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特許7366396活物質、リチウム硫黄電池用電極及びリチウム硫黄電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】活物質、リチウム硫黄電池用電極及びリチウム硫黄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20231016BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231016BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M10/052
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019144915
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021026921
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「先端的低炭素化技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】松田 厚範
(72)【発明者】
【氏名】武藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】グエン フ フイ フク
(72)【発明者】
【氏名】松田 麗子
(72)【発明者】
【氏名】前田 隆貴
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096372(JP,A)
【文献】特開2017-054633(JP,A)
【文献】特開2016-058296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
H01M 4/136
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiSにおける一部のLi原子が周期表の第2族元素、第3族元素又は第13族元素に由来する多価原子で置換された、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物(R)であって、X線回折により、少なくとも、回折角2θが26.99±0.1°、31.27±0.1°、44.81±0.1°、及び、53.09±0.1°の位置に回折ピークを有し、LiSの回折パターンを有する化合物(R)を含むことを特徴とする活物質。
Li 2-at (1)
(式中、Mは、Mg原子、Ca原子又はAl原子であり、aは原子Mの価数であり、0<t≦0.200であり、
MがMg又はCaの場合、1.60≦(2-at)<2.00であり、
MがAlの場合、1.40≦(2-at)<2.00である。)
Li 2-au (1-au/2) au (2)
(式中、Mは、Mg原子、Ca原子又はY原子であり、Xはハロゲン原子であり、aは原子Mの価数であり、0<u≦0.200であり、
MがMg又はCaの場合、1.60≦(2-au)<2.00であり、
MがAlの場合、1.40≦(2-au)<2.00である。)
【請求項2】
前記化合物(R)が、Li 1.9 Mg 0.05 S、Li 1.8 Mg 0.1 S、Li 1.7 Mg 0.15 S、Li 1.9 Ca 0.05 0.95 Cl 0.1、 Li 1.8 Ca 0.1 0.9 Cl 0.2 、Li 1.7 Ca 0.15 0.85 Cl 0.3 、Li 1.6 Ca 0.2 0.8 Cl 0.4 、Li 1.9 Ca 0.05 S、Li 1.9 Al 0.033 S、Li 1.8 Al 0.067 S、Li 1.7 Al 0.1 S、Li 1.5 Al 0.167 S及びLi 1.5 0.167 0.75 Cl 0.5 から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の活物質。
【請求項3】
リチウム硫黄電池に用いられる請求項1又は2に記載の活物質。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の活物質を含むことを特徴とするリチウム硫黄電池用電極。
【請求項5】
請求項に記載のリチウム硫黄電池用電極を備えることを特徴とするリチウム硫黄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム硫黄電池を構成する正極電極等の構成材料として好適な活物質、リチウム硫黄電池用電極及びリチウム硫黄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の端末機器、電気自動車等に向けて、充放電容量の高い二次電池の開発が盛んに行われている。充放電が可能な二次電池としては、リチウムイオン電池が実用化されているが、充放電容量が170mAh/g程度である。そこで、近年、理論容量が約1670mAh/gと高い硫黄を含む正極活物質を用いたリチウム硫黄電池が注目されている。特に、電解質として固体電解質を用いた全固体型リチウム硫黄電池は、液体電解質を用いたリチウム硫黄電池で課題となる多硫化リチウムの電解質溶液への溶出がないため、充放電容量の維持や長寿命化に適している。また、可燃性の有機溶媒を使用しないことから液漏れや発火のおそれがなく、安全性の観点からも期待されている。
しかしながら、硫黄は絶縁性を有するため、正極電極における電子伝導性及びリチウムイオン伝導性が非常に低く、上記の理論容量が十分に発揮できない傾向にあり、活物質として、他の化合物を硫黄とともに併用する試みがなされている。例えば、特許文献1には、硫黄、及び硫黄原子を含む化合物の少なくとも1つ、導電性物質、並びに、リチウム原子、リン原子及び硫黄原子を含む固体電解質を含む電極材料が開示されており、硫黄原子を含む化合物として、硫化リチウム及び多硫化リチウム(Li、Li、Li)が例示され、これを活物質として用いることが記載されている。
【0003】
また、リチウムイオン電池用の活物質としては、例えば、特許文献2~3に記載された技術が知られている。特許文献2には、構成元素として、Li、Mo及びSを含む、リチウムイオン電池用正極活物質が開示されている。特許文献3には、多硫化リチウムと、遷移金属硫化物(チタン硫化物、モリブデン硫化物、バナジウム硫化物、コバルト硫化物、ニッケル硫化物、鉄硫化物、クロム硫化物、マンガン硫化物、亜鉛硫化物等)と、を混合することにより硫化遷移金属リチウム系正極活物質を得る工程(A)を含むリチウムイオン電池用硫化遷移金属リチウム系正極活物質の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2013-76955号公報
【文献】特開2015-76180号公報
【文献】特開2017-142950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2、3の実施例で開示されているリチウム硫黄電池の充放電容量は、理論値の1/10程度にとどまっており、高い充電容量が得られていない。
本発明の課題は、充電容量の高いリチウム硫黄電池を与える活物質及びリチウム硫黄電池用電極並びにリチウム硫黄電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される。
[1]LiSにおける一部のLi原子が周期表の第2族元素、第3族元素又は第13族元素に由来する多価原子で置換された化合物であって、X線回折により、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを特徴とする活物質。
[2]リチウム硫黄電池に用いられる上記[1]に記載の活物質。
[3]上記[1]又は[2]に記載の活物質を含むことを特徴とするリチウム硫黄電池用電極。
[4]上記[3]に記載のリチウム硫黄電池用電極を備えることを特徴とするリチウム硫黄電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明の活物質は、充電容量の高いリチウム硫黄電池を与える電極(好ましくは正極電極)の形成に好適である。また、電気伝導性が高く優れた電池性能を発揮する固体電池を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実験例1-1~1-4で得られた活物質A1~A4のX線回折像である。
図2】実験例1-5~1-8で得られた活物質A5~A8のX線回折像である。
図3】実験例1-9で得られた活物質A9のX線回折像である。
図4】実験例1-10~1-13で得られた活物質A10~A13のX線回折像である。
図5】実験例1-14で得られた活物質A14のX線回折像である。
図6】実験例2-1~2-4で得られたリチウム硫黄電池の充電特性を示すグラフである。
図7】実験例2-5~2-8で得られたリチウム硫黄電池の充電特性を示すグラフである。
図8】実験例2-9で得られたリチウム硫黄電池の充電特性を示すグラフを示すグラフである。
図9】実験例2-10~2-13で得られたリチウム硫黄電池の充電特性を示すグラフである。
図10】実験例2-14で得られたリチウム硫黄電池の充電特性を示すグラフである。
図11】〔実施例〕で作製した全固体形リチウム硫黄電池を含む充電試験用測定セルを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の活物質は、LiSにおける一部のLi原子が周期表の第2族元素、第3族元素又は第13族元素に由来する多価原子で置換された化合物(以下、「化合物(A)」という)を含む。本発明の活物質は、リチウム硫黄電池の要素を構成する成分として有用である。
【0010】
上記化合物(A)に含まれる原子は、少なくとも、Li原子、S原子、及び、周期表の第2族元素、第3族元素又は第13族元素に由来する多価原子である。
上記第2族元素は、好ましくはMg、Ca、Sr、Ba等であり、特に好ましくはMg及びCaである。
第3族元素は、好ましくはSc、Y、La等であり、特に好ましくはYである。
第13族元素は、好ましくはB、Al、Ga、In等であり、特に好ましくはAlである。
【0011】
上記化合物(A)は、下記一般式(1)で表すことができる。
Li2-atS (1)
(式中、Mは、周期表の第2族元素、第3族元素又は第13族元素に由来する原子であり、aは原子Mの価数であり、0<t≦0.200である。)
【0012】
上記一般式(1)で表される化合物のうち、導電率に優れ、充電容量の高いリチウム硫黄電池が得られる好ましい化合物は、以下に例示される。
(ア)原子MがMg又はCaであり、好ましくは1.60≦(2-at)<2.00及び0<t≦0.200、より好ましくは1.70≦(2-at)≦1.90及び0.050≦t≦0.150である化合物
(イ)原子MがAlであり、好ましくは1.40≦(2-at)<2.00及び0<t≦0.200、より好ましくは1.50≦(2-at)≦1.90及び0.033≦t≦0.167である化合物
【0013】
上記化合物(A)は、更に、他の原子を含むことができる。他の原子としては、ハロゲン原子、水素原子、酸素原子等が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が好ましい。
上記化合物(A)がハロゲン原子を含む場合、下記一般式(2)で表すことができる。この化合物は、一部のS原子がハロゲン原子で置換された化合物である。
Li2-au(1-au/2)au (2)
(式中、Mは、周期表の第2族元素、第3族元素又は第13族元素に由来する原子であり、Xはハロゲン原子であり、aは原子Mの価数であり、0<u≦0.200である。)
【0014】
上記一般式(2)で表される化合物のうち、導電率に優れ、充電容量の高いリチウム硫黄電池が得られる好ましい化合物は、以下に例示される。
(ア)原子MがMg又はCaであり、好ましくは1.60≦(2-au)<2.00及び0<u≦0.200、より好ましくは1.70≦(2-au)≦1.90及び0.050≦u≦0.150である化合物
(イ)原子MがYであり、好ましくは1.40≦(2-au)<2.00及び0<u≦0.200、より好ましくは1.50≦(2-au)≦1.90及び0.033≦u≦0.167である化合物
【0015】
本発明において、上記化合物(A)をX線回折(以下、「XRD」ともいう)測定に供した場合には、実質的にLiSの回折パターンを有する。即ち、X線源としてCuKα線を用いたXRD測定により得られるX線回折像において、回折角2θ=26.99±0.1°、31.27±0.1°、44.81±0.1°、及び、53.09±0.1°の位置に回折ピークが見られる。
【0016】
上記化合物(A)の導電率(交流インピーダンス法、70℃)は、好ましくは1.0×10-9S/cm以上、より好ましくは1.0×10-8S/cm以上である。但し、上限は、通常、1.0×10-1S/cmである。
【0017】
本発明の活物質に含まれる化合物(A)は、1種のみであってよいし、2種以上であってもよい。
【0018】
上記化合物(A)は、LiSと、周期表の第2族元素、第3族元素若しくは第13族元素に由来する多価原子を含む硫化物又はハロゲン化物とを接触反応させることにより製造することができる。必要に応じて、ハロゲン化リチウムLiX(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等)を用いることができる。
【0019】
上記化合物原料は、これらの反応性の観点から、微細な粒状であることが好ましい。粒子の最大長さの上限は、好ましくは100μm、より好ましくは50μmである。但し、下限は、通常、0.01μmである。
【0020】
上記化合物(A)を製造するための接触反応の際には、ボールミル(遊星型ボールミル等)、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を用いることができる。尚、化合物原料の使用方法は、特に限定されず、全ての原料の全量を用いてこれらを接触反応させてよいし、段階的に原料の種類又は供給量を変化させつつ接触反応させてもよい。
上記接触反応における反応系の雰囲気は、特に限定されず、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、乾燥空気等からなるものとすることができる。
【0021】
上記接触反応は、溶剤の存在下で行うものであってもよい。溶剤としては、アルコール類、カルボン酸類、カルボン酸エステル類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、炭酸エステル類、ニトリル類、アミド類、ニトロ類、リン酸エステル類、ハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
溶剤の存在下で接触反応を行った場合、通常、化合物(A)を含むサスペンジョンが得られるので、その後、溶剤を除去することによって、化合物(A)を含む固体組成物を得ることができる。この固体組成物をそのまま、本発明の活物質として用いることができる。
【0022】
本発明の活物質は、化合物(A)のみからなるものであってよい。本発明の活物質は、上記のように、リチウム硫黄電池用の電極の構成成分として有用であり、リチウム硫黄電池が所期の性能を有する限りにおいて、本発明の活物質は、化合物(A)と、他の化合物とからなるものであってもよい。他の化合物を含む場合、その含有割合の上限は、化合物(A)を100質量部とした場合に、通常、49質量部である。
【0023】
本発明の活物質は、正極電極の構成成分として好適であり、正極電極を構成可能な他の化合物としては、Li系硫化物、複合酸化物、複合水酸化物等からなる固体電解質が好ましい。
本発明の活物質が、化合物(A)と他の化合物とからなる場合、互いに分離可能な混合物の形態、及び、両者が一体化した形態(一方が他方を被覆する形態を含む)のいずれでもよい。
【0024】
本発明の活物質の導電率(交流インピーダンス法、70℃)は、好ましくは1.0×10-9S/cm以上、より好ましくは1.0×10-8S/cm以上である。但し、上限は、通常、1.0×10-1S/cmである。
【0025】
本発明の活物質は、リチウム硫黄電池の電極の構成材料として好適である。リチウム硫黄電池は、通常、正極電極と、負極電極と、正極電極及び負極電極の間に配された電解質層とを備える(図示せず)。更に、正極電極の集電を行う正極集電体と、負極電極の集電を行う負極集電体とを備えることができる。化合物(A)を含む本発明の活物質は、このような構成を有するリチウム硫黄電池の正極電極の構成材料として特に好適である。
【0026】
本発明のリチウム硫黄電池用電極のうち、正極電極は、化合物(A)以外に、更に、バインダー、固体電解質、導電助剤等を含むことができる。
【0027】
上記バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等の含フッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;エチレン・プロピレン・非共役ジエン系ゴム(EPDM等)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等が挙げられる。
【0028】
上記固体電解質は、特に限定されないが、好ましくは、LiPS、Li11、Li7-zPS6-z(X:Cl,Br,I、0≦z≦1.5)、LiX(X:Cl,Br,I)等の硫化物系の固体電解質である。
上記導電助剤としては、炭素材料、金属粉末、金属化合物等からなるものを用いることができ、これらのうち、炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料としては、グラフェン等の板状導電性物質;カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の線状導電性物質;ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック(商品名)、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、黒鉛等の粒状導電性物質等が挙げられる。
【0029】
上記正極電極は、化合物(A)と、固体電解質と、導電助剤とを含むことが好ましい。この場合、固体電解質及び導電助剤の含有割合は、化合物(A)の含有量を100質量部とすると、それぞれ、好ましくは20~100質量部及び10~50質量部、より好ましくは20~60質量部及び15~30質量部である。
【0030】
上記正極電極の通電方向の厚さは、特に限定されないが、通常、5μm以上、好ましくは20μm~0.5mmである。
【0031】
本発明のリチウム硫黄電池用電極のうち、負極電極は、負極活物質を含み、この負極活物質としては、炭素材料;リチウム、インジウム、アルミニウム、ケイ素等の金属又はこれらを含む合金;Sn、MoO、WO、LiCoO(LiCoO等)、LiMnNiCoO(LiNi1/3Co1/3Mn1/3等)、LiCuP(LiCuPO等)等の酸化物(複合酸化物)系材料等が挙げられる。上記負極電極は、更に、バインダー、導電助剤、固体電解質等を含むことができる。
【0032】
上記負極電極の通電方向の厚さは、特に限定されないが、通常、1μm以上、好ましくは10μm~0.5mmである。
【0033】
電解質層は、固体電解質を含むものであれば、特に限定されないが、実質的に固体電解質からなるものであることが好ましい。固体電解質としては、(MoS,CuS,TiS,WS)、Li、Li等の硫化物;MoO、WO、VO、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiMnNiCoO、LiFeP、LiMnP、LiNiP、LiCuP(LiCuPO等)等の酸化物又は複合酸化物;セレン化物等が挙げられる。
【0034】
上記電解質層の通電方向の厚さは、特に限定されないが、通常、1μm以上、好ましくは10μm~0.5mmである。
【0035】
正極集電体又は負極集電体は、例えば、ステンレス鋼、金、白金、銅、亜鉛、ニッケル、スズ、アルミニウム又はこれらの合金等からなるものとすることができ、板状体、箔状体、網目状体等を有することができる。
【0036】
本発明のリチウム硫黄電池は、上記本発明のリチウム硫黄電池用電極を備える。充電容量の観点から、上記化合物(A)と、固体電解質と、導電助剤とを含む正極電極を備えるリチウム硫黄電池であることが特に好ましい。
【実施例
【0037】
1.製造原料
活物質の製造に用いた原料は、以下の通りである。
(1)硫化リチウム(LiS)粉体
三津和化学薬品社製「LiS」(商品名)を用いた。純度は99.9%、粒子径は約50μmである。
(2)硫化マグネシウム(MgS)粉体
高純度化学研究所社製「MgS」(商品名)を用いた。純度は99.9%、粒子径は数十μmである。
(3)塩化カルシウム(CaCl)粉体
Aldrich社製「CaCl」(商品名)を用いた。純度は99.9%、粒子径は10メッシュ以下である。
(4)硫化カルシウム(CaS)粉体
高純度化学研究所社製「CaS」(商品名)を用いた。純度は99.9%、粒子径は約50μmである。
(5)硫化アルミニウム(Al)粉体
高純度化学研究所社製「Al」(商品名)を用いた。純度は98%、粒子径は約50μmである。
(6)塩化イットリウム(YCl)粉体
高純度化学研究所社製「YCl」(商品名)を用いた。純度は99.9%、粒子径は数mmである。
【0038】
2.活物質の製造及び評価
上記の原料を用いて活物質を製造し、以下の方法で導電率を測定した。
<導電率の測定方法>
活物質を、一軸油圧プレス機を用いて、円板形状の試験片(サイズ:半径5mm×高さ0.3mm)とし、アルゴンガス雰囲気下、測定用ユニット(ガラス容器)に入れた状態で、調温器に接続したリボンヒーター及び断熱材を測定用ユニット(ガラス容器)の周りに巻き付け、SOLATRON社製IMPEDANCE ANALYZER「S1260」(型式名)を用いて、室温から徐々に加熱し、70℃で導電率を測定した。尚、導電率は、試験片を70℃に保持し始めてから1時間静置した後、測定した。
【0039】
実験例1-1(LiS含有活物質A1の製造)
硫化リチウム(LiS)粉体を直径15mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数600rpmの条件で、メカニカルミリングを10時間行い、活物質A1を得た。
得られた活物質A1の導電率を測定したところ、70℃において、2×10-10S/cmであった。尚、室温では導電率が低く、安定した測定値が得られないことから、70℃で測定した。
【0040】
実験例1-2(Li1.9Mg0.05S含有活物質A2の製造)
Li、Mg及びSのモル比が1.9:0.05:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化マグネシウム(MgS)粉体とを秤量し、これらを混合した。次いで、混合粉末を直径15mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数600rpmの条件で、メカニカルミリングを10時間行い、活物質A2を得た。
得られた活物質A2のX線回折測定を行ったところ、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図1参照)。また、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A2は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A2の導電率を測定したところ、70℃において、8.0×10-9S/cmであった。
【0041】
実験例1-3(Li1.8Mg0.1S含有活物質A3の製造)
Li、Mg及びSのモル比が1.8:0.1:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化マグネシウム(MgS)粉体とを用いた以外は、実験例1-2と同じ操作を行い、活物質A3を得た。
得られた活物質A3のX線回折測定を行ったところ、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図1参照)。また、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A3は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A3の導電率を測定したところ、70℃において、9.2×10-8S/cmであった。
【0042】
実験例1-4(Li1.7Mg0.15S含有活物質A4の製造)
Li、Mg及びSのモル比が1.7:0.15:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化マグネシウム(MgS)粉体とを用いた以外は、実験例1-2と同じ操作を行い、活物質A4を得た。
得られた活物質A4のX線回折測定を行ったところ、わずかにMgSの回折パターンが見られ、また、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図1参照)。また、X線回折像におけるLiSとMgSとのピーク強度比から、活物質A4は、固溶限界に達している固溶体からなると推定した。
また、この活物質A4の導電率を測定したところ、70℃において、5.1×10-8S/cmであった。
【0043】
実験例1-5(Li1.9Ca0.050.95Cl0.1含有活物質A5の製造)
Li、Ca、S及びClのモル比が1.9:0.05:0.95:0.1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、塩化カルシウム(CaCl)粉体とを秤量し、これらを混合した。次いで、混合粉末を直径15mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数600rpmの条件で、10時間メカニカルミリングを行い、活物質A5を得た。
得られた活物質A5のX線回折測定を行ったところ、高角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図2参照)。尚、図2において×印を付けたピークは、ピーク位置の検証のため混合したSiに由来するものである。従って、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A5は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A5の導電率を測定したところ、70℃において、2.4×10-6S/cmであった。
【0044】
実験例1-6(Li1.8Ca0.10.9Cl0.2含有活物質A6の製造)
Li、Ca、S及びClのモル比が1.8:0.1:0.9:0.2となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、塩化カルシウム(CaCl)粉体とを用いた以外は、実験例1-5と同じ操作を行い、活物質A6を得た。
得られた活物質A6のX線回折測定を行ったところ、高角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図2参照)。尚、図2において×印を付けたピークは、ピーク位置の検証のため混合したSiに由来するものである。従って、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A6は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A6の導電率を測定したところ、70℃において、1.0×10-5S/cmであった。
【0045】
実験例1-7(Li1.7Ca0.150.85Cl0.3含有活物質A7の製造)
Li、Ca、S及びClのモル比が1.7:0.15:0.85:0.3となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、塩化カルシウム(CaCl)粉体とを用いた以外は、実験例1-5と同じ操作を行い、活物質A7を得た。
得られた活物質A7のX線回折測定を行ったところ、高角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図2参照)。尚、図2において×印を付けたピークは、ピーク位置の検証のため混合したSiに由来するものである。従って、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A7は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A7の導電率を測定したところ、70℃において、5.2×10-5S/cmであった。
【0046】
実験例1-8(Li1.6Ca0.20.8Cl0.4含有活物質A8の製造)
Li、Ca、S及びClのモル比が1.6:0.2:0.8:0.4となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、塩化カルシウム(CaCl)粉体とを用いた以外は、実験例1-5と同じ操作を行い、活物質A8を得た。
得られた活物質A8のX線回折測定を行ったところ、わずかにLiClの回折パターンが見られ、また、高角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図2参照)。また、X線回折像におけるLiSとLiClとのピーク強度比から、活物質A8は、固溶限界に達している固溶体からなると推定した。
【0047】
実験例1-9(Li1.9Ca0.05S含有活物質A9の製造)
Li、Ca及びSのモル比が1.9:0.05:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化カルシウム(CaS)粉体とを秤量し、これらを混合した。次いで、混合粉末を直径15mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数600rpmの条件で、メカニカルミリングを10時間行い、活物質A9を得た。
得られた活物質A9のX線回折測定を行ったところ、わずかにCaSの回折パターンが見られ、また、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図3参照)。また、X線回折像におけるLiSとCaSとのピーク強度比から、活物質A9は、固溶限界に達している固溶体からなると推定した。
また、この活物質A9の導電率を測定したところ、70℃において値が安定せず、10-8~10-9S/cmであった。
【0048】
実験例1-10(Li1.9Al0.033S含有活物質A10の製造)
Li、Al及びSのモル比が1.9:0.033:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化アルミニウム(Al)粉体とを秤量し、これらを混合した。次いで、混合粉末を直径15mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数600rpmの条件で、メカニカルミリングを10時間行い、活物質A10を得た。
得られた活物質A10のX線回折測定を行ったところ、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図4参照)。また、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A10は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A10の導電率を測定したところ、70℃において、3.0×10-6S/cmであった。
【0049】
実験例1-11(Li1.8Al0.067S含有活物質A11の製造)
Li、Al及びSのモル比が1.8:0.067:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化アルミニウム(Al)粉体とを用いた以外は、実験例1-10と同じ操作を行い、活物質A11を得た。
得られた活物質A11のX線回折測定を行ったところ、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図4参照)。また、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A11は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A11の導電率を測定したところ、70℃において、1.4×10-5S/cmであった。
【0050】
実験例1-12(Li1.7Al0.1S含有活物質A12の製造)
Li、Al及びSのモル比が1.7:0.1:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化アルミニウム(Al)粉体とを用いた以外は、実験例1-10と同じ操作を行い、活物質A12を得た。
得られた活物質A12のX線回折測定を行ったところ、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図4参照)。また、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A12は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A12の導電率を測定したところ、70℃において、7.9×10-6S/cmであった。
【0051】
実験例1-13(Li1.5Al0.167S含有活物質A13の製造)
Li、Al及びSのモル比が1.5:0.167:1となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化アルミニウム(Al)粉体とを用いた以外は、実験例1-10と同じ操作を行い、活物質A13を得た。
得られた活物質A13のX線回折測定を行ったところ、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図4参照)。また、X線回折像にはLiS以外のピークは見られず、活物質A13は、固溶限界に達していない固溶体からなると推定した。
また、この活物質A13の導電率を測定したところ、70℃において、4.9×10-5S/cmであった。
【0052】
実験例1-14(Li1.50.1670.75Cl0.5含有活物質A14の製造)
Li、Y、S及びClのモル比が1.5:0.167:0.75:0.5となるように、硫化リチウム(LiS)粉体と、塩化イットリウム(YCl)粉体とを秤量し、これらを混合した。次いで、混合粉末を直径15mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数600rpmの条件で、メカニカルミリングを10時間行い、活物質A14を得た。
得られた活物質A14のX線回折測定を行ったところ、わずかにLiYSの回折パターンが見られ、また、低角度側にシフトしているものの、実質的にLiSの回折パターンを有する化合物を含むことを確認した(図5参照)。また、X線回折像におけるLiSとLiYSとのピーク強度比から、活物質A14は、固溶限界に達している固溶体からなると推定した。
また、この活物質A14の導電率を測定したところ、70℃において、2.0×10-5S/cmであった。
【0053】
3.正極電極及びリチウム硫黄電池の製造並びに評価
上記の実験例の活物質を含む正極用複合物を作製し、その後、この正極用複合物を用いて、正極電極を備えるリチウム硫黄電池を作製した。
次いで、得られたリチウム硫黄電池を含む図11の測定セルを作製し、充電試験を行った。
【0054】
実験例2-1
以下の方法で、実験例1-2のLi1.9Mg0.05S含有活物質A2、固体電解質であるLiI、及び、電子導電助剤であるカーボンナノファイバーの質量比が50:40:10である正極用複合物を得た。
はじめに、Li1.9Mg0.05S含有活物質A2となるように秤量した、硫化リチウム(LiS)粉体と、硫化マグネシウム(MgS)粉体と、これらにより形成されるLi1.9Mg0.05S含有活物質A2に対する使用量の比を、それぞれ、80%及び20%としたLiI及びカーボンナノファイバー(直径:0.1μm、長さ:20μm)とを混合した。その後、混合粉末を直径4mmのジルコニアボールとともにFrisch社製遊星型ボールミル機(容器:ジルコニア製)に入れ、回転数510rpmの条件で、メカニカルミリングを10時間行い、正極用複合物を得た。
次に、固体電解質であるLiI粉末を、一軸油圧プレス機を用いて加圧成形し、円板形状の予備成形体(半径:5mm、厚さ:0.5mm)とした。そして、この電解質層用の予備成形体をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製の筒状体の内部に収容した状態で、その一方の表面側の全体に、上記で得られた正極用複合物約5mgを充填し、一軸油圧プレス機を用いて加圧成形を行った。更に、電解質層用予備成形体の他方の面に、Li-In合金箔(厚さ0.1mm、直径5mm)を張り付け、正極用複合物からなる正極電極21(厚さ約30μm)と、LiIからなる電解質層25と、Li-In合金からなる負極電極23とを備える全固体形のリチウム硫黄電池20を得た。
その後、このリチウム硫黄電池20を収納した筒状体の両側から、それぞれステンレス-ニッケルの導通部を挿入し、治具で固定して、図11に示す測定セル10を得た。そして、この測定セル10をガラス容器(図示せず)に封入し、ガラス容器内の気体をアルゴンガスに置換して、充電試験を行った。充電試験は、測定セル10を含むガラス容器を、60℃に設定した電気炉に入れ、NAGANO社製充放電装置「BTS-2004H」(型式名)を用い、0.1-3.0V vs Li-In、Cレート:0.1Cの条件で行った。その結果を図6に示す。
【0055】
実験例2-2~2-4
実験例2-1と同様にして、実験例1-1のLiS含有活物質A1、実験例1-3のLi1.8Mg0.1S含有活物質A3又は実験例1-4のLi1.7Mg0.15S含有活物質A4と、固体電解質であるLiIと、電子導電助剤であるカーボンナノファイバーとの質量比が50:40:10である、実験例2-2~2-4の正極用複合物を得た。
その後、これらの正極用複合物を用いて、実験例2-1と同様にして、正極電極21を含むリチウム硫黄電池20を得た。そして、実験例2-1と同様にして充電試験を行った。その結果を図6に示す。
【0056】
図6より、Li原子の一部がMg原子で置換されたLiS系化合物を含む電極を用いると、充電容量が向上したリチウム硫黄電池が得られたことが分かる。
【0057】
実験例2-5~2-8
実験例2-1と同様にして、実験例1-5のLi1.9Ca0.050.95Cl0.1含有活物質A5、実験例1-6のLi1.8Ca0.10.9Cl0.2含有活物質A6、実験例1-7のLi1.7Ca0.150.85Cl0.3含有活物質A7又は実験例1-8のLi1.6Ca0.20.8Cl0.4含有活物質A8と、固体電解質であるLi5.5PS4.5Cl1.5と、電子導電助剤であるカーボンナノファイバーとの質量比が50:40:10である、実験例2-5~2-8の正極用複合物を得た。
その後、これらの正極用複合物を用いて、実験例2-1と同様にして、正極電極21を含むリチウム硫黄電池20を得た。そして、実験例2-1と同様にして充電試験(但し、試験温度:30℃)を行った。その結果を図7に示す。
【0058】
図7より、Li原子の一部がCa原子で置換されたLiS系化合物を含む電極を用いると、充電容量が向上したリチウム硫黄電池が得られたことが分かる。
【0059】
実験例2-9
実験例2-1と同様にして、実験例1-9のLi1.9Ca0.05S含有活物質A9と、固体電解質であるLiIと、電子導電助剤であるカーボンナノファイバーとの質量比が50:40:10である正極用複合物を得た。
その後、この正極用複合物を用いて、実験例2-1と同様にして、正極電極21を含むリチウム硫黄電池20を得た。そして、実験例2-1と同様にして充電試験(但し、試験温度:60℃)を行った。その結果を図8に示す。
【0060】
図8より、Li原子の一部がCa原子で置換されたLiS系化合物を含む電極を用いると、充電容量が向上したリチウム硫黄電池が得られたことが分かる。
【0061】
実験例2-10~2-13
実験例2-1と同様にして、実験例1-10のLi1.9Al0.033S含有活物質A10、実験例1-11のLi1.8Al0.067S含有活物質A11、実験例1-12のLi1.7Al0.1S含有活物質A12又は実験例1-13のLi1.5Al0.167S含有活物質A13と、固体電解質であるLi5.5PS4.5Cl1.5と、電子導電助剤であるカーボンナノファイバーとの質量比が50:40:10である、実験例2-10~2-13の正極用複合物を得た。
その後、これらの正極用複合物を用いて、実験例2-1と同様にして、正極電極21を含むリチウム硫黄電池20を得た。そして、実験例2-1と同様にして充電試験(但し、試験温度:60℃)を行った。その結果を図9に示す。
【0062】
図9より、Li原子の一部がAl原子で置換されたLiS系化合物を含む電極を用いると、充電容量が向上したリチウム硫黄電池が得られたことが分かる。
【0063】
実験例2-14
実験例2-1と同様にして、実験例1-14のLi1.50.1670.75Cl0.5含有活物質A14と、固体電解質であるLi5.5PS4.5Cl1.5と、電子導電助剤であるカーボンナノファイバーとの質量比が50:40:10である正極用複合物を得た。
その後、この正極用複合物を用いて、実験例2-1と同様にして、正極電極21を含むリチウム硫黄電池20を得た。そして、実験例2-1と同様にして充電試験(但し、試験温度:30℃)を行った。その結果を図10に示す。
【0064】
図10より、Li原子の一部がY原子で置換されたLiS系化合物を含む電極を用いると、充電容量が向上したリチウム硫黄電池が得られたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の固体電解質は、パソコン、カメラ等の家電製品や、電力貯蔵装置、携帯電話機等の携帯型電子機器又は通信機器、パワーツール等の電動工具等の電源、更には、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)等に搭載される大型電池を構成するリチウム硫黄電池の構成材料、即ち、リチウム硫黄電池用電極又は電解質層の構成材料として好適である。
【符号の説明】
【0066】
10:充電試験用測定セル
20:リチウム硫黄電池
21:正極電極
23:負極電極
25:電解質層
27:PEEK製筒状体
31:押さえ板
33:押さえピン
35:締め付けネジ
37:カプトン(登録商標)テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11