改質した顆粒に、さらに、微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルをそれぞれ乾式混合法によってウコン含有顆粒を表面改質した。
この表面改質については、「標準処方への表面改質法の応用」加藤ら((薬剤学,66(1)67-76P(2006))において、原薬および賦形剤を含む粉体を軽質無水ケイ酸と一括して混合することで表面改質を行う例を示しているが、本発明の製造方法では、主成分としてのウコンを予め湿式コーティング法により表面改質しており、そのウコン含有顆粒をさらに、粉末マルトースとともに微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルを用いて個々に乾式混合法によって表面改質し、また、粉末マルトースと微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとの最適な混合比を特定したことで、ウコン抽出物を含有しながら十分な硬度と低い摩損度を備えた錠剤を得ることができた。
【0062】
なお、本発明のウコン含有錠剤には、用途に応じて種々の成分を配合することが出来る。
例えば、機能性素材としては、月見草、菊の花、大豆イソフラボン、アガリスク、ノコギリヤシ、ヨウ葉、紅麹、ドコサヘキサエン酸、レスベラトール、ラクトフェリン、サラシア、グルコサミン、ポリフェノール、コラーゲン、ペプチド、コエンザイムQ10、ケール、アミノ酸、イチョウ葉、霊芝、ビタミン、ミネラル、ギャバ(GABA)、アスタキサンチン、プロポリス、ローヤルゼリー、スピルリナ、クロレラなどの成分が含まれることとしてもよい。
【0063】
また、医薬品分野においては、マレイン酸クロルフェニラミン,塩酸ジフェンヒドラミン,プロメタジンなどの抗ヒスタミン剤、臭化水素酸デキストロメトルファン,グアイフェネシン,テオフィリンなどの鎮咳去痰剤、カプトリル,メチルドーパ,塩酸ラベタロールなどの血圧降下剤、ピンドロール,塩酸プロプラノロール,塩酸プロカインアミドなどの不整脈用剤、イソソルビド,フロセミドなどの利尿剤、臭化水素酸スコポラミン,塩酸パパベリンなどの鎮痙薬、ロートエキス,ジアスターゼ,ケイヒ油などの健胃消化剤、塩化ベルベリン,乳酸菌,ビフィズス菌などの整腸剤、酸化マグネシウム,炭酸マグネシウム,スクラルファートなどの制酸剤、シメチジン,ラニチジン,ファモチジンなどのH2 受容体括抗剤、アセトアミノフェン,イブプロフェン,エテンザミドなどの解熱鎮痛消炎薬、ジアゼパム,ニトラゼパム,フェノバルビタールナトリウムなどの催眠鎮静剤、アンフェタミン,イミプラミンなどの抗うつ薬などを医薬品成分として含まれることとしてもよい。
【0064】
さらに、滋養強壮保健薬には、例えば、生薬,漢方薬などの天然由来物質、タンパク、アミノ酸、鉄,カルシウム,マグネシウムなどのミネラル。ビタミンA,ビタミンB1 ,ビタミンB2 ,ビタミンB6 ,ビタミンB12,ビタミンC, ビタミンEなどのビタミンなどが含まれることとしてもよい。
【実施例
【0065】
次に、上述した実施の形態における具体的な実施例について説明する。
<比較例>
まず始めに、本発明のウコン含有錠剤との比較として、ウコン抽出物を含有しない4種のウコンの粉末を主成分とした比較錠剤を作成する。
以下に各錠剤物性の配合量を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
比較錠剤としてA-1~A-7の7例を各配合量を変えて組み合わせる。これら錠剤の主な成分としては、4種のウコンをそれぞれ等配合量とし、それぞれ23.5重量%として、その全量を94.0重量%とする。これに、セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロースを3.0重量%または1.5重量%、微粒シリカゲルを2.0重量%、およびショ糖脂脂肪酸エステルを1.0重量%とする組成とする。
【0068】
この比較錠剤を製造する手順として、まず、4種のウコン粉末を攪拌造粒装置に投入する。
次に、ここにヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングして顆粒とし、この顆粒を60℃で、含水量3%以下に乾燥する。
次に、この乾燥した顆粒をコーミル(1.14mm径スクリーン、丸型インペラー)で整粒する。
次に、整粒した顆粒をポリ袋に投入し、ここに、予め20メッシュで篩過した微粒シリカゲルを乾式混合した後、さらに、予め30メッシュで篩過したショ糖脂肪酸エステルを添加し、ポリ袋で乾式混合する。
次に、この混合末をロータリー打錠機を用いて、1錠あたりの重量350mg、剤形9mmφAR、回転数30rpmで打錠し、錠剤を製する。
【0069】
この製造手順において、各比較例A-1~A-7の錠剤に添加されるそれぞれを以下の重量%で組み合わせる。
比較例A-1、A-4,A-6では、ヒドロキシプロピルセルロースを3.0重量%とする。比較例A-2、A-3、A-5、A-7においてはヒドロキシプロピルセルロースを1.5重量%とする。これら比較例A-2、A-3、A-5、A-7では、微粉HPCを2.5重量%を添加する。比較例A-3では微粉HPCに微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとを添加、A-5とA-7では微粒シリカゲルとショ糖脂肪酸エステルとに微粉HPCを添加する。A-4とA-5では、高度分岐環状デキストリンを5.0重量%添加する。A-6とA-7では、粉末マルトースを5.0重量%添加する。
なお、上記の微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、微粉HPC、高度分岐環状デキストリン、粉末マルトースは、それぞれ以下に示すものを用いた。
微粒シリカゲル(二酸化ケイ素):サイロページ(登録商標:富士シリアル化学株式会社)
ショ糖脂肪酸エステル:シュガーエステルB-370F(商品名:三菱ケミカル株式会社)
微粉HPC:セルニーSSL-SFP(登録商標:日本曹達株式会社)
高度分岐環状デキストリン:クラスターデキストリン(登録商標:江崎グリコ株式会社)
粉末マルトース:サンマルト(ミドリ)(登録商標:株式会社林原)
【0070】
<実施例>
次に、本発明のウコン含有錠剤の実施例として、各成分の配合量を変えて5例を作成する。
以下に各錠剤物性の配合量を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
ウコン含有錠剤として実施例1~5の5例を各配合量を変えて組み合わせ、これら錠剤の主な成分としては、4種のウコンをそれぞれ等配合量とし、それぞれ23.5重量%として、その全量を94.0重量%とし、ウコン抽出物を2.0重量%とする。これに、セルロース誘導体としてヒドロキシプロピルセルロースを3.0重量%または1.5重量%、微粒シリカゲルを2.0重量%、およびショ糖脂脂肪酸エステルを1.0重量%、粉末マルトースを5.0重量%とする組成とする。
実施例1と実施例2では、ヒドロキシプロピルセルロースを3.0重量%とし、実施例3,4,5では、ヒドロキシプロピルセルロースを1.5重量%とした。これら実施例3,4,5においては、実施例3では微粉HPCを2.5重量%、実施例4では粉末セルロースを2.5重量%、実施例5では結晶セルロースを2.5重量%、それぞれ添加した。また、錠剤の1錠重量は、実施例1~5では、330mgの錠剤とした。
【0073】
このウコン含有錠剤の製造手順として、まず、4種のウコン粉末を攪拌造粒装置に投入し、均一に混合した後、そこにウコン抽出物を添加し、均一に混合する。
次に、ここにヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングして顆粒とし、この顆粒を60℃で、含水量3%以下に乾燥する。
次に、この乾燥した顆粒をコーミル(1.14mm径スクリーン、丸型インペラー)で整粒し、整粒顆粒とする。次に、この整粒顆粒をポリ袋に投入し、ここに、予め篩過した微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、粉末マルトースを添加し、ポリ袋で乾式混合する。
次に、この混合末をロータリー打錠機を用いて、1錠あたりの重量330mg、剤形9mmφAR、回転数30rpmで打錠し、錠剤を製する。
【0074】
なお、実施例1では、乾式混合において微粒シリカゲル、粉末マルトース、ショ糖脂肪酸エステルの各成分ごとに混合を行う。また、実施例2では、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、粉末マルトースの3つの成分を予め混合して、その混合末を整粒した顆粒に投入し、乾式混合する。また、この実施例2を除く実施例1,3~5は、整粒した顆粒をポリ袋に投人し、微粒シリカゲル、粉末マルトース、微粉HPC、高度分岐環状デキストリン、粉末セルロース、結晶セルロース、ショ糖脂肪酸エステルは、それぞれ成分ごとに乾式混合した。
なお、上記の微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、微粉HPC、高度分岐環状デキストリン、粉末マルトース、粉末セルロース、結晶セルロースは、それぞれ以下に示すものを用いた。
微粒シリカゲル(二酸化ケイ素):サイロページ(登録商標:富士シリアル化学株式会社)
ショ糖脂肪酸エステル:シュガーエステルB-370F(商品名:三菱ケミカル株式会社)
微粉HPC:セルニーSSL-SFP(登録商標:日本曹達株式会社)
高度分岐環状デキストリン:クラスターデキストリン(登録商標:江崎グリコ株式会社)
粉末マルトース:サンマルト(ミドリ)(登録商標:株式会社林原)
粉末セルロース:KCフロック(登録商標:日本製紙株式会社)
結晶セルロース:セオラス(登録商標)OD-20F(商品名:旭化成株式会社)
なお、上記各実施例の各配合量は、本発明を限定するものではない。
【0075】
<上記比較例と上記実施例の比較検討例>
次に、上記した各比較例と上記実施例のそれぞれに対する各添加物を有さない例を比較例A,Bとして示す。
<比較例A>
比較例Aは、上記した比較例A-1~7に対し、各添加物である微粉HPC、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、高度分岐環状デキストリン、粉末マルトースを添加せずにウコン含有錠剤として製したものである。
具体的には、4種のウコンを94.0重量%、ヒドロキシプロピルセルロースを3.0重量%からなる組成で、4種ウコンを攪拌造粒機に投入し、この粉末にヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングし、この顆粒を60℃で、含水量3%以下に乾燥する。この乾燥した顆粒をコーミル(1.14mm径スクリーン、丸型インペラー、15Hz)で整粒し、この整粒顆粒をロータリー打錠機を用いて、回転数30rpmで打錠し、1錠重量350mg、剤形9mmφARの錠剤を製した。
なお、回転数:1Hz=60rpmである。
【0076】
<比較例B>
比較例Bは、上記した実施例1~5に対し、各添加物である微粉HPC、微粒シリカゲル、ショ糖脂肪酸エステル、粉末マルトース、結晶セルロースを添加せずにウコン含有錠剤として製したものである。
この錠剤では、4種のウコンとウコン抽出物を攪拌造粒機に投入し、この粉末にヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加し、湿式コーティングし、乾燥・整粒した後、粉末マルトースを添加し、上記比較例Aと同様に錠剤を製した。ただし、1錠重量は330mgである。
【0077】
<比較例および実施例の評価>
比較例A-1~A-7および比較例Aの製造直後の錠剤において、錠剤硬度および摩損度を測定した。結果を表3及び表4に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
また、実施例1~5および比較例Bの製造直後の錠剤において、錠剤硬度、摩損度、崩壊時間および錠剤水分を比較した。これら結果を表5~8に示す。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
【表8】
【0085】
錠剤硬度は、錠剤硬度計SmartTest50 ST-50(フロイント産業株式会社製)を用い、各錠剤20錠の平均値で評価した。
摩損度は、錠剤摩損度試験器(富山産業株式会社製:TFT-120)25rpm、15分(試料質量10g)で測定した。
崩壊時間は、錠剤崩壊試験器NT-610(富山産業株式会社製)を用い、水を試験液として行い、6錠で評価した。
錠剤水分は、赤外水分計(株式会社ケット科学研究所製:FD-600-2)を用いて、60℃、20分(試料質量10g)で測定し、評価した。
【0086】
各試験結果から表3に示す比較例A-1~A-7では、比較例A-2を除き錠剤硬度は約5~9kgfで、比較例Aの錠剤硬度は約2kgfであった。
これら比較例A-1~A-7のうち、粉末マルトース(サンマルト)を添加し、表面改質した比較例A-6およびA-7は、錠剤硬度が約6~9kgfとなり比較例Aの3~4倍以上高かった。
このことから、添加剤として粉末マルトース(サンマルト)を添加して表面改質を行うことで硬度が向上することが判明した。すなわち、ウコン含有錠剤として、粉末マルトース(サンマルト)を添加させることが有効であることが判り、実施例1~5および比較例Bに示す錠剤を製し、それぞれの試験の評価を行う。
【0087】
粉末マルトース(サンマルト)を添加したウコン含有錠剤の表5に示す実施例1から実施例5では、錠剤硬度が約6~7kgfとなり、比較例Bでは、錠剤硬度が約3kgfであった。
ウコン抽出物を含有し添加剤として粉末マルトース(サンマルト)を単独で用いた比較例Bと比べて、この粉末マルトース(サンマルト)とともに微粒シリカゲル(サイロページ)およびショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)を添加し、表面改質を行い成形したウコン含有錠剤の実施例1~5では、その錠剤硬度が比較例Bの2倍以上高いことが判る。すなわち、粉末マルトース(サンマルト)、微粒シリカゲル(サイロページ)、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)のそれぞれを添加することにより、錠剤として十分な硬度を備えることができる結果を得られた。
【0088】
<比較例および実施例の経時変化試験結果>
次に、上述した各実施例および各比較例の各錠剤の経時変化の試験結果を示す。
比較例Aおよび比較例Bと比較例A-1~A-7および実施例1~5のそれぞれの錠剤について、それぞれをアルミ袋に入れ、ヒートシールして密封状態とし、40℃・75RH%で保存した。
それぞれに密封保存された錠剤を、1週間後に開封し取り出したたものと、1ヶ月後に開封し取り出したものとで、それらの錠剤硬度および摩損度を測定した。なお、錠剤を取り出した後、再保管としてアルミ袋はヒートシールした。
比較例Aと比較例A-1~A-7および比較例Bと実施例1~5のそれぞれの1週間後と1カ月後の各経時的な錠剤硬度および摩損度の測定結果を表3~6に示した。なお、試験方法は上述の通りである。
【0089】
まず、各試験結果から比較例A-1~A-7について、保存期間1ヶ月後では、試験開始時と比較して比較例A-2、A-5、A-6およびA-7以外はすべて錠剤硬度が低下している。特に、比較例A-2は錠剤硬度が3~4kgと低く、各添加剤を含んでないことであることが判る。また、比較例A-5では、1週間後で僅かな低下がみられている。一方、比較例A-6およびA-7は、経時的に錠剤硬度の増加傾向が確認できた。
そこで、比較例A-6およびA-7に添加剤として用いた粉末マルトース(サンマルト)を用いることが硬度を良好とすることが判り、この粉末マルトース(サンマルト)を使用し、4種ウコン粉末にウコン抽出物を配合した処方における実施例1~5で経時的な錠剤物性を観察した(表5~8参照)。
【0090】
次に、各実施例のウコン含有錠剤の硬度について、各添加剤を含まない比較例Bと比べ、実施例1~5においては、経時変化後であっても錠剤硬度が約2倍以上高い結果が得られた。上述の通り、ウコン抽出物を含有し添加剤として粉末マルトース(サンマルト)を単独で用いた比較例Bと比べて、この粉末マルトース(サンマルト)と、微粒シリカゲル(サイロページ)、ショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)のそれぞれを添加する実施例1~5の錠剤は、経時結果としても十分な硬度を有することができる結果を得られた。
【0091】
これら実施例のうち、実施例1および実施例4では、1ヶ月保存で僅かな錠剤硬度の低下がみられた。実施例2および実施例5については、1週問保存で僅かな低下はみられたが、1ヶ月保存では、開始時に比較して僅かに錠剤硬度が増加している(表5参照)。
実施例1および実施例2は、同一処方で、製法としての乾式混合による表面改質を、実施例1では、それぞれの成分ごとに乾式混合とし、実施例2では、すべての成分を予め乾式混合し、この混合粉末を用いた表面改質としている。この製造方法における手順の違いにより、粉末マルトース(サンマルト)が、実施例1よりも実施例2の製法、すなわち予め混合して表面改質を行うことで均一に分散したことが判り、この粉末マルトース(サンマルト)による4種ウコン粉末およびウコン抽出物の精油成分、または脂溶性成分による錠剤硬度への影響が軽減されたものと考えられる。
【0092】
すなわち、ウコン含有錠剤としての保存期間を延ばす有効性について粉末マルトース(サンマルト)を用い、且つ、微粒シリカゲル(サイロページ)とショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)のそれぞれを添加して表面改質を行うことにより効果が得られることが判った。
【0093】
また、各比較例のウコン含有錠剤の摩損度に関しては、表4に示す通り、1ヶ月保存で、比較例Aで約0.1%から約0.4%の増大に対して、比較例A-1では約0.1%以下となり増大せずに留まっている。また、他の比較例において、比較例A-1と同様に、微粒シリカゲル(サイロページ)とショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)を添加した比較例A-3~A-7では、経時変化試験した保存品を含めて約0.1%程度に留まっている。微粒シリカゲル(サイロページ)とショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)を添加していない比較例A-2は、製造直後1.10%と高い。この結果から微粒シリカゲル(サイロページ)とショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)の添加は、錠剤の摩損度を抑制する効果がみられることが確認できた。そして、さらに粉末マルトース(サンマルト)を添加した比較例A-6,A-7は、比較例A-6の経時変化1ヶ月後で0.14%と僅かに高かったが、約0.1%以下と錠剤の摩損度に関しても粉末マルトース(サンマルト)は、微粒シリカゲル(サイロページ)およびショ糖脂肪酸エステル(シュガーエステル)と混合して用いることで、大きな効果がみられた。
【0094】
さらに、比較例Bの摩損度では、表6に示す通り、約0.4%から約0.7%の増大に対して、実施例1では大きな変化が見られない。摩損度の経時的な変化についても粉末マルトース(サンマルト)を添加し、表面改質することで、1週間後の摩損度の減少は見られるものの、1カ月後であっても大きく増大することはなく、製造直後と比べても低く抑えられることが判る。崩壊時間に関しては、表7に示す通り、油性成分を含む錠剤で10分程度と比較的速やかな崩壊が確認された。また、水分については、表8に示す通り、2%程度に保持されていた。経時的にも崩壊時間は、1ヶ月後で表7にそれぞれ示す通りとなり、約10分程度で崩壊している。水分についても1ヶ月後の結果が表8に示す通りとなり、経時的にも変化がみられない。
【0095】
さらに、ウコンの代表的な活性成分と考えられているクルクミンについて、本発明の実施例2の物性での結果では、経時変化3ヶ月後で、打錠直後の結果と比較して、クルクミンの含量の低下はみられず、2.1g/100g、すなわち1錠(330mg)中に6.93mgであった。
【0096】
また、クルクミノイドは、3ヶ月後0.6%と僅かな低下が確認されたが、打錠直後の3.12g/100g、すなわち1錠(330mg)中に10.3mgから、3ヶ月後は3.10g/100g、すなわち1錠(330mg)中に10.23mgの結果で、このクルクミノイドについても大きな変化はみられなかった。
【要約】      (修正有)
【課題】ウコンに含まれる有用な成分である精油成分を活かしたウコン含有錠剤を得ることができる製造方法を提供するとともに、流通時などの際に容易に型崩れや損壊などを起こさない強度を有するウコン含有錠剤の製造方法を提供する。
【解決手段】4種のウコンである紫ウコン、秋ウコン、熱帯ウコン、春ウコンおよびウコン抽出物を含有した錠剤の製造方法において、4種の各ウコンが配合比率を等しくされたウコン粉末とウコン抽出物とを、セルロース誘導体を用いて湿式コーティングにより表面改質する工程と、表面改質されたウコン粉末とウコン抽出物に、粉末マルトースと、微粒シリカゲルとを、それぞれに乾式混合して、表面改質する工程と、さらにショ糖脂肪酸エステルを乾式混合して、表面改質する工程と、を含む。
【選択図】なし