(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】乗物用座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20231016BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20231016BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20231016BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20231016BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B60N2/90
H04R1/02 102B
H04R1/00 310G
B60R11/02 S
A47C7/72
(21)【出願番号】P 2020034549
(22)【出願日】2020-02-29
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】309034490
【氏名又は名称】天龍工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】菅沢 正浩
(72)【発明者】
【氏名】原 悠介
(72)【発明者】
【氏名】山辺 正樹
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大季
(72)【発明者】
【氏名】狩野 裕之
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/109389(WO,A1)
【文献】特開2016-074409(JP,A)
【文献】特開平05-262184(JP,A)
【文献】実開昭60-169991(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
H04R 1/02
H04R 1/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれの上部に、スピーカーボックスにスピーカーが取り付けられてなる音響発生装置が設けられ、
背もたれの骨格である背もたれフレームが、縦方向に延びる左右の縦フレーム部材と、左右の縦フレーム部材を複数の高さ部位で接続して補強する左右方向に延びる複数の補強部材とを含む乗物用座席において、
前記スピーカーボックスは、左右の縦フレーム部材の上部所定範囲が構成する左右の側板と、左右の縦フレーム部材を上部所定範囲の下端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する左右方向に延びる下部蓋体と、左右の縦フレーム部材を上部所定範囲の上端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する上部蓋体と、これら側板部、下部蓋体及び上部蓋体の間の前側及び後側をそれぞれ覆う前部バッフル板及び後部蓋体とを含むことを特徴とする乗物用座席。
【請求項2】
前記スピーカーボックスは、下部蓋体と上部蓋体とを左右方向中間部で接続してスピーカーボックスの内部空間を仕切る仕切り板を含み、仕切り板は背もたれフレームの剛性を高めている請求項1記載の乗物用座席。
【請求項3】
前記複数の補強部材は、左右の縦フレーム部材を下部で接続する第一補強部材と、左右の縦フレーム部材を前記下部蓋体よりも低い中間高さ部位で接続する第二補強部材を含む請求項1又は2記載の乗物用座席。
【請求項4】
前記前部バッフル板は、左右方向の中間部に対して左部及び右部が前に出るように湾曲しており、少なくとも左部及び右部にそれぞれスピーカーが取り付けられている請求項1、2又は3記載の乗物用座席。
【請求項5】
前記前部バッフル板の中間部に、一つ又は左右方向に並ぶ二つのスピーカーが取り付けられている請求項4記載の乗物用座席。
【請求項6】
前記背もたれフレーム、下部蓋体及び上部蓋体は、アルミニウム合金製である請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用座席。
【請求項7】
前記前部バッフル板及び後部蓋体は、アルミニウム合金製又は樹脂製である請求項1~6のいずれか一項に記載の乗物用座席。
【請求項8】
前記音響発生装置は、アクティブノイズキャンセラー及びオーディオ装置のいずれか一方又は両方の音発生部である請求項1~7のいずれか一項に記載の乗物用座席。
【請求項9】
前記音響発生装置の前方に、頭部保護部材が張架され、乗員又は乗客の頭部が音響発生装置に接触することを防止している請求項1~8のいずれか一項に記載の乗物用座席。
【請求項10】
前記頭部保護部材には、音透過性と弾力性のあるメッシュ材が用いられている請求項9記載の乗物用座席。
【請求項11】
前記背もたれの表面に実装される表皮部材は、前記音響発生装置の前方に位置する部分には音透過性の材料が用いられている請求項1~10のいずれか一項に記載の乗物用座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物(バス、鉄道車輌、航空機、船舶等)用の座席に関し、詳しくは音響発生装置を備えた乗物用座席にするものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両のいずれにおいても、環境負荷低減のために車体の軽量化が求められており、車体や装備品、機構部品など様々な方向からの軽量化施策が実施されている。
【0003】
また、その一方、車内の快適性を追求するために、騒音、振動の改善が評価指標として重要視されてきており、車体構造および材料の最適化、制振材の配置など、設計段階から考慮した車両製造技術が必要である。特に、騒音については、車両の速度が高速になるにしたがって急激に影響が大きくなることから、重要な課題であり、乗員・乗客の快適性を実現するために車体、部品それぞれの要素において、軽減することが必要である。例えば内燃機関が発生する騒音については、精度向上による機械的振動の軽減策や遮音材を配置することによる騒音の閉じ込め、また内燃機関から電動機に置き換えることによる発生源そのものの静音化などが挙げられる。
【0004】
外部環境からの騒音については、特に鉄道車両では対向車両との行き違い時に周辺気圧の圧縮作用が発生し、破裂的な衝撃音が発生する、あるいはトンネルへの進入時の気圧変化での衝撃によるものや、架線との接触状態変化、構造物に近接する際の気圧変化等が列挙される。気圧変化による衝撃から由来する騒音は、可聴領域かつ低い周波数に分布し、これらを物理的に遮蔽するには、車体構造の金属板を厚くするなどの対策が考えられるが、重量増加の要因となりうることが考えられる。また、高速道路や鉄道などでは、山岳区間をトンネルによって経路の最適化を行う事例が多くあり、通過速度が高速となるために、構造物に進入する際の衝撃による騒音発生は特に解決すべき課題である。
【0005】
このような車外から発生する騒音を抑制する手段として、集音機により騒音成分を集音し、音響成分の解析を行って、逆位相の音を発生させることにより騒音を打ち消すアクティブノイズキャンセラー技術が、車両の騒音低減技術として検討されてきている(特許文献1~3)。
【0006】
但し、アクティブノイズキャンセラーの搭載は、乗用車、特にオーディオ装置が搭載される自家用車を中心に検討されてきた。これは、対象となる座席数が数名分であること、ならびに、車体サイズが限定されたものであるから、車体設計段階からシステムの搭載を前提として車体構造、材料等の設計を行うことができる。
【0007】
一方、バスや鉄道車両、航空機など多人数が乗車する大型の車両については、これまでにアクティブノイズキャンセラー搭載が検討された事例は少なく、乗客個々人がノイズキャンセリングヘッドホンを持ちこむ、あるいは事業者が提供するなどの手段で乗客の快適性を提供する事例が主であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平5-35281号公報
【文献】特開平10-143166号公報
【文献】特開2012-103329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、乗物用座席、特にバスや鉄道車両、航空機など多人数が乗車する大型の車両用の座席について、背もたれの上部にアクティブノイズキャンセラーを設けることを検討してきた。そして、すでに一定の剛性を備えている既成構成の背もたれの上部にアクティブノイズキャンセラー又はオーディオ装置の音響発生装置を設けると、背もたれの重量が増加し、冒頭に述べた座席の軽量化が困難になるという問題に行き当たった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、背もたれの剛性を確保し且つ重量増加を抑制しつつ、背もたれの上部に音響発生装置を設け、座席の軽量化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明の乗物用座席は、
背もたれの上部に、スピーカーボックスにスピーカーが取り付けられてなる音響発生装置が設けられ、
背もたれの骨格である背もたれフレームが、縦方向に延びる左右の縦フレーム部材と、左右の縦フレーム部材を複数の高さ部位で接続して補強する左右方向に延びる複数の補強部材とを含む乗物用座席において、
前記スピーカーボックスは、左右の縦フレーム部材の上部所定範囲が構成する左右の側板と、左右の縦フレーム部材を上部所定範囲の下端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する左右方向に延びる下部蓋体と、左右の縦フレーム部材を上部所定範囲の上端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する上部蓋体と、これら側板部、下部蓋体及び上部蓋体の間の前側及び後側をそれぞれ覆う前部バッフル板及び後部蓋体とを含むことを特徴とする乗物用座席。
【0012】
<作用>
下部蓋体と上部蓋体は、スピーカーボックスの一部を構成する部材と、左右の縦フレーム部材の上部所定範囲を接続して補強する補強部材とを兼ねているので、背もたれフレームの剛性を確保し且つ重量増加を抑制することができる。
【0013】
ここで、前記スピーカーボックスは、下部蓋体と上部蓋体とを左右方向中間部で接続してスピーカーボックスの内部空間を仕切る仕切り板を含み、仕切り板は背もたれフレームの剛性を高めている事が好ましい。
【0014】
前記複数の補強部材は、左右の縦フレーム部材を下部で接続する第一補強部材と、左右の縦フレーム部材を前記下部蓋体よりも低い中間高さ部位で接続する第二補強部材を含むことが好ましい。
【0015】
前記前部バッフル板は、左右方向の中間部に対して左部及び右部が前に出るように湾曲しており、少なくとも左部及び右部にそれぞれスピーカーが取り付けられていることが好ましい。
【0016】
前記前部バッフル板の中間部に、一つ又は左右方向に並ぶ二つのスピーカーが取り付けられている請求項4記載の乗物用座席。
【0017】
前記背もたれフレーム、下部蓋体及び上部蓋体は、アルミニウム合金製であることが好ましい。
【0018】
前記前部バッフル板及び後部蓋体は、アルミニウム合金製又は樹脂製であることが好ましい。
【0019】
前記音響発生装置は、アクティブノイズキャンセラー及びオーディオ装置のいずれか一方又は両方の音発生部として用いることができる。
【0020】
前記音響発生装置の前方に、頭部保護部材が張架され、乗員又は乗客の頭部が音響発生装置に接触することを防止していることが好ましい。
【0021】
前記頭部保護部材には、音透過性と弾力性のあるメッシュ材が用いられていることが好ましい。
【0022】
前記背もたれの表面に実装される表皮部材は、前記音響発生装置の前方に位置する部分には音透過性の材料が用いられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
請求項1の乗物用座席によれば、背もたれの剛性を確保し且つ重量増加を抑制しつつ、背もたれの上部に音響発生装置を設けることができ、座席の軽量化を実現することができる。
請求項2の乗物用座席によれば、さらに背もたれの剛性を高めることができる。
請求項3の乗物用座席によれば、さらに強度が必要な背もたれの中間高さ部位及び下部を補強できる。
請求項4~5の乗物用座席によれば、さらに音響発生装置からの音響発生を最適化できる。
請求項6,7の乗物用座席によれば、さらに背もたれを軽量化できる。
請求項8の乗物用座席によれば、音響発生装置をアクティブノイズキャンセラー又はオーディオ装置の音発生部にできる。
請求項9の乗物用座席によれば、乗員又は乗客の頭部が音響発生装置に接触することを防止できる。
請求項10,11の乗物用座席によれば、音響発生装置の効果が減少しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、実施例の2人掛けの乗物用座席を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、一方の同座席のクッションと表皮材を除いて内部構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同座席の背もたれフレームに下部蓋体を取り付けたときの斜視図である。
【
図4】
図4は、同背もたれフレームに仕切り板と上部蓋体の取り付けるときの斜視図である。
【
図5】
図5は、同背もたれフレームに前部バッフル板と後部蓋体を取り付けるときの斜視図である。
【
図6】
図6は、同背もたれフレームへのスピーカーボックスの取り付けが終わったときの斜視図である。
【
図7】
図7は、同背もたれフレームに各種付属部品を取り付けるときの斜視図である。
【
図8】
図8は、同スピーカーボックスにスピーカーを取り付けたときの斜視図である。
【
図9】
図9は、同スピーカーボックスに頭部保護部材取付金具を取り付けるときの斜視図である。
【
図10】
図10は、同頭部保護部材取付金具に頭部保護部材を取り付けるときの斜視図である。
【
図11】
図11は、同頭部保護部材取付金具に頭部保護部材を取り付けたときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
背もたれの上部に、スピーカーボックスにスピーカーが取り付けられてなる音響発生装置が設けられ、
背もたれの骨格である背もたれフレームが、縦方向に延びる左右の縦フレーム部材と、左右の縦フレーム部材を複数の高さ部位で接続して補強する左右方向に延びる複数の補強部材とを含む乗物用座席において、
前記スピーカーボックスは、左右の縦フレーム部材の上部所定範囲が構成する左右の側板と、左右の縦フレーム部材を上部所定範囲の下端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する左右方向に延びる下部蓋体と、左右の縦フレーム部材を上部所定範囲の上端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する上部蓋体と、これら側板部、下部蓋体及び上部蓋体の間の前側及び後側をそれぞれ覆う前部バッフル板及び後部蓋体と、下部蓋体と上部蓋体とを左右方向中間部で接続してスピーカーボックスの内部空間を仕切る仕切り板を含む。
前記複数の補強部材は、左右の縦フレーム部材を下部で接続する第一補強部材と、左右の縦フレーム部材を前記下部蓋体よりも低い中間高さ部位で接続する第二補強部材を含む。
【実施例】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施例の車両用座席について説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。本実施例は、
図1に示すように、同一形状の車両用座席1を2席並列で並べた2人掛けの構成である。
各車両用座席1は、座2と、背もたれ10と、音響発生装置27とを含む。
【0027】
[座]
座2は、一方の座席のクッション3を除いて内部構造を示した
図2のとおり、座の骨格である座フレーム4を有し、座フレーム4にはクッション支持部材5が張設されている。クッション支持部材5は、布で形成された所定量伸縮可能な素材によって構成されており、その上部に積載されるクッション3を介して乗客への車体からの振動を抑制する。クッション支持部材5の左右側端部および前端部には金属製のワイヤーが挿入されており、クッション支持部材5の形状を保持する。また、コイルスプリング6の一端が座フレーム4の開口穴にひっかけられ、他端が金属製のワイヤーにひっかけられることで、クッション支持部材5が張設されて座フレーム4との位置関係が保持される。
【0028】
[背もたれ]
背もたれ10は、一方の座席の表皮材11を除いて内部構造を示した
図2のとおり、背もたれの骨格である背もたれフレーム15を有している。背もたれフレーム15は、縦方向に延びる左右の縦フレーム部材15A,15Bと、左右の縦フレーム部材を複数の高さ部位で接続して補強する左右方向に延びる複数の補強部材(後述)とを含む。縦フレーム部材15A,15Bに固定された背もたれ支持部材固定金具31A,31Bには、背もたれ支持部材12が張架されている。背もたれ支持部材12は、布で形成された所定量伸縮可能な素材によって構成されている。背もたれ支持部材12の左右両端には金属製のワイヤーが挿入されており、背もたれ支持部材12の形状を保持する。また、コイルスプリング14の一端が背もたれ支持部材固定金具31A,31Bの開口穴に引っ掛けられ、他端が金属製のワイヤーにひっかけられることで、背もたれ支持部材12が張設されて縦フレーム部材15A,15Bとの位置関係が保持される。
【0029】
複数の補強部材は、左右の縦フレーム部材15A,15Bをそれぞれ、下部で接続する第一補強部材16(本例ではパイプ材)と、中間高さ部位(後述する下部蓋体よりも低い)で接続する第二補強部材17(本例ではパイプ材)と、後述する部位で接続する下部蓋体(本例ではパイプ材)と、後述する部位で上部蓋体(本例では板材)とを含む。
【0030】
また、クッション支持部材5の後端部と背もたれ支持部材12の最下端部は、縫合あるいは接着等の手段により、互いに接続されている。これは、乗客が着座した際の背もたれ10、座2からの体重をある程度分散させる効果が生じるため、特定の部分に体重の負荷が集中することを防止する効果も得ることができる。
【0031】
[音響発生装置]
音響発生装置27は、スピーカーボックス20にスピーカー25が取り付けられてなり、背もたれ10の上部(乗客の頭部が位置する高さの部位)に設けられている。
【0032】
スピーカーボックス20は、左右の縦フレーム部材15A,15Bの上部所定範囲が構成する左右の側板と、左右の縦フレーム部材15A,15Bを上部所定範囲の下端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する左右方向に延びる下部蓋体26と、左右の縦フレーム部材15A,15Bを上部所定範囲の上端部で接続して前記複数の補強部材の一つとして機能する上部蓋体21と、これら(15A,15Bの上部所定範囲、26及び21)の間の前側及び後側をそれぞれ覆う前部バッフル板23及び後部蓋体24とを含む。
【0033】
さらに、スピーカーボックス20は、下部蓋体26と上部蓋体21とを左右方向中間部で接続してスピーカーボックス20の内部空間を仕切る仕切り板22を含み、仕切り板22は背もたれフレーム15の上部のねじれ剛性等の剛性を高めている。
【0034】
前部バッフル板23は、左右方向の中間部に対して左部及び右部が前に出るように湾曲しており、左部及び右部に形成された開口部にそれぞれスピーカー25が取り付けられ、中間部に形成された開口部に左右方向に並ぶ二つのスピーカー25が取り付けられている。
【0035】
背もたれフレーム15、下部蓋体26、上部蓋体21、前部バッフル板23及び後部蓋体24は、本例ではアルミニウム合金製であるが、変更してもよい。
【0036】
音響発生装置は、アクティブノイズキャンセラー及びオーディオ装置の両方の音発生部であり、その二つを適宜切り替えられる。
【0037】
[その他]
音響発生装置の前方に、空間をおいて、頭部保護部材40が張架され、乗員又は乗客の頭部が音響発生装置に接触することを防止している。頭部保護部材40は、メッシュ材と、その周囲に取り付けられたワイヤー金具とからなり、ワイヤー金具によりメッシュ材の形状が規定されている。メッシュ材は、音響透過性を持つように多数の穴を持つ、伸縮性を有する布地によって構成されており、前部バッフル板23の湾曲に合わせて、前方が弓型となるような形状となって、前部バッフル板23との空間が確保されている。また、頭部保護部材40の下部は背もたれ支持部材12と接続されている。
【0038】
背もたれ10の表面に実装される表皮材11は、特に限定されないが、少なくとも音響発生装置27の前方に位置する部分すなわち乗客の頭部近傍には、音透過性の高い材料が用いられている。このため、音響発生装置27から発生する音を効率よく乗客に伝達させることが可能となっている。
【0039】
図3以降の図面を用いて、背もたれフレーム15の上部に音響発生装置27を設ける手順を説明する。
(1)
図3は、左右の縦フレーム部材15A,15Bの、下部間が第一補強部材16で溶接などの手段により接続され、中間高さ部位間が第二補強部材17で溶接などの手段により接続されている状態を示す。ものである。さらに、金属製の保護カバー19を左右の縦フレーム部材15A,15Bに装着し、15A,15B間を覆うことで左右のねじれ剛性を強化するものとする。保護カバー19は、第二補強部材17の高さまで存在する。
この状態から、まず、左右の縦フレーム部材15A,15Bの前記上部所定範囲の下端部間を、下部蓋体26で溶接などの手段により接続する。
【0040】
(2)
図4~
図5に示すように、下部蓋体26の左右中央に仕切り板22を溶接などの手段により固定する。その後、左右の縦フレーム部材15A,15Bの上面、および仕切り板22の上面に、上部蓋体21を溶接などの手段により固定する。
【0041】
(3)
図5~
図6に示すように、左右の縦フレーム部材15A,15Bの上部所定範囲が構成する左右の側板、下部蓋体26、上部蓋体21及び仕切り板22により形成された領域の前後に、それぞれ前部バッフル板23、後部蓋体24を取り付けることにより、スピーカーボックス20を形成する。前部バッフル板23ならびに後部蓋体24は、接着あるいはねじ止め等の手段により固定する。
【0042】
(4)
図7~
図8に示すように、左右の縦フレーム部材15A,15Bに、背もたれ支持部材固定金具31A,31B、ヘッドレスト保護部材32A,32B,フレーム上端部保護部材33A(左右の一方のみ図示)をそれぞれ左右から取り付ける。
また、前部バッフル板23に開けられた複数の開口部にスピーカー25を取り付け、スピーカーボックス20から音が出せるようにする結線作業等が実施される。
【0043】
(7)
図9~
図10に示すように、左右の頭部保護部材取付金具41A、41Bをスピーカーボックス20に上部から固定する。
【0044】
(8)
図10~
図11に示すように、左右の頭部保護部材取付金具41A、41Bに、頭部保護部材40を張架する。この張架は、コイルスプリング51の一端を頭部保護部材41A、41Bの孔にひっかけ、他端を頭部保護部材40の端部の切り込み部から周囲のワイヤー金具にひっかけることで行う。
【0045】
以上により、音響発生装置27の設置と、頭部保護部材40の張架が完了する。その後、前述のように、背もたれ支持部材固定金具31A,31Bに背もたれ支持部材12を張架し、その上に表皮材11を覆うことで背もたれ部が使用可能な状態となる。
【0046】
[変更例]
前部バッフル板23及び後部蓋体24が金属製の場合、その取り付けを、前記接着あるいはねじ止めから、溶接に変更してもよい。
【0047】
背もたれフレーム15、下部蓋体26、上部蓋体21、前部バッフル板23及び後部蓋体24は、アルミニウム合金製に限定されず、例えば鋼製又はその他の金属製でもよい。また、背もたれフレーム15、下部蓋体26及び上部蓋体21は鋼製あるいはアルミニウム合金製で、前部バッフル板23及び後部蓋体24はアルミニウム合金製あるいは樹脂製といった、組み合わせでもよい。背もたれプレーム15の剛性確保の主体は上部蓋体21、下部蓋体26及び仕切り板22であるため、前部バッフル板23及び後部蓋体24は軽量な樹脂製で足りる。
【符号の説明】
【0048】
1 乗物用座席
2 座
3 クッション
4 座フレーム
5 クッション支持部材
6 コイルスプリング
10 背もたれ
11 表皮材
12 背もたれ支持部材
13 コイルスプリング
14 コイルスプリング
15 背もたれフレーム
15A 縦フレーム部材 右側(外側)
15B 縦フレーム部材 左側(内側)
16 第一補強部材
17 第二補強部材
19 保護カバー
20 スピーカーボックス
21 上部蓋体
22 仕切り板
23 前部バッフル板
24 後部蓋体
25 スピーカー
26 下部蓋体
27 音響発生装置
31A、32B 背もたれ支持部材固定金具
32A,32B ヘッドレスト保護部材
33A フレーム上端部保護部材
40 頭部保護部材
41A,41B 頭部保護部材取付金具
51 コイルスプリング