(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】振動プローブおよび計測装置
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20231016BHJP
G01H 1/00 20060101ALI20231016BHJP
G01H 11/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
G01H1/00 Z
G01H11/08 Z
(21)【出願番号】P 2020200846
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-019731(JP,U)
【文献】特開2006-258518(JP,A)
【文献】特開2002-277318(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212786(WO,A1)
【文献】中国実用新案第200941079(CN,Y)
【文献】特開2016-011904(JP,A)
【文献】特開平10-227687(JP,A)
【文献】実開昭57-050038(JP,U)
【文献】特開平10-227686(JP,A)
【文献】特開2010-127707(JP,A)
【文献】特開昭56-133623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 3/24
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気漏れの診断に使用される計測装置のプローブであって、
振動の強度を計測する対象である計測対象物に一端が当接するように配される探触棒と、
前記探触棒に固定されるとともに、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動に基づき当該振動の強度を計測する振動センサと、
前記探触棒と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動を前記振動センサに伝達可能な台座と、
前記探触棒と前記台座との間に介挿されるとともに、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動を前記台座に伝達可能であって、且つ、前記計測対象物からの熱を断熱する断熱部材と、
を備え、
前記探触棒は、
前記一端から前記振動センサの側に向けて延びる軸部と、
前記軸部と一体形成されるとともに、前記計測対象物からの熱を放熱するための放熱フィンと、
を有するとともに、
共振周波数が10kHzとなるように構成されて
おり、
前記断熱部材は、筒形状を有し、
前記探触棒は、前記断熱部材の一方の筒開口から一部が嵌入されて前記断熱部材に固定されており、
前記台座は、前記断熱部材における前記一方の筒開口とは反対側の他方の筒開口から一部が嵌入され、且つ、前記断熱部材の筒内で前記探触棒に対して離間した状態で前記断熱部材に固定されている、
振動プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動プローブにおいて、
前記放熱フィンは、前記軸部が延びる方向に沿って複数設けられている、
振動プローブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の振動プローブにおいて、
前記放熱フィンは、前記軸部が延びる方向に対して交差する方向に拡がる板形状をもって形成されている、
振動プローブ。
【請求項4】
蒸気漏れの診断に使用されるとともに、計測対象物の振動の強度を測定し、計測結果を外部出力する計測装置であって、
請求項1から
請求項3の何れかの振動プローブを備える、
計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の計測装置において、
前記振動プローブを前記計測対象物に固定するためのブラケットをさらに備える、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動プローブおよび計測装置に関し、特に蒸気や復水が流れる配管やスチームトラップ等を計測対象とする振動プローブおよび計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップの振動の強度および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような診断には、スチームトラップの振動の強度を計測するための振動プローブと、スチームトラップの外面温度を計測するための温度プローブとを備える計測装置が用いられる。
【0003】
ここで、計測装置としては、作業者が携帯する可搬タイプのものと、配管等に振動プローブや温度プローブが取り付けられた設置タイプとがある。特許文献1には、設置タイプの計測装置が開示されている。
【0004】
従来技術に係る計測装置9について、
図6を用いて説明する。
【0005】
図6に示すように、計測装置9は、本体部90と、振動プローブ91と、温度プローブ92と、ケーブル93と、ブラケット94とを備える。振動プローブ91は、振動センサ910と、台座911と、探触棒912とを有する。振動プローブ91における探触棒912の先端912aおよび温度プローブ92の先端92aは、それぞれがスチームトラップ501の外周面501aに当接するように配されている。そして、振動プローブ91および温度プローブ92は、ブラケット94によりスチームトラップ501に固定されている。振動プローブ91で計測されたスチームトラップ501における振動の強度に関する信号、および温度プローブ92で計測されたスチームトラップ501の外面温度に関する信号は、ケーブル93を通して本体部90に伝送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術に係る計測装置9では、スチームトラップ501からの熱が探触棒912および台座911を介して振動センサ910に伝達されるが、このように伝達される熱から振動センサ910を保護するための対策が講じられていない。特に設置タイプの計測装置9においては、振動センサ910がスチームトラップ501からの熱にたえず晒されることで故障・破損することが危惧される。具体的には、スチームトラップ501は最大で500℃の高温となり、設置タイプの計測装置9では、矢印Bで示すようにスチームトラップ501からの熱が振動センサ910に対して伝達され、当該振動センサ910の温度が当該振動センサ910の耐熱温度(例えば、200℃)を超えることが考えられる。
【0008】
なお、振動センサ910の故障・破損を防ぐために高い耐熱温度を有する振動センサ910を用いることも考えられるが、特殊なセンサということになり部品コストの上昇を招く。よって、高い耐熱温度を有する振動センサを採用することはできない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる振動プローブおよび当該振動プローブを備える計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る振動プローブは、蒸気漏れの診断に使用される計測装置のプローブであって、探触棒と、振動センサと、台座と、断熱部材とを備える。前記探触棒は、振動の強度を計測する対象である計測対象物に一端が当接するように配される。前記振動センサは、前記探触棒に固定されるとともに、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動に基づき当該振動の強度を計測する。前記台座は、前記探触棒と前記振動センサとの間に介挿されるとともに、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動を前記振動センサに伝達可能である。前記断熱部材は、前記探触棒と前記台座との間に介挿されるとともに、前記探触棒の前記一端から入力される前記振動を前記台座に伝達可能であって、且つ、前記計測対象物からの熱を断熱する。
【0011】
本態様に係る振動プローブにおいて、前記探触棒は、軸部と放熱フィンとを有する。前記軸部は、前記一端から前記振動センサの側に向けて延びる。前記放熱フィンは、前記軸部と一体形成されるとともに、前記計測対象物からの熱を放熱する。そして、探触棒は、共振周波数が10kHzとなるように構成されている。
また、前記断熱部材は、筒形状を有する。
さらに、前記探触棒は、前記断熱部材の一方の筒開口から一部が嵌入されて前記断熱部材に固定されており、前記台座は、前記断熱部材における前記一方の筒開口とは反対側の他方の筒開口から一部が嵌入され、且つ、前記断熱部材の筒内で前記探触棒に対して離間した状態で前記断熱部材に固定されている。
【0012】
上記態様に係る振動プローブでは、探触棒が放熱フィンを有する。このため、上記態様に係る振動プローブでは、上記一端から探触棒に伝わる計測対象物からの熱が放熱フィンにより放熱される。よって、上記態様に係る振動プローブでは、高い耐熱性を有する振動センサを採用しなくても、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができる。
また、上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と振動センサとの間に台座が介挿されている。そして、台座は、探触棒と振動センサの間での振動を伝達可能に構成されている。よって、上記態様に係る振動センサでは、探触棒と振動センサとの間の固定を強固にすることができるとともに、計測対象物の振動の強度を確実に振動センサで計測することができる。
また、上記態様に係る振動プローブでは、探触棒と台座との間に断熱部材が介挿された構成を有する。このため、仮に計測対象物からの熱が探触棒の放熱フィンで放熱しきれなかったとしても、探触棒と台座との間に断熱部材を介挿することで、振動センサに熱が伝達されるのをさらに確実に抑制することができる。
【0013】
なお、探触棒における放熱フィンは、軸部と一体形成されているため、探触棒の上記一端から入力された振動を振動センサへと伝達するのに支障となり難い。よって、上記態様に係る振動プローブでは、計測対象物の振動の強度を高精度に計測することができる。
【0014】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記放熱フィンは、前記軸部が延びる方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0015】
上記態様に係る振動プローブでは、探触棒が複数の放熱フィンを有する。よって、探触棒の上記一端から伝わってくる熱を放熱するのにさらに優位である。
【0016】
上記態様に係る振動プローブにおいて、前記放熱フィンは、前記軸部が延びる方向に対して交差する方向に拡がる板形状をもって形成されていてもよい。
【0017】
上記態様に係る振動プローブでは、放熱フィンが板形状を有する。よって、探触棒の表面積を大きくとることができ、効果的に放熱することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る計測装置は、蒸気漏れの診断に使用されるとともに、計測対象物の振動の強度を測定し、計測結果を外部出力する計測装置である。そして、本態様に係る計測装置は、上記の何れかの態様に係る振動プローブを備える。
【0023】
上記態様に係る計測装置は、上記の何れかの態様に係る振動プローブを備えるので、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0024】
上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブを前記計測対象物に固定するためのブラケットをさらに備えていてもよい。
【0025】
上記態様に係る計測装置のように、ブラケットにより計測対象物に対して振動プローブが固定されている場合には、計測対象物と探触棒の上記一端とが常に当接した状態となる。この状態では、計測対象物からの熱が振動プローブの探触棒に伝達されることになるが、上記のように探触棒が放熱フィンを有する構成としているので、計測対象物からの熱を当該放熱フィンで放熱することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができ、耐熱仕様の(高熱に対して耐性を有する)振動センサを用いなくても当該振動センサの故障・破損を抑制することができ、製造コストの上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
上記の各態様では、計測対象物からの熱に起因する振動センサの故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【
図3】(a)は第1実施形態に係る振動プローブでの熱の伝わり方を示す側面図であり、(b)は比較例に係る振動プローブでの熱の伝わり方を示す側面図である。
【
図4】(a)は本発明の第2実施形態に係る振動プローブの構成を示す側面図であり、(b)は断熱部材の構成を示す斜視図である。
【
図5】振動プローブの一部構成を示す側面図である。
【
図6】従来技術に係る計測装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0029】
[第1実施形態]
1.計測装置1の構成
本発明の第1実施形態に係る計測装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0030】
図1に示すように、計測装置1は、本体部10と、振動プローブ11と、温度プローブ12と、ケーブル13と、ブラケット14とを備える。本体部10は、筐体と、当該筐体内に収納されたコントローラおよび信号送信部とを有する。本体部10のコントローラは、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。コントローラは、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、振動プローブ11から入力された振動の強度に関する情報と、温度プローブ12から入力された温度に関する情報とを演算処理する。演算処理された信号は、信号創出部からプラントのメインサーバ等に送信される。
【0031】
なお、本体部10は、振動および温度の測定対象物であるスチームトラップ500から離間した位置に配される。
【0032】
振動プローブ11の先端112aおよび温度プローブ12の先端12aのそれぞれは、スチームトラップ500の外周面500aに当接するように配されている。振動プローブ11および温度プローブ12は、ブラケット14によりスチームトラップ500に対して位置固定されている。
【0033】
ケーブル13は、振動プローブ11および温度プローブ12と本体部10との間を信号接続するように設けられている。なお、本実施形態では、振動プローブ11および温度プローブ12と本体部10との間を有線方式で信号接続することとしているが、本発明では、無線方式で信号接続することも可能である。
【0034】
2.振動プローブ11の構成
振動プローブ11の構成について、
図2を用いて説明する。
【0035】
図2に示すように、振動プローブ11は、加速度センサ(圧電型加速度センサ)110と、台座111と、探触棒112とを有する。探触棒112の先端112aは、
図1を用いて説明したように、スチームトラップ500の外周面500aに当接するように配される。探触棒112における上記先端112aとは長手方向の反対側に位置する他端112bは、台座111の他端111bに直に当接した状態で固定されている。
【0036】
探触棒112は、先端112aから台座111に向けて延びる長軸状の軸部112cと、軸部112cの長手方向に沿って配された複数(本実施形態では、一例として6つ)の放熱フィン112dとを有する。軸部112cと複数の放熱フィン112dとは、一体形成されている。複数の放熱フィン112dのそれぞれは、軸部112cが延びる方向(長手方向)と直交する方向に拡がる円板形状をもって形成されている。各放熱フィン112dの板厚はT1に設定されており、隣接する放熱フィン112d同士の隙間はG1に設定されている。また、各放熱フィン112dの直径はD2に設定されている。
【0037】
なお、探触棒112の全長はL1に設定され、軸部112cの直径はD1に設定されている。
【0038】
台座111は、加速度センサ110と探触棒112との間に介挿されている。台座111の一端111aには、加速度センサ110の一端110aが直に当接した状態で固定されている。台座111は、探触棒112を伝わってくるスチームトラップ500の振動を加速度センサ110に伝達可能となっている。
【0039】
3.探触棒112での放熱
振動プローブ11における探触棒112での放熱について、
図3を用いて説明する。なお、
図3は、(a)が本実施形態に係る振動プローブ11での熱の伝わり方を示す側面図であり、(b)が比較例に係る振動プローブ91での熱の伝わり方を示す側面図である。
【0040】
図3(a)、(b)に示すように、先端112a,912aがスチームトラップ500,501の外周面500a,501aに当接されている探触棒112,912には、矢印A1,A3で示すように、スチームトラップ500,501からの熱が伝わってくる。
【0041】
しかしながら、
図3(a)に示すように、本実施形態に係る振動プローブ11の探触棒112は、複数の放熱フィン112dを有するので、探触棒112を伝わってくる熱が各放熱フィン112dの表面から放熱される(矢印A2)。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、探触棒112の先端112aから入力されたスチームトラップ500からの熱が加速度センサ110まで伝達されるのが抑制される。
【0042】
これに対して、
図3(b)に示すように、比較例に係る振動プローブ91は、放熱フィンが設けられていない軸形状の探触棒912を有する。このため、先端912aから入力されたスチームトラップ501からの熱が、殆ど放熱されることなく台座911へと伝達される(矢印A3)。そして、台座911に伝達された熱は、加速度センサ910へと伝わることになる(矢印A3)。このため、比較例に係る振動プローブ91では、スチームトラップ501からの熱により加速度センサ910が故障・破損してしまうことが考えられる。
【0043】
なお、台座911と加速度センサ910とは、台座911の一端911aに加速度センサ910の一端910aが直に当接した状態で固定されている。また、台座911と探触棒912とは、台座911の他端911bに探触棒912の他端912bが直に当接した状態で固定されている。このため、探触棒912から加速度センサ910へは、断熱等されることなく熱が伝達される。
【0044】
4.探触棒112の各寸法L1,D1,D2,T1の規定方法
図2に示したように、本実施形態に係る振動プローブ11の探触棒112は、長さL1で直径D1の軸部112cと、板厚T1で直径D2の複数の放熱フィン112dとが一体形成されてなる。探触棒112の各寸法L1,D1,D2,T1の規定方法について、
図2および
図3(b)を用いて説明する。
【0045】
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物においてその振動を計測した場合、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって、特定の周波数成分の振動強度が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動強度を計測することで、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別できることが知られている(特開2016-011904号公報)。
【0046】
そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの診断を行う場合に使用する計測装置1の振動プローブについては、共振周波数が10kHz付近となるように設計することが重要となる。このような知見に基づき、本実施形態に係る振動プローブ11の探触棒112は、次の関係を満たすように各寸法が規定されている。
f=k1×(D1/(L1-6×T1)+6×D2×T1) ・・(式1)
なお、上記の関係式において、“f”は共振周波数(10kHz付近の周波数)であり、“k1”は探触棒112を構成する材料(ステンレス鋼)が有する材料係数である。
【0047】
本実施形態において、探触棒112の各寸法L1,D1,D2,T1は、一例として次のように規定されている。
L1=30mm
D1=3mm
D2=7mm
T1=2mm
また、本実施形態において、放熱フィン112d同士の隙間G1は2mmに規定されている。
【0048】
一方、放熱フィンを有さない比較例に係る探触棒912では、長さL2と直径D3とが次のように規定される。
f=k2×D3×L2 ・・(式2)
なお、上記の関係式において、“k2”は探触棒912を構成する材料が有する材料係数である。比較例に係る探触棒912についてもステンレス鋼を用いて形成されていると考えると、k2=k1となる。
【0049】
上記の式1と式2とから、例えば、D1=D2であるとする場合に、放熱フィン112dを有する本実施形態に係る探触棒112は、放熱フィンを有さない比較例に係る探触棒912に比べて、L1<L2の関係を満たすように規定される。
【0050】
5.効果
本実施形態に係る振動プローブ11では、
図2を用いて説明したように、探触棒112が複数(一例として6つ)の放熱フィン112dを有する。このため、振動プローブ11では、スチームトラップ500の外周面500aに当接する先端112aから探触棒112に伝わるスチームトラップ500からの熱が放熱フィン112dにより放熱される。よって、本実施形態に係る振動プローブ11では、高い耐熱性を有する加速度センサ110を採用しなくても、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができる。
【0051】
なお、本実施形態に係る振動プローブ11探触棒112において。軸部112cと放熱フィン112dとは一体形成されているため、探触棒112の先端112aから入力されたスチームトラップ500の振動を加速度センサ110へと伝達するのに支障となり難い。よって、振動プローブ11では、スチームトラップ500の振動の強度を高精度に計測することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る振動プローブでは、各放熱フィン112dが円板形状を有する。よって、放熱フィン112dを含む探触棒112の表面積を大きくとることができ、効果的に放熱することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る振動センサ11では、探触棒112と加速度センサ110との間に台座111が介挿されている。そして、台座111は、探触棒112と加速度センサ110の間での振動を伝達可能に構成されている。よって、振動センサ11では、探触棒112と加速度センサ110との間の固定を強固にすることができるとともに、スチームトラップ500の振動の強度を確実に加速度センサ110で計測することができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係る計測装置1は、上記のような効果を奏することができる振動プローブ11を備えるので、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る計測装置1のように、ブラケット14によりスチームトラップ500に対して振動プローブ11が固定されている場合には、スチームトラップ500と探触棒112の先端112aとが常に当接した状態となる。この状態では、スチームトラップ500からの熱が振動プローブ11の探触棒112に伝達されることになるが、上記のように探触棒112が複数の放熱フィン112dを有する構成としているので、
図3(a)で示すように、スチームトラップ500からの熱を放熱フィン112dで放熱することができる(矢印A2)。よって、計測装置1では、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができ、耐熱仕様の(高熱に対して耐性を有する)加速度センサ110を用いなくても当該加速度センサ110の故障・破損を抑制することができ、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る振動プローブ11および当該振動プローブ11を備える計測装置1では、スチームトラップ500からの熱に起因する加速度センサ110の故障・破損を抑制することができるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0057】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る振動プローブ21について、
図4および
図5を用いて説明する。なお、本実施形態に係る計測装置は、振動プローブ21の構成を除き上記第1実施形態に係る計測装置1と同じ構成を備える。
【0058】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る振動プローブ21は、加速度センサ(圧電型加速度センサ)210と、台座211と、断熱部材213と、探触棒212と、複数のビス214とを有する。加速度センサ210および台座211は、上記第1実施形態に係る振動プローブ11の加速度センサ110および台座111と同じ構成を有する。
【0059】
また、本実施形態に係る振動プローブ21の探触棒212も、軸部212cと複数の放熱フィン212dとが一体形成されている。探触棒212の先端212aは、上記第1実施形態に係る探触棒112の先端112aと同様に、スチームトラップ500の外周面500aに対して常に当接した状態とされる(
図1を参照)。
【0060】
なお、本実施形態に係る振動プローブ21でも、加速度センサ210を振動センサの一例として採用している。
【0061】
図4(b)に示すように、断熱部材213は、中空部213aを有するとともに、長手方向の両側に開口213b,213cを有する円筒形状を有する。断熱部材213の外周面には、長手方向に沿って4つのネジ孔213dが開けられている。なお、本実施形態では、アルミナセラミックスから形成された断熱部材213を採用している。
【0062】
図5に示すように、断熱部材213に対しては、開口213bから中空部213aに台座211の嵌入部211bが嵌入されている。そして、台座211の嵌入部211bと断熱部材213とは、互いに直に当接した状態でビス214により固定されている。なお、台座211の一端211aには、加速度センサ210の一端210aが直に当接する状態で固定されている。また、本実施形態では、ステンレス鋼から形成された台座211を採用している。
【0063】
探触棒212の嵌入部212bは、断熱部材213に対して、当該断熱部材213の開口213cから中空部213aに嵌入されている。そして、探触棒212の嵌入部212bと断熱部材213とは、互いに直に当接した状態でビス214により固定されている。
【0064】
図5に示すように、台座211の嵌入部211bと探触棒212の嵌入部212bとは、断熱部材213の中空部213a内において、互いに間隔を空けた状態で配置されるように長さが設定されている。
【0065】
本実施形態に係る振動プローブ21でも、探触棒212が複数の放熱フィン212dを有するので、上記第1実施形態に係る振動プローブ11と同様の効果を有する。また、振動プローブ21を備える計測装置についても、上記第1実施形態に係る計測装置1と同様の効果を有する。
【0066】
本実施形態に係る振動プローブ21では、
図4(a)に示したように、探触棒212と台座211との間に断熱部材213が介挿された構成を有する。このため、仮にスチームトラップ500からの熱が探触棒212の放熱フィン212dで放熱しきれなかったとしても、探触棒212と台座211との間に断熱部材213を介挿することで、加速度センサ210に熱が伝達されるのをさらに確実に抑制することができる。
【0067】
[変形例]
詳細な説明を省略したが、上記第1実施形態に係る計測装置1は、熱電対を有する温度プローブ12を備える。ただし、本発明では、熱電対に代えて、サーミスタ等の他の温度計測用のデバイスを温度プローブに採用することも可能である。
【0068】
上記第1実施形態に係る探触棒112および上記第2実施形態に係る探触棒212が、6つの放熱フィン112d,212dを有する構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、5つ以下の放熱フィンを有する構成や、7つ以上の放熱フィンを有する構成を採用することも可能である。
【0069】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態では、円板形状を有する放熱フィン112d,212dを採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、軸部112c,212cの径方向に突出形成されたピン状の放熱フィンを採用することも可能である。
【0070】
また、放熱フィンが拡がる方向については、軸部の径方向(長手方向に直交する方向)に限定されるものではない。当該径方向に対して傾斜した方向に拡がる放熱フィンを採用することもできる。
【0071】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、探触棒112,212および台座111,211をステンレス鋼を用いて形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ステンレス鋼以外の金属材料や、セラミックス材料、さらには樹脂材料などを用いて探触棒を形成することも可能である。また、上記第2実施形態に係る断熱部材213についても、アルミナセラミックス以外のセラミックス材料や、樹脂材料などを用いて形成することも可能である。
【0072】
上記第1実施形態では、振動プローブ11と温度プローブ12とを併せ持つ計測装置1を一例として採用したが、本発明は、振動プローブ11,21を単体として備え、計測対象物の振動の強度だけを計測する装置に適用することも可能である。
【0073】
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、スチームトラップ500を計測対象物の一例としたが、本発明は、スチームトラップ以外の計測対象物の振動の強度を計測する装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 計測装置
11,21 振動プローブ
110 加速度センサ(振動センサ)
112,212 探触棒
112c,212c 軸部
112d,212d 放熱フィン
213 断熱部材