(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A41D 31/04 20190101AFI20231016BHJP
D04B 21/10 20060101ALI20231016BHJP
D04B 21/18 20060101ALI20231016BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20231016BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20231016BHJP
【FI】
A41D31/04 F
D04B21/10
D04B21/18
A41D31/00 502C
A41D31/18
(21)【出願番号】P 2020059395
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】592117623
【氏名又は名称】ウラベ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神川 健夫
(72)【発明者】
【氏名】藤内 寿志
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116700(JP,A)
【文献】特開2018-188769(JP,A)
【文献】特開平07-070893(JP,A)
【文献】特開2007-084970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/04
D04B 21/10
D04B 21/18
A41D 31/00
A41D 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンカーループ面および該シンカーループ面とは反対側のニードルループ面を有する伸縮性経編地から一部または全部が形成された衣類であって、
前記伸縮性経編地は、
非弾性糸で構成され、相対向する1対のハーフセット編みからなり、透孔部を有するメッシュ組織と、
非弾性糸で構成され、フルセット編みからなり、前記メッシュ組織の前記透孔部を亘るように設けられたシンカーループを有する非弾性糸編成組織
(但し、パイル組織であるものを除く)と、
弾性糸で構成された弾性糸編成組織とを備え、
前記伸縮性経編地の前記シンカーループ面が肌側に位置して
おり、
前記非弾性糸編成組織の前記シンカーループは、前記伸縮性経編地における全てのコースにおいて1針間以上亘るように設けられている、衣類。
【請求項2】
前記非弾性糸編成組織が前記メッシュ組織よりシンカーループ面側に位置している、請求項
1に記載の衣類。
【請求項3】
前記非弾性糸編成組織は、前記メッシュ組織よりニードルループ面側に位置し、かつ、前記弾性糸編成組織よりシンカーループ面側に位置している、請求項
1に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
メッシュ経編地を用いた衣類を開示した先行文献として、特開2013-155463号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載されたメッシュ経編地を用いた衣類は、相対向する1対のハーフセット編みからなる非弾性糸編成組織と、相対向する1対のハーフセット編みからなる弾性糸編成組織とを必須の編成組織とし、かつ、メッシュ組織を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性糸編成組織とメッシュ組織とを備えることにより、伸縮性および通気性を有する衣類は、肌に密着するように着用された際に、肌噛み現象が生じることがある。肌噛み現象とは、着用時に衣類の着用者の肌に密着していたメッシュ組織の透孔部が、着用者の動作によって高伸長状態から低伸長状態に戻る際に、透孔部内に入り込んでいた肌が締め付けられることにより、着用者に痛みまたは違和感などの不快感を生じさせる現象である。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、肌噛み現象の発生が抑制された、伸縮性および通気性を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に基づく衣類は、シンカーループ面およびシンカーループ面とは反対側のニードルループ面を有する伸縮性経編地から一部または全部が形成された衣類である。伸縮性経編地は、メッシュ組織と、非弾性糸編成組織と、弾性糸編成組織とを備える。メッシュ組織は、非弾性糸で構成されている。メッシュ組織は、相対向する1対のハーフセット編みからなり、透孔部を有する。非弾性糸編成組織は、非弾性糸で構成されている。非弾性糸編成組織は、フルセット編みからなり、メッシュ組織の透孔部を亘るように設けられたシンカーループを有する。弾性糸編成組織は、弾性糸で構成されている。衣類においては、伸縮性経編地のシンカーループ面が肌側に位置している。
【0007】
本発明の一形態においては、非弾性糸編成組織のシンカーループは、伸縮性経編地における全てのコースにおいて1針間以上亘るように設けられている。
【0008】
本発明の一形態においては、非弾性糸編成組織がメッシュ組織よりシンカーループ面側に位置している。
【0009】
本発明の一形態においては、非弾性糸編成組織は、メッシュ組織よりニードルループ面側に位置し、かつ、弾性糸編成組織よりシンカーループ面側に位置している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、伸縮性および通気性を有する衣類の肌噛み現象の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地を編成する筬の各々の基本動作を示す編成組織図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地の編成組織図である。
【
図3】
図2のメッシュ組織および非弾性糸編成組織のみを示しつつメッシュ組織の透孔部を示す図である。
【
図4】比較例1に係る伸縮性経編地を編成する筬の各々の基本動作を示す編成組織図である。
【
図5】比較例1に係る伸縮性経編地の編成組織図である。
【
図6】
図5のメッシュ組織のみを示しつつメッシュ組織の透孔部を示す図である。
【
図7】比較例2に係る伸縮性経編地を編成する筬の各々の基本動作を示す編成組織図である。
【
図8】比較例2に係る伸縮性経編地の編成組織図である。
【
図9】実施例および比較例1,2に係る伸縮性経編地の通気性を示すグラフである。
【
図10】実施例に係る伸縮性経編地のシンカーループ面を上側にして3D撮影した画像である。
【
図11】比較例1に係る伸縮性経編地のシンカーループ面を上側にして3D撮影した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る衣類について図を参照して説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地を編成する筬の各々の基本動作を示す編成組織図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地の編成組織図である。
【0014】
本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地を編成する編成装置としては、たとえば、カールマイヤー社製のRSE6ELラッシェル機を用いることができる。ただし、編成装置は、カールマイヤー社製のRSE6ELに限られず、編成装置が備える制御機構および筬振り機構の各々の構成は、特に制限されない。給糸量などの編立条件、および、加工条件についても、特に制限されない。
【0015】
図1および
図2に示すように、本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地10は、第1筬、第2筬、第3筬、第4筬、第5筬および第6筬の6枚の筬を用いて編成される。ただし、伸縮性経編地10の編成に用いられる筬の数は、6枚に限られず、6枚以上であってもよい。また、本実施形態では弾性糸編成組織を編成するために3枚の筬を使用しているが、弾性糸編成組織を編成する筬は1枚以上であればよい。
【0016】
伸縮性経編地10は、メッシュ組織11と非弾性糸編成組織12と弾性糸編成組織13とを備える。本実施形態においては、メッシュ組織11は、第1筬にハーフセットで糸通しされた非弾性糸1aと、第2筬にハーフセットで糸通しされた非弾性糸1bとから構成されている。このようなハーフセットで糸通しされた筬による編成を、ハーフセット編みと称する。非弾性糸編成組織12は、第3筬にフルセットで糸通しされた非弾性糸1cで構成されている。このようなフルセットで糸通しされた筬による編成を、フルセット編みと称する。弾性糸編成組織13は、第4筬にハーフセットで糸通しされた弾性糸2aと、第5筬にハーフセットで糸通しされた弾性糸2bと、第6筬にフルセットで糸通しされた弾性糸2cとから構成されている。
【0017】
第1筬の基本動作は、
図1(A)に示すように、21/12/10/12/21/23//の繰り返し単位を有する。第2筬の基本動作は、
図1(B)に示すように、21/12/32/12/21/01//の繰り返し単位を有する。第3筬の基本動作は、
図1(C)に示すように、10/12/10/12/10/12//の繰り返し単位を有する。第4筬の基本動作は、
図1(D)に示すように、01/32/12/32/01/21//の繰り返し単位を有する。第5筬の基本動作は、
図1(E)に示すように、32/01/21/01/32/12//の繰り返し単位を有する。第6筬の基本動作は、
図1(F)に示すように、00/11/00/11/00/11//の繰り返し単位を有する。
【0018】
非弾性糸1aは、材料がナイロン6,6、太さが22dtex/20fの繊維からなる。非弾性糸1bは、材料がナイロン6,6、太さが22dtex/20fの繊維からなる。非弾性糸1cは、材料がナイロン6,6、太さが22dtex/20fの繊維からなる。ただし、非弾性糸1a,1b,1cの材料は、ナイロン6,6に限られず、他のナイロン若しくはポリエステルなどの合成繊維、レーヨン若しくはアセテートなどの再生繊維、または、綿などの天然繊維でもよい。非弾性糸1a,1b,1cは、フィラメント糸に限られず、紡績糸、交撚糸または加工糸などでもよい。非弾性糸1a,1b,1cの太さは、特に制限されない。
【0019】
なお、メッシュ組織11を構成する非弾性糸1a,1bの各々は、互いに異なる材料から形成されていてもよい。また、非弾性糸1a,1bの各々の太さは、互いに異なっていてもよい。
【0020】
弾性糸2aは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。弾性糸2bは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。弾性糸2cは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。ただし、弾性糸2a,2b,2cの材料は、ポリウレタンに限られず、他の弾性繊維でもよい。弾性糸2a,2b,2cの太さは、特に制限されない。
【0021】
図3は、
図2のメッシュ組織および非弾性糸編成組織のみを示しつつメッシュ組織の透孔部を示す図である。
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態1に係る衣類の一部または全部を構成する伸縮性経編地10におけるメッシュ組織11は、非弾性糸1a,1bで構成され、相対向する1対のハーフセット編みからなり、透孔部Tを有する。ここで、相対向するとは、
図1に示すように、コース方向に延びる仮想線Vに対して互いに線対称であるシンカーループSを有する編成組織を意味する。
図1~
図3に示すように、1対のハーフセット編みを相対向する編成組織とし、非弾性糸1a,1bの各々が1ウェール毎に交互に配置されていることにより、メッシュ組織11において透孔部Tが形成されている。
【0022】
1対のハーフセット編みにおいては、非弾性糸1aおよび非弾性糸1bの同一コース上に形成されたニードルループNの巻き方向が互いに同一方向となっている。さらに、非弾性糸1a,1b,1cの同一コース上に形成されたニードルループNの巻き方向が互いに同一方向となっている。ただし、ニードルループNの閉じ目、開き目、および、ニードルループNの巻き方向は、特に制限されない。
【0023】
図1~
図3に示すように、非弾性糸編成組織12は、非弾性糸1cで構成され、フルセット編みからなり、メッシュ組織11において透孔部Tを亘るように設けられたシンカーループSを有する。
【0024】
非弾性糸編成組織12のシンカーループSがメッシュ組織11における透孔部Tを亘るように設けられることにより、伸縮性経編地10のシンカーループ面の平滑性を得ることができる。本実施形態のように、非弾性糸編成組織12のシンカーループSが伸縮性経編地10における全てのコースにおいて1針間以上亘るように設けられることにより、伸縮性経編地10のシンカーループ面の平滑性をさらに高めることができる。なお、シンカーループSの亘り量が大きくなるにしたがって伸縮性経編地10の通気性が低下するため、シンカーループSの亘り量は、2針間以下が好ましく、1針間がより好ましい。
【0025】
図1および
図2に示すように、弾性糸編成組織13は、弾性糸2a,2b,2cで構成されている。
【0026】
伸縮性経編地10は、シンカーループ面およびシンカーループ面とは反対側のニードルループ面を有している。
図2の紙面手前側の面がシンカーループ面であり、
図2の紙面奥側の面がニードルループ面である。
【0027】
本実施形態においては、非弾性糸編成組織12は、メッシュ組織11よりニードルループ面側に位置し、かつ、弾性糸編成組織13よりシンカーループ面側に位置している。ただし、非弾性糸編成組織12がメッシュ組織11よりシンカーループ面側に位置していてもよい。この場合は、非弾性糸編成組織12は、第1筬にフルセットで糸通しされた非弾性糸1cで構成されており、メッシュ組織11は、第2筬にハーフセットで糸通しされた非弾性糸1aと、第3筬にハーフセットで糸通しされた非弾性糸1bとから構成されている。
【0028】
ここで、通気性および平滑性について、本実施形態の実施例に係る伸縮性経編地10と比較例に係る伸縮性経編地とを比較した実験例について説明する。
【0029】
図4は、比較例1に係る伸縮性経編地を編成する筬の各々の基本動作を示す編成組織図である。
図5は、比較例1に係る伸縮性経編地の編成組織図である。比較例1に係る伸縮性経編地は、透孔部Tを有する一般的なメッシュ地の素材である。
【0030】
図4および
図5に示すように、比較例1に係る伸縮性経編地20は、第1筬、第2筬、第3筬、第4筬、第5筬および第6筬の6枚の筬を用いて編成される。伸縮性経編地20は、メッシュ組織21と弾性糸編成組織23とを備える。比較例1においては、メッシュ組織21は、第1筬にハーフセットで糸通しされた非弾性糸21aと、第2筬にハーフセットで糸通しされた非弾性糸21bとから構成されている。弾性糸編成組織23は、第3筬にハーフセットで糸通しされた弾性糸22aと、第4筬にハーフセットで糸通しされた弾性糸22bと、第5筬にフルセットで糸通しされた弾性糸22cと、第6筬にフルセットで糸通しされた弾性糸22dとから構成されている。
【0031】
第1筬の基本動作は、
図4(A)に示すように、21/12/10/12/21/23//の繰り返し単位を有する。第2筬の基本動作は、
図4(B)に示すように、12/21/23/21/12/10//の繰り返し単位を有する。第3筬の基本動作は、
図4(C)に示すように、01/32/12/32/01/21//の繰り返し単位を有する。第4筬の基本動作は、
図4(D)に示すように、32/01/21/01/32/12//の繰り返し単位を有する。第5筬の基本動作は、
図4(E)に示すように、11/00/11/00/11/00//の繰り返し単位を有する。第6筬の基本動作は、
図4(F)に示すように、00/11/00/11/00/11//の繰り返し単位を有する。
【0032】
非弾性糸21aは、材料がナイロン6,6、太さが44dtex/34fの繊維からなる。非弾性糸21bは、材料がナイロン6,6、太さが44dtex/34fの繊維からなる。
【0033】
弾性糸22aは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。弾性糸22bは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。弾性糸22cは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。弾性糸22dは、材料がポリウレタン、太さが50dtexである、ソフトタイプの繊維からなる。
【0034】
図6は、
図5のメッシュ組織のみを示しつつメッシュ組織の透孔部を示す図である。
図4~
図6に示すように、比較例1に係る伸縮性経編地20におけるメッシュ組織21は、非弾性糸21a,21bで構成され、相対向する1対のハーフセット編みからなり、透孔部Tを有する。
図4に示すように、1対のハーフセット編みにおいて、コース方向に延びる仮想線Vに対して互いに線対称であるシンカーループSを有する1対の基本組織が、
図5および
図6に示すように1ウェール毎に交互に配置されていることにより、メッシュ組織21において透孔部Tが形成されている。弾性糸編成組織23は、弾性糸22a,22b,22c,22dで構成されている。
【0035】
伸縮性経編地20は、シンカーループ面およびシンカーループ面とは反対側のニードルループ面を有している。
図5の紙面手前側の面がシンカーループ面であり、
図5の紙面奥側の面がニードルループ面である。
【0036】
図7は、比較例2に係る伸縮性経編地を編成する筬の各々の基本動作を示す編成組織図である。
図8は、比較例2に係る伸縮性経編地の編成組織図である。比較例2に係る伸縮性経編地は、透孔部を有さない一般的なサテン地の素材である。
【0037】
図7および
図8に示すように、比較例2に係る伸縮性経編地30は、第1筬、第2筬および第3筬の3枚の筬を用いて編成される。伸縮性経編地30は、非弾性糸編成組織34と弾性糸編成組織33とを備える。比較例2においては、非弾性糸編成組織34は、第1筬にフルセットで糸通しされた非弾性糸31aで構成されている。弾性糸編成組織33は、第2筬にフルセットで糸通しされた弾性糸32aと、第3筬にフルセットで糸通しされた弾性糸32bとから構成されている。
【0038】
第1筬の基本動作は、
図7(A)に示すように、12/12/12/10/10/10//の繰り返し単位を有する。第2筬の基本動作は、
図7(B)に示すように、22/11/33/11/22/00//の繰り返し単位を有する。第3筬の基本動作は、
図7(C)に示すように、33/22/33/00/11/00//の繰り返し単位を有する。
【0039】
非弾性糸31aは、材料がナイロン6,6、太さが44dtex/34fの繊維からなる。
【0040】
弾性糸32aは、材料がポリウレタン、太さが235dtexである、レギュラータイプの繊維からなる。弾性糸32bは、材料がポリウレタン、太さが44dtexである、レギュラータイプの繊維からなる。
【0041】
図7および
図8に示すように、比較例2に係る伸縮性経編地30における非弾性糸編成組織34は、非弾性糸31aで構成されている。弾性糸編成組織33は、弾性糸32a,32bで構成されている。
【0042】
伸縮性経編地30は、シンカーループ面およびシンカーループ面とは反対側のニードルループ面を有している。
図8の紙面手前側の面がシンカーループ面であり、
図8の紙面奥側の面がニードルループ面である。
【0043】
図9は、実施例および比較例1,2に係る伸縮性経編地の通気性を示すグラフである。
図9においては、縦軸に、伸縮性経編地を通過する空気量(cm
3/cm
2・s)、横軸に、サンプル名を示している。
【0044】
実施例および比較例1,2に係る伸縮性経編地の通気性の評価試験は、JIS L 1096 A法(フラジール法)を用いて行なった。実際の着用状態を想定して、実施例および比較例1,2に係る伸縮性経編地をコース方向およびウェール方向の各々に均等に伸長させ、無伸長状態から面積比150%に伸長させた状態で通気性を測定した。
【0045】
なお、実施例に係る伸縮性経編地10の密度は、123コース/インチ、52ウェール/インチであり、比較例1に係る伸縮性経編地20の密度は、132コース/インチ、47ウェール/インチであり、比較例2に係る伸縮性経編地30の密度は、129コース/インチ、55ウェール/インチである。
【0046】
図9に示すように、実施例に係る伸縮性経編地10を通過する空気量は284.0cm
3/cm
2・sであり、比較例1に係る伸縮性経編地20を通過する空気量は555.8cm
3/cm
2・sであり、比較例2に係る伸縮性経編地30を通過する空気量は181.6cm
3/cm
2・sであった。
【0047】
上記の評価結果から、実施例に係る伸縮性経編地10の通気性は、非弾性糸編成組織12を有さずにメッシュ組織21を有する比較例1に係る伸縮性経編地20よりは低いものの、メッシュ組織を有さない比較例2に係る伸縮性経編地30より高い通気性を有していることが確認できた。
【0048】
次に、実施例および比較例1に係る伸縮性経編地の平滑性をデジタル顕微鏡を用いた3D撮影により評価した。
【0049】
図10は、実施例に係る伸縮性経編地のシンカーループ面を上側にして3D撮影した画像である。
図11は、比較例1に係る伸縮性経編地のシンカーループ面を上側にして3D撮影した画像である。
図10および
図11においては、縦軸に、伸縮性経編地の厚み方向の分布(μm)、横軸に、伸縮性経編地の幅方向の分布(μm)、斜め軸に、伸縮性経編地の奥行き方向の分布(μm)を示している。
【0050】
なお、肌噛み現象は、メッシュ組織の透孔部に肌が挟まれる現象であり、
図10および
図11の各々の画像においては、透孔部である底部から肌との接触部である頂部までの高低差が小さいほど、また、頂部同士の密度が高いほど、肌噛み現象が生じにくい。
【0051】
実際の着用状態を想定して、実施例および比較例1に係る伸縮性経編地をコース方向およびウェール方向の各々に均等に伸長させ、無伸長状態から面積比150%に伸長させた状態で3D撮影した。
【0052】
図10および
図11に示すように、非弾性糸編成組織12を有する実施例に係る伸縮性経編地10は、非弾性糸編成組織12を有さない比較例1に係る伸縮性経編地20に比較して、底部から頂部までの高低差が小さく、頂部同士の密度が高いことから、透孔部の開口面積が小さく平滑性が高いことが確認できた。
【0053】
本発明の実施形態1に係る衣類においては、一部または全部が伸縮性経編地10で形成されているとともに、伸縮性経編地10のシンカーループ面が肌側に位置している。これにより、伸縮性および通気性を有する伸縮性経編地10の平滑性の高いシンカーループ面が肌に接するため、衣類に伸縮性および通気性を付与しつつ肌噛み現象の発生を抑制することができる。
【0054】
なお、伸縮性経編地の編成組織は、透孔部を有するメッシュ組織と、非弾性糸編成組織と、弾性糸編成組織とを有していればよく、
図2に示す編成組織に限定されるものではない。
【0055】
非弾性糸編成組織12がメッシュ組織11よりシンカーループ面側に位置している場合には、非弾性糸編成組織12を肌に密着させることができるため、肌噛み現象の発生をさらに抑制することができる。
【0056】
なお、今回開示した上記実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1a,1b,1c,21a,21b,31a 非弾性糸、2a,2b,2c,22a,22b,22c,22d,32a,32b 弾性糸、10,20,30 伸縮性経編地、11,21 メッシュ組織、12,34 非弾性糸編成組織、13,23,33 弾性糸編成組織、T 透孔部。