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  • 特許-放射線治療用衣服 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】放射線治療用衣服
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20231016BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20231016BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
A61N5/10 Z
A41D13/12 145
A41D27/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019223494
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021090648
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504074318
【氏名又は名称】今西 順治
(74)【代理人】
【識別番号】100100963
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 陽男
(72)【発明者】
【氏名】今西 順治
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204653873(CN,U)
【文献】特開平8-89522(JP,A)
【文献】特開2006-225810(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102396807(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0019874(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0019875(US,A1)
【文献】中国実用新案第204812212(CN,U)
【文献】中国実用新案第207220224(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 ― 13/12
A41D 27/00
A41D 27/28
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療を行う際に患者が着用する衣服であって、伸縮可能な布地で形成して、着用した際に、布地が伸びて全体が身体に密着するようにし、身体の正面と両側面に位置する部分に、胸周辺位置から腹部にかけて細長い開口部を直線状に設け、身体の両側面に位置する部分に設けた前記開口部の腹部部分から身体の正面側にかけて身体の周方向に伸びる凸状開口部を設けたことを特徴とする放射線治療用衣服。
【請求項2】
乳房近傍部分に治療マーキング用開口部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の放射線治療用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌患者の患部に強いX線や電子線等の放射線を照射して治療を行う際に、患者が着用する放射線治療用衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
放射線治療は、リニアック装置を使って行われるが、ベッドに横たわる患者の周りで、放射線の照射ヘッドを回転させながら、コンピュータ制御により放射線を患部に集中的に照射するようにして、正常細胞への影響を最小限にしながら、癌細胞を死滅させる。その治療対象としては、乳癌,肺癌,前立腺癌,食道癌,肝癌,膵臓癌等があげられる。
【0003】
リニアックによる放射線治療は、通常、次のようにして行われる。まず、治療計画用に、CT検査としてCT装置により画像を撮影して癌の位置を確認し、放射線治療を行う際には、CT画像で確認した位置に対してリニアックで放射線を集中的に照射する。その際、CT装置で撮影する際と、リニアックで放射線を照射する際とで体の位置合わせを行う必要がある。その手段として、患者の身体表面に体位確認用の印としてラインを描き入れ、CT装置とリニアックに設けたレーザーポインタによって位置合わせを行うようにしている。
【0004】
体位確認用のラインは、CT装置での検査時に、レーザーポインタの赤い線に合わせて患者の身体に描く。通常、図4図5に示すように、身体正面に、胸周辺位置から腹部にかけてラインA、腹部の左右両側面に、身体の周囲方向にラインB、身体の左右両側面に、胸周辺位置から腹部にかけてラインCを描く。
【0005】
リニアックによる放射線の照射時には、治療計画用にCT画像を撮影したときと同じ体勢になるように、身体に書き込んだ体位確認用のラインA~Cをレーザーポインタの赤い線に合うように調整して、患部に的確に照射できるようにしている。すなわち、ラインAで身体の幅方向の位置合わせを行い、ラインBで身体の身長方向の位置合わせを行い、ラインCで身体のベッド面からの高さ方向の位置合わせを行ってCT画像を撮影したときと同じ体勢になるようにする。そして、位置合わせを正確に行うため、各ラインA~Cは、なるべく長く描く必要がある。
【0006】
このような体位確認用のラインA~Cを身体に書いたり、それらのラインA~Cを使って身体の位置合わせを行ったりする作業は、少なくともラインを描く箇所を露出させた状態で行う必要がある。その際、患者を裸の状態にして行うには、特に女性患者の場合、羞恥心で精神的に相当な苦痛を与えてしまう。そこで、従来、特許文献1に示されるような放射線治療用衣服が提案されている。
【0007】
その放射線治療用衣服は、綿布で形成されたTシャツ状のゆったりとした衣服で、患部周辺が開放できる患部周辺開閉部と、体位確認用に身体に付けた印が確認できる体位確認用開閉部とが設けられている。このような放射線治療用衣服を着用すれば、体位確認作業と治療を着衣のまま行うことができ、患者の羞恥心を和らげて精神的苦痛を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2006-225810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の放射線治療用衣服は、CT装置による検査や、リニアックによる治療を行う前に着替える必要があるが、CT装置やリニアックが設置された室内には、通常、検査中や治療中に患者の様子を見るための監視カメラが設けられており、患者にとって、着替えるところを見られているのではないかと気になってしまうという問題点があった。また、上記従来の放射線治療用衣服は、身体に密着しておらず、身体のわずかな動きによっても、体位確認用開閉部が動いて身体に書かれたラインが隠れてしまうおそれがあるという問題点もあった。
【0010】
本発明は、そのような問題点に鑑み、患者が下着のようにして自宅から着て来られるようにして、病院内で着替える必要がないようにすることを目的とするものである。また、体に密着させ、開口部が動かないようにして、身体に書いた体位確認用のラインが常にはっきりと確認できるようにすることを目的にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、放射線治療を行う際に患者が着用する衣服であって、伸縮可能な布地で形成して、着用した際に、布地が伸びて全体が身体に密着するようにし、身体の正面と両側面に位置する部分に、胸周辺位置から腹部にかけて細長い開口部を直線状に設け、身体の両側面に位置する部分に設けた前記開口部の腹部部分から身体の正面側にかけて身体の周方向に伸びる凸状開口部を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、乳房近傍部分に治療マーキング用開口部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に係る発明においては、伸縮可能な布地で形成して、着用した際に、布地が伸びて全体が身体に密着するようにし、身体の正面と両側面に位置する部分に、胸周辺位置から腹部にかけて細長い開口部を直線状に設けた。その結果、患者が下着のようにして自宅から着て来られるようになり、病院内で着替える必要がなくなる。また、体に密着して、開口部が動かないようになって、身体に描いた体位確認用のラインが常にはっきりと確認できるようになる。さらに、身体の両側面に位置する部分に設けた前記開口
部の腹部部分から身体の正面側にかけて身体の周方向に伸びる凸状開口部を設けたので、腹部の左右両側面から、身体の周囲方向に描いたラインの見える範囲が広がって、身体の身長方向の位置合わせの精度を向上させることができる。
【0015】
また、請求項2に係る発明においては、請求項1に係る放射線治療用衣服において、乳房近傍部分に治療マーキング用開口部を設けたので、乳癌の治療時に、放射線を当てる形状にマーキングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る放射線治療用衣服を示す図である。
図2図1の放射線治療用衣服を着用した状態を示す図である。
図3】本発明の他の実施例に係る放射線治療用衣服を示す図である。
図4】体位確認用のラインを身体の正面から見た状態を示す図である。
図5】体位確認用のラインを身体の側面から見た状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る放射線治療用衣服を示す図である。図1において、符号1は放射線治療用衣服、2は正面開口部、3は側面開口部である。放射線治療用衣服1は、水着等で用いられているような伸縮可能な布地で作られ、着用した際に身体に密着するように、小さめなサイズになっている。この実施例では、キャミソールタイプの放射線治療用衣服としている。
【0020】
正面開口部2は、身体正面の前記体位確認用のラインAが描かれる位置に、胸周辺位置から腹部にかけて細長く、直線状に設けられており、それを通してラインA全体が露出するようにしている。また、側面開口部3は、身体両側面の前記ラインCが描かれる位置に、胸周辺位置から腹部にかけて細長く、直線状に設けられており、それを通してラインC全体が露出するようにしている。さらに、側面開口部3からは、前記ラインBの一部も露出するようになっている。
【0021】
図2は、図1の放射線治療用衣服を着用した状態を示す図である。本発明の放射線治療用衣服は、着用すると布地が伸びて全体が身体に密着し、下着のように着られる。治療のため病院に行く前に、家で下着のようにして着てそのまま病院に行けば、CT検査やリニアックによる放射線治療を行う室内で、上着を脱ぐだけですみ、着替える必要がなくなる。したがって、着替えるところを監視カメラで見られるという心配はなくなる。
【0022】
そして、CT装置による検査を行う際には、放射線治療用衣服を着たままでも、正面開口部2や側面開口部3から、直接体位確認用のラインA~Cを描くことができる。また、リニアックによる治療を行う際にも、放射線治療用衣服を着たままで体位確認用のラインA~Cを確認できるので、そのまま治療を行うことができる。
【0023】
このように、放射線治療用衣服を着たままでCT検査や放射線治療ができるため、女性患者の場合でも、羞恥心で精神的に相当な苦痛を与えてしまうことはなくなる。また、この放射線治療用衣服は、身体に密着するので、体位確認用のラインのための正面開口部2や側面開口部3がずれることがなくなり、常にはっきりと確認できるようになる。さらに、治療が長期間におよぶ場合、体位確認用のラインA~Cがかすれることがあるが、そのような場合でも放射線治療用衣服を着たままラインの修正ができる。
【実施例2】
【0024】
図3は、本発明の他の実施例に係る放射線治療用衣服を示す図である。符号1~3は、図1のものに対応しており、4は凸状開口部、5は治療マーキング用開口部である。この実施例では、Tシャツタイプの放射線治療用衣服とし、実施例1のものと同様に、伸縮可能な布地で形成作られている。
【0025】
凸状開口部4は、体位確認用のラインBが良く見えるようにするためのもので、身体の両側面に位置する部分に設けた側面開口部3の腹部側部分から身体の正面側へと、身体の周囲方向に伸びるように設けている。このような凸状開口部4を設ければ、ラインBの見える範囲が広がって、身体の身長方向の位置合わせの精度を向上させることができる。
【0026】
治療マーキング用開口部5は、乳癌の治療時に、放射線を当てる形状にマーキングを行う際に用いるもので、乳房の横側に位置する部位に小さく設けている。
【0027】
なお、上記各実施例では、放射線治療用衣服の形状としてキャミソールタイプとTシャツタイプのものを示したが、それらには限定されず、それ以外の形状にしてもよい。また、上記実施例では、患者が女性である場合を例にして説明したが、本発明は、男性患者にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 放射線治療用衣服
2 正面開口部
3 側面開口部
4 凸状開口部
5 治療マーキング用開口部
A,B,C 体位確認用のライン
図1
図2
図3
図4
図5