(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】波動歯車装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20231016BHJP
F16H 55/08 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16H55/08 Z
(21)【出願番号】P 2022572404
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2022010932
【審査請求日】2022-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506280030
【氏名又は名称】テクファ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】香取 英男
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-12532(JP,A)
【文献】特許第6017066(JP,B2)
【文献】特開2016-153679(JP,A)
【文献】特開2013-100911(JP,A)
【文献】特開2018-128045(JP,A)
【文献】特開昭64-83972(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016201822(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 55/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波動歯車装置の製造方法であって、
前記波動歯車装置は、
内歯車と、
前記内歯車の内側に配置され、前記内歯車に噛み合う外歯車と、
前記外歯車の内側に配置された波動発生器と、を備え、
前記波動発生器は、前記外歯車を非真円状に撓ませて当該外歯車の長径部分を前記内歯車に噛合させ、かつ、噛合位置を周方向に移動させる構成を有し、
前記波動歯車装置を製造する際に、以下の条件*1~*11を用いて当該条件*1~*11を満たすように前記波動歯車装置を製造する波動歯車装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動歯車装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
減速機に使用される歯車装置の1つとして波動歯車装置が知られている。波動歯車装置を備えた減速機は、例えばロボットの指の関節部などの軽量、軽負荷かつ高精度な回転伝達精度が要求される可動部に適用される。
【0003】
波動歯車装置に関する先行技術として、特許文献1には、円環状の剛性内歯車と、この内側に配置された可撓性外歯車と、この内側に嵌められた波動発生器とを有する波動歯車装置が開示されている。このような波動歯車装置においては、波動発生器によって可撓性の外歯車を非真円状に撓ませ、その撓ませた外歯車の長径部を内歯車に噛み合わせ、外歯車と内歯車の噛合位置を周方向に移動させることでトルクを伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減速機が使用される製品のさらなる小型化のためには、減速機自体の小型化も必要である。このため、波動歯車装置を備える減速機においては、波動歯車装置の小型化が求められる。波動歯車装置の小型化を実現するための一つの手段としては、歯車強度を増大させることが挙げられる。歯車強度を増大させることができれば、トルク伝達効率を向上させることができるため、許容伝達トルクを低下させずに波動歯車装置を小型化が可能となる。
【0006】
波動歯車装置は、外歯車の長径部近傍において内歯車と噛み合うが、本発明者は、上述した歯車強度を増大させるために、内歯車と外歯車が同時に噛み合う歯数(以下、「同時噛合数」と記載する)に着目した。
【0007】
なお、本明細書における「内歯車と外歯車が噛み合う状態」とは、内歯車の歯の大部分と外歯車の歯の大部分とが接触している状態に加え、内歯車の歯の一部と外歯車の歯の一部とが僅かに接触している状態も含む。すなわち、上述の「同時噛合数」には、内歯車の歯と外歯車の歯とが僅かに接触している状態の歯数も含まれる。
【0008】
同時噛合数が増加すると、より多くの歯で負荷を分担できるため、一つの歯にかかる負荷が軽減される。これにより、一つの歯で、より大きな負荷に耐えることが可能となるため、歯車強度を増大させることができる。すなわち、同時噛合数を増加させることは歯車強度の増大に寄与する。
【0009】
しかしながら、従前の波動歯車装置においては、同時噛合数が外歯車の歯数の30%未満であったため、同時噛合数の観点では改善の余地があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、波動歯車装置の同時噛合数を増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の一態様は、波動歯車装置
の製造方法であって、
前記波動歯車装置は、内歯車と、前記内歯車の内側に配置され、前記内歯車に噛み合う外歯車と、前記外歯車の内側に配置された波動発生器と、を備え、前記波動発生器は、前記外歯車を非真円状に撓ませて当該外歯車の長径部分を前記内歯車に噛合させ、かつ、噛合位置を周方向に移動させる構成を有し、
前記波動歯車装置を製造する際に、以下の条件*1~*11を
用いて当該条件*1~*11を満たす
ように前記波動歯車装置を製造することを特徴としている。
【0012】
別の観点による本発明の一態様は、製品であって、上記の波動歯車装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、波動歯車装置の同時噛合数を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る波動歯車装置の概略構成を示す説明図である。
【
図2】波動歯車装置の成立条件を説明するための内歯車と外歯車の模式図である。
【
図3】波動歯車装置の成立条件を説明するための噛合部を示す模式図である。
【
図5】条件*1~*9を満たす波動歯車装置の内歯車の歯と外歯車の歯を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
<波動歯車装置の概略構成>
図1は、本実施形態に係る波動歯車装置の概略構成を示す説明図である。波動歯車装置1は、円環状の剛性(非可撓性)の内歯車2と、その内側に配置された可撓性の外歯車3と、この内側に嵌め込まれた楕円形輪郭の波動発生器4とを有している。
【0017】
外歯車3は、楕円形輪郭の波動発生器4によって楕円形に撓められ、楕円形の長軸L1方向の両端部分の近傍においては、外歯車3の歯3aと内歯車2の歯2aが噛み合っている。一方、短軸L2方向の両端部分の近傍においては、外歯車3の歯3aと内歯車2の歯2aは噛み合っていない。
【0018】
波動歯車装置1においては、そのような内歯車2と外歯車3の噛合部と非噛合部とが周方向に沿って交互に存在した状態にある。この状態で波動発生器4が回転することによって、両歯車2、3の噛合位置が周方向に移動し、各歯車2、3の歯数差に応じた相対回転が両歯車2、3の間に発生する。
【0019】
内歯車2および外歯車3の歯数は通常20枚以上である。また、外歯車3の歯数は、内歯車2の歯数よりn枚少ない。nは正の整数であり、例えばn=2である場合には、内歯車2と外歯車3の歯数差は2枚である。
【0020】
本明細書における上記のnは、周期数であり、波動発生器4が1回転する間に、外歯車3の1つの歯3aが内歯車2に対して噛合状態となる回数を示す。例えば、本実施形態では、波動発生器4が楕円形であることによって外歯車3が楕円形に撓むことから、外歯車3の1つの歯3aに着目すると、その歯3aは、波動発生器4が1回転する間に2回噛合状態となる。このため、波動発生器4が楕円形である場合には、n=2となる。
【0021】
また、両歯車2、3の周方向における領域を、噛合状態にある領域(噛合領域)と非噛合状態にある領域(非噛合領域)に大別すると、外歯車3が楕円形に撓む場合には、常に2つの噛合領域と2つの非噛合領域が存在する。すなわち、上記の周期数nは、両歯車2、3の周方向における領域を噛合領域と非噛合領域とに大別したときの噛合領域の数である、と言い換えることもできる。
【0022】
なお、波動発生器4の形状は、楕円形に限定されないため、外歯車3の変形後の形状も、楕円形に限定されない。すなわち、外歯車3の変形後の形状は、波動発生器4の形状に応じて非真円形であればよい。このため、周期数nは、2であることに限定されず、1であっても3以上であってもよい。
【0023】
例えば周期数nが3である場合には、波動発生器4が三角形状に形成され、外歯車3が三角形状に撓む。この場合には、両歯車2、3の噛合領域と非噛合領域が3つずつ存在する。また、周期数nが4である場合には、波動発生器4が四角形状に形成され、外歯車3が四角形状に撓む。この場合には、両歯車2、3の噛合領域と非噛合領域が4つずつ存在する。
【0024】
<波動歯車装置の成立条件>
本実施形態に係る波動歯車装置1は、以下の条件*1~*9を満たすように構成される。これにより、後述するように内歯車2と外歯車3の同時噛合数を増加させることができる。
【0025】
以下、条件*1~*9について、
図2~
図4も参照しながら補足説明を行う。
図2は、波動歯車装置の成立条件を説明するための内歯車と外歯車の模式図である。
図3は、波動歯車装置の成立条件を説明するための噛合部を示す模式図である。
図4は、噛合部の拡大図である。
【0026】
〔*2〕
“ZFS”は、外歯車3の歯数であり、“λ”は減速比(ただし、2以上)であり、“n”は、前述した周期数である。“dpFS”は、外歯車3の円形時(変形前)のピッチ円直径であり、“m”は、モジュールである。“lFS”は、外歯車3の変形時のピッチ曲線の全周長である。“ZCS”は、内歯車2の歯数である。“dpCS”は、内歯車2のピッチ円直径である。“lCS”は、内歯車2のピッチ曲線の全周長である。
【0027】
また、“a”は、外歯車3の変形時のピッチ曲線の長半径である。“b”は、外歯車3の変形時のピッチ曲線の短半径である。“θ”は、外歯車3の長径部P0からの角度である。換言すると、θは、外歯車3のピッチ円の中心Oと長径部P0を結ぶ線分OP0と、中心Oと外歯車3のピッチ曲線上の任意の点Pを結ぶ線分OPとのなす角である。“r(θ)”は、外歯車3の変形時のθの位置におけるピッチ曲線半径である。
【0028】
〔*4〕〔*5〕
“l(θ)”は、外歯車3の変形時の長径部P
0からθまでのピッチ曲線の周長である。なお、l(θ)は、以下の式で表すことができる。
【0029】
〔*6〕
内歯車2および外歯車3の歯形を定めるにあたって、各歯車2、3においては、歯先のたけ(歯末のたけ)の係数fhaと、歯元のたけの係数fhdが適用されている。詳述すると、内歯車2の歯先のたけは、m・fhaで設定され、内歯車2の歯元のたけは、m・fhdで設定されている。また、外歯車3の歯先のたけは、m・fhaで設定され、外歯車3の歯元のたけは、m・fhdで設定されている。
【0030】
なお、内歯車2および外歯車3の歯先のたけ係数fhaは、例えば0.2~0.8に設定される。歯先のたけ係数fhaは、より好ましくは、0.4以上である。これにより、内歯車2と外歯車3の噛み合い性能を向上させることができる。
【0031】
また、内歯車2および外歯車3の歯元のたけ係数fhdは、例えば0.4~1.0に設定される。歯元のたけ係数fhdは、より好ましくは、0.5以上である。これにより、内歯車2と外歯車3の噛み合い性能を向上させることができる。
【0032】
〔*7〕
内歯車2および外歯車3の歯形を定めるにあたって、各歯車2、3においては、歯先隅の半径raと歯元隅の半径rdが適用されている。すなわち、内歯車2を回転軸方向から見たときに、内歯車2の歯2aの歯先面と、歯2aの歯面(外歯車3の歯3aと接触する側の面)との間には、半径raの曲面が形成されている。また、内歯車2を回転軸方向から見たときに、内歯車2の歯2aの歯元面と、歯2aの歯面との間には、半径rdの曲面が形成されている。
【0033】
また、外歯車3を回転軸方向から見たときに、外歯車3の歯3aの歯先面と、歯3aの歯面(内歯車2の歯2aと接触する側の面)との間には、半径raの曲面が形成されている。また、外歯車3を回転軸方向から見たときに、外歯車3の歯3aの歯元面と、歯3aの歯面との間には、半径rdの曲面が形成されている。
【0034】
*7のように歯先隅の半径raと歯元隅の半径rdが適用されること、すなわち、歯先隅と歯元隅の両部に円弧部が設けられることで、相手歯面の破損が抑制され、内歯車2と外歯車3の滑らかな噛み合いを実現することができる。
【0035】
〔*8〕
f(θ)は、外歯車3のピッチ曲線式の主関数であり、噛み合いの機構原理に基づいて導出される式である。g(θ)は、外歯車3のピッチ曲線式の従関数であり、各歯車2、3の歯形等の加工誤差および歯車装置の加工上、組立上の誤差を考慮してピッチ曲線式を補正するための式である。
【0036】
rr(θ)は、θの位置における内歯車2および外歯車3の歯形曲線半径である。F(θ)は、内歯車2および外歯車3の歯形曲線式の主関数であり、噛み合いの機構原理に基づいて導出される式である。G(θ)は、内歯車2および外歯車3の歯形曲線式の従関数であり、各歯車2、3の歯形等の加工誤差および歯車装置の加工上、組立上の誤差を考慮して歯形曲線式を補正するための式である。
【0037】
波動歯車装置1は、以上の条件*1~*9を満たすように構成されている。
図5は、それらの条件*1~*9を満たす波動歯車装置1の内歯車2の歯2aと外歯車3の歯3aを示す図である。また、
図6は、
図5のA部の拡大図であり、
図7は、
図6のB部の拡大図である。
【0038】
本実施形態に係る波動歯車装置1は、
図5~
図7に示される領域Rにおいて内歯車2の歯2aと外歯車3の歯3aが噛み合っている。この波動歯車装置1における同時噛合数は、外歯車3の歯数(歯3aの総数)のおよそ50%以上である。
【0039】
詳述すると、一つの円弧状の噛み合い領域Rの中心角は97°(48.5°×2)であり、二つの噛み合い領域Rの中心角は合計で194°である。すなわち、本実施形態に係る波動歯車装置1においては、194°/360°=0.539であるため、噛み合い領域Rは、歯車全周のおよそ54%の領域を占める。このため、同時噛合数が外歯車3の歯数のおよそ50%以上であると言い換えることができる。
【0040】
一方、従前の波動歯車装置では、同時噛合数の上限は外歯車3の歯数のおよそ30%であるため、本実施形態に係る波動歯車装置1においては、同時噛合数が大幅に増加している。
【0041】
したがって、本実施形態に係る波動歯車装置1によれば、従前の波動歯車装置と比較し、より多くの歯で負荷を分担することができるため、一つの歯にかかる負荷が軽減される。これによって、一つの歯で、より大きな負荷に耐えることができるため、歯車強度を増大させることができる。その結果、トルク伝達効率が向上し、許容伝達トルクを低下させずに波動歯車装置を小型化がすることが可能となる。
【0042】
また、本実施形態に係る波動歯車装置1によれば、従前の波動歯車装置では実現できなかった内歯車と外歯車との間のバックラッシがゼロとなる。
【0043】
なお、
図5~
図7に示される波動歯車装置1は、条件*1~*9を満たす波動歯車装置の一例であり、噛み合い領域Rの中心角の大きさは、歯車諸元に応じて異なる。ただし、条件*1~*9を満たす限りは、同時噛合数が外歯車3の歯数のおよそ50%以上となり、歯車強度の増大効果を得ることができる。
【0044】
(圧力角)
波動歯車装置1においては、圧力角が0°となる条件である以下の条件*10を満たすことが好ましい。これにより、トルクの伝達ロスを軽減することができ、入力側から出力側へのトルク伝達効率を高めることができる。
*10 rr(θ)=r(θ) になる角度θの位置で、rr(θ)の接線方向角がθであること
【0045】
なお、従前の波動歯車装置で実現可能な圧力角は、15°以上である。これに対し、条件*1~*10を満たす波動歯車装置1によれば、圧力角を0°とした歯形に形成しても波動歯車装置として機能させることができる。すなわち、条件*1~*10を満たす波動歯車装置1によれば、従前の波動歯車装置では実現できない小さな圧力角に設定することも可能となる。
【0046】
条件*1~*10を満たす波動歯車装置1によれば、同時噛合数の増加に伴う歯車強度の増大効果が得られると共に、従前の波動歯車装置に対して優れたトルク伝達効率を達成することができる。
【0047】
図3および
図4に示す例では、圧力角が0°(すなわち、ピッチ曲線上における内歯車2の歯面と外歯車3の歯面同士の接線と、当該ピッチ曲線とのなす角が90°)となるように各歯車2、3の歯形が形成されている。
【0048】
(横転位処理)
波動歯車装置1においては、ピッチ曲線上の内歯車2の歯厚(歯2aの厚み)と外歯車3の歯厚(歯3aの厚み)の比率を変えるための横転位処理が施されることが好ましい。
【0049】
図3に示す例では、内歯車2および外歯車3には、横転位係数x
hが適用されており、半ピッチ(1/2ピッチ)あたりの内歯車2の歯厚が、(π・m/4)・(1-x
h)で設定され、半ピッチ(1/2ピッチ)あたりの外歯車3の歯厚が、(π・m/4)・x
hで設定されている。ただし、横転位係数x
hは、0よりも大きく、0.5未満(0<x
h<0.5)である。このため、波動歯車装置1においては、外歯車3の歯厚が内歯車2の歯厚よりも小さ
く、以下の*11の条件を満たしている。
*11 内歯車および外歯車に、横転位係数x
h
(0<x
h
<0.5)が適用されていること
【0050】
上記のような横転位処理によって、外歯車3の歯山の幅(厚み)を歯溝の幅に対して相対的に小さくすることができるため、外歯車3が楕円状に変形する際に、外歯車3の変形に対する抵抗力を抑えることができる。これにより、外歯車3の回転時に消費するエネルギを低減することができる。
【0051】
なお、横転位係数x
hは、要求されるトルク伝達効率などに応じて適宜変更される。本実施形態においては、横転位係数x
hが0.33に設定され、
図4に示す例では、外歯車3の歯厚が内歯車2の歯厚の1/2の厚みとなっている。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0053】
なお、
図2に示されるρ(θ)、φ(θ)、Φ(θ)は以下の式で表すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、可動部を有する製品に使用される波動歯車装置に適用することができる。波動歯車装置を備える製品は、例えばナビゲーションシステム、大型赤外望遠鏡、半導体ウェハの搬送用ロボット、産業用ロボット、乗用車、外科手術システム、人工衛星、パワーアシストシステム、油田・ガス田用掘削操舵装置、小型指ロボットシステム、監視カメラ、ヒューマノイドロボット、飛行機、ドローン、電気自動車、ヘリコプター、回転寿司握り装置等の装置である。
【符号の説明】
【0055】
1 波動歯車装置
2 内歯車
2a 内歯車の歯
3 外歯車
3a 外歯車の歯
4 波動発生器
【要約】
内歯車と、前記内歯車の内側に配置され、前記内歯車に噛み合う外歯車と、前記外歯車の内側に配置された波動発生器と、を備え、前記波動発生器は、前記外歯車を非真円状に撓ませて当該外歯車の長径部分を前記内歯車に噛合させ、かつ、噛合位置を周方向に移動させる構成を有し、条件*1~*9を満たす、波動歯車装置。