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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】サイクロン式固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B04C 5/185 20060101AFI20231016BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20231016BHJP
   B04C 5/04 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B04C5/185
B23Q11/00 U
B04C5/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021126670
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2023021661
(43)【公開日】2023-02-14
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】513166271
【氏名又は名称】株式会社ヨシダ鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝雄
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-158870(JP,A)
【文献】特開2011-183544(JP,A)
【文献】特開平05-138077(JP,A)
【文献】実公昭41-024458(JP,Y1)
【文献】特開2013-160653(JP,A)
【文献】実開平04-045540(JP,U)
【文献】特公昭44-002618(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00-11/00
B23Q 11/00-13/00
B01J 4/00- 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤やフライス盤等の工作機械から排出される残渣が含まれたダーティ液を所定圧力で装置内部に供給する供給口と、内部に生じる旋回流によって前記残渣と分離されたクリーン液が排出されるクリーン液排出口と、下端には前記残渣及びダーティ液の一部を排出する残渣排出口を有する本体部と、
前記残渣排出口と連通する第1の収容部と、前記第1の収容部の下方に配され、前記第1の収容部とひとつの連続した孔形状を形成するように貫通孔である第2の収容部が設けられて略水平方向に摺動可能な摺動部材と、前記ひとつの連続した孔形状の底面を形成するように配される底面部材によって、凹形状を呈する収容穴を形成する残渣収容排出機構を備え、
前記残渣収容排出機構は、前記第1の収容部と前記第2の収容部と底面部材によってひとつの連続した凹形状を呈する状態である収容形態と、前記収容形態から摺動部材が略水平方向にスライドして前記第2の収容部が底面部材の端部から突出して前記第2の収容部に沈積した残渣及び一部のダーティ液を下方に排出する状態である排出形態にその形態を変化させ、前記排出形態において、前記摺動部材の貫通孔である第2の収容部が設けられていない部分が、前記第1の収容部の底面部分を形成することを特徴とするサイクロン式固液分離装置。
【請求項2】
前記残渣収容排出機構は、第1の収容部が前記残渣排出口と連通する管状体であり、摺動部材が側面に貫通孔である第2の収容部を備えた円柱状のピストンであり、前記ピストンを略水平方向に摺動可能に内包し、前記第1の収容部との接続部分となる側面に前記ひとつの連続した孔形状の形成を妨げないための孔を備えるとともに、前記収容形態において底面部材を形成する円筒状のシリンダであることを特徴とする請求項1に記載のサイクロン式固液分離装置。
【請求項3】
前記残渣収容排出機構は、前記残渣排出口と連通した貫通孔である第1の収容部が設けられた第一層のプレートと、前記第一層のプレートの下方に連接されて貫通孔である第2の収容部が設けられた第二層のプレートと、前記第二層のプレートの下方に連接されて前記第2の収容部の底面を形成する第三層のプレートによって構成され、
前記第二層のプレートは第一層のプレートと第三層のプレートの間を略水平方向に摺動可能に配されており、第一層のプレートに設けられた貫通孔である第1の収容部と第二層のプレートに設けられた貫通孔である第2の収容部と第三層のプレートによってひとつの連続した凹形状を呈する収容穴となる収容形態と、前記収容形態から第二層のプレートがスライドすることにより前記第二層のプレートに設けられた貫通孔である前記第2の収容部が前記第三層のプレート端部から突出して前記第2の収容部に沈積した残渣及びダーティ液の一部を排出する排出形態にその形態を変化させ、前記排出形態において、第二層のプレートの貫通孔である第2の収容部が設けられていない部分が、貫通孔である第1の収容部の底面部分を形成することを特徴とする請求項1に記載のサイクロン式固液分離装置。
【請求項4】
前記残渣収容排出機構の第1の収容部と第2の収容部と底面部材がひとつの連続した凹形状の収容穴を呈する収容形態において、前記収容穴は上方から下方に向けて徐々に内径が大きくなる略錐形状を呈することを特徴とすることを特徴とする請求項1からのうちいずれか一項に記載のサイクロン式固液分離装置。
【請求項5】
前記本体部の下部で残渣排出口の近傍に、本体部の下部と収容穴に沈積するダーティ液の液面が所定の高さとなるように内圧保持用液を供給するための供給口が設けられていることを特徴とする請求項1からのうちいずれか一項に記載のサイクロン式固液分離装置。
【請求項6】
前記内圧保持用液の供給口は前記ダーティ液の液面の所定の高さよりも低い位置に設けられていることを特徴とする請求項に記載のサイクロン式固液分離装置。
【請求項7】
旋盤やフライス盤等の工作機械から排出される残渣が含まれたダーティ液を所定圧力で装置内部に供給し、内部に生じる旋回流によって前記残渣と分離するサイクロン式固液分離装置の残渣収容排出方法であって、サイクロン式固液分離装置の本体部下方に連設される第1の収容部と、前記第1の収容部の下方に配され、略水平方向に摺動可能な摺動部材に設けられた貫通孔である第2の収容部によってひとつの連続した孔形状を呈するとともに、前記ひとつの連続した孔形状の底面部分を形成する底面部材によって凹形状を呈する収容穴を形成して前記収容穴にサイクロン式固液分離装置の本体部においてクリーン液と分離された残渣及び一部のダーティ液を収容し、前記摺動部材をスライドさせることで、第1の収容部に収容された残渣及びダーティ液を維持しまま、第2の収容部に収容された残渣及び一部のダーティ液のみを排出する際に前記摺動部材の貫通孔である第2の収容部が設けられていない部分に、前記第1の収容部の底面部分を形成させることを特徴とするサイクロン式固液分離装置の残渣収容排出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出される残渣(切り屑)を含んだ使用済みのクーラント(ダーティ液)を残渣と再利用するためのクーラント(クリーン液)に分けるサイクロン式固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤やフライス盤等の工作機械から排出される残渣(切り屑)を含んだ使用済みのクーラント(ダーティ液)を残渣と再利用するためのクーラント(クリーン液)に分離するに際し、様々な装置や手段が提供されているが、そのうちのひとつにサイクロンによる固液分離装置(以下、サイクロン式固液分離装置と示す。)が挙げられる。
このサイクロン式固液分離装置は、構造が簡単であり、小型で処理能力が大きいという特徴を持っていることから、工作機械に使用されたクーラントの固液分離に用いられるだけでなく、多くの分野で粒子の分級、濃縮、捕集等に様々な用途で使用されており、分離される固体が「目的物」、「目的物」である固体が含まれる液体が「搬送流体」、目的物と搬送流体の混合物が固液混合体である。
そして、通常サイクロン式固液分離装置の下方に位置する目的物の収集部分に工夫を施すアプローチで分離性能を向上させる種々の技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、高い捕集効率でシングルミクロン粒子を捕集するサイクロンを提供することを課題として、その解決手段として、円筒形状の上部胴筒4aと逆円錐形状の下部胴筒4bを有するサイクロン本体4と、原料および流体を導入する導入口8と、上部胴筒の上縁部を覆い中央部に開口部12を有する天板4cと、上部胴筒の鉛直中心軸に沿って開口部に挿入され、原料および流体の旋回運動によって、原料および流体から分離された微粉および流体を上昇させてサイクロン本体から排出する第一排出口10と、旋回運動によって得られた粗粉および流体を前記下部胴筒の下端から排出する第二排出口4fと、第二排出口の下部に接続され、粗粉および流体を捕集する捕集箱6と、捕集箱から粗粉および流体をアンダーフローさせるアンダーフロー機構7とを備えるサイクロン装置2であって、捕集箱内の上部には、上端が第二排出口に接続され、下方に広がる略円錐台形状を有する空洞部16が形成されたサイクロン装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、省スペースで固形物の分離効率を向上できる固液分離装置を提供することを課題とし、その解決手段として、固形物を含む原水を旋回させて遠心分離させ、固形物を含むスラリーを外部へ排出するスラリー排出管5を下部に有し、処理水を外部へ排出する処理水排出管7を上部に有する遠心分離機3と;原水を貯留する原水槽2と;原水槽の原水を前記遠心分離機へ圧送する送水ポンプP1と;遠心分離機のスラリー排出管が挿入され、スラリー排出管から排出されるスラリーに含まれる固形物をスラッジの形態で沈降させる回収ポット6,6A,6Bと;回収ポットの上部に挿入され、回収ポット内のスラリーの上澄み水を排出する上澄み排出管と;回収ポットの下部に沈降したスラッジを排出するスラッジ排出管8を有する。スラリー排出管の下端5eと回収ポットの底部6bとの間に間隙が設けられ、スラリー排出管の下端5eは上澄み排出管の下端7eよりも低い位置にある固液分離装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、サイクロン式固液分離装置は、固液混合体が加圧送液されて旋回流となって適切な遠心力が生じている状態でない場合には、上述のような先行技術を組み合わせても、目的物と搬送流体との分離がうまく行われず、固液混合体のまま目的物の収集部分に沈積してしまう問題が解決できない。
固液混合体が加圧送液されて旋回流となって適切な遠心力が生じている状態でない場合とは、サイクロン式固液分離装置の始動直後や、固液混合体の加圧送液が終了した場合が想定される。
また、図9に示すように、従来、目的物の収集部分は取り外し可能な回収容器が設けられており、回収容器内に目的物及び固液混合体が沈積すると、適宜回収容器を取り外し、別の(新しい)収納容器を取り付けるような構造となっているか、サイクロン式固液分離装置の下方に、コンベア装置等の複雑な排出機構が連設されており、落下する目的物及び固液混合体を排出するような構造となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-41398号公報
【文献】特開2015-205278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の手段では、都度収納容器の交換を行う必要があり、非効率で、環境負荷の側面からも望ましくない。そして、コンベア装置等の排出機構を設ける構成の場合、機構が複雑になり、装置全体の部品点数の増加やサイズの増大が避けられず、サイクロン式固液分離装置の小型でありながら処理能力が高いというメリットを相殺してしまう。
そして、近年半導体の製造に不可欠な石英ガラスの加工後に固液混合体として排出される粉状の石英は、コンベア装置等の排出機構内で固着してしまいスムーズな排出や作業の妨げになってしまう。
そこで、本発明では、環境負荷を抑制するとともに、簡易な排出機構により装置の部品点数の増加やサイズの増大を行わずに省スペースでスムーズな固液分離と、高効率な目的物の回収が可能なサイクロン式固液分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のサイクロン式固液分離装置は、旋盤やフライス盤等の工作機械から排出される残渣が含まれたダーティ液を所定圧力で装置内部に供給する供給口と、内部に生じる旋回流によって前記残渣と分離されたクリーン液が排出されるクリーン液排出口と、下端には前記残渣及びダーティ液の一部を排出する残渣排出口を有する本体部と、前記残渣排出口と連通する第1の収容部と、前記第1の収容部の下方に配され、前記第1の収容部とひとつの連続した孔形状を形成するように貫通孔である第2の収容部が設けられて略水平方向に摺動可能な摺動部材と、前記ひとつの連続した孔形状の底面を形成するように配される底面部材によって、断面凹形状を呈する収容穴を形成する残渣収容排出機構を備え、前記残渣収容排出機構は、前記第1の収容部と前記第2の収容部と底面部材によってひとつの連続した断面凹形状を呈する収容穴を形成した状態である収容形態と、前記収容形態から摺動部材が略水平方向にスライドして前記第2の収容部が底面部材の端部から突出して前記第2の収容部に沈積した残渣及び一部のダーティ液を下方に排出する状態である排出形態にその形態を変化させることを特徴とする。
さらに、本発明のサイクロン式固液分離装置における残渣収容排出機構は、第1の収容部が前記残渣排出口と連通する管状体であり、摺動部材が側面に貫通孔である第2の収容部を備えた円柱状のピストンであり、前記ピストンを略水平方向に摺動可能に内包し、前記第1の収容部との接続部分となる側面に前記ひとつの連続した孔形状の形成を妨げないための孔を備えるとともに、前記収容形態において底面部材を形成する円筒状のシリンダであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のサイクロン式固液分離装置における残渣収容排出機構は、前記残渣排出口と連通した貫通孔である第1の収容部が設けられた第一層のプレートと、前記第一層のプレートの下方に連接されて貫通孔である第2の収容部が設けられた第二層のプレートと、前記第二層のプレートの下方に連接されて前記第2の収容部の底面を形成する第三層のプレートによって構成され、前記第二層のプレートは第一層のプレートと第三層のプレートの間を略水平方向に摺動可能に配されており、第一層のプレートに設けられた貫通孔である第1の収容部と第二層のプレートに設けられた貫通孔である第2の収容部と第三層のプレートによってひとつの連続した凹形状を呈する収容穴となる収容形態と、前記収容形態から第二層のプレートがスライドすることにより前記第二層のプレートに設けられた貫通孔である前記第2の収容部が前記第三層のプレート端部から突出して前記第2の収容部に沈積した残渣及びダーティ液の一部を排出する排出形態にその形態を変化させることを特徴とする。
本発明によれば、非常に簡易な構成でありながら、残渣とともに排出されるダーティ液の排出量を最小限に抑制し、第1の収容部に貯留された(沈積した)ダーティ液によって本体部内部の圧力が維持されるため、固液分離作業中であっても効果的な残渣排出が可能となる。
【0010】
本発明のサイクロン式固液分離装置は、残渣収容排出機構の第1の収容部と第2の収容部と底面部材がひとつの連続した凹形状を呈する収容穴を形成する収容形態において、前記収容穴は上方から下方に向けて徐々に内径が大きくなる略錐形状を呈することを特徴とすることを特徴とする
本発明によれば、単純な筒状の収容穴と比較して、本体部の内部の圧力(内圧)の維持のために第1の収容部に貯留しておくダーティ液の量を少なくできるとともに、多くの残渣を収容し、排出することができるので、残渣排出作業の頻度を少なくできる。
そして、第2の収容部の側壁が情報から下方に向かって広く開口したテーパー状になっていることにより、排出時に残渣の壁面への付着を最小限に抑制しスムーズな残渣排出が可能となる。
【0011】
本発明のサイクロン式固液分離装置は、本体部の下部であり残渣排出口の近傍に、本体部の下部と収容穴に沈積するダーティ液の液面が所定の高さとなるように内圧保持用液を供給するための供給口が設けられていることを特徴とし、内圧保持用液の供給口は前記ダーティ液の液面の所定の高さよりも低い位置に設けられている。
本発明によれば、サイクロン式固液分離装置の本体部の内圧の変化を最小限にし、高効率な固液分離が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、交換が必要な回収容器や、残渣排出用の複雑な装置も不要になることで、環境負荷を抑制するとともに、簡易な残渣収容排出機構により装置の部品点数の増加やサイズの増大がなくても省スペースで高効率な固液分離と、スムーズな残渣の回収廃棄が可能なサイクロン式固液分離装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一の実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す斜視図である。
図2】上記実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す正面図である。
図3】上記実施の形態の残渣収容排出機構を示す拡大断面図である。
図4】上記実施の形態の残渣収容排出機構を示す拡大断面図である。
図5】上記実施の形態の残渣収容排出機構を示す拡大断面図である。
図6】上記実施の形態の残渣収容排出機構を示す拡大断面図である。
図7】上記実施の形態の残渣収容排出機構における収容穴の形状を示す斜視図である。
図8】本発明の第二の実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す斜視図である。
図9】上記実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す正面図である。
図10】上記実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す断面図である。
図11】上記実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す断面斜視図である。
図12】上記実施の形態の残渣収容排出機構の収容形態及び排出形態を示す断面図である。
図13】本発明の第三の実施の形態のサイクロン式固液分離装置を示す斜視図である。
図14】上記実施の形態の内圧保持用液の供給口及び残渣収容排出機構を示す拡大断面図である。
図15】従来のサイクロン式固液分離装置の形態を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第一の実施の形態)
本発明を実施するための形態を、具体的に図示した図面に基づいて、詳細に説明すると、次の通りである。
【0015】
(サイクロン式固液分離装置について)
図1図2は、本発明の第一の実施の形態のサイクロン式固液分離装置1を模式的に示す斜視図及び正面図であり、本体部10は、上部Uが円筒状の外筒形状であり、その中央部Mが下に向かって内径が小さくなる漏斗形状を呈し、その下部Bは下端Beに開口Oを有する管形状となっている。本体部10の中央部Mの内部も外観同様、略漏斗形状となっており、その上方の側面には、旋盤やフライス盤等の工作機械においてクーラントとして使用されたあと排出される目的物(ここでは残渣Xとする)が混じった固液混合体(ここではダーティ液L1とする)を本体部10の内部に供給する供給口100aが配され、その上面の中央部には、残渣Xと分離された搬送流体(ここではクリーン液Lcとする)を排出するクリーン液排出口100bが配される。そして、本体部10の下部Bの下端Beが、ダーティ液L1から分離された残渣Xを排出する残渣排出口100cとなる。
本実施形態に係るサイクロン式固液分離装置1は、供給口100aからポンプ等の加圧手段によって残渣Xが混じったダーティ液L1を本体部10内部に流し込むと、旋回流(サイクロン)が発生し、液体と固体の質量(比重)の違いによりダーティ液L1がクリーン液Lcと残渣Xと分離され、クリーン液はクリーン液排出口100bから排出されるとともに、残渣Xが残渣排出口100cから排出される。
本体部10に関しては既知の装置でよく、本体部10の容量や、ダーティ液L1の供給速度等は適宜選択可能である。
【0016】
(残渣収容排出機構の概要)
サイクロン式固液分離装置1の本体部10によって分離された残渣Xが排出される残渣排出口100cの下方に残渣収容排出機構20が連設されている。
本実施の形態における残渣収容排出機構20は、図3及び図4の断面図で示すように、サイクロン式固液分離装置の本体部10の下端Beと連通する管状体であるジョイント200a、前記ジョイント200aの下方に配されたピストン200bと、前記ピストン200bを略水平方向に摺動可能な状態で内包するシリンダ200cから構成されている。
残渣収容排出機構20を構成するジョイント200aは、本体部10の下端Be(残渣排出口100c)の内径に対向した開口を有し、接続して鉛直下向きに延びる管状体であるとともに、ジョイントの上方(残渣排出口100cと接続している方)から下方(ピストン200b、シリンダ200cの方)に向けて徐々に内径が大きくなる略錐形状を呈している。ここで、ジョイント200aの内部に形成された空間を第1の収容部H1とする(図3参照)。
次に、ピストン200bは、ジョイント200aの下方に略水平方向に摺動可能に配される円筒状の摺動部材で、その側面にジョイント200aの下端の内径と対応するとともに鉛直下向きに徐々に内径が大きくなるように貫通孔が穿たれている。この貫通孔(により形成された空間)を第2の収容部H2とする(図3参照)。そして、図3に示すように第1の収容部H1と第2の収容部H2が同軸線A上に配されることで、ひとつの連続した凹形状を呈する収容穴Hが形成された状態を収容形態とし、図4に示すようにピストン200bがスライドすることで、第2の収容部H2が後述するシリンダ200cの端部から突出して、第2の収容部H2に沈積した残渣Xを残渣回収容器Dに排出する状態を排出形態とする。
ピストン200bには、Oリングの配設や、シリンダ200cとの接触を密にするための「かえし」を設けるなどしてスライド時のダーティ液L1の漏れや浸潤を防止している(図5図6参照)が、その手段は既知の技術を適宜選択可能である。
そして、シリンダ200cは、ジョイント200aの下端から連設され、その側面にジョイント200a(第1の収容部)の下端の内径と対応した貫通孔を備えるとともに、ピストン200bを略水平方向に摺動可能に内包する円筒状部材であり、収容状態においてシリンダ200cは収容穴Hの底面を形成する底面部材の役割を担うことになる。
ここで、収容形態と排出形態の移行、すなわちピストン200bのスライドは手動若しくは、電気的な制御のもとで自動的に行われてもよい。
【0017】
(残渣収容排出機構の効果)
サイクロン式固液分離装置1の起動直後は、ダーティ液L1が加圧状態で供給口1aから本体部10の内部に供給されるが、十分な旋回流が発生するまでのあいだは、固液分離が促されないままダーティ液L1の一部が本体部10の下方Bに向かって落下し、残渣収容排出機構20において収容状態となっている収容穴Hに捕捉されることになる。
つぎに、本体部10の内部に適切な旋回流が発生し、ダーティ液L1の固液分離が促されると、収容穴Hには残渣Xのみが沈降して収容され、クリーン液Lcはクリーン液排出口1bから排出され、工作機械に戻されてクーラントとして再利用される(図1参照)。
ここで、収容穴Hの中では、質量(比重)の違いによって、固体であり、鉱物や金属の粉体である残渣Xがピストン200bに形成された下方の第2の収容部H2に沈積し、液体のほとんどはジョイント200aに形成された上方の第1の収容部H1に溜まるようになる(図5参照)。
そして、収容穴Hのうち、第2の収容部H2に沈積した残渣Xが所定の量になったところで、ピストン200bをスライドさせて、残渣Xを排出するが、ここで、ピストン200bをスライドさせることにより、収容部H2が形成されていないピストン200bの側面部分が、ジョイント200aに形成された収容部H1の底面部分を形成することになる(図6参照)。
本実施の形態の残渣収容排出機構20を採用することにより、残渣の排出に使用されている従来の方法とは異なり、ピストン200bをスライドさせて残渣Xを排出する場面でも第1の収容部H1にダーティ液L1が排出されずに残っていることで、本体部10の内部の圧力を変化させずに残渣を排出できる。すなわち、旋回流が発生し、固液分離が行われている最中でも、作業効率や作業精度を落とさないまま残渣Xの排出を行うことができることになる。
さらに、収容穴Hに収容され、残渣Xとともに排出されるダーティ液L1の量を抑制して残渣Xを効率的に排出することが可能となる。
ここで、収容穴Hに沈積する残渣Xの量の把握には、これまでの実績に基づく時間による測定や、収容部内の残渣量のセンサによる測定など、既知の手法の中で適宜選択可能である(図示せず)。
また、ダーティ液L1の本体部10内部への供給が終了すると、装置の起動時と同様に、十分な旋回流が得られないので、ダーティ液L1は固液分離が促されず本体部10の下方Bに向かって落下し、収容形態となっている収容穴Hに捕捉されることになる。
【0018】
(収容部の形状について)
残渣収容排出機構20が備える収容穴Hの形状については、ジョイント200aとピストン200bにかけて上方から下方に向けて徐々に内径が大きくなる略錐形状となっていることが望ましい(図7参照)。
これは、単純な円柱形状に比較して第1の収容部H1の収容可能体積を小さくし、収容可能体積を超過した分のダーティ液Lcを旋回流の影響が及ぶ本体部10の下方Bに供給し、固液分離を促す役割と、第1の収容部H1よりも第2の収容部H2の収容可能体積を大きくし、できるだけ多くの残渣Xを収容することで、残渣排出作業の回数抑制の役割を付与するためである。
また、収容穴H(H2)の側面に下方が広くなるように角度がついている(テーパー状になっている)ことで、残渣X排出時に収容穴H(H2)に残渣Xが付着したまま残留することを防止し、収容穴H(H2)内の残渣Xを残らず排出するという効果も期待できる。
【0019】
(第二の実施の形態)
本発明の第二の実施の形態を、具体的に図示した図面に基づいて、詳細に説明すると、次の通りである。
【0020】
(サイクロン式固液分離装置について)
図8図9は、本発明の第二の実施の形態のサイクロン式固液分離装置2を模式的に示す斜視図及び正面図であり、本体部10の構成や固液分離の方法は、上記第一の実施の形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0021】
(残渣収容排出機構の概要)
サイクロン式固液分離装置2の本体部10によって分離された残渣Xが排出される残渣排出口101cの下方に残渣収容排出機構21が連設されている。
本実施の形態における残渣収容排出機構21は、図10及び図11の断面図で示すように、三層のプレートから構成されており、上から第一層のプレートP1、第二層のプレートP2、第三層のプレートP3とする。サイクロン式固液分離装置2の本体部10の下端Beと接続する第一層のプレートP1と、第二層のプレートP2には当該2層にかけて上方から下方に向けて徐々に内径が大きくなる錐形状の孔(収容穴)が形成されるとともに、第一層上面の収容部H1の開口Hoの径と残渣排出口101cの径は対応するように形成されている。
第三層のプレートP3には孔は設けられておらず、第一層と第二層のプレートにかけて設けられた収容穴の底面部分を構成し、全体として凹形状を呈する収容穴Hを形成する。
そして、第二層のプレートP2は、第一層のプレートP1と第三層のプレートP3の間を水平方向にスライドできるように配されており、図12の(a)に示すように残渣Xの収容を行い、図12の(b)に示すようにスライドさせることにより残渣Xを残渣回収容器Dに排出する機構となっている。
ここで、残渣Xを収容する状態を収容形態、残渣Xを排出する状態を排出形態とし、第二層のプレートP2のスライドは手動若しくは、電気的な制御のもとで自動的に行われてもよい。
【0022】
(残渣収容排出機構の効果)
本実施の形態の残渣収容排出機構21を採用することにより、上記第一の実施の形態と同様に、本体部10の内部の圧力を変化させずに残渣を排出できるため、旋回流が発生し、固液分離が行われている中でも、残渣Xの排出を作業効率や作業精度を落とさないままに固液分離を行うことができる。
さらに、収容穴Hに収容され、残渣Xとともに排出されるダーティ液L1の量を抑制して残渣Xを効率的に排出することが可能となる。
【0023】
(第三の実施の形態)
本発明における第三の実施の形態のサイクロン式固液分離装置3は、図13及び図14に示すように、固液分離中の本体部12内部の内圧を一定に保つことを目的に、意図的に本体下部Bに一定量の液体を供給するための内圧保持用液Lmの供給口102dを有することを特徴とする。
上記第一の実施の形態や第2の実施の形態で示した残渣収容排出機構20、21によって、残渣Xを排出することにより、第1の収容部H1及び、本体部12の下部Bに沈積しているダーティ液L1の一部が残渣Xとともに排出されることが想定される。その際に本体部12の内圧が若干変動し、固液分離にムラが生じ、高効率で安定的な固液分離を妨げる可能性がある。そのため、内圧保持用液Lmにより本体部12の内圧をできるだけ一定に保ち、上述の第一、第二の実施の形態のサイクロン式固液分離装置1、2よりもさらに高効率な固液分離を維持する。
【0024】
内圧保持用液Lmの供給量の調節は、本体部12の下部Bの所定高さにセンサを設け、そのセンサによって、本体部12の下部Bに溜まっているダーティ液L1の嵩をモニターし、前記所定高さに達していない場合や、残渣Xの排出に伴い、減少した場合に所定高さに達するように弁の開閉等により供給量を調整しながら内圧保持用液Lmを供給口2dから供給する。
供給口2dは、所定高さ(溜まっているダーティ液L1の液面)よりも低い位置に設けられる(図14中、Y参照)。これは、供給時に内圧保持用液Lmが旋回流の影響を受けないようにするためである。
ここで供給される内圧保持用液Lmは、ダーティ液Lcまたは固液分離後のクリーン液Lcの一部を利用する流路(回路)を設け、供給口2dと接続する機構とすることが望ましい。
【0025】
上述のように、本発明のサイクロン式固液分離装置及び、サイクロン式固液分離装置における残渣収容排出機構は、様々な形態のサイクロン式固液分離装置に採用可能であり、容器や、コンベア装置等の複雑な残渣排出装置を使用せず、環境負荷を低減するとともに、省スペースで高効率な固液分離に貢献する。
【符号の説明】
【0026】
1,2,3 サイクロン式固液分離装置、
10,12 本体部、
100a,101a ダーティ液供給口、
100b,101b クリーン液排出口、
100c,101c 残渣排出口、
102d 内圧保持用液供給口、
20,21 残渣収容排出機構、
200a ジョイント(管状体)、
200b ピストン(摺動部材)、
200c シリンダ(底面部材)、
A 収容部の同一軸線を示すライン、
B 本体部の下部、
Be 本体部の下端、
D 残渣回収容器
H 収容穴、
H1 第1の収容部、
H2 第2の収容部、
Ho 収容穴の本体部側開口、
L1 ダーティ液、
Lc クリーン液、
Lm 内圧保持用液、
M 本体部の中央部分、
O 本体部下端の開口、
P1 第一層のプレート(管状体)、
P2 第二層のプレート(摺動部材)、
P3 第三層のプレート(底面部材)、
U 本体部の上部、
X 残渣及び一部のダーティ液、
Y 液面と内圧保持用液供給口の高さの関係

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15