(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】情報部材および獣革製品のセット
(51)【国際特許分類】
G09F 3/00 20060101AFI20231016BHJP
G09F 3/14 20060101ALI20231016BHJP
C14C 1/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G09F3/00 S
G09F3/14 Z
C14C1/00
(21)【出願番号】P 2019224816
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】519096884
【氏名又は名称】松木 真麻
(74)【代理人】
【識別番号】100183564
【氏名又は名称】西村 伸也
(72)【発明者】
【氏名】松木 真麻
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-103716(JP,A)
【文献】特開2009-093264(JP,A)
【文献】登録実用新案第3022802(JP,U)
【文献】屋久島の鹿皮を活用 ダイビングサービスを営みながら革小物製作,2016年11月17日,特に、1ページ目の写真を参照。,<URL:https://yakushima.keizai.biz/headline/58/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00-79/02
81/18-81/30
81/38
85/88
G09F 1/00-5/04
C14C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定した色で染色され、且つ、害獣駆除された獣の革からなる獣革製品と、
前記獣における地域亜種に関連する情報が表示された情報部材とを備えており、
前記色は、前記地域亜種毎に異なるように設定されており、
複数の異なる前記色で染色されたそれぞれの獣革製品と、それぞれの獣革製品の染色された前記色に対応する地域亜種に関連する情報が表示されたそれぞれの前記情報部材とから組み合わされている、
獣革製品および情報部材の
複数のセット。
【請求項2】
前記獣は鹿であり、
前記地域亜種は、対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿あるいは蝦夷鹿であ
り、
前記獣革製品が6種の前記地域亜種毎に設定された色でそれぞれ染色されている、請求項1記載の情報部材および獣革製品の
複数のセット。
【請求項3】
前記情報部材が、
前記革を再利用することにより製作できる第2製品の情報を含む第2製品情報を備えている、請求項2記載の情報部材および獣革製品の
複数のセット。
【請求項4】
前記情報部材が、
前記獣革製品において再利用できる革量を含む革量情報と、
前記第2製品の製作に必要な革量を含む第2革量情報とを備えている、請求項3記載の情報部材および獣革製品の
複数のセット。
【請求項5】
獣革製品と、
その獣革製品に使用している革量を含む革量情報、前記革を再利用することにより製作できる第2製品の情報を含む第2製品情報および前記第2製品に必要な革量を含む第2革量情報からなる情報部材とを備えている、情報部材および獣革製品のセット。
【請求項6】
前記情報部材にQRコードが記載されており、
前記QRコードにより、前記情報部材に含まれる各情報について、端末に表示するようにされている、請求項5記載の情報部材および獣革製品のセット。
【請求項7】
前記情報部材にQRコードが記載されており、
前記QRコードにより、前記情報部材に含まれる各情報について、端末に表示するようにされている、請求項1、2、3もしくは4のいずれかに記載の情報部材および獣革製品の複数のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報部材および獣革製品のセットに関する。さらに詳しくは害獣駆除により得られた皮(または捕獲された獣の皮)を用いた情報部材および獣革製品のセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、害獣として駆除された獣の皮(または捕獲された獣の皮)を革製品として販売する際に、購入予定者に対して、自然傷が避けられないことの理解と共に、傷に対して価値を付すような説明がされていた。
また、害獣として捕獲されたものの多くは、埋設や焼却処分される中、その命を大切に活かそうという考え方が広がっている。例えば、得られた肉から皮に至るまで全部活用するというもので、さらに食用などに回せない部位はペットフードなどに利用し、全部を使い切る、といった考え方である。
【0003】
なお、先行技術文献として特許文献1の技術がある。そこには、商品と情報記録媒体(例えばDVDなど)をセットにした広告宣伝媒体について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
野生鹿にどのような(地域)亜種があるのか、それらの地域亜種の生息地はどこであるのか、その生息地の自然環境はどのようになっているのか、その自然環境での暮らしはどのようにしているのか、といった野生鹿の背景を知ることは、傷のある自然のまま(天然)の皮革の本来の良さ、それが長く使用できること、それの使用による経年変化(エイジング)を楽しむこと、などを理解するための手助けとなる。
同時に、野生鹿の背景を知ることは、日本各地で害獣として駆除されている野生鹿の命の副産物としての皮(ほとんどが廃棄されている)の価値を高めることになる。
しかしながら、獣革製品を購入または検討中の者に、ここまでの知識を把握してもらうのは、通常、難しい。
【0006】
そこで、本発明では、獣革製品を購入または検討中の者に、野生鹿の背景を知らせる仕組みを備えた情報部材および獣革製品のセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の情報部材および獣革製品のセットは、予め設定した色で染色され、且つ、害獣駆除された獣の革からなる獣革製品と、前記獣における地域亜種に関連する情報が表示された情報部材とを備えており、前記色は、前記地域亜種毎に異なるように設定されており、前記色と前記地域亜種に関連する情報とが対応するように設定されている、ことを特徴としている。
ここで地域亜種とは、同じ種でも分布する地域により色や形に違いがみられ、地域間で異なる集団と認められるものに相当する。例えば、日本鹿であるなら、対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿および蝦夷鹿などが相当する。
【0008】
(2)このような情報部材および獣革製品のセットは、前記獣は鹿であり、前記地域亜種は対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿あるいは蝦夷鹿であるのが好ましい。
【0009】
(3)また前記情報部材に、前記革を再利用することにより製作できる第2獣革製品の情報を含む製品情報が表示されているのが好ましい。
【0010】
(4)さらに前記情報部材に、前記獣革製品に使用している革量を含む革量情報と、前記第2獣革製品の製作に必要な革量を含む第2革量情報とが表示されているのが好ましい。
【0011】
(5)本発明の情報部材および獣革製品のセットの第二の態様は、獣革製品と、その獣革製品に使用している革量を含む革量情報、前記革を再利用することにより製作できる第2獣革製品の情報を含む製品情報および前記第2獣革製品に必要な革量を含む第2革量情報が表示される情報部材とを備えている、ことを特徴とする。
【0012】
(6)本発明の害獣駆除された獣の革からなる獣革製品の表示方法は、害獣駆除される獣における複数の地域亜種にそれぞれ対応するように設定された複数の異なる色と共に、それらの色に対応させた複数の地域亜種に関連する情報を購入予定者に表示し、それらの色でそれぞれ染色された獣革製品を前記購入予定者に表示する、ことを特徴とする。
【0013】
(7)このような獣革製品の表示方法は、前記獣は鹿であり、前記地域亜種は対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿あるいは蝦夷鹿であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の情報部材および獣革製品のセット、獣革製品の表示方法は、獣革製品の購入者またはそれの検討中の者に、野生鹿の背景を知るのを促すことができる。また獣革製品を長く大事に使用することを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は情報部材および獣革製品のセットの一実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は全国の野生鹿の地域亜種の生息地と獣革製品とをそれぞれ繋げている様子を示す概略図である。情報部材および獣革製品のセットの全体像を示す概略図である。
【
図5】
図5は再利用製品を示すカードの概略図である。
【
図6】
図6は本発明の獣革製品の表示方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[1.概略]
<第1実施形態>
図1を用いて、本発明の情報部材および獣革製品のセットについて説明する。
図1に示している情報部材および獣革製品のセット(以下セット1という。)は、予め設定した色2で染色され、且つ、害獣駆除された獣の革からなる獣革製品3と、情報部材5とを備えている。その情報部材5には、色2に対応するように設定(リンク)された前記獣の地域亜種に関する情報4が含まれている。また色2は前記地域亜種毎に異なるように設定されている。
【0017】
次いで、
図2を用いて、セット1の概略を説明する。セット1は、日本の野生鹿の背景を知ってもらうことを目的の1つにしている。例えば、野生鹿にどのような地域亜種があるのか、それらの地域亜種の生息地はどこであるのか、その生息地の自然環境はどのようになっているのか、その自然環境での暮らしはどのようにしているのか、などである。これらは地域亜種の生息地に基づく野生鹿の背景Bである。
その野生鹿の背景Bを特定の地域のイメージ(地域亜種に関する情報4)としてまとめて特定の色2に対応するように設定(リンク)させている。そして、その色2と同じ色で獣革製品3を染色している。すなわち色2により、野生鹿の背景Bと獣革製品3とを繋げている。
【0018】
次に
図3を用いて、全国の野生鹿の地域亜種の生息地と獣革製品3とをそれぞれ繋げている様子を説明する。
図3に示している日本鹿は、対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿および蝦夷鹿の6種である。なお、これらの鹿は害獣として駆除されている。例えば、6種の地域亜種種に対して地域亜種に関する情報4(4a、4b、4c、4d、4e)がそれぞれ設定されている。それらの地域亜種に関する情報4に対応するように、異なる6つの色2(2a、2b、2c、2d、2e)がそれぞれ設定されている。そして、それらの色2と同じ色で獣革製品3(3a、3b、3c、3d、3e)がそれぞれ染色されている。
【0019】
例えば、購入予定者が、店頭などで、気になった色2の獣革製品3を手にすると、それと同時に、その獣革製品3と一緒にセットにされている情報部材5を手にすることになる。その情報部材5には、気になった色2にリンクした野生鹿の生息地等の情報が記載されている。これにより、野生鹿の背景Bを知るきっかけを購入予定者に促すことができる。
【0020】
[2.各構成]
(色2、地域亜種に関する情報4)
地域亜種に関する情報4は、対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿および蝦夷鹿などの地域亜種の情報を含んでいる。さらに、地域亜種の野生鹿が生息している地域の情報を含んでもよい。例えば、対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿および蝦夷鹿は、それぞれ対馬、屋久島、九州、本州、慶良間諸島および北海道に分布している。これらの地域の風土、例えば地域によって異なる特色をもった環境としての自然、すなわち気候、地形、水、土壌、植生などや、さらに歴史的建造物などの歴史・暮らしなどを地域亜種に関する情報4として含んでもよい。
【0021】
本実施形態では、例えば、対馬の地域亜種に関する情報4aとして、九州地方の玄界灘に浮かぶ神話の島、対馬の夜明けをイメージとして設定し、それに対応する色2aとしてブルーを設定している。
屋久島の地域亜種に関する情報4bとして、例えば、巨大な屋久杉の内側に潜む、赤土の大地のエネルギーに満ちた様子をイメージとして設定し、それに対応する色2bとしてピンクを設定している。
九州の地域亜種に関する情報4cとして、例えば、弥生時代の墨や硯が出土し、さらに炭鉱をイメージとして設定し、それに対応する色2cとしてダークグレーを設定している。
本州の地域亜種に関する情報4dとして、例えば、人々と自然が共存する里山の暮らし、その懐かしい原風景にちなんだイメージを設定し、それに対応する色2dとしてキャメルを設定している。
慶良間諸島の地域亜種に関する情報4eとして、例えば、沖縄・慶良間諸島の海に浮かぶ、きらめく泡をイメージとして設定し、それに対応する色2eとしてグリーンを設定している。
北海道の地域亜種に関する情報4fとして、例えば、極寒の大地・北海道の、薄日が差し込む雪化粧をイメージとして設定し、それに対応する色2fとしてライトグレーを設定している。
これらの6種の地域亜種に関する情報は、全体として、大まかに日本の風景を表現している。
【0022】
(獣革製品3)
本実施形態の獣革製品3は、ジビエの鹿皮を活用した革製品である。
なお、一般的に、ジビエとは、食材として捕獲された野生の鳥獣のことを言うことが多いが、本実施形態におけるジビエの皮とは、食材としての目的にかかわらず、単に害獣駆除や狩猟などで捕獲された野生の獣の皮という意味で用いている。
前記革製品としては、例えば、クラッチバッグ・ショルダーバッグなどのバッグ、長財布・小銭入などの財布、名刺入れ・キーケースなどのケース、ペンケース・手帳などの文房具用品、ピアス・イヤリングなどのアクセサリーなどの従来公知のものである。
革製品に用いられている皮は、タンニンで鞣されるものである。この鞣しの段階で染料を皮に染み込ませて、染色している。皮特有の野生由来の傷・捕獲時の傷(以下これらを「自然傷」という。)や、シワなどを埋めるような表面加工は施していない。このようにして加工した革は、使用により、新たな傷やシワなどが付く。このため、エイジングと呼ばれる、色や光沢の経時変化を楽しむことができる。また表面加工として、傷、シワを埋めない程度に撥水加工などを施してもよい。
【0023】
(情報部材5)
図1に戻って、情報部材5は、獣革製品3に革紐などで結ばれ一体にされている。情報部材5は、本実施形態においては、カードケース9と、それに収納されたカード10とからなる。
カードケース9には、スリット状のカード収納部が設けられている。またカードケース9は、本実施系形態では、例えば、鹿革で製作されている。さらにカードケース9は商品タグを兼ねている。例えば、商標、商品名、材質などの獣革製品3についての情報が記載されている。カード10は、例えば紙製であり、地域亜種に関する情報4が表示されている。
【0024】
本実施形態では、カード10の他に、さらに革量情報6が記載されたカード11と、第2製品情報7およびそれに対応した第2革量情報8が記載されたカード12を備えている。その第2商品は複数から選択できるようにされている。本実施形態では、カード12の他に、さらに第2商品を紹介するカード13、14を備えている。これらのカード12、13、14は、カード10、11に重ねられ、カードケース9に一緒に収納されている。これらのカード10、11、12、13、14は情報部材5を構成している。
なお、カード10の全体または一部を、対応する色2で着色してもよい。
さらになお、第2製品情報7として紹介される製品は、2種以下でもよいし、4種以上であってもよい。さらに第2製品情報7の種類が多い場合は、それらをまとめて1つのカードに記載したり、複数のカードをまとめて1冊の本のようにしてもよい。
【0025】
図4を用いてカード11を詳述する。
図4に示すように、カード11には、再利用できる革の量の目安としての革量情報6が表示されている。さらに、獣革製品3を示す線画、写真などのイラスト11aと、商品名11bと、カラーバリエーションとしての6色がそれぞれ着色された6個の正方形11cとが表示されている。その正方形11cのうち、獣革製品3の色2cと同じ色の正方形(2cが付されている正方形)にチェック(符号11d参照)が付されている。
なお、本実施形態では、鹿二頭分の革を用いていることから、商品名11bはニシカ(図示せず)とされている。商品の種類としては、バッグである。図示していないが、カード11に商品の種類を記載してもよい。
さらにまた図示していないが、カード11の裏面には、商品をメンテナンスする方法や、修理が必要な場合の連絡先などが記載されている。
【0026】
(革量情報6)
革量情報6は、獣革製品3を製作するのに使用した革のうち、再利用可能な革の量またはそれに換算できる革の量である。なお、獣革製品3を製作するのに使用した革の量でもよい。その場合は、例えば、使用した革の量の50~90%、好ましくは80~90%を再利用可能な量として設定し、換算してもよい。例えば、持ち手部位や縫い目の部位は、再利用するのが困難な傾向にある。このため再利用には適さない傾向にある。
また、革量情報6として、再利用可能な革の量と共に、獣革製品3を製作するのに使用した革の量を記載してもよい。
【0027】
(第2製品情報7、第2革量情報8)
次いで、
図5aを用いてカード12を説明する。
図5aに示すように、カード12には、少なくとも第2製品情報7および第2革量情報8が表示されている。
第2製品情報7は、第2製品がどのような製品であるのか示す情報である。本実施形態では、第2製品を示す線画、写真などのイラスト12a(本実施形態では巾着ポーチの線画)と、商品名12b(本実施形態では巾着ポーチ)と、その巾着ポーチの寸法12cと、再利用のために必要な料金、片道送料など12dとからなる。本実施形態では、寸法12cとして、L、M、Sの3種類が用意されている。なお、例えば、第2製品情報7として、少なくともイラスト12a、商品名12b、寸法12cのうちの1つが表示されていればよい。
第2革量情報8は、第2製品を作成するに必要な革の量である。寸法12cのL、M、Sの表記の下方にそれぞれ表示されている。また、L、M、Sの記号の横には、チェックボックスが設けられている。図示していないが、そのチェックボックスにチェックが入れられると、そのサイズの商品に再利用できる、ということである。
なお図示していないが、カード12の裏面には、再利用する際の手続き方法、工房の連絡先、郵送する際の注意などが記載されている。
【0028】
(カード13、14)
次いで、
図5b、
図5cを用いてカード13、14について、それぞれ説明する。カード13、14は、前述したカード12とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
図5bを用いてカード13を説明する。カード13は、ファスナーポーチ12bである。
図5cを用いてカード14を説明する。カード14は、ブックカバー12bである。寸法12cとして、例えば、B5サイズ、B6サイズ、文庫サイズ、新書サイズの4種類が用意されている。なお、他のサイズを表示してもよい。
【0029】
(再利用可能な革の量の参考例)
参考として、野生の日本鹿の1頭当たりから得られる革の量は、固体差に大きく左右されるが、目安として、50~100dsである。1dsは10cm2である。例えば、大きなバッグの製作になると、野生の日本鹿で、2頭分の革が必要になる場合もある。
以下に、再利用できる革の量の目安を説明する。
例えば、大き目のバッグを想定した場合、その概略の寸法は、幅44×高さ34×マチ10cm(持ち手部は含めていない)である。このバックで再利用可能な革の量は約45dsである。この革の量であるなら、例えば、ファスナーポーチまたは巾着を第2製品とすることができる。なお、持ち手部は再利用するのが難しい傾向にある。
例えば、中程度の大きさのサコッシュを想定した場合、その概略の寸法は、幅32×高さ22cmである。このサコッシュで再利用可能な革の量は約30dsである。この場合、大き目のファスナーポーチまたは中程度の巾着を第2製品とすることができる。なお、サコッシュのベルトは再利用するのが難しい傾向にある。
例えば、クラッチを想定した場合、その概略の寸法は、幅25×高さ15cmである。このクラッチで再利用可能な革の量は約15dsである。この場合、中程度のファスナーポーチまたは小さ目の巾着を第2製品とすることができる。なお、持ち手部の革は再利用するのが難しい傾向にある。
例えば、コインケースを想定した場合、その概略の寸法は、閉じた状態で、幅6.5×高さ6cmまたは幅6.5×高さ13cmである。これらのコインケースで利用可能な革の量は、約2dsである。革の量が2dsでは、革の量が少ないから、第2製品を製作するのが困難な傾向にある。
【0030】
(再利用できる革の量の合算)
複数の獣革製品3、3から、再利用できる革を合算して、第2製品を製作してもよい。通常は、再利用すると製品が小さくなるが、再利用できる革を合算することで、大きな第2製品を得ることができる。カード11、11から再利用できる複数の革量情報6、6と、カード12等から第2製品に必要な第2革量情報8とが分かる。このため、事前に必要な革の量を購入者が自ら計算できるので、購入者に革を無駄にせず、上手に使い切ることを自然に促すことができる。
【0031】
(革の再利用についての小括)
セット1は、情報部材5として、再利用できる革の量を示す革量情報6、再利用で製作された第2製品情報7および第2製品に必要な革量を示す第2革量情報8を表示している。このため、購入予定者は将来的に入手するであろう第2製品を確かめた上で、獣革製品3を購入するから、セット1は購入した者に革の再利用を自然に促すことができる。すなわち、革の寿命が尽きるまで大事に使ってもらうことができる。
また、将来的に、エイジングと呼ばれる色や光沢が変化した革を用いた新しい製品(第2製品)を楽しむことができる。このため、長期にわたり、革製品の手触り・風合いを楽しむような体験を得ることができる。そして、そのような体験が得られることを自然に促している。
【0032】
[3.表示方法]
(獣革製品の表示方法15)
次に
図6を用いて、本発明の獣革製品の表示方法(以後単に表示方法という。)について説明する。なお、表示方法は、前述したセット1とほぼ同様の部分が多いので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
図に示している表示方法15は、主要な構成として、色2に対応させた地域亜種に関連する情報4を購入予定者に表示する工程(S1参照)と、地域亜種毎に設定された色2で染色された獣革製品3を購入予定者に表示する工程(S2参照)とからなる。
【0033】
(工程S1)
図6に示している工程S1において、複数の地域亜種に複数の異なる色2がそれぞれ対応するように設定されている。それらの色2に対応させた複数の地域亜種に関連する情報4を購入予定者に表示する。表示は、前述したカード10など、その他、リーフレットなどの媒体や、ウェブサイトを通じて、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどの情報端末の画面に表示するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、前記獣は鹿である。また、前記地域亜種は、対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿および蝦夷鹿の6種からなる。
【0034】
(工程S2)
次いで、それらの色2でそれぞれ染色された獣革製品3を前記購入予定者に表示する。表示は、実物を店頭で表示してもよいし、その他、リーフレットなどの媒体や、ウェブサイトを通じて、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどの情報端末の画面に表示するようにしてもよい。
【0035】
日本鹿の6種の地域亜種およびその生息地の情報と、獣革製品3に染色により表現された6色のカラーバリエーションをそれぞれリンクさせている。すなわち、野生鹿の生息地などの背景Bを知ることで、そこから猟師、解体工場、鞣し工場を得て、獣革製品となるジビエの皮について、天然皮革の良さ、傷のある自然のままの良さの説明を理解しやすくなる。
なお、獣革製品3を購入予定者に表示し(工程S2)、その後に、地域亜種に関連する情報4を購入予定者に表示し(工程S1)てもよい(図の二点鎖線参照)。さらになお、それらを同時に表示してもよい。
【0036】
[4.他の実施形態]
(変形例)
以下に、本発明のセット1の変形例を説明する。この変形例は、前述した第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
図1にセット1の変形例を示す(二点鎖線参照)。
図1に示している変形例16は、情報部材5において、地域亜種に関する情報4の他に、傷情報17をさらに含んでいる。その傷情報17は、獣革製品3に現れている製品傷について、前記獣が生前に負った擦り傷・治療跡を含む自然傷との関連を示している。さらに具体的には、例えば、獣革製品3の製品傷の部位を特定し、それが股ずれ、生前に負った擦り傷、治療跡などの自然由来のものであることを説明するものである。
なお、変形例16において、情報部材5として、革量情報6および/または第2製品情報7・第2革量情報8を含めなくてもよい。
【0037】
<第2実施形態>
(情報部材および獣革製品のセット)
以下に、本発明のセット1の他の実施形態を説明する。この実施形態は、前述した第1実施形態とほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明し、同じ部分の説明は省略する。
図7に第1実施形態のセット1の他の実施形態を示している。図に示しているセット18は、第1実施形態に対して、情報部材5が含んでいる情報が異なっている。セット18の情報部材5は、地域亜種に関する情報4を含んでおらず、革量情報6および/または第2製品情報7並びに第2革量情報8を含んでいる。
なお、傷情報17を含んでいてもよい。
【0038】
[5.その他]
(1)前述の実施形態、変形例は、それぞれの構成を適宜に組み合わせて用いることができる。
(2)害獣駆除される獣としては、鹿、猪、ハクビシン、イタチなどである。またジビエ以外の革を用いることができる。なお害獣として駆除されていない獣の革を用いることができる。
(3)タンニン鞣しの他に、クロム鞣しを用いてもよい。また、タンニン鞣しでもよいし、混合鞣しでもよい。さらに、獣革製品3において、タンニン鞣しとクロム鞣しの革を混在させてもよい。
(4)なお、革本来の風合いを残すことは難しいが、染色を行った後、さらにスプレーやインクなどで顔料を塗ってムラなく仕上げてもよい。
(5)染色した革に、印刷・プリントなどで文字や模様などを付してもよい。
(6)鹿の地域亜種は6種の他、その6種から選択される2、3、4あるいは5種のいずれかでもよい。
(7)情報部材5に含まれる各情報について、QRコード(登録商標)を付して、スマートフォンなどの端末で表示するようにしてもよい。その際には、QRコード(登録商標)のみを記載して、ほぼ全ての情報を端末で確認できるようにしてもよい。
(8)情報部材5として、カードケース9を用いないで、カード10、11、12、13、14を獣革製品3にセットとして設けてもよい。その際には、獣革製品3と一緒に梱包されるようにしてもよい。なお、カードが複数ある場合は、一部について、カードケースを用いないようにしてもよい。
(9)獣革製品3としては、手袋、キーホルダーなど、革を用いて製作できるものであればよい。
(10)カードケース9、カード10、11、12、13、14の材質は、それぞれ紙、革、プラスチックなどでもよい。
(11)サイズ12cは、本実施形態では、L、M、Sの3種類を用意しているが、それより大きなまたは小さなサイズがあってもよい。
【0039】
[6.まとめ]
(1)(6)本発明の情報部材および獣革製品のセット1は、予め設定した色2で染色され、且つ、害獣駆除された獣の革からなる獣革製品3と、前記獣における地域亜種に関連する情報4が表示された情報部材5とを備えており、色2は、前記地域亜種毎に異なるように設定されており、色2と地域亜種に関連する情報4とが対応するように設定されている。
このため、購入者は、手にした色または購入検討中の者が気になった色2と、セットにされている情報部材5に記載されている色2にリンクされている地域亜種に関連する情報4とが繋がっていることに気付く。これにより、獣革製品3を購入または検討中の者に、野生鹿の背景Bを知るのを自然に促すことができる。
【0040】
(2)(7)このような情報部材および獣革製品のセット1は、前記獣は鹿であり、前記地域亜種は対馬鹿、屋久鹿、九州鹿、本州鹿、慶良間鹿あるいは蝦夷鹿であるので、害獣駆除されている日本鹿の6種の地域亜種およびその生息地の情報と、獣革製品3に染色によりで表現された6色のカラーバリエーションとをリンクさせることにより、購入予定者に、日本各地で生息している野生鹿の背景Bを一層深く意識させることができる。
【0041】
(3)また情報部材5が、革を再利用することにより製作できる第2製品の情報を含む第2製品情報7を備えているので、購入予定者は将来的に得るであろう第2製品を確かめた上で、獣革製品3を購入することができる。このため、購入した者に革の再利用を自然に促すことができる。すなわち、セット1は革の寿命が尽きるまで大事に使ってもらいやすい製品であり、それが自然に促されている。
また、将来的に、エイジングと呼ばれる色や光沢が変化した革を用いた第2製品を楽しむことができる。このため、長期にわたり、革製品の手触り・風合いを楽しむような体験を得ることができる。またそれが自然に促されている。
【0042】
(4)(5)さらに情報部材5が、獣革製品3において再利用できる革量を含む革量情報6と、第2製品の製作に必要な革量を含む第2革量情報8とを備えているので、再利用できる革量情報6と、第2製品の第2革量情報8とが分かる。このため、革を無駄にしないで、上手に使い切ることができる。またそれが自然に促されている。
【符号の説明】
【0043】
1 情報部材および獣革製品のセット(セット)
2 色
3 獣革製品
4 地域亜種に関する情報
5 情報部材
6 革量情報
7 第2製品情報
8 第2革量情報
9 カードケース
10 カード
11 カード
11a イラスト
11b 商品名
11c 正方形
11d チェック
12 カード
12a イラスト
12b 商品名
12c 寸法
13 カード
14 カード
15 獣革製品の表示方法(表示方法)
16 変形例
17 傷情報
18 セット