(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】融資承認確率算出装置、融資承認確率算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20231016BHJP
【FI】
G06Q40/03
(21)【出願番号】P 2021155320
(22)【出願日】2021-09-24
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】515042052
【氏名又は名称】株式会社MFS
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】中山田 明
【審査官】石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0265512(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0334719(US,A1)
【文献】特開2014-225253(JP,A)
【文献】特開2022-167355(JP,A)
【文献】特開2020-102013(JP,A)
【文献】特開2017-049673(JP,A)
【文献】”ローン比較 スマホで手軽に クラウドローン、地銀と連携”,月刊e・コロンブス,第47巻,東方通信社,2021年05月31日,第19-20ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの属性情報からローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する融資承認確率算出装置であって、
前記ユーザの属性情報の入力を受け付けるユーザ属性情報入力部と、
前記ユーザの個人信用情報を取得する個人信用情報取得部と、
前記個人信用情報取得部により取得された前記ユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定する個人信用情報判定部と、
前記個人信用情報判定部により前記個人信用情報条件を充足すると判定されたユーザに対して、前記ユーザ属性情報入力部により入力を受け付けた該ユーザの前記属性情報に基づいて、前記ローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測する融資承認機械学習部と、
を備え、
前記融資承認機械学習部は、
前記ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存する融資承認評価モデル作成部と、
前記ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、前記融資承認評価モデル作成部で保存された融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出すると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力する融資承認確率算出部と
を有することを特徴とする融資承認確率算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の融資承認確率算出装置において、
前記融資承認機械学習部は、
融資承認評価モデル作成部が、複数の前記ローン商品について、融資承認評価モデルを作成して保存し、
前記融資承認確率算出部が、融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、複数の前記ローン商品について、前記融資承認評価モデル作成部で保存された融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出し、
前記融資承認確率算出部により融資承認確率が算出された複数の前記ローン商品について、所定の評価項目によりランキングして出力することを特徴とする融資承認確率算出装置。
【請求項3】
ユーザの属性情報からローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する融資承認確率の算出方法であって、
ユーザ属性情報入力部が、前記ユーザの属性情報の入力を受け付けるユーザ属性情報入力工程と、
個人信用情報取得部が、前記ユーザの個人信用情報を取得する個人信用情報取得工程と、
個人信用情報判定部が、前記個人信用情報取得工程により取得された前記ユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定する個人信用情報判定工程と、
前記個人信用情報判定工程により前記個人信用情報条件を充足すると判定されたユーザに対して、
融資承認機械学習部が、前記ユーザ属性情報入力工程により入力を受け付けた該ユーザの前記属性情報に基づいて、前記ローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測する融資承認機械学習処理工程と
を備え、
前記融資承認機械学習処理工程は、
融資承認評価モデル作成部が、予め、前記ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存しておき、
融資承認確率算出部が、前記ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、保存された前記融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出すると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力することを特徴とする融資承認確率の算出方法。
【請求項4】
ユーザの属性情報からローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出するプログラムであって、
コンピュータに、
属性情報が入力された前記ユーザの個人信用情報を取得させ、
取得した前記ユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定させ、
個人信用情報条件を充足すると判定された前記ユーザに対して、入力された該ユーザの前記属性情報に基づいて、前記ローン商品の融資承認確率および借入可能額を融資承認機械学習処理により算出させるプログラムであって、
前記融資承認機械学習処理は、
予め、前記ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存させておき、
前記ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、保存された前記融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出させると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する融資承認確率算出装置、融資承認確率算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関に住宅ローン等のローン商品の申し込みを行う際に、どのローン商品を選択するのがベストなのか、どのローン商品が最も有利な条件で借り入れできるのか、また金融機関の審査にどれくらいの確率で通るのか、等の情報を事前に知ることができればユーザはローン商品の選択を効率的に行えるようになる。
例えば、特許文献1においては、金融機関に対して融資の申し込みをする前に、事前に審査を行って融資の可否を判断し、融資を受けることが可能な金融商品の融資情報を提供する情報提供装置および方法が開示されている。本装置では、融資の申込者の信用度を算出するための与信モデルに基づき、申込者の財務情報をから融資の可否を判定し、融資が可能な場合に融資を受けることが可能な金融商品の融資情報のレコメンドを行うようにし、これによりユーザに適切な金融商品の融資情報を提供可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなローン商品の融資条件は金融機関により異なっているため、金融機関毎に審査にどれくらいの確率で通るのかをできる限り正確な情報をユーザに提供することが重要になってくる。
そこで本発明では、蓄積された多くの審査結果等の情報を学習データとしてAI(Artificial Intelligence)に投入して学習モデルを構築して利用することにより、ユーザ属性に応じたローン商品の融資承認確率および借入可能額について高い精度で算出する融資承認確率算出装置及び融資承認確率算出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、第1発明に係る融資承認確率算出装置は、
ユーザの属性情報からローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する融資承認確率算出装置であって、
前記ユーザの属性情報の入力を受け付けるユーザ属性情報入力部と、
前記ユーザの個人信用情報を取得する個人信用情報取得部と、
前記個人信用情報取得部により取得された前記ユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定する個人信用情報判定部と、
前記個人信用情報判定部により前記個人信用情報条件を充足すると判定されたユーザに対して、前記ユーザ属性情報入力部により入力を受け付けた該ユーザの前記属性情報に基づいて、前記ローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測する融資承認機械学習部と、
を備え、
前記融資承認機械学習部は、
前記ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存する融資承認評価モデル作成部と、
前記ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、前記融資承認評価モデル作成部で保存された融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出すると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力する融資承認確率算出部と
を有することを特徴とする。
【0006】
第2発明に係る融資承認確率算出装置は、第1発明において、
前記融資承認機械学習部は、
融資承認評価モデル作成部が、複数の前記ローン商品について、融資承認評価モデルを作成して保存し、
前記融資承認確率算出部が、融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、複数の前記ローン商品について、前記融資承認評価モデル作成部で保存された融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出し、
前記融資承認確率算出部により融資承認確率が算出された複数の前記ローン商品について、所定の評価項目によりランキングして出力することを特徴とする。
【0007】
第3発明に係る融資承認確率算出方法は、
ユーザの属性情報からローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する融資承認確率の算出方法であって、
前記ユーザの属性情報の入力を受け付けるユーザ属性情報入力工程と、
前記ユーザの個人信用情報を取得する個人信用情報取得工程と、
前記個人信用情報取得工程により取得された前記ユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定する個人信用情報判定工程と、
前記個人信用情報判定工程により前記個人信用情報条件を充足すると判定されたユーザに対して、前記ユーザ属性情報入力工程により入力を受け付けた該ユーザの前記属性情報に基づいて、前記ローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測する融資承認機械学習処理工程と
を備え、
前記融資承認機械学習処理工程は、
予め、前記ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存しておき、
前記ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、保存された前記融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出すると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力することを特徴とする。
【0008】
第4発明に係る融資承認確率算出プログラムは、
ユーザの属性情報からローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出するプログラムであって、
コンピュータに、
属性情報が入力された前記ユーザの個人信用情報を取得させ、
取得した前記ユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定させ、
個人信用情報条件を充足すると判定された前記ユーザに対して、入力された該ユーザの前記属性情報に基づいて、前記ローン商品の融資承認確率および借入可能額を融資承認機械学習処理により算出させるプログラムであって、
前記融資承認機械学習処理は、
予め、前記ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存させておき、
前記ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、保存された前記融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出させると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、AIモデルを構築して利用することにより、ユーザ属性に応じたローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する際の精度の向上を期待することができる。特に、ユーザ属性情報に加え、個人信用情報、審査を行った金融機関、借入希望額、審査結果等の情報を学習データとしてAIに投入して学習モデルを構築することにより、蓄積された審査結果データから算出する精度が継続的に向上するとともに、自律的に学習モデルの調整が可能となるため審査基準の変化に柔軟に対応可能となり、さらに算出した予測の説明が可能になる効果も期待することができる。予測の説明ができることにより、ユーザにどのようにすれば融資承認確率を上げ、より有利な条件のローンを借りられるかをアドバイスすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置を利用するシステム構成の一例を示した模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置を説明する機能ブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置においてデータ処理手順を説明するフローチャート図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置において融資承認確率の予測の説明を表示する一例を示したイメージ図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置において融資承認確率を表示する一例を示したイメージ図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置において借入可能額を表示する一例を示したイメージ図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置において複数のローン商品についてランキング表示する一例を示したイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。
【0012】
本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置の利用環境について
図1を参照しながら説明する。
図1は、融資承認確率算出装置を利用するシステム構成の一例を示す模式図である。
図1に示すように、融資承認確率算出装置10は、ユーザの属性情報から住宅ローン等のローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出する装置であり、利用者端末20とネットワーク(NW)を経由して接続されている。ユーザは住宅ローン等のローン商品の申し込みを行う前に、利用者端末20から融資承認確率算出装置10にアクセスしユーザ属性情報を入力することにより、融資承認確率算出装置10では、金融機関の審査にどれくらいの確率で通るかという融資承認確率や借入可能額の予測結果を算出し、その予測結果を利用者端末20に表示する。融資承認確率や借入可能額については、金融機関により異なるため、ユーザはその予測結果を基にどの金融機関のローン商品を選択するのが最適か判断してローン商品の申し込みを行うことになる。
【0013】
次に、本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置の機能構成について
図2を参照しながら説明する。
図2は、融資承認確率算出装置を説明するための機能ブロック図である。
図2に示すように、融資承認確率算出装置10は、ユーザ属性情報入力部110、個人信用情報取得部120、個人信用情報判定部130、融資承認機械学習部140、ローン商品記憶部150、ユーザ情報記憶部160、融資承認結果記憶部170、を備えている。さらに融資承認機械学習部140は、融資承認評価モデル作成部141、融資承認確率算出部142、を備えている。以下に、各機能部について詳細に説明する。
【0014】
<ユーザ属性情報入力部>
ユーザ属性情報入力部110は、ユーザが住宅ローン等のローン商品の申し込みを行うために利用者端末20から入力したユーザ属性情報を受け付ける。このユーザ属性情報は、ローン商品の融資承認確率および借入可能額を算出するために必要な情報であり、ユーザ情報記憶部160に保存される。
【0015】
<個人信用情報取得部>
個人信用情報取得部120は、ユーザ属性情報入力部110で受け付けたユーザに関する個人信用情報を取得する。個人信用情報を取得する方法としては、例えばJICC(株式会社日本信用情報機構)を利用して取得する方法がある。
【0016】
<個人信用情報判定部>
個人信用情報判定部130は、個人信用情報取得部120により取得されたユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定する。ここで個人信用情報条件とは、異常値をはじくための条件(例えば、ネガ情報等)であり、ユーザのローン申請をこの条件でフィルタリングして、この条件を充足しないローン申請をはじく処理を行っている。
【0017】
<融資承認機械学習部>
融資承認機械学習部140は、個人信用情報判定部130により個人信用情報条件を充足すると判定されたユーザに対して、ユーザ属性情報入力部110により入力を受け付けた該ユーザの属性情報に基づいて、ローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測する。
【0018】
なお、この融資承認機械学習部140ではAIモデルを利用してローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測するため、事前に学習データをAIに投入してモデルを構築することが必要になる。この学習データには、ユーザ属性情報に加え、個人信用情報、審査を行った金融機関、借入希望額、審査結果等の情報が含まれる。
また本明細書中に記載のユーザ属性情報および個人信用情報として、例えば、次のような情報が含まれる。
ユーザ属性情報={年齢、年収、業種、職種、雇用形態、勤務先規模、家族構成、自己資金、住宅ローン以外の負債、物件所在地、保有資産・・・}
個人信用情報={無担保返済額、消費者ローン件数、30日未満延滞回数、30日以上延滞回数、グレー債権数、ネガ債権数、無担保返済残高、有担保返済残高、・・・}
またAIモデルを構築するプラットフォームとして、例えばDataRobot(DataRobot Japan株式会社の製品)を利用する。DataRobotを利用することにより、「モデル作成の自動化により開発時間を短縮できる」「データのモニタリングによりユーザ、審査基準の傾向を把握できる」「予測の説明が可能になる」等のメリットがある。
【0019】
<融資承認評価モデル作成部>
融資承認評価モデル作成部141は、ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルを作成して保存する。
【0020】
この融資承認評価モデルは、AIモデルを利用してローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測するために作成するものであり、事前に学習データをAIに投入してモデルを構築する。この学習データには、上記で説明した通り、ユーザ属性情報に加え、個人信用情報、審査を行った金融機関、借入希望額、審査結果等の情報が含まれる。
また今回のモデルを構築するにあたり、自社の保有する約1万件の学習データを使用しているため、蓄積された審査結果データから融資承認確率および借入可能額を高い精度で算出することができる。さらにAIに投入する学習データが増えるほど精度が継続的に向上することが自社の分析から証明されている。また自律的にモデルの調整が可能となるため審査基準の変化に柔軟に対応できる効果が期待される。
【0021】
<融資承認確率算出部>
融資承認確率算出部142は、ローン商品の融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、該属性情報の複数の指標に基づいて、融資承認評価モデル作成部141で保存された融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出すると共に、その確率を算出した該属性情報における指標の特徴を出力する。
【0022】
この融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出する際に、その予測結果になった理由について特徴量を用いて説明することができる。
図4は、融資承認評価モデルを利用して融資承認確率の予測の説明を表示する一例を示したイメージ図である。
図4の例では、ユーザ毎に融資承認確率の予測結果と、その予測結果を説明する理由として3個の特徴量(説明1,説明2,説明3)を用いて表示するようにしている。一行目の表示例では、予測結果80%と高い確率であり、その理由として「説明1:+++自己資金」「説明2:+++勤務先規模」「説明3:++年収」が表示されている。また最終行の表示例では、予測結果20%と低い確率であり、その理由として「説明1:---年齢」「説明2:--勤務先規模」「説明3:-返済比率」が表示されている。ここで、予測結果にポジティブな影響を与えた項目には「+」、ネガティブな影響を与えた項目には「-」が付与され、「+」「-」の個数は影響度合いの大きさを示している。
【0023】
また融資承認確率算出部142で算出した融資承認確率の予測結果は、当該ローン商品の申し込みを行ったユーザの利用者端末20に表示される。
図5は、融資承認確率の予測結果を表示する一例を示したイメージ図である。
図5の例では、銀行名と、その銀行における融資承認確率の予測結果80%と、ローン条件(金利、毎月返済額、団体信用生命保険、等)の情報をユーザの利用者端末20に表示するようにしている。さらにAI診断結果として融資承認確率を受けてユーザが取るべき行動(ローンを申し込むべきかどうか)やAIアドバイスとして融資承認確率を上げるためのアドバイスが提示される。これらのインストラクションに従うことでユーザはより有利な条件のローンを自然に選ぶことができる。
【0024】
また融資承認確率算出部142で算出した借入可能額の予測結果は、当該ローン商品の申し込みを行ったユーザの利用者端末20に表示される。
図6は、借入可能額の予測結果を表示する一例を示したイメージ図である。
図6の例では、借入可能額と、適用金利の情報をユーザの利用者端末20に表示するようにしている。
【0025】
また融資承認確率算出部142では、複数のローン商品の融資承認確率および借入可能額について所定の評価項目によりランキングして出力することもできる。
すなわち、融資承認評価モデル作成部141が、複数のローン商品について、融資承認評価モデルを作成して保存し、融資承認確率算出部142が、融資承認確率の算出を行うべき前記ユーザの属性情報が指定されたときに、複数のローン商品について、融資承認評価モデル作成部141で保存された融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出し、融資承認確率算出部142により融資承認確率が算出された複数のローン商品について、所定の評価項目によりランキングして出力する。
【0026】
図7は、複数のローン商品についてランキングして表示する一例を示したイメージ図である。
図7の例は、ユーザの利用者端末20に表示する表示例を示したものであり、複数のローン商品毎に、銀行名と、その銀行における融資承認確率の予測結果(A銀行:50%、B銀行:80%、C銀行:80%)と、ローン条件(金利、毎月返済額、団体信用生命保険、等)の情報についてランキング表示するようにしている。ランキングの順位付けについては、例えば、各銀行の金利(金利の低い順等)、団体信用生命保険の充実度、融資承認確率、等の情報を指標とした評価項目に応じて適宜に更新するようにしている。すなわち、様々な要因により各銀行の金利等の条件が更新される場合があり、その際にはタイムリーに更新するようにしている。また、融資承認確率の表示については、例えば、20%から80%の範囲で10%刻みに表示するようにしている。さらにAI診断結果として融資承認確率を受けてユーザが取るべき行動(ローンを申し込むべきかどうか)やAIアドバイスとして融資承認確率を上げるためのアドバイスが提示される。これらのインストラクションに従うことでユーザはより有利な条件のローンを自然に選ぶことができる。
【0027】
以上から、金融機関に住宅ローン等のローン商品の申し込みを行う際に、ユーザの利用者端末から事前にローン商品について高い精度の融資承認確率および借入可能額を知ることができるようになり、また複数のローン商品のランキング表示により、ユーザは、どのローン商品が最も有利な条件で借り入れできるのか、あるいは金融機関の審査にどれくらいの確率で通るのか、さらにローンを申し込むべきかどうか、また、どうすればより高い確率でより有利な条件のローン商品が借りられるか、等について高い精度の情報を事前に知ることが可能になりローン商品の選択を効率的に行えるようになる。
【0028】
次に本発明の実施形態に係る融資承認確率算出装置のデータ処理手順について、
図3のフローチャート図を参照しながら説明する。上記で説明した通り、ユーザは住宅ローン等のローン商品の申し込みを行う前に、利用者端末20から融資承認確率算出装置10にアクセスしユーザ属性情報を入力することにより、融資承認確率算出装置10では、金融機関の審査にどれくらいの確率で通るかという融資承認確率や借入可能額の予測結果を算出し、その予測結果を利用者端末20に表示する。融資承認確率や借入可能額については、金融機関により異なるため、ユーザはその予測結果を基にどの金融機関のローン商品を選択するのが最適か判断してローン商品の申し込みを行うことになる。
【0029】
<データ処理手順>
ステップS110において、ユーザが住宅ローン等のローン商品の申し込みを行うために利用者端末20から入力したユーザ属性情報を受け付ける。
【0030】
次にステップS120において、ステップS110で入力されたユーザに関する個人信用情報を取得する。個人信用情報を取得する方法としては、例えばJICC(株式会社日本信用情報機構)を利用して取得する方法がある。
【0031】
次にステップS130において、ステップS120により取得されたユーザの個人信用情報が所定の個人信用情報条件を充足するか判定する。ここで個人信用情報条件とは、異常値をはじくための条件(例えば、ネガ情報等)であり、ユーザのローン申請をこの条件でフィルタリングして、この条件を充足しないローン申請をはじく処理を行っており、この条件をクリアした場合に次のステップへ進む。ここで、
図3のフローチャートには図示していないが、ローン申請がはじかれた場合には、その情報がユーザの利用者端末20に送信される。あるいは、すべての銀行の融資承認確率を一律20%としたランキングが、ユーザの利用者端末20に表示されてもよい。
【0032】
次にステップS135において、AIモデルを利用してローン商品の融資承認確率および借入可能額を予測するにあたり、次のステップ140である融資承認機械学習処理に投入するデータを整備する。この投入するデータには、ステップS110で受け付けたユーザ属性情報、ステップS120で取得した個人信用情報に加えて、返済比率、年収倍率、金融機関の情報、等の情報(これらは独自のノウハウ情報であってもよい)が含まれる。
またユーザ属性情報および個人信用情報として、例えば、次のような情報が含まれる。
ユーザ属性情報={年齢、年収、業種、職種、雇用形態、勤務先規模、家族構成、自己資金、住宅ローン以外の負債、物件所在地、保有資産・・・}
個人信用情報={無担保返済額、消費者ローン件数、30日未満延滞回数、30日以上延滞回数、グレー債権数、ネガ債権数、無担保返済残高、有担保返済残高、・・・}
【0033】
次にステップS140において、ステップS135で整備したデータを、事前に構築されたAIモデルに投入して融資承認機械学習処理を行い融資承認確率および借入可能額を算出する。ここでAIモデルは、ローン商品の承認審査に使用された属性情報と該属性情報による該承認審査の結果とから、該属性情報の各指標における特徴と融資承認確率とを対応付けた融資承認評価モデルとして作成されるものであり、事前に学習データをAIに投入してモデルが構築される。この学習データには、上記で説明した通り、ユーザ属性情報に加え、個人信用情報、審査を行った金融機関、借入希望額、審査結果等の情報が含まれる。
【0034】
次にステップS180において、ステップS140で算出されたローン商品の融資承認確率および借入可能額について、返済比率ディスカウント等の情報(これらは独自のノウハウ情報であってもよい)を加味したパラメータ調整を実行する。パラメータ調整をしない場合には、ステップS180を飛ばして次のステップS200に進んでもよい。
【0035】
次にステップS200において、ステップS180でパラメータ調整されたデータ(ローン商品の融資承認確率および借入可能額)についてローン商品の申し込みを行ったユーザの利用者端末20に送信する(ステップS180を飛ばした場合には、ステップS140で算出されたローン商品の融資承認確率および借入可能額についてローン商品の申し込みを行ったユーザの利用者端末20に送信する)。
図5は、融資承認確率の予測結果をユーザの利用者端末20に表示する一例を示したイメージ図であり、
図5の例では、銀行名と、その銀行における融資承認確率の予測結果80%と、ローン条件(金利、毎月返済額、団体信用生命保険、等)の情報、融資承認確率を受けてユーザが取るべきアクションと融資承認確率を上げるために何をしなければならないかを表示するようにしている。また
図6は、借入可能額の予測結果をユーザの利用者端末20に表示する一例を示したイメージ図であり、
図6の例では、借入可能額と、適用金利の情報が表示するようにしている。
【0036】
また
図3のフローチャートには図示していないが、複数のローン商品の融資承認確率および借入可能額について所定の評価項目によりランキングして出力することもできる。すなわち、ユーザの属性情報が指定されたときに、複数のローン商品について融資承認評価モデルにより融資承認確率および借入可能額を算出し、複数のローン商品について、所定の評価項目によりランキングして出力する。
【0037】
図7は、複数のローン商品についてランキングして表示する一例を示したイメージ図であり、
図7の例は、ユーザの利用者端末20に表示する表示例を示したものであり、複数のローン商品毎に、銀行名と、その銀行における融資承認確率の予測結果(A銀行:50%、B銀行:80%、C銀行:80%)と、ローン条件(金利、毎月返済額、団体信用生命保険、等)の情報についてランキング表示するようにしている。ランキングの順位付けについては、例えば、各銀行の金利(金利の低い順等)、団体信用生命保険の充実度、融資承認確率、等の情報を指標とした評価項目に応じて適宜に更新するようにしている。すなわち、様々な要因により各銀行の金利等の条件が更新される場合があり、その際にはタイムリーに更新するようにしている。また、融資承認確率の表示については、例えば、20%から80%の範囲で10%刻みに表示する。さらに融資承認確率を受けてユーザが取るべきアクション(ローンに申し込むべきかどうか等)をAI診断結果として表示すると共に融資承認確率を上げるために何をしなければならないかをAIアドバイスとして表示する。
【0038】
なお、上記で説明したデータ処理手順については、コンピュータによって実行される方法として実現されてもよいし、またコンピュータに実行されるためのプログラムとして実現されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 融資承認確率算出装置
20 利用者端末
110 ユーザ属性情報入力部
120 個人信用情報取得部
130 個人信用情報判定部
140 融資承認機械学習部
141 融資承認評価モデル作成部
142 融資承認確率算出部
150 ローン商品記憶部
160 ユーザ情報記憶部
170 融資承認結果記憶部