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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/02 20060101AFI20231016BHJP
   G01K 1/143 20210101ALI20231016BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
G01D21/02
G01K1/143
G01H17/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021165515
(22)【出願日】2021-10-07
(65)【公開番号】P2023056261
(43)【公開日】2023-04-19
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-84719(JP,U)
【文献】特開平10-112249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 21/02
G01K 1/143
G01H 1/00 - 1/16
G01H 11/00 -11/08
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内方を所定方向に蒸気が流通する管体を計測対象物とする計測装置であって、
長尺状の部材であって、一端が前記計測対象物に当接するように配され、他端に振動の強度を計測する振動センサを有する振動プローブと、
長尺状の部材であって、一端が前記計測対象物に当接するように配され、前記計測対象物の表面温度を計測する温度プローブと、
前記振動プローブの前記一端を含む一部と、前記温度プローブの前記一端を含む一部とをそれぞれ外部に延出させた状態で、前記振動センサを含む前記振動プローブの残りの部分と、前記温度プローブの残りの部分とを内方に収容するプローブケースと、
屈曲性を有するとともに、長尺線状または長尺帯状の部材であって、前記プローブケースを前記計測対象物に固定する固定部材と、
を備え、
前記プローブケースは、前記固定部材を係止する複数の係止部を有し、前記振動プローブの一端および前記温度プローブの一端のそれぞれが前記計測対象物の表面に対して直に当接するように配されて、前記固定部材により前記計測対象物に固定されており、
前記固定部材は、前記計測対象物における表面の少なくとも一部に当接するように前記計測対象物の表面を経由するように掛け渡され、且つ、前記振動プローブの一端および前記温度プローブの一端が前記計測対象物の表面に直に当接した状態を維持するように前記複数の係止部に対して緊結されている、
計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置において、
前記振動プローブの一端が前記計測対象物の表面に当接する当接箇所と、前記温度プローブの一端が前記計測対象物の表面に当接する当接箇所とは、前記所定方向に並ぶように配置されており、
前記計測対象物の管軸方向からの正面視において、
前記振動プローブの一端および前記温度プローブの一端は、前記計測対象物の管軸を指向するように前記計測対象物の表面に当接し、
前記固定部材は、2つの端部を有するとともに、前記計測対象物の表面における前記管軸を挟んで前記当接箇所の反対側となる箇所で前記2つの端部同士が結合されている、
計測装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の計測装置において、
前記固定部材は、針金である、
計測装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の計測装置において、
前記プローブケースは、筒形状のケース部材と、前記ケース部材における前記計測対象物の側の開口の少なくとも一部を塞ぐように配される底部材とを有し、
前記底部材は、前記振動プローブおよび前記温度プローブが挿通する部分に貫通孔を有し、
前記振動プローブおよび前記温度プローブのそれぞれは、前記貫通孔を囲む周面に直に当接する状態で、前記底部材に対して固定されている、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関し、特に蒸気や復水が流れるスチーム配管やスチームトラップ等を計測対象とする計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトランプやその入り口部分のスチーム配管の振動の強度および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような診断には、スチームトラップ等の振動の強度を計測するための振動プローブと、スチームトラップ等の表面温度を計測するための温度プローブとを備える計測装置が用いられる。
【0003】
ここで、計測装置としては、作業者が携帯する可搬タイプのものと、スチームトラップ等に振動プローブや温度プローブが固定された設置タイプのものとがある。特許文献1には、設置タイプの計測装置が開示されている。特許文献1に開示の計測装置では、間にブロック状の座金が介挿された状態でスチーム配管に対してプローブが固定されている。特許文献1では、円環断面を有するスチーム配管に対してブロック状の座金を隙間なく密着させ、且つ、座金の反対側にプローブの先端を隙間なく当接させることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6389098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の計測装置では、スチームトラップ等の振動の強度および表面温度を正確に計測することが困難である、と考えられる。即ち、スチームトラップ等における蒸気漏れの有無を診断するためには、10kHz付近の振動の強度を得ることが重要となるが、上記特許文献1に開示の構造では、スチーム配管の表面とプローブの先端との間に座金が介挿されているために、当該座金の容積が原因で10kHz付近の共振周波数を得ることが困難である。よって、上記特許文献1に開示の計測装置では、正確な振動の強度および表面温度を計測することは困難である。
【0006】
本願発明者は、上記のような問題の解決を図ろうと鋭意研究を行い、図6に示すような構造の計測装置を開発した。
【0007】
図6に示すように、計測装置9は、プローブ部90と、接続部91と、本体部92とを備える。プローブ部90には、内方に振動プローブおよび温度プローブが収容されている。本体部92には、計測した振動の強度および表面温度を基に演算処理を実行する演算回路が構成された回路基板が収容されている。接続部91には、振動プローブおよび温度プローブと回路基板とを接続する接続線(リード線)が収容されている。
【0008】
計測装置9は、U字ボルト93およびナット94も備える。U字ボルト93は、プローブ部90のケースに設けられたブラケット901の通し孔901aに先端部が挿通されている。そして、U字ボルト93の先端部には、ナット94が螺合されている。これにより、計測装置9は、スチーム配管95に対して固定される。なお、図6に示すようにスチーム配管95に対して計測装置9を固定することにより、プローブ部90に収容された振動プローブおよび温度プローブの各先端がスチーム配管95の表面95aに直に当接することとなる。
【0009】
ところで、計測装置を固定する対象であるスチーム配管等は、固定箇所によって様々な外径を有する。このため、図6に示すような計測装置9をプラント等で複数固定しようとする場合には、固定対象となるスチーム配管等の外径に応じて、サイズが異なる複数種のU字ボルト93を準備しておく必要があり、また、ブラケット901の交換が必要となる場合もあり、コストの観点から改善の余地があると考えられる。
【0010】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、コスト上昇を抑制しながら、高精度な計測が可能な計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る計測装置は、内方を所定方向に蒸気が流通する管体を計測対象物とし、振動プローブと、温度プローブと、プローブケースと、固定部材と、を備える。前記振動プローブは、長尺状の部材であって、一端が計測対象物に当接するように配され、他端に振動の強度を計測する振動センサを有する。前記温度プローブは、長尺状の部材であって、一端が前記計測対象物に当接するように配され、前記計測対象物の表面温度を計測する。前記プローブケースは、前記振動プローブの前記一端を含む一部と、前記温度プローブの前記一端を含む一部とをそれぞれ外部に延出させた状態で、前記振動センサを含む前記振動プローブの残りの部分と、前記温度プローブの残りの部分とを内方に収容する。前記固定部材は、屈曲性を有するとともに、長尺線状または長尺帯状の部材であって、前記プローブケースを前記計測対象物に固定する。
【0012】
前記プローブケースは、前記固定部材を係止する複数の係止部を有し、前記振動プローブの一端および前記温度プローブの一端のそれぞれが前記計測対象物の表面に対して直に当接するように配されて、前記固定部材により前記計測対象物に固定されている。そして、前記固定部材は、前記計測対象物における表面の少なくとも一部に当接するように前記計測対象物の表面を経由するように掛け渡され、且つ、前記振動プローブの一端および前記温度プローブの一端が前記計測対象物の表面に直に当接した状態を維持するように前記複数の係止部に対して緊結されている。
【0013】
上記態様に係る計測装置では、長尺線状または長尺帯状の固定部材を用いてプローブケースを計測対象物に固定している。固定部材は、屈曲性を有するので、互いに外径が異なる計測対象物に対してもプローブケースを固定することが可能である。よって、上記態様に係る計測装置では、図6を用いて説明した装置のように計測対象物の外径に応じて複数の固定部材を準備しておく必要がなく、コスト上昇を抑制しながら計測対象物へのプローブケースの固定が可能である。
【0014】
また、上記態様に係る計測装置では、振動プローブおよび温度プローブの各一端が計測対象物の表面に直に当接した状態が維持されるように、計測対象物にプローブケースが固定されるので、上記特許文献1に開示の装置よりも高精度に振動の強度および表面温度を計測することが可能である。
【0015】
上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブの一端が前記計測対象物の表面に当接する当接箇所と、前記温度プローブの一端が前記計測対象物の表面に当接する当接箇所とは、前記所定方向に並ぶように配置されていてもよい。また、上記態様に係る計測装置において、前記計測対象物の管軸方向から正面視する場合に、前記振動プローブの一端および前記温度プローブの一端は、前記計測対象物の管軸を指向するように前記計測対象物の表面に当接してもよく、前記固定部材は、2つの端部を有するとともに、前記計測対象物の表面における前記管軸を挟んで前記当接箇所の反対側となる箇所で前記2つの端部同士が結合されていてもよい。
【0016】
上記態様に係る計測装置では、固定部材の端部同士が結合される箇所が、計測対象物の表面における管軸を挟んで振動プローブおよび温度プローブの各一端が当接する当接箇所とは反対側となる箇所であるので、振動プローブおよび温度プローブの各一端が指向する方向に計測対象物とプローブケースとの固定に係る力が作用し、これにより振動プローブおよび温度プローブの各一端が計測対象物の表面に直に当接した状態が良好に維持される。
【0017】
上記態様に係る計測装置において、前記固定部材は、針金であってもよい。
【0018】
上記態様に係る計測装置では、固定部材として針金を採用するので、専用の特殊な部材を用いる場合に比べてコストを抑えることができる。
【0019】
上記態様に係る計測装置において、前記プローブケースは、筒形状のケース部材と、前記ケース部材における前記計測対象物の側の開口の少なくとも一部を塞ぐように配される底部材とを有してもよい。また、上記態様に係る計測装置において、前記底部材は、前記振動プローブおよび前記温度プローブが挿通する部分に貫通孔を有してもよい。さらに、上記態様に係る計測装置において、前記振動プローブおよび前記温度プローブのそれぞれは、前記貫通孔を囲む周面に直に当接する状態で、前記底部材に対して固定されていてもよい。
【0020】
上記態様に係る計測装置では、振動プローブおよび温度プローブのそれぞれがプローブケースの底部材に対して固定されているので、例えば強風が吹くような環境下においても振動プローブおよび温度プローブの各一端を計測対象物の表面にしっかりと当接させた状態を維持することができる。即ち、上記態様に係る計測装置では、プローブケースに対する振動プローブおよび温度プローブの固定箇所が各一端から距離が短い位置に配置されているので、仮に強風が吹いてプローブケースが振れたとしても、振動プローブおよび温度プローブへのプローブケースの振れの影響を小さく抑えることができる。よって、上記態様に係る計測装置では、例え強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能である。
【発明の効果】
【0021】
上記の各態様に係る計測装置では、コスト上昇を抑制しながら、高精度な計測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の外観構成を示す斜視図である。
図2】スチーム配管への計測装置の固定形態を示す図であって、(a)はZ方向から正面視した正面図、(b)はY方向から側面視した側面図である。
図3】プローブ部の構成を示す断面図である。
図4】プローブ部の底部材を示す断面図である。
図5】振動プローブの構成を示す断面図である。
図6】先行して開発した計測装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0024】
1.計測装置1の構成
本発明の実施形態に係る計測装置1の構成について、図1を用いて説明する。
【0025】
図1示すように、計測装置1は、プローブ部10と、接続部11と、本体部12と、針金(固定部材)13とを備える。プローブ部10は、円筒形状のケース部材100と、ケース部材100のZ方向下部からY方向両側に向けて突設された係止ビス(係止部)101とを有する。針金13は、計測対象物であるスチーム配管500のZ方向下部を経由するように、2つの係止ビス101に緊結されている。
【0026】
スチーム配管500は、管軸Ax500に沿って延びる管体であって、内部を蒸気が流通する。プローブ部10は、ケース部材100の内方に収容された振動プローブと温度プローブとを有する。そして、振動プローブおよび温度プローブの各先端(一端)は、スチーム配管500の表面500aに直に当接するように配設されている。なお、プローブ部10の詳細構造については、後述する。
【0027】
2.スチーム配管500へのプローブ部10の固定構造
上述のように、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ部10が針金13を用いてスチーム配管500に固定されている。針金13を用いたスチーム配管500へのプローブ部10の固定構造について、図2を用いて説明する。なお、図2(a)は、スチーム配管500およびプローブ部10をスチーム配管500のX方向(管軸Ax500が延びる方向)から正面視した図であり、図2(b)は、スチーム配管500およびプローブ部10をY方向から側面視した図である。
【0028】
図2(a)に示すように、プローブ部10のケース部材100からY方向両側に突出するように設けられた2つの係止ビス101には、外側端部の近傍に針金(長尺線状の部材)13が取り付けられている。針金13は、一方の係止ビス101に取り付けられた箇所からスチーム配管500の表面500aにおけるZ方向下部の一部に沿うように当該表面500aを経由して、もう一方の係止ビス101まで掛け渡されている。針金13は、係止ビス101同士の間で1周または複数周往復するように掛け渡されている。
【0029】
針金13は、1本または複数本で構成され、スチーム配管500の表面500aにおけるZ方向下端となる部分で端部同士が結ばれている(結合されている)。即ち、本実施形態では、プローブ部10のケース部材100は、内方に収容された振動プローブおよび温度プローブの各先端がスチーム配管500の管軸Ax500を指向するようにスチーム配管500の表面500aにおけるZ方向上端となる部分に配置され、針金13の端部同士が結ばれてなる結線部13bは、管軸Ax500および振動プローブおよび温度プローブの各先端が当接する箇所を通る中心線Lz上であって、管軸Ax500を挟んで振動プローブおよび温度プローブの各先端が当接する箇所とは反対側となる箇所に配置されている。
【0030】
また、図2(b)に示すように、針金13の結線部13bは、係止ビス101に取り付けられた箇所に対してZ方向の略真下となる箇所に配置されている。これにより、針金13は、スチーム配管500の表面500aの一部に密に当接する状態で、2つの係止ビス101に緊結されている。
【0031】
なお、図2(a)に示すように、プローブ部10は、中心線Lに対して直交する中心線Lに係止ビス101が略平行となるように配されている。また、一方の係止ビス101の先端から他方の係止ビス101の先端までのY方向での距離は、スチーム配管500の外径よりも小さくなるように設定されている。これにより、針金13がスチーム配管500の表面500aに密接する部分(密接部13a)の長さを長くとることができ、スチーム配管500へのプローブ部10の固定を安定なものとすることができる。
【0032】
3.プローブ部10の詳細構造
プローブ部10の詳細構造について、図3を用いて説明する。
【0033】
図3に示すように、プローブ部10は、ケース部材100、蓋部材102、底部材103、振動プローブ105、および温度プローブ106を備える。ケース部材100は、円筒形状の部材であって、例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)から形成されている。なお、図1に示した係止ビス101は、ケース部材100の外周壁に取り付けられている。
【0034】
蓋部材102は、円板形状を有する部材であって、ケース部材100におけるZ方向上部の開口(スチーム配管500から遠い側の開口)を閉じる部材である。蓋部材102は、例えば、ABS樹脂から形成されている。底部材103は、ケース部材100のZ方向下部の開口(スチーム配管500側の開口)の一部を閉じる部材であって、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から形成されている。
【0035】
底部材103は、複数(例えば、2本)のビス104によりケース部材100の底部に固定されている。底部材103は、2つの貫通孔103a,103bを有する。貫通孔103a,103bは、底部材103の厚み方向(Z方向)を貫通するように設けられている。
【0036】
なお、本実施形態に係る計測装置1では、ケース部材100と、蓋部材102と、底部材103との組み合わせをもってプローブケースを構成している。
【0037】
振動プローブ105は、長尺状の部材であって、先端(一端)105aを含む一部が底部材103の貫通孔103aを挿通してZ方向下方に延出し、残りの部分がケース部材100の内空間100aに収容されている。なお、図1に示すようにスチーム配管500にプローブ部10を固定した場合には、先端105aがスチーム配管500の管軸Ax500を指向するように振動プローブ105が配される。
【0038】
振動プローブ105は、底部材103の貫通孔103aを挿通する部分で当該底部材103に固定され(矢印A1)、上記残りの部分はケース部材100に対して非接触の状態で配されている(矢印A3)。振動プローブ105は、他端(Z方向上側の端部)から延出するリード線105bを有する。リード線105bは、蓋部材102を挿通して、接続部11から本体部12へと配策されている。振動プローブ105は、先端105aが当接するスチーム配管500の振動の強度を計測する。
【0039】
温度プローブ106は、長尺状の部材であって、先端(一端)106aを含む一部が底部材103の貫通孔103bを挿通してZ方向下方に延出し、残りの部分がケース部材100の内空間100aに収容されている。なお、図1に示すようにスチーム配管500にプローブ部10を固定した場合には、先端106aもスチーム配管500の管軸Ax500を指向し、振動プローブ105の先端105aに対してX方向(スチーム配管500の管軸Ax500が延びる方向)に並ぶように配される。
【0040】
温度プローブ106は、底部材103の貫通孔103bを挿通する部分で当該底部材103に固定され(矢印A2)、上記残りの部分はケース部材100および振動プローブ105に対して非接触の状態で配されている(矢印A4)。温度プローブ106は、他端(Z方向上側の端部)から延出するリード線106bを有する。リード線106bは、蓋部材102を挿通して、接続部11から本体部12へと配策されている。温度プローブ106は、スチーム配管500の表面500aの温度を計測する。
【0041】
本実施形態に係る計測装置1では、振動プローブ105の先端105aおよび温度プローブ106の先端106aが、ともに曲面(半球面)で外面が構成されている。これにより、スチーム配管500の表面500aに対して振動プローブ105の先端105aおよび温度プローブ106の先端106aを確実に当接させるのに有効である。
【0042】
4.底部材103の構造
底部材103の構造について、図4を用いて説明する。
【0043】
図4に示すように、底部材103をZ方向に直交する方向で断面視した場合に、底部材103は、互いにX方向に対向する2つの円弧部103i,103jと、互いにY方向に対向する2つの弦部103g,103hとで外周が構成されている。弦部103gと弦部103hとは、互いに並行する。円弧部103i,103jは、円環断面を有するケース部材100の内周面100bに隙間なく当接する。
【0044】
底部材103は、4つのネジ孔103c~103fを有する。ネジ孔103cは、弦部103g,103hが延びる方向(X方向)に平行な中心軸Ax1を有し、貫通孔103aに連続する。ネジ孔103dは、弦部103g,103hが延びる方向(X方向)に平行な中心軸Ax2を有し、貫通孔103bに連続する。ネジ孔103eは、弦部103g,103hが延びる方向(X方向)に対して直交する中心軸Ax3を有し、貫通孔103aに連続する。ネジ孔103fは、弦部103g,103hが延びる方向(X方向)に対して直交する中心軸Ax4を有し、貫通孔103bに連続する。
【0045】
底部材103は、ケース部材100の端部開口に対して、2本のビス(雄ネジ)104により固定されている。具体的に、ケース部材100には、底部材103を装着した際にネジ孔103c,103dに連続する通し孔100c,100dが形成されている。それぞれのビス104は、通し孔100c,100dを挿通してネジ孔103c,103dの雌ネジに螺合している。底部材103は、ケース部材100に対して、ネジ孔103c,103dへのビス104の螺合により固定されている。
【0046】
振動プローブ105は、貫通孔103aに先端105a側の一部が挿通された状態で、イモネジ(雄ネジ)107のネジ先端からの押圧を受けて貫通孔103aの内周面に外周面の一部が押し付けられて当接している。振動プローブ105は、ネジ孔103eの雌ネジとイモネジ107との締結力により底部材103に固定されている。
【0047】
温度プローブ106は、貫通孔103bに先端106a側の一部が挿通された状態で、イモネジ(雄ネジ)107のネジ先端からの押圧を受けて貫通孔103bの内周面に外周面の一部が押し付けられて当接している。温度プローブ106は、ネジ孔103fの雌ネジとイモネジ107との締結力により底部材103に固定されている。なお、本実施形態で用いるイモネジ107とは、「六角穴付き止めネジ」のことを指す。
【0048】
ここで、係止ビス101は、ケース部材100にY方向に設けられたネジ孔100e,100fに対して螺合されている。本実施形態においては、一例としてネジ孔100e,100fがケース部材100を厚み方向に貫通するよう形成されている。ただし、ネジ孔100e,100fについては、必ずしも貫通している必要はない。
【0049】
5.振動プローブ105の詳細構造
振動プローブ105の詳細構造について、図5を用いて説明する。
【0050】
図5に示すように、振動プローブ105は、探触棒1050、台座部1051、断熱部1052、振動センサ1053、およびビス1054を有している。探触棒1050は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から形成された円筒状または円柱状の部材である。探触棒1050の先端が振動プローブ105の先端105aであり、外凸の曲面で外面が構成されている。
【0051】
台座部1051は、金属材料(例えば、ステンレス鋼)から形成された円柱状の部材であって、振動プローブ105の中心軸Ax105上に形成されたネジ孔1051bを有する。断熱部1052は、アルミナセラミックスから形成された部材であって、円筒状を有する。断熱部1052には、一方端側から探触棒1050の端部(先端105aとは反対側の端部)が嵌入され、他方端側から台座部1051が嵌入されている。
【0052】
断熱部1052に嵌入された探触棒1050と台座部1051とは、互いの端面1050a,1051a同士の間に隙間SPが空くように配されている。なお、詳細な図示を省略しているが、断熱部1052と探触棒1050および台座部1051とは、中心軸Ax105に対して交差する方向の外側からビスなどにより固定される。
【0053】
振動センサ1053は、圧電素子として圧電型セラミックスが使用された圧電型加速度センサからなる。振動センサ1053は、ビス1054と台座部1051におけるネジ孔1051bの雌ネジとの螺合をもって台座部1051に隙間なく固定されている。
【0054】
ここで、振動プローブ105のサイズ設定方法について、説明する。
【0055】
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物においてその振動を計測した場合、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって、特定の周波数成分が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動周波数を調べることで、計測対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別できることが知られている(特開2016-11904号公報)。そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの有無の診断を行う場合に使用する計測装置1の振動プローブ105については、10kHz付近の振動を高精度に計測することができるように形成することが重要となる。
【0056】
以上のような知見を基として、探触棒1050、台座部1051、および断熱部1052のサイズ設定がなされている。具体的に、共振周波数をf、探触棒1050、台座部1051、および断熱部1052の振動加速度をC、先端105aから台座部1051における振動センサ1053の取付面までの長さをL、先端105aから台座部1051における振動センサ1053の取付面までの断面サイズをDとするとき、次の関係を満たすようにサイズ設定がなされている。
f=C×(D/L) ・・(式1)
上記関係式において、共振周波数fが10kHz付近としてサイズ設定がなされる。
【0057】
6.効果
本実施形態に係る計測装置1では、長尺線状である針金(固定部材)13を用いてプローブケース(ケース部材100、蓋部材102、および底部材103を含む部材)をスチーム配管(計測対象物)500に固定している。針金13は、外径が異なるスチーム配管500に対してもプローブケースを固定しようとする場合においても、そのまま用いることが可能である。よって、計測装置1では、図6を用いて説明した装置のようにスチーム配管の外径に応じて複数種の固定部材を準備しておく必要がなく、コスト上昇を抑制しながらスチーム配管500へのプローブケースの固定が可能である。
【0058】
また、本実施形態に係る計測装置1では、振動プローブ105および温度プローブ106の各先端105a,106aがスチーム配管500の表面500aに直に当接した状態が維持されるように、スチーム配管500に対してプローブケースが固定されるので、上記特許文献1に開示の装置よりも高精度に振動の強度および表面温度を計測することが可能である。
【0059】
また、本実施形態に係る計測装置1では、針金13の端部同士を結んでなる結線部13bが、スチーム配管500の横断面において、当該スチーム配管500の表面500aにおける管軸Ax500を挟んで振動プローブ105および温度プローブ106の各先端105a,106aが当接する当接箇所とは反対側となる箇所(Z方向の下端)であるので、振動プローブ105および温度プローブ106の各先端105a,106aが指向する方向にスチーム配管500とプローブケースとの固定に係る力が作用し、これにより振動プローブ105および温度プローブ106の各先端105a,106aがスチーム配管500の表面500aに直に当接した状態が良好に維持される。
【0060】
また、本実施形態に係る計測装置1では、固定部材の一例として針金13を採用するので、専用の特殊な部材を用いる場合に比べてコストを抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る計測装置1では、振動プローブ105および温度プローブ106のそれぞれがプローブ部10の底部材103に対して固定されているので、例えば強風が吹くような環境下においても振動プローブ105および温度プローブ106の各先端105a,106aをスチーム配管500の表面500aにしっかりと当接させた状態を維持することができる。即ち、計測装置1では、プローブ部10における振動プローブ105および温度プローブ106の固定箇所図3の矢印A1,A2で示す箇所)が各先端105a,106aから距離が比較的短い位置に配置されているので、仮に強風が吹いてケース部材100が振れたとしても、振動プローブ105および温度プローブ106へのケース部材100の振れの影響を小さく抑えることができる。よって、計測装置1では、例え強風が吹くような環境下においても高精度な計測が可能である。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る計測装置1では、コスト上昇を抑制しながら、高精度な計測が可能である。
【0063】
[変形例]
上記実施形態に係る計測装置1では、固定部材の一例として針金13を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、配管用ホースバンドのような帯板状の部材を採用することもできる。また、固定部材を構成する材料については、必ずしも金属材料である必要はなく、スチーム配管500のような計測対象物の表面温度に対して耐性を有するような材料であれば採用することが可能である。
【0064】
上記実施形態に係る計測装置1では、係止部の一例である係止ビス101をケース部材100に2つ取り付けてなる構成を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ケース部材100の外面にL字状等の形状を有するブラケットを取り付けて、当該ブラケットに固定部材を緊結することとしてもよい。また、底部材103の一部をケース部材100の径方向外側まで延出させて係止部とすることも可能である。なお、係止部の形成数については、3つ以上であってもよい。
【0065】
上記実施形態に係る計測装置1では、中実円柱体である探触棒1050を有する振動プローブ105を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、中空円筒体の探触棒を有する振動プローブを採用することもできる。また、探触棒の横断面形状(中心軸Ax105に直交する方向の断面形状)については、円形に限らず、多角形や長円形(楕円形を含む。)とすることも可能である。
【0066】
上記実施形態に係る計測装置1では、探触棒1050をステンレス鋼等の金属材料から形成し、断熱部1052をアルミナセラミックスから形成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、探触棒をアルミナセラミックスから形成することや、断熱部を樹脂材料から形成することも可能である。
【0067】
上記実施形態に係る計測装置1では、イモネジ107を用いて振動プローブ105および温度プローブ106を底部材103に固定することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、頭を有するビスやボルトを用いて振動プローブおよび温度プローブを底部材に固定することとしてもよい。また、リベット止めや溶接、さらにはロウ付けなどを用いてもよい。
【0068】
上記実施形態に係る計測装置1では、互いに別部材であるケース部材100と底部材103とを接合することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ケース部材と底部材とが一体形成された構成を採用することも可能である。
【0069】
上記実施形態に係る計測装置1では、底部材103において、振動プローブ105が挿通する貫通孔103aと温度プローブ106が挿通する貫通孔103bとを別々に設けることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つの貫通孔に振動プローブと温度プローブとを挿通させることとしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 計測装置
10 プローブ部
12 本体部
13 針金(固定部材)
13b 結線部
100 ケース部材
101 係止ビス(係止部)
103 底部材
105 振動プローブ
106 温度プローブ
500 スチーム配管(計測対象物)
1050 探触棒
1051 台座部
1052 断熱部
1053 振動センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6