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特許7366564カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物、カラーフィルタ用赤色色材分散液、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置
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  • 特許-カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物、カラーフィルタ用赤色色材分散液、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-13
(45)【発行日】2023-10-23
(54)【発明の名称】カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物、カラーフィルタ用赤色色材分散液、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/22 20060101AFI20231016BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231016BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20231016BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20231016BHJP
   C09B 11/28 20060101ALI20231016BHJP
   C09B 57/04 20060101ALI20231016BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20231016BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231016BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231016BHJP
【FI】
C09B67/22 F
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G03F7/027
C09B11/28 E
C09B57/04
C09B67/20 J
G02F1/1335 505
G09F9/30 349B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019063261
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020164555
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕史
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168365(JP,A)
【文献】特開2011-038085(JP,A)
【文献】特開2019-053303(JP,A)
【文献】特開2016-103012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/22
C09D 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材(A)と、バインダー成分(B)と、溶剤(C)とを含有し、
前記色材(A)が、下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量が31.0質量部以上であり、前記C.I.ピグメントイエロー139の含有量が6.0質量部以上である、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基として炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は飽和脂肪族炭化水素基であり、RとR、RとRが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和脂肪族炭化水素基である。Rは、-SO 又は-COOである。)
【請求項2】
前記色材(A)の含有量が、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の全固形分に対して、38.0質量%以下である、請求項1に記載のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物。
【請求項3】
更に分散剤(D)を含有し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が、前記分散剤(D)に分散されてなる、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物。
【請求項4】
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、赤色顔料の含有量が50質量部以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物。
【請求項5】
色材(A)と、溶剤(C)とを含有し、
前記色材(A)が、下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量が31.0質量部以上であり、前記C.I.ピグメントイエロー139の含有量が6.0質量部以上である、カラーフィルタ用赤色色材分散液。
【化2】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基として炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は飽和脂肪族炭化水素基であり、RとR、RとRが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和脂肪族炭化水素基である。Rは、-SO 又は-COOである。)
【請求項6】
更に分散剤(D)を含有し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が、前記分散剤(D)に分散されてなる、請求項5に記載のカラーフィルタ用赤色色材分散液。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが請求項7に記載の硬化物である、カラーフィルタ。
【請求項9】
請求項8に記載のカラーフィルタを有する、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物、カラーフィルタ用赤色色材分散液、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。モバイルディスプレイ(携帯電話、スマートフォン、タブレットPC)の普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にあり、コントラストや色再現性の向上といったさらなる高画質化や消費電力の低減が強く望まれている。
表示装置におけるカラー画像の形成は、例えば液晶表示装置では、カラーフィルタを通過した光がそのままカラーフィルタを構成する各画素の色に着色されて、それらの色の光が合成されてカラー画像を形成する。近年の傾向として、画像表示装置の省電力化が求められており、バックライトの利用効率を向上させるためにカラーフィルタの高輝度化が特に求められている。特にモバイルディスプレイでは大きな課題である。
【0003】
カラーフィルタにおいては、赤、緑、青色画素の3点を結んだ領域が、再現できる色の限界となる。つまり、赤、緑、青色画素の3点による三角形が大きいカラーフィルタほど、表示装置が画面上で再現できる色の範囲が広いということになる。
従来の表示装置は、色空間の国際標準規格であるsRGB(IEC61966-2-1)に準拠するものが多かった。しかしながら、より実物に近い表現を求めて、更なる色再現性の向上の要求から、sRGBと比べて広い色再現域を有するDCI(Digital Cinema Initiatives)規格や、BT.2020の色域に対応する表示装置への要求が高まっている。赤色に関しては、XYZ表色系における色度座標(x,y)が、sRGBでは、x=0.640、y=0.330と定められており、DCI規格では、x=0.680、y=0.320と定めされており、BT.2020の色域では、x=0.708、y=0.292と定めされている。
【0004】
従来、カラーフィルタの赤色画素には、主顔料としてジケトピロロピロール系顔料であるC.I.ピグメントレッド254を用い、更にアントラキノン系顔料であるC.I.ピグメントレッド177を組み合わせて用いることが広く行われている。
また、特許文献1には、高明度な赤色カラーフィルタを製造することを目的として、特定の構造を有するキサンテン化合物と、顔料とを含む着色剤を含有する赤色着色硬化性樹脂組成物が開示されており、赤色顔料に、少量のキサンテン化合物を組み合わせて用いている。特許文献1には、具体的に、色度座標(x,y)がx=0.661、y=0.319~0.325の着色パターンが得られたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-140348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い色再現性を有しながら、溶剤再溶解性に優れ、輝度が向上した赤色着色層を形成可能なカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、溶剤再溶解性に優れた赤色着色樹脂組成物を製造可能で、色再現性に優れ、輝度が向上した赤色着色層を形成可能なカラーフィルタ用赤色色材分散液を提供することを目的とする。また、本発明は、前記カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物、前記カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を用いた、色再現性に優れ、輝度が向上したカラーフィルタ、及び当該カラーフィルタを有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、色材(A)と、バインダー成分(B)と、溶剤(C)とを含有し、
前記色材(A)が、下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量が31.0質量部以上であり、前記C.I.ピグメントイエロー139の含有量が6.0質量部以上である、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物。
【0008】
【化1】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基として炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は飽和脂肪族炭化水素基であり、RとR、RとRが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和脂肪族炭化水素基である。Rは、-SO 又は-COOである。)
【0009】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、色材(A)と、溶剤(C)とを含有し、
前記色材(A)が、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量が31.0質量部以上であり、前記C.I.ピグメントイエロー139の含有量が6.0質量部以上である。
【0010】
また、本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物を提供する。
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物である。
また、本発明は、前記本発明に係るカラーフィルタを有する、表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い色再現性を有しながら、溶剤再溶解性に優れ、輝度が向上した赤色着色層を形成可能なカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、溶剤再溶解性に優れた赤色着色樹脂組成物を製造可能で、色再現性に優れ、輝度が向上した赤色着色層を形成可能なカラーフィルタ用赤色色材分散液を提供することができる。また、本発明によれば、前記カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物、前記カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を用いた、色再現性に優れ、輝度が向上したカラーフィルタ、及び当該カラーフィルタを有する表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
図2図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物、カラーフィルタ用赤色色材分散液、硬化物、カラーフィルタ、及び表示装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれる。非可視領域の波長の電磁波としては、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線が挙げられる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことをいう。
また、本発明において(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
また、本発明において有機基とは、炭素原子を1個以上有する基のことをいう。
【0014】
I.カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、色材(A)と、バインダー成分(B)と、溶剤(C)とを含有し、
前記色材(A)が、下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量が31.0質量部以上であり、前記C.I.ピグメントイエロー139の含有量が6.0質量部以上である。
【0015】
【化2】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基として炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は飽和脂肪族炭化水素基であり、RとR、RとRが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和脂肪族炭化水素基である。Rは、-SO 又は-COOである。)
【0016】
特許文献1には、赤色顔料に、キサンテン染料を組み合わせて含む赤色着色硬化性樹脂組成物が開示されており、キサンテン染料と顔料との含有比率(キサンテン染料:顔料)について、5:95~30:70であることが、透過スペクトルの最適化が容易となり、得られるカラーフィルタのコントラスト、明度、耐熱性及び耐薬品性に優れる傾向があることから最も好ましい旨が記載されている。特許文献1では、具体的に、C.I.ピグメントレッド254、242及び177から選ばれる少なくとも1種とキサンテン染料とからなる色材の合計100質量部中、キサンテン染料を23質量部以下の割合で配合して、色度座標(x,y)がx=0.661、y=0.319~0.325の着色パターンを得ている。一方、DCI規格やBT.2020の色域への対応に向けて、x≧0.670の深い赤色の色度領域の再現が求められている。本発明者は、色材として赤色顔料とキサンテン系色材のみを用いてx≧0.670の赤色を再現しようとすると、後述する比較例5で示されているように、赤色画素の輝度が低下し、さらに、着色樹脂組成物の溶剤再溶解性が不足しやすいという問題があることを見出した。赤色顔料とキサンテン系色材の他に、更に黄色顔料を組み合わせて用いても、後述する比較例1~4で示されているように、画素の輝度は向上する傾向にあるものの、十分な溶剤再溶解性を得ることは困難である。このように、キサンテン系色材を含む従来の着色樹脂組成物は、溶剤再溶解性が不足する傾向がある。しかし、キサンテン系色材を用いずに、x≧0.670の赤色を再現するように色材を配合すると、後述する比較例6~9で示されているように、輝度又は溶剤再溶解性が低下してしまう。ここで、着色樹脂組成物の溶剤再溶解性とは、一度乾燥した着色樹脂組成物の固形分が再度溶剤に溶解する性質、すなわち溶剤への再溶解性であり、カラーフィルタの製造工程においては、着色樹脂組成物が溶剤再溶解性に優れたものであることが求められる。例えば、ダイコーターによる塗布を行う際にダイリップ先端に着色樹脂組成物が付着すると、乾燥によって固化物が発生するが、塗布が再開された際に固化物が着色樹脂組成物に溶解しやすくないと、ダイリップ上の固化物が一部剥離し、カラーフィルタの着色層に付着しやすく、異物欠陥の原因となる。特に、着色樹脂組成物の色材濃度を高めた場合には、溶剤再溶解性が不足しやすく、カラーフィルタの製造工程の上記異物の発生による歩留まりの低下が問題となっている。
本発明者は、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が、波長500nm以上600nm以下の範囲にある光に対して優れた遮光性を示し、C.I.ピグメントイエロー139が、波長400nm以上500nm以下の範囲にある光に対して優れた遮光性を示すため、これらの色材を組み合わせることにより、波長400nm以上600nm以下の光の透過率を効率良く低減できることを見出し、更に、着色樹脂組成物中の色材の合計量100質量部のうち、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の割合を31.0質量部以上とし、C.I.ピグメントイエロー139の割合を6.0質量部以上とすることにより、着色樹脂組成物中の色材濃度を低減しながら、x≧0.670の深い赤色を再現できることを見出した。キサンテン系色材を含む着色樹脂組成物は、上述したように溶剤再溶解性が不足する傾向があるが、本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、着色樹脂組成物中の色材濃度を低減することができるため、溶剤再溶解性を向上することができる。本発明においては、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを、各々前記特定量以上で組み合わせて用いることにより、効率良く深い赤色を再現することができるため、調色のための色材量を低減することができ、その結果、着色樹脂組成物中の色材濃度を低減することができる。着色樹脂組成物中の色材濃度を十分に低減することにより、キサンテン系色材を含有していても、優れた溶剤再溶解性を達成することができ、また、着色層の輝度も、より一層向上することができる。本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物においては、特に、色材濃度を38.0質量%以下とすることにより、溶剤溶解性を向上することができる。
【0017】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、少なくとも色材(A)と、バインダー成分(B)と、溶剤(C)とを含有するものであり、本発明の効果を損なわない範囲で、更に他の成分を含有してもよいものである。
以下、このような本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の各成分について順に詳細に説明する。
【0018】
<色材(A)>
本発明において用いられる色材(A)は、少なくとも、下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、本発明の効果を損なわない範囲で更に他の色材を含有してもよい。本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物においては、下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを、各々特定量以上で組み合わせて用いることにより、高い色再現性を有しながら、溶剤再溶解性に優れ、輝度が向上した赤色着色層を形成することができる。
【0019】
(一般式(1)で表されるキサンテン系色材)
本発明においては、色材として下記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が用いられる。
【0020】
【化3】
(一般式(1)中、R及びRはそれぞれ独立に、飽和脂肪族炭化水素基、又は置換基として炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は飽和脂肪族炭化水素基であり、RとR、RとRが互いに結合して環構造を形成していてもよい。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和脂肪族炭化水素基である。Rは、-SO 又は-COOである。)
【0021】
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材は、波長500nm以上600nm以下の範囲にある光に対して優れた遮光性を示す。中でも、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材としては、0.05質量%濃度に調整した溶液において、波長520nm以上580nm以下での透過率が3%以下であるものが好ましく、波長510nm以上590nm以下での透過率が3%以下であるものがより好ましく、波長500nm以上600nm以下での透過率が3%以下であるものがより更に好ましい。なお、前記透過率の測定に用いる溶液中の溶剤としては、例えば、メタノール及びジアセトンアルコール等のアルコール類を用いることができる。
また、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材は、カチオン性のキサンテン骨格と、アニオン性基1個とを有し、分子内塩のみを有するため、金属イオンやハロゲンイオンを有することなく電気的に安定化する。そのため、溶剤中に分散させても、解離することなく安定性に優れ、また、耐熱性や耐光性に優れるとともに、例えば、液晶表示装置用のカラーフィルタとして用いる場合、当該カラーフィルタから液晶層への不純物イオンの溶出が無く、液晶表示駆動への悪影響を防ぐことができる。
【0022】
前記一般式(1)中のR、R、R及びRにおける飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、中でも、直鎖又は分岐のアルキル基が好ましい。また、R及びRにおける飽和脂肪族炭化水素基の炭素数は、1以上20以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上5以下であることがより更に好ましい。
前記一般式(1)中のR及びRにおける芳香族炭化水素基としては、例えば、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基が挙げられ、中でも、フェニル基及びナフチル基が好ましい。R及びRにおける芳香族炭化水素基が置換基として有していてもよい炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、中でも、直鎖又は分岐で、炭素数1以上5以下のアルキル基が好ましい。
とR又はRとRが互いに結合して環構造を形成する場合、形成される環構造としては、例えば、炭素数4以上10以下の飽和脂肪族環が挙げられ、中でも、炭素数4以上6以下の飽和脂環式炭化水素が好ましい。
【0023】
一般式(1)中のR、R、R及びRは、中でも、R及びRが、置換基として炭素数1以上10以下の飽和脂肪族炭化水素基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R及びRが、飽和脂肪族炭化水素基であることが、耐光性を向上する点、及び高輝度な塗膜乃至着色層を形成可能な点から好ましい。窒素原子が、芳香族性の置換基を有するため、当該窒素原子が有する孤立電子対が、キサンテン骨格のみならず芳香族炭化水素基とも共鳴することにより、分子がより安定化し、更に、窒素原子は直接水素原子と結合していないため、窒素原子から水素原子が脱離して色材が不安定化することがないため、耐光性に優れ、高輝度な塗膜や着色層が形成可能となると推定される。
なお、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R、R、R及びRが互いに同一であってもよい。
【0024】
一般式(1)中のR及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上4以下の飽和脂肪族炭化水素基であり、当該飽和脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、中でも、直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。一般式(1)中のR及びRは、中でも、着色力の低下を抑制する点から、水素原子であることが好ましい。なお、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
一般式(1)中のRは、-SO 又は-COOであり、中でも、耐光性に優れる点から、-SO であることが好ましい。なお、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を用いる際に、Rにおける-SO を-SOHに変換して用いてもよく、Rにおける-COOを-COOHに変換して用いてもよい。
一般式(1)中のRの置換位置は、特に限定はされないが、キサンテン骨格に対して、オルト位又はパラ位であることが好ましく、オルト位に置換されていることが、耐光性の点からより好ましい。
【0026】
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の製造方法は、特に限定はされないが、例えば、具体的には例えば以下の方法が挙げられる。
スルホフルオラン化合物と、R及びRに対応するアミン化合物を溶媒中で還流させ、この反応液を希塩酸に注ぎ、室温で攪拌した後、ウェットケーキをろ取する。このウェットケーキを洗浄後、乾燥させることにより上記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が得られる。また、R及びRとR及びRとで、一部の構造が異なり、キサンテン環に対して非対称な構造を有する一般式(1)で表される色材を製造する場合は、対応する半分のアミン化合物を、大希釈のスルホフルオラン化合物メタノール溶液に、少量ずつ滴下し、反応後、残る一方のアミン化合物を滴下したり、各アミン化合物の1:1溶液をスルホフルオラン化合物メタノール溶液にゆっくり滴下したりすることにより、高収率でキサンテン環に対して非対称な構造を有する一般式(1)で表される色材を得ることができる。
【0027】
本発明において、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量は、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、31.0質量部以上であり、溶剤再溶解性の点及び輝度の点から、34.0質量部以上であることが好ましく、赤色顔料を含有していても輝度を向上しやすい点から、36.0質量部以上であることがより好ましく、40.0質量部以上であってもよい。一方、色再現性の点から、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量は、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、60.0質量部以下であることが好ましく、50.0質量部以下であることがより好ましい。
【0028】
(C.I.ピグメントイエロー139)
本発明においては、色材として、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを組み合わせて用いる。
C.I.ピグメントイエロー139の含有量は、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、6.0質量部以上であり、溶剤再溶解性の点及び輝度の点から、18.0質量部以上であることが好ましく、25質量部以上であってもよい。一方、色再現性の点から、C.I.ピグメントイエロー139の含有量は、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、70質量部以下であることが好ましく、66質量部以下であることがより好ましく、55質量部以下であってもよい。
【0029】
(他の色材)
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物においては、本発明の効果が損なわれない範囲で、色調の制御を目的として、必要に応じて、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材及びC.I.ピグメントイエロー139とは異なる他の色材を更に用いてもよい。当該他の色材としては、例えば、従来公知の有機顔料、レーキ顔料、染料、無機顔料等を目的に応じて選択することができ、1種又は2種以上用いることができる。ここで、有機顔料は、染料やレーキ顔料に比べ、耐熱性や耐光性等の諸耐性に優れ、染料は、可溶性のため有機顔料に比べて透過性が高い。また、レーキ顔料とは、水に可溶性の染料をレーキ化剤(沈殿剤)で沈殿して不溶性にした有機顔料をいう。レーキ顔料は、染料由来のため、通常の顔料に比べて透過率が高く、高輝度化の要求を達成することが可能である。
【0030】
前記他の色材としては、色調の制御を目的として、赤色色材を好ましく用いることができる。赤色色材としては、中でも着色力の点から赤色顔料を好ましく用いることができ、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、ナフトール系アゾ顔料やその他のアゾ顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料等を好ましく用いることができ、中でも、着色力が高い点から、ジケトピロロピロール系顔料、ナフトール系アゾ顔料、アントラキノン系顔料、及びペリレン系顔料からなる群から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。更に、輝度が高い点から、ジケトピロロピロール系顔料及びアントラキノン系顔料からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ジケトピロロピロール系顔料がより好ましい。
【0031】
前記ジケトピロロピロール系顔料としては、例えば、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0032】
【化4】
(一般式(2)中、A及びAは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、フェニル基、N,N-ジメチルアミノ基、トリフルオロメチル基、又はシアノ基を表し、k及びk’はそれぞれ独立に0以上5以下の整数を表し、k及びk’がそれぞれ2以上の整数の場合、複数のA及びAは、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【0033】
前記ジケトピロロピロール系顔料としては、具体的には、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド291、及び下記化学式(D1-1)で表されるジケトピロロピロール顔料(BrDPP)等が挙げられ、中でも、着色層の輝度を向上しやすい点から、C.I.ピグメントレッド254が好ましい。
【0034】
【化5】
【0035】
前記ナフトール系アゾ顔料としては、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド185等が挙げられる。
その他のアゾ系顔料としては、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド41等が挙げられる。
【0036】
前記アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントオレンジ51等が挙げられ、中でも、C.I.ピグメントレッド177が好ましい。
【0037】
前記ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224等が挙げられる。
【0038】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が赤色顔料を含有する場合、赤色顔料の含有量は、所望の色度を達成するために適宜調整することが好ましく、特に限定はされないが、着色層の輝度の低下を抑制する点から、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、63質量部未満であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがより更に好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。一方、赤色顔料により色調を制御するためには、前記赤色顔料の含有量は、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがより更に好ましい。
【0039】
また、前記他の色材としては、C.I.ピグメントイエロー139とは異なる黄色色材を用いてもよい。C.I.ピグメントイエロー139とは異なる黄色色材としては、中でも、着色力の点から、黄色顔料を好ましく用いることができ、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、61:1、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、133、137、138、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、183、185、187、188、191、193、194、199、206、209:1、212、213、214等が挙げられる。
【0040】
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材及びC.I.ピグメントイエロー139とは異なる他の色材の合計含有量は、色再現性、溶剤再溶解性及び輝度の点から、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、63質量部未満であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがより更に好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。一方、前記他の色材により色調を制御するためには、前記他の色材の合計含有量は、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が含有する色材の合計量100質量部に対し、5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがより更に好ましい。
【0041】
また、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、樹脂組成物の溶剤再溶解性の点及び着色層の輝度の点から、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の全固形分に対する前記色材の合計含有量は、38.0質量%以下であることが、好ましく、35.0質量%以下であることがより好ましい。一方、着色層の膜厚を薄くできる点から、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の全固形分に対する前記色材の合計含有量は、18.0質量%以上であることが好ましく、25.0質量%以上であることがより好ましい。
なお、本発明において固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、溶剤中に溶解しているモノマー等も含まれる。
【0042】
<バインダー成分(B)>
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するためにバインダー成分を含有する。塗膜に充分な硬度を付与するために、硬化性バインダー成分を含有することが好ましい。硬化性バインダー成分としては、特に限定されず、従来公知のカラーフィルタの着色層を形成するのに用いられる硬化性バインダー成分を適宜用いることができる。
硬化性バインダー成分としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含む感光性バインダー成分や、加熱により重合硬化させることができる熱硬化性樹脂を含む熱硬化性バインダー成分を含むものを用いることができる。
【0043】
着色層を形成する際にフォトリソグラフィー工程を用いる場合には、アルカリ現像性を有する感光性バインダー成分が好適に用いられる。なお、感光性バインダー成分に、熱硬化性バインダー成分を更に加えて用いてもよい。
感光性バインダー成分としては、ポジ型感光性バインダー成分とネガ型感光性バインダー成分が挙げられる。ポジ型感光性バインダー成分としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂と、感光性付与成分としてo-キノンジアジド基含有化合物とを含んだ系等が挙げられる。
【0044】
一方、ネガ型感光性バインダー成分としては、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤を少なくとも含有する系が好適に用いられる。
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物においては、前記バインダー成分がネガ型感光性バインダー成分であることが、フォトリソグラフィー法によって既存のプロセスを用いて簡便にパターンを形成できる点から好ましい。
以下、ネガ型感光性バインダー成分に含まれる、アルカリ可溶性樹脂と、多官能モノマーと、光開始剤について、具体的に説明する。
【0045】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は酸性基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられるアルカリ現像液に可溶性であるものの中から、適宜選択して使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂とは、酸価が40mgKOH/g以上であることを目安にすることができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、酸性基、通常カルボキシ基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシ基を有するアクリル系共重合体及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシ基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂、並びにエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0046】
カルボキシ基を有する構成単位を有するアクリル系共重合体、及びカルボキシ基を有するスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂は、例えば、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマー、及び必要に応じて共重合可能なその他のモノマーを、公知の方法により(共)重合して得られた(共)重合体である。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの無水物含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0047】
アルカリ可溶性樹脂は、着色層の密着性が優れる点から、更に炭化水素環を有することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂に嵩高い基である、炭化水素環を有することにより硬化時の収縮が抑制され、基板との間の剥離が緩和し、基板密着性が向上する。また、本発明者らは、炭化水素環を有するアルカリ可溶性樹脂を用いることにより、得られた着色層の耐溶剤性、特に着色層の膨潤が抑制されるとの知見を得た。作用については未解明であるが、着色層内に嵩高い炭化水素環が含まれることにより、着色層内における分子の動きが抑制される結果、塗膜の強度が高くなり溶剤による膨潤が抑制されるものと推定される。
このような炭化水素環としては、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、及びこれらの組み合わせが挙げられ、炭化水素環がアルキル基、カルボニル基、カルボキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
炭化水素環は、1価の基として含まれていても良いし、2価以上の基として含まれていても良い。
【0048】
炭化水素環の具体例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ノルボルナン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン(ジシクロペンタン)、アダマンタン等の脂肪族炭化水素環;ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン等の芳香族炭化水素環;ビフェニル、ターフェニル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、スチルベン等の鎖状多環や、カルド構造(9,9-ジアリールフルオレン)等が挙げられる。
【0049】
炭化水素環として、脂肪族炭化水素環を含む場合には、着色層の耐熱性や密着性が向上すると共に、着色層の輝度が向上する点から好ましい。
また、前記カルド構造を含む場合には、着色層の硬化性が向上し、耐溶剤性(NMP膨潤抑制)が向上する点から特に好ましい。
【0050】
アルカリ可溶性樹脂は、2つ以上の環が2以上の原子を共有した構造を有する脂肪族炭化水素環である、架橋環式炭化水素環を有するのも好ましい。
架橋環式炭化水素環の具体例としては、ノルボルナン、イソボルナン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカン、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デセン、トリシクロペンテン、トリシクロペンタン、トリシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン;これらの基の一部が置換基によって置換された基が挙げられる。
上記置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、水酸基、カルボニル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0051】
架橋環式炭化水素環の炭素数は、他の材料との相溶性やアルカリ現像液に対する溶解性の観点から、下限は5以上が好ましく、7以上が特に好ましい。上限は、12以下が好ましく、10以下が特に好ましい。
【0052】
また、アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(B1)で表されるマレイミド構造を有するのも好ましい。
【0053】
【化6】
(一般式(B1)において、Rは、置換されていてもよい炭化水素環である。)
【0054】
アルカリ可溶性樹脂が、前記一般式(B1)で表されるマレイミド構造を有する場合、炭化水素環に窒素原子を有するため、後述する高分子分散剤(D1)等の塩基性分散剤との相溶性が非常によく、現像速度が速く、現像残渣の抑制効果が向上する。
【0055】
前記一般式(B1)のRにおける、置換されていてもよい炭化水素環の具体例としては、前記炭化水素環の具体例と同様のものが挙げられる。
例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の脂肪族炭化水素環や、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、メトキシフェニル基、ベンジル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素環、これらの基の一部が置換基によって置換された基が挙げられる。
【0056】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂において、カルボキシ基を有する構成単位とは別に、前記炭化水素環を有する構成単位を有するアクリル系共重合体を用いることが、各構成単位量を調整しやすく、前記炭化水素環を有する構成単位量を増加して当該構成単位が有する機能を向上させやすい点から好ましい。
カルボキシ基を有する構成単位と、前記炭化水素環とを有するアクリル系共重合体は、前述の“共重合可能なその他のモノマー”として炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーを用いることにより調製することができる。
【0057】
炭化水素環を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどが挙げられ、現像後の着色層の断面形状が加熱処理においても維持される効果が大きい点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及びスチレンから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0058】
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂はまた、側鎖にエチレン性二重結合を有することも好ましい。エチレン性二重結合を有する場合には、カラーフィルタ製造時における樹脂組成物の硬化工程において、当該アルカリ可溶性樹脂同士、乃至、当該アルカリ可溶性樹脂と多官能モノマー等が架橋結合を形成し得る。硬化膜の膜強度がより向上して現像耐性が向上し、また、硬化膜の熱収縮が抑制されて基板との密着性に優れるようになる。
アルカリ可溶性樹脂中に、エチレン性二重結合を導入する方法は、従来公知の方法から適宜選択すればよい。例えば、アルカリ可溶性樹脂が有するカルボキシ基に、分子内にエポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法や、水酸基を有する構成単位を共重合体に導入しておいて、分子内にイソシアネート基とエチレン性二重結合とを備えた化合物を付加させ、側鎖にエチレン性二重結合を導入する方法などが挙げられる。
【0059】
本発明のアルカリ可溶性樹脂は、更にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等、エステル基を有する構成単位等の他の構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0060】
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることが好ましく、カルボキシ基を有する構成単位と、炭化水素環を有する構成単位と、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0061】
アルカリ可溶性樹脂は、各構成単位の仕込み量を適宜調整することにより、所望の性能を有するアルカリ可溶性樹脂とすることができる。
【0062】
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、良好なパターンが得られる点から、モノマー全量に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。一方、現像後のパターン表面の膜荒れ等を抑制する点から、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量は、モノマー全量に対して50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記下限値以上であると得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が十分であり、また、カルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの割合が上記上限値以下であると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れが起こり難い傾向がある。
【0063】
また、アルカリ可溶性樹脂としてより好ましく用いられる、エチレン性二重結合を有する構成単位とを有するアクリル系共重合体及びスチレン-アクリル系共重合体等のアクリル系樹脂において、エポキシ基とエチレン性二重結合とを併せ持つ化合物はカルボキシ基含有エチレン性不飽和モノマーの仕込み量に対して、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、15質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
カルボキシ基含有共重合体の好ましい重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上50,000以下の範囲内であり、さらに好ましくは3,000以上20,000以下の範囲内である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下する場合があり、50,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
なお、本発明において重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
【0065】
カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物、不飽和基含有モノカルボン酸、及び酸無水物は、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、それぞれ1種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点から、酸価が50mgKOH/g以上のものを選択して用いることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、現像液に用いるアルカリ水溶液に対する現像性(溶解性)の点、及び基板への密着性の点から、酸価が70mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましい。
なお、本発明において酸価はJIS K 0070に従って測定することができる。
【0067】
アルカリ可溶性樹脂の側鎖にエチレン性不飽和基を有する場合のエチレン性不飽和結合当量は、硬化膜の膜強度が向上して現像耐性が向上し、基板との密着性に優れるといった効果を得る点から、100~2000の範囲であることが好ましく、特に、140~1500の範囲であることが好ましい。該エチレン性不飽和結合当量が、100以上であれば現像耐性や密着性に優れている。また、2000以下であれば、前記カルボキシ基を有する構成単位や、炭化水素環を有する構成単位などの他の構成単位の割合を相対的に増やすことができるため、現像性や耐熱性に優れている。
ここで、エチレン性不飽和結合当量とは、上記アルカリ可溶性樹脂におけるエチレン性不飽和結合1モル当りの重量平均分子量のことであり、下記数式(1)で表される。
【0068】
数式(1)
エチレン性不飽和結合当量(g/mol)=W(g)/M(mol)
(数式(1)中、Wは、アルカリ可溶性樹脂の質量(g)を表し、Mはアルカリ可溶性樹脂W(g)中に含まれるエチレン性二重結合のモル数(mol)を表す。)
【0069】
上記エチレン性不飽和結合当量は、例えば、JIS K 0070:1992に記載のよう素価の試験方法に準拠して、アルカリ可溶性樹脂1gあたりに含まれるエチレン性二重結合の数を測定することにより算出してもよい。
【0070】
カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられるアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、その含有量としては特に制限はないが、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の固形分全量に対してアルカリ可溶性樹脂は好ましくは5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下の範囲内である。アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、充分なアルカリ現像性が得られやすく、また、アルカリ可溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、現像時に膜荒れやパターンの欠けを抑制しやすい。
【0071】
(多官能モノマー)
カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられる多官能モノマーは、前記光開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されず、通常、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が好適に用いられ、特にアクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する、多官能(メタ)アクリレートであることが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、従来公知のものの中から適宜選択して用いればよい。具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0072】
これらの多官能(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物に優れた光硬化性(高感度)が要求される場合には、多官能モノマーが、重合可能な二重結合を3つ(三官能)以上有するものであるものが好ましく、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0073】
カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられる上記多官能モノマーの含有量は、特に制限はないが、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の固形分全量に対して多官能モノマーは好ましくは5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上40質量%以下の範囲内である。多官能モノマーの含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み、露光部分が現像時の溶出を抑制でき、また、多官能モノマーの含有量が上記上限値以下であるとアルカリ現像性が十分である。
【0074】
(光開始剤)
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられる光開始剤としては、特に制限はなく、従来知られている各種光開始剤の中から、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
光開始剤としては、芳香族ケトン類、ベンゾインエーテル類、ハロメチルオキサジアゾール化合物、α-アミノケトン、ビイミダゾール類、N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、ハロメチル-S-トリアジン系化合物、チオキサントン等を挙げることができる。光開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル類、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体等のビイミダゾール類、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2-(4-ブトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-S-トリアジン等のハロメチル-S-トリアジン系化合物、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2-n-ブトキシエチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-メチルジフェニルサルファイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン、α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
中でも、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントンが好ましく用いられる。更に2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンのようなα-アミノアセトフェノン系光開始剤とジエチルチオキサントンのようなチオキサントン系光開始剤を組み合わせることが感度調整、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。
【0075】
また、光開始剤としては、感度を向上させる観点から、オキシムエステル系光開始剤も好ましい。オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、細線パターンを形成する際に、面内の線幅のばらつきが抑制され易い。更に、オキシムエステル系光開始剤を用いることにより、現像耐性が向上し、水染み発生抑制効果が高くなる傾向がある。なお、水染みとは、アルカリ現像性を高くする成分を用いると、アルカリ現像後、純水でリンスした後に、水が染みたような跡が発生することをいう。このような水染みは、ポストベーク後に消えるので製品としては問題がないが、現像後にパターニング面の外観検査において、ムラ異常として検出されてしまい、正常品と異常品の区別がつかないという問題が生じる。そのため、外観検査において検査装置の検査感度を下げると、結果として最終的なカラーフィルタ製品の歩留まり低下を引き起こし、問題となる。
当該オキシムエステル系光開始剤としては、分解物による着色樹脂組成物の汚染や装置の汚染を低減する点から、中でも、芳香環を有するものが好ましく、芳香環を含む縮合環を有するものがより好ましく、ベンゼン環とヘテロ環を含む縮合環を有することがさらに好ましい。
オキシムエステル系光開始剤としては、例えば、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)-、2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(o-アセチルオキシム)、特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特表2010-527339、特表2010-527338、特開2013-041153等に記載のオキシムエステル系光開始剤の中から適宜選択できる。市販品として、例えば、カルバゾール骨格を有するイルガキュアOXE-01(BASF社製)、アデカアークルズNCI-831(ADEKA社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料社製)、ジフェニルスルフィド骨格を有するアデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)、TR-PBG-345、TR-PBG-3057(以上、常州強力電子新材料社製)、フルオレン骨格を有するTR-PBG-365(常州強力電子新材料社製)などを用いても良い。特にジフェニルスルフィド骨格又はフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることは、着色層の輝度が向上する点から好ましい。カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を用いることは、感度が向上する点から好ましい。
またオキシムエステル系光開始剤を2種類以上併用することは、輝度、現像耐性が向上しやすく、水染み発生抑制効果が高い点で好ましい。特にジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤2種類の併用又は、ジフェニルスルフィド骨格を有するオキシムエステル系光開始剤とフルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは、着色層の輝度及び耐熱性が向上する点から好ましい。また、カルバゾール骨格を有するオキシムエステル系光開始剤と、フルオレン骨格を有するオキシムエステル系光開始剤又はジフェニルスルフィドを有するオキシムエステル系光開始剤を併用することは感度及び輝度が向上する点で好ましい。
【0076】
また、オキシムエステル系光開始剤に、3級アミン構造を有する光開始剤を組み合わせて用いることは、水染みを抑制し、また、感度向上の点から好ましい。3級アミン構造を有する光開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、光開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、感度を向上させることができるからである。上記3級アミン構造を有する光開始剤の市販品としては、例えば、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(例えばイルガキュア907、BASF社製)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン(例えばイルガキュア369、BASF社製)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(例えば、ハイキュアABP、川口薬品製)などが挙げられる。
また、オキシムエステル系光開始剤に、チオキサントン系光開始剤を組み合わせることは、感度調整の点、及び、水染みを抑制し、現像耐性が向上する点から好ましい。オキシムエステル系光開始剤を2種類以上と、チオキサントン系光開始剤を組み合わせることは、輝度及び現像耐性が向上し、感度調整をしやすく、水染み発生抑制効果が向上する点で好ましい。
【0077】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられる光開始剤の含有量は、上記多官能モノマー100質量部に対して、通常0.01質量部以上100質量部以下程度、好ましくは5質量部以上60質量部以下である。この含有量が上記下限値以上であると十分に光硬化が進み露光部分が現像時に溶出することを抑制し、一方上記上限値以下であると得られる着色層の黄変性が弱くなって輝度が低下することを抑制できる。
【0078】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられるバインダー成分は、これらの合計含有量が、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の固形分全量に対して60質量%以上90質量%以下であることが好ましく、63質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、着色樹脂組成物の溶剤再溶解性を向上し、強度及び基板との密着性に優れた着色層を得ることができる。また上記上限値以下であれば、前記色材を十分に含有させることができ、現像性に優れ、熱収縮による微小なシワの発生も抑制される。
【0079】
<溶剤(C)>
本発明において用いられる溶剤は、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物中の各成分と反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であればよく、特に限定されるものではない。
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材は、溶剤に溶解して用いても良いし、分散して用いても良いが、耐熱性の観点からは、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を分散可能なように、後述する分散剤と組み合わせて、溶剤を選択して用いることが好ましい。
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を溶剤に分散して用いる場合、当該溶剤としては、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下の溶剤が好ましい。色材に対してこのような実質的に溶解しない溶剤又は難溶性の溶剤を用いることにより、色材を溶剤中で微細な粒子として分散させて用いることができる。中でも、分散性、耐熱性に優れ、高輝度な着色層が得られる点から、23℃における前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の溶解度が0.1(g/100g溶剤)以下の溶剤が好ましい。
なお、前記溶剤が、2種以上の溶剤を含む混合溶剤である場合は、当該混合溶剤に対する前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下であればよい。
一方、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を溶剤に溶解して用いる場合は、該溶剤として、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が2.0(g/100g溶剤)以上の溶剤を好ましく用いることができる。
【0080】
本発明において、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下である溶剤は、以下の評価方法により簡易的に判定することができる。
まず、下記の方法により、色材を実質的に溶解しない溶剤であるか否かを判断することができる。
20mLサンプル管瓶に、溶解性を判断しようとする色材を0.1g投入し、溶剤Sを10mlホールピペットを用いて投入し、更にふたをした後に超音波で3分間処理する。得られた液は23℃のウォーターバスで60分間静置保管する。この上澄み液5mlをPTFE5μmメンブレンフィルターでろ過し、さらに0.25μmメンブレンフィルターでろ過し、不溶物を除く。得られたろ液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(例えば、島津製作所社製 UV-2500PC)で1cmセルを用いて測定する。各色材の極大吸収波長における吸光度(abs)を求める。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%未満(島津製作所社製 UV-2500PCの場合、吸光度(abs)が2未満)であれば当該溶剤は、前記色材を実質的に溶解しない溶剤であると評価できる。このとき、吸光度(abs)が測定上限値の40%以上の場合には、更に次の評価方法により、溶解度を求める。
まず、上記溶剤Sの代わりに、溶解性を判断しようとする色材の良溶剤(例えばメタノール及びジアセトンアルコール等のアルコール類)を用いて、同様にろ液を得て、色材溶液を作製し、その後10000倍~100000倍程度に適宜希釈し、同様に色材の極大吸収波長における吸光度を測定する。上記溶剤Sの色材溶液と良溶剤の色材溶液の吸光度と希釈倍率から上記溶剤Sに対する色材の溶解度を算出する。
その結果、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下である溶剤は、本発明で用いることが可能な、色材が難溶性の溶剤であると判断される。
【0081】
前記溶剤は、中でも、エステル系溶剤の中から適宜選択して用いることが分散安定性の点から好ましい。
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下である溶剤で、好ましいエステル系溶剤としては、例えば、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノールアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
中でも、人体への危険性が低いこと、室温付近での揮発性が低いが加熱乾燥性が良い点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いることが好ましい。この場合には、従来のPGMEAを用いた着色樹脂組成物との切り替えの際にも特別な洗浄工程を必要としないというメリットがある。
これらの溶剤は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
本発明で用いられる溶剤としては、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下の溶剤は合計量で、全溶剤中70質量%以上含むことが好ましく、更に80質量%以上含むことが好ましく、より更に90質量%以上含むことが好ましく、特に100質量%含むことが好ましい。
また、本発明で用いられる溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを全溶剤中50質量%以上含むことが好ましく、更に70質量%以上含むことが好ましく、より更に90質量%以上含むことが好ましく、全溶剤中100質量%が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが特に好ましい。
【0083】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、色材の溶解度が0.2(g/100g溶剤)を超える溶剤を適宜組み合わせて用いてもよく、このような色材の溶解度が高い溶剤を組み合わせる場合、当該溶解度が高い溶剤の含有割合は、当該溶解度が高い溶剤を含む混合溶剤に対する、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の23℃における溶解度が0.2(g/100g溶剤)以下となるような範囲で適宜調整することができる。前記色材の溶解度が高い溶剤の含有してもよい割合は、色材や溶剤の種類によって変化するものであるが、目安として、全溶剤中に30質量%以下とすることができ、20質量%以下であることが好ましく、更に10質量%以下であることがより好ましい。
【0084】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において、溶剤の含有量は、着色層を精度良く形成することができる範囲で適宜設定すればよい。該溶剤を含むカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の全量に対して、通常、55質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましく、中でも、65質量%以上88質量%以下の範囲内であることがより好ましい。前記溶剤の含有量が、前記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0085】
<分散剤(D)>
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、更に、分散剤を含有することが好ましい。本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が分散剤に分散されてなるものであると、耐熱性に優れる点から好ましい。赤、緑、青の着色層を有するカラーフィルタを形成する際には、通常、赤、緑、青の順で着色層が形成され、赤色着色層を形成するための着色樹脂組成物及びその硬化物は、緑色着色層及び青色着色層を形成するための着色樹脂組成物及びその硬化物よりも、加熱処理が施される回数が多いため、より優れた耐熱性が求められる。
前記分散剤としては、従来、分散剤として用いられているものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、均一に、微細に分散し得る点から、高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0086】
高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシ基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシ基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。
【0087】
高分子分散剤としては、塩基性分散剤及び酸性分散剤のいずれでも良いが、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の分散性に優れ、より高輝度な着色層を形成可能である点から、酸性分散剤が好ましい。詳細なメカニズムは定かではないが、プロトン供与性のある酸性分散剤と、前記一般式(1)で表されるキサンテン系染料中の窒素の不対電子との相互作用で安定化することにより、耐熱性が向上し、加熱処理による着色層の輝度の低下が抑制されると推測される。
【0088】
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を好適に分散でき、分散安定性が良好である点から、塩基性分散剤としては、主鎖又は側鎖に窒素原子を含み、アミン価を有する高分子分散剤が好ましく、酸性分散剤としては、側鎖に酸性基を含み、アミン価を有しない高分子分散剤が好ましい。
【0089】
また、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を分散させるのに用いる分散剤としては、分散性が良好で優れた輝度を実現でき、着色層形成時に異物を析出せず、溶剤への再溶解性に優れ、且つ、耐熱性に優れた着色層を形成可能である点から、塩基性分散剤である、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体である高分子分散剤(本発明において、高分子分散剤(D1)とする。)、酸性分散剤である、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含み、アミン価を有しない重合体である高分子分散剤(本発明において、高分子分散剤(D2)とする。)、及びウレタン系分散剤から選ばれる少なくとも1種が好ましく、前記高分子分散剤(D1)及び前記高分子分散剤(D2)から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。なお、前記高分子分散剤(D1)及び前記高分子分散剤(D2)は、ポリウレタン構造を含まないことが好ましい。
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を分散させるのに用いる分散剤としては、中でも、耐熱性に優れ、高輝度な着色層を形成可能である点から、酸性分散剤である前記高分子分散剤(D2)が好ましい。
【0090】
(高分子分散剤(D1))
3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体である高分子分散剤(D1)において、3級アミンを有する繰り返し単位は、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と親和性を有する部位である。また、前記高分子分散剤(D1)は、更に、溶剤と親和性を有する部位となる繰り返し単位を含むことが好ましく、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含むブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部と、を有するブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(D1)と記載することがある。)であることが、耐熱性に優れ、高輝度となる塗膜を形成可能となる点で好ましい。前記ブロック共重合体(D1)は、中でも、3級アミンを有する繰り返し単位からなるブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0091】
3級アミンを有する繰り返し単位は、3級アミンを有していれば良く、該3級アミンは、ブロックポリマーの側鎖に含まれていても、主鎖を構成するものであっても良い。
中でも、側鎖に3級アミンを有する繰り返し単位であることが好ましく、中でも、主鎖骨格が熱分解し難く、耐熱性が高い点から、下記一般式(I)で表される構造の繰り返し単位であることがより好ましい。
【0092】
【化7】
(一般式(I)中、R11は、水素原子又はメチル基であり、Qは、直接結合又は2価の連結基であり、R12は、炭素数1以上8以下のアルキレン基、-[CH(R15)-CH(R16)-O]-CH(R15)-CH(R16)-又は-[(CH-O]-(CH-で示される2価の有機基であり、R13及びR14は、それぞれ独立に置換されていてもよい炭化水素基であり、R13及びR14が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R15及びR16は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1以上18以下の整数、yは1以上5以下の整数、zは1以上18以下の整数である。)
【0093】
上記一般式(I)の2価の連結基Qとしては、例えば、炭素数1以上10以下のアルキレン基、アリーレン基、-CONH-基、-COO-基、炭素数1以上10以下のエーテル基(-R’-OR”-:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Qは、-COO-基又は-CONH-基であることが好ましい。
【0094】
上記一般式(I)の2価の有機基R12は、炭素数1以上8以下のアルキレン基、-[CH(R15)-CH(R16)-O]-CH(R15)-CH(R16)-又は-[(CH-O]-(CH-である。上記炭素数1以上8以下のアルキレン基は、直鎖又は分岐のいずれであってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種へキシレン基などである。
15及びR16は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
上記R12としては、分散性の点から、炭素数1以上8以下のアルキレン基が好ましく、中でも、R12がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。
【0095】
13及びR14における、置換されていてもよい炭化水素基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数は1以上18以下が好ましく、1以上6以下がより好ましい。アルキル基としては、中でも、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は7以上20以下が好ましく、7以上14以下がより好ましい。
アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6以上24以下が好ましく、6以上12以下がより好ましい。なお、上記好ましい炭素数には、置換基の炭素数は含まれない。
また、前記炭化水素基中の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子により置換されていてもよい。また、アリール基及びアラルキル基が有する芳香環中の水素原子は、炭素数1以上5以下のアルキル基により置換されていてもよい。
【0096】
上記一般式(I)のR13及びR14が互いに結合して環状構造を形成している場合、当該環状構造としては、例えば5~7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。
【0097】
上記一般式(I)で表される繰り返し単位を誘導するモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリレート等、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアルキル基置換アミノ基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でも分散性、及び分散安定性が向上する点でジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを好ましく用いることができる。
【0098】
前記3級アミンを有する繰り返し単位を含むブロック部において、一般式(I)で表される繰り返し単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性、及び分散安定性を向上する点から、3~100個含むことが好ましく、3~50個含むことがより好ましく、更に3~30個含むことがより好ましい。
【0099】
前記ブロック共重合体(D1)において、前記3級アミンを有する繰り返し単位を含むブロック部(以下、Aブロックと記載することがある。)と溶剤親和性を有するブロック部(以下、Bブロックと記載することがある。)を有する前記ブロック共重合体(D1)における、溶剤親和性を有するブロック部としては、溶剤親和性を良好にし、分散性を向上する点から、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を有さず、前記一般式(I)で表される繰り返し単位を誘導するモノマーと共重合可能なモノマーに由来する繰り返し単位を有する溶剤親和性ブロック部を用いることができる。前記ブロック共重合体(D1)の各ブロックの配置は特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
前記ブロック共重合体(D1)が有する溶剤親和性を有するブロック部は、色材の分散性及び分散安定性を向上させながら、耐熱性も向上する点から、下記一般式(II)で表される構造の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0100】
【化8】
(一般式(II)中、R17は、水素原子又はメチル基、Aは、直接結合又は2価の連結基、R18は、炭素数1以上18以下のアルキル基、炭素数2以上18以下のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、-[CH(R19)-CH(R20)-O]-R21又は-[(CH-O]-R21で示される1価の基である。R19及びR20は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R21は、水素原子、あるいは炭素数1以上18以下のアルキル基、炭素数2以上18以下のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、-CHO、-CHCHO、又は-CHCOOR22で示される1価の基であり、R22は水素原子又は炭素数1以上5以下の直鎖、分岐、又は環状のアルキル基である。xは1以上18以下の整数、yは1以上5以下の整数、zは1以上18以下の整数を示す。)
【0101】
上記一般式(II)の2価の連結基Aとしては、前記一般式(I)におけるQと同様のものとすることができ、得られたポリマーの耐熱性や溶剤として好適に用いられるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)に対する溶解性、また比較的安価な材料である点から、Aは、-COO-基であることが好ましい。
【0102】
18において、上記炭素数1以上18以下のアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などを挙げることができる。
18において、上記炭素数2以上18以下のアルケニル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば、ビニル基、アリル基、プロぺニル基、シクロヘキセニル基などを挙げることができる。
【0103】
18において、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7以上20以下が好ましく、更に7以上14以下が好ましい。
18において、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6以上24以下が好ましく、更に6以上12以下が好ましい。
アリール基やアラルキル基等の芳香環の置換基としては、炭素数1以上4の直鎖、分岐又は環状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができ、中でも、炭素数1以上4の直鎖又は分岐のアルキル基、及びハロゲン原子が好ましい。
【0104】
21において、炭素数1以上18以下のアルキル基、炭素数2以上18以下のアルケニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基は、各々上記R18と同様であってよい。
18において、x、y及びzは、前記一般式(I)におけるR12と同様である。
18は、中でも、分散性、基板密着性の点からメチル基、各種ブチル基、各種ヘキシル基、ベンジル基、シクロヘキシル基又はヒドロキシエチル基であることが好ましい。
【0105】
前記ブロック共重合体(D1)において、溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、色材分散性が向上する範囲で適宜調整すればよい。中でも、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、溶剤親和性のブロック部を構成する構成単位の数は、10以上200以下であることが好ましく、10以上100以下であることがより好ましく、更に10以上70以下であることがより好ましい。
【0106】
前記ブロック共重合体(D1)において、溶剤親和性のブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、溶剤親和性のブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
前記ブロック共重合体(D1)において、前記一般式(I)で表される構成単位のユニット数mと、溶剤親和性のブロック部を構成する他の構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、0.01以上1以下の範囲内であることが好ましく、0.05以上0.7以下の範囲内であることが、色材の分散性、分散安定性の点からより好ましい。
【0107】
また、前記高分子分散剤(D1)のアミン価は、40mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であることが、分散性が良好で塗膜形成時に異物を析出せず、輝度及びコントラストを向上する点から好ましい。アミン価が上記範囲内であることにより、粘度の経時安定性や耐熱性に優れると共に、アルカリ現像性や、溶剤再溶解性にも優れている。前記高分子分散剤(D1)のアミン価は、分散性および分散安定性の点から、中でも、80mgKOH/g以上であることが好ましく、90mgKOH/g以上であることがより好ましく、一方、溶剤再溶解性の点から、110mgKOH/g以下であることが好ましく、105mgKOH/g以下であることがより好ましい。
なお、アミン価は、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに要する過塩素酸と当量の水酸化カリウムのmg数をいい、JIS-K7237に定義された方法により測定することができる。当該方法により測定した場合には、後述するような有機酸化合物と塩形成しているアミノ基であっても、通常、当該有機酸化合物が解離するため、分散剤として用いられるブロック共重合体そのもののアミン価を測定することができる。
【0108】
前記高分子分散剤(D1)の酸価は、特に限定はされず、0mgKOH/gであっても良いが、1mgKOH/g以上であると、現像残渣の抑制効果の点から好ましく、2mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記高分子分散剤(D1)の酸価は、現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる点から、18mgKOH/g以下であることが好ましい。中でも、現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になる点から、前記高分子分散剤(D1)の酸価は、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。
酸価を有する前記高分子分散剤(D1)としては、前記一般式(I)で表される構造の繰り返し単位を含むAブロックとカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックとを含有するブロック共重合体であることが好ましく、塩形成前の前記ブロック共重合体(D1)の酸価が1mgKOH/g以上であることが好ましく、2mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。現像残渣の抑制効果が向上するからである。また、塩形成前の前記ブロック共重合体(D1)の酸価の上限としては18mgKOH/g以下であることが好ましいが、16mgKOH/g以下であることがより好ましく、14mgKOH/g以下であることがさらにより好ましい。現像密着性、及び溶剤再溶解性が良好になるからである。
【0109】
色材濃度を高め、分散剤含有量が増加すると、相対的にバインダー量が減少することから、着色樹脂層が現像時に下地基板から剥離し易くなる。分散剤がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを有し、前記特定の酸価を有することにより、現像密着性が向上する。酸価が高すぎると、現像性に優れるものの、極性が高すぎて却って現像時に剥離が生じ易くなると推定される。
【0110】
前記ブロック共重合体(D1)のBブロックに用いてもよい前記カルボキシ基含有モノマーとしては、一般式(I)で表される構成単位を誘導するモノマーと共重合可能で、不飽和二重結合とカルボキシ基を含有するモノマーを用いることができる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸ダイマーなどが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する単量体と無水マレイン酸や無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物のような環状無水物との付加反応物、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなども利用できる。また、カルボキシ基の前駆体として無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマーを用いてもよい。中でも、共重合性やコスト、溶解性、ガラス転移温度などの点から(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0111】
前記ブロック共重合体(D1)がカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むBブロックを有する場合、塩形成前の前記ブロック共重合体(D1)中、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、前記ブロック共重合体(D1)の酸価が前記特定の酸価の範囲内になるように適宜設定すればよく、特に限定されないが、前記ブロック共重合体(D1)の全構成単位の合計質量に対して、0.05質量%以上4.5質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以上3.7質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有割合が、前記下限値以上であることより、現像残渣の抑制効果が発現され、前記上限値以下であることより現像密着性の悪化や溶剤再溶解性の悪化を防止できる。
なお、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は、上記特定の酸価となればよく、1種からなるものであっても良いし、2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0112】
前記ブロック共重合体(D1)の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、1000以上20000以下であることが好ましく、2000以上15000以下であることがより好ましく、更に3000以上12000以下であることがより好ましい。
【0113】
前記ブロック共重合体(D1)の製造方法は、特に限定されず、公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。
【0114】
このような3級アミンを有する繰り返し単位を含むブロック部と溶剤親和性を有するブロック部とを有する前記ブロック共重合体(D1)の具体例としては、例えば、特許第4911253号公報に記載のブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
【0115】
また、色材の分散性や分散安定性の点から、前記3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体中のアミノ基のうちの少なくとも一部と、有機酸化合物やハロゲン化炭化水素とが塩を形成したものを分散剤として用いても好ましい(以下、このような重合体を、塩型重合体と称することがある)。
中でも、3級アミンを有する繰り返し単位を含む重合体がブロック共重合体であって、前記有機酸化合物がフェニルホスホン酸やフェニルホスフィン酸等の酸性有機リン化合物であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。このような分散剤に用いられる有機酸化合物の具体例としては、例えば、特開2012-236882号公報等に記載の有機酸化合物が好適なものとして挙げられる。
また、前記ハロゲン化炭化水素としては、臭化アリル、塩化ベンジル等のハロゲン化アリル及びハロゲン化アラルキルの少なくとも1種であることが、色材の分散性及び分散安定性に優れる点から好ましい。
【0116】
(高分子分散剤(D2))
側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含む重合体である高分子分散剤(D2)において、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位は、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と親和性を有する部位である。また、前記高分子分散剤(D2)は、更に、溶剤と親和性を有する部位となる繰り返し単位を含むことが好ましく、中でも、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部と、溶剤親和性を有するブロック部とを有するブロック共重合体(以下、ブロック共重合体(D2)と記載することがある。)であることが、耐熱性に優れ、高輝度となる塗膜を形成可能となる点で好ましい。
【0117】
側鎖にカルボキシ基を有する繰り返し単位を誘導するモノマーとしては、カルボキシ基を含有する(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。具体的には例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、琥珀酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、1,2-シクロヘキセンジカルボン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、トリメリット酸(メタ)アクリロイルオキシエチルなどを挙げることができる。後述するように、溶剤親和性を有するブロック部が、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含んでいても良い場合もあるが、溶剤親和性を有するブロック部が(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含まない場合、側鎖にカルボキシ基を有する繰り返し単位を誘導するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0118】
側鎖にリン酸基を有する繰り返し単位を誘導するモノマーとしては、リン酸基を含有する(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。具体的には例えば、リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-(ホスホノオキシ)プロピル、リン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(フェノキシホスホニルオキシ)エチル、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、中でもリン酸2-((メタ)アクリロイルオキシ)エチルが好ましい。また、リン酸ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)などの2官能(メタ)アクリレートも、得られるリン酸基含有ブロックコポリマーがゲル化しない範囲で用いることができる。
【0119】
側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部において、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位は、3個以上含まれることが好ましい。中でも、分散性、及び分散安定性を向上する点から、3~100個含むことが好ましく、3~50個含むことがより好ましく、更に3~30個含むことがより好ましい。
【0120】
また、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部は、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位のみからなるものであってもよいし、側鎖にカルボキシ基及びリン酸基のいずれも含まない他の繰り返し単位を含むものであってもよい。当該他の繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位が好ましい。
側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部が前記他の繰り返し単位を含む場合、当該ブロック部中に含まれる繰り返し単位の合計100質量%中、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位の割合は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより更に好ましく、一方で、99質量%以下であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。
【0121】
側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部の数平均分子量は、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の分散性及び分散安定性の点から、200以上3000以下であることが好ましく、500以上2500以下であることが好ましい。
【0122】
前記ブロック共重合体(D2)における溶剤親和性を有するブロック部としては、前記側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を誘導するモノマーと共重合可能なモノマーに由来する構成単位を有する溶剤親和性ブロック部を用いることができる。
当該溶剤親和性ブロック部を構成する構成単位としては、例えば、前記ブロック共重合体(D1)のBブロックを構成する構成単位と同様のものが挙げられ、中でも、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含むことが好ましい。また、前記ブロック共重合体(D2)における溶剤親和性ブロック部は、前記側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する構成単位中のカルボキシ基及びリン酸基よりもpKが小さい酸性基を含まないことが、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の分散性及び分散安定性を向上する点から好ましい。前記ブロック共重合体(D2)において、側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部が(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含まない場合は、前記溶剤親和性ブロック部が(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を含んでいても良い。
【0123】
前記ブロック共重合体(D2)における溶剤親和性ブロック部は、さらに、ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート、及びポリヒドロキシアルキルカルボン酸の(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位を含むことも好ましい。これらのような分子量が大きく、分子長が長いモノマー由来の構成単位は、前記色材を分散した時の立体反発による分散安定化に寄与すると推定される。
ポリアルキレングリコールの(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングコリールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリ(テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ポリアルキレングリコールの繰り返し数が2以上で、アルキレン基の炭素数が2以上4以下のものが好ましい。
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ポリアルキレングリコールの繰り返し数が2以上で、アルキレン基の炭素数が2以上4以下で、アルキルエーテルの炭素数が1以上18以下のものが好ましい。
ポリヒドロキシアルキルカルボン酸の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリ乳酸モノ(メタ)アクリレート、ポリ12-ヒドロキシステアリン酸モノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ポリヒドロキシアルキルの繰り返し数が2以上で、ヒドロキシアルキル基の炭素数が2以上18以下のものが好ましい。
【0124】
前記ブロック共重合体(D2)において、溶剤親和性ブロック部を構成する構成単位の数は、色材分散性が向上する範囲で適宜調整すればよい。中でも、溶剤親和性部位と色材親和性部位が効果的に作用し、色材の分散性を向上する点から、溶剤親和性ブロック部を構成する構成単位の数は、10以上200以下であることが好ましく、10以上100以下であることがより好ましく、更に10以上70以下であることがより好ましい。
【0125】
前記ブロック共重合体(D2)の各ブロックの配置は、前記ブロック共重合体(D1)と同様に、特に限定されず、例えば、ABブロック共重合体、ABAブロック共重合体、BABブロック共重合体等とすることができる。中でも、分散性に優れる点で、ABブロック共重合体、又はABAブロック共重合体が好ましい。
【0126】
前記ブロック共重合体(D2)において、溶剤親和性ブロック部は、溶剤親和性部位として機能するように選択されれば良く、溶剤親和性ブロック部を構成する繰り返し単位は1種からなるものであっても良いし、2種以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。
前記ブロック共重合体(D2)において、前記側鎖にカルボキシ基又はリン酸基を有する繰り返し単位を含むブロック部を構成する構成単位のユニット数mと、溶剤親和性ブロック部を構成する構成単位のユニット数nの比率m/nとしては、色材の分散性、分散安定性の点から、0.01以上1以下の範囲内であることが好ましく、0.05以上0.7以下の範囲内であることがより好ましく、0.1以上0.6以下の範囲内であることがより更に好ましい。
【0127】
前記高分子分散剤(D2)の酸価は、色材への吸着性を向上する点から、50mgKOH/g以上であることが好ましく、70mgKOH/g以上であることがより好ましい。一方、色材分散性の点から、前記高分子分散剤(D2)の酸価は、500mgKOH/g以下であることが好ましく、250mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0128】
前記高分子分散剤(D2)の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、色材分散性及び分散安定性を良好なものとする点から、4000以上20000以下であることが好ましく、4000以上10000以下であることがより好ましい。
【0129】
前記ブロック共重合体(D2)の製造方法は、公知の方法によってブロック共重合体を製造することができるが、中でもリビング重合法で製造することが好ましい。
前記ブロック共重合体(D2)の具体例としては、例えば、特開2014-15541号公報に記載のブロック共重合体を好適なものとして挙げることができる。
【0130】
(ウレタン系分散剤)
前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の分散剤として好適に用いられるウレタン系分散剤は、1分子内に1個以上のウレタン結合(-NH-COO-)を有する化合物であり、中でも、1分子内に2個以上のウレタン結合を有する化合物が好ましい。
前記ウレタン系分散剤は、少量で良好な分散が可能であるため、分散剤の含有割合を低減し、相対的にバインダー成分等の含有量を増やすことができ、その結果、耐熱性に優れた着色層を形成することができる。
【0131】
前記ウレタン系分散剤としては、中でも、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート類と、片末端又は両末端に水酸基を有するポリエステル類との反応生成物であることが好ましい。
【0132】
ポリイソシアネート類としては、ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類から選択される1種以上のイソシアネート化合物を有することが好ましく、ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類の少なくとも1種が重合した主鎖骨格を有する重合体であってもよい。
【0133】
ジイソシアネート類及びトリイソシアネート類の少なくとも1種が重合した主鎖構造としては、上記ポリイソシアネート類の分子間でイソシアネート基同士が結合して重合した分子構造が挙げられる。また、主鎖骨格の連鎖構造内には、置換基を有していても良い芳香環や複素環等の環構造が含まれていても良い。
【0134】
前記ウレタン系分散剤に用いられるジイソシアネート類としては、ヘキサメチレンジイソシアネートや、イソホロンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネートでもよいが、耐熱性の点から芳香族ジイソシアネート類が好ましく、例えば、ベンゼン-1,3-ジイソシアネート、ベンゼン-1,4-ジイソシアネート等のベンゼンジイソシアネート類;トルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,5-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネート、トルエン-3,5-ジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類;1,2-キシレン-3,5-ジイソシアネート、1,2-キシレン-3,6-ジイソシアネート、1,2-キシレン-4,6-ジイソシアネート、1,3-キシレン-2,4-ジイソシアネート、1,3-キシレン-2,5-ジイソシアネート、1,3-キシレン-2,6-ジイソシアネート、1,3-キシレン-4,6-ジイソシアネート、1,4-キシレン-2,5-ジイソシアネート、1,4-キシレン-2,6-ジイソシアネート等のキシレンジイソシアネート類等の芳香族ジイソシアネート類を挙げられる。
また前記トリイソシアネート類としては、例えば、ベンゼン-1,2,4-トリイソシアネート、ベンゼン-1,2,5-トリイソシアネート、ベンゼン-1,3,5-トリイソシアネート等のベンゼントリイソシアネート類;トルエン-2,3,5-トリイソシアネート、トルエン-2,3,6-トリイソシアネート、トルエン-2,4,5-トリイソシアネート、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、トルエン-3,4,6-トリイソシアネート、トルエン-3,5,6-トリイソシアネート等のトルエントリイソシアネート類、1,2-キシレン-3,4,6-トリイソシアネート、1,2-キシレン-3,5,6-トリイソシアネート、1,3-キシレン-2,4,5-トリイソシアネート、1,3-キシレン-2,4,6-トリイソシアネート、1,3-キシレン-3,4,5-トリイソシアネート、1,4-キシレン-2,3,5-トリイソシアネート、1,4-キシレン-2,3,6-トリイソシアネート等のキシレントリイソシアネート類等の芳香族トリイソシアネート類を挙げられる。中でも高い耐熱性の点から、トルエンジイソシアネート類が好ましい。これらのジイソシアネート類およびトリイソシアネート類は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。中でも、トルエンジイソシアネート類が単独で重合した主鎖構造を有することが高い耐熱性の点から好ましい。これらの市販品としては、例えば、Disperbyk-161、167、170、174(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
が挙げられる。
【0135】
片末端又は両末端に水酸基を有するポリエステル類としては、中でも、分散性の点から、-(O-RCO)-(Rは、炭素数1~20のアルキレン基、nは2以上の整数)で表されるポリエステル鎖を含む化合物であることが好ましい。ポリエステル鎖の具体的としては、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン等のポリラクトン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の重縮合系ポリエステル類が挙げられる。中でも耐熱性の点から、ポリラクトン類、中でも、ポリカプロラクトンを含むことが好ましく、具体的には、-(O-RCO)-において、Rが炭素数5のアルキレン基であり、nが2以上の整数であるポリカプロラクトンを含むことが好ましく、Rが炭素数5のアルキレン基であり、nが4以上の整数であるポリカプロラクトンを含むことがより好ましい。これらの市販品としては、例えば、Disperbyk-170、171、174(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0136】
前記ウレタン系分散剤の酸価は、特に限定はされず、0mgKOH/gであってもよいが、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の分散性及び分散安定性に優れ、耐熱性に優れ、高輝度な着色層が形成可能な点から、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であることがより好ましい。
酸価が10mgKOH/g以上のウレタン系分散剤としては、例えば、Disperbyk-170(酸価:36.7mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、Disperbyk-171(32.9mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)、Disperbyk-174(41.9mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g)(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0137】
一方、アミン価を有するウレタン系分散剤も好ましく用いられる。アミン価を有するウレタン系分散剤において、そのアミン価は、特に限定されないが前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の分散性及び分散安定性に優れ、耐熱性に優れ、高輝度な着色層が
形成可能な点から、10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g
以上130mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上100m
gKOH/g以下であることがより好ましい。
アミン価が10mgKOH/g以上のウレタン系分散剤としては、例えば、Disperbyk-161、162、163、164、166、167、168(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0138】
前記ウレタン系分散剤は、酸価が10mgKOH/g以上、且つ、アミン価が10mgKOH/g以上のものであってもよいが、着色樹脂組成物の粘度の増加を抑制し、分散安定性に優れる点から、酸価が10mgKOH/g以上であって、且つ、アミン価が5mgKOH/g以下のウレタン系分散剤、又は、アミン価が10mgKOH/g以上であって、且つ、酸価が5mgKOH/g以下のウレタン系分散剤のいずれかであることが好ましく、中でも酸価が10mgKOH/g以上、且つ、アミン価が5mgKOH/g以下のウレタン系分散剤がより好ましい。
【0139】
酸価が10mgKOH/g以上のウレタン系分散剤においては、着色樹脂組成物の粘度の増加を抑制し、分散安定性に優れ、高輝度な着色層が形成可能な点から、中でも、アミン価が5mgKOH/g以下であることがより好ましく、アミン価が1mgKOH/g以下であることが更により好ましく、実質的にアミン価を有しないことが特に好ましい。
また、アミン価が10mgKOH/g以上のウレタン系分散剤においては、着色樹脂組成物の粘度の増加を抑制し、分散安定性に優れ、高輝度な着色層が形成可能な点から、中でも、酸価が5mgKOH/g以下であることがより好ましく、酸価が1mgKOH/g以下であることが更により好ましい、実質的に酸価を有しないことが特に好ましい。
【0140】
更に、ウレタン系分散剤は、耐熱性の点から、加熱により切断され易いポリエーテル鎖を含まないことが好ましい。ここでポリエーテル鎖とは、-(O-R-(Rは、炭素数1~10のアルキレン基、nは2以上の整数)で表される構造をいう。具体的には、-(O-CHCH-、-(O-CHCHCH-、-(O-CHCHCHCH-、-(O-CHCHCHCHCH-、-(O-CHCHCHCHCHCH-が挙げられる。
【0141】
前記ウレタン系分散剤の分子量は、耐熱性、電気信頼性、分散性の点から、ポリスチレン換算の重量平均分子量で500以上30000以下の範囲が好ましい。
【0142】
また、前記ウレタン系分散剤の市販品としては、アジスパーPB711(味の素ファインテクノ(株)製)、EFKA-46、47、48(以上、EFKA CHEMICALS社製)等も挙げることができる。中でも、耐熱性、電気信頼性、分散性の点から、前記ウレタン系分散剤の市販品としては、Disperbyk-161、162、166、170、171、174(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)が好ましい。
なお、本発明において、前記ウレタン系分散剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0143】
前記ウレタン系分散剤を用いて、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を分散する場合、当該キサンテン系色材100質量部に対して、前記ウレタン系分散剤の含有量が20質量部以上150質量部以下であることが好ましく、50質量部以上120質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば分散性及び分散安定性に優れている。
【0144】
また、本発明においては、前述した分散剤とは異なる分散剤を用いてもよい。前述した分散剤とは異なる分散剤としては、例えば、EFKA-4046、EFKA-4047、EFKAポリマー10、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー4300、EFKAポリマー4310、EFKAポリマー4320、EFKAポリマー4330(以上、BASFジャパン(株)製)、Disperbyk-111、165、182、2000、2001、BYK-LPN6919、21116(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、SOLSPERSE24000、27000、28000(以上、ルーブリゾール社製)、アジスパーPB821、PB822(以上、味の素ファインテクノ(株)製)等が挙げられる。
【0145】
前記分散剤は、1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。また、色材ごとに異なる分散剤を用いて各々色材分散液を調製する場合は、各々異なる分散剤を使用しても良い。
分散剤を用いる場合、分散剤の含有量としては、色材を均一に分散することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の固形分全量に対して、分散剤の含有量を1質量%以上40質量%以下とすることができる。分散剤の含有量は、更に、2質量%以上30質量%以下であることが好ましく、特に3質量%以上25質量%以下であることが好ましい。上記下限値以上であれば、色材の分散性及び分散安定性に優れ、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の保存安定性により優れている。また、上記上限値以下であれば、現像性が良好なものとなる。
【0146】
<任意添加成分>
カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物には、必要に応じて各種添加剤を含むものであってもよい。
添加剤としては、例えば、酸化防止剤の他、メルカプト化合物、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
【0147】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、更に酸化防止剤を含有することが、耐熱性が向上し、色材の退色が抑制され、輝度が向上する点から好ましい。本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、前記オキシムエステル系光開始剤と、酸化防止剤とを組み合わせて含有すると、相乗効果で輝度が向上する点から好ましい。
酸化防止剤は従来公知のものの中から適宜選択して用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられ、耐熱性の点から、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが好ましい。国際公開第2014/021023号に記載されているような潜在性酸化防止剤であっても良い。
【0148】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:イルガノックス3114、BASF社製)、2,4,6-トリス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)メシチレン(商品名:イルガノックス1330、BASF社製)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:スミライザーMDP-S、住友化学製)、6,6’-チオビス(2-tert-ブチル-4-メチルフェノール)(商品名:イルガノックス1081、BASF社製)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル(商品名:イルガモド195、BASF社製)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名:商品名:IRGANOX1010、BASF社製)が好ましい。
【0149】
酸化防止剤の含有量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、酸化防止剤が0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性及び耐光性に優れている。一方、上記上限値以下であれば、本発明の着色樹脂組成物を高感度の感光性樹脂組成物とすることができる。
【0150】
酸化防止剤を前記オキシムエステル系光開始剤と組み合わせて用いる場合、酸化防止剤の含有量としては、前記オキシムエステル系光開始剤の合計量100質量部に対して、酸化防止剤が1質量部以上250質量部以下であることが好ましく、3質量部以上80質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上45質量部以下であることがより更に好ましい。上記範囲内であれば、上記組み合わせの効果に優れている。
【0151】
本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、更にメルカプト化合物を含有することが、水染み発生抑制効果が向上する点から好ましい。
また、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、感光性着色樹脂組成物として、前記オキシムエステル系光開始剤と、メルカプト化合物とを組み合わせて含有すると、現像耐性が向上する点、水染み発生抑制効果が更に向上する点、及び、細線パターンを形成する際に、直線性がより向上したり、マスク線幅の設計通りに細線パターンを形成する能力が向上する点から好ましい。なお、「直線性が向上する」とは、着色組成物を塗布した後の現像工程において形成される着色層の端部の凹凸が少なく、直線状または略直線状に形成されることをいう。
【0152】
メルカプト化合物は、連鎖移動剤として機能し得るものであり、反応の遅いラジカルからラジカルを受け取って反応を早め、硬化性を向上するという性質を有する。
メルカプト化合物としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾチアゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンゾイミダゾール、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、およびテトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
メルカプト化合物としては、単独で又は2種以上組み合わせて用いても良く、中でも、メルカプト基を1分子中に2個以上有する多官能メルカプト化合物からなる群から選択される1種以上を用いることが、架橋密度が高くなり、水染み抑制効果が向上する点から好ましい。
また、長期保存した場合にも、良好な水染み抑制効果が維持され易い点から、メルカプト基が結合する炭素原子が第2級炭素原子である2級メルカプト基を有する2級メルカプト化合物が好ましく、更に当該2級メルカプト基を1分子中に2個以上有する多官能2級メルカプト化合物であることがより好ましい。
【0153】
カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物において用いられるメルカプト化合物の含有量は、特に制限はないが、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の固形分全量に対して、メルカプト化合物は、0.2質量%以上7質量%以下、さらに0.5質量%以上5質量%以下の範囲内であることが、前記効果を十分に発揮させる点から好ましい。
【0154】
また、界面活性剤及び可塑剤の具体例としては、例えば、特開2013-029832号公報に記載のものが挙げられる。
【0155】
またシランカップリング剤としては、例えばKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-903、KBE-903、KBM573、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-303、KBM-802、KBM-803、KBE-9007、X-12-967C(信越シリコーン社製)などが挙げられる。中でもSiN基板の密着性の点からメタクリル基、アクリル基を有するKBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103が好ましい
【0156】
シランカップリング剤の含有量としては、着色樹脂組成物中の全固形分100質量部に対して、シランカップリング剤が0.05質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。上記下限値以上、上記上限値以下であれば、SiN、ガラスへの密着性に優れている。
【0157】
<カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の製造方法>
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の製造方法は、前述した色材と、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを、溶剤中に均一に溶解又は分散させ得る方法であればよく、特に制限されず、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
【0158】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の調製方法としては、例えば(i)溶剤中に、色材に用いられる各種色材を各々別に、分散剤とともに分散させるか又は分散剤を用いずに溶解させることによって、各々色材分散液又は色材溶液を調製し、一方で、別の溶剤中にバインダー成分を添加した、バインダー樹脂組成物を調製し、前記色材分散液及び/又は色材溶液と、前記バインダー樹脂組成物と、所望により用いられる各種添加成分とを混合する方法、(ii)溶剤中に、色材に用いられる各種色材を同時に、分散剤とともに共分散させるか又は分散剤を用いずに同時に溶解させることによって、色材分散液又は色材溶液を調製し、一方で、別の溶剤中にバインダー成分を添加した、バインダー樹脂組成物を調製し、前記色材分散液又は色材溶液と、前記バインダー樹脂組成物と、所望により用いられる各種添加成分とを混合する方法、(iii)溶剤中に、色材と、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法、及び(iv)溶剤中に、バインダー成分と、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに色材を加えて混合する方法などを挙げることができる。
これらの方法の中でも、色材を溶剤中に分散させる場合は、前記(i)又は(ii)の方法が、色材の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。
【0159】
また、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が有するRの-SO を-SOHに又は-COOを-COOHに変換して用いる場合は、例えば、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材を良溶剤に溶かし、例えば濃塩酸等の酸を加えた溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等の当該色材を実質的に溶解しない溶剤又は難溶性の溶剤と、分散剤とを加えて加熱した後、減圧蒸留等により当該色材の良溶剤を除去し、更に、析出物を濾別し、ろ液を得ることにより、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の-SO を-SOHに又は-COOを-COOHに変換した色材が分散された色材分散液を調製することができる。
【0160】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の製造において、分散処理を行うための分散機としては、特に限定されないが、例えば、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミル等が挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03mm~2mmが好ましく、より好ましくは0.05mm~1mmである。具体的には、ビーズ径が比較的大きめな1mm~2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.03mm~0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散性の観点から、分散後、5.0μm~0.2μm程度のメンブランフィルタで濾過することが好ましい。
【0161】
<発光装置>
本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物は、DCI規格やBT.2020に対応可能な赤の色度領域を達成することができ、色再現性に優れる点から、前記カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物である着色層が、240nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光源である窒化物半導体発光素子と、その波長範囲に極大励起波長を有し発光ピーク波長が610nm以上670nm以下であり発光スペクトルの半値幅が30nm以下である4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体と、510nm以上550nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する緑色蛍光体と、を含む発光装置と組み合わせて用いられるものであることが好ましい。本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物からなる着色層は、前記発光装置を用いることにより、CIE1931のXYZ表色系において、色度座標(x、y)が、(0.650、0.340)、(0.655、0.345)、(0.730、0.270)、(0.725、0.265)である4つの点を頂点とした四角形で囲まれるxy色度座標領域を表示することができ、特に、当該四角形で囲まれるxy色度座標領域のうちx≧0.670の領域を好適に表示することができる。
【0162】
前記発光装置において、前記光源は、極大発光波長(発光ピーク波長)が485nm以下であることが好ましく、480nm以下であることがより好ましく、470nm以下であることが更に好ましい。極大発光波長の下限値は特に制限されないが、400nm以上であることが好ましく、440nm以上であることがより好ましい。
前記光源である窒化物半導体発光素子としては、例えば、窒化ガリウム系半導体発光素子を用いることができ、具体的には例えば、InAlGa1-X-YN(X及びYはそれぞれ独立に0以上の数であり、X+Yは1以下である。)等が挙げられる。
前記発光装置において、前記赤色蛍光体は、励起波長が400nm以上485nm以下であり、極大発光波長が610nm以上660nm以下であり、発光スペクトルの半値幅が20nm以下であることが特に好ましい。
また、前記赤色蛍光体としては、組成式がM :Mn4+(Mは、Li,Na,K,Rb,Cs又はNH であり、Mは、Si,Ge,Sn,Ti又はZrである。)であるフッ化物蛍光体が好ましい。
前記発光装置において、前記緑色蛍光体は、前記光源から発せられた光で励起されて波長510nm以上550nm以下の範囲に極大発光波長を有する緑色光を発する緑色蛍光体であることが好ましい。
また、前記緑色蛍光体としては、組成式がSi6-zAl8-z:Eu(zは0超過4.2未満の数である。)で示されるEu付活βサイアロン蛍光体が好ましい。
【0163】
また、前記発光装置における前記赤色蛍光体及び前記緑色蛍光体としては、量子ドットを用いてもよい。量子ドットは、数nm~数十nmの大きさをもつ化合物半導体の微粒子である。前記発光装置に用いられる量子ドットとしては、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる発光材料から適宜選択して用いることができ、公知の量子ドットを用いることができる。前記量子ドットしては、具体的には、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII-VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIIIV族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体等を含有する半導体結晶の他、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物が挙げられる。或いは、前記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag、Cuのような希土類金属のカチオン又は遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。前記量子ドットとしては、1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
また、前記量子ドットは、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、該コアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。また、前記量子ドットとしては、アミノ基、カルボキシ基、メルカプト基等の配位性基を有する配位子が表面に配位したものを用いても良い。また、前記量子ドットとしては、一分子中に親水基を1残基以上及びトリフェニルアミン誘導体等の疎水基を有する保護材料によりその表面が保護された量子ドットを用いても良い。
前記量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって、適宜調節すればよい。
【0164】
前記発光装置としては、具体的には例えば、特開2016-80802号公報に記載の発光装置、及び特許6155993号公報に記載の発光装置等を好ましく用いることができる。
なお、前記発光装置を表示装置に適用する場合は、前記発光装置と、導光板とを備えるバックライト装置として用いることが好ましい。前記発光装置と組み合わせて用いる導光板としては、従来公知のものを用いることができる。前記発光装置を備えるバックライト装置は、更に必要に応じて、光拡散シート、プリズムシート等の光学部材、前記発光装置を実装する実装基板等を備えていても良い。
【0165】
II.カラーフィルタ用赤色色材分散液
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、色材(A)と、溶剤(C)とを含有し、
前記色材(A)が、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを含有し、
前記色材(A)の合計量100質量部に対し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材の含有量が31.0質量部以上であり、前記C.I.ピグメントイエロー139の含有量が6.0質量部以上である。
【0166】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材と、C.I.ピグメントイエロー139とを、各々特定量以上で組み合わせて含有するため、高い色再現性を有しながら、溶剤再溶解性に優れた赤色着色樹脂組成物を調製可能であり、輝度が向上した塗膜を形成可能である。
【0167】
また、本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、更に、分散剤(D)を含有し、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材が、前記分散剤(D)に分散されてなることが、耐熱性に優れる点から好ましい。
【0168】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液において用いられる色材(A)、溶剤(CC)及び分散剤(D)としては、前述した本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物に用いられるものと同様のものを用いることができる。
また、本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液において、分散剤(D)の含有量は、特に限定はされないが、色材の分散性及び分散安定性の点から、色材の合計量100質量部に対し、分散剤が10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがより更に好ましく、一方、色材濃度の低下を抑制する点から、色材の合計量100質量部に対し、分散剤が100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。
【0169】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、溶剤を含む色材分散液の全量に対する当該溶剤の含有量が、通常50質量%以上95質量%以下であり、好ましくは60質量%以上85質量%以下である。溶剤が少なすぎると、粘度が上昇し、分散性が低下しやすい。また、溶剤が多すぎると、色材濃度が低下し、樹脂組成物を調製後目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0170】
また、本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、必要に応じて、前記一般式(1)で表されるキサンテン系色材及びC.I.ピグメントイエロー139とは異なる他の色材、分散補助樹脂、及びその他の成分を更に含有してもよい。
前記他の色材としては、特に限定されないが、例えば、上述した本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物に用いられる他の色材と同様のものが挙げられる。
分散補助樹脂としては、例えば上述した本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって色材粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0171】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、前述の本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を調製するための予備調製物として用いることができる。すなわち、本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液は、上述のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を調製する前段階において、予備調製される(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比の高い色材分散液である。具体的には、(組成物中の色材成分質量)/(組成物中の色材成分以外の固形分質量)比が通常1.0以上であることが好ましい。本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液を、予備調製物として用いて、着色樹脂組成物を調製することにより、分散性に優れた着色樹脂組成物を得ることができる。
【0172】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色色材分散液の製造方法は、例えば、(i)前記分散剤を溶剤に混合、撹拌し、分散剤溶液を調製した後、当該分散剤溶液に、色材と必要に応じてその他の成分を混合し、公知の攪拌機または分散機を用いて分散させる方法が挙げられる。
また、(ii)溶剤に前記分散剤を混合、撹拌し、分散剤溶液を調製し、一方で、色材を良溶剤に溶解させた色材溶液を調製し、前記分散剤溶液と前記色材溶液とを混合し、公知の攪拌機又は分散機を用いて攪拌させてもよい。
なお、本発明のカラーフィルタ用赤色色材分散液の製造に際に用いられる分散処理を行うための分散機としては、上述した本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の調製に用いられるものと同様のものが挙げられる。
【0173】
III.硬化物
本発明に係る硬化物は、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物である。
本発明に係る硬化物は、カラーフィルタの着色層として好適に用いられるものであり、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物であるため、色再現性に優れ、輝度が向上したものである。
本発明に係る硬化物は、例えば、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が感光性樹脂組成物である場合は、当該樹脂組成物の塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させたのち、露光し、更に必要に応じて現像することにより得ることができる。塗膜の形成、露光、及び現像の方法としては、例えば、後述する本発明に係るカラーフィルタが備える着色層の形成において用いられる方法と同様の方法とすることができる。
【0174】
また、本発明に係る硬化物は、240nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光源である窒化物半導体発光素子と、その波長範囲に極大励起波長を有し発光ピーク波長が610nm以上670nm以下であり発光スペクトルの半値幅が30nm以下である4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体と、510nm以上550nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する緑色蛍光体と、を含む発光装置を用いて表示されるCIE1931のXYZ表色系における色度座標(x、y)が、(0.650、0.340)、(0.655、0.345)、(0.730、0.270)、(0.725、0.265)である4つの点を頂点とした四角形で囲まれるxy色度座標領域内にあることが、本発明に係る硬化物を、カラーフィルタの着色層として用いたときの色再現性の点から好ましく、中でも、前記四角形で囲まれるxy色度座標領域のうちx≧0.670の領域内であることがより好ましい。なお、前記発光装置の好ましい態様は、前記「I.カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物」において説明した通りである。
本発明に係る硬化物は、前記発光装置と組み合わせて用いられるものであることが好ましい。
【0175】
IV.カラーフィルタ
本発明に係るカラーフィルタは、基板と、当該基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルタであって、当該着色層の少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物である。
【0176】
このような本発明に係るカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0177】
<着色層>
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、少なくとも1つが、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物である。
着色層は、通常、後述する基板上の遮光部の開口部に形成され、通常3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1~5μmの範囲であることが好ましい。
【0178】
当該着色層は、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物が感光性樹脂組成物の場合、例えば、下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、ダイコート法などの塗布手段を用いて後述する基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。なかでもスピンコート法、ダイコート法を好ましく用いることができる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能モノマー等を光重合反応させて硬化塗膜とする。露光には、例えば、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、通常20~2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等を用いることができる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物中の各成分の含有割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0179】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶剤にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0180】
<遮光部>
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
【0181】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2~0.4μm程度で設定され、黒色顔料をバインダー樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5~2μm程度で設定される。
【0182】
<基板>
基板としては、後述する透明基板、シリコン基板、及び、透明基板又はシリコン基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜などを形成したものが用いられる。これらの基板上には、別のカラーフィルタ層、樹脂層、TFT等のトランジスタ、回路等が形成されていてもよい。
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板、フレキシブルガラス等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm~1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0183】
また、本発明に係るカラーフィルタは、DCI規格やBT.2020に対応可能な赤の色度領域を達成する観点から、240nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光源である窒化物半導体発光素子と、その波長範囲に極大励起波長を有し発光ピーク波長が610nm以上670nm以下であり発光スペクトルの半値幅が30nm以下である4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体と、510nm以上550nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する緑色蛍光体と、を含む発光装置と組み合わせて用いられるカラーフィルタであることが好ましい。前記発光装置を用いることにより、CIE1931のXYZ表色系における色度座標(x、y)が、(0.650、0.340)、(0.655、0.345)、(0.730、0.270)、(0.725、0.265)である4つの点を頂点とした四角形で囲まれるxy色度座標領域を表示することが容易になり、中でも、前記四角形で囲まれるxy色度座標領域のうちx≧0.670の領域を表示することが容易になる。なお、前記発光装置の好ましい態様は、前記「I.カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物」において説明した通りである。
【0184】
V.表示装置
本発明に係る表示装置は、前記本発明に係るカラーフィルタを有することを特徴とする。
本発明に係る表示装置は、中でも、前記本発明に係るカラーフィルタと、240nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光源である窒化物半導体発光素子と、その波長範囲に極大励起波長を有し発光ピーク波長が610nm以上670nm以下であり発光スペクトルの半値幅が30nm以下である4価のマンガンイオンで付活された赤色蛍光体と、510nm以上550nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する緑色蛍光体と、を含む発光装置とを有する、表示装置用モジュールを備えることが、DCI規格やBT.2020に対応可能な赤の色度領域を達成する観点から好ましい。前記表示装置用モジュールを用いることにより、前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物の硬化物である赤色画素を、CIE1931のXYZ表色系において、色度座標(x、y)が、(0.650、0.340)、(0.655、0.345)、(0.730、0.270)、(0.725、0.265)である4つの点を頂点とした四角形で囲まれるxy色度座標領域を表示する赤色画素とすることが容易になり、中でも、前記四角形で囲まれるxy色度座標領域のうちx≧0.670の領域を表示する赤色画素とすることが容易になる。なお、前記発光装置の好ましい態様は、前記「I.カラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物」において説明した通りである。
本発明において表示装置の構成は特に限定されず、従来公知の表示装置の中から適宜選択することができ、例えば、液晶表示装置や、有機発光表示装置などが挙げられる。
【0185】
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置が挙げられる。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0186】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0187】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。前記方法によって液晶層を形成後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0188】
また、DCI規格やBT.2020に対応可能な赤の色度領域を達成する観点から、本発明の液晶表示装置は、前記発光装置を備えることが好ましく、すなわち、前記表示装置用モジュールを備えることが好ましい。前記発光装置は、例えば、液晶表示装置が備えるバックライト装置として用いることができる。前記バックライト装置としては、例えば、前記発光装置と、導光板と、光拡散シート、プリズムシート等の光学部材と、前記発光装置を実装する実装基板とを備えるものが挙げられる。
【0189】
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置としては、例えば、前述した本発明に係るカラーフィルタと、有機発光体とを有する有機発光表示装置が挙げられる。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0190】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例
【0191】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
なお、実施例において、重量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算値として求めた。測定は、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶剤を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として行った。
また、化合物の構造は質量分析(LC;Agilent製1200型、MASS;Agilent製LC/MSD型)で確認した。
また、以下において室温とは、23~28℃である。
【0192】
(合成例1:キサンテン系色材1の合成)
下記化学式(1x)で表される化合物12gと、N-メチル-2-ピロリドン60gと、ピペリジン(東京化成工業(株)製)12.6gとを混合した混合物を60℃で5時間攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却後、水600g、35%塩酸100gの混合液中に添加し、室温で1時間攪拌したところ、結晶が析出した。析出した結晶を吸引濾過により得た後、乾燥させ、下記化学式(1)で表されるキサンテン系色材1を得た。
【0193】
【化9】
【0194】
【化10】
【0195】
(合成例2:キサンテン系色材2の合成)
前記化学式(1x)で表される化合物20gと、N-エチル-o-トルイジン(和光純薬工業(株)製)200gとを遮光条件下で混合した混合物を110℃で6時間攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却後、水800g、35%塩酸50gの混合液中に添加し、室温で1時間攪拌したところ、結晶が析出した。析出した結晶を吸引濾過により得た後、乾燥させ、下記化学式(2)で表されるキサンテン系色材2を得た。
【0196】
【化11】
【0197】
(合成例3:キサンテン系色材3の合成)
前記化学式(1x)で表される化合物10gと、イソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製)40gとを室温で混合した混合物に、ジエチルアミン(東京化成工業(株)製)7.2gを滴下し、65℃に昇温して3時間攪拌した。得られた反応液を室温まで冷却後、0.5%食塩水280gに投入したところ、結晶が析出した。析出した結晶を吸引濾過により得た後、イオン交換水200gで洗浄後乾燥し、下記化学式(3)で表されるキサンテン系色材3を得た。
【0198】
【化12】
【0199】
<評価:溶剤への不溶性>
20mLサンプル管瓶に、合成例1~3で得られたキサンテン系色材1~3をそれぞれ0.2gずつプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下PGMEA、ダイセル化学製)100gに投入し、ふたをして20秒間よく振った後、10分間静置した。この上澄み液5gをろ過し不溶物を除いた。得られたろ液の吸光スペクトルを紫外可視分光光度計(島津製作所社製 UV-2500PC)で1cmセルを用いて測定し、各着色剤の極大吸収波長における吸光度を求めた。
上記条件で測定した吸光度が2以下であれば、実質的に溶解しないといえる。
結果は、キサンテン系色材1~3は、いずれも吸光度が2以下であり、PGMEAに対して0.2g/100g以下の溶解度であった。
【0200】
(合成例4:ブロック共重合体A溶液の調製)
還流管、ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた2Lセパラブルフラスコに、二塩基酸ジエステル(商品名DBE、インビスタ社製)312g、ヨウ素6.1g、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)29.4g、メタクリル酸メチル(MMA)96g、メタクリル酸ブチル(BMA)96g、メタクリル酸2-エチルヘキシル(EHMA)96g、メタクリル酸ベンジル(BzMA)24g、及び3,5-ジt-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)1.3gを仕込み、窒素を流しながら40℃で7時間反応させ、溶剤親和性ポリマーブロックの溶液を得た。GPCにより測定した当該ポリマーブロックの数平均分子量Mnは5,500であった。
得られた溶剤親和性ポリマーブロックの溶液に、MMAが18g、メタクリル酸(MAA)が38.8g、V-70が1.1g、及びDBEが139gの混合液を添加し、同温度で4時間反応させて、側鎖にカルボキシ基を有する繰り返し単位を含むポリマーブロックを形成した。窒素の流通を停止した後に80℃に加温し、ポリマー鎖の末端に結合したヨウ素を遊離させ、さらに、DBE410gで希釈した後、活性炭を56g添加して、室温で12時間攪拌して、ヨウ素を吸着させた。その後、濾過により活性炭を除去し、得られた溶液を150℃で1時間乾燥して、ブロック共重合体A溶液(固形分30.4質量%)を得た。得られたブロック共重合体Aは、GPCにより測定した数平均分子量Mnが6,800であり、酸価が70.3mgKOH/gであった。なお、側鎖にカルボキシ基を有する繰り返し単位を含むポリマーブロックの数平均分子量Mnは、(ブロック共重合体Aの数平均分子量Mnから、溶剤親和性ポリマーブロックの数平均分子量Mnを差し引いた値として算出することができ、1,300であった。
【0201】
(合成例5:塩型ブロック共重合体B溶液の調製)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換した。Arフローしながら、脱水THF100g、ジメチルケテンメチルトリメチルシリルアセタール2.0g、3-クロロ安息香酸テトラブチルアンモニウム(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、メタクリル酸メチル33gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル17gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ブロック共重合体Bを得た。ブロック共重合体BのGPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は6,000、アミン価は120mgKOH/gであった。
得られたブロック共重合体BをPGMEAに溶解させ、固形分60質量%のブロック共重合体B溶液を作製した。
【0202】
次いで、225mLマヨネーズ瓶中に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)71.0質量部、前記で得られたブロック共重合体B溶液(アミン価120mgKOH/g,固形分60質量%)14.0質量部を入れ攪拌した。そこへフェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)1.99質量部(ブロック共重合体の3級アミノ基1モルに対して0.7モル)を加え、室温で30分攪拌して塩型ブロック共重合体B溶液(固形分12質量%)を得た。
【0203】
(製造例1:発光装置の製造)
(1)赤色蛍光体の作製
仕込み組成比(mol)が、K:Si:Mn:F=2:0.95:0.05:6となるように、21.66質量部のKMnFを、55質量%のHF水溶液800質量部に溶解した後、40質量%のHSiF水溶液400質量部を加えて溶液Aを調製した。一方で260.14質量部のKHFを55質量%のHF水溶液450質量部に溶解させて溶液Bを調製した。また、40質量%のHSiF水溶液200質量部を溶液Cとした。
次に室温で、溶液Aを撹拌しながら溶液Bと溶液Cとを同時に滴下していくことで蛍光体結晶(フッ化物粒子)を析出させていき、溶液Bと溶液Cのそれぞれ75質量%の滴下が終了した段階で一旦滴下を停止した。
還元剤として、15質量部の30質量%のH水溶液を溶液Aに添加した後、溶液Bと溶液Cの滴下を再開した。溶液Bと溶液Cの滴下が終了後、得られた沈殿物を分離し、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄を行い、70℃で10時間乾燥することでの赤色蛍光体(K[Si0.97Mn4+ 0.03])を作製した。
【0204】
(2)発光装置の作製
前記で得られた赤色蛍光体72質量部と、緑蛍光体であるβサイアロンの28質量部とをシリコーン樹脂100質量部に分散した封止材料で、発光ピーク波長451nmの窒化ガリウム系半導体発光素子を封止して発光装置1を作製した。発光装置1の発光スペクトルは、特開2016-80802号公報の図2に示されている発光スペクトルと同様であった。
【0205】
(製造例2:感光性バインダー成分(CR-1)の調製)
アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ベンジル共重合体(モル比:10/30/50、重量平均分子量:9000、酸価:70mgKOH/g、有効成分含量40質量%)32.0質量部、多官能性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、KAYARAD DPHA)19.2質量部、光開始剤として2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(BASF社製、IRGACURE907)6.0質量部、ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、KAYACURE DETX-S)2.0質量部及び溶剤としてPGMEA40.8質量部を添加した後、均一になるまで混合し、感光性バインダー成分(CR-1、固形分40質量%)を得た。
【0206】
(調製例1:キサンテン系色材1分散液Aの調製)
30mlマヨネーズ瓶に、合成例1で得られたキサンテン系色材1を3.0質量部、分散剤として合成例4で得られたブロック共重合体A溶液(固形分30.4質量%)を
7.9質量部、PGMEAを19.1質量部、径2mmのジルコニアビーズを30質量部入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼製)にて1時間予備解砕した後、溶液を別の30mlマヨネーズ瓶に移し変え、径0.1mmのジルコニアビーズ30質量部を加えてペイントシェーカーにて5時間振とうし、キサンテン系色材1分散液Aを得た。
【0207】
(調製例2:キサンテン系色材1分散液Bの調製)
30mlマヨネーズ瓶に、合成例1で得られたキサンテン系色材1を3.0質量部、分散剤として合成例5で得られた塩型ブロック共重合体B溶液(固形分12質量%)を
20質量部、PGMEAを7質量部、径2mmのジルコニアビーズを30質量部入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼製)にて1時間予備解砕した後、溶液を別の30mlマヨネーズ瓶に移し変え、径0.1mmのジルコニアビーズ30質量部を加えてペイントシェーカーにて5時間振とうし、キサンテン系色材1分散液Bを得た。
【0208】
(調製例3:キサンテン系色材1溶液の調製)
30mlマヨネーズ瓶に、合成例1で得られたキサンテン系色材1を3.0質量部、溶剤としてジアセトンアルコールを27質量部入れ、キサンテン系色材1が溶解するまで混合し、キサンテン系色材1溶液を得た。
【0209】
(調製例4:キサンテン系色材2分散液Aの調製)
調製例1において、キサンテン系色材1に代えて、合成例2で得られたキサンテン系色材2を用いた以外は、調製例1と同様にしてキサンテン系色材2分散液Aを得た。
【0210】
(調製例5:キサンテン系色材2分散液Bの調製)
調製例2において、キサンテン系色材1に代えて、合成例2で得られたキサンテン系色材2を用いた以外は、調製例2と同様にしてキサンテン系色材2分散液Bを得た。
【0211】
(調製例6:キサンテン系色材2溶液の調製)
調製例3において、キサンテン系色材1に代えて、合成例2で得られたキサンテン系色材2を用いた以外は、調製例3と同様にしてキサンテン系色材2溶液を得た。
【0212】
(調製例7:キサンテン系色材3分散液Aの調製)
調製例1において、キサンテン系色材1に代えて、合成例3で得られたキサンテン系色材3を用いた以外は、調製例1と同様にしてキサンテン系色材3分散液Aを得た。
【0213】
(調製例8:キサンテン系色材3分散液Bの調製)
調製例2において、キサンテン系色材1に代えて、合成例3で得られたキサンテン系色材3を用いた以外は、調製例2と同様にしてキサンテン系色材3分散液Bを得た。
【0214】
(調製例9:キサンテン系色材3溶液の調製)
調製例3において、キサンテン系色材1に代えて、合成例3で得られたキサンテン系色材3を用いた以外は、調製例3と同様にしてキサンテン系色材3溶液を得た。
【0215】
(調製例10:PY139分散液の調製)
30mlマヨネーズ瓶に、C.I.ピグメントイエロー139(PY139)(商品名:IRGAPHOR YELLOW 2R-CF BASF社製)を3.0質量部、分散剤として合成例5で得られた塩型ブロック共重合体B溶液(固形分12質量%)を20質量部、PGMEAを7.0質量部、径2mmのジルコニアビーズを30質量部入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼製)にて1時間予備解砕した後、溶液を別の30mlマヨネーズ瓶に移し変え、径0.1mmのジルコニアビーズ30質量部を加えてペイントシェーカーにて5時間振とうし、PY139分散液を得た。得られたPY139分散液0.1質量部をPGMEA9.9質量部で希釈し、マイクロトラックUPA粒度分布計(日機装社製)を用いて、粒度分布を測定した。評価は50%平均粒子径で行い、体積換算(MV)で42nmであった。
【0216】
(調製例11~15:PY138分散液、PY150分散液、PR254分散液、PR177分散液及びPR264分散液の調製)
調製例10において、C.I.ピグメントイエロー139に代えて、C.I.ピグメントイエロー138(PY138)(商品名:クロモファインエロー6206EC、大日精化工業株式会社製)、C.I.ピグメントイエロー150(PY150)(商品名:LEVASCREEN YELLOW G04、ランクセス株式会社製)、C.I.ピグメントレッド254(PR254)(商品名:Hostaperm Red D2B-COF LV3781、CLARIANT社製)、C.I.ピグメントレッド177(PR177)(商品名:Cromophtal Red A2B、BASF社製)、又はC.I.ピグメントレッド264(PR264)(商品名:Irgazin Red L 4010 HD、BASF社製)を各々用いた以外は、調製例10と同様にして、PY138分散液、PY150分散液、PR254分散液、PR177分散液及びPR264分散液を得た。得られた各顔料分散液0.1質量部をPGMEA9.9質量部で希釈し、マイクロトラックUPA粒度分布計(日機装社製)を用いて、粒度分布を測定した。評価は50%平均粒子径で行い、体積換算(MV)とした。各顔料の50%平均粒子径は、PY138が37nm、PY150が47nm、PR254が32nm、PR177が28nm、PR264が42nmであった。
【0217】
(実施例1)
調製例1で得られたキサンテン系色材1分散液Aを11.92質量部、調製例10で得られたPY139分散液を13.28質量部、製造例2で得られた感光性バインダー成分(CR-1)を11.1質量部、シランカップリング剤(信越化学製、KBM-503)を0.2質量部、レベリング剤(DIC製、メガファックR08MH)を0.02質量部、PGMEAを13.5質量部加えて攪拌し、0.25μmメッシュでろ過して、実施例1の赤色着色樹脂組成物R1-1を得た。
【0218】
(実施例2)
実施例1において、キサンテン系色材1分散液Aに代えて、調製例2で得られたキサンテン系色材1分散液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の赤色着色樹脂組成物R1-2を得た。
【0219】
(実施例3)
実施例1において、キサンテン系色材1分散液Aに代えて、調製例3で得られたキサンテン系色材1溶液を用い、製造例2で得られた感光性バインダー成分(CR-1)の添加量を13.4質量部とし、PGMEAの添加量を11.1質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の赤色着色樹脂組成物R1-3を得た。
【0220】
(実施例4~10、比較例1~9)
実施例1において、色材として、キサンテン系色材1分散液A11.92質量部、及びPY139分散液13.28質量部に代えて、色材の質量比が表1に示す値となるように、キサンテン系色材1分散液A、PY139分散液、PY138分散液、PY150分散液、PR254分散液、PR177分散液、又はPR264分散液を、適宜選択して添加量を調整して用い、更に樹脂組成物全体が50質量部となるようにPGMEAの量を調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例4~10の赤色着色樹脂組成物R1-4~R1-10及び比較例1~9の比較赤色着色樹脂組成物RC1-1~RC1-9を得た。
【0221】
(実施例11)
調製例4で得られたキサンテン系色材2分散液Aを5.4質量部、調製例10で得られたPY139分散液を11.7質量部、製造例2で得られた感光性バインダー成分(CR-1)を14.7質量部、シランカップリング剤(信越化学製、KBM-503)を0.2質量部、レベリング剤(DIC製、メガファックR08MH)を0.02質量部、PGMEAを18質量部加えて攪拌し、0.25μmメッシュでろ過して、実施例11の赤色着色樹脂組成物R2-1を得た。
【0222】
(実施例12)
実施例11において、キサンテン系色材2分散液Aに代えて、調製例5で得られたキサンテン系色材2分散液Bを用いた以外は、実施例11と同様にして、実施例12の赤色着色樹脂組成物R2-2を得た。
【0223】
(実施例13)
実施例11において、キサンテン系色材2分散液Aに代えて、調製例6で得られたキサンテン系色材2溶液を用い、製造例2で得られた感光性バインダー成分(CR-1)の添加量を15.8質量部とし、PGMEAの添加量を16.9質量部とした以外は、実施例11と同様にして、実施例13の赤色着色樹脂組成物R2-3を得た。
【0224】
(実施例14)
調製例7で得られたキサンテン系色材3分散液Aを12.1質量部、調製例10で得られたPY139分散液を19.9質量部、製造例2で得られた感光性バインダー成分(CR-1)を8.0質量部、シランカップリング剤(信越化学製、KBM-503)を0.2質量部、レベリング剤(DIC製、メガファックR08MH)を0.02質量部、PGMEAを9.8質量部加えて攪拌し、0.25μmメッシュでろ過して、実施例14の赤色着色樹脂組成物R3-1を得た。
【0225】
(実施例15)
実施例14において、キサンテン系色材3分散液Aに代えて、調製例8で得られたキサンテン系色材3分散液Bを用いた以外は、実施例14と同様にして、実施例15の赤色着色樹脂組成物R3-2を得た。
【0226】
(実施例16)
実施例14において、キサンテン系色材3分散液Aに代えて、調製例9で得られたキサンテン系色材3溶液を用い、製造例2で得られた感光性バインダー成分(CR-1)の添加量を10.4質量部とし、PGMEAの添加量を7.4質量部とした以外は、実施例14と同様にして、実施例16の赤色着色樹脂組成物R3-3を得た。
【0227】
<溶剤再溶解性評価>
幅0.5cm長さ10cmのガラス基板の先端を、各実施例及び各比較例で得られた赤色着色樹脂組成物に浸漬させ、ガラス基板の長さ1cm部分に塗布した。引き上げたガラス基板を、ガラス面が水平になるように恒温恒湿機に入れ、温度23℃、湿度80%RHで10分間の条件で乾燥させた。次に、乾燥させた塗膜が付着したガラス基板をPGMEA中に15秒間浸漬させた。このとき乾燥塗膜の再溶解状態を目視で判別し、評価した。
A:乾燥塗膜が完全に溶解した
B:溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じ、溶液が着色した
C:乾燥塗膜が溶解せず、溶剤中に乾燥塗膜の薄片が生じず、溶液が着色しなかった
上記評価基準がA又はBであれば、溶剤再溶解性は良好と評価され、実用上問題なく使用できる。
【0228】
<耐熱性評価>
各実施例及び比較例1~5で得られた赤色着色樹脂組成物をそれぞれ、厚み0.7mmのガラス基板(NHテクノグラス(株)製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。フォトマスクを介さずに超高圧水銀灯を用いて60mJ/cmの紫外線を照射することによって、赤色硬化膜を得た。乾燥硬化後の膜厚(T;μm)は、後述のポストベーク後におけるXYZ表色系での色度yが表1又は表2に示す値となるように調整した。得られた赤色硬化膜のLab表色系の色度(L、a、b)をそれぞれ測定し、これをL、a、bとした。
次いで、前記赤色硬化膜が形成されたガラス板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、ポストベーク後の赤色硬化膜について、Lab表色系の色度を再び測定し、L、a、bとした。
なお、赤色硬化膜の色度は、製造例1で得られた発光装置1を光源として用い、オリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP-SP200」によって測定した。
ポストベーク前後での色度変化(ΔEab)を下記式より算出し、下記評価基準により耐熱性を評価した。
ΔEab={(L-L+(a-a+(b-b1/2
A:ΔEabが3以下
B:ΔEabが3超過5以下
C:ΔEabが5超過
ΔEabが5以下であれば、耐熱性に優れ、実用範囲であると評価される。
【0229】
<光学特性評価>
各実施例及び各比較例で得られた赤色着色樹脂組成物を用いて、前記耐熱性評価と同様の方法により、ガラス基板上に赤色硬化膜を形成した。製造例1で得られた発光装置1を光源として用いて、赤色硬化膜の色度(x、y)及び輝度(Y)を、オリンパス(株)社製「顕微分光測定装置OSP-SP200」によって測定した。
【0230】
【表1】
【0231】
【表2】
【0232】
なお、表1及び表2において、キサンテン系色材の分散剤として、合成例4で得たブロック共重合体Aを「A」と表記し、合成例5で得た塩型ブロック共重合体Bを「B」と表記する。
また、表中各略号は以下の通りである。
Y139:C.I.ピグメントイエロー139(商品名:IRGAPHOR YELLOW 2R-CF BASF社製)
Y138:C.I.ピグメントイエロー138(商品名:クロモファインエロー6206EC、大日精化工業株式会社製)
Y150:C.I.ピグメントイエロー150(商品名:LEVASCREEN YELLOW G04、ランクセス株式会社製)
R254:C.I.ピグメントレッド254(商品名:Hostaperm Red D2B-COF LV3781、CLARIANT社製)
R177:C.I.ピグメントレッド177(商品名:Cromophtal Red A2B、BASF社製)
R264:C.I.ピグメントレッド264(商品名:Irgazin Red L 4010 HD、BASF社製)
【0233】
表1及び表2の結果から、本発明のカラーフィルタ用赤色着色樹脂組成物に相当する実施例1~16の赤色着色樹脂組成物は、溶剤再溶解性に優れ、実施例1~10では色度x=0.693、y=0.305、実施例11~13では色度x=0.680、y=0.311、実施例14~16では色度x=0.680、y=0.319の深い赤色を再現することができ、各々高輝度な着色層を形成できることが明らかとなった。また、実施例1及び2と実施例3との対比、実施例11及び12と実施例13との対比、並びに実施例14及び15と実施例16との対比から、一般式(1)で表されるキサンテン系色材を分散剤で分散させて用いることにより、耐熱性が向上し、加熱時における退色が抑制されて、着色層の輝度がより向上することが明らかとなった。さらに、実施例1と実施例2との対比、実施例11と実施例12との対比、並びに実施例14と実施例15との対比から、一般式(1)で表されるキサンテン系色材を酸性分散剤で分散させて用いることにより、加熱時における退色がより抑制されて、着色層の輝度がより向上することが明らかとなった。
一方、比較例1~9は、一般式(1)で表されるキサンテン系色材及びC.I.ピグメントイエロー139の少なくとも一方の含有量が少ない若しくは含有しないものであり、色度x=0.693、y=0.305を達成するために、赤色顔料又はC.I.ピグメントイエロー139とは異なる黄色顔料を用いた。その結果、比較例1~6、8では、着色樹脂組成物中の色材濃度が増大し、溶剤再溶解性に劣り、着色層の輝度も劣っていた。比較例7、9では、溶剤再溶解性は良好であったものの、輝度の低い赤色顔料を多く用いたため、着色層の輝度が劣っていた。
【符号の説明】
【0234】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置
図1
図2
図3