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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】印刷物を作成するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/14 20210101AFI20231016BHJP
   B22F 12/55 20210101ALI20231016BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231016BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231016BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20231016BHJP
【FI】
B22F10/14
B22F12/55
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019556869
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2018000485
(87)【国際公開番号】W WO2018193306
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/487,670
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510333542
【氏名又は名称】エックスジェット・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XJET LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】クリッチマン、エリ
(72)【発明者】
【氏名】サララー、ウェイル
(72)【発明者】
【氏名】アクア、タリ
(72)【発明者】
【氏名】セラ、タル
(72)【発明者】
【氏名】ベニチョー、アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ダヤギ、ヨハイ
(72)【発明者】
【氏名】アブラモフ、ドロン
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0197062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-12/84
B29C 64/00-64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造するためのシステムであって、
前記製品の少なくとも第1の部分を、第1の平均粒径を有する第1の材料で付加して印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群であって、前記第1の平均粒径は、第1の焼結特性を与えるように選択される、第1のプリントヘッド群、および
前記製品の少なくとも第2の部分を、第2の平均粒径を有する第2の材料で付加して印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群であって、前記第2の平均粒径は、第2の焼結特性を与えるように選択される、第2のプリントヘッド群を保持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域と、
前記製品の所望の特性を反映する情報を受信し;
前記第1のプリントヘッド群および前記第2のプリントヘッド群を調整して、前記第1の材料と前記第2の材料を層ごとに分配し、前記製品の所望の特性を反映する情報に基づいて前記製品の異なる部分に異なる特性を付与するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
を含み、前記第1の材料および前記第2の材料のうちの少なくとも1つの粒径および粒径分布は、前記第1の材料および前記第2の材料の焼結温度が、必要な許容範囲内で同じとなるように調整される、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記製品の所望の特性を達成するために、前記第1の材料および前記第2の材料の分配を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記製品の所望の特性は、熱的、機械的、化学的、電気的、または物理的特性を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記製品の所望の特性は、熱膨張係数、熱伝導率、熱拡散率、耐摩耗性、脆性、延性、弾性、剛性、靭性、降伏強度、色、密度、硬度、腐食、耐酸化性、およびそれらの組み合わせを含む、請求項3に記載にシステム。
【請求項5】
前記焼結特性が、焼結温度および収縮係数のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1のプリントヘッド群および前記第2のプリントヘッド群を調整して、重量または体積によって決定される異なる量で前記第1の材料および前記第2の材料を分配するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の材料および前記第2の材料は、互いに異なる化学的性質を有するが、同じ焼結温度を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプロセッサが、堆積時に前記第1の材料と前記第2の材料が、混合して互いに点在するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
混合して互いに点在するようになった前記第1の材料と前記第2の材料が、前記製品の異なる部分で分離することなく、単一構造を形成する、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
混合して互いに点在するようになった異なる材料間の割合が、前記製品の前記所望の特性に応じて、前記製品の異なる部分で変化する、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の材料および前記第2の材料のうちの少なくとも一方が他方に浸透するように堆積されて、前記他方に1つ以上のストリングを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプリントヘッド領域は、第3のプリントヘッド群を保持するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第3のプリントヘッド群は、印刷された前記第1材料および前記第2の材料を一時的に支持する取り外し可能な支持材料を付加して印刷するように構成可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の部分が物体のコアを含み、前記第2の部分が前記物体の周辺部を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2017年4月20日に出願された米国仮特許出願第62/487,670号の優先権の利益を主張し、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、異なるサイズの粒子を有する製品を形成するためのシステムに関する。一実施形態では、システムは、製品の異なるセクションまたは部分を付加して印刷するように構成された1つ以上のプリントヘッドを保持するプリントヘッド領域と、プリントヘッドを調節するように構成されるプロセッサを備える。本開示はまた、開示されたシステムを使用することなどにより、製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3次元(3D)インクジェット印刷プロセスは、直接金属レーザー焼結または選択的レーザー焼結(それぞれDMLSおよびSLS)などの付加製造プロセスと見なされる。インクジェット印刷プロセスは、プラスチック、金属、またはセラミックの物体の印刷に使用される。DMLSやSLSとは異なり、インクジェットプロセスで印刷された金属またはセラミック体は、最終焼結段階を必要とする「未焼結」体と考えられる。未加工部分の機械的特性は完全に焼結部品よりも劣るため、通常、金属またはセラミックの3Dインクジェット印刷では、モデル材料と支持材料の少なくとも2種類の材料を使用する必要がある。モデル材料と支持材料は、インクジェット可能なインクである。モデル材料は、所望の物を形成するために使用されるが、支持材料は、物体の少なくとも一部のための所望の支持構造を形成するのに使用される。このような支持構造は、印刷中またはモデルが自己支持するための適切な機械的強度に達するまで物体を支持するように構成されている。モデルにチャネルまたは他のボイドが含まれている場合、または負の角度で印刷する必要がある場合は、支持材料の使用が特に望ましい。モデルが自立段階に達すると、支持構造は削除される。
【0004】
3D印刷の基本的な課題の1つは、モデル内の支持材料の相互汚染を最小限に抑えながら、自立段階に達する前の印刷されたモデルに必要な支持機能を提供するとともに、その後取り除くことができる、支持構造の印刷を可能にする支持材料の開発である。したがって、支持材料は、モデル材料のさまざまな特性と両立できるものでなければならない。例えば、本開示の一態様によれば、以下により詳細に説明するように、支持構造の焼結温度が、モデル材料の焼結温度よりも高いことが重要である。
【0005】
支持材料は、印刷直後、または焼結後のいずれかの印刷後のプロセスにおいて除去されなければならない。支持体の除去は、化学的、機械的、または熱的に行われる。支持体の除去に使用される方法に関係なく、印刷されたモデルを固体金属またはセラミック片に変換するには、印刷後の処理手順がいくつか必要である。印刷段階の後に、かつモデルが自立段階に達する前に、支持体を除去することに関連する1つの問題は、除去プロセスが印刷されたパーツの完全性に影響を与える可能性があることである。この段階では、印刷された部品が簡単に破損し得る。
【0006】
インクジェット印刷用のモデル材料と支持材料の組み合わせ、および本開示で開示されるそのような材料を組み合わせる方法は、先行技術の欠点に対処する。本開示はまた、上述の問題および/または先行技術の他の問題の1つまたは複数を克服するための、そのようなインクを製造する新規で独創的な方法を提供する。特に、本開示は、モデルと支持インクとの間のパラメータを調整して、インクジェット印刷による製品の製造を支援するか、最終印刷モデルの結果を改善するか、またはその両方に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
部分的に前述のニーズに対処するために、本開示は、製品を形成するためのシステムに関する。一実施形態では、システムは、製品の少なくとも第1の部分を第1の平均粒径を有する第1の材料で付加して印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群を保持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域を備える。第1の平均粒径は、第1の焼結特性を付与するように選択される。本明細書で説明するシステムは、製品の第2の部分を第2の平均粒径を有する第2の材料で付加して印刷するように構成可能な第2のプリントヘッド群も含む。第2の平均粒径は、第2の焼結特性を付与するように選択される。
【0008】
本明細書に記載のシステムはまた、製品の所望の特性を反映する情報を受信し、前記第1のプリントヘッド群および前記第2のプリントヘッド群を調節して、前記製品の所望の特性を反映した情報に基づいて、前記製品の異なる部分には異なる特性を付与するために、層ごとに前記第1の材料および前記第2の材料を分配するように構成可能な少なくとも1つのプロセッサを含む。
【0009】
本開示はまた、開示されたシステムを使用することなどにより、インクジェット印刷により物体を製造する方法に関する。一実施形態では、この方法は、物体材料を噴射して、第1の焼結温度を有する製品構造を形成することを含む。製品構造の形成と同時にまたはその前に、方法は、粒子を含む支持材料を噴射して支持構造を形成することをさらに含み、ここで、支持構造は製品構造を支持するように噴射される。一実施形態では、支持材料は、物体材料の焼結温度よりも高い焼結温度を有する。噴射された物体と噴射された支持体は一緒に未焼結部分を構成する。この方法は、未焼結部分を第1の焼結温度以上および第2の焼結温度未満の温度に加熱することにより、噴射支持体を実質的に焼結することなく噴射物体を少なくとも部分的に焼結し、少なくとも部分的に焼結された物体から実質的に未焼結の支持体を取り除くことをさらに含む。
【0010】
上述の主題とは別に、本開示は、以下に説明されるような多くの他の特徴を含む。前述の説明と以下の説明はどちらも例示に過ぎない。
【0011】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示による付加製造装置の一例を示す。
【0013】
図2A-F】粉末層の噴霧(図2A)を含む本開示の実施形態による付加製造プロセスの例を示す。(図2B)。所望のモデル領域でのナノ粉末のインクジェット(図2C)。モデル領域の強化(図2D)。続いて、大きな粉末を噴霧する追加の層を適用するステップが繰り返され(図2E)、ナノ粉末のインクジェットが行われる(図2F)。
【0014】
図3】インクジェット印刷によるカラー無機物の印刷を可能にする複数のプリントヘッドを備える本開示の実施形態によるプリンターヘッドアセンブリを示す。
【0015】
図4A-C】顔料、またはジルコニアなどの構造粒子と混合された顔料など(図4A)、またはジルコニア粒子に埋め込まれた顔料(図4B)などの着色剤粒子を含む本開示の一実施形態によるインク分散液を示す。図4Cは、除去された構造粒子を示す。
【0016】
図5】本開示の実施形態に従って作成された色層の下に白色層を有する色付き立方体を示す。
【0017】
図6A】材料の焼結温度対粒子サイズを示すグラフである。
図6B】粉末材料に関連する4つの焼結段階の相対密度対焼結温度を示すグラフである。
【0018】
図7】本開示によるSiO支持インクを製造するために使用される構成要素の三元状態図である。
【0019】
図8】モデルと支持材料を備えたインサイチュレーザーシステムの概略図を示す。
【0020】
図9A-B】分散剤蒸発の前(図9A)および後(図9B)の粒子材料を示す概略図である。図9Aは、低温で分散分子で包まれた粒子を示す概略図である。図9Bは、高温ではあるが焼結未満の温度で分散分子を失った後に残った粒子を示す概略図である。
【0021】
図10A-D】様々な形状およびサイズを有する粉末の充填密度を示す概略図であり、具体的には、モノサイズ分散(図10A)、マルチサイズ分散(図10B)、モノサイズおよびマルチサイズ分散(図10C)、熱処理後の図5Cのモノサイズおよびマルチサイズ分散(図10D)を示す。
【0022】
図11A-F】焼結中の支持材料とモデル材料との間の収縮率の差異のために、高応力およびひずみに関連したモデル部品の分離および変形を示す概略図である。
【0023】
図12A-B】本開示による異なる材料で印刷された物体を示す。図12Aは、バルク材料上のコーティングを示し、図12Bは、バルク材料上にある含浸層上のコーティングを示す。
【0024】
図13A-B】本開示による材料の混合物で構築された物体を示す。
【0025】
図14】モデル材料に支持材料を浸透させることにより、本開示による複合物体を製造するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、一般に、インクジェット印刷による製品の製造を支援するためにモデルインクと支持インクとの間のパラメータを調整することに関する。モデルインクと支持インク間のパラメータを有益に調整するための複数の統合された技術と、システムが開示される。これらには以下が含まれる:
i)焼結後の支持体の除去を容易にするために、支持体の前にモデルが焼結するように焼結温度を調整する。以下でより詳細に説明するように、これは、材料の選択、粒子サイズ、粒子分布、またはそれらの組み合わせによって行うことができる。
ii)モデルと支持構造間の収縮を制御して、印刷からグリーンステージ、ブラウンステージ、最終焼結を通しての温度範囲でのモデルの歪みや亀裂を回避する。
iii)材料を選択するか、またはこの結果を達成するのに役立つ添加剤を使用して、モデルと支持構造の間の相互汚染を低減する。
iv)モデルインクと支持インクの両方の粒子サイズを制御して、モデルと支持領域の両方を迅速かつ効率的にカバーすることにより、印刷速度を向上させる。
【0027】
以下は、本明細書に記載される様々な実施形態の一般的な説明であり、特に、開示されるプリンター、印刷システム、インクおよびインクシステム、製品を製造するためにそのようなシステムおよび/またはインクを使用する方法、上記から製造された製品に関する。ここで、本開示に従って実施されるこれらの前述の実施形態を詳細に参照し、その実施例を添付の図面に示す。可能な限り、同じまたは類似の部品を指すために、図面全体を通して同じ参照番号が使用される。
【0028】
[プリンター]
一実施形態では、付加製造装置が開示されている。本明細書で使用する「付加製造装置」という用語は、物体が作成されるまで材料の連続層を置くことによってデジタルモデルから物体を生成できる任意のデバイスまたはシステムを広く含む。図1は、本明細書で説明されるような様々な実装が実施され得る付加製造装置100の例を示す。図1に示すように、付加製造装置100は、印刷領域102、少なくとも1つのプリントヘッド106を支持するプリントヘッドホルダー104、プリントヘッド106をインクリザーバ110と相互接続する少なくとも1つの導管108、エネルギー源112、冷却ファン114、シールド116、レベリング装置118、およびコントローラ120を含んでもよい。
【0029】
印刷領域102は、付加製造プロセスで構築される物体を支持するためのベースとして使用されてもよい。「印刷領域」という用語は、付加製造装置100から分配された材料の複数の層を保持できる剛性表面を備えた領域を含む。「印刷トレイ」および「印刷テーブル」という用語は、印刷領域に関して、本開示において交換可能に使用することもできる。一実施形態では、印刷領域102は、例えば、熱伝導性材料を含むことができ、または印刷領域102は、金属製のトレイを含むことができる。この実施形態では、印刷領域102は、最近印刷された層の固化を支援するため、またはインク液体成分の少なくとも一部の蒸発を促進するために、必要な物体温度まで温められてもよい。別の実施形態では、印刷領域102は断熱材料を含むことができる。例えば、印刷領域102は、木材、プラスチック、または絶縁セラミックを含み得る。両方の実施形態において、印刷領域102は、物体の温度を維持し、最近印刷された層の加熱は、例えばハロゲンランプ、IRランプ、UVランプ、レーザー、フラッシュランプ、またはマイクロ波源などのエネルギー源112を使用することにより、上からの直接熱放射によって達成される。
【0030】
一実施形態では、印刷領域102は、トレイホルダー(または「チャック」)に取り付け可能な印刷トレイであってもよい。トレイホルダーは、必要に応じてトレイを加熱する加熱機構を含むことができる。トレイホルダーは、真空またはクリッピングジグを含む任意の手段によってトレイが取り付けられる剛性の平らな熱伝導表面(カバー下の加熱手段によって任意に加熱される)を含むことができる。あるいは、ホルダは、露出した加熱手段(例えば、トレイを直接加熱する放射ランプ)を囲む保持フレームを含むことができる。一実施形態では、印刷トレイは交換可能である。例えば、印刷が終了したら、オペレーターは、印刷物が置かれたトレイをプリンターから取り除き、プリンターにきれいなトレイを取り付け、新しい印刷セッションを開始できる。
【0031】
一実施形態では、トレイは硬くなければならない。これは、トレイをトレイホルダーから取り外すときに曲がるのを防ぐために必要である。一実施形態では、トレイホルダーは平坦であってもよい。これは、トレイホルダー表面とトレイの間の良好な取り付けを可能にし、また印刷物と真直ぐなレベリング装置の間の良好な整列を保証するために望ましい。トレイは熱伝導性で、重すぎないようにする必要がある。一実施形態によれば、トレイはアルミニウム製であり、約3~12mmの範囲の厚さを有する。
【0032】
用語「印刷領域」は、用語「印刷面」と混同すべきではない。用語「印刷面」は、新しい層が印刷される表面を指す。印刷プロセスの最初の段階では、印刷領域102は印刷面であり得る。なぜなら、その上に第1層が直接印刷されるからである。ただし、後続のすべての層(第2層など)は、以前に堆積した層の上に印刷される。したがって、第2層の場合、第1層は印刷面であり、第3層の場合、第2層は印刷面などである。図1に示す例では、印刷面122は以前に堆積された層である。新しい層124は、印刷面122の上に現在印刷されている層である。新しい層124は、すべての印刷パス中にZ方向に沿って構築され、「上層」または「最新層」とも呼ばれる。
【0033】
本明細書に記載の開示の態様によれば、モデルは支持体上に印刷され、支持体は、剛性の安定性、支持部品材料(モデル)との適切なインターフェース、およびからの分離の容易さを含む望ましい特性を示す。別の態様によれば、支持構造体もトレイから取り外し可能でなければならない。一実施形態によれば、部品とトレイとの間に支持構造が構築されることに留意されたい。トレイから印刷された部品を簡単に取り外すことができるようにするため、ごくわずかな支持体層(例えば、1から10)は、その後に堆積される層とは異なる場合がある。一実施形態では、これらの少数の層は支持材料のみを含む。
【0034】
他の実施形態では、少数の層は、支持材料とモデル材料の特定の混合物または組み合わせを含む。一実施形態では、モデル材料は、柱構造に追加されてもよい。いくつかの最下層の混合物は、上の層の混合物と異なる場合があり、両方とも部品付近の支持構造の混合物と異なる場合がある。この構造のより詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/029,815号に記載されている。
【0035】
最終印刷物の完全性を支援するために、印刷物を均一かつ一定に冷却することができる。一実施形態では、これは、印刷された物体が所望の温度に達するまで、断熱された冷却ボックスなどの冷却環境で、新たに印刷された物体を載せた印刷トレイを保持することによって行われ得る。
【0036】
本開示の実施形態と一致し、再び図1を参照する。図1に示すように、付加製造装置100は、印刷面122から間隔を空けて少なくとも1つのプリントヘッド106を維持するためのプリントヘッドホルダー104を含み得る。用語「プリントヘッドホルダー」は、少なくとも1つのプリントヘッド106を、印刷面122から固定した距離又は印刷領域102から変化する距離に、保持するのに適した任意の構造を含む。付加製造プロセスは、材料の連続層を置くことを含むため、物体の高さは徐々に成長している。一実施形態では、各層が置かれた後、印刷領域102は、少なくとも1つのプリントヘッド106と印刷面122との間の固定距離を維持するためにZ方向に少し低くシフトする。別の代替実施形態では、各層が置かれた後、プリントヘッドホルダー104はZ方向に少し高くシフトして、少なくとも1つのプリントヘッド106と印刷面122との間の固定距離を維持する。一例では、プリントヘッド106と印刷面122との間の固定距離は、0.5mm~5mmの任意の値であり得る。別の代替実施形態では、各層が置かれた後、印刷領域102はZ方向に少し低く移動し、プリントヘッドホルダー104はZ方向に少し高く移動して、少なくとも1つのプリントヘッド106と印刷面122との間の固定距離を維持する。簡単にするために、以下の説明では、印刷トレイが静止している間にプリントヘッド106が動いていると仮定する。しかし、代替の実施形態では、印刷トレイは、プリントヘッド106の下を動くように構成されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、プリントヘッドホルダー104は、単一のプリントヘッド106または複数のプリントヘッド106を支持してもよい。「プリントヘッド」という用語は、直線アレイまたはプレートに編成され、概して一つとしてまとめて製造される複数のノズルを指す。プリントヘッド106が付加製造装置100に接続されると、複数のノズルは、インクリザーバ110からインクを分配して物件を層ごとに形成するように構成される。少なくとも1つのプリントヘッド106は、第1のモデル材料を分配するための第1のノズル群と、第1のモデル材料とは異なる第2のモデル材料を分配するための第2のノズル群を含む複数のノズルを含んでもよい。一実施形態では、プリントヘッドは、複数のノズルのセットを含めて管理する能力によって特徴付けられる。ただし、モデル又は支持体に関係なく、各プリントヘッドには1種類のインクが供給される。本明細書で使用する「物件(物)」という用語は、モデルと支持構造の組み合わせを説明するために使用される。一実施形態では、第1の材料を使用してモデルを印刷し、第2の材料を使用して支持体を印刷することができる。この実施形態の典型的なケースは、所望の物体が2つの異なる材料からなる場合である。別の実施形態では、第1の材料は所望の物体を生成するために使用される物体材料であり、第2の材料は印刷中に一時的に使用される支持材料であり、例えば物体の「ネガティブ」傾斜壁を支持する。通常、プリントヘッド106は、新しい層124の長手方向軸Yに実質的に垂直なX方向に新しい層124を走査することができる。各物体は数千の印刷層から構成されるので、通常数千のサイクルが必要である。各サイクルが複数のプリントヘッド106からの複数の印刷を含む場合、サイクル数は数千から数百またはそれ以下に減らすことができる。また、付加製造装置100は、同じ運転で複数の物体を生成する場合がある。一実施形態では、異なるノズルサイズを有する異なる印刷材料に対して異なるプリントヘッド106を使用することができる。例えば、第1のプリントヘッドを使用して物体材料を分配することができ、第2のプリントヘッドを使用して支持材料を分配することができる。別の例として、第1のプリントヘッドは第1のサイズのノズルを有し、第2のプリントヘッドは、第1のサイズとは異なる第2のサイズのノズルを有してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、付加製造装置100は、プリントヘッド106をインクリザーバ110と相互接続する少なくとも1つの導管108を含むことができる。用語「導管」は、一般に、液体または気体の輸送のための通路を有する本体を指す。少なくとも1つの導管108は、プリントヘッド106とインクリザーバ110との間の相対運動を可能にするために可撓性であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの導管108は、インクリザーバ110をプリントヘッド106に相互接続して、プリントヘッド106にインクを供給する供給導管と、プリントヘッド106から排出されなかったインクの少なくとも一部をインクリザーバ110に循環させるために、プリントヘッド106をインクリザーバ110と相互接続する戻り導管(図示せず)と、を含み得る。用語「インクリザーバ」は、プリントヘッド106に運ばれるまでにインクを貯蔵するように構成された任意の構造を含む。いくつかの実施形態では、インクリザーバ110は、1つ以上のタンクと、超音波または衝撃波をインクに送ってインク中の固体粒子の凝集を防止するか、インク中に凝集物が既に存在する場合、凝集物を破壊するように構成された超音波ベースの要素と、を含み得る。加えて、付加製造装置100は、コントローラ120によって作動し、少なくとも1つの導管108に沿って配置されて、少なくとも1つのプリントヘッド106、少なくとも1つの導管108、および/またはインクリザーバ110内の圧力を制御する複数の弁(図示せず)を含んでもよい。同様のインクシステムのより詳細な説明は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/921,279号に記載されている。
【0039】
単一のインクを分配する単一のプリントヘッド、および特定のインクのための複数のプリントヘッドを使用するのが典型的であるが、異なるインクを分配するマルチノズルアレイインクジェットヘッドを使用することも可能である。ここで、それぞれのインクは、別々のノズルアレイに存在する。
【0040】
[インクジェット印刷添加剤に使用される第3のプリントヘッド]
種々の実施形態において、最終物体の特性、例えば、印刷物の色や機械的特性などを改善するために、1つ以上の添加材料をインクに加えて、印刷または焼結ステップなどの最終製品の処理を支援するか、別個のヘッドから印刷してもよい。一実施形態では、添加剤単独または適切な溶媒に溶解した添加剤の分配専用の少なくとも1つの別個のヘッドがある。本明細書で使用する場合、このヘッドは、2つの別個のプリントヘッドを使用して印刷されたモデルまたは支持体以外の材料を堆積するために使用され、「第3のプリントヘッド」または「添加剤ヘッド」と呼ばれる。添加剤の種類の詳細については、以下で説明する。添加剤は別のヘッドで印刷されるため、添加剤と適合しない可能性のあるターゲットインクに添加剤が溶解する問題はない。さらに、添加剤ヘッドを使用すると、物体の異なるゾーンに異なる量の添加剤を分配することができる。
【0041】
プリンターの加熱源
いくつかの実施形態によれば、図1に示されるように、開示された付加製造装置100は、エネルギー源、例えばエネルギー源112を含み得る。「エネルギー源」という用語は、付加製造装置100によって印刷される物体にエネルギーを供給するように構成される任意のデバイスを含む。例えば、新しい層124への放射または熱の形でエネルギーを供給して、分散剤材料および他の有機添加剤を蒸発させ、任意で物体粒子間の少なくとも部分的な焼結を開始することができる。一例では、エネルギー源112は、新しい層124に沿って線を照射または走査するように構成されたランプまたはレーザーなどの小さなスポットサイズのエネルギー源を含んで、新しく形成された層124にインサイチュ脱バインダーまたは焼結、あるいは少なくとも部分焼結を引き起こす。別の例では、エネルギー源112は、部分的または完全なインサイチュ脱バインダーまたは焼結を開始するために、新たに形成された層124の領域を覆うように構成されたフラッシュランプを含み得る。本開示のこの態様によれば、エネルギー源112は、支持インクの焼結を回避するために、モデルインクのみを選択的に焼結するように構成されてもよい。そのような選択性は、支持インクよりもモデルインクにより多く吸収される波長で新しい層124を照射することにより、および/または照射波長へのエネルギー吸収を増加させる顔料をモデルインクに加えることにより達成できる。
【0042】
第1の実施形態では、エネルギー源112を印刷領域102に組み込んで、温かいトレイを形成することができる。印刷物が下から加熱されている場合、熱は絶えず新しい層124まで流れ、材料の熱流抵抗のために、(Z軸に沿って)物体の底部が高温となり、物体の上面が低温となる温度勾配が構築される。暖かいトレイの温度は、上層の温度を一定に保つために、印刷中の物体の仮の高さに応じて、制御される。このような手順の欠点は、下層を高温に加熱すると、分散剤やその他の添加剤に見られるような有機分子が悪影響を受け、有機物が炭素やその他の残留物に分解する可能性があることである。別の欠点は、下層に残っている残留液体が蒸発し、高いガス圧を引き起こし、材料の砕けまたは割れを引き起こす可能性があることである。一般的に、乾燥後に層の温度差を作ることは、層の熱膨張が異なるために亀裂が生じる可能性があることから、薦めない。
【0043】
図1に示される第2の実施形態では、放射エネルギー源112は、印刷される物体の上方に配置されてもよい。エネルギー源112による直接加熱は、新しい層124の一定温度を保証することができる。エネルギー源112は、プリントヘッド106の脇に配置することができ、熱放射、例えば電磁放射を生成することができる。仮の最終層の下の多孔質体は液体キャリアの一部を吸収するため、最終層の乾燥を層ごとに行うことは困難になる。したがって、熱源の強度は、最終層の中間の高さZの関数として増加する必要がある。あるいは、熱源は、物体の高さの関数として、XまたはY方向に沿ってゆっくりと移動する必要がある。
【0044】
第3の実施形態では、エネルギー源112は、新しい層124にある角度で熱風の流れを吹き付けるように構成された開口を含むことができる。熱風の使用は、新しい層124の温度を上げるだけでなく、最後の層の上の蒸発したキャリア液体の分圧を下げて、新しい層124から液体キャリア(および場合によっては分散剤および他の有機材料)の蒸発を助ける。さらに、第1、第2および第3の実施形態のいずれかの組み合わせを使用して、加熱および/または蒸発性能を最大化することができる。
【0045】
冷却装置
上述のように、新しい層124の加温は、付加製造プロセスの一部であり得る。しかし、いくつかの実施形態では、印刷物の残りの部分は、新しい層124と同じ温度に維持されるべきではない。したがって、付加製造装置100は、最近印刷された層に蓄えられた熱を周囲の空気に放散するための冷却ファン114を含むことができる。最近印刷された層を冷却する理由の1つは、インク滴がキャリア液の沸点よりも(例えば、30℃)高い温度の表面に到達すると、表面に付着するのではなく爆発する可能性がある(例えば、水滴が120℃の表面に到達するとき)。したがって、対象物の残りの部分は、新しい層124の温度と同じ温度に維持する必要はなく、一定の均一な温度に維持するだけでよい。例えば、以前に印刷された層が、冷却ファン114を使って比較的低い温度に維持される場合(例えば、約230℃)、新しい層124は、キャリア液体の沸騰温度よりも高い温度に温められてもよい(例えば、新しい層124は約500℃に温められる)。
【0046】
熱シールド
いくつかの実施形態では、付加製造装置100は、シールド116などの熱バッファも含むことができる。本開示の文脈では、熱シールドは、ノズルアレイを部分的に覆い、ノズルから印刷領域への印刷を容易にする開口を有するプレートを指す。印刷物は、室温(例えば、約25℃)と比較して比較的高温(例えば、約230℃)であるため、プリントヘッド106は、印刷領域から発生する熱や煙から保護されるべきである。一実施形態では、シールド116は、印刷中の物体の温度と比較して比較的低い温度(例えば、10~50℃)に維持され、プリントヘッド106と印刷物との間に熱障壁を提供する。
【0047】
レベリング装置
異なるノズルの異なる噴射力を含むプロセス条件の変動により、新しい層124は完全に平坦ではない場合がある。液体の表面張力の結果、層の端が完全に鋭くない場合がある。したがって、付加製造装置100は、新しい層124を平らにし、および/または新しい層124の1つ以上の縁を研ぐためのレベリング装置118を含むこともある。一実施形態において、レベリング装置118は、垂直または水平研削ローラーまたは切断ローラーを含むことができる。別の実施形態では、レベリング装置118は、レベリングのダスト出力を吸引するダストポンプおよびダストフィルタ126を含むことができる。印刷プロセス中、レベリング装置118は、層が分配され固化されている間に新しい層124上で動作し得る。一例では、レベリング装置118は、上層の高さの材料の約5%~20%を剥離する場合がある。いくつかの実施形態において、レベリング装置118は、キャリア液体が蒸発し、新しい層124が少なくとも部分的に乾燥して固体になった後に、インクと接触する。
【0048】
制御および処理装置
説明した付加製造装置100は、デジタルモデルから任意の物体を生成することができる。そうするために、付加製造装置100は、異なる印刷構成要素の動作を制御するためのコントローラ120などの処理デバイスを含むことができる。いくつかの実施形態によれば、コントローラ120は、付加製造装置100の動作方法を決定するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み得る。少なくとも1つのプロセッサは、入力に対して論理演算を実行する電気回路を有する任意の物理デバイスを構成し得る。例えば、少なくとも1つのプロセッサには、1つ以上の集積回路、マイクロチップ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)のすべてまたは一部、グラフィック処理装置(GPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または命令の実行や論理演算の実行に適したその他の回路を含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサによって実行される命令は、例えば、コントローラ120と統合された、またはコントローラ120に埋め込まれたメモリに事前ロードされてもよく、または別個のメモリに格納されてもよい。メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ハードディスク、光ディスク、磁気媒体、フラッシュメモリ、その他の永久メモリ、固定メモリ、揮発性メモリ、または命令を保存できるその他のメカニズムを含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、メモリは、視覚コードに関連付けられた製品を表す情報を格納するように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラ120は複数のプロセッサを含むことができる。各プロセッサは、同様の構造を持っていてもよく、互いに電気的に接続または切断される異なる構造を持っていてもよい。例えば、複数のプロセッサは、別個の回路であっても、単一の回路に統合されていてもよい。複数のプロセッサを使用する場合、プロセッサは独立して、または協調して動作するように構成することができる。複数のプロセッサは、電気的、磁気的、光学的、音響的、機械的、または相互作用を可能にする他の手段によって結合されてもよい。
【0050】
印刷センサ
説明した付加製造装置100は、印刷プロセスが計画通りに進行することを確認するために、1つ以上のセンサを含むことができる。例えば、付加製造装置100は、イメージセンサ128などのイメージャも含むことができる。「イメージャ」または「イメージセンサ」という用語は、近赤外、赤外、可視、紫外スペクトルの光信号を検出し、電気信号に変換できる装置を指す。電気信号は、検出された信号に基づいて画像またはビデオストリーム(即ち、画像データ)を形成するために使用できる。「画像データ」という用語には、近赤外、赤外、可視、および紫外スペクトルの光信号から取得された任意の形式のデータが含まれる。画像センサの例には、半導体電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、またはN型金属酸化膜半導体(NMOS、ライブMOS)のアクティブピクセルセンサが含まれる。場合によっては、画像センサ128は、印刷領域102を取り込むように構成されたカメラの一部であってもよい。
【0051】
以下は、焼結温度、モデルと支持構造の間の収縮、およびモデルと支持構造の間の相互汚染を調整するための組成物および方法を含め、本発明者らが最終印刷モデルを改善するために発見した組成物および方法について説明する。
【0052】
[インク組成物]
図1(100)に示された付加製造装置は、複数のタイプのインクを印刷するように構成できる。「インク」という用語は、印刷面122上に所望のパターンで堆積することを意図した任意の流体を含む。したがって、「インク」という用語には、モデル、支持、または存在する場合は第3のプリントヘッドからの添加剤の印刷用の材料が含まれる。これらの異なるインクは、「モデル材料」、「支持材料」、「付加製造材料」、「印刷材料」、および「印刷液」とも呼ばれる場合がある。これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0053】
所与の部品に複数のモデルインクを印刷することは、ジェット印刷対選択的レーザー焼結印刷の独特で非常に重要な属性である。この組み合わせは、ピクセルスケールでの細かいミックス(ここで、実際には材料の均一なミックスが得られる)として行われるか、異なる材料を含むパーツの異なる領域を作成することにより巨視的なスケールで行われる。複合材料印刷では、プリンターは複数のIDS(インク供給システム)と複数のヘッドを備え、噴射される材料ごとに少なくとも1つのヘッドがある。この手法は、参照により組み込まれる文献[PCT_Friedman_3D Particle Printing_4619/20_Chapter 17]に説明されている。本開示と一致して、適切なインクのいくつかの例は、以下の属性を含み得る。
【0054】
粒子サイズ、材料および形状
本明細書に記載されるインクは、金属(例えば、鉄、ステンレス鋼、銅、銀、金、チタンなど)、セラミック材料、金属酸化物、酸化物(例えば、SiO、TiO、ZrO、BiO)、金属炭酸塩、金属炭化物、炭化物(例えば、WC、Al、TiC)、金属合金(例えば、ステンレス鋼、チタン、Ti64)、窒化物、無機塩、ポリマー粒子、キャリア液体中のそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない任意の所望の材料の固体粒子の分散液を含み得る。一実施形態では、固体粒子は、シリコン、アルミニウム、チタン、イットリウム、コバルト、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、ジルコニア、それらの組み合わせまたは合金から選択される金属および半金属を含む。
【0055】
様々な実施形態では、粒子は、印刷中に必要な空間解像度を維持するか、(焼結後に)必要な材料特性を維持するか、または分配ヘッドの制限を満たすために、ミクロンサイズ(約0.5μmから約50μm)またはナノサイズ(約5から約500nm)である、例えば、分配用プリントヘッドに直径30μmのノズルが含まれる場合、粒子サイズは2μm以下であることが望ましい。本開示の文脈において、「モデル材料」または「モデルインク」という用語は、一般に、モデルを構築するために使用される固体材料または粒子を指し、一方、「支持材料」または「支持インク」は、概して、通常一時的にモデルに取り付けられる支持構造体を構築するために使用される材料または固体粒子を指す。
【0056】
粒子サイズは、高い印刷解像度に重要である。一般に、粒子サイズは印刷イメージマップのピクセルサイズの約1/4を超えてはならないが、ある程度の(約10粒子の)凝集が予想されるため、粒子サイズは1/10ピクセルサイズを超えないことが望まれる。例えば、ピクセルサイズが15ミクロンの場合、粒子を1.5ミクロンより小さくする必要がある。この比率は、他のピクセルサイズおよび粒子サイズと一致する必要がある。
【0057】
一実施形態では、モデル内の固体粒子は通常、連続的なマルチモーダル粒子サイズ分布を有する。しかし、特別な場合には、二峰性分布など、分布は離散的である。一実施形態では、支持材料中の固体粒子は、単峰性の粒度分布を有する。このような分布は、多峰性と比較して、配管とヘッドでの流れが良くなり(ヘッドの目詰まりが減少する)、高温で焼結する傾向が減少する程度の利点しか持たない。本明細書に記載される粒子サイズは、標準測定技術を使用して決定される平均粒子直径である。例えば、一実施形態では、平均粒子サイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた乾燥モデル粉末の検査により決定される。平均粒子直径は、ランダムに選択された粒子の直径の平均値であってもよく、ここで粒子直径は、固定方向で測定されたフェレ直径である。
【0058】
印刷速度を上げるための粒子サイズの調整
一実施形態では、本発明者らは、モデル領域と支持領域の両方をカバーする高速印刷ボリューム、続いてモデル領域にのみバインダー中の小さなナノ粒子の印刷を特徴とするインクをインクジェットすることを達成するために、大きくて安価な粒子(1-5μm)の使用を試みた。図2に示すように、より小さなナノサイズのインクが噴射される(図2B)大きなミクロンサイズの粉末の組み合わせ(図2A)を使用すると、より速く、より費用効果的に印刷できることを見出した。この実施形態では、大きくて安価な1~5μmの粒子を使用することにより、モデルと支持領域の両方を高速印刷し、続いてモデル領域にのみバインダー中の小さなナノ粒子を噴射することができる。
【0059】
図2Aを参照すると、第1のステップが、例えば、より大きなノズル、空気、流体または電気スプレーを有するインクジェットプリントヘッドを介して、またはワイヤロッドコーティングによって、または別の方法によって、1~5μmサイズの粉末の分散液をスプレー/散布することを含むプロセスが記載される。図2Bに示されるように、この段階では、トレイは粉末の分散液でコーティングされ、次に分散液が蒸発される。分散液が蒸発した後、ナノサイズの粉末は、図2Cに示すように、モデルにインクジェット印刷される。これに続いて、バインダーを使用した熱硬化、またはインサイチュであり得る部分焼結プロセスによる、図2Dに示した硬化ステップが続く。堆積ステップは、図2Eおよび図2Fに示されるように、所望の厚さおよびプロファイルを得るために必要な回数だけ繰り返される。
【0060】
一実施形態によれば、1~5μmのサイズの粉末を有する粉末の分散液、大きな粒子サイズの分散液は、小さなナノ粒子インクと同じ材料を含んでもよい。少数の非限定的な例として、大小の粒子は、316などのステンレス、シリカ、合金、ジルコニア、その他の金属またはセラミック材料であり得る。この実施形態によれば、脱バインダーステップまたは事前焼結ステップ中に、小さな粒子がネッキングを生成する傾向があるため、モデル領域に緑または茶色の領域が作成されて、何らかの硬化または他の機械的特性を提供する。その結果、モデル領域は自立型であるが、大きな粒子のみの支持領域はより分離可能な構造のままである。別の実施形態によれば、大きなサイズの粒子と小さなサイズの粒子は異なる材料のものであってもよい。1つの非限定的な例は、大きなサイズのジルコニア粒子分散液と、ステンレスまたは銅ナノ粒子である。別の非限定的な例によれば、大きなサイズの粒子はWCであってもよく、小さなサイズの粒子はステンレスまたは銅であってもよい。
【0061】
支持インク
本明細書に記載の支持材料は、完成品の一体部分として残り、多成分材料を形成してもよい。あるいは、物体が印刷されると、典型的には焼結などの熱処理を含む印刷後プロセスの前に、支持材料が除去される。あるいは、支持インクで印刷された支持構造は、印刷後のプロセス中に印刷された物体に残る場合がある。これらの場合、支持インクの支持構造は、焼結プロセス後に除去できるように十分に柔らかくおよび/または脆いままでなければならない。最終物体の金属組成は、初期インクの金属組成と同様または近いが、一部の実施形態では、印刷プロセス中の材料の一部の損失により、開始組成とは異なる場合がある。
【0062】
支持材料の詳細な説明は、WO2015056232A1(特許出願第PCT/IB2014/065402号)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される実施形態による支持インクは、例えば本明細書に記載されるキャリアビヒクル、分散剤および添加剤に分散される固体粒子を含む化学物質を含む。
【0063】
支持インク用の固体粒子
一実施形態では、支持材料は、1つまたは複数の種類の材料および/または粒子サイズの粒子を含む。例えば、一実施形態では、1つまたは複数の種類の粒子を一緒に混合することができる。粒子サイズは直径で示されるが、特に示されていません。説明したように、粒子の直径は、ナノメートルスケールから、例えば(約10nmから500nm未満、例えば400nm、300nm)、サブミクロン(約0.5μmから約1μm)まで、ミクロン(50μm以下)までであり、支持体の一般的な機能を提供する。任意に、固体粒子は、水、塩基性、または酸性水溶液に混和性または少なくとも部分的に可溶性である。
【0064】
様々な実施形態において、支持材料の固体粒子の粒径は、1.0ミクロン以上、少なくとも2.0ミクロン、少なくとも10.0ミクロン、少なくとも20.0ミクロン、または50.0までである。一実施形態では、担体材料の固体粒子の粒径は、1.0ミクロンから5.0ミクロンまでなど、1.0ミクロンから50ミクロンまでの範囲である。加えて、モデルインク中の固体材料の粒子サイズは、0.4ミクロン以下、0.3ミクロン以下、0.2ミクロン以下、0.1ミクロン以下、10nmなど、0.5ミクロン以下である。一実施形態では、モデル粒子の粒径は10nmから0.5ミクロンの範囲である。
【0065】
様々な実施形態において、固体粒子は、1つ以上の金属またはセラミック材料、酸化物、炭化物、窒化物、または炭酸塩を含む。固体粒子として使用できるこのような酸化物および炭酸塩の非限定的な例には、酸化ケイ素(シリカ-SiO)、酸化アルミニウム(Al-アルミナ)、酸化チタン(TiO-チタニア)、酸化イットリウム(Y-イットリア)、酸化コバルトが含まれる(CoO)、酸化銅(CuO)、酸化鉄(Fe)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO-ジルコニア)、炭酸鉄(FeCO)、および有機または無機塩が含まれる。
【0066】
一実施形態では、支持材料はFeCO粒子を含む。FeCOは、500~700℃の温度で酸化鉄とCOに熱分解する脆い材料である。鉄を含むモデルインクの支持構造を提供するために、FeCO粉末を溶液中に分散させて、インクジェットプリントヘッドから基板上に堆積できる噴射可能なインクを形成できる。FeCO粒子は、市販の分散剤を使用してキャリア液に分散できる。FeCOの使用に関連する他の利点は、酸化鉄への化学分解中にサイズが小さくなることである。酸化鉄は簡単に除去できるだけでなく、モデル内の酸化鉄汚染物質は焼結中に金属鉄に変換される。その結果、汚染の影響を受けない機械的特性を備えたモデル片を製造できる。
【0067】
塩支持体
別の実施形態では、支持体は、支持粒子の焼結を妨げる他の材料または粒子、例えばシリカまたは有機塩または無機塩と混合された同じモデル粒子を含む。この支持材料の利点は、モデルを不注意に汚染する残留支持材料の一部が同じモデル材料を含むことである。塩に基づく支持材料には、塩ごとの水の溶解力が高いため、水で簡単に洗浄できるという事実など、多くの利点がある。実際、支持体の除去が焼結前に行われた場合(緑または茶色の段階)、部品は多孔質であるため、水はモデル材料全体(外表面だけでなく)を流れ、部品のバルク内部の汚染塩を洗い流す。したがって、汚染が防止される。一実施形態では、未焼結段階の支持体の除去を促進するために、有機塩よりも無機塩の方が好ましい場合がある。なぜなら、有機塩は高温で損なわれる可能性があるからである。
【0068】
別の実施形態では、支持体は塩のみを含む。モデル材料の追加が必要な場合、該追加は印刷中に印刷マップに基づいて行われる。その場合、混合は、モデルと支持ピクセルをインターレースすることにより、均一に行われるか、または支持マトリックスにモデルピクセル群の島を印刷することにより、非均一に行われる。この技術は、支持材料の生産を簡素化するだけでなく、印刷される各モデル材料に対して個々の支持体を製造する必要性も排除する。この手法のもう1つの利点は、印刷部品からの距離の関数として比率を制御する可能性を含め、支持体内の塩とモデル素材の比率を柔軟に決定できることである。
【0069】
塩支持体は、液体中の塩溶液または塩粒子分散物のいずれかとして実施することができる。一実施形態では、塩は、ケイ酸塩ナノ粒子などの粒子と、無機または有機塩粒子またはその溶液の組み合わせであってもよい。
【0070】
一実施形態において、支持インクは不溶性塩粒子を含み、該塩は無機または有機であり得る。これらの無機または有機塩の粒度は、10~800nm、例えば50~600nm、または100~500nmの範囲であってもよい。不溶性の塩粒子とは、水にもインク溶媒混合物にも溶解しないことを意味する(モデルと支持体の両方)。言い換えれば、塩支持インクは、塩が不溶性である第1の溶媒によって特徴付けられる。そのような支持体を除去するために、焼結の前または後のいずれの段階において、塩が溶解する第2の溶媒が使用される。第2の溶媒である塩支持体除去溶媒は、例えば、印刷部品の噴霧、噴射、または水性溶液槽への印刷部品の浸漬などの異なる形態で適用されてもよい。第2の溶媒を含む水溶液溶液槽は、印刷部品での水媒体の流れを増加させるようにように構成された機械要素により、または水媒体への機械的振動またはパルスを生成することにより、支持体の除去を向上することができる。別の態様によれば、印刷部品は、振動トレイ上に配置されて、支持体の除去を向上してもよい。
【0071】
キャリア液
前述の粒子は、「キャリア」または「溶媒」とも呼ばれるキャリア液に分散させることができる。一実施形態によれば、キャリア液は、印刷直後に蒸発して、後続の層が下の固体材料上に分配されるようになる。したがって、印刷中の物体の上層の温度は、キャリア液の沸騰温度に匹敵するはずである。印刷中の熱出力を減らすために、沸点が高すぎないことが望ましい。噴射能力を可能にするために、主にキャリア液の粘度に依存するインクの粘度が高すぎてはならない。また、液体の表面張力は、噴射ヘッドの要件に適合する必要がある。一実施形態において、適切なキャリア液体は、100~250℃の沸点、24℃で3~30の粘度、20~70ミリニュートン/mの表面張力を有する。
【0072】
別の実施形態では、上層の温度は、液体キャリアの沸騰温度よりもはるかに高く、それにより、キャリア液体中の分散剤または様々な添加剤などの他の有機材料の蒸発が促進される。
【0073】
溶解モデル材料
物体を構築するために使用されるマイクロまたはナノサイズの粒子の形態の固体材料の少なくとも一部は、キャリア液に溶解することができる。例えば、銀(Ag)粒子の分散液は、Ag粒子に加えて、キャリア液に溶解したAg有機化合物の一部を含んでいる。印刷後および焼成中に、Ag有機化合物の有機部分が蒸発して、金属銀原子が十分に広がるようになる。溶解銀を含むインクは、Dyesol Inc.(米国)(カリフォルニア州、95617、第5ストリート、#638)から市販のDYAG100導電性銀印刷インクなど、容易に入手できる。
【0074】
分散剤
粒子の分散を維持するために、分散剤は、粒子をキャリア液に分散させることを助ける。分散剤は業界で知られており、多くの場合一種のポリマー分子である。一般に、分散分子は固体粒子の表面に付着し(つまり、粒子を包み込み)、粒子同士の凝集を抑制する。複数主の固体粒子が分散液に分散している場合、異なる分散剤材料間の適合性の問題を回避できるように、すべての固体粒子種に同じ分散剤を使用することが好ましい。分散剤は、安定した分散液を形成できるように、キャリア液に溶解できる必要もある。
【0075】
分散剤はまた、安定性の目的のために液体キャリアと適合しなければならない。例えば、水性インクでは、分散液のpHを変更するなど、表面特性を適切に制御することで安定化を実現できる。安定剤(すなわち、分散剤)は、共有結合または物理吸着によって粒子の表面に結合していることに注意する必要がある。
【0076】
分散剤の追加の役割は、印刷中に理解される。印刷中、噴射および乾燥後、分散剤は粒子同士の接着および結合を助ける。粒子が液体キャリアに分散されている場合、これは分散剤の反対の役割であることに注意されたい。さらに結合が必要な場合、特別な結合添加剤がインク分散液に追加される。
【0077】
本明細書で使用できる分散剤の非限定的な例には、BykChemie社のDisperbyk 180、Disperbyk 190、Disperbyk 163;Lubrizol社のSolsperse 39000、Solsperse 33000、Solsperse 35000;Coatex(Arkema)社のRheosperse3020、3450、3620;BASF社のEfka 770 l、Efka 773l、Efka7732が含まれる。イオン性分散剤には、例えば、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、CTAB(セチルテトラアンモニウムブロミド)、AOT(ジオクチルスルホスクシナート)およびオレイン酸などの脂肪酸が含まれる。Sun Chemicals Ltd.(英国、Sloughの485 Berkshire Av)から市販のSunTronic Jet Silver U6503などの従来の粒子インクが容易に入手可能である。
【0078】
前述の分散剤は、モデル粒子の1~10重量%の範囲の量で見出すことができる。分散剤の正確な量は、薬剤の分散力と混合ツールの品質、および乾燥材料の付着特性にも依存する。これらはすべて、粘度などのインク特性に影響を与える可能性がある。
【0079】
分散剤の除去
分散剤はまた、所望の後処理段階の前または最中に、具体的には予備焼結または焼結などの印刷物の熱処理中に、印刷物から除去できるようなものでなければならない。プリンターの高温環境での印刷中に、分散剤の部分的な除去が行われる場合がある。その場合、部分的な焼結が起こり、分散剤の結合力を置き換える。焼結に関連するさまざまな問題のより詳細な説明を以下に示す。
【0080】
表面改質剤
表面改質剤は、表面張力、耐スクラッチ性、印刷物との界面特性などの特性に影響を与える物質である。例示的な表面改質剤には、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース系ポリマーが含まれる。他の表面改質剤には、ポリブチラール(Butvar製)が含まれる場合がある。以下で詳しく説明するように、表面改質剤は、色や耐摩耗性を追加するなど、完成したモデルに望ましい特性を持たせる。表面改質剤は、モデルからの支持体の分離を促したり、交差汚染を減らすために支持体とモデルの間に障壁を設けるなど、印刷物の処理を改善することもある。
【0081】
支持インク中に存在する場合、表面改質剤は、粘度などの所望のインク特性に応じて、支持インクの約0.1から約5重量%であってもよい。
【0082】
改質剤として使用される添加剤
本明細書で使用される「添加剤」は、インクに添加されて、ターゲット粒子の印刷を支援するか、未加工部分を硬化するか、印刷および焼結プロセス中の有害現象を防ぐ材料を指す。様々な実施形態において、印刷または焼結ステップなどの最終製品の処理、または印刷物の色または機械的特性などの最終物体の特性を支援するために、1つ以上の添加材料をインクに追加することができる。一実施形態では、添加剤のみまたは適切な溶媒に溶解した添加剤を分配するための専用の少なくとも1つの別個のプリントヘッドがある。本明細書で使用される場合、モデルまたは支持体以外の材料を堆積するために使用されるこのヘッドは、「添加剤ヘッド」と呼ばれる。この場合、添加剤と適合しない可能性があるターゲットインクへの該添加剤の溶解問題はない。さらに、添加剤ヘッドを使用すると、物体の異なるゾーンに異なる量の添加剤を分配することができる。
【0083】
モデル表面を着色するために使用される添加剤
様々な実施形態では、所望の色を付与するために、印刷物の表面上に1つ以上の添加材料が堆積されてもよい。例えば、添加剤の追加または過剰使用の恩恵を受ける可能性がある1つのゾーンは、モデルの周辺領域である。添加剤は、周辺でのみ必要な特定の色であり得る。
【0084】
[異なるサイズの粒子で製品を形成するシステム]
一実施形態では、異なるサイズの粒子を含む製品を形成するためのシステムを説明する。このシステムは、製品の少なくとも第1部分を、第1平均粒径を有する第1の材料で付加して印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群を保持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域を備え、ここで第1の平均粒径は、焼結時に最初の構造特性を付与するように選択される。一実施形態では、第1の部分は、印刷製品のコアまたは本質的な部分を含む。例えば、人工歯を印刷する場合、外層とは対照的に、印刷された歯のコアまたは本質的な部分は、歯のコアを構成する。
【0085】
このシステムは、製品の少なくとも第2の部分を、第2の平均粒径を有する第2の材料で付加して印刷するように構成可能な少なくとも第2のプリントヘッド群も備え、ここで第2の平均粒径は、焼結時の第1の構造特性とは異なる第2の構造特性を付与するように選択される。一実施形態では、第2の部分は、印刷製品の周辺部分を含む。例えば、人工歯が印刷されている場合、印刷された歯の周辺部分は、コア構造とは対照的に、歯の外層を構成する。
【0086】
一実施形態において、第1の材料および第2の材料は、異なる平均粒径および異なる焼結温度を有することを除いて、同じ化学構造または結晶構造など、実質的に同じである。別の実施形態において、第1の材料および第2の材料は、互いに異なる化学構造および/または結晶構造を有するなど、実質的に異なるが、実質的に同じ焼結温度を有する。
【0087】
このシステムは、製品の所望の特性を反映する情報を受け取り、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群を調整して、第1の材料および第2の材料を層ごとに不均一に分配し、それにより製品の所望の特性を反映する情報に基づいて、製品の異なる部分に異なる構造特性を付与するように構成される少なくとも1つのプロセッサをさらに備える。一実施形態では、少なくとも1つのプロセッサは、製品の所望の特性を達成するために、第1および第2の材料の配分を決定するように構成される。
【0088】
本明細書で使用する「インターレース(interlace)」とは、製品の異なる部分で分離するのではなく、堆積時に第1の材料と第2の材料が混合して単一構造を形成するように互いに点在することを意味する。単一構造は、第1の材料および第2の材料の重量または体積に関して異なる量を含み得る。例えば、インターレース全体の異なる材料間の比率は、製品の所望の特性に応じて、製品の異なる部分で異なる。一実施形態では、プリントヘッドは、第1および第2の材料をランダムに織り交ぜず、そのような材料を堆積させて特定の効果を達成する。例えば、少なくとも1つのプロセッサは、所望の特性を有する印刷製品を達成するために、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群が、第1および第2の材料を互いにデジタルインターレースさせるように構成してもよい。
【0089】
一実施形態では、本明細書に記載のシステムは、2つの材料のうちの少なくとも1つが他の材料に浸透するように材料を堆積させる。この実施形態では、第1の材料を第2の材料に吸い上げるか、またはその逆により、印刷製品に形成されるストリングのウェブなどの1つまたは複数のストリングが形成される。
【0090】
所望の特性は、各層の第1および第2の材料の量および/または配分を変えることにより達成することができる。例えば、少なくとも1つのプロセッサは、第1層が第2の材料よりも多くの第1の材料を含み、第2層が第1の材料よりも多くの第2の材料を含むように、第1および第2の材料の分布を決定するように構成されてもよい。各層の第1および第2の材料の量および/または分布を変えることにより、物体のコアを含む第1の部分、および物体の周辺を含む少なくとも第2の部分の印刷が可能になる。
【0091】
変更または付与できる製品の典型的な望ましい特性には、熱的、機械的、化学的または物理的特性が含まれる。熱特性の非限定的な例には、焼結温度、熱膨張係数、収縮係数、熱伝導率、および熱拡散率が含まれる。望ましい機械的特性の非限定的な例には、耐摩耗性、脆性、延性、弾性、剛性、靭性、および降伏強度が含まれる。物理的特性の非限定的な例には、密度、硬度、色が含まれる。化学的性質の非限定的な例には、安定性、耐食性、耐酸化性が含まれる。本明細書で使用するとき、化学的「安定性」とは、環境または通常の使用中に材料が特に反応しないことを意味する。例えば、材料は、予想される適用条件下で空気、水、湿気、熱、溶媒などに対して不活性である場合、安定していると見なされる。同様に、予想される使用条件または通常の環境条件で腐食、分解、重合、燃焼、または爆発する可能性がある場合、材料は不安定であると思われる場合がある。第1および第2の材料、ならびにそれぞれの量を交互にすることにより、前述の任意の組み合わせを印刷製品に付与することができる。
【0092】
前述のように、製品の所望の特性は、様々な化学的または機械的特性、特に製品または製品の特定部分だけの収縮係数を含み得る。一実施形態では、焼結温度および収縮係数の少なくとも一方を調整することなどにより、印刷されたモデル部品と印刷された支持体との間の寸法収縮を低減または排除することが望ましい場合がある。一実施形態では、印刷されたモデルと印刷された支持体との間の寸法収縮の差は、10%未満、または5%未満など、15%未満である。
【0093】
一実施形態では、支持インクまたはモデルインクのうちの少なくとも1つは、印刷されたモデル部分を、支持材料より低い温度で焼結させる化学組成、粒径、粒径分布、またはそれらの組み合わせを有する固体粒子を含む。例えば、一実施形態では、印刷されたモデル部品は、支持構造の温度より少なくとも100℃低い温度、例えば、支持構造の温度より少なくとも150℃低い温度、さらには少なくとも200℃低い温度で焼結する。
【0094】
支持体インクおよびモデルインク中の固体粒子の粒径、粒径分布、またはそれらの組み合わせを変更して、印刷されたモデルが支持材料の温度よりも低い温度で焼結できるようにしてもよい。例えば、支持インク中の固体材料の粒径は、モデルインク中の固体材料の粒径よりも大きい。一実施形態において、支持インク中の固体材料の粒径は1.0ミクロン以上であり、モデルインク中の固体材料の粒径は0.5ミクロン以下である。一実施形態では、支持インクは、単一モードの粒度分布を有する固体粒子を含み、モデルインクは、マルチモードの粒度分布を有する固体粒子を含む。同様に、支持インクは、第2のインクの固体粒子の充填密度よりも低い充填密度を有する固体粒子を含んでもよい。
【0095】
前述のように、本開示に従って使用できるインクには、シリコン、アルミニウム、チタン、イットリウム、コバルト、銅、鉄、亜鉛、マグネシウム、ジルコニア、それらの組み合わせまたは合金などの金属又は半金属の酸化物または炭酸塩の1つ以上の固体粒子を含む支持構造をインクジェット印刷するための1つ以上の支持インクと、モデル部品をインクジェット印刷するためのモデルインクと、が含まれる。ここで、支持インクまたはモデルインクの少なくとも一方が、印刷されたモデルと印刷された支持体との間の寸法収縮の差を低減または排除する特性を示す。一実施形態では、支持インクの酸化物または炭酸塩の1つ以上の固体粒子は、SiO、Al、TiO、Y、CoO、CuO、ZnO、MgO、ZrO、FeCOおよびそれらの組み合わせを含む。
【0096】
一実施形態において、モデルインクは、鉄、銅、銀、金、およびチタンから選択される金属、SiO、TiO、BiOから選択される金属酸化物、WC、Al、TiCから選択される金属炭化物、ステンレス鋼およびチタンベースの複合材料から選択される金属の合金から作られた固体粒子を含む。
【0097】
一実施形態では、支持インクまたはモデルインクの少なくとも1つは、分散剤、レオロジー剤、バインダー、またはそれらの組み合わせから選択される添加剤をさらに含む。ここで、添加剤は、インクに含まれた固体粒子間の間隙を制御するのに十分な量で含まれる。
【0098】
一実施形態では、説明されたシステムのプリントヘッド領域は、第3のプリントヘッド群を保持するように構成される。この第3のプリントヘッド群は、第1および第2の印刷物を一時的に支持するための取り外し可能な支持材料を付加して印刷するように構成可能である。上記のように、1つまたは複数の添加剤材料は、印刷または焼結ステップなどの最終製品の処理を支援するためにインクに追加されるか、印刷物の色や機械的特性などの最終物体の特性を改善するために別のヘッドから印刷される。
【0099】
[開示されたシステムを使用して異なるサイズの粒子で製品を形成する方法]
本明細書には、記載されたシステムを使用してインクジェット印刷により製品を製造する方法も開示されている。例えば、本明細書に記載のインクジェット印刷によって物体を作製する方法は、粒子を含む物体材料を噴射して、第1の焼結温度を有する製品構造を形成することを含み得る。製品構造の形成と同時にまたはその前に、方法は、粒子を含む支持材料を噴射して支持構造を形成することをさらに含む。ここで、該支持構造は製品構造を支持するように噴射される。一実施形態では、支持材料は、物体材料の焼結温度よりも高い焼結温度を有する。噴射された物体と噴射された支持体は一緒に未加工部分を構成する。この方法は、未焼結部分を第1の焼結温度以上および第2の焼結温度未満の温度に加熱することにより、噴射支持体を実質的に焼結することなく噴射物体を少なくとも部分的に焼結し、少なくとも部分的に焼結された物体から実質的に未焼結の支持体を取り除くことをさらに含む。
【0100】
本明細書で使用される「実質的に未焼結の」とは、支持粒子間に何らかの付着があっても、該支持粒子がまだ一緒に融合して高密度固体片を形成しない限り、支持粒子が実質的に分離したまままたは容易に分離したままであることを意味する。
【0101】
上述のように、本明細書で、特に開示された方法に使用できる1つ以上の固体粒子は、SiO、Al、TiO、Y、CoO、CuO、ZnO、MgO、ZrO、FeCO、およびそれらの組み合わせを含む。同様に、開示された方法で使用できるモデルインクは、鉄、銅、銀、金、チタンから選択された金属、SiO、TiO、BiOから選択された金属酸化物、WC、Al、TiCから選択された金属炭化物、ステンレス鋼およびチタンベースの複合材料から選択された金属合金から作られた固体粒子を含む。
【0102】
この方法は、印刷モデルの焼結が、支持材料の焼結温度よりも少なくとも100℃低いなど、支持材料の焼結温度より低い温度で印刷モデルを焼結することをさらに含む。
【0103】
一実施形態では、焼結は、単一のステップで、複数のステップで、またはレーザーの使用により実行されてもよい。レーザーを使用して焼結が起こる場合、レーザー焼結は、マイクロ波エネルギー、プラズマエネルギー、または高エネルギーランプを含む外部エネルギー源などによる、レーザーと組み合わせた少なくとも1つの外部エネルギー源をさらに含む。
【0104】
一実施形態では、この方法は、グリーン物体をある温度および時間で熱処理して、理論密度の70~85%の範囲の密度を有する部分焼結モデルを形成することをさらに含む。
【0105】
表面特性を変更するために使用される添加剤
一実施形態では、この方法は、支持体またはモデルに少なくとも1つの添加剤を追加することをさらに含み、添加剤は、支持インクまたはモデルインクで堆積されるか、または別個のプリンターヘッドを使用して堆積される。添加剤は、最終モデルの少なくとも1つの特性を変更するために、別個のプリンターヘッドでモデルの表面に堆積させることができ、前記少なくとも1つの特性は、印刷物の色または機械的特性から選択される。例えば、モデルの表面に堆積された添加剤は、金属またはポリマーを含む少なくとも1つの耐摩耗性層を形成してもよい。金属の非限定的な実施形態は、コバルト、チタン、タングステン、およびその炭化物を含み、ポリマーは、ゾルゲル由来のシリカと、テトラエトキシシラン(TEOS)および3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)のハイブリッド膜を含む。
【0106】
一実施形態において、添加剤は、完成モデルと複合体を形成するポリマーを含んでもよく、印刷中にインクに添加することにより、またはその後の浸透法による毛管作用により、印刷モデル材料に添加される。例えば、ポリマーはポリアニリンアルコール(PAN)を含んでもよく、印刷されたモデルは金属炭化物を含んでもよい。
【0107】
一実施形態では、方法は、支持材料とモデル材料との間に界面層を形成することをさらに含み、該界面層は支持材料とモデル材料の組み合わせを含む。例えば、界面層はFeCOを含む。
【0108】
一実施形態では、この方法は、少なくとも1つの機械的、化学的、または熱処理ステップによってモデル材料から支持構造を除去することをさらに含む。
【0109】
前述のように、添加剤ヘッドアセンブリは、図3に示されたいくつかのヘッドを含むか、いくつかのインクタイプを受け入れて噴射する1つのヘッドを含む。このヘッドアセンブリに必要なインクは、それぞれいくつかのインクタンクと配管に保存されているいくつかのインクタイプを含むことができる。
【0110】
[着色印刷部品を作成するためのシステムおよび方法]
一実施形態では、インクは、構造材料インク、白インク、および着色インクであるバルク材料用のインクを任意に含む必要がある。図4に示すように、インクは、溶媒に溶解した着色剤を含む着色インクを除いて、キャリア液体中の固体粒子の分散液を含む必要がある。一例として、図4Aを参照すると、一実施形態では、バルクのインクは、キャリア液体中のジルコニア分散液を含むことができる。着色インクは、黄色、赤色、および青色の無機顔料と混合されたジルコニアを含んでもよい。図4Aに示すように、インク分散液は、着色剤粒子(顔料)、構造粒子(ジルコニア)と混合した顔料、またはジルコニア粒子に埋め込まれた顔料を含むことができる(図4B参照)。
【0111】
別の例では、バルク材料は鋼を含み、白インクはジルコニアを含み、着色インクは、カラー印刷で使用される4つのCMYKインク:シアン、マゼンタ、イエロー、およびキー(黒)を含む。この実施形態では、CMYK粒子顔料はガラス粒子と混合されてもよく、ガラス粒子は焼結時に光沢のある透明なコーティングを形成する。図5を参照すると、着色インク分散液中の構造粒子のロールは、着色領域対バルク領域の同じ層厚を達成するために必要なインクの適切な固体体積割合を生成するために使用される。この実施形態では、構造粒子はフィラーと考えることができる。
【0112】
一実施形態では、モデル表面に色を追加する方法は以下を含む。
・物体の形状と表面色を含む、必要な物体の3Dデジタル表現の作成または受信。色は表面上の点ごとに異なる場合があり、マンセル表色系(色相、彩度、明度)、CIE XYZ(三刺激値)またはCIELAB(a*、b*、L*)または番号付きコードシステム、または他のカラーシステムで表現できる。
・プリンターで使用可能なインクの色のセットに色を分離する(CMYK減法システムの色、またはスポットカラー、またはその他)。
・物体の表面のカラースポットを構成する色付きピクセルの数と相対比率を計算する。
図5に示すように、物体の表面に近いピクセルにそれぞれの色合いをデジタル的に割り当てる。
・印刷中の素材上の物体の方向を決定し、必要な支持構造をデジタル処理で追加する。
・デジタル物体をスライスする。
・層ごとに物体層(スライス)を印刷し、各ヘッドは各ピクセルに割り当てられたインクタイプに従って噴射する。周囲の着色領域の層の厚さは、層の大部分の厚さと類似している必要があり、場合によっては同一であることに注意されたい。印刷された物体は「未焼結物体」と呼ばれる。そして
・物体の材料が完全に焼結するまで、緑色の物体をオーブンで焼成する。
【0113】
物体を構成するバルク材料が白色でない代替実施形態では、この方法は、着色ピクセルの下の物体の周辺に白色層を追加することを含む。飽和色が必要な場合、または色が物体の表面上のスポットごとに異なる場合、少なくともカラー層の背後の層は白であることが望ましい(図5)。また、着色インク(存在する場合)の構造粒子が透明であることも必須であり得る。
【0114】
一実施形態では、色合いは、焼結中の物体の焼成温度に適合する無機着色剤(顔料)を含む。加えて、着色インクは、着色剤または建材と混合された着色剤を含んでもよい。建築材料は、ジルコニアなどのバルクの建材と同じでも、異なっていてもよい。例えば、バルクがスチールを含む場合、着色インクはガラスを含む。
【0115】
着色外層が、バルクとは異なる材料を含む場合(例えば、バルクが金属であり、着色層がセラミックである場合)、インクを含む粒子のサイズは、両方の材料の焼結温度が、必要な許容範囲内で同じとなるように調整することができる。着色インクがガラス粒子を含み、ガラスが様々な酸化物分子の均一な混合物を含む場合、ガラスそのものの組成は、バルクと同じ焼結温度に調合されてもよい。例えば、シリカ材料に少量の酸化鉛を添加することにより製造されたガラスは、シリカの焼結温度を1600℃から1300℃に下げる。
【0116】
一実施形態では、層全体にわたって均一な層厚を保証するために、印刷用着色インクと構造インクは同じ色のピクセルにある。着色インクに加えて、または着色インクの代わりに、焼結後に透明な光沢のあるインクを堆積させて、製造された物体に光沢を加えることができる。
【0117】
[着色人工部を作成するためのシステムおよび方法]
記載されたプロセスは、例えば、人工歯を製作するために、歯科産業に利益をもたらし得る。一実施形態では、人工歯または人工歯冠の通常の色は、灰色がかった白または茶色がかった白などのくすんだ色である。そのような色に合わせるために、ジルコニア系インクを使用するなど、開示された方法を使用して人工歯または歯冠を印刷することができ、着色インクはジルコニアと混合または埋め込まれた顔料を含む。一実施形態では、開示されたプロセスを使用して製造され、本明細書に記載されるように着色され、図3~5などにグラフで表される人工歯または歯冠が記載される。
【0118】
人工歯を作製するためのシステム
前述を考慮して、人工歯部分などの身体インプラントまたは人工装具を付加して製造するためのシステムも記載される。最も単純な実施形態では、システムは少なくとも1つのプリントヘッド領域と、少なくとも1つのプロセッサと、を含む。プリントヘッド領域は、金属粒子を含む第1のインクから、3次元金属コアを付加して印刷するように構成された第1のプリントヘッド群と、セラミック粒子を含む第2のインクから、前記金属コアを囲むセラミック外側コーティングを付加して印刷するように構成されたプリントヘッドと、を保持するように構成されている。加えて、少なくとも1つのプロセッサは、金属およびセラミックで構成されるカスタマイズされた人工歯部分を印刷するための命令を受信するように構成される。プロセッサは、第1のプリントヘッド群が印刷領域に3次元金属コアを付加して印刷し、同時に第2のプリントヘッド群が印刷領域にセラミック外側コーティングを付加して印刷するように、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群を制御する。
【0119】
一実施形態では、受信された命令は、実際の歯全体を表す3次元データを含み、少なくとも1つのプロセッサは、実際の歯を正確に再現するように構成される。例えば、一実施形態では、プロセッサは、人工歯部分のセラミック外側コーティングが実際の歯全体と同じ寸法を有するように、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群の分配を制御するように構成される。
【0120】
加えて、少なくとも1つのプロセッサは、金属コアの高さがセラミック外側コーティングの高さよりも高くなるように、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群を制御するようにさらに構成できる。
【0121】
さらに、少なくとも1つのプロセッサは、金属コアが、セラミック外側コーティングから突出するねじ付き金属部分を有するように、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群を制御するようにさらに構成され得る。
【0122】
説明されたプロセッサは、本明細書に説明された様々な材料を印刷する際の柔軟性を可能にする。例えば、プロセッサは、同じ層または別個の異なる層に金属とセラミックを印刷するようにプリントヘッドを構成できる。一実施形態では、少なくとも1つのプロセッサは、3次元金属の次の層が堆積される前に、3次元金属コアの層に対応するセラミック外側コーティングの層を印刷するようにさらに構成される。一実施形態では、少なくとも1つのプロセッサはさらに、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群に、金属とセラミックを互いにデジタルインターレースさせるように構成される。
【0123】
人工歯のねじ部を印刷するために使用できる追加のプリントヘッドも記載されている。この実施形態では、少なくとも1つのプリントヘッド領域は、ねじ付き金属部分を製造するための取り外し可能な支持材料を付加して印刷するように構成可能な第3のプリントヘッド群を保持するように構成される。
【0124】
金属が固化した後にセラミック層を印刷する方法も記載されている。この実施形態では、記載されたシステムは、印刷領域に熱を提供して最近堆積したインクを固化するように構成された熱源をさらに備えてもよく、少なくとも1つのプロセッサは、3次元金属コアの層が少なくとも部分的に固化した後に、3次元金属コアの層に対応するセラミック外側コーティングの層を印刷するようにさらに構成される。
【0125】
熱誘導応力問題を回避するために、金属コアおよびセラミック外側コーティング層は、同じまたは実質的に同じ焼結温度を共有する。前述のように、これは、金属およびセラミック材料に異なる粒子サイズを使用するなど、最終製品のさまざまな部分を印刷するために使用されるインクの粒子サイズを操作することによって実現できる。一実施形態では、セラミック粒子の平均粒径は金属粒子の平均粒径より大きく、金属コアとセラミック外側コーティングが焼結温度または収縮係数を実質的に共有できるようにしてもよい。
【0126】
この実施形態で使用されるプロセッサは、人工歯部分の色付けに関する3次元色情報を含む命令を受け取る。さらに、プロセッサは、実際の歯の色分布をシミュレートするために、ピクセルごとに異なる色が堆積されるように、複数のプリントヘッドにセラミック外側コーティングを印刷させるように構成される。一実施形態では、複数のプリントヘッドは、異なる色でセラミックを印刷するように構成され、少なくとも1つのプロセッサは、3次元色情報に従って異なる色でセラミックの堆積を制御するようにさらに構成される。例えば、複数のプリントヘッドは非構造顔料を印刷するように構成され、少なくとも1つのプロセッサはさらに、前述したCMYKインクのように、3次元色情報に従って、セラミック外側コーティング上の非構造顔料の分配を制御するように構成される。
【0127】
一実施形態では、本明細書に記載の複数のプリントヘッドは、機械的または審美的改善を提供する材料を堆積するようにさらに構成されてもよい。例えば、一実施形態では、複数のプリントヘッドは、人工歯の表面にガラスを堆積させることなどにより、焼結後に光沢のある透明コーティングを提供するために堆積するようにさらに構成される。
【0128】
人工歯部分を製造するためのシステムをさらに参照して、実際の歯を表す3次元データを受信するためのインターフェースが説明される。一実施形態では、3次元データは、歯の実際の着色を表す3次元色情報を含む。記載されたシステムは、キャリア液中の第1の色の第1の材料を噴射するように構成された少なくとも第1のプリントヘッド群、キャリア液の第2の色の第2の材料を噴射するように構成された少なくとも第1のプリントヘッド群を支持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域を含む。一実施形態では、システムは、キャリア液中の第3の色の第3の材料を噴射するように構成された少なくとも第3のプリントヘッド群をさらに含む。第1の材料、第2の材料、および第3の材料のうちの少なくとも1つは、付加的な噴射層が人工歯部分を形成することができるように構成される。
【0129】
本明細書に記載のシステムは、3次元色情報を含む3次元データにアクセスするように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに含む。3次元色情報は、歯部の色分布のデジタル表現を生成するために使用され、デジタル表現は、噴射された人工歯部における実際の歯の色分布をデジタル処理でシミュレートするように、少なくとも1つの第1のプリントヘッド群、少なくとも1つの第2のプリントヘッド群、および少なくとも1つの第3のプリントヘッド群を制御する命令を構成する。
【0130】
少なくとも1つのプロセッサはさらに、第1、第2、および第3のプリントヘッド群を制御して、人工歯部分を噴射するように構成されてもよい。この実施形態では、プロセッサは、少なくとも1つの第1のプリントヘッド群、少なくとも1つの第2のプリントヘッド群、および少なくとも1つの第3のプリントヘッド群からの色の混合物が、実際の歯の色分布をシミュレートすることを可能にする。一実施形態では、印刷された人工歯部分は、セラミック外側コーティングとデジタル的に織り交ぜられた金属コアを有する。第1、第2および第3の材料のいずれかまたはすべてが、本明細書に記載のセラミック材料などのセラミックを含むことが理解される。別の実施形態では、第2および第3の材料は、本明細書で前述したように、実質的に非構造顔料を含んでもよい。
【0131】
記載されたシステムを使用して人工歯を作製する方法
人工歯部分を付加して製造する方法も記載されている。一実施形態では、この方法は、金属粒子を有する第1のインクから、3次元金属コアを付加して印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群を提供することを含む。この方法はさらに、セラミック粒子を含む第2のインクから、金属コアを取り囲むセラミック外側コーティングを付加して印刷するように構成された第2のプリントヘッド群を提供することを含む。
【0132】
別の実施形態では、この方法は、金属およびセラミックで構成されるカスタマイズされた人工歯部分を印刷するための命令を受信し、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群を制御して、第1のプリントヘッド群が3次元金属コアを印刷領域に印刷し、同時に第2のプリントヘッド群が印刷領域にセラミックの外側コーティングを追加印刷する。
【0133】
[最終製品の特性を改善するために添加剤を印刷するための第3のプリントヘッド]
上述のように、最終製品の処理を支援するため、例えば最終物体の特性を改善するために、1つ以上の添加材料をインクに添加してもよい。改善できる特性の非限定的な例には、印刷物の色または機械的特性が含まれる。
【0134】
モデル表面への耐摩耗性層の追加
耐摩耗層は、人工歯または整形外科の移植可能およびさまざまな工業用部品の文脈で説明できるが、その使用は例示にすぎず、限定的または排他的ではない。人工歯に加えて、さまざまな印刷製品が耐摩耗層の恩恵を受けられる。一実施形態では、追加のヘッドを使用して、得られる物体の耐摩耗性を高める添加材料を堆積させることができる。本発明者らは、添加剤を印刷されたモデル材料に組み込むことにより、耐摩耗層が実現できることを見出した。非限定的な例には、ステンレス鋼へのWCの追加、ステンレスへのWSまたはC60の追加、またはWC/Coマトリックスの使用が含まれる。一実施形態では、WCまたはWSを第3相としてマトリックスに添加して、得られる製品の摩擦および耐摩耗性を低減することができる。さらに、WSを印刷物に追加して、潤滑性、接着性、破壊靭性、およびひずみエネルギー解放率を向上させることができる。一実施形態では、追加のヘッドは、炭化タングステンを含む分散液に添加されるコバルト粒子の分散液を含む材料を印刷してもよい。
【0135】
別の実施形態では、耐摩耗層は、エポキシ/ゾルゲルの複合体を含んでもよい。これらの材料を堆積させるために、ゾルゲルまたはゾルゲル原料と組み合わせたエポキシが印刷物の表面に印刷される。これらの材料は、溶媒を失うと、100~200℃で硬化する。一実施形態では、これらの材料は、特定の条件下でさらなる加熱にさらされるとセラミックのようになる。理論に拘束されるわけではないが、そのような条件は通常、ほとんどの熱領域でゾルゲルの重量損失をもたらす。例えば、最大約250℃で、ゾルゲルマトリックス上の水分子と化学結合が弱い溶媒の第1の蒸発が起こる。架橋有機基/鎖の追加の分解/熱分解は、約300℃で生じ、650℃まで続きる。500℃を超えると、縮合反応による3D Si-O-Siネットワークの形成が始まる。これで、シリカコーティングが得られる。
【0136】
本明細書に記載されるGLYMO-TEOSの組み合わせは、単独で、または架橋剤(PVP)のようなより硬化させるための添加剤とともに使用することができる。本発明者らは、ポリマーがインクジェット技術により比較的容易に噴射され、環境が所望の最終製品の助けとなるため、開示された方法においてこれらの材料が望ましいことを発見した。一実施形態では、プロセスは、印刷物の高温表面上にこれらのポリマーを噴射することを含み、これにより硬化および硬化が促進される。その結果、密度が高く、透明で、傷に強いコーティングが形成される。
【0137】
これらのポリマータイプの材料を調製するための手順は、ウーら、ポリカーボネート用のゾルゲルコーティングの機械的特性の改善に関する研究、固体薄膜、第516巻、6号、2008年、第1056~1062頁に記載されている。これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0138】
モデルと支持体の間への障壁の追加
別の実施形態では、添加剤ヘッドを使用して、緩衝剤/障壁を形成する添加剤を堆積させて、交差汚染を防止し、および/または支持体除去を改善することができる。この実施形態は、添加剤としてのFeCOの使用に関して以前に説明された。例えば、一実施形態では、FeCOは、鉄ベースの金属合金の3D印刷用の支持材料として使用されてもよい。前述のように、FeCOは500~700℃の温度で酸化鉄とCOに熱分解する脆い材料である。鉄を含むモデルインクの支持構造を提供するために、FeCO粉末を溶液に分散させて、インクジェットプリントヘッドから基板上に堆積できる噴射可能なインクを形成することができる。噴射と乾燥に加えて、3D印刷プロセスには、異なるノズルのビルド速度のばらつきによる高さのばらつきを減らすためのレベリングステップが含まれる。レベリングステップは、多くの場合、ローラーによって実行される。ローラーは、モデルと支持体の間で相互汚染を引き起こす可能性がある。したがって、支持材料は、印刷後の熱処理中に除去可能であるか、支持体の汚染を材料マトリックスに統合できる必要がある。
【0139】
一実施形態では、FeCOは、鉄およびステンレス鋼などの鉄合金の支持材料として使用されてもよい。印刷後、モデルと一緒に支持体を炉に入れて、熱脱バインダーおよびFeCO分解を行う。脱バインダーは主に500℃未満の温度で発生するため、FeCOの分解は、COが印刷された部分を離れるのにすでにある程度の空孔構造が利用できる段階で発生する。残りの酸化鉄は体積が小さく、脆いままである。熱分解後、支持体とモデル部品を室温まで冷却する必要があり、残りの酸化鉄はブラシまたは気流によって機械的に簡単に除去できる。支持体を取り外した後、モデルは焼結炉に運ばれる。
【0140】
上述のように、FeCO支持体の1つの利点は、モデル内の汚染が、酸化鉄に変換された分解段階中にあることである。水素雰囲気またはフォーミングガス(5%H、95%N)での焼結中、酸化鉄は金属鉄に還元される。したがって、汚染はモデル材料の一部に変換される。汚染物質の濃度が低いため、少量の鉄(≦2重量%)を追加しても、モデルの材料、例えばステンレス鋼316、316L、17-4または314の化学量論は大きく変わらない。
【0141】
一実施形態において、記載されたバリア/バッファ層の厚さは、0.1~0.3μmの範囲であり得る。このようにして、物体の表面上の支持材料とモデル材料の混合を防ぐことができる。
【0142】
モデル領域に添加剤を供給することによる複合材料の形成
いくつかの実施形態では、所望の効果に応じて、添加剤をモデル領域に均一または不均一に供給することができる。例えば、印刷段階の後、完全な焼結の前に、例えば未焼結または茶色の部分に、毛管作用によって印刷物の開気孔に別の材料を加えて複合材料を生成することが望ましい場合がある。
【0143】
一実施形態において、ポリアニリンアルコール(PAN)ポリマーは、印刷中(それをインクに加えることにより)またはその後浸透法により毛管作用により、印刷されたモデル材料に加えられる。この特定の方法は、高圧充填を使用し、ポリマー充填のない物体よりも高い強度を持つ複合材料をもたらす。PANは焼結プロセスに参加し、炭化して金属と炭素の複合材料を生成する。PANがWC印刷サンプルに追加された場合、このプロセスを使用して作成された複合材料のタイプの1つの非限定的な例を示す。この場合、PANは炭素をWCに失うことなく炭化するため、得られる複合材料の密度は低くなり、弾性が増加する。
【0144】
一般に、炭素繊維は、有機ポリマーであるPANから作られ、炭素原子によって結合された分子の長い列によって特徴付けられる。繊維は、紡糸、安定化、炭化、最終処理など、いくつかのプロセスステップによって製造される。繊維を炭化する前に、線形原子結合をより熱的に安定なラダー結合に変換するために、化学的に変更する必要がある。これは、空気中の繊維を約200℃で30~120分間加熱することで達成される。これにより、繊維は空気から酸素分子を拾い、原子結合パターンを再配置する。記載されたプロセスでは、印刷は200℃で実行されるため、PANを使用する場合、追加の処理ステップは不要である。
【0145】
[焼結-モデルと支持体間のパラメータの調整]
本開示と一致して、印刷プロセスが完了した後、焼結のために物体をオーブンに入れることができる。いくつかの実施形態では、物体は、完全になるまでオーブン内で所定の温度まで焼成されてもよい。焼結プロセスには、次の焼成ステップが含まれる:すべての有機材料を燃やすための初期加温;コバルトなどの無機添加剤がある場合、それを液化するための追加の加温;および粒子を焼結するための最終加熱。
【0146】
記載された加熱ステップのいくつかは、真空をかけること、圧力をかけること、酸化を防ぐために不活性ガスを加えること、および材料に拡散してそれと反応する他のガス(例えば、本体から酸素を取り除くことを助ける水素)を加えることを含むことができる。
【0147】
粒子の焼結温度は、とりわけ、粒子サイズの関数である。ナノ粒子はより低い温度で融解する傾向があるため、ナノ粒子とマイクロ粒子の混合物は部分焼結を促進する場合がある。これは、支持材料よりも低い温度で焼結するモデルインクを設計する場合に特に重要である。分散剤を除去することにより、モデル粒子間の焼結は、分散剤の粒子による干渉または汚染なしに進められる。さらに、分散剤が除去されると、固化した3D構造を弱くする、印刷物内に分散剤粒子の「島」の形成が防止される。ポリマー分散剤およびその他の不揮発性化合物は、通常、印刷後のプロセスで燃やされるか、焼却される。
【0148】
一実施形態では、本開示は、支持体の前にモデルの焼結を確実にするように粒径および焼結温度が選択されるメカニズムを提供し、焼結後の支持体除去を促進する。モデルと支持材料の間の焼結温度を制御して、焼結モデルから非焼結支持体を簡単に除去できるようにするこのメカニズムは、シリカ支持体で例示される。シリカ支持体は、均一で大きな粒子サイズで構成される。
【0149】
焼結中、焼結粒子は、実質的に付着し、粒子間に位置する空隙を充填し、密度を増加させる。巨視的な結果は、実質的な収縮(例えば、15~60%の体積)である。したがって、1つの材料のみが特定の温度で収縮すると、それは他の材料から離れ、2つの材料が分離し、材料の少なくとも1つが破損する可能性がある。この問題を回避するために、一実施形態では、異なる材料の焼結温度と収縮係数は実質的に同一でなければならない。
【0150】
焼結温度および支持材料
支持材のロールは、(a)モデルの「ネガティブ」壁を支持するため、および(b)モデルの周りに保護エンベロープを加えるため、二重である。一実施形態では、支持材料は、モデルを焼結する前にモデルから除去されない。この実施形態では、複合材料の前述の要件とは対照的に、支持材料はモデル材料とは実質的に異なる(より高い)焼結温度を必要とする。したがって、モデル材料の部分的または完全な焼結は、支持材料の焼結がほとんどまたはまったくない状態で行われ、モデルを破壊することなく、剛性の焼結モデル材料から柔らかいまたは脆いまたは可溶性の支持材料を除去できる。再び、この実施形態は、モデルと比較して十分に高い融点を有する支持材料を選択することにより、または制御された粒子サイズおよび/または粒子サイズ分布により、または異なる材料の制御された形状不規則性により個々のインク組成物の焼結温度を調整することにより、達成することができる。
【0151】
最後の実施形態による支持体の例は、直径約1ミクロンの球状シリカ粒子を含むインクであり、ステンレス鋼インクの支持体として機能する。表1の材料の比較を参照されたい。
【表1】
【0152】
任意の側面から、モデルは、支持体の焼結温度(約1560℃)より十分に低い温度(約1250℃)で焼結することがわかる。上記の表に示すように、粒子の焼結温度は粒子のサイズと化学成分に依存する。粒子サイズが0.1ミクロンより小さいなど、1ミクロンよりもはるかに小さい場合、粒子サイズが小さくなるにつれて焼結温度は実質的に低下する。したがって、2つの異なる溶融温度の2つの材料AとBを同じ温度で焼結する必要がある場合、少なくとも1つの材料(例えば、材料B)の粒子サイズを調整して、両方の焼結温度を同じにすることができる。図6Aは、このアイデアをグラフで示しており、材料の焼結温度対粒子サイズを示している。図6Bは、材料の相対密度対焼結温度をグラフで示している。一実施形態では、モデル材料は、支持材料の焼結温度よりも少なくとも100℃低い温度、例えば支持材料の焼結温度よりも少なくとも150℃低い、少なくとも200℃低い、少なくとも250℃低い、または少なくとも300℃低い温度で焼結する。
【0153】
したがって、同一の焼結温度を得るための1つの実施形態は、少なくとも1つの材料の粒子サイズおよび/または粒子サイズ分布を制御して、他の材料と実質的に同様の焼結温度を得るものである。別の実施形態では、粒子形状を制御する。形状が規則的であるほど(球形など)、焼結温度は高くなる。
【0154】
単一段階焼結
前述のように、代替実施形態の1つでは、本発明者らは、焼結温度の大きな差に基づく印刷物の製造方法を見出した。これにより、モデル材料を焼結するのに十分高いが、支持材料を焼結しない単一の加熱ステップが可能になる。この方法により、基礎となる(または巻き付けた)支持構造から破損することなく削除できるほどの整合性を持つモデルが作成される。この実施形態は、モデルインクと支持インクとの間の焼結温度の差を利用する。
【0155】
二段階焼結
再び図6Bを参照する。図6Bは、粉末材料に関連する複数の焼結段階の相対密度を示すグラフである。この実施形態では、支持材料は、モデル材料がその焼結前段階(粉末粒子が互いに接触してネッキングが始まる点)に達した後に、実質的な収縮が始まる前に除去される。このプロセスは、焼結前に部品から有機成分を除去する必要がある場合にMIM業界で使用される2段階の脱バインダーおよび焼結プロセスに似ている。例示的な2段階焼結プロセスは以下を含む:印刷基板から印刷物を取り除くこと;支持構造の一部が配置された物体を第1のオーブンに入れ、物体が粒子間でネッキングが始まる温度まで加熱すること(事前焼結と呼ばれるこの段階では、物体からバインダーが除去される);物体を冷却し、冷却部分をクリーニングポートに移動して、物体から支持構造を取り除くこと;および第2の焼結段階のために、物体を高温オーブンに入れること(この段階では、物体を加熱して完全に焼結する)。
【0156】
焼結の初期段階で、粉末粒子は互いに結合し、それらの間にネッキングが形成される。この段階では、材料はルースパウダー段階よりもはるかに硬く、脆くないが、収縮はほとんど起こっていない。さらに、低温のため、支持材料は焼結を開始する点に到達しないので、機械的または物理的または化学的手段のいずれかによって支持材料を除去するプロセスは比較的簡単である。予備焼結段階で支持材料を除去すると、部品の機械加工とハンドリングを使用して、支持材料を完全に除去できる。また、焼結段階の前に支持材料を取り除くことにより、ひび割れを防ぐことができる。焼結プロセスの前に支持体が除去されない場合、支持材料も焼結し始め、その除去がより困難になる可能性がある。
【0157】
2段階焼結の場合、室温から第1段階のオーブンの温度までモデル材料と支持材料間の収縮の差を全くまたはほとんど持たせたくないという要望は制限されることをコメントする価値がある。一実施形態では、2段階プロセスを使用することは、長時間の脱バインダープロセスを比較的安価な低温炉で行うことができるため、より経済的であり得る。高価な高温焼結炉は、高速で高温の焼結段階だけのために残す。
【0158】
前述のように、脱バインダー段階中に支持体の焼結がないことを保証する1つの方法は、モデル材料よりも大きいサイズおよびより規則的な形状および「狭い」粒子サイズ分布および高い融点を有する支持材料を使用することである。これは、前述のように、鋼ナノ粒子を含むインクを支持するために1ミクロンの球状シリカ粒子を含む支持材料を使用することで例示される。そのような支持インクは、アルキルシリケートの加水分解およびそれに続くアルコール溶液中のシリカ酸の縮合により、均一なサイズの球状シリカ粒子の制御された成長を可能にする化学反応のシステムによって製造できる。アンモニアは形態学的触媒として使用される。このプロセスで得られる粒子サイズは、直径0.05μm未満から2μmに制御できる。直径の不均一性は10%未満である。
【0159】
例として、サイズが約60nm(多分散)のサイズを有するSiO粒子は、約900℃で焼結する。例えばミクロン範囲のより大きな粒子を使用すると、粒子はモデル部品の焼結温度を大幅に上回る1550℃で焼結する。したがって、ミクロン範囲の粒子を含む支持体は、モデル粒子が焼結して剛性構造を形成することを可能にするが、支持体粒子についてはそうしない。焼結温度の違い、および結果として生じる微細構造により、印刷および焼結されたモデルを、破損することなく支持構造から取り除くことができる。
【0160】
既知の湿式化学技術を使用して、制御された形状;気孔率レベル;および密度、例えば、密度が低下した中空球などの特注の特性を有するミクロンサイズのSiO粒子を製造することができる。粒径を制御するために使用できる制御パラメータの非限定的な例には、Si前駆体の性質;シリカの製造に使用される水/エタノールの比;反応時間および温度;およびpH剤の種類が含まれる。システムを説明するプロセスは、文献[W. Stober, A. Fink, E. Bohn, Controlled growth of monodispersed spheres in the micron size range, J. Colloid and Interface Sci. 26 (1968) 62-69]に記載されている。これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
SiO材料の粒径に対するSi前駆体の性質、水分含有量、およびエタノール比の影響を例示するために、発明者らは、図7に示される三元状態図内のいくつかの変数を試験した。 7.次の反応条件を使用しました:温度20℃、12時間攪拌、pH~11。
【0162】
SiO前駆体材料は、9重量%のSiO含有量を含み、粘度:25℃で12.2cPs、密度1.12g/cc、および表面張力32mN/mを示した。
【0163】
表2は、エタノール/水の比およびシリカ含有量の変化により粒子サイズがどのように変化したかを示す。
【表2】
【0164】
インサイチュ脱バインダーおよび焼結
一実施形態では、脱バインダーおよび焼結中の収縮に関連する問題に対処する方法が開示されている。特に、本発明者らは、未焼結体または茶色体のクラックを除去するとともに、印刷後の脱バインダープロセスを短縮するために、プロセススループットを改善するインサイチュ脱バインダーおよび焼結プロセスを見出した。
【0165】
現在のプロセスでは、各印刷層は、連続層を噴射する前に硬化される。通常、硬化は、金属インクの液体キャリアを蒸発させて未焼結部分を生成することで実現できる。液体キャリアを蒸発させ、噴射された液滴を特定の正確な場所に固定するために、印刷は通常、高温の表面で行われ、追加の加熱を使用して液体キャリアを完全に蒸発させる。余分な加熱は、送風機、ランプ、照明、および吸引で構成されるシステムによって行われる。
【0166】
開示されたプロセスにおいてナノ粒子が使用される場合、ナノ粒子の融点は典型的には約200~400℃の範囲である。したがって、加熱チャックやランプを使用するなどの単純な外部エネルギーによって、基板または前の層で焼結が生じる。しかし、マイクロおよびサブミクロンの粒子サイズが使用される場合、典型的な金属の融点はバルク材料と一致したままであるため、加熱チャックまたはランプを使用した焼結または部分焼結さえも排除する。特に、エネルギー束(Watt/m)は焼結を開始するには不十分である。その結果、サンプルへの低い総エネルギー束を提供するために、短い時間フレームで高いエネルギー束が必要になる。これは、レーザー、マイクロ波、またはフラッシュ光焼結によって実現できる。そのようなシステムは、短時間で高エネルギー束(ワット)を提供できるため、表面温度が適切な焼結レベルまで上昇する。
【0167】
一実施形態では、ミクロンおよびサブミクロンの金属粒子を含む完全に焼結された部品を得るために、脱バインダーおよび焼結手順からなる印刷後プロセスを使用することができる。レーザーラインスキャナーを使用して、インサイチュプロセスを使用して粉末を焼結することもできるが、このプロセスは、スキャン時間による低スループットによって制限される。
【0168】
インサイチュ焼結のこれらの制限を回避するために、印刷プロセス後に褐色または完全に焼結された部品を得るプロセスが本明細書に記載されている。既存のレーザーラインスキャン技術とは異なり、本明細書では、フラッシュライトまたはマイクロ波エネルギーを含むラインスキャンレーザーまたは全面積焼結について説明する。このプロセスでは、支持体にセラミック材料を使用し、モデルに金属粉末を使用するなど、支持体がその材料特性のために焼結しないモデルと支持体を用いる。別の例として、モデル領域でのナノ粒子ドーピングを使用する。
【0169】
図8は、本開示の一実施形態によるモデルおよび支持材料を備えたインサイチュレーザーシステムの概略図である。焼結に使用される外部エネルギーはマイクロ波、サンプル上を転がる帯電ローラーまたは高エネルギーランプからのフラッシュライトによって生成されるプラズマであり得る。
【0170】
開示された方法では、印刷された金属インク層の直接選択的加熱が生じ、それにより、より高いプロセス温度、したがってより短い時間でのより良好な焼結性能が可能になる。提案されるプロセスは次のとおりである:(i)インクと支持体を印刷し;(ii)基板の底部からの熱を使用して、および/またはランプシステムでブロワーを使用して、低エネルギー束の液体キャリアを除去し;(iii)中間範囲のエネルギー束(詳細は以下参照)を備えたレーザースキャナまたは他のエネルギーを使って余分の有機材料を除去し、(iv)最後に、粒子を焼結温度まで短時間加熱する高エネルギーを備えた同じ機器(例:レーザー)を使用する。
【0171】
一実施形態では、脱バインダープロセスは、本明細書に記載および例示されるレーザー、例えば長時間にわたる低強度(最大10mm/秒のプロセス速度)を有するものを用いて行うことができる。脱バインダープロセスの目標は、熱分解によって印刷されたインクの有機成分を除去することである。これには、モデルの表面を300~400℃に加熱する必要がある。短時間で高エネルギーで焼結する場合、酸化を避けるために焼結時間はミリ秒の範囲内である必要がある。焼結中、金属粒子は、表面エネルギーの力によって互いに接続し始める。有機成分の一部を除去した後、部分的に焼結してサンプルの褐色強度を達成する方法が説明されている。これに続いて、炉の焼結を行って、完全な脱バインダーと焼結を達成できる。印刷プロセスでの高速焼結により、酸化を排除できる。ただし、酸化環境がないことを確認するために、窒素、アルゴン、水素などの不活性ガス、またはこれらのガスの一般的な組み合わせをシステムに追加できる。この焼結方法で使用されるレーザーに関して、約10-20KW/cmの強度、10-100umの線幅、および3-300cmの線長を備えた808nm波長を生成するラインアレイレーザーが記載されている。一実施形態では、典型的なパルス持続時間が1~20ミリ秒を有するCWまたはパルスレーザーを使用することができる。
【0172】
上述のように、焼結材料は、その構成粒子間の空隙および空隙の除去に関連する圧密化のために、焼結中に実質的に収縮する。したがって、モデルのみが特定の温度で焼結および収縮する場合、モデルは非収縮支持材料から剥離する。一実施形態では、モデルから支持体を除去する手段としてこの剥離を使用することが可能である。この機能は、支持体がモデル本体の外側にある場合に便利である。対照的に、支持体がモデルによって実質的に囲まれている場合、支持体はモデルが必要に応じて収縮するのを防ぎ、焼結時にモデルが破損する可能性があるため、この機能はオプションではない。
【0173】
言い換えれば、上記の非限定的な様々な例のピクセルごとの異なる材料のデジタル適用に加えて、同じピクセルごとに1つ以上の補完的なデジタル熱処理を提供して、ピクセルの固化、蒸発、ネッキング、脱バインダー、または焼結レベルを制御するなど、必要なローカルまたはバルク特性を達成することができる。この態様によれば、印刷されたピクセルは、緑、茶色、焼結ピクセル、または加熱、脱バインダー、くびれ、部分焼結または完全焼結などの間のどこかになるように処理されてもよい。異なる熱処理が特定の材料に異なる機械的特性を提供する可能性があるため、本発明の態様に従ってピクセルレベルでデジタル熱処理を提供する能力により、モデル構造、支持体構造またはそれらのインターフェース間を横切って異なる機械的特性の分布が可能になる。例えば、モデルピクセルは、モデル領域を茶色の領域として作成するインサイチュ熱処理にさらされる可能性があるが、支持トピクセルは、インサイチュ熱処理にさらされないか、これらの支持を緑領域に変換する熱処理にさらされる可能性がある。あるいは、例えば、いくつかの支持ピクセルをインサイチュ熱処理することにより、それらのピクセルを茶色ピクセルにし、他の支持ピクセルを緑の段階に保ちながらその支持を強化することができる。別の例によれば、支持体とモデルの間の境界層のピクセルは、支持体とモデルの間の分離を容易にするため、または支持体とモデルの間の収縮係数の差に対する感度を下げてクラックを防止するために、(境界層のピクセルを)緑色ピクセルにするインサイチュ熱処理にさらされる場合がある。別の例によれば、一部のモデルピクセルをインサイチュデジタル熱処理にさらして、これらのピクセルを、モデル内のひずみ解放領域として機能する緑のピクセルとして作成するが、他のモデルピクセルは、デジタルインサイチュ熱処理にさらして茶色のピクセルまたは部分的に焼結したピクセルに変換する場合がある。
【0174】
[収縮-モデルと支持体間のパラメータの調整]
処理中のインクの収縮の制御
前述の議論を考慮し、本開示の態様によれば、異なるモデルインクが同じモデルで使用される場合、複合体または多部品物体を形成するために、同様の収縮係数を共有するモデルインクを使用することが有利である。このような収縮係数の類似性は、部品の加熱および焼結の段階に沿った温度範囲内にある必要がある。第1の実質的な収縮は、添加剤が蒸発する脱バインダー中に起こり(真空を残して)、第2の収縮は焼結中に起こる。一実施形態において、収縮は、グリーン状態で支持体を除去することにより、または収縮が3%未満、例えば2%未満、さらには1%未満である脱バインダープロセス後に制御される。
【0175】
脱バインダー中の収縮
一実施形態では、収縮を全く防ぐことにより、脱バインダー段階中の収縮の差を防ぐことができる。これは、プロセス全体を通してオーブン内の真空を維持することで実行できる。部品を取り囲む真空のため、添加剤の損失の後に残る内部真空は、収縮を引き起こす圧力を生成しない。第二の実施形態は、添加剤が物体を離れるとき(例えば、蒸発または崩壊および蒸発により)、親密な接触まで粒子が互いに向かって移動するという提案に基づいており、したがって、添加剤によって事前に占有されていた空の体積が最小化される。ただし、添加剤が占める体積がすべてなくなるわけではない。それは、添加剤がなくても、最も近い構造の粒子間に多くの空き空間があるからである。例えば、均一な半径の球状粒子の場合、最も近い構造の空き空間は全体の体積の30%を超える。粒子のサイズが互いに異なる場合、空き空間はより少なくなり得る。この実施形態において、失われる添加剤(例えば、有機材料)の量は、添加剤が失われている間に両方の材料が同じ量だけ収縮するように適切に制御される。添加剤の主要部分がバインダーの場合、この段階は脱バインダー段階である。
【0176】
焼結中の収縮
バインダーと他の添加剤を脱バインダーする前に、粒子を互いに分離する。脱バインダー後に、粒子は、個々の点で互いに接触するだけである。焼結中、粒子は互いに溶け合い、粒子表面間の空隙が消失し、材料が収縮する。したがって、収縮の量は、焼結前の粒子間の空き空間の量に依存する。
【0177】
一実施形態において、各材料の粒子は、サイズおよび形状が互いに実質的に同一である。この実施形態は、粒子体積に対する空き空間の割合がスケールに不変であるという事実に基づいている。別の実施形態では、スケールが異なり得ることを除いて実質的に同一である両方の材料のサイズおよび形状分布が記載されている。別の実施形態は、小さな粒子を大きな粒子と混合して、両方の材料に同じ相対的な空き空間を持たせることにより、材料の相対的な空き空間を制御することに関する。この実施形態は、小さな粒子が大きな粒子の間の空き空間を埋めるため、空き空間を減少させるという事実に依存している。
【0178】
破損および割れを防止するために、添加剤が失われる温度が異なる材料で実質的に同じであることが重要であり、それにより同一の収縮が同時に起こる。
【0179】
添加剤による収縮の制御
前述のように、同じ温度で2つ以上のモデル材料を焼結することが望ましい実施形態では、材料間の異なる収縮率の問題を回避するために、組成の変更を使用できる。例えば、モデル材料は、焼結中に異なる量で収縮する場合があることが知られている。これは、それぞれの粒子間の空隙が異なる場合があるためである。空隙サイズに影響するパラメータの1つは、粒子に追加および混合される、失われる材料の量である。失われる材料は、粒子の焼結温度よりも低い温度で蒸発または崩壊して蒸発する。失われる材料が蒸発すると、粒子材料は粒子間に大きな隙間を残する。焼結中、粒子は互いに近づき、隙間を閉じて、材料の収縮を引き起こす。したがって、収縮係数は、失われる材料の追加量によって制御される。
【0180】
前述のように、異なる添加剤、すなわち、分散材料、注入改善材料、および結合材料をインク配合物に当然含めることができる。3つの材料のうちの1つ以上は、一般に、焼結前の熱処理期間中に失われる。通常、すべての有機材料が失われる。したがって、粒子間の空隙の量またはサイズは、添加される(添加剤)材料の量を制御することにより制御できる。
【0181】
図9は、分散剤の蒸発前後の粒子材料を示している。図9Aは、低温で分散分子(904)で包まれた粒子(902)を示す。図9Bは、高温(焼結よりは低い)で分散分子を失った後に残る粒子(902)を示し、分散分子は、有機材料を含むことが多い。
【0182】
パッキング密度による収縮率の制御
一実施形態において、収縮量は、粒子の物理的形状を変えることにより修正することもできる。例えば、粒子が球形粒子と比較して立方体である場合、異なる充填率(本明細書では「充填密度」とも呼ばれる)がある。球状粒子の充填限界は約64%である。一実施形態では、特定の粒子分布を選択して複数の粒子を非常に高い充填密度に充填できるようにすると、粒子サイズの広い範囲および混合を使用して充填密度を100%に近い値に高めることができる。
【0183】
印刷された粉末の充填率は、粒子の形状およびサイズ分布に依存する。これは、結晶格子内の分子または原子のパッキングに似ている。単一サイズのルースパウダーの一般的な充填率の範囲は、0.5~0.7である。例えば、結晶格子では、単純な原子立方体のパッキング係数は約0.52;体心立方体(BCC)の場合は0.68;面心立方体(FCC)の場合は0.74である。一方、さまざまなサイズの粉末が存在する場合、小さな粉末は大きな粉末間の空間に収まる。
【0184】
図10Aは、単一サイズの大きな粒子のみに関連するモデル粉末の低い充填密度を示している。対照的に、図10Bは、マルチモード粒子サイズ分布に関連するモデル粉末のより高い充填密度を示している。図10Bにおいて、より小さい粒子は、より大きい粒子間の空隙を埋めることができる。バイモーダル粒度分布に関連するこの効果の結果として、粉末はより高い充填密度を有し、それはより低い充填密度を有する粉末と比較してより少ない収縮を有する印刷モデルをもたらす。一実施形態では、印刷されたモデルは、各軸で最大密度まで10%未満収縮する。本発明者らは、粒子の収縮、充填密度、およびバインダーの除去を制御することにより、低歪み領域を得ることができることを見出した。この議論によれば、粒子は、添加剤材料を含むエンベロープに埋め込まれた固体標的粒子を含み、それは後で脱バインダー工程中に燃え尽きることに留意されたい。
【0185】
本発明者らは、モデル粉末および支持体粉末に異なる粒子サイズ分布を使用すると、モデルおよび支持体領域のそれぞれについてより望ましい収縮プロファイルがもたらされ、モデルと支持体との間の歪み領域が小さくなることを見出した。図10Cに示した一実施形態では、高い充填密度をもたらす多モード粒子サイズ分布を有するモデル粉末、およびより低い充填密度をもたらす単一モード粒子サイズ分布を有する構造粉末が記載されている。高充填密度のモデル材料を、低充填密度の支持材料と組み合わせて使用すると、脱バインダー中の支持体の応力が低くなることが分かった。脱バインダー中、支持材料に関連した低い充填密度により、バインダーが失われると支持材料の自由体積が増加するため、モデルが縮小する間、支持粒子は自由に他の位置に移動できる。例えば、一実施形態では、実質的に同じ粒子サイズを有する支持材料(約0.5の充填密度を達成するため)は、バインダーが除去されると、50%を超える自由体積が得られる。これにより、焼結中にモデルから実質的にすべての応力が解放される。図10D参照。
【0186】
一実施形態では、モデルと3D印刷材料の支持材料との間の収縮率を中和する方法が開示されている。この方法は、焼結中の支持材料とモデル材料との間の収縮率の差による、高応力とひずみに関連するモデル部品の制御されない分離と変形を回避しようとする。図11A~11Fでは、支持材料よりも収縮率が高いモデルインク用の粉末を選択すると、焼結の開始時に歪みが生じ(図11A参照)、焼結中に制御されない分離が生じるが、それにより、得られる印刷物が変形する(図11C参照)。他方、支持材料よりも収縮率が低いモデルインク用の粉末を選択すると、焼結の開始時に再び歪みが生じ(図11B参照)、焼結中に高い圧縮応力が生じるが(図11D参照)、それにより、得られる印刷物が変形する。その結果、一実施形態では、図11Eおよび11Fに示すように、モデルおよび支持材料の収縮率をバランスさせ、可能な限り調和させて、焼結中の応力を最小限に抑えることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0187】
開示されたインク組成物、そのような組成物の製造方法およびそのような組成物の使用方法は、材料の複合体などの3D印刷物体に適用可能であり得る。そのような物体および複合物は、本開示による複数のモデルインクを使用するモデルを支持体上に印刷し、印刷後工程で支持構造体を除去することにより作製することができる。別の方法は、モデル材料が支持材料によって浸透された状態で、またはその逆に、完成した物体に支持構造を保持することを含み得る。
【0188】
図12Aおよび12Bを参照すると、これらは異なる材料で構築された物体の概略図を示している。多くの場合、必要な物体には、コア材料などの物体のさまざまな部分にさまざまな材料が含まれ、さらに多くのコーティング層が含まれる。一実施形態は、第1の物体1200および1201のバルク材料1202には、該第1の物体の外面にコーティング材料1204が積層している。
【0189】
図12Bを参照すると、一実施形態では、バルク材料1202上に複数の層1204および1206が存在する。代替技術では、1つの層が1つの材料によって印刷され、別の層が別の材料によって印刷される。特別な場合は、物体の外表面、または物体と最上層の間のコーティング状材料1206の含浸状である。含浸のようなものは、物体表面からの距離が増加するにつれて、含浸材料とバルク材料の割合が徐々に減少することを含むことができる。このようにして、勾配が変化するにつれて、色、熱、または機械的特性などのさまざまな機能を実現する傾斜機能材料を生成できる。
【0190】
図13Aを参照すると、本開示による材料の混合物で構築された物体が示されている。この実施形態では、物体1300は、物体全体または物体の一部のいずれかの上に2つ以上の材料の混合物を含む。物体1300は、第1の材料(1304)と第2の材料(1306)の混合物を含む。図13Bを参照すると、物体1300のセクションを拡大したとき(1310)、材料の混合は、各ピクセル(1312および1314)が交互の材料1304および1306で構成されることが確認できる。
【0191】
[混合材料を印刷するための方法およびシステム]
層の所与の位置に本開示による材料の混合物で物体を印刷するための1つの技術は、層の特定のピクセルに1つの材料を、他のピクセルの別の材料を分配することにより行うことができる。複数のインクおよびインクヘッドを使用して、物体材料と物体支持体の間で印刷を区別することができる。一実施形態によれば、1つのインクは、物体と支持構造の両方を構築するために使用することができ(層ごとに)、別のインクは物体または支持体の一方のみに属する層部分にのみ分配され、それにより両方の材料の機械的属性に差をもたらすことができる。この差は、完成した物体に改善された所望の特性を付与したり、印刷後の物体から支持体の除去を容易にするために使用したりできる。例えば、WC粒子などの第1のインクを使用して、物体層部分と支持層部分の両方を印刷できる。コバルト材料または粒子などの第2のインクは、層の物体部分にのみ分配できる。印刷が終了し、印刷された複合体がオーブンで焼成された後に、両方の材料間に実質的な差が導入される(WC粒子のみの支持体は焼結されず、物体は焼結されるか、少なくともコバルト中WCの固体マトリックスで形成される)。この差により、物体から支持体を除去できる。
【0192】
[混合材料を印刷するためのシステム]
示されるように、少なくとも2つの異なる材料から複合3次元製品を形成するための付加製造システムが記載されている。一実施形態では、システムは、第1の物体材料の層を付加して印刷するように構成可能な第1のプリントノズル群と、第2の物体材料の層を付加して印刷するように構成可能な第2のノズル群と、を保持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域を備える。一実施形態では、第1の物体材料は金属であり、第2の物体材料はセラミックである。
【0193】
上述のシステムは、複合3次元製品を印刷するための命令を受信し、命令に従って第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群を制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに含み得る。例えば、一実施形態において、第1のプリントヘッド群および第2のプリントヘッド群は、複数の添加剤層から製品を連続的に形成するように制御されて、第1のノズル群および第2のノズル群は、ピクセル単位で、共通層内に第1の物体材料と第2の物体材料をそれぞれ堆積し、その後、後続の層内に第1の物体材料と第2の物体材料をそれぞれ堆積する。一実施形態では、後続の層は、第1の物体材料ピクセルの上にある第2の物体材料ピクセルおよび第2の物体材料ピクセルの上にある第1の物体材料ピクセルのうちの少なくとも1つを含む。
【0194】
一実施形態では、コントローラは、第1の物体材料と第2の物体材料とをインターフェースさせるように構成される。
【0195】
一実施形態では、コントローラは、第1の物体材料内に第2の物体材料材料の少なくとも一部をカプセル化するように構成される。
【0196】
一実施形態では、第1のノズル群は、第1のインク組成物から第1の物体材料の層を付加して印刷するように構成可能であり、第2のノズル群は、第2のインク組成物から第2の物体材料の層を付加して印刷するように構成可能である。一実施形態では、第1のインク組成物および第2のインク組成物は、液体形態で一緒に噴射され、組み合わされた場合に第1のインクと第2のインクとの間に実質的に相分離や拡散がないように選択される分散剤を含む。
【0197】
一実施形態では、製品は未加工部分であり、未加工部分は、体積で2%~20%、例えば4%~15%、または5%~10%の範囲の量のバインダーを含む。
【0198】
一実施形態では、未加工部分は、体積で50%~70%、例えば体積で55~65%の範囲の量の固体粒子を含む。
【0199】
一実施形態では、未加工部分は、2%~20%、例えば5%~10%の範囲の多孔度を有する。
【0200】
別の実施形態では(図14のフロー図参照)、完成品の不可欠な部分のままである支持体を使用することにより、複合材料を作製することができる。この実施形態では、支持体は、多孔質モデルに浸透して複合材料を生成することができる。支持体を除去する必要がないため、この方法は、単一の焼結ステップを使用して作成できる材料を可能にし、それにより、処理を簡素化し、複合材料を作成するコストを削減する。さらに、得られた焼結複合材料は、改善された物理的および化学的特性を示すことができる。
【0201】
[混合材料の印刷による複合体の形成方法]
図14を参照すると、例示的なプロセス1400は、支持体1408として金属酸化物上にモデル1406を形成する印刷ステップ1405で始まる。次のステップ1410は、金属酸化物から酸素が取り除かれ、金属に還元するように500~800℃の範囲の温度に印刷物を加熱することを含む。金属酸化物の分解により、モデルは別の金属に囲まれる。高温での加熱を続けると1415、モデルおよび支持粒子1412が寸法の変化なしに焼結し始める。その結果、茶色の部分1414が形成される。最後に、高温1420で、支持金属が溶融して多孔質モデルに浸透し、それによりモデル材料と支持金属の複合体1425が形成される。
【0202】
一実施形態では、炭化タングステン(WC)で作られたモデルと酸化コバルト(CoO)で作られた支持体とを含む複合体が開示されている。この実施形態は、CoOが以下の方法で500℃を超えると酸化物を失うという事実を利用する:Co→CoO→Co。さらに、WCは、粒子形状(鋭い縁)のために、幾何学的形状を変化させることなく900℃を超える焼結を開始することが知られている。言い換えると、WCは円形ではないため、ナノメートルの10分の1より大きい粒子は900℃で硬化を開始する。これは、粒子の鋭いエッジが近い粒子の表面に接続し、粒子間を物理的に接続するためである。
【0203】
温度が1400℃に達すると、コバルトがWCの固有の多孔性に浸透して複合材料を生成する。
【0204】
1段階焼結プロセスに加えて、この方法は、支持材料の使用(支持材料を廃棄することとは対照的に)を含む多くの他の有益な特性を有する。このプロセスでは、モデルと支持材料の多くの組み合わせを使用することもでき、支持体とモデル材料の間の汚染もない。例えば、金属酸化物または炭酸第一鉄から支持インクを調製することは非常に簡単であることがわかっている。
【0205】
一実施形態では、WCを含むモデル材料および炭酸第一鉄を含む支持材料が開示されている。炭酸第一鉄は、800℃で状態を酸化第一鉄に変化させ、900℃を超えると酸化物を失うことが知られている。さらに1500℃で熱処理すると、鉄がWCに浸透する。
【0206】
WCを含むモデル材料は、酸化銅および酸化コバルトを含む金属酸化物などの様々な支持材料とともに使用することができる。更なる支持体オプションは、Fe酸化物やCo酸化物などの共晶酸化物材料から選択できる。高温(>500℃など)では、酸化物が分解する。温度がさらに上昇すると、浸透が発生する。
【0207】
[同時に印刷および着色するための付加的な印刷システム]
前述のように、開示されたシステムは、所望の色を有する製品を与えるために着色された外部コーティングを印刷することによりさらに修正することができる複合体などの3次元部品の印刷を可能にする。この実施形態では、着色構造粒子を使用して製品を同時に印刷および着色するための付加印刷システムについてさらに説明する。
【0208】
[製品を同時に印刷および着色するためのシステム]
前述の説明は、この実施形態および以下の説明に関連している。一実施形態では、第1の色の第1の着色構造材料を付加して印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群と、第1の色とは異なる第2の色の第2の着色構造材料を付加して印刷するように構成可能な第2のプリントヘッド群と、を保持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域を含むシステムについて説明する。
【0209】
一実施形態では、本明細書に記載のシステムは、製品の所望の構造特性および色特性を反映する情報を受信するように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに備える。製品の所望の構造特性と色特性を反映する情報に基づいて、第1のプリントヘッド群と第2のプリントヘッド群を調整して、製品が付加して形成されると、シミュレートされた所望の色特性に制御された割合で着色粒子が混合される。
【0210】
本明細書に記載のシステムは、第1の色および第2の色とは異なる少なくとも第3の色の少なくとも第3の着色構造材料を付加して印刷するように構成可能な少なくとも第3のプリントヘッド群をさらに備えてもよい。一実施形態では、第1の着色構造材料、第2の着色構造材料、および第3の着色構造材料は、焼結後にシミュレートされた所望の色特性が生じるように焼結可能である。
【0211】
一実施形態では、少なくとも第3のグループのプリントヘッドは、少なくとも第3の着色構造材料を付加して印刷するように構成可能であり、複数のサブグループを含み、各サブグループは異なる着色構造材料を付加して印刷するように構成可能である。
【0212】
本明細書で前述したように、第1の着色構造材料、第2の着色構造材料、および少なくとも第3の着色構造材料は、セラミック粒子を含むことができる。例えば、セラミック粒子は、Al、TiO、Y、CoO、CuO、ZnO、MgO、ZrO、およびFeCOの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0213】
一実施形態では、第1の着色構造材料、第2の着色構造材料、および少なくとも第3の着色構造材料は、本明細書で前述したものを含む。例えば、第1、第2および第3の着色構造材料は、鉄、銅、銀、金、チタン、SiO、TiO、BiO、WC、Al、TiC、ステンレス鋼、およびチタンベースの複合材料から選択される少なくとも1つの金属、金属酸化物、炭化物、および金属合金などの金属粒子を含んでもよい。
【0214】
一実施形態では、第1の着色構造材料、第2の着色構造材料、および少なくとも第3の着色構造材料は、本明細書で前述したような合成構造粒子を含む。例えば、合成構造粒子は、ポリアニリンアルコール(PAN)ポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸セルロース選択されるセルロースポリマー、およびポリブチラールから選択されるコポリマーを含んでもよい。共重合体は、ゾルゲル誘導シリカ、テトラエトキシシラン(TEOS)および3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含んでもよい。
【0215】
所望の表面色を有する物体を形成するための付加製造システムであって、内側コア部と外表面部を有する3次元物体を印刷するように構成可能な第1のプリントヘッド群;コアの着色とは異なる着色を有する色コーティングを外表面部に堆積するように構成可能な第2のプリントヘッド群を保持するように構成された少なくとも1つのプリントヘッド領域を含む。第2のプリントヘッド群は、複数の異なる色を堆積するように構成される。
【0216】
この付加製造システムは、物体の所望の形状および物体の表面にわたって変化する色の濃淡を伴う所望の表面着色を含む物体の3Dデジタル表現を受信し、所望の表面の着色を分析して、所望の表面着色における色の濃淡を特定するように構成された少なくとも1つのプロセッサをさらに備えてもよい。
【0217】
プロセッサは、第1のプリントヘッド群を制御して3次元物体を付加形成し、3次元物体の付加形成中に、物体の表面にわたって変化する色の混合物を堆積する第2のプリントヘッド群を制御して、物体の表面にわたって所望の可変表面着色に対応する色の濃淡をシミュレートするようにさらに構成することができる。
【0218】
一実施形態では、少なくとも1つのプロセッサは、ピクセルごとに所望の着色を分析し、第2のプリントヘッド群に様々な色を付着させてピクセルごとに所望の着色をシミュレートするように構成される。例えば、第2のプリントヘッド群は、CMYK[シアン、マゼンタ、黄色、およびキー(黒)]の色合いに分離された複数のプリントヘッドを使用して、色付きセラミック材料を印刷するように構成してもよい。
【0219】
一実施形態では、第1のプリントヘッド群は、金属からコアを印刷するように構成された金属サブグループと、金属コアに隣接した外表面をセラミック材料から印刷するように構成されたセラミックサブグループと、を含む。例えば、金属サブグループは、ステンレス鋼、およびチタン、Ti64の少なくとも1つを含み、セラミックサブグループは、SiO、TiO、ZrO、BiOの少なくとも1つを印刷するように構成されている。
【0220】
一実施形態では、プリントヘッドの第2のグループは、ガラス材料などの焼結後に光沢のある透明コーティングを提供するための材料を堆積するように構成可能である。この実施形態では、プリントヘッドの第1のグループは、内側コアを印刷するように構成された第1のサブグループと、外面部分を印刷するように構成された第2のサブグループとを含む。アディティブマニュファクチャリングシステムを使用して人工歯を印刷する場合、プリントヘッドの第1グループには、人工歯の内核を印刷するように構成された第1サブグループと、人工歯の外面部分を印刷するように構成された第2サブグループが含まれる。
【0221】
本開示の範囲から逸脱することなく、インクジェット印刷技術を使用して開示されたインクおよびチタン部品を形成する方法に様々な修正および変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。代替の実装は、本明細書に開示された仕様および実施を考慮することにより、当業者には明らかであろう。詳細な説明及び実施例は例示に過ぎない。
【符号の説明】
【0222】
100 付加製造装置
102 印刷領域
106 プリントヘッド
110 インクリザーバ
120 コントローラ
122 印刷面
図1
図2A-F】
図3
図4A-C】
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9A-B】
図10A-B】
図10C-D】
図11A-F】
図12A-B】
図13A-B】
図14