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特許7366555液化ガス気化装置及びこれを備えた浮体設備
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  • 特許-液化ガス気化装置及びこれを備えた浮体設備 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】液化ガス気化装置及びこれを備えた浮体設備
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20231016BHJP
   B63J 2/14 20060101ALI20231016BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
B63B25/16 D
B63J2/14 Z
B63H21/38 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019032912
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020132127
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】金星 隆之
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩市
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1945597(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0070670(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0008793(KR,A)
【文献】特表2019-504792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100485(WO,A1)
【文献】特開2005-067266(JP,A)
【文献】特開2000-142563(JP,A)
【文献】特表2018-516804(JP,A)
【文献】特許第4119725(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
B63J 2/14
B63H 21/38
F17C 9/02
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを加熱して気化する気化器と、
前記気化器に接続されるとともに不凍液が循環する不凍液循環経路と、
液化ガスタンクで発生したボイルオフガスを燃焼させて蒸気を生成するボイラと、
前記ボイラで生成された蒸気と前記不凍液循環経路を循環する不凍液とを熱交換する蒸気熱交換器と、
前記気化器にて液化ガスを加熱せずに前記液化ガスタンクで発生したボイルオフガスを前記ボイラで焼却処理するボイルオフガス焼却処理モード時の制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ボイルオフガス焼却処理モード時に、前記気化器に液化ガスを供給しないことによって前記気化器にて液化ガスを加熱せずに、前記不凍液循環経路の不凍液を循環させ、前記ボイラで生成された蒸気を前記蒸気熱交換器へと送る液化ガス気化装置。
【請求項2】
前記不凍液循環経路に設けられ、不凍液と海水とを熱交換する海水熱交換器を備え、
前記制御部は、前記ボイルオフガス焼却処理モード時に、前記海水熱交換器にて不凍液から海水へと放熱を行うように制御する請求項1に記載の液化ガス気化装置。
【請求項3】
蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮させる復水器と、
を備え、
前記制御部は、前記ボイルオフガス焼却処理モード時に、前記ボイラで生成された蒸気を前記復水器へと送る請求項1又は2に記載の液化ガス気化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液化ガス気化装置と、
液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、
を備え、
前記気化器は、前記液化ガスタンクから導かれた液化ガスを気化する浮体設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガスを気化する液化ガス気化装置及びこれを備えた浮体設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されているように、LNGを外部へ供給する際に再ガス化することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2002-506960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再ガス化しているときは、LNGタンク内のLNGが消費されるので、LNGタンク内の圧力が過度に上昇するおそれがない。しかし、再ガス化していない場合、LNGタンク内の圧力は不可避的な侵入熱等によってボイルオフガス(BOG)が発生し、LNGタンク内の圧力が過度に上昇するおそれがある。この場合には、BOGをLNGタンクから取り出してGCU(Gas Combustion Unit)で焼却処理することが行われる。
【0005】
BOGを焼却処理するためにGCUを設備として備えると設置スペースが必要になり、また初期投資が増加するという問題がある。これを解決するために、LNGを再ガス化する際に用いる熱源としてリガスボイラ(Regas boiler)を備えた設備の場合には、リガスボイラをGCUとして兼用することが考えられる。
【0006】
しかし、リガスボイラをGCUとして用いた場合、リガスボイラで発生した蒸気を凝縮するための大容量のコンデンサが必要となり、初期投資が増大するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、初期投資を増大させることなくボイルオフガス焼却処理時に発生する蒸気を凝縮することができる液化ガス気化装置及びこれを備えた浮体設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る液化ガス気化装置は、液化ガスを加熱して気化する気化器と、前記気化器に接続されるとともに不凍液が循環する不凍液循環経路と、液化ガスタンクで発生したボイルオフガスを燃焼させて蒸気を生成するボイラと、前記ボイラで生成された蒸気と前記不凍液循環経路を循環する不凍液とを熱交換する蒸気熱交換器と、前記気化器にて液化ガスを加熱せずに前記液化ガスタンクで発生したボイルオフガスを前記ボイラで焼却処理するボイルオフガス焼却処理モード時の制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記ボイルオフガス焼却処理モード時に、前記気化器に液化ガスを供給しないことによって前記気化器にて液化ガスを加熱せずに、前記不凍液循環経路の不凍液を循環させ、前記ボイラで生成された蒸気を前記蒸気熱交換器へと送る。
【0009】
ボイルオフガス焼却処理モード時に、ボイラで発生した蒸気を蒸気熱交換器へ送ることとした。蒸気熱交換器にて蒸気と不凍液との間で熱交換が行われ、不凍液循環経路を循環する不凍液を介して放熱されることになる。これにより、ボイルオフガス焼却処理モード時に必要となる大型のコンデンサを設ける必要がなくなり、初期投資を抑えることができる。
不凍液としては、例えば、エチレングリコール等のグリコールが用いられる。
【0010】
さらに、本発明の一態様に係る液化ガス気化装置では、前記不凍液循環経路に設けられ、不凍液と海水とを熱交換する海水熱交換器を備え、前記制御部は、前記ボイルオフガス焼却処理モード時に、前記海水熱交換器にて不凍液から海水へと放熱を行うように制御する。
【0011】
不凍液循環経路に海水熱交換器を備え、海水熱交換器を介して不凍液から海水へと放熱を行うようにした。これにより、効果的に蒸気の凝縮熱を外部へと放熱することができる。
なお、海水熱交換器は、気化器にて液化ガスを気化する場合には、気化器を通過した後の不凍液を海水で加熱するために用いられる。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係る液化ガス気化装置では、蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出された蒸気を凝縮させる復水器と、を備え、前記制御部は、前記ボイルオフガス焼却処理モード時に、前記ボイラで生成された蒸気を前記復水器へと送る。
【0013】
復水器にも蒸気を送るようにして、復水器でも放熱できるようにした。復水器で全ての蒸気を凝縮させる必要はないので、復水器を大型化する必要がない。例えば、制御部は、先に復水器にて蒸気を凝縮させ、凝縮量が所定値を超えたら蒸気熱交換器にて蒸気を凝縮させるという制御を行っても良い。
【0014】
また、本発明の一態様に係る浮体設備では、蒸気のいずれかに記載の液化ガス気化装置と、液化ガスを貯留する液化ガスタンクと、前記気化器は、前記液化ガスタンクから導かれた液化ガスを気化する。
【0015】
上記の液化ガス気化装置を備えることで、コンパクトな浮体設備を提供することができる。浮体設備としては、例えば、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)が挙げられる。
なお、本態様の発明は、上記した各態様の発明と組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
不凍液循環経路で放熱させることとしたので、初期投資を増大させることなくボイルオフガス焼却処理時に発生する蒸気を凝縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るFSRUに適用されたLNG気化設備であり、オープンループ時を示した概略構成図である。
図2図1のLNG気化設備であり、コンバインドループ時を示した概略構成図である。
図3図1のLNG気化設備であり、GCUモード時を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1には、液化天然ガスであるLNG(液化ガス)を気化して外部へ供給するLNG気化装置(液化ガス気化装置)1の概略構成が示されている。LNG気化装置1は、浮体設備であるFSRU(Floating Storage and Regasification Unit)に設けられている。
【0019】
FSRUは、LNG気化装置1に加えて、LNGタンク3と、ディーゼルエンジン(発電用エンジン)5とを備えている。ディーゼルエンジン5としては、油燃料とガス燃料の両方を使用できるDFDE(Dual Fuel Diesel Engine)を用いることができる。
【0020】
LNGタンク3内には、LNGが貯留されている。LNGタンク3の上方には、侵入熱等によって不可避的に発生したBOG(ボイルオフガス)が滞留している。BOGは、BOG供給配管7を介してディーゼルエンジン5へと導かれる。BOG供給配管7には、BOG圧縮機9とBOG冷却熱交換器10とが設けられている。BOG圧縮機9によってディーゼルエンジン5が要求する圧力までBOGを昇圧した後に、BOG冷却熱交換器10によってBOGが冷却される。BOG冷却熱交換器10によって冷却されたBOGがディーゼルエンジン5へと導かれる。
【0021】
ディーゼルエンジン5は、図示しない発電機を駆動する。ディーゼルエンジン5によって駆動された発電機は、FSRU内で必要とされる電力を発電する。
【0022】
ディーゼルエンジン5には、過給機12が設けられている。過給機12は、図示しない排気タービン及び空気圧縮機が設けられている。排気タービンと空気圧縮機は共通の軸で連結されており共に回転するようになっている。
【0023】
過給機12の排気タービンを通過した排ガスは、排ガスエコノマイザ14へと導かれる。排ガスエコノマイザ14をバイパスするように排ガスバイパス配管15が設けられている。排ガスエコノマイザ14を使用する場合には、バイパス弁15aが閉とされている。なお、本実施形態において、黒塗りで示された弁は閉を意味し、白抜きで示された弁は開を意味する。したがって、排ガスエコノマイザ14を使用する場合には、排ガスエコノマイザ14の上流側に設けられた排ガスエコノマイザ弁14aは開とされている。
【0024】
過給機12の空気圧縮機によって圧縮された空気は、空気冷却器16にて冷却された後にディーゼルエンジン5へと導かれる。
【0025】
LNGタンク3内のLNGは、LNGタンク3内に設けたLNGポンプ18によって、LNGタンク3の外部に設けた気液分離器20へと導かれる。気液分離器20にて気相と分離されたLNGは、送液ポンプ(液化ガスポンプ)22によってLNG配管23を通って気化器25へと導かれる。LNGポンプ18及び送液ポンプ22は、電動ポンプとされている。気化器25にて気化されたLNGは、送ガス配管26を介して外部へと供給される。LNGポンプ18及び送液ポンプ22の発停や回転数の制御は、図示しない制御部によって行われる。
【0026】
LNG気化装置1は、気化器25に加えて、リガス(Regas)ボイラ30と、蒸気タービン32と、蒸気タービン発電機34と、復水器36と、グリコール循環経路(不凍液循環経路)38とを備えている。
【0027】
リガスボイラ(ボイラ)30には、BOG圧縮機9の下流側でBOG供給配管7から分岐されたボイラ用BOG供給配管40が接続されている。ボイラ用BOG供給配管40によって導かれたBOGを燃料として、リガスボイラ30は動作する。なお、リガスボイラ30は、燃料油によって動作するようにしても良い。
【0028】
リガスボイラ30の水ドラム30aは、ドラム水ポンプ42を介して排ガスエコノマイザ14内の蒸発器44に接続されている。蒸発器44で加熱された水は、リガスボイラ30の蒸気ドラム30bへと導かれるようになっている。蒸気ドラム30bには、給水タンク46から給水配管47を介して給水ポンプ48によって給水されるようになっている。
【0029】
リガスボイラ30の蒸気ドラム30bから、FSRU内(船内)の蒸気需要部50へと船内蒸気供給弁51を介して蒸気が供給されるようになっている。
【0030】
リガスボイラ30の蒸気ドラム30bと蒸気タービン32との間には、蒸気タービン用蒸気配管52が設けられている。蒸気タービン用蒸気配管52の途中位置には、過熱器53が設けられている。過熱器53は、排ガスエコノマイザ14内に設けられている。蒸気タービン用蒸気配管52には、過熱器53と蒸気タービン32との間に、蒸気止め弁54と蒸気加減弁55とが設けられている。蒸気止め弁54と蒸気加減弁55は、図示しない制御部によって制御される。
【0031】
蒸気タービン用蒸気配管52には、過熱器53の上流側に分岐点Pが設けられている。分岐点Pと復水器36との間には、蒸気タービン32をバイパスして蒸気ドラム30b内の蒸気を復水器36へと排気する蒸気ダンプ配管57が設けられている。蒸気ダンプ配管57には、蒸気ダンプ弁58が設けられている。蒸気ダンプ弁58は、図示しない制御部によって制御され、通常運転時は閉とされている。
【0032】
リガスボイラ30の蒸気ドラム30bとグリコール循環経路38に設けられた蒸気熱交換器60との間には、蒸気供給配管62が設けられている。蒸気供給配管62には、蒸気供給弁63が設けられている。蒸気供給弁63は、図示しない制御部によって制御される。蒸気熱交換器60でグリコールを加熱した後の蒸気はドレン水となり、ドレン水配管65を介して給水タンク46へと導かれる。なお、グリコールとしては、例えばエチレングリコールが用いられる。
【0033】
蒸気タービン32は、蒸気によって回転させられるとともに回転軸33を回転する。回転軸33は、蒸気タービン発電機34に接続されており、蒸気タービン発電機34を駆動する。蒸気タービン発電機34によって発電された電力は、船内の必要電力として用いられ、例えば、LNGを送る送液ポンプ22や、グリコールを循環させるための循環ポンプ67に用いられる。
【0034】
復水器36には、蒸気タービン32で仕事を終えた蒸気が導かれる。復水器36にて凝縮された復水は、復水ポンプ69を介して給水タンク46へと導かれる。復水器36内には、蒸気を冷却する熱媒体として海水が導かれるようになっている。
【0035】
グリコール循環経路38には、海水熱交換器72が設けられている。海水熱交換器72では、海水ポンプ70によって海水取水配管71を介して導かれた海水とグリコールとが熱交換する。海水熱交換器72にて熱交換を終えた海水は、排水配管73を介して海洋へと放出される。海水ポンプ70は、図示しない制御部によって制御される。
【0036】
グリコール循環経路38は、海水熱交換器72の上流側に、循環ポンプ67を備えている。循環ポンプ67によって、グリコールは、海水熱交換器72、蒸気熱交換器60及び気化器25を順に循環する。循環ポンプ67は、電動ポンプとされ、図示しない制御部によって制御される。
【0037】
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0038】
<オープンループ>
次に、上記構成のLNG気化装置1の動作について説明する。先ず、蒸気熱交換器60を用いずに、海水熱交換器72を用いるオープンループについて説明する。オープンループの場合、LNGの気化の為の熱源は海水が使用され、海水熱交換器72を使って、海水でグリコールを加熱することによって必要な熱を得る。このため、水温が高い海域や夏季にオープンループが用いられる。
【0039】
オープンループでは、リガスボイラ30はLNG気化の熱源としては動作しない。リガスボイラ30の蒸気ドラム30bは、気液分離器として用いられる。制御部は、ドラム水ポンプ42を起動し、水ドラム30a内の水を蒸発器44へと導き、排ガスエコノマイザ14を流れる排ガスと熱交換させる。蒸発器44へと導かれた水は、加熱された後に蒸気ドラム30bへと導かれて気液分離される。蒸気ドラム30bで分離された蒸気は、蒸気需要部50及び蒸気タービン32へと導かれる。蒸気タービン32へ導かれる蒸気は、排ガスエコノマイザ14の過熱器53によって過熱される。排ガスエコノマイザ14へは、ディーゼルエンジン5で発生した排ガスが導かれる。なお、蒸気需要部で必要とされる蒸気量が、排ガスエコノマイザからの熱回収で発生する蒸気を上回る場合は、蒸気タービン32へ導かれる蒸気は遮断され、それでも蒸気量が不足する場合は、リガスボイラ30が運転される。
【0040】
制御部は、蒸気供給弁63を閉として、蒸気熱交換器60へ蒸気を流さないようにする。また、制御部は、送液ポンプ22や、循環ポンプ67、海水ポンプ70等の運転を制御する。
【0041】
LNGタンク3から導かれたLNGは、LNG配管23を介して送液ポンプ22によって気化器25へと供給される。気化器25では、グリコール循環経路38を流れるグリコールによって加熱されて気化される。気化されたLNGは、送ガス配管26を介して外部の需要先へと導かれる。
【0042】
気化器25にてLNGを気化することによって冷却されたグリコールは、海水熱交換器72にて海水によって加熱される。海水によって加熱されたグリコールは、蒸気熱交換器60へ導かれる。蒸気熱交換器60には、リガスボイラ30から蒸気が導かれないので、蒸気熱交換器60にて加熱されることなくグリコールは気化器25へと導かれる。
【0043】
<コンバインド(クローズ)ループ>
次に、図2を参照して、蒸気熱交換器60を用いるコンバインドループ又はクローズループについて説明する。コンバインドループ及びクローズループでは、いずれも蒸気熱交換器60を用いることで共通する。ただし、クローズループでは、海水熱交換器72を用いず、コンバインドループでは海水熱交換器72を部分的に用いる。
【0044】
LNGタンク3からBOGがボイラ用BOG供給配管40を介してBOGがリガスボイラ30に導かれる。リガスボイラ30では、BOGを燃料としてバーナ(図示せず)にて火炎が形成されることによって、給水配管47を介して供給された給水が加熱されて蒸気が生成される。生成された蒸気は、蒸気ドラム30bから蒸気需要部50へ導かれる。排ガスエコノマイザ14で発生した蒸気もリガスボイラ30の加勢となる。排ガスエコノマイザ14へは、ディーゼルエンジン5で発生した排ガスが導かれる。
【0045】
制御部は、蒸気供給弁63を開とするとともに、海水ポンプ70を停止する。これにより、グリコール循環経路38を流れるグリコールは、蒸気熱交換器60によって加熱されることになる。
【0046】
このように、クローズループでは、海水熱交換器72を使用しないので、冷却された海水を海洋に放出することがない。したがって、環境負荷を低減することができる。
なお、必要な場合は、コンバインドループとして、必要量だけ海水を海水熱交換器72に供給してグリコールを補助的に加熱するようにしても良い。
コンバインドループ時は、蒸気加減弁55を閉めることで、排熱回収の熱をFSRU側に回して、リガスボイラ30への投入燃料を下げる方がメリットがある。
【0047】
<GCUモード時>
次に、図3を参照して、GCUモード時(ボイルオフガス焼却処理モード時)について説明する。GCUモード時は、気化器25にてLNGを加熱して気化することは行われない。すなわち、外部からLNGの気化が要求されていない状態である。したがって、気化器25ではLNGとの熱交換は行われない。
【0048】
LNGを外部へ送出しないので、LNGタンク3内には不可避的な侵入熱等によってBOGが発生し、LNGタンク3内の圧力が上昇する。制御部は、LNGタンク3内の圧力が所定圧よりも上昇した場合には、BOGを焼却処理するためにGCUモードを選択する。
【0049】
GCUモードが選択されると、制御部は、BOGをリガスボイラ30へと供給する。これにより、リガスボイラ30にてBOGが焼却処理される。このときに発生した蒸気は、蒸気ドラム30bから蒸気熱交換器60へと送られる。すなわち、蒸気供給弁63を開とする。このとき、蒸気加減弁55は閉とされ、蒸気タービン32には蒸気は供給されず、蒸気タービン32は停止されている。
【0050】
グリコール循環経路38では、循環ポンプ67が起動され、グリコールが循環している。また、海水ポンプ70が起動され、海水が海水熱交換器72に供給される。これにより、蒸気熱交換器60へ供給された蒸気はグリコールによって冷却され、ドレン水は給水タンク46へと送られる。蒸気を冷却して温度上昇したグリコールは、気化器25を通過した後に海水熱交換器72へと導かれる。気化器25にはLNGが供給されていないので気化器25ではグリコールは熱交換しない。しかし、海水熱交換器72にてグリコールは海水によって冷却される。これにより、蒸気熱交換器60にて回収された蒸気の凝縮熱は、海水熱交換器72によって外部へと排出される。
【0051】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
GCUモード時(図3参照)に、リガスボイラ30で発生した蒸気を蒸気熱交換器60へ送ることとした。蒸気熱交換器60にて蒸気とグリコールとの間で熱交換が行われ、グリコール循環経路38を循環するグリコールを介して放熱されることになる。すなわち、グリコール循環経路38で蒸気をダンプ処理することにより、GCUモード時に必要となる大型のコンデンサを設ける必要がなくなり、初期投資を抑えることができる。
【0052】
グリコール循環経路38に海水熱交換器72を備え、海水熱交換器72を介してグリコールから海水へと放熱を行うようにした。これにより、効果的にBOG焼却によって発生した蒸気の凝縮熱を外部へと放熱することができる。
【0053】
なお、蒸気ダンプ弁58を開として、蒸気熱交換器60を復水器36の補助として用いるようにしてもよい。これにより、既存の復水器36を有効に利用することができる。例えば、制御部は、GCUモード時に蒸気供給弁63を閉としたままで蒸気ダンプ弁58を開とし、先ずは復水器36でダンプした蒸気を凝縮させる。そして、制御部は、GCUモード時のリガスボイラ30の負荷を演算しておき、復水器36で回収する熱量が所定値を超えた場合に、蒸気ダンプ弁58は開度を維持し、蒸気供給弁63を開として、蒸気熱交換器60を利用する。これにより、蒸気熱交換器60と復水器36にてBOG燃焼による発生蒸気の凝縮熱を分配することができ、各機器を適正な容量に抑えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 LNG気化装置(液化ガス気化装置)
3 LNGタンク(液化ガスタンク)
5 ディーゼルエンジン(発電用エンジン)
7 BOG供給配管
9 BOG圧縮機
10 BOG冷却熱交換器
12 過給機
14 排ガスエコノマイザ
14a 排ガスエコノマイザ弁
15 排ガスバイパス配管
15a バイパス弁
16 空気冷却器
18 LNGポンプ
20 気液分離器
22 送液ポンプ(液化ガスポンプ)
23 LNG配管
25 気化器
26 送ガス配管
30 リガスボイラ(ボイラ)
30a 水ドラム
30b 蒸気ドラム
32 蒸気タービン
33 回転軸
34 蒸気タービン発電機
36 復水器
38 グリコール循環経路(不凍液循環経路)
40 ボイラ用BOG供給配管
42 ドラム水ポンプ
44 蒸発器
46 給水タンク
47 給水配管
48 給水ポンプ
50 蒸気需要部
51 船内蒸気供給弁
52 蒸気タービン用蒸気配管
53 過熱器
54 蒸気止め弁
55 蒸気加減弁
57 蒸気ダンプ配管
58 蒸気ダンプ弁
60 蒸気熱交換器
62 蒸気供給配管
63 蒸気供給弁
65 ドレン水配管
67 循環ポンプ
69 復水ポンプ
70 海水ポンプ
71 海水取水配管
72 海水熱交換器
73 排水配管
図1
図2
図3