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特許7366518前立腺特異的膜抗原結合フィブロネクチンIII型ドメイン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】前立腺特異的膜抗原結合フィブロネクチンIII型ドメイン
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/78 20060101AFI20231016BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20231016BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20231016BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20231016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231016BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231016BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20231016BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231016BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231016BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20231016BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C07K14/78 ZNA
A61K45/00
A61K47/64
A61K49/00
A61K51/08 100
A61K51/08 200
A61P35/00
C07K19/00
C12N1/00 U
C12N5/10
C12N15/12
C12P21/02 A
G01N33/574 A
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2017557340
(86)(22)【出願日】2016-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 US2016031295
(87)【国際公開番号】W WO2016179534
(87)【国際公開日】2016-11-10
【審査請求日】2019-04-24
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】62/157,772
(32)【優先日】2015-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509087759
【氏名又は名称】ヤンセン バイオテツク,インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】カードソ,ローサ
(72)【発明者】
【氏名】ディエム,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ,シャロム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン,リナス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】クレイン,ドナ
(72)【発明者】
【氏名】オニール,カリン
(72)【発明者】
【氏名】スピンカ-ドムス,トレーシー
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】森井 隆信
【審判官】原口 美和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/081944(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/162418(WO,A1)
【文献】Protein Eng.Des.Sel.,2014年10月,Vol.27,No.10,pp.419-429
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K14/00
C12N15/00
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号41と少なくとも89%同一であるアミノ酸配列を含み、前記配列が、配列番号41の、残基位置6、11、22、25、26、52、53、62に対応する少なくとも1つの残基位置、又はC末端にシステイン残基を有する、単離ヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)結合ドメイン。
【請求項2】
PSMA結合に関与するA32、G34、W36、W38、D39、D40、D41、E43、A44、V46、G64、P68、Y70、A72、W79、F81、P82、S84、A85、I86、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、請求項1に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項3】
第2の分子と結合させた、請求項1または2に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項4】
前記第2の分子が、細胞毒性物質、検出可能な標識、ポリエチレングリコール、又は核酸である、請求項3に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項5】
前記細胞毒性物質が、アウリスタチン、モノメチルアウリスタチンフェニルアラニン、ドラスタチン(dolostatin)、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素、又は放射性同位体である、請求項4に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項6】
前記検出可能な標識が、放射性同位体、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテンである、請求項4に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項7】
前記PSMA結合ドメインが、配列番号41、42、43、44、47、48、49、50、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、又は140のアミノ酸配列を有する、請求項1~6のいずれかに記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項8】
前記PSMA結合ドメインのN末端にメチオニンを更に有する、請求項7に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項9】
半減期延長部分と結合された、請求項1~6または7~8のいずれかに記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項10】
前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、アルブミン変異体、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、請求項9に記載の単離PSMA結合ドメイン。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインをコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列番号156、157、又は158のポリヌクレオチド配列を有する、単離ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項11または12に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載のベクターを含む、単離宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインを生成する方法であって、請求項14に記載の単離宿主細胞を、前記PSMA結合ドメインが発現されるような条件下で培養することと、前記PSMA結合ドメインを精製することと、を含む、方法。
【請求項16】
請求項1~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメイン及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項17】
PSMAの過剰発現によって特徴付けられる癌を有する対象を治療する方法で用いるための組成物であって、請求項1~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインを含み、前記方法が、細胞毒性物質と結合させた前記PSMA結合ドメインの治療有効量を、前記癌を治療するうえで充分な時間にわたって、治療を要する患者に投与することを含む、組成物。
【請求項18】
前記癌が、固形腫瘍、前立腺癌、大腸直腸癌、胃癌、腎明細胞癌、膀胱癌、肺癌、又は腎臓癌である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項4~6または9~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインを含む、診断用キット。
【請求項20】
請求項1~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインを含む、癌診断又は捕捉剤。
【請求項21】
前記PSMA結合ドメインが、配列番号49の位置6、11、22、25、26、52、53、54、又は62に対応する少なくとも1つの残基位置にシステイン残基を配置することによって改変された、配列番号49の配列を有する、請求項20に記載の診断又は捕捉剤。
【請求項22】
前記改変されたシステインが、R-フィコエリトリン(PE)と結合させられる、請求項21に記載の診断剤。
【請求項23】
生体試料中のPSMA発現細胞を検出する方法であって、前記生体試料を請求項20~22のいずれかに記載の診断で処理することと、前記生体試料の、前記診断剤の前記PSMA結合ドメインとの結合を評価することと、を含む、方法。
【請求項24】
前記診断剤が、請求項22に記載の剤である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
生体試料中のPSMA発現細胞を単離する方法であって、前記生体試料を請求項20または21に記載の捕捉剤で処理することを含む、方法。
【請求項26】
対象内のPSMA発現腫瘍細胞を検出する方法で用いるための組成物であって、請求項3~6または9~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインを含み、前記方法が、前記対象に前記PSMA結合ドメインを投与することと、前記対象内における、前記PSMA結合ドメインのPSMA発現腫瘍細胞との結合を検出することと、を含む、組成物。
【請求項27】
PSMA発現腫瘍細胞に治療分子を送達する方法で用いるための組成物であって、請求項3~6または9~10のいずれかに記載のPSMA結合ドメインを含み、前記方法が、前記PSMA結合ドメインを、PSMA発現腫瘍を有する対象に投与することを含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺特異的膜抗原結合分子、並びにその分子の作製及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺特異的膜抗原結合分子(PSMA)は、グルタミン酸カルボキシペプチダーゼII又はN-アセチル化α結合型酸性ジペプチダーゼ1としても知られる、二量体2型膜貫通糖タンパク質である。PSMAは、葉酸塩及びN-アセチル-L-アスパチル-L-グルタメートをはじめとする幾つかの基質を切断し、多くの組織で発現し、その発現レベルは前立腺において最も高く、小腸、中枢及び末梢神経系、腎臓、並びに肺ではそれほど高くない。PSMAは、クラスリンで被覆されたピットから構成的に内在化される。
【0003】
PSMAは、前立腺上皮内腫瘍(PIN)(一部の前立腺細胞が異常な外観及び挙動を呈しはじめる状態)、原発性及び転移性前立腺癌、並びに他の固形腫瘍(例えば、乳癌、肺癌、膀胱癌、腎臓癌)の血管新生においてしばしば過剰発現される確立された前立腺癌関連細胞膜抗原である(Chang et al.,Clin Cancer Res 5:2674~2681,1999,Liu et al.,Cancer Res 57:3629~3634,1997,Silver et al.,Clin Cancer Res 3:81~85,1997;Bostwick et al.,Cancer 82:2256~2261,1998)。PSMAの発現は、疾患の進行及びグリソンスコアと相関している。PSMAの発現は、転移性疾患、ホルモン治療抵抗性の症例、及びよりグレードの高い病変で増大し、アンドロゲン非依存性腫瘍において更に発現上昇する(Su et al.,Cancer Res 55:1441~1443,1995,Kawakami et al.,57:2321~2324,1997,Wright et al.,Urology 48:326~334,1996)。
【0004】
前立腺癌は、男性における癌の主要因であり、癌による死因としては2番目に多い。世界的には、およそ110万人の新たな症例及び30万人の死亡例が毎年報告されており、これは全癌死の約4%に相当する。男性の6人に1人がこの疾患を診断されるものと推定されている。米国では、前立腺癌の90%以上が局所期又は限局期で発見されている。これらの早期のステージでは、5年生存率は100%に近い。しかしながら、癌が転移すると5年生存率は約28%に低下する。限局性の前立腺癌はしばしば、ホルモン遮断によって抑制することができる。
【0005】
前立腺癌の現在の治療方法としては、手術、放射線療法、及びホルモン療法が挙げられる。しかしながら、腫瘍細胞はしばしばアンドロゲン非依存性となり、そうなると限られた治療選択肢しか残らない。一般的には、癌ワクチンであるシプリューセルT(sipuleucel-T)、放射性治療剤(塩化ラジウム223など)、二次ホルモン療法(アビラテロン又はエンザルタミドなど)、及び/又は化学療法(ドセタキセル及びカバジタキセル)が、順番にホルモン療法に加えられる。
【0006】
PSMAを標的としたモノクローナル抗体が、診断用造影剤及び抗体薬物複合体として臨床評価が行われている。最も広範囲に評価が行われている、PSMAを標的とした抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate)(ADC)は、同じヒト化/脱免疫化抗PSMA mAbであるJ591を用いたものである。J591を用いた少なくとも3つの異なるADCについて、異なるリンカー及び弾頭薬物を用いて臨床試験で評価が行われている。ミレニアム・ファーマシューティカルズ社(Millenium Pharmaceuticals)は、ジスルフィド結合されたメイタンシンと結合させた抗PSMA mAbであるMLN2704を評価する第1相臨床試験を終えている。プロジェニクス社(Progenics)は、シアトル・ジェネティクス社(Seattle Genetics)の技術を用い、バリン/シトルリンリンカーを用いてJ591をMMAEと連結しており、また、エー・ディー・シー・ティー社(ADCT)は、J591と結合させたPBTの臨床試験を開始している。現在のところ、臨床的有効性は限定的であり、顕著な肝臓への取り込みに起因すると考えられる深刻な毒性及び短い血清半減期を伴ったものとなっている(Morris et al.,Clin Cancer Res 13:2707~2713,2007)。それにも関わらず、2つの別々の臨床試験において、特に高用量の抗PSMA ADCによる反復治療後にPSA/CTCレベルが低下するエビデンスが得られている(D Petrylak,Genitourinary Cancers Symposium,2014,Galsky et al.,J Clin Oncol 26:2147~2154,2008,D Petrylak,ASCO 2014)。プロジェニクス社(Progenics)の場合では、用量制限毒性によって、好中球減少による敗血症後に死亡例が2例、生じている(D Petrylak,ASCO 2014)。
【0007】
これらの治療のそれぞれは、癌の増殖を数ヶ月遅らせ、疾患によりもたらされる症状を緩和することが可能であるが、疾患は最終的にはこれらの治療に対して耐性となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、PSMAを過剰発現する前立腺癌及び他の癌を治療するための更なる改良された治療剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、配列番号144のヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合する単離FN3ドメインである。
【0010】
本発明の別の実施形態は、配列番号32のマカカ・ファシキュラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル)PSMA、又は配列番号33のパン・トログロダイテス(Pan troglodytes)(チンパンジー)PSMAと交差反応する、配列番号144のヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインである。
【0011】
本発明の別の実施形態は、配列番号41のアミノ酸配列と89%同一であるか、又は配列番号41のアミノ酸配列と比較した場合に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個の置換を有するアミノ酸配列を有する、配列番号144のヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインである。
【0012】
本発明の別の実施形態は、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、又は140のアミノ酸配列を有する、配列番号144のヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインである。
【0013】
本発明の一実施形態は、細胞毒性物質又は検出可能な標識と結合させた配列番号144のヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合する単離FN3ドメインである。
【0014】
本発明の別の実施形態は、本発明のFN3ドメインをコードする単離ポリヌクレオチドである。
【0015】
本発明の別の実施形態は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0016】
本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。
【0017】
本発明の別の実施形態は、本発明のFN3ドメインを生成する方法であって、単離された本発明の宿主細胞を、本発明のFN3ドメインが発現されるような条件下で培養することと、FN3ドメインを精製することと、を含む、方法である。
【0018】
本発明の別の態様は、本発明のFN3ドメイン及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0019】
本発明の別の態様は、PSMAの過剰発現によって特徴付けられる癌を有する対象を治療する方法であって、細胞毒性物質と結合させた本発明のFN3ドメインの治療有効量を、癌を治療するうえで充分な時間にわたって、治療を要する患者に投与することを含む、方法である。
【0020】
本発明の別の実施形態は、本発明のFN3ドメインを含む診断用キットである。本発明の別の実施形態は、本発明のFN3ドメインを含む癌診断又は捕捉剤である。
【0021】
本発明の別の実施形態は、生体試料中のPSMA発現細胞を検出する方法であって、生体試料を本発明のFN3ドメインを含む診断剤で処理することと、生体試料の、本発明のFN3ドメインを含む診断剤との結合を評価することと、を含む、方法である。
【0022】
本発明の別の実施形態は、生体試料中のPSMA発現細胞を単離する方法であって、生体試料を本発明のFN3ドメインを含む捕捉剤で処理することと、生体試料の、本発明のFN3ドメインを含む診断剤との結合を評価することと、を含む、方法である。
【0023】
本発明の別の実施形態は、対象内のPSMA発現腫瘍細胞を検出する方法であって、対象に本発明のFN3ドメインを投与することと、対象内における、FN3ドメインのPSMA発現細胞との結合を検出することと、を含む、方法である。
【0024】
本発明の別の態様は、PSMA発現腫瘍細胞に治療分子を送達する方法であって、本発明のFN3ドメインを、PSMA発現腫瘍を有する対象に投与することを含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】雄NSGマウスに静脈内注射した後の非標的化89Zr標識センチリンの生体分布を示す。
図2A】カニクイザルPSMA二量体と複合体を形成したP233FR9_H10 PSMA結合FN3ドメイン(H10)の全体の結晶構造を示し、H10がPSMAの活性部位の近くの領域に結合していることが示されている。亜鉛原子(Zn)は、PSMAの活性部位の位置を示している。PSMA及びH10分子のN末端及びC末端は、複合体の一方について示されている。細胞膜のおおよその位置が示されている。
図2B】カニクイザルPSMAと複合体を形成したH10 FN3ドメインの結晶構造を示す。H10 FN3ドメインのA、B、C、D、E、F及びGβ鎖が示されている。PSMA活性部位の正に帯電した入口に挿入されたH10のCDループ内の負に帯電した残基(残基W38、D39、D40、D41及びE43)が示されている。H10残基の番号付けは配列番号41に基づく。
図2C】カニクイザルPSMAと複合体を形成したH10 FN3ドメインの結晶構造を示す。H10の接触残基W38、D39、D40、D41及びE43が図に示されている。H10と接触するか(R511、K514及びK545)、亜鉛原子に配位するか(H377、D387、E424、E425、D453、及びH553)、又は活性部位キャビティを構成する(R536及びR534)、cynoPSMA残基のいくつかが示されている。H10β鎖C、D、F及びGが図に示されている。H10及びカニクイザルPSMAの残基の番号付けは、配列番号41及び141にそれぞれ基づいている。
図3A】H10 FN3ドメインとカニクイザルPSMAとの結合部位の結晶構造の詳細図を示す。H10 FN3ドメインの接触残基A32、W36、W38-D41、E43、A44、V46、G64、P68、Y70、A72、W79、F81、P82、A85、及びI86が示されている。cynoPSMAの接触残基Y460、K499-P502、P504、R511、K514、N540、W541、K545、F546、F488、K610、N613、及びI614が示されている。H10及びカニクイザルPSMAの残基の番号付けは、配列番号41及び141にそれぞれ基づいている。
図3B】H10 FN3ドメイン及びカニクイザルPSMAの接触残基間の相互作用マップを示す。接触残基を定義するために4Åの距離のカットオフ値を用いた。センチリン及びcynoPSMAの残基はグレー及び白抜きのボックスでそれぞれ示し、ファンデルワールス相互作用は破線で示し、水素結合は実線であり、矢印は骨格水素結合を示しており、骨格原子を指している。残基の番号付けは、配列番号41(H10)及び配列番号141(cynoPSMA)に基づいている。
図4A】ヒト(h)PSMAとカニクイザル(c)PSMAの細胞外ドメイン間のアミノ酸配列の整合を示す。H10接触残基には下線を付し、太字で示している。ヒトPSMAとカニクイザルPSMAとで異なる残基は影付きで示している。H10と相互作用するすべてのcynoPSMA残基は、N613を除いてヒトPSMAで保存されている。ヒトPSMA ECD:配列番号143、CynoPSMA ECD:配列番号32。
図4B】カニクイザルPSMAと接触しているH10 FN3ドメインの残基を示す。接触残基には下線を付し、太字で示している。H10のアミノ酸配列は、配列番号41に示されている。
図5】カニクイザルPSMAに結合したH10の結晶構造中の、化学的複合体化を行うための可能な部位であるH10センチリンの残基N6、R11、T22、D25、A26、S52、E53、K62、並びにN末端及びC末端の位置を示す。センチリン/PSMA接触領域を黒く示している。H10β鎖C、D、F及びGが図に示されている。残基の番号付けは配列番号41(H10)に基づく。
図6】抗PSMAセンチリン-PE(黒)及び抗PSMA抗体-PE(白)で染色した異なる腫瘍細胞株の平均蛍光強度(MFI)の比較を示す。
図7A】DAPI、抗サイトケラチン-FITC、抗CD45-APC、及び抗PSMAセンチリン-PEで染色したLNCaP細胞のCellTracks Analyzer IIによる一連のブラウザ画像を示す。これらのサムネイル画像は、右から左に、PSMA-PE染色、CD45-APCシグナル、DAPI染色した核、サイトケラチン-FITCの反応性、及び最後にサイトケラチン-FITCとDAPI染色の重ね合わせを示す。細胞は、CTCとしてカウントされるためには、核を有し、サイトケラチンを発現し、CD45について陰性でなければならない。CTCは、PSMA陽性CTCとしてスコアされるためには、PSMAについて陽性シグナルを有さなければならない。
図7B】DAPI、抗サイトケラチン-FITC、抗CD45-APC、及び抗PSMAセンチリン-PEで染色した22Rv1細胞のCellTracks Analyzer IIによる一連のブラウザ画像を示す。これらのサムネイル画像は、右から左に、PSMA-PE染色、CD45-APCシグナル、DAPI染色した核、サイトケラチン-FITCの反応性、及び最後にサイトケラチン-FITCとDAPI染色の重ね合わせを示す。細胞は、CTCとしてカウントされるためには、核を有し、サイトケラチンを発現し、CD45について陰性でなければならない。CTCは、PSMA陽性CTCとしてスコアされるためには、PSMAについて陽性シグナルを有さなければならない。
図7C】DAPI、抗サイトケラチン-FITC、抗CD45-APC、及び抗PSMAセンチリン-PEで染色したPC3細胞のCellTracks Analyzer IIによる一連のブラウザ画像を示す。これらのサムネイル画像は、右から左に、PSMA-PE染色、CD45-APCシグナル、DAPI染色した核、サイトケラチン-FITCの反応性、及び最後にサイトケラチン-FITCとDAPI染色の重ね合わせを示す。細胞は、CTCとしてカウントされるためには、核を有し、サイトケラチンを発現し、CD45について陰性でなければならない。CTCは、PSMA陽性CTCとしてスコアされるためには、PSMAについて陽性シグナルを有さなければならない。
図7D】DAPI、抗サイトケラチン-FITC、抗CD45-APC、及び抗PSMAセンチリン-PEで染色したSKBR3細胞のCellTracks Analyzer IIによる一連のブラウザ画像を示す。これらのサムネイル画像は、右から左に、PSMA-PE染色、CD45-APCシグナル、DAPI染色した核、サイトケラチン-FITCの反応性、及び最後にサイトケラチン-FITCとDAPI染色の重ね合わせを示す。細胞は、CTCとしてカウントされるためには、核を有し、サイトケラチンを発現し、CD45について陰性でなければならない。CTCは、PSMA陽性CTCとしてスコアされるためには、PSMAについて陽性シグナルを有さなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書で使用される「フィブロネクチンIII型(FN3)ドメイン」(FN3ドメイン)なる用語は、フィブロネクチン、テネイシン、細胞内細胞骨格タンパク質、サイトカイン受容体、及び原核細胞酵素を含むタンパク質に高頻度で見られるドメインのことを指す(Bork and Doolittle,Proc Nat Acad Sci USA 89:8990~8994,1992;Meinke et al.,J Bacteriol 175:1910~1918,1993;Watanabe et al.,J Biol Chem 265:15659~15665,1990)。代表的なFN3ドメインとしては、ヒトテネイシンCに存在する15個の異なるFN3ドメイン、ヒトフィブロネクチン(FN)に存在する15個の異なるFN3ドメイン、及び例えば米国特許第8,278,419号に記述される非天然の合成FN3ドメインがある。個々のFN3ドメインは、ドメイン番号とタンパク質名で呼ばれる(例えばテネイシンの3番目のFN3ドメイン(TN3)、又はフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(FN10))。
【0027】
本明細書で使用される「センチリン」とは、ヒトテネイシンCに存在する15個の異なるFN3ドメインのコンセンサス配列に基づいたFN3ドメインのことを指す。
【0028】
「捕捉剤」なる用語は、特定の種類の細胞に結合し、他の細胞からその細胞を単離することを可能とする物質のことを指す。捕捉剤の例としては、これらに限定されるものではないが、磁気ビーズ、磁性流体、カプセル化試薬などが挙げられる。
【0029】
「生体試料」なる用語は、血液、組織、骨髄、唾液などのことを指す。
【0030】
「診断試薬」なる用語は、生体試料を分析するために使用することができる任意の物質を指し、かかる物質が単一の物質として流通しているか、又は診断キット内の他の物質と組み合わせて流通しているかによらない。
【0031】
本明細書で使用される「置換する」、又は「置換された」、又は「突然変異する」、又は「突然変異した」なる用語は、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列中の1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドを変化、欠失させるか、又は1つ以上のアミノ酸又はヌクレオチドを挿入することによってその配列の変異体を生成することを指す。
【0032】
本明細書で使用される「ランダム化する」、又は「ランダム化された」、又は「多様化された」、又は「多様化する」なる用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチド配列に少なくとも1つの置換、挿入、又は欠失を行うことを指す。
【0033】
本明細書で使用される「変異体」とは、例えば、置換、挿入、又は欠失のような1つ以上の改変において参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドと異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
【0034】
本明細書で使用される「特異的に結合する」又は「特異的な結合」なる用語は、所定の抗原と、約1×10-6M以下、例えば約1×10-7M以下、約1×10-8M以下、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、約1×10-12M以下、又は約1×10-13M以下の解離定数(K)で結合する本発明のFN3ドメインの能力のことを指す。一般的に、本発明のFN3ドメインは、例えばProteon Instrument(バイオラド社(BioRad))を使用した表面プラズモン共鳴によって測定した場合に非特異的抗原(例えば、BSA又はカゼイン)に対するKよりも少なくとも10倍低いKで所定の抗原(すなわちヒトPSMA)に結合する。しかしながら、ヒトPSMAに特異的に結合する本発明の単離FN3ドメインは、他の関連する抗原、例えば、マカカ・ファシキュラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル、cyno)、又はパン・トログロダイテス(Pan troglodytes)(チンパンジー)などの他種由来の同じ所定の抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有しうる。
【0035】
本明細書で使用される「エピトープ」なる用語は、本発明のFN3ドメインが特異的に結合する抗原の部分を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は多糖類側鎖などの部位の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)表面基からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有しうる。エピトープは、立体配座的な空間単位を形成する連続的なかつ/又は不連続的なアミノ酸で構成されうる。不連続的エピトープでは、抗原の直鎖配列の異なる部分のアミノ酸が、タンパク質分子の折り畳みにより三次元空間で近接する。
【0036】
「ライブラリ」なる用語は、変異体のコレクションのことを指す。ライブラリは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドの変異体で構成されうる。
【0037】
本明細書で使用される「安定性」なる用語は、分子が、例えばヒトPSMAなどの特定の抗原との結合など、その正常な機能活性の少なくとも1つを保持するように、分子が生理学的条件下で折り畳み状態を維持できることを指す。
【0038】
本明細書で使用されるヒトPSMAとは、短い細胞内ドメイン(残基1~18)、膜貫通ドメイン(残基19~43)、及び細胞外ドメイン(残基44~750)を有する約100kDの周知の2型糖タンパク質のことを指す。成熟したヒトPSMAのアミノ酸配列を配列番号144に示す。
【0039】
本明細書で互換的に使用される「過剰発現する」、「過剰発現された」、及び「過剰発現している」とは、同じ組織型の正常な細胞と比較して、その表面に測定可能な程度により高いレベルのPSMAを有する癌又は悪性細胞のことを指す。こうした過剰発現は、遺伝子増幅、又は転写若しくは翻訳の増大によって引き起こされうる。PSMAの過剰発現は、例えば生細胞又は溶解した細胞でELISA、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、又は放射免疫測定を用いた周知のアッセイを用いて測定することができる。これに代えて又はこれに加えて、PSMAの核酸分子の濃度は、例えば蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、サザンブロッティング、又はPCR法を用いて細胞中で測定することができる。PSMAは、正常細胞と比較して、細胞表面上のPSMAのレベルが少なくとも1.5倍高い場合に過剰発現されている。
【0040】
本明細書で使用される「テンコン」とは、配列番号1に示され、米国特許出願公開第2010/0216708号に述べられる合成フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを指す。
【0041】
本明細書で使用される「癌細胞」又は「腫瘍細胞」は、インビボ、エクスビボ、及び組織培養のいずれかにおいて、新しい遺伝材料の取り込みを必ずしも伴わない自発的又は人為的な表現型の変化を有する癌性、前癌性、又は形質転換細胞を指す。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の取り込み、又は外因性の核酸の取り込みにより発生し得るが、自然に又は発癌物質に対する暴露後にも発生して、それによって内因性の遺伝子を変異させ得る。形質転換/癌は、例えば、インビトロ、インビボ、及びエクスビボにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性度、腫瘍特異的マーカーレベル、浸潤性、ヌードマウスなどの適した動物宿主における腫瘍の増殖又は抑制等によって例示される(Freshney,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(3rd ed.1994))。
【0042】
「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞などの細胞に言及する場合)は、当業者に周知の適切な対照条件で増殖された同一の細胞の増殖と比較して、治療薬、又は治療薬若しくは薬剤の組み合わせと接触されるときのインビトロ又はインビボでの細胞増殖における測定可能な減少を指す。インビトロ又はインビボでの細胞の増殖の阻害は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%であり得る。細胞増殖の阻害は、例えばアポトーシス、壊死などの様々な機構により、又は細胞分裂の阻害により、又は細胞の溶解によって生じうる。
【0043】
「ベクター」なる用語は、生体系内で複製されうる、又はこうした系間を移動することができるポリヌクレオチドを意味する。ベクターポリヌクレオチドは典型的に、生物系においてこれらのポリヌクレオチドの複製又は維持を促進するように機能する複製起点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどのエレメントを含んでいる。そのような生物システムの例としては、細胞、ウイルス、動物、植物、及びベクターの複製を可能にする生物学的要素を利用して再構成された生物システムを挙げることができる。ベクターを構成するポリヌクレオチドは、DNA若しくはRNA分子又はこれらのハイブリッド分子であってもよい。
【0044】
用語「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を指示するために、生物系又は再構成生物系において利用することができるベクターを意味する。
【0045】
用語「ポリヌクレオチド」は、糖-リン酸骨格鎖又は他の同等の共有結合化学を介して共有結合されたヌクレオチド鎖を含む分子を意味する。二本鎖及び一本鎖のDNA及びRNAが、ポリヌクレオチドの典型例である。
【0046】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合により連結されてポリペプチドを生成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を意味する。約50個未満のアミノ酸からなる小さいポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれる場合もある。
【0047】
本明細書で使用される「価数」は、分子中の抗原に対して特異的な結合部位が明記された数存在することを指す。そのため、「1価」、「2価」、「4価」、及び「6価」なる用語はそれぞれ、抗原に対して特異的な結合部位が分子中に1個、2個、4個、及び6個存在することを指す。
【0048】
本明細書で使用される「~と組み合わせて」なる用語は、2つ又は3つ以上の治療薬が、対象に混合物の状態で一緒に、それぞれ単独の薬剤として同時に、又はそれぞれ単独の薬剤として任意の順番で順次に投与できることを意味する。
【0049】
「相乗」、「相乗作用」又は「相乗的な」は、組み合わせることで得られると予想される相加効果を超えることを意味する。
【0050】
組成物
本発明は、ヒトPSMAに結合するFN3ドメイン、及び毒素又は検出可能な標識と結合させたPSMAに結合するFN3ドメインを提供する。本発明は、本発明のFN3ドメインをコードするポリヌクレオチド又はその相補的核酸、ベクター、宿主細胞、並びにそれらを作製及び使用する方法を提供する。
【0051】
PSMA結合分子
本発明は、必要に応じて毒素又は検出可能な標識と結合させたヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインを提供する。これらの分子は、治療及び診断用とで幅広く使用することができる。本発明は、本発明のFN3ドメインをコードしたポリヌクレオチド又はその相補的核酸、ベクター、宿主細胞、並びにそれらを作製及び使用する方法を提供する。
【0052】
本発明のFN3ドメインはPSMAと高いアフィニティーで結合し、PSMA発現細胞内に内在化されることにより、腫瘍細胞内に治療薬を送達するための効率的な方法を提供するものである。
【0053】
本発明の一実施形態は、配列番号144のヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合する単離FN3ドメインである。
【0054】
本明細書に述べられる本発明のいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、配列番号32のマカカ・ファシキュラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル)PSMA、又は配列番号33のパン・トログロダイテス(Pan troglodytes)(チンパンジー)と交差反応する。
【0055】
本発明のFN3ドメインは、ヒト、マカカ・ファシキュラリス(Macaca Fascicularis)、及び/又はパン・トログロダイテス(Pan troglodytes)のPSMAと、当業者によって実施される表面プラズモン共鳴又はKinexa法により測定した場合に、約1×10-7M未満、例えば、約1×10-8M未満、約1×10-9M未満、約1×10-10M未満、約1×10-11M未満、約1×10-12M未満、又は約1×10-13Mの解離定数(KD)で結合することができる。特定のFN3ドメイン-抗原相互作用について測定されるアフィニティーは、異なる条件下(例えば、浸透圧、pH)で測定した場合には異なりうる。したがって、アフィニティー及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K、Kon、Koff)の測定は、足場タンパク質及び抗原の標準化溶液、並びに本明細書に述べられるバッファーなどの標準化バッファーを用いて行われる。
【0056】
いくつかの実施形態では、PSMA結合FN3ドメインは、分子のN末端に連結された開始メチオニン(Met)を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、PSMA結合FN3ドメインは、FN3ドメインのC末端に連結されたシステイン(Cys)を有する。
【0058】
N末端のMet及び/又はC末端のCysの付加は、半減期延長分子の発現及び/又は複合体化を促すことができる。
【0059】
本発明の別の実施形態は、ヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインであって、ヒトPSMAの酵素活性を阻害する、単離FN3ドメインである。PSMAの酵素活性は、常法を用いて測定することができる。例えば、PSMAの検出可能な、又は標識されたPSMA基質の加水分解を用いることができる。使用することが可能な代表的なPSMAの基質としては、N-アセチルアスパルチルグルタメート(NAAG)、葉酸ポリグルタメート、メトトレキセートトリ-γグルタメート、メトトレキセートジ-γグルタメート、プテロイルペンタグルタメート、及びこれらの誘導体がある。基質は、例えば、放射性マーカー、化学発光マーカー、酵素マーカー、色素マーカー、又は他の検出可能なマーカーで標識することができる。PSMA活性を検出するための適当な方法については、例えば米国特許第5,981,209号又は米国特許出願公開第2006/0009525号に記載されている。本発明の単離PSMA結合FN3ドメインは、分子が、FN3ドメインを含まない試料と比較した場合にヒトPSMA活性を約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%超、又はそれ以上、阻害する場合に、ヒトPSMA酵素活性を阻害する。
【0060】
本明細書に述べられる本発明のいくつかの実施形態では、単離FN3ドメインは、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、又は140のアミノ酸配列を有する。
【0061】
本明細書に述べられる本発明のいくつかの実施形態では、単離FN3ドメインは、配列番号41のアミノ酸と89%同一のアミノ酸を有する。
【0062】
本明細書に述べられる本発明のいくつかの実施形態では、単離FN3ドメインは、配列番号41のアミノ酸と比較した場合に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個の置換を有するアミノ酸配列を有する。
【0063】
本明細書に述べられる本発明のいくつかの実施形態では、ヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインは、配列番号1の残基位置6、11、22、25、26、52、53、61に対応する少なくとも1つの残基位置、又はC末端にシステイン残基を有する。
【0064】
タンパク質配列へのシステインの導入につながる置換を用いることによって、細胞毒性物質、検出可能な標識、ポリエチレングリコール、及び/又は核酸などの小分子をFN3ドメインと、標準的な化学反応を用いて化学的に結合させることができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、ヒトPSMAへの結合について配列番号41のFN3ドメインと競合する。
【0066】
いくつかの実施形態では、ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、ヒトPSMAの領域KKSPSPEFSGMPRISK(配列番号159)及びNWETNKF(配列番号160)に結合する。
【0067】
本発明のFN3ドメインによって結合されるヒトPSMAのエピトープには、配列番号159又は配列番号160に示されるアミノ酸配列内の一部又はすべての残基が含まれる。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインによって結合されるエピトープは、ヒトPSMA(配列番号144)の領域KKSPSPEFSGMPRISK(配列番号159)及びNWETNKF(配列番号160)内の少なくとも1個のアミノ酸を有する。本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインによって結合されるエピトープは、ヒトPSMA(配列番号144)の領域KKSPSPEFSGMPRISK(配列番号159)内の少なくとも2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸と、領域NWETNKF(配列番号160)内の少なくとも2、3、4、5、又は6個のアミノ酸とを含む。
【0068】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、ヒトPSMAと、残基K499、K500、S501、P502、P504、R511、K514、N540、W541、E542、N544、K545及びF546(残基の番号付けは配列番号144に基づく)において結合する。
【0069】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態では、本発明のFN3ドメインは、ヒトPSMAと、残基R181、Y460、F488、K610及び/又はI614において結合する。
【0070】
cynoPSMAと複合体を形成したFN3ドメインP233FR9_H10の結晶構造が解明されている。ヒトとcynoPSMAの接触残基は1個の残基を除いて同じであるため、P233FR9_H10は、cynoPSMAに結合するのと同じエピトープ残基においてヒトPSMAと結合すると考えられる。
【0071】
FN3ドメインを、周知のインビトロの方法を用いてヒトPSMAとの結合に関し、参照分子との競合について評価することができる。代表的な一方法では、ヒトPSMAを組換えにより発現するCHO細胞を、非標識参照分子と4℃で15分間インキュベートした後、過剰量の蛍光標識した試験FN3ドメインと4℃で45分間インキュベートすることができる。PBS/BSA中での洗浄後、常法を用いて、フローサイトメトリーにより蛍光を測定することができる。別の代表的な方法では、ヒトPSMAの細胞外部分をELISAプレートの表面にコーティングすることができる。過剰量の非標識参照分子を約15分間加え、その後、ビオチン化試験FN3ドメインを加えることができる。PBS/Tween中で洗浄後、試験ビオチン化FN3ドメインの結合を、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)結合ストレプトアビジン、及び常法を用いて検出されたシグナルを用いて検出することができる。競合アッセイでは、参照分子を標識し、試験FN3ドメインを標識しなくてよいことは明らかであろう。試験FN3ドメインは、参照分子が試験FN3ドメインの結合を阻害する場合、又は試験FN3ドメインが参照分子の結合を20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は100%阻害する場合に参照分子と競合する。試験FN3ドメインのエピトープは、例えばペプチドマッピングにより、又は周知の方法を用いた水素/重水素保護アッセイにより、又は結晶構造の決定により、更に定義することができる。代表的な参照FN3ドメインは、配列番号41のアミノ酸配列を有するドメインである。
【0072】
配列番号41のFN3ドメインと同じヒトPSMA上の領域に結合するFN3ドメインは、例えば、常法を用い、本明細書に述べられるようにして、マウスを配列番号159及び160に示されるアミノ酸配列を有するペプチドで免疫化することによって作製することができる。FN3ドメインは、例えば、周知のインビトロの方法を用い、上記に述べたようにして、ヒトPSMAとの結合について、配列番号41のFN3ドメインと試験FN3ドメインとの競合をアッセイすることによって更に評価することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明のヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインは、検出可能な標識と結合させられる。
【0074】
検出可能な標識は、本発明のFN3ドメインと結合させた場合に、FN3ドメインを、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的手段によって検出可能なものとすることができる組成物を含む。代表的な標識としては、放射性同位体、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテンが挙げられる。特異的な放射性標識としては、例えばH、C、13C、15N、18F、19F、123I、124I、125I、131I、86Y、89Zr、U1ln、94mTc、99mTc、64Cu及び68Gaを含む最も一般的な市販の同位体が挙げられる。適当な色素としては、例えば、5(6)-カルボキシフルオロセイン、IRDye 680RDマレイミド又はIRDye 800CW、ルテニウムポリピリジル色素などの任意の市販の色素が挙げられる。
【0075】
検出可能な標識と結合させたヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインを、腫瘍分布、腫瘍細胞の存在の診断、及び/又は腫瘍の再発を評価するための造影剤として使用してことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、細胞毒性物質と結合させられる。
【0077】
いくつかの実施形態では、細胞毒性物質は、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物、若しくは動物由来の酵素活性を有する毒素、又はそのフラグメント)、又は放射性同位体(すなわち放射性複合体)である。
【0078】
細胞毒性物質と結合させたヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、複合体化されていないこれらの細胞毒性物質の全身投与が正常細胞に許容されないレベルの毒性を生じうる場合に、細胞毒性物質をPSMA発現腫瘍細胞、及びPSMA発現腫瘍細胞内の細胞内蓄積部への標的化送達に使用することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、細胞毒性物質は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシン、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシン、ゲルダナマイシン、メイタンシノイド、又はカリケアミシンである。細胞毒性物質は、チューブリン結合、DNA結合、又はトポイソメラーゼ阻害を含む機構によりその細胞毒性又は細胞増殖抑制作用をもたらすことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、細胞毒性物質としては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、アレウリテス・フォルディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラカ・アメリカナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・カランティア(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコテセンなどの酵素活性を有する毒素がある。
【0081】
いくつかの実施形態では、細胞毒性物質は、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reなどの放射性核種である。
【0082】
本発明のFN3ドメインと細胞毒性物質との複合体は、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチル塩酸塩)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)などの各種の二官能性タンパク質カップリング剤を使用して生成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、細胞毒性物質は、ドラスタチン又はドラスタチンのペプチド類似体及び誘導体、アウリスタチン又はモノメチルアウリスタチンフェニルアラニンである。代表的な分子が、米国特許第5,635,483号及び同第5,780,588号に開示されている。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管の動力学、GTPの加水分解、並びに核及び細胞分裂を妨げ(Woyke et al(2001)Antimicrob Agents and Chemother.45(12):3580~3584))、抗癌及び抗真菌活性を有することが示されている。ドラスタチン及びアウリスタチン薬剤部分は、ペプチド薬剤部分のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端を介して(国際公開第02/088172号)、又はFN3ドメインに組み込まれた任意のシステインを介して、本発明のFN3ドメイン含有分子に結合することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、腎クリアランスにより血液から除去される。
【0085】
テンコン配列に基づいたライブラリからのPSMA結合FN3ドメインの単離
テンコン(配列番号1)は、ヒトテネイシンC由来の15個のFN3ドメインのコンセンサス配列から設計された、天然に存在しないフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107~117,2012;米国特許出願公開第2010/0216708号)。テンコンの結晶構造は、FN3ドメインの特徴である7本のβ鎖をつなぐ6回表面露出ループを示し、各β鎖は、A、B、C、D、E、F、及びGと呼ばれ、各ループは、AB、BC、CD、DE、EF、及びFGループと呼ばれる(Bork and Doolittle,Proc Natl Acad Sci USA 89:8990~8992,1992;米国特許第6,673,901号)。これらのループ又は各ループ内の選択された残基を、フィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリを構築するためにランダム化することができ、これらを用いてPSMAに結合する新規分子を選択することができる。表1は、テンコン(配列番号1)の各ループ及びβ鎖の位置及び配列を示す。
【0086】
これにより、以下に記述されるライブラリTCL1又はTCL2などの、Tencon配列に基づいて設計されたライブラリは、無作為化FGループ、又は無作為化BC及びFGループを有し得る。Tencon BCループは、長さがアミノ酸7個であり、このため、1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸を、BCループで多様化させて、Tencon配列に基づいて設計したライブラリにおいて無作為化してもよい。Tencon FGループは、長さがアミノ酸7個であり、このため、1、2、3、4、5、6、又は7個のアミノ酸を、FGループで多様化させて、Tencon配列に基づいて設計したライブラリにおいて無作為化してもよい。Tenconライブラリにおけるループでの更なる多様性は、ループでの残基の挿入及び/又は欠失によって達成され得る。例えば、FG及び/又はBCループを、アミノ酸1~22個伸長させてもよく、又はアミノ酸1~3個減少させてもよい。TenconにおけるFGループは、長さがアミノ酸7個であり、抗体重鎖における対応するループは、残基4~28個の範囲である。最大の多様性を提供するために、FGループを、残基4~28個の抗体CDR3の長さの範囲に対応するように、配列並びに長さを多様化させてもよい。例えば、追加の1、2、3、4、又は5個のアミノ酸によってループを伸長させることにより、FGループの長さを更に多様化させることができる。
【0087】
テンコン配列に基づいて設計されたライブラリはまた、FN3ドメインの側面を形成するランダム化された代替表面を有してもよく、それらは2本以上のβ鎖と少なくとも1つのループを含んでもよい。そのような1つの代替表面は、C及びFのβ鎖、並びにCD及びFGループのアミノ酸によって形成される(C-CD-F-FG表面)。テンコンの代替的なC-CD-F-FG表面に基づいたライブラリの設計については、米国特許出願公開第2013/0226834号に記載されている。テンコン配列に基づいて設計されたライブラリはまた、11、14、17、37、46、73、又は86番目の位置(残基の番号付けは配列番号1に対応する)の残基で置換を有し、改善された熱安定性を示すテンコン変異体などのテンコン変異体に基づいて設計されたライブラリを含む。代表的なテンコン変異体が米国特許出願公開第2011/0274623号に記載されており、配列番号1のテンコンと比較してE11R、L17A、N46V、E86Iの置換を有するテンコン27(配列番号4)が含まれる。
【0088】
【表1】
【0089】
テンコン及び他のFN3配列に基づくライブラリは、ランダムな、又は所定のアミノ酸の組を用いて、選択された残基位置でランダム化することができる。例えば、ランダムな置換を有するライブラリ内の変異体を、天然に存在する20種すべてのアミノ酸をコードするNNKコドンを用いて作製することができる。他の多様化スキームにおいて、アミノ酸Ala、Trp、Tyr、Lys、Thr、Asn、Lys、Ser、Arg、Asp、Glu、Gly、及びCysをコードするために、DVKコドンを使用することができる。あるいは、20種すべてのアミノ酸残基を生じさせ、同時に停止コドンの頻度を低減するために、NNSコドンを使用することもできる。多様化させる位置で偏ったアミノ酸分布を有するFN3ドメインのライブラリは、例えばSlonomics(登録商標)技術(http:_//www_sloning_com)を用いて合成することができる。この技術は、何千もの遺伝子合成プロセスにおいて充分な万能構成単位として機能する、既製の二本鎖トリプレットのライブラリを使用する。トリプレットのライブラリは、あらゆる所望のDNA分子を構築するのに必要な、すべての考えられる配列組合せを示す。コドン指定は、周知のIUBコードによる。
【0090】
本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、cisディスプレイを用いて、足場タンパク質をコードするDNAフラグメントを、RepAをコードするDNAフラグメントにライゲートすることによって、各タンパク質がそれをコードするDNAと安定的に会合している、インビトロ翻訳後に生成されるタンパク質-DNA複合体のプールを生成することによりテンコンライブラリなどのFN3ライブラリを生成し(米国特許第7,842,476号;Odegrip et al.,Proc Natl Acad Sci USA 101,2806~2810,2004)、このライブラリを、当該技術分野では周知の、実施例に記載される任意の方法によって、PSMAに対する特異的結合についてアッセイすることによって、単離することができる。用いることができる例示的な周知の方法は、ELISA、サンドイッチイムノアッセイ、並びに競合的及び非競合的アッセイである(例えば、Ausubel et al.,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkを参照されたい)。PSMAに特異的に結合する特定されたFN3ドメインは、それらのPSMA活性の阻害、内在化、安定性、及び他の所望の特性について更に特性評価が行われる。
【0091】
本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、ライブラリを作製するために鋳型として任意のFN3ドメインを用いること、及び本明細書に提供される方法を用いて、ヒトPSMAに特異的に結合する分子についてライブラリをスクリーニングすることによって作製することができる。用いることができる例示的なFN3ドメインは、テネイシンCの3番目のFN3ドメイン(TN3)(配列番号145)、フィブコン(配列番号146)、及びフィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン(FN10)(配列番号147)である。標準的なクローニング及び発現技術を用いて、インビトロでライブラリを発現又は翻訳させるために、ベクターにおいてライブラリをクローニングするか、又はライブラリの二本鎖cDNAカセットを合成する。例えば、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun,Proc Natl Acad Sci USA,94,4937~4942,1997)、mRNAディスプレイ(Roberts and Szostak,Proc Natl Acad Sci USA,94,12297~12302,1997)、又は他の無細胞系(米国特許第5,643,768号)を用いることができる。FN3ドメイン変種のライブラリは、例えば任意の適したバクテリオファージの表面上に表示された融合タンパク質として発現され得る。バクテリオファージの表面上に融合ポリペプチドを提示する方法は周知である(米国特許出願公開第2011/0118144号;国際公開第2009/085462号;米国特許第6,969,108号;同第6,172,197号;同第5,223,409号;同第6,582,915号;同第6,472,147号)。
【0092】
本明細書に述べられる本発明のいくつかの実施形態では、ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、配列番号1のテンコン配列又は配列番号4のテンコン27の配列に基づいたものであり、配列番号1又は配列番号4が、場合により残基位置11、14、17、37、46、73、及び/又は86に置換を有するものである。
【0093】
本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、熱安定性を改善するため、並びに熱によるフォールディング及びアンフォールディングの可逆性を改善するためなどの特性を改善するために改変することができる。タンパク質及び酵素の見かけの熱安定性を増加させるために、類似の高熱安定性配列との比較に基づく合理的設計、ジスルフィド架橋を安定化する設計、α-へリックス性向を増加させる変異、塩架橋の改変、タンパク質の表面電荷の変化、定方向進化、及びコンセンサス配列の組成を含むいくつかの方法が適用されている(Lehmann and Wyss,Curr Opin Biotechnol,12,371~375,2001)。高熱安定性は、発現したタンパク質の収率を増加させ、溶解度又は活性を改善し、免疫原性を減少させ、製造におけるコールドチェーンの必要性を最小化することができる。テンコン(配列番号1)の熱安定性を改善するために置換することができる残基は、11、14、17、37、46、73、又は86番目の残基位置であり、米国特許出願公開第2011/0274623号に記載されている。これらの残基に対応する置換を、本発明の分子を含むFN3ドメインに組み込むことができる。
【0094】
タンパク質安定性及びタンパク質不安定性の測定は、タンパク質完全性の同じ又は異なる態様として見ることができる。タンパク質は、熱、紫外線又は電離放射線、溶液中の場合には周囲の浸透圧モル濃度及びpHの変化、小さな孔寸法での濾過によって課される力学的剪断力、紫外線放射、γ線照射によるなどの電離放射線、化学的若しくは熱脱水、又はタンパク質構造の破壊を引き起こし得るその他の任意の作用若しくは力によって引き起こされる変性に対して感受性がある、又は「不安定」である。分子の安定性は、標準方法を用いて決定することができる。例えば、分子の安定性は、標準方法を用いて、分子の半分がアンフォールドされるセ氏での温度(℃)である、熱融解(「T」)温度を測定することによって決定することができる。一般的には、Tが高いほど、分子はより安定している。熱に加えて、化学環境もまた、タンパク質が特定の三次元構造を維持する能力を変化させる。
【0095】
一実施形態において、本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、Tの増大によって測定した場合に、改変前の同じドメインと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%又はそれよりも高い安定性の増大を示しうる。
【0096】
化学変性も同様に、様々な方法によって測定することができる。化学変性剤には、塩酸グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、尿素、アセトン、有機溶媒(DMF、ベンゼン、アセトニトリル)、塩(硫酸アンモニウム、臭化リチウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム)、還元剤(例えば、ジチオスレイトール、β-メルカプトエタノール、ジニトロチオベンゼン、及び水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化物)、非イオン性及びイオン性洗浄剤、酸(例えば、塩酸(HCl)、酢酸(CHCOOH)、ハロゲン化酢酸)、疎水性分子(例えば、リン脂質)、及び標的化変性剤が挙げられる。変性の程度の定量化は、標的分子の結合能などの機能的特性の喪失、又は凝集傾向、これまで溶媒が到達できなかった残基の露出、若しくはジスルフィド結合の破壊若しくは形成などの物理化学的特性に依存し得る。
【0097】
本発明のFN3ドメインは、例えば、価数を増加させ、このため標的分子結合の結合力を増加させる手段として、又は2つ以上の異なる標的分子に同時に結合する二重特異性若しくは多重特異性の足場を作製する手段として、単量体、二量体、又は多量体として作製され得る。二量体及び多量体は、例えばアミノ酸リンカー、例えばポリグリシン、グリシン及びセリン、又はアラニン及びプロリンを含むリンカーを含めることによって単特異性、二重特異性、又は多重特異性タンパク質足場を連結させることによって作製され得る。代表的なリンカーとしては、(GS)、(配列番号148)、(GGGS)(配列番号149)、(GGGGS)(配列番号150)、(AP)(配列番号151)、(AP)(配列番号152)、(AP)10(配列番号153)、(AP)20(配列番号154)及びA(EAAAK)AAA(配列番号142)が挙げられる。二量体及び多量体を、NからC-方向に互いに連結させてもよい。ポリペプチドを新規な連結された融合ポリペプチドに連結するための天然に存在するペプチドリンカー及び人工ペプチドリンカーの使用は、文献において周知である(Hallewell et al.,J Biol Chem 264,5260~5268,1989;Alfthan et al.,Protein Eng.8,725~731,1995;Robinson & Sauer,Biochemistry 35,109~116,1996;米国特許第5,856,456号)。
【0098】
半減期延長部分
本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインには、例えば共有結合を介して他のサブユニットを組み込むことができる。本発明の一態様では、本発明のFN3ドメインは、半減期延長部分を更に含む。代表的な半減期延長部分としては、アルブミン、アルブミン変異体、アルブミン結合タンパク質及び/又はドメイン、トランスフェリン、並びにそのフラグメント及び類似体、並びにFc領域がある。代表的なアルブミン変異体の1つに、配列番号155に示されるものがある。ヒトFc領域のアミノ酸配列は周知のものであり、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA及びIgE Fc領域を含んでいる。
【0099】
抗体定常領域の全体又は一部を、本発明のFN3ドメインに結合させて、抗体様特性、特にC1q結合などのFcエフェクター機能、補体依存性細胞障害性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞障害性(ADCC)、貪食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)のダウンレギュレーションなどの、Fc領域に関連する特性を付与してもよく、これらの活性に関与するFcにおける残基を修飾することによって更に修飾することができる(論評に関しては、Strohl,Curr Opin Biotechnol.20,685~691,2009を参照されたい)。
【0100】
本発明のFN3ドメインには、PEG5000又はPEG20,000などのポリエチレングリコール(PEG)分子、例えばラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ステアリン酸エステル、アラキジン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレイン酸エステル、アラキドン酸エステル、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などの異なる鎖長の脂肪酸及び脂肪酸エステル、ポリリジン、オクタン、炭水化物(デキストラン、セルロース、オリゴ糖又は多糖)などの更なる部分を、所望の特性を得るために組み込むことができる。これらの部分は、タンパク質足場コード配列との直接融合体であってもよく、標準的なクローニング及び発現技術によって作製してもよい。あるいは、周知の化学カップリング方法を用いて、組換え技術によって産生された本発明の分子にその部分を結合させることができる。
【0101】
例えば、システイン残基を分子のC末端に組み込むか、又は、分子のヒトPSMA結合面から離れる方向に面した残基位置にシステインを組み込み、周知の方法によってPEG化基をシステインに結合させることによって、本発明のFN3ドメインにPEG化部分を付加することができる。更なる部分を組み込んだ本発明のFN3ドメインを、いくつかの公知のアッセイによって、官能性について比較することができる。例えば、Fcドメイン及び/又はFcドメイン変異体を組み込むことにより変化した特性を、FcγRI、FcγRII、Fc γRIII、又はFcRn受容体などの可溶性型受容体を用いるFc受容体結合アッセイにおいてアッセイしてもよく、又は例えばADCC若しくはCDCを測定する周知の細胞系アッセイを用いて、又はインビボモデルにおける本発明の分子の薬物動態特性を評価してアッセイしてもよい。
【0102】
ポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞
本発明は、本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインをコードした核酸を、インビトロ転写/翻訳のために使用される直鎖DNA配列、その組成物の真核生物、原核生物、又はフィラメントファージでの発現、分泌、及び/又は提示と適合するベクター、又はその標的化突然変異源を含む、単離ポリヌクレオチドとして、又は発現ベクターの一部として、又は直鎖DNA配列の一部として、提供する。特定のポリヌクレオチドの例が本明細書に開示されているが、遺伝コードの縮重又は特定の発現系におけるコドンの選択性を考慮すると、本発明のFN3ドメインをコードする他のポリヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。
【0103】
本発明の一実施形態は、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、又は140のアミノ酸配列を有する、ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインをコードした単離ポリヌクレオチドである。
【0104】
本発明の一実施形態は、配列番号156、157、158又は159のポリヌクレオチド配列を有する単離ポリヌクレオチドである。
【0105】
本発明のポリヌクレオチドは、自動ポリヌクレオチド合成装置での固相ポリヌクレオチド合成などの化学合成により作製され、完全な一本鎖又は二本鎖分子に構築され得る。あるいは、本発明のポリヌクレオチドは、PCRに続いて通常のクローニングを行うなどの他の技術により作製され得る。所定の公知の配列のポリヌクレオチドを作製又は得る技術は、当技術分野で周知である。
【0106】
本発明のポリヌクレオチドは、プロモーター又はエンハンサー配列、イントロン、ポリアデニル化シグナル、RepA結合を促進するcis配列等などの、少なくとも1つの非コード配列を含み得る。ポリヌクレオチド配列はまた、例えば、タンパク質の精製又は検出を容易にするためのヒスチジンタグ又はHAタグなどのマーカー又はタグ配列、シグナル配列、RepA、Fcなどの融合タンパク質パートナー、又はpIX若しくはpIIIなどのバクテリオファージコートタンパク質をコードした更なるアミノ酸をコードする更なる配列を含んでもよい。
【0107】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを含むベクターである。そのようなベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、バキュロウイルス発現ベクター、トランスポゾンに基づいたベクター、又は任意の手段によって所定の生物又は遺伝子的バックグラウンドに本発明のポリヌクレオチドを導入するのに適した他の任意のベクターであり得る。そのようなベクターは、そのようなベクターによってコードされるポリペプチドの発現を制御、調節、誘発、又は許容することができる核酸配列エレメントを含む発現ベクターであり得る。このようなエレメントは、転写エンハンサー結合部位、RNAポリメラーゼ開始部位、リボソーム結合部位、及び所定の発現系においてコードされたポリペプチドの発現を促進する他の部位を含み得る。このような発現系は、当該技術分野において公知の細胞に基づく系、又は無細胞系であり得る。
【0108】
本発明の別の実施形態は、本発明のベクターを含む宿主細胞である。本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、必要に応じて、当該技術分野では周知の細胞株、混合細胞株、不死化細胞又は不死化細胞のクローン集団によって産生させることができる。例えば、Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,NY(1987~2001);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor,NY(1989);Harlow and Lane,Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY(1989);Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994~2001);Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,NY,(1997~2001)を参照。
【0109】
発現用に選択される宿主細胞は、哺乳動物起源であり得るか、又はCOS-1、COS-7、HEK293、BHK21、CHO、BSC-1、He G2、SP2/0、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はその任意の誘導体、不死化若しくは形質転換細胞から選択され得る。あるいは、宿主細胞は、ポリペプチドをグリコシル化することができない種又は生物、例えば、BL21、BL21(DE3)、BL21-GOLD(DE3)、XL1-Blue、JM109、HMS174、HMS174(DE3)、及び天然若しくは改変大腸菌種(E.coli spp)、クレブシエラ種(Klebsiella spp)、又はシュードモナス種(Pseudomonas spp)の菌株のいずれかなどの原核細胞又は生物から選択され得る。
【0110】
本発明の別の実施形態は、本発明のヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインを生成する方法であって、単離された本発明の宿主細胞を、ヒトPSMAに特異的に結合する単離FN3ドメインが発現されるような条件下で培養することと、FN3ドメインを精製することと、を含む、方法である。
【0111】
ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、周知の方法、例えばプロテインA精製、硫酸アンモニウム、又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、及びレクチンクロマトグラフィー、又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、組換え細胞培養物から精製することができる。
【0112】
本発明のヒトPSMAに結合するFN3ドメインの用途
本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインは、ヒト疾患の症状、又は細胞、組織、臓器、体液若しくは一般に宿主中の特定の病態を、診断、監視、調節、治療、緩和、発症の予防、又は低減するために使用することができる。本発明の方法を用いて、任意の分類に属する動物被験体を治療することができる。このような動物の例としては、ヒト、齧歯類、イヌ、ネコ、及び家畜などの哺乳動物が挙げられる。
【0113】
本発明の一実施形態は、PSMAの過剰発現によって特徴付けられる癌を有する対象を治療する方法であって、対象に、細胞毒性物質と結合させた本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインを、対象を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む、方法である。
【0114】
いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌、大腸直腸癌、胃癌、腎明細胞癌、膀胱癌、肺癌、又は腎臓癌である。
【0115】
いくつかの実施形態では、癌は固形腫瘍である。
【0116】
いくつかの実施形態では、癌は、例えば前立腺癌又は良性前立腺過形成(BPH)などの前立腺疾患である。
【0117】
いくつかの実施形態では、癌は前立腺癌である。
【0118】
いくつかの実施形態では、癌は大腸直腸癌である。
【0119】
いくつかの実施形態では、癌は胃癌である。
【0120】
いくつかの実施形態では、癌は腎明細胞癌である。
【0121】
いくつかの実施形態では、癌は膀胱癌である。
【0122】
いくつかの実施形態では、癌は腎臓癌である。
【0123】
いくつかの実施形態では、癌は、例えば固形腫瘍の増殖によって特徴付けられる癌などの血管新生疾患である。PSMAの過剰発現により特徴付けられ、本発明に基づく治療に適した腫瘍血管系を有する代表的な癌としては、例えば、腎明細胞癌(CCRCC)、大腸直腸癌、乳癌、膀胱癌、肺癌、及び膵臓癌が挙げられる(例えば、Baccala et al.,Urology 70:385.390,2007(CCRCCにおけるPSMAの発現);Liu et al.,Cancer Res.57:3629~3634,1997(腎臓癌、尿路上皮癌、肺癌、直腸癌、乳癌、及び肝臓の腺癌を含む各種の非前立腺癌におけるPSMAの発現);及びMilowsky et al.,J.Clin.Oncol.25:540~547,2007を参照)。
【0124】
本発明の一実施形態は、PSMAの過剰発現によって特徴付けられる前立腺癌を有する対象を治療する方法であって、対象に、細胞毒性物質と結合させた本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインを、対象を治療するうえで充分な時間にわたって投与することを含む。方法である。
【0125】
本明細書に述べられる本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインを投与する対象には、PSMAの過剰発現により特徴付けられる特定の疾患を発症する高いリスクにある患者、及び既存のそうした疾患を呈する患者が含まれる。一般的には、対象は、治療が望まれる疾患を有するものとして診断がなされている。更に、対象は、治療過程において疾患のあらゆる変化について監視することができる(例えば、疾患の臨床的症状の増大又は減少について)。
【0126】
予防用途では、医薬組成物又は薬剤を、特定の疾患を罹患しやすい、又はそのリスクを有する患者に、疾患のリスクをなくす若しくは低減するか、又は疾患の発症を遅らせるうえで充分な量で投与する。治療用途では、組成物又は薬剤を、そのような疾患が疑われるか又は既に罹患している患者に、疾患の症状及びその合併症を治癒するか、又は少なくとも部分的に抑制するうえで充分な量で投与する。これを実現するのに適した量を、治療有効用量又は量と呼ぶ。予防的及び治療的レジメンの両方において、薬剤は通常、充分な応答(例えば、望ましくない血管新生活性の阻害)が得られるまで複数回の用量で投与される。一般的には、応答を監視し、所望の応答が消失し始めたならば反復用量を投与する。
【0127】
本明細書の方法に基づく治療を行うための対象患者を特定するには、受け入れられているスクリーニング法を用いて特定の疾患に伴うリスク因子を判定するか又は対象において特定された既存の疾患の状態を判定することができる。かかる方法としては、例えば、個人に特定の疾患を診断された親戚がいるか否かを調べることが挙げられうる。スクリーニング法にはまた、例えば、遺伝性要素を有することが知られている特定の疾患について家族歴を調べる従来の検査も含まれる。例えば、様々な癌が、特定の遺伝性要素を有することも知られている。癌の遺伝性要素としては、例えば、癌化を引き起こす複数の遺伝子(例えばRas、Raf、EGFR、cMet、及び他の遺伝子)における突然変異、特定のHLA及びキラー阻害受容体(KIR)分子の有無、又は、癌細胞がNK細胞及びT細胞などの細胞の免疫抑制を直接的又は間接的に調節することができる機構が挙げられる(例えば、Ljunggren and Malmberg,Nature Rev.Immunol.7:329~339,2007;Boyton and Altmann,Clin.Exp.Immunol.149:1~8,2007を参照)。この目的のため、対象となる特定の疾患に伴う遺伝子マーカーを有する個人を識別するためにヌクレオチドプローブをルーチン的に利用することができる。更に、特定の疾患のマーカーを同定するうえで有用な様々な免疫学的方法が当該技術分野で知られている。例えば、モノクローナル抗体プローブを利用して特定の腫瘍に関連した抗原を検出する様々なELISA法が存在しており、当該技術分野で知られている。既知の患者の症状、年齢因子、関連するリスク因子などによって示されるようなスクリーニングを実施することができる。これらの方法により、臨床医は、治療を行うために本明細書に述べられる方法を必要とする患者をルーチン的に選択することができる。これらの方法によれば、病因となるPSMA発現細胞の標的化を、独立した治療プログラムとして、又は他の治療に対するフォローアップ、補助的、又は調和的治療レジメンとして実施することが可能である。
【0128】
本明細書に述べられる特定の方法では、細胞毒性物質と結合させた本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインを第2の治療薬と併用して、前立腺癌を有する対象を治療することができる。
【0129】
本明細書に述べられる特定の方法では、細胞毒性物質と結合させた本発明のヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメインを使用して、第2の治療薬による治療に対して耐性を有するか、又は耐性を獲得した対象を治療することができる。
【0130】
第2の治療薬は、例えばアビラテロン酢酸エステル(ザイティガ)、ビカルタミド、カバジタキセル、カソデックス(ビカルタミド)、デガレリクス、ドセタキセル、エンザルタミド、ゴセレリン酢酸塩、ジェブタナ(カバジタキセル)、ロイプロリド酢酸塩、リュープロン(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー-3ヵ月(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー-4ヵ月(ロイプロリド酢酸塩)、リュープロンデポー-Ped(ロイプロリド酢酸塩)、ミトキサントロン塩酸塩、プレドニゾン、プロベンジ(シプロイセル-T)、二塩化ラジウム223、シプロイセル-T、タキソテール(ドセタキセル)、ビアデュール(Viadur)(ロイプロリド酢酸塩)、ゾフィーゴ(二塩化ラジウム223)、イクスタンジ(エンザルタミド)、又はゾラデックス(ゴセレリン酢酸塩)などの前立腺癌の治療用に承認された薬剤とすることができる(出典:アメリカ国立がん研究所)。
【0131】
様々な質的及び/又は量的な方法を用いて、対象が治療に対して耐性を有しているか、治療に対する耐性を獲得しているか、又は耐性を獲得しやすいかを判定することができる。耐性に伴いうる症状としては、例えば、患者の健康状態の低下若しくはプラトー状態、腫瘍サイズの増大、腫瘍の増殖の低減の停止若しくは遅延、及び/又は1つの場所から他の臓器、組織若しくは細胞への体内の癌性細胞の拡がりが含まれる。食欲低下、認知障害、うつ病、呼吸困難、疲労、ホルモン障害、好中球減少、疼痛、末梢神経障害、及び性機能障害などの癌に関連する様々な症状の再確立又は悪化もまた、対象が治療に対する耐性を獲得したか、又は獲得しやすいことを示す指標となりうる。癌に関連する症状は、癌の種類に応じて異なりうる。例えば、前立腺癌に関連する症状としては、排尿困難若しくは頻繁な尿意、排尿痛、血尿若しくは精子に混じる血、骨盤、背中及び/又は臀部の持続的痛みを挙げることができる。肺癌に関連する症状としては、しつこい咳、喀血、息切れ、ぜーぜーする胸痛、食欲減退、意図しない体重減少、及び疲労を挙げることができる。腫瘍学の当業者であれば、特定の種類の癌に関連する症状を容易に特定することが可能である。
【0132】
「治療する」又は「治療」なる用語は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の両方を指すものであり、その目的は、癌の進行又は転移のような望ましくない生理学的変化又は障害を予防又は遅延(緩和)することにある。本発明の目的では、有益な若しくは所望の臨床結果としては、これらに限定されるものではないが、検出可能であるか又は検出不能であるかによらず、症状の緩和、疾患の程度の軽減、安定した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患の進行の遅延又は鈍化、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分寛解又は完全寛解であるかによらない)が挙げられる。「治療」はまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長させることを意味し得る。治療を要する者には、既に状態若しくは疾患を有している者、及び、状態若しくは疾患を有しやすい者、又は状態若しくは疾患を予防しようとする者が含まれる。
【0133】
「治療的有効量」とは、所望の治療結果を得るために必要な用量及び期間で有効な量を指す。本発明のPSMA結合FN3ドメインの治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を引き出す本発明のPSMA結合FN3ドメインの能力等の因子に従って変動し得る。抵抗に伴って低下又は減少しうる有効なPSMA結合FN3ドメインの指標の例としては、例えば、患者の健康状態の改善、腫瘍サイズの減少若しくは縮小、腫瘍の増殖の停止若しくは鈍化、及び/又は体内の他の場所への癌細胞の転移がないことが挙げられる。
【0134】
投与/医薬組成物
本発明は、必要に応じて本発明の第2の分子と結合させた、ヒトPSMAに特異的に結合するFN3ドメイン及び薬学的に許容される担体からなる医薬組成物を提供する。治療的使用では、本発明のFN3ドメインは、薬学的に許容される担体中の活性成分として有効量のドメイン又は分子を含有する医薬組成物として調製することができる。「担体」なる用語は、活性化合物と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのようなビヒクルは、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の、石油、動物、植物、又は合成起源のものを含む、水及び油などの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水及び0.3%グリシンを用いることができる。これらの溶液は滅菌され、一般には粒子状物質を含まない。これらは、通常の周知の滅菌技術(例えば、濾過)によって滅菌することができる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えばpH調整剤及び緩衝剤、安定化剤、増粘剤、滑剤、並びに着色剤等を含むことができる。そのような医薬製剤中の本発明の分子の濃度は幅広く変化してよく、すなわち約0.5重量%未満、通常は少なくとも約1重量%から最大で15又は20重量%まで変化してもよく、また、選択される特定の投与様式に従って、主として必要とされる用量、液体の体積、粘度等に基づいて選択される。好適なビヒクル及び製剤(他のヒトタンパク質、例えばヒト血清アルブミンを含む)は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,Troy,D.B.ed.,Lipincott Williams and Wilkins,Philadelphia,PA 2006,Part 5,Pharmaceutical Manufacturing pp 691~1092に記載され、特にpp.958~989を参照されたい。
【0135】
本発明のFN3ドメインの治療的使用における投与方法は、錠剤、カプセル剤、液剤、粉剤、ゲル、粒子として、注射器、埋め込み式装置、浸透圧ポンプ、カートリッジ、マイクロポンプに入れられた製剤を用いた、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は皮下、肺;経粘膜投与(経口、鼻腔内、膣内、直腸);又は当該技術分野において周知の、当業者が理解する他の手段など、薬剤を宿主に送達する任意の好適な経路であってよい。部位特異的投与は、例えば、関節内、気管支内、腹内、関節包内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸郭内、子宮内、血管内、膀胱内、病巣内、膣内、直腸、口腔内、舌下、鼻腔内、又は経皮送達によって達成され得る。
【0136】
したがって、筋肉内注射用の本発明の医薬組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び約1ng~約100mg、例えば約50ng~約30mg、又はより好ましくは約5mg~約25mgの本発明のFN3ドメインを含むように調製することができる。
【0137】
本発明のFN3ドメインは、例えば、静脈内(IV)注射又はボーラス注射により非経口的に、筋肉内又は皮下又は腹腔内になど任意の適当な経路によって患者に投与することができる。IV注射は、15分ほどで投与してもよいが、多くの場合、30分、60分、90分、又は更には2若しくは3時間にわたって投与することができる。本発明のPSMA結合FN3ドメインは、疾患の部位(例えば腫瘍自体)に直接注射することもできる。癌を有する患者に投与される用量は、治療される疾患を緩和するか又は少なくとも部分的に抑制するうえで充分な量(「治療有効量」)であり、しばしば、0.1~10mg/kg体重、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8,9、又は10mg/kgであるが、更に高くてもよく、例えば、15、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100mg/kgであってもよい。例えば、50、100、200、500、又は1000mgの固定単位用量が与えられるか、又は用量は、例えば、400、300、250、200、若しくは100mg/mの患者の表面積に基づいてもよい。癌を治療するには、通常、1~8回の用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、又は8回)を投与することができるが、10、12、20回以上の用量が投与される場合もある。本発明のFN3ドメインの投与は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間、1ヶ月、5週間、6週間、7週間、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月以上後に繰り返すことができる。治療過程を繰り返すことも可能であり、長期にわたる投与も同様に可能である。繰り返し投与は、同一用量であるか、又は異なる用量であってよい。
【0138】
例えば、静脈内注射用の本発明のFN3ドメインの医薬組成物は、80kgの患者に投与するためには、約200mLの減菌リンガー液、及び約8mg~約2400mg、約400mg~約1600mg、又は約400mg~約800mgのPSMA結合FN3ドメインを含むように調製することができる。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は周知のものであり、例えば、「Remington’s Pharmaceutical Science」(15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA)に、より詳細に記載されている。
【0139】
本発明のFN3ドメインは、保存のために凍結乾燥し、使用に先立って適当な担体中で戻すことができる。この技術は、通常のタンパク調製物に関して有効であることが示されており、当該技術分野で公知の凍結乾燥法及び溶解技術を用いることができる。
【0140】
本発明のFN3ドメインは、対象に1回用量で投与してもよく、又は投与を、例えば1日後、2日後、3日後、5日後、6日後、1週間後、2週間後、3週間後、1か月後、5週間後、6週間後、7週間後、2か月後、又は3か月後に繰り返してもよい。反復投与は、同じ用量又は異なる用量で行うことができる。投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、又はそれより多く繰り返してもよい。
【0141】
本発明のFN3ドメインは、第2の治療剤と組み合わせて、同時、順次、又は別々に投与することができる。
【0142】
本発明のFN3ドメインは、必要に応じて第2の治療薬と組み合わせて、任意の形態の放射線療法、及び任意の形態の放射線手術、及び/又は外科手術と共に投与され得るが、そのような放射線療法には、体外照射療法、強度変調放射線療法(IMRT)が挙げられ、放射線手術には、ガンマナイフ、サイバーナイフ、Linac、及び組織内放射線照射(例えば、放射性シードの埋め込み、Glia Siteバルーン)が挙げられる。
【0143】
特に固形腫瘍の治療に関して、エンドポイント及び抗腫瘍活性を評価するためのプロトコールは、当該技術分野では周知のものである。それぞれのプロトコールは異なる腫瘍応答の評価を定義しうるが、RECIST(Response evaluation Criteria in solid tumors)(固形腫瘍における応答評価基準)基準が、現在のところ、アメリカ国立がん研究所による腫瘍応答の評価の推奨されるガイドラインと考えられている(Therasse et al.,J.Natl.Cancer Inst.92:205~216,2000を参照)。RECIST基準によれば、腫瘍応答とは、あらゆる測定可能な病変又は転移の低減又は消失を意味する。疾患は、従来の方法によって少なくとも1つの次元において20mm以上であることが、又は医療用写真又はレントゲン、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、又は臨床診察(病変が表在性である場合)により、明確に定義されたマージンを有し、螺旋CTスキャンによって10mm以上であることが正確に測定できる病変を有する場合に一般的に測定可能とみなされる。測定不能な疾患とは、従来の方法によって20mm未満の、又は螺旋CTスキャンによって10mm未満の病変からなる疾患、及び、真に測定不能な病変(小さすぎて正確に測定できない)からなる疾患を意味する。測定不能な疾患には、胸膜滲出液、腹水、及び間接的なエビデンスによって記述される疾患が含まれる。
【0144】
固形腫瘍応答を評価するためのプロトコールでは、客観的な状態の基準が必要とされる。代表的な基準としては以下のものがある。すなわち、(1)あらゆる測定可能な疾患の完全な消失、すなわち、新たな病変がないこと、疾患に関連する症状がないこと、測定不能な疾患のエビデンスがないこととして定義される、完全な応答(CR)、(2)標的病変の最長径の合計の30%の減少として定義される部分応答(PR)、(3)標的病変の最長径の合計の20%の増大又は新たな病変の出現として定義される進行性疾患(PD)、(4)CR、PR、又は進行性疾患としての条件を満たさないものとして定義される、安定又は不応答、である。(上記のTherasse et alを参照)。
【0145】
腫瘍学の分野で受け入れられている更なるエンドポイントとしては、全生存期間(OS)、無病生存期間(DFS)、客観的奏功率(ORR)、無増悪期間(TTP)、及び無増悪生存期間(PFS)が挙げられる(Guidance for Industry:Clinical Trial Endpoints for the Approval of Cancer Drugs and Biologics,April 2005,Center for Drug Evaluation and Research,FDA,Rockville,Mdを参照)。
【0146】
医薬組成物は、本明細書に述べられる医薬組成物を含む容器を含むキットとして供給することができる。医薬組成物は、例えば1回又は複数用量用の注射用溶液の形態で、又は注射の前に戻される滅菌粉末として提供することができる。あるいは、かかるキットは、医薬組成物を投与するための乾燥粉末分散器、液体エアゾール発生器、又はネブライザーを含むことができる。かかるキットは、医薬組成物の指示及び使用について書かれた情報を更に含むことができる。
【0147】
以上、本発明を一般論として説明したが、本発明の各実施形態を、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例において更に開示する。
【0148】
試薬及びコンストラクト
カニクイザル(cynoタンパク質データベースの参照番号EHH56646.1、配列番号32)及びチンパンジー(Uniprot、参照番号H2Q3K5、配列番号33)PSMAの細胞外ドメインを、pUnder発現ベクターに6His及びAviタグと共にクローニングした。タンパク質を、293HEK-expi細胞で一過性に発現させた。上清を回収し、遠心して清澄化した。タンパク質は、1)HisTrap HPカラムによるIMAC精製、及び2)溶出バッファーとしてPSMAの二量体化を安定化するためにMg2+、Ca2+、及び0.5mM ZnCl2を含んだDPBSを用いたサイズ排除精製(Superdex 200)の2工程の精製プロセスを用いて精製した。対象とするタンパク質を含む画分をプールし、タンパク質濃度をA280によって測定した。
【0149】
S.aureusのソルターゼAをコードした遺伝子をDNA2.0によって作製し、T5プロモーターの制御下で発現させるためにpJexpress401ベクター(DNA2.0)にサブクローニングした。可溶性発現させるためのこのソルターゼコンストラクトは、アミノ酸25個からなる天然タンパク質のN末端ドメインが膜結合性であることから、このドメインを欠いたものである(Ton-That et al.,Proc Natl Acad Sci USA 96:12424~12429,1999)。ソルターゼを、N末端His6タグ(HHHHHH、配列番号34)に、タグを除去するためのTEVプロテアーゼ部位(ENLYFQS、配列番号54)が続いたものとして発現させ、配列番号52のアミノ酸配列を有するソルターゼを得た。使用したソルターゼタンパク質は、野生型タンパク質と比較して酵素の触媒効率を増大させることが報告されている5個の突然変異配列も含んでいる(配列番号53)(Chen et al.,Proc Natl Acad Sci USA 108:11399~11404,2011)。このプラスミドを、発現させるためにE.coli BL21 Gold細胞(アジレント社(Agilent))に形質転換した。シングルコロニーをピックし、カナマイシンを添加したLuria Broth(テクノバ社(Teknova))中で増殖させ、37℃、250RPMで18時間インキュベートした。カナマイシンを添加した250mLのTerrific Broth(テクノバ社(Teknova))に、これらの継代培養物から接種し、37℃で振盪しながら約4時間増殖させた。タンパク質の発現を1mM IPTGで誘導し、タンパク質を30℃で18時間発現させた。細胞を6000Gで遠心して回収し、精製を行うまで-20℃で保存した。凍結した細胞ペレットを室温で30分、解凍し、30mL当たり1μLの組換えライソザイム(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))を添加したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))に細胞ペースト1g当たり5mlで懸濁し、室温にてシェーカー上で30分間インキュベートした。ライセートを74600Gで30分間遠心して清澄化した。
【0150】
上清を、バッファーA(0.5M NaCl及び10mMイミダゾールを含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0))で予め平衡化した3mLのQiagen Superflow Ni-NTA樹脂を充填した重力カラムに流した。ローディング後、カラムを100mLのバッファーAで洗った。タンパク質を250mMイミダゾールを添加したバッファーAで溶出し、PBS(ギブコ社(Gibco))中で平衡化した分取用ゲル濾過カラムTSK Gel G3000SW(21.5×600mm)(東ソー株式会社)にロードした。ゲル濾過クロマトグラフィーを、AKTA-AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、室温で、流速10mL/分にてPBSで行った。次いで、精製したソルターゼをTEVプロテアーゼで消化してHis6タグを除去した。28mgのソルターゼを10mL中、3000単位のAcTEVプロテアーゼ(インビトロジェン社(Invitrogen))と、1mM DTTを添加した供給されたバッファー中、30℃で2時間インキュベートした。タグを外したソルターゼをNi-NTA樹脂により精製した。反応液をPD-10カラム(ジーイー・ヘルスケア社(GE Healthcare))を使用してTBSバッファー(50mM Tris pH7.5、150mM NaCl)に交換し、バッファーAで予め平衡化した0.5mLのQiagen Superflow Ni-NTA樹脂を充填した重力カラムに流した。フロースルーを回収し、樹脂を3mLのバッファーAで洗い、これをフロースルーに加えた。このフロースルーをAmicon15コンセントレータ(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))により10kDaのカットオフで約0.5mLにまで濃縮した。更なるTBSバッファーを加え、試料を再び濃縮して(これを2回繰り返す)バッファーをTBSに交換した。1/3の体積の40%グリセロールを加え(10%グリセロールの最終濃度)、ソルターゼを短期間で使用する場合には-20℃で、長期間では-80℃で保存した。
【実施例
【0151】
実施例1.ランダム化されたループを有するテンコンライブラリの構築
テンコン(Tencon)(配列番号1)は、ヒトテネイシンCからの15個のFN3ドメインのコンセンサス配列から設計された、免疫グロブリン様足場構造のフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインである(Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107~117,2012;米国特許第8,278,419号)。テンコンの結晶構造は、7個のβ鎖を連結する6個の表面露出ループを示す。これらのループ又は各ループ内の選択された残基をランダム化することでフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインのライブラリを構築することができ、このライブラリを用いて特異的標的に結合する新規分子を選択することができる。
【0152】
テンコン:
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAEFTT(配列番号1)
【0153】
テンコンを足場として使用し、異なる設計手法を用いて、各種のライブラリを生成した。一般的に、ライブラリTCL1及びTCL2は、良好な結合分子を生成した。TCL1及びTCL2ライブラリの生成については、国際公開第2014081944A2号に詳細に述べられている。
【0154】
TCL1ライブラリの構築
cisディスプレイシステムで用いるため、テンコン(配列番号1)のFGループのみをランダム化するように設計されたライブラリTCL1を構築した(Jacobs et al.,Protein Engineering,Design,and Selection,25:107~117,2012)。このシステムでは、Tacプロモーター、テンコンライブラリコード配列、RepAコード配列、cisエレメント、及びoriエレメントの配列を組み込んだ一本鎖DNAを作製する。インビトロ転写/翻訳系で発現させると、それがコードされたDNAに対してcisで結合したテンコン-RepA融合タンパク質の複合体が産生される。次に、標的分子に結合する複合体を単離して、以下に述べるようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅する。
【0155】
cisディスプレイで用いるためのTCL1ライブラリの構築は、PCRの連続ラウンドによって行われ、最終的に直鎖状の二本鎖DNA分子が2つの半分子として産生された。すなわち、プロモーター及びテンコン配列を含む5’末端フラグメントと、repA遺伝子とcis及びoriエレメントとを含む3’末端フラグメントである。これらの2つの半分子同士を制限酵素消化によって結合させて、完全な構築物を産生する。テンコンのFGループであるKGGHRSN(配列番号55)のみにランダムなアミノ酸を組み込んで、TCL1ライブラリを設計した。このライブラリの構築にはNNSコドンを用い、これにより20種類すべてのアミノ酸と1個の終止コドンがFGループに組み入れられると考えられる。TCL1ライブラリは、多様性を更に大きくするために、それぞれが7~12残基の異なるランダム化FGループの長さを有する、6個の個別のサブライブラリを含む。
【0156】
TCL1ライブラリ(配列番号2)
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX7~12PLSAEFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、Xは、任意のアミノ酸であり、
、X、X10、X11及びX12は、任意のアミノ酸又は欠失である。
【0157】
TCL2ライブラリの構築
テンコンのBC及びFGループの両方がランダム化され、それぞれの位置のアミノ酸の分布が厳密に制御されたTCL2ライブラリを構築した。表3は、TCL2ライブラリの所望のループ位置のアミノ酸分布を示す。設計されたアミノ酸分布には2つの狙いがある。第1に、ライブラリを、テンコン結晶構造の解析及び/又はホモロジーモデリングに基づいて、テンコンのフォールディング及び安定性にとって構造的に重要となると予想された残基に偏らせた。例えば、29番目の位置は、テンコンが折り畳まれる際に疎水性コアの中に埋もれることから、疎水性アミノ酸のサブセットのみとなるように固定した。第2の層の設計としては、高アフィニティーの結合分子を効率よく生成するため、抗体の重鎖HCDR3に選択的に見出される残基の分布に近くなるようにアミノ酸分布を偏らせた((Birtalan et al.,J Mol Biol 377:1518~28,2008;Olson et al.,Protein Sci 16:476~84,2007)。この目標のため、表2の「設計された分布」は、以下の分布を指す。すなわち、6%アラニン、6%アルギニン、3.9%アスパラギン、7.5%アスパラギン酸、2.5%グルタミン酸、1.5%グルタミン、15%グリシン、2.3%ヒスチジン、2.5%イソロイシン、5%ロイシン、1.5%リジン、2.5%フェニルアラニン、4%プロリン、10%セリン、4.5%トレオニン、4%トリプトファン、17.3%チロシン、及び4%バリン。この分布には、メチオニン、システイン、及び終止コドンは含まれない。
【0158】
TCL2ライブラリ(配列番号3)
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX10111213SX1415LSAEFTT;ただし、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Phe、Ile、Leu、Val、又はTyrであり、
は、Asp、Glu、又はThrであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
10は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
11は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
12は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
13は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
14は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
15は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValである。
【0159】
【表2】
残基の番号は、配列番号1のテンコン配列に基づく。
【0160】
続いて、これらのライブラリを、野生型テンコンと比較して安定化した、置換E11R/L17A/N46V/E86Iを有するテンコンフレームワーク(テンコン27:配列番号4)上でライブラリを構築すること(米国特許第8,569,227号)、並びにBC及びFGループにおいてランダム化される位置を変えることを含む様々な方法によって改良した。テンコン27は、国際出願第2013049275号に記載されている。これより、テンコンのFGループのみ(ライブラリTCL9)、又はBC及びFGループの組み合わせ(ライブラリTCL7)をランダム化するように設計した新たなライブラリを作製した。これらのライブラリは、cisディスプレイシステムで使用することを目的として構築したものである(Odegrip et al.,Proc Natl Acad Sci USA 101:2806~2810,2004)。この設計の詳細を以下に示す。
【0161】
安定化したテンコン(テンコン27)(配列番号4)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAIFTT
【0162】
TCL7(ランダム化したFG及びBCループ)(配列番号5)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWXFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX10111213141516171819SNPLSAIFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15及びX16は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYであり、
、X、X、X17、X18及びX19は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0163】
TCL9(ランダム化したFGループ)(配列番号6)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV X101112SNPLSAIFTT;
、X、X、X、X、X、及びXは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYであり、
、X、X10、X11、及びX12は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0164】
ライブラリ構築のため、ランダム化したBCループ(6~9個分の位置の長さ)又はFGループ(7~12個分の位置の長さ)をコードしたDNAフラグメントを、Slonomics技術(スローニング・バイオテクノロジー社(Sloning Biotechnology GmbH))を用いて合成することにより、ライブラリのアミノ酸分布を制御し、終止コドンを除去した。BCループ又はFGループをランダム化したDNA分子の2つの異なるセットを独立して合成し、後でPCRを用いて結合させることによって完全なライブラリ産物を生成した。
【0165】
FGループライブラリ(TCL9)の構築
5’末端のTacプロモーターに、FGループ内のコドンをランダム化した以外は、テンコンの完全な遺伝子配列が続くものとして構成される合成DNA分子のセットを作製した(配列番号26~31)。FGループのランダム化を行うため、システイン及びメチオニンを除くすべてのアミノ酸を同比率でコードした。多様化させる部分の長さは、これらの部分がFGループ内の7、8、9、10、11、又は12個のアミノ酸をコードするようなものとした。それぞれの長さの変異体のサブライブラリを2μgのスケールで個々に合成し、次いで、オリゴヌクレオチドSloning-FOR(配列番号9)及びSloning-Rev(配列番号10)を使用したPCRによって増幅した。
【0166】
ライブラリの3’末端フラグメントは、PspOMI制限部位、repA遺伝子のコード領域、並びにcis及びoriエレメントを含む、ディスプレイ用のエレメントを含んだ一定のDNA配列である。鋳型としてのプラスミド(pCR4Blunt)(インビトロジェン社(Invitrogen))をM13フォワードプライマー及びM13リバースプライマーと共に使用して、PCR反応を行ってこのフラグメントを増幅した。得られたPCR産物を、PspOMIで一晩消化して、ゲル精製した。ライブラリDNAの5’末端部分を、repA遺伝子を含む3’末端DNAにライゲートするために、2pmol(約540ng~560ng)の5’末端DNAを、NotI及びPspOMI酵素並びにT4リガーゼの存在下で、37℃にて一晩、等モル量(約1.25μg)の3’末端repA DNAとライゲートした。ライゲートしたライブラリ産物を、オリゴヌクレオチドとしてPOP2250(配列番号11)及びDidLigRev(配列番号12)を使用して12サイクルのPCR反応によって増幅した。それぞれのサブライブラリについて、12回のPCR反応より得られたDNAを加え合わせてQiagenスピンカラムにより精製した。TCL9のそれぞれのサブライブラリの収率は、32~34μgの範囲であった。
【0167】
FG/BCループライブラリ(TCL7)の構築
TCL7ライブラリは、ランダム化されたテンコンのBC及びFGループを有するライブラリを与えるものである。このライブラリでは、アミノ酸6~9個の長さのBCループを、アミノ酸7~12個の長さのランダム化されたFGループとコンビナトリアルに混合した。合成テンコンフラグメントBC6、BC7、BC8、及びBC9(配列番号13~16)を、BCループが6、7、8、又は9個のランダム化されたアミノ酸で置換されるように、残基VXまでの、かつ残基VXを含むタンパク質のN末端部分をコードしたテンコン遺伝子を含むように作製した。これらのフラグメントは、L17A、N46V及びE83I突然変異の発見よりも前に合成されたものであるが(CEN5243)、これらの突然変異は下記に述べる分子生物学的ステップにより導入した。このフラグメントを、ランダム化したFGループをコードしたフラグメントと結合するため、以下のステップを行った。
【0168】
最初に、Tacプロモーターとテンコンの5’末端配列をアミノ酸A17をコードするヌクレオチドまでコードしたDNAフラグメント(130mer-L17A、配列番号17)を、オリゴヌクレオチドPOP2222ext(配列番号18)及びLS1114(配列番号19)を使用したPCRによって作製した。これは、L17A突然変異がライブラリに含まれるように行った(CEN5243)。次に、ランダム化したBCループを含むテンコンの残基R18~V75をコードしたDNAフラグメントを、鋳型としてのBC6、BC7、BC8、又はBC9と、オリゴヌクレオチドとしてLS1115(配列番号20)及びLS1117(配列番号21)を使用したPCRによって増幅した。このPCRのステップによって3’末端にBsaI部位を導入した。この後、これらのDNAフラグメントを、プライマーとしてオリゴヌクレオチドPOP2222ext及びLS1117を使用した重複PCRによって連結した。得られた240bpのPCR産物をプールし、QiagenPCR精製キットにより精製した。精製したDNAをBsaI-HFで消化し、ゲル精製した。
【0169】
FGループをコードしたフラグメントを、鋳型としてのFG7、FG8、FG9、FG10、FG11、及びFG12を、オリゴヌクレオチドSDG10(配列番号22)及びSDG24(配列番号23)と共に使用したPCRにより増幅して、BsaI制限部位並びにN46V及びE86I変異を組み込んだ(CEN5243)。
【0170】
消化したBCフラグメントとFGフラグメントとを、3Wayライゲーションを用いて1ステップで互いにライゲートした。それぞれのライゲーション反応で2つのBCループの長さと2つのFGループの長さとを組み合わせた4つのライゲーション反応を、16個の可能な組み合わせで準備した。各ライゲーションは、約300ngの全BCフラグメントと300ngのFGフラグメントを含んでいた。次いで、これら4つのライゲーションプールを、オリゴヌクレオチドPOP2222(配列番号24)及びSDG28(配列番号25)を使用したPCRにより増幅した。次いで、7.5μgのそれぞれの反応生成物をNot1で消化し、Qiagen PCR精製カラムにより精製した。5.2μgのこのDNAを、PspOMIで消化した等モル量のRepAのDNAフラグメント(約14μg)とライゲートし、生成物を、オリゴヌクレオチドPOP2222を使用したPCRにより増幅した。
【0171】
実施例2 別の結合表面を有するテンコンライブラリの作製
特定のライブラリ設計においてランダム化しようとする残基の選択によって、形成される相互作用表面の全体の形状が決まる。BC、DE、及びFGループがランダム化されたライブラリからマルトース結合タンパク質(MBP)に結合するように選択された足場タンパク質を含むFN3ドメインのX線結晶解析により、MBPの活性部位に嵌まり込む大きく湾曲した界面を有していることが示されている(Koide et al.,Proc Natl Acad Sci USA 104:6632~6637,2007)。これに対して、MBPに結合するように選択されたアンキリン繰り返し足場タンパク質は、より平坦な相互作用表面を有し、活性部位から離れたMBPの外表面に結合することが見出されている(Binz et al.,Nat Biotechnol 22:575~582,2004)。これらの結果は、足場分子の結合表面の形状(湾曲と平坦)が、どの標的タンパク質又はそれらの標的タンパク質上の特定のエピトープが足場によって効果的に結合されるかを決定しうることを示唆するものである。タンパク質結合用のFN3ドメインを含んだタンパク質足場の設計に関する、これまでに発表されている研究は、標的に結合するための隣接したループを設計し、これにより、湾曲した結合表面を生じさせることに頼っている。このアプローチは、こうした足場によってアクセス可能な標的及びエピトープの数を制限しうる。
【0172】
テンコン及び他のFN3ドメインは、分子の互いに反対側の面に存在する2組のCDR様ループを有しており、第1の組は、BC、DE、及びFGループによって形成され、第2の組は、AB、CD、及びEFループによって形成されている。これら2つのループの組は、FN3構造の中心を形成するβ鎖によって分離されている。テンコンの像を90°回転させると、代わりとなる表面が可視化されうる。このわずかに凹んだ表面は、CDループ及びFGループと2個の逆平行のβ鎖であるCβ鎖及びFβ鎖とによって形成されるものであり、本明細書ではC-CD-F-FG表面と呼ぶ。C-CD-F-FG表面は、表面を形成する残基のサブセットをランダム化することによりタンパク質足場相互作用表面のライブラリを設計するための鋳型として使用することができる。β鎖は、繰り返し構造を有し、1つ置きの残基の側鎖がタンパク質の表面に露出している。このため、β鎖内の一部又はすべての表面露出残基をランダム化することによって、ライブラリを作製することができる。β鎖内の適当な残基を選択することにより、他のタンパク質と相互作用するための固有の足場表面を与える一方で、テンコン足場の本来の安定性の低下を最小限に抑えなければならない。
【0173】
ライブラリTCL14(配列番号7)は、テンコン27足場内で設計した(配列番号4)。
【0174】
このライブラリを構築するために用いた方法の完全な説明は、米国特許出願公開第2013/0226834号に記載されている。
【0175】
TCL14ライブラリ(配列番号7):
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFXIXYXEXGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYXVXIX10GVKGGX1112SX13PLSAIFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、及びX13は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、C、又はMである。
【0176】
テンコン27のC-CD-F-FG表面を形成する2本のβ鎖は、C鎖が、S30、L32、Q34、Q36、F鎖が、E66、T68、S70、Y72、及びV74の全部で9個の表面露出残基を有しているのに対して、CDループは、S38、E39、K40、V41、G42、及びE43の6個の可能な残基を有し、FGループは、K75、G76、G77、H78、R79、S80、及びN81の7個の可能な残基を有している。選択された残基は、22個の残基すべてがランダム化された場合のライブラリのより大きな理論上のサイズのため、TCL14の設計に含まれるように選択した。
【0177】
ランダム化を行うために、C鎖のL32、Q34、及びQ36、CDループのS38、E39、K40、及びV41、F鎖のT68、S70、及びY72、FGループのH78、R79、及びN81の13個のテンコンの位置を選択した。C及びF鎖において、S30及びE66は、CD及びFGループを超えてすぐの位置にあり、C-CD-F-FG表面の一部とは明確には考えられないことから、ランダム化しなかった。CDループでは、G42及びE43は、柔軟性を与えるグリシンはループ領域において貴重な存在であり得、E43は表面の接合部に位置することから、ランダム化しなかった。FGループでは、K75、G76、G77、及びS80は除外した。グリシンは上記の理由で除外したのに対し、結晶構造を注意深く調べたところ、S80はコアと主要な接点を形成して安定的なFGループの形成を助けることが判明した。K75は、C-CD-F-FG表面の表面から離れる方向に面しており、ランダム化の候補としてはそれほど重要と考えられなかった。上記に述べた残基は元のTCL14の設計ではランダム化しなかったが、デノボ選択用、又は例えば選択したTCL14の標的特異的なヒットについてのアフィニティー成熟ライブラリ用に更なる多様性を与えるため、後のライブラリの設計ではこれらを含めることができる。
【0178】
TCL14の作製後、3つの更なるテンコンライブラリの同様の設計を作製した。これら2つのライブラリTCL19、TCL21及びTCL23は、TCL14と同じ位置(上記を参照)においてランダム化したが、これらの位置に存在するアミノ酸の分布を変えた(表3)。TCL19及びTCL21は、システイン及びメチオニンのみを除き、すべての位置で18種類の天然アミノ酸の等しい分布(それぞれ5.55%)を有するように設計した。TCL23は、表3に示されるように、それぞれのランダム化した位置が機能性抗体のHCDR3ループ(Birtalan et al.,J Mol Biol 377:1518~1528,2008)に見られるアミノ酸分布に近くなるように設計した。TCL21ランダム化と同様、システイン及びメチオニンは除外した。
【0179】
他のライブラリの可能性のある標的結合表面を拡張するために、第3の更なるライブラリを構築した。このライブラリ(TCL24)では、TCL14、TCL19、TCL21、及びTCL23のライブラリと比較して4つの更なるテンコンの位置をランダム化した。これらの位置には、D鎖のN46及びT48と、G鎖のS84及びI86が含まれる。位置46、48、84、及び86は、詳細には、これらの残基の側鎖がβ鎖D及びGから表面露出しており、C及びF鎖のランダム化した部分に構造的に隣接して位置するため、標的タンパク質との結合のためにアクセス可能な表面積が大きくなることから選択された。TCL24の各位置で用いたアミノ酸分布は、表3でTCL19及びTCL21について述べたものと同じである。
【0180】
TCL24ライブラリ(配列番号8)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFXIXYXEXGEAIXLXVPGSERSYDLTGLKPGTEYX10VX11IX12GVKGGX1314SX15PLX16AX17FTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、及びX17は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、Y、又はWである。
【0181】
【表3】
【0182】
TCL21、TCL23、及びTCL24ライブラリの作製
アミノ酸分布を制御するため、Colibraライブラリ技術(アイソジェニカ社(Isogenica))を使用してTCL21ライブラリを作製した。アミノ酸分布を制御するため、Slonomics技術(モルフォシス社(Morphosys))を使用してTCL19、TCL23、及びTCL24遺伝子フラグメントを作製した。最初の合成の後、PCRを用いて各ライブラリを増幅した後、ループライブラリに関して上記に述べたCISディスプレイシステム(Odegrip et al.,Proc Natl Acad Sci USA 101:2806~2810,2004))を用いた選択に用いるために、RepAの遺伝子とライゲートした。
【0183】
実施例3:PSMAに結合するフィブロネクチンIII型(FN3)ドメインの選択
プレートに基づく選択
CISディスプレイを用いて、TCL7、TCL9、TCL19、及びTCL21ライブラリからPSMA結合センチリン(Centyrin)を選択した。インビトロ転写及び翻訳(ITT)を行うため、3μgのライブラリDNAを30℃で、0.1mMの完全アミノ酸、1XS30プレミクス成分、及び15μLのS30エクストラクト(プロメガ社(Promega))と50μLの全体積中でインキュベートした。1時間後、375μLのブロッキング溶液(1×TBS(pH7.4)、0.01% I-block(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)、#T2015)、100μg/mlニシン精子DNA)を加え、反応混合物を氷上で15分間インキュベートした。ITT反応液を、抗ヒトPSMA抗体(ライフスパン・バイオサイエンス社(Lifespan Bioscience)、カタログ番号LC-C150527)でコーティングした96ウェルMaxisorbプレート上に固定化した組換えタンパク質であるチンパンジーPSMA(pan 229)若しくはカニクイザルPSMA(pan 230)、又はカニクイザルPSMA-FC融合タンパク質(pan 231)と共にインキュベートした。未結合のライブラリ成分をTBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃に10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおける標的PSMAの濃度を400nMから100nMに連続的に低下させ、洗浄のストリンジェンシーを高くしていくことによって、高いアフィニティーで結合する結合分子を単離した。
【0184】
パニング後、選択したFN3ドメインをPCRによって増幅し、リガーゼ非依存的クローニング部位を含むように改変されたpETベクターにサブクローニングし、大腸菌で可溶性発現させるために標準的な分子生物学の技法を用いてBL21-GOLD(DE3)(ストラタジーン社(Stratagene))細胞に形質転換した。精製及び検出を可能にするために、C末端ポリヒスチジンタグをコードした遺伝子配列を各FN3ドメインに付加した。1mLの96ウェルブロック中、100μg/mLカルベニシリンを添加したTB培地中で、培養物を37℃で吸光度が0.6~0.8となるまで増殖させた後、IPTGを1mMとなるように添加し、その時点で温度を30℃に低下させた。およそ16時間後に細胞を遠心沈降させて回収し、-20℃で凍結した。各ペレットを0.6mLのBugBuster(登録商標)HT細胞溶解バッファー(ノバジェン・イーエムディー・バイオサイエンシーズ社(Novagen EMD Biosciences))中で、室温で45分間、振盪しながらインキュベートすることによって、細胞溶解物を得た。
【0185】
ビーズに基づく選択
センチリンを、更に、ビーズに基づいた捕捉セットアップを用いて選択した。上記に述べたようにしてITT反応混合物を調製し、次いで、ビオチン化組換えタンパク質であるチンパンジー又はカニクイザルPSMAとインキュベートした。ビオチン化組換えタンパク質及び結合したライブラリ成分を、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉した。未結合のライブラリ成分を、TBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃に10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおける標的PSMAの濃度を400nMから100nMに連続的に低下させ、洗浄のストリンジェンシーを高くしていくことによって、高いアフィニティーで結合する結合分子を単離した。
【0186】
オフレート選択(Off-rate selection)
ビーズに基づく選択の5回目のラウンドからの生成物に、4ラウンドのオフレート選択を行った。ITT反応混合物をビオチン化組換えチンパンジー又はカニクイザルタンパク質とインキュベートした後、タンパク質と結合ライブラリ成分をニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉し、TBSTでよく洗浄し、結合した複合体を5μMの低温の組換えPSMAタンパク質中で1時間洗浄した。次いで、ビーズに結合したITTをTBST及びTBS中でよく洗浄した後、溶出した。ビオチン化した標的抗原濃度を、ラウンド6及び7の25nMからラウンド8及び9の2.5nMに段階的に下げた。ラウンド7及び9からの選択生成物を、発現及びスクリーニングを行うために改変pET15ベクターにサブクローニングした。
【0187】
アフィニティー成熟ライブラリ選択
BCループの位置23~30及びFGループの位置78~83をランダム化した、クローンP229CR9P819-H11(配列番号40)の配列に基づいたアフィニティー成熟ライブラリ(TCL25)を、モルフォシス社(ドイツ、ミュンヘン)のSlonomics技術を用いて作製した。ライブラリ内の標的結合の維持は、各ランダム化した位置に65%の標的頻度で親アミノ酸(P229CR9P819-H11からの)をコードしたヌクレオチドをドープすることによって行った。ヌクレオチドの残りの35%は、含まれていなかったシステイン及びメチオニンを除く、すべての他の20種類の天然アミノ酸を同じ確率でコードしたコドンの混合物を含むように設計した。表4は、TCL25の成熟ライブラリの設計を示す。表中、括弧内の数値は、各位置に対応するアミノ酸を含むように設計されたライブラリ内の分子の比率(%)を表す。このドーピング手法(14個の位置で65%の親分子)により、親分子と比較して大部分が3、4、5、6、又は7個の変化を含む理論上の分子の分布が得られる。
【0188】
【表4】
【0189】
CISディスプレイを用いて、TCL25ライブラリからPSMAに結合するセンチリンを選択した。ITT反応混合物を、ビオチン化組換えタンパク質であるチンパンジー及びカニクイザルPSMAとインキュベートした。ビオチン化組換えタンパク質及び結合したライブラリ成分を、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉した。未結合のライブラリ成分を、TBST及びTBSで順に洗浄して除去した。洗浄後、DNAを、85℃に10分間加熱することにより標的タンパク質から溶出し、更なるパニングのラウンドを行うためにPCRにより増幅した。各ラウンドにおける標的PSMAの濃度を400nMから100nMに連続的に低下させ、洗浄のストリンジェンシーを高くしていくことによって、センチリン結合分子を単離した。
【0190】
選択の2回目のラウンドからの生成物に、4ラウンドのオフレート選択を行った。ITT反応混合物をビオチン化組換えPSMAタンパク質とインキュベートした後、タンパク質と結合ライブラリ成分をニュートラアビジン又はストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ上に捕捉し、TBSTでよく洗浄し、結合した複合体を5μMの低温の組換えPSMAタンパク質中で1時間洗浄した。次いで、ビーズに結合したITTをTBST及びTBS中でよく洗浄した後、溶出した。ビオチン化した標的抗原濃度を、ラウンド3及び4の25nMからラウンド5及び6の2.5nMに段階的に下げた。ラウンド7及び9からの選択生成物を、発現及びスクリーニングを行うために改変pET15ベクターにサブクローニングした。
【0191】
PSMAに結合するセンチリンの生化学的スクリーニング
ニュートラアビジンでコーティングしたプレートを、Starting Block T20(ピアース社(Pierce))で1時間ブロッキングした後、ビオチン化PSMA(パニングと同じ抗原を使用したもの)又はネガティブコントロールで1時間コーティングした。プレートをTBSTですすぎ、希釈したライセートをプレートに1時間加えた。更なるすすぎの後、各ウェルをHRP結合抗センチリン抗体(PAB25)で1時間処理し、次いでPOD(ロシュ社(Roche))によりアッセイした。バックグラウンドよりも少なくとも10倍高いシグナルを有するセンチリンを、更なる分析を行うために選択した。
【0192】
サイズ排除クロマトグラフィー分析
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、PSMAに結合するセンチリンの凝集状態を測定した。各精製センチリンのアリコート(10μL)をSuperdex 75 5/150カラム(ジーイー・ヘルスケア社(GE Healthcare))に流速0.3mL/分でPBS(pH7.4)を移動相として注入した。カラムからの溶出液を、280nmの吸光度によってモニターした。各ランに、コントロールとして野生型テンコンを含ませた。アジレント社(Agilent)のChemStationソフトウェア(Rev.B.04.02)を使用して溶出プロファイルを分析した。同じランの野生型タンパク質の溶出プロファイルと同様の溶出プロファイルを示したタンパク質のみを、更なる特性評価を行うための考慮対象とした。
【0193】
センチリンの高スループット発現、複合体化及び精製
生化学的結合ELISAによって同定された固有のヒットから単離したクローンを、96ウェルブロックプレートで増殖させるためにシングルヒットプレートで加え合わせた。クローンを、振盪しながら37℃で一晩、1mLの培養物(選択用にカナマイシンを添加したLB培地)中で増殖させた。96ブロックプレートでタンパク質発現を行うため、カナマイシンを添加した1mLのTB培地に50μLの一晩培養物を接種し、OD600=0.6~1となるまで300rpmで連続的に振盪しながら37℃で増殖させた。目標ODに達した時点で、IPTGを1mMにまで加えることにより、タンパク質発現を誘導し、プレートを30℃(300rpm)に移行して一晩増殖させた。一晩培養物を遠心して細胞を回収し、細菌ペレットを使用できる状態となるまで-80℃で保存した。ポジティブコントロール及びネガティブコントロールの両方を、各プレート上の重複実験に含めた。
【0194】
ソルターゼタグと結合させるため、細菌ペレットを解凍し、組換えヒトライソザイム(EMD社、カタログ番号71110)を添加したBugBusterHT(EMD社、カタログ番号70922)中に再懸濁して溶解した。静かに攪拌しながら室温で溶解を進行させ、その後、プレートを42℃に移行して宿主タンパク質を沈降させた。遠心により破片をペレット化し、上清をソルターゼ触媒標識を行うために新しいブロックプレートに移した。Gly3-vc-MMAF(コンコルティス社(Concortis))、タグレスソルターゼA及びソルターゼバッファー(Tris、塩化ナトリウム、及び塩化カルシウム)を含むマスターミックスを2倍濃度で調製し、ライセートの上清に等量で加えた。標識反応を室温で2時間進行させた後、Ni-NTA multi-trap HPプレート(GE社、カタログ番号28-4009-89)を使用してタンパク質を精製した。タンパク質複合体を、イミダゾール含有溶出バッファー(50mMTris(pH7.5)、500mM NaCl、250mMイミダゾール)による段階的溶出によって回収し、フィルターを滅菌して、細胞を用いた細胞毒性アッセイに直接使用した。
【0195】
センチリン-薬剤複合体の高スループット細胞毒性アッセイ
96ウェル黒色組織培養コーティングプレート(ビーディー/コーニング社(BD/Corning)社カタログ番号353219)に、アッセイ培地(5%ウシ胎児血清を添加した無フェノールレッドRPMI(ライフ・テクノロジーズ社(Life Technologies)カタログ番号11835-030))中、10,000細胞/ウェルの密度でLNCaP FGC細胞(ATCC,カタログ番号CRL-1740)を播種した。播種したプレートを、5%CO2下、37℃で一晩インキュベートして細胞を付着させた。24時間後、CDCをアッセイ培地中に希釈し(1:100、1:300、1:1000、又は1:3000)、LNCaP細胞に直接加えた。この後、LNCaP細胞を、5%CO2下、37℃で66~72時間インキュベートした。細胞毒性を、CellTiter-Glo試薬(プロメガ社(Promega)カタログ番号G7571)を使用して評価し、調製した試薬100μLを、処理したウェルに直接加え、光から保護して静かに振盪しながら10分間インキュベートした。発光量を、SpectraMax M5プレートリーダーを使用して測定した。値を非処理のコントロールに対して正規化し、50%よりも高い毒性が得られた場合に更なる分析を行うために選択した。
【0196】
実施例4:抗PSMAセンチリンの特性評価
大規模発現及び精製
センチリン突然変異体をコードした遺伝子配列をパニングによって見つけ、これをT7プロモーターの制御下で発現させるためにpET15bベクターにクローニングするか、又はDNA2.0社によって作製されたものをT5プロモーターの制御下で発現させるためにpJexpress401ベクター(DNA2.0社)にサブクローニングした。この得られたプラスミドを、発現させるためにE.coli BL21 Gold(アジレント社(Agilent))又はBL21DE3 Gold(アジレント社(Agilent))に形質転換した。シングルコロニーをピックし、カナマイシンを添加したLuria Broth(テクノバ社(Teknova))中で増殖させ、37℃、250RPMで18時間インキュベートした。カナマイシンを添加した1LのTerrific Broth(テクノバ社(Teknova))に、これらの継代培養物から接種し、37℃で振盪しながら4時間増殖させた。目標600nmの吸光度における光学密度が1.0に達した時点で、1mMのIPTGによりタンパク質発現を誘導した。タンパク質を37℃で4時間、又は30℃で18時間発現させた。細胞を6000Gで遠心して回収し、精製を行うまで-20℃で保存した。凍結した細胞ペレット(約15~25g)を室温で30分、解凍し、0.2mg/mLの組換えライソザイム(シグマ社(Sigma))を添加したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))に細胞ペースト1g当たり5mLで懸濁し、室温にてシェーカー上で1時間インキュベートした。ライセートを74600Gで25分間遠心して清澄化した。上清を、AKTA AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、氷中に浸漬した5mlのQiagen Ni-NTAカートリッジ上に4mL/分の流速で加えた。他のすべてのNi-NTAクロマトグラフィーのステップは、流速5ml/分で行った。Ni-NTAカラムを、0.5M NaCl及び10mMイミダゾールを含んだ25.0mLの50mM Tris-HClバッファー(pH7.0)(バッファーA)中で平衡化した。ローディング後、カラムを100mLのバッファーA、次いで10mM イミダゾール、1%CHAPS及び1%n-オクチル-β-D-グルコピラノシド洗剤を含んだ100mlの50mM Tris-HClバッファー(pH7.0)、及び100mlのバッファーAで洗浄した。タンパク質を250mMイミダゾールを添加したバッファーAで溶出し、PBS(ギブコ社(Gibco))中で平衡化した分取用ゲル濾過カラムTSK Gel G3000SW(21.5×600mm)(東ソー株式会社)にロードした。ゲル濾過クロマトグラフィーを、AKTA-AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、室温で、流速10mL/分にてPBSで行った。
【0197】
熱安定性の測定
熱安定性をキャピラリーDSCによって測定した。各試料を、1mg/mlの濃度にPBS(pH7.4)に希釈した。オートサンプラー(マイクロカル社(MicroCal,LLC))を備えたVP-DSC機器を使用して、これらの試料の融解温度を測定した。試料を10℃から95℃又は100℃まで毎分1℃の速度で加熱した。各試料の走査の間にバッファーのみの走査を完結して、積分用のベースラインを計算した。バッファーのみのシグナルを引いた後、データを2状態アンフォールディングモデルに当てはめた。セルから試料を取り出さずに各試料について走査を繰り返すことによって、熱変性の可逆性を測定した。
【0198】
PSMA陽性細胞に対する抗PSMAセンチリン薬剤複合体の選択的細胞毒性
センチリンを、システイン/マレイミド化学反応(Brinkley,Bioconjugate Chemistry 3:2~13,1992)又は上記に述べたソルターゼ反応を用いて、vc-MMAFと結合させた。センチリン-vcMMAF複合体の細胞毒性を、インビトロでLNCaP、VCAP、MDA-PC-2B、及びPC3細胞で評価した。細胞を96ウェル黒色プレートに24時間置いた後、異なる用量のセンチリン-vcMMAF複合体で処理した。細胞をセンチリン薬剤複合体(CDC)と66~72時間インキュベートした。CellTiterGloを使用し、上記に述べたようにして毒性を評価した。発光量の値をExcelにインポートし、ここからPrismにコピーアンドペーストしてグラフによる分析を行った。データをX=Log(x)を用いて変換した後、非線形回帰を用いて分析し、3パラメータモデルを適用してIC50を決定した。
【0199】
表6に、複数の配列群にまたがったパニングによって特定された固有ヒットを要約する。センチリンは、vcMMAFと結合させた場合に55℃~85℃で熱安定性を示し、LNCaP細胞に対して細胞毒性を示し、IC50値は22.6~0.38nMであった。
【0200】
実施例4:抗PSMAセンチリンの特性評価
大規模発現及び精製
センチリン突然変異体をコードした遺伝子配列をパニングによって見つけ、これをT7プロモーターの制御下で発現させるためにpET15bベクターにクローニングするか、又はDNA2.0社によって作製されたものをT5プロモーターの制御下で発現させるためにpJexpress 401ベクター(DNA2.0社)にサブクローニングした。この得られたプラスミドを、発現させるためにE.coli BL21 Gold(アジレント社(Agilent))又はBL21DE3 Gold(アジレント社(Agilent))に形質転換した。シングルコロニーをピックし、カナマイシンを添加したLuria Broth(テクノバ社(Teknova))中で増殖させ、37℃、250RPMで18時間インキュベートした。カナマイシンを添加した1LのTerrific Broth(テクノバ社(Teknova))に、これらの継代培養物から接種し、37℃で振盪しながら4時間増殖させた。目標600nmの吸光度における光学密度が1.0に達した時点で、1mMのIPTGによりタンパク質発現を誘導した。タンパク質を37℃で4時間、又は30℃で18時間発現させた。細胞を6000Gで遠心して回収し、精製を行うまで-20℃で保存した。凍結した細胞ペレット(約15~25g)を室温で30分、解凍し、0.2mg/mlの組換えライソザイム(シグマ社(Sigma))を添加したBugBusterHTタンパク質抽出試薬(イーエムディー・ミリポア社(EMD Millipore))に細胞ペースト1g当たり5mlで懸濁し、室温にてシェーカー上で1時間インキュベートした。ライセートを74600Gで25分間遠心して清澄化した。上清を、AKTA AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、氷中に浸漬した5mlのQiagen Ni-NTAカートリッジ上に4mL/分の流速で加えた。他のすべてのNi-NTAクロマトグラフィーのステップは、流速5ml/分で行った。Ni-NTAカラムを、0.5M NaCl及び10mMイミダゾールを含んだ25.0mlの50mM Tris-HClバッファー(pH7.0)(バッファーA)中で平衡化した。ローディング後、カラムを100mLのバッファーA、次いで10mMイミダゾール、1% CHAPS及び1%n-オクチル-β-D-グルコピラノシド洗剤を含んだ100mlの50mM Tris-HClバッファー(pH7.0)、及び100mlのバッファーAで洗浄した。タンパク質を250mMイミダゾールを添加したバッファーAで溶出し、PBS(ギブコ社(Gibco))中で平衡化した分取用ゲル濾過カラムTSK Gel G3000SW(21.5×600mm)(東ソー株式会社)にロードした。ゲル濾過クロマトグラフィーを、AKTA-AVANTクロマトグラフィーシステムを使用し、室温で、流速10mL/分にてPBSで行った。
【0201】
熱安定性の測定
熱安定性をキャピラリーDSCによって測定した。各試料を、1mg/mlの濃度にPBS(pH7.4)に希釈した。オートサンプラー(マイクロカル社(MicroCal, LLC))を備えたVP-DSC機器を使用して、これらの試料の融解温度を測定した。試料を10℃から95℃又は100℃まで毎分1℃の速度で加熱した。各試料の走査の間にバッファーのみの走査を完結して、積分用のベースラインを計算した。バッファーのみのシグナルを引いた後、データを2状態アンフォールディングモデルに当てはめた。セルから試料を取り出さずに各試料について走査を繰り返すことによって、熱変性の可逆性を測定した。
【0202】
PSMA陽性細胞に対する抗PSMAセンチリン薬剤複合体の選択的細胞毒性
センチリンを、システイン/マレイミド化学反応(Brinkley,Bioconjugate Chemistry 3:2~13,1992)又は上記に述べたソルターゼ反応を用いて、vc-MMAFと結合させた。センチリン-vcMMAF複合体の細胞毒性を、インビトロでLNCaP、VCAP、MDA-PC-2B、及びPC3細胞で評価した。細胞を96ウェル黒色プレートに24時間置いた後、異なる用量のセンチリン-vcMMAF複合体で処理した。細胞をセンチリン薬剤複合体(CDC)と66~72時間インキュベートした。CellTiterGloを使用し、上記に述べたようにして毒性を評価した。発光量の値をExcelにインポートし、ここからPrismにコピーアンドペーストしてグラフによる分析を行った。データをX=Log(x)を用いて変換した後、非線形回帰を用いて分析し、3パラメータモデルを適用してIC50を決定した。
【0203】
表5に、複数の配列群にまたがった、パニングによって特定された固有ヒットを要約する。センチリンは、vcMMAFと結合させた場合に55℃~85℃で熱安定性を示し、LNCaP細胞に対して細胞毒性を示し、IC50値は22.6~0.38nMであった。表6、7及び8に、選択したクローンのBC、C、CD、F及びFGループのアミノ酸配列を示す。表9に、各クローンのアミノ酸配列を示す。
【0204】
【表5】
【0205】
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
選択したセンチリン薬剤複合体を、一群の細胞株にわたって試験した。表10に、vcMMAFと結合させたいくつかのセンチリンのIC50値を示す。データは、1~9つの曲線当てはめの平均を示す。データは平均±SEMで示している。CDCは、PSMAを高いレベルで発現することが知られている細胞株であるLNCaP細胞において最も高い効果を示した。CDCは、PSMAのレベルがより低い前立腺癌細胞株であるMDA-PCA-2B及びVCAP細胞においても活性を示した。PSMA陰性細胞株であるPC3細胞では活性は認められず、選択性が示された。
【0210】
【表10】
【0211】
実施例5:抗PSMAセンチリンの操作
システイン走査
タンパク質の異なる位置にシステイン残基が導入された抗PSMAセンチリンP233FR9_10をコードした遺伝子をDNA2.0社より入手し、これを使用して上記に述べたようにタンパク質を発現させて精製した。得られたセンチリンを、上記に述べたように、熱安定性(vcMMAF複合体のある場合とない場合)及びLNCaP細胞毒性について評価した。結果を表11に要約する。
【0212】
【表11】
【0213】
実施例6:非標的化センチリンの生体分布のイメージング
アイソ・セラピューティクス・グループ社(IsoTherapeutics Group, LLC)(テキサス州アングルトン)において、位置62にシステインを有するように操作された標的抗原に対して特異的結合を示さないセンチリンを、DOTAと結合させ、次いでジルコニウム89放射性同位体と結合させた。去勢した雄NSGマウス(ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson laboratories))を1.5%イソフルランで麻酔し、シーメンス社(Siemens)のInveon microPET/CTでイメージングした。マウスに尾静脈注射により約0.2mCi[89Zr]のセンチリン(配列番号51)を投与し(低温のセンチリンを1mg/kg用量となるように)、最初の60分間にわたって連続的にイメージングし、その後、センチリン注射の3、6、及び24時間後にイメージングした。
【0214】
3次元PET画像を、「2Dサブセット化による期待値最大化アルゴリズム」(2D ordered-subsets expectation maximization algorithm)(シーメンス・ヘルスケア社(Siemens Healthcare)、テネシー州ノックスビル)を使用して、ボクセルサイズ0.107mm×0.107mm×0.107mmで768×768×512のトモグラフィ体積に再構成した。PMOD v3.0ソフトウェア(ピーエムオーディー・テクノロジーズ社(PMOD Technologies)、スイス、チューリッヒ)を使用して、画像を処理して分析した。既知の活性の円筒体をPETスキャナー内でスキャンして用量キャリブレータによって測定された注射用量との相互較正、及びPET画像のボクセル当たりのカウントを得た。PMOD画像融合ソフトウェアを用いて各PET画像をCT画像と位置合わせすることにより、解剖学的基準点を与えた。関心領域(ROI)を、分析しようとする各組織について4つの切片ごとに周囲に描画した。ボクセル当たりの平均カウントを導き出し、既知の活性の較正円筒体から導き出された補正係数を用いて体重1g当たりの注射された用量の比率(%)に変換した。放射活性のすべての測定値を、Zr89の既知の半減期(78.41時間)を用いて崩壊について補正した。
【0215】
図1は、時間に対する放射性標識されたFN3ドメインの組織分布を示す。腎臓及び膀胱における急速な蓄積が観察されたが、肝臓への蓄積はわずかであり、センチリンが腎臓によって排出されることを示唆している。
【0216】
実施例7:cynoPSMAと複合体化された抗PSMA P233FR9-H10の結晶構造
Hisタグを付加したP233FR9-H10センチリン(本明細書でH10センチリンと呼ぶ)を大腸菌で発現させ、アフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。センチリンはdPBS(pH7.2)中に受けた。
【0217】
カニクイザルPSMA細胞外ドメインを、huIgG1 FcドメインとのC末端融合としてGnTI細胞で発現させ、アフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィーを用いて精製した。融合タンパク質を、dPBS、0.5mM ZnCl(pH7.2)中に受けた。次いで、FcドメインをPrescissionプロテアーゼ処理により除去した後、アフィニティー及びサイズ排除クロマトグラフィーを行った。単離したカニクイザルPSMA(cynoPSMA)の細胞外ドメインを、dPBS、0.5mM ZnCl(pH7.2)中に保存した。
【0218】
20mM Hepes(pH7.0)0.5mM ZnClに対して4℃で48時間透析しながら、cynoPSMAをH10センチリンと1:3のモル比(センチリン過剰)で混合することによりH10センチリン/cynoPSMA複合体を調製した。次いで、複合体を、48~68mM NaCl、20mM Hepes(pH7.5)、10%グリセロールによりmonoSカラムから溶出し、3.4mg/mLに濃縮した。X線回折に適した結晶を、シッティングドロップ蒸気拡散法を20℃で用いて、25% PEG(3kDa)、0.2M NHCl、0.1M酢酸ナトリウム(pH4.5)から得た。
【0219】
X線データ収集のため、結晶を、20%グリセロールを添加した母液を含むクライオプロテクタント溶液中に数秒間浸漬した後、液体窒素中で凍結した。アルゴンヌ国立研究所のAdvanced Photon Source(APS)のビームライン17-IDにおいてDectris Pilatus 6M Pixel Array検出器によって、X線データを収集した。回折データをプログラムHKL2000で処理した(Otwinowski & Minor,1997)。X線データ統計を表12に示す。
【0220】
構造を、Phaserを用いた分子置換法(MR)により解析した(Read、2001)。MRの検索モデルは、ヒトPSMA(PDBコード2C6G)の結晶構造及びP114AR7P94-A3 W33Aセンチリンの構造とした。PHENIXにより構造を精密化し(Adamsら、2004)、COOTを用いてモデル調整を行った(Emsley & Cowtan、2004)。他のすべての結晶学的計算は、CCP4プログラム群により行った(CCP4、1994)。すべての分子グラフィックは、PyMolを用いて生成した(DeLano、2002)。構造精密化の統計を表12に示す。
【0221】
【表12】
最外郭の値は()内に示す。
【0222】
ホモ二量体cynoPSMAの構造は、二量体のサブユニット当たり、プロテアーゼ(残基57~116及び352~590)、頂端(残基117~351)及び螺旋状(残基591~750)ドメイン、並びに11個の可能なN結合型グリカンのうち8個(Asn-76、-121、-140、-195、-459、-476、-613、及び-638における)に対応した残基57~750を有している。cynoPSMA活性部位は、3つのドメイン間の界面に位置し、ヒスチジン(H377及びH553)により配位された2個の亜鉛原子、及びグルタミン酸/アスパラギン酸(D387、触媒活性を有するE424、E425、及びD453)残基、及び水分子を有している。H10センチリン(配列番号41)構造は、残基2~92を有している。H10残基は、配列番号41に基づいて順に番号付けされている。cynoPSMA残基は、配列番号141の完全長cynoPSMA配列に基づいて番号付けされている。成熟cynoPSMA(シグナルペプチドのないもの)は、配列番号141の残基44から始まっている。
【0223】
非対称ユニット中に1個のcynoPSMAがあり、各PSMAサブユニットに1個のH10センチリンが結合している(図2A)。2個のセンチリン/PSMA複合体は、PSMAサブユニット内のすべての同等の原子の重ね合わせについての0.72Åの二乗平均偏差の平方根(r.m.s.d.)によって示されるように、構造的に非常によく似ている。また、センチリン複合体中のcynoPSMA分子と未結合のヒトPSMAとのCα原子の重ね合わせについての0.5Åのr.m.s.d.により示されるように(PBDコード2OOT、1.6Åの分解能における構造)、ヒトPSMAとカニクイザルPSMAとの間には高次の構造的類似性があり、センチリンの結合によって引き起こされる大きなコンフォメーション変化は見られない。興味深い点として、センチリンとの相互作用によるループコンフォメーションの安定化により、ループ領域541~547はカニクイザルタンパク質においてのみ見えている。
【0224】
センチリン/PSMAの結合部位は、結合残基の位置を高い信頼度で決定することができる2Fobs-Fcalc電子密度マップによってよく定義されている。B鎖とC鎖(それぞれPSMA鎖及びセンチリン鎖)との間の相互作用についてのみ、以下のセクションで述べることとする。
【0225】
H10センチリンは、PSMA活性部位の近くの領域に結合し(図2A)、約1,170ÅのcynoPSMAの面積を覆っている。詳細には、センチリンは、cynoPSMAを、図3及び4に示されるようにプロテアーゼ(Y460、F488、K499~P502、P504、R511、K514、N540~E542、及びN544~F546)、頂端(残基118)及び螺旋状(残基K610、N613、及びI614)ドメインにおいて認識する。
【0226】
センチリンの4本の鎖からなるβシートの面は、PSMA表面上に充填され、CDループが活性部位の入口の奥深くに挿入されている(図2B及び2C)。詳細には、PSMA結合に関与するH10センチリン残基は、C(A32及びG34)、D(V46)、F(G64、P68、Y70、及びA72)及びG(S84-I86)β鎖、並びにCD(W36、W38-D41、E43、及びA44)及びFGループ(W79、F81、及びP82)内に位置している。残基D39、D40、D41、及びE43は、センチリンのCDループに負電荷を与え、これらの残基が活性部位内の亜鉛イオンにつながる深さ約20Åの正に帯電した漏斗状部分内に挿入されることで、漏斗状部分内への基質の入り込み及びPSMA酵素活性をブロックするものと考えられる(図2B及び2C)。しかしながら、センチリンは、亜鉛イオン又は亜鉛イオンに配意している残基と直接的には相互作用しない。
【0227】
保存されたPSMA残基W541、Y460、F488、P502及びP504は、センチリン残基W36、P68、Y70、W79、F81、及びP82との結合部位にわたって芳香族クラスターを形成する(図3A)。保存されたR511は、結合部位及びセンチリンの4本の鎖からなるβシートの中心残基である水素結合Y70の中心位置にある。図3Bは、パラトープ及びエピトープの残基の図を示したものである。
【0228】
ヒトPSMAとカニクイザルPSMAとは、S613Nの変化を除いて97%同一であり、H10と相互作用するすべての残基は2つの種間で保存されている(図4)。S613Nの変化は、cynoPSMAのN613のグリコシル化、及び、ヒト酵素には存在しない炭水化物とセンチリン残基E66、I86、T88(F及びGβ鎖)との間のファンデルワールス接触の獲得につながる。
【0229】
複合体形成におけるセンチリン残基
結合部位の外側の異なるH10センチリン残基は、小分子(毒性弾頭分子)と結合させるために、PSMAの結合又はセンチリンのフォールディングを妨げることなく改変することができる。システインは、これまでにC末端(Hisタグの後)並びに位置R11、E53、及びK62に配置され、これらの位置で弾頭分子と結合させられているが、これらの変異体のすべてが同様に強力な細胞毒性を示している。更に、BCループ内の残基T22、D25、及びA26、並びにDEループ内の末端残基N6、及びS52は、突然変異誘発後に化学的複合体化を行うには潜在的によい部位である(図5)。これらの溶媒に露出した残基は、センチリン/PSMA界面から離れており、構造的に柔軟な領域に位置している。
【0230】
更に、N末端領域及びC末端領域は、両方とも他のタンパク質ドメインとの融合が行えるよう自由となっている。N末端は、PSMAプロテアーゼドメインの方向に向いており、融合リンカーが届くことができるようになっている一方で、やはりアクセス可能なC末端はPSMAの螺旋状ドメインの方向を向いている。センチリンの融合パートナーまでの最適なリンカーの長さは、融合パートナーの構造及び標的分子上のその結合部位の位置によって決まる。
【0231】
作用機序
H10センチリンは、センチリン/PSMA複合体が内在化されることから、前立腺癌細胞内に弾頭分子(毒性小分子、核酸など)を標的化によって送達させるための候補物質である。更に、H10センチリンは、多重特異性型とされる場合に、前立腺癌細胞に免疫細胞を再び方向付けるための候補物質である。
【0232】
H10センチリンは、PSMAの酵素活性を阻害するとも考えられており、細胞の適応性及び生存率の低下に寄与している可能性がある。センチリン/cynoPSMA構造は、活性部位の入口に結合したセンチリンを示しており、これにより、立体障害及び結合部位に対する直接的競合によりPSMAと基質との相互作用を妨げうる。
【0233】
実施例8:更なる抗PSMAセンチリン変異体の作製
選択した抗PSMAセンチリンを、親センチリンの特性を改良するために更に操作した。PSMAに結合するFN3ドメインを、上記に述べたライブラリを用いて作製し、そのPSMAとの結合について試験した。
【0234】
【表13-1】
【0235】
【表13-2】
【0236】
【表13-3】
【0237】
【表13-4】
【0238】
【表13-5】
【0239】
【表13-6】
【0240】
【表13-7】
【0241】
【表13-8】
【0242】
実施例9:蛍光色素と結合させた抗PSMAセンチリンを使用した腫瘍細胞上のPSMA発現の検出
本実施例は、蛍光色素と結合させた抗PSMAセンチリンによる、細胞上に存在するPSMAの検出を示すものである。アミノ酸53に遊離システインを有する、C末端にHisタグを付加した抗PSMAセンチリンP233FR9_H10(配列番号49)を、R-フィコエリトリン(PE)(プロザイム社(Prozyme)、カタログ番号PB31)と結合させた。PEをsulfo-SMCC(ピアース社(Pierce)、カタログ番号22122)を用いて60分間活性化させ、活性化したPEを遊離sulfo-SMCCから、Sephadex G25及びPBS/EDTAバッファーを使用したゲル濾過クロマトグラフィーにより分離した。センチリンをTCEP(シグマ社(Sigma)、カタログ番号646547)を用いて30分間還元した。還元したセンチリンを遊離TCEPから、Sephadex G25及びPBS/EDTAバッファーを使用したゲル濾過クロマトグラフィーにより分離した。活性化したR-PEを還元センチリンと90分間共有結合させた後、N-エチルマレイミド(シグマ社(Sigma)、カタログ番号04260)で20分間、クエンチした。「PE結合センチリン」を、AKTA explorer FPLC(ゼネラル・エレクトリック社(General Electric))上で、東ソー株式会社製TSKゲルG3000SWカラムを使用し、100mMリン酸ナトリウム、100mM硫酸ナトリウム、0.05%アジ化ナトリウム(pH6.5)中でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により精製した。
【0243】
PE結合センチリンを、フローサイトメトリー及びCellSearch血液循環腫瘍細胞(CTC)アッセイにより、PSMA陽性及び陰性細胞化ブロックを使用して感受性及び特異性について試験した。以下の前立腺癌細胞株をATCCより購入し、抗PSMAセンチリンの特異性を評価するために使用した。すなわち、LNCaP(高PSMA発現)、22Rv1(低PSMA発現)及びPC3(PSMA発現なし)である。
【0244】
フローサイトメトリーによる細胞株上のPSMAの検出
標準的な細胞培養手順により前立腺癌細胞株を収穫した。細胞(約30,000個)を、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含んだ0.1mLのPBS中で、PE結合センチリンと20分間染色した。バイオレジェンド社(Biolegend)(クローンLNI-17、カタログ番号342504)より入手した抗PSMA抗体-PE複合体を、ポジティブコントロールとして使用した。インキュベーション後、3mLのPBS/BSAバッファーを加え、未結合のPE複合体を800Gで5分間遠心して除去した。上清を吸引して、0.3mlのPBS/BSA中に、細胞を再懸濁した。ビーディー・バイオサイエンシーズ社(BD Biosciences)のFACSCaliburにより試料を分析した。各細胞株からのPSMA染色の平均蛍光強度(MFI)を測定し、抗PSMA抗体によるMFIと比較した。MFIは、PSMAの発現レベルと直接的な関係を示し、高PSMA発現細胞株からは高いMFIが得られる。図6は、抗PSMA抗体-PEによるMFI値と比較した、PE結合センチリンにより検出された異なる細胞株からのMFI値を示している。
【0245】
これらの結果は、PE結合センチリンがPSMA陽性細胞株と結合し、PSMA陰性細胞と非特異的に結合しないことを示している。MFIは、予想されたように、低PSMA発現細胞株(22Rv1)による低いMFIと比較して、高PSMA発現細胞(LNCaP)ではより高くなっている。PSMA陰性細胞株(PC3)によるMFIは、バックグラウンドシグナルに近い。更に、異なる細胞株との結合におけるPE結合センチリンEの性能は、センチリンと抗体複合体の両方において同様のMFI値が得られたことから、抗PSMA抗体-PEと同様である。この例は、PT結合センチリンが、腫瘍細胞上のPSMAの検出において感受性及び特異性を示すことを示している。
【0246】
循環腫瘍細胞アッセイによるPSMAの検出
上記の結果を、CELLSEARCHアッセイによりPE結合センチリンを試験し、7.5mLの血液から循環腫瘍細胞(CTC)を検出し、計数することによって更に確認した。循環腫瘍細胞の計数は、CELLSEARCH(ベリデックス社(Veridex LLC)、米国、ニュージャージー州、ラリタン)を使用し、製造者のプロトコール及びトレーニングに従って行った。CELLSEARCHアッセイでは、磁性流体磁気粒子と結合させた抗EpCAMを使用して、フルオロセインと結合させたサイトケラチン8、18及び19に特異的な抗サイトケラチンを捕捉することによりCTCを可視化する。CELLSEARCHアッセイは、試料の調製にCELLSEARCH AutoPrepを使用し、分析にはCELLTRACKS Analyzer II(登録商標)(CTA II)を使用する。CTA IIは、4色の半自動化蛍光顕微鏡であり、CTCを特定及び計数するために3色を使用する。CTA IIの第4の色は、更なる対象とするマーカーによってCTCの表現型を決定するために使用することができる。この例では、組織培養した腫瘍細胞を正常血液に加えることによって血液中のCTCを再現した。約500個の腫瘍細胞(LNCaP、22Rv1、PC3~9又はSKBR3細胞)を、CELLSAVEチューブ(ジャンセン・ダイアグノスティクス社(Janssen Diagnostics))中に採取した7.5mlの正常なドナー血液中に加えた。また、乳癌細胞株(SKBR3)もPSMA陰性細胞株として使用した。各試料を、CELLSEARCH CXCキット及びマーカーとしてPE結合センチリンを使用し、AutoPrep上で処理した。AutoPrep試料調製システムは、抗EpCAM磁性流体を使用して腫瘍細胞を捕捉することによって腫瘍細胞を濃縮するものである。CTCを濃縮した試料を、有核細胞を識別するための核酸色素(DAPI)、腫瘍細胞を識別するためのフルオレセインイソチオシアナート(FITC)と結合させた抗サイトケラチン抗体、及び白血球を識別するためのアロフィコシアニン(APC)と結合させた抗白血球抗体により染色した。試料を0.32mlの最終体積にまで処理し、MagNest(登録商標)細胞提示装置内に入れたまま、試料チャンバに移した。MagNest(登録商標)装置は、CELLTRACKS Analyzer II(登録商標)による分析用に磁気標識した細胞を提示するものである。CTAIIを用いて試料を分析してCTCを計数し、CTC上のPSMAを検出した。この分析装置は自動的に試料を分析し、DAPI及びサイトケラチンについて陽性の候補腫瘍細胞をレビュー用のサムネイル画像として提示するものである。CellSearchアッセイにおいてPE結合センチリンで染色した腫瘍細胞から得られた結果を、図7に示す。PT結合センチリンで染色したCTCの画像を、PSMA-PEとして示した列に示す。
【0247】
図7Aは、LNCaP腫瘍細胞上のPSMAの発現を示しており、これらの細胞の100%がPSMAについて陽性である。低PSMA発現細胞株(22Rv1)は、PSMAについて26%が陽性である(図7B)。これに対して、PSMA陰性細胞株(PC3~9及びSKBR3)は、PSMAについて陰性である(図7C及び7D)。これらの結果は、フローサイトメトリーの結果と一致している。この例では、抗PSMAセンチリンを使用してCTC上のPSMAの発現を検出できることが示され、抗PSMAセンチリンの感受性及び特異性が更に確認された。

以下の態様を包含し得る。
[1] 配列番号144のヒト前立腺特異的膜抗原(PSMA)に特異的に結合する、単離FN3ドメイン。
[2] 前記FN3ドメインが、配列番号32のマカカ・ファシキュラリス(Macaca Fascicularis)(カニクイザル)PSMA、又は配列番号33のパン・トログロダイテス(Pan troglodytes)(チンパンジー)PSMAと交差反応する、上記[1]に記載の単離FN3ドメイン。
[3] a)前記FN3ドメインが、配列番号1のテンコン配列又は配列番号4のテンコン27の配列に基づいたものであり、前記配列番号1又は配列番号4が、場合により、残基位置11、14、17、37、46、73、及び/又は86に置換を有するか、あるいは、
b)前記FN3ドメインが、配列番号2、3、5、6、7又は8の配列を含むライブラリから単離される、上記[2]に記載の単離FN3ドメイン。
[4] 第2の分子と結合させた、上記[1]~[3]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[5] 前記第2の分子が、細胞毒性物質、検出可能な標識、ポリエチレングリコール、又は核酸である、上記[4]に記載の単離FN3ドメイン。
[6] 前記細胞毒性物質が、アウリスタチン、モノメチルアウリスタチンフェニルアラニン、ドラスタチン(dolostatin)、化学療法剤、薬剤、増殖阻害剤、毒素、又は放射性同位体である、上記[5]に記載の単離FN3ドメイン。
[7] 前記検出可能な標識が、放射性同位体、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテンである、上記[5]に記載の単離FN3ドメイン。
[8] 前記FN3ドメインが、配列番号1の残基位置6、11、22、25、26、52、53、62に対応する少なくとも1つの残基位置、又はC末端にシステイン残基を有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[9] 前記FN3ドメインが、ヒトPSMAの酵素活性を阻害する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[10] 前記FN3ドメインが、ヒトPSMAとの結合について配列番号41のFN3ドメインと競合する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[11] 前記FN3ドメインが、ヒトPSMAの領域KKSPSPEFSGMPRISK(配列番号159)及びNWETNKF(配列番号160)に結合する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[12] 前記FN3ドメインが、配列番号41のアミノ酸配列と89%同一であるか、又は配列番号41のアミノ酸配列と比較した場合に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11個の置換を有する、アミノ酸配列を有する、上記[1]~[11]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[13] 前記FN3ドメインが、配列番号35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、又は140のアミノ酸配列を有する、上記[1]~[12]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[14] 前記FN3ドメインのN末端にメチオニンを更に有する、上記[13]に記載の単離FN3ドメイン。
[15] 半減期延長部分と結合された、上記[1]~[14]のいずれかに記載の単離FN3ドメイン。
[16] 前記半減期延長部分が、アルブミン結合分子、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、アルブミン変異体、又は免疫グロブリンのFc領域の少なくとも一部である、上記[15]に記載の単離FN3ドメイン。
[17] 上記[1]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインをコードする、単離ポリヌクレオチド。
[18] 配列番号156、157、又は158のポリヌクレオチド配列を有する、単離ポリヌクレオチド。
[19] 上記[17]又は[18]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[20] 上記[19]に記載のベクターを含む、単離宿主細胞。
[21] 上記[1]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインを生成する方法であって、上記[20]に記載の単離宿主細胞を、前記FN3ドメインが発現されるような条件下で培養することと、前記FN3ドメインを精製することと、を含む、方法。
[22] 上記[1]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメイン及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
[23] PSMAの過剰発現によって特徴付けられる癌を有する対象を治療する方法であって、細胞毒性物質と結合させた上記[1]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインの治療有効量を、前記癌を治療するうえで充分な時間にわたって、治療を要する患者に投与することを含む、方法。
[24] 前記癌が、固形腫瘍、前立腺癌、大腸直腸癌、胃癌、腎明細胞癌、膀胱癌、肺癌、又は腎臓癌である、上記[23]に記載の方法。
[25] 上記[5]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインを含む、診断用キット。
[26] 上記[1]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインを含む、癌診断又は捕捉剤。
[27] 前記FN3ドメインが、配列番号49の位置6、11、22、25、26、52、53、54、又は62に対応する少なくとも1つの残基位置にシステイン残基を配置することによって改変された、配列番号49の配列を有する、上記[26]に記載の診断又は捕捉剤。
[28] 前記改変されたシステインが、R-フィコエリトリン(PE)と結合させられる、上記[26]に記載の診断剤。
[29] 生体試料中のPSMA発現細胞を検出する方法であって、前記生体試料を上記[26]~28]のいずれかに記載の診断試薬で処理することと、前記生体試料の、前記診断剤の前記FN3ドメインとの結合を評価することと、を含む、方法。
[30] 前記診断剤が、上記[28]に記載の剤である、上記[29]に記載の方法。
[31] 生体試料中のPSMA発現細胞を単離する方法であって、前記生体試料を上記[26]又は[27]に記載の捕捉剤で処理することを含む、方法。
[32] 対象内のPSMA発現腫瘍細胞を検出する方法であって、前記対象に上記[4]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインを投与することと、前記対象内における、前記FN3ドメインのPSMA発現腫瘍細胞との結合を検出することと、を含む、方法。
[33] PSMA発現腫瘍細胞に治療分子を送達する方法であって、上記[5]~[16]のいずれかに記載のFN3ドメインを、PSMA発現腫瘍を有する対象に投与することを含む、方法。
【0248】
配列
配列番号1=元のテンコン配列
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAEFTT
【0249】
配列番号2=TCL1ライブラリ
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV(X)7~12PLSAEFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、Xは、任意のアミノ酸であり、
、X、X10、X11及びX12は、任意のアミノ酸又は欠失である。
【0250】
配列番号3=TCL2ライブラリ
LPAPKNLVVSEVTEDSLRLSWXSFLIQYQESEKVGEAINLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX10111213SX1415LSAEFTT;
ただし、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
は、Phe、Ile、Leu、Val、又はTyrであり、
は、Asp、Glu、又はThrであり、
は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
10は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
11は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
12は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
13は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
14は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValであり、
15は、Ala、Arg、Asn、Asp、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、又はValである。
【0251】
配列番号4=安定化したテンコン
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAIFTT
【0252】
配列番号5=TCL7ライブラリ(FG及びBCループ)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWXFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVX10111213141516171819SNPLSAIFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15及びX16は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W又はYであり、
、X、X、X17、X18及びX19は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0253】
配列番号6=TCL9(FGループ)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGV X101112SNPLSAIFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、及びXは、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、又はYであり、
、X、X10、X11、及びX12は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、又は欠失である。
【0254】
TCL14ライブラリ(配列番号7):
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFXIXYXEXGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYXVXIX10GVKGGX1112SX13PLSAIFTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、及びX13は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、W、Y、C、又はMである。
【0255】
TCL24ライブラリ(配列番号8)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFXIXYXEXGEAIXLXVPGSERSYDLTGLKPGTEYX10VX11IX12GVKGGX1314SX15PLX16AX17FTT;
ただし、
、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、及びX17は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、P、Q、R、S、T、V、Y、又はWである。
【0256】
配列番号9=Sloning-FOR
GTGACACGGCGGTTAGAAC
【0257】
配列番号10=Sloning-REV
GCCTTTGGGAAGCTTCTAAG
【0258】
配列番号11=POP2250
CGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATAC
【0259】
配列番号12=DigLigRev
CATGATTACGCCAAGCTCAGAA
【0260】
配列番号13=BC9
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0261】
配列番号14=BC8
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0262】
配列番号15=BC7
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0263】
配列番号16=BC6
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTGAAGTTACCGAAGACTCTCTGCGTCTGTCTTGGNNNNNNNNNNNNNNNNNNTTYGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCAACCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTCTTAGAAGCTTCCCAAAGGC
【0264】
配列番号17=130mer-L17A CGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTG
【0265】
配列番号18=POP222ext
CGG CGG TTA GAA CGC GGC TAC AAT TAA TAC
【0266】
配列番号19=LS1114
CCA AGA CAG ACG GGC AGA GTC TTC GGT AAC GCG AGA AAC AAC CAG GTT TTT CGG CGC CGG CAG CAT GGT AGA TCC TGT TTC
【0267】
配列番号20=LS1115
CCG AAG ACT CTG CCC GTC TGT CTT GG
【0268】
配列番号21=LS1117
CAG TGG TCT CAC GGA TTC CTG GTA CTG GAT CAG GAA AGA GTC GAA
【0269】
配列番号22=SDG10
CATGCGGTCTCTTCCGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTCCTGACCGTTCCGGGT
【0270】
配列番号23=SDG24
GGTGGTGAAGATCGCAGACAGCGGGTTAG
【0271】
配列番号24=POP2222
CGGCGGTTAGAACGCGGCTAC
【0272】
配列番号25=SDG28
AAGATCAGTTGCGGCCGCTAGACTAGAACCGCTGCCACCGCCGGTGGTGAAGATCGCAGAC
【0273】
配列番号26=FG12
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0274】
配列番号27=FG11
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0275】
配列番号28=FG10
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0276】
配列番号29=FG9
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0277】
配列番号30=FG8
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0278】
配列番号31=FG7
GTGACACGGCGGTTAGAACGCGGCTACAATTAATACATAACCCCATCCCCCTGTTGACAATTAATCATCGGCTCGTATAATGTGTGGAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGGAAACAGGATCTACCATGCTGCCGGCGCCGAAAAACCTGGTTGTTTCTCGCGTTACCGAAGACTCTGCGCGTCTGTCTTGGACCGCGCCGGACGCGGCGTTCGACTCTTTCCTGATCCAGTACCAGGAATCTGAAAAAGTTGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTTCTGAACGTTCTTACGACCTGACCGGTCTGAAACCGGGTACCGAATACACCGTTTCTATCTACGGTGTTNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTCTAACCCGCTGTCTGCGATCTTCACCACCGGCGGTCACCATCACCATCACCATGGCAGCGGTTCTAGTCTAGCGGCCGCAACTGATCTTGGC
【0279】
配列番号32=PSMW1(N’-AviTag-HisTag-GS-CynoPSMA_ECD)
KSSSEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLHNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELTHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPAGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGATGVILYSDPDDYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGMAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSASPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTSEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGMLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVYNLTKELESPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSSYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSVVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYNISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLRDFDKSNPILLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSQAWGEVKRQISIATFTVQAAAETLSEVA
【0280】
配列番号33=PSMW8(N’-AviTag-HisTag-GS-Chimp PSMA_ECD)
KSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVLDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRHGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVYNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYNISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFTERLQDFDKSNPILLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGDVKRQISVAAFTVQAAAETLSEVA
【0281】
配列番号34:ヘキサヒスチジンタグ
HHHHHH
【0282】
配列番号35=P258AR6P1071_G03
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWDIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0283】
配列番号36=P258AR6P1070_A05
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0284】
配列番号37=P258AR6P1071_F04
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWVIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0285】
配列番号38=P258AR6P1070_F09
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTIDEQRDWFESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0286】
配列番号39=P258AR6P1071_D02
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWAIDEQRDWFESFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSNPLSAIFTT
【0287】
配列番号40=P229CR5P819_H11
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWDIDEQRDWFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVYHVYRSSNPLSAIFTT
【0288】
配列番号41=P233FR9_H10
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0289】
配列番号42=P233FR9P1001_B5-5
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFTIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0290】
配列番号43=P233FR9P1001_H3-1
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFPIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYHVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0291】
配列番号44=P233FR9P1001_D9
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFPIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYWVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0292】
配列番号45=P234CR9_A07
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWGEQFTIFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGASGYEWFHAFGSSNPLSAIFTT
【0293】
配列番号46=P234CR9_H01
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWEWWVIPGDFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYTVSIYGVVNSGQWNDTSNPLSAIFTT
【0294】
配列番号47=P233FR9_H10(C末端cys)
lpapknlvvsrvtedsarlswtapdaafdsfaigywewdddgeaivltvpgsersydltglkpgteypvyiagvkggqwsfplsaifttc
【0295】
配列番号48=P233FR9_H10(K62C)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLCPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0296】
配列番号49=P233FR9_H10(E53C)
LPAPKNLVVSRVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSCRSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0297】
配列番号50=P233FR9_H10(R11C)
LPAPKNLVVSCVTEDSARLSWTAPDAAFDSFAIGYWEWDDDGEAIVLTVPGSERSYDLTGLKPGTEYPVYIAGVKGGQWSFPLSAIFTT
【0298】
配列番号51=非標的化センチリン(K62C)
LPAPKNLVVSEVTEDSARLSWTAPDAAFDSFLIQYQESEKVGEAIVLTVPGSERSYDLTGLCPGTEYTVSIYGVKGGHRSNPLSAIFTTGGHHHHHH
【配列表1】
【0299】
【0300】
配列番号53=タグ無しソルターゼA
SKPHIDNYLHDKDKDEKIEQYDKNVKEQASKDKKQQAKPQIPKDKSKVAGYIEIPDADIKEPVYPGPATREQLNRGVSFAEENESLDDQNISIAGHTFIDRPNYQFTNLKAAKKGSMVYFKVGNETRKYKMTSIRNVKPTAVEVLDEQKGKDKQLTLITCDDYNEETGVWETRKIFVATEVK
【0301】
配列番号54:TEVプロテアーゼ切断部位
ENLYFQS
【0302】
配列番号55:テンコンのFGループ
KGGHRSN
【0303】
配列番号56:BCループ
DIDEQRDW
【0304】
配列番号57:BCループ
TIDEQRDW
【0305】
配列番号58:BCループ
VIDEQRDW
【0306】
配列番号59:BCループ
AIDEQRDW
【0307】
配列番号60:BCループ
EWWVIPGD
【0308】
配列番号61:BCループ
GEQFTI
【0309】
配列番号62:BCループ
TAPDAA
【0310】
配列番号63:Cループ
FDSFLIQYQE
【0311】
配列番号64:Cループ
FESFLIQYQE
【0312】
配列番号65:Cループ
FDSFAIGYWE
【0313】
配列番号66:Cループ
FDSFPIGYWE
【0314】
配列番号67:Cループ
FDSFTIGYWE
【0315】
配列番号68:CDループ
SEKVGE
【0316】
配列番号69:CDループ
WDDDGE
【0317】
配列番号70:Fループ
TEYTVSIYGV
【0318】
配列番号71:Fループ
TEYTVSIYG
【0319】
配列番号72:Fループ
TEYPVYIAGV
【0320】
配列番号73:Fループ
TEYWVYIAGV
【0321】
配列番号74:Fループ
TEYHVYIAGV
【0322】
配列番号75~140は、上記表に示す。
【0323】
配列番号141:完全長cynoPSMA
MWNLLHETDSAVATARRPRWLCAGALVLAGGFFLLGFLFGWFIKSSSEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLHNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELTHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPAGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGATGVILYSDPDDYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGMAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSASPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTSEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGMLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVYNLTKELESPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSSYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSVVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYNISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLRDFDKSNPILLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKY
>142リンカー
AEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKAAA
>143ヒトPSMA ECD
KSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVHNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYSISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLQDFDKSNPIVLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGEVKRQIYVAAFTVQAAAETLSEVA
>144シグナル配列を有するヒトFL PSMA
MWNLLHETDSAVATARRPRWLCAGALVLAGGFFLLGFLFGWFIKSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVHNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYSISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLQDFDKSNPIVLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGEVKRQIYVAAFTVQAAAETLSEVA
>145テネイシンCの3番目のFN3ドメイン
DAPSQIEVKDVTDTTALITWFKPLAEIDGIELTYGIKDVPGDRTTIDLTEDENQYSIGNLKPDTEYEVSLISRRGDMSSNPAKETFTT
>146フィブコン
Ldaptdlqvtnvtdtsitvswtppsatitgyritytpsngpgepkeltvppsstsvtitgltpgveyvvslyalkdnqespplvgtqtt
>147フィブロネクチンの10番目のFN3ドメイン
VSDVPRDLEVVAATPTSLLISWDAPAVTVRYYRITYGETGGNSPVQEFTVPGSKSTATISGLKPGVDYTITVYAVTGRGDSPASSKPISINYRT
>148
GSGS
>149
GGGSGGGS
>150
GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS
>151
APAP
>152
APAPAPAPAP
>153
APAPAPAPAPAPAPAPAPAP
>154
APAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAPAP
>155アルブミン変異体
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQSPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
>156 cDNA H10
CTGCCAGCCCCGAAGAATTTGGTCGTTTCCCGTGTCACTGAGGACTCTGCACGTCTGAGCTGGACCGCACCGGACGCGGCGTTCGACAGCTTTGCAATCGGCTACTGGGAGTGGGATGATGACGGCGAGGCCATTGTGCTGACCGTTCCGGGTAGCGAGCGCAGCTACGATCTGACCGGTCTGAAGCCGGGTACGGAATATCCGGTGTATATTGCGGGCGTGAAGGGTGGCCAGTGGAGCTTCCCGCTGAGCGCGATCTTTACCACC
>157 cDNA P258AR6P1071_D02
CTGCCGGCTCCGAAAAACCTGGTCGTTTCCCGTGTCACTGAAGATTCTGCACGCTTGAGCTGGGCGATCGACGAGCAGCGTGACTGGTTTGAGAGCTTCCTGATTCAGTATCAAGAATCGGAAAAAGTTGGCGAGGCCATCGTGCTGACCGTTCCGGGTAGCGAGCGCAGCTATGATCTGACGGGTCTGAAGCCAGGCACCGAGTATACGGTGAGCATTTACGGTGTCTACCATGTGTACCGTAGCAATCCGCTGAGCGCGATCTTCACCACC
>158 cDNA
P233FR9P1001_H3-1
CTGCCAGCCCCGAAAAACTTAGTTGTCTCCCGCGTGACCGAAGATTCTGCTCGTCTGAGCTGGACTGCACCGGACGCGGCGTTCGACAGCTTTCCGATTGGCTACTGGGAGTGGGATGATGACGGTGAAGCGATCGTGCTGACCGTTCCGGGTAGCGAGCGTAGCTATGACCTGACGGGTTTGAAACCTGGTACCGAGTATCACGTTTACATTGCGGGCGTCAAGGGTGGCCAGTGGTCGTTCCCGCTGAGCGCAATCTTTACGACC
>159 PSMAエピトープ
KKSPSPEFSGMPRISK
>160 PSMAエピトープ
NWETNKF
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
【配列表】
0007366518000001.app