(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-12
(45)【発行日】2023-10-20
(54)【発明の名称】水性インク組成物、記録方法、記録物の製造方法、記録物及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20231013BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231013BHJP
C09D 11/38 20140101ALI20231013BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
C09D11/38
(21)【出願番号】P 2023103903
(22)【出願日】2023-06-26
【審査請求日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022106730
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 菜美
(72)【発明者】
【氏名】牧本 祐二
(72)【発明者】
【氏名】田村 充功
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-085427(JP,A)
【文献】特開2015-024508(JP,A)
【文献】特開2007-077371(JP,A)
【文献】特開2010-077218(JP,A)
【文献】特開2012-201691(JP,A)
【文献】特開2005-272790(JP,A)
【文献】特開2004-203996(JP,A)
【文献】特開2019-142057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、樹脂と、を含有する水性インク組成物であって、
前記樹脂の少なくとも一部は、高分子微粒子分散体として含有し、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記アクリル系樹脂は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、
前記アクリル系樹脂のTgは、0℃以上120℃以下で
あり、
前記アクリル系樹脂は、以下のモノマーA、及びモノマーCを構成単位として含む共重合体を含有し、
前記モノマーAの含有量は、共重合体全量中64.8質量%以上である
水性インク組成物。
モノマーA:ホモポリマーのTgが60℃以上であって、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.7以上のアクリルモノマー
モノマーC:ホモポリマーのTgが-15℃以上50℃以下のモノマー
【請求項2】
前記アクリル系樹脂は、以下
のモノマーBを構成単位として含む共重合体を含有する
請求項1に記載の水性インク組成物
。
モノマーB:モノマーA以外であって、酸性基または塩基性基を有するモノマー
【請求項3】
前記モノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.9以上4.8以下である
請求項
1又は2に記載の水性インク組成物。
【請求項4】
前記アクリル系樹脂のTgは、40℃以上80℃以下である
請求項1から
3のいずれかに記載の水性インク組成物。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の水性インク組成物を含む
インクセット。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の水性インク組成物をインクジェット吐出する
記録方法。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載の水性インク組成物をインクジェット吐出して記録物を得る
記録物の製造方法。
【請求項8】
基材の表面に請求項1
又は2に記載の水性インク組成物が塗布された記録物。
【請求項9】
請求項1
又は2に記載の水性インク組成物を搭載したインク貯蔵機構を備えた
インクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インク組成物、記録方法、記録物の製造方法、記録物及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インク組成物として、各種の色材を水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液に溶解させた水性インクが広く用いられている。このような水を主成分とする水性インク組成物は、環境に対する影響が少なく、引火することがないため作業者に対して安全性が高い。
【0003】
このような水を主成分とする水性インク組成物にバインダー樹脂として、樹脂エマルジョンを使用することも従来行われている。樹脂エマルジョンとは、樹脂が静電反発力によって樹脂微粒子としてインク組成物中に分散している状態を示すものである。樹脂が溶解した状態の溶解樹脂や、一部溶解樹脂を含有するコロイダルディスパージョンとは異なる。バインダー樹脂として樹脂エマルジョンを含有することにより、分散安定性、吐出安定性等を好ましいものとすることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、スルホン酸基を有するラジカル重合性乳化剤を含有する乳化剤の存在下で、シリル基を有する不飽和単量体と、側鎖に6員環を有する不飽和単量体と、を、乳化重合させてなる、合成樹脂エマルジョンを含有する組成物に関する技術が記載されている。特許文献1には、この組成物は、インク受容層への速やかなインク透過性を維持しつつ、光沢を更に向上させ、特に発色性に優れたかつ塗液の凝集しない安定な皮膜を形成することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水性インク組成物は、水との親和性の高い水溶性有機溶剤を選択することが一般的である。このような水との親和性の高い水溶性有機溶剤は、比較的高沸点であることから、水性インク組成物を乾燥させるのにはより多くの熱量が必要となる。一方、生産性の観点からはできるだけ低温で好適に乾燥する水性インク組成物であることが好ましい。
【0007】
一方で、樹脂を含む水性インク組成物は、製膜時に所定の温度(最低造膜温度)以上の温度を加えることでインク組成物に含まれる樹脂が融着して耐溶剤性の有する塗膜を形成することが可能となる。特に、この樹脂が粒子状の高分子微粒子分散体である場合には、樹脂粒子同士の融着の度合いにより塗膜の状態は大きく変化する。
【0008】
そして、最低造膜温度未満の温度で製膜した場合には、塗膜の製膜が不十分となり、得られる記録物の耐溶剤性に影響を及ぼすことが本発明者らの研究により明らかとなった。
このように本発明者らの見解によれば、高分子微粒子分散体を含有する水性インク組成物においては、低温乾燥性と耐溶剤性はトレードオフの関係にある。
【0009】
本発明は、水性インク組成物を低温で乾燥させた場合であっても、得られる記録物の耐溶剤性の高い水性インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討をした結果、所定範囲のガラス転移温度(Tg)のアクリル系樹脂を含有し、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する水性インク組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0011】
(1)水と、樹脂と、を含有する水性インク組成物であって、
前記樹脂の少なくとも一部は、高分子微粒子分散体として含有し、
前記樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、
前記アクリル系樹脂は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、
前記アクリル系樹脂のTgは、0℃以上120℃以下である
水性インク組成物。
【0012】
(2)前記アクリル系樹脂は、以下のモノマーA、モノマーBを構成単位として含む共重合体を含有する
(1)に記載の水性インク組成物。
モノマーA:水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.0以上のアクリルモノマー
モノマーB:モノマーA以外であって、酸性基または塩基性基を有するモノマー
【0013】
(3)前記モノマーAのホモポリマーのTgが60℃以上である
(2)に記載の水性インク組成物。
【0014】
(4)前記アクリル系樹脂は、さらに以下のモノマーCを構成単位として含む共重合体を含有する
(3)に記載の水性インク組成物。
モノマーC:モノマーA、モノマーB以外であって、ホモポリマーのTgが60℃未満のモノマー
【0015】
(5)前記モノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.9以上4.8以下である
(2)から(4)のいずれかに記載の水性インク組成物。
【0016】
(6)前記アクリル系樹脂のTgは、40℃以上80℃以下である
(1)から(5)のいずれかに記載の水性インク組成物。
【0017】
(7)(1)から(6)のいずれかに記載の水性インク組成物を含む
インクセット。
【0018】
(8)(1)から(6)のいずれかに記載の水性インク組成物をインクジェット吐出する
記録方法。
【0019】
(9)(1)から(6)のいずれかに記載の水性インク組成物をインクジェット吐出して記録物を得る
記録物の製造方法。
【0020】
(10)基材の表面に(1)から(6)のいずれかに記載の水性インク組成物が塗布された記録物。
【0021】
(11)(1)から(6)のいずれかに記載の水性インク組成物を搭載したインク貯蔵機構を備えた
インクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0022】
本発明の水性インク組成物は、低温で乾燥させた場合であっても、得られる記録物の耐溶剤性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0024】
≪1.水性インク組成物≫
本実施の形態に係る水性インク組成物は、水と、水溶性有機溶剤と、樹脂と、を含有する。そして、この記樹脂の少なくとも一部は、高分子微粒子分散体として含有し、樹脂は、Tgは、0℃以上120℃以下であるアクリル系樹脂を含有し、このアクリル系樹脂は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する。
【0025】
最低造膜温度は、水性インク組成物に含まれる高分子微粒子分散体のガラス転移温度(Tg)付近となることが本発明者らの研究により明らかとなった。
【0026】
このような所定範囲のガラス転移温度(Tg)のアクリル系樹脂を含有し、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する水性インク組成物であれば、低温で乾燥させた場合であっても、その塗布表面に耐溶剤性の高い水性インク組成物の層を形成することができる。
【0027】
例えば、水性インク組成物に造膜助剤を含有させて最低造膜温度を下げるような方法もあるが、造膜助剤は一般的に高沸点の有機溶剤が多く、乾燥の際に多くの熱量が必要となってしまい、低温乾燥性を実現できなくなることがある。
【0028】
なお、本実施の形態に係る水性インク組成物は、色材を含有する着色インクであってもよい。本明細書において「色材」とは、染料及び顔料を含むものであり、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色のような画像を形成する着色インクに含まれる染料又は顔料や、ホワイトインクに含まれる白色染料又は白色顔料や、メタリックインクに含まれる光輝性顔料をも含む概念として使用する。
【0029】
この着色インクは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色や淡色のような画像を形成する着色インクであってもよい。また、着色インクは、白色色材を含むホワイトインクであってもよく、光輝性顔料を含むメタリックインク等であってもよい。
【0030】
また、本実施の形態に係る水性インク組成物は、基材に着色インクを塗布するのに先立ち、基材に塗布される受理溶液であってもよい。さらに、色材を含有しないクリアインクであってもよいし、基材等の表面にプライマー層を形成するためのプライマー剤であってもよいし、記録物等の表面にオーバーコート層を形成するためのオーバーコートインクであってもよく、塗料やコーティング剤と称されるものであってもよい。
【0031】
以下、本実施の形態に係るインク組成物に含まれる各成分について説明する。
【0032】
[樹脂]
本実施の形態に係る水性インク組成物は、樹脂を含有する。この樹脂は、少なくとも一部が高分子微粒子分散体として含有する。本明細書において高分子微粒子分散体とは、樹脂が静電反発力によって樹脂微粒子としてインク組成物中に分散している樹脂エマルジョンや一部溶解樹脂を含有するコロイダルディスパージョンの状態となった樹脂を意味し、例えば、水性インク組成物中に溶解したような溶解性樹脂とは異なる。
【0033】
そして、この樹脂はTgが0℃以上120℃以下であるアクリル系樹脂を含有し、アクリル系樹脂は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する。
【0034】
本実施の形態に係る水性インク組成物において、共重合体を構成するモノマーは例えば以下のモノマーA、モノマーBを構成単位として含む共重合体であることが好ましい。
【0035】
モノマーA:水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.0以上のモノマー
モノマーB:モノマーA以外であって、酸性基または塩基性基を有するモノマー
【0036】
このようなモノマーA及びモノマーBを構成単位として含む共重合体を含有することにより、水性インク組成物は、得られる記録物の耐溶剤性をさらに高くすることができるとともに、水性インク組成物の保存安定性をも高くすることが可能となる。
【0037】
さらに、モノマーA、モノマーBを構成単位として含む共重合体において、以下のモノマーCを構成単位としてさらに含む共重合体であることがより好ましい。
【0038】
モノマーC:モノマーA、モノマーB以外であって、ホモポリマーのTgが60℃未満のモノマー
【0039】
このように、モノマーA、モノマーBに加えてホモポリマーのTgが60℃未満のモノマーCを構成単位として含むことで、低温で乾燥させた場合であっても、十分に成膜することが可能となり、得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0040】
なお、アクリル系樹脂とは、構成モノマーの少なくとも1つ以上にアクリル骨格を有する樹脂を意味し、例えば、アクリル骨格を有しないモノマーを含むものであってもよい。
【0041】
また、本明細書では、構成モノマーとは、便宜上、重合体を構成する反応前の単量体であって、エチレン性不飽和多重結合等の反応基を有する重合性化合物を意味するものとして説明するが、実際には、モノマーを構成単位として含むときには、反応前の単量体の状態で含まれるものではなく、多重結合のうちの一つの結合は重合して失われて、共重合体を構成する重合後の単量体として含まれることとなる。
【0042】
また、モノマーは、エチレン性不飽和多重結合等の反応基を有する単量体の重合性化合物であればよく、本明細書ではオリゴマーと称されるような分子量の大きな単量体であってもモノマーと称する。
【0043】
以下、この共重合体を構成してもよいモノマーA、モノマーB、モノマーC、及びその他のモノマーについて説明する。
【0044】
(モノマーA)
モノマーAとは、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.0以上のアクリルモノマーである。
【0045】
「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」は、疎水性の指標であり、「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」が所定以上(すなわち、疎水性が相対的に高いモノマー)のモノマーAを構成単位として含むことにより、エタノール等の溶剤に対して膨潤しづらい共重合体となる。このため、モノマーAを構成単位として含む共重合体であれば、得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることが可能となる。
【0046】
このようなモノマーAの中でも、このモノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、1.2以上であることが好ましく、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましい。このモノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、5.0以下であることが好ましく、4.8以下であることがさらに好ましい。モノマーAの水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)は、1.2以上5.0以下であることが好ましく、1.7以上4.8以下であることがより好ましく、1.9以上4.8以下であることがさらに好ましい。
【0047】
また、このモノマーAは、ホモポリマーのTgが60℃以上であることが好ましい。モノマーAのホモポリマーのTgが60℃以上であることで、得られる記録物の耐擦性を向上させることが可能となる。
【0048】
また、このモノマーAの中でも、下記式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値である側鎖部分SP値が8.5以上13.0以下であることが好ましい。
【0049】
CH2=C(R1)-R2 ・・・式(1)
(R1は水素又はメチル基である)
【0050】
ここで、側鎖部分SP値とは、式(1)の「-R2」部分のSP値(solubility parameter)を意味し、SP値と同様に「-R2」を構成する官能基を分解し、そのΔEoh(cal/mol)の合計値をAと定義し、そのΔV(cm3/mol)の合計値をBと定義したときの√(A/B)値を意味する。なお、ΔEohとΔVは各置換基固有の数値であり、Fedorsの数値を参考とした。例えば、ブチル(メタ)アクリレートである場合には、「-R2」は、「-COO-(CH2)3-CH3」となるので、以下の表1のΔEohとΔVを使用して計算すると、側鎖部分SP値=√((1125+1180×3+4300)/(33.5+16.1×3+18.0))=9.48となる。
【0051】
【0052】
共重合体を構成するモノマーAの側鎖部分SP値を所定範囲とすることにより、得られる記録物の耐溶剤性を高くすること(その中でも耐エタノール性を高くすること)ができる。
【0053】
高分子を含む塗膜の物性はしばしば塗膜に含まれる高分子の主鎖よりもむしろ高分子の側鎖部分によって大きく影響を受けることが本発明者らの研究により明らかとなった。式(1)の「-R2」部分のSP値である側鎖部分SP値を所定範囲に制御されたモノマーを構成単位として含むことで、塗膜の物性に影響を与えることが可能となり、本発明の効果を奏する塗膜を形成することが可能となると考えられる。
【0054】
そして、一般にSP値は溶解度パラメータと呼ばれ、2つの成分のSP値の差が小さいほど溶解度が高くなることが知られている。エタノールのSP値は12.7であるため、より遠ければ遠いほど塗膜としてはエタノールに対して耐溶剤性が高くなる。一方で、高分子微粒子分散体での塗膜形成では、水溶性溶媒によって微粒子同士が融着し樹脂鎖が拡散することで強固な塗膜となる。よって、水溶性溶媒に対する溶解性もある程度必要となる。そこでSP値として以上の範囲とすることで、水溶性溶媒に対してある程度拡散し強固な塗膜となる一方でエタノール等の溶剤に関して膨潤しにくい塗膜となり、耐溶剤性を向上させることが可能となる。
【0055】
なお、側鎖部分SP値は、8.5以上であることが好ましく、8.8以上であることがより好ましく、9.0以上であることがさらに好ましい。側鎖部分SP値は、13.0以下であることが好ましく、12.0以下であることがより好ましく、11.0以下であることがさらに好ましい。側鎖部分SP値は、8.5以上13.0以下であることが好ましく、8.8以上12.0以下であることがより好ましく、9.0以上11.0以下であることがさらに好ましい。これにより、得られる記録物の耐溶剤性を高くすること(その中でも耐エタノール性を高くすること)ができる。
【0056】
モノマーAとしては、シクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:3.179±0.252、Tg:83℃)、フェニルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.75、LogP:2.359±0.429、Tg:110)、メチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.26、LogP:1.207±0.250、Tg:105℃、)、イソボルニルアクリレート(側鎖部分SP値:9.42、LogP:4.029±0.273、Tg:97℃)、イソボルニルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.42、LogP:4.447±0.301、Tg:180℃)、エチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.88、LogP:1.716±0.250、Tg:65℃)、tert-ブチルアクリレート(側鎖部分SP値:8.99、LogP:2.062±0.238、Tg:14℃)、tert-ブチルメタクリレート(側鎖部分SP値:8.99、LogP:2.481±0.261、Tg:107℃)、ジシクロペンタニルアクリレート(側鎖部分SP値:10.31、LogP:3.957±0.244、Tg:120℃)、ジシクロペンタニルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.31、LogP:4.375±0.266、Tg:175℃)、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(側鎖部分SP値:13.15、LogP:1.619±0.415、Tg:72℃)、4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.08、LogP:4.570±0.243、Tg:81℃)、ナフタレニルメタクリレート(側鎖部分SP値:9,86、LogP:4.831±0.260、Tg:143℃)、アダマンタンアクリレート(側鎖部分SP値:10.32、LogP:3.702±0.258、Tg:250℃)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.37、LogP:1.399±0.340、Tg:60℃)、tert-ブチルシクロヘキシルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.08、LogP:4.570±0.243、Tg:81℃)等を挙げることができる。これらのモノマーAは単独で使用しても良いし、複数のモノマーAを組み合わせもよい。なお、括弧内の「Tg」とはそのモノマーのホモポリマーのTgを意味し、括弧内の「LogP」とは、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)を意味する。
【0057】
なお、モノマーAは2個以上のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを含んでいてもよいが、モノマーAは1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーのみから構成されることが好ましい。これにより樹脂の架橋点増加による塗膜の堅脆さが緩和し得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0058】
構成モノマーであるモノマーAの含有量は、とくに限定されるものではないが、モノマーBの含有量の下限は、共重合体全量中50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が所定以上の範囲にあるモノマーAの含有量が増加するので、得られる記録物の耐溶剤性をさらに高くすることが可能となる。
【0059】
(モノマーB)
モノマーBとは、モノマーA以外であって、酸性基または塩基性基を有するアクリルモノマーである。酸性基または塩基性基を有するアクリルモノマーを含むことにより、高分子微粒子分散体に静電反発力を付与して高分子微粒子分散体の分散安定性が向上するので、水性インク組成物の保存安定性を向上させることが可能となる。なお、モノマーBの酸性基または塩基性基はそのままであっても中和されることで中和塩の状態になっていてもよい。
【0060】
モノマーBが備える酸性基とは、カルボキシル基、スルホン基、リン酸基等を挙げることができる。この中でもカルボキシル基であることが好ましい。
【0061】
モノマーBが備える塩基性基とは、アミノ基(-NH2、-NHR、-NRR‘)を挙げることができる。この中でも三級アミノ基(-NRR‘)であることが好ましい。
【0062】
モノマーBの具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、フタル酸モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチル、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、4-カルボキシスチレン、6-アクリルアミドヘキサン酸、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、メタクリル酸2-アミノエチル、2-アミノエチルメタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、メタクリル酸2-(ジイソプロピルアミノ)エチル、N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等を挙げることができる。これらのモノマーBは単独で使用しても良いし、複数のモノマーBを組み合わせもよい。なお、これらのモノマーBはそのままであっても中和塩の状態であってもよい。
【0063】
構成モノマーであるモノマーBの含有量は、とくに限定されるものではないが、モノマーBの含有量の下限は、共重合体全量中0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、高分子微粒子分散体の分散安定性がより効果的に向上するので、水性インク組成物の保存安定性をさらに向上させることが可能となる。モノマーBの含有量の上限は、共重合体全量中20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、相対的に共重合体中のモノマーA、Cの含有量を増やすことが可能となるので、結果として得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることが可能となる。モノマーBの含有量の範囲は、共重合体全量中0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0064】
(モノマーC)
モノマーCとは、モノマーA、モノマーB以外であって、ホモポリマーのTgが60℃未満のモノマーである。
【0065】
モノマーA、モノマーBに加えてホモポリマーのTgが60℃未満のモノマーCを構成単位として含むことで、低温で乾燥させた場合であっても、十分に成膜することが可能となり、得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0066】
この中でも特にモノマーBとしてホモポリマーのTgが60℃以上であるモノマーBを含有し、ホモポリマーのTgが60℃未満のモノマーCをさらに含有することで、得られる記録物の耐擦性を向上させつつ、耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0067】
モノマーCとしては、ブチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.48、LogP:2.735±0.250、Tg:20℃)、シクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.96、LogP:2.760±0.226、Tg:19℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:8.98、LogP:4.199±0.229、Tg:-70℃)、ブチルアクリレート(側鎖部分SP値:9.48、LogP:2.317±0.224、Tg:-54℃)、エチルアクリレート(側鎖部分SP値:9.88、LogP:1.298±0.223、Tg:-20℃)、メチルアクリレート(側鎖部分SP値:10.26、LogP:0.788±0.223、Tg:8℃)、ベンジルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.49、LogP:2.527±0.255、Tg:54℃)、2-エチルヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:8.98、LogP:4.199±0.229、Tg:-70℃)、イソブチルアクリレート(側鎖部分SP値:9.24、LogP:2.161±0.228、Tg:-26℃)、イソブチルメタクリレート(側鎖部分SP値:9.24、LogP:2.579±0.254、Tg:48℃)、イソデシルアクリレート(側鎖部分SP値:8.66、LogP:4.906±0.238、Tg:-62℃)、イソデシルメタクリレート(側鎖部分SP値:8.66、LogP:5.324±0.261、Tg:-41℃)、フェノキシエチルアクリレート(側鎖部分SP値:10.42、LogP:2.371±0.246、Tg:-22℃)、フェノキシエチルメタクリレート(側鎖部分SP値:10.42、LogP:2.790±0.268、Tg:-3℃)、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(側鎖部分SP値:9.12、LogP:4.212±0.254、Tg:52℃)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(側鎖部分SP値:9,96、LogP:1.032±0.361、Tg:27℃)等を挙げることができる。これらのモノマーCは単独で使用しても良いし、複数のモノマーCを組み合わせもよい。なお括弧内の「側鎖部分SP値」とは、式(1)のR2で定義される化学構造部分について計算されるSP値を意味し、括弧内の「LogP」とは、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)を意味し、括弧内の「Tg」とはそのモノマーのホモポリマーのTgを意味する。
【0068】
このようなモノマーCの中でも、ホモポリマーのTgが50℃以下のモノマーCであることが好ましく、ホモポリマーのTgが45℃以下のモノマーCであることがより好ましく、ホモポリマーのTgが40℃以下のモノマーCであることがさらに好ましい。また、ホモポリマーのTgが-15℃以上のモノマーCであることが好ましく、-5℃以上のモノマーCであることがより好ましく、0℃以上のモノマーCであることがさらに好ましい。また、ホモポリマーのTgが-15℃以上50℃以下のモノマーCであることが好ましく、-5℃以上45℃以下のモノマーCであることがより好ましく、0℃以上40℃以下のモノマーCであることがさらに好ましい。
【0069】
なお、モノマーCは2個以上のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを含んでいてもよいが、モノマーCは1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーのみから構成されることが好ましい。これにより樹脂の架橋点増加による塗膜の堅脆さが緩和し得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0070】
構成モノマーであるモノマーCの含有量は、とくに限定されるものではないが、モノマーCの含有量の下限は、共重合体全量中3質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることができる。モノマーCの含有量の上限は、共重合体全量中45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、相対的に共重合体中のモノマーAの含有量を増やすことが可能となるので、得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることが可能となる。モノマーCの含有量の範囲は、共重合体全量中3質量%以上45質量%以下であることが好ましく、7質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
(その他のモノマー)
本実施の形態に係る水性インク組成物に含まれる共重合体は、モノマーA、モノマーB、モノマーCとは異なるその他のモノマーを構成単位として含んでいてもよいし、含んでいなくともよい。その他のモノマーとしては、モノマーA、モノマーB、モノマーCに該当しないアクリルモノマーや、アクリルモノマーとは異なるエチレン性不飽和多重結合等の反応基を有するモノマーを挙げることができる。例えばスチレン、ビニルシクロヘキサン、t-ブチル4エチニルシクロヘキサン等を挙げることができる。これらのその他のモノマーは単独で使用しても良いし、複数のモノマーを組み合わせもよい。
【0072】
なお、その他のモノマーは2個以上のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを含んでいてもよいが、その他のモノマーは1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーのみから構成されることが好ましい。これにより樹脂の架橋点増加による塗膜の堅脆さが緩和し得られる記録物の耐溶剤性をさらに向上させることができる。
【0073】
その他のモノマーの含有量は、とくに限定されるものではないが、その他のモノマーの含有量の上限は、共重合体全量中10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0074】
例えば、樹脂構造中にカルボニル基含むモノマーを構成単位として含む重合体に対して、そのカルボニル基と反応しうる官能基を有する化合物を架橋剤として添加することで、重合体を含む樹脂に架橋構造を導入することができる。このため、このようなカルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物を使用することで、得られる塗膜の耐摩擦性を向上させることができる。
【0075】
このようなカルボニル基を含むモノマーのうち、カルボニル基含有1官能エチレン性不飽和単量体としては、例えば、2-(アクリロイルアミノ)-2-メチル-4-ペンタノン(側鎖部分SP値:12.04、LogP:0.037±0.287)、アクリルアルデヒド(側鎖部分SP値:15.47、LogP:0.263±0.283)、N-エテニルホルムアミド(側鎖部分SP値:19.72、LogP:0.525±0.215)、メチルエテニルケトン(側鎖部分SP値:10.91、LogP:0.142±0.249)、エチルエテニルケトン(側鎖部分SP値:10.34、LogP:0.652±0.249)、アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル(側鎖部分SP値:11.73、LogP:0.331±0.356)、メタクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)エチル(側鎖部分SP値:11.73、LogP:0.750±0.385)、アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)プロピル(側鎖部分SP値:11.43、LogP:0.635±0.350)、アクリル酸2-(アセトアセチルオキシ)プロピル(側鎖部分SP値:11.43、LogP:1.054±0.378)、などが挙げられる。しかしながら、これらのモノマーは、「水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)」が0~1.1であり、相対的に親水性が高いモノマーである。このようにカルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有する樹脂組成物であると、得られる塗膜の耐溶剤性が相対的に低下する傾向がある。このため、本実施の形態に係る樹脂は、カルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有してもよいが、特に架橋剤を添加して重合体を含む樹脂に架橋構造を導入するのでなければ、カルボニル基を含むモノマーを構成単位として含む重合体を含有しないことが好ましい。
【0076】
[共重合体]
本実施の形態に係る水性インク組成物は、Tgが0℃以上120℃以下であるアクリル系樹脂を含有し、このアクリル系樹脂は、モノマーA、モノマーB、モノマーCなどの少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する。これにより、低温で乾燥させた場合であっても、得られる記録物の耐溶剤性を高くすることができる。
【0077】
そして、この共重合体の少なくとも一部は、水性インク組成部中に高分子微粒子分散体として含有するものである。この共重合体は、モノマーを乳化重合法、懸濁重合法等の従来公知のラジカル重合法により得ることができる。なかでもこの共重合体は、乳化重合物であることが好ましい。
【0078】
モノマーを乳化重合法により重合して共重合体を得る場合には、乳化剤、重合開始剤、重合調整剤、架橋剤、中和剤、造膜助剤等の他の成分を適宜用いてもよい。
【0079】
モノマーを乳化重合法により重合して共重合体を得る場合には、例えば、各成分を混合し、昇温する方法や、各成分の一部を混合し、昇温し、重合した後に残りの単量体成分を添加して重合する方法やモノマー以外の成分を混合して昇温した後にモノマー成分を添加して重合する方法が挙げられる。
【0080】
乳化剤としては、アニオン型、カチオン型、およびノニオン型の界面活性剤を挙げることができる。この中でも構造中に多重結合を有しない非反応性の乳化剤を使用すること(すなわち、高分子微粒子分散体として含有する樹脂は、非反応性の乳化剤を含むこと)が好ましい。非反応性の乳化剤を使用して得られた共重合体を高分子微粒子分散体として水性インク組成物中に分散させることにより、共重合体の分散安定性を向上させることが可能となって、結果として保存安定性をさらに向上させることが可能となる。
【0081】
非反応性の乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等を挙げられ、具体的には、「アデカプルロニックL-31」、「アデカプルロニックP-85」、「アデカプルロニックF-108」、「アデカトールLB-83」、「アデカトールSO-145」、「アデカホープYES-25」、「アデカミン4MAC-30」、「アデカミン4MT-50」、「アデカコールTS-230E」、「アデカコールPS-810E」〔以上、アデカ社製〕、「エマルゲン 120」、「エマルゲン 147」、「エマルゲン 109P」、「エマルゲン 210P」、「エマルゲン 306P」、「エマルゲン 409PV」、「エマルゲン 420」、「エマルゲン 709」、「エマルゲン 1108」、「エマルゲン 1118S-70」、「エマルゲン 1150S-60」、「エマルゲン 1135S-70」、「エマルゲン 4085」、「エマルゲン 2020G-HA」、「エマルゲン A-60」、「エマルゲン A-90」、「エマルゲン A-500」、「エマルゲン LS-110」、「エマルゲン G2E-4」、「エマール 2FG」、「エマール 20CM」、「エマール 270J」、「ラテムル AD-25」、「ラムテルE-1000A」、「アセタミン 24」、「コータミン 60W」、「サニゾール C」「エマノーン 1112」〔以上、花王社製〕、等の市販品を挙げることができる。これらは1種類で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0082】
反応性の乳化剤としては、具体的には、「アデカリアソープSE-20N」、「アデカリアソープSE-10N」、「アデカリアソープPP-70」、「アデカリアソープPP-710」、「アデカリアソープSR-10」、「アデカリアソープSR-20」〔以上、アデカ社製〕、「エレミノールJS-2」、「エレミノールRS-30」〔以上、三洋化成工業社製〕、「ラテムルS-180A」、「ラテムルS-180」、「ラテムルPD-104」〔以上、花王社製〕、「アクアロンBC-05」、「アクアロンBC-10」、「アクアロンBC-20」、「アクアロンHS-05」、「アクアロンHS-10」、「アクアロンHS-20」、「ニューフロンティアS-510」、「アクアロンKH-05」、「アクアロンKH-10」〔以上、第一工業製薬社製〕、「フォスフィノ-ルTX」〔東邦化学工業社製〕「アデカリアソープNE-10」、「アデカリアソープNE-20」、「アデカリアソープNE-30」、「アデカリアソープNE-40」、「アデカリアソープER-10」、「アデカリアソープER-20」、「アデカリアソープER-30」、「アデカリアソープER-40」、〔以上、アデカ社製〕、「アクアロンRN-10」、「アクアロンRN-20」、「アクアロンRN-30」、「アクアロンRN-50」〔以上、第一工業製薬社製〕等の市販品が挙げられる。
【0083】
乳化剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましい。
【0084】
重合開始剤としては、例えば、アルキルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p-メタンヒドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル-2,2′-アゾビスイソブチレート、2,2′-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2′-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4′-アゾビス-4-シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2′-アゾビス(2-メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2′-アゾビス(2-メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2′-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕-プロピオンアミド}、2,2′-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p-メタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等が挙げられる。これらの重合開始剤は単独であるいは2種以上併せて用いられる。
【0085】
重合開始剤の使用量は、適宜調整されればよいが、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。重合開始剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.03質量部以上3質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以上1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0086】
重合調整剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノー
ル等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;n-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0087】
重合調整剤の使用量は、適宜調整されればよいが、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましい。重合調整剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることがさらに好ましい。重合調整剤の使用量は、モノマー100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上3質量部以下であることがさらに好ましい。
【0088】
架橋剤は使用してもよいが、使用しないこと(すなわち、高分子微粒子分散体として含有する樹脂は、架橋剤を含有しないこと)が好ましい。架橋剤を含有しない共重合体を高分子微粒子分散体として水性インク組成物中に分散させることにより、共重合体の分散安定性を向上させることが可能となって、結果として保存安定性をさらに向上させることが可能となる。
【0089】
架橋剤を含有する場合、架橋剤としては、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの脂肪族ジヒドラジドの他、炭酸ポリヒドラジド、脂肪族、脂環族、芳香族ビスセミカルバジド、芳香族ジカルボン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸のポリヒドラジド、芳香族炭化水素のジヒドラジド、ヒドラジン-ピリジン誘導体およびマレイン酸ジヒドラジドなどの不飽和ジカルボン酸のジヒドラジドなどが挙げられる。
【0090】
架橋剤の使用量は、適宜調整されればよいが、モノマー100質量部に対して、2質量部未満であることが好ましく、1質量部未満であることがより好ましく、0.5質量部未満であることがさらに好ましい。
【0091】
中和剤は、例えば、モノマーBに由来する酸性基または塩基性基を中和するのに使用される。共重合体が酸性基または塩基性基を有するモノマーBを構成単位として含む場合、モノマーBに由来する酸性基または塩基性基を中和することで(すなわち、共重合体は、中和された酸性基または塩基性基を有するモノマーBを構成単位として含むことで)、本発明の効果をより効果的に奏する水性インク組成物となる。
【0092】
モノマーBに由来する塩基性基を中和する酸としては、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、こはく酸、酪酸、フマル酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、シュウ酸等の有機酸等を挙げることができる。このなかでも低温乾燥時の耐溶剤性の観点から安息香酸を使用することが好ましい。
【0093】
モノマーBに由来する酸性基を中和する塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩等の無機塩基や、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、イソプロピルアミン、プロパノールアミン、2-メチル-2-アミノプロパノール、ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミンジブチルアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルアミノエタノール、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、2-エチルアミノエタノール、モノ-n-ブチルエタノールアミン、モノ-n-ブチルジエタノールアミン、n-ターシャリーブチルジエタノールアミン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、n-(2-ヒドロキシエチル)モルフォリン、アミノメチルプロパンジオール、アミノエチルプロパンジオール、2-(ジメチルアミノメチル)-2-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、DL-2-アミノ-1-ブタノール、3-アミノ-4-オクタノール、トリエタノールアミントリス(2-ヒドロキシエチル)アミン、等のアミン類が挙げられる。このなかでも低温乾燥時の耐溶剤性の観点からアンモニア、N,N-ジメチルエタノールアミンを使用することが好ましい。
【0094】
本実施の形態に係る水性インク組成物に含有されるアクリル樹脂は、このようにして得られたモノマーA、モノマーB、モノマーCなどの少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含む、モノマーA、モノマーB、モノマーCなどの少なくとも2種類のモノマーの種類や含有量を適宜変更することで、アクリル樹脂のTgを制御することができる。
【0095】
この共重合体を含有するアクリル系樹脂のTgは、0℃以上120℃以下である。アクリル系樹脂のTgが0℃未満であると、得られる記録物の耐擦性が低下する。アクリル系樹脂のTgが120℃超であると、十分に成膜することができなくなり、得られる記録物の耐溶剤性が低下する。
【0096】
なお、この共重合体を含有するアクリル系樹脂のTgは、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることがさらに好ましい。この共重合体を含有するアクリル系樹脂のTgは、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。共重合体を含有するアクリル系樹脂のTgは、20℃以上100℃以下であることが好ましく、30℃以上90℃以下であることがより好ましく、40℃以上80℃以下であることがさらに好ましい。
【0097】
少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体に含まれるモノマーの配列は、モノマーの配列に秩序のないランダム共重合体であっても、同種の単量体が長く連続したブロック共重合体であっても、枝状にモノマーが配列したグラフト共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含むランダム共重合体を高分子微粒子分散体として水性インク組成物中に分散させることにより、共重合体の分散安定性を向上させることが可能となって、水性インク組成物をインクジェット方式により基材の表面に吐出する場合には、吐出安定性を高めることが可能となる。
【0098】
樹脂が高分子微粒子分散体として含有する場合、高分子微粒子分散体の平均粒子径は、インク組成物中での分散安定性と、インクジェット吐出性の観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上がさらに好ましい。高分子微粒子分散体の平均粒子径は、インク組成物中での分散安定性と、インクジェット吐出性の観点から、500nm以下が好ましく、350nm以下がより好ましく、250nm以下がさらに好ましい。高分子微粒子分散体の平均粒子径は、10nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上350nm以下がより好ましく、30nm以上250nm以下がさらに好ましい。なお、高分子微粒子分散体の平均粒子径は、測定温度25℃にて濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製、型式:FPAR-1000)を用いて測定することができる。
【0099】
高分子微粒子分散体の重量平均分子量は、耐溶剤性の観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、100000以上がさらに好ましい。高分子微粒子分散体の重量平均分子量は、水性インク組成物の保存安定性の観点から、2000000以下が好ましく、1750000以下がより好ましく、1500000以下がより好ましい。高分子微粒子分散体の重量平均分子量は、5000以上2000000以下が好ましく、10000以上1750000以下がより好ましく、100000以上1500000以下がさらに好ましい。なお、本実施形態において樹脂の分子量は、重量平均分子量Mwを示すものであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値であり、東ソー(株)製の「HLC-8120GPC」にて、校正曲線用ポリスチレンスタンダードを標準にして測定することができる。
【0100】
少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体は、従来公知の重合方法により得てもよいが、市販の樹脂のうち、2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含むものを入手して得てもよい。
【0101】
また、本実施の形態に係る水性インク組成物は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体とは異なる樹脂を含有してもよい。樹脂としては、具体的には、上記の共重合体とは異なるアクリル系樹脂(スチレン-アクリル系樹脂等のような共重合体も含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリルアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂からなる群より選択される1つ以上の樹脂あるいは共重合樹脂を含むものあるいはこれらの混合物を含むものを用いることができる。
【0102】
市販の高分子微粒子分散体としては、例えば、アクリットWEM-031U、WEM-200U、WEM-321、WEM-3000、WEM-202U、WEM-3008、(大成ファインケミカル(株)製、アクリル-ウレタン樹脂エマルジョン)、アクリットUW-550CS、UW-223SX、AKW107、RKW-500(大成ファインケミカル(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、LUBRIJET N240(ルーブリゾール製、アクリル樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス150、210、470、500M、620、650、E2000、E4800、R5002(第一工業製薬(株)製、ウレタン樹脂エマルジョン)、ビニブラン701FE35、701FE50、701FE65、700、701、711、737、747(日信化学(株)製、塩化ビニル-アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2706、2685(日信化学(株)製、アクリル樹脂エマルジョン)、モビニール743N、6520、6600、6820、7470、7720、(ジャパンコーティングレジン社製、アクリル樹脂エマルジョン)、PRIMAL AC-261P、 AC-818(ダウ・ケミカル社製 アクリル樹脂エマルジョン)、JE-1056(星光PMC社製 アクリル樹脂エマルジョン)、NeoCryl XK-190(DSM Coating Resin社製 アクリル樹脂エマルジョン)、NeoCryl A2091、A2092、A639、A655、A662(DSM Coating Resin社製 スチレン-アクリル樹脂エマルジョン)、QE-1042、KE-1062(星光PMC社製 スチレン-アクリル樹脂エマルジョン)、JONCRYL7199、PDX-7630A(BASFジャパン社製 スチレン-アクリル樹脂エマルジョン)、シャリーヌR170BX(日信化学工業社製 シリコーン-アクリル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6010(三井化学社製 ウレタン樹脂エマルジョン)、エリーテル KA-5071S(ユニチカ社製 ポリエステル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-1350(昭和電工社製 アクリル樹脂エマルジョン)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含む樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂の含有量の下限は、水性インク組成物全量中0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましく、1質量%以上がさらになお好ましい。樹脂の含有量の上限は、水性インク組成物全量中20質量%以下であることが好ましく、中でも、17.5質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂の含有量の範囲は、水性インク組成物全量中0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上17.5質量%以下であることがより好ましく、更に0.5質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましく、1質量%以上15質量%以下がさらになお好ましい。
【0104】
[水]
本実施の形態に係る水性インク組成物は、水を含有する。水としては、種々のイオンを含有するものではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。水の含有量としては、各成分を分散又は溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、水の含有量の下限は、水性インク組成物全量中30質量%以上の範囲内であることが好ましく、45質量%以上の範囲内であることがより好ましく、50質量%以上の範囲内であることがさらに好ましい。水の含有量の上限は、水性インク組成物全量中85質量%以下の範囲内であることが好ましく、80質量%以下の範囲内であることがより好ましく、75質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。水の含有量の範囲は、水性インク組成物全量中30質量%以上85質量%以下の範囲内であることが好ましく、45質量%以上80質量%以下の範囲内であることがより好ましく、50質量%以上75質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0105】
[水溶性溶媒]
本実施の形態に係る水性インクは、水溶性溶媒を含有してもよい。溶媒は、色材等を分散又は溶解することができるものである。なお、本明細書において「水溶性溶媒」とは、主に水溶性有機溶媒を意味し、また含有成分の少なくとも一部を分散する分散媒であってもよい。
【0106】
水溶性溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ペンタノール等の炭素数1~5のアルキルアルコール類;3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-n-ブタノール等の1価のアルコール類;ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミド、ブタンアミド、イソブチルアミド、ペンタンアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、N-メチルブタンアミド、N-メチルイソブチルアミド、N-メチルペンタンアミド、N-エチルホルムアミド、N-エチルアセトアミド、N-エチルプロパンアミド、N-エチルブタンアミド、N-エチルイソブチルアミド、N-エチルペンタンアミド、N-プロピルホルムアミド、N-プロピルアセトアミド、N-プロピルプロパンアミド、N-プロピルブタンアミド、N-プロピルイソブチルアミド、N-プロピルペンタンアミド、N-イソプロピルホルムアミド、N-イソプロピルアセトアミド、N-イソプロピルプロパンアミド、N-イソプロピルブタンアミド、N-イソプロピルイソブチルアミド、N-イソプロピルペンタンアミド、N-ブチルホルムアミド、N-ブチルアセトアミド、N-ブチルプロパンアミド、N-ブチルブタンアミド、N-ブチルイソブチルアミド、N-ブチルペンタンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルブタンアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N,N-ジメチルペンタンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルプロパンアミド、N,N-ジエチルブタンアミド、N,N-ジエチルイソブチルアミド、N,N-ジエチルペンタンアミド、N,N-ジプロピルホルムアミド、N,N-ジプロピルアセトアミド、N,N-ジプロピルプロパンアミド、N,N-ジプロピルブタンアミド、N,N-ジプロピルイソブチルアミド、N,N-ジプロピルペンタンアミド、N,N-ジイソプロピルホルムアミド、N,N-ジイソプロピルアセトアミド、N,N-ジイソプロピルプロパンアミド、N,N-ジイソプロピルブタンアミド、N,N-ジイソプロピルイソブチルアミド、N,N-ジイソプロピルペンタンアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジブチルアセトアミド、N,N-ジブチルプロパンアミド、N,N-ジブチルブタンアミド、N,N-ジブチルイソブチルアミド、N,N-ジブチルペンタンアミド、N-エチル-N-メチルホルムアミド、N-エチル-N-メチルアセトアミド、N-エチル-N-メチルプロパンアミド、N-エチル-N-メチルブタンアミド、N-エチル-N-メチルイソブチルアミド、N-エチル-N-メチルペンタンアミド、N-メチル-N-プロピルホルムアミド、N-メチル-N-プロピルアセトアミド、N-メチル-N-プロピルプロパンアミド、N-メチル-N-プロピルブタンアミド、N-メチル-N-プロピルイソブチルアミド、N-メチル-N-プロピルペンタンアミド、N-エチル-N-プロピルホルムアミド、N-エチル-N-プロピルアセトアミド、N-エチル-N-プロピルプロパンアミド、N-メチル-N-(1-メチルエチル)ホルムアミド、N-ヒドロキシプロピル-N-メチルアセトアミド、N-エチル-N-プロピルブタンアミド、N-エチル-N-プロピルイソブチルアミド、N-エチル-N-プロピルペンタンアミド、3-メチル-2-オキサゾリジノン、3-エチル-2-オキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシプロパンアミド、3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-メトキシプロパンアミド、N,N-ジブチル-3-ブトキシプロパンアミド、N,N-ジメチル-3-ブトキシプロパンアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール、テキサノール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,4-ジオキサン等を含む。)等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、イソブチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類:メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテル等のモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル)エーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート等のアセテート類;γ-ブチロラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-ヘキサノラクトン、γ-ヘプタノラクトン、δ-バレロラクトン、δ-ヘキサノラクトン、δ-ヘプタラクトン、δ-オクタラクトン、δ-ノナラクトン、δ-デカラクトン、δ-ウンデカラクトン、γ,γ-ジメチル-γ-ブチロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-クロトラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、β-メチル-γ-ブチロラクトン、6-メチルバレロラクトン等のラクトン類、2,3-ブチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル等の酢酸エステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、乳酸エチルヘキシル、乳酸アミル、乳酸イソアミル等の乳酸エステル類、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチルなどの二塩基酸エステル類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ノナン、イソノナン、ドデカン、イソドデカン等の飽和炭水素類、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等の不飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、デカリン等の環状飽和炭化水素類、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、1,1,3,5,7-シクロオクタテトラエン、シクロドデセン等の環状不飽和炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、β-ラクタム、δ-ラクタム、ε-カプロラクタム、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム、2-ヒドロキシルエチルピロリドン、N-2-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、3-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物;スルホラン等の環状化合物、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ホルミルモルホリン、N-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ヒドロキシルエチルモルフォリン、4-アセチルモルホリンなどのモルホリン類、テルペン系溶剤などが挙げられる。これらの単独、又はそれらを2種以上併用して用いることができる。この中でも、水性インクが所望の静的表面張力になるように水溶性溶媒を選択することが好ましく、例えばアルカンジオール類の水溶性溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0107】
水溶性溶媒の含有量としては、各成分を分散又は溶解可能なものであれば特に限定されるものではないが、水溶性溶媒の含有量の下限は、水性インク全量中5質量%以上の範囲内であることが好ましく、10質量%以上の範囲内であることがより好ましく、12質量%以上の範囲内であることがさらに好ましい。水溶性溶媒の含有量の上限は、水性インク全量中50質量%以下の範囲内であることが好ましく、45質量%以下の範囲内であることがより好ましく、40質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。水溶性溶媒の含有量の範囲は、水性インク全量中5質量%以上50質量%以下の範囲内であることが好ましく、10質量%以上45質量%以下の範囲内であることがより好ましく、12質量%以上40質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0108】
[色材]
本実施の形態に係る水性インク組成物には色材を含有してもよい。本実施の形態に係るインク組成物は、色材を含有することは必須の構成ではないが、色材を含有することで、所望の画像パターンを形成するような着色インクにすることや、その下地層となるようなホワイトインクやメタリックインク等にすることが可能となる。色材としては、染料であっても顔料であってもよい。
【0109】
本実施の形態に係る水性インク組成物において、使用することのできる顔料は特に限定されず、従来の水性インク組成物に使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施の形態に係る水性インク組成物は、色材を含有しなくともよい。本実施の形態に係る水性インク組成物において顔料を用いる場合には、分散剤や分散助剤(顔料誘導体)を使用することで、顔料の分散安定性を向上させることができる。また、樹脂の中に顔料または染料を含ませて使用してもよい。
【0110】
顔料としては、従来水性インク組成物に使用されている無機顔料、又は有機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ペリノン系有機顔料、アゾメチン系有機顔料、アントラキノン系有機顔料(アントロン系有機顔料)、キサンテン系有機顔料、ジケトピロロピロール系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、レーキ顔料やカーボンブラック等が挙げられる。
【0111】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、48:2、48:3、49、52、53、57、57:1、97、112、122、123、146、149、150、168、176、177、180、184、185、192、202、206、208、209、213、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、269、291、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、59、62、63、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0112】
本実施の形態に係る水性インクにおいて、用いることのできる染料の具体例としては、アゾ系染料、ベンゾキノン系染料、ナフトキノン系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料、スクアリリウム系染料、クロコニウム系染料、メロシアニン系染料、スチルベン系染料、ジアリールメタン系染料、トリアリールメタン系染料、フルオラン系染料、スピロピラン系染料、フタロシアニン系染料、インジゴイド等のインジゴ系染料、フルギド系染料、ニッケル錯体系染料、及びアズレン系染料が挙げられる。
【0113】
また、無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
【0114】
顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであれば特に限定されるものではない。顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、顔料の平均分散粒径の下限は、10nm以上の範囲内であることが好ましく、20nm以上の範囲内であることがより好ましく、30nm以上の範囲内であることがさらに好ましい。顔料の平均分散粒径の上限は、500nm以下の範囲内であることが好ましく、400nm以下の範囲内であることがより好ましく、350nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。平均分散粒径が500nm以下であれば、本実施の形態に係る水性インク組成物をインクジェット吐出した場合であっても、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができる。平均分散粒径が10nm以上であれば、得られる記録物の耐光性を良好なものとすることができる。顔料の平均分散粒径の範囲は、10nm以上500nm以下の範囲内であることが好ましく、20nm以上400nm以下の範囲内であることがより好ましく、30nm以上350nm以下の範囲内であることがさらに好ましい。なお、本実施形態において、顔料の平均分散粒径は、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製、型式:FPAR-1000)を用いて25℃の条件下で測定した平均粒子径(D50)である。
【0115】
本実施の形態に係るインク組成物は、顔料として光輝性顔料を含有してもよい。光輝性顔料としては、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の単体金属;金属化合物;合金およびそれら混合物の少なくとも1種である金属含有光輝性顔料や、雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマス、二酸化ケイ素、金属酸化物、金属化合物、およびそれらの積層等の真珠光沢や干渉光沢を有するパール顔料を挙げることができる。
【0116】
本実施の形態に係る水性インク組成物に光輝性顔料を含有する場合、光輝性顔料は平板状(微細板状、鱗片状等とも表される)であることが好ましい。これにより、被体により好適な金属調の光沢を付与することができる。
【0117】
本実施の形態に係る水性インク組成物に色材(染料、顔料、光輝性顔料を含む)を含有する場合、色材の含有量は、とくに限定されるものではないが、水性インク組成物全量中0.05質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。本実施の形態に係る水性インク組成物に色材を含有する場合、色材の含有量は、水性インク組成物全量中20.0質量%以下であることが好ましく、17.0質量%以下であることがより好ましく、15.0質量%以下であることがさらに好ましい。色材の含有量は、水性インク組成物全量中0.05質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以上17.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。色材の含有量が0.05質量%以上、又は20質量%以下の範囲内であることにより、色材の分散安定性と着色力のバランスに優れたものとすることができる。
【0118】
[顔料分散剤]
本実施の形態に係る水性インク組成物には顔料とともに顔料分散剤が含有されていてもよい。ここで顔料分散剤とは、顔料表面の一部に付着することでインク内での顔料の分散性を向上させる機能を有する樹脂又は界面活性剤のことを意味する。
【0119】
本実施の形態に係る水性インク組成物において、使用することのできる顔料分散剤は特に限定されない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン(シリコン)系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0120】
本実施の形態に係る水性インク組成物において用いることのできる顔料分散剤としては、水溶性高分子分散剤を好ましく用いることができる。水溶性高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプトラクトン系の主鎖を有し、側鎖に、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基等の極性基を有する分散剤等が挙げられる。例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物とアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの共重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル樹脂を含有する水溶性高分子分散剤が、インクの分散安定性と、印刷物の画像鮮明性の観点から好ましい。
【0121】
水溶性高分子分散剤の具体例としては、Cray Valley製SMA1440、SMA2625、SMA17352、SMA3840、SMA1000、SMA2000、SMA3000、BASFジャパン社製JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL-JDX5050、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA5220、EFKA6230、Dispex Ultra PX4575、ルーブリゾール社製SOLSPERSE20000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE40000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000、SOLSPERSE45000、SOLSPERSE46000、SOLSPERSE47000、SOLSPERSE53095、SOLSPERSE54000、SOLSPERSE64000、SOLSPERSE65000、SOLSPERSE66000、SOLSPERSE J400、SOLSPERSE W100、SOLSPERSE W200、SOLSPERSE W320、SOLSPERSE WV400、ビックケミー社製ANTI-TERRA-250、BYKJET-9150、BYKJET-9151、BYKJET-9152、BYKJET-9170、DISPERBYK-102、DISPERBYK-168、DISPERBYK-180、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-187、DISPERBYK-190、DISPERBYK-191、DISPERBYK-193、DISPERBYK-194N、DISPERBYK-198、DISPERBYK-199、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2013、DISPERBYK-2014、DISPERBYK-2015、DISPERBYK-2018、DISPERBYK-2019、DISPERBYK-2023、DISPERBYK-2026、DISPERBYK-2055、DISPERBYK-2060、DISPERBYK-2061、DISPERBYK-2081、DISPERBYK-2096、DISPERBYK-2157、DISPERBYK-2158、DISPERBYK-2159、DISPERBYK-2190、DISPERBYK-2200、DISPERBYK-2290、DISPERBYK-2291、エボニック社製TEGO DISPERS650、TEGO DISPERS651、TEGO DISPERS652、TEGO DISPERS655、TEGO DISPERS660C、TEGO DISPERS670、TEGO DISPERS715W、TEGO DISPERS740W、TEGO DISPERS741W、TEGO DISPERS750W、TEGO DISPERS752W、TEGO DISPERS755W、TEGO DISPERS757W、TEGO DISPERS760W、TEGO DISPERS761W、TEGO DISPERS765W、ZETASPERSE170、ZETASPERSE179、ZETASPERSE182、ZETASPERSE3100、ZETASPERSE3400、ZETASPERSE3700、ZETASPERSE3800、サンノプコ社製SNディスパーサント2010、SNディスパーサント2060、SNディスパーサント4215、SNディスパーサント5027、SNディスパーサント5029、SNディスパーサント5034、SNディスパーサント5468、ノプコール5200、ノプコサントK、ノプコサントR、ノプコスパース44-C、ノプコスパース6100、ノプコスパース6150等が挙げられる。これらの顔料分散剤は、本実施の形態に係る水性インク組成物において好適に用いることができる。
【0122】
[カチオン性又はアニオン性の化合物]
本実施の形態に係る水性インク組成物にはカチオン性又はアニオン性の化合物を含有してもよい。本実施の形態に係る水性インク組成物は、カチオン性又はアニオン性の化合物を含有することは必須の構成ではないが、カチオン性又はアニオン性の化合物を含有することで、本実施の形態に係る水性インク組成物を受理溶液(前処理液)にすることができる。一般的に着色インクに含まれる色材がアニオン性であり、基材に着色インクを塗布するのに先立ち、カチオン性の化合物を含む受理溶液(前処理液)を基材に塗布することで、カチオン性の化合物により色材を凝集させることが可能となって、着色インクのにじみを抑制することができる。また、着色インクに含まれる色材がカチオン性である場合には、基材に着色インクを塗布するのに先立ち、アニオン性の化合物を含む受理溶液(前処理液)を基材に塗布することで、アニオン性の化合物により色材を凝集させることが可能となって、着色インクのにじみを抑制することができる。
【0123】
カチオン性の化合物としては、カチオン性の樹脂や多価金属塩(多価金属のイオン)を挙げることができる。
【0124】
カチオン性の樹脂は、公知の方法により合成することも、市販品を使用することもできる。以下に市販品を例示すると、APC-810,815;D-6010,6020、6030、6040、6050、6060、6080、6310、DEC-50,53、56,65;FL-14、42,44LF、61、2099,2250,2273、2350、2550、2565、2599、2650、2850、2949、3050、3150、4340、4420、4440、4450、4520、4530、4535、4540、4620、4820;FQP-1264;RSL-18-22,4071H,4400,8391、8391H、HD70C、HF70D;WS-72(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK-6810、6853、6885;WS-4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、センカF-300;パピオゲンP-105、P-113、P-271、P-316;ピッチノールQG5A;ミリオゲンP-20;ユニセンスFPA100L、FPA101L、FPA102L、FPA1000L、FPA1001L、FPA100LU、FPA102LU、FPA1000LU;ユニセンスFCA1000L、FCA1001L、FCA1002L、FCA1003L、FCA5000L;ユニセンスKCA100L、KCA100LU、KCA1000LU、KCA1001LU;ユニセンスKHE100L、KHE101L、KHE102L、E104L、KHE105L、KHE107L、KHE1000L、KHE1001L;ユニセンスKHP10P、KHP11L、KHP10LU、KHP11LU、KHP12LU、KHP20LU:ユニセンスKHF10L、KHF11L;ユニセンスFPV1000L、FPV1000LU;ユニセンスFCV1000L;ユニセンスZCA1000L、ZCA1001L、ZCA1002L、ZCA5000L;ユニセンスKPV100LU、KPV1000LU(センカ社製)、パラロック410K101、410K111、420K308、420K300、460K313、460K318、470K308、480K300、490K300、490K309、500K30E、500K40E、59D、920AP500、975AP500、PD700、PD714L、PD714S、P600、(浅田化学社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX-1(田岡化学工業社製)、EP-1137;MZ-477、480;NS-310X、625XC(高松油脂社製)、PAA-D11-HCL、D19-HCL,D41-HCL、D19A;PAA-HCL-03、05、3L、10L;PAA-1112CL、21CL、AC5050A、N5050CL、SA;PAS-A-1、5;PAS-H-1L、5L、10L;PAS-J-81、81L;PAS-M-1、1A、1L;PAS-21、21CL,22SA-40、24、92、92A、880、2201CL、2401(ニットーボーメディカル社製)、PP-17(明成化学社製);カチオマスターPD-1、7、30、A、PDT-2、PE-10、PE-30、DT-EH、EPA-SK01、TMHMDA-E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)、モビニール3500、6910、6940、6950、6951、7820(ジャパンコーティングレジン社製)、CTW-113S、WEM-505C、WBR-2122C(大成ファインケミカル社製)、AP-1350、AE-803、AE-821、AM-3500(レゾナック社製)、ハイドランCP-7050、CP-7520(DIC社製)などとなる。
【0125】
なお、カチオン性の樹脂は、水性インク組成物中に溶解した状態で存在していても、高分子微粒子分散体として分散された状態で存在していてもよい。
【0126】
金属塩としては、価数が少なくとも2価以上の多価金属のイオンと、陰イオンと、を含む多価金属塩を挙げることができる。多価金属イオンとしては、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、チタンイオン、鉄(II)イオン、鉄(III)イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン等が挙げられる。なかでも、インク組成物中の色材との相互作用が大きく、にじみやムラを抑制する効果が高くなることから、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオンより選択される1種以上を含有することが好ましい。
【0127】
陰イオンは、無機物の陰イオンであってもよく、有機物の陰イオンであってもよい。有機物の陰イオンの具体例としては、酢酸、安息香酸、サリチル酸、2、4-ジヒドロキシ安息香酸、2、5-ジヒドロキシ安息香酸、ジメチロールプロピオン酸、パントテン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、トリメリット酸、メチルマロン酸の陰イオンを挙げることができる。無機物の陰イオンの具体例としては、塩化物イオン、臭化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等を挙げることができる。
【0128】
カチオン性又はアニオン性の化合物の含有量としては、特に限定されるものではないが、カチオン性又はアニオン性の化合物の含有量の下限は、水性インク組成物全量中0.1質量%以上の範囲内であることが好ましく、0.8質量%以上の範囲内であることがより好ましく、1.0質量%以上の範囲内であることがさらに好ましい。カチオン性又はアニオン性の化合物の含有量が水性インク組成物全量中0.5質量%以上の範囲内であることで、色材をより効果的に定着することが可能となり、着色インクのにじみをより効果的に抑制することができる。カチオン性又はアニオン性の化合物の含有量の上限は、水性インク組成物全量中15質量%以下の範囲内であることが好ましく、8質量%以下の範囲内であることがより好ましく、7質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。カチオン性又はアニオン性の化合物の含有量が水性インク組成物全量中15質量%以下の範囲内であることで、水性インク組成物の保存安定性及び吐出安定性が向上する。カチオン性又はアニオン性の化合物の含有量の範囲は、水性インク組成物全量中0.1質量%以上15質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.8質量%以上8質量%以下の範囲内であることがより好ましく、1.0質量%以上7質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0129】
[レベリング剤]
本実施の形態に係る水性インクは、上述した共重合体に含まれる乳化剤や顔料分散剤とは異なる界面活性剤としてレベリング剤を含有してもよい。レベリング剤を含有することで、水性インク組成物の表面張力を適切な範囲に制御することができる。レベリング剤としては、特に限定されるものではないが、表面張力の調整性が優れる点から、アニオン系界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン(シリコン)系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤等が好ましく用いられる。
【0130】
具体例としては、エマール、ラテムル、ペレックス、ネオペレックス、デモール(いずれも、アニオン系界面活性剤;花王株式会社製)、サンノール、リポラン、ライポン、リパール(いずれも、アニオン系界面活性剤;ライオン株式会社製)、ノイゲン、エパン、ソルゲン(いずれも非イオン性界面活性剤;第一工業製薬株式会社製)エマルゲン、アミート、エマゾール(いずれも非イオン性界面活性剤;花王株式会社製)、ナロアクティー、エマルミン、サンノニック(いずれも非イオン性界面活性剤;三洋化成工業株式会社製)、サーフィノール104、82、420、440、465、485、TG、2502、SE-F、107L、ダイノール360、ダイノール604、ダイノール607(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;エボニック社製)、ダイノール960(アセチレングリコール系とシリコン系界面活性剤の配合物;エボニック社製)、サーフィノールAD01(アルカングリコール系界面活性剤;エボニック社製)、オルフィンE1004、E1010、PD004、EXP4300(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;日信化学工業株式会社製)、メガファック(フッ素系界面活性剤;DIC株式会社製)、サーフロン(フッ素系界面活性剤;AGCセイミケミカル社製)、BYK302、306、307、331、333、345、346、347、348、349、3420、3450、3451、3455、3456(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;ビックケミー社製)、KP-110、112、323、341、6004(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;信越化学株式会社製)、シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG008、シルフェイスSAG014、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSJM-002、シルフェイスSJM-003(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;日信化学工業(株)製)、TEGO FLOW 425、TEGO Glide 100、110、130、410、432、440、450、482、490、492、494、496、ZG400、TEGO Twin 4000、TEGO Twin 4100、TEGO Twin 4200、TEGO Wet 240、KL245、250、260、265、270、280、(いずれもシリコーン(シリコン)系界面活性剤;エボニック社製)、TEGO Wet 500、505、510、520(いずれもノニオン系界面活性剤;エボニック社製)などが挙げられる。
【0131】
レベリング剤の含有量は、特に限定されないが、レベリング剤の含有量の下限は、水性インク組成物全量中0.30質量%以上の範囲内であることが好ましく、0.40質量%以上の範囲内であることがより好ましく、0.50質量%以上の範囲内であることがさらに好ましい。レベリング剤の含有量の上限は、水性インク組成物全量中5.0質量%以下の範囲内であることが好ましく、4.0質量%以下の範囲内であることがより好ましく、3.0質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。レベリング剤の含有量の範囲は、水性インク組成物全量中0.30質量%以上5.0質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.40質量%以上4.0質量%以下の範囲内であることがより好ましく、0.50質量%以上3.0質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0132】
[その他の成分]
水性インク組成物は、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、ワックス、粘度調整剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、紫外線吸収剤、光安定剤等が挙げられる。
【0133】
<水性インク組成物の調製方法>
水性インク組成物の調製方法は、特に限定されない例えば、水溶性溶媒に自己分散型の顔料、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、水溶性溶媒に、顔料と分散剤を加えて分散した後、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、水溶性溶媒に顔料と樹脂と界面活性剤と必要に応じてその他の成分を添加した後、顔料を分散して調製する方法等が挙げられる。
【0134】
本実施の形態に係る水性インク組成物を、基材の表面に塗布する方法は、特に制限はされず、例えば、インクジェット方式、グラビア方式、フレキソ方式、スプレー方式、スクリーン方式、コーター方式等を挙げることができる。この中でも、インクジェット方式が好ましい。インクジェット方式であれば、電子上の所望の画像の基材の任意の場所へ吐出して所望の画像を形成することが可能である。
【0135】
水性インク組成物の表面張力は、特に限定されないが、本実施の形態に係る非水系インク組成物の25℃での表面張力の上限は、40.0mN/m以下が好ましく、35.0mN/m以下がより好ましく、32.0mN/m以下がさらに好ましい。本実施の形態に係る非水系インク組成物の25℃での表面張力の下限は、17.0mN/m以上が好ましく、18.0mN/m以上がより好ましく、19.0mN/m以上がさらに好ましい。本実施の形態に係る非水系インク組成物の25℃での表面張力の範囲は、17.0mN/m以上40.0mN/m以下が好ましく、18.0mN/m以上35.0mN/m以下がより好ましく、19.0mN/m以上32.0mN/m以下がさらに好ましい。
【0136】
≪2.インクセット≫
上記の水性インク組成物は、着色インクであっても、メタリックインク等であっても、カチオン性の化合物を含む受理溶液であっても、色材を含有しないクリアインクであっても、オーバーコートインクであってもよい。本実施の形態に係るインクセットは、これらのインク組成物を組み合わせたインクセットとしてもよい。
【0137】
本実施の形態に係るインクセットは、インクセットに含まれる少なくとも1つの水性インク組成物が上記の少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む水性インク組成物であればよい。例えば、水性インク組成物Aと水性インク組成物Bとを含むインクセットにおいて、水性インク組成物Aが上記の少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む水性インク組成物であり、水性インク組成物Bが上記の少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む水性インク組成物とは異なる水性インク組成物であってもよい。また、水性インク組成物Aと水性インク組成物Bいずれもが上記の少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む水性インク組成物であってもよい。3種類以上の水性インク組成物を含むインクセットにおいても同様である。
【0138】
本実施の形態に係るインクセットとしては、例えば、色材を含有する着色インク組成物とカチオン性の化合物を含む受理溶液(前処理液)とを含むインクセットや、色材を含有する着色インク組成物とカチオン性の化合物を含む受理溶液(前処理液)とオーバーコートインクを含むインクセットや、色材を含有する着色インク組成物とオーバーコートインクを含むインクセットを挙げることができる。
【0139】
また、色材を含有する着色インク組成物同士を組み合わせたインクセットであってもよく、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、及びこれらの中間色(例えば、オレンジインク、グリーンインク、ブルーインク、バイオレットインク、レッドインク)や淡色(例えば、ライトマゼンタインク、ライトシアンインク、ライトブラックインク)の着色インク組成物のような複数のインク組成物を組み合わせたインクセットであってもよい。また、白色色材を含有する白色インク組成物と、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、を含むインクセットや、白色色材を含有する白色インク組成物と、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの中間色インク組成物や淡色インク組成物を含むインクセットであってもよい。さらに、光輝性顔料を含むメタリックインクと、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、を含むインクセットや、光輝性顔料を含むメタリックインクと、イエローインク組成物、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物、ブラックインク組成物と、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの中間色インク組成物や淡色インク組成物を含むインクセットであってもよい。
【0140】
≪3.記録方法≫
本実施の形態に係る記録方法は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物を基材上に塗布する記録方法である。
【0141】
少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物であれば保存安定性が高い状態で基材上に水性インク組成物を塗布することが可能である。
【0142】
上記の水性インク組成物を、基材の表面に塗布する方法は、特に制限はされず、例えば、インクジェット方式、グラビア方式、フレキソ方式、スプレー方式、スクリーン方式、コーター方式等を挙げることができる。この中でも、インクジェット方式が好ましい。インクジェット方式であれば、基材上の任意の場所へ吐出することが可能である。
【0143】
また、本実施の形態に係る記録方法は、基材の表面に塗布された水性インク組成物に対して乾燥する乾燥工程を備えていてもよい。これにより、印刷時の加熱温度を調節するとともに、記録物の生産性を向上させることができる。
【0144】
基材の表面に塗布された水性インク組成物を乾燥させる方法としては、例えば、インクジェット記録装置に備えられるプレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等の加温機構により乾燥させる方法や、記録物の表面に対して熱風や常温等の風を送風する送風機構であっても、赤外線などにより記録物の表面を加熱する輻射線照射機構であってもよい。また、これらの加温機構を複数組み合わせるものであってもよい。
【0145】
特に、特定のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する上記の水性インク組成物は、比較的低温で乾燥させた場合であっても塗膜の十分に製膜されて、得られる記録物の耐溶剤性が高いものである。このため、低温で乾燥させることで、エネルギー負荷や装置への負荷を低減させながら生産性の高い状態で記録物を生産することが可能となる。
【0146】
具体的には、本実施の形態に係る記録方法では、記録物の表面が110℃以下となるように乾燥させることが好ましく、90℃以下となるように乾燥させることがより好ましく、70℃以下となるように乾燥させることがさらに好ましい。また、本実施の形態に係る記録方法では、記録物の表面が30℃以上となるように乾燥させることが好ましく、35℃以上となるように乾燥させることがより好ましく40℃以上となるように乾燥させることがさらに好ましい。本実施の形態に係る記録方法では、記録物の表面が30℃以上110℃以下となるように乾燥させることが好ましく、35℃以上90℃以下となるように乾燥させることがより好ましく、40℃以上70℃以下となるように乾燥させることがさらに好ましい。
【0147】
また、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物をインクジェット吐出する場合、そのインクジェットの吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれの方式であってもよい。
【0148】
≪4.記録物の製造方法≫
上述した記録方法は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物をインクジェット法により基材上に塗布する記録物の製造方法と定義することもできる。
【0149】
≪5.記録物≫
上記の実施形態の記録物の製造方法により製造された記録物を構成する各層について説明する。具体的に、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物、又は上記のインクセットに含まれる水性インク組成物が基材上に塗布された記録物である。以下、記録物を構成する媒体(記録媒体)や水性インク組成物の層について説明する。
【0150】
本実施の形態に係る記録物に含まれる基材(記録媒体)としては、特に限定はされず、樹脂基材、金属板、ガラスなどの非吸収性基材であっても、紙や布帛などの吸収性基材であっても、受容層を備える基材のような表面塗工が施された基材であってもよく、種々の基材を使用することができる。
【0151】
非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂基材や、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を挙げることができる。
【0152】
吸収性基材としては、更紙、中質紙、上質紙、合成紙、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を挙げることができる。
【0153】
表面塗工が施された基材としてはコート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙等を挙げることができる。
【0154】
[水性インク組成物の層]
水性インク組成物の層とは、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物に含まれる溶媒(水や水溶性有機溶剤)が揮発することにより形成される層である。例えば、水性インク組成物に色材を含有した場合には、所望の画像を形成する加飾層やその下地層となる。
【0155】
また、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物をカチオン性の化合物を含む受理溶液とする場合には、基材上に少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物(受理溶液)を塗布し、その上に少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物(着色インク)を塗布してもよいし、基材上に少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物(受理溶液)を塗布し、その上に少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物(着色インク)とは異なるインク組成物(着色インク)を塗布してもよい。
【0156】
また、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物をオーバーコートインクとする場合には、記録物の表面に形成されるオーバーコート層となる。なお、この場合、記録物が備える記録層を形成するインク組成物は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物であってもよいし、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物とは異なるインク組成物であってもよい。
【0157】
≪6.装置≫
本実施の形態に係る装置は少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、所定範囲のTgのアクリル系樹脂を含む上記の水性インク組成物、又は上記のインクセットに含まれるインク組成物が充填された収容容器が搭載された装置である。
【0158】
本実施の形態に係る装置は、上記の水性インク組成物、又は上記のインクセットに含まれる水性インク組成物が充填された収容容器が搭載されたインクジェット記録装置であることが好ましい。
【0159】
なお、本実施の形態に係る装置に搭載される収容容器とは、とくに限定されず、例えば、インクボトル、パウチ、バッグインボックス、ドラム等の容器を挙げることができる。また、これらの容器をさらにカートリッジ等に収容したものであってもよい。収容容器の材質としては、とくに限定されず、従来公知の樹脂製であってもよいし、その一部の金属材料を含む材質(例えば、アルミ蒸着層を備えたアルミパウチ)であってもよい。
【0160】
またこの装置には、水性インク組成物の塗布後に水性インク組成物を乾燥する乾燥機構を備えることが好ましい。これにより印刷時の記録物の表面温度を調整して、それぞれの水性インク組成物に含まれる揮発成分を効果的に除去することが可能となる。
【0161】
乾燥機構は、被記録媒体を乾燥できるものであれば特に限定されないが、プレヒーター、プラテンヒーター、アフターヒーター等のヒーター、輻射線照射、送風機構(熱風や常温の風等)、の何れかが好ましい。また、これらの加温機構を複数組み合わせるものであってもよい。
【0162】
また、本実施の形態に係る装置がインクジェット記録装置である場合、それぞれの吐出部における吐出方式は、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれの方式であってもよい。
【実施例】
【0163】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0164】
1.高分子微粒子分散体の合成
[実施例1]
シクロヘキシルメタクリレート78.8部、nブチルメタクリレート19.7部、メタクリル酸1.50部からなる混合物を、水(脱イオン水)41.0部に「エマルゲンA-90(花王社製;ノニオン型界面活性剤、固形分100%)」2.0部と「エマール20CM(花王社製;アニオン型界面活性剤、固形分25%)」6.2部を溶解した水溶液中に添加し、撹拌することで乳化モノマー組成物を作製した。
【0165】
次いで、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製
反応容器に水(脱イオン水)185.0部、「エマール20CM(花王社製;アニオン型界面活性剤、固形分25%)」4.1部を仕込み、撹拌して溶解させ、73℃まで昇温した。そこに上記乳化モノマーの5質量%を投入・撹拌し、反応容器に3%過硫酸カリウムを1.4部添加し、初期重合反応を行った。その後、80℃に昇温し、温度を保ちつつ3%過硫酸カリウム6.7部と残りの上記乳化モノマー組成物を4時間かけて滴下し重合反応を進行させた。滴下終了後10%アンモニア水溶液を用いてpH8に調整したのち1時間反応を熟成させた。その後室温へと冷却することで、該高分子微粒子分散体を得た。
【0166】
[実施例2]
シクロヘキシルメタクリレート74.1部、nブチルメタクリレート18.5部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル安息香酸塩13.1部からなる混合物を、水(脱イオン水)40.0部に「エマルゲンA-90(花王社製;ノニオン型界面活性剤、固形分100%)」2.0部と「サニゾールB-50(花王社製;カチオン型界面活性剤、固形分50%)」6.2部を溶解した水溶液中に添加し、撹拌することで乳化モノマー組成物を作製した。
【0167】
次いで、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に水(脱イオン水)190.0部、「サニゾールB-50(花王社製;カチオン型界面活性剤、固形分50%)」4.1部を仕込み、撹拌して溶解させ、73℃まで昇温した。そこに上記乳化モノマーの5質量%を投入・撹拌し、反応容器に2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)二塩酸塩の15%水溶液を0.5部添加し、初期重合反応を行った。その後、80℃に昇温し、温度を保ちつつ、2,2-アゾビス(2-ジアミノプロパン)二塩酸塩の14%水溶液1.2部と残りの上記乳化モノマー組成物を4時間かけて滴下し重合反応を進行させた。滴下終了後1時間反応を熟成させた。その後室温へと冷却することで、該高分子微粒子分散体を得た。
【0168】
[実施例3~5、7~10、13、15~17、19~23]
実施例1において、モノマー種、配合量を下記表のように変更した以外は実施例1と同様にして該高分子微粒子分散体を得た。
【0169】
[実施例6、18]
実施例2において、モノマー種、配合量を下記表のように変更した以外は実施例1と同様にして該高分子微粒子分散体を得た。
【0170】
[実施例11]
シクロヘキシルメタクリレート69.0部、n-ブチルメタクリレート29.6部、メタクリル酸1.50部からなる混合物を、水(脱イオン水)41.0部に「ラテムルPD-420(花王社製;反応型界面活性剤、固形分100%)」5.0部を溶解した水溶液中に添加し、撹拌することで乳化モノマー組成物を作製した。
【0171】
次いで、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製
反応容器に水(脱イオン水)185.0部、「ラテムルPD-420(花王社製;反応型界面活性剤、固形分100%)」5.0部を仕込み、撹拌して溶解させ、73℃まで昇温した。そこに上記乳化モノマーの5質量%を投入・撹拌し、反応容器に3%過硫酸カリウムを1.4部添加し、初期重合反応を行った。その後、80℃に昇温し、温度を保ちつつ3%過硫酸カリウム6.7部と残りの上記乳化モノマー組成物を4時間かけて滴下し重合反応を進行させた。滴下終了後10%アンモニア水溶液を用いてpH8に調整したのち1時間反応を熟成させた。その後室温へと冷却することで、該高分子微粒子分散体を得た。
【0172】
[実施例12]
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを100.0質量部仕込み、窒素雰囲気下で70℃に昇温した後、そこへヨウ素0.4質量部、2,2‘-アゾビス(イソブチロニトリル)1.6質量部、シクロヘキシルメタクリレート69.0質量部、及びジフェニルメタン0.1質量部を混合した溶液を2時間かけて連続的に滴下した。その後、70℃を保持し、3.5時間の熟成を行い、A鎖を得た。得られたA鎖の溶液を60℃まで降温させた後、2,2‘-アゾビス(イソブチロニトリル)1.9質量部、n-ブチルメタクリレート29.6質量部、メタクリル酸1.5質量部を添加した。その後、70℃に昇温し、4時間重合してB鎖を形成し、ブロックコポリマーを得た。水(脱イオン水)133.3質量部加えて希釈した。得られたブロックコポリマーの溶液を室温条件下、滴下終了後10%アンモニア水溶液を用いてpH8に調整したのち1時間反応を熟成させ、該高分子微粒子分散体を得た。
【0173】
[実施例14]
シクロヘキシルメタクリレート69.0部、メタクリル酸1.50部、2-(アクリロイルアミノ)-2-メチル-4-ペンタノン1部からなる混合物を、水(脱イオン水)41.0部に「エマルゲンA-90(花王社製;ノニオン型界面活性剤、固形分100%)」2.0部と「エマール20CM(花王社製;アニオン型界面活性剤、固形分25%)」6.2部を溶解した水溶液中に添加し、撹拌することで乳化モノマー組成物を作製した。
【0174】
次いで、温度計、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および滴下ロートを備えたガラス製
反応容器に水(脱イオン水)185.0部、「エマール20CM(花王社製;アニオン型界面活性剤、固形分25%)」4.1部を仕込み、撹拌して溶解させ、73℃まで昇温した。そこに上記乳化モノマーの5重量%を投入・撹拌し、反応容器に3%過硫酸カリウムを1.4部添加し、初期重合反応を行った。その後、80℃に昇温し、温度を保ちつつ3%過硫酸カリウム6.7部と残りの上記乳化モノマー組成物を4時間かけて滴下し重合反応を進行させた。滴下終了後10%アンモニア水溶液を用いてpH8に調整したのち1時間反応を熟成させた。その後室温へと冷却させ、アジピン酸ジヒドラジド1部を加え攪拌することで、該高分子微粒子分散体を得た。
【0175】
[比較例1~4]
実施例1において、モノマー種、配合量を下記表のように変更した以外は実施例1と同様にして該高分子微粒子分散体を得た。
【0176】
[比較例5]
実施例2において、モノマー種、配合量を下記表のように変更した以外は実施例1と同様にして該高分子微粒子分散体を得た。
【0177】
2.顔料分散体の調製
水(脱イオン水)81.85gに、顔料分散樹脂((メタ)アクリル系樹脂 重量平均分子量20000、酸価143mgKOH/g)2.5gと、N,N-ジメチルアミノエタノール0.6gを溶解させ、C.I.ピグメントブルー15:3を15gと消泡剤(エアープロダクツ社製「サーフィノール104PG」)を0.05g加え、ジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーにて分散し、顔料分散体を得た。
【0178】
3.水性インク組成物の調製
(着色インクの調製方法)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例1、3~5、7~17、19~23、比較例1~4 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール25質量%とポリシロキサン化合物0.5質量%と水(脱イオン水)29.5質量%と、を含む水性インク組成物を製造した。
【0179】
(受理溶液の調製方法)
高分子微粒子分散体(実施例2、6、18 比較例5 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-ヘキサンジオール9質量%、1,2-プロパンジオール25質量%とポリシロキサン化合物0.5質量%と水(脱イオン水)40.5質量%と、を含む水性インク組成物を製造した。
【0180】
(実施例24、26の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例24、26 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-ヘキサンジオール25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0181】
(実施例25、27の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例25、27 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-ヘキサンジオール25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0182】
(実施例28、29の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例28、29 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、1,2-ヘキサンジオール9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0183】
(実施例30、32の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例30、32 固形分濃度30%)25質量%と、N-N-ジエチルホルムアミド25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0184】
(実施例31、33の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例31、33 固形分濃度30%)25質量%と、N-N-ジエチルホルムアミド25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0185】
(実施例34、36の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例34、36 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、N-N-ジエチルホルムアミド9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0186】
(実施例35、37の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例35、37 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、N-N-ジエチルホルムアミド9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0187】
(実施例38、40の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例38、40 固形分濃度30%)25質量%と、3-メトキシ-1-ブタノール25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0188】
(実施例39、41の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例39、41 固形分濃度30%)25質量%と、3-メトキシ-1-ブタノール25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0189】
(実施例42、44の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例42、44 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-メトキシ-1-ブタノール9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0190】
(実施例43、45の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例43、45 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-メトキシ-1-ブタノール9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0191】
(実施例46、48の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例46、48 固形分濃度30%)25質量%と、2-ピロリドン25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0192】
(実施例47、49の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例47、49 固形分濃度30%)25質量%と、2-ピロリドン25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0193】
(実施例50、52の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例50、52 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、2-ピロリドン9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0194】
(実施例51、53の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例51、53 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、2-ピロリドン9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0195】
(実施例54、56の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例54、56 固形分濃度30%)25質量%と、3-メチル-1,3-ブタンジオール25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0196】
(実施例55、57の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例55、57 固形分濃度30%)25質量%と、3-メチル-1,3-ブタンジオール25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0197】
(実施例58、60の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例58、60 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-メチル-1,3-ブタンジオール9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0198】
(実施例59、61の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例59、61 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-メチル-1,3-ブタンジオール9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0199】
(実施例62、64の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例62、64 固形分濃度30%)25質量%と、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0200】
(実施例63、65の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例63、65 固形分濃度30%)25質量%と、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0201】
(実施例66、68の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例66、68 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0202】
(実施例67、69の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例67、69 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0203】
(実施例70、72の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例70、72 固形分濃度30%)25質量%と、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0204】
(実施例71、73の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例71、73 固形分濃度30%)25質量%と、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0205】
(実施例74、76の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例74、76 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0206】
(実施例75、77の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例75、77 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0207】
(実施例78、80の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例78、80 固形分濃度30%)25質量%と、テキサノール25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0208】
(実施例79、81の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例79、81 固形分濃度30%)25質量%と、テキサノール25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0209】
(実施例82、84の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例82、84 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、テキサノール9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0210】
(実施例83、85の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例83、85 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、テキサノール9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0211】
(実施例86、88の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例86、88 固形分濃度30%)25質量%と、γ-バレロラクトン25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0212】
(実施例87、89の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例87、89 固形分濃度30%)25質量%と、γ-バレロラクトン25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0213】
(実施例90、92の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例90、92 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、γ-バレロラクトン9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0214】
(実施例91、93の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例91、93 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、γ-バレロラクトン9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0215】
(実施例94、96の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例94、96 固形分濃度30%)25質量%と、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0216】
(実施例95、97の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例95、97 固形分濃度30%)25質量%と、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0217】
(実施例98、100の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例98、100 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0218】
(実施例99、101の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例99、101 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、N-メチル-イプシロン-カプロラクタム9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0219】
(実施例102、104の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例102、104 固形分濃度30%)25質量%と、2-ヒドロキシルエチルモルフォリン25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0220】
(実施例103、105の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例103、105 固形分濃度30%)25質量%と、2-ヒドロキシルエチルモルフォリン25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0221】
(実施例106、108の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例106、108 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、2-ヒドロキシルエチルモルフォリン9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0222】
(実施例107、109の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例107、109 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、2-ヒドロキシルエチルモルフォリン9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0223】
(実施例110、112の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例110、112 固形分濃度30%)25質量%と、2-ヒドロキシルエチルピロリドン25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0224】
(実施例111、113の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例111、113 固形分濃度30%)25質量%と、2-ヒドロキシルエチルピロリドン25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0225】
(実施例114、116の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例114、116 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、2-ヒドロキシルエチルピロリドン9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0226】
(実施例115、117の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例115、117 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、2-ヒドロキシルエチルピロリドン9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0227】
(実施例118、120の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例118、120 固形分濃度30%)25質量%と、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0228】
(実施例119、121の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例119、121 固形分濃度30%)25質量%と、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0229】
(実施例122、124の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例122、124 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0230】
(実施例123、125の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例123、125 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0231】
(実施例126、128の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例126、128 固形分濃度30%)25質量%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0232】
(実施例127、129の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例127、129 固形分濃度30%)25質量%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0233】
(実施例130、132の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例130、132 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0234】
(実施例131、133の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例131、133 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0235】
(実施例134、136の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例134、136 固形分濃度30%)25質量%と、トリエチレングリコールモノメチルエーテル25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0236】
(実施例135、137の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例135、137 固形分濃度30%)25質量%と、トリエチレングリコールモノメチルエーテル25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0237】
(実施例138、140の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例138、140 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、トリエチレングリコールモノメチルエーテル9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0238】
(実施例139、141の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例139、141 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、トリエチレングリコールモノメチルエーテル9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0239】
(実施例142、144の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例142、144 固形分濃度30%)25質量%と、トリエチレングリコールモノブチルエーテル25質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0240】
(実施例143、145の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例143、145 固形分濃度30%)25質量%と、トリエチレングリコールモノブチルエーテル25質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0241】
(実施例146、148の水性インク組成物の調製)
顔料分散体20質量%と、高分子微粒子分散体(実施例146、148 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、トリエチレングリコールモノブチルエーテル9質量%と、ポリシロキサン化合物0.5質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(着色インク)を製造した。
【0242】
(実施例147、149の水性インク組成物の調製)
高分子微粒子分散体(実施例147、149 固形分濃度30%)25質量%と、1,2-プロパンジオール20質量%と、トリエチレングリコールモノブチルエーテル9質量%と、水(脱イオン水)残量と、を含む水性インク組成物(受理溶液)を製造した。
【0243】
(実施例150~154の水性インク組成物の調製)
上記の実施例1~3、6の水性インク組成物において、高分子微粒子分散体の含有割合を13質量%に変更し、合計含有量が100質量%となるように水(脱イオン水)の含有割合を変更して水性インク組成物を製造した。
【0244】
4.水性インク組成物の評価
(耐溶剤性)
実施例及び比較例の水性インク組成物について耐溶剤性を評価した。具体的には、実施例及び比較例の水性インク組成物を被印刷基材(糊付きポリ塩化ビニルフィルム、表面改質処理基材:コロナ処理OPP)にインクジェット記録装置により印字濃度100%のベタ画像の印刷物を製造し、下記表に記載の温度(60℃、80℃、100℃)で8分乾燥後、印刷直後のインク組成物の塗布面の塗膜に対して学振型摩擦堅牢度試験機II型にて、加重1kg(糊付きポリ塩化ビニルフィルム)及び加重200g(コロナ処理OPP)、当布:質量濃度50%のエタノール水溶液に浸した金巾3号の条件で塗膜の外観を観察し、下記評価基準(塗膜外観指標)により塗膜の外観を評価した(表中、耐溶剤性と表記)。
【0245】
評価基準
A:100回後に外観変化無し
B:75回後に外観変化無し・100回後にやや外観変化有り
C:50回後に外観変化無し・75回後にやや外観変化有り
D:25回後に外観変化無し・50回後にやや外観変化有り
E:25回後に外観変化有り(実用範囲外)
【0246】
(保存安定性)
実施例及び比較例の水性インク組成物について保存安定性を評価した。具体的には、インク組成物を60℃オーブン内で1週間加温し、液温25℃で測定した加温前後の粘度を測定し、以下の評価基準に基づき評価を行った。評価結果を下記表に記載した(表中、「保存安定性」と表記)。
【0247】
評価基準
A:粘度変化率5%以下
B:粘度変化率5%超7.5%未満
C:粘度変化率7.5%以上10%未満
D:粘度変化率10%以上(実用範囲外)
【0248】
(間欠吐出性)
実施例及び比較例のインク組成物について間欠吐出性(吐出安定性)を評価した。具体的には、インク組成物をインクカートリッジ(収容容器)に充填し、そのインクカートリッジ(収容容器)を、ピエゾ式インクジェットヘッド搭載のシリアル方式のインクジェット記録装置に搭載して、そのインクジェット記録装置により、ノズルチェックパターンを印刷し、ヘッドキャップをしない状態で10分間静置後に同様の印刷を行った。静置前後でノズル欠け有無を確認し、静置前のパターンに対するノズル欠けが10%未満になるまで同印刷を繰り返し、その回数により吐出性を以下の評価基準に基づき評価を行った。評価結果を下記表に記載した(表中、「間欠吐出性」と表記)。
【0249】
評価基準
A:静置後の印刷1回目でノズル欠け10%以下
B:静置後の印刷2回目でノズル欠け10%以下
C:静置後の印刷3回目でノズル欠け10%以下
D:静置後の印刷4回目でノズル欠け10%以下
E:静置後の印刷4回目でノズル欠け11%以上(実用範囲外)
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
表中、「MAA」とは、メタクリル酸である。
表中、「DMMA」とはメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルである。
表中、「CHMA」とは、シクロヘキシルメタクリレートである。
表中、「PhMA」とは、フェニルメタクリレートである。
表中、「MMA」とは、メチルメタクリレートである。
表中、「IBXMA」とは、イソボルニルメタクリレート
表中、「NMA」とは、ナフタレニルメタクリレート
表中、「BMA」とは、ブチルメタクリレートである。
表中、「CHA」とは、シクロヘキシルアクリレートである。
表中、「MA」とは、メチルアクリレート
表中、「2-EHA」とは、2-エチルヘキシルアクリレート
表中、「St」とは、スチレンである。
表中、「塩ビ」とは、糊付きポリ塩化ビニルフィルムである。
表中、「コロナ処理OPP」とは、表面に対してコロナ処理が施されたポリプロピレン系樹脂基材(ポリオレフィン系樹脂基材)である。
【0264】
上記表から分かるように、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上120℃以下のアクリル系樹脂を含有し、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有する水性インク組成物であれば、60℃、80℃、100℃で乾燥させた場合であっても、得られる記録物の耐溶剤性が高いことが分かる。
【0265】
このなかでも、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.0以上のアクリルモノマーAを含有する実施例1~14の水性インク組成物は、実施例15、16、17の水性インク組成物と比較しても、耐溶剤性の高い塗膜を形成できた。
【0266】
また、モノマーBを加えホモポリマーのTgが60℃以下のモノマーCを含有する実施例1~14であれば、実施例18の水性インク組成物と比較しても、耐溶剤性の高い塗膜を形成できた。
【0267】
また、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が1.9以上のアクリルモノマーAを含有する実施例1~14であれば、実施例19の水性インク組成物と比較しても耐溶剤性の高い塗膜を形成できた。
【0268】
また、水/1-オクタノールでの分配係数(LogP)が4以下のアクリルモノマーAを含有する実施例1~14であれば、実施例20の水性インク組成物と比較しても溶剤性の高い塗膜を形成できた。
【0269】
また、ガラス転移温度が40℃以上である実施例1~14であれば、実施例21の水性インク組成物と比較しても耐溶剤性の高い塗膜を形成できた。
【0270】
また、ガラス転移温度が80℃以下である実施例1~14であれば、実施例22、23の水性インク組成物と比較しても耐溶剤性の高い塗膜を形成できた。
【0271】
また、有機溶剤の種類を変更した実施例24~154の水性インク組成物であっても実施例1~23の水性インク組成物同様に得られる記録物の耐溶剤性が高いことが分かる。
【0272】
一方、ガラス転移温度(Tg)が120℃超の共重合体を含有する比較例2の水性インク組成物やガラス転移温度(Tg)が0℃未満の共重合体を含有する比較例3の水性インク組成物は、得られる記録物の耐溶剤性が低く、本発明の効果を奏するものとなっていない。また、アクリルモノマーの単独重合体を含有する比較例1の水性インク組成物は、60℃での耐溶剤性が低く、本発明の効果を奏するものとなっていない。
【0273】
また、モノマーBを含有しない比較例4やモノマーAを含有しない比較例5は、保存安定性が低下するか、又は得られる記録物の耐溶剤性が低下しており、本発明の効果を奏するものとなっていない。
【要約】
【課題】水性インク組成物を低温で乾燥させた場合であっても、得られる記録物の耐溶剤性の高い水性インク組成物を提供する。
【解決手段】水と、樹脂と、を含有する水性インク組成物であって、樹脂の少なくとも一部は、高分子微粒子分散体として含有し、樹脂は、アクリル系樹脂を含有し、アクリル系樹脂は、少なくとも2種類のモノマーを構成単位として含む共重合体を含有し、アクリル系樹脂のTgは、0℃以上120℃以下である水性インク組成物である。
【選択図】なし