(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】位置決めクランプ装置
(51)【国際特許分類】
F16B 1/02 20060101AFI20231016BHJP
F16B 19/02 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F16B1/02 R
F16B1/02 Q
F16B19/02
(21)【出願番号】P 2020104060
(22)【出願日】2020-06-16
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020101905
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591133446
【氏名又は名称】株式会社イマオコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 仁
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218814(JP,A)
【文献】特開2020-11318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 1/02
F16B 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的にスライド可能な第1固定材と第2固定材に対し、第1固定材に配されて、それら第1固定材と第2固定材とを互いに位置決めして固定する、位置決めクランプ装置であって、
前記第1固定材に固定される本体と、軸体と、作用体と、回動操作される操作体と、運動方向変換手段と、第1のバネ部材と、軸体保持手段とを備え、
前記軸体は、その軸体の軸心方向が前記スライドの方向とは直交方向となる向きにあって、前記本体に対し前記軸心方向に移動可能に設けられ、
前記作用体は、前記軸体に連なり、前記本体に対し前記軸心方向に移動可能に設けられて、前記第2固定材に備わる位置決め孔に挿入される先端部を有し、
前記作用体の、前記軸体に対する前記第2固定材側への前記軸心方向の移動を制限するように、前記軸体には、前記第2固定材とは反対側を向く規制面が設けられ、前記作用体には、前記第2固定材側を向いてその規制面に当接する被規制面が設けられ、
前記作用体は、前記軸心方向において、その作用体の先端部が前記位置決め孔から抜け出た第1移動位置と、その作用体の先端部が前記位置決め孔に挿入されてその位置決め孔の内周面に当接する第2移動位置との間を移動可能であって、
前記運動方向変換手段は、互いに係り合って運動方向を変換する第1の運動方向変換部と第2の運動方向変換部とを備え、
前記第1の運動方向変換部は、前記本体に設けられた運動方向変換形成部に設けられ、
前記第2の運動方向変換部は、前記軸体に設けられ、
前記運動方向変換形成部または前記軸体のいずれか一方が、前記本体に対し前記軸体の軸心回り方向に回動可能であり、他方が、回動不能であって、その回動可能な側に、その回動可能な側を回動するように前記操作体が設けられ、
前記第1の運動方向変換部と前記第2の運動方向変換部のうちの一方側が、案内面となって、他方側が、相対的にその案内面に案内される被案内部となり、
前記案内面は、相対的に傾斜が急な第1案内面と、相対的に傾斜が緩やかな第2案内面とを有し、
前記第1のバネ部材は、前記軸体に対し前記作用体を前記第2固定材側に弾性によって付勢するように設けられ、
前記作用体の先端部が前記位置決め孔の内周面に当接するまでは、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力を受けて前記規制面に前記被規制面が当接したまま、相対的に前記被案内部が前記案内面における主に前記第1案内面に案内されることにより、前記作用体が前記第1移動位置と前記第2移動位置との間を移動し、
前記作用体の先端部が前記位置決め孔の内周面に当接した後には、前記作用体が前記第2移動位置のまま、相対的に前記被案内部が主に前記第2案内面に案内されることにより、前記規制面が前記被規制面から離れ、前記作用体が前記第1のバネ部材の弾性による付勢力を受けて前記作用体の先端部が前記位置決め孔の内周面を押圧し、その押圧した状態が、前記軸体保持手段による前記軸体の保持により維持される、位置決めクランプ装置。
【請求項2】
前記案内面は、前記第2案内面側の端部分に、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力によって被案内部が入り込む第2案内面側窪み面を有し、それら第2案内面側窪み面と被案内部とで、前記軸体保持手段が構成される、請求項1に記載の位置決めクランプ装置。
【請求項3】
前記本体に対し前記作用体または前記軸体を前記第2固定材側に弾性によって付勢して前記作用体を前記第1移動位置から前記第2移動位置に移動させる第2のバネ部材を備え、前記第2のバネ部材の弾性による付勢力は、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力よりも小さく設定されている、請求項1または2に記載の位置決めクランプ装置。
【請求項4】
前記作用体を前記第1移動位置側に維持するように、前記軸体を保持する他の軸体保持手段を備える、請求項3に記載の位置決めクランプ装置。
【請求項5】
前記案内面は、前記第1案内面側の端部分に、前記第2のバネ部材の弾性による付勢力によって前記被案内部が入り込む第1案内面側窪み面を有し、それら第1案内面側窪み面と被案内部とで、前記他の軸体保持手段が構成される、請求項4に記載の位置決めクランプ装置。
【請求項6】
前記本体に対し前記軸体または前記作用体を前記第2固定材とは反対側に弾性によって付勢して前記作用体を前記第1移動位置側に維持する第2のバネ部材を備え、前記第2のバネ部材の弾性による付勢力は、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力よりも小さく設定されている、請求項1または2に記載の位置決めクランプ装置。
【請求項7】
前記軸体は、前記本体に対し前記軸心回り方向に回動可能であり、前記運動方向変換形成部は、前記本体と一体となって回動不能であって、回動可能な側である前記軸体にその軸体を回動するように前記操作体が設けられ、
前記第1の運動方向変換部は、前記案内面からなり、前記第2の運動方向変換部は、前記被案内部からなり、
前記案内面は、前記運動方向変換形成部に形成された溝の側面からなり、前記被案内部は、前記軸体に取り付けられたピンの突出部分からなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の位置決めクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相対的にスライド可能な二つの部材を互いに位置決めして固定する、位置決めクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的にスライド可能な二つの部材を互いに位置決めする位置決め装置があった(例えば、非特許文献1参照)。
図22に示すように、この位置決め装置33は、本体33aと、その本体33aに螺合するナット33bと、ノブ33cと、そのノブ33cの上下の動きに連動して上下動する先端部33dとを備えていた。そこで、この位置決め装置33は、相対的に左右にスライド可能となる上側の部材31と下側の部材32のうち、上側の部材31に取付け固定された。そして、先端部33dは、下側の部材32に設けられた位置決め孔32aから抜け出た第1移動位置(図示せず)と、位置決め孔32aに挿入される第2移動位置(
図22参照)との間を移動可能となっていた。そこで、先端部33dが第1移動位置にあると、上側の部材31と下側の部材32とは相対的に左右にスライドすることができ、先端部33dが位置決め孔32aと対向したとき、先端部33dが位置決め孔32aに挿入されて、二つの部材31、32は、互いに位置決めされた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社イマオコーポレーションのカタログ「標準機械部品 標準冶具 2020」,2019年12月,p.1260-1261
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の位置決め装置33にあっては、二つの部材31、32を互いに位置決めすることはできるものの、両者の間に隙間があるとガタツキが生じることから、この位置決め装置だけでは互いをしっかりと固定することはできなかった。このため、固定が必要な場合は、別途固定のための装置を用意し、その装置で、位置決めした場所とは異なる場所を固定する必要があった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、位置決めと固定とを兼ね備えて省スペース化を図ることができる、位置決めクランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る位置決めクランプ装置は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、相対的にスライド可能な第1固定材と第2固定材に対し、第1固定材に配されて、それら第1固定材と第2固定材とを互いに位置決めして固定する、位置決めクランプ装置である。この位置決めクランプ装置は、前記第1固定材に固定される本体と、軸体と、作用体と、回動操作される操作体と、運動方向変換手段と、第1のバネ部材と、軸体保持手段とを備える。ここで、前記軸体は、その軸体の軸心方向が前記スライドの方向とは直交方向となる向きにあって、前記本体に対し前記軸心方向に移動可能に設けられる。前記作用体は、前記軸体に連なり、前記本体に対し前記軸心方向に移動可能に設けられて、前記第2固定材に備わる位置決め孔に挿入される先端部を有する。また、前記作用体の、前記軸体に対する前記第2固定材側への前記軸心方向の移動を制限するように、前記軸体には、前記第2固定材とは反対側を向く規制面が設けられ、前記作用体には、前記第2固定材側を向いてその規制面に当接する被規制面が設けられる。そして、前記作用体は、前記軸心方向において、その作用体の先端部が前記位置決め孔から抜け出た第1移動位置と、その作用体の先端部が前記位置決め孔に挿入されてその位置決め孔の内周面に当接する第2移動位置との間を移動可能である。前記運動方向変換手段は、互いに係り合って運動方向を変換する第1の運動方向変換部と第2の運動方向変換部とを備える。前記第1の運動方向変換部は、前記本体に設けられた運動方向変換形成部に設けられる。前記第2の運動方向変換部は、前記軸体に設けられる。また、前記運動方向変換形成部または前記軸体のいずれか一方が、前記本体に対し前記軸体の軸心回り方向に回動可能であり、他方が、回動不能であって、その回動可能な側に、その回動可能な側を回動するように前記操作体が設けられる。そして、前記第1の運動方向変換部と前記第2の運動方向変換部のうちの一方側が、案内面となって、他方側が、相対的にその案内面に案内される被案内部となり、前記案内面は、相対的に傾斜が急な第1案内面と、相対的に傾斜が緩やかな第2案内面とを有する。前記第1のバネ部材は、前記軸体に対し前記作用体を前記第2固定材側に弾性によって付勢するように設けられる。そこで、前記作用体の先端部が前記位置決め孔の内周面に当接するまでは、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力を受けて前記規制面に前記被規制面が当接したまま、相対的に前記被案内部が前記案内面における主に前記第1案内面に案内されることにより、前記作用体が前記第1移動位置と前記第2移動位置との間を移動する。そして、前記作用体の先端部が前記位置決め孔の内周面に当接した後には、前記作用体が前記第2移動位置のまま、相対的に前記被案内部が主に前記第2案内面に案内されることにより、前記規制面が前記被規制面から離れ、前記作用体が前記第1のバネ部材の弾性による付勢力を受けて前記作用体の先端部が前記位置決め孔の内周面を押圧し、その押圧した状態が、前記軸体保持手段による前記軸体の保持により維持される。
【0007】
この位置決めクランプ装置によると、運動方向変換手段は、第1の運動方向変換部と第2運動方向変換部を備え、第1の運動方向変換部は、本体に設けられた運動方向変換形成部に設けられ、第2の運動方向変換部は、軸体に設けられる。そして、第1の運動方向変換部と第2の運動方向変換部のうちの一方側が、案内面となって、他方側が、その案内面に案内される被案内部となる。ここで、案内面は、相対的に傾斜が急な第1案内面と、相対的に傾斜が緩やかな第2案内面とを有している。そこで、作用体が、作用体の先端部が位置決め孔から抜け出た第1移動位置と、作用体の先端部が位置決め孔に挿入されてその位置決め孔の内周面に当接する第2移動位置との間を移動する際には、相対的に被案内部が案内面における主に傾斜が急な第1案内面に案内されることで、その移動が速やかになされる。そして、作用体の先端部が位置決め孔の内周面に当接した後には、操作体の回動操作によって、作用体が第2移動位置のまま、相対的に被案内部が主に傾斜が緩やかな第2案内面に案内されることで、軸体が第2固定材側に移動して規制面が被規制面から離れ、作用体が第1のバネ部材の弾性による付勢力を受けて、作用体の先端部が位置決め孔の内周面を強く押圧することができる。そして、その押圧した状態が、軸体保持手段により維持される。ここで、第1のバネ部材の弾性による付勢力は、規制面が被規制面から離れるにつれて大きくなり、その付勢力を受けて作用体の先端部で位置決め孔の内周面を的確に押圧することができる。こうして、第1固定材と第2固定材とは、位置決め孔に挿入される作用体の先端部により互いに位置決めされ、さらには、その先端部が位置決め孔の内周面を強く押圧することで互いに固定される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、請求項1に記載の位置決めクランプ装置において、前記案内面は、前記第2案内面側の端部分に、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力によって被案内部が入り込む第2案内面側窪み面を有し、それら第2案内面側窪み面と被案内部とで、前記軸体保持手段が構成される。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、請求項1または2に記載の位置決めクランプ装置において、前記本体に対し前記作用体または前記軸体を前記第2固定材側に弾性によって付勢して前記作用体を前記第1移動位置から前記第2移動位置に移動させる第2のバネ部材を備え、前記第2のバネ部材の弾性による付勢力は、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力よりも小さく設定されている。第2のバネ部材を設けることで、第1固定材と第2固定材とを相対的にスライドして、作用体の先端部と位置決め孔とが向き合うと、作用体が、第2のバネ部材の弾性による付勢力を、直接あるいは軸体を介して受けることで、自動的に、作用体は、第1移動位置から第2移動位置に移動する。つまり、作用体の先端部は、自動的に位置決め孔に挿入されてその内周面に当接する。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、請求項3に記載の位置決めクランプ装置において、前記作用体を前記第1移動位置側に維持するように、前記軸体を保持する他の軸体保持手段を備える。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、請求項4に記載の位置決めクランプ装置において、前記案内面は、前記第1案内面側の端部分に、前記第2のバネ部材の弾性による付勢力によって前記被案内部が入り込む第1案内面側窪み面を有し、それら第1案内面側窪み面と被案内部とで、前記他の軸体保持手段が構成される。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、請求項1または2に記載の位置決めクランプ装置において、前記本体に対し前記軸体または前記作用体を前記第2固定材とは反対側に弾性によって付勢して前記作用体を前記第1移動位置側に維持する第2のバネ部材を備え、前記第2のバネ部材の弾性による付勢力は、前記第1のバネ部材の弾性による付勢力よりも小さく設定されている。第2のバネ部材を設けることで、作用体を第1移動位置側に維持することができる。作用体を第2移動位置に移動させるには、第2のバネ部材の付勢力に抗して、操作体を回動操作する。これにより、相対的に被案内部が主に第1案内面に案内されて、作用体は、第1移動位置から第2移動位置に移動する。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係る位置決めクランプ装置は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の位置決めクランプ装置において、前記軸体は、前記本体に対し前記軸心回り方向に回動可能であり、前記運動方向変換形成部は、前記本体と一体となって回動不能であって、回動可能な側である前記軸体にその軸体を回動するように前記操作体が設けられる。そして、前記第1の運動方向変換部は、前記案内面からなり、前記第2の運動方向変換部は、前記被案内部からなる。さらに、前記案内面は、前記運動方向変換形成部に形成された溝の側面からなり、前記被案内部は、前記軸体に取り付けられたピンの突出部分からなる。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る位置決めクランプ装置によれば、第1固定材と第2固定材とは、位置決め孔に挿入される作用体の先端部により互いに位置決めされ、さらには、その先端部が位置決め孔の内周面を強く押圧することで互いに固定されることから、この位置決めクランプ装置が位置決めと固定とを兼ね備えて省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施の形態の、作用体が第1移動位置にあるときの位置決めクランプ装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は、操作体を取り除いた斜視図である。
【
図2】同じく、(a)は、平面図、(b)は、A-A線による断面図である。
【
図3】同じく、作用体が第2移動位置にあって先端部が位置決め孔の内周面に当接した瞬間の位置決めクランプ装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は、操作体を取り除いた斜視図である。
【
図4】同じく、(a)は、平面図、(b)は、B-B線による断面図である。
【
図5】同じく、作用体が第2移動位置にあって先端部が位置決め孔の内周面を押圧したときの位置決めクランプ装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は、操作体を取り除いた斜視図である。
【
図6】同じく、(a)は、平面図、(b)は、C-C線による断面図である。
【
図8】この発明の変形例であって、溝の展開図である。
【
図9】この発明の他の実施の形態の、作用体が第1移動位置にあるときの位置決めクランプ装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は、操作体を取り除いた斜視図である。
【
図10】同じく、(a)は、平面図、(b)は、D-D線による断面図である。
【
図11】同じく、作用体が第2移動位置にあって先端部が位置決め孔の内周面に当接した瞬間の位置決めクランプ装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は、操作体を取り除いた斜視図である。
【
図12】同じく、(a)は、平面図、(b)は、E-E線による断面図である。
【
図13】同じく、作用体が第2移動位置にあって先端部が位置決め孔の内周面を押圧したときの位置決めクランプ装置を示し、(a)は、斜視図、(b)は、操作体を取り除いた斜視図である。
【
図14】同じく、(a)は、平面図、(b)は、F-F線による断面図である。
【
図16】この発明のさらに他の実施の形態の、位置決めクランプ装置を示す断面図である。
【
図22】従来の位置決め装置の、一部を断面にした正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明に係る位置決めクランプ装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1~
図7は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、第1固定材を示す。2は、第2固定材を示す。3は、位置決めクランプ装置を示し、この位置決めクランプ装置3は、相対的にスライド可能な第1固定材1と第2固定材2に対し、第1固定材1に配されて、それら第1固定材1と第2固定材2とを互いに位置決めして固定する装置である。
【0018】
位置決めクランプ装置3は、第1固定材1に固定される本体4と、軸体5と、作用体6と、回動操作される操作体7と、運動方向変換手段8と、第1のバネ部材9と、軸体保持手段10とを備える。ここで、軸体5は、その軸体5の軸心方向11が前記スライドの方向12とは直交方向となる向きにあって、本体4に対し前記軸心方向11に移動可能に設けられる。作用体6は、軸体5に連なり、本体4に対し前記軸心方向11に移動可能に設けられて、前記第2固定材2に備わる位置決め孔2aに挿入される先端部6aを有する。そして、作用体6の、軸体5に対する第2固定材2側への前記軸心方向11の移動を制限するように、軸体5には、第2固定材2とは反対側を向く規制面5aが設けられ、作用体6には、第2固定材2側を向いてその規制面5aに当接する被規制面6bが設けられる。また、作用体6は、前記軸心方向11において、その作用体6の先端部6aが位置決め孔2aから抜け出た第1移動位置(
図1、
図2参照)と、その作用体6の先端部6aが位置決め孔2aに挿入されてその位置決め孔2aの内周面に当接する第2移動位置(
図3、
図4参照)との間を移動可能となっている。
【0019】
運動方向変換手段8は、互いに係り合って運動方向を変換する第1の運動方向変換部8aと第2の運動方向変換部8bとを備える。ここで、第1の運動方向変換部8aは、本体4に設けられた運動方向変換形成部4aに設けられ、第2の運動方向変換部8bは、軸体5に設けられる。そして、運動方向変換形成部4aまたは軸体5のいずれか一方が、本体4に対し軸体5の軸心回り方向13に回動可能であり、他方が、回動不能であって、その回動可能な側に、その回動可能な側を回動するように前記操作体7が設けられる。また、第1の運動方向変換部8aと第2の運動方向変換部8bのうちの一方側が、案内面8cとなって、他方側が、相対的にその案内面8cに案内される被案内部8dとなる。そこで、案内面8cは、相対的に傾斜が急な第1案内面8eと、相対的に傾斜が緩やかな第2案内面8fとを有する。ここで、傾斜とは、軸体5の軸心回り方向13に対する傾斜を意味する。
【0020】
第1のバネ部材9は、軸体5に対し作用体6を第2固定材2側に弾性によって付勢するように設けられる。そこで、作用体6の先端部6aが位置決め孔2aの内周面に当接するまでは、第1のバネ部材9の弾性による付勢力を受けて前記規制面5aに前記被規制面6bが当接したまま、相対的に被案内部8dが案内面8cにおける主に第1案内面8eに案内されることにより、作用体6が前記第1移動位置と前記第2移動位置との間を移動する。そして、作用体6の先端部6aが位置決め孔2aの内周面に当接した後には、作用体6が第2移動位置のまま、相対的に被案内部8dが主に第2案内面8fに案内されることにより、前記規制面5aが前記被規制面6bから離れ、作用体6が第1のバネ部材9の弾性による付勢力を受けて作用体6の先端部6aが位置決め孔2aの内周面を押圧し、その押圧した状態が、前記軸体保持手段10による軸体5の保持により維持される(
図5、
図6参照)。
【0021】
軸体保持手段10に関しては、案内面8cは、第2案内面8f側の端部分に、第1のバネ部材9の弾性による付勢力によって被案内部8dが入り込む第2案内面側窪み面8gを有し、それら第2案内面側窪み面8gと被案内部8dとで、軸体保持手段10が形成される。
【0022】
また、この位置決めクランプ装置3は、本体4に対し作用体6または軸体5(図示実施の形態においては、作用体6)を第2固定材2側に弾性によって付勢して作用体6を前記第1移動位置から前記第2移動位置に移動させる第2のバネ部材14を備える。この第2のバネ部材14の弾性による付勢力は、第1のバネ部材9の弾性による付勢力よりも小さく設定されている。すなわち、第2のバネ部材14の使用範囲での弾性による付勢力の最大値は、第1のバネ部材9の使用範囲での弾性による付勢力の最小値よりも小さく設定される。逆に言えば、第1のバネ部材9の使用範囲での弾性による付勢力の最小値は、第2のバネ部材14の使用範囲での弾性による付勢力の最大値よりも大きいが、その値は、好ましくは、5倍以上、より好ましくは、10倍以上とするのがよい。
【0023】
詳細には、軸体5は、本体4に対し前記軸心回り方向13に回動可能である。すなわち、軸体5は、本体4に対し前記軸心回り方向13に回動可能であるとともに、本体4に対し前記軸心方向11に移動可能となっている。そして、本体4に設けられた運動方向変換形成部4aは、本体4と一体となって回動不能となっている。そこで、回動可能な側である軸体5にその軸体5を回動するように前記操作体7が設けられる。図示実施の形態においては、操作体7は、軸体5と一体化されるように設けられて、操作体7と軸体5の両方が、本体4に対し前記軸心回り方向13に回動するとともに、本体4に対し前記軸心方向11に移動する。もっとも、操作体7は、軸体5と一体化されることなく、前記軸心回り方向13に回動するのみで、前記軸心方向11に移動することのないように設けられて、その操作体7の回動が前記軸体5に伝達される構成であっても構わない。
【0024】
また、第1の運動方向変換部8aは、前記案内面8cからなり、第2の運動方向変換部8bは、前記被案内部8dからなる。そして、案内面8cは、運動方向変換形成部4aに形成された溝4bの側面からなり、被案内部8dは、軸体5に取り付けられたピン15の突出部分からなる。
【0025】
具体的には、第1固定材1と第2固定材2とは、前記スライドの方向12となる左右に延びる板材からなる。第1固定材1には、上下に貫通するようにして、孔1aと、段付き孔1bとがあけられている。第2固定材2には、ブッシュ2bが埋め込まれて、そのブッシュ2bの内側の孔が、前記位置決め孔2aとなって、上方に開口する。そして、この位置決め孔2aは、上側(つまり、開口側)ほど径大となるテーパー状に形成されている。
【0026】
位置決めクランプ装置3においては、本体4は、上下に延びる円筒状に形成されて、その下部側が、フランジ状に側方に突出して形成され、さらに、そのフランジ部4cの下面から下方に突出するように小円筒状の延出部4dが形成されて、その延出部4dを含めた筒内が、上下に貫く貫通孔4eとなっている。また、フランジ部4cには、下面に開口するねじ孔4fが単数もしくは複数あけられている。そこで、延出部4dが、第1固定材1に設けられた孔1aに挿入されて、取付けねじ16が、第1固定材1に設けられた段付き孔1bを通ってねじ孔4fにねじ込まれることで、本体4(ひいては、位置決めクランプ装置3)は、第1固定材1に取付け固定される。
【0027】
また、本体4は、その上部が、前述の運動方向変換形成部4aとなって、その運動方向変換形成部4aに、前述した溝4bが形成されている。この溝4bは、本体4の内外を貫通するように孔状に形成される。そして、溝4bは、前記貫通孔4eを挟んで一対設けられる。そこで、この溝4bが、前述の第1の運動方向変換部8aとなる案内面8cを形成するが、図示実施の形態においては、この案内面8cは、前述した第1案内面8eおよび第2案内面8fの他に、第2案内面8fに続く第3案内面8hを有している。この第3案内面8hは、傾斜することなく平坦に形成され、その第3案内面8hの、第2案内面8fとは反対側の端に、前述の第2案内面側窪み面8gが設けられる。詳細には、溝4bは、第1案内面8eを形成する第1溝4gと、第2案内面8fを形成する第2溝4hと、第3案内面8hおよび第2案内面側窪み面8gを形成する第3溝4iとを備え、それら第1溝4gと第2溝4hと第3溝4iとがその順に連続して設けられる。そこで、第1案内面8eは、第1溝4gにおける下側の側面からなり、第2案内面8fは、第2溝4hにおける上側の側面からなる。そして、第3案内面8hおよび第2案内面側窪み面8gは、第3溝4iにおける上側の側面からなる。
【0028】
軸体5は、本体4の貫通孔4eに挿入されて、軸体5の軸心方向11(図示実施の形態においては、上下方向)に移動可能となる。この軸体5は、軸体本体501と蓋502とを備える。軸体本体501は、筒状に形成されて、上端部分5bが、本体4の上方に突出し、その上端部分5bに、操作体7を取り付けるためのねじ孔5cが設けられる。そして、軸体本体501の中間位置には、横孔5dがあけられており、この横孔5dに、前述のピン15が貫通するように挿入されて、そのピン15の突出部分が、本体4の溝4bに進入して前述の被案内部8dとなる。ここで、本体4の上部には、溝4bからのピン15の抜け出しを防止するように、環体17が嵌められ、さらに、本体4の上端部には、本体4からの環体17の外れを防止するように、止め輪18が嵌められている。
【0029】
蓋502は、軸体本体501の下端に取り付けられる。この蓋502は、筒状に形成されて、下端に外方に突出する鍔部5fを有する。また、蓋502の内側の孔5gは、下部側が小径となって上部側が大径となるように、中間位置に、前述の規制面5aとなる段部が設けられている。そして、蓋502は、鍔部5fを除く部分が軸体本体501の下端部分に挿入されるが、その際、圧入されたり、あるいは接着等されて、その軸体本体501に固定される。
【0030】
作用体6は、本体4の貫通孔4eに挿入されて、その貫通孔4e内を、軸体5の軸心方向11でもある貫通孔4eの軸心方向に移動可能であって、その移動により、前記先端部6aが本体4から出没自在となっている。この作用体6は、棒状に形成されている。詳細には、作用体6は、棒状の作用体本体601と、ねじ部材602と、ワッシャ603とを備える。作用体本体601は、その先端部分(図示実施の形態においては、下端部分)が、作用体6における前記先端部6aとなる。この先端部6aは、位置決め孔2aにぴったり嵌まるように、その位置決め孔2aと同じ角度を有するテーパー状に形成されている。そして、作用体本体601は、先端部6aの上方に、貫通孔4eにぴったりと嵌まる大径部6cを有し、さらに、その上方が円柱状に延びる小径部6dとなって、その小径部6dの上端に、ねじ孔6eが設けられる。そこで、小径部6dの上端部分は、蓋502の孔5gに挿入され、ねじ孔6eに、ワッシャ603が嵌められたねじ部材602がねじ込まれることで、作用体本体601にねじ部材602とワッシャ603とが固定される。ここで、ワッシャ603は、外周側が、小径部6dよりも外側に張り出しており、その張出した部分の下面が、前述の被規制面6bとなる。
【0031】
第1のバネ部材9は、圧縮コイルバネからなる。この第1のバネ部材9は、軸体5における蓋502と、作用体6における大径部6cとの間で、作用体6の小径部6dの外側に嵌められて、軸体5に対し、作用体6を第2固定材2側となる下側にバネ部材の弾性によって付勢する。
【0032】
第2のバネ部材14は、圧縮コイルバネからなる。この第2のバネ部材14は、本体4の貫通孔4eに設けられた下方を向く段部4jに掛かる平板リング状のバネ受け19と、作用体6の大径部6cとの間で、作用体6の小径部6dの外側に嵌められて、バネ受け19(ひいては、本体4)に対し、作用体6を第2固定材2側となる下側にバネ部材の弾性によって付勢する。
【0033】
操作体7は、中央に孔7aが設けられており、その孔7aを通って軸体5のねじ孔5cにねじ込まれる取付けねじ20により、軸体5に固定される。そこで、操作体7は、軸体5と一体となって、軸体5の軸心回り方向13に回動し、また、軸体5の軸心方向11に移動する。この操作体7は、本体4の上部に被るように、頂板部7bを有して筒状に形成されている。詳細には、操作体7は、その筒部7cに、側方に突出する一対の突状部7d、7dを有し、さらに、それら突状部7d、7dのうちの一方に、下方に(つまり、本体4のフランジ部4cに向かって)突出する指示部7eが設けられている。そこで、この指示部7eが、操作体7の回動にともなって、フランジ部4cに表示された「ON」(作用体6の先端部6aが位置決め孔2aの内周面を押圧する、ロック状態)とか、「OFF」(作用体6の先端部6aが位置決め孔2aから抜け出た、アンロック状態)とかの表示4kを指し示す。
【0034】
次に、以上の構成からなる位置決めクランプ装置3の作用効果について説明する。この位置決めクランプ装置3によると、運動方向変換手段8は、第1の運動方向変換部8aと第2運動方向変換部8bを備え、第1の運動方向変換部8aは、本体4に設けられた運動方向変換形成部4aに設けられ、第2の運動方向変換部8bは、軸体5に設けられる。そして、第1の運動方向変換部8aと第2の運動方向変換部8bのうちの一方側(図示実施の形態においては、第1の運動方向変換部8a)が、案内面8cとなって、他方側(第2の運動方向変換部8b)が、その案内面8cに案内される被案内部8dとなる。ここで、案内面8cは、相対的に傾斜が急な第1案内面8eと、相対的に傾斜が緩やかな第2案内面8fとを有している。
【0035】
そこで、作用体6が、その作用体6の先端部6aが位置決め孔2aから抜け出た第1移動位置(
図1、
図2参照)と、作用体6の先端部6aが位置決め孔2aに挿入されてその位置決め孔2aの内周面に当接する第2移動位置(
図3、
図4参照)との間を移動する際には、相対的に被案内部8dが案内面8cにおける主に傾斜が急な第1案内面8eに案内されることで、その移動が速やかになされる。作用体6の先端部6aが位置決め孔2aの内周面に当接した後には、操作体7の回動操作(図示実施の形態においては、時計回り方向の回動操作)によって、作用体6が第2移動位置のまま、相対的に被案内部8dが主に傾斜が緩やかな第2案内面8fに案内されることで、軸体5が第2固定材2側に移動してその軸体5の規制面5aが作用体6の被規制面6bから離れる(
図6(b)参照)。これにより、作用体6が第1のバネ部材9の弾性による付勢力を受けて、その作用体6の先端部6aが位置決め孔2aの内周面を強く押圧することができる。そして、その押圧した状態が、軸体保持手段10により維持される。つまり、
図5に示すように、操作体7を、被案内部8dが第2案内面側窪み面8gに達するまで回動操作(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動操作)する。ここで、第1のバネ部材9の弾性による付勢力は、規制面5aが被規制面6bから離れるにつれて大きくなり、その付勢力を受けて作用体6の先端部6aで位置決め孔2aの内周面を的確に押圧することができる。
【0036】
こうして、第1固定材1と第2固定材2とは、位置決め孔2aに挿入される作用体6の先端部6aにより互いに位置決めされ、さらには、その先端部6aが位置決め孔2aの内周面を強く押圧することで互いに固定され、これによって、この位置決めクランプ装置3が位置決めと固定とを兼ね備えて省スペース化を図ることができる。また、第1のバネ部材9の弾性による付勢力を大きく設定しても、第2案内面8fの傾斜を緩やかにすることで、操作体7を、容易に回動操作することができる。
【0037】
また、第2のバネ部材14を設けることで、第1固定材1と第2固定材2とを相対的にスライドして(図示実施の形態においては、第1固定材1に対し、第2固定材2をスライドして)、作用体6の先端部6aと位置決め孔2aとが向き合うと、作用体6が、第2のバネ部材14の弾性による付勢力を、直接あるいは軸体5を介して(図示実施の形態においては、直接)受けることで、自動的に、作用体6は、第1移動位置から第2移動位置に移動する。つまり、作用体6の先端部6aは、自動的に位置決め孔2aに挿入されてその内周面に当接する。
【0038】
ところで、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、位置決めクランプ装置3は、作用体6を第1移動位置側に維持するように、軸体5を保持する他の軸体保持手段21を備えてもよい。詳細には、
図8に示すように、案内面8cは、第1案内面8e側の端部分に、第2のバネ部材14の弾性による付勢力によって被案内部8d(図示実施の形態においては、ピン15の突出部分)が入り込む第1案内面側窪み面8iを有し、それら第1案内面側窪み面8iと被案内部8dとで、前記他の軸体保持手段21が構成される。図示実施の形態においては、案内面8cは、第1案内面8eおよび第2案内面8f(詳しくは、加えて第3案内面8h)の他に、第1案内面8eに続く第4案内面8jを有している。この第4案内面8jは、傾斜することなく平坦に形成され、その第4案内面8jの、第1案内面8eとは反対側の端に、前記第1案内面側窪み面8iが設けられる。詳細には、溝4bは、第1溝4gに続いて、第4案内面8jおよび第1案内面側窪み面8iを形成する第4溝4mを備える。そこで、第4案内面8jおよび第1案内面側窪み面8iは、第4溝4mにおける下側の側面からなる。こうして、被案内部8dが第1案内面側窪み面8iに入り込むことで、軸体5が保持されて、作用体6は、第1移動位置側に維持されるが、被案内部8dが、第1案内面側窪み面8iから抜け出て第1案内面8eに達するまで、操作体7を回動操作(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動操作)することで、軸体5の保持が解除される。また、この実施の形態では、第1案内面側窪み面8iが設けられるとともに、その第1案内面側窪み面8iと第1案内面8eとの間に、第4案内面8jが設けられるが、この第4案内面8jはなくてもよい。また、他の軸体保持手段21は、第1案内面側窪み面8iと被案内部8d(図示実施の形態においては、ピン15の突出部分)とで構成されなくても、例えば、操作体7と、その操作体7を保持する保持部とで構成することで、軸体5を、操作体7を介して保持するようにしてもよい。
【0039】
また、
図9~
図15に示すように、第2のバネ部材14の作用する方向を反対にしてもよい。すなわち、第2のバネ部材14は、本体4に対し軸体5または作用体6(図示実施の形態においては、軸体5)を第2固定材2とは反対側に弾性によって付勢して作用体6を第1移動位置側に維持するものであってもよい。このとき、第2のバネ部材14の弾性による付勢力は、第1のバネ部材9の弾性による付勢力よりも小さく設定される。すなわち、第2のバネ部材14の使用範囲での弾性による付勢力の最大値は、第1のバネ部材9の使用範囲での弾性による付勢力の最小値よりも小さく設定される。逆に言えば、第1のバネ部材9の使用範囲での弾性による付勢力の最小値は、第2のバネ部材14の使用範囲での弾性による付勢力の最大値よりも大きいが、その値は、好ましくは、5倍以上、より好ましくは、10倍以上とするのがよい。こうして、第2のバネ部材14を設けることで、作用体6を第1移動位置側に維持することができる。そして、作用体6を第2移動位置に移動させるには、第2のバネ部材14の付勢力に抗して、操作体7を回動操作(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動操作)する。これにより、相対的に被案内部8dが主に第1案内面8eに案内されて、作用体6は、第1移動位置から第2移動位置に移動する。なお、この実施の形態にあっては、第1案内面8eは、第1溝4gにおける上側の側面からなる。軸体5においては、蓋502は、円板状に形成されて、中央に孔5gが設けられ、この孔5gを、作用体6の小径部6dが通る。そこで、この蓋502の上面が、規制面5aとなる。第2のバネ部材14は、圧縮コイルバネからなり、本体4の貫通孔4eに設けられた上方を向く段部4pと、軸体5(詳しくは、蓋502)との間で、作用体6の小径部6dの外側に嵌められて、段部4p(ひいては、本体4)に対し、軸体5を第2固定材2とは反対側となる上側にバネ部材の弾性によって付勢する。
【0040】
また、第1固定材1への本体4の固定は、ねじ孔4fが設けられたフランジ部4cによるが、
図16に示すように、本体4の高さ位置を調整して固定するような構成にしてもよい。すなわち、本体4において、フランジ部4cを設けることなく、第1固定材1の孔1aに挿入される延出部4dを長く形成する。そして、孔1aに雌ねじ1cを形成するとともに、延出部4dの外周に、その雌ねじ1cに螺合する雄ねじ4nを形成し、さらに、その雄ねじ4nに螺合するナット22を設ける。
【0041】
また、第2のバネ部材14を設けることなく、バネ部材としては第1のバネ部材9のみで、位置決めクランプ装置3を構成してもよい。
【0042】
また、第2案内面側窪み面8gと第2案内面8fとの間には、第3案内面8hが設けられているが、この第3案内面8hはなくてもよい。
【0043】
また、軸体保持手段10は、第2案内面側窪み面8gと被案内部8d(図示実施の形態においては、ピン15の突出部分)とで構成されなくても、例えば、操作体7と、その操作体7を保持する保持部とで構成することで、軸体5を、操作体7を介して保持するようにしてもよい。
【0044】
また、作用体6の先端部6aと位置決め孔2aとの両方が、テーパー状に形成されているが、作用体6の先端部6aと位置決め孔2aのうち一方のみが、テーパー状に形成されてもよい。
【0045】
次に、位置決めクランプ装置3の使用例について説明する。
図17は、第一の使用例を示し、第1固定材1は、スライドの方向12となる左右に延びる板状のベース体1dと、そのベース体1dの上面に固定される固定体1eとを備える。この固定体1eは、天板部1fと一対の脚部1g、1gとで門型形状をして、ねじ1hによりベース体1dに固定されている。そして、それらベース体1dと固定体1eとで囲まれた内側が、左右に開口する通孔1iとなり、固定体1eの天板部1fに、前述の孔1a(図示せず)が設けられる。第2固定材2は、スライドの方向12となる左右に板状に延びている。そこで、この第2固定材2が、前記通孔1iに挿入されて、スライドの方向12となる左右方向にスライド可能となる。
【0046】
図18は、第二の使用例を示す。第1固定材1は、矩形平板状に形成される。第2固定材2は、スライドの方向12となる左右に延びる板状のベース体2cと、そのベース体2cの上面に固定される一対のガイド部材2d、2dとを備える。そして、ベース体2cに、前述の位置決め孔2a(図示せず)が設けられる。ガイド部材2dは、スライドの方向12となる左右に延びて、ベース体2cに載る第1固定材1を、スライド可能に支持する。
【0047】
図19は、第三の使用例を示す。第1固定材1は、スライドの方向12となる左右に延びる板状のベース体1dと、そのベース体1dの上面に固定される固定体1eとを備える。この固定体1eは、直方体形状をして、左右に開口する通孔1iがあけられている。そして、固定体1eに、上面に開口するとともに通孔1iに連通する、前述の孔1a(図示せず)が設けられる。第2固定材2は、通孔1iに挿入されるシャフト2eと、そのシャフト2eに固定される回り止めブロック2fとを備えて、左右にスライド可能となっている。そして、シャフト2eの周面に、前述の位置決め孔2aが設けられる。また、図示実施の形態においては、表示4kは、第1固定材1(詳しくは、固定体1e)に設けられる。
【0048】
図20は、第四の使用例を示す。第1固定材1は、平板棒状に延びるように形成されている。第2固定材2は、円板状に形成されている。第1固定材1は、段付きボルト等の軸部材23により第2固定材2に取り付けられている。そこで、第1固定材1は、第2固定材2に対し、軸部材23を軸として回る方向がスライドの方向12となって、そのスライドの方向12にスライド可能となる。すなわち、第1固定材1と第2固定材2との相対的なスライドは、左右等の並進方向へのスライドに限らず、回動方向へのスライドも含まれる。
【0049】
図21は、第五の使用例を示す。第1固定材1は、直方体形状をして、左右に開口する通孔1iがあけられている。そして、この第1固定材1に、上面に開口するとともに通孔1iに連通する、前述の孔1a(図示せず)が設けられる。第2固定材2は、通孔1iに挿入されるシャフトからなって、周面に、前述の位置決め孔2aが設けられる。そこで、第2固定材2は、第1固定材1に対し、自身を軸としてその軸心回りに回る方向がスライドの方向12となって、そのスライドの方向12にスライド可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 第1固定材
2 第2固定材
2a 位置決め孔
3 位置決めクランプ装置
4 本体
4a 運動方向変換形成部
4b 溝
5 軸体
5a 規制面
6 作用体
6a 先端部
6b 被規制面
7 操作体
8 運動方向変換手段
8a 第1の運動方向変換部
8b 第2の運動方向変換部
8c 案内面
8d 被案内部
8e 第1案内面
8f 第2案内面
8g 第2案内面側窪み面
8i 第1案内面側窪み面
9 第1のバネ部材
10 軸体保持手段
11 軸心方向
12 スライドの方向
13 軸心回り方向
14 第2のバネ部材
15 ピン
21 他の軸体保持手段