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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びその製造装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 35/00 20060101AFI20231016BHJP
   C03B 33/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C03B35/00
C03B33/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019185925
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059478
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】塚田 将夫
(72)【発明者】
【氏名】和泉 純一
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/046683(WO,A1)
【文献】特開昭60-082525(JP,A)
【文献】特開2007-069061(JP,A)
【文献】特開2003-137574(JP,A)
【文献】特開2008-070324(JP,A)
【文献】特開2005-178919(JP,A)
【文献】特開平11-208878(JP,A)
【文献】特開昭58-082919(JP,A)
【文献】特開昭54-159430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 35/00
C03B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスリボンからガラス板を切り出す切断工程と、切り出された前記ガラス板を搬送する搬送工程とを備えたガラス板の製造方法であって、
前記搬送工程の搬送経路から分岐した分岐経路を設け、前記分岐経路から前記ガラス板を採取する採取工程をさらに備え
前記切断工程では、前記搬送経路に供給する製品となる前記ガラス板のサイズに対し、前記分岐経路に供給する前記ガラス板のサイズが異なるように、前記ガラスリボンから切り出す前記ガラス板のサイズを変更することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記切断工程では、前記搬送経路に供給する製品となる前記ガラス板のサイズよりも、前記分岐経路に供給する前記ガラス板のサイズが小さくなるように、前記ガラスリボンから切り出す前記ガラス板のサイズを変更することを特徴とする請求項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記搬送経路は、第一直線部と、前記第一直線部の下流側に設けられ、前記第一直線部と異なる方向に延びる第二直線部と、前記第一直線部と前記第二直線部とが繋がる屈曲部とを有し、
前記分岐経路が、前記屈曲部から分岐している請求項1又は2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記分岐経路は、第三直線部を有し、
前記第三直線部が、前記第二直線部と平行かつ前記屈曲部から前記第二直線部とは反対側に延びる請求項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記搬送工程は、前記第一直線部上で、縦姿勢の前記ガラス板をその表面と垂直な方向に沿って搬送する垂直搬送工程と、前記第二直線部上で、縦姿勢の前記ガラス板をその表面と平行な方向に沿って搬送する平行搬送工程とを有し、
前記平行搬送工程の途中で前記ガラス板の耳部を除去する工程をさらに備え、前記分岐経路には前記耳部の付いた前記ガラス板を供給する請求項3又は4に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記分岐経路の途中で、スクライブ装置により、前記ガラス板に前記耳部を除去するためのスクライブ線を形成する工程をさらに備える請求項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記切断工程を行う空間と、前記採取工程を行う空間とが仕切られている請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記採取工程では、前記分岐経路から前記ガラス板を評価用サンプルとして採取する請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
ガラスリボンからガラス板を切り出す切断装置と、切り出された前記ガラス板を搬送する搬送装置とを備えたガラス板の製造装置であって、
前記搬送装置の搬送経路から分岐し、前記ガラス板を採取するための分岐経路が設けられ
前記切断装置は、前記搬送経路に供給する製品となる前記ガラス板のサイズに対し、前記分岐経路に供給する前記ガラス板のサイズが異なるように、前記ガラスリボンから切り出す前記ガラス板のサイズを変更可能に構成されていることを特徴とするガラス板の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのディスプレイ用の基板をはじめとする様々な分野において、ガラス板が使用されている。
【0003】
この種のガラス板の製造工程では、まず、オーバーフローダウンドロー法やフロート法などの公知の方法により、長尺なガラスリボンを連続的に成形する。次に、ガラスリボンを所定の長さ毎に幅方向に切断し、ガラスリボンからガラス板を切り出す。その後、切り出されたガラス板は、搬送装置により搬送経路上を搬送される。この搬送経路上で、例えば、ガラス板の耳部を除去する工程や、ガラス板の欠陥の有無などを検査する工程などが必要に応じて実施される。そして、このような各種工程を経た後に、搬送装置の搬送経路の下流端では、複数のガラス板が、積載装置によりパレットに梱包され、保管あるいは輸送(出荷)される(例えば、特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-30744号公報
【文献】特開2019-89674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガラス板の製造ラインでは、例えば評価用サンプルとしてガラス板をある程度の頻度で抜き取り、ガラス板の切断端面の観察などの所定の評価をする必要がある。
【0006】
しかしながら、従来のガラス板の製造ラインでは、評価用サンプルを抜き取ることを想定した専用設計がなされておらず、例えば、搬送経路の下流端から評価用サンプルを抜き取っていた。この場合、評価用サンプルを抜き取るために、ガラス板の製品生産(例えばガラス板のパレットへの積載)を一時中断する必要があるため、ガラス板の製造効率が低下してしまう。
【0007】
本発明は、ガラス板の製造効率の低下を招くことなく、ガラス板の製造ラインからガラス板を採取することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスリボンからガラス板を切り出す切断工程と、切り出されたガラス板を搬送する搬送工程とを備えたガラス板の製造方法であって、搬送工程の搬送経路から分岐した分岐経路を設け、分岐経路からガラス板を採取する採取工程をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、ガラス板を搬送経路とは別の専用の分岐経路から採取できるため、例えば評価用サンプルとしてガラス板を採取するためにガラス板の製造を一時中断する必要がない。したがって、ガラス板の製造効率の低下を招くことなく、ガラス板の製造ラインからガラス板を採取できる。
【0010】
上記の構成において、搬送経路は、第一直線部と、第一直線部の下流側に設けられ、第一直線部と異なる方向に延びる第二直線部と、第一直線部と第二直線部とが繋がる屈曲部とを有し、分岐経路が、屈曲部から分岐していることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、第一直線部から第二直線部にガラス板を搬送する際も、屈曲部でガラス板が搬送方向を変更するために一旦減速(停止も含む)する。したがって、屈曲部から分岐経路を分岐させれば、減速した状態のガラス板を取り扱うことができるため、ガラス板を分岐経路へ供給し易くなる。また、搬送工程の下流端(梱包位置)から分岐経路を分岐させることも可能であるが、この場合には、分岐経路が梱包体を移動させるフォークリフトの通路などを制限するおそれがある。これに対し、上記の構成のように、分岐経路が屈曲部から分岐していると、このような問題の発生も確実に回避できる。
【0012】
分岐経路が屈曲部から分岐している場合、分岐経路は、第三直線部を有し、第三直線部が、第二直線部と平行かつ屈曲部から第二直線部とは反対側に延びることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、複数の製造ラインを並列に配置する場合に、製造ライン間の距離を狭くできるため、製造設備全体の省スペース化を図ることができる。
【0014】
分岐経路が屈曲部から分岐している場合、搬送工程は、第一直線部上で、縦姿勢のガラス板をその表面と垂直な方向に沿って搬送する垂直搬送工程と、第二直線部上で、縦姿勢のガラス板をその表面と平行な方向に沿って搬送する平行搬送工程とを有し、平行搬送工程の途中でガラス板の耳部を除去する工程をさらに備え、分岐経路には耳部の付いたガラス板を供給してもよい。
【0015】
このようにすれば、分岐経路が分岐する屈曲部の段階では、ガラス板の耳部が除去されずに残されている。したがって、分岐経路から耳部付きのガラス板も採取できるため、必要に応じて耳部の評価もできる。
【0016】
分岐経路に耳部付きのガラス板を供給する場合、分岐経路の途中で、スクライブ装置により、ガラス板に耳部を除去するためのスクライブ線を形成する工程をさらに備えることが好ましい。
【0017】
このようにすれば、採取したガラス板を耳部を除去して用いる場合に、大型のガラス板に対しても容易にスクライブ線を形成できるため、耳部の除去を確実に行うことができる。
【0018】
上記の構成において、切断工程では、搬送経路に供給する製品となるガラス板のサイズよりも、分岐経路に供給するガラス板のサイズが小さくなるように、ガラスリボンから切り出すガラス板のサイズを変更してもよい。
【0019】
採取したガラス板は、例えば切断端面の観察などの所定の評価を行った後に廃棄される場合がある。このため、上記の構成のように分岐経路に供給するガラス板のサイズを製品となるガラス板のサイズよりも小さくすれば、廃棄するガラス量を減らすことができる。
【0020】
上記の構成において、切断工程を行う空間と、採取工程を行う空間とが仕切られていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、切断工程で発生するガラス粉が、採取工程を行う空間に侵入するのを抑制できるため、採取するガラス板が、ガラス粉で汚染されるのを低減できる。
【0022】
上記の構成において、採取工程では、分岐経路からガラス板を評価用サンプルとして採取することが好ましい。
【0023】
評価用サンプルをある程度の頻度で定期的に抜き取る場合がある。この場合に、本発明を適用すれば、ガラス板の製品生産を定期的に一時中断する必要がなくなり、ガラス板の製造効率の低下を的確に防止できる。
【0024】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ガラスリボンからガラス板を切り出す切断装置と、切り出されたガラス板を搬送する搬送装置とを備えたガラス板の製造装置であって、搬送装置の搬送経路から分岐し、ガラス板を採取するための分岐経路が設けられていることを特徴とする。
【0025】
このようにすれば、上述した対応する構成と同様の作用効果を享受できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガラス板の製造効率の低下を招くことなく、ガラス板の製造ラインからガラス板を採取できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第一実施形態に係るガラス板の製造装置を示す概略縦断面図である。
図2】第一実施形態に係るガラス板の製造装置を示す概略横断面図である。
図3図2のD-D断面図である。
図4】第二実施形態に係るガラス板の製造装置を示す概略横断面図である。
図5】第三実施形態に係るガラス板の製造装置を示す概略横断面図である。
図6】第四実施形態に係るガラス板の製造装置を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、図中のXYZは直交座標系である。X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0029】
(第一実施形態)
図1図3に示すように、第一実施形態に係るガラス板の製造方法は、ガラスリボンGrを成形する成形工程と、ガラスリボンGrからガラス板Gを切り出す切断工程と、切り出されたガラス板Gを搬送する搬送工程と、搬送工程の搬送経路Rの下流端からガラス板Gを取り出して梱包する梱包工程と、搬送工程の搬送経路Rから分岐した分岐経路Tからガラス板Gを評価用サンプルGxとして採取する採取工程とを備えている。
【0030】
換言すれば、第一実施形態に係るガラス板の製造装置は、ガラスリボンGrを成形する成形装置1と、ガラスリボンGrからガラス板Gを切り出す切断装置2と、切り出されたガラス板Gを搬送する搬送装置3と、搬送装置3の搬送経路Rから分岐し、ガラス板Gを評価用サンプルGxとして採取するための分岐経路Tとを備えている。
【0031】
本製造方法に含まれる各工程は、外部からの汚染物質をある程度遮断できる空間を区画形成する処理室4(例えば、クリーンルーム)内で行われる。処理室4内は、複数の空間S1,S2,S3に仕切られており、隣接する空間を仕切る壁5,6には、ガラス板Gを通過させるための開口部(例えばスリット)5a,6aが設けられている。処理室4内の分割態様は適宜変更できるが、本実施形態では、切断工程を行う空間S1と採取工程を行う空間S3とが、壁5によって仕切られると共に、切断工程を行う空間S1と梱包工程を行う空間S2とが、壁6によって仕切られている。これにより、切断工程を行う空間S1で発生するガラス粉が、隣接する他の空間S2,S3に侵入するのを抑制できる。なお、壁5,6の開口部5a,6aには、開口部5a,6aを開閉するためのシャッターが設けられていてもよい。
【0032】
図1に示すように、成形工程では、成形装置1によってガラスリボンGrを連続成形する。成形装置1は、ガラスリボンGrを成形する成形炉11と、ガラスリボンGrの内部歪を低減するためにガラスリボンGrを徐冷(アニール処理)する徐冷炉12と、ガラスリボンGrを室温付近まで冷却する冷却ゾーン13と、成形炉11、徐冷炉12及び冷却ゾーン13のそれぞれに上下複数段に設けられるローラ対14とを備えている。ローラ対14は、ガラスリボンGrの幅方向両端部を挟持しながら、ガラスリボンGrを搬送して降下させる。
【0033】
成形炉11の内部空間には、オーバーフローダウンドロー法により溶融ガラスからガラスリボンGrを成形する成形体15が配置されている。成形体15に供給された溶融ガラスは、成形体15の頂部から溢れ出た後に、成形体15の両側面を伝って成形体15の下端で合流する。これにより、板状のガラスリボンGrが連続成形される。
【0034】
なお、本実施形態では、成形装置1によって成形されたガラスリボンGrの幅方向両端部は、成形過程の収縮等の影響により、幅方向中央部に比べて厚みが大きい耳部を含む。
【0035】
図1に示すように、切断工程では、切断装置2によって、成形装置1の下方で縦姿勢のガラスリボンGrを所定の長さ毎に幅方向に切断することにより、ガラスリボンGrからガラス板Gを順次切り出す。ここで、幅方向は、ガラスリボンGrの長手方向(延伸方向)と直交する方向であり、本実施形態では実質的に水平方向と一致する。
【0036】
切断装置2は、ガラスリボンGrの一方の表面上に幅方向に沿ってスクライブ線L1を形成するスクライブ装置(図示省略)と、スクライブ線L1に対応する位置で、ガラスリボンGrの他方の表面を支持する接触部21と、切り出し対象のガラス板Gに対応する部分(スクライブ線L1より下の部分)のガラスリボンGrを保持し、スクライブ線L1に曲げ応力を作用させる応力付与部22とを備えている。
【0037】
スクライブ装置は、ホイールカッターを備えている。ホイールカッターは、降下中のガラスリボンGrに追従降下しつつ、ガラスリボンGrの幅方向にスクライブ線L1を形成する。なお、スクライブ装置は、例えばレーザーの照射などの他の方法でスクライブ線L1を形成するものであってもよい。
【0038】
接触部21は、降下中のガラスリボンGrに追従降下しつつ、ガラスリボンGrの幅方向に接触する平面状の接触面を有する板状体(定盤)から構成されている。なお、接触部21の接触面は、幅方向に湾曲した曲面であってもよい。
【0039】
応力付与部22は、ガラスリボンGrの幅方向両端部を挟持するチャック機構により構成されている。応力付与部22は、ガラス板Gの額縁状の周縁部を除く中央側領域に形成される有効面(品質が保証された部分)には接触しないようにすることが好ましい。本実施形態では、応力付与部22が降下中のガラスリボンGrに追従降下しつつ、接触部21を支点としてガラスリボンGrを湾曲させるための動作(A方向の動作)を行う。この応力付与部22の動作により、スクライブ線L1に曲げ応力が付与される。その結果、ガラスリボンGrがスクライブ線L1に沿って幅方向に折り割られ、ガラスリボンGrからガラス板Gが切り出される。なお、応力付与部22は、ガラスリボンGr(ガラス板G)を負圧吸着などの他の方法によって保持するものであってもよい。また、切断装置2は、例えば、レーザー割断やレーザー溶断などの他の方法でガラスリボンGrを切断するものであってもよい。
【0040】
応力付与部22は、切り出されたガラス板Gを縦姿勢のままB方向に沿って搬送した後、受渡位置P1で搬送装置3にガラス板Gを受け渡す。受け渡し後、応力付与部22は、ガラス板Gの幅方向両端部の保持を解除すると共に、ガラスリボンGrから次のガラス板Gを切り出すために、切り出しを開始する前の位置に戻る。
【0041】
なお、切断工程では、搬送経路Rに供給する製品となるガラス板Gのサイズよりも、分岐経路Tに供給する評価用サンプルGxとなるガラス板Gのサイズが小さくなるように、ガラスリボンGrから切り出すガラス板Gの長さを変更してもよい。評価用サンプルGxは、切断端面の観察などの所定の評価を行った後に廃棄されるため、評価用サンプルGxとなるガラス板Gのサイズを製品となるガラス板Gのサイズよりも小さくすれば、ガラスの廃棄量を減らすことができる。
【0042】
図1図3に示すように、搬送工程では、搬送装置3によりガラス板Gを縦姿勢のまま搬送する。つまり、ガラス板Gの上下方向が、ガラスリボンGrの延伸方向と一致する。
【0043】
本実施形態では、搬送工程における搬送装置3の搬送経路Rは、X方向に延びる第一直線部R1と、第一直線部R1の下流側に設けられ、第一直線部R1と異なる方向(本実施形態では、X方向と直交するY方向)に延びる第二直線部R2と、第一直線部R1と第二直線部R2とが繋がる屈曲部R0とを含む。なお、搬送装置3で搬送経路Rに沿ってガラス板Gを搬送する際、ガラス板Gは、屈曲部R0において、搬送方向を変更するために一旦減速(停止も含む)するようになっている。搬送装置3の搬送経路Rの形態(形状、長さ、方向など)は、特に限定されるものではなく、製造ラインに応じて適宜変更できる。
【0044】
搬送装置3は、縦姿勢のガラス板Gをその上端部で保持して吊り下げ支持する第一保持部31及び第二保持部32を備えている。なお、本実施形態では、搬送経路R上で同時に複数のガラス板Gを搬送するために、第一保持部31及び/又は第二保持部32が搬送経路R上に複数配置されている。
【0045】
第一保持部31及び第二保持部32は、ガラス板Gの上端部を挟持するチャック機構から構成されている。第一保持部31及び第二保持部32は、ガラス板Gの有効面には接触しないようにすることが好ましい。なお、第一保持部31及び第二保持部32は、ガラス板Gを負圧吸着などの他の方法によって保持するものであってもよい。
【0046】
第一保持部31は、受渡位置P1において切断装置2の応力付与部22からガラス板Gを受け取った後、第一直線部R1上で、縦姿勢のガラス板Gをその表面と垂直な方向に沿って搬送する垂直搬送工程を行う。なお、第一保持部31は、第一直線部R1の上流端(受渡位置P1)と下流端(屈曲部R0)との間を往復移動するように構成されていてもよい。あるいは、第一保持部31は、第一直線部R1の上流端と下流端の間を複数の区間に分割し、各分割区間を往復移動しながら、隣接する分割区間の間でガラス板Gを受け渡すように構成されていてもよい。
【0047】
第二保持部32は、第一直線部R1の下流端に位置する屈曲部R0において第一保持部31からガラス板Gを受け取った後、第二直線部R2上で、縦姿勢のガラス板Gをその表面と平行な方向に沿って搬送する平行搬送工程を行う。本実施形態では、ガラス板Gの搬送時の空気抵抗を低減するために、平行搬送工程を行う第二直線部R2が、垂直搬送工程を行う第一直線部R1よりも長い。なお、第二保持部32は、第二直線部R2の上流端(屈曲部R0)と下流端(取出位置P2)との間を往復移動するように構成されていてもよい。あるいは、第二保持部32は、第二直線部R2の上流端と下流端の間を複数の区間に分割し、隣接する分割区間の間でガラス板Gを受け渡しながら、各分割区間を往復移動するように構成されていてもよい。
【0048】
図2図3に示すように、本実施形態では、第一実施形態に係るガラス板の製造方法は、平行搬送工程の途中に、第二直線部R2上において、縦姿勢のガラス板Gの耳部Gaを除去する耳部除去工程と、縦姿勢のガラス板Gを検査する検査工程とをさらに含む。換言すれば、第一実施形態に係るガラス板の製造装置は、搬送装置3の第二直線部R2において、縦姿勢のガラス板Gの耳部Gaを除去する耳部除去装置(図示省略)と、縦姿勢のガラス板Gの検査を行う検査装置7とをさらに備えている。
【0049】
耳部除去工程では、スクライブ装置と折割装置とを含む耳部除去装置(図示省略)によって、ガラス板Gの幅方向両端部に対応する位置で、ガラス板Gの上下方向に沿ってスクライブ線L2を形成した後、スクライブ線L2に沿って曲げ応力を作用させてガラス板Gを折り割る。これにより、ガラス板Gの耳部Gaを除去する。なお、耳部除去装置は、例えば、レーザー割断やレーザー溶断などの他の方法で耳部Gaを除去するものであってもよい。
【0050】
検査工程では、検査装置7でガラス板Gを自動検査する。検査装置7は、例えば、ガラス板Gの偏肉(板厚)、筋(脈理)、欠陥の種類(例えば、泡、異物など)・位置(座標)・大きさなどを測定する。
【0051】
図2に示すように、梱包工程では、積載装置8により、第二直線部R2の下流端の取出位置P2からガラス板G(製品となるガラス板)を取り出すと共に、取り出したガラス板GをパレットCに積載して梱包する。積載装置8は、取出位置P2とパレットCとの間を往復移動する。積載装置8は、縦姿勢のガラス板Gを保持(例えば、吸着又は挟持)した状態で、ガラス板Gをその表面と垂直な方向に沿って搬送すると共に、パレットCにガラス板Gを縦姿勢で重ねて積載する。この際、パレットC上のガラス板Gの相互間には合紙などの保護シート(図示省略)が介装される。なお、複数の積載装置8により複数のパレットCに同時にガラス板Gを積載するようにしてもよい。この場合、取出位置P2も複数設けることが好ましい。
【0052】
図2図3に示すように、採取工程では、搬送装置3の搬送経路Rから分岐した分岐経路Tにガラス板Gを供給し、分岐経路Tの下流端の採取位置P3からガラス板Gを評価用サンプルGxとして採取する。本実施形態では、分岐経路Tは、第三直線部T1を有し、第三直線部T1が、第二直線部R2と平行かつ屈曲部R0から第二直線部R2とは反対側に延びている。なお、分岐経路Tの形態(形状、長さ、方向など)は、特に限定されるものではなく製造ラインによって適宜変更できる。
【0053】
採取工程は、評価用サンプルGxの採取が必要なときのみに行われる。つまり、屈曲部R0でガラス板Gを保持した第二保持部32が、評価用サンプルGxの採取が必要なタイミングで第三直線部T1側に移動する。これにより、第二保持部32によって保持された縦姿勢のガラス板Gが、第三直線部T1上を、ガラス板Gの表面と平行な方向に沿って移動する。なお、分岐経路Tにガラス板Gを供給する搬送装置は、搬送経路Rにガラス板Gを供給する搬送装置3から独立した専用の搬送装置であってもよい。
【0054】
採取工程では、評価用サンプルGxを搬送経路Rとは別の専用の分岐経路Tから採取できるため、評価用サンプルGxを採取するためにガラス板Gの製造を一時中断する必要もない。したがって、ガラス板Gの製造効率の低下を招くことなく、ガラス板Gの製造ラインから評価用サンプルGxを採取できる。採取された評価用サンプルGxを用いて、例えば、切断装置2による切断端面の観察などの所定の評価が行われる。
【0055】
本実施形態では、分岐経路Tに耳部Ga付きのガラス板Gが供給される。そのため、分岐経路Tの途中に配置されたスクライブ装置(図示省略)により、ガラス板Gの幅方向両端部に対応する位置で、ガラス板Gの上下方向に沿ってスクライブ線L3を形成している。このようにすれば、ガラス板Gを分岐経路Tから採取した後に、ガラス板Gをスクライブ線L3に沿って折り割ることで、耳部Gaの除去を確実に行うことができる。なお、ガラス板Gの耳部Gaの除去は、ガラス板Gの姿勢が縦姿勢のまま行ってもよいし、縦姿勢から平置き姿勢に変更された後に行ってもよい。耳部Gaは、必要に応じて厚みなどが評価される。
【0056】
(第二実施形態)
図4に示すように、第二実施形態に係るガラス板の製造方法及び製造装置が、第一実施形態と相違するところは、複数の製造ラインを並列に配置した点にある。
【0057】
詳細には、第二実施形態では、複数(図示例は3つ)の製造ラインMLが、X方向に並列に配置されており、各製造ラインMLにおいて、搬送経路Rから分岐経路Tが、Y方向に延びる第二直線部R2と平行かつ屈曲部R0から第二直線部R2とは反対側に延びる第三直線部T1を有している。このようにすれば、各製造ラインMLにおいて、搬送経路Rの第二直線部R2と分岐経路Tの第三直線部T1とが、共にY方向に延びるため、各製造ラインML間のX方向の距離を狭くでき、製造設備全体の省スペース化を図ることができる。
【0058】
本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において、第一実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。
【0059】
(第三実施形態)
図5に示すように、第三実施形態に係るガラス板の製造方法及び製造装置が、第一~第二実施形態と相違するところは、分岐経路Tを搬送経路Rの下流端の取出位置P2から分岐させた点にある。つまり、本発明は、搬送経路Rの屈曲部R0から分岐経路Tを分岐させる場合に限定されない。
【0060】
詳細には、第三実施形態では、搬送経路Rの取出位置P2において、第二直線部R2と平行かつ第二直線部R2を同じ方向に延長するように分岐経路Tが設けられ、梱包工程を行う空間S2と同じ空間内で、分岐経路Tの採取位置P3から評価用サンプルGxが採取される。この場合、ガラス板Gは、分岐経路Tに至る前の搬送経路R上で耳部Gaが除去されるため、分岐経路Tに専用の耳部除去装置を配置する必要がない。
【0061】
ただし、搬送経路Rの取出位置P2から分岐経路Tを分岐させた場合、分岐経路TがパレットC(あるいはパレットCにガラス板Gを梱包した梱包体)を移動させるフォークリフトの通路などを制限するおそれがある。したがって、このような問題の発生を回避する観点からは、第一実施形態で説明したように、分岐経路Tは、搬送経路Rの下流端ではなく、搬送経路Rの屈曲部R0などの上流側領域から分岐させることが好ましい。
【0062】
本実施形態におけるその他の構成は、第一~第二実施形態と同じである。本実施形態において、第一~第二実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。
【0063】
(第四実施形態)
図6に示すように、第四実施形態に係るガラス板の製造方法及び製造装置が、第一~第三実施形態と相違するところは、分岐経路Tを搬送経路Rから下方に分岐させた点にある。つまり、本発明は、分岐経路Tの採取位置P3が、搬送経路Rと同一水平面上にある場合に限定されない。
【0064】
詳細には、第四実施形態では、搬送経路Rが設けられた空間S1,S2が上方(例えば建物の二階)、分岐経路Tの採取位置P3が設けられた空間S3が下方(例えば建物の一階)に配置されており、空間S1,S2と空間S3とが、搬送経路Rが設けられた空間S1,S2のフロア面9によって仕切られている。図示例では、分岐経路Tが、搬送経路Rの屈曲部R0から下方に分岐しており、屈曲部R0に対応するフロア面9にガラス板Gを通過させるための開口部9aが設けられている。なお、開口部9aには、開口部9aを開閉するためのシャッターが設けられていてもよい。
【0065】
本実施形態におけるその他の構成は、第一~第三実施形態と同じである。本実施形態において、第一~第三実施形態と共通する構成要素には、共通符号を付している。
【0066】
なお、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、更に種々なる形態で実施し得る。
【0067】
上記の実施形態では、ガラス板を縦姿勢で搬送する場合を説明したが、ガラス板の搬送態様は特に限定されるものではなく、例えば、コンベアなどでガラス板を平置き姿勢(好ましくは水平姿勢)や傾斜姿勢で搬送してもよい。
【0068】
上記の実施形態では、オーバーフローダウンドロー法によりガラスリボンを成形する場合を説明したが、スロットダウンドロー法、リドロー法、フロート法等の他の公知の成形方向によりガラスリボンを成形するようにしてもよい。なお、フロート法の場合、ガラスリボンを成形する成形装置は、ガラスリボンからガラス板を切り出す切断装置の上方ではなく、切断装置の横に設けられる。
【0069】
上記の実施形態では、ガラス板を評価用サンプルとして採取する場合を説明したが、ガラス板を通常サイズの製品または主流の製品サイズと異なるサイズの製品として採取してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 成形装置
11 成形炉
12 徐冷炉
13 冷却ゾーン
14 ローラ対
15 成形体
2 切断装置
21 接触部
22 応力付与部
3 搬送装置
31 第一保持部
32 第二保持部
4 処理室
7 検査装置
8 積載装置
G ガラス板
Ga 耳部
Gx 評価用サンプル
R 搬送経路
R0 屈曲部
R1 第一直線部
R2 第二直線部
T 分岐経路
T1 第三直線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6