IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダブルグッド アクチエボラグの特許一覧

特許7366540メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物
<>
  • 特許-メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物 図1
  • 特許-メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物 図2
  • 特許-メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物 図3
  • 特許-メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物 図4
  • 特許-メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物 図5
  • 特許-メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】メタボリックシンドローム治療用栄養補助食品および食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/16 20160101AFI20231016BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231016BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231016BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20231016BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L2/00 F
A23L2/00 V
A23L2/52
A23L33/17
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018526876
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2016079019
(87)【国際公開番号】W WO2017089612
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-11-25
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】15196852.6
(32)【優先日】2015-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518178006
【氏名又は名称】ダブルグッド アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】DOUBLEGOOD AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】エステ,リキャルド
(72)【発明者】
【氏名】エストマン,エリン
(72)【発明者】
【氏名】ビョーク,インニェル
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】三上 晶子
【審判官】磯貝 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519842(JP,A)
【文献】特表2005-536215(JP,A)
【文献】化学と生物,1981,Vol.19,No.5,pp.278-285
【文献】中屋 豊、図解入門 よくわかる栄養学の基本としくみ、2015年6月1日第1版第11刷、pp.44-45,48-53
【文献】吉原大二 他、窒素源の吸収に及ぼすペプチドとアミノ酸の共存効果、日本栄養・食糧学会誌、1997年、Vol.50,No.6,pp.411-416
【文献】石垣幸三、お茶の化学成分,味・香りと茶樹の栽培、化学と生物、1981年、Vol.19,No.5,pp.278-285
【文献】七訂 食品成分表 2016 資料編、2016年4月1日、pp.150,156
【文献】四訂食品成分表、1994年4月、pp.318-319,330-335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L,A23F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロムと、5つのアミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジンとを含む一投与量の栄養補助食品であって、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジンが前記一投与量の栄養補助食品に存在する唯一のアミノ酸群であり、5つのアミノ酸の合計含有量が、前記一投与量の栄養補助食品中1.75乃至3.5gであり、クロムの含有量が、前記一投与量の栄養補助食品中4.5乃至61μgであることを特徴とする一投与量の栄養補助食品。
【請求項2】
請求項1に記載の一投与量の栄養補助食品において、前記5つのアミノ酸の合計含有量が、前記一投与量の栄養補助食品中1.75乃至2.6g、又は2.6乃至3.5gであることを特徴とする一投与量の栄養補助食品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の一投与量の栄養補助食品において、前記クロムの含有量が、前記一投与量の栄養補助食品中4.5乃至31.1μg、例えば、15.5乃至31.1μgであることを特徴とする一投与量の栄養補助食品。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の一投与量の栄養補助食品において、ロイシンが10-50%、イソロイシンが5-35%、バリンが10-25%、スレオニンが10-35%、リジンが10-25%の量で存在し、このパーセンテージは、前記一投与量の栄養補助食品中の5つのアミノ酸の合計含有量に基づいて計算されており、前記一投与量の栄養補助食品中の5つのアミノ酸のパーセンテージの合計が100%であることを特徴とする一投与量の栄養補助食品。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の一投与量の栄養補助食品において、前記5つのアミノ酸の合計含有量が、前記一投与量の栄養補助食品中2.6gであることを特徴とする一投与量の栄養補助食品。
【請求項6】
請求項5に記載の一投与量の栄養補助食品において、前記クロムの含有量が、栄養補助食品中31.1μgであることを特徴とする一投与量の栄養補助食品。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の一投与量の栄養補助食品の、前記一投与量の栄養補助食品を含む食品組成物の製造における使用。
【請求項8】
水と、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の一投与量の栄養補助食品とからなる食品組成物であって、前記5つのアミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジンが、遊離アミノ酸又は最大10のアミノ酸を含むペプチドとして提供されている前記食品組成物中の唯一のアミノ酸群であることを特徴とする食品組成物。
【請求項9】
メタボリックシンドロームに関連する疾患若しくは状態の治療、制御若しくは予防、糖尿病の治療若しくは制御、肥満の治療、制御若しくは防止、満腹感の促進、体重減少の促進、又は、健康体重の維持の促進方法に用いるための組成物であって、前記組成物が:(i)5つのアミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジン;並びに(ii)クロムを含み、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジンが前記組成物に存在する唯一のアミノ酸群であり、前記組成物が、合計で1.75乃至3.5gの5つのアミノ酸及び4.5乃至61μgのクロムが、対象が食事を摂取する前に、あるいは食事の摂取と同時に、対象に投与される、あるいは対象によって摂取されるように用いるためのものであることを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項に記載の組成物において、前記組成物が、少なくとも0.5gの前記5つのアミノ酸、例えば、少なくとも1.3gの5つのアミノ酸が、食事の前1秒以内、30秒以内、1分以内、3分以内、6分以内といった、20分以内に対象によって摂取される、あるいは対象に投与されるように用いるためのものであることを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項又は10に記載の組成物において、メタボリックシンドロームに関連する疾患若しくは状態の治療、制御若しくは予防、糖尿病の治療若しくは制御、肥満の治療、制御若しくは防止、満腹感の促進、体重減少の促進、又は、健康体重の維持の促進方法が、対象の食後血糖値を低減するステップを備えることを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物において、メタボリックシンドロームに関連する疾患若しくは状態の治療、制御若しくは予防、糖尿病の治療若しくは制御、肥満の治療、制御若しくは防止、満腹感の促進、体重減少の促進、又は、健康体重の維持の促進方法が、食後インスリン分泌を低減するステップ、及び/又は食後GLP-1レベルを増加させるステップも備えることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項乃至12のいずれか1項に記載の組成物において、前記組成物が、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の一投与量の栄養補助食品、または、請求項8に記載の食品組成物からなることを特徴とする組成物。
【請求項14】
請求項10に記載の組成物において、前記組成物が、少なくとも4.5μgのクロムが、食事の前1秒以内、30秒以内、1分以内、3分以内、6分以内といった、20分以内に対象によって摂取される、あるいは対象に投与されるように用いるためのものであることを特徴とする組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームの治療に適した栄養補助食品の分野に関する。特に、本発明は、クロムと、そのアミノ酸ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンのアミノ酸を含む栄養補助食品、メタボリックシンドロームの治療方法に用いる、この栄養補助食品と、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンのアミノ酸を含む食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(MetS)は、高血圧、高血糖、脂質異常症、及び肥満を含む代謝異常のクラスタであり、心臓血管疾患(CVD)や2型糖尿病(T2DM)のリスクを上げる。身近な証拠は、食後の高血糖を下げることが、糖尿病患者におけるCVDの発生率を低下させる重要な予防手段を構成するとを提言している。さらに、食後2時間経過後の血糖濃度の方が空腹時血糖値より将来のCVDリスクのより良い予測因子であることが示されていた。また、食後1時間の血糖値は、CVDのリスクを予測して、T2DMにおける厳格な食後血糖コントロールの心臓病予防効果を強化することが示されていた。近年では、無症状炎症が、MetS、T2DM、及びCVDの原因論における重要な要素として浮上してきた。この点に関して興味深いのは、高血糖が、炎症性マーカの放出をトリガすることがあり、律動高血糖は、慢性高血糖より重度の炎症であるとみられており、食後の高い血糖値レベルと無症状炎症との間の関係を表している。厳しい食後血糖値制御の予防能力も、食後の血糖値を下げることが知られているαグルコシダーゼであるアカルボーズによる治療介入から明らかである。結果的に、アカルボーズの治療は、耐糖能異常(IGT)の対象の糖尿病のリスクを顕著に下げた。いくつかの大規模な前向きのコホート研究からの証拠は、糖尿病の進行過程の初期、あるいは糖尿病を発症する前にでも、食後血糖値を下げることが行われたなら、T2DMやCVDの防止に大きな役割を果たすことがあると教示している。したがって、改善された食後高血糖の管理は、T2DMとIGTを患っている患者に対して利点となるとともに、一般人に対する一次的予防にもなるであろう。
【0003】
WO200784059には、アミノ酸混合物を含むタンパク質組成物が記載されており、このアミノ酸混合物は、アミノ酸部分の総量の約35乃至約90g/100gの量のロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、及びスレオニンを含んでいる。この組成物は、哺乳類の血糖値レベルのコントロールに有用である。しかしながら、このアミノ酸自体は、インスリン分泌促進剤であるため、食後のインスリン分泌を高めてしまう。
【0004】
WO2012177215には、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジンの5つのアミノ酸と、ミネラルクロムを含む栄養補助食品が記載されており、この栄養補助食品は、食後血糖値を有意に低減する一方で、食後のインスリン分泌も制限する。
【0005】
WO2005099483は、炭水化物、脂肪、タンパク質(多量の異なるアミノ酸を含む)、ビタミン、及びミネラルを含む摂取可能な組成物を開示しており、ここでは、この組成物の成分の相対量が、この製品の摂取がメタボリックシンドロームの影響を低減するように選ばれているとされている。
【0006】
EP1680967は、乳タンパク質、とりわけチロシンを含む栄養補助食品を開示している。
【0007】
WO2007049818は、様々な量のリジン、スレオニン、ロイシン、イソロイシン及びバリンを含む組成物を開示している。
【0008】
近年の進歩にもかかわらず、メタボリックシンドロームを治療するさらなる手段と方法が求められている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、メタボリックシンドロームを治療できる栄養補助食品と食品組成物を提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、食後血糖値を低下することができる栄養補助食品と食品組成物を提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、食後のインスリン分泌を低減しつつ食後血糖値を低下させることができる栄養補助食品と食品組成物を提供することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、より低いエネルギィ含量、及び/又は、より良好な味又はより味のない、栄養補助食品と食品組成物を提供することである。
【0013】
本発明の更なる目的は、メタボリックシンドロームの治療方法を提供することである。
【発明の概要】
【0014】
上述の目的のうち少なくとも一つ、あるいは以下の説明から明らかになる目的のうちの少なくとも一つは、本発明の第1の態様によれば、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの5つのアミノ酸を含む栄養補助食品によって達成され、この5つのアミノ酸の合計含有量は、6.9gより少なく、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンのみがこの栄養補助食品に存在し、また、これら5つのアミノ酸の合計含有量は、栄養補助食品の投与量当たり1.75乃至3.5gであり、クロムの含有量は、栄養補助食品の投与量当たり4.5ないし61μgである。
【0015】
このように、本発明は、以下に実施例においてさらに検証するように、低量、すなわち、1.75ないし3.5gの5つのアミノ酸が、実際、同量で食後の血糖値を下げる、あるいは、従来技術に開示されている、より量の多い同じ5つのアミノ酸より食後の血糖値を一層下げるとの、予測できない発見に基づいている。さらには、以下の実施例でさらに検証するように、この低量の5つのアミノ酸は、食後のインスリン分泌も低減して、これによって、食後に分泌されるインスリンの全身的作用を低減する。
【0016】
これらの低量の5つのアミノ酸は、栄養補助食品のカロリー含有量を下げ、栄養補助食品の味も少なくし、したがって、栄養補助食品をメタボリックシンドロームの予防又は治療に使用する場合に、栄養補助食品の摂取者が容易に受け入れることができる栄養補助食品を提供する。
【0017】
したがって、本発明の第1の態様の栄養補助食品によれば、食事の前にあるいは食事と同時に摂取する場合に、食後の血糖値を防止し、これによってメタボリックシンドロームの進行を防止又は遅らせる。さらに、本発明の第1の態様による栄養補助食品の摂取によって得られる低減された食後のインスリン分泌は、インスリン耐性の発達を防止又は遅らせる。
【0018】
上述の目的のうちの少なくとも一つ、あるいは以下の説明から明らかになる目的の少なくとも一つは、本発明の第1の態様による栄養補助食品を含む食品組成物によって達成される本発明の第2態様によるものであり、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの5つのアミノ酸は、遊離アミノ酸として、あるいは最大10のアミノ酸を含むペプチドとして提供される食品組成物中の最適なアミノ酸である。この食品組成物は、実質的に本発明の第1態様による栄養補助食品と水からなる。
【0019】
この食品組成物は、好ましくは、例えばテーブルウオーターといった水などの飲料として提供することができ、食事とともに摂取するドリンクとして出すことができる。
【0020】
上述の目的のうちの少なくとも一つ、あるいは以下の説明から明らかになる目的の少なくとも一つは、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの5つのアミノ酸によって達成される本発明の第3の態様及び第4の態様によるものであり、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は疾患を治療、制御、又は防止する、糖尿病の治療又は制御方法、肥満の治療、制御又は予防方法、満腹感の促進方法、体重減少の促進方法、健康体重の維持を促進する方法に使用され、1.75乃至3.5gの5つのアミノ酸が、対象が食事をとる前にあるいは食事と同時に、対象に投与され、あるいは対象によって摂取され、4.5乃至61μgのクロミウムも、対象が食事をとる前にあるいは食事と同時に、対象に投与されるあるいは対象によって摂取される。また、メタボリックシンドロームに関する疾病又は疾患を治療、制御、又は防止、糖尿病の治療又は制御方法、肥満の治療、制御又は予防方法、満腹感の促進方法、体重減少の促進方法、健康体重の維持を促進する方法であって、1.75乃至3.5gのロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの5つのアミノ酸が、対象が食事をとる前にあるいは食事と同時に、対象に投与され、あるいは対象によって摂取され、4.5乃至61μgのクロミウムも、対象が食事をとる前にあるいは食事と同時に、対象に投与されるあるいは対象によって摂取される。
【0021】
定義
本出願及び本発明のコンテキストでは、以下の定義が適用される。
用語「栄養補助食品」は、食物に対する身体(ヒトや動物などの哺乳類)反応に影響を及ぼす、摂取可能な(食べられる又は飲用できる)成分を意味する。栄養補助食品は、食物を準備する前、準備中、または準備の後に加えることができる。しかしながら、栄養補助食品は、それ自体を、好ましくは食事前にあるいは食事中に、又は食間に摂取することもできる。
【0022】
用語「食品組成物」は、食品、すなわち、摂取可能な(食べられる又は飲用できる)成分を意味する。
【0023】
用語「プロバイオティック細菌」は、投与後に投与を受けた哺乳類内で健康に良い効果を発する微生物を意味する。
【0024】
用語「インスリン抵抗症候群」(IRS)は、用語「メタボリックシンドローム」と交換可能に使用され、2型糖尿病と心臓血管疾病のリスクが高い人を特定する機能障害クラスタとメタボリックリスクを意味する。IRSとMetSは、以下の以上のうちの少なくとも二つで特徴づけることができる。インスリン抵抗、高インスリン血症、耐糖能異常、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧症、異常な肥満。
【0025】
用語「インスリン抵抗」(IR)は、インスリン受容体反応に欠陥がある症状、及び、グルコース調整能が低下している状態を意味する。
【0026】
用語「インスリン感受性」は、インスリン作用の度合いを意味し、正常なインスリン受容体反応と正常なグルコース代謝に対応するインスリン感受性症状を示す。
【0027】
用語「耐糖能異常(IGT)」は、前糖尿病症状を意味し、これは、空腹状態における低いインスリン感受性、及び/又はグルコース投与の後の正常値を超える食後血糖値反応によって特徴づけられる。
【0028】
用語「高インスリン血症」は、インスリン濃度が高い症状を意味する。
【0029】
用語「GI」は、グリセミック指数を意味し、これは炭水化物テスト製品に対する食後の血糖反応(曲線の下の増加している血糖値領域)である。炭水化物テスト製品は、対応する反応(曲線の下の増加している血糖値領域)のパーセンテージとして、同じ対象が摂取した基準製品又は純粋グルコースの炭水化物と等量の値で、表される。
【0030】
用語「血糖プロファイル」、GPは食物によって引き起こされる上昇グルコースピーク(分/mM)で除した上昇食後血糖反応の期間(分)として定義される。GPは、GIに比べて急性の食後インスリンの必要性、主観的満腹度、及びセカンドミールの自発的食物摂取を判断する良好な予測因子である。(Rosen et al、Nutrition Journal 2009参照)
【0031】
本発明のコンテキストにおいて、「治療する」は、前から存在する疾病の症状、急性又は慢性、あるいは反復性症状を軽減することを意味する。
【0032】
本発明のコンテキストにおいて、「制御する」は、前から存在する疾病の状態、急性又は慢性、あるいは反復性症状の更なる悪化を防止する、又は、前から存在する疾病の症状、急性又は慢性、あるいは反復性症状の兆候又は影響を少なくするあるいは制限することを意味する。
【0033】
本発明のコンテキストにおいて、「防止する」は、危険のリスク又は可能性を少なくすること、又は疾病状態の診断に及ぶと解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
図1図1は、差分テストと基準食に反応した血糖値の平均(±SEM)食後上昇変化(Δ)を示す。ここで、n=16(5AACr-medについてはn=15)。
図2図2は、差分テストと基準食に反応した血清インスリンの平均(±SEM)食後上昇変化(Δ)を示す。ここで、n=16(5AACr-medについてはn=15)。
図3図3は、差分テストと基準飲料と共に供された混合食に反応した血漿GLP-1の平均(±SEM)食後上昇変化(Δ)を示す。ここで、n=16(すべての時点における5AACr-med、及び60分の時点における5AACr-high及び5AACr-lowについてはn=15)。
図4図4は、差分テストと基準飲料と共に供された混合食の摂取後、2時間及び3時間のそれぞれの時点における全体のインスリン反応の比較を示す。ここで、n=16(すべての時点における5AACr-med、及び60分の時点における5AACr-high及び5AACr-lowについてはn=15)。
図5図5は、血糖値の食後上昇変化(Δ)と、様々な検査飲料と共に供された標準的サンドイッチの朝食に反応したインスリンについての濃度曲線下面積(AUC)を示す。
図6図6は、血清インスリンの食後上昇変化(Δ)と、様々な検査飲料と共に供された標準的サンドイッチの朝食に反応したインスリンについての濃度曲線下面積(AUC)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第1態様は、クロムと、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの5つのアミノ酸を含む栄養補助食品に関し、ここで、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンは、この栄養補助食品に存在する唯一のアミノ酸である。5つのアミノ酸の合計含有量は、栄養補助食品の投与量当たり1.75乃至3.5gであり、クロムの含有量は、栄養補助食品の投与量当たり4.5乃至61μgである。先行するWO200784059号に示すように、これらの5つのアミノ酸は食後の血糖値を下げる。表3、5及び7は、本発明の第1態様による栄養補助食品がが、食事の前に少なくとも部分的に摂取されるテーブルウオーターの形で食品組成物中に含まれている場合、食後の血糖値と食後のインスリン分泌を低減することを示している。この栄養補助食品がない基準食に比べると、基準食に比べて食後のインスリン分泌を有意に上げることなく、食後の血糖値が有意に低減され、これは、6.9g又はそれ以上のアミノ酸を含む従来技術の栄養補助食品の場合と同様である。
【0036】
食後のインスリン分泌の低減は完全である。すなわち、食後のインスリン分泌は、標準的な食事についてのより低量の3.5gと1.75gのアミノ酸、すなわち、2.6gといった、1.75gと3.5gの間のアミノ酸の場合とほぼ同じである。低減した食後のインスリン分泌は、インスリンの全身的効果を低減し、インスリン抵抗を防止するとともに、本発明の第1態様による栄養補助食品中のより低いアミノ酸の量も、栄養補助食品のカロリー含有量を減らし、食品組成物の味を低減する。このことは、栄養補助食品がメタボリックシンドロームの予防治療に使用される場合も、あるいは栄養補助食品が食後の血糖値を調整することを希望する一般の健康な人々によって使用される場合でも、栄養補助食品の摂取者にとって容易に受け入れられる栄養補助食品を提供する。
【0037】
したがって、驚くことに、低量の5つのアミノ酸は、メタボリックシンドロームに関連する症状の、全体的なより良好な治療、制御、又は予防を提供する。
【0038】
この栄養補助食品は、代替的にアミノ酸と少なくとも一のミネラルを含む栄養補助食品として定義づけることができ、ここで
a)このアミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、リジンを含み、
b)ミネラルは少なくともクロムを含み、アミノ酸の合計含有量は栄養補助食品の投与量当たり1.75乃至3.5gであり、クロムの含有量は、栄養補助食品の投与量当たり4.5乃至61μgである。
【0039】
5つのアミノ酸への言及は、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、リジンへの言及として解するべきである。
【0040】
このアミノ酸は、各々独立して、10-50、10-40、10-35、10-25%といった1-80%、6-12%、7-15%、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%といった、1ないし99%の量で存在しており、存在するすべてのアミノ酸の合計は100%である。
【0041】
一実施例では、ロイシンが、例えば、1-80%、例えば、10-40%、10-50、10-40、10-35、10-25%、例えば、6-12%、7-15%、例えば、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%、あるいは、例えば、25-29%、例えば25%、26%、27%、28%、29%など、1-99%存在する。
【0042】
一実施例では、イソロイシンが、例えば、1-80%、例えば、10-40%、例えば、10-50、10-40、10-35、10-25%、例えば、6-12%、7-15%、例えば、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%、あるいは、例えば、11-14%、例えば9%、10%、11%、12%、13%、14%など、1-99%存在する。
【0043】
一実施例では、バリンが、例えば、1-80%、例えば、10-40%、例えば、10-50、10-40、10-35、10-25%、例えば、6-12%、7-15%、例えば、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%、あるいは、例えば、11-14%、例えば13%など、1-99%存在する。
【0044】
一実施例では、スレオニンが、例えば、1-80%、例えば、10-40%、例えば、10-50、10-40、10-35、10-25%、例えば、6-12%、7-15%、例えば、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%、あるいは、例えば、25-29%、例えば25%、26%、27%、28%、29%など、1-99%存在する。
【0045】
一実施例では、リジンが、例えば、1-80%、例えば、10-40%、例えば、10-50、10-40、10-35、10-25%、例えば、6-12%、7-15%、例えば、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%、あるいは、例えば、18-29%、例えば18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%,25%、26%、27%、28%、29%など、1-99%存在する。
【0046】
消化期間中にアミノ酸が放出され、血液中に吸収される速度は、アミノ酸が存在する形態によって影響を受ける。水溶性で、迅速に消化され及び/又は容易に吸収される形態で存在するアミノ酸は、アミノ酸の血漿濃度を高め、インスリンの分泌を促進する。したがって、5つのアミノ酸は:このアミノ酸の一またはそれ以上からなるペプチド、遊離アミノ酸、又はこれらの組み合わせからなる群から選択された形態で存在していてもよい。このペプチドは、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの群から選択された、2、3、4、5又は6、又は例えば最大10のアミノ酸又は最大20のアミノ酸など、それ以上のアミノ酸からなるものでもよい。ペプチドは互いに相同である必要はない。その代わり、ペプチドを含む混合物は、例えば、アミノ酸配列及び/又はアミノ酸長が異なっていてもよい。また、味の観点からは、ペプチドの一部として存在するある種のアミノ酸に適したものであってもよい。
【0047】
好ましくは、5つのアミノ酸は、遊離アミノ酸として、又は、最大10のアミノ酸を有するペプチドとして存在する。
【0048】
5つのアミノ酸又はペプチドの一またはそれ以上は、合成することができ、あるいは、例えば、ホエイ、大豆タンパク質、カゼインタンパク質、オート麦タンパク質、卵のタンパク質、血中タンパク質、ピータンパク質、大麦タンパク質、魚のタンパク質、ゼラチン、及びα-ラクトアルブミンからなる群から選択された一またはそれ以上の源から取り出したものでもよい。
【0049】
5つのアミノ酸の一またはそれ以上がホエイから取り出したものであれば、そのホエイは、牛、ヤギからなどの哺乳類源から取得したものであってもよい。5つのアミノ酸の一またはそれ以上が大豆などの植物材料から取り出したものであれば、例えば、一またはそれ以上のアミノ酸の含有量が高いため、遺伝子的に改変した栽培品種由来のものであってもよい。
【0050】
本発明の第1の態様による栄養補助食品のいくつかの実施例では、栄養補助食品がさらに、一またはそれ以上の着香剤、アロマ(例えば、味付け用成分)(オレンジ、レモン、ベルガモット、グレープフルーツ、バナナ、アプリコット及びストロベリー、など)、着色料、充填剤、保存料、甘味料、ゲル形成剤、結合剤、潤滑剤、乳化剤、ビタミン、酢酸、タルタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、グリコカーボネートナトリウム、及びカルボキシルリジン、及びこれらの混合物といった発泡剤を含む。
【0051】
本発明の第1の態様による栄養補助食品は、特に、カルシウム及び/又はマグネシウムなどの一またはそれ以上ミネラルをさらに含んでいてもよい。マグネシウムは、100-600mg、例えば、600mg/一人前当たりの量で存在していてもよい。カルシウムは、例えば、200、300、400、400-1200、500-1300mgといった量で存在していてもよい。マグネシウムは、例えば、10-70mg、10-50mg、10-40mg、10-23mgといった10-100mg、あるいは、例えば15-60mg、又は15-35mgといった量で存在していてもよい。例えば、マグネシウムは、15、20、23、40、50、65、70、80、85又は90mgの量で存在していてもよい。
【0052】
カルシウムは、例えば、25乃至220、30乃至200、30乃至170、30乃至150、30乃至120、30乃至100、30乃至70、30乃至50mg、あるいは、例えば、25乃至75、25乃至65、25乃至45mgなど、25乃至250mgの量で存在していてもよい。
【0053】
本発明の第1の態様による栄養補助食品は、特に、アスコルビン酸(ビタミンC)といった酸をさらに含んでいてもよい。ビタミンCは、例えば、0.5g、1g、1.5g、2g、2.5g、又は3gといった量で存在していてもよい。栄養補助食品は、特に、ビタミンCなどの抗酸化剤をさらに含んでいてもよい。
【0054】
更なる実施例では、本発明の第1の態様による栄養補助食品は、サッカロミセス、デバロミセス、カンジダ、ピチア、およびトルロプシスなどのイーストや、アスペルギルス、クモノスカビ、ケカビ、およびペニシリンとトルロプシスなどのカビ、および、ビフィドバクテリウム属、バクテロイデス属、クロストリジウム属、フゾバクテリウム属、メリソコッカス属、プロピオニバクテリウム属、連鎖球菌属、エンテロコッカス属、ラクトコッカス属、ブドウ球菌属、ペプトストレプトコッカス属、バシラス属、ペディオコッカス属、マイクロコッカス属、リューコノストック属、ワイセラ属、アエロコッカス属、オエノコッカス属、及びラクトバシラス属などのバクテリアをさらに含んでいてもよい。プロバイオティクス微生物の特定の例は:出芽酵母、バチルス・コアグランス、バチルス・リケニフォルミス、枯草菌、ビフィズス菌、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ロングム、エンテロコッカス・フェカーリス、エンテロコッカス・フェカーリス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・アリメンタリウス、ラクトバシラス・カゼイ亜種カゼイ、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ、ラクトバチルス・カルバータス、ラクトバチルス・デルブルッキィ亜種ラクティス、ラクトバチルス・ファルシミナス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス、乳酸菌、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス(ラクトバチルスGG)、ラクトバシラス・サケ、ラクトコッカス・ラクティス、ミクロコッカス・ヴァリアンス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ペントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ペディオコッカス・ハロフィルス、レンサ球菌、サーモフィルス菌、スタフィロコッカス・カルノーサス、スタフィロコッカス・キシローサス、ラクトバチルス・ アシドフィラス、ラクトバチルス・サーモフィルス、ラクトバシラス・ブルガリクス、ラクトバチラス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロングム、カゼイ、ラクトバチルス・イナース、である。例えば、プロバイオティクス微生物は、例えば、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・サーモフィルス、ラクトバシラス・ブルガリクス、ラクトバチラス・プランタルム、ラクトバチルス・ロイテリ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・ロングム、カゼイ、ラクトバチルス・イナース、からなる群から選択することができる。
【0055】
このプロバイオティクス微生物は、粉状の乾燥形態、特に、胞子を作る微生物については、胞子の形状であってもよい。さらに、所望であれば、プロバイオティクス微生物は、たとえば、シュガーマトリックス、脂質マトリックス、または多糖マトリックスなどにカプセル化して生存可能性を上げるようにしてもよい。
【0056】
本発明のコンテキストにおいて、用語「投与量当たり」は、一食分当たりに及ぶ。
【0057】
本発明の第1の態様による栄養補助食品では、5つのアミノ酸の合計含有量が1.75乃至3.5gである。
【0058】
この合計含有量は、実施例で試験を行った低量及び中量の5つのアミノ酸に相当する。上述した通り、表3及び5に示す1.75g乃至3.5gの5つのアミノ酸の合計含有量は、食後血糖値の有意な低減と、食後インスリン分泌のほぼ完全に低減し、したがって、同時に食後インスリン分泌を高くすることなく、食後血糖値の低下に関する5つのアミノ酸の利点を提供している。
【0059】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の代替の実施例では、5つのアミノ酸の合計含有量が、栄養補助食品の投与量当たり1.75乃至2.6g、又は2.6乃至3.5gである。
【0060】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の好ましい実施例では、クロムの含有量が、栄養補助食品の投与量当たり、15.5ないし31.1μgといった、4.5乃至31.1μgである。
【0061】
これは、125乃至250μgCrPic(ピコリン酸クロム(III))に対応する。
【0062】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の一実施例では、ロイシンが10-50%の量で、イソロイシンが5-35%の量で、バリンが10-25%の量で、スレオニンが10-35%の量で、リジンが10-25%の量で存在し、このパーセンテージは、栄養補助食品中の5つのアミノ酸の総量に対して計算されており、栄養補助食品中の5つのアミノ酸の総パーセンテージは100%である。
【0063】
5つのアミノ酸のパーセンテージの合計は100%であり、各アミノ酸のパーセンテージは、特定の範囲内から、合計が100%になるように選択される。
【0064】
本発明の第1の態様による栄養補助食品では、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンが、栄養補助食品中に存在する唯一のアミノ酸である。食後血糖値を低減させるのに、更なるアミノ酸は不要である。換言すると、栄養補助食品内にこれらの5つ以外にほかのアミノ酸はない。このことは、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、リジンからなる栄養補助食品のアミノ酸含有量として記載することができる。
【0065】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の一実施例では、栄養補助食品が実質的にクロムと5つのアミノ酸であるロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンからなる。
【0066】
用語「実質的に、からなる」は、この栄養補助食品の基本的かつ新規な特徴に物質的に影響を与えないこれらの更なる構成要素のみをこの実施例に含めることができることを意味している。着香剤、アロマ(例えば、味付け成分)(オレンジ、レモン、ベルガモット、グレープフルーツ、バナナ、アプリコット、及びストロベリーなど)、着色料、充填剤、保存料、甘味剤(アミノ酸及び/又は炭水化物を含む甘味剤を除く)、ゲル形成剤、結合剤、潤滑剤、乳化剤、ビタミン、クエン酸、タルタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、グリコカーボネートナトリウム、及びカルボキシルリジン、及びこれらの混合物といった発泡剤は、栄養補助食品の効果に機能しない成分と考えられる。
【0067】
本発明の第1の態様による栄養補助食品は、クロムを含んでいる。
【0068】
例1、及びWO2012177215号に示すように、クロムは、食後の血糖値を下げインスリンの分泌を抑える役割をする。
【0069】
クロムは、ピコリン酸クロム、ニコチン酸クロム、ポリニコチン酸クロム、プロピオン酸クロム、アセチルアセトンクロム、クエン酸クロム、ニコチン酸クロム、ジニコシステイン酸クロム、ナイアシン結合クロム、クロムとのアミノ酸キレート、クロミウムキラバイト、あるいはこれらの組み合わせ、の例えば一つ又はそれ以上など、摂取に適した形状で存在している。
【0070】
一実施例では、クロムは、三ピコリン酸クロム、二ピコリン酸クロム、一ピコリン酸クロム、又はこれらの組み合わせといった、ピコリン酸クロムとして存在している。更なる実施例では、クロムは、三ピコリン酸クロムとして存在している。
【0071】
別の実施例では、クロムは、ジニコシステイン酸クロム(CDNC)として存在している。CDNCとピコリン酸クロムは、長期にわたるグルコース調製用の様々なメタボリックマーカーに好ましい効果を示している。
【0072】
三ピコリン酸クロム(すなわち、ピコリン酸クロム(III))中のクロムのパーセンテージは、12.43%であり、これは、1000マイクログラムのピコリン酸クロム(III)が、125マイクログラムのクロムを含むことを意味している。時に、これは、100マイクログラムのピコリン酸クロム(III)が、19.2マイクロモルのクロム、すなわち、12.4マイクログラムのクロムに等しいと、表現される。
【0073】
本発明の第1の態様による栄養補助食品では、クロムの含有量が4.5μg乃至61μgである。
【0074】
栄養補助食品中のクロムと、5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの合計含有量との関係は、例えば、アミノ酸の合計含有量1g当たり、4乃至10μgであって良い。更なる実施例は、アミノ酸の合計含有量1g当たり、4-9μg、5-10μg、6-10μg、5-10μg、及び5-9μgのクロムが含まれている。更なる例では、アミノ酸の合計含有量1g当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10μgのクロムが含まれている。
【0075】
この実施例では、4.5μgのクロムが、100mlのテーブルウオーター、すなわち、最低量の5つのアミノ酸(トータルで1.75g)を伴う栄養補助食品を含む食品組成物中のクロムの量に相当する。表1と、実施例の1.1材料と方法のセクションを参照されたい。
【0076】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の好ましい実施例では、クロムの含有量が、栄養補助食品の投与量当たり15.5乃至31.1μgといった、4.5ないし31.1μgである。
【0077】
これは、125乃至250μgのCrPic(ピコリン酸クロム(III))など、36乃至250μgに該当する。
【0078】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の更なる実施例では、栄養補助食品が、液体濃縮物、発泡性フォーム、粉状、及び粒状からなる群から選択された形態である。
【0079】
液状濃縮物は、水又はオイルなどの液体中の5つのアミノ酸とクロム、及び存在するのであれば、その他の要素を含んでいる。本発明のコンテキストにおいて、液状濃縮物は、ゲルに及ぶと解するべきである。ゲルは、例えば、液状濃縮物にゲル形成剤を加えることによって作ることができる。
【0080】
この液状濃縮物は、直接、あるいは例えば、水やその他の飲料と混合して摂取される。液状濃縮物は、例えば、瓶や柔らかなポーチに詰めることができる。
【0081】
発泡は、酸と塩の反応(水中での)であり、二酸化炭素を生成する。この反応で使用する酸の例は、クエン酸、タルタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、及びこれらの混合物である。クエン酸は、最も普通に使用されており、製品に柑橘類のような味をあたえる。発泡反応に使用する塩の例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、グリコカーボネートナトリウム、カルボキシリジン、及びこれらの混合物である。重炭酸ナトリウムは、発泡剤によく利用されている。
【0082】
発泡形状は、例えば、発泡タブレット、発泡パウダ、発泡粒を含む。この発泡タブレット、パウダ、粒は、ポーチやその他の容器に梱包して、水などの水性液体に加え、本発明の第1の態様による栄養補助食品を含む飲料を取得する。
【0083】
パウダは、さらにプレスしてタブレットや、粒状物にしてもよい。粒状物は、カプセルに詰めて提供され、そのまま摂取するか、開けて、食品上に粒状物を振りかけるか、あるいは液状であってもよい。
【0084】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の一実施例では、5つのアミノ酸の合計含有量が栄養補助食品の投与量当たり2.6gである。この実施例では、クロムの含有量は投与量当たり31.1μgである(250μgCrPicに該当する)。
【0085】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の一実施例では、5つのアミノ酸の合計含有量が栄養補助食品の投与量当たり1.75gである。この実施例では、クロムの含有量は投与量当たり15.5μgである(125μgCrPicに該当する)。
【0086】
本発明の第1の態様による栄養補助食品の一実施例では、5つのアミノ酸の合計含有量が栄養補助食品の投与量当たり3.5gである。この実施例では、クロムの含有量は投与量当たり31.1μgである(250μgCrPicに該当する)。
【0087】
本発明の第1の態様による栄養補助食品は、この栄養補助食品を含む食品組成物の製造に使用できる。
【0088】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による栄養補助食品を含む食品組成物に関するものであり、5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオノン及びリジンは、遊離アミノ酸又は最大10のアミノ酸を含む、あるいはこれからなるペプチドとして提供されている食品組成物中の唯一のアミノ酸である。
【0089】
この食品組成物は、機能性食品、機能性食事、栄養補給食品、栄養剤、この栄養補助食品を含む医薬及び薬剤を含む。
【0090】
食品組成物は、固形、クリームやペーストなどの半固形、ゲル状、液状、噴霧状、懸濁状、あるいは乳状であってもよく、溶解させるパウダ、あるいはほかの所望の形状であってもよい。組成物は、例えば、食品、食事、飲料、機能性食品と、例えば、フレーク、バー、ブレッド、クッキーとビスケットなどのシリアル、ジュース、ジャム、スプレッド、ソフトドリンク、オート懸濁液、豆乳、肉製品、ヨーグルト、チョコレート、チーズ、プリン及びその他のディリー製品、スプレッド製品、冷凍デザートとアイスクリーム、麦芽飲料、コーヒー、紅茶、スポーツドリンク、調理済み食品、薄い粥、粥、インスタント食品、乳児用調製粉乳、ベビーフード;といったあらゆる形態の機能性食事であってもよい。例えば、粉、凝集体、粒状物、タブレット、被覆タブレット、舌下剤、カプセル、飲料、シロップ、チューブフィード用組成物、腸内摂取用、経口投与及び腸内投与用、など、医薬組成物と医薬の形態であってもよい。
【0091】
栄養補助食品の効果、すなわち食後血糖値の低下と、好ましくは食後インスリン分泌の低下、及び/又は食後GLP-1レベルの上昇は、この栄養補助食品に加えて食品組成物がタンパク質を含む場合でも維持される。これは、栄養補助食品中の5つのアミノ酸が、タンパク質より先に体に取り入れられるためである。この効果は、5つのアミノ酸が遊離アミノ酸である場合と、ペプチド中に最大10のアミノ酸がある場合の両方において維持される。
【0092】
しかしながら、5つのアミノ酸は遊離アミノ酸又はジペプチドとして存在することが好ましい。
【0093】
本発明の第2の態様による栄養補助食品の好ましい実施例では、食品組成物が、食前にあるいは食事と同時に摂取するのに適した量である。
【0094】
このことは、食品組成物が通常の食事の後の食後血糖値を下げるのに使用できるため、有利である。すなわち、本発明の第2の態様による食品組成物は通常の食事にとって代わる必要はなく、摂取者は通常の食事をとり続けて、なおかつ、食品組成物が通常の食事の前にあるいは食事と共に摂取される場合の、低減された食後血糖値の利益を受けることができる。
【0095】
この食事は、例えば、朝食、ブランチ、昼食、スナック、夕食、サパー、及び夜食であってもよい。この食事は、通常、炭水化物又は糖質を含む。
【0096】
本発明の第2の態様による食品組成物の好ましい実施例では、食品組成物の量が、5ml乃至1000ml、例えば、100ml乃至500ml、200ml乃至330ml、又は代替的に5g乃至1000g、例えば、100g乃至500g、200ml乃至330mlであってもよい。
【0097】
食品組成物の量は、通常、食品組成物の形状に依存しており、液状の食品組成物は、一般的に体積/量が多く、固形食品組成物は、一般的に体積/量が少ない。
【0098】
本発明の第2の態様による食品組成物の好ましい実施例では、食品組成物が、水、茶、麦芽飲料、コーヒー、ソフトドリンク、ジュース、ヨーグルト、牛乳、豆乳、オートミルクなどの飲料である。
【0099】
飲料は、食事と共に容易に摂取され、飲料の形態の食品組成物中の5つのアミノ酸が飲料の摂取者の身体に迅速に取り入れられるため、このことは有利である。
【0100】
飲料が茶、麦芽飲料、コーヒー、ソフトドリンク、又はジュースである場合、これらの飲料は、5つのアミノ酸からの苦味を消すのに適した味のプロファイルを持っているので、ことさら有利である。
【0101】
本発明の第2の態様による食品組成物の好ましい実施例では、食品組成物が、実質的に水と、本発明の第1の態様による栄養補助食品からなる。
【0102】
水は、広く受け入れられている飲料であるため、このことは特に有利である。さらに、水は、実質的に、タンパク質、脂肪、あるいは炭水化物を含まないため、身体に与える影響が最小である。
【0103】
用語「実質的にからなる」は、食品組成物中に、食品組成物の機能又は効果に影響しない更なる成分のみが含まれていてもよいことを意味する。香味料、アロマ、保存料、着色料、酸及び塩、及び、水の炭酸化料は、食品組成物の機能又は効果に影響を及ぼさない。
【0104】
5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンは、遊離アミノ酸又は最大10のアミノ酸を含むペプチドとして提供されている食品組成物中の唯一のアミノ酸であることが好ましいが、このことは、食品組成物中に5つのアミノ酸以外のアミノ酸がない本実施例では必須ではない。
【0105】
本発明の第2の態様による食品組成物の好ましい実施例では、食品組成物が炭酸水と、本発明の第1の態様による栄養補助食品と、ソルビン酸カリウム及び安息香酸ナトリウムと、天然ザクロ香味料からなる。
【0106】
本発明の第3及び第4の対応する態様は、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は症状の治療、制御又は予防方法、糖尿病の治療又は制御方法、肥満の治療、制御又は予防方法、満腹感の促進方法、体重減少の促進方法、健康体重の維持を促進する方法に使用する、5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンに関し、1.75乃至3.5gの5つのアミノ酸が、対象が食事をとる前に、あるいは食事と同時に、対象に投与される、又は対象によって摂取され、4.5ないし61μgのクロムも、対象が食事をとる前に又は食事と同時に、対象に投与される、あるいは対象によって摂取される。また、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は症状の治療、制御又は予防方法、糖尿病の治療又は制御方法、肥満の治療、制御又は予防方法、満腹感の促進方法、体重減少の促進方法、健康体重の維持を促進する方法に関し、1.75乃至3.5gの5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンが、対象が食事をとる前に、あるいは食事と同時に、対象に投与される、又は対象によって摂取され、また、4.5ないし61μgのクロムも、対象が食事をとる前に又は食事と同時に、対象に投与される、あるいは対象によって摂取される。
【0107】
メタボリックシンドロームに関連する疾病又は症状は、インスリン抵抗、高インスリン血症、耐糖能異常、高脂血症、高コレステロール血症、高血圧症、及び腹部肥満からなる群から選択される。糖尿病は、通常、2型糖尿病である。
【0108】
肥満の治療、制御又は防止は、満腹感の促進、体重減少の促進、及び/又は、健康体重の維持促進を含む。
【0109】
健康体重は、各対象について特定され、例えば、医師又は栄養士によって決められる。一般的なガイドラインは、対象が、対象のBMI(Body Mass Index)を測定することによって、健康体重であることを特定することができ、例えば、腹囲を測定することによって、BMIが30以下、あるいは、例えば、BMIが35位か、あるいは、例えばBMIが28以下であれば、健康体重に相当する。例えば、腹囲が102cm以下である、又は、例えば、94cm以下であれば、健康体重に相当する。
【0110】
肥満は、食後血糖値の低減によって、最終的に防止、治療、あるいは制御でき、これによって、満腹感を促進する血糖の変動を少なくする。満腹感の促進、体重減少、及び健康体重の維持は、食後血糖値の低減と、満腹感の促進によって得られる。
【0111】
この食事は、例えば、朝食、ブランチ、昼食、スナック、夕食、サパー、及び夜食であってもよい。この食事は、通常、炭水化物又は糖質を含む。対象は、好ましくは、ヒトである。
【0112】
投与されたあるいは摂取された5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンの量は、本発明の第1の態様による栄養補助食品における5つのアミノ酸について、上述したものであってもよい。したがって、5つのアミノ酸は、それぞれ、1ないし99%、例えば1-80%、10-50、10-40、10-35、10-25%、例えば、6-12%、7-15%、5-35%、40-60%、50-75%、46-37%、3-16%、の量で個別に投与あるいは摂取されてもよく、存在するすべてのアミノ酸の合計は、投与又は摂取された5つのアミノ酸の重量の100%である。
【0113】
本発明の第3及び第4の態様の一実施例では、ロイシンが10-50%の量で投与又は摂取され、イソロイシンが5-35%の量で投与又は摂取され、バリンが10-25%の量で投与又は摂取され、スレオニンが10-35%の量で投与又は摂取され、リジンが10-25%の量で投与又は摂取される。ここで、パーセンテージは、投与又は摂取される5つのアミノ酸の合計含有量に基づいて計算されており、5つのアミノ酸のパーセンテージの合計は100%である。
【0114】
5つのアミノ酸は、遊離アミノ酸であるか、あるいは、最大10のアミノ酸を含む、あるいはこれらからなるペプチドとして提供されてもよい。
【0115】
本発明の第3及び第4の態様の好ましい実施例では、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンが投与又は摂取される唯一のアミノ酸である。ほかのアミノ酸は、食後の血糖値の低減には不要である。このことは、5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンは、遊離アミノ酸であるか、あるいは、最大10のアミノ酸を含むペプチドとして提供される、投与又は摂取される唯一のアミノ酸であるべきであるということに、及ぶ。
【0116】
本発明の第3及び第4の態様の別の好ましい実施例では、実質的に、5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、及びリジンが投与又は摂取される。
【0117】
本発明の第3及び第4の態様の好ましい実施例では、少なくとも0.5g、例えば少なくとも1.3gの5つのアミノ酸が、食事前に対象によって摂取される、あるいは対象に投与される。少なくとも4.5μgのクロムが食事前に対象によって摂取される、あるいは対象に投与される。0.5gの5つのアミノ酸が、最低量の5つのアミノ酸が例1の試験対象によって食事前に摂取される量に対応する。
【0118】
5つのアミノ酸は、食事の前、及び食事と同時に投与される、あるいは摂取されてもよい。好ましくは、少なくとも0.5gに相当するアミノ酸の部分が、食事前に投与されるか、摂取され、5つのアミノ酸の残りは、食事と同時に、あるいは食事の間に摂取されるか、投与される。
【0119】
本発明の第3及び第4の態様の好ましい実施例では、少なくとも0.5gの5つのアミノ酸が、食事前20分以内、例えば、1秒以内、30秒以内、1分以内、3分以内、6分以内、に対象によって摂取される、あるいは対象に投与される。したがって、少なくとも4.5μgのクロムが同じ時間内に対象によって摂取される、あるいは対象に投与されるべきである。
【0120】
理論に縛られることなく、本発明の発明者らは、5つのアミノ酸の初期摂取又は投与が対象の身体を続く食事のためにより良い状態にし、それによって体内時刻をインスリン分泌とグルコース代謝をより良く処理できるようにして、食後血糖値と食後インスリン分泌をインスリンエコノミーを改良することによって低減するとの理論をたてた。
【0121】
代替的に、少なくとも0.5gの5つのアミノ酸が、1-20の対象、例えば、1-15、1-10、1-5、1-2、1-3、3-5、5-10、5-15、10-20、10-15、15-20、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の対象によって摂取され、あるいは投与される。したがって、少なくとも4.5μgのクロムが、対象に同時に摂取又は投与される。
【0122】
5つのアミノ酸は、食事の20分以上前に対象によって摂取される、又は対象に投与すべきでない。
【0123】
本発明の第3及び第4の態様の好ましい実施例では、対象は、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は症状を制御又は予防、糖尿病の治療又は制御、肥満の治療、制御又は予防、満腹感の促進、体重減少の促進、又は、健康体重の維持の促進、を必要としている。
【0124】
このような対象に対して、本発明の第3及び第4の態様は、上述して利益の少なくとも一つを提供するであろう。
【0125】
しかしながら、本発明の第3及び第4の態様の代替実施例では、対象は、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は症状を制御又は予防、糖尿病の治療又は制御、肥満の治療、制御又は予防、満腹感の促進、又は、健康体重の維持の促進、を必要としていない。また、この対象は、低減した食後血糖値とインスリン分泌から、これに関連する血糖値のより少ない変動によって、より高い精神的生産性が得られるとの利益を得ることができる。
【0126】
本発明の第3及び第4の態様の好ましい実施例では、対象は、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は症状を制御又は予防、糖尿病の治療又は制御、肥満を治療、制御又は予防、満腹感を促進、体重減少を促進、又は、健康体重の維持を促進する方法が、食後血糖値を下げるステップを具え、また、好ましくは、対象中の食後インスリン分泌を下げる、及び/又は食後GLP-1レベルを上げるステップを具える。
【0127】
本発明の第3及び第4の態様では、また、対象が食事を摂取する前に、あるいは食事と同時に、対象にクロムが投与される、あるいは対象によってクロムが摂取される。
【0128】
これらの例に示すように、またWO2012177215号に示すように、クロムは、食後血糖値とインスリン分泌を制限する役割をする。
【0129】
本発明の第3及び第4の態様の好ましい実施例では、5つのアミノ酸は、本発明の第1の態様による栄養補助食品として、あるいは本発明の第2の態様による食品組成物として、対象に投与される、あるいは対象によって摂取される。
【0130】
本発明の更なる態様は、本発明の第3の態様による使用又は本発明の第4の態様による方法に用いる、本発明の第1の態様による栄養補助食品又は本発明の第2の態様による食品組成物に関する。
【0131】
例1 混合食チャレンジ研究
1.1.材料と方法
混合食チャレンジ研究は:電子レンジで、蓋をしたボウルに入れて水を入れずに調理した(3.5分、800W)、125gの冷凍したタラのひれと;99%の乾燥ポテト(ICA Basic Potatismos,ICA AB,Solna,Sweden)を含む再構成ポテトパウダから作った、250gのマッシュポテトと;50gのコケモモジャム((Lingonsylt,ICA AB,Solna,Sweden)と;20gの溶かしバター(Smor Normalsaltat、Skanemejerier,Malmo,Sweden)と;50gの生のキュウリと;が含まれている。
【0132】
試験飲料と基準飲料
濃度の異なる5AA+CrPicを加えた330mLの炭酸水と共に、混合食を提供した。濃度の異なる(高、中、低)5AA+CrPicを飲料に加えた後、これらの異なる試験食に、5AACr-high、5AACr-med、及び5AACr-lowと名前を付けた。(レシピ詳細は下の表1を参照)。
【0133】
表1 異なる試験飲料中の5AA+CrPicの濃度
【0134】
5AA+CrPicを加えていない基準飲料と共に提供された混合食は、Refとした。炭酸水はEW Flavours(Malmo、Sweden)によって提供され、Refを含むすべての水は、合成レモン-ライム味であった。飲料を含む食事のトータルの主要栄養素組成を表2に示す。
【0135】
表2 食品データベース(Swedish National Food Agency2012)の情報と製造者からの情報に基づく、飲料を含む様々な試験食のトータル主要栄養素組成
【0136】
対象は、食事を始める前3分以内に100mLの水を飲み、残りの230mLの水は食物と一緒に取るように指示を受けた。
【0137】
1.2.試験対象と研究デザイン
37歳から66歳(54±6歳;平均±)の健康な16人の非喫煙対象者であって、肥満度指数(BMI;kg/m)が23-32(27.5±2.4;平均±)の対象者が研究に参加した。すべての対象者は、正常な空腹血糖値レベル(5.5±0.5mもl/L;平均±)であった。二人の対象者が、定期的に投薬治療を受けていると述べた。投薬されている薬剤は、エナラプリル(高血圧)、ベヘパン(ビタミンB12サプリメント)、及びロラタジン(処方なし、抗ヒスタミン)であった。これらは、食後メタボリズムに影響を与えるとは思われず、したがって許可した。対象者は、研究が始まる前は午前中に薬剤を飲まないように、さもなければ研究中を通じてずっと飲み続けるように言われた。
【0138】
研究は、ランダム化したクロスオーバー臨床試験であった。対象は試験製品に対して盲検であった。試験食は、約1週間離して、4つの異なる場合で一晩絶食後、朝食として提供された。各試験訪問の前の午後に、対象は、午後6時くらいに自分の選択した標準化した低繊維食を食するように指示された。その後、白小麦パンの夕食(Dollarfranska,Lockarps、Lockarp、Sweden)を、自身が選択したサンドイッチスプレッドと飲料と共に、9時から10時の間に摂るように指示を受けた。この食事の後は、対象者は、研究室で朝食を提供されるまで、最大グラス半分の水以外は何も摂取しなかった。対象者は、すべての試験の前に同じ夕食と白小麦パンを食べるように指示を受けた。対象者は、また、ハードな運動はしないように、あるいは、アルコールは摂取しないように、及び、研究室に来る前の日には、繊維を多く含む食品は避けるように指示された。朝、研究室に到着すると、末梢カテーテルを肘正中静脈に挿入して、空腹時の血液サンプルを取った。その後、試験食が提供された。対象者は、この食事を10-14分以内に済ませなければならず、食べることと飲むことを交互に行わなければならなかった。すべての食事は、対象者に耐えられるものであり、14分以内に食事を済ますことに問題はなかった。
【0139】
すべての対象者はボランティアで研究に参加し、インフォームドコンセントを受けた。対象者は、研究から外れたければ、いつでも外れることができることを理解していた。この研究は、Lund UniversityのRegional Ethical Boardによって承認されている(Dnr2010/499)。
【0140】
1.3.血液分析
空腹時(時間0とする)、朝食開始後15分、30分、45分、60分、90分、120分、及び180分で、血液サンプルを取った。時間0は、対象者が朝食を食べ始めた瞬間と規定した(プレミールをすすった後3分間)。血漿分離チューブを用いて、全ての時点で血漿インスリン分析用の静脈血サンプルを採取した。サンプルは、10分間の遠心分離を行う(2246×g、4℃)前に30分間室温で放置した。GLP-1分析用の静脈血サンプルは、最初の1時間の間(時間0から60)に採取して、DPP-IV阻害剤(Merck Millipore,Billerica,MA、USA)を加えたプラズマ(EDTA)チューブに集めた。サンプルは、10分間の遠心分離(1000×g、4℃)まで、サンプリング後最大15分間氷の上で保持した。分離した血清と血漿サンプルは、分析まで冷凍保存(-20℃)した。B-血糖分析器(Hemocue,Angelholm,Sweden)を用いてサンプリングした直後に、全ての時点において末梢血の血糖を測定した。ELISAキット(MercodiaインスリンELISA、Mercodia AB,Uppsala,Sweden)を用いて血清インスリンを分析した。この分析手順は、ELISAロボット(CODA Automated EIA Analizer,Bio-Rad Laboratories AB,Sundbyberg,Sweden)を用いて、半自動化して行った。血漿GLP-1は、ELISAキット(GLP-1(Active7-36)ELISA、Alpco,Salem,NH,USA)を用いて、手動で行った。
【0141】
1.4.計算と統計法
一対象者は、末梢カテーテルを挿入する際に不快であったため、ある場面で気絶した。この場合の試験食(5AACr-med)を取った対象者についての結果は、全ての計算から除外した。台形法に基づいて曲線の下の上昇領域(iAUC)をグルコース、インスリン及びGLP-1について、空腹時レベルの下の領域を除いて計算した。様々な食事についてグルコースとインスリンの空腹時の値の間に有意な差はないとの仮説が、Minitab(リリース16、Minitab Inc.,State Collage,PA,USA)一般線形モデルである、分散分析(ANOVA)を用いて立証された。GLP-1空腹時の値についてのこの仮説は、これらの値が正常に分布しなかったため、同じ方法で立証できなかった。グルコースとインスリンの上昇ピーク(iPeak)は、GraphPad(GraphPad Prism 5、version5.04、GraphPad Software、Inc.,San Diego CA,USA)を用いて計算した。個々のiPeakは、全試験期間にわたるベースラインからの最大上昇として規定した(Rosen、Silva et al.2009)。平均ピークをグルコースとインスリンについて計算して、ほとんどの平均曲線がピークとなっている時点における各対象と食事についてのベースラインからの上昇と規定した。
【0142】
血糖プロファイル、GPは、グルコース反応について計算し、iPeakによって除した期間として規定した(Rosen、Silva et al.2009)。この期間は、GraphPadを用いて決定し、曲線がベースラインと最初に交差するゼロ点からの分単位の時間として規定した。180分後も曲線がベースラインに届かなかった場合、この期間は180分とした。
【0143】
すべての値は、Minitabで計算して、平均±SEMで表した。データの統計的分析は、確率変数として対象を用い、一般線形モデルANOVAを用いて行ったのち、Minitabでテューキーの多重比較法を用いた。16人の対象者が研究に参加し、4種類の異なる食事について調査した。データが正常に分布しない場合(正規確率プロットに従って)は、ANOVAの前にBox-Coxプロットを用いて変換した。
【0144】
グルコース、インスリン、及びGLP-1についての時間と治療の相互作用を、混合モデル(PROC MIXED in SAS9.3 SAS Institute Inc.,Cary,NC USA)を用いて、反復測定と、自己回帰共分散構造で分析した。
【0145】
1.5.結果
1.5.1.血糖反応
食後血糖値反応が、図1及び以下の表3及び4に示されている。
【0146】
表3 血糖反応についての曲線の下の上昇領域(iAUC)

iAUCは平均±SEMで表す;n=16(5AACr-medについてはn=15)。同じ欄の上付き文字が異なる値は、有意に異なり、P<0.05(ANOVAの後、テューキーの多重比較法を用いた)。Δ変化(%)は、平均値について計算した。
【0147】
表4 食後血糖反応及び血清インスリン反応
全ての値は平均±SEMで表す;n=16(5AACr-medについてはn=15)。同じ欄の上付き文字が異なる値は、有意に異なり、P<0.05(ANOVAの後、テューキーの多重比較法を用いた)。iPeak、上昇ピーク、平均ピーク、平均曲線がピークになる時点における値。
【0148】
5AAとCrPicを含むすべての試験食は、iAUC0-120と0-180分で測定した通り、Refに比べて有意に血糖値反応を下げた。有意な治療効果が見られた(p=0.0160)が、時間と治療の相互作用(p=0.5272)はなかった。さらに、5AACr-highと、5AACr-med食は、Refに比べてグルコ-スのiPeakを有意に下げた(Δmmol/L)。どの試験食でも、血糖プロファイル(GP、mmol-min/L)に差はなかった。
【0149】
1.5.2.血清インスリン応答
食後インスリン応答を図2、上記表4、及び下記の表5に示す。
【0150】
表5 血清インスリン反応についての曲線の下の上昇領域(iAUC)

iAUCは平均±SEMで表す; n=16(5AACr-medについてはn=15)。同じ欄の上付き文字が異なる値は、有意に異なり、P<0.05(ANOVAの後、テューキーの多重比較法を用いた)。Δ変化(%)は、平均値について計算した。残りは正常に分布せず、ANOVAに先立ってデータをBox-Cox変換した。変換しなかった平均値が示されている。
【0151】
5AACr-highを補填した食事によって、初期(iAUC 0-30分)と全体(iAUC 0-180分)の両方の食後段階において、Refより有意に高い血清インスリン応答がでた。インスリンiPeak(Δmmol/L)も、MeanPeak(Δmmol/L)も、Refに比べて5AACr-highが有意に高かった。続く、5AACr-medと5AACr-lowのインスリン応答は、それぞれ、水を伴うRef食から区別できなかった。治療効果への傾向はあった(p=0.0533)が、時間と治療の相互作用はなかった(p=0.7557)。
【0152】
したがって、この実験は、CrPic (125-500μg/食)と5AA(1.75-6.9g/食)を含む炭酸入りテーブルウオーターが、タラのフィレと、マッシュポテトをからなる試験混合食の摂取後、食後血糖値を改善できることを示している。実際、全体的なグルコース反応は、5AA+CrPicの3つをすべて投与したRefに比べて、20%以上有意に下がった。5AACr-highを摂取した後のインスリン応答は、Refと比べて有意に高かった。しかしながら、この例は、5AACr-medと5AACr-lowは、混合タラ/ポテト食にくらべて、全体のインスリン応答を有意に上げるものではなかった。また、この二つの低い投与量(5AACr-medと5AACr-low)は、食後血糖値を5AACr-highと同じ程度に下げ、インスリンエコノミーの改善を示している。水を伴うRef食、又は、3つのレベルが異なるCrPic+5AAを加えたRef食の後のインスリン応答(上昇AUC 0-120分)の概要を、図4に示す。
【0153】
この実験では、5AA+CrPic混合物の3つの投与量のすべてが、初期のインスリン応答(0-15分)を上げた。このことは、食後血糖値調整に関する全体的な利益に重要であると思われる。
【0154】
従来の実験と対照的に、対象者は、食事のコースの間にほとんどの飲料(2/3)を飲み、1/3は食後すぐにのむように指示されており、通常の食事の形態により近かった。この様子を考慮すると、試験飲料は、水を伴うRef食に比べて血糖値調整に良い影響を示した。低レベル及び中レベルの5AA+CrPicでは、Ref食に比べて全体のインスリン応答が上昇することなく、このことが達成された。
【0155】
本例におけるもっともレベルの高いAAは、約600mlのミルクからのこれらのAAの貢献と同等である。2つのより低い投与量で5AA+CrPic混合物を含むテーブルウオーターを、1日3回の主食と共に定期的に摂取することは、約5-10gのタンパク質摂取(5AACr-lowと5AACr-medの食当たり、それぞれ、1.7及び3.4gのタンパク質)における上昇に対応するであろう。このことは、毎日、20-40kcal、エネルギィ摂取を上げ、これは、2000kcal/日に対応する総エネルギィ摂取の1乃至2E%を表している。このタンパク質の余分な摂取は、一般的に受け入れ可能な健康食餌療法の枠内になくてはならない。
【0156】
1.5.3.血漿GLP-1応答
食後GLP-1応答を図3と、下記の表6に示す。
【0157】
表6 血漿GLP-1応答についての曲線の下の上昇領域(iAUC)
iAUCは平均±SEMで表す;Refについてはn=16、5AACr-high、5AACr-med及び5AACr-lowについてはn=15。同じ欄の上付き文字が異なる値は、有意に異なり、P<0.05(ANOVAの後、テューキーの多重比較法を用いた)。Δ変化(%)は、平均値について計算した。
残りは正常に分布せず、ANOVAに先立ってデータをBox-Cox変換した。変換しなかった平均値が示されている。
【0158】
Refに比べて、5AAとCrPic飲料を含む3つの試験食すべての後に、より高いGLP-1応答、すなわち、より高いGLP-1レベルへの傾向があった。しかしながら、差は有意なものではなかった。有意な治療効果(p=0.1327)も、時間と治療の相互作用(p=0.9303)もなかった。
【0159】
例2 テーブルウオーター
プロトタイプのテーブルウオーターを、5AACr-med飲料に基づいてさらに発展させた。炭酸水、3.5gの5つのアミノ酸と250μgのピコリン酸クロムに加えて、プロトタイプのテーブルウオーターは保存料(ソルビン酸カリウムと安息香酸ナトリウム)と天然ザクロ香味料を含む。プロトタイプのテーブルウオーターのエネルギィ含量は、100ml当たり4kcalである。プロトタイプのテーブルウオーターの外観と味は、従来の香味付炭酸テーブルウオーターのものである。天然ザクロ香味料により、試験者によって5つのアミノ酸からの苦みは検出されなかった。
【0160】
例3 標準サンドイッチ朝食調査
更に二つのレベルの5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、スレオニンで、更なる調査を行った。このレベルは、投与量/1食当たり2.6g及び5.2gである。
【0161】
3.1対象と方法
調査はランダムに、二重盲検法で、被験者内計画で行った。9人の男性と10人の女性がこの調査を完了した。調査対象は、平均BMIが24.1kg/mであり、この値は18.5と31.9の範囲にあった。対象の平均年齢は、26.2歳であり、21歳から43歳の範囲であった。対象のだれもがメタボリック疾患を持っていなかった。
【0162】
標準サンドイッチ朝食は、バターといちごジャム付白小麦パンで、市販の50gの炭水化物に相当する。
【0163】
標準朝食サンドイッチは、330mlの炭酸と軽く香味のある水(コントロール)と共に、あるいは、同じ水で2.6g又は5.2gの5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、スレオニンと、250μgのCrPicを含む水(それぞれ、2.6AA+CrPicと5.22AA+CrPic)とともに、提供された。
【0164】
半量の水をサンドイッチを食べ始める前6分間で飲み、残りの水はサンドイッチを食べる間に飲むようにした。
【0165】
食事開始後、-6分(空腹時)、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分で静脈血中のグルコースとインスリン応答を測定した。
【0166】
グルコースと飲料には、例1、セクション1,3で上述したように測定し、結果を、例1、セクション1.4で上述したように統計的に分析した。
【0167】
半量の水をサンドイッチを食べ始める前6分間で飲んだため、対象はこのインターバルの間に、それぞれ、1.3gと2.6gの5つのアミノ酸を摂取したことになる。
【0168】
3.2 結果
図5Aは、コントロールと、2.6AA+CrPic、5.2AA+CrPicについての、血糖値の平均(±SEM)食後上昇変化(Δ)を示す。このグラフに見られるように、アミノ酸とCrPic、すなわち、2.6AA+CrPic、5.2AA+CrPicが入った水についての血糖の上昇変化は、全ての時点においてコントロールより低い。5.2AA+CrPicは、-6から45分の時間インターバルの間の血糖値の最低変化を示し、2.6AA+CrPicは、60-180分の時間インターバルの間の血糖値の最低変化を示した。
【0169】
血糖値の様々な上昇変化が、図5Aの血糖値応答についての曲線下の領域(AUC)に影響している。図5Bに示すように、2.6AA+CrPicが、コントロールに比べて有意に(チャート中のバーに割り付けられた文字「a」と「b」で表す)低いAUC値を提供している。5.22AA+とCrPicも、コントロールより低いAUC値を示しているが、この値はコントロールの値と2.6AA+CrPicから有意に異なるものではない。図5BのAUC値は、食事の全時間、すなわち0から180分について、計算されている。
【0170】
図6Aは、コントロールと、2.6AA+CrPic、5.2AA+CrPic-飲料についての血清インスリンの平均(±SEM)食後上昇変化(Δ)を示す。このグラフに見られるように、2.6AA+CrPic、5.2AA+CrPicについての血清インスリンの上昇変化は、時間インターバル-6乃至30分を除いて、コントロールの値近くを追いかけている。一般的に、2.6AA+CrPicは、時間インターバル30乃至180分について血清インスリンの最小変化を提供し、これはコントロールより低い。
【0171】
血清インスリンの様々な上昇変化も、図6Aの血糖値応答について曲線下の領域(AUC)に影響している。図6Bに示すように、2.6AA+CrPicが、コントロールに比べても低いAUC値を提供している。一方、5.22AA+CrPicは、コントロールより若干高いAUC値を示しているが、このAUC値はいずれも他の値から有意に異なるものではない。このことは、2.6AA+CrPicと5.2AA+CrPicが、インスリン血症を増やすことなく血糖のより低い上昇変化を提供しているという点で、重要である。したがって、2.6AA+CrPicは、標準サンドイッチ食を摂取することによって生じる食後血糖値を、コントロールに比べた場合、インスリン血症を有意に増やすことなく(図6Bに示すように)30%程度(図5Bに示すように)有意に低減する。5.22AA+CrPicは180分間の全時間について、食後血糖値を有意に低減しなかった。
【0172】
例4 サンドイッチ食での低投与量の調査
5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、スレオニンの2つのより低い投与量での食後血糖値低減可能性を比較する更なる調査を行った。これらの低投与量は1.3および0.65gであり、前に調査した2.6gの食後血糖値低減可能性より低い。
【0173】
4.1 対象と方法
調査はランダムに、二重盲検法で、被験者内計画で行った。12人の男性と13人の女性がこの調査に含まれる。調査対象は、平均BMIが22.8kg/mであり、この値は19と25の範囲にあった。対象の平均年齢は、26.7歳であり、19歳から52歳の範囲であった。対象のだれもがメタボリック疾患を持っていなかった。
【0174】
標準サンドイッチ朝食は、バターとハム付の白小麦パンで、市販の50gの炭水化物に相当する。
【0175】
標準朝食サンドイッチは、330mlの炭酸と軽く香味のある水(コントロール)と共に、あるいは、同じ水で0.65g、1.3又は2.6gの5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、スレオニンを含む水と共に提供された。すべての飲料(コントロールを除く)は、250mcgのCrPicを含んでいた。1/3の量の水を朝食を食べ始める前3分間でのみ、残りの水はサンドイッチを食べる間に飲むようにした。
【0176】
血糖値分析用の末梢血と、インスリン応答用の静脈血を、食事開始後、-3分(空腹時)、15分、30分、45分、60分、90分、120分、180分で採取した。
【0177】
グルコースとインスリン応答を、例1、セクション1.3で上述したように測定し、結果を、例1、セクション1.4で上述したように統計的に分析した。
【0178】
1/3の量の水をサンドイッチを食べ始める前3分間で飲んだため、対象はサンドイッチの食事を始める前に、それぞれ、0.22g、0.43g、及び0.87gの5つのアミノ酸を摂取したことになる。
【0179】
4.2 結果
11人の対象サブグループからの結果を表7に示す。この結果は、最も良好なグルコース低下は、2.6gAA-レベルで得られ、二つのより低いAAレベルは、コントロールに比較してグルコースを低減しないことを示している。
【0180】
表7 血糖応答についての曲線下の上昇領域
同じ上付き文字が付されていない列は、有意に異なる。
【0181】
上記の例1-4で得られた結果をまとめると、5つのアミノ酸の量/投与量は、1.75乃至3.5g、特に2.6gで、食後インスリン血症を増やすことなく食後血糖値を下げるのに最良の効果を提供する。
【0182】
更なる例示による概念的実施例は、5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、リジン、スレオニンを含む栄養補助食品に関し、この5つのアミノ酸の合計含有量は6.9gより少ない。5つのアミノ酸の合計含有量は、例えば、少なくとも0.5gでよい。好ましくは、5つのアミノ酸の合計含有量1.75乃至3.5gである。ロイシンは、10-50%の量で存在し、イソロイシンは、5-35%の量で、バリンは10-25%の量で、スレオニンは、10-35%の量で、リジンは10-25%の量で存在する。このパーセンテージは、栄養補助食品の5つのアミノ酸の合計含有量に基づいて計算しており、栄養補助食品中の5つのアミノ酸のパーセンテージの合計は100%である。ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン、リジンは、好ましくはこの栄養補助食品中に存在する唯一のアミノ酸である。好ましくは、栄養補助食品は、更にクロムを含む。
【0183】
更なる例示による概念的実施例は、栄養補助食品を含む食品組成物である。この食品組成物は、食事前に、あるいは食事と共に摂取するのに適した量であってもよい。この食品組成物は、水、茶、麦芽飲料、コーヒー、ソフトドリンク、ジュース、ヨーグルト、ミルク、豆乳、又はオートミルクなどの飲料であってもよい。食品組成物は、実質的に、水と栄養補助食品とからなるものであってもよい。
【0184】
更なる例示による概念的実施例は、メタボリックシンドロームに関連する疾病又は疾患の治療、制御又は予防方法、糖尿病の治療又は制御、肥満の治療、制御、又は予防、満腹感の促進、体重減少の促進、又は健康体重の維持の促進方法に使用する5つのアミノ酸、ロイシン、イソロイシン、バリン、スレオニン及びリジンに関するものであり、6.9gより少ない5つのアミノ酸が、対象が食事をとる前にあるいは食事と同時に、対象に投与される、あるいは対象によって摂取される。少なくとも0.5gの5つのアミノ酸が、食事前20分以内、例えば1秒以内、例えば30秒以内、例えば1分以内、例えば3分以内に、対象によって摂取される、あるいは対象に投与される。メタボリックシンドロームに関連する疾病又は疾患の治療、制御又は予防方法、、糖尿病の治療又は制御、肥満の治療、制御又は防止、満腹感の促進、体重減少の促進、または、健康体重の維持を促進する方法は、対象における、食後血糖値を下げるステップと、好ましくはさらに、食後インスリン分泌を低減する及び/又は食後GLP-1レベルを上げるステップを具えていてもよい。クロムも、対象が食事をとる前に、あるいは食事と同時に、対象に投与される、あるいは対象によって摂取されるようにしてもよい。5つのアミノ酸は、栄養補助食品として、あるいは食品組成物として対象に投与する、あるいは対象によって摂取されるようにしてもよい。
【0185】
引用文献
Rosen、L.A/H.,L.O.B.Silva,et al(2009)“Endosperm and whole grain rye breads are characterized by low post-prandial insulin response and a beneficial blood glucose profile”Nutrition Journal 8(42):(25 September 2009)
図1
図2
図3
図4
図5
図6