(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】スライドレールのロック機構
(51)【国際特許分類】
A47B 88/50 20170101AFI20231016BHJP
A47B 88/49 20170101ALI20231016BHJP
【FI】
A47B88/50
A47B88/49
(21)【出願番号】P 2022024122
(22)【出願日】2022-02-18
(62)【分割の表示】P 2018084469の分割
【原出願日】2018-04-25
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福谷 剛
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主にラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールで構成されるスライドレールの摺動を一時固定する、固定側レールに設けた係止部材と、移動
側レールに設けたロック部材で構成されるロック装置において、ロック部材は、該係止部材に係脱自在で且つ該係止部材に対する係止を係止解除操作により移動
側レールを摺動可能にする操作部材とベース部材とを備え、ベース部材を該移動
側レールに嵌合取り付けし、移動側レールには操作部材を軸支するための支持部を有することなく、かつ、操作部材が移動
側レールには直接的に軸支保持されずにベース部材に軸支保持されるようにし、かつ、操作部材に設けられた案内溝に、ベース部材に設けられた外れ止め片が挿通するように装入されることにより、操作用腕部を左右方向に傾動させても、操作用腕部の傾きが規制され、操作部材はベース部材から容易には外れないようにしたことを特徴とするスライドレールのロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に陳列棚や引き出しやグリル調理器等に用いられるロック装置付きのスライドレールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドレールのロック装置として数々のものが提供されている。
その代表的なものとして先行技術文献1(特許文献1)に示すように、ラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールと、固定側レールの前端部内面に着脱自在に設けられた係止部材と、係止部材に対応して、移動側レールの前端部内面に設けられたロック部材よりなるスライドレールのロック装置がある。
該ロック装置は、係止部材に設けられ、固定側レールの高さ方向の中心部に設けられた係止突起と、ロック部材に設けられる係止突片が係止することによりロック状態が維持されるもので、ロック部の操作部材を上下いずれかの方向に回動させて、係止突片を上下いずれかの方向に退避させて係止突起と係止突片の係止状態を解除しロックを解除するものである。
【0003】
ロック部の操作部材を上下いずれかの方向に回動させるのは、ロック装置に右用、左用を作らずに左右で兼用できるようにしているものであるが、係止突起の上下いずれからでも係止突片の係止状態を解除できるようにしているため、係止突起と係止突片の係止状態が、スライドレールの高さ方向の中間部付近のみで行われている。
このようなロック装置の場合、移動側スライドレールに大きな荷重が掛かる場合、ロック装置のロック状態であっても、移動側スライドレールが荷重によって下側に撓み、係止突起と係止突片の係止状態が解除されることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡単な構造でコンパクトに構成でき、部品点数も少なく安価に製作でき、作業性、メンテナンス性にも優れ、より確実にロック状態が維持可能なロック装置付きのスライドレールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、上記課題を解決する為、本発明が第1の手段として構成したところは、主にラック等の本体に固定される固定側レールと、固定側レールに対し摺動自在に配設された中間レールと、中間レールに対し摺動自在に配設された移動側レールで構成されるスライドレールの摺動を一時固定する、固定側レールに設けた係止部材と、移動側レールに設けたロック部材で構成されるロック装置において、ロック部材は、該係止部材に係脱自在で且つ該係止部材に対する係止を係止解除操作により移動側レールを摺動可能にする操作部材とベース部材とを備え、ベース部材を該移動側レールに嵌合取り付けし、操作部材が移動側レールには軸支保持されずベース部材に軸支保持されるようにし、移動側レールには操作部材を軸支するための支持部を有することなく、かつ、操作部材が移動側レールには直接的に軸支保持されずにベース部材に軸支保持されるようにし、かつ、操作部材に設けられた案内溝に、ベース部材に設けられた外れ止め片が挿通するように装入されることにより、操作用腕部を左右方向に傾動させても、操作用腕部の傾きが規制され、操作部材はベース部材から容易には外れないようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の手段として構成したところによると、操作部材がベース部材に軸支保持されているので、ロック部材をレールに取り付ける際、先にベース部材に操作部材を取り付けてから、操作部材を含むベース部材をレールに取り付けることが可能となり、操作部材、ベース部材、レールの3部材を同時に触る必要がなく組み立てが容易である。
【0009】
また、操作部材はベース部材から容易に外れないようにされるから、ロック部材をレールに取り付ける際に操作部材が脱落することなく組立作業が容易になるばかりか、操作部材の操作時にベース部材から容易に外れないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のスライドレールの伸長途中状態の斜視図
【
図4】移動側レールとロック部材の裏面側の要部分解斜視図
【
図6】固定側レールと係止部材の裏面側の要部斜視図
【
図7】係止突片の被案内傾斜面と係止突起の案内傾斜面が接触している状態を示す説明図
【
図8】係止突片が係止突起に接触しながら、移動側レールが摺動している状態を示す説明図
【
図10】係止突片が係止突起の上方向に移動し、ロック状態が解除された状態を示す説明図
【
図11】係止突片が係止突起の下方向に移動し、ロック状態が解除された状態を示す説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
まず、スライドレールの基本的構成を
図1、
図2に基づいて説明する。
尚、便宜的に、
図2における上下方向を上下方向と云い、左右方向を左右方向と云い、
図1における左下側を引き出し側、右上側を引き込み側と云う。
スライドレール100は、陳列棚等の本体の内面に連結ネジ等で連結される固定側レール1と、固定側レール1に対し、固定側ボール保持板3に回転自在に保持された複数個のボール30・・・を介して摺動自在に設けられた中間レール4と、中間レール4に対し、移動側ボール保持板5に回転自在に保持された複数個のボール50・・・を介して摺動自在に設けられた移動側レール2より構成され、移動側レール2が固定側レール1に収納された状態を保持する係止部材7が固定側レール1の前端部内面に、係止部材7に係脱自在のロック部材6が、移動側レール2の前端部内面に設けられている。
【0012】
固定側レール1は、金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて形成された内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁11、11と、基板12より断面略C字形をなし、摺動方向前部に、基板12の一部が移動側レール2方向に突出し、固定側ボール保持板3、中間レール4、移動側ボール保持板5等を介して、移動側レール2を最大引き出した状態で停止させ、スライドレール100を最大伸長となすレール伸長時ストッパー13と、摺動方向後端部に、基板12を移動側レール2方向に突出し、中間レール4等を介して、移動側レール2が最も収納された状態で停止させ、スライドレール100を最短縮小状態となすレール短縮時ストッパーが形成されている。
【0013】
中間レール4は、前記固定側レール1側に挿入されるインナー中間レール4aと移動側レール2が挿入可能なアウター中間レール4bで形成されている。
インナー中間レール4aは、固定側レール1より短長な金属製の細長条板の短手両端部を、外向き円弧状に折り曲げて、外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁42a、42aと、基板41aからなり、移動側レール2と同形状な断面略コ字形に形成されている。
アウター中間レール4bは、移動側レール2より短長な金属製の細長条板の短手両端部を内向き円弧状に折り曲げて、内面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有する上下折曲縁42b、42bと、基板41bからなり、固定側レール1と同形状な断面略C字形に形成されている。
そして、インナー中間レール4aとアウター中間レール4bは、コ字状断面の開口側とC字形断面の開口側が互いに外向きとなるように基板41a、40bが背中合わせに固着され、断面略I字形となるように中間レール4が構成されている。
【0014】
また、インナー中間レール4aの基板41aの後端部に固定側レール1側に突出し、移動側レール2の引き出し時、固定側ボール保持板3の後端部に当接するインナー中間レール後端ストッパー44aが形成される。
そして、アウター中間レール4bの基板41bの後端部に移動側レール2側に突出し、移動側レール2の収納時、移動側レール2の後端部が当接するアウター中間レール後端ストッパー44bが形成され、基板41bの前端部付近に、移動側ボール保持板5の前端が当接するアウター中間レール前端ストッパー45bが形成されている。
【0015】
移動側レール2は、固定側レール1とほぼ同等の長さで、、金属製の細長条板の短手両端部を内面側に膨出するように外向き円弧状に折り曲げて形成された外面長手方向(摺動方向)にボール案内溝を有すし、上下折曲縁21、21と、基板22より固定側レール1に対向する断面略コ字形に形成されている。
そして、基板22の後端部には、スライドレール100の最大伸長状態で移動側ボール保持板5の後端に当接し、移動側レール2の収納時、前記アウター中間レール後端ストッパー44bの内面に当接する移動側レール後端ストッパー220が形成されている。
【0016】
固定側ボール保持板3は帯条金属板にてインナー中間レール4aより所定寸法短くした、固定側レール1とインナー中間レール4a間に挿入可能な大きさの基板31と、固定側レール1とインナー中間レール4aの各上下折曲縁11、11、42a、42a間に位置する上下突出縁32、32より断面略コ字形に形成され、上下突出縁32、32の長手方向(摺動方向)数個所でボール30・・・を回転自在に保持している。
【0017】
移動側ボール保持板5は帯条金属板にてアウター中間レール4bより所定寸法短くした、移動側レール2とアウター中間レール4b間に挿入可能な大きさの基板51と、移動側レール2と中間レール4の各上下折曲縁21、21、42b、42b間に位置する上下突出縁52、52より断面略コ字形に形成され、突出縁52、52の長手方向(摺動方向)数個所でボール50・・・を回転自在に保持している。
【0018】
スライドレール100は上記の如く構成される。
尚、スライドレール100は、基板31、基板51が垂直方向に配置され、基板31、基板51を挟んでボール30・・・、ボール50・・・がそれぞれ、縦方向に対向配置される状態(
図2の状態)をスライドレール100の縦使いと云い、基板31、基板51が水平方向に配置され、基板31、基板51を挟んでボール30・・・、ボール50・・・がそれぞれ、水平方向に対向配置される状態をスライドレール100の横使いと云う。
そして、スライドレール100の移動側レール2が固定側レール1に最も収納された状態(最短縮小状態)では、インナー中間レール後端ストッパー44aが、固定側レール1のレール短縮時ストッパーに当接し、移動側レール2の移動側レール後端ストッパー220がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接し、移動側レール21のロック部材6が固定側レール1の係合部7に係合している。(ロック状態。尚、この状態でロック部材6と係止部材7の係止状態を解除するための解除用クリアランスが設けられ、移動側レール2はスライドレール100の摺動方向に若干移動可能となっている。)
【0019】
この状態から、ロック部材6の係合部7に対する係合状態を解除して、移動側レール2を前方に引き出していくと、移動側レール2の移動距離の2分の1の距離だけ移動側ボール保持板5は移動し、中間レール4の移動距離の2分の1の距離だけ固定側ボール保持板3は移動するので、移動側レール後端ストッパー220の前面が移動側ボール保持板5の後端に当接し、移動側ボール保持板5の前端がアウター中間レール前端ストッパー45bの後面に当接し、インナー中間レール後端ストッパー44aの前面が固定側ボール保持板3の後端に当接し、固定側ボール保持板3の前端が、固定側レール1のレール伸長時ストッパー13の後面に当接して、移動側レール2、中間レール4は停止し、スライドレール100は最大伸長状態となる。
【0020】
次に、第1実施例のロック部材6を
図3、
図4に基づいて説明する。
第1実施例のロック部材6は、合成樹脂材で一体に成型されたベース部材60と、合成樹脂材で一体に成型された操作部材61とで構成される。
【0021】
ベース部材60は、移動側レール2の上下折曲縁21、21の内面に嵌合する移動側上下嵌合凹部602、602を上下面に有する固定基板部601と、固定基板部601の後部(引き込み側部)で固定側レール3側に突出する上下に一対の突出片603、603と、突出片603、603それぞれの前方側(引き出し側)に突出した上下方向に対称に対向配設される弾性部材604、604と、固定基板部601の前端に前方に向かって突出する、後述する操作部材61に形成される案内溝618に挿通し、操作部材61の外れを防止する外れ止め片605より構成される。このようにベース部材60は、合成樹脂製で一体的に形成されている。
【0022】
そして、固定基板部601は、正面視(
図2、
図13の方向から見た状態)において、移動側レール2の内面に嵌合するように前後方向に長い直方体で、上下嵌合凹部602、602が設けられ、移動側レール2の基板22側に、突出片603、603裏面から、前方に長い回動凹部601aが設けられ、回動凹部601aは、突出片603、603の前方で部分的に固定側レール側に貫通し、突出片603、603裏面から基板22側に向かって突出する円柱状の回転軸601bが設けられている。
【0023】
上側の突出片603は、後述する固定側レール1に設置される係止部材7の固定部72に当接しない程度に近接する高さまで固定側レール1側に突出したものであって、上面は、同じく後述する係止部材7の固定側上下嵌合突部71の内面の当接受面71aに当接しない程度に近接する高さとされ、該上面が当設面603cとされ、当設面603cの後部と固定側レール1側の面に引き込み側に傾斜する案内面603aが形成されている。そして、突出片603、603は、上下方向に対称に対向配設されるものであるから、下側の突出片603は、上側の突出片603と対称形となっており、該突出片603、603間には係止突起73が通過可能な凹部の通過凹部603bが形成されている。
【0024】
上下の弾性部材604、604の内、上側の弾性部材604は、上側の突出片603の前面(引き出し側面)から前方に向かって延伸する弾性杆604aと、弾性杆604aの前端部から下部に膨出する円弧状の押圧部604bとで構成されている。下側の弾性部材604は、上側の弾性部材604と同形のものが、上下に対象に対向して配設される。そして、対向する押圧部604b、604bの先端間は、後述する操作部材61のロック部613の高さ寸法より若干短い寸法分開けられる。
【0025】
外れ止め片605は、固定基板部601の前面に形成されたフランジ部601cの前面側から前方に向かって平板状に突出形成されている。
また、固定基板部601の後面から後方にむかって、移動側レール2の基板22に沿うように固定角孔を有する固定片601dが突設されている。
【0026】
操作部材61は、ベース部材60に上下方向に回動自在に軸支される回転基部611と、回転基部611の前方に連設され、固定側レール1側の面に係止突片614を有するロック部613と、ロック部613の前方に連設されて、移動側レール2の前方に突出し、回転基部611を上下いずれかの方向に回動させる操作部の操作用腕部617と、操作用腕部617の移動側レール2の基板22側の引き込み側面部に設けられる上下方向に貫通する案内溝618より構成されている。
そして、回転基部611には、表面側(固定側レール1側)から裏面側(移動側レール2の基板22側の面)にかけて貫通する回動保持用貫通孔612が形成されている。
【0027】
係止突片614は、係止部材7の固定部72に当接しない程度に近接する高さまで固定側レール1側に突出したものであって、前面(引き出し側面)に円弧状で凹状の係合ロック部614aが形成され、係止突片614の上面側と下面側は後方に向かって傾斜する被案内傾斜部614b、614bが形成されている。
【0028】
次に、ロック部材6の移動側レール2への装着方法を詳述する。
操作部材61の回転基部611を、ベース部材60の回動凹部601aの貫通側から挿入し、ベース部材60の回転軸601bに回動保持用貫通孔612が軸支されるように、かつ、操作部材61の案内溝618にベース部材60の外れ止め片605が挿通するように装入する。
前述の通り、押圧部604b、604bの先端間は、後述する操作部材61のロック部613の高さ寸法より若干短いので、操作部材61のロック部613の上面と下面で、押圧部604b、606の先端間を押し広げ、弾性杆604a、604aを弾性変形させながら操作部材61はベース部材60に装入されることになる。
したがって、ベース部材60に操作部材61が装着された状態で、操作部材61には、押圧部604b、604bを介して弾性杆604a、604aの若干の弾性力が常に伝わるので、操作部材61は上下回動の中間部で保持されることになる。この状態で、操作部材61は、ベース部材60に対して回動可能となりロック部材6の組み立ては完成する。
【0029】
そして、ロック部材6は、移動側レール2の引き出し方向端部の所定の位置に、ベース部材60の固定片601dを移動側レール2の前端面から後方に向かって、フランジ部601cが移動側レール2の前端面に近接するように押し込む。
このように押し込むと、固定片601dの固定孔と移動側レール2の基板22側に凸設された固定片22aが係合し、ロック部材6の前後の移動が固定され、移動側レール2の前端面から抜けないようになる。そして、移動側上下嵌合凹部602、602は、移動側レール2の膨出する上下折曲縁21、21の内面に沿うように施されているから、ロック部材6は、固定側レール1側にも抜けないようになり、ロック部材6は移動側レール2に嵌合状態で装着保持される。
【0030】
また、操作部材61の案内溝618にベース部材60の外れ止め片605が挿通するように操作部材61は装着されているから、操作用腕部617を左右方向に傾動させても、案内溝618の内面に外れ止め片605が当接し、操作用腕部617の傾きが規制され、操作部材61はベース部材60から容易には外れない。
【0031】
係止部材7は、
図6、7に示すように、固定側レール1の上下折曲縁11、11の内面に形成されたボール案内溝に嵌合される固定側上下嵌合突部71、71と、固定側上下嵌合突部71、71間に連設された固定部72より、合成樹脂材にて一体に形成されている。
そして、固定側上下嵌合突部71、71の上部側の下面と、下部側の上面はそれぞれ、当接受面71a、71aとされ、固定側上下嵌合突部71、71間、すなわち、当接受面71a、71a間は、ロック部材6の突出片603、603の当接面603c、603c間の距離に対して、若干大きく形成され、当接受面71a、71a間に突出片603、603が挿通可能で、かつ、当接受面71aと当接面603cが近接するように設定されている。
【0032】
そして、固定部72の固定側レール1の基板12側の面に、固定側レール1の基板12に形成された取付用嵌合孔121に嵌合する嵌合突起721が連設され、移動側レール2側の面に前記操作部材61の係止突片614に対応して、係止突起73が連設され、係止突起73の後方に、スライドレール100を固定するネジの逃がし孔の開口孔722が形成されている。
【0033】
係止突起73は、操作部材61のロック部613に当接しない程度に近接する高さまで移動側レール2側に突出し、前端部の上下面に、係止突片614に形成された被案内傾斜部614bに対応して、後方に向かって傾斜する案内傾斜部731、731と、係止突片614の係合ロック部614aに対応して後端部に形成された当接係止部732より形成されている。
【0034】
このように構成された係止部材7は、固定側レール1の引き出し方向端部の所定の位置に、固定側レール1の内面から外側に向かって押し込まれ、固定側レール1に装着される。
この装着時には、固定側上下嵌合突部71、71と連接する固定部72が弾性変形することによって固定側上下嵌合突部71、71が固定側レール1のボール案内溝部に装入され、固定側レール1の取付用嵌合孔121、121に係止部材7の嵌合突起721、721が装入され、固定部72の弾性力によって係止部材7が固定側レール1に嵌合状態で装着保持される。
この時、嵌合突起721が、取付用嵌合孔121と嵌合しているので、係止部材7はレールの引き出し方向には移動しない。
【0035】
第1実施例のロック部材6と係止部材7は上記の如く形成され、移動側レール2が最大伸長状態(引出し、棚板等が最も引き出された状態)から移動側レール2を収納していくと、スライドレール100に加わる荷重などの要因で、固定側レール1に対して中間レール4が先に収納されたり、或いは、中間レール4に対し移動側レール2が先に収納されたり、さらには、移動側レール2の中間レール4に対する収納と、固定側レール1に対する中間レール4の収納が同時に行われたりする。
【0036】
しかしながら、ロック部材6は、移動側レール2の前方側に設けられているので、移動側レール2と中間レール4の固定側レール1に対する収納順位にかかわらず、最終的には、ロック部材6の係止突片614に形成された被案内傾斜部614bが、係止部材7に形成された係止突起73の案内傾斜部731に接触する(
図7に示す状態)。
この状態からさらに、移動側レール2を収納させると、被案内傾斜部614bが、案内傾斜部731に接触しながら、操作部材61を、回転基部611の回動保持用貫通孔612を中心軸として、弾性部材604の押圧部604bを介して弾性杆604aを弾性変形させながら上方あるいは下方に回動させるので、係止突片614は追従して上方あるいは下方に移動する(
図8に示す状態)。
【0037】
さらに、移動側レール2を収納させると、係止突片14の係合ロック部614aが、係止部材7の係止突起73の上下いずれかを収納側に通過した後、弾性部材604の弾性力によって、操作部材61は元の状態に回動し、係止突片14も元の位置に復帰し、スライドレール100は、最短縮小状態となる(
図9に示す状態)。
【0038】
すなわち、インナー中間レール後端ストッパー44aが、固定側レール1のレール短縮時ストッパーの前面に当接し、移動側レール2の移動側レール後端ストッパー220がアウター中間レール後端ストッパー44bの前面に当接し、操作部材61の係合ロック部614aが係止部材7の当接係止部732に当接し係止状態となる(
図9に示すロック状態)。尚、この状態でロック部材6と係止部材7の係止状態を解除するための解除用クリアランスが係合ロック部614aと当接係止部732間に形成され、移動側レール2はスライドレール100の摺動方向に若干移動可能となっている。
【0039】
そして、ロック状態において、スライドレール100が設置されている陳列棚等に荷重がかかると、該荷重により、陳列棚側のレール、すなわち、移動側レール2に加わり、スライドレール100の各部材間のクリアランスや移動側レール2の弾性変形が重なり移動側レール2が下方に撓もう、すなわち、移動しようとする。
特に、本件実施例のように、移動側レール2の前端にロック部材6が、固定側レール1の前端に係止部材7が備え付けられている場合、スライドレール100最収縮状態で、ロック部材6、係止部材7のところにはロック部材6、係止部材7があるため中間レール4を配置できない。また、移動側ボール保持板5も、ボール支持式のスライドレールの場合、引き込み側に配置されることになるため、移動側ボール保持板5の前端から前方では、移動側レール2を支持するものがない。そのため、移動側レール2のロック部材6の部分は、中間レール4で支持されないので、下方に撓み易い(
図12に示す状態)。
【0040】
移動側レール2が下方に撓む(移動する)と、係合ロック部614aが当接係止部732の下方に移動してしまうため、係合ロック部614aと当接係止部732の当接が外れ、ロックが解除されてしまう。特に断面の小さなスライドレールの場合、スライドレールを構成する各部材の剛性が低いため、スライドレール全体で撓みやすい傾向にある。
【0041】
本件実施例の構成では、移動側レール2が下方に移動すると、ロック部材6の下側の突出片603の当接面603cが、係止部材7の当接受面71aに当接する。
そして、当接面603cと当接受面71aは、前述のとおり近接しているので、移動側レール2が必要以上に下方に移動することがない。
【0042】
当接面603cが当接受面71aに当接すると、移動側レール2に掛かる荷重は、当接受面71aを介して固定側レール1でも受けることができるので、移動側レール2と固定側レール1が協働して前記荷重を支えることが可能となる。
そして、移動側レール2の当接面603cは、係止部材7の当接受面71aに当接するため、移動側レール2と固定側レール1の上下方向の位置関係が大きく変わらないので、係合ロック部614aと当接係止部732の当接が外れることはなく、ロックが解除されることがない。
このように、当接面603cと当接受面71aで振れ止め装置62が構成され、振れ止め装置62をロック装置に備えると、移動側レール2と固定側レール1が協働しスライドレール100の前端部の撓み、振れを規制できるので、ロック状態の維持に特に効果を発揮する。
【0043】
また、本件実施例では、当接受面71aを係止部材7に設けているが、当接面603cを固定側レール1の上下折曲縁11に当接させるようにしてもよい。この場合、上下折曲縁11の当接面が当接受面となる。しかしながら、通常、固定側レール1は鋼製であるから、当接面603cと上下折曲縁11が接すると、当接面603cが合成樹脂製であるから削れや割れがおき易い。そのため、本実施例のように係止部材7に一体的に設けることにより、部品点数を増やすことなく、合成樹脂製同士の接触が可能であるため削れ、割れなどの問題を安価に減少させることが可能である。
【0044】
スライドレール100をロック状態から、移動側レール2(陳列棚の棚板等)を引き出すときは、棚板の上面と操作用腕部617の下面を指先で摘むようにして、操作用腕部617を上方あるいは下方に移動させると、弾性部材604の押圧部604bを介して弾性杆604aが弾性変形しながら、回転基部611の回動保持用貫通孔612を中心に操作部材61が回動する。
そして、係止突片614を、係止部材7の係止突起73の上方、あるいは下方に位置させる(
図10、11に示す状態)。
【0045】
さらに、上記の状態を維持しながら、操作部材61の係止突片614が係止部材7の係止突起73の上方を通過するまで、移動側レール2を引き出し、操作用腕部617から指先を離すと、上側の弾性部材604の弾性力によって、操作部材61は押し戻されながら回動し元の状態に復帰し、係止突片614も元の位置に復帰し、そのまま、棚板を引き出すと移動側レール2は最大伸長状態となって停止する。
【0046】
本件実施例のロック装置は、上下方向で対称形に形成されており、スライドレール左右兼用が可能となっている。
また、弾性部材604は、ベース部材60と一体とされなくとも、操作部材61と一体に合成樹脂で成型されていてもよい。
実施例では、スライドレール100は、ボールが上下方向に配置される縦使いであるが、ボールが水平方向に配置される横使いのスライドレールにも使用可能である。
横使いの場合、振れ止め装置62は、スライドレール100の水平方向の揺れに対しての振れ止め規制に効果が発揮可能である。
【0047】
ロック装置を構成する部品点数を、スライドレールの他に、係止部材、ベース部材、操作部材の3点のみとし、ロック装置が振れ止め装置を備えているので、部品点数も少なくなり、各部材は、合成樹脂にて一体に成型したものであるので、係止部材、ベース部材、操作部材は同じ生産工程の中で製造することができるので生産効率が良い。
また、係止部材と、ベース部材、操作部材からなるロック部材は、スライドレールに対して、合成樹脂の弾性力を利用して嵌合されるので、ネジやリベット止めのような別工程が必要なく、組立効率が良いばかりか、スライドレールが実際に使用される中でのメンテナンス時に、ロック装置も簡単に交換できる。さらにロック装置、振れ止め装置は、左右兼用であるため、メンテナンス用の部品の管理も左右で分ける必要がなく部品管理効率がよい。
【符号の説明】
【0048】
100 スライドレール
1 固定側レール
11 上下折曲縁
12 基板
2 移動側レール
21 上下折曲縁
22 基板
3 固定側ボール保持板
4 中間レール
4a インナー中間レール
4b アウター中間レール
5 移動側ボール保持板
6 ロック部材
60 ベース部材
601 固定基板部
601a 回動凹部
601c フランジ部
602 移動側上下嵌合凹部
603 突出片
603b 通過凹部
603c 当接面
604 弾性部材
605 外れ止め片
61 操作部材
611 回転基部
614 係止突片
614a 係合ロック部
614b 被案内傾斜部
617 操作用腕部
618 案内溝
62 振れ止め装置
7 係止部材
71 固定側上下嵌合突部
71a 当接受面
72 固定部
721 嵌合突起
722 開口孔
73 係止突起
731 案内傾斜部
732 当接係止部