(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク、複合負極活物質、負極、リチウム電池、半導体、及び素子
(51)【国際特許分類】
B82B 1/00 20060101AFI20231016BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20231016BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20231016BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231016BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231016BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20231016BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20231016BHJP
C01B 33/06 20060101ALI20231016BHJP
C01B 21/082 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B82B1/00
B82Y30/00
B82Y40/00
H01M4/38
H01M4/36 A
H01M4/1395
H01M4/134
C01B33/06
C01B21/082 D
C01B21/082 C
C01B21/082 E
(21)【出願番号】P 2018144945
(22)【出願日】2018-08-01
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0098070
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】木内 敬二
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
(72)【発明者】
【氏名】高 東秀
(72)【発明者】
【氏名】全 盛湖
(72)【発明者】
【氏名】武井 康一
(72)【発明者】
【氏名】韓 聖洙
(72)【発明者】
【氏名】李 準浩
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02927192(EP,A1)
【文献】国際公開第2016/027080(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/011594(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0147741(US,A1)
【文献】特表2015-508937(JP,A)
【文献】特開2016-012572(JP,A)
【文献】特表2017-533533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0028089(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0271085(US,A1)
【文献】特開2014-041817(JP,A)
【文献】米国特許第06334939(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82B 1/00-3/00
B82Y 5/00-99/00
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる方向に配置され、互いに連結される複数の一次元ナノ構造体を含み、
前記一次元ナノ構造体が、リチウムを吸蔵および放出することができる金属または準金属、及びリチウムを含む第1組成物を含み、
多孔性粒子の形態を有し、
前記多孔性粒子の形態が球形ケージであり、前記多孔性粒子の球形度が0.7以上であり縦横比が4以下であ
り、
前記多孔性粒子の直径が200nm以下であることを特徴とするナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項2】
前記一次元ナノ構造体の直径が5nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項3】
前記一次元ナノ構造体が実質的に直線形態を含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項4】
前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの内部に配置された一次元ナノ構造体の長手方向が、前記一次元ナノ構造体から最も隣接したナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面の接線方向と異なる方向であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項5】
前記複数の一次元ナノ構造体が、1以上の他の一次元ナノ構造体と交差することを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項6】
前記複数の一次元ナノ構造体間に気孔が配置され、前記気孔の直径が5nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項7】
前記気孔の断面形態が、前記気孔に隣接し、第1方向に配置される第1の一次元ナノ構造体、前記第1の一次元ナノ構造体と交差し、第2方向に配置される第2の一次元ナノ構造体、前記第2の一次元ナノ構造体と交差し、第3方向に配置される第3の一次元ナノ構造体、並びに前記第1の一次元ナノ構造体及び第3の一次元ナノ構造体と交差し、第4方向に配置される第4の一次元ナノ構造体によって決定されることを特徴とする請求項6に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項8】
前記気孔の断面形態が、円形、楕円形、四角形、三角形及び五角形のうちから選択された1以上であることを特徴とする請求項6に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項9】
前記複数の一次元ナノ構造体の間に配置される1以上の二次元ナノ構造体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項10】
前記二次元ナノ構造体が、1以上の他の二次元ナノ構造体と交差することを特徴とする請求項9に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項11】
前記二次元ナノ構造体の厚みが5nm以上であり、長さが20nm以上であることを特徴とする請求項9に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項12】
前記二次元ナノ構造体が、前記一次元ナノ構造体と同一組成を有することを特徴とする請求項9に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項13】
前記気孔の配列が非周期的であって不規則的であり、前記気孔の形態が不規則的であることを特徴とする請求項6に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項14】
気孔率が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項15】
前記第1組成物が非晶質構造を有することを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項16】
前記第1組成物が、金属と、原子量20以上の第14族元素とを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項17】
前記第1組成物が下記化学式(1)で表示されることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
[化学式1]
M
xSiQ
y … (1)
(前記化学式(1)で、
Mは、Fe、Co、Mn、Ni、Au、Ag、Pt、Nb、Mo、V、Re、Ti、Ba、Li、Na、Ma、Ca及びAlのうちから選択された1以上の金属であり、
Qは、C、NまたはOであり、
0<x<1、0≦y<2である。)
【請求項18】
前記第1組成物がリチウムシリサイドを含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項19】
前記第1組成物が、前記第1組成物1モルに対して、リチウム0.1ないし1モルを含み、前記第1組成物1モルに対してシリコン0.7ないし1.3モルを含み、リチウム含量に比べ、シリコン含量がさらに多いことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項20】
前記リチウムシリサイドが、下記化学式(2)で表示されることを特徴とする請求項
18に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
[化学式2]
Li
xSi … (2)
(前記化学式(2)で、0<x<1である。)
【請求項21】
前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、バルク材料に比べ、バンドギャップが増大することを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項22】
前記一次元ナノ構造体がドーパントをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項23】
前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面上に配置されるコーティング層をさらに含み、前記コーティング層が、Li
2CO
3、Li
2O、Li
2C
2O
4、LiOH、LiX、ROCO
2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO
2Li)
2、(CH
2OCO
2Li)
2、Li
2S及びLi
xSO
yのうちから選択された1以上の残留リチウム化合物を含み、前記残留リチウム化合物でXは、F、Cl、IまたはBrであり、Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基であり、xは、0ないし1であり、yは、1ないし4であることを特徴とする請求項1に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク。
【請求項24】
請求項1ないし
23のうちいずれか1項に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む複合負極活物質。
【請求項25】
請求項
24に記載の複合負極活物質を含む負極。
【請求項26】
請求項
25に記載の負極を含むリチウム電池。
【請求項27】
請求項1ないし
23のうちいずれか1項に記載のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む半導体。
【請求項28】
請求項
27に記載の半導体を含む素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク(topological quantum framework embedded in a nano-particle)、複合負極活物質、負極、リチウム電池、半導体、素子、発光体、センサ、薬物伝達システム、アクチュエータ、及びナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造フレームワークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池用負極活物質の代表的な例は、黒鉛のような炭素系材料である。該黒鉛は、容量維持特性及び電位特性に優れる。また、リチウムの吸蔵および放出時、体積変化がなく、電池の安定性が高い。該黒鉛の理論的電気容量は、372mAh/gほどであり、非可逆容量が大きい。
【0003】
リチウム電池用負極活物質として、リチウムと合金可能な金属が使用される。リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Alなどである。リチウムと合金可能な金属は、電気容量が非常に大きい。例えば、黒鉛に比べ、電気容量が10倍以上である。リチウムと合金可能な金属は、充放電時、体積の膨脹/収縮を伴うので、電極内で孤立する活物質を発生させ、比表面積増大による電解質分解反応が深化され、寿命特性に劣ることとなる。
【0004】
従って、リチウムと合金可能な金属の高い電気容量を有しながらも、劣化が抑制される新たな材料が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面は、新たな構造を有するナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを提供することである。
【0006】
本発明の他の一側面は、上記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含むことによって向上した寿命特性を有する複合負極活物質を提供することである。
【0007】
本発明の他の一側面は、上記複合負極活物質を含む負極を提供することである。
【0008】
本発明の他の一側面は、上記負極を採用したリチウム電池を提供することである。
【0009】
本発明の他の一側面は、上記位相構造量子フレームワークを含むことによってバンドギャップの調節が容易な半導体を提供することである。
【0010】
本発明の他の一側面は、上記半導体を含む素子を提供することである。
【0011】
本発明の他の一側面は、上記発光体を提供することである。
【0012】
本発明の他の一側面は、上記センサを提供することである。
【0013】
本発明の他の一側面は、上記アクチュエータを提供することである。
【0014】
本発明の他の一側面は、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一側面によって、
互いに異なる方向に配置され、互いに連結される複数の一次元ナノ構造体を含み、
前記一次元ナノ構造体が、リチウムを吸蔵および放出することができる金属または準金属、及びリチウムを含む第1組成物を含み、
多孔性構造を有するナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが提供される。
【0016】
他の一側面によって、前記一次元ナノ構造体の直径が5nm以下であり得る。
【0017】
他の一側面によって、前記一次元ナノ構造体が実質的に直線形態を含み得る。
【0018】
他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの内部に配置された一次元ナノ構造体の長手方向が、前記一次元ナノ構造体から最も隣接したナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面の接線方向と異なる方向であり得る。
【0019】
他の一側面によって、前記複数の一次元ナノ構造体が、1以上の他の一次元ナノ構造体と交差し得る。
【0020】
他の一側面によって、前記複数の一次元ナノ構造体間に気孔が配置され、前記気孔の直径が5nm以下であり得る。
【0021】
他の一側面によって、前記気孔の断面形態が、前記気孔に隣接し、第1方向に配置される第1の一次元ナノ構造体、前記第1の一次元ナノ構造体と交差し、第2方向に配置される第2の一次元ナノ構造体、前記第2の一次元ナノ構造体と交差し、第3方向に配置される第3の一次元ナノ構造体、並びに前記第1の一次元ナノ構造体及び第3の一次元ナノ構造体と交差し、第4方向に配置される第4の一次元ナノ構造体によって決定され得る。
【0022】
他の一側面によって、前記気孔の断面形態が、円形、楕円形、四角形、三角形及び五角形のうちから選択された1以上であり得る。
【0023】
他の一側面によって、前記複数の一次元ナノ構造体の間に配置される1以上の二次元ナノ構造体をさらに含み得る。
【0024】
他の一側面によって、前記二次元ナノ構造体が、1以上の他の二次元ナノ構造体と交差し得る。
【0025】
他の一側面によって、前記二次元ナノ構造体の厚みが5nm以上であり、長さが20nm以上であり得る。
【0026】
他の一側面によって、前記二次元ナノ構造体が、前記一次元ナノ構造体と同一組成を有し得る。
【0027】
他の一側面によって、前記気孔の配列が非周期的であって不規則的であり、前記気孔の形態が不規則的であり得る。
【0028】
他の一側面によって、気孔率が50%以上であり得る。
【0029】
他の一側面によって、多孔性粒子形態を有し得る。
【0030】
他の一側面によって、前記多孔性粒子の形態が球形ケージであり、前記多孔性粒子の球形度が0.7以上であり、縦横比が4以下であり得る。
【0031】
他の一側面によって、前記多孔性粒子の直径が200nm以下であり得る。
【0032】
他の一側面によって、前記第1組成物が非晶質構造を有し得る。
【0033】
他の一側面によって、前記第1組成物が、金属と、原子量20以上の第14族元素とを含み得る。
【0034】
他の一側面によって、前記第1組成物が下記化学式(1)で表示され得る。
【化1】
(前記化学式(1)で、
Mは、Fe、Co、Mn、Ni、Au、Ag、Pt、Nb、Mo、V、Re、Ti、Ba、Li、Na、Ma、Ca及びAlのうちから選択された1以上の金属であり、
Qは、C、NまたはOであり、
0<x<1、0≦y<2である。)
【0035】
他の一側面によって、前記第1組成物がリチウムシリサイドを含み得る。
【0036】
他の一側面によって、前記第1組成物が、前記第1組成物1モルに対して、リチウム0.1ないし1モルを含み、第1組成物1モルに対してシリコン0.7ないし1.3モルを含み、リチウム含量に比べ、シリコン含量がさらに多くてもよい。
【0037】
他の一側面によって、前記リチウムシリサイドが、下記化学式(2)で表示され得る。
【化2】
(前記式(2)で、0<x<1である。)
【0038】
他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、バルク材料に比べ、バンドギャップが増大し得る。
【0039】
他の一側面によって、前記一次元ナノ構造体がドーパントをさらに含み得る。
【0040】
他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面上に配置されるコーティング層をさらに含み、前記コーティング層が、Li2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S及びLixSOyのうちから選択された1以上の残留リチウム化合物を含み、前記残留リチウム化合物でXは、F、Cl、IまたはBrであり、Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基であり、xは、0ないし1であり、yは、1ないし4であり得る。
【0041】
他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む複合負極活物質が提供される。
【0042】
他の一側面によって、前記複合負極活物質を含む負極が提供される。
【0043】
さらに他の一側面によって、前記負極を含むリチウム電池が提供される。
【0044】
さらに他の一側面によって、前記位相構造量子フレームワークを含む半導体が提供される。
【0045】
さらに他の一側面によって、前記半導体を含む素子が提供される。
【0046】
さらに他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む発光体が提供される。
【0047】
さらに他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含むセンサが提供される。
【0048】
さらに他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む薬物伝達システムが提供される。
【0049】
さらに他の一側面によって、前記ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含むアクチュエータが提供される。
【0050】
さらに他の一側面によって、
リチウムを吸蔵および放出することができる金属または準金属を含む負極を準備する段階と、
前記負極の理論容量の20%ないし60%までリチウムを充電する段階と、
前記リチウムが充電された(prelithiated)負極と、正極とを含む電池において、前記負極の理論容量の100%までリチウムを追加充電する段階と、
前記リチウムが追加充電された負極を放電することによって脱リチウム化(delithiating)させ、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む電極を得る段階と、を含むナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク製造方法が提供される。
【0051】
さらに他の一側面によって、負極と正極との容量比であるN/P比が1.2ないし1.6であり得る。
【0052】
さらに他の一側面によって、前記リチウムを吸蔵および放出することができる金属が、14族金属または準金属元素を含み得る。
【発明の効果】
【0053】
本発明の一側面によれば、新たな構造を有するナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを提供することができる。
【0054】
本発明の他の一側面によれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含むことによって複合負極活物質の寿命特性が向上する。
【0055】
本発明の他の一側面によれば、複合負極活物質を含む負極を提供することができる。
【0056】
本発明の一側面によれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む複合負極活物質を含むことにより、リチウム電池の寿命特性が向上し、充放電効率が向上する。
【0057】
本発明の他の一側面によれば、位相構造量子フレームワークを含むことによって半導体バンドギャップの調節が容易になる。
【0058】
本発明の他の一側面によれば、半導体を含む素子を提供することができる。
【0059】
本発明の他の一側面によれば、発光体を提供することができる。
【0060】
本発明の他の一側面によれば、センサを提供することができる。
【0061】
本発明の他の一側面によれば、アクチュエータを提供することができる。
【0062】
本発明の他の一側面によれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1A】一具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの概路図である。
【
図1B】
図1Aの位相構造量子フレームワーク内部の一部を拡大した概路図である。
【
図1C】
図1Aの位相構造量子フレームワークを二次元的に図示した概略透視図である。
【
図1D】他の一具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの概路図である。
【
図1E】
図1Dの位相構造量子フレームワーク内部の一部を拡大した概路図である。
【
図1F】他の一具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの概路図である。
【
図2A】実施例1で製造されたナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク(topological quantum framework)のHAADF(high-angle annular dark field)-STEM(scanning transmission electron. microscopy)イメージである。
【
図2B】
図2Aの位相構造量子フレームワークに対するTEM(transmission electron microscope)イメージである。
【
図2C】実施例2で製造されたナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークのHAADF-STEMイメージである。
【
図2D】比較例1で製造された負極活物質であるシリコンナノ粒子のHAADF-STEMイメージである。
【
図3A】
図2Bの位相構造量子フレームワークの一部を拡大したTEMイメージである。
【
図3B】
図3Aに対応するFFT(fast Fourier transform)回折イメージ(diffractogram)である。
【
図4A】位相構造量子フレームワークに対するHAADF-STEM黒白イメージである。
【
図4C】
図4Bにおいて、シリコン元素の分布のみを示すイメージである。
【
図4D】
図4Bにおいて、リチウム元素の分布のみを示すイメージである。
【
図4E】
図4Bにおいて、炭素元素の分布のみを示すイメージである。
【
図4F】
図4Aにおいて、1地点に対するEELS(electron energy loss spectroscopy)分析結果である。
【
図4G】
図4Aにおいて、2地点に対するEELS分析結果である。
【
図4H】
図4Aにおいて、3地点に対するEELS分析結果である。
【
図5】実施例3及び比較例2で製造されたリチウム電池の充放電実験結果を示すグラフである。
【
図6】一具現例によるリチウム電池の概路図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、例示的な具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク(TQF(topological quantum framework) embedded in a nano-particle)、それを含む複合負極活物質・負極・リチウム電池・半導体・素子、及びナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0065】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を、特定の実施形態に対して限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むものであると理解されなければならない。
【0066】
以下で使用される用語は、ただ、特定実施例について説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」にも解釈され、「または」にも解釈される。
【0067】
図面において、さまざまな構成要素、層及び領域を明確に表現するために、直径、長さ、厚みは、拡大しても縮小しても示されている。明細書全体にわたし、類似した部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、プレートなどの部分が、他の部分の「上に」または「上部に」あるとするとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。図面において、構成要素の一部が省略されもするが、それは、発明の特徴に対する理解の一助とするためのものであり、省略された構成要素を排除する意図ではない。
【0068】
本明細書において「フレームワーク(framework)」は、複数の一次元ナノ構造体からなるフレーム(frame)が互いに連結され、一定構造を有する三次元構造体を意味する。
【0069】
本明細書において「位相構造」は、複数の一次元ナノ構造体が、空間上で互いに一定関係を有するように配置されることを意味する。
【0070】
本明細書において「複合」は、互いに異なる性質を有する複数の構成要素が単純に混合され、物理的に接触する状態ではなく、単純な混合に達することができない機械化学的、電気化学的及び/または化学的な反応を介して、構成要素間に一定結合関係を有する状態を意味する。例えば、「複合負極活物質」は、機械化学的、電気化学的及び/または化学的な反応を介して得られた結果物である負極活物質を意味する。
【0071】
一具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク(TQF)は、互いに異なる方向に配置され、互いに連結される複数の一次元ナノ構造体を含み、一次元ナノ構造体が、リチウムを吸蔵および放出することができる金属または準金属、及びリチウムを含む第1組成物を含み、多孔性構造を有する。ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、任意の方向にそれぞれ配置された複数の一次元ナノ構造体が互いに連結されてなる三次元多孔性ナノ構造体である。
【0072】
該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、複数の一次元ナノ構造体を含み、多孔性構造を有することにより、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、導電材及びバインダのような他の成分と均一に混合されたり分散されたりする。また、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの充放電時の体積変化が抑制され、体積変化による追加的なリチウム消耗が抑制され、結果として、リチウム電池の充放電特性が向上する。
【0073】
複数の一次元ナノ構造体を含むナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、充放電時、一次元ナノ構造体の体積変化を容易に受容することができる。従って、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、充放電時、一次元ナノ構造体の亀裂が抑制されることにより、リチウム電池の寿命特性低下を抑制することができる。そして、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、長期間の充放電後にも、リチウム電池の充放電効率低下を抑制することができる。
【0074】
図1A、
図1C及び
図1Fは、一具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの概路図である。
図1Bは、
図1Aのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の内部一部を拡大した概路図である。
図1Cは、
図1Aのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを二次元的に図示した概略透視図である。
図1Dは、
図1Cのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の内部一部を拡大した概路図である。
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100は、互いに異なる方向(12,13)に配置される複数の一次元ナノ構造体10が互いに連結されてなり、複数の気孔20を含む多孔性構造を有する。
図1B及び
図1Eを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の表面及び内部において、互いに異なる方向(12,13,31,41,51,61)に配置された複数の一次元ナノ構造体10,30,40,50,60が連結される。一次元ナノ構造体は、1つの次元の大きさが残り次元に比べ、顕著に大きいナノ構造体を意味する。該一次元ナノ構造体において、長手方向(x方向)の大きさが、直径方向(y,z方向)の大きさに比べてかなり大きくなる。例えば、該一次元ナノ構造体は、長さが20nm以上であり、直径が10nm未満であるナノ構造体でもある。例えば、該一次元ナノ構造体が、一次元ナノワイヤ、一次元ナノファイバ、一次元ナノフィラメントなどでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、一次元ナノ構造体として使用することができるものであるならば、いずれも可能である。
【0075】
該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が含む一次元ナノ構造体の平均径は、5nm以下でもある。該一次元ナノ構造体の平均径が、0.1nmないし4.5nm、0.1nmないし4nm、0.1nmないし3.5nm、0.1nmないし3nm、0.1nmないし2.5nm、0.1nmないし2nm、0.1nmないし1.5nm、または0.1nmないし1nmでもある。該一次元ナノ構造体が5nm以下の平均径を有することにより、リチウム電池の充放電特性が向上する。
【0076】
該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が含む一次元ナノ構造体の平均径の標準偏差が、平均径の20%以下、18%以下、16%以下、14%以下、12%以下、10%以下、8%以下、6%以下、4%以下、2%以下でもある。一次元ナノ構造体の直径が低い標準偏差を有することにより、リチウム電池の充放電特性がさらに向上する。例えば、平均径2nmである一次元ナノ構造体の標準偏差が0.4nm以下でもある。
【0077】
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が含む一次元ナノ構造体10は、実質的に線形形態(substantially linear)を有することができる。一次元ナノ構造体10は、真っ直ぐな直線形態(straight line shaped)、全体が曲がった曲線形態(curved line shaped)、または一部が直線であり、他の一部が曲線である混合形態でもある。
【0078】
図1A及び
図1Dを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100内部に配置された一次元ナノ構造体10の長手方向11が、一次元ナノ構造体10から最も隣接したナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100表面の接線方向101と異なる方向でもある。
【0079】
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の表面及び内部において、複数の一次元ナノ構造体10が、1以上の他の一次元ナノ構造体と交差(cross)しながらも連結される。複数の一次元ナノ構造体10が、1以上の他の一次元ナノ構造体と交差することにより、二次元的または三次元的な配位ネットワーク(coordination network)を形成することができる。
【0080】
図1Aないし
図1Cを参照すれば、1つの一次元ナノ構造体と異なる1つの一次元ナノ構造体が交差しながらなす角度αは、20°ないし160°、30°ないし150°、40°ないし140°、50°ないし130°、60°ないし120°、70°ないし110°、または80°ないし100°でもある。
【0081】
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の内部及び表面において、互いに連結された複数の一次元ナノ構造体10,30,40,50,60の間に、気孔(pore)20が配置され、気孔20の平均径は、5nm以下でもある。該気孔の平均径が0.1nmないし4.5nm、0.1nmないし4nm、0.1nmないし3.5nm、0.1nmないし3nm、0.1nmないし2.5nm、または0.1nmないし2nmでもある。複数の一次元ナノ構造体10間に配置される気孔が、5nm以下の平均径を有することにより、リチウム電池の充放電特性がさらに向上する。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、一次元ナノ構造体10の平均径に比べ、一次元ナノ構造体10間に配置された気孔20の平均径がさらに大きくなる。該気孔径は、気孔に隣接して離隔されて配置される一次元ナノ構造体10間の距離の最大値である。すなわち、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が含む気孔20は、ナノ気孔(nano pore)である。
【0082】
図1B及び
図1Eを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、気孔20の形態(例えば、気孔の断面形態)が、気孔20に隣接し、第1方向31に配置される第1の一次元ナノ構造体30、第1の一次元ナノ構造体30と交差し、第2方向41に配置される第2の一次元ナノ構造体40、第2の一次元ナノ構造体40と交差し、第3方向51に配置される第3の一次元ナノ構造体50、並びに第1の一次元ナノ構造体30及び第3の一次元ナノ構造体50と交差し、第4方向61に配置される第4の一次元ナノ構造体60によっても決定される。
図1B及び
図1Eを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、隣接した複数の一次元ナノ構造体10によって決定される気孔20の形態が、隣接した複数の一次元ナノ構造体10が配置される方向、及び/または一次元ナノ構造体10の形態により、互いに異なる。気孔20の形態は、隣接した複数の第1ナノ構造体が交差する角度αによっても決定される。例えば、気孔20の断面形態が、六角形、五角形、四角形、三角形などの多面体形態を有することができる。すなわち、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、互いに交差する複数の一次元ナノ構造体によって形成される気孔20の断面形態が非円形でもある。
【0083】
図1D及び
図1Eを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、気孔20の形態(例えば、気孔の断面形態)が、円形または楕円形でもある。例えば、気孔20の形態が曲がった曲線形態を有する1以上の一次元ナノ構造体10によっても決定される。すなわち、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、円形気孔または楕円形気孔は、完全な円形、または完全な楕円形の気孔以外に、気孔断面の50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上が曲線からなる形態の気孔を含む。また、図面に図示されていないが、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、複数の気孔20が、多面体形態の気孔と、非多面体形態の気孔とをいずれも含んでもよい。また、図面に図示されていないが、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、1つの気孔20の一部が曲線であり、一部が直線でもある。例えば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100に、ナノスフィア気孔が内蔵されている(nano-spherical pores are embedded)。1つの円形または楕円形の気孔一部が曲線からなる場合、かような曲線部分の曲率半径が0.1nmないし100nm、0.1nmないし90nm、0.1nmないし80nm、0.1nmないし70nm、0.1nmないし60nm、0.1nmないし50nm、0.1nmないし40nm、0.1nmないし30nm、0.1nmないし20nm、または0.1nmないし10nmでもある。
【0084】
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の内部に、複数の一次元ナノ構造体10の間に配置される1以上の二次元ナノ構造体15をさらに含んでもよい。1つの二次元ナノ構造体15の表面及び/または側面に、1以上の一次元ナノ構造体10が連結される。二次元ナノ構造体15が、複数の一次元ナノ構造体10に連結されることにより、二次元的または三次元的な配位ネットワークを形成することができる。ここで、
図2Cを参照すれば、二次元ナノ構造体15が、1以上の他の二次元ナノ構造体15と交差することができる。二次元ナノ構造体15が複数の他の二次元ナノ構造体15に連結されることにより、二次元的または三次元的な配位ネットワークを形成することができる。すなわち、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が、複数の一次元ナノ構造体10による配位ネットワークと、複数の二次元ナノ構造体15による配位ネットワークとを同時に含んでもよい。
【0085】
二次元ナノ構造体の厚みが、5nm以上、10nm以上、15nm以上または20nm以上でもある。該二次元ナノ構造体の厚みが、5nmないし30nm、5nmないし25nm、5nmないし20nm、6nmないし19nm、7nmないし18nm、8nmないし17nm、9nmないし16nm、または10nmないし15nmでもある。該二次元ナノ構造体の長さが、20nm以上、25nm以上、30nm以上、35nm以上、40nm以上、45nm以上、50nm以上、55nm以上、60nm以上、65nm以上、70nm以上、75nm以上、80nm以上、85nm以上、90nm以上、95nm以上、100nm以上でもある。該二次元ナノ構造体の長さが、20nmないし200nm、25nmないし200nm、30nmないし200nm、35nmないし200nm、40nmないし195nm、45nmないし190nm、50nmないし185nm、55nmないし180nm、60nmないし175nm、65nmないし170nm、70nmないし165nm、75nmないし160nm、80nmないし155nm、85nmないし150nm、90nmないし145nm、95nmないし140nm、または100nmないし140nmでもある。該二次元ナノ構造体の長さは、厚み方向と垂直である方向の二次元ナノ構造体の距離のうち最長値を意味する。該二次元ナノ構造体が前述の一次元ナノ構造体と同一組成を有することができる。
【0086】
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100において、気孔20の配列が、非周期的(non periodically)であり、不規則的(disordered)でもある。三次元多孔性ナノ構造体は、従来の周期的であって規則的な気孔配列を有する多孔性フォーム(foam)などと異なり、気孔配列が、非周期的であって不規則的でもある。また、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100は、六角形、五角形、四角形または三角形のような多様な形態の気孔を同時に含むことにより、気孔の形態が互いに異なり、不規則的(irregular)でもある。従って、円形気孔のように、一種形態の規則的な形態の気孔を含む従来の多孔性材料と区別される。
【0087】
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の気孔率は、50%以上でもある。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の気孔率は、50%ないし99%、55%ないし99%、60%ないし99%、65%ないし99%、70%ないし99%、75%ないし99%、80%ないし99%、85%ないし99%、または90%ないし99%でもある。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100は、複数の一次元ナノ構造体10が互いに連結されてなるので、相対的に高い気孔率を有することができる。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が、かような範囲の高い気孔率を有することにより、リチウム電池の充放電特性が向上する。気孔率は、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の全体体積において、気孔が占める体積の分率である。
【0088】
図1Aないし
図1Fを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が、多孔性粒子(porous particle)形態でもある。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100が多孔性粒子形態を有することにより、他の成分と混合され、多様な形態に容易に成形される。例えば、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の粒子、及び溶媒を含むスラリーを製造した後、多様な形態に成形することができる。
【0089】
図2Aないし
図2Cを参照すれば、多孔性粒子形態のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、球形粒子、例えば、球形ケージ(spherical cage)粒子でもある。該球形粒子の球形度は、0.7以上、0.75以上、0.8以上、0.85以上、0.9以上、0.91以上、0.92以上、0.93以上、0.94以上、0.95以上、0.96以上、0.97以上、0.98以上、0.99以上でもある。該球形粒子の球形度は、1.0未満でもある。球形度は、同一体積を有する球の表面積に対する多孔性粒子表面積の比率である。完全な球の球形度は、1であり、一般的な粒子の球形度は、0を超え1未満である。球形度の計算時、多孔性粒子の表面積は、多孔性粒子と同一外形を有する非多孔性粒子の表面積を意味する。該多孔性粒子の縦横比は、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.3以下、1.2以下または1.1以下でもある。該多孔性粒子の縦横比は、1.0以上でもある。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが多孔性球形粒子形態を有することにより、電解質と広い接触面積を有することができ、それにより、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含むリチウム電池のレート特性が向上する。
【0090】
図2Bないし
図2Cを参照すれば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク100の直径が200nm以下でもある。すなわち、該位相構造量子フレームワークを含むナノ粒子型構造体の直径が200nm以下でもある。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの直径が、10nmないし200nm、10nmないし180nm、10nmないし160nm、10nmないし140nm、10nmないし120nm、10nmないし100nm、10nmないし90nm、10nmないし80nm、10nmないし70nm、10nmないし60nm、10nmないし50nm、10nmないし40nm、10nmないし30nm、または10nmないし20nmでもある。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、かような範囲の直径を有することにより、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造フレームワークを含むリチウム電池の充放電特性がさらに向上する。
【0091】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、リチウムを吸蔵および放出することができる金属または準金属、及びリチウムを含む第1組成物は、非晶質(amorphous)構造を有することができる。第1組成物が非晶質構造を含むことにより、結晶質構造を有する組成物に比べ、充放電時、体積変化による亀裂などが抑制され、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含むリチウム電池の寿命特性が向上する。
【0092】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体が含む第1組成物は、金属と、原子量20以上の第14族元素とを含んでもよい。該金属は、周期律表の1族元素ないし13族元素のうちから選択される金属元素でもある。該金属は、Fe、Co、Mn、Ni、Au、Ag、Pt、Nb、Mo、V、Re、Ti、Ba、Li、Na、Ma、Ca、Al、またはそれらの1以上の合金でもある。
【0093】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体が含む第1組成物は、原子量20以上の第14族元素、及び酸素、窒素または炭素のうちから選択された1以上をさらに含む半導体でもある。例えば、該半導体は、金属と、原子量20以上の第14族元素とを含む前駆体組成物に、酸素、窒素及び炭素のうち1以上を含むガスを反応させて製造することができる。
【0094】
例えば、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、第1組成物は、下記化学式(1)によっても表示される:
【0095】
【0096】
化学式(1)で、Mは、Fe、Co、Mn、Ni、Au、Ag、Pt、Nb、Mo、V、Re、Ti、Ba、Li、Na、Ma、Ca及びAlのうちから選択された1以上の金属であり、Qは、C、NまたはOであり、0≦x<1、0≦y<2である。
例えば、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、第1組成物が、下記化学式(1a)ないし化学式(1d)によっても表示される:
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
化学式(1a)~(1d)で、Mは、Fe、Co、Mn、Ni、Au、Ag、Pt、Nb、Mo、V、Re、Ti、Ba、Li、Na、Ma、Ca及びAlのうちから選択された1以上の金属であり、0<x<1、0≦y<2である。
【0102】
例えば、一次元ナノ構造体が含む第1組成物は、金属シリサイドでもある。例えば、第1組成物が、FexSi、CoxSi、MnxSi、NixSi、AuxSi、AgxSi、PtxSi、NbxSi、MoxSi、VxSi、RexSi、TixSi、BaxSi、LixSi、NaxSi、MaxSi、CaxSi及びAlxSiのうちから選択された1以上を含んでもよい。かような金属シリサイドにおいて、0<x≦1である。
【0103】
一次元ナノ構造体が含む第1組成物は、リチウムと、原子量20以上の第14族元素とを含んでもよい。原子量20以上の第14族元素は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)または鉛(Pb)でもある。例えば、該第1組成物が、リチウムシリサイド(lithium silicide)を含んでもよい。該一次元ナノ構造体が、リチウムシリサイドナノワイヤでもある。該一次元ナノ構造体が含む第1組成物は、第1組成物1モルに対して、リチウム0.1ないし1モル、また該第1組成物1モルに対して、シリコン0.7ないし1.3モルを含んでもよい。該一次元ナノ構造体が含む第1組成物であり、リチウム含量に比べ、シリコン含量がさらに多い。該第1組成物は、周期律表の3族ないし12族に属する遷移金属を含まない。従って、従来の一般的な多孔性遷移金属酸化物と区別される。
【0104】
例えば、一次元ナノ構造体が含むリチウムシリサイドは、下記化学式(2)によっても表示される:
【0105】
【0106】
化学式(2)で、0<x<1である。
【0107】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、同一組成のバルク(bulk)材料に比べ、バンドギャップが増大する量子制限効果(quantum confinement effect)を有することができる。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが含む一次元ナノ構造体の直径などを調節し、バンドギャップを容易に調節することができる。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体がドーパントをさらに含んでもよい。該一次元ナノ構造体がドーパントを追加して含むことにより、伝導度などを調節することができ、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造フレームワークのバンドギャップを調節し、半導体としての物性を有することができる。
【0108】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、表面上に配置されるコーティング層をさらに含んでもよい。該コーティング層は、Li2CO3、Li2O、Li2C2O4、LiOH、LiX、ROCO2Li、HCOLi、ROLi、(ROCO2Li)2、(CH2OCO2Li)2、Li2S及びLixSOyのうちから選択された1以上の残留リチウム化合物を含んでもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、残留リチウム化合物として使用することができるものであるならば、いずれも可能である。前述の残留リチウム化合物において、Xは、F、Cl、IまたはBrであり、Rは、炭素数1ないし20の炭化水素基であり、xは、0ないし1であり、yは、1ないし4である。Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基でもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野において、炭化水素基として使用することができる官能基であるならば、いずれも可能である。
【0109】
他の一具現例による複合負極活物質は、前述のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む複合正極活物質は、導電材及びバインダと均一に混合され、充放電時の体積変化が抑制されるので、向上した寿命特性と充放電効率とを提供することができる。
【0110】
他の具現例による負極は、前述の複合負極活物質を含む。負極は、例えば、前述の複合負極活物質及びバインダを含む負極活物質組成物が、一定形状に成形されるか、あるいは前述の負極活物質組成物が、銅箔(copper foil)などの集電体に塗布される方法によっても製造される。
【0111】
具体的には、前述の複合負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された負極活物質組成物が準備される。負極活物質組成物が、金属集電体上に直接コーティングされて負極板が製造される。代案として、負極活物質組成物が、別途の支持体上にキャスティングされた後、支持体から剥離されたフィルムが、金属集電体上にラミネーションされて負極板が製造される。負極は、前述の形態に限定されるものではなく、前述の形態以外の形態でもある。
【0112】
負極活物質組成物は、前述の複合負極活物質以外に、他の炭素系負極活物質を追加して含んでもよい。例えば、炭素系負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、フラーレンスート(fullerene soot)、炭素ナノチューブ及び炭素ファイバからなる群のうちから選択された1以上でもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0113】
導電材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック 、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素ファイバ、銅・ニッケル・アルミニウム・銀などの金属粉末、金属ファイバなどを使用することができ、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を、1種、または1種以上を混合して使用することができるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、導電材として使用されるものであるならば、いずれも使用される。また、前述の結晶性炭素系材料が導電材としても追加される。
【0114】
バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、及びその混合物、またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野においてバインダとして使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0115】
溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0116】
複合負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略されもする。
【0117】
他の具現例によるリチウム電池は、前述の複合負極活物質を含む負極を採用する。リチウム電池は、次のような方法によっても製造される。
【0118】
まず、負極が提供されるか、前述の負極製造方法により準備される。
【0119】
次に、正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされて乾燥され、正極板が製造される。代案として、正極活物質組成物が、別途の支持体上にキャスティングされた後、支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極板が製造される。
【0120】
正極活物質として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物及びリチウムマンガン酸化物からなる群のうちから選択された1以上を含んでもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質が使用されもする。
【0121】
例えば、LiaA1-bB’bD2(当該式で、0.90≦a≦1.8及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bB’bO2-cDc(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’bO4-cDc(当該式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobB’cDα(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αFα(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cDα(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’α(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(当該式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(当該式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiI’O2;LiNiVO4;Li3-fJ2(PO4)3(0≦f≦2);Li3-fFe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物を使用することができる。
【0122】
前述の化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0123】
ここで、該化合物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または、該化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできるということは言うまでもない。該コーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、オキシヒドロキシド、オキシカーボネートまたはヒドロキシドカーボネートのコーティング元素化合物を含んでもよい。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でもある。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。該コーティング層形成工程は、該化合物に、かような元素を使用し、正極活物質物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング法、浸漬法など)によってコーティングすることができるならば、いかなるコーティング方法を使ってもよく、それについては、当該分野の当業者に周知されている内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0124】
例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiMnxO2x(x=1,2)、LiNi1-xMnxO2(0<x<1)、LiNi1-x-yCoxMnyO2(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、LiFeO2、V2O5、TiS、MoSなどが使用される。
【0125】
正極活物質組成物において、導電材、バインダ及び溶媒は、負極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。一方、正極活物質組成物及び/または負極活物質組成物に可塑剤をさらに付加し、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0126】
正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。該リチウム電池の用途及び構成により、導電材、バインダ及び溶媒のうち1以上が省略されもする。
【0127】
次に、正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。セパレータは、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用される。電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能に優れるものが使用される。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであり、不織布形態でも織布形態でもよい。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなワインディング可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能に優れるセパレータが使用される。例えば、セパレータは、下記方法によっても製造される。
【0128】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティングされて乾燥され、セパレータが形成される。または、セパレータ組成物が支持体上にキャスティングされて乾燥された後、支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされ、セパレータが形成される。
【0129】
セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板のバインダに使用される物質であるならば、いずれも使用される。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使用されもする。
【0130】
次に、電解質が準備される。
【0131】
例えば、電解質は、有機電解液でもある。また、電解質は、固体でもある。例えば、ボロン酸化物、リチウムオキシニトリドなどでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、固体電解質として使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。固体電解質は、スパッタリングなどの方法により、負極上に形成される。
【0132】
例えば、有機電解液が準備される。該有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
【0133】
有機溶媒は、当該技術分野において、有機溶媒として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブテロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物などである。
【0134】
リチウム塩も、当該技術分野において、リチウム塩として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ただし、x、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0135】
図6から分かるように、リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。前述の正極3、負極2及びセパレータ4がワインディンされたり折り畳まれたりして、電池ケース5に収容される。次に、電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6に密封され、リチウム電池1が完成される。電池ケースは、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、リチウム電池は、薄膜型電池でもある。リチウム電池は、リチウムイオン電池でもある。
【0136】
正極及び負極の間に、セパレータが配置され、電池構造体が形成される。電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0137】
また、電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、かような電池パックが高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などに使用される。
【0138】
特に、リチウム電池は、レート特性及び寿命特性に優れるので、電気車両に適する。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車両に適する。
【0139】
前述の複合負極活物質を含むリチウム電池は、リチウム金属に対して、3.0Vないし4.2Vの電圧範囲で、300サイクル後の容量維持率が70%以上でもある。従って、該リチウム電池は、従来の炭素系負極活物質に比べ、向上した放電容量を提供し、従来の金属系負極活物質に比べ、向上した寿命特性を提供することができる。
【0140】
他の一具現例による半導体は、前述のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体の直径、またはドーパントの種類及び含量を変更し、要求されるバンドギャップ、伝導度などの物性を有する半導体を提供することができる。
【0141】
例えば、該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む半導体は、下記化学式(1a)ないし化学式(1c)で表示される組成を有することができる。
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
式(1a)~(1c)で、0≦y<2である。
【0146】
他の一具現例による素子(device)は、前述の半導体を含む。該素子が、前述の半導体を含むことにより、優秀な性能を提供することができる。前述の半導体を含む素子は、例えば、エネルギー保存素子(energy storage device)、光吸収素子(light absorption device)、熱電素子(thermoelectric device)などでもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、半導体を使用する素子であるならば、いずれも可能である。
【0147】
他の一具現例による発光体は、前述のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体及び/または二次元ナノ構造体の直径、厚み、またはドーパントの種類及び含量を変更し、要求される発光特性を提供する発光体を提供することができる。
【0148】
他の一具現例によるセンサは、前述のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体及び/または二次元ナノ構造体の直径、厚み、またはドーパントの種類及び含量を変更し、要求される伝導度特性、抵抗特性、熱電特性などを有するセンサを提供することができる。
【0149】
他の一具現例による薬物伝達システム(drug delivery system)は、前述のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体及び/または二次元ナノ構造体の直径、厚み、またはドーパントの種類及び含量を変更し、要求される薬物伝達効果を提供する薬物伝達システムを提供することができる。
【0150】
他の一具現例による作動器(actuator)は、前述のナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む。該ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、一次元ナノ構造体及び/または二次元ナノ構造体の直径、厚み、またはドーパントの種類及び含量を変更し、要求される伝導度特性、抵抗特性、熱電特性などを有する作動器を提供することができる。
【0151】
他の一具現例によるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク製造方法は、リチウムを吸蔵および放出することができる金属または準金属を含む負極を準備する段階と、負極の理論容量(SOC:state of charge)の20%ないし60%までリチウムを充電する段階と、リチウム充電された(prelithiated)負極と、正極とを含む電池において、負極の理論容量(SOC)の100%までリチウムを追加充電する段階と、リチウム追加充電された負極を放電することによって脱リチウム化(delithiationg)させ、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む電極を得る段階と、を含む。製造されたナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの構造及び組成に係わる具体的な内容は、前述の内容を参照する。
【0152】
負極の理論容量(SOC)の20%ないし60%までリチウムを充電する段階において、充電されるリチウムの含量が、理論容量に比べ、過度に少なかったり多かったりすれば、安定したナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク構造が形成されない。
【0153】
負極の理論容量(SOC)の20%ないし60%までリチウムを充電する段階は、電気化学セルで遂行される。使用される電気化学セルは、特別に限定されるものではなく、2電極システムまたは3電極システムでもある。該3電極システムは、基準電極を追加して含んでもよい。該電気化学セルは、電極が含浸される電解液を含み、必要によっては、セパレータが追加される。該電解液は、リチウム電池で一般的に使用する前述の電解液が使用される。充電される負極は、リチウム電池に負極として使用される電極と同一方法によっても製造される。該負極の製造方法は、前述のリチウム電池の製造方法を参照する。
【0154】
リチウム充電された負極と、正極とを含む電池において、負極の理論容量(SOC)の100%までリチウムを追加充電する段階において、過量のリチウムを含む化合物が形成される。次に、リチウム追加充電された負極を脱リチウム化(すなわち、放電)させることにより、前述の化合物からリチウムが放出されながら気孔が形成され、多孔性構造を有するナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが形成される。リチウム充電された負極を理論容量の100%まで充電し、さらに脱リチウム(すなわち、放電)させる過程において、リチウム電池の電圧は、リチウム金属対比で、0超過ないし2.5Vでもある。リチウム充電された負極を、理論容量の100%まで充電し、さらに放電する過程は、1回ないし10回反復される。
【0155】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク製造方法において、リチウム充電された負極と、正極とを含む電池の負極と正極との容量比であるN/P比が1.2ないし1.6、1.25ないし1.6、1.3ないし1.6、1.35ないし1.6、1.4ないし1.6、1.45ないし1.55でもある。N/P比が、過度に低かったり高かったりすれば、安定したナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク構造が形成されない。
【0156】
ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク製造方法において、リチウムを吸蔵および放出することができる金属は、14族金属または準金属元素を含んでもよい。リチウムを吸蔵および放出することができる金属である14族金属または準金属元素は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)または鉛(Pb)でもある。例えば、負極の理論容量(SOC)の100%までリチウムを追加充電する段階において形成される過量のリチウムを含む化合物は、リチウムシリサイド化合物であるLiaSi(a>3)でもある。
【0157】
リチウム充電された負極は、電気化学的方法以外に、他の方法でも製造される。例えば、リチウムを吸蔵および放出することができる金属を含む負極に、物理的拡散により、リチウムを導入することができる。
【0158】
以下の実施例及び比較例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、該実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけで、本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0159】
(ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの製造)
実施例1
(半電池(half cell)の製造及び充電)
平均粒径50nmの単結晶(single crystal)シリコン(Si)ナノ粒子粉末、人造黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)及びバインダを55:35:2:8の重量比で混合した後、N-メチルピロリドン溶媒に投入し、さらに混合し、負極活物質スラリーを製造した。バインダは、リチウムポリアクリル酸(Li-PAA:lithium polyacrylate)である。Cuホイル上に、負極活物質スラリーをコーティングした後、80℃オーブンで1時間乾燥させた後、200℃の真空オーブンで2時間乾燥させた後で圧延し、作動電極(working electrode)を製造した。相対対極(counter electrode)としては、金属リチウムを使用した。電解質として、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)(2:6:2体積比)混合溶媒に、1.3M LiPF6が溶解されたものを使用し、電気化学セル(半電池)を準備した。
【0160】
電気化学セルにおいて、作動電極のSOC(state of charge)の50%まで充電させた。
【0161】
(全電池(full cell)の製造、充電及び放電)
(負極の製造)
電気化学セルにおいて、SOCの50%まで充電された作動電極を分離し、負極として使用した。
【0162】
(正極の製造)
LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2正極活物質、炭素導電剤(Denka Black)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を94:3:3の重量比で混合した混合物を、N-メチルピロリドン(NMP)と共に、メノウ乳鉢で混合し、正極活物質スラリーを製造した。15μm厚のアルミニウム集電体上に、正極活物質スラリーを、ドクターブレートを使用し、約40μm厚に塗布し、常温で乾燥させた後、真空、120℃の条件でさらに一度乾燥させ、圧延(roll press)し、集電体上に正極活物質層が配置された正極を製造した。
【0163】
(全電池の製造)
正極及び負極の間にセパレータを配置し、電極組立体を準備した。準備された電極組立体をポーチに入れ、電解液を注入した後で密封し、リチウム電池を製造した。該リチウム電池の幅は、26mm、長さ110mmのポーチセルである。セパレータとして、厚み14μmポリエチレン-ポリプロピレン共重合体セパレータを使用した。電解液としては、電解質として、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)(2:6:2体積比)混合溶媒に、1.3M LiPF6が溶解されたものを使用した。負極と正極との容量比(N/P比)は、1.5であった。
【0164】
(全電池の充電及び放電)
製造されたリチウム電池(フルセル)を、負極のSOCの100%まで充電した後、次に、正極のSOCの100%まで放電した。放電したリチウム電池を分解し、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む複合負極活物質を含む負極を得た。
【0165】
実施例2(ナノシート含有フレームワーク)
平均粒径50nmの単一結晶シリコン(Si)ナノ粒子粉末の代わりに、平均粒径50~200nmの欠陥(defect)を含む多結晶(polycrystalline)Siナノ粒子粉末を使用したことを除いては、実施例1と同一方法で、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む複合負極活物質を含む負極を得た。
【0166】
比較例1
(負極の製造)
平均粒径50nmのシリコン(Si)ナノ粒子粉末、人造黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)及びバインダを55:35:2:8の重量比で混合した後、N-メチルピロリドン溶媒に投入し、さらに混合し、負極活物質スラリーを製造した。バインダは、リチウムポリアクリル酸(Li-PAA)である。Cuホイル上に、負極活物質スラリーをコーティングした後、80℃オーブンで1時間乾燥させた後、200℃の真空オーブンで2時間乾燥させた後、圧延して負極を製造した。
【0167】
(正極の製造)
実施例1と同一方法で正極を製造した。
【0168】
(全電池の製造)
正極及び負極の間にセパレータを配置し、電極組立体を準備した。準備された電極組立体をポーチに入れ、電解液を注入した後で密封し、リチウム電池を製造した。リチウム電池の幅は、26mm、長さ110mmのポーチセルである。セパレータとして、厚み14μmポリエチレン-ポリプロピレン共重合体セパレータを使用した。電解液としては、電解質として、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC)フルオロエチレンカーボネート(FEC)(2:6:2体積比)混合溶媒に、1.3M LiPF6が溶解されたものを使用した。負極と正極との容量比(N/P比)は、1.1であった。
【0169】
(全電池の充放電)
製造されたリチウム電池(プルセル)を負極のSOCの90%まで充電した後、次に、正極のSOCの90%まで放電し、リチウム金属対比で1.5Vでカット-オフ(cut-off)した。負極活物質を含む負極を得た。
【0170】
(リチウム電池の製造)
実施例3
(負極の製造)
実施例1で準備したナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークを含む負極活物質を含む負極をそのまま使用した。
【0171】
(正極の製造)
LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2正極活物質、炭素導電剤(Denka Black)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、94:3:3の重量比で混合した混合物を、N-メチルピロリドン(NMP)と共に、メノウ乳鉢で混合し、正極活物質スラリーを製造した。15μm厚のアルミニウム集電体上に、正極活物質スラリーを、ドクターブレートを使用し、約40μm厚に塗布し、常温で乾燥させた後、真空、120℃の条件で、さらに一度乾燥させて圧延し、集電体上に正極活物質層が配置された正極を製造した。
【0172】
(リチウム電池の製造)
正極及び負極の間にセパレータを配置し、電極組立体を準備した。準備された電極組立体をポーチに入れ、電解液を注入した後で密封し、リチウム電池を製造した。リチウム電池の幅は、26mm、長さ110mmのポーチセルである。セパレータとして、厚み14μmポリエチレン-ポリプロピレン共重合体セパレータを使用した。電解液としては、電解質として、エチレンカーボネート(EC):ジエチレンカーボネート(DEC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)(2:6:2体積比)混合溶媒に、1.3M LiPF6が溶解されたものを使用した。負極と正極とのN/P比は、約1.5であった。
【0173】
比較例2
比較例1で製造された負極を使用し、負極と正極とのN/P比を1.1に変更したことを除いては、実施例3と同一方法でリチウム電池を製造した。
【0174】
評価例1:TEM(transmission electron microscope)測定
実施例1で製造された三次元多孔性ナノ構造体粒子形態を有するリチウムシリサイド(Li
xSi(0<x<1))ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークのHAADF(high-angle annular dark field)-STEM(scanning transmission electron. microscopy)イメージを
図2Aに示した。
図2Bは、
図2Aのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークに対するTEMイメージである。
図2Bは、
図2Aの三次元多孔性ナノ構造体粒子に対する二次元透視図に該当する。
図2Aにおいて、白で示される部分は、一次元ナノ構造体からなるフレーム(frame)であり、直径は1~2nmであり、複数の一次元ナノ構造体からなるフレーム間に配置される黒色で示される部分は、気孔(pore)であり、直径が約3nmであった。
図2A及び
図2Bから分かるように、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、複数の一次元ナノ構造体フレームが互いに交差して連結され、複数の一次元ナノ構造体フレーム間に気孔が配置される。
【0175】
図面には図示されていないが、電子トモグラフィ(electron tomography)を介して、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの表面及び内部に離隔されて配置された複数のリチウムシリサイドナノワイヤが、互いに交差しながら連結されてなる多孔性構造を有することを確認した。
【0176】
実施例2で製造された三次元多孔性ナノ構造体粒子形態を有するリチウムシリサイド(Li
xSi(0<x<1))ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークのHAADF-STEMイメージを
図2Cに示した。
図2Cから分かるように、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークにおいて、複数の一次元ナノ構造体フレーム間に複数の二次元ナノ構造体フレームが追加され、それらが互いに交差して連結され、複数の一次元ナノ構造体フレーム間に気孔が配置され、複数の二次元ナノ構造体フレーム間にも気孔が配置され、複数の一次元ナノ構造体フレームと、二次元ナノ構造体フレームとの間にも気孔が配置される。
【0177】
比較例1において、充放電によって製造された負極活物質であるシリコンナノ粒子のHAADF-STEMイメージを
図2Dに示した。
図2Dから分かるように、非多孔性シリコンナノ粒子形態をそのまま維持した。
【0178】
図3Aは、
図2Bのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの一部を拡大したTEMイメージであり、
図3Bは、
図3Aに対応するFFT(fast Fourier transform)回折イメージ(diffractogram)である。
【0179】
図3Aから分かるように、具体的な原子の配列状態が見ることができず、
図3Bから分かるように、結晶性に起因したスペクトラムも観察されていない。従って、実施例1で製造されたリチウムシリサイドナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークが、非晶質であることを確認した。
【0180】
図4Aないし
図4Cは、複数の三次元多孔性ナノ構造体が部分的に重畳され、非球形と見られるナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークに対するHAADF-STEMイメージである。解像度が低くて気孔は見ることができない。
図4Aは、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークに対する黒白イメージであり、
図4Bは、
図4Aに対して元素マッピングしたイメージである。
図4Bにおいて、緑色は、シリコンであり、赤色は、リチウムであり、青色は、カーボンである。
図4Bのイメージを、各元素に対するイメージに分離するのが
図4C、
図4D及び
図4Eである。
図4Cから分かるように、シリコンは、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク内部にだけ存在し、
図4Dから分かるように、リチウムは、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの内部及び周辺に存在し、
図4Eから分かるように、カーボンは、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの表面及び外部にだけ存在することを確認した。
【0181】
図4Aにおいて、1、2、3と表示された地点のEELS(electron energy loss spectroscopy)分析結果を、
図4F、
図4G、
図4Hにそれぞれ示した。
図3Aのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークがない領域に該当する1位置に対する分析結果である
図3Fにおいては、リチウム及びカーボンに係わるピークだけが検出された。
図4Aのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面に該当する2位置に対する分析結果である
図4Gにおいては、リチウム、シリコン及びカーボンに係わるピークがいずれも検出された。従って、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面に、カーボンを含むコーティング層が形成されていることを確認した。従って、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面に、リチウムカーボネートのような残留リチウム化合物が存在し、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク表面を不活性化(passivation)させ、充放電時に電気化学的安定性を向上させるということを確認した。
図4Aのナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク内部に該当する3位置に対する分析結果である
図4Hにおいては、シリコン及びリチウムに係わるピークだけが検出された。従って、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークは、リチウムシリサイドナノ構造体からなるということを確認した。
【0182】
評価例2:充放電特性評価
実施例3及び比較例2で製造されたリチウム電池に対して、25℃で、0.1C rateの電流で、電圧が4.2V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで、4.2Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次に、放電時に、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電するサイクルを300回反復した。
【0183】
全ての充放電サイクルにおいて、1つの充電/放電サイクル後、10分間の停止時間を置いた。
【0184】
充放電実験結果を、下記表1及び
図5に示した。100回目サイクルでの容量維持率、及び100回目サイクルでの充放電効率は、下記数式(1)及び数式(2)によってそれぞれ定義される。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
前述のところから分かるように、実施例3のリチウム電池は、比較例2リチウム電池に比べ、容量維持率が40%以上顕著に向上し、充放電効率も向上した。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明の一側面の、ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク、複合負極活物質、負極、リチウム電池、半導体、素子、発光体、センサ、薬物伝達システム、アクチュエータ、及びナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワークの製造方法は、例えば、電子機器関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0190】
1 リチウム電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップアセンブリ
10,30,40,50,60 一次元ナノ構造体
11,31,41,51,61 一次元ナノ構造体の方向
15 二次元ナノ構造体
20 気孔
100 ナノ粒子型構造体に内蔵された位相構造量子フレームワーク
101 位相構造フレームワーク表面の接線方向