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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】バキュームタンクトレーラ
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/22 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
B60P3/22 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023118432
(22)【出願日】2023-07-20
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523275721
【氏名又は名称】株式会社SEKKUN
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】関 堅幸
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-61013(JP,U)
【文献】米国特許第1925091(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/22
B60P 3/00
E03F 7/10
B62D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタとトレーラとを有するバキュームタンクトレーラであって、
前記トラクタと前記トレーラとは相対的に回転可能に連結されており、
前記トラクタにはバキュームポンプとトラクタ側配管とが配置されており、前記トラクタ側配管の一端部が前記バキュームポンプに接続されており、
前記トレーラにはタンクとトレーラ側配管とが配置されており、前記トレーラ側配管の一端部が前記タンクに接続されており、
前記トラクタ側配管の他端部と前記トレーラ側配管の他端部とは、可撓性のホースによって接続されており、前記トレーラ側配管の前記他端部は、前記トラクタと前記トレーラとの連結部分の直上に位置するか、または前記連結部分の直上よりも前記バキュームタンクトレーラの後部側に位置していることを特徴とする、バキュームタンクトレーラ。
【請求項2】
前記トラクタと前記トレーラとは、前記トラクタに設けられたカプラーの凹部に、前記トレーラに設けられているキングピンが回転可能に嵌め込まれることにより、相対的に回転可能に連結されている、請求項1に記載のバキュームタンクトレーラ。
【請求項3】
前記バキュームポンプは、前記トラクタの、前記トレーラの回転移動可能な範囲に重なる位置を避けて配置されている、請求項1または2に記載のバキュームタンクトレーラ。
【請求項4】
前記ホースは、最大に湾曲した状態で湾曲部分の曲率半径が540mm以上である、請求項1または2に記載のバキュームタンクトレーラ。
【請求項5】
前記トレーラ側配管の前記他端部と前記トラクタ側配管の前記他端部とは、高さ方向の位置が異なっている、請求項1または2に記載のバキュームタンクトレーラ。
【請求項6】
前記トレーラ側配管の前記他端部は、前記トラクタ側配管の前記他端部よりも高い位置にある、請求項5に記載のバキュームタンクトレーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバキュームタンクトレーラに関する。
【背景技術】
【0002】
流体を収容するタンクを備えたバキュームタンクトレーラは、タンクに接続されたバキュームポンプを有している。特許文献1には、トラクタとトレーラとが連結されたバキュームタンクトレーラであって、トラクタに配置されたバキュームポンプとトレーラに配置されたタンクとが接続された構成が開示されている。このバキュームタンクトレーラでは、バキュームポンプとタンクとの接続部分の一部がホースにより構成されているとともに、トレーラ側の配管の一部に回転継手が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭52-61013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたバキュームタンクトレーラでは、トレーラ側の配管の一部に回転継手が設けられていることにより、ホースを取り外すことなくトラクタとトレーラとが相対的に移動可能である。しかし、回転継手が配置されるため、構成が複雑でコスト高であるとともに製造工程が繁雑である。仮に回転継手が設けられていないと、トラクタがトレーラに対して大きく回転しようとするとホースが破損したり外れたりする可能性がある。ホースを非常に長くすることによってホースが破損したり外れたりすることを防ごうとすると、トラクタがトレーラに対して直線的に並んで位置している状態およびトラクタがトレーラに対して大きく回転している状態では、必要以上に長いホースが車体の外側にはみ出して邪魔になる可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、回転継手等の複雑な機構を必要とせず、ホースを取り外さなくてもトラクタがトレーラに対して大きく回転でき、ホースが破損したり外れたりすることが抑えられ、構成が簡単で低コストであって容易に製造できるバキュームタンクトレーラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トラクタとトレーラとを有するバキュームタンクトレーラであって、前記トラクタと前記トレーラとは相対的に回転可能に連結されており、前記トラクタにはバキュームポンプとトラクタ側配管とが配置されており、前記トラクタ側配管の一端部が前記バキュームポンプに接続されており、前記トレーラにはタンクとトレーラ側配管とが配置されており、前記トレーラ側配管の一端部が前記タンクに接続されており、前記トラクタ側配管の他端部と前記トレーラ側配管の他端部とは、可撓性のホースによって接続されており、前記トレーラ側配管の前記他端部は、前記トラクタと前記トレーラとの連結部分の直上に位置するか、または前記連結部分の直上よりも前記バキュームタンクトレーラの後部側に位置していることを特徴とする。
前記トラクタと前記トレーラとは、前記トラクタに設けられたカプラーの凹部に、前記トレーラに設けられているキングピンが回転可能に嵌め込まれることにより、相対的に回転可能に連結されていてよい。
前記バキュームポンプは、前記トラクタの、前記トレーラの回転移動可能な範囲に重なる位置を避けて配置されていてよい。
前記ホースは、最大に湾曲した状態で湾曲部分の曲率半径が540mm以上であってよい。
前記トレーラ側配管の前記他端部と前記トラクタ側配管の前記他端部とは、高さ方向の位置が異なっていてよい。
前記トレーラ側配管の前記他端部は、前記トラクタ側配管の前記他端部よりも高い位置にあってよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、回転継手等の複雑な機構を必要とせず、ホースを取り外さなくてもトラクタがトレーラに対して大きく回転でき、ホースが破損したり外れたりすることが抑えられ、構成が簡単で低コストであって容易に製造できるバキュームタンクトレーラが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態のバキュームタンクトレーラの側面図である。
図2図1に示すバキュームタンクトレーラの直進状態の平面図である。
図3図1に示すバキュームタンクトレーラがカーブを曲がる状態の平面図である。
図4図1に示すバキュームタンクトレーラのトレーラの回転移動範囲を示す拡大平面図である。
図5】トラクタ側配管とトレーラ側配管の開口方向を説明するための側面図である。
図6】トラクタ側配管とトレーラ側配管の開口方向の例を示す側面図である。
図7】本発明の第2の実施形態のバキュームタンクトレーラの側面図である。
図8図7に示すバキュームタンクトレーラのトレーラの回転状態を示す拡大平面図である。
図9】比較例のバキュームタンクトレーラのトレーラの回転状態を示す拡大平面図である。
図10】本発明の第3の実施形態のバキュームタンクトレーラの側面図である。
図11図10に示すバキュームタンクトレーラのトレーラの回転状態を示す拡大平面図である。
図12図1に示すバキュームタンクトレーラの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態のバキュームタンクトレーラ1の側面図である。図2はバキュームタンクトレーラ1の直進状態の平面図であり、図3はバキュームタンクトレーラ1がカーブを曲がる状態の平面図である。バキュームタンクトレーラ1はトラクタ2とトレーラ3とを有している。トラクタ2に設けられたカプラー4の凹部4a(図2,3参照)に、トレーラ3に設けられているキングピン5が回転可能に嵌め込まれることにより、トラクタ2とトレーラ3とが連結されている。トラクタ2とトレーラ3とは、キングピン5を中心として相対的に回転可能であるため、図2に示すようにトラクタ2がトレーラ3に対して直線的に並んで位置している状態で直進することも、図3に示すようにトラクタ2がトレーラ3に対して回転した状態で曲がることもできる。
【0010】
トラクタ2には、バキュームポンプ6とトラクタ側配管7とが配置されている。トラクタ側配管7は金属製パイプからなり、一端部7aがバキュームポンプ6に接続されており、他端部7bはトレーラ3側を向いている。トレーラ3には、タンク8とトレーラ側配管9とが配置されている。トレーラ側配管9は、1対の金属製パイプ部9a,9bと、金属製パイプ部9a,9bの間に位置する可撓性のホース状部9cとが互いに接続された構成である。このトレーラ側配管9の一端部9dは、タンク8に設けられた出入口部8aに接続されており、他端部9eはトラクタ2側を向いている。タンク8の出入口部8aは、図示しないが内部に浮きが収容されており、タンク8内の液体等の流体(泥や砂等が含まれる場合もある)に浮かぶ浮きの位置によってトレーラ側配管9の一端部9dに繋がる開口を開閉する。すなわち、タンク8内の流体の量に応じて、出入口部8aとトレーラ側配管9との間で流体が流通可能な状態と流通不能な状態とが切り替えられる。一般に、タンク8は、後部がトレーラ3上に載置されたままで前部がトレーラ3から上方に向かって持ち上がるように回動可能な構成であり、この動作は、トレーラ側配管9内のホース状部9cが弾性変形することによって可能になっている。
【0011】
トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとは、可撓性のホース10によって接続されている。ホース10に接続されるトレーラ側配管9の他端部9eは、トラクタ2とトレーラ3との連結部分、すなわちキングピン5の直上に位置している。図2に示すようにトラクタ2がトレーラ3に対して直線的に並んで位置している状態であっても、図3に示すようにトラクタ2がトレーラ3に対して回転した状態であっても、トラクタ2に対するキングピン5の相対位置は変化しない。従って、このキングピン5の直上に位置するトレーラ側配管9の他端部9eと、トラクタ2に配置されているトラクタ側配管7の他端部7bとの間の直線距離は、トラクタ2とトレーラ3との姿勢にかかわらず実質的に一定である。トレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとを繋いでいるホース10は、トラクタ2がトレーラ3に対して回転しても過剰に引っ張られることはなく、ホース10が破損したり外れたりする可能性が低い。ホース10の長さは、トレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとの間の直線距離に、ホース10がタンク8やその他の部品(図示せず)に強く接触することなく円滑に湾曲できる程度の余裕を持たせた長さであることが好ましい。ホース10の直径や硬さによるが、一般的な直径(4インチ(約102mm)~6インチ(約152mm)程度)と一般的な硬さを有するホース10において、ホース10が過度に屈曲しないような構成にすることが好ましい。具体的には、直径が4インチ(約102mm)で一般的な硬さを有するホース10は、最大に湾曲した状態でも湾曲部分の曲率半径が540mm以上になるような長さを有することが好ましく、直径が5インチ(約127mm)で一般的な硬さを有するホース10は、最大に湾曲した状態でも湾曲部分の曲率半径が630mm以上になるような長さを有することが好ましく、直径が6インチ(約152mm)で一般的な硬さを有するホース10は、最大に湾曲した状態でも湾曲部分の曲率半径が780mm以上になるような長さを有することが好ましい。ただし、本実施形態では、ホース10を必要以上に長くする必要は無く、車体の外側にホース10がはみ出して邪魔になることはない程度の長さに抑えることができる。そして、トラクタ2とトレーラ3との相対回転の中心点にホース10の端部が位置しており、ホース10の可撓性によりトラクタ2とトレーラ3との相対回転が許容されるため回転継手は不要である。その結果、構造が簡単で低コスト化でき、かつ製造が容易である。また、バキュームタンクトレーラ1が坂道を走行する時などに、上下方向においてトラクタ2とトレーラ3とが互いに傾斜した位置関係にある場合、すなわちトラクタ2とトレーラ3との地面に対する角度が異なる場合にも、可撓性のホース10が撓むことによって円滑な走行が可能である。
【0012】
本実施形態において、トレーラ3がトラクタ2に対して回転移動可能な範囲は、図4に示すようにタンク8がトラクタ2の運転席部分2aに当接しない範囲である。図4には、トレーラ3がトラクタ2に対する回転移動可能な範囲の一方の端部に位置している状態を実線で、他方の端部に位置している状態を想像線(2点鎖線)で示している。そして、バキュームポンプ6は、トラクタ2の、トレーラ3の回転移動可能な範囲に重なる位置を避けて、すなわちトレーラ3の回転移動可能な範囲に重ならない領域A(図4ではドット模様で模式的に図示)に配置されている。それにより、トレーラ3がトラクタ2に対して回転した状態であっても、バキュームポンプ6が損傷することはなく、バキュームポンプ6に接続されたトラクタ側配管7の損傷も抑えられる。
【0013】
また、図1に示すように、ホース10の両端にそれぞれ接続されているトラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとは、高さ方向の位置が互いに異なっていることが好ましい。仮にトラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとが同じ高さの位置にある場合には、トレーラ3がトラクタ2に対して回転してホース10が湾曲する際に、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとが含まれる平面内、すなわち高さが等しい1つの平面内で2次元的にホース10が湾曲するため、ホース10が折れ曲がりやすい。従って、ホース10が破損したり、ホース10の一部において部分的に流れ抵抗が大きくなってホース10内の流体(ここでは空気)の円滑な流れが阻害されたりする可能性がある。それに対し、図1に示すように、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとの高さが異なっていると、ホース10は3次元的に湾曲するため、ホース10は、ホース10の直径や硬さによるが、湾曲部分の半径が540mm以上(ホース10の直径が4インチ(約102mm)の場合)~780mm以上(ホース10の直径が6インチ(約152mm)の場合)で滑らかに湾曲して折れ曲がりにくい。従って、ホース10が破損したり、ホース10の一部において部分的に流れ抵抗が大きくなってホース10内の流体(ここでは空気)の円滑な流れが阻害されたりすることが抑えられる。
【0014】
図1~4に示す例では、前述した通り、トラクタ側配管7の他端部7bがトレーラ3側を向いており、トレーラ側配管9の他端部9eがトラクタ2側を向いているが、このような構成に限定されない。図5には、各配管7,9の周囲を、車両前方(トラクタ側)の上方の領域Iと、車両後方(トレーラ側)の上方の領域IIと、車両前方の下方の領域IIIと、車両後方の下方の領域IVとの4つの領域に分けて示している。トラクタ側配管7の他端部7bもトレーラ側配管9の他端部9eも、4つの領域I~IVのいずれに向けて開口していてもよい。そして、各配管7,9の他端部7b,9eの開口方向は水平方向であっても垂直方向であっても斜め方向であってもよく、水平方向に対してなす角度が何度であってもよい。ただし、トラクタ側配管7の他端部7bが領域IIIに向けて開口していると、トラクタ側配管7の他端部7bに接続されるホース10は、車両前方の下方に延びた後に湾曲して上方に延び、さらに後方に延びなければならず、湾曲を繰り返す非常に複雑な形状になるため、実現が容易ではない。従って、トラクタ側配管7の他端部7bは、領域I,II,IVのいずれかに向けて開口していることが好ましい。さらに、トラクタ側配管7の他端部7bは領域IIに向けて開口するか、あるいは領域IIと領域IVとの間で車両後方に向かって水平に開口することが特に好ましい。
【0015】
同様に、トレーラ側配管9の他端部9eが領域IVに向けて開口していると、トレーラ側配管9の他端部9eに接続されるホース10は、車両後方の下方に延びた後に湾曲して上方に延び、さらに前方に延びなければならず、湾曲を繰り返す非常に複雑な形状になるため、実現が容易ではない。従って、トレーラ側配管9の他端部9eは、領域I,II,IIIのいずれかに向けて開口していることが好ましい。さらに、トレーラ側配管9の他端部9eは領域Iに向けて開口するか、あるいは領域Iと領域IIIとの間で車両前方に向かって水平に開口することが特に好ましい。
【0016】
トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとのそれぞれの開口方向の具体例を、図6に示している。図6(A)に示す例では、トラクタ側配管7の他端部7bは領域IIと領域IVとの間で車両後方に向かって水平に開口しており、トレーラ側配管9の他端部9eは領域Iと領域IIとの間で垂直上方に向かって開口している。図6(B)に示す例では、トラクタ側配管7の他端部7bは領域Iと領域IIとの間で垂直上方に向かって開口しており、トレーラ側配管9の他端部9eは領域Iと領域IIIとの間で車両前方に向かって水平に開口している。図6(C)に示す例では、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとがいずれも領域Iと領域IIとの間で垂直上方に向かって開口している。図6(D)に示す例では、トラクタ側配管7の他端部7bは領域Iと領域IIとの間で垂直上方に向かって開口しており、トレーラ側配管9の他端部9eは車両前方の上方の領域Iに向かって斜め方向に開口している。図6(E)に示す例では、トラクタ側配管7の他端部7bは車両後方の上方の領域IIに向かって斜め方向に開口しており、トレーラ側配管9の他端部9eは車両前方の上方の領域Iに向かって斜め方向に開口している。
【0017】
図1~4および図6(A)~6(E)に示す様々な例のように、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとのそれぞれの開口方向は任意に設定可能である。トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとのそれぞれの開口方向によってホース10のねじれ方が異なるため、ホース10のねじれ状態およびねじれ量が好ましい程度になるようにトラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとのそれぞれの開口方向を決定することが好ましい。一般的に、トラクタ側配管7の他端部7bはトレーラ3側を向くか垂直上方を向いて開口することが好ましく、トレーラ側配管9の他端部9eはトラクタ2側を向くか垂直上方を向いて開口することが好ましい。また、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとがいずれも水平方向か、水平に近い角度で斜め方向に向かって開口していると、ホース10は、トラクタ側配管7の他端部7bやトレーラ側配管9の他端部9eとの接続部分から上下方向にほとんど延びることなく水平方向に延びるため、トレーラ3がトラクタ2に対して回転した際に、ホース10は比較的単純な湾曲状態になり、ホース10が破損したり外れたりする可能性が小さい。一方、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとがいずれも垂直方向か、垂直に近い角度で斜め方向に向かって開口していると、トレーラ3がトラクタ2に対して回転した際に、ホース10は横方向にあまり拡がらない湾曲状態になり、ホース10が破損したり外れたりすることや、車体の外側にホース10が大きくはみ出すことが抑えられる。このようなホース10の湾曲の傾向を考慮して、トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとのそれぞれの最適な開口方向を決定すればよい。
【0018】
[第2の実施形態]
図7は、本発明の第2の実施形態のバキュームタンクトレーラ1を示す側面図である。図8は、このバキュームタンクトレーラ1のトレーラ3の回転状態を示す拡大平面図である。本実施形態のバキュームタンクトレーラ1では、ホース10に接続されるトレーラ側配管9の他端部9eは、トラクタ2とトレーラ3との連結部分(キングピン5)の直上よりも、トラクタ2と反対側、すなわちバキュームタンクトレーラ1の後部側に位置している。図8には、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態を実線で、トレーラ3がトラクタ2に対して両側方に回転した状態を想像線(2点鎖線)でそれぞれ示している。便宜上、図8ではホース10を省略している。図8を参照して、ホース10の両端がそれぞれ接続されているトレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとの間の直線距離について検討すると、トレーラ3がトラクタ2に対して両側方に回転した状態における距離L2,L3は、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態における距離L1よりも短い。すなわち、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態から、トレーラ3がトラクタ2に対して回転すると、トレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとの間の距離は短くなる。従って、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態で、トレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとを繋ぐように接続されたホース10は、トレーラ3がトラクタ2に対して回転しても、過剰な引っ張り力を受けることはなく、破損したり外れたりする可能性が低い。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0019】
図9に、本実施形態と対比する比較例を示している。比較例のバキュームタンクトレーラでは、ホース10に接続されるトレーラ側配管9の他端部9eは、トラクタ2とトレーラ3との連結部分(キングピン5)の直上よりも、トラクタ2側、すなわちバキュームタンクトレーラ1の前部側に位置している。図9には、図8と同様に、比較例のトレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態を実線で、トレーラ3がトラクタ2に対して両側方に回転した状態を想像線(2点鎖線)でそれぞれ示しており、ホース10を省略している。ホース10の両端がそれぞれ接続されているトレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとの間の直線距離について検討すると、トレーラ3がトラクタ2に対して両側方に回転した状態における距離L2,L3は、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態における距離L1よりも長い。すなわち、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態から、トレーラ3がトラクタ2に対して回転すると、トレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとの間の距離は長くなる。従って、トレーラ3がトラクタ2に対して直線的に並んで位置している状態で、トレーラ側配管9の他端部9eとトラクタ側配管7の他端部7bとを繋ぐように接続されたホース10は、トレーラ3がトラクタ2に対して回転すると、大きな引っ張り力を受ける。その結果、ホース10が破損したり外れたりする可能性が高い。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0020】
図1~4に示す第1の実施形態のようにトレーラ側配管9の他端部9eがトラクタ2とトレーラ3との連結部分(キングピン5)の直上に位置する構成と、図7~8に示す第2の実施形態のようにトレーラ側配管9の他端部9eがキングピン5の直上よりもバキュームタンクトレーラ1の後部側に位置している構成とによると、図9に示す比較例のようにトレーラ側配管9の他端部9eがキングピン5の直上よりもバキュームタンクトレーラ1の前部側に位置している構成に比べて、ホース10が過剰な引っ張り力を受けることはなく、破損したり外れたりする可能性が低い。
【0021】
[第3の実施形態]
図10は、本発明の第3の実施形態のバキュームタンクトレーラ1を示す側面図である。図11は、このバキュームタンクトレーラ1のトレーラ3の回転状態を示す拡大平面図である。本実施形態のバキュームタンクトレーラ1では、ホース10に接続されているトレーラ側配管9の他端部9eが、トラクタ側配管7の他端部7bよりも高い位置であって、タンク8の上部近くに配置されている。この構成では、図11に示すようにトレーラ3がトラクタ2に対して回転してホース10が湾曲すると、湾曲したホース10がタンク8の上方に位置して、タンク8の角部8bに干渉しない。仮に、トレーラ側配管9の他端部9eが低い位置、例えばタンク8の高さ方向の中心以下の位置に配置されていると、トレーラ3がトラクタ2に対して回転してホース10が湾曲する際に、湾曲したホース10がタンク8の角部8bに引っ掛かり、ホース10が破損したり外れたりするおそれがある。しかし、本実施形態では、トレーラ側配管9の他端部9eが高い位置に配置されているため、湾曲したホース10がタンク8の上方に逃げてタンク8の角部8bに引っ掛からず、ホース10が破損したり外れたりすることが抑えられる。その他の構成は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0022】
なお、図10,11には、トレーラ側配管9が他端部9eから一端部9dまで直線的に延びて出入口部8aに接続されている構成が示されているが、このような構成に限定されない。トレーラ側配管9は、図1~8に示す第1~2の実施形態と同様に、1対の金属製パイプ部9a,9bと、金属製パイプ部9a,9bの間に位置する可撓性のホース状部9cとが互いに接続されている構成であってもよい。すなわち、図1,7等に示すように、金属製パイプ部9bが他端部9eから下降するとともに車両後部側に向かって延び、車両後部側においてホース状部9cに接続され、ホース状部9cが車両下部から上部へ上昇して、金属製パイプ部9aに接続され、金属製パイプ部9aの一端部9dが車両後部側から出入口部8aに接続されている構成においても、前述したようにトレーラ側配管9の他端部9eが高い位置にあると、ホース10が湾曲した時にタンク8の上方に逃げてタンク8の角部8bに引っ掛からず、ホース10が破損したり外れたりすることが抑えられるという効果が得られる。
【0023】
[変形例]
本発明のバキュームタンクトレーラ1は、図1~8,10~11に示す第1~3の実施形態の構成に限定されるものではない。前述したようにトレーラ側配管9の他端部9eがトラクタ2とトレーラ3との連結部分(キングピン5)の直上またはそれよりも後部に位置する限り、ホース10、トラクタ側配管7、トレーラ側配管9の形状や、トラクタ側配管7の他端部7bの位置等は任意に変更可能である。例えば、図12に示すように、ホース10が横向きのU字型であってもよい。この構成によると、ホース10の余剰の長さが大きく、ホース10が過剰な引っ張り力を受けにくい。そして、図12に示す構成では、トラクタ側配管7の一部が屈曲しており、その他端部7bがトレーラ側配管9の他端部9eと同様にキングピン5の直上に位置してトラクタ2側を向いている。この構成によると、トラクタ側配管7の他端部7bおよびトレーラ側配管9の他端部9eとホース10との接続部分がいずれも、トラクタ2とトレーラ3の相対的な回転の中心になるキングピン5に重なる位置にあるため、ホース10が不自然にねじれにくい。なお、図12に示す変形例において、第2の実施形態と同様に、トレーラ側配管9の他端部9eがキングピン5の直上よりもバキュームタンクトレーラ1の後部側に位置している構成にすることもできる。
【0024】
[効果]
本発明によると、タンク8とバキュームポンプ6とを搭載したセミトレーラタイプのバキュームタンクトレーラ1が容易に実現する。セミトレーラタイプのバキュームタンクトレーラ1によると、タンク8とバキュームポンプ6とを搭載したトラック型バキューム車に比べて2~3倍程度の積載量を得られるため、1回に搬送可能な流体の量が多い。従って、本発明のセミトレーラタイプのバキュームタンクトレーラ1は、トラック型バキューム車に比べて少ない往復回数で同じ量の流体を搬送することができる。その結果、本発明のセミトレーラタイプのバキュームタンクトレーラ1によると、トラック型バキューム車に比べて少ない車両数および少ない運転手数に抑えたり、運転手の労働時間を短くしたりすることができ、労働力(人手)不足の解消や労働条件改善に寄与する。また、CO2の排出量を少なく抑えることができる。そして、本発明によると、セミトレーラタイプのバキュームタンクトレーラ1を低コストで容易に製造でき、回転継手等の複雑な機構を必要とせず、簡単な構成であって、ホース10を取り外さなくてもトラクタ2がトレーラ3に対して大きく回転でき、ホース10が破損したり外れたりすることが抑えられるという効果が得られる。
【符号の説明】
【0025】
1 バキュームタンクトレーラ
2 トラクタ
2a 運転席部分
3 トレーラ
4 カプラー
4a 凹部
5 キングピン
6 バキュームポンプ
7 トラクタ側配管
7a 一端部
7b 他端部
8 タンク
8a 出入口部
8b 角部
9 トレーラ側配管
9a,9b 金属製パイプ部
9c ホース状部
9d 一端部
9e 他端部
10 ホース
A 領域
【要約】
【課題】ホースが破損したり外れたりせず、構成が簡単で低コストで容易に製造できるバキュームタンクトレーラを提供する。
【解決手段】バキュームタンクトレーラ1のトラクタ2とトレーラ3とが相対的に回転可能に連結されている。トラクタ2にはバキュームポンプ6とトラクタ側配管7とが配置されており、トラクタ側配管7の一端部7aがバキュームポンプ6に接続されている。トレーラ3にはタンク8とトレーラ側配管9とが配置されており、トレーラ側配管9の一端部9dがタンク8に接続されている。トラクタ側配管7の他端部7bとトレーラ側配管9の他端部9eとは、可撓性のホース10によって接続されている。トレーラ側配管9の他端部9eは、トラクタ2とトレーラ3との連結部分5の直上に位置するか、または連結部分5の直上よりもバキュームタンクトレーラ1の後部側に位置している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12