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  • 特許-ガス分析装置の電圧制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】ガス分析装置の電圧制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20231016BHJP
【FI】
G01N27/12 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020067549
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021162556
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西坂 敦
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-220554(JP,A)
【文献】特開平11-311612(JP,A)
【文献】特開2017-161263(JP,A)
【文献】特開2007-271636(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0136182(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感ガス体と前記感ガス体を加熱するヒータ電極とを含むガスセンサ素子を備えたガス分析装置を、反復使用するときの電圧制御方法であって、
前記ガス分析装置の初回起動時に、
前記ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧を前記ヒータ電極に印加して、前記感ガス体の抵抗値を記憶する抵抗値記憶ステップと、
前記ヒータ電極に印加された前記電圧を前記駆動電圧に降下させ、前記駆動電圧を前記ヒータ電極に印加する駆動電圧印加ステップと、
前記ガスセンサ素子に被検ガスを導入し、前記被検ガス中の検知対象ガスの濃度を算出する濃度算出ステップとを含み、
前記ガス分析装置の2回目以降の起動時に、
前記ガスセンサ素子の前記駆動電圧よりも高い電圧を前記ヒータ電極に印加し、前記感ガス体の抵抗値が、前記抵抗値記憶ステップで記憶された前記抵抗値に達した時点で、前記ヒータ電極への印加電圧を前記駆動電圧に降下させ、前記駆動電圧を前記ヒータ電極に印加する印加電圧制御ステップと、
前記ガスセンサ素子に被検ガスを導入し、前記被検ガス中の検知対象ガスの濃度を算出する濃度算出ステップとを含む、ガス分析装置の電圧制御方法。
【請求項2】
感ガス体と前記感ガス体を加熱するヒータ電極とを含むガスセンサ素子を備えたガス分析装置を、反復使用するときの電圧制御方法であって、
前記ガス分析装置の起動前に、前記ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧を、前記ヒータ電極に印加したときの前記感ガス体の抵抗値をあらかじめ記憶する予備記憶ステップと、
前記ガス分析装置の起動時に、
前記ガスセンサ素子の前記駆動電圧よりも高い電圧を前記ヒータ電極に印加して、前記感ガス体の抵抗値が、前記予備記憶ステップにおける前記抵抗値に達した時点で、前記ヒータ電極への印加電圧を前記駆動電圧に降下させ、前記駆動電圧を前記ヒータ電極に印加する印加電圧制御ステップと、
前記ガスセンサ素子に被検ガスを導入し、前記被検ガス中の検知対象ガスの濃度を算出する濃度算出ステップとを含む、ガス分析装置の電圧制御方法。
【請求項3】
前記被検ガスが呼気ガスまたは皮膚ガスであり、前記検知対象ガスがアセトンである、請求項1または2に記載のガス分析装置の電圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置の電圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感ガス体と感ガス体を加熱するヒータ電極とを含むガスセンサ素子を備えたガス分析装置は、起動した後に駆動電圧を印加し続けても、ガスセンサ素子の空気中での抵抗値が安定するまでに時間がかかり、起動後すぐに使用できない。そこで、ヒータ電極に駆動電圧より高い電圧を印加した後、駆動電圧に降下させるといったヒートクリーニングと呼ばれる電圧制御方法が、従来から知られている(たとえば、特許文献1参照)。ヒートクリーニングを行うと、ヒートクリーニングを行わない場合と比べて、ガスセンサ素子の空気中での抵抗値が安定するまでの時間を短縮することができる。また、特許文献1のようなガス分析装置では、ヒートクリーニングが完了するまでの時間を視覚化することができる。特許文献1のような従来のガス分析装置の電圧制御方法は、装置を使用するたびに単なるヒートクリーニングを行うことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-304715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者は、ヒートクリーニングを繰り返すと、その都度ガスセンサ素子の空気中での抵抗値が変動し、安定しないことを見出した。つまり、ガス分析装置を使用するたびに単なるヒートクリーニングを行うといった従来の電圧制御方法は、ガスセンサ素子の空気中での抵抗値Rairが安定せず、その影響を受けて、ガスセンサ素子の被検ガス中での抵抗値Rgasも安定しないため、ガス感度(=Rgas/Rair)を維持できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ガス分析装置を反復使用しても、ガス感度を維持することができる電圧制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として、複数の態様を説明する。
【0007】
本発明のガス分析装置の電圧制御方法は、
感ガス体と感ガス体を加熱するヒータ電極とを含むガスセンサ素子を備えたガス分析装置を、反復使用するときの電圧制御方法であって、
ガス分析装置の初回起動時に、
ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧をヒータ電極に印加して、感ガス体の抵抗値を記憶する抵抗値記憶ステップと、
ヒータ電極に印加された電圧を駆動電圧に降下させ、駆動電圧をヒータ電極に印加する駆動電圧印加ステップと、
ガスセンサ素子に被検ガスを導入し、被検ガス中の検知対象ガスの濃度を算出する濃度算出ステップとを含み、
ガス分析装置の2回目以降の起動時に、
ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧をヒータ電極に印加し、感ガス体の抵抗値が、抵抗値記憶ステップで記憶された抵抗値に達した時点で、ヒータ電極への印加電圧を駆動電圧に降下させ、駆動電圧をヒータ電極に印加する印加電圧制御ステップと、
ガスセンサ素子に被検ガスを導入し、被検ガス中の検知対象ガスの濃度を算出する濃度算出ステップとを含むものである。
【0008】
また、本発明のガス分析装置の電圧制御方法は、
感ガス体と感ガス体を加熱するヒータ電極とを含むガスセンサ素子を備えたガス分析装置を、反復使用するときの電圧制御方法であって、
ガス分析装置の起動前に、ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧を、ヒータ電極に印加したときの感ガス体の抵抗値をあらかじめ記憶する予備記憶ステップと、
ガス分析装置の起動時に、
ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧をヒータ電極に印加して、感ガス体の抵抗値が、予備記憶ステップにおける抵抗値に達した時点で、ヒータ電極への印加電圧を駆動電圧に降下させ、駆動電圧をヒータ電極に印加する印加電圧制御ステップと、
ガスセンサ素子に被検ガスを導入し、被検ガス中の検知対象ガスの濃度を算出する濃度算出ステップとを含むものである。
【0009】
被検ガスが呼気ガスまたは皮膚ガスであり、検知対象ガスがアセトンであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、ガス分析装置を反復使用しても、ガス感度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)ガスセンサ素子の一例を示す模式的な平面図である。(b)(a)のA-A断面図である。
図2】(a)本発明の一実施形態における、ガス分析装置の初回起動時のフローチャートである。(b)本発明の一実施形態における、ガス分析装置の2回目以降の起動時のフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態を用いてガス分析装置を5回起動したときの模式的なグラフである。
図4】従来の電圧制御方法を用いてガス分析装置を5回起動したときの模式的なグラフである。
図5】(a)本発明の別の実施形態におけるフローチャートである。(b)本発明の別の実施形態を示す模式的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施形態の一例を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態では、ガスセンサ素子の一例として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ガスセンサ素子を用いて説明する。図1(a)および(b)を参照して、ガス分析装置は、感ガス体11と感ガス体を加熱するヒータ電極12とを含むガスセンサ素子1を備えている。図1(b)を参照して、ガスセンサ素子1は、キャビティ14aを有するベース14と、キャビティ14aを覆うようにベース14の上に設けられ、キャビティ14aにつながる開口部15aを有する絶縁膜15とを有する。キャビティ14aの上方の領域に位置する絶縁膜15の内部には、ヒータ電極12と検出電極13とが積層されている。検出電極13を覆うようにして、感ガス体11が設けられている。図1(a)を参照して、ヒータ電極12はヒータ配線パターン17と接続され、検出電極13は電極配線パターン18と接続され、配線パターン17,18はそれぞれパッド16に接続されている。パッド16と実装基板(図示せず)に設けられた電極とがワイヤ(図示せず)で電気的に接続されたガスセンサ素子1が、ガス分析装置の内部に収められている。
【0014】
第1実施形態において、ガスセンサ素子1に導入される被検ガスは呼気ガスであり、被検ガス中の検知対象ガスはアセトンである。つまり、ガス分析装置は、呼気分析装置とすることができる。アセトンは脂質代謝の過程で発生し、呼気中に排出されるが、糖尿病や肥満の人の呼気中に健常な人よりも高濃度で含まれる。呼気ガス中のアセトン濃度を測定することにより、糖尿病などの病気の進行度合やその治療の効果、またダイエット効果を判断することができる。アセトンを検知する呼気分析装置では、感ガス体11の材料として、たとえば、酸化タングステンを用いることができる。
【0015】
図2および図3を参照して、上記のようなガス分析装置を、たとえば5回使用するときの電圧制御方法を説明する。図3において、最も左のグラフが初回起動時を表し、最も右側のグラフが5回目の起動時を表している。第1実施形態の電圧制御方法は、初回起動時には抵抗値記憶ステップS1と、駆動電圧印加ステップS2と、濃度算出ステップS3とを含む。
【0016】
抵抗値記憶ステップS1では、ガスセンサ素子1の駆動電圧よりも高い電圧VHをヒータ電極12に印加して、感ガス体11の抵抗値を記憶する。駆動電圧よりも高い電圧VHの値は、感ガス体11の材料などにより異なるが、本実施形態では1.6Vである。駆動電圧よりも高い電圧VHをヒータ電極12に印加する時間tは、電圧VHの値や感ガス体11の材料などにより異なるが、本実施形態では10秒である。ヒータ電極に1.6Vを10秒間印加して、そのときの感ガス体の抵抗値を記憶する。被検ガスは、まだガスセンサ素子1に導入されていないため、このときの抵抗値は空気中における抵抗値Rair0であり、本実施形態では10kΩである。抵抗値Rair0=10kΩは、たとえば、ガスセンサ素子1に接続されたマイクロコンピュータ内の記憶部に記憶されるように構成するとよい。なお、図3において、時間tまでが抵抗値記憶ステップS1である。
【0017】
駆動電圧印加ステップS2では、ヒータ電極12に印加された電圧VHを駆動電圧VHに降下させ、駆動電圧VHをヒータ電極12に印加する。駆動電圧VHの値は、本実施形態では1.1Vである。つまり、このステップでは、駆動電圧よりも高い電圧VH=1.6Vを駆動電圧VH=1.1Vに降下させて、ヒータ電極に印加する。ヒータ電極に印加される電圧は、図3を参照して、tを境に1.6Vから1.1Vとなる。したがって、tを境に、感ガス体の空気中における抵抗値も下がっていく。次の濃度算出ステップS3においても、ヒータ電極には駆動電圧VH=1.1Vが印加される。したがって、図3において、時間t以降が駆動電圧印加ステップS2である。
【0018】
濃度算出ステップS3では、ガスセンサ素子1に呼気ガスを導入し、呼気ガス中のアセトンの濃度を算出する。呼気ガスは、図3を参照して、時間tで導入される。つまり、時間tは、ガス分析装置を起動してから測定準備が整うまでの時間である。時間tは、ガス分析装置の仕様により異なるが、本実施形態では15秒である。したがって、ガス分析装置を起動してから15秒後に、ガスセンサ素子に呼気ガスが導入される。また、言い換えると、駆動電圧1.1Vに降下させてから5秒後に、ガスセンサ素子に呼気ガスが導入される。ガスセンサ素子に呼気ガスが導入されると、呼気ガス中のアセトンと、感ガス体の表面に吸着されている酸素種とが反応し、酸素種が取り去られる。感ガス体の表面から酸素種が取り去られると、酸素種が補足していた感ガス体内の電子が自由になる。その影響により、感ガス体内を電流が流れやすくなるため、感ガス体の抵抗値が低下する。つまり、時間tを境に、感ガス体の空気中における抵抗値Rair1が低下し、被検ガス中における抵抗値Rgas1となる。本実施形態では、抵抗値Rair1=30kΩである。抵抗値Rgas1は、その後一定の値となる。抵抗値Rgas1の値を測定することにより、呼気ガス中のアセトン濃度を算出することができる。なお、図3において、時間t以降が初回起動時の濃度算出ステップS3である。したがって、前述の駆動電圧印加ステップS2と濃度算出ステップS3とは、一部重複している。
【0019】
なお、時間tにおいて、抵抗値Rair0が急激に上昇しているが、これは次の理由によるものと考えられる。感ガス体の抵抗値Rair0は、感ガス体の表面に吸着されている酸素種の量だけで決まるのではなく、感ガス体の結晶構造や、感ガス体に微量に添加されている触媒の活性によっても変化する。時間tにおいて、ヒータ電極に印加される電圧が1.6Vから1.1Vに降下すると、ヒータ電極の温度はたとえば約540℃から約230℃に低下する。この温度変化に伴い、感ガス体の結晶構造や触媒活性が変わり、その影響で感ガス体の抵抗値Rair0が急激に上昇する。
【0020】
図2(b)を参照して、第1実施形態の電圧制御方法は、ガス分析装置の2回目以降の起動時に、印加電圧制御ステップS4と、濃度算出ステップS5とを含む。
【0021】
図3の左から2番目のグラフが、2回目の起動時を表している。印加電圧制御ステップS4では、まず、ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧VH=1.6Vをヒータ電極に印加する。初回起動時には、ヒータ電極に1.6Vを10秒印加するが、2回目の起動時には、感ガス体の抵抗値が、抵抗値記憶ステップS1で記憶された抵抗値Rair0=10kΩに達するまで、1.6Vを印加する。10kΩに達するまでの時間は、初回起動時の抵抗値記憶ステップS1における時間t=10秒よりも短くなる。これは、ガス分析装置を初回起動して、電源をオフにした後であっても、感ガス体の表面には吸着されたままの酸素種がいくらか残存しているためである。したがって、初回起動時は1.6Vを10秒印加していたところ、2回目の起動時は1.6Vを初回よりも短い時間印加するだけで、Rair0=10kΩに到達する。感ガス体の抵抗値Rair0=10kΩに到達した時点で、ヒータ電極への印加電圧を駆動電圧VH=1.1Vに降下させ、ヒータ電極に印加する。なお、図3において、時間t以降が、2回目起動時の印加電圧制御ステップS4である。
【0022】
2回目起動時の濃度算出ステップS5では、ガスセンサ素子に呼気ガスを導入し、呼気ガス中のアセトンの濃度を算出する。呼気ガスは、図3を参照して、時間tで導入される。つまり、時間(t-t)は、ガス分析装置を起動してから測定準備が整うまでの時間である。したがって、ガス分析装置の2回目の起動をしてから(t-t)後に、ガスセンサ素子に呼気ガスが導入される。なお、図3において、時間t以降が2回目起動時の濃度算出ステップS5である。したがって、前述の印加電圧制御ステップS4と濃度算出ステップS5とは、一部重複している。
【0023】
3~5回目の起動時についても、2回目起動時のステップと同様である。なお、図4は、従来のヒートクリーニングを用いて、ガス分析装置を5回起動させたときのグラフである。図3図4とを見比べると分かるように、本実施形態の電圧制御方法によれば、感ガス体の空気中における抵抗値Rairの値が、起動回数によらず従来よりも安定している。初回起動時の抵抗値Rair1=30kΩであり、5回目起動時の抵抗値Rair5=43kΩである。よって、5回目起動時の抵抗値は、初回起動時の抵抗値の約1.4倍となっている。一方、従来の方法では、初回起動時の抵抗値Rair1′=23kΩであり、5回目起動時の抵抗値Rair5′=80kΩである。よって、5回目起動時の抵抗値は、初回起動時の抵抗値の約3.4倍となっている。つまり、本実施形態では、ガス分析装置を反復使用しても、Rairの値が従来よりも安定する。
【0024】
ここで、ガス感度はRgas/Rairで表され、Rairは上記の通り安定的な値を取り、またその効果によってRgas(感ガス体の呼気ガス中の抵抗値)も安定的な値を取るようになる。したがって、第1実施形態では、ガス分析装置を反復使用しても、ガス感度を維持することができる。
【0025】
なお、2回目以降の起動時は、抵抗値記憶ステップS1で記憶した抵抗値Rair0=10kΩに到達する時間が、上述の通り初回起動時の10秒よりも短くなるため、ガス分析装置の起動時間(測定準備が整うまでの時間)を短くすることができる。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態の電圧制御方法は、第1実施形態の初回起動時に含まれる抵抗値記憶ステップS1、駆動電圧印加ステップS2、および濃度算出ステップS3を有していない。第2実施形態の電圧制御方法は、図5(a)を参照して、ガス分析装置を起動する前に、予備記憶ステップS6を含む。ガス分析装置を起動した後は、印加電圧制御ステップS7と、濃度算出ステップS8とを含む。図5(b)を参照して、左側のグラフがガス分析装置の起動前(予備記憶ステップS6)を、右側のグラフがガス分析装置の起動後(印加電圧制御ステップS7と濃度算出ステップS8)を、それぞれ示している。
【0027】
予備記憶ステップS6では、ガスセンサ素子の駆動電圧よりも高い電圧VH=1.6Vを、ヒータ電極に時間t=10秒だけ印加する。このときの感ガス体の抵抗値Rair0=10kΩを、たとえば、ガスセンサ素子に接続されたマイクロコンピュータ内の記憶部に記憶する。ガス分析装置の起動前に行う、この予備記憶ステップS6は、たとえば、ガスセンサ素子の製造工程におけるエージングという作業で行うことができる。つまり、予備記憶ステップS6はガス分析装置の出荷前に行うことができ、印加電圧制御ステップS7と濃度算出ステップS8は、ガス分析装置の出荷後、ガス分析装置のユーザが行うことができる。
【0028】
ガス分析装置を起動した後の印加電圧制御ステップS7と、濃度算出ステップS8は、第1実施形態における2回目起動時の各ステップS4,S5と同様にして行う(図2(b)、図3参照)。
【0029】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様、ガス分析装置を反復使用しても、感ガス体の空気中での抵抗値Rairが安定的な値を取る。したがって、ガス分析装置を反復使用しても、ガス感度を維持することができる。
【0030】
第1実施形態および第2実施形態では、MEMSガスセンサ素子を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、白金線コイルの上に感ガス体を球状に塗布・焼結させた構造の熱線型ガスセンサ素子や、ヒータと電極の機能を分離させた構造の基板型ガスセンサ素子といったガスセンサ素子を用いてもよい。
【0031】
なお、本発明において、ガス分析装置の起動間隔は特に限定されるものではない。
【0032】
本発明は、呼気分析装置に限らず、ヒートクリーニングを必要とするガス分析装置に広く適用できる。そのようなガス分析装置としては、たとえば、アンモニア分析装置、におい分析装置、アルコール分析装置、皮膚ガス分析装置がある。
【符号の説明】
【0033】
1 :ガスセンサ素子
11 :感ガス体
12 :ヒータ電極
13 :検出電極
14 :ベース
14a:キャビティ
15 :絶縁膜
15a:開口部
16 :パッド
17 :ヒータ配線パターン
18 :電極配線パターン
図1
図2
図3
図4
図5